説明

逆止弁装置

【課題】 低コストで確実に動作され得る逆止弁装置を提供すること
【解決手段】 逆止弁装置40は、ボール弁の形態であって、弁座48と協働して流路を開閉するボール46と、該ボール46を可動に抱え込む凹部45gを一端に備えシールリング49を介してシリンダ穴43aに嵌合されたピストン45と、該ピストン45を前記一端側に偏倚させるバネ47とを含む弁体構造体を備え、凹部45gの開口の周壁部45jが該凹部からのボールの離脱を禁止し得る範囲内で、ピストン45が弁座48から離れる向きに変位可能である。ピストン45の他端にパイロット圧がかかるように構成される。ピストン45の前記一端側が小径部45bを有し、シリンダ穴43aのうち小径部45bが位置する部分43bを横切って下流側流路31bが形成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は油圧駆動ベンディング装置などに用いられるに適した増速弁装置に用いられるに適した逆止弁装置に係る。
【背景技術】
【0002】
油圧ピストンのロッドが油圧シリンダの一端側から突出した複動型油圧シリンダ装置において、ピストンロッドを油圧シリンダから突出させる向きに油圧シリンダを駆動する際にピストンロッドの突出速度を高めるべく、油圧シリンダのロッド側の室から流出する油を油圧シリンダのヘッドの室に導入し得るようにする増速弁装置は、知られている。
【0003】
この増速弁装置110は、図5の(a)〜(c)に示したように、負荷側ポートないし出口ポートV1及びV2において、複動型油圧シリンダ101のヘッド側ポートL1及びロッド側ポートL2に接続される。なお、増速弁装置110の油圧源側ポートないし入口ポートU1及びU2は、切換弁(図示せず)を介して油圧源(図示せず)に接続される。増速弁装置110の一方の入口ポートU1とヘッド側出口ポートV1とは流路111で直接接続されている。もう一方の入口ポートU2とロッド側出口ポートV2との間には、ヘッド側出口ポートV1の油圧が所定レベルを超えると入口ポートU2とロッド側出口ポートV2との間を連通するパイロット操作逆止弁120が設けられ、出口ポートV1,V2の間には、ロッド側の出口ポートV2からヘッド側の出口ポートV1への圧油の流れを許容し得るパイロット操作逆止弁130が設けられている。増速装置110は、更に、ロッド側出口ポートV2とパイロット操作逆止弁130とを連通路R1で連通させ入口ポートU2を遮断部T1で塞ぐ伸長制御位置SP1と入口ポートU2とロッド側出口ポートV2とを連通路R2で直接連通させパイロット操作逆止弁130の入側を遮断部T2で塞ぐ収縮制御位置SP2との間で可動なスプール141を備えたスプール弁140を有する。スプール141はポートU2の油圧及びバネ142により伸長制御位置SP1の方への偏倚力を受けると共にポートU1ないしV1の油圧により収縮制御位置の方に向かう力を受ける。
【0004】
入口側の切換弁(図示せず)の操作により、入口ポートU1が油圧ポンプ(図示せず)に接続され入口ポートU2が油溜(図示せず)に接続されると、図5の(a)に示したように、スプール弁140が伸長制御位置SP1に設定され、圧油がヘッド側ポートL1を介してヘッド側油室102に流入してロッド側油室103の油を排出させる。この油は、スプール弁140のスプール141の連通路R1を通りパイロット操作逆止弁130を開けて出口ポートV1からヘッド側油室102に入る。一方、負荷が小さい状態では、ヘッド側油室102の圧力は比較的低いので、パイロット操作逆止弁120が閉じたままに保たれる。従って、ヘッド側油室102への圧油の供給に伴いロッド側油室103から流出する油もヘッド側油室102に入るから、ロッド104が比較的高速で突出せしめられる増速動作が行われる。
【0005】
負荷が大きくなると、図5の(b)に示したように、ヘッド側油室102及びこれに連通した流路111の作動油の圧力が高くなって、一方では、パイロット操作逆止弁130を閉じ、他方では、パイロット操作逆止弁120を開く。従って、ポートV2が油溜(図示せず)につながったポートU2に連通され、ロッド側油室103の油は、パイロット操作逆止弁120を通って、ポートU2の方へ流出する。
【0006】
一方、入口側の切換弁(図示せず)の操作により、入口ポートU2が油圧ポンプ(図示せず)に接続され入口ポートU1が油溜(図示せず)に接続されると、図5の(c)に示したように、スプール弁140が収縮制御位置SP2に設定され、圧油がロッド側ポートL2を介してロッド側油室103に流入してヘッド側油室102の油を排出させる。一方、ヘッド側流路111の圧力は低いので、パイロット操作逆止弁120が閉じたままに保たれる。従って、ロッド側油室103への圧油の供給に伴いヘッド側油室102から流出する油が油溜(図示せず)戻る。
【0007】
以上のような増速弁110の動作においては、スプール弁140による流路間の連通・遮断の動作制御が確実に行われることが不可欠である。
【0008】
ところで、図5の(a)〜(c)において模式的に示した増速回路110は、実際には、例えば、図5の(d)及び(e)に示したような構造を採る。すなわち、スプール弁140の弁体をなすスプール141が、二つの大径部ないしランド部143,144と中間の小径部145とを備え、弁箱150が該スプール141を長手方向A1,A2に摺動自在に収容する穴151を備える。弁箱150の穴151は、スプール141のランド部143,144が摺接するような内径を有すると共に、ポートとなるべき部位に、大径穴部を形成する環状凹部152,153,154を有する。
【0009】
スプール141が図5の(d)に示した伸長制御位置SP1にある場合、環状溝部152,153がスプール141の小径部145と穴151との間の環状スペース155を介して連通され、ランド部143が穴151の左側の周面151aと密接して穴151の左側において穴151を閉じ、ランド部144の左側部分が環状溝部153と環状溝部154との間において穴151を閉じる。この場合、図5の(a)及び(b)において示した連通路R1は、環状溝部152,153及びスプール141の小径部145と穴151との間の環状スペース155に対応する。一方、遮断部T1は、穴151のうち環状溝部154の側壁をなす周壁部156とスプール141の大径ランド部144との摺接部t1に対応する。
【0010】
一方、スプール141が図5の(e)に示した収縮制御位置SP2にある場合、環状溝部153,154がスプール141の小径部145のまわりの環状スペース155を介して連通され、ランド部144が穴151の右側を閉じ、ランド部143が環状溝部152と環状溝部153との間において穴151を閉じる。この場合、図5の(c)において示した連通路R2は、環状溝部153,154及びスプール141の小径部145と穴151との間の環状スペース155に対応する。一方、遮断部T2は、穴151のうち環状溝部152の側壁をなす周壁部157とスプール141の大径ランド部143との摺接部t2に対応する。
【0011】
以上のようなスプール弁140では、一応の動作は行われ得るものの,スプール141の位置SP1,SP2の切換に最低限の時間を要することから、ある程度のタイムラグが生じるのを避け難い。また、スプール141の位置の切換が不安定で所定の切換が行われ得ない場合が生じる虞れがある。
【0012】
また、スプール弁140では、スプール141の大径ランド部143,144が弁箱150の穴151に摺接して摺接部t1、t2を遮断して遮断部T1,T2を形成すべきところ、スプール141の摺動を許容するためにスプール141の大径ランド部143,144と弁箱150の穴151との間に最小限の隙間を要することから、摺接部t1,t2において圧油の漏れが生じ易い。摺接部t1すなわち遮断部T1において圧油の漏れがあると逆止弁130やパイロット操作逆止弁120の開放を妨げられる虞れがあり、図5の(b)において破線m1で示したパスが形成され、摺接部t2すなわち遮断部T2において圧油の漏れがあると図5の(c)においてm2で示したパスが形成され、逆止弁130が誤って開かれる虞れがあり、いずれの場合も、増速弁110の所定の動作が妨げられる。このような漏れは、長期間の使用による磨耗等で増大し易い。また、スプール弁140は、ゴミなどの異物の混入に弱く、更に、高い寸法精度が要求され、コスト高になるのを避け難い。
【0013】
一方、カウンタバランス弁により油圧シリンダ装置の伸縮を制御して顎の開閉を制御する油圧ショベルや油圧破砕機の如き大型の油圧機器においても、増速弁を設けることが提案されている(特許文献1や特許文献2)。
【0014】
この増速弁装置210は、図6の(a)〜(c)に示したように、出口ポートV1及びV2において、複動型油圧シリンダ101のヘッド側ポートL1及びロッド側ポートL2に接続される。増速弁装置210の油圧源側ポートないし入口ポートU1及びU2は、切換弁(図示せず)を介して油圧源(図示せず)に接続される。増速弁装置210の一方の入口ポートU1とヘッド側出口ポートV1とは管路211で直接接続される。もう一方の入口ポートU2とロッド側出口ポートV2との間には、入口ポートU2からロッド側出口ポートV2への圧油の流入を許容する逆止弁240が設けられ、負荷側ポートないし出口ポートV1,V2の間には、入口ポートU2の油圧が低く出口ポートV1の油圧が高くない場合にロッド側の出口ポートV2からヘッド側の出口ポートV1への圧油の流れを許容し得るパイロット操作逆止弁230が設けられている。増速装置210は、更に、入口ポートU2とロッド側出口ポートV2との間に、ヘッド側出口ポートV1の油圧又はロッド側出口ポートV2の油圧が所定レベルを超えると入口ポートU2とロッド側出口ポートV2との間を連通するカウンタバランス弁220を有する。カウンタバランス弁220は油圧のリリースを許容する逆止弁を含む。
【0015】
油圧源側の切換弁(図示せず)の操作により、入口ポートU1が油圧ポンプ(図示せず)に接続されると共に入口ポートU2が油溜(図示せず)に接続され且つシリンダ101の負荷が小さい状態では、図6の(a)に示したように、圧油がヘッド側ポートL1を介してヘッド側油室102に流入しロッド側油室103の油を排出させる。入口ポートU2が油溜に連通されているので、パイロット操作逆止弁230にパイロット圧がかからないから、シリンダ101のロッド側油室103から流出した油は、パイロット操作逆止弁230を開けて出口ポートV1からヘッド側油室102に入る。一方、負荷が小さい状態では、ヘッド側油室102の圧力は比較的低いので、カウンタバランス弁220が閉位置CV1に保たれる。従って、ヘッド側油室102への圧油の供給に伴いロッド側油室103から流出する油がヘッド側油室102に入るから、ロッド104が比較的高速で突出せしめられる増速動作が行われる。
【0016】
負荷が大きくなると、図6の(b)に示したように、ヘッド側油室102の作動油の圧力が高くなり、一方では、パイロット操作逆止弁230を閉じ、他方では、カウンタバランス弁220を開位置CV2に設定する。従って、ポートV2が油溜(図示せず)につながったポートU2に連通され、ロッド側油室104の油は、カウンタバランス弁220を通って、ポートU2の方へ流出する。
【0017】
一方、入口側の切換弁(図示せず)の操作により、入口ポートU2が油圧ポンプ(図示せず)に接続され入口ポートU1が油溜(図示せず)に接続されると、図6の(c)に示したように、パイロット操作逆止弁230がポートU2にかかるパイロット圧で閉じられると共にカウンタバランス弁220が閉位置CV1に設定される。従って、作動油は、逆止弁240を通り、ロッド側ポートL2を介してロッド側油室103に流入し、ピストンを押してヘッド側油室102の油を排出させる。ヘッド側油室102から出た油はヘッド側流路211を介してポートU1に流れ、油溜(図示せず)戻る。
【0018】
以上のような増速弁210の動作においては、カウンタバランス弁220による流路間の連通・遮断の動作制御が確実に行われることが不可欠である。
【0019】
ところで、図6の(a)〜(c)において模式的に示した増速回路210のカウンタバランス弁220は、実際には、例えば、図6の(d)に示したような構造を有する。
【0020】
図6の(d)において、カウンタバランス弁220は、弁穴250を備えたハウジングないし弁箱221と、弁穴250にB1,B2方向に移動可能に嵌合された弁体としてのピストン260と、ピストン260の一端261にB1方向の偏倚力を及ぼすバネ222と、ピストン260の他端262をB2方向に押すパイロット圧入力ロッド223とを有する。弁穴250は、正確に一定の径の穴部251,252,253と、穴部251の先端の大径部254aと、穴部251,252間の大径部254bと、穴部252,253間の大径部254cとを有する。大径部254bは流路255を介して入口ポートUC2につながり、大径部254cは流路256を介して出口ポートVC2につながっている。また、流路256は、パイロット圧伝達路224a,224bを介してパイロット圧入力ロッド223の端部223aが位置する小室225に連通している。なお、大径部254cは、逆止弁226が配設された流路227を介してポートUC2につながっている。ピストン260は、穴部251,253に丁度嵌り合う正確な径のロッド部263,264と、穴部252のうち大径部254c側の端部252aを弁座とする円錐台状の弁体部265を備えた大径部266と、弁体部265とロッド部263とをつなぐ小径の接続部267aとを有する。268はOリングである。
【0021】
ここで、カウンタバランス弁220が、正確に機能するためには、ピストン260にかかる油圧のバランスが確保され得るように、穴部251,252,253の径が正確に同一であり且つロッド部263,264が穴径に応じて正確に一定の径を有する必要がある。このような要求を満たすためには、高い寸法精度が要求され、コスト高になるのを避け難い。更に、カウンタバランス弁は、それ自体構造が複雑であることから、故障が生じ易い。
【0022】
なお、大型の油圧機器において、スプール弁とカウンタバランス弁との両方を用いるようにした増速弁も提案されている(特許文献3)けれども、この提案の増速弁では、上述の二種類の問題を両方とも有することになる。
【特許文献1】特開平10−266587号公報
【特許文献2】特開平10−169213号公報
【特許文献3】実開平3−103344号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0023】
本発明は、前記した点に鑑みなされたものであって、その目的とするところは、低コストで確実に動作され得る新規な構造の逆止弁装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0024】
本発明の逆止弁装置は、前記目的を達成すべく、ボール弁の形態の逆止弁装置であって、ボール弁が、弁座と協働して流路を開閉するボールと、該ボールを可動に抱え込む凹部を一端に備えシールリングを介してシリンダ穴に嵌合されたピストンと、該ピストンを前記一端側に偏倚させるバネとを含む弁体構造体を備え、凹部の開口の周壁部が該凹部からのボールの離脱を禁止し得る範囲内で、ピストンが弁座から離れる向きに変位可能である。
【0025】
なお、本発明の逆止弁装置では、典型的には、ピストンの他端にパイロット圧がかかるように構成される。
【0026】
また、本発明の逆止弁装置では、典型的には、ピストンの前記一端側が小径部を有し、シリンダ穴のうち小径部が位置する部分を横切って下流側流路が形成されている。
【0027】
本発明の逆止弁装置が用いられるに適した増速弁装置は、第一及び第二の油圧源側ポートと第一及び第二の負荷側ポートとを備えた増速弁装置であって、第一の油圧源側ポートと第一の負荷側ポートとを連通する第一の流路と、第二の油圧源側ポートから第二の負荷側ポートへの油の流れを許容する向きに、第二の油圧源側ポートと第二の負荷側ポートとを結ぶ第二の流路に設けられた第一の逆止弁と、第一の負荷側ポートと第二の負荷側ポートとを結ぶ第三の流路に設けられた第二のパイロット操作逆止弁であって、パイロット圧として働く第二の油圧源側ポートの油圧が低く第一の流路の圧力が高くないとき第二の負荷側ポートから第一の負荷側ポートへの圧油の流れを許容するものと、第二の油圧源側ポートと第二の負荷側ポートとの間において第二の流路と並列に第四の流路に設けられた第三のパイロット操作逆止弁であって、第一の流路の油圧が高いとき、第二の負荷側ポートから第二の油圧源側ポートへの油の流れを許容するものとを有する。
上記のように構成された増速弁装置では、「第一の負荷側ポートと第二の負荷側ポートとを結ぶ第三の流路に設けられた第二のパイロット操作逆止弁であって、パイロット圧として働く第二の油圧源側ポートの油圧が低く第一の流路の圧力が高くないとき第二の負荷側ポートから第一の負荷側ポートへの圧油の流れを許容するもの」が設けられているので、油圧シリンダのヘッド側油室及びロッド側油室を夫々第一及び第二の負荷側ポートに接続しておくことにより、負荷が小さい状態で第一の負荷側ポートからヘッド側油室に作動油が導入されて油圧シリンダのロッドが伸長せしめられる際、油圧シリンダのロッド側油室から排出された油が第二のパイロット操作逆止弁を介してヘッド側油室に流入せしめられ得るから、油圧シリンダのロッドの伸長速度を増速し得る。
また、上記のように構成された増速弁装置では、前記第二のパイロット操作逆止弁に加えて「第二の油圧源側ポートと第二の負荷側ポートとの間において第二の流路と並列に第四の流路に設けられた第三のパイロット操作逆止弁であって、第一の流路の油圧が高いとき、第二の負荷側ポートから第二の油圧源側ポートへの油の流れを許容するもの」が設けられているので、油圧シリンダによる仕事が開始されて負荷が大きくなりヘッド側油室の油圧が高くなると、第二のパイロット操作逆止弁が閉じられてロッド側油室からヘッド側油室への増速油の供給が停止されると共に第三のパイロット操作逆止弁が開かれてロッド側油室の作動油が第三のパイロット操作逆止弁を通って油溜に戻るようになり、高負荷下で低速でのロッドの伸長が行われる。
更に、上記のように構成された増速弁装置では、「第一の油圧源側ポートと第一の負荷側ポートとを連通する第一の流路と、第二の油圧源側ポートから第二の負荷側ポートへの油の流れを許容する向きに、第二の油圧源側ポートと第二の負荷側ポートとを結ぶ第二の流路に設けられた第一の逆止弁」を備えるので、油圧シリンダのロッドを収縮させる場合、増速弁の第二の入口ポートを油圧ポンプに接続し第二の入口ポートを油溜に接続することにより、第一の逆止弁を介して第二の油圧源側ポートから第二の負荷側ポートに作動油が供給され、油圧シリンダのロッド側油室に作動油が導入されてロッドが収縮せしめられる。なお、このとき、第二のパイロット操作逆止弁には、パイロット圧がかかるから、この第二のパイロット操作逆止弁は閉じたままに保たれ得る。
【0028】
上記のように構成された増速弁装置は、以上のような動作を行い得るにもかかわらず、第一の逆止弁と第二及び第三のパイロット操作逆止弁とで形成され得るので、スプール弁やカウンタバランス弁を用いる必要がないから、寸法精度の要求を比較的満たし易く、コストが最低限に抑えられ得る。
【0029】
上記の増速弁装置では、第一、第二及び第三の逆止弁は、典型的には、ボール弁からなる。従って、寸法精度の要求を比較的満たし易く、コストが最低限に抑えられ得る。但し、所望ならば、逆止弁のうちの少なくとも一つ、即ち一つ(即ち、第一、第二若しくは第三の逆止弁)、又は二つ(即ち、第一及び第二の逆止弁、若しくは第二及び第三の逆止弁、若しくは第三及び第一の逆止弁)又は三つ(第一、第二及び第三の逆止弁)がポペット弁など他の種類の逆止弁であってもよい。
【0030】
上記の増速弁装置において、逆止弁がボール弁からなる場合、ボール弁が、典型的には、弁座と協働して流路を開閉するボールと、該ボールを可動に抱え込む凹部を一端に備えたピストンと、該ピストンを前記一端側に偏倚させるバネとを含む弁体構造体を備え、凹部の開口の周壁部が該凹部からのボールの離脱を禁止し得る範囲内で、ピストンが弁座から離れる向きに変位可能である。
【0031】
この場合、ボールがピストンに対して可動であるにもかかわらずピストンの一端の凹部から離脱する虞れがない。また、ボールがピストンに対して可動であって該ピストンの凹部に抱え込まれるだけであるから、ピストンの外径及びシリンダの内径が所定の寸法精度を満たし得る限り、ボールの真球度が確保されボールと弁座との間で流路の開閉が確実に行われ得るだけで、シリンダ穴の内周やピストンの外周や凹部の内周の形状やサイズに関する要求が最低限に抑えられ得る。すなわち、例えば、ボールの径に対してピストンの凹部の内径を若干大きくしておくことにより、同軸度が高精度に満たされなくてもよいから、所定の機能を果たし得る構造体であっても、その製造コストが最低限に抑えられ得る。
【0032】
なお、このような逆止弁の構造は、特に、ピストンがシールリングを介してシリンダ穴に嵌合されたパイロット操作逆止弁において、適するけれども、他の逆止弁においても、同様なメリットがある。従って、この逆止弁構造は、単に増速弁装置の構成要素としてのみでなく、単体でも、有益である。その場合、独立のないし単体の逆止弁又は他の任意の油圧回路に組み込まれる逆止弁は、ボール弁の形態の逆止弁装置であって、ボール弁が、弁座と協働して流路を開閉するボールと、該ボールを可動に抱え込む凹部を一端に備えたピストンと、該ピストンを前記一端側に偏倚させるバネとを含む弁体構造体を備え、凹部の開口の周壁部が該凹部からのボールの離脱を禁止し得る範囲内で、ピストンが弁座から離れる向きに変位可能である逆止弁装置により形成され得る。
【0033】
パイロット操作逆止弁にこのボール弁の構造を適用する場合、典型的には、ピストンの前記一端側が小径部を有し、シリンダ穴のうち小径部が位置する部分を横切って下流側流路が形成される。この場合、該下流側流路の作動油の圧力が高くなると、ピストンは、バネ力に抗してボールから離れる方向に移動せしめられるけれども、該作動油の圧力によってボールが弁座に当接せしめられる。
【0034】
上記の増速弁装置では、典型的には、第一、第二及び第三の逆止弁のハウジングないし弁箱が一体的な一つのブロックからなる。ブロックは、単一の成形体であっても、複数のブロックを一体的に組立ててなるものでもよい。但し、所望ならば、別体からなる逆止弁及び二つのパイロット操作逆止弁を管路で接続してもよい。
【0035】
また、上記の増速弁装置において、第一、第二、第三及び第四の流路の全体が一つの弁箱ブロックに組み込まれる代わりに、流路の一部が、例えば、第一の流路の全体と第三の流路の一部とが、弁箱ブロックとは別個に設けられた配管ないしパイプで形成されてもよい。この場合、第一の油圧源側ポート及び第一の負荷側ポートは、弁箱ブロックとは別個の配管に形成されることになる。
【0036】
上記の増速弁装置では、その第一の負荷側ポートが油圧シリンダのヘッド側ポートに接続され、第二の負荷側ポートが複動型油圧シリンダのロッド側ポートが接続される。また、本発明の増速弁装置では、その第一及び第二の油圧源側ポートが切換弁を介して油圧源及び油溜に接続される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0037】
次に、本発明の好ましい一実施の形態を添付図面に示した好ましい一実施例に基づいて説明する。
【実施例】
【0038】
図1から図4には、本発明による好ましい一実施例の逆止弁装置としてのパイロット操作逆止弁40を備えた増速弁装置1を用いた油圧駆動ベンディング装置2が示されいている。油圧駆動ベンディング装置2は、油圧回路が模式的に示された図1からわかるように、油圧シリンダ装置10と、該油圧シリンダ装置10のピストンロッド11の突出端に装着されたベンディング工具3と、油溜21及び油圧ポンプ22からなる油圧源20に切換弁23を介して接続された増速弁装置1とを有する。
【0039】
油圧シリンダ装置10は、複動型の油圧シリンダであって、シリンダ穴12を備えたシリンダ本体13と、シリンダ穴12にD1,D2方向に摺動自在に嵌挿されシリンダ穴12をヘッド側油室14とロッド側油室15とに画成した油圧ピストン16と、ピストン16に固定された一端部からロッド側油室15を貫通しシリンダ本体13の端壁を貫通して突出したピストンロッド11とを含む。ヘッド側油室14には該油室14への作動油の出入りを許容するヘッド側ポートL1が形成され、ロッド側油室15には該油室15への作動油の出入りを許容するロッド側ポートL2が形成されている。
【0040】
切換弁23は、一対の油圧源側ポートXi1,Xi2と、一対の負荷側ポートXo1,Xo2とを有し、切換弁本体24が第一の位置X1にある場合、図1の(a)及び(b)に示したように、油圧源側ポートXi1を負荷側ポートXo1に接続すると共に油圧源側ポートXi2を負荷側ポートXo2に接続し、第三の位置X3にある場合には、図1の(c)に示したように、油圧源側ポートXi1を負荷側ポートXo2に接続すると共に油圧源側ポートXi2を負荷側ポートXo1に接続する。なお、切換弁本体24が第二の位置にある場合(図示せず)には、油圧源側ポートXi1,Xi2と負荷側ポートXo1,Xo2との接続が断たれる。切換弁23の位置制御は、例えば、電磁コイル25への通電制御により行われる。
【0041】
増速弁装置1は、第一及び第二の油圧源側ポート部U1,U2及び第一及び第二の負荷側ポート部V1,V2を備えたハウジング30と、ハウジング30内に形成された第一のパイロット操作逆止弁部40と、第二のパイロット操作逆止弁部50と、第三の逆止弁部60とを有する。
【0042】
図1に基づいて説明すると、ハウジング30は、第一の油圧源側ポートU1と第一の負荷側ポートV1とを接続する油路31aと、油路31aと第一のパイロット操作逆止弁部40の下流側ポート41とを接続する増速分岐油路31bと、第二の油圧源側ポートU2から延びた油路31cと、この油路31cを第二のパイロット操作逆止弁50の上流側ポート51に接続する油路31dと、油路31cを第三の逆止弁60の上流側ポート61に接続する油路31eと、第二の負荷側ポートV2から延びた油路31fと、この油路31fを第一のパイロット操作逆止弁40の上流側ポート42に接続する増速分岐油路31gと、油路31fを第二のパイロット操作逆止弁50の下流側ポート52に接続する油路31hと、油路31fを第三の逆止弁60の下流側ポート62に接続する油路31iとを有し、更に、第二の油圧源側ポートU2ないし油路31fの油圧を第一のパイロット操作逆止弁40の上流側に伝える第一の油圧伝達路32aと第一の負荷側ポートV1ないし第一の油路31aの油圧を第二のパイロット操作逆止弁50を上流側に伝える第二の油圧伝達路32bとを有する。ここで、説明の便宜上図1の各油路に符号を付してあるけれども、油路31a,31bは相互に連通しているので区別を要せず、油路31c,31d,31eは相互に連通しているので区別を要せず、油路31f,31g,31h,31iは相互に連通しているので区別を要しない。従って、後で、詳述する図2や図3の構造説明図では、区別を要しない油路の接続関係は異なり得る。
【0043】
第一のパイロット操作逆止弁40は、図4に拡大して示したように、シリンダ穴43が形成されたハウジング部ないし弁箱部44と、シリンダ穴43内でE1,E2方向に移動可能にシリンダ穴43内に嵌挿されたピストンないしプランジャ45と、弁体としてのボール46と、ピストン45をE1方向に偏倚させる圧縮バネ47とを有する。
【0044】
シリンダ穴43は、交差部43bにおいて油路31aと交差して延びる円筒状のシリンダ穴本体部43aと、本体部43aの一端側に形成された円錐台状部43cであって先端側において油路31gに接続されたものと、本体部43aの他端側において同心状に形成された円板状凹部43dであって中央部においてパイロット圧伝達路32aに接続されたものとを有する。
【0045】
シリンダ穴43は、油路31gと実質的に同心状であり、油路31gの周壁と円錐台状部43cの周壁部との交線48は円形の弁座として働く。円板状凹部43dもパイロット圧伝達路32aの隣接部分32a1とほぼ同心状であり、円板状凹部43dの底壁43eは、圧縮バネ47の座部として働く。
【0046】
ピストン45は、円柱状のピストン本体部45aと、本体部45の一端側に形成された小径部45bと、本体部45aと小径部45bとをつなぐ円錐台状部45cとを有する。従って、シリンダ穴43を横切る油路31aは、ピストン45の小径部45bの周囲の環状スペース43hを介して、常時つながっている。本体部45aは、他端側に端面で開口したメクラ穴45dを備え、該穴45d内に圧縮バネ47の大半の部分を受容する。本体部45aは、更に、外周に環状溝45eを備え、該環状溝45eには、シールリングとして働くOリング49が嵌装されている。
【0047】
小径部45bには、端面45fで開口しボール46を受容可能な円筒状穴45gが形成され、円筒状穴45gの底壁部45hはボール46を深く受容し得るように円錐状になっている。但し、高い同心性を要しないように、円錐の頂角は十分に大きい。
【0048】
ピストン45の本体部45aの外径はシリンダ穴43の本体部43aの内径とほぼ等しいけれども該内径よりも僅かに小さい。ピストン45の本体部45aとシリンダ穴43の本体部43aとの間は、Oリング49によってシールされるので、ピストン本体部45aの形状や外径の寸法精度は比較的低くてもよく、シリンダ穴43の本体部43aの形状や外径の寸法精度も比較的低くてもよい。
【0049】
ピストン45の小径部45bの円筒状のボール受容穴45gの内径はボール46の外形よりも若干大きく、その形状や内径の寸法精度は比較的低くてもよい。ピストン45の長さ即ちピストン45の大径本体部45aの端部45iとピストン45の小径部45bの先端部(凹部45gの周壁をなす円筒状壁部45jの先端部)45fとの間の長さHは、図4の(b)や(c)に示したようにピストン45の大径本体部45aの端部45iがシリンダ穴43の端壁43fに当接した際における小径部45bの先端部45fとシリンダ穴43の円錐台状部43cの周壁43gとの間隙Gがボール46の径よりも小さくボール46が該間隙Gを介して凹部45gの外へ離脱するのを禁止し得るような長さになっている。
【0050】
従って、このパイロット操作逆止弁40では、油路31gの油圧及び油路31a(31b)の油圧が低く且つパイロット圧伝達路32aのパイロット圧が低い場合には、圧縮バネ47がピストン45の背面側をE1方向に押し、ピストン45がその凹部45g内に位置するボール46を円錐状底面45hでE1方向に押すので、ボール46が弁座48に押付けられて、油路31gと油路31aないし31bとの間が遮断状態に保たれる。このとき、凹部45gの内径がボール46の外径よりも若干大きく形成されていることにより、ボール46が凹部45g内に収容された状態で円形弁座48に丁度押圧・当接せしめられた状態で、若干のサイズや形状のズレは、凹部45g内におけるボール46の位置ズレにより調整され得る。なお、同心度のある程度の低さを許容し得るように、円錐面45hの頂角は十分に大きく(例えば、断面で見たときの角度が120度程度又はそれ以上に)形成される。一方、パイロット圧伝達路32aからピストン45の背面側にかかるパイロット圧が低く且つ油路31a(31b)にかかる油圧が高くない状態で、油路31gにかかる油圧が高くなると、ボール46及び該ボール46を支えるピストン45がバネ47のバネ力に抗してE2方向に押され、ボール46と弁座48との間に間隙Gが生じて、油路31gから油路31aないし31bに圧油が流れる。このとき、仮に、ピストン45がボール46よりも大きくE1方向に変位されるような事態が生じても、ピストン45が最大限E2方向に変位された際にピストン45の凹部45gの周壁45jの先端部45fとシリンダ穴43との間に生じる間隙Gがボール46の径よりも小さいから、ボール46が凹部45g内から凹部45gの外へ離脱する虞れはない。また、油路31aの油圧が油路31gの油圧と同程度以下の場合に、パイロット圧伝達路32aからピストン45の背面側にかかるパイロット圧が高くなって油路31gの油圧と同程度以上になると、該パイロット圧によりピストン45がE1方向に押され、ボール46がピストン45によって弁座48に押付けられ、油路31gと油路31aないし31bとの間の流路が閉じられる。加えて、パイロット圧伝達路32gの圧力が低い場合でも、油路31a(31b)の油圧が高い場合には、該油圧によりボール46が弁座48にE1方向に押付けられる。この場合、ピストン45にはE2方向の力がかかり、ピストン45は端部45iがシリンダ穴43の端壁ないし端面43fに当接するまでE2方向に偏倚され、図4の(c)に示したような状態になる(図4の(c)では見易さのために、ボール46と弁座48との間やピストン45の端部45iとシリンダ穴43の端壁ないし端面43fとの間に隙間が残っているかのごとく示されているけれども、これらの部分には隙間はなくなる)。この場合でも、間隙Gがボール46の径よりも小さいから、ボール46の離脱などの虞れはない。
【0051】
なお、例えば、図4の(a)において、想像線33aや想像線33bで示したように、ハウジング30を二つ又はそれ以上のブロックで構成しこれらのブロックを組立ててハウジング30を形成するようにしておく場合、このパイロット操作逆止弁40を組み立てるに際しては、シリンダ穴43にボール46を入れ、その後、Oリング49を嵌着したピストン45をシリンダ穴43に嵌挿するだけで、ピストン45の先端の凹部45gにボール46が嵌り込む。最後に、圧縮バネ47をピストン45の背面側凹部45dに嵌込み、ハウジングブロックを想像線33a又は想像線33bに沿って組み立てることにより、パイロット操作逆止弁40が容易に形成される。これらの組立てに際して、ピストン45の凹部45gの内径をボール46の径よりも若干大きくしておき、ピストン45の外径をシリンダ穴43の内径よりも若干小さくしておくことにより、形状や同心性のズレがあっても該ズレが吸収され得るから、各部品の寸法精度に対する要求が低くなり、製造が容易でコストが最低限に抑えられ得る。また、構造が、単純であることから、製造が容易でコストが最低限に抑えられ得るだけでなく、確実な動作が実現され易い。
【0052】
パイロット操作逆止弁50は、図2及び図3からわかるように、パイロット圧付与機構70を有する点を除いて、パイロット操作逆止弁40とほぼ同様な構造を有する。即ち、パイロット操作逆止弁50は、シリンダ穴43と同様なシリンダ穴53、Oリング49のようなOリングを欠く点を除いてピストンないしプランジャ45と同様な構造・形状のピストンないしプランジャ55、ボール46と同様な形状のボール56、バネ47よりも強い点を除いてバネ47と同様な圧縮バネ57等を有する。従って、ピストン55は、円柱状大径部55a、円柱状小径部55b及び円錐台状接続部55cを有し、円柱状小径部55bには、ボール56の径よりも僅かに大きい内径を有し端部55fで開口する円筒状穴55gが形成されている。ボール56は、その一部が円筒状穴55gから突出する状態で該円筒状穴55g内(周壁55j内)に遊嵌されている。シリンダ穴53が形成されたハウジング部ないし弁箱部54には、弁座部48と同様な弁座部58が形成されている。
【0053】
パイロット操作逆止弁50のパイロット圧付与機構70は、油路31aと油路31dとの間に形成された貫通孔71に配設されたピストン構造体72からなる。貫通孔71は、図示の例では、大径孔部73と小径孔部74とを含む。ピストン機構72は、大径孔部73にJ1,J2方向に摺動可能に嵌挿された大径のピストン部75と、ピストン部75の一端から大径孔部73、小径孔部74及び油路31dを貫通して延びた押ロッド部76とを有する。大径ピストン部75が大径孔部73のJ1方向端部に位置する際にロッド部76の先端部78がパイロット操作逆止弁50のボール56に小間隙(小さいので図示せず)を介して対面する(例えば、図2の(a)や(b))。ピストン部75には、Oリング77が嵌着されている。
【0054】
従って、パイロット圧として働く油路31aの油圧が高い場合、ピストン構造体72がJ2方向に押されて、バネ57のJ1方向の力に抗してロッド76の先端78でボール56をJ2方向に押して、油路31hと油路31dとの間を小径部55bのまわりの環状スペース53hを介して連通させる(図3の(a)参照)。
【0055】
逆止弁60は、図2及び図3からわかるように、パイロット圧付与機構を欠く点を除いて、パイロット操作逆止弁50とほぼ同様な構造を有する。即ち、逆止弁60は、シリンダ穴53と同様なシリンダ穴63、ピストンないしプランジャ55と同様な構造・形状のピストンないしプランジャ65、ボール56と同様な形状のボール66、バネ力がバネ57より小さい(且つバネ47よりも小さい)点を除いてバネ57と同様な圧縮バネ67を有する。シリンダ穴63内でK1,K2方向に摺動自在なピストン65は、円柱状大径部65a、円柱状小径部65b及び円錐台状接続部65cを有し、円柱状小径部65bには、ボール66の径よりも僅かに大きい内径を有し端部65fで開口する円筒状穴65gが形成されている。ボール66は、その一部が円筒状穴65gから突出する状態で該円筒状穴65g(円筒状周壁65j)に遊嵌されている。シリンダ穴63が形成されたハウジング部ないし弁箱部64には、弁座部58と同様な弁座部68が形成されている。
【0056】
従って、油路31eの油圧が低い場合、バネ67のK1方向の弱いバネ力により、ボール66が弁座68に押付けられて、油路31eと油路31i,31hとの間が遮断され(図2の(b)等参照)、油路31eの油圧が高い場合、ボール66をバネ67のK1方向の弱いバネ力に抗してK2方向に押して、環状スペース65hを介する油路31eから油路31iないし31hへの圧油の流れを許容する(図3の(b)参照)。
【0057】
以上の如く構成された増速弁装置1を有する油圧駆動ベンディング装置2の動作について、図1から図4に基づいて、説明する。ここで、ベンディング対象物ないし被折曲物は、図1に示したように、角棒や丸棒や断面がL字型の長尺材のような棒材Mであると想定する。棒材Mは、ベンディングのために、基台(図示せず)に支持された支柱N1,N2によって背面で支えられるように、基台上に載置される。一方、工具3が基台上の被折曲棒材Mに対向するように、油圧シリンダ装置10の本体部13を配置・固定しておく。ここで、工具3の先端3aと被折曲棒材Mとの間隔Qは、図1の(a)では、図示の便宜上小さいけれども、実際には、比較的大きく、被折曲物ないし被加工材Mに応じて変動し得、ベンディング工具3が被加工材Mに接触するまでのベンディング工具3のD1方向のストロークQが被加工材Mに応じて変動し得る。
【0058】
当初は、油圧ポンプ22が非作動状態にあり、増速弁装置1において、パイロット操作逆止弁40、パイロット操作逆止弁50及び逆止弁60は、夫々のバネ47,57及び67により、閉じられている(図2の(a))。
【0059】
(必要ならば切換弁23を状態X1に設定した後)油圧ポンプ22を作動させる。図1の(a)に示したように、ポンプ22からの作動油が切換弁24を通って、増速弁装置1のポートU1に入り、油路31aを通って、シリンダ装置10のヘッド側油室14に入って、シリンダ装置10のピストン16をD1方向に押し、ピストンロッド11を介して工具3をD1方向に移動させて、被折曲棒材Mに近接させる。一方、ピストン16のD1方向変位に伴いロッド側油室15から排出された油は、図1の(a)及び図2の(b)に示したように、増速弁装置1の油路31f,31gを通って、パイロット操作逆止弁40をバネ47の力に抗してE2方向に開き、油路31b(図1の(a))を通って油路31aに入り、シリンダ装置10のヘッド側油室14に導入される。パイロット操作逆止弁40を通るこのような油の流れにより、ヘッド側油室14に入る作動油の流量がポンプ22からの作動油の流量よりも増すので、工具3のD1方向の突出速度が高められ得る。
【0060】
一方、パイロット操作逆止弁50には、油圧ポンプ22からの油圧がかかるけれども、工具3に負荷がかからない状態(油圧シリンダ10に対する実際上無負荷又は負荷が小さい状態)でピストン16がD1方向に移動されるので、油路31aの油圧が比較的低いので、図2の(b)のパイロット圧作動機構70のピストン75にJ2方向にかかる力が比較的弱いから、強いバネ57によってボール56が弁座58に押付けられたパイロット操作弁50は、閉状態に保たれる。なお、逆止弁60には、閉方向の油圧がかかるだけであるから、弁60は、閉状態に保たれる。その結果、増速弁装置1は、図2の(b)に示したような状態を採る。
【0061】
工具3がD1方向移動に距離Qだけ移動すると工具3の先端3aが被折曲棒材Mに当接し、それ以後は、工具3は被折曲棒材Mに対して折曲力Fを及ぼしながらのD1方向に移動せしめられる。即ち、工具3による被折曲棒材Mの折曲が開始されると、シリンダ装置10に対するD2方向の負荷が急激に上がるので、油路31aの油圧が上がる。その結果、油路31a(31b)と油路31gとの間に圧力差が生じ、図3の(a)に示したように、パイロット操作逆止弁40では、ボール46が弁座48に押付けられて、油路31a(31b)と油路31gとの間の油路を閉じる。なお、この状態では、パイロット操作逆止弁40のピストン45は、油路31a(31b)の油圧により、E2方向に押されるので、図3の(a)に示したように、ボール46がピストン45の穴45gの開口から大きく突出する位置を採る(図4の(c)に対応)。従って、作動油は、図3の(a)では油路31aにおいて(図1の(b)では油路31aにつながった油路31bにおいて)ボール46を弁座48にE1方向に押付けると共に、ピストン45をバネ47に抗してE2方向に押付けた状態で、油路31aを流れる。
【0062】
一方、油路31aからパイロット操作逆止弁50にかかる油圧がベンディング負荷の影響で高くなると、パイロット圧作動機構70のピストン75にJ2方向にかかる力が大きくなるので、図3の(a)に示したように、ピストン75が、バネ57の強いバネ力に抗してボール56をJ2方向に押してボール56を弁座58から離すから、パイロット操作逆止弁50が開状態に設定される。
【0063】
従って、シリンダ装置10のロッド側油室15から排出される作動油が、パイロット操作逆止弁40の代わりにパイロット操作逆止弁50を通って、油路31f,31h,31d,31cに沿って流れるようになる。その結果、増速弁装置1による増速動作が停止され、シリンダ装置10の工具3は無負荷時よりも低速で棒材Mに対して曲げ作業を行なうべく、D1方向に突出せしめられる。
【0064】
なお、逆止弁60には、閉方向の油圧がかかるだけであるから、弁60は、閉状態に保たれる。その結果、増速弁装置1は、図3の(a)に示したように閉状態を採る。
【0065】
棒材Mに対する曲げ加工(曲げ作業)が完了するまで、工具3がD1方向に突出せしめられ、図3の(a)の状態が続く。
【0066】
曲げ加工が完了すると、切換弁23が図1の(b)に示した状態X1から図1の(c)に示した状態X3に切替えられる。その結果、油圧ポンプ22からの圧油が、増速弁装置1のポートU2に導入され、ポートU1からの油が油溜21に戻されるようになる。
【0067】
この状態では、油路31cに作動油が流入せしめられるので、圧力伝達路32aを介してパイロット操作逆止弁40のピストン45の背面側に油圧がかかり、ピストン45がE1方向に押され、ボール46がピストン45の小径部45bの凹部41gに深く嵌合され底壁45hに当たって該底壁45hによりE1方向に押されて弁座48に押付けられ、パイロット操作逆止弁40が閉状態に保たれる。
【0068】
一方、油路31c,31eを流れる作動油は、弱いバネ67でK1方向に偏倚されたボール66及びピストン65をK2方向に押して、ボール66を弁座68から離し、流路31iに流れる。なお、流路31eから流路31iへの油の流れが一旦開始されると、その流れに伴う動圧により、弁60は開状態に保たれる。ここで、ピストン65とシリンダ穴63との間の狭い間隙を介してバネ67のある凹部64d内に油が侵入しても、ピストン65の左右にかかる油の静圧は釣合うので、油の流れに伴う動圧がバネ67のバネ力を上回る限り(例えば、ピストン65の断面積を考慮してバネ67のバネ力が10kPa程度の場合50kPa程度の動圧を与える流量の油が流される、なお、バネの強さや流量は相対的な大小関係を保ち得る限りより大きくても小さくてもよい)、弁60が開状態に保たれ得る。
【0069】
また、油路31aが油溜22につながって圧力が低くなるので、パイロット圧作動機構70のピストン75に対するJ2方向押圧力がなくなり、ボール56がバネ57のバネ力でJ1方向に弁座58に押付けられて、パイロット操作逆止弁50が閉じられる(パイロット操作逆止弁50のピストン55においても、左右の油圧による左右の力自体は釣合い、無視し得ることは逆止弁60の場合と同様である)。パイロット操作逆止弁50のバネ57のバネ力は逆止弁60のバネ67のバネ力よりもはるかに大きいので、弁50は閉状態に設定・維持される。
【0070】
従って、図1の(c)及び図3の(b)に示したように、油圧ポンプ21からの作動油が、逆止弁60を通ってシリンダ装置10のロッド側油室15に導入されてシリンダ装置10のピストン16をD2方向に押戻してロッド11及び工具3をD2方向に後退させ、ヘッド側油室14の作動油が油路31aを通って油溜21に戻されることになる。
【0071】
以上のようにして、一回のベンディング動作が完了する。
【0072】
以上の図2及び図3においては、増速弁装置1の全体が一つの弁箱ブロックないしシリンダブロック30に形成される例について説明したけれども、図1の(a)において想像線1Bで示した境界線を境として、一方の部分1Baをシリンダブロックに組み込み、左側の流路を含む部分1Bbを該シリンダブロックとは別個に設けた配管ないしパイプで形成してもよい。その場合、流路の一部、例えば、第一の流路を形成する流路31aの全体と第三の流路の一部を形成する流路31bの一部とが、弁箱ブロックとは別個に設けられた配管ないしパイプで形成されることになる。この場合、第一の油圧源側ポートU1及び第一の負荷側ポートV1は、弁箱ブロックとは別個の配管ないしパイプとして形成されることになる。
【0073】
なお、以上においては、逆止弁60やパイロット操作逆止弁50もパイロット操作逆止弁40とほぼ同様な構造を有するものとして説明したけれども、所望ならば、例えば、ボール弁の代わりにポペット弁などからなっていてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0074】
【図1】本発明による好ましい一実施例の逆止弁装置を有する増速弁装置を備えたベンディング装置を模式的に示したもので、(a)は無負荷(低負荷)状態でのベンディング前工程の模式的説明図、(b)は負荷状態でのベンディング工程の模式的説明図、(c)はシリンダ装置の戻り工程の模式的説明図。
【図2】本発明による好ましい一実施例の逆止弁装置を有する図1の増速弁装置の構成を示したもので、(a)は増速弁装置が動作する前の状態を示した断面説明図、(b)は図1の(a)の状態にある増速弁装置についての(a)と同様な断面説明図。
【図3】図2の増速弁装置についての異なる動作状態を示したもので、(a)は図1の(b)の状態にある増速弁装置についての図2の(b)と同様な断面説明図、(b)は図1の(c)の状態にある増速弁装置についての(a)と同様な断面説明図。
【図4】図2の増速弁装置を構成する本発明による好ましい一実施例の逆止弁装置としてのパイロット操作逆止弁について拡大して示したもので、(a)はバネ力やパイロット圧により増速弁装置が閉じている状態についての拡大断面説明図、(b)は増速弁装置が開いている状態についての拡大断面説明図、(c)は増速弁装置のピストンとボールとが最大限離されている状態の拡大断面説明図。
【図5】スプール弁を用いた従来の増速弁装置について示したもので、(a)は無負荷(低負荷)状態でのベンディング前工程の模式的説明図、(b)は負荷状態でのベンディング工程の模式的説明図、(c)はシリンダ装置の戻り工程の模式的説明図、(d)及び(e)はスプール弁を用いた従来の増速弁装置の構造に関する断面説明図で、(e)は(d)のVE−VE線断面説明図。
【図6】カウンタバランス弁を用いた従来の増速弁装置について示したもので、(a)は無負荷(低負荷)状態でのベンディング前工程の模式的説明図、(b)は負荷状態でのベンディング工程の模式的説明図、(c)はシリンダ装置の戻り工程の模式的説明図、(d)は増速弁装置のうちカウンタバランス弁の構造に関する断面説明図。
【符号の説明】
【0075】
1 増速弁装置
2 ベンディング装置
3 ベンディング工具
10 油圧シリンダ装置
11 ピストンロッド
14 ヘッド側油室
15 ロッド側油室
16 ピストン
20 油圧源
21 油溜
22 油圧ポンプ
23 切換弁
40 パイロット操作逆止弁
50 パイロット操作逆止弁
60 逆止弁
30 ハウジング
43,53,63 シリンダ穴
44,54,64 ハウジング部
45,55,65 ピストン
46,56,66 ボール
47,57,67 圧縮バネ
48,58,68 弁座
49 Oリング
31a,31b,31c,31d,31e,31f,31g,31h,31i 油路
32a,32b パイロット圧伝達路
D1,D2,E1,E2,J1,J2,K1,K2 方向
G 間隙
H 長さ
L1 ヘッド側ポート
L2 ロッド側ポート
Q 間隔
U1,U2 油圧源側ポート
V1,V2 負荷側ポート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ボール弁の形態の逆止弁装置であって、ボール弁が、弁座と協働して流路を開閉するボールと、該ボールを可動に抱え込む凹部を一端に備えシールリングを介してシリンダ穴に嵌合されたピストンと、該ピストンを前記一端側に偏倚させるバネとを含む弁体構造体を備え、凹部の開口の周壁部が該凹部からのボールの離脱を禁止し得る範囲内で、ピストンが弁座から離れる向きに変位可能である逆止弁装置。
【請求項2】
ピストンの他端にパイロット圧がかかるように構成された請求項1に記載の逆止弁装置。
【請求項3】
ピストンの前記一端側が小径部を有し、シリンダ穴のうち小径部が位置する部分を横切って下流側流路が形成されている請求項1又は2に記載の逆止弁装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−298183(P2007−298183A)
【公開日】平成19年11月15日(2007.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−205787(P2007−205787)
【出願日】平成19年8月7日(2007.8.7)
【分割の表示】特願2003−103547(P2003−103547)の分割
【原出願日】平成15年4月8日(2003.4.8)
【出願人】(303015505)三央工業株式会社 (6)
【Fターム(参考)】