説明

送風機

【課題】送風機の主要部品である電動機への電源供給が遮断されても、CO2 ガスセンサー側には常時通電が可能な送風機を提供する。
【解決手段】ファンを回転させる電動機10と、ファンの回転によって吸引された空気からCO2 を検出し、CO2 情報として出力するCO2 ガスセンサー12と、CO2 ガスセンサー12からのCO2 情報に基づいてCO2 濃度を求めるマイコン11と、CO2 濃度に基づいて換気風量を演算し、演算した換気風量により換気が行われるように電動機10の駆動を制御するマイコン7と、電源から分岐された第1の開閉器と接続され、少なくとも電動機10およびマイコン7の動作電圧の電源として受ける電源端子3と、電源から分岐された第2の開閉器と接続され、少なくともCO2 ガスセンサー12の動作電圧の電源として受ける電源端子5とを有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、CO2 ガスセンサーを備えた送風機に係わり、さらに詳しくは、CO2 ガスセンサーの検出により得られたCO2 濃度に応じて換気風量を調整する送風機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、送風機に搭載されたガスセンサー(CO2 ガスセンサー)を動作させるための電源は、送風機用の電動機や制御回路の電源と同一のものを使用している。送風機用の電動機や制御回路への給電を遮断した場合には、CO2 ガスセンサーへの給電も遮断されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平7−113536号公報(第2頁、図1)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、前述のCO2 ガスセンサーは、そのセンサー素子の特性上、常に通電を行って、センサー素子を加熱させておかなければならないタイプが存在する(炭酸リチウムを用いた固体電解質タイプ)。センサー素子の加熱ができない場合は、空気中の水分により加水分解が起こり、センサー素子の寿命が短くなる。
また、CO2 ガスセンサーには、過去の測定データにより濃度値の補正を行なうために、電源を投入してから一定時間を経過しなければ測定結果を出力できないものや、過去の測定データを保持しておく必要があるものが存在する。
【0005】
工場・事務所などの事業所においては、就業時間後や長期休暇の際には省エネや保安のために電源ブレーカーをOFFして、送風機への電源供給を遮断していることが多い。その場合、センサー部分のみに通電させておくことができず、そのため、CO2 ガスセンサーの劣化が進み、寿命が短くなるという課題があった。
また、電源供給が遮断された場合、その間、CO2 ガスセンサーにより検出されるCO2 の測定データの保存ができず、バックグランド補正によるCO2 濃度値の算出に正確性が欠けるという課題もあった。
【0006】
本発明は、前述のような課題を解決するためになされたものであり、送風機の主要部品である電動機への電源供給が遮断されても、CO2 ガスセンサー側には常時通電が可能な送風機を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る送風機は、ファンを回転させる電動機と、ファンの回転によって吸引された空気からCO2 を検出し、CO2 情報として出力するCO2 ガスセンサーと、CO2 ガスセンサーからのCO2 情報に基づいてCO2 濃度を求めるCO2 濃度演算出段と、CO2 濃度に基づいて換気風量を演算し、演算した換気風量により換気が行われるように電動機の駆動を制御する制御手段と、電源から分岐された第1の開閉器と接続され、少なくとも前記電動機および前記制御手段の動作電圧の電源として受ける第1の電源端子と、電源から分岐された第2の開閉器と接続され、少なくともCO2 ガスセンサーの動作電圧の電源として受ける第2の電源端子とを有するものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明の送風機によれば、電源から分岐された第1の開閉器と接続され、少なくとも電動機および制御手段の動作電圧の電源として受ける第1の電源端子と、電源から分岐された第2の開閉器と接続され、少なくともCO2 ガスセンサーの動作電圧の電源として受ける第2の電源端子とを備えている。これにより、第1の開閉器のOFFにより電動機の駆動が停止されても、CO2 ガスセンサーへの通電を継続させることが可能になり、そのため、CO2 ガスセンサーの劣化を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】実施の形態に係る送風機のシステム構成を示す図。
【図2】実施の形態に係る送風機の外形を示す六面図。
【図3】実施の形態に係る送風機の内部を示す平面の断面図。
【図4】実施の形態に係る送風機の電源系統を示す配線図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図1は実施の形態に係る送風機のシステム構成を示す図である。
本実施の形態の送風機1は、制御装置2と、羽根を回転させる電動機10と、CO2 ガスセンサー12と、停電補償用のバッテリー14とを備えている。
【0011】
制御装置2は、例えば商用電源と接続される送風機用の電源端子3(第1の電源端子)、その電源端子3とは別系統で商用電源と接続されるセンサー用の電源端子5(第2の電源端子)、送風機用の電源回路4、バッテリー14とリード線を介して接続されたセンサー用の電源回路6、CO2 濃度演算出段であるCO2 ガスセンサー用のマイクロコンピュータ11、データ保持用のメモリ13、制御手段である送風機制御用のマイクロコンピュータ7、電動機制御回路8、電動機10とリード線を介して接続されたスイッチング半導体回路9などが、1つの回路基板に実装されて構成されている。
【0012】
送風機用の電源回路4は、商用電源の単相100Vまたは200V、3相200Vから電動機10の駆動用の直流電圧140V(動作電圧)に変換すると共に、送風機制御用のマイクロコンピュータ7(以下、「マイコン7」と称する)の動作に必要な直流電圧12Vと5V(動作電圧)に変換する。センサー用の電源回路6は、商用電源の単相100Vまたは200VからCO2 ガスセンサー12、CO2 ガスセンサー用のマイクロコンピュータ11(以下、「マイコン11」と称する)を動作させるのに必要な直流電圧12Vと5V(動作電圧)に変換する。また、前述の電源回路6は、商用電源が停電、あるいは後述する電源ブレーカーのOFFを検知したときにはバッテリー14と接続し、バッテリー電圧から前記の直流電圧12Vと5Vを生成する。
【0013】
CO2 ガスセンサー12は、回路基板上のマイコン11にリード線を介して接続され、送風機1により吸引される室内空気の中からCO2 を検出し、CO2 情報としてマイコン11に出力する。なお、CO2 ガスセンサー12として、CO2 ガスの検出方式により、固体電解質により測定を行なうものと、赤外線により測定を行なうもの(NDIR)が主流となっているが、本実施の形態では検出方式は特に限定しない。
【0014】
マイコン11は、CO2 ガスセンサー12からのCO2 情報を定期的に読み込んで、データ保持用のメモリ13に測定データとして保存すると共に、現在のCO2 濃度値を演算する。例えば、マイコン11は、メモリ13に蓄積した過去の測定データから1日の最低のCO2 濃度値を割り出し、その値を外気のCO2 濃度とみなして、読み込んだCO2 情報に基づいてCO2 濃度値を算出し、かつ、そのCO2 濃度値から外気のCO2 濃度とみなした値を減算して補正(バックグランド補正)し、現在のCO2 濃度値として前述のマイコン7に出力する。
【0015】
なお、そのバックグランド補正は、メモリ13に測定データが蓄積された期間が長いほど信頼性が高くなり、長期間の連続測定が重要となる。前述のメモリ13は、書込み・読出しには電源を必要とするが、測定データの保持には電源を必要としない不揮発性のメモリである。バックグランド補正は、メモリ13に蓄積された測定データを基に行なう。
【0016】
送風機制御用のマイコン7は、マイコン11によって演算されたCO2 濃度値に基づいて換気風量を求め、その換気風量で換気を行わせる指示信号を電動機制御回路8に出力する。電動機制御回路8は、マイコン7からの指示信号に基づいて制御信号を生成し、スイッチング半導体回路9に出力する。スイッチング半導体回路9は、電動機制御回路8からの制御信号に基づいて、電源回路4からの直流電圧を電動機10の運転に必要な交流電圧(正弦波)に変換し、電動機10に供給して駆動する。
【0017】
次に、本実施の形態の送風機1の外形について図2を用いて説明する。
図2は実施の形態に係る送風機の外形を示す六面図である。なお、図中の(a)は送風機1の平面図、(b)は平面図を下から見て示す送風機1の側面図、(c)は底面図、(d)は底面図を下から見て示す送風機1の逆さま状態の側面図、(e)は正面図、(f)は背面図である。
【0018】
本実施の形態に係る送風機1の外形は、例えば直方体形状のケーシング18と、ケーシング18の正面および背面にそれぞれ設けられたダクト接続フランジ16a、16bと、ケーシング18の一方の側面に設けられた箱形状のカバー15と、ケーシング18の両側面にネジにより固定された4つの取付足17とで構成されている。
【0019】
ダクト接続フランジ16aは、室内側からの吸気ダクトと接続され、ダクト接続フランジ16bは、室外側に延びる排気ダクトと接続される。カバー15は、ケーシング18の一方の側面にネジにより着脱可能に取り付けられ、そのケーシング18の側面とで形成される空間に制御装置2が収納されている。なお、制御装置2は、ケーシング18側に取り付けられている。4つの取付足17は、建物に設置された天吊りボルトに送風機1そのものを取り付けるための支持部材である。
【0020】
次に、本実施の形態の送風機1の内部構造について図3を用いて説明する。
図3は実施の形態に係る送風機の内部を示す平面の断面図である。
本実施の形態に係る送風機1は、ケーシング18の内側側面に設けられた側面消音材20と、ケーシング18により形成された風路の中央部に設置された中央消音材19とを備えている。また、送風機1のケーシング18内には、前述した電動機10およびCO2 ガスセンサー12が設けられている。電動機10は、中央消音材19と排気側のダクト接続フランジ16bとの間に設置され、CO2 ガスセンサー12は、吸気側のダクト接続フランジ16aの近くに配置されている。電動機10の回転軸には、シロッコ羽根車21(ファン)が接続されている。
【0021】
電動機10の駆動によりシロッコ羽根車21が回転しているときには、室内空気は、吸気ダクトを通ってダクト接続フランジ16aからケーシング18内に吸引され、ダクト接続フランジ16bから排気ダクトを通って外部へ排気される。一方、CO2 ガスセンサー12は、ケーシング18内に吸引された室内空気の中からCO2 ガスを検出し、CO2 情報として制御装置2のマイコン11に出力する。
【0022】
マイコン11は、CO2 ガスセンサー12からの信号を定期的に読み込んで、データ保持用のメモリ13に測定データとして保存すると共に、前述したバックグランド補正により現在のCO2 濃度値を演算し、送風機制御用のマイコン7に出力する。マイコン7は、前記マイコン11によって演算されたCO2 濃度値に基づいて換気風量を求め、その換気風量で換気を行わせる指示信号を電動機制御回路8に出力して、求めた換気風量で換気が行われるように電動機10の駆動を制御させる。
【0023】
ここで、送風機の電源系統について図4を用いて説明する。
図4は実施の形態に係る送風機の電源系統を示す配線図である。なお、本図は接続関係を分かりやすくするために、制御装置2のカバー15を取外した状態で示している。
本実施の形態に係る送風機1においては、制御装置2の電源端子3に送風機用の電源ブレーカー22(第1の開閉器)が接続され、もう一つの電源端子5にセンサー用の電源ブレーカー23(第2の開閉器)が接続されている。2つの電源ブレーカー22、23は、例えば配線用遮断器からなり、送風機1を設置する建物内の分電盤に分岐回路として接続されている。
【0024】
送風機用の電源ブレーカー22は、省エネや保安のために、例えば就業時間外や長期休暇など送風機1を使用しない期間にOFFされ、制御装置2の送風機用の電源回路4への通電を遮断する。一方、センサー用の電源ブレーカー23は、CO2 ガスセンサー12の劣化防止やCO2 濃度の連続測定などのために常にON状態のままで、センサー用の電源回路6に常時通電する。
【0025】
以上のように実施の形態によれば、送風機1の電源として、送風機用とセンサー用の2系統に分けて、それぞれ受電するようにしているので、常時通電が必要なCO2 ガスセンサー12やマイコン11などに動作電圧を供給することができる。これにより、CO2 濃度の測定が常時可能となり、固体電解質方式のCO2 ガスセンサー12を使用している場合には、CO2 ガスセンサー12のセンサー素子の劣化を防止することができる。
【0026】
また、停電補償用のバッテリー14をセンサー用の電源回路6に接続しているので、停電時においてもバッテリー14で電源供給が可能な間はCO2 濃度の連続測定やCO2 ガスセンサー12のセンサー素子の劣化を抑えることできる。
また、CO2 濃度の連続測定を実施することができ、その測定データをメモリ13に保存していくことが可能であるため、より正確なCO2 濃度値を送風機制御用のマイコン7に提供でき、室内の換気を無駄なく行うことができる。
【符号の説明】
【0027】
1 送風機、2 制御装置、3 送風機用の電源端子、4 送風機用の電源回路、5 センサー用の電源端子、6 センサー用の電源回路、7 送風機制御用のマイクロコンピュータ(マイコン)、8 電動機制御回路、9 スイッチング半導体回路、10 電動機、11 CO2 ガスセンサー用のマイクロコンピュータ(マイコン)、12 CO2 ガスセンサー、13 データ保持用のメモリ、14 停電補償用のバッテリー、15 制御装置のカバー、16 ダクト接続フランジ、17 取付足、18 ケーシング、19 中央消音材、20 側面消音材、21 シロッコ羽根車、22 送風機用の電源ブレーカー、23 センサー用の電源ブレーカー。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ファンを回転させる電動機と、
前記ファンの回転によって吸引された空気からCO2 を検出し、CO2 情報として出力するCO2 ガスセンサーと、
前記CO2 ガスセンサーからのCO2 情報に基づいてCO2 濃度を求めるCO2 濃度演算出段と、
前記CO2 濃度に基づいて換気風量を演算し、演算した換気風量により換気が行われるように前記電動機の駆動を制御する制御手段と、
電源から分岐された第1の開閉器と接続され、少なくとも前記電動機および前記制御手段の動作電圧の電源として受ける第1の電源端子と、
前記電源から分岐された第2の開閉器と接続され、少なくとも前記CO2 ガスセンサーの動作電圧の電源として受ける第2の電源端子と
を有することを特徴とする送風機。
【請求項2】
前記第2の電源端子は、前記CO2 ガスセンサーに加えて、前記CO2 濃度演算出段の動作電圧の電源として受けることを特徴とする請求項1記載の送風機。
【請求項3】
前記電源の停電時に、前記CO2 ガスセンサーおよび前記CO2 濃度演算出段の動作電圧を維持するためのバッテリーを備えていることを特徴とする請求項1又は2記載の送風機。
【請求項4】
前記CO2 ガスセンサーにより検出されたCO2 情報を保存するためのメモリを備え、
前記メモリは、不揮発性であることを特徴とする請求項1乃至3の何れか一項に記載の送風機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−76376(P2013−76376A)
【公開日】平成25年4月25日(2013.4.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−216878(P2011−216878)
【出願日】平成23年9月30日(2011.9.30)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】