逆オパール構造体、その製造方法及び使用方法
【課題】高い構造規則性を備えるとともに、優れた耐候性、耐熱性及び耐薬品性を有する逆オパール構造体を提供すること。
【解決手段】単分散コロイド粒子の自己集積体であるコロイド結晶を鋳型としたテンプレート法により作製される、多糖類を含む逆オパール構造体、その製造方法及び使用方法とする。
【解決手段】単分散コロイド粒子の自己集積体であるコロイド結晶を鋳型としたテンプレート法により作製される、多糖類を含む逆オパール構造体、その製造方法及び使用方法とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主に医療バイオ材料分野で使用される逆オパール構造体、その製造方法及び使用方法、並びに該逆オパール構造体からなる医療用材料に関する。詳細には、本発明は、単分散コロイド粒子の自己集積体であるコロイド結晶を鋳型としたテンプレート法により作製される、多糖類の逆オパール構造体およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、医療バイオ材料分野で使用される医療用材料としては、例えば、薬剤を担持させるインプラントに関する発明が多く創出されてきた。このようなインプラントは、薬剤を担持させた後、生体内に埋入することにより、特定の生体内部位で薬剤を放出することができるので、その薬剤の副作用を低減することができるという利点を有する。
【0003】
医療用材料を構成する組成物としては多糖類が使用され、その構造として多孔質構造体が採用されてきた。
例えば、特許文献1は、創傷皮膚の被覆保護作用をもち、紡糸により製造されるキチン不織布について開示している。
特許文献2は、水などの極性溶剤中で種々のペプチドや脂質等を有機合成する際の性能に特徴を有する固定化酵素を担持した再生粒状多孔質キトサンを開示している。
特許文献3では、血液製剤やバイオ医薬品を製造する際のウイルス除去用分離膜フィルターとして、銅アンモニア法再生セルロースを用いて紡糸により製造されるセルロース多孔質膜が開示されている。
特許文献4は、乾式相分離法により作製され、酢酸セルロースで形成された透明多孔質膜について開示している。
【0004】
前記特許文献1乃至4に記載されている発明のいずれにおいても、空孔径、空孔配列、空隙率、空孔間の相互貫通といった空孔形態を制御することは容易ではない。
【0005】
一方、単分散コロイド粒子の自己集積体であるコロイド結晶を鋳型としたテンプレート法により、空孔形態が精密に制御された逆オパール構造体を作製することができる。この構造体は、その製造工程においてコロイド結晶の粒子占有空間と粒子間空隙が反転する過程を利用した多孔質体であり、コロイド粒子の単分散性およびコロイド結晶の3次元的規則配列性を反映した均一孔径の空孔および規則配列多孔質構造をもつことに特徴がある。また、鋳型となるコロイド結晶の結晶構造およびコロイド粒子間の接合性に応じて、構造体の空隙率および空孔間の相互貫通を制御することができる。
【0006】
この構造体は、空孔の配列周期が可視光の半波長程度の場合に、空孔配列面から反射した光が干渉することで特定波長の光を選択的にブラッグ回折する。例えば、特許文献5及び6には、このような光学特性を備える構造体を、光学素子、発色材料等に応用することが開示されている。しかしながら、これら文献には、医療バイオ分野での使用について何ら述べられていない。
【0007】
特許文献7には、医療分野における逆オパール構造体の利用について開示されている。この文献に記載される逆オパール構造体は、脂肪族ポリエステルから製造される。このような脂肪族系ポリエステルは、その組成にもよるが概して分解性が非常に高い。従って、脂肪族ポリエステルの逆オパール構造体は、分離膜や吸着媒体として利用することが難しいという問題点を有していた。
さらに、特許文献7に記載の逆オパール構造体に用いられる脂肪族ポリエステルは化学的な安定性が低いため、その製造段階において、鋳型として使用されるエッチング溶液により、脂肪族ポリエステルが物理的に変形する可能性がある。これにより、得られる逆オパール構造体は、その構造上の規則性に劣るという問題を有していた。
【0008】
【特許文献1】特開平10−52481号公報
【特許文献2】特開平11−164687号公報
【特許文献3】特開2005−40756号公報
【特許文献4】特開平11−71476号公報
【特許文献5】特開2007−44598号公報
【特許文献6】特開2007−197305号公報
【特許文献7】国際公開2007−086306号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、従来技術の問題点に鑑みてなされたものである。
即ち、本発明の課題は、高い構造規則性を備えるとともに、優れた耐候性、耐熱性及び耐薬品性を有する逆オパール構造体、及びその使用方法を提供することである。
本発明の他の課題は、高い構造規則性を備えるとともに、優れた耐候性、耐熱性及び耐薬品性を有する逆オパール構造体を簡便に製造するための製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
請求項1に係る発明は、多糖類を含むことを特徴とする逆オパール構造体に関する。
請求項2に係る発明は、前記多糖類が、セルロース誘導体及び/又はセルロースであることを特徴とする請求項1に記載の逆オパール構造体に関する。
請求項3に係る発明は、前記多糖類が酢酸セルロースであることを特徴とする請求項1又は2に記載の逆オパール構造体に関する。
請求項4に係る発明は、前記多糖類が脱アセチル化キチン及び/又は任意の架橋分子により架橋された多糖類の架橋体であることを特徴とする請求項1に記載の逆オパール構造体に関する。
請求項5に係る発明は、可視及び近赤外領域の光を選択反射する三次元規則配列の空孔を有することを特徴とする請求項1乃至4いずれかに記載の逆オパール構造体に関する。
【0011】
請求項6に係る発明は、前記可視及び近赤外領域の光が400〜1500nmの波長を有することを特徴とする請求項5に記載の逆オパール構造体に関する。
請求項7に係る発明は、前記空孔の直径が10〜1000nmであることを特徴とする請求項5又は6に記載の逆オパール構造体に関する。
請求項8に係る発明は、医療用インプラント、分離膜、創傷被覆材、細胞培養用培地、吸着媒体のうちいずれかであることを特徴とする請求項1乃至請求項7いずれかに記載の逆オパール構造体に関する。
請求項9に係る発明は、以下の工程(1)乃至(3)を含む製造方法により製造される多糖類被覆コロイド結晶の組成物に関する。
(1)シリカ粒子又はポリスチレン粒子を含むコロイド結晶を得る工程
(2)前記コロイド結晶に、多糖類を含む溶液を含浸させる工程
(3)前記工程(2)で得られたコロイド結晶を固化することにより多糖類被覆コロイド結晶の組成物を得る工程
請求項10に係る発明は、前記シリカ粒子又はポリスチレン粒子の重量分率が0.01〜90重量%であることを特徴とする請求項9に記載の多糖類被覆コロイド結晶の組成物に関する。
【0012】
請求項11に係る発明は、以下の工程(1)乃至(4)を含むことを特徴とする逆オパール構造体の製造方法に関する。
(1)シリカ粒子又はポリスチレン粒子を含むコロイド結晶を得る工程
(2)前記コロイド結晶に、多糖類を含む溶液を含浸させる工程
(3)前記工程(2)で得られたコロイド結晶を固化することにより多糖類被覆コロイド結晶の組成物を得る工程
(4)前記組成物からシリカ粒子をエッチングにより取り除く、又はポリスチレン粒子を有機溶媒に溶出させて除去することにより逆オパール構造体を得る工程
請求項12に係る発明は、薬物を担持させた逆オパール構造体を、生体内で、生分解及び/又は酵素による分解により該薬物を放出させることを特徴とする多糖類を含む逆オパール構造体の使用方法に関する。
請求項13に係る発明は、以下の工程(a)及び(b)を含むことを特徴とする生体内における、多糖類を含む逆オパール構造体からの薬物放出量の測定方法に関する。
(a)薬物を担持させた逆オパール構造体を、生分解及び/又は酵素により分解することにより該薬物を放出する工程
(b)前記逆オパール構造体に可視及び近赤外領域の光を入射し、その反射光の波長及び強度の変化を測定する工程
請求項14に係る発明は、さらに以下の工程(イ)及び(ロ)を含むことを特徴とする請求項13に記載の生体内における逆オパール構造体からの薬物放出量の測定方法に関する。
(イ)逆オパール構造体に、可視光を吸収する擬似薬物を担持して、前記逆オパール構造体を生分解及び/又は酵素により分解することにより該薬物を放出させる工程
(ロ)前記逆オパール構造体に可視又は近赤外領域の光を入射し、その反射光の波長及び/又は強度の変化(A)を測定するとともに、可視吸収スペクトルの定量分析により前記擬似薬物の放出量(B)を測定した後、前記(A)及び(B)を相関付ける工程
請求項15に係る発明は、多糖類を含む逆オパール構造体の空孔内壁を酵素分解することにより、多糖類を含む逆オパール構造体の空孔径を拡大させる方法に関する。
【発明の効果】
【0013】
本発明の逆オパール構造体を構成する多糖類は、高い化学的安定性を有するから、製造過程のエッチング工程で使用される溶液により、化学的に劣化しない。従って、得られた逆オパール構造体は、構造上高い規則性を有している。本発明の逆オパール構造体は、この向上した規則性により、構造体に担持される薬剤の担持量、放出量、放出速度等を正確に測定、或いは調整することが可能となる。
本発明の逆オパール構造体を構成する多糖類は、セルラーゼ等の酵素により分解される生分解高分子でありながら、非酵素的環境下では耐生分解性が高い。また、本発明の逆オパール構造体は、親水性、耐候性、耐熱性、耐薬品性も高い。
【0014】
本発明の逆オパール構造体は、内部に3次元規則空孔を有する多糖類からなる。本発明の逆オパール構造体は、この3次元規則空孔により、特異な光反射特性を有する。
尚、多糖類は、植物細胞の細胞壁や節足動物の外骨格から抽出される天然繊維素材であり、化石燃料を原料とする合成高分子よりも地球上での年間産出量が圧倒的に多く、資源が無尽蔵、自然環境に低負荷、かつ生体環境への適応性に優れている。
本発明の逆オパール構造体を構成する多糖類は、それ自体生分解性を有するが、多糖類に化学修飾を施すことにより、その物性制御が可能となる。付与可能な物性としては、例えば、耐熱性、透明性、絶縁性、pH応答性等がある。
本発明の逆オパール構造体は、高い構造規則性を備えるから、逆オパール構造を正確に反映した反射特性を有する。
【0015】
本発明の医療用インプラント、分離膜、創傷被覆材、細胞培養用培地、吸着媒体は、本発明の逆オパール構造体により製造される。即ち、前記インプラント等は、酵素により分解される生分解高分子でありながら、非酵素的環境下では耐生分解性が高い。また、本発明の医療用インプラント、分離膜、創傷被覆材、細胞培養用培地、吸着媒体は、親水性、耐候性、耐熱性、耐薬品性も高い。
【0016】
本発明の逆オパール構造体は、直径が数十nmから数百nmの空孔が最密充填した多孔質構造を有することから表面積が増大する。これにより、本発明の逆オパール構造体は、分解速度が向上するとともに、吸着物質量が増大している。
本発明の逆オパール構造体は、その空隙率および空孔間の相互貫通が精密に制御可能である。また、前記空孔間の相互貫通により構造体内における物質の移動効率が向上されている。
【0017】
本発明の逆オパール構造体の製造方法は、上記効果を有する逆オパール構造体を簡便に製造することができる。
本発明の逆オパール構造体からの薬物放出量の測定方法は、患者の負担を抑えつつ、簡便に測定することができる。さらに、前記測定方法により得られた薬物放出量の値は正確なものであるため、医療分野において好適に用いられる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明の逆オパール構造体について説明する。
本発明の3次元規則空孔をもつ逆オパール構造体は、内部に三次元的に規則配列した空孔をもつ多糖類から構成されている。即ち、その構造は、鋳型となるコロイド結晶の三次元規則構造を反映し、内部に三次元的に規則配列した空孔を有し、この空孔は、好ましくは光の波長程度の直径である。
このような逆オパール構造は、特定波長の光を選択的に反射し、天然オパールで見られるような構造色を呈することで知られる。また、多孔質構造に由来する広い比表面積により、非多孔質高分子と比較して、外部刺激に対する機械的応答速度が3、4桁高い点に特徴がある。
【0019】
前記多糖類は特に限定されないが、例えば、セルロース、セルロース誘導体(セルロースアセテート(酢酸セルロース)、セルロースプロピオネート、セルロースブチレート、セルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートブチレート、セルロースアセテートフタレート、硝酸セルロース、硫酸セルロース、リン酸セルロース、硝酸酢酸セルロース、メチルセルロース,エチルセルロース,イソプロピルセルロース、ブチルセルロース、ベンジルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロース、カルボキシエチルセルロース、シアノエチルセルロース)、キチン、脱アセチル化キチン、キチン誘導体、キトサン、キトサン誘導体、カラジーナン(κ、λ、ι、μ、ν、θ、ξ、π)、アルギン酸、ヒアルロン酸、コンドロイチン硫酸などのグリコサミノグリカンが挙げられる。
或いは、前記多糖類は、任意の架橋分子により架橋された多糖類の架橋体であってもよい。前記架橋分子とは、例えば、グルタルアルデヒド、サクシンアルデヒド、マロンアルデヒド、グリオキサールが挙げられる。
【0020】
本発明で使用される多糖類は、単量体が単糖からなる重合体を全て含み、これを形成可能な単量体であれば、上記のものに特に限定されない。また、上記の多糖類を2種類以上含むブレンドポリマーも該当し、その組み合わせ、および組成比には特に限定はなく、これらを調整することで、様々な組成のものが得られる。
【0021】
次に、本発明の逆オパール構造体の形状について説明する。
本発明の逆オパール構造体は、鋳型となるコロイド結晶の三次元規則構造を反映し、内部に三次元的に規則配列した空孔をもつ多糖類により構成される。
前記空孔の直径は、好ましくは10〜1000nm、より望ましくは200〜600nmである。本発明の逆オパール構造体は、このような空孔を有するため、特定波長の光を選択的に反射する性質を示す。反射光の波長は、ブラッグースネル則に基づき、光の入射角度、空孔径、逆オパール構造体と空孔内に存在する物質の体積分率、及び屈折率に依存して変化する。前記特定波長の光としては、例えば、400〜1500nmの波長を有する可視光及び近赤外光が挙げられる。
【0022】
本発明の逆オパール構造体は、組織透過性が高く、その広い比表面積により非多孔質重合体と比較して、障害性が少ない可視および近赤外領域の光を選択反射できる。また、本発明の逆オパール構造体は、pH変化に対し高速で応答することが可能である。例えば、多糖類としてキチンが使用された場合は、これ自体、pH応答性を有し、或いは多糖類として酢酸セスロースが使用された場合は、酢酸セルロースにアミノ基、硫酸基等の化学修飾することによりpH応答が可能となる。
【0023】
次に、本発明の逆オパール構造体の製造方法について説明する。
本発明の逆オパール構造体の製造方法は、以下の工程(1)乃至(4)を含む。
(1)シリカ粒子又はポリスチレン粒子を含むコロイド結晶を得る工程
(2)前記コロイド結晶に、多糖類を含む溶液を含浸させる工程
(3)前記多糖類を含む溶液を固化することにより多糖類被覆コロイド結晶の組成物を得る工程
(4)前記組成物からコロイド粒子をエッチングにより取り除く、又はポリスチレン粒子を有機溶媒に溶出させて除去することにより逆オパール構造体を得る工程
【0024】
前記工程(1)において、シリカ粒子又はポリスチレン粒子から、コロイド結晶を得る。
本発明の逆オパール構造体は、好ましくはコロイド結晶を鋳型としたレプリカ法により作製される。
コロイド結晶を製造するために、好ましくはシリカ粒子及び/又はポリスチレン粒子を使用することができる。シリカ粒子は、例えば、ゾルゲル法により合成してもよい。本発明に使用されるシリカ粒子として、好ましくは200〜500nmのものが使用される。ポリスチレン粒子は、例えば、乳化重合法により得ることができる。本発明に使用されるポリスチレン粒子として、好ましくは200〜500nmのものが使用される。
或いは、均一粒径のコロイド粒子として、例えば3nm〜90nmまでの範囲の粒径のものは、比較的安価で市販されている。
【0025】
コロイド結晶の簡便な作製法として、重力沈降法が挙げられる。この方法は、基板上に滴下したコロイド懸濁液から、溶媒が徐々に蒸発する際、コロイド粒子間に横毛管力が作用し、自己集積する性質を利用したものである。この方法によると低結晶性のコロイド結晶が得られるが、不揮発性物質で溶媒表面を覆うなどすることにより、比較的大面積のコロイド結晶膜を作製することが可能である。また、この方法以外に、電気化学的自己集積法、流体力学的集積法を用いても、三次元規則性の高いコロイド結晶を作製することができる。
【0026】
コロイド結晶は、本発明の逆オパール構造体を製造するときに鋳型として使用される。前記コロイド結晶は、合成条件にもよるが、通常は立方最密充填構造を形成し、コロイド粒子の粒径により、格子定数を制御することができる。可視から近赤外領域の光を選択反射させるためには、コロイド粒子の粒径は、好ましくは200〜600nm、より望ましくは300nm〜500nmとされるが、特にこの範囲に限定されるものではない。本発明に係るコロイド結晶の外観を図1の(1)に表す。
【0027】
工程(2)において、工程(1)で作製したコロイド結晶に、多糖類を含む溶液(以下、多糖類溶液という場合がある)を含浸させる。前記含浸は、例えば、前記多糖類を含む溶液をコロイド結晶に滴下することにより行われてもよい。
具体的には、工程(3)において、滴下された溶液がコロイド結晶の粒子間隙に充填されて、間隙の全てまたは大部分が溶液によって占有される処理が行われる。
【0028】
前記多糖類は、前述したが、例えば、セルロース、セルロース誘導体(セルロースアセテート(酢酸セルロース)、セルロースプロピオネート、セルロースブチレート、セルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートブチレート、セルロースアセテートフタレート、硝酸セルロース、硫酸セルロース、リン酸セルロース、硝酸酢酸セルロース、メチルセルロース,エチルセルロース,イソプロピルセルロース、ブチルセルロース、ベンジルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロース、カルボキシエチルセルロース、シアノエチルセルロース)、キチン、脱アセチル化キチン、キチン誘導体、キトサン、キトサン誘導体、カラジーナン(κ、λ、ι、μ、ν、θ、ξ、π)、アルギン酸、ヒアルロン酸、コンドロイチン硫酸などのグリコサミノグリカンが挙げられる。
或いは、前記多糖類は、任意の架橋分子により架橋された多糖類の架橋体であってもよい。前記架橋分子とは、例えば、グルタルアルデヒド、サクシンアルデヒド、マロンアルデヒド、グリオキサールが挙げられる。
【0029】
前記多糖類溶液とは、本発明に係る多糖類を適切な溶媒で溶解して得られる溶液である。
多糖類溶液中の多糖類の濃度は、多糖類および溶媒の種類とこれらの組み合わせによるが、0.01重量%〜50重量%程度が望ましい。0.01重量%未満の場合、コロイド結晶の粒子間の隙間に充填する多糖類の物質量が少なくなり、多孔質体の骨格部位が十分な強度をもたなくなるので好ましくない。或いは、50重量%を超えると、溶液の粘度が高くなるので、コロイド結晶の粒子間の細かな隙間まで多糖類溶液が十分に到達しないので好ましくない。
【0030】
前記多糖類がキチンの場合、前記溶媒は、その脱アセチル化度により決定されてもよく、好ましくは、塩化カルシウム2水塩−飽和メタノール溶液、塩化リチウム−ジメチルアセタミド系溶液、酸性溶液(酢酸、蟻酸、リン酸、塩酸、硫酸等)が挙げられる。
特に、酸性溶液(酢酸、蟻酸、リン酸、塩酸、硫酸等)への溶解性を考慮すると、多糖類として、キチンの脱アセチル化により得られる脱アセチル化キチンを使用することが望ましい。この理由は、アセチル基の一部がアミノ基に置換されることにより、酸性溶液(酢酸、蟻酸、リン酸、塩酸、硫酸等)への溶解性が向上するからである。尚、本発明において好適に使用される脱アセチル化キチンの脱アセチル化度は20〜80%である。
【0031】
前記多糖類がセルロース系の場合は、シュバイツァー試薬やエーテル類(ジオキサン、テトラヒドロフラン等)、ケトン類(アセトン、メチルエチルケトン等)、エステル類(酢酸メチル、酢酸エチル等)、ハロゲン化物(クロロホルム、塩化メチレン等)、窒化物(アセトニトリル、ジメチルホルムアミド等)、ジメチルスルホキシド、メチルグリコール等の溶媒が好適に使用される。前記溶媒のうち、アセトン、酢酸エチル、ジメチルホルムアミドが特に好適である。
特に溶媒(有機溶媒)への可溶性を考慮すると、多糖類として酢酸セルロースが使用されることが望ましい。この理由は、酢酸セルロースは、セルロースの酢酸エステル化により得られ、水酸基の一部がアセチル基に置換(酢化)されることで分子間の相互作用が弱まることにより、有機溶媒への可溶性が向上するからである。
【0032】
前記溶媒と多糖類の好適な組合せは、アセトン、酢酸エチル、ジメチルホルムアミドのうちいずれか一種以上の溶媒と酢酸セルロースの組合せである。この場合、酢酸セルロースは、アセトン中1〜30重量%、酢酸エチル中1〜30重量%、ジメチルホルムアミド中1〜30重量%含まれることが望ましい。
前記溶媒と多糖類の他の好適な組み合わせは、塩酸溶液とキチンの組合せである。この場合、キチンは、塩酸溶液中1〜10重量%含まれることが望ましい。
【0033】
コロイド結晶が面心立方構造をもつ場合、体積分率の74%をコロイド結晶が占めるため、残りの26%の空隙を多糖類溶液が占める。また、コロイド結晶の構造が上記とは異なる場合、および、コロイド懸濁液と多糖類溶液の混合溶液からコロイド結晶を作製する場合は、上記の体積分率には限定されない。
【0034】
次に、工程(3)において、前記多糖類を含む溶液を固化することにより多糖類被覆コロイド結晶の組成物を得る。
前記多糖類を含む溶液を固化する方法は、特に限定されないが、例えば、減圧乾燥、加熱乾燥、凍結乾燥、伝導乾燥、赤外線乾燥、マイクロ波乾燥、超音波乾燥の方法が採用される。
【0035】
本発明にかかる多糖類被覆コロイド結晶の組成物における、シリカ粒子又はポリスチレン粒子の重量分率は好ましくは0.01〜90重量%、より望ましくは0.1〜50重量%である。この理由は、シリカ粒子又はポリスチレン粒子の重量が、組成物中0.01〜90重量%の範囲内である場合、コロイド結晶の3次元周期性に優れるからである。
工程(3)により得られた脂肪族ポリエステル被覆コロイド結晶の組成物を図1の(2)に表す。
【0036】
次に、工程(4)において、多糖類被覆コロイド結晶の中の、内部に鋳型として使用されたシリカ粒子をエッチングにより取り除くことにより、逆オパール構造体を得ることができる。前記エッチングは、好ましくはフッ酸等(例えば、フッ酸化水素酸水溶液)を用いて行われる。
或いは、工程(4)において、多糖類被覆コロイド結晶の中のポリスチレン粒子をトルエン等の有機溶媒に溶出させることにより除去することにより、逆オパール構造体を得ることができる。工程(4)により得られた逆オパール構造体を図1の(3)に表す。
【0037】
得られた逆オパール構造体の形状は、好ましくは薄膜状であるが、適当な粒径のシリカ粒子又はポリスチレン粒子、適当な形状の容器を用いてコロイド結晶を作製し、これを鋳型として用いることにより、針状、ウェハー状、ペレット状などの様々な形状の逆オパール構造体を得ることができる。
【0038】
工程(4)で得られた本発明の逆オパール構造体の空孔径は、鋳型となるコロイド結晶のコロイド粒子の粒径に依存し、たとえば200nm〜500nm程度の空孔径に制御できる。或いは、逆オパール構造体の空孔径は、逆オパール構造体の作成後に調整することも可能である。例えば、緩衝溶液、あるいは酵素等を用いて空孔内壁を加水分解させる、あるいは、任意のpHに調整された水溶液に浸漬することで、空孔径を拡大させることができる。また、構造体を適当な濃度に希釈した単量体溶液に浸漬させ、熱重合することで、空孔径を縮小させることができる。
【0039】
また、コロイド結晶は通常、面心立方最密充填構造をとるため、工程(4)で得られる逆オパール構造体は、その周期性(格子定数)を反映した規則多孔質構造を有する。コロイド結晶においては体積分率の74%が粒子、残りの26%が粒子間の空隙であることから、逆オパール構造体においては、体積分率の74%が空孔、残りの26%が略多糖類により形成された骨格部となる。
【0040】
尚、工程(4)で形成される逆オパール構造体の空孔は相互に貫通したものとなる。この理由は、前記工程(2)において、コロイド結晶を多糖類溶液に浸す操作を行うが、コロイド粒子どうしが相互に接触した部位には多糖類溶液は浸透しないためである。
以上のように、本発明の逆オパール構造体の製造方法によると、コロイド結晶を用いたテンプレート法により、空孔径、空孔配列、空隙率、空孔の相互貫通が制御された多孔質構造を形成することが可能である。
或いは、他の実施形態として、粒子径の異なる2種類以上のコロイド粒子からなるコロイド結晶を鋳型とすることで、上記の空孔形態を制御することが可能である。
【0041】
次に本発明の逆オパール構造体の使用方法について説明する。
本発明の逆オパール構造体は医療用材料として使用可能である。たとえば、医療用のインプラントとして使用することができる。この場合、逆オパール構造体の空孔内に薬物を担持させた後、生体組織内に埋入して、多糖類を酵素等で分解することにより該薬物を放出させることができる。
前記薬物としては、特に限定されないが、溶媒への溶解性が低い薬物、生体中で容易に分解される薬物を好適に担持することができる。詳細には、ACNU及びBCNU等のアルキル化剤、白金製剤、抗生物質、ホルモン剤が挙げられる。或いは、前記薬剤として、DNA薬剤等も使用可能である。また、親水性の程度の調節が可能であるため、親水性が高い薬物の担持にも適している。
尚、薬物を担持させるためには、薬物を含む溶液へ逆オパール構造体を浸漬することによる方法が挙げられるが、これに限定されない。
【0042】
空孔内に薬物を担持した逆オパール構造体を生体組織中へ埋入する方法としては、例えば、腹腔鏡下手術で使用されるトロカールを用いる方法が挙げられる。
【0043】
本発明の逆オパール構造体から薬物を放出させる方法としては、前述のように使用された多糖類を分解する酵素を使用する方法がある。この酵素は、本発明の逆オパール構造体を構成する多糖類の種類に応じて適宜選択することができるが、例えば、逆オパール構造体を構成する多糖類が、キチンの場合は、キチナーゼ等の酵素が好適に利用される。また、前記多糖類がセルロース或いはセルロース誘導体である場合は、前記酵素としてセルラーゼ等が好適に利用される。
前記酵素による分解性の評価は、比濁法、粘度法、放射能測定法、生成還元糖定量法、HPLC等の既知の方法で行われる。
【0044】
本発明に係る薬物放出の他の方法としては、イオン交換水、酸性または塩基性にpH調整された緩衝溶液を用いる方法である。前記溶液等による薬物放出の評価は、吸収分光法、蛍光分光法、蛍光顕微鏡観察、HPLC等の既知の方法で行われる。これら溶液により、加水分解反応に基づく生分解性が評価されるとともに、分解反応速度を調節することができる。従って、前記溶液により、薬物の放出速度を調節することができる。
【0045】
前記酵素や溶液を、別途投与する場合は、前記酵素を溶解させた緩衝溶液または前記溶液の液滴を逆オパール構造体の表面に滴下しその空孔内部に浸透させる方法が採られる。
【0046】
本発明の逆オパール構造体を医療用インプラントとして使用して、これに担持した薬剤を生体内で放出することを考慮すると、逆オパール構造体が完全に分解されるまでの時間は、数週間から1年程度であることが望ましい。
【0047】
次に、本発明の逆オパール構造体から放出した薬剤の放出量を検知する方法について説明する。
前述のとおり、本発明の逆オパール構造体は、緩衝溶液あるいは酵素等の作用により徐々に分解される。また、生分解等への機械的応答により、空孔径及び空孔の三次元規則性が変化する。この構造上の変化を計測することにより薬物放出量を検知することができる。この計測には、分光器、光源、検知用プローブからなる反射測定装置を使用すればよい。前記反射測定装置は、X線CT、MRIと異なり小型であるため、迅速、簡便に実時間計測をベッドサイドで行うことができ、患者への負担が少ない。
【0048】
空孔径の変化を検知するためには、生体組織への透過性が高い600‐1100nm程度の波長をもつ可視光および近赤外光を入射光源として用いることが望ましい。特に、分光学的窓と呼ばれる700‐1000nmの波長をもつ近赤外光は組織透過性に優れ、例えば、830nmの近赤外光は1300nmの浸透深さをもつ。本発明の逆オパール構造体は、その空孔径を容易に制御可能であるから、所望の領域の光を選択することができる。
【0049】
反射スペクトルは、通常の分光光度計を用いて測定することができるが、生分解過程を実時間でその場で測定するためには、光ファイバー式小型分光光度計、光学顕微鏡、CCDカメラから構成される反射測定システムを利用することが望ましい。この装置では、入射光源にハロゲン光源、キセノン光源等の白色光源、あるいは固体レーザ、レーザダイオード等の単色光源を用いる。
【0050】
さらに、薬物の放出量の測定方法について、より具体的に説明する。
薬物放出は、前述のごとく緩衝溶液或いは酵素等の作用を利用して実施できる。例えば、生分解により薬物が放出される場合、逆オパール構造体が崩壊する過程で、吸着あるいは吸収された薬物は徐放される。或いは、pH応答に伴う構造体の体積膨潤・収縮によっても薬物を放出することができる。
放出量を測定するためには、可視光を吸収するようなメチレンブルー等の擬似薬物を用い、可視吸収スペクトルの吸光度から擬似薬物の放出量を測定するとともに、生分解に伴う反射光の波長および強度の変化を測定する。両者の測定結果を相関づけることにより、反射光の波長及び強度の変化から放出量がわかる。
【0051】
本発明の逆オパール構造体の他の用途としては、生体物質やウイルスの分離膜(例えば、人工腎臓による血液透析のための分離膜)、人工臓器用分離膜が挙げられる。或いは、本発明の逆オパール構造体は、創傷被覆材(または、人工皮膚)等、細胞培養地等として使用されてもよい。その他の用途としては、例えば、超純水、飲料水及び工業用水などの水の精製、工業排水及び都市排水の処理、化学工業、薬品工業、食品工業の各工程での物質分離と精製が挙げられる。
【0052】
本発明の逆オパール構造体の使用方法について更に説明する。
本発明の逆オパール構造体を生体物質やウイルスの分離用隔膜として使用可能である。このように使用された場合、数百ナノメートルサイズの多孔質構造を利用した、たんぱく質、核酸などの生体物質の分離用の隔膜とすることができ、分離対象物質の分離状況を反射特性の変化から計測できる。この分離用隔膜は、薄膜を複数枚重ねた多層膜、或いは、粉砕により微細な粉体とした後、カラム等の容器に充填し、続いて、分離対象物質を含む流体(気体または液体)を連続的に供給すると、主としてふるい効果により空孔径よりも小さい粒径の分子、粒子を透過させる(ろ過)。その際、空孔内壁に分離対象物質が吸着することで空孔の屈折率、および、体積分率が変化し、その結果、逆オパール構造体の反射波長および反射強度が変調を受けると考えられる。
【0053】
或いは、本発明の逆オパール構造体を細胞培養用の培地として使用した場合、本発明の逆オパール構造体上において細胞を成長させたり、増殖させたりすることが可能である。このとき、逆オパール構造体の反射特性の変化から、細胞の成長、増殖状況が計測できる。具体的な使用方法としては、滅菌処理した逆オパール構造体に血清、抗生物質、グルコース等を浸透させた後、その表面に細胞を導入し、5%炭酸ガス雰囲気下、37℃にて培養を行う。その際、培養容器上部に反射測定用プローブを取り付け、逆オパール構造体の反射特性の経時変化を計測する。成長、増殖した培養細胞により、逆オパール構造体の表面が次第に被覆されることから、反射光強度が連続的に低下すると考えられる。
本発明の逆オパール構造体を構成する多糖類がキチンである場合、創傷被覆材(または、人工皮膚)として好適に使用される。この場合、逆オパール構造体が有する多孔質構造によりガス、水分の交換が可能で、かつ、生体への吸収状況を反射特性の変化から計測できる。
或いは、本発明の逆オパール構造体を吸着媒体として使用してもよい。前記吸着媒体としては、具体的にはタンパク質、糖、核酸等の生体分子、ウイルスの吸着媒体として使用されてもよい。この吸着媒体は、薄膜を複数枚重ねた多層膜、或いは、粉砕により微細な粉体とした後、カラム等の容器に充填、保持し、続いて、吸着質を含む流体(気体または液体)を連続的に供給し吸着させる操作(固定相吸着)により使用される。または、吸着媒体の粉体を充填した容器に、吸着質を含む流体を連続的に流通させることで吸着させる操作(流動層吸着)によっても使用される。
【0054】
本発明の逆オパール構造体は、非酵素的環境下では耐生分解性が高く、また、耐候性、耐熱性、耐薬品性も高いという多糖類の特徴と、高い規則性を有する空孔径および空孔配列、並びに広い比表面積を備えるという構造上の特徴の両方により、膜分離性能を長期間にわたって安定的に維持することができるから、分離膜として好適に使用することができる。また、前記2つの特徴の組合せにより、吸着性能を長期間にわたって安定的に維持することが可能となるため、吸着媒体として好適に使用できる。
【実施例】
【0055】
以下、本発明の実施例を記載することにより、本発明の効果をより明確なものとする。
尚、本発明は以下の実施例によって何ら限定されるものではない。
【0056】
(逆オパール構造体1の合成)
平均粒径が200nmのシリカ粒子の懸濁液をパスツールピペットでガラス基板に4〜5滴、滴下した後、常温、常湿の暗室にて2日間静置することで、シリカコロイド結晶薄膜を得た。
酢酸セルロース(ダイセル化学工業株式会社製)を酢酸エチルに室温下にて溶解させ6wt%溶液を得た。上記により作製されたシリカコロイド結晶薄膜に、この溶液をパスツールピペットで40μm滴下した後、1日間冷蔵保存することで、内部にシリカコロイド結晶を含む複合薄膜を得た。この複合薄膜を減圧デシケーターで1日乾燥した後、2.3wt%フッ酸化水素酸水溶液(和光純薬工業株式会社製)に2日間浸漬することで、シリカ粒子を除去した。得られた薄膜を、吸引ろ過をしながらイオン交換水で充分に洗浄し、減圧デシケーター中で乾燥保存することにより、逆オパール構造体1を得た。
【0057】
(電子顕微鏡観察)
前述の操作により得られた構造体の多孔質構造を確認するために走査型電子顕微鏡観察を行った(測定装置:株式会社日立ハイテクノロジーズ社製 超高分解能電界放出形走査電子顕微鏡 S-4800)。観察用試料は、PtPdをスパッタリングしたものを用いた。
図2は逆オパール構造体1の電子顕微鏡写真であり、孔径が均一な空孔が周期的に配列していることが確認できる。試料観察面において、空孔の六方格子が確認できることから、空孔配列層が3次元的に積層し面心立方構造が形成されていると考えられる。このことから、シリカコロイド結晶およびポリスチレンコロイド結晶を鋳型とすることで、逆オパール構造が作製されたといえる。
【0058】
(反射スペクトル測定)
前述の操作により得られた構造体の反射特性について調べた。測定には構造体1のフィルム状試料を用い、これらを光学顕微鏡(株式会社ニコン社製 工業用顕微鏡 ECLIPSE LV100D)のステージ上に設置し、試料面の垂直方向から白色光を照射することで、200〜1100nmの波長領域での反射スペクトルを測定した(測定装置:Ocean Optics, Inc.製 反射測定用高分解能ファイバマルチチャネル分光システム)。図3が示すとおり、構造体1はそれぞれ486nmに反射ピークを示した。これは、図2において観察された空孔配列が試料中で層をなしており、各層から反射した光が干渉しあうことで生じたと考えられる。
【0059】
(逆オパール構造体2の合成)
平均粒径が200nmのシリカ粒子の懸濁液をパスツールピペットでガラス基板に4〜5滴、滴下した後、常温、常湿の暗室にて2日間静置することで、シリカコロイド結晶薄膜を得た。
酢酸セルロース(ダイセル化学工業株式会社製)をジメチルホルムアミドに室温下にて溶解させ20wt%溶液を得た。上記により作製されたシリカコロイド結晶薄膜に、この溶液をパスツールピペットで40μm滴下した後、1日間冷蔵保存することで、内部にシリカコロイド結晶を含む複合薄膜を得た。この複合薄膜を減圧デシケーターで1日乾燥した後、2.3wt%フッ酸化水素酸水溶液(和光純薬工業株式会社製)に2日間浸漬することで、シリカ粒子を除去した。得られた薄膜を、吸引ろ過をしながらイオン交換水で充分に洗浄し、減圧デシケーター中で乾燥保存することにより、逆オパール構造体2を得た。
【0060】
(電子顕微鏡観察)
構造体2の多孔質構造を確認するために走査型電子顕微鏡観察を行った(測定装置:株式会社日立ハイテクノロジーズ社製 超高分解能電界放出形走査電子顕微鏡 S-4800)。観察用試料は、PtPdをスパッタリングしたものを用いた。
図4(a)はシリカ粒子のコロイド結晶、(b)は多糖類被覆コロイド結晶の組成物(内部にシリカコロイド結晶を含む複合薄膜)、(c)はシリカ粒子をエッチングにより取り除いて得られた逆オパール構造体2の顕微鏡写真を示す。
【0061】
(反射スペクトル測定)
前述の操作により得られた構造体の反射特性について調べた。即ち、構造体2を用い、これらを光学顕微鏡(株式会社ニコン社製 工業用顕微鏡 ECLIPSE LV100D)のステージ上に設置し、試料面の垂直方向から白色光を照射することで、200〜1100nmの波長領域での反射スペクトルを測定した(測定装置:Ocean Optics, Inc.製 反射測定用高分解能ファイバマルチチャネル分光システム)。図5中、(a)はシリカ粒子のコロイド結晶、(b)多糖類被覆コロイド結晶の組成物、(c)は逆オパール構造体2の反射スペクトルを示す。図5が示すとおり、構造体2は、450〜550nmの可視光領域に規則多孔質構造に由来する反射を示すことが分かる。
【0062】
(逆オパール構造体3及び4の合成)
平均粒径が200nmのポリスチレン粒子の懸濁液(polysciences社製)ホールピペットでガラス基板に40μm滴下した後、インキュベーターにて30℃、RH100%雰囲気下で2日間静置することで、ポリスチレンコロイド結晶薄膜を得た。
脱アセチル化率45〜55%のキチン(甲陽ケミカル株式会社製)を0.1M塩酸水溶液に混合し室温下にて1日間、攪拌することで完全に溶解させ4wt%溶液を得た。上記により作製されたポリスチレンコロイド結晶薄膜に、この溶液をパスツールピペットで滴下し浸漬させた後、5日間冷蔵保存することで、内部にポリスチレンコロイド結晶を含む複合薄膜を得た。この複合薄膜をトルエン(和光純薬工業株式会社製)に24時間浸漬することで、ポリスチレン粒子を除去した。得られた薄膜を、エタノールで洗浄した後、減圧デシケーター中で乾燥保存することにより、逆オパール構造体3を得た。
また、複合薄膜を25%グルタルアルデヒド水溶液とエタノールの混合溶液(1/9 v/v)に1時間、浸漬した後、トルエンに24時間浸漬することで、ポリスチレン粒子を除去した。得られた架橋薄膜を、エタノールで洗浄した後、減圧デシケーター中で乾燥保存することにより、逆オパール構造体4を得た。
【0063】
(電子顕微鏡観察)
構造体3及び4、および製造途中で得られるポリスチレン粒子のコロイド結晶と多糖類被覆コロイド結晶の組成物の多孔質構造を確認するために走査型電子顕微鏡観察を行った(測定装置:株式会社日立ハイテクノロジーズ社製 超高分解能電界放出形走査電子顕微鏡 S-4800)。観察用試料は、PtPdをスパッタリングしたものを用いた。
図6は、粒径200nmのポリスチレンコロイドを使用して製造した逆オパール構造体3及び4に関し、(a)はポリスチレン粒子のコロイド結晶の顕微鏡(SEM)写真(a−1:25,000倍率)及び光学顕微鏡写真(a−2)、(b)は多糖類被覆コロイド結晶の組成物の顕微鏡(SEM)写真(b−1:25,000倍率)及び光学顕微鏡写真(b−2)、(c)は逆オパール構造体3の顕微鏡(SEM)写真(c−1:22,000倍率)(c−2:40,000倍率)、(d)は架橋剤を用いて製造した逆オパール構造体4の顕微鏡(SEM)写真(d−1:20,000倍率)(d−2:40,000倍率)を示す。
【0064】
(逆オパール構造体5及び6の合成)
ポリスチレン粒子の平均粒径が400nmであることを除いては、前述の逆オパール構造体3及び4の製造方法と同じ方法により、逆オパール構造体5と6を得た。即ち、平均粒径が400nmのポリスチレン粒子の懸濁液(polysciences社製)ホールピペットでガラス基板に40μm滴下した後、インキュベーターにて30℃、RH100%雰囲気下で2日間静置することで、ポリスチレンコロイド結晶薄膜を得た。
脱アセチル化率45〜55%のキチン(甲陽ケミカル株式会社製)を0.1M塩酸水溶液に混合し室温下にて1日間、攪拌することで完全に溶解させ4wt%溶液を得た。上記により作製されたポリスチレンコロイド結晶薄膜に、この溶液をパスツールピペットで滴下し浸漬させた後、5日間冷蔵保存することで、内部にポリスチレンコロイド結晶を含む複合薄膜を得た。この複合薄膜をトルエン(和光純薬工業株式会社製)に24時間浸漬することで、ポリスチレン粒子を除去した。得られた薄膜を、エタノールで洗浄した後、減圧デシケーター中で乾燥保存することにより、逆オパール構造体5を得た。
また、複合薄膜を25%グルタルアルデヒド水溶液とエタノールの混合溶液(1/9 v/v)に1時間、浸漬した後、トルエンに24時間浸漬することで、ポリスチレン粒子を除去した。得られた架橋薄膜を、エタノールで洗浄した後、減圧デシケーター中で乾燥保存することにより、逆オパール構造体6を得た。
【0065】
(電子顕微鏡観察)
構造体5及び6、および製造途中で得られるポリスチレン粒子のコロイド結晶と多糖類被覆コロイド結晶の組成物の多孔質構造を確認するために走査型電子顕微鏡観察を行った(測定装置:株式会社日立ハイテクノロジーズ社製 超高分解能電界放出形走査電子顕微鏡 S-4800)。観察用試料は、PtPdをスパッタリングしたものを用いた。
図7は、粒径400nmのポリスチレンコロイドを使用して製造した逆オパール構造体5に関し、(a)はポリスチレン粒子のコロイド結晶の顕微鏡(SEM)写真(a−1:50,000倍率)及び光学顕微鏡写真(a−2)、(b)は多糖類被覆コロイド結晶の組成物の顕微鏡(SEM)写真(b−1:20,000倍率)及び光学顕微鏡写真(b−2)、(c)は逆オパール構造体5の顕微鏡(SEM)写真(c−1:10,000倍率)(c−2:20,000倍率)及び光学顕微鏡写真(c−3)、(d)は架橋剤を用いて製造した逆オパール構造体6の顕微鏡(SEM)写真(d−1:10,000倍率)(d−2:20,000倍率)及び光学顕微鏡写真(d−3)を示す。
顕微鏡(SEM)写真から、孔径が均一な空孔が周期的に配列していることが確認できる。試料観察面において、空孔の六方格子が確認できることから、空孔配列層が3次元的に積層し面心立方構造が形成されていると考えられる。このことから、ポリスチレンコロイド結晶を鋳型とすることで、逆オパール構造が作製されたといえる。
また、(c−3)および(d−3)構造色が観察されたことから、逆オパール構造体において高規則性の多孔質構造が形成されていると考えられる。
図8において、逆オパール構造体5の他の電子顕微鏡写真を示す。
【0066】
(反射スペクトル測定)
前述の操作により得られた構造体の反射特性について調べた。即ち、製造途中で得られるポリスチレン粒子のコロイド結晶、多糖類被覆コロイド結晶の組成物、構造体5及び構造体6を用い、これを光学顕微鏡(株式会社ニコン社製 工業用顕微鏡 ECLIPSE LV100D)のステージ上に設置し、試料面の垂直方向から白色光を照射することで、200〜1100nmの波長領域での反射スペクトルを測定した(測定装置:Ocean Optics, Inc.製 反射測定用高分解能ファイバマルチチャネル分光システム)。
図9において、(a)はコロイド結晶、(b)は多糖類被覆コロイド結晶の組成物、(c)は構造体5、(d)は構造体6、(e)は、構造体6(水中)の反射スペクトルを示す。図9が示すとおり、構造体5は、大気雰囲気下の乾燥状態において、600〜700nmの可視・近赤外光領域に反射を示すことが分かる。これは、図8において観察された空孔配列が試料中で層をなしており、各層から反射した光が干渉しあうことで生じたと考えられる。同様に、構造体6は700〜900nmに規則多孔質構造に由来する反射を示すことが分かる。一方、水中浸漬下においては、構造体5はキチンの溶出により構造が崩壊し反射スペクトルを測定できなかった。図9中(e)が示す如く、構造体6についてはほぼ同じ波長域に反射ピークを観測することができた。このことから、グルタルアルデヒドによるキチンの架橋により構造体の耐水性が向上したと考えられる。
【0067】
(本発明の逆オパール構造体の構造規則性の評価)
本発明の逆オパール構造体の構造上の規則性を評価するために、比較例として下記製造方法により脂肪族ポリエステルの逆オパール構造体を製造した。得られた比較例の逆オパール構造体と、前述の本発明の逆オパール構造体1及び5の顕微鏡写真を比較することにより、構造上の規則性を評価した。
【0068】
(比較例の製造方法)
平均粒径が400nmのシリカ粒子の懸濁液をパスツールピペットでガラス基板に4〜5滴、滴下した後、室温、RH100%雰囲気下で2週間静置することで、シリカコロイド結晶薄膜を得た。
DL−ポリ乳酸(多木化学工業株式会社製、平均分子量11,000)をアセトンに室温下にて溶解させ20wt%溶液を得た。上記により作製されたシリカコロイド結晶薄膜に、この溶液をパスツールピペットで数滴滴下した後、1日間室温で静置することで、内部にシリカコロイド結晶を含む複合薄膜を得た。この複合薄膜を室温で1日乾燥した後、1.15wt%フッ酸化水素酸水溶液(和光純薬工業株式会社製)に冷蔵庫内で2日間浸漬することで、シリカ粒子を除去した。得られた薄膜をイオン交換水で充分に洗浄し、減圧デシケーター中で乾燥保存することにより比較例の逆オパール構造体を製造した。
【0069】
(電子顕微鏡観察)
本発明の逆オパール構造体1の顕微鏡写真を図10、本発明の逆オパール構造体5の顕微鏡写真を図11、脂肪族ポリエステル(比較例)の顕微鏡写真を図12に示す。
図10〜12が示すとおり、脂肪族ポリエステルからなる逆オパール構造体と比較して、本発明の逆オパール構造体は構造上の規則性が向上されている。
さらに、図10〜12の2次元フーリエ変換像を図13に示す。図中(A)は逆オパール構造体1、(B)は、逆オパール構造体5、(C)は、脂肪族ポリエステルからなる逆オパール構造体の2次元フーリエ変換像である。図13(A)及び(B)において明瞭な散乱像が見られ、高規則性の存在が裏づけられる。一方、図13(C)では散乱像が見られず、規則性が存在しないことが示唆される。
【図面の簡単な説明】
【0070】
【図1】本発明の逆オパール構造体の製造方法に関し、コロイド結晶から逆オパール構造体が製造される過程を表す。(1)はコロイド結晶、(2)は多糖類被覆コロイド結晶の組成物、(3)は逆オパール構造体を表す。
【図2】本発明にかかる構造体の多孔質構造の一例を示す電子顕微鏡写真である。(逆オパール構造体1)
【図3】本発明にかかる構造体の反射スペクトルの一例を示すグラフである。(逆オパール構造体1)
【図4】(a)シリカ粒子のコロイド結晶、(b)は多糖類被覆コロイド結晶の組成物(内部にシリカコロイド結晶を含む複合薄膜)、(c)はシリカ粒子をエッチングにより取り除いて得られた逆オパール構造体2の顕微鏡写真を示す。
【図5】(a)はシリカ粒子のコロイド結晶、(b)多糖類被覆コロイド結晶の組成物、(c)は逆オパール構造体2の反射スペクトルを示す。
【図6】(a)はポリスチレン粒子のコロイド結晶の顕微鏡(SEM)写真(a−1:25,000倍率)及び光学顕微鏡写真(a−2)、(b)は多糖類被覆コロイド結晶の組成物の顕微鏡(SEM)写真(b−1:25,000倍率)及び光学顕微鏡写真(b−2)、(c)は逆オパール構造体3の顕微鏡(SEM)写真(c−1:22,000倍率)(c−2:40,000倍率)、(d)は架橋剤を用いて製造した逆オパール構造体4の顕微鏡(SEM)写真(d−1:20,000倍率)(d−2:40,000倍率)を示す。
【図7】(a)はポリスチレン粒子のコロイド結晶の顕微鏡(SEM)写真(a−1:50,000倍率)及び光学顕微鏡写真(a−2)、(b)は多糖類被覆コロイド結晶の組成物の顕微鏡(SEM)写真(b−1:20,000倍率)及び光学顕微鏡写真(b−2)、(c)は逆オパール構造体5の顕微鏡(SEM)写真(c−1:10,000倍率)(c−2:20,000倍率)及び光学顕微鏡写真(c−3)、(d)は架橋剤を用いて製造した逆オパール構造体6の顕微鏡(SEM)写真(d−1:10,000倍率)(d−2:20,000倍率)及び光学顕微鏡写真(d−3)を示す。
【図8】本発明にかかる構造体の多孔質構造の一例を示す電子顕微鏡写真である。(逆オパール構造体5)
【図9】(a)はコロイド結晶、(b)は多糖類被覆コロイド結晶の組成物、(c)は構造体5、(d)は構造体6、(e)は構造体6(水中)の反射スペクトルを示す。
【図10】本発明の逆オパール構造体1の顕微鏡写真を示す。
【図11】本発明の逆オパール構造体5の顕微鏡写真を示す。
【図12】脂肪族ポリエステルからなる逆オパール構造体(比較例)の顕微鏡写真を示す。
【図13】本発明の逆オパール構造体1(A)、逆オパール構造体5(B)、脂肪族ポリエステルからなる逆オパール構造体(比較例)(C)の顕微鏡写真の2次元フーリエ変換像を示す。
【技術分野】
【0001】
本発明は、主に医療バイオ材料分野で使用される逆オパール構造体、その製造方法及び使用方法、並びに該逆オパール構造体からなる医療用材料に関する。詳細には、本発明は、単分散コロイド粒子の自己集積体であるコロイド結晶を鋳型としたテンプレート法により作製される、多糖類の逆オパール構造体およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、医療バイオ材料分野で使用される医療用材料としては、例えば、薬剤を担持させるインプラントに関する発明が多く創出されてきた。このようなインプラントは、薬剤を担持させた後、生体内に埋入することにより、特定の生体内部位で薬剤を放出することができるので、その薬剤の副作用を低減することができるという利点を有する。
【0003】
医療用材料を構成する組成物としては多糖類が使用され、その構造として多孔質構造体が採用されてきた。
例えば、特許文献1は、創傷皮膚の被覆保護作用をもち、紡糸により製造されるキチン不織布について開示している。
特許文献2は、水などの極性溶剤中で種々のペプチドや脂質等を有機合成する際の性能に特徴を有する固定化酵素を担持した再生粒状多孔質キトサンを開示している。
特許文献3では、血液製剤やバイオ医薬品を製造する際のウイルス除去用分離膜フィルターとして、銅アンモニア法再生セルロースを用いて紡糸により製造されるセルロース多孔質膜が開示されている。
特許文献4は、乾式相分離法により作製され、酢酸セルロースで形成された透明多孔質膜について開示している。
【0004】
前記特許文献1乃至4に記載されている発明のいずれにおいても、空孔径、空孔配列、空隙率、空孔間の相互貫通といった空孔形態を制御することは容易ではない。
【0005】
一方、単分散コロイド粒子の自己集積体であるコロイド結晶を鋳型としたテンプレート法により、空孔形態が精密に制御された逆オパール構造体を作製することができる。この構造体は、その製造工程においてコロイド結晶の粒子占有空間と粒子間空隙が反転する過程を利用した多孔質体であり、コロイド粒子の単分散性およびコロイド結晶の3次元的規則配列性を反映した均一孔径の空孔および規則配列多孔質構造をもつことに特徴がある。また、鋳型となるコロイド結晶の結晶構造およびコロイド粒子間の接合性に応じて、構造体の空隙率および空孔間の相互貫通を制御することができる。
【0006】
この構造体は、空孔の配列周期が可視光の半波長程度の場合に、空孔配列面から反射した光が干渉することで特定波長の光を選択的にブラッグ回折する。例えば、特許文献5及び6には、このような光学特性を備える構造体を、光学素子、発色材料等に応用することが開示されている。しかしながら、これら文献には、医療バイオ分野での使用について何ら述べられていない。
【0007】
特許文献7には、医療分野における逆オパール構造体の利用について開示されている。この文献に記載される逆オパール構造体は、脂肪族ポリエステルから製造される。このような脂肪族系ポリエステルは、その組成にもよるが概して分解性が非常に高い。従って、脂肪族ポリエステルの逆オパール構造体は、分離膜や吸着媒体として利用することが難しいという問題点を有していた。
さらに、特許文献7に記載の逆オパール構造体に用いられる脂肪族ポリエステルは化学的な安定性が低いため、その製造段階において、鋳型として使用されるエッチング溶液により、脂肪族ポリエステルが物理的に変形する可能性がある。これにより、得られる逆オパール構造体は、その構造上の規則性に劣るという問題を有していた。
【0008】
【特許文献1】特開平10−52481号公報
【特許文献2】特開平11−164687号公報
【特許文献3】特開2005−40756号公報
【特許文献4】特開平11−71476号公報
【特許文献5】特開2007−44598号公報
【特許文献6】特開2007−197305号公報
【特許文献7】国際公開2007−086306号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、従来技術の問題点に鑑みてなされたものである。
即ち、本発明の課題は、高い構造規則性を備えるとともに、優れた耐候性、耐熱性及び耐薬品性を有する逆オパール構造体、及びその使用方法を提供することである。
本発明の他の課題は、高い構造規則性を備えるとともに、優れた耐候性、耐熱性及び耐薬品性を有する逆オパール構造体を簡便に製造するための製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
請求項1に係る発明は、多糖類を含むことを特徴とする逆オパール構造体に関する。
請求項2に係る発明は、前記多糖類が、セルロース誘導体及び/又はセルロースであることを特徴とする請求項1に記載の逆オパール構造体に関する。
請求項3に係る発明は、前記多糖類が酢酸セルロースであることを特徴とする請求項1又は2に記載の逆オパール構造体に関する。
請求項4に係る発明は、前記多糖類が脱アセチル化キチン及び/又は任意の架橋分子により架橋された多糖類の架橋体であることを特徴とする請求項1に記載の逆オパール構造体に関する。
請求項5に係る発明は、可視及び近赤外領域の光を選択反射する三次元規則配列の空孔を有することを特徴とする請求項1乃至4いずれかに記載の逆オパール構造体に関する。
【0011】
請求項6に係る発明は、前記可視及び近赤外領域の光が400〜1500nmの波長を有することを特徴とする請求項5に記載の逆オパール構造体に関する。
請求項7に係る発明は、前記空孔の直径が10〜1000nmであることを特徴とする請求項5又は6に記載の逆オパール構造体に関する。
請求項8に係る発明は、医療用インプラント、分離膜、創傷被覆材、細胞培養用培地、吸着媒体のうちいずれかであることを特徴とする請求項1乃至請求項7いずれかに記載の逆オパール構造体に関する。
請求項9に係る発明は、以下の工程(1)乃至(3)を含む製造方法により製造される多糖類被覆コロイド結晶の組成物に関する。
(1)シリカ粒子又はポリスチレン粒子を含むコロイド結晶を得る工程
(2)前記コロイド結晶に、多糖類を含む溶液を含浸させる工程
(3)前記工程(2)で得られたコロイド結晶を固化することにより多糖類被覆コロイド結晶の組成物を得る工程
請求項10に係る発明は、前記シリカ粒子又はポリスチレン粒子の重量分率が0.01〜90重量%であることを特徴とする請求項9に記載の多糖類被覆コロイド結晶の組成物に関する。
【0012】
請求項11に係る発明は、以下の工程(1)乃至(4)を含むことを特徴とする逆オパール構造体の製造方法に関する。
(1)シリカ粒子又はポリスチレン粒子を含むコロイド結晶を得る工程
(2)前記コロイド結晶に、多糖類を含む溶液を含浸させる工程
(3)前記工程(2)で得られたコロイド結晶を固化することにより多糖類被覆コロイド結晶の組成物を得る工程
(4)前記組成物からシリカ粒子をエッチングにより取り除く、又はポリスチレン粒子を有機溶媒に溶出させて除去することにより逆オパール構造体を得る工程
請求項12に係る発明は、薬物を担持させた逆オパール構造体を、生体内で、生分解及び/又は酵素による分解により該薬物を放出させることを特徴とする多糖類を含む逆オパール構造体の使用方法に関する。
請求項13に係る発明は、以下の工程(a)及び(b)を含むことを特徴とする生体内における、多糖類を含む逆オパール構造体からの薬物放出量の測定方法に関する。
(a)薬物を担持させた逆オパール構造体を、生分解及び/又は酵素により分解することにより該薬物を放出する工程
(b)前記逆オパール構造体に可視及び近赤外領域の光を入射し、その反射光の波長及び強度の変化を測定する工程
請求項14に係る発明は、さらに以下の工程(イ)及び(ロ)を含むことを特徴とする請求項13に記載の生体内における逆オパール構造体からの薬物放出量の測定方法に関する。
(イ)逆オパール構造体に、可視光を吸収する擬似薬物を担持して、前記逆オパール構造体を生分解及び/又は酵素により分解することにより該薬物を放出させる工程
(ロ)前記逆オパール構造体に可視又は近赤外領域の光を入射し、その反射光の波長及び/又は強度の変化(A)を測定するとともに、可視吸収スペクトルの定量分析により前記擬似薬物の放出量(B)を測定した後、前記(A)及び(B)を相関付ける工程
請求項15に係る発明は、多糖類を含む逆オパール構造体の空孔内壁を酵素分解することにより、多糖類を含む逆オパール構造体の空孔径を拡大させる方法に関する。
【発明の効果】
【0013】
本発明の逆オパール構造体を構成する多糖類は、高い化学的安定性を有するから、製造過程のエッチング工程で使用される溶液により、化学的に劣化しない。従って、得られた逆オパール構造体は、構造上高い規則性を有している。本発明の逆オパール構造体は、この向上した規則性により、構造体に担持される薬剤の担持量、放出量、放出速度等を正確に測定、或いは調整することが可能となる。
本発明の逆オパール構造体を構成する多糖類は、セルラーゼ等の酵素により分解される生分解高分子でありながら、非酵素的環境下では耐生分解性が高い。また、本発明の逆オパール構造体は、親水性、耐候性、耐熱性、耐薬品性も高い。
【0014】
本発明の逆オパール構造体は、内部に3次元規則空孔を有する多糖類からなる。本発明の逆オパール構造体は、この3次元規則空孔により、特異な光反射特性を有する。
尚、多糖類は、植物細胞の細胞壁や節足動物の外骨格から抽出される天然繊維素材であり、化石燃料を原料とする合成高分子よりも地球上での年間産出量が圧倒的に多く、資源が無尽蔵、自然環境に低負荷、かつ生体環境への適応性に優れている。
本発明の逆オパール構造体を構成する多糖類は、それ自体生分解性を有するが、多糖類に化学修飾を施すことにより、その物性制御が可能となる。付与可能な物性としては、例えば、耐熱性、透明性、絶縁性、pH応答性等がある。
本発明の逆オパール構造体は、高い構造規則性を備えるから、逆オパール構造を正確に反映した反射特性を有する。
【0015】
本発明の医療用インプラント、分離膜、創傷被覆材、細胞培養用培地、吸着媒体は、本発明の逆オパール構造体により製造される。即ち、前記インプラント等は、酵素により分解される生分解高分子でありながら、非酵素的環境下では耐生分解性が高い。また、本発明の医療用インプラント、分離膜、創傷被覆材、細胞培養用培地、吸着媒体は、親水性、耐候性、耐熱性、耐薬品性も高い。
【0016】
本発明の逆オパール構造体は、直径が数十nmから数百nmの空孔が最密充填した多孔質構造を有することから表面積が増大する。これにより、本発明の逆オパール構造体は、分解速度が向上するとともに、吸着物質量が増大している。
本発明の逆オパール構造体は、その空隙率および空孔間の相互貫通が精密に制御可能である。また、前記空孔間の相互貫通により構造体内における物質の移動効率が向上されている。
【0017】
本発明の逆オパール構造体の製造方法は、上記効果を有する逆オパール構造体を簡便に製造することができる。
本発明の逆オパール構造体からの薬物放出量の測定方法は、患者の負担を抑えつつ、簡便に測定することができる。さらに、前記測定方法により得られた薬物放出量の値は正確なものであるため、医療分野において好適に用いられる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明の逆オパール構造体について説明する。
本発明の3次元規則空孔をもつ逆オパール構造体は、内部に三次元的に規則配列した空孔をもつ多糖類から構成されている。即ち、その構造は、鋳型となるコロイド結晶の三次元規則構造を反映し、内部に三次元的に規則配列した空孔を有し、この空孔は、好ましくは光の波長程度の直径である。
このような逆オパール構造は、特定波長の光を選択的に反射し、天然オパールで見られるような構造色を呈することで知られる。また、多孔質構造に由来する広い比表面積により、非多孔質高分子と比較して、外部刺激に対する機械的応答速度が3、4桁高い点に特徴がある。
【0019】
前記多糖類は特に限定されないが、例えば、セルロース、セルロース誘導体(セルロースアセテート(酢酸セルロース)、セルロースプロピオネート、セルロースブチレート、セルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートブチレート、セルロースアセテートフタレート、硝酸セルロース、硫酸セルロース、リン酸セルロース、硝酸酢酸セルロース、メチルセルロース,エチルセルロース,イソプロピルセルロース、ブチルセルロース、ベンジルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロース、カルボキシエチルセルロース、シアノエチルセルロース)、キチン、脱アセチル化キチン、キチン誘導体、キトサン、キトサン誘導体、カラジーナン(κ、λ、ι、μ、ν、θ、ξ、π)、アルギン酸、ヒアルロン酸、コンドロイチン硫酸などのグリコサミノグリカンが挙げられる。
或いは、前記多糖類は、任意の架橋分子により架橋された多糖類の架橋体であってもよい。前記架橋分子とは、例えば、グルタルアルデヒド、サクシンアルデヒド、マロンアルデヒド、グリオキサールが挙げられる。
【0020】
本発明で使用される多糖類は、単量体が単糖からなる重合体を全て含み、これを形成可能な単量体であれば、上記のものに特に限定されない。また、上記の多糖類を2種類以上含むブレンドポリマーも該当し、その組み合わせ、および組成比には特に限定はなく、これらを調整することで、様々な組成のものが得られる。
【0021】
次に、本発明の逆オパール構造体の形状について説明する。
本発明の逆オパール構造体は、鋳型となるコロイド結晶の三次元規則構造を反映し、内部に三次元的に規則配列した空孔をもつ多糖類により構成される。
前記空孔の直径は、好ましくは10〜1000nm、より望ましくは200〜600nmである。本発明の逆オパール構造体は、このような空孔を有するため、特定波長の光を選択的に反射する性質を示す。反射光の波長は、ブラッグースネル則に基づき、光の入射角度、空孔径、逆オパール構造体と空孔内に存在する物質の体積分率、及び屈折率に依存して変化する。前記特定波長の光としては、例えば、400〜1500nmの波長を有する可視光及び近赤外光が挙げられる。
【0022】
本発明の逆オパール構造体は、組織透過性が高く、その広い比表面積により非多孔質重合体と比較して、障害性が少ない可視および近赤外領域の光を選択反射できる。また、本発明の逆オパール構造体は、pH変化に対し高速で応答することが可能である。例えば、多糖類としてキチンが使用された場合は、これ自体、pH応答性を有し、或いは多糖類として酢酸セスロースが使用された場合は、酢酸セルロースにアミノ基、硫酸基等の化学修飾することによりpH応答が可能となる。
【0023】
次に、本発明の逆オパール構造体の製造方法について説明する。
本発明の逆オパール構造体の製造方法は、以下の工程(1)乃至(4)を含む。
(1)シリカ粒子又はポリスチレン粒子を含むコロイド結晶を得る工程
(2)前記コロイド結晶に、多糖類を含む溶液を含浸させる工程
(3)前記多糖類を含む溶液を固化することにより多糖類被覆コロイド結晶の組成物を得る工程
(4)前記組成物からコロイド粒子をエッチングにより取り除く、又はポリスチレン粒子を有機溶媒に溶出させて除去することにより逆オパール構造体を得る工程
【0024】
前記工程(1)において、シリカ粒子又はポリスチレン粒子から、コロイド結晶を得る。
本発明の逆オパール構造体は、好ましくはコロイド結晶を鋳型としたレプリカ法により作製される。
コロイド結晶を製造するために、好ましくはシリカ粒子及び/又はポリスチレン粒子を使用することができる。シリカ粒子は、例えば、ゾルゲル法により合成してもよい。本発明に使用されるシリカ粒子として、好ましくは200〜500nmのものが使用される。ポリスチレン粒子は、例えば、乳化重合法により得ることができる。本発明に使用されるポリスチレン粒子として、好ましくは200〜500nmのものが使用される。
或いは、均一粒径のコロイド粒子として、例えば3nm〜90nmまでの範囲の粒径のものは、比較的安価で市販されている。
【0025】
コロイド結晶の簡便な作製法として、重力沈降法が挙げられる。この方法は、基板上に滴下したコロイド懸濁液から、溶媒が徐々に蒸発する際、コロイド粒子間に横毛管力が作用し、自己集積する性質を利用したものである。この方法によると低結晶性のコロイド結晶が得られるが、不揮発性物質で溶媒表面を覆うなどすることにより、比較的大面積のコロイド結晶膜を作製することが可能である。また、この方法以外に、電気化学的自己集積法、流体力学的集積法を用いても、三次元規則性の高いコロイド結晶を作製することができる。
【0026】
コロイド結晶は、本発明の逆オパール構造体を製造するときに鋳型として使用される。前記コロイド結晶は、合成条件にもよるが、通常は立方最密充填構造を形成し、コロイド粒子の粒径により、格子定数を制御することができる。可視から近赤外領域の光を選択反射させるためには、コロイド粒子の粒径は、好ましくは200〜600nm、より望ましくは300nm〜500nmとされるが、特にこの範囲に限定されるものではない。本発明に係るコロイド結晶の外観を図1の(1)に表す。
【0027】
工程(2)において、工程(1)で作製したコロイド結晶に、多糖類を含む溶液(以下、多糖類溶液という場合がある)を含浸させる。前記含浸は、例えば、前記多糖類を含む溶液をコロイド結晶に滴下することにより行われてもよい。
具体的には、工程(3)において、滴下された溶液がコロイド結晶の粒子間隙に充填されて、間隙の全てまたは大部分が溶液によって占有される処理が行われる。
【0028】
前記多糖類は、前述したが、例えば、セルロース、セルロース誘導体(セルロースアセテート(酢酸セルロース)、セルロースプロピオネート、セルロースブチレート、セルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートブチレート、セルロースアセテートフタレート、硝酸セルロース、硫酸セルロース、リン酸セルロース、硝酸酢酸セルロース、メチルセルロース,エチルセルロース,イソプロピルセルロース、ブチルセルロース、ベンジルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロース、カルボキシエチルセルロース、シアノエチルセルロース)、キチン、脱アセチル化キチン、キチン誘導体、キトサン、キトサン誘導体、カラジーナン(κ、λ、ι、μ、ν、θ、ξ、π)、アルギン酸、ヒアルロン酸、コンドロイチン硫酸などのグリコサミノグリカンが挙げられる。
或いは、前記多糖類は、任意の架橋分子により架橋された多糖類の架橋体であってもよい。前記架橋分子とは、例えば、グルタルアルデヒド、サクシンアルデヒド、マロンアルデヒド、グリオキサールが挙げられる。
【0029】
前記多糖類溶液とは、本発明に係る多糖類を適切な溶媒で溶解して得られる溶液である。
多糖類溶液中の多糖類の濃度は、多糖類および溶媒の種類とこれらの組み合わせによるが、0.01重量%〜50重量%程度が望ましい。0.01重量%未満の場合、コロイド結晶の粒子間の隙間に充填する多糖類の物質量が少なくなり、多孔質体の骨格部位が十分な強度をもたなくなるので好ましくない。或いは、50重量%を超えると、溶液の粘度が高くなるので、コロイド結晶の粒子間の細かな隙間まで多糖類溶液が十分に到達しないので好ましくない。
【0030】
前記多糖類がキチンの場合、前記溶媒は、その脱アセチル化度により決定されてもよく、好ましくは、塩化カルシウム2水塩−飽和メタノール溶液、塩化リチウム−ジメチルアセタミド系溶液、酸性溶液(酢酸、蟻酸、リン酸、塩酸、硫酸等)が挙げられる。
特に、酸性溶液(酢酸、蟻酸、リン酸、塩酸、硫酸等)への溶解性を考慮すると、多糖類として、キチンの脱アセチル化により得られる脱アセチル化キチンを使用することが望ましい。この理由は、アセチル基の一部がアミノ基に置換されることにより、酸性溶液(酢酸、蟻酸、リン酸、塩酸、硫酸等)への溶解性が向上するからである。尚、本発明において好適に使用される脱アセチル化キチンの脱アセチル化度は20〜80%である。
【0031】
前記多糖類がセルロース系の場合は、シュバイツァー試薬やエーテル類(ジオキサン、テトラヒドロフラン等)、ケトン類(アセトン、メチルエチルケトン等)、エステル類(酢酸メチル、酢酸エチル等)、ハロゲン化物(クロロホルム、塩化メチレン等)、窒化物(アセトニトリル、ジメチルホルムアミド等)、ジメチルスルホキシド、メチルグリコール等の溶媒が好適に使用される。前記溶媒のうち、アセトン、酢酸エチル、ジメチルホルムアミドが特に好適である。
特に溶媒(有機溶媒)への可溶性を考慮すると、多糖類として酢酸セルロースが使用されることが望ましい。この理由は、酢酸セルロースは、セルロースの酢酸エステル化により得られ、水酸基の一部がアセチル基に置換(酢化)されることで分子間の相互作用が弱まることにより、有機溶媒への可溶性が向上するからである。
【0032】
前記溶媒と多糖類の好適な組合せは、アセトン、酢酸エチル、ジメチルホルムアミドのうちいずれか一種以上の溶媒と酢酸セルロースの組合せである。この場合、酢酸セルロースは、アセトン中1〜30重量%、酢酸エチル中1〜30重量%、ジメチルホルムアミド中1〜30重量%含まれることが望ましい。
前記溶媒と多糖類の他の好適な組み合わせは、塩酸溶液とキチンの組合せである。この場合、キチンは、塩酸溶液中1〜10重量%含まれることが望ましい。
【0033】
コロイド結晶が面心立方構造をもつ場合、体積分率の74%をコロイド結晶が占めるため、残りの26%の空隙を多糖類溶液が占める。また、コロイド結晶の構造が上記とは異なる場合、および、コロイド懸濁液と多糖類溶液の混合溶液からコロイド結晶を作製する場合は、上記の体積分率には限定されない。
【0034】
次に、工程(3)において、前記多糖類を含む溶液を固化することにより多糖類被覆コロイド結晶の組成物を得る。
前記多糖類を含む溶液を固化する方法は、特に限定されないが、例えば、減圧乾燥、加熱乾燥、凍結乾燥、伝導乾燥、赤外線乾燥、マイクロ波乾燥、超音波乾燥の方法が採用される。
【0035】
本発明にかかる多糖類被覆コロイド結晶の組成物における、シリカ粒子又はポリスチレン粒子の重量分率は好ましくは0.01〜90重量%、より望ましくは0.1〜50重量%である。この理由は、シリカ粒子又はポリスチレン粒子の重量が、組成物中0.01〜90重量%の範囲内である場合、コロイド結晶の3次元周期性に優れるからである。
工程(3)により得られた脂肪族ポリエステル被覆コロイド結晶の組成物を図1の(2)に表す。
【0036】
次に、工程(4)において、多糖類被覆コロイド結晶の中の、内部に鋳型として使用されたシリカ粒子をエッチングにより取り除くことにより、逆オパール構造体を得ることができる。前記エッチングは、好ましくはフッ酸等(例えば、フッ酸化水素酸水溶液)を用いて行われる。
或いは、工程(4)において、多糖類被覆コロイド結晶の中のポリスチレン粒子をトルエン等の有機溶媒に溶出させることにより除去することにより、逆オパール構造体を得ることができる。工程(4)により得られた逆オパール構造体を図1の(3)に表す。
【0037】
得られた逆オパール構造体の形状は、好ましくは薄膜状であるが、適当な粒径のシリカ粒子又はポリスチレン粒子、適当な形状の容器を用いてコロイド結晶を作製し、これを鋳型として用いることにより、針状、ウェハー状、ペレット状などの様々な形状の逆オパール構造体を得ることができる。
【0038】
工程(4)で得られた本発明の逆オパール構造体の空孔径は、鋳型となるコロイド結晶のコロイド粒子の粒径に依存し、たとえば200nm〜500nm程度の空孔径に制御できる。或いは、逆オパール構造体の空孔径は、逆オパール構造体の作成後に調整することも可能である。例えば、緩衝溶液、あるいは酵素等を用いて空孔内壁を加水分解させる、あるいは、任意のpHに調整された水溶液に浸漬することで、空孔径を拡大させることができる。また、構造体を適当な濃度に希釈した単量体溶液に浸漬させ、熱重合することで、空孔径を縮小させることができる。
【0039】
また、コロイド結晶は通常、面心立方最密充填構造をとるため、工程(4)で得られる逆オパール構造体は、その周期性(格子定数)を反映した規則多孔質構造を有する。コロイド結晶においては体積分率の74%が粒子、残りの26%が粒子間の空隙であることから、逆オパール構造体においては、体積分率の74%が空孔、残りの26%が略多糖類により形成された骨格部となる。
【0040】
尚、工程(4)で形成される逆オパール構造体の空孔は相互に貫通したものとなる。この理由は、前記工程(2)において、コロイド結晶を多糖類溶液に浸す操作を行うが、コロイド粒子どうしが相互に接触した部位には多糖類溶液は浸透しないためである。
以上のように、本発明の逆オパール構造体の製造方法によると、コロイド結晶を用いたテンプレート法により、空孔径、空孔配列、空隙率、空孔の相互貫通が制御された多孔質構造を形成することが可能である。
或いは、他の実施形態として、粒子径の異なる2種類以上のコロイド粒子からなるコロイド結晶を鋳型とすることで、上記の空孔形態を制御することが可能である。
【0041】
次に本発明の逆オパール構造体の使用方法について説明する。
本発明の逆オパール構造体は医療用材料として使用可能である。たとえば、医療用のインプラントとして使用することができる。この場合、逆オパール構造体の空孔内に薬物を担持させた後、生体組織内に埋入して、多糖類を酵素等で分解することにより該薬物を放出させることができる。
前記薬物としては、特に限定されないが、溶媒への溶解性が低い薬物、生体中で容易に分解される薬物を好適に担持することができる。詳細には、ACNU及びBCNU等のアルキル化剤、白金製剤、抗生物質、ホルモン剤が挙げられる。或いは、前記薬剤として、DNA薬剤等も使用可能である。また、親水性の程度の調節が可能であるため、親水性が高い薬物の担持にも適している。
尚、薬物を担持させるためには、薬物を含む溶液へ逆オパール構造体を浸漬することによる方法が挙げられるが、これに限定されない。
【0042】
空孔内に薬物を担持した逆オパール構造体を生体組織中へ埋入する方法としては、例えば、腹腔鏡下手術で使用されるトロカールを用いる方法が挙げられる。
【0043】
本発明の逆オパール構造体から薬物を放出させる方法としては、前述のように使用された多糖類を分解する酵素を使用する方法がある。この酵素は、本発明の逆オパール構造体を構成する多糖類の種類に応じて適宜選択することができるが、例えば、逆オパール構造体を構成する多糖類が、キチンの場合は、キチナーゼ等の酵素が好適に利用される。また、前記多糖類がセルロース或いはセルロース誘導体である場合は、前記酵素としてセルラーゼ等が好適に利用される。
前記酵素による分解性の評価は、比濁法、粘度法、放射能測定法、生成還元糖定量法、HPLC等の既知の方法で行われる。
【0044】
本発明に係る薬物放出の他の方法としては、イオン交換水、酸性または塩基性にpH調整された緩衝溶液を用いる方法である。前記溶液等による薬物放出の評価は、吸収分光法、蛍光分光法、蛍光顕微鏡観察、HPLC等の既知の方法で行われる。これら溶液により、加水分解反応に基づく生分解性が評価されるとともに、分解反応速度を調節することができる。従って、前記溶液により、薬物の放出速度を調節することができる。
【0045】
前記酵素や溶液を、別途投与する場合は、前記酵素を溶解させた緩衝溶液または前記溶液の液滴を逆オパール構造体の表面に滴下しその空孔内部に浸透させる方法が採られる。
【0046】
本発明の逆オパール構造体を医療用インプラントとして使用して、これに担持した薬剤を生体内で放出することを考慮すると、逆オパール構造体が完全に分解されるまでの時間は、数週間から1年程度であることが望ましい。
【0047】
次に、本発明の逆オパール構造体から放出した薬剤の放出量を検知する方法について説明する。
前述のとおり、本発明の逆オパール構造体は、緩衝溶液あるいは酵素等の作用により徐々に分解される。また、生分解等への機械的応答により、空孔径及び空孔の三次元規則性が変化する。この構造上の変化を計測することにより薬物放出量を検知することができる。この計測には、分光器、光源、検知用プローブからなる反射測定装置を使用すればよい。前記反射測定装置は、X線CT、MRIと異なり小型であるため、迅速、簡便に実時間計測をベッドサイドで行うことができ、患者への負担が少ない。
【0048】
空孔径の変化を検知するためには、生体組織への透過性が高い600‐1100nm程度の波長をもつ可視光および近赤外光を入射光源として用いることが望ましい。特に、分光学的窓と呼ばれる700‐1000nmの波長をもつ近赤外光は組織透過性に優れ、例えば、830nmの近赤外光は1300nmの浸透深さをもつ。本発明の逆オパール構造体は、その空孔径を容易に制御可能であるから、所望の領域の光を選択することができる。
【0049】
反射スペクトルは、通常の分光光度計を用いて測定することができるが、生分解過程を実時間でその場で測定するためには、光ファイバー式小型分光光度計、光学顕微鏡、CCDカメラから構成される反射測定システムを利用することが望ましい。この装置では、入射光源にハロゲン光源、キセノン光源等の白色光源、あるいは固体レーザ、レーザダイオード等の単色光源を用いる。
【0050】
さらに、薬物の放出量の測定方法について、より具体的に説明する。
薬物放出は、前述のごとく緩衝溶液或いは酵素等の作用を利用して実施できる。例えば、生分解により薬物が放出される場合、逆オパール構造体が崩壊する過程で、吸着あるいは吸収された薬物は徐放される。或いは、pH応答に伴う構造体の体積膨潤・収縮によっても薬物を放出することができる。
放出量を測定するためには、可視光を吸収するようなメチレンブルー等の擬似薬物を用い、可視吸収スペクトルの吸光度から擬似薬物の放出量を測定するとともに、生分解に伴う反射光の波長および強度の変化を測定する。両者の測定結果を相関づけることにより、反射光の波長及び強度の変化から放出量がわかる。
【0051】
本発明の逆オパール構造体の他の用途としては、生体物質やウイルスの分離膜(例えば、人工腎臓による血液透析のための分離膜)、人工臓器用分離膜が挙げられる。或いは、本発明の逆オパール構造体は、創傷被覆材(または、人工皮膚)等、細胞培養地等として使用されてもよい。その他の用途としては、例えば、超純水、飲料水及び工業用水などの水の精製、工業排水及び都市排水の処理、化学工業、薬品工業、食品工業の各工程での物質分離と精製が挙げられる。
【0052】
本発明の逆オパール構造体の使用方法について更に説明する。
本発明の逆オパール構造体を生体物質やウイルスの分離用隔膜として使用可能である。このように使用された場合、数百ナノメートルサイズの多孔質構造を利用した、たんぱく質、核酸などの生体物質の分離用の隔膜とすることができ、分離対象物質の分離状況を反射特性の変化から計測できる。この分離用隔膜は、薄膜を複数枚重ねた多層膜、或いは、粉砕により微細な粉体とした後、カラム等の容器に充填し、続いて、分離対象物質を含む流体(気体または液体)を連続的に供給すると、主としてふるい効果により空孔径よりも小さい粒径の分子、粒子を透過させる(ろ過)。その際、空孔内壁に分離対象物質が吸着することで空孔の屈折率、および、体積分率が変化し、その結果、逆オパール構造体の反射波長および反射強度が変調を受けると考えられる。
【0053】
或いは、本発明の逆オパール構造体を細胞培養用の培地として使用した場合、本発明の逆オパール構造体上において細胞を成長させたり、増殖させたりすることが可能である。このとき、逆オパール構造体の反射特性の変化から、細胞の成長、増殖状況が計測できる。具体的な使用方法としては、滅菌処理した逆オパール構造体に血清、抗生物質、グルコース等を浸透させた後、その表面に細胞を導入し、5%炭酸ガス雰囲気下、37℃にて培養を行う。その際、培養容器上部に反射測定用プローブを取り付け、逆オパール構造体の反射特性の経時変化を計測する。成長、増殖した培養細胞により、逆オパール構造体の表面が次第に被覆されることから、反射光強度が連続的に低下すると考えられる。
本発明の逆オパール構造体を構成する多糖類がキチンである場合、創傷被覆材(または、人工皮膚)として好適に使用される。この場合、逆オパール構造体が有する多孔質構造によりガス、水分の交換が可能で、かつ、生体への吸収状況を反射特性の変化から計測できる。
或いは、本発明の逆オパール構造体を吸着媒体として使用してもよい。前記吸着媒体としては、具体的にはタンパク質、糖、核酸等の生体分子、ウイルスの吸着媒体として使用されてもよい。この吸着媒体は、薄膜を複数枚重ねた多層膜、或いは、粉砕により微細な粉体とした後、カラム等の容器に充填、保持し、続いて、吸着質を含む流体(気体または液体)を連続的に供給し吸着させる操作(固定相吸着)により使用される。または、吸着媒体の粉体を充填した容器に、吸着質を含む流体を連続的に流通させることで吸着させる操作(流動層吸着)によっても使用される。
【0054】
本発明の逆オパール構造体は、非酵素的環境下では耐生分解性が高く、また、耐候性、耐熱性、耐薬品性も高いという多糖類の特徴と、高い規則性を有する空孔径および空孔配列、並びに広い比表面積を備えるという構造上の特徴の両方により、膜分離性能を長期間にわたって安定的に維持することができるから、分離膜として好適に使用することができる。また、前記2つの特徴の組合せにより、吸着性能を長期間にわたって安定的に維持することが可能となるため、吸着媒体として好適に使用できる。
【実施例】
【0055】
以下、本発明の実施例を記載することにより、本発明の効果をより明確なものとする。
尚、本発明は以下の実施例によって何ら限定されるものではない。
【0056】
(逆オパール構造体1の合成)
平均粒径が200nmのシリカ粒子の懸濁液をパスツールピペットでガラス基板に4〜5滴、滴下した後、常温、常湿の暗室にて2日間静置することで、シリカコロイド結晶薄膜を得た。
酢酸セルロース(ダイセル化学工業株式会社製)を酢酸エチルに室温下にて溶解させ6wt%溶液を得た。上記により作製されたシリカコロイド結晶薄膜に、この溶液をパスツールピペットで40μm滴下した後、1日間冷蔵保存することで、内部にシリカコロイド結晶を含む複合薄膜を得た。この複合薄膜を減圧デシケーターで1日乾燥した後、2.3wt%フッ酸化水素酸水溶液(和光純薬工業株式会社製)に2日間浸漬することで、シリカ粒子を除去した。得られた薄膜を、吸引ろ過をしながらイオン交換水で充分に洗浄し、減圧デシケーター中で乾燥保存することにより、逆オパール構造体1を得た。
【0057】
(電子顕微鏡観察)
前述の操作により得られた構造体の多孔質構造を確認するために走査型電子顕微鏡観察を行った(測定装置:株式会社日立ハイテクノロジーズ社製 超高分解能電界放出形走査電子顕微鏡 S-4800)。観察用試料は、PtPdをスパッタリングしたものを用いた。
図2は逆オパール構造体1の電子顕微鏡写真であり、孔径が均一な空孔が周期的に配列していることが確認できる。試料観察面において、空孔の六方格子が確認できることから、空孔配列層が3次元的に積層し面心立方構造が形成されていると考えられる。このことから、シリカコロイド結晶およびポリスチレンコロイド結晶を鋳型とすることで、逆オパール構造が作製されたといえる。
【0058】
(反射スペクトル測定)
前述の操作により得られた構造体の反射特性について調べた。測定には構造体1のフィルム状試料を用い、これらを光学顕微鏡(株式会社ニコン社製 工業用顕微鏡 ECLIPSE LV100D)のステージ上に設置し、試料面の垂直方向から白色光を照射することで、200〜1100nmの波長領域での反射スペクトルを測定した(測定装置:Ocean Optics, Inc.製 反射測定用高分解能ファイバマルチチャネル分光システム)。図3が示すとおり、構造体1はそれぞれ486nmに反射ピークを示した。これは、図2において観察された空孔配列が試料中で層をなしており、各層から反射した光が干渉しあうことで生じたと考えられる。
【0059】
(逆オパール構造体2の合成)
平均粒径が200nmのシリカ粒子の懸濁液をパスツールピペットでガラス基板に4〜5滴、滴下した後、常温、常湿の暗室にて2日間静置することで、シリカコロイド結晶薄膜を得た。
酢酸セルロース(ダイセル化学工業株式会社製)をジメチルホルムアミドに室温下にて溶解させ20wt%溶液を得た。上記により作製されたシリカコロイド結晶薄膜に、この溶液をパスツールピペットで40μm滴下した後、1日間冷蔵保存することで、内部にシリカコロイド結晶を含む複合薄膜を得た。この複合薄膜を減圧デシケーターで1日乾燥した後、2.3wt%フッ酸化水素酸水溶液(和光純薬工業株式会社製)に2日間浸漬することで、シリカ粒子を除去した。得られた薄膜を、吸引ろ過をしながらイオン交換水で充分に洗浄し、減圧デシケーター中で乾燥保存することにより、逆オパール構造体2を得た。
【0060】
(電子顕微鏡観察)
構造体2の多孔質構造を確認するために走査型電子顕微鏡観察を行った(測定装置:株式会社日立ハイテクノロジーズ社製 超高分解能電界放出形走査電子顕微鏡 S-4800)。観察用試料は、PtPdをスパッタリングしたものを用いた。
図4(a)はシリカ粒子のコロイド結晶、(b)は多糖類被覆コロイド結晶の組成物(内部にシリカコロイド結晶を含む複合薄膜)、(c)はシリカ粒子をエッチングにより取り除いて得られた逆オパール構造体2の顕微鏡写真を示す。
【0061】
(反射スペクトル測定)
前述の操作により得られた構造体の反射特性について調べた。即ち、構造体2を用い、これらを光学顕微鏡(株式会社ニコン社製 工業用顕微鏡 ECLIPSE LV100D)のステージ上に設置し、試料面の垂直方向から白色光を照射することで、200〜1100nmの波長領域での反射スペクトルを測定した(測定装置:Ocean Optics, Inc.製 反射測定用高分解能ファイバマルチチャネル分光システム)。図5中、(a)はシリカ粒子のコロイド結晶、(b)多糖類被覆コロイド結晶の組成物、(c)は逆オパール構造体2の反射スペクトルを示す。図5が示すとおり、構造体2は、450〜550nmの可視光領域に規則多孔質構造に由来する反射を示すことが分かる。
【0062】
(逆オパール構造体3及び4の合成)
平均粒径が200nmのポリスチレン粒子の懸濁液(polysciences社製)ホールピペットでガラス基板に40μm滴下した後、インキュベーターにて30℃、RH100%雰囲気下で2日間静置することで、ポリスチレンコロイド結晶薄膜を得た。
脱アセチル化率45〜55%のキチン(甲陽ケミカル株式会社製)を0.1M塩酸水溶液に混合し室温下にて1日間、攪拌することで完全に溶解させ4wt%溶液を得た。上記により作製されたポリスチレンコロイド結晶薄膜に、この溶液をパスツールピペットで滴下し浸漬させた後、5日間冷蔵保存することで、内部にポリスチレンコロイド結晶を含む複合薄膜を得た。この複合薄膜をトルエン(和光純薬工業株式会社製)に24時間浸漬することで、ポリスチレン粒子を除去した。得られた薄膜を、エタノールで洗浄した後、減圧デシケーター中で乾燥保存することにより、逆オパール構造体3を得た。
また、複合薄膜を25%グルタルアルデヒド水溶液とエタノールの混合溶液(1/9 v/v)に1時間、浸漬した後、トルエンに24時間浸漬することで、ポリスチレン粒子を除去した。得られた架橋薄膜を、エタノールで洗浄した後、減圧デシケーター中で乾燥保存することにより、逆オパール構造体4を得た。
【0063】
(電子顕微鏡観察)
構造体3及び4、および製造途中で得られるポリスチレン粒子のコロイド結晶と多糖類被覆コロイド結晶の組成物の多孔質構造を確認するために走査型電子顕微鏡観察を行った(測定装置:株式会社日立ハイテクノロジーズ社製 超高分解能電界放出形走査電子顕微鏡 S-4800)。観察用試料は、PtPdをスパッタリングしたものを用いた。
図6は、粒径200nmのポリスチレンコロイドを使用して製造した逆オパール構造体3及び4に関し、(a)はポリスチレン粒子のコロイド結晶の顕微鏡(SEM)写真(a−1:25,000倍率)及び光学顕微鏡写真(a−2)、(b)は多糖類被覆コロイド結晶の組成物の顕微鏡(SEM)写真(b−1:25,000倍率)及び光学顕微鏡写真(b−2)、(c)は逆オパール構造体3の顕微鏡(SEM)写真(c−1:22,000倍率)(c−2:40,000倍率)、(d)は架橋剤を用いて製造した逆オパール構造体4の顕微鏡(SEM)写真(d−1:20,000倍率)(d−2:40,000倍率)を示す。
【0064】
(逆オパール構造体5及び6の合成)
ポリスチレン粒子の平均粒径が400nmであることを除いては、前述の逆オパール構造体3及び4の製造方法と同じ方法により、逆オパール構造体5と6を得た。即ち、平均粒径が400nmのポリスチレン粒子の懸濁液(polysciences社製)ホールピペットでガラス基板に40μm滴下した後、インキュベーターにて30℃、RH100%雰囲気下で2日間静置することで、ポリスチレンコロイド結晶薄膜を得た。
脱アセチル化率45〜55%のキチン(甲陽ケミカル株式会社製)を0.1M塩酸水溶液に混合し室温下にて1日間、攪拌することで完全に溶解させ4wt%溶液を得た。上記により作製されたポリスチレンコロイド結晶薄膜に、この溶液をパスツールピペットで滴下し浸漬させた後、5日間冷蔵保存することで、内部にポリスチレンコロイド結晶を含む複合薄膜を得た。この複合薄膜をトルエン(和光純薬工業株式会社製)に24時間浸漬することで、ポリスチレン粒子を除去した。得られた薄膜を、エタノールで洗浄した後、減圧デシケーター中で乾燥保存することにより、逆オパール構造体5を得た。
また、複合薄膜を25%グルタルアルデヒド水溶液とエタノールの混合溶液(1/9 v/v)に1時間、浸漬した後、トルエンに24時間浸漬することで、ポリスチレン粒子を除去した。得られた架橋薄膜を、エタノールで洗浄した後、減圧デシケーター中で乾燥保存することにより、逆オパール構造体6を得た。
【0065】
(電子顕微鏡観察)
構造体5及び6、および製造途中で得られるポリスチレン粒子のコロイド結晶と多糖類被覆コロイド結晶の組成物の多孔質構造を確認するために走査型電子顕微鏡観察を行った(測定装置:株式会社日立ハイテクノロジーズ社製 超高分解能電界放出形走査電子顕微鏡 S-4800)。観察用試料は、PtPdをスパッタリングしたものを用いた。
図7は、粒径400nmのポリスチレンコロイドを使用して製造した逆オパール構造体5に関し、(a)はポリスチレン粒子のコロイド結晶の顕微鏡(SEM)写真(a−1:50,000倍率)及び光学顕微鏡写真(a−2)、(b)は多糖類被覆コロイド結晶の組成物の顕微鏡(SEM)写真(b−1:20,000倍率)及び光学顕微鏡写真(b−2)、(c)は逆オパール構造体5の顕微鏡(SEM)写真(c−1:10,000倍率)(c−2:20,000倍率)及び光学顕微鏡写真(c−3)、(d)は架橋剤を用いて製造した逆オパール構造体6の顕微鏡(SEM)写真(d−1:10,000倍率)(d−2:20,000倍率)及び光学顕微鏡写真(d−3)を示す。
顕微鏡(SEM)写真から、孔径が均一な空孔が周期的に配列していることが確認できる。試料観察面において、空孔の六方格子が確認できることから、空孔配列層が3次元的に積層し面心立方構造が形成されていると考えられる。このことから、ポリスチレンコロイド結晶を鋳型とすることで、逆オパール構造が作製されたといえる。
また、(c−3)および(d−3)構造色が観察されたことから、逆オパール構造体において高規則性の多孔質構造が形成されていると考えられる。
図8において、逆オパール構造体5の他の電子顕微鏡写真を示す。
【0066】
(反射スペクトル測定)
前述の操作により得られた構造体の反射特性について調べた。即ち、製造途中で得られるポリスチレン粒子のコロイド結晶、多糖類被覆コロイド結晶の組成物、構造体5及び構造体6を用い、これを光学顕微鏡(株式会社ニコン社製 工業用顕微鏡 ECLIPSE LV100D)のステージ上に設置し、試料面の垂直方向から白色光を照射することで、200〜1100nmの波長領域での反射スペクトルを測定した(測定装置:Ocean Optics, Inc.製 反射測定用高分解能ファイバマルチチャネル分光システム)。
図9において、(a)はコロイド結晶、(b)は多糖類被覆コロイド結晶の組成物、(c)は構造体5、(d)は構造体6、(e)は、構造体6(水中)の反射スペクトルを示す。図9が示すとおり、構造体5は、大気雰囲気下の乾燥状態において、600〜700nmの可視・近赤外光領域に反射を示すことが分かる。これは、図8において観察された空孔配列が試料中で層をなしており、各層から反射した光が干渉しあうことで生じたと考えられる。同様に、構造体6は700〜900nmに規則多孔質構造に由来する反射を示すことが分かる。一方、水中浸漬下においては、構造体5はキチンの溶出により構造が崩壊し反射スペクトルを測定できなかった。図9中(e)が示す如く、構造体6についてはほぼ同じ波長域に反射ピークを観測することができた。このことから、グルタルアルデヒドによるキチンの架橋により構造体の耐水性が向上したと考えられる。
【0067】
(本発明の逆オパール構造体の構造規則性の評価)
本発明の逆オパール構造体の構造上の規則性を評価するために、比較例として下記製造方法により脂肪族ポリエステルの逆オパール構造体を製造した。得られた比較例の逆オパール構造体と、前述の本発明の逆オパール構造体1及び5の顕微鏡写真を比較することにより、構造上の規則性を評価した。
【0068】
(比較例の製造方法)
平均粒径が400nmのシリカ粒子の懸濁液をパスツールピペットでガラス基板に4〜5滴、滴下した後、室温、RH100%雰囲気下で2週間静置することで、シリカコロイド結晶薄膜を得た。
DL−ポリ乳酸(多木化学工業株式会社製、平均分子量11,000)をアセトンに室温下にて溶解させ20wt%溶液を得た。上記により作製されたシリカコロイド結晶薄膜に、この溶液をパスツールピペットで数滴滴下した後、1日間室温で静置することで、内部にシリカコロイド結晶を含む複合薄膜を得た。この複合薄膜を室温で1日乾燥した後、1.15wt%フッ酸化水素酸水溶液(和光純薬工業株式会社製)に冷蔵庫内で2日間浸漬することで、シリカ粒子を除去した。得られた薄膜をイオン交換水で充分に洗浄し、減圧デシケーター中で乾燥保存することにより比較例の逆オパール構造体を製造した。
【0069】
(電子顕微鏡観察)
本発明の逆オパール構造体1の顕微鏡写真を図10、本発明の逆オパール構造体5の顕微鏡写真を図11、脂肪族ポリエステル(比較例)の顕微鏡写真を図12に示す。
図10〜12が示すとおり、脂肪族ポリエステルからなる逆オパール構造体と比較して、本発明の逆オパール構造体は構造上の規則性が向上されている。
さらに、図10〜12の2次元フーリエ変換像を図13に示す。図中(A)は逆オパール構造体1、(B)は、逆オパール構造体5、(C)は、脂肪族ポリエステルからなる逆オパール構造体の2次元フーリエ変換像である。図13(A)及び(B)において明瞭な散乱像が見られ、高規則性の存在が裏づけられる。一方、図13(C)では散乱像が見られず、規則性が存在しないことが示唆される。
【図面の簡単な説明】
【0070】
【図1】本発明の逆オパール構造体の製造方法に関し、コロイド結晶から逆オパール構造体が製造される過程を表す。(1)はコロイド結晶、(2)は多糖類被覆コロイド結晶の組成物、(3)は逆オパール構造体を表す。
【図2】本発明にかかる構造体の多孔質構造の一例を示す電子顕微鏡写真である。(逆オパール構造体1)
【図3】本発明にかかる構造体の反射スペクトルの一例を示すグラフである。(逆オパール構造体1)
【図4】(a)シリカ粒子のコロイド結晶、(b)は多糖類被覆コロイド結晶の組成物(内部にシリカコロイド結晶を含む複合薄膜)、(c)はシリカ粒子をエッチングにより取り除いて得られた逆オパール構造体2の顕微鏡写真を示す。
【図5】(a)はシリカ粒子のコロイド結晶、(b)多糖類被覆コロイド結晶の組成物、(c)は逆オパール構造体2の反射スペクトルを示す。
【図6】(a)はポリスチレン粒子のコロイド結晶の顕微鏡(SEM)写真(a−1:25,000倍率)及び光学顕微鏡写真(a−2)、(b)は多糖類被覆コロイド結晶の組成物の顕微鏡(SEM)写真(b−1:25,000倍率)及び光学顕微鏡写真(b−2)、(c)は逆オパール構造体3の顕微鏡(SEM)写真(c−1:22,000倍率)(c−2:40,000倍率)、(d)は架橋剤を用いて製造した逆オパール構造体4の顕微鏡(SEM)写真(d−1:20,000倍率)(d−2:40,000倍率)を示す。
【図7】(a)はポリスチレン粒子のコロイド結晶の顕微鏡(SEM)写真(a−1:50,000倍率)及び光学顕微鏡写真(a−2)、(b)は多糖類被覆コロイド結晶の組成物の顕微鏡(SEM)写真(b−1:20,000倍率)及び光学顕微鏡写真(b−2)、(c)は逆オパール構造体5の顕微鏡(SEM)写真(c−1:10,000倍率)(c−2:20,000倍率)及び光学顕微鏡写真(c−3)、(d)は架橋剤を用いて製造した逆オパール構造体6の顕微鏡(SEM)写真(d−1:10,000倍率)(d−2:20,000倍率)及び光学顕微鏡写真(d−3)を示す。
【図8】本発明にかかる構造体の多孔質構造の一例を示す電子顕微鏡写真である。(逆オパール構造体5)
【図9】(a)はコロイド結晶、(b)は多糖類被覆コロイド結晶の組成物、(c)は構造体5、(d)は構造体6、(e)は構造体6(水中)の反射スペクトルを示す。
【図10】本発明の逆オパール構造体1の顕微鏡写真を示す。
【図11】本発明の逆オパール構造体5の顕微鏡写真を示す。
【図12】脂肪族ポリエステルからなる逆オパール構造体(比較例)の顕微鏡写真を示す。
【図13】本発明の逆オパール構造体1(A)、逆オパール構造体5(B)、脂肪族ポリエステルからなる逆オパール構造体(比較例)(C)の顕微鏡写真の2次元フーリエ変換像を示す。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
多糖類を含むことを特徴とする逆オパール構造体。
【請求項2】
前記多糖類が、セルロース誘導体及び/又はセルロースであることを特徴とする請求項1に記載の逆オパール構造体。
【請求項3】
前記多糖類が酢酸セルロースであることを特徴とする請求項1又は2に記載の逆オパール構造体。
【請求項4】
前記多糖類が脱アセチル化キチン及び/又は任意の架橋分子により架橋された多糖類の架橋体であることを特徴とする請求項1に記載の逆オパール構造体。
【請求項5】
可視及び近赤外領域の光を選択反射する三次元規則配列の空孔を有することを特徴とする請求項1乃至4いずれかに記載の逆オパール構造体。
【請求項6】
前記可視及び近赤外領域の光が400〜1500nmの波長を有することを特徴とする請求項5に記載の逆オパール構造体。
【請求項7】
前記空孔の直径が10〜1000nmであることを特徴とする請求項5又は6に記載の逆オパール構造体。
【請求項8】
医療用インプラント、分離膜、創傷被覆材、細胞培養用培地、吸着媒体のうちいずれかであることを特徴とする請求項1乃至請求項7いずれかに記載の逆オパール構造体。
【請求項9】
以下の工程(1)乃至(3)を含む製造方法により製造される多糖類被覆コロイド結晶の組成物。
(1)シリカ粒子又はポリスチレン粒子を含むコロイド結晶を得る工程
(2)前記コロイド結晶に、多糖類を含む溶液を含浸させる工程
(3)前記工程(2)で得られたコロイド結晶を固化することにより多糖類被覆コロイド結晶の組成物を得る工程
【請求項10】
前記シリカ粒子又はポリスチレン粒子の重量分率が0.01〜90重量%であることを特徴とする請求項9に記載の多糖類被覆コロイド結晶の組成物。
【請求項11】
以下の工程(1)乃至(4)を含むことを特徴とする逆オパール構造体の製造方法。
(1)シリカ粒子又はポリスチレン粒子を含むコロイド結晶を得る工程
(2)前記コロイド結晶に、多糖類を含む溶液を含浸させる工程
(3)前記工程(2)で得られたコロイド結晶を固化することにより多糖類被覆コロイド結晶の組成物を得る工程
(4)前記組成物からシリカ粒子をエッチングにより取り除く、又はポリスチレン粒子を有機溶媒に溶出させて除去することにより逆オパール構造体を得る工程
【請求項12】
薬物を担持させた逆オパール構造体を、生体内で、生分解及び/又は酵素による分解により該薬物を放出させることを特徴とする多糖類を含む逆オパール構造体の使用方法。
【請求項13】
以下の工程(a)及び(b)を含むことを特徴とする生体内における、多糖類を含む逆オパール構造体からの薬物放出量の測定方法。
(a)薬物を担持させた逆オパール構造体を、生分解及び/又は酵素により分解することにより該薬物を放出する工程
(b)前記逆オパール構造体に可視及び近赤外領域の光を入射し、その反射光の波長及び強度の変化を測定する工程
【請求項14】
さらに以下の工程(イ)及び(ロ)を含むことを特徴とする請求項13に記載の生体内における逆オパール構造体からの薬物放出量の測定方法。
(イ)逆オパール構造体に、可視光を吸収する擬似薬物を担持して、前記逆オパール構造体を生分解及び/又は酵素により分解することにより該薬物を放出させる工程
(ロ)前記逆オパール構造体に可視又は近赤外領域の光を入射し、その反射光の波長及び/又は強度の変化(A)を測定するとともに、可視吸収スペクトルの定量分析により前記擬似薬物の放出量(B)を測定した後、前記(A)及び(B)を相関付ける工程
【請求項15】
多糖類を含む逆オパール構造体の空孔内壁を酵素分解することにより、多糖類を含む逆オパール構造体の空孔径を拡大させる方法。
【請求項1】
多糖類を含むことを特徴とする逆オパール構造体。
【請求項2】
前記多糖類が、セルロース誘導体及び/又はセルロースであることを特徴とする請求項1に記載の逆オパール構造体。
【請求項3】
前記多糖類が酢酸セルロースであることを特徴とする請求項1又は2に記載の逆オパール構造体。
【請求項4】
前記多糖類が脱アセチル化キチン及び/又は任意の架橋分子により架橋された多糖類の架橋体であることを特徴とする請求項1に記載の逆オパール構造体。
【請求項5】
可視及び近赤外領域の光を選択反射する三次元規則配列の空孔を有することを特徴とする請求項1乃至4いずれかに記載の逆オパール構造体。
【請求項6】
前記可視及び近赤外領域の光が400〜1500nmの波長を有することを特徴とする請求項5に記載の逆オパール構造体。
【請求項7】
前記空孔の直径が10〜1000nmであることを特徴とする請求項5又は6に記載の逆オパール構造体。
【請求項8】
医療用インプラント、分離膜、創傷被覆材、細胞培養用培地、吸着媒体のうちいずれかであることを特徴とする請求項1乃至請求項7いずれかに記載の逆オパール構造体。
【請求項9】
以下の工程(1)乃至(3)を含む製造方法により製造される多糖類被覆コロイド結晶の組成物。
(1)シリカ粒子又はポリスチレン粒子を含むコロイド結晶を得る工程
(2)前記コロイド結晶に、多糖類を含む溶液を含浸させる工程
(3)前記工程(2)で得られたコロイド結晶を固化することにより多糖類被覆コロイド結晶の組成物を得る工程
【請求項10】
前記シリカ粒子又はポリスチレン粒子の重量分率が0.01〜90重量%であることを特徴とする請求項9に記載の多糖類被覆コロイド結晶の組成物。
【請求項11】
以下の工程(1)乃至(4)を含むことを特徴とする逆オパール構造体の製造方法。
(1)シリカ粒子又はポリスチレン粒子を含むコロイド結晶を得る工程
(2)前記コロイド結晶に、多糖類を含む溶液を含浸させる工程
(3)前記工程(2)で得られたコロイド結晶を固化することにより多糖類被覆コロイド結晶の組成物を得る工程
(4)前記組成物からシリカ粒子をエッチングにより取り除く、又はポリスチレン粒子を有機溶媒に溶出させて除去することにより逆オパール構造体を得る工程
【請求項12】
薬物を担持させた逆オパール構造体を、生体内で、生分解及び/又は酵素による分解により該薬物を放出させることを特徴とする多糖類を含む逆オパール構造体の使用方法。
【請求項13】
以下の工程(a)及び(b)を含むことを特徴とする生体内における、多糖類を含む逆オパール構造体からの薬物放出量の測定方法。
(a)薬物を担持させた逆オパール構造体を、生分解及び/又は酵素により分解することにより該薬物を放出する工程
(b)前記逆オパール構造体に可視及び近赤外領域の光を入射し、その反射光の波長及び強度の変化を測定する工程
【請求項14】
さらに以下の工程(イ)及び(ロ)を含むことを特徴とする請求項13に記載の生体内における逆オパール構造体からの薬物放出量の測定方法。
(イ)逆オパール構造体に、可視光を吸収する擬似薬物を担持して、前記逆オパール構造体を生分解及び/又は酵素により分解することにより該薬物を放出させる工程
(ロ)前記逆オパール構造体に可視又は近赤外領域の光を入射し、その反射光の波長及び/又は強度の変化(A)を測定するとともに、可視吸収スペクトルの定量分析により前記擬似薬物の放出量(B)を測定した後、前記(A)及び(B)を相関付ける工程
【請求項15】
多糖類を含む逆オパール構造体の空孔内壁を酵素分解することにより、多糖類を含む逆オパール構造体の空孔径を拡大させる方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2009−268836(P2009−268836A)
【公開日】平成21年11月19日(2009.11.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−124064(P2008−124064)
【出願日】平成20年5月9日(2008.5.9)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 平成20年2月16日 学校法人近畿大学発行の「平成19年度卒業研究発表会講演要旨」に発表
【出願人】(000125347)学校法人近畿大学 (389)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年11月19日(2009.11.19)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年5月9日(2008.5.9)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 平成20年2月16日 学校法人近畿大学発行の「平成19年度卒業研究発表会講演要旨」に発表
【出願人】(000125347)学校法人近畿大学 (389)
【Fターム(参考)】
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