説明

送信装置、受信装置、送信装置の制御方法およびプログラム、受信装置の制御方法およびプログラム、無線通信システム

【課題】無線通信路の確立が可能であれば通信環境に影響されずに所望の情報を送受信できる無線通信システムを提供する。
【解決手段】外部からの入力信号をプリアンブル信号の送信順序に関連付けて送信し、電波の受信同期(プリアンブル信号の受信)を図るとともに、受信した異なる複数のプリアンブル信号の受信順序に基づいて所望の情報を識別する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、送信装置、受信装置、送信装置の制御方法およびプログラム、受信装置の制御方法およびプログラム、無線通信システムに関するものであり、特に、プリアンブルを用いた通信同期動作を実行する送信装置、受信装置、送信装置の制御方法およびプログラム、受信装置の制御方法およびプログラム、無線通信システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、大規模な設備を必要とせずにデータ通信を手軽に行うことが可能な無線通信の普及が急速に進んでおり、オフィスだけではなく家庭内においても無線通信によって多種多様なデータの送受信が可能となっている。
しかし、無線通信はその特性上、データの送受信の精度が通信環境に影響されるといった問題がある。例えば、無線電波を遮る障害物や妨害電波などが存在する環境の下では、所望のデータを含んだ無線信号を正確に送受信することが困難であり、データの欠落や通信エラーの発生が顕著となる。
【0003】
このような問題に対し、特許文献1に示すようなデータ転送システムが知られている。特許文献1に開示されている技術は、エラー訂正用の符号を通信状況に応じて増減させ、無線フレームのパケット構造におけるデータ部内にこのエラー訂正用の符号を蓄える技術である。すなわち、受信電波が劣化するようなノイズの大きい環境において、通信エラーに強いエラー訂正用の符号の情報量を強化した無線フレームのパケット構造を生成することにより、通信品質の確保を図る技術である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−303495号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1の技術は、通信エラーの状況を把握するとともにエラー訂正用の符号を増減させるといった複雑な制御を必要とするため、このような技術を容易に実現することは困難である。
また、特許文献1の技術は、通信環境によって発生した通信エラーに対応することで通信品質の確保を図るデータ転送技術であって、通信環境に影響されず通信エラーの発生を抑制することを考慮した技術ではない。
例えば、無線通信路の確立(送信されたプリアンブル信号を受信してクロック同期を図ること)は可能であるが、受信したデータの欠落による通信エラーが頻繁に発生するような通信環境において、特許文献1の技術では、データの欠落が激しいため、エラー訂正処理が延々と継続してしまい、結局は所望のデータを受信することができないといった問題がある。
【0006】
本発明は、上述の問題を解決するためになされたものであり、無線通信路の確立が可能であれば通信環境に影響されずに所望の情報を送受信できる送信装置および受信装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するため、本発明の送信装置には、外部からの入力信号に応じてプリアンブル信号の送信順序を決定する送信順序決定部と、前記送信順序決定部によって決定された送信順序に基づいて前記プリアンブル信号を順次送信する信号送信部とを設けたことを特徴とする。
また、本発明の受信装置には、アンテナより受信した電波から異なるタイミングで送信されたプリアンブル信号を検出する受信信号検出部と、前記受信信号検出部によって検出されたプリアンブル信号の受信順序に基づいて所定の情報を識別する受信情報識別部と、前記受信情報識別部によって識別された前記所定の情報を外部へ出力する受信情報出力部とを設けたことを特徴とする。
【0008】
また、本発明における前記送信装置の前記信号送信部は、前記送信順序に基づいて各プリアンブル信号を第1の間隔で送信するとともに、前記送信順序に従って前記プリアンブル信号を送信した後、第2の間隔をあけて再び前記送信順序の先頭から前記プリアンブル信号を送信し、前記第1の間隔は、前記送出信号におけるマルチパス遅延時間より長い時間間隔であり、前記第2の間隔は、前記第1の間隔よりも長い時間間隔であることとしても良い。
【0009】
また、本発明の送信装置における送出信号生成部は、外部からの入力信号と前記プリアンブル信号の送信順序とを対応させた送出信号対応テーブルを有する構成としても良い。
【0010】
さらに、本発明の送信装置における送出信号生成部は、異なる周波数の電波を出力する複数の無線チャネルの送信順序を決定しても良く、または、異なるデータ配列を有する複数のプリアンブル信号の送信順序を決定しても良い。
【発明の効果】
【0011】
本発明によると、無線通信路の確立に用いるプリアンブル信号を複数用意し、送信装置によってこの複数のプリアンブル信号の送信順序を送信目的の情報に基づいて決定し送信することにより、受信装置は、送信装置から送信される電波の受信同期(プリアンブル信号の受信)を図るとともに、受信した複数のプリアンブル信号の順序に基づいて所望の情報を識別する。
したがって、本発明の無線通信システムにかかる送信装置および受信装置は、従来の無線通信では無線フレームにパケットロスが発生しデータ部に格納されたデータを判別できないような通信エラーとなる通信環境下においても、プリアンブル信号による受信同期が可能であれば、所望の情報を識別することができ、すなわち、無線通信路の確立が可能であれば通信環境に影響されずに所望の情報を送受信することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の第1の実施の形態にかかる無線通信システムの構成を示すブロック図である。
【図2】第1の実施の形態にかかる無線通信システムの送信装置または受信装置に予め記憶されている送信信号対応テーブルまたは受信情報識別テーブルの一例を示す図である。
【図3】第1の実施の形態にかかる無線通信システムの送信装置における複数の無線チャネルから送信されるプリアンブル信号の送信タイミングを説明する図である。
【図4】第1の実施の形態にかかる無線通信システムの送信装置の動作を示すフローチャートである。
【図5】第1の実施の形態にかかる無線通信システムの受信装置の動作を示すフローチャートである。
【図6】第1の実施の形態にかかる無線通信システムの動作を示すシーケンス図である。
【図7】本発明の第2の実施の形態にかかる無線通信システムの構成を示すブロック図である。
【図8】第2の実施の形態にかかる無線通信システムにおける複数のプリアンブル信号を記憶したデータ配列テーブルの一例を示す図である。
【図9】第2の実施の形態にかかる無線通信システムの送信装置または受信装置に予め記憶されている送信信号対応テーブルまたは受信情報識別テーブルの一例を示す図である。
【図10】第2の実施の形態にかかる無線通信システムの動作を示すシーケンス図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図を参照して本発明の実施の形態について説明する。
本発明の実施の形態にかかる無線通信システムは、異なる複数のプリアンブル信号を送受信することにより所定の情報を送受信するものである。
なお、本実施の形態にかかる無線通信システムは、図1に示すような建物屋内などに設置される火災報知器A1、ガス・CO検知器A2、人感センサや緊急通報ボタンA3〜A4(以下、これらをまとめて「緊急通報装置」という。)からの送信データ(緊急通報信号)を、セキュリティセンターD(例えば、セキュリティ会社やガス会社などのセキュリティセンター)、建物に設置される報知装置C、通信ネットワークBに接続される携帯電話端末B1などへ報知するセキュリティコントロールシステムにおいて、緊急通報装置から出力される緊急通報信号を無線により送受信するものとする。
【0014】
また、本実施の形態にかかる無線通信システムは、プリアンブル信号を送受信することにより、送信装置と受信装置間の通信路を確立するものである。
ここで、プリアンブル信号とは、1と0のデータが所定の規則性を有し並んでいるデータ列である。このようなデータ配列を有するプリアンブル信号を記憶したデータ配列テーブルを予め送信側と受信側とで共有する。
共有したデータ配列テーブルに基づいたプリアンブル信号を送信側から送信し、受信側によって受信されたプリアンブル信号のデータ列について共有したデータ配列テーブルとの一致検出を実行する。これによって、受信側において、データ配列テーブルに記憶されているデータ配列と受信したプリアンブル信号のデータ列との一致検出がなされると、送信側からの送信データを受信可能となるよう受信同期が図られ、すなわち、送信装置と受信装置間の通信路が確立する。
【0015】
[第1の実施の形態]
本発明の第1の実施の形態にかかる無線通信システムは、異なる周波数の電波を出力する複数の無線チャネルによってプリアンブル信号の送受信による各無線チャネルの受信同期を図るものであって、特に、無線チャネルの送信順序および受信順序を識別することにより所定の情報を送受信するものである。
【0016】
本実施の形態にかかる無線通信システム1の構成は、図1に示すように、セキュリティコントロールボックスAから出力される信号(各緊急通報装置A1〜A4からの緊急通報信号)に基づく情報を、プリアンブル信号を送出する複数の無線チャネルの送信順序に対応させて送信する送信装置11と、送信装置11から送信された複数のプリアンブル信号を受信して緊急通報信号の内容を識別し、所定の緊急通報動作を行う受信装置12とから構成されている。
以下、本実施の形態にかかる無線通信システム1が、3つの無線チャネル(Ch(a),Ch(b),Ch(c))を有するものとして、説明をする。
【0017】
送信装置11は、送信順序決定部111と信号送信部112とから構成されている。
送信順序決定部111は、セキュリティコントロールボックスAから出力される緊急通報信号を受信し、予め記憶されている緊急通報信号の内容とプリアンブル信号の送信順序とを対応付けた送信信号対応テーブルに基づいて受信した緊急通報信号に対応するプリアンブル信号の送信順序を決定する。
【0018】
ここで、送信順序決定部111に予め記憶されている送信信号対応テーブルとプリアンブル信号の送信順序との関係について説明する。
図2は、送信順序決定部111に予め記憶されている送信信号対応テーブルの一例を示す図である。図2に示す送信信号対応テーブルは、セキュリティコントロールボックスAから出力される緊急通報信号と対応する対応データ(3ビットの情報)が関連付けられており、対応データ毎に3つの無線チャネル間におけるプリアンブル信号の送信順序が定められている。
送信順序決定部111は、セキュリティコントロールボックスAから出力される緊急通報信号に対応した対応データを図2に示す送信信号対応テーブルに基づいて判定し、この対応データを表すプリアンブル信号の送信順序を決定する。
【0019】
例えば、図1に示す火災感知器A1によって緊急通報信号が出力されセキュリティコントロールボックスAから送信順序決定部111に対して「火災感知」なる内容の緊急通報信号が出力された場合、送信順序決定部111は、予め記憶されている図2に示す送信信号対応テーブルに基づいて、受信した緊急通報信号「火災感知」に対応する対応データを<010>と判定し、データ<010>を表すプリアンブル信号の送信順序を決定する。データ<010>の場合のプリアンブル信号の送信順序は、無線チャネルCh(a)が1番目、Ch(c)が2番目、Ch(b)が3番目となる。
【0020】
信号送信部112は、送信順序決定部111によって決定されたプリアンブル信号の送信順序に基づいて、異なる送信タイミングでプリアンブル信号を各無線チャネルより所定の回数繰り返し送信する。
信号送信部112によりプリアンブル信号を送信する異なる送信タイミング、すなわち、各無線チャネル間の送信間隔である第1の間隔は、各無線チャネルから送信される電波のマルチパス遅延時間より長い時間間隔であり、再び送信順序の先頭からプリアンブル信号を送信する際の送信間隔である第2の間隔は、第1の間隔よりも長い時間間隔である。
【0021】
ここで、図3を参照して、信号送信部112によりプリアンブル信号を送信する際の送信タイミングについて、詳細に説明する。
例えば、信号送信部112の各無線チャネルから図3に示すような送信タイミング、すなわち、送信順序がCh(a)が1番目、Ch(b)が2番目、Ch(c)が3番目でプリアンブル信号を送信する場合、信号送信部112は、送信順序が1番目であるCh(a)からプリアンブル信号を送信する(送信1)。
【0022】
Ch(a)からプリアンブル信号を送信すると、信号送信部112は第1の間隔(区間(イ))経過の後、送信順序が2番目であるCh(b)からプリアンブル信号を送信し(送信2)、同様に、第1の間隔経過後に3番目のCh(c)からプリアンブル信号を送信する(送信3)。
送信順序が3番目のプリアンブル信号を送信すると、信号送信部112は、第2の間隔(区間(ウ))経過後に、再び送信順序の先頭であるCh(a)からプリアンブル信号を送信する。
【0023】
このとき、第1の間隔である区間(イ)は、信号送信部112の各無線チャネルから送信されるプリアンブル信号のマルチパス遅延時間(区間(ア))よりも長い時間間隔であり、第2の間隔(区間(ウ))は、第1の間隔(区間(イ))よりも長い時間間隔と定められる。これは、送信装置11と受信装置12との間に存在する遮蔽物や障害物などの影響によってマルチパス遅延時間(区間(ア))が変動し、受信側に到達する信号送信部112の各無線チャネルから送信されたプリアンブル信号の順番、すなわち受信装置12におけるプリアンブル信号の受信順序が送信装置11からの送信順序と異なることを防ぐためである。
【0024】
次に、受信装置12の構成について詳細に説明する。
受信装置12は、受信信号検出部121と、受信情報判定部122と、受信情報出力部123とから構成されている。
【0025】
受信信号検出部121は、送信装置11の複数の無線チャネルから送信される電波を受信するアンテナによって、送信装置11から異なるタイミングで送信されたプリアンブル信号を検出するとともに、検出したプリアンブル信号を順次記憶する。
受信情報判定部122は、受信信号検出部121によって検出され記憶されたプリアンブル信号の受信順序に関連付けられた情報を、予め記憶されている受信情報識別テーブルに基づいて識別する。この受信情報識別テーブルは、送信装置11に予め記憶されている送信信号対応テーブルと同一であり、複数の無線チャネル間におけるプリアンブル信号の受信順序と所定の情報とが関連付けられている。
受信情報出力部123は、受信情報判定部122によって識別された緊急通報信号の内容を示す情報を外部へ出力する。
【0026】
ここで、受信信号検出部121によって検出し記憶したプリアンブル信号と、受信情報判定部122に予め記憶されている受信情報識別テーブルとの関係について説明する。
図2は、受信情報判定部122に予め記憶されている受信情報識別テーブルの一例を示す図である。図2に示す受信情報識別テーブルは、送信装置11の送信順序決定部111に記憶されている送信信号対応テーブルと同一のものであり、すなわち、セキュリティコントロールボックスAからの緊急通報信号に対応する対応データ(3ビットの情報)毎に各無線チャネルにより受信したプリアンブル信号の受信順序が定められている。
例えば、受信信号検出部121によって検出し記憶したプリアンブル信号の受信順序が、Ch(c),Ch(a),Ch(b)の順であった場合、受信情報判定部122は、図3に示す受信情報識別テーブルに基づいてプリアンブル信号の受信順序に対応する対応データを<100>と判定し、データ<100>が示す緊急通報信号の内容を「CO検知」と識別する。
【0027】
なお、本実施の形態にかかる無線通信システム1における送信装置11および受信装置12の各構成要素は、CPU(中央演算装置)やメモリ、インターフェースからなるコンピュータにコンピュータプログラムをインストールすることによって実現され、上述した無線通信システム1における送信装置11および受信装置12の各機能は、上記コンピュータの各種ハードウェア資源と上記コンピュータプログラム(ソフトウェア)とが協働して実現される。
【0028】
次に、本実施の形態にかかる無線通信システム1の動作について図4〜図6を参照して説明する。
図4は、本実施の形態にかかる無線通信システム1における送信装置11の動作を示すフローチャートである。図4に示すように、送信装置11に外部から緊急通報信号が入力されると(S11)、送信順序決定部111は、予め記憶されている図2に示す送信信号対応テーブルに基づいて、入力された緊急通報信号と対応する対応データを判定し、この対応データを表すプリアンブル信号の送信順序を決定する(S12)。
【0029】
送信順序決定部111によってプリアンブル信号の送信順序が決定されると、信号送信部112は、送信順序が1番目の無線チャネルよりプリアンブル信号を送信し(S13)、第1の間隔である送信間隔の経過後(S14)、送信順序が2番目の無線チャネルよりプリアンブル信号を送信する(S15)。2番目のプリアンブル信号を送信してから、第1の間隔である送信間隔の経過後(S16)、送信順序が3番目の無線チャネルよりプリアンブル信号を送信する(S17)。
【0030】
送信順序が3番目のプリアンブル信号を送信した後に、信号送信部112は、これら3つの無線チャネルからプリアンブル信号の送信動作を所定の回数だけ繰り返したか否かを判定する(S18)。
例えば、予め信号送信部112によってプリアンブル信号の送信回数が3回と設定されている場合、信号送信部112は、送信回数が3回目であるのか否かを判定する。
【0031】
各チャネルからのプリアンブル信号の送信回数が所定の回数に満たない場合(S18で「NO」)、信号送信部112は第2の間隔である送信間隔の経過後(S19)、再び送信順序が1番目から3番目の無線チャネルよりプリアンブルを所定の回数順次送信する(S13からS18を順次実行)。
【0032】
各チャネルからのプリアンブル信号の送信回数が所定の回数に達している場合(S18で「YES」)、送信装置11は、入力された緊急通報信号に対応するプリアンブル信号の送信動作を終了する。
また、送信装置11は、受信装置12より送信される受信完了通知を受信したか否かによって、入力された緊急通報信号に対応するプリアンブル信号の送信動作を終了するか否かを判定しても良い。
【0033】
次に、図5を参照して本実施の形態にかかる無線通信システム1における受信装置12の動作を説明する。
図5に示すように、受信装置12の受信信号検出部121は、アンテナより受信した電波から、送信装置11によって送信されたプリアンブル信号を検出し記憶する(S21)。
【0034】
送信装置11から異なるチャネルを通じて所定の送信タイミングによって送信された複数のプリアンブル信号を全て受信すると、受信信号検出部121は、受信した複数のプリアンブル信号の受信順序を確定させる(S22)。
【0035】
具体的に説明すると、送信装置11から送信されたプリアンブル信号の送信タイミングと、受信装置12によって受信されたプリアンブル信号の受信タイミングとは同一のタイミングである。すなわち、送信装置11と受信装置12とは予め各チャネル間の送信間隔である第1の間隔と、送信順序の先頭からプリアンブル信号を繰り返し送信する際の送信間隔である第2の間隔とを共有している。
したがって、受信信号検出部121は、第1の間隔または第2の間隔の経過後に受信したプリアンブル信号であるか否かを分析することにより、受信した複数のプリアンブル信号の受信順序を確定する。
【0036】
受信信号検出部121によって受信した複数のプリアンブル信号の受信順序が確定されると、受信情報判定部122は、予め記憶されている図2に示す受信情報識別テーブルに基づいてプリアンブル信号の受信順序に対応する対応データを判定し、対応データに割り当てられた緊急通報信号の内容を識別する(S23)。このとき、あわせて送信装置11に対して緊急通報信号の受信完了を示す受信完了通知信号を送信しても良い。
【0037】
受信情報判定部122によって緊急通報信号の内容が識別されると、受信情報出力部123は、緊急通報信号の内容を示す情報を外部へ出力し(S24)、所定の緊急通知動作が実行される。
例えば、受信情報出力部123は、図1に示すように、建物内に設置される報知装置Cに対して緊急通報信号の内容を示す情報を出力し、報知装置Cによるサイレンの鳴動や緊急放送といった緊急報知動作を作動させることや、通信ネットワークBに接続される携帯電話端末B1に対して緊急通報信号の内容を示す情報を送信し、携帯電話端末B1によるユーザに対する緊急通知動作を実行させる。
【0038】
次に、図6に示すシーケンス図を参照して本実施の形態にかかる無線通信システム1における緊急通報信号の送受信動作を説明する。
図6に示すように、各緊急通報装置A1〜A4から緊急通報信号が出力されると(S101)、セキュリティコントロールボックスAから無線通信システムの送信装置11に対しても同様の緊急通報信号が送信される(S102)。
【0039】
セキュリティコントロールボックスAから送信された緊急通報信号を受信した送信装置11は、受信した緊急通報信号に対応したプリアンブル信号の送信順序を決定し(S103)、送信順序が1番目の無線チャネル(Ch(a))からプリアンブル信号を送信する(S104)。
【0040】
受信装置12は、送信装置11のCh(a)から送信された1番目のプリアンブル信号を検出して受信同期を図るとともに、受信したプリアンブル信号を記憶する(S105−r)。また、1番目のプリアンブル信号を送信した送信装置11は、第1の間隔である送信間隔の経過の後(S105−t)、送信順序が2番目の無線チャネル(Ch(b))からプリアンブル信号を送信する(S106)。
【0041】
受信装置12は、送信装置11のCh(b)から送信された2番目のプリアンブル信号を検出して受信同期を図るとともに、受信したプリアンブル信号を記憶する(S107−r)。また、2番目のプリアンブル信号を送信した送信装置11は、第1の間隔である送信間隔の経過の後(S107−t)、送信順序が3番目の無線チャネル(Ch(c))からプリアンブル信号を送信する(S108)。
【0042】
送信順序が3番目のプリアンブル信号を送信した送信装置11は、第2の間隔である送信間隔の経過後に(S109−t)、再び送信順序が1番目(Ch(a)からの送信)から順次プリアンブル信号の送信を所定回数だけ繰り返す(S110)。
【0043】
受信装置12は、送信装置11のCh(c)から送信された3番目のプリアンブル信号を受信し記憶すると(S109−r)、これまで受信したプリアンブル信号の受信順序を確定させ、この受信順序に基づいて送信装置11から送信された緊急通報信号を表す情報内容を識別する(S111)。
【0044】
緊急通報信号の内容を識別した受信装置12は、送信装置11に対して受信完了通知を送信し(S112)、緊急通報信号の内容を示す情報を外部へ出力することによって(S113)、緊急通報信号の内容を示す情報の報知動作を実行する(S114)。
【0045】
このように、本実施の形態にかかる無線通信システムによれば、外部より入力される緊急通報信号に対応して所定の順序で複数の無線チャネルよりプリアンブル信号を送受信することによって、受信した複数のプリアンブル信号の受信順序に基づいて所望の情報を識別することができる。
したがって、本実施の形態にかかる無線通信システムは、従来の無線通信では無線フレームにパケットロスが発生しデータ部に格納されたデータを判別できないような通信エラーとなる通信環境下においても、プリアンブル信号による受信同期が可能であれば、所望の情報を送受信することができ、すなわち、無線通信路の確立が可能であれば通信環境に影響されずに所望の情報を送受信することができる。
【0046】
[第2の実施の形態]
本発明の第2の実施の形態にかかる無線通信システムは、異なるデータ配列を有する複数のプリアンブル信号を所定の順序で送受信することで所望の情報を送受信するものである。
なお、本実施の形態にかかる無線通信システムおよび無線通信システムを含むセキュリティコントロールシステムの構成・機能について、第1の実施の形態において説明した無線通信システム1およびセキュリティコントロールシステムと同一の構成・機能を有するものには同一の符号を付し、これらの詳細な説明を省略する。
【0047】
本発明の実施の形態にかかる無線通信システムの構成を示すブロック図を図7に示す。本実施の形態にかかる無線通信システム1の構成は、図7に示すように、セキュリティコントロールボックスAから出力される緊急通報信号に基づく情報を異なるデータ配列のプリアンブル信号の送信順序によって送信する送信装置21と、送信装置21から送信された異なるデータ配列のプリアンブル信号を受信して緊急通報信号の内容を識別し、所定の緊急通報動作を行う受信装置22とから構成されている。
【0048】
送信装置21は、送信順序決定部211と信号送信部212とから構成されている。
送信順序決定部211は、予め記憶されているセキュリティコントロールボックスAから出力される緊急通報信号の内容とプリアンブル信号の送信順序とを対応付けた送信信号対応テーブルに基づいて、受信した緊急通報信号に対応する異なるデータ配列を有する複数のプリアンブル信号の送信順序を決定する。
【0049】
信号送信部212は、送信順序決定部211によって決定されたプリアンブル信号の送信順序に基づいて、所定の送信タイミングで各プリアンブル信号を送信し、これを予め設定した回数だけ繰り返す。
また、所定の送信タイミングとは、送信順序間の送信間隔である第1の間隔および再び送信順序の先頭から送信する際の時間間隔である第2の間隔によって定められる送信タイミングとすることができ、第1の間隔は送信順序間で発生するマルチパス遅延時間よりも長い時間間隔とし、第2の間隔は第1の間隔よりも長い時間間隔とすることができる。
【0050】
ここで、複数のプリアンブル信号のデータ配列を記憶したデータ配列テーブルを図8に、セキュリティコントロールボックスAから出力された緊急通報信号の内容とプリアンブル信号の送信順序との関係を記憶した送信信号対応テーブルを図9に示す。
【0051】
送信順序決定部211は、図8に示す複数のプリアンブル信号(プリアンブル(a)〜(c))のデータ配列テーブル、および、図9に示す送信信号対応テーブルを予め記憶しており、この送信信号対応テーブルに基づいてセキュリティコントロールボックスAから出力される緊急通報信号に対応するプリアンブル信号(プリアンブル(a)〜(c))の送信順序を決定する。
信号送信部212は、プリアンブル(a)〜(c)を決定された送信順序でアンテナより送信する。
【0052】
受信装置22は、受信信号検出部221、受信情報判定部222、受信した緊急通報信号の内容を示す情報を外部へ出力する受信情報出力部123から構成されている。
受信信号検出部221は、送信装置21から所定の送信タイミングで送信された複数のプリアンブル信号を検出し、予め記憶されているプリアンブル信号のデータ配列テーブルに基づいて検出したプリアンブル信号を識別し順次記憶する。
ここで、受信信号検出部221に予め記憶されているプリアンブル信号のデータ配列テーブルは、送信装置21の送信順序決定部211に記憶されているプリアンブル信号のデータ配列テーブルと同一のプリアンブル信号のデータ配列を記憶したものである。
【0053】
受信情報判定部222は、受信信号検出部221によって検出され記憶された複数のプリアンブル信号の受信順序に対応付けられた情報を、予め記憶されている受信情報識別テーブルに基づいて識別する。この受信情報識別テーブルは、送信装置21の送信順序決定部211に予め記憶されている送信信号対応テーブルと同一であり、複数のプリアンブル信号の受信順序と所定の情報とが関連付けられて記憶されている。
【0054】
具体的に説明すると、受信情報判定部222は、受信信号検出部221によって識別され受信した順に記憶された複数のプリアンブル信号の受信順序を確定する。
続いて受信情報判定部222は、確定したプリアンブル信号の受信順序と予め記憶されている図9に示す受信情報識別テーブルとから、受信した複数のプリアンブル信号の受信順序に対応付けられた対応データ(3ビットの情報)を判定し、この対応データに割り当てられた緊急通報信号の内容を抽出する。
【0055】
例えば、複数のプリアンブル信号の受信順序が、プリアンブル(a),プリアンブル(c),プリアンブル(b)であった場合、受信情報判定部222は、図9に示す受信情報識別テーブルから受信順序に対応付けられた対応データを<010>と判定し、データ<010>を示す緊急通報信号の内容を「火災感知」と識別する。
【0056】
なお、本実施の形態にかかる無線通信システム2における送信装置21および受信装置22の各構成要素は、CPU(中央演算装置)やメモリ、インターフェースからなるコンピュータにコンピュータプログラムをインストールすることによって実現され、上述した無線通信システム2における送信装置21および受信装置22の各機能は、上記コンピュータの各種ハードウェア資源と上記コンピュータプログラム(ソフトウェア)とが協働して実現される。
【0057】
次に、本実施の形態にかかる無線通信システム2における緊急通報信号の送受信動作を図10に示すシーケンス図を参照して説明する。
図10に示すように、各緊急通報装置A1〜A4から緊急通報信号が出力されると(S201)、セキュリティコントロールボックスAから無線通信システムの送信装置21に対しても同様の緊急通報信号が送信される(S202)。
【0058】
セキュリティコントロールボックスAから送信された緊急通報信号を受信した送信装置21は、受信した緊急通報信号に対応した異なるデータ配列を有する複数のプリアンブル信号の送信順序を決定し(S203)、送信順序が1番目のプリアンブル信号(プリアンブル(a))を送信する(S204)。
【0059】
受信装置22は、送信装置21から送信された1番目のプリアンブル信号(プリアンブル(a))を検出して受信同期を図るとともに、受信したプリアンブル信号のデータ配列を判定しプリアンブル(a)を受信したことを記憶する(S205−r)。
また、1番目のプリアンブル信号を送信した送信装置21は、第1の間隔である送信間隔の経過の後(S205−t)、送信順序が2番目のプリアンブル信号(プリアンブル(b))を送信する(S206)。
【0060】
受信装置22は、送信装置21から送信された2番目のプリアンブル信号(プリアンブル(b))を検出して受信同期を図るとともに、受信したプリアンブル信号のデータ配列を判定しプリアンブル(b)を受信したことを記憶する(S207−r)。
また、2番目のプリアンブル信号を送信した送信装置21は、第1の間隔である送信間隔の経過の後(S207−t)、送信順序が3番目のプリアンブル信号(プリアンブル(c))を送信する(S208)。
【0061】
送信順序が3番目のプリアンブル信号(プリアンブル(c))を送信した送信装置21は、第2の間隔である送信間隔の経過後に(S209−t)、再び送信順序が1番目のプリアンブル信号(プリアンブル(a))から順次プリアンブル信号の送信を所定回数だけ繰り返す(S210)。
【0062】
受信装置22は、送信装置21のから送信された3番目のプリアンブル信号(プリアンブル(c))を受信し記憶すると(S109−r)、これまで受信したプリアンブル信号の受信順序を確定させ、この受信順序に基づいて送信装置21から送信された緊急通報信号を表す情報内容を識別する(S211)。
【0063】
緊急通報信号の内容を識別した受信装置22は、送信装置21に対して受信完了通知を送信し(S212)、緊急通報信号の内容を示す情報を外部へ出力することによって(S213)、緊急通報信号の内容を示す情報の報知動作を報知装置Cなどに実行させる(S214)。
【0064】
このように、本実施の形態にかかる無線通信システムによれば、外部より入力される緊急通報信号に対応して所定の順序で異なるデータ配列を有する複数のプリアンブル信号を送受信することによって、受信した異なるデータ配列を有する複数のプリアンブル信号の受信順序に基づいて所望の情報を識別することができる。
したがって、無線通信路の確立が可能であれば通信環境に影響されず、さらに、複数の無線チャネルによるプリアンブル信号の送受信を実行するといった複雑な構成を必要とせずに所望の情報を送受信することができる。
【産業上の利用可能性】
【0065】
部屋や居室に火災報知器、人感センサ、ガス検知センサなどの緊急通報装置を設置し、
緊急通報装置からの緊急通報信号をセキュリティ会社などのセキュリティセンターに通知するセキュリティコントロールシステムにおいて、緊急通報装置から出力された緊急通報信号を無線通信によって送受信する無線通信システムに利用可能である。
【符号の説明】
【0066】
1,2…無線通信システム、11,21…送信装置、12,22…受信装置、111,211…送信順序決定部、112,212…信号送信部、121,221…受信信号検出部、122,222…受信情報判定部、123,223…受信情報出力部、A…セキュリティコントロールボックス、A1〜A4…緊急通報装置(火災感知器,ガス・CO検知器,緊急通報ボタン,浴室呼出ボタン)、B…通信ネットワーク、B1…携帯電話端末、C…報知装置、D…セキュリティセンター。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外部からの入力信号に応じてプリアンブル信号の送信順序を決定する送信順序決定部と、
前記送信順序決定部によって決定された送信順序に基づいて前記プリアンブル信号を順次送信する信号送信部と
を備えることを特徴とする送信装置。
【請求項2】
請求項1に記載の送信装置において、
前記信号送信部は、前記送信順序に基づいて各プリアンブル信号を第1の間隔で送信するとともに、前記送信順序に従って前記プリアンブル信号を送信した後、第2の間隔をあけて再び前記送信順序の先頭から前記プリアンブル信号を送信し、
前記第1の間隔は、前記送出信号におけるマルチパス遅延時間より長い時間間隔であり、
前記第2の間隔は、前記第1の間隔よりも長い時間間隔であることを特徴とする送信装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の送信装置において、
前記送信順序決定部は、外部からの入力信号と前記プリアンブル信号の送信順序とを対応させた送出信号対応テーブルを有することを特徴とする送信装置。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれかに記載の送信装置において、
前記送信順序決定部は、異なる周波数の電波を出力する複数の無線チャネルの送信順序を決定することを特徴とする送信装置。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれかに記載の送信装置において、
前記送信順序決定部は、異なるデータ配列を有する複数のプリアンブル信号の送信順序を決定することを特徴とする送信装置。
【請求項6】
アンテナより受信した電波から異なるタイミングで送信されたプリアンブル信号を検出する受信信号検出部と、
前記受信信号検出部によって検出されたプリアンブル信号の受信順序に基づいて所定の情報を識別する受信情報識別部と、
前記受信情報識別部によって識別された前記所定の情報を外部へ出力する受信情報出力部と
を備えることを特徴とする受信装置。
【請求項7】
外部からの入力信号に応じてプリアンブル信号の送信順序を決定する送信順序決定ステップと、
前記送信順序決定ステップによって決定された送信順序に基づいて前記プリアンブル信号を順次送信する信号送信ステップと
を有することを特徴とする送信装置の制御方法。
【請求項8】
アンテナより受信した電波から異なるタイミングで送信されたプリアンブル信号を検出する受信信号検出ステップと、
前記受信信号検出ステップによって検出されたプリアンブル信号の受信順序に基づいて所定の情報を識別する受信情報識別ステップと、
前記受信情報識別ステップによって識別された前記所定の情報を外部へ出力する受信情報出力ステップと
を有することを特徴とする受信装置の制御方法。
【請求項9】
請求項7に記載の送信装置の制御方法をコンピュータに実行させることを特徴とする送信装置の制御プログラム。
【請求項10】
請求項8に記載の受信装置の制御方法をコンピュータに実行させることを特徴とする受信装置の制御プログラム。
【請求項11】
プリアンブル信号をアンテナより送信する送信装置と前記プリアンブル信号をアンテナより受信することにより前記送信装置との通信を行う受信装置とからなる無線通信システムにおいて、
前記送信装置は、請求項1乃至5のいずれかに記載の送信装置であり、
前記受信装置は、請求項6に記載の受信装置である
ことを特徴とする無線通信システム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate


【公開番号】特開2011−77799(P2011−77799A)
【公開日】平成23年4月14日(2011.4.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−226732(P2009−226732)
【出願日】平成21年9月30日(2009.9.30)
【出願人】(304020498)サクサ株式会社 (678)
【Fターム(参考)】