説明

透光性電磁波シールドフィルタ及びその製造方法、並びに導電膜

【課題】ハードコート層と導電膜の密着性に優れる透光性電磁波シールドフィルタ及びその製造方法、並びに透光性電磁波シールドフィルタ用導電膜を提供する。
【解決手段】支持体上に導電層を有し、該導電層上にハードコート層を有する透光性電磁波シールドフィルタであって、前記導電層が、前記支持体上に塗設されたハロゲン化銀及びバインダーを含有する乳剤層を露光及び現像処理することで形成されたものであり、前記ハードコート層が、所定の溶媒を用いたハードコート形成用塗布液を前記導電層上に塗布して形成されたものであり、前記乳剤層が、ハードコート形成用の前記溶媒に溶解する化合物を含有する透光性電磁波シールドフィルタ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、透光性電磁波シールドフィルタ及びその製造方法、並びに透光性電磁波シールドフィルタ用導電膜に関し、さらに詳しくは、プラズマディスプレイに使用される透光性電磁波シールドフィルタに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、様々な製造方法による導電膜が検討されている(例えば、特許文献1〜5参照)。この中で、ハロゲン化銀乳剤層を塗布し、該ハロゲン化銀乳剤層を、導電性のための銀の導電部と透明性の確保のための開口部とを有するパターン形状となるようにパターン露光することにより、導電膜として製造される銀塩方式の導電膜がある(例えば、特許文献6〜11参照)。この銀塩方式の導電膜は、電磁波シールドへの用途が目的とされており、一般的に、表面抵抗が低いものが求められており、また、めっき等の手段により表面抵抗を低減している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000−13088号公報
【特許文献2】特開平10−340629号公報
【特許文献3】特開平10−41682号公報
【特許文献4】特公昭42−23746号公報
【特許文献5】特開2006−228649号公報
【特許文献6】特開2004−221564号公報
【特許文献7】特開2004−221565号公報
【特許文献8】特開2007−95408号公報
【特許文献9】特開2006−228469号公報
【特許文献10】特開2006−332459号公報
【特許文献11】特開2008−244067号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一方、導電膜をプラズマディスプレイ用電磁波シールドフィルタに使用する場合、導電フィルムをさらに加工する必要がある。本発明者らは、導電膜にハードコート液を直接塗布して加工することを検討し、研究してきた。しかしながら、ハロゲン化銀乳剤を用いて製造された導電膜にハードコート液を塗布した場合、導電膜とハードコート層との密着性が不十分であることがわかった。
本発明の目的は、ハードコート層と導電膜の密着性に優れる透光性電磁波シールドフィルタ及びその製造方法、並びに透光性電磁波シールドフィルタ用導電膜を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、鋭意検討を重ねた結果、銀塩乳剤層中にハードコート液の溶媒に溶解しやすい化合物を添加することで、上記課題を解決し得ることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0006】
本発明の課題は、以下の手段によって達成された。
(1)支持体上に導電層を有し、該導電層上にハードコート層を有する透光性電磁波シールドフィルタであって、
前記導電層が、前記支持体上に塗設されたハロゲン化銀及びバインダーを含有する乳剤層を露光及び現像処理することで形成されたものであり、
前記ハードコート層が、所定の溶媒を用いたハードコート形成用塗布液を前記導電層上に塗布して形成されたものであり、
前記乳剤層が、ハードコート形成用の前記溶媒に溶解する化合物を含有することを特徴とする透光性電磁波シールドフィルタ。
(2)前記ハードコート形成用の溶媒が、ケトン類、エステル類およびアルコール類からなる群から選択される少なくとも1つであることを特徴とする(1)に記載の透光性電磁波シールドフィルタ。
(3)前記乳剤層における前記のハードコート形成用の溶媒に溶解する化合物の含有量が、乳剤層全体に対して6体積%以上であることを特徴とする(1)又は(2)に記載の透光性電磁波シールドフィルタ。
(4)前記のハードコート形成用の溶媒に溶解する化合物が、シリコーンオイル又はパラフィン系オイルであることを特徴とする(1)〜(3)のいずれかに記載の透光性電磁波シールドフィルタ。
(5)前記乳剤層における前記シリコーンオイル又はパラフィン系オイルの含有量が20〜300mg/mであることを特徴とする(4)に記載の透光性電磁波シールドフィルタ。
(6)前記のハードコート形成用溶媒に溶解する化合物の粒度分布の中心値が0.01〜10μmであることを特徴とする(1)〜(5)のいずれかに記載の透光性電磁波シールドフィルタ。
(7)前記シリコーンオイルを構成するポリシロキサンの重合数が2〜100であることを特徴とする(4)〜(6)のいずれかに記載の透光性電磁波シールドフィルタ。
(8)前記パラフィン系オイルを構成するパラフィン系炭化水素の炭素数が2〜1000であることを特徴とする(4)〜(6)のいずれかに記載の透光性電磁波シールドフィルタ。
(9)前記の乳剤層に含有されるバインダーがゼラチンであることを特徴とする(1)〜(8)のいずれかに記載の透光性電磁波シールドフィルタ。
(10)支持体上に塗設されたハロゲン化銀及びバインダーを含有する乳剤層を露光及び現像処理することで導電層を形成する工程と、
所定の溶媒を用いたハードコート形成用塗布液を前記導電層上に塗布してハードコート層を形成する工程と、
を有し、前記乳剤層が、ハードコート形成用の前記溶媒に溶解する化合物を含有することを特徴とする透光性電磁波シールドフィルタの製造方法。
(11)支持体上に導電層を有する透光性電磁波シールドフィルタ用導電膜であって、
前記導電膜は、前記導電層上にハードコート層が形成されて透光性電磁波シールドフィルタとして使用されるものであり、
前記導電層が、前記支持体上に塗設されたハロゲン化銀及びバインダーを含有する乳剤層を露光及び現像処理することで形成されたものであり、
前記ハードコート層が、所定の溶媒を用いたハードコート形成用塗布液を前記導電層上に塗布して形成されたものであり、
前記乳剤層が、ハードコート形成用の前記溶媒に溶解する化合物を含有することを特徴とする透光性電磁波シールドフィルタ用導電膜。
【発明の効果】
【0007】
本発明の透光性電磁波シールドフィルタは、ハードコート層と導電膜の密着性に優れ、例えばプラズマディスプレイに好適に用いることができる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明の透光性電磁波シールドフィルタは、支持体上に導電層を有する導電膜にハードコート液を直接塗布して前記導電層上にハードコート層を形成したものである。
【0009】
<導電膜>
[支持体]
本発明の透光性電磁波シールドフィルタ及び導電膜に用いられる支持体としては、プラスチックフィルム、プラスチック板、及びガラス板等を挙げることができる。支持体の厚さは、好ましくは50〜300μm、より好ましくは60〜200μmである。
支持体としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)(融点:258℃)、ポリエチレンナフタレート(PEN)(融点:269℃)、ポリエチレン(PE)(融点:135℃)、ポリプロピレン(PP)(融点:163℃)、ポリスチレン(融点:230℃)、ポリ塩化ビニル(融点:180℃)、ポリ塩化ビニリデン(融点:212℃)やトリアセチルセルロース(TAC)(融点:290℃)等の融点が約290℃以下であるプラスチックフィルム、又はプラスチック板が好ましい。特に、光透過性や加工性等の観点から、PETが好ましい。透光性電磁波シールドフィルタは透明性が要求されるため、支持体の透明度は高いことが好ましい。支持体の全可視光透過率は、70〜100%が好ましく、さらに好ましくは85〜100%であり、特に好ましくは90〜100%である。また、本発明の目的を妨げない程度に着色した支持体を用いることもできる。
【0010】
該支持体の両面に、支持体面に対して各層を強固に接着させる目的で、予め、薬品処理、機械的処理、コロナ放電処理、火焔処理、紫外線処理、高周波処理、グロー放電処理、活性プラズマ処理、レーザ処理、混酸処理、オゾン酸処理等の表面活性処理を施しておくことが好ましい。
例えば、ハロゲン化銀写真感光性層形成用の塗布液(以下、「ハロゲン化銀感光層用塗布液」ということがある。)を塗布してハロゲン化銀写真感光材料を作製する場合、支持体と層との間の接着性を確保する方法には、(1)前記表面活性処理を施した後、該表面上に直接ハロゲン化銀感光層用塗布液を塗布して接着力を得る方法、(2)一旦、前記表面活性処理を施した後、下塗り層を設け、該層上にハロゲン化銀感光層用塗布液を塗布する方法、が挙げられる。中でも、前記方法(2)がより有効であり広く行われている。
【0011】
次に、下塗法について述べると、単層でもよく2層以上でもよい。下塗層用バインダーとしては、塩化ビニル、塩化ビニリデン、ブタジエン、メタクリル酸、アクリル酸、イタコン酸、無水マレイン酸などの中から選ばれた単量体を出発原料とする共重合体を始めとして、ポリエチレンイミン、エポキシ樹脂、グラフト化ゼラチン、ニトロセルロース、ゼラチンが挙げられる。支持体を膨潤させる化合物としてレゾルシンとp−クロルフェノールがある。下塗層に含まれるゼラチン硬化剤としてはクロム塩(クロム明ばんなど)、アルデヒド類(ホルムアルデヒド、グルタールアルデヒドなど)、イソシアネート類、活性ハロゲン化合物(2,4−ジクロロ−6−ヒドロキシ−S−トリアジンなど)、エピクロルヒドリン樹脂、活性ビニルスルホン化合物などを挙げることができる。SiO、TiO、無機物微粒子又はポリメチルメタクリレート共重合体微粒子(0.01〜10μm)をマット剤として含有させてもよい。
【0012】
[導電層(乳剤層)]
本発明の透光性電磁波シールドフィルタを構成する導電膜は、支持体上に導電層を有し、当該導電層は、支持体上に塗設されたハロゲン化銀及びバインダーを含有する乳剤層(銀塩含有感光層)を特定形状のメッシュパターンで露光及び現像処理することで形成される。すなわち、乳剤層を有する導電膜形成用感光材料をもとに導電膜が形成される。本発明における導電層は、メッシュ状に形成された導電部分とそれ以外の開口部とを含む層である。
乳剤層は、銀塩とバインダーの他、溶媒や染料等の添加剤を含有することができる。乳剤層は1層でもよく、2層以上設けてもよい。乳剤層の厚さは、好ましくは0.05〜20μm、より好ましくは0.1〜10μmである。
導電膜形成用感光材料において、乳剤層は実質的に最上層に配置されている。ここで、「乳剤層が実質的に最上層である」とは、乳剤層が実際に最上層に配置されている場合のみならず、乳剤層の上に、総膜厚が0.5μm以下の層が設けられた形態も含む。乳剤層の上に設けられた層の総膜厚は、好ましくは0.2μm以下である。
【0013】
(銀塩)
本発明に用いられる銀塩としては、ハロゲン化銀等の無機銀塩及び酢酸銀等の有機銀塩が挙げられる。本発明においては、光センサーとしての特性に優れるハロゲン化銀を用いることが好ましく、ハロゲン化銀に関する銀塩写真フィルムや印画紙、印刷製版用フィルム、フォトマスク用エマルジョンマスク等で用いられる技術は、本発明においても用いることができる。銀塩含有乳剤層の銀塩の塗布量は、特に制限されないが、銀に換算して0.1〜40g/m2が好ましく、0.5〜25g/m2が特に好ましい。前記下限値は3g/m2がより好ましく、5g/m2がさらに好ましく、7g/m2が特に好ましい。
【0014】
(バインダー)
乳剤層には、銀塩粒子を均一に分散させ、かつ乳剤層と支持体との密着を補助する目的でバインダーが用いられる。本発明において上記バインダーとしては、非水溶性ポリマーおよび水溶性ポリマーのいずれもバインダーとして用いることができるが、水溶性ポリマーを用いることが好ましい。
上記バインダーとしては、例えば、ゼラチン、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリビニルピロリドン(PVP)、澱粉等の多糖類、セルロースおよびその誘導体、ポリエチレンオキサイド、ポリサッカライド、ポリビニルアミン、キトサン、ポリリジン、ポリアクリル酸、ポリアルギン酸、ポリヒアルロン酸、カルボキシセルロース等が挙げられる。これらは、官能基のイオン性によって中性、陰イオン性、陽イオン性の性質を有する。
本発明では、ゼラチンを用いることが特に好ましい。
【0015】
乳剤層中に含有されるバインダーの含有量は、特に限定されず、分散性と密着性を発揮し得る範囲で適宜決定することができる。乳剤層中のバインダーの含有量は、Ag/バインダー体積比で1/10以上が好ましく、1/4以上がより好ましく、1/2以上がさらに好ましい。その上限値は、5/1以下が好ましく、3/1以下がより好ましい。
【0016】
(溶媒)
乳剤層の形成に用いられる溶媒は、特に限定されるものではないが、例えば、水、有機溶媒(例えば、メタノール等のアルコール類、アセトン等のケトン類、ホルムアミド等のアミド類、ジメチルスルホキシド等のスルホキシド類、酢酸エチル等のエステル類、エーテル類等)、イオン性液体、及びこれらの混合溶媒を挙げることができる。
乳剤層に用いられる溶媒の含有量は、乳剤層に含まれる銀塩、バインダー等の合計の質量に対して30〜90質量%の範囲であり、50〜80質量%の範囲であることが好ましい。
【0017】
(ハードコート形成用溶媒に溶解する化合物)
本発明では、乳剤層(導電層)に、後述するハードコート形成用溶媒に溶解する化合物を含有する。ハードコート形成用溶媒に溶解する化合物を乳剤層に含有させることにより、本発明の電磁波シールドフィルタにおいて導電層上に設けられたハードコート層と導電層との密着性が向上する。この理由についてはまだ定かではないが、本発明者は以下のように推察する。すなわち、乳剤層に対し特定形状のメッシュパターンで露光及び現像処理することでメッシュ状に形成された導電部分とそれ以外の開口部とが形成される。特に開口部ではハードコート形成用溶媒に溶解する化合物が分散した状態となり、導電層上にハードコート形成用塗布液を塗布した際に前記化合物がハードコート形成用溶媒に溶解して抜け出し、導電層中の前記化合物が存在していた箇所にハードコート形成用塗布液が入り込むこと(アンカー効果)により密着性が向上すると推察される。導電部分と開口部では開口部の面積が大きいことから、開口部でのアンカー効果が密着性向上に寄与していると推察される。
ここで、「溶解する」とは、例えば25℃におけるハードコート形成用溶媒100gに対して0.01g以上溶解することをいい、より好ましくは0.1g以上、さらに好ましくは0.5g以上、特に好ましくは1g以上である。
【0018】
本発明におけるハードコート形成用溶媒に溶解する化合物としては、シリコーンオイル、パラフィン系オイル、(メタ)アクリル系粒子などが挙げられ、シリコーンオイル又はパラフィン系オイルが特に好ましい。
シリコーンオイルとしては、シリコーンオイルを構成するポリシロキサンの重合数が好ましくは2〜100、より好ましくは5〜20のものを好適に用いることができる。パラフィン系オイルとしては、パラフィン系オイルを構成するパラフィン系炭化水素の炭素数が好ましくは2〜1000、より好ましくは5〜100のものを好適に用いることができる。
【0019】
本発明におけるハードコート形成用溶媒に溶解する化合物は、その粒子の粒度分布の中心値が0.01〜10μmであることが好ましい。シリコーンオイルの場合は、粒度分布の中心値が0.01〜0.5μmであることがより好ましい。流動パラフィンの場合は、粒度分布の中心値が0.05〜5μmであることがより好ましい。(メタ)アクリル系粒子の場合は、粒度分布の中心値が0.1〜10μmであることが好ましく、0.5〜5μmであることがより好ましい。粒度分布の測定は、遠心分離法、レーザ回析/散乱法、X線透過法、電気抵抗法、ふるい分け法で測定することができる。好ましい測定法は、レーザ回析/散乱法であり、レーザ回析/散乱式粒度分布装置LA−910(株式会社堀場製作所製)を用いて測定することができる。
【0020】
本発明におけるハードコート形成用溶媒に溶解する化合物は、乳剤層中に、乳剤層全体に対して好ましくは2体積%以上、より好ましくは3体積%以上、さらに好ましくは6体積%以上含有される。前記化合物がシリコーンオイル又はパラフィンオイルである場合には、前記化合物は乳剤層中に、乳剤層全体に対して好ましくは2〜50体積%、より好ましくは6〜25体積%、さらに好ましくは7〜25体積%含有され、ハードコート層の良好な塗布面状を得る観点からは、20体積%以下含有されることが好ましく、15体積%以下含有されることがより好ましい。前記化合物が(メタ)アクリル系粒子である場合には、前記化合物は乳剤層中に、乳剤層全体に対して5〜60体積%含有されることが好ましい。
乳剤層が2層以上ある場合、最もハードコート層に近い乳剤層(最表層)に前記化合物が含有されることが好ましく、前記化合物は、前記最表層中に、前記最表層全体に対して好ましくは2体積%以上、より好ましくは3体積%以上、さらに好ましくは6体積%以上含有される。前記化合物がシリコーンオイル又はパラフィンオイルである場合には、前記化合物は最表層中に、乳剤層全体に対して好ましくは2〜50体積%、より好ましくは6〜25体積%、より好ましくは7〜25体積%%含有され、ハードコート層の良好な塗布面状を得る観点からは、20体積%以下含有されることが好ましく、15体積%以下含有されることがより好ましい。前記化合物が(メタ)アクリル系粒子である場合には、前記化合物は前記最表層中に、前記最表層全体に対して5〜60体積%含有されることが好ましい。
また、本発明におけるハードコート形成用溶媒に溶解する化合物は、前記化合物がシリコーンオイル又はパラフィンオイルである場合には、乳剤層中に、20mg/m2以上含有されることが好ましく、20〜300mg/m2含有されることがより好ましく、50〜300mg/m2含有されることがさらに好ましい。前記化合物が(メタ)アクリル系粒子である場合には、乳剤層中に50〜1100mg/m2含有されることが好ましい。
乳剤層が2層以上ある場合、最もハードコート層に近い乳剤層(最表層)に前記化合物が含有されることが好ましく、前記化合物がシリコーンオイル又はパラフィンオイルである場合には、前記最表層中に、20mg/m2以上含有されることが好ましく、20〜300mg/m2含有されることがより好ましく、50〜300mg/m2含有されることがさらに好ましい。前記化合物が(メタ)アクリル系粒子である場合には、最表層中に50〜1100mg/m2含有されることが好ましい。
【0021】
なお、シリコーンオイル、パラフィン系オイル、(メタ)アクリル系粒子などは上記条件を満たしつつ、乳剤層に含有されればよい。乳剤層からハードコート層へ溶解して密着性を増加させると考えられるが、密着性の向上効果は必ずしもこのような作用に限定されない。また、シリコーンオイル、パラフィン系オイル、(メタ)アクリル系粒子などが含有される乳剤層を有する導電膜形成用感光材料は、電磁波シールド用途以外に、電極用途、回路配線用途、透明導電膜用途などに使用することができる。
【0022】
(その他の添加剤)
本発明に用いられる各種添加剤に関しては、特に制限は無く、任意のものを好ましく用いることができ、例えば、増粘剤、酸化防止剤、マット剤、滑剤、帯電防止剤、造核促進剤、分光増感色素、界面活性剤、カブリ防止剤、硬膜剤、黒ポツ防止剤などが挙げられる。
【0023】
[その他の層構成]
本発明の透光性電磁波シールドフィルタを構成する導電膜において、乳剤層の上に保護層を設けてもよい。本発明において「保護層」とは、ゼラチンや高分子ポリマーといったバインダーからなる層を意味し、擦り傷防止や力学特性を改良する効果を発現するために感光性を有する乳剤層上に形成される。その厚みは0.2μm以下が好ましい。保護層の塗布方法及び形成方法は特に限定されず、公知の塗布方法及び形成方法を適宜選択することができる。また、乳剤層の下に、例えば下引層を設けることもできる。
【0024】
[導電膜の作製]
本発明に係る導電膜は、支持体上に形成された乳剤層をメッシュ状にパターン露光し、現像処理することにより得られる。本発明において、パターン露光・現像処理によって形成されるメッシュパターンは、メッシュ状で、且つ、直線が略直交した形態の直線格子パターンや、交差部間の導電部分が少なくとも1つの湾曲を有する波線格子パターン等がある。本発明では、導電層のメッシュパターンのピッチ(導電部分の線幅と開口部の幅の合計)が600μm以下であることが好ましく、400μm以下であることがより好ましい。下限値は100μm以上であることがより好ましい。また導電部分の線幅は、30μm以下が好ましく、1〜20μmがより好ましい。線幅が大きくなると、導電性は優れるが隣接するハードコート層との密着性が低下するおそれがあり、線幅が小さくなり過ぎると導電性が不十分となる傾向がある。
なお、本発明では、導電性が確保される範囲内で導電層上にさらに導電性ポリマーを塗布することにより、高抵抗の透明導電層を形成してもよい。
【0025】
(露光)
乳剤層をパターン状に露光する方法は、フォトマスクを利用した面露光で行ってもよいし、レーザービームによる走査露光で行ってもよい。この際、レンズを用いた屈折式露光でも反射鏡を用いた反射式露光でもよく、コンタクト露光、プロキシミティー露光、縮小投影露光、反射投影露光等の露光方式を用いることができる。
【0026】
(現像処理)
乳剤層は、上述したように、パターン露光がなされた後、さらに現像処理が施される。現像処理は、銀塩写真フィルムや印画紙、印刷製版用フィルム、フォトマスク用エマルジョンマスク等に用いられる通常の現像処理の技術を用いることができる。
本発明では、上述のパターン露光及び現像処理を行うことによって、露光部分にメッシュパターン状の導電部分(金属銀部)が形成されると共に、未露光部に開口部(光透過性部)が形成される。乳剤層への現像処理は、未露光部分の銀塩を除去して安定化させる目的で行われる定着処理を含むことができる。乳剤層に対する定着処理は、銀塩写真フィルムや印画紙、印刷製版用フィルム、フォトマスク用エマルジョンマスク等に用いられる定着処理の技術を用いることができる。
【0027】
<透光性電磁波シールドフィルタ>
本発明の透光性電磁波シールドフィルタは、前記導電膜にハードコート液を直接塗布して前記導電層上にハードコート層を形成したものである。
【0028】
[ハードコート層]
(溶媒)
本発明において、ハードコート層の形成に用いられる溶媒としては、好ましくはケトン類、エステル類、アルコール類が挙げられ、特に好ましくはケトン類が挙げられる。ケトン類としては、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノンが挙げられ、これらの中でもメチルエチルケトンが好ましい。
ハードコート形成用塗布液における当該溶媒の含有量は10〜95質量%が好ましい。
(電離放射線硬化性化合物)
本発明において、ハードコート層の形成に用いられる電離放射線硬化性化合物としては、好ましくは光、電子線、放射線重合性の多官能モノマーや多官能オリゴマーが挙げられ、中でも特に好ましくは光重合性モノマーやオリゴマーが挙げられる。当該電離放射線硬化性化合物を重合・硬化させることにより、硬化膜(ハードコート層)を形成することができる。
ハードコート形成用塗布液における当該電離放射線硬化性化合物の含有量は0.1〜95質量%が好ましい。
(重合開始剤)
本発明において、ハードコート層の形成に用いられる重合開始剤としては、好ましくは光ラジカル重合開始剤と光カチオン重合開始剤が挙げられ、特に好ましくは光ラジカル重合開始剤が挙げられる。
ハードコート形成用塗布液における当該重合開始剤の含有量は、電離放射線硬化性化合物に対して0.1〜10質量%が好ましい。
【0029】
[ハードコート層の形成]
本発明の透光性電磁波シールドフィルタにおけるハードコート層は、導電膜にハードコート液を直接塗布した後、乾燥、UV光の露光をすることにより形成することができる。
ハードコート層の厚さは、好ましくは0.1〜50μm、より好ましくは1〜20μmである。
【0030】
なお、各層の塗布は、ロールコート、バーコート、グラビアコート、グラビアリバースコート、ダイコート、スライドコート、カーテンコート等の一般的な方法で行うことができる。
【0031】
また、上述した本発明の透光性電磁波シールドフィルタ及び導電膜では、以下に列挙する公知文献に開示の技術を適宜組み合わせて使用することができる。特開2004-221564号公報、特開2004-221565号公報、特開2007-200922号公報、特開2006-352073号公報、国際公開第2006/001461号パンフレット、特開2007-129205号公報、特開2007-235115号公報、特開2007-207987号公報、特開2006-012935号公報、特開2006-010795号公報、特開2006-228469号公報、特開2006-332459号公報、特開2007-207987号公報、特開2007-226215号公報、国際公開第2006/088059号パンフレット、特開2006-261315号公報、特開2007-072171号公報、特開2007-102200号公報、特開2006-228473号公報、特開2006-269795号公報、特開2006-267635号公報、国際公開第2006/098333号パンフレット、特開2006-324203号公報、特開2006-228478号公報、特開2006-228836号公報、国際公開2006/098336号パンフレット、国際公開第2006/098338号パンフレット、特開2007-009326号公報、特開2006-336090号公報、特開2006-336099号公報、特開2006-348351号公報、特開2007-270321号公報、特開2007-270322号公報、国際公開第2006/098335号パンフレット、特開2007-201378号公報、特開2007-335729号公報、国際公開第2006/098334号パンフレット、特開2007-134439号公報、特開2007-149760号公報、特開2007-208133号公報、特開2007-178915号公報、特開2007-334325号公報、特開2007-310091号公報、2007-116137号公報、特開2007-088219号公報、特開2007-207883号公報、特開2007-013130号公報、国際公開第2007/001008号パンフレット、特開2005-302508号公報、特開2008-218784号公報、特開2008-227350号公報、特開2008-227351号公報、特開2008-244067号公報、特開2008-267814号公報、特開2008-270405号公報、特開2008-277675号公報、特開2008-277676号公報、特開2008-282840号公報、特開2008-283029号公報、特開2008-288305号公報、特開2008-288419号公報、特開2008-300720号公報、特開2008-300721号公報、特開2009-4213号公報、特開2009-10001号公報、特開2009-16526号公報、特開2009-21334号公報、特開2009-26933号公報、特開2008-147507号公報、特開2008-159770号公報、特開2008-159771号公報、特開2008-171568号公報、特開2008-198388号公報、特開2008-218096号公報、特開2008-218264号公報、特開2008-224916号公報、特開2008-235224号公報、特開2008-235467号公報、特開2008-241987号公報、特開2008-251274号公報、特開2008-251275号公報、特開2008-252046号公報、特開2008-277428号公報、特開2009-21153号公報。
【0032】
本発明の透光性電磁波シールドフィルタは、導電膜とハードコート層との密着性に優れ、例えばプラズマディスプレイに好適に用いることができる。
【0033】
以下、本発明を実施例に基づき更に詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【実施例】
【0034】
実施例1
[導電膜試料1の作製]
(乳剤Aの調製)
・1液:
水 750ml
ゼラチン 20g
塩化ナトリウム 3g
1,3−ジメチルイミダゾリジン−2−チオン 20mg
ベンゼンチオスルホン酸ナトリウム 10mg
クエン酸 0.7g
・2液
水 300ml
硝酸銀 150g
・3液
水 300ml
塩化ナトリウム 38g
臭化カリウム 32g
ヘキサクロロイリジウム(III)酸カリウム
(0.005%KCl 20%水溶液) 5ml
ヘキサクロロロジウム酸アンモニウム
(0.001%NaCl 20%水溶液) 7ml
【0035】
3液に用いるヘキサクロロイリジウム(III)酸カリウム(0.005%KCl 20%水溶液)及びヘキサクロロロジウム酸アンモニウム(0.001%NaCl 20%水溶液)は、粉末をそれぞれKCl 20%水溶液、NaCl 20%水溶液に溶解し、40℃で120分間加熱して調製した。
【0036】
38℃、pH4.5に保たれた1液に、2液と3液の各々90%に相当する量を攪拌しながら同時に20分間にわたって加え、0.16μmの核粒子を形成した。続いて下記4液、5液を8分間にわたって加え、さらに、2液と3液の残りの10%の量を2分間にわたって加え、0.21μmまで成長させた。さらに、ヨウ化カリウム0.15gを加え5分間熟成し粒子形成を終了した。
【0037】
・4液
水 100ml
硝酸銀 50g
・5液
水 100ml
塩化ナトリウム 13g
臭化カリウム 11g
黄血塩 5mg
【0038】
その後、常法に従ってフロキュレーション法によって水洗した。具体的には、温度を35℃に下げ、下記に示すアニオン性沈降剤−1を3g加え、硫酸を用いてハロゲン化銀が沈降するまでpHを下げた(pH3.2±0.2の範囲であった)。
【0039】
【化1】

【0040】
次に、上澄み液を約3リットル除去した(第一水洗)。さらに3リットルの蒸留水を加えてから、ハロゲン化銀が沈降するまで硫酸を加えた。再度、上澄み液を3リットル除去した(第二水洗)。第二水洗と同じ操作をさらに1回繰り返して(第三水洗)、水洗・脱塩工程を終了した。
水洗・脱塩後の乳剤にゼラチン30gを加え、pH5.6、pAg7.5に調整し、ベンゼンチオスルホン酸ナトリウム10mg、ベンゼンチオスルフィン酸ナトリウム3mg、チオ硫酸ナトリウム15mg、及び塩化金酸10mgを加え55℃にて最適感度を得るように化学増感を施し、安定剤として1,3,3a,7−テトラアザインデン100mg、防腐剤としてプロキセル(商品名、ICI Co.,Ltd.製)100mgを加えた。最終的に塩化銀を70モル%、沃化銀を0.08モル%含む平均粒子径0.22μm、変動係数9%のヨウ塩臭化銀立方体粒子乳剤を得た。最終的に乳剤として、pH=5.7、pAg=7.5、電導度=40μS/m、密度=1.2×103kg/m3、粘度=60mPa・sとなった。
【0041】
(試料1の作製)
下記に示す両面が塩化ビニリデンを含む防湿層下塗りからなるポリエチレンテレフタレートフィルム支持体上に、UL層/乳剤層の構成となるように塗布して試料1を作製した。以下に各層の調製方法、塗布量および塗布方法を示す。
【0042】
<乳剤層>
乳剤Aに下記シリコーンオイル(粒度分布の中心値:0.18μm、信越化学工業株式会社製)を100mg/m2、塗布助剤を添加し、クエン酸を用いて塗布液pHを5.6に調整した。このようにして調製した乳剤層塗布液を下記支持体上にAg7.6g/m2、ゼラチン1.0g/m2になるように塗布した。
【0043】
【化2】

【0044】
<UL層>
ゼラチン 0.2g/m2
化合物(Cpd−7) 40mg/m2
化合物(Cpd−14) 10mg/m2
防腐剤(プロキセル) 1.5mg/m2
【0045】
【化3】

【0046】
【化4】

【0047】
なお、各層の塗布液は、下記構造(Z)で表される増粘剤を加え、粘度調整した。
【0048】
【化5】

【0049】
<支持体>
二軸延伸したポリエチレンテレフタレート支持体(厚み100μm)の両面の下記組成の下塗層第1層及び第2層を塗布した。
【0050】
<下塗層1層>
コア−シェル型塩化ビニリデン共重合体(1) 15g
2,4−ジクロル−6−ヒドロキシ−s−トリアジン 0.25g
化合物(Cpd−20) 0.20g
水を加えて 100g
さらに、10質量%のKOHを加え、pH=6に調整した塗布液を乾燥温度180℃2分間で、乾燥膜厚が0.9μmになるように塗布した。
【0051】
<下塗層第2層>
ゼラチン 1g
メチルセルロース 0.05g
化合物(Cpd−21) 0.02g
1225O(CH2CH2O)10H 0.03g
プロキセル(商品名、ICI Co.,Ltd.製) 3.5×10-3
酢酸 0.2g
水を加えて 100g
この塗布液を乾燥温度170℃2分間で、乾燥膜厚が0.1μmになるように塗布した。
【0052】
【化6】

【0053】
<塗布方法>
上記下塗層を施した支持体上に、まず乳剤面側として支持体に近い側よりUL層、乳剤層の順に2層を、35℃に保ちながらスライドビードコーター方式により硬膜剤液を加えながら同時重層塗布し、冷風セットゾーン(5℃)を通過させた後、乳剤面とは反対側に支持体に近い側より、導電層、バック層の順に、カーテンコーター方式により硬膜剤液を加えながら同時重層塗布し、冷風セットゾーン(5℃)を通過させた。各々のセットゾーンを通過した時点では、塗布液は充分なセット性を示した。引き続き乾燥ゾーンにて両面を同時に乾燥した。
【0054】
(露光・現像処理)
乾燥させた塗布膜にライン/スペース=15μm/285μm(ピッチ300μm)の現像銀像を与えうる格子状のパターンを、大日本スクリーン(株)製のイメージセッターFT−R5055(商品名)を使用して露光した。このとき露光量は各試料に合わせて最適となるよう調節した。
露光後の各試料に対し、下記処方の現像液(A)および定着液(B)を使用し、FG−680AG自動現像機(商品名、富士写真フイルム株式会社製)を用い、35℃30″の現像条件で処理した。
【0055】
・現像液(A)処方
濃縮液1Lあたりの組成を示す。
水酸化カリウム 60.0g
ジエチレントリアミン・五酢酸 3.0g
炭酸カリウム 90.0g
メタ重亜硫酸ナトリウム 105.0g
臭化カリウム 10.5g
ハイドロキノン 60.0g
5−メチルベンゾトリアゾール 0.53g
4−ヒドロキシメチル−4−メチル−1−フェニル
−3−ピラゾリドン 2.3g
3−(5−メルカプトテトラゾール−1−イル)ベンゼ
ンスルホン酸ナトリウム 0.15g
2−メルカプトベンゾイミダゾール−5−スルホン酸ナ
トリウム 0.45g
エリソルビン酸ナトリウム 9.0g
ジエチレングリコール 7.5g
pH 10.79
使用にあたっては、母液は上記濃縮液2部に対して水1部の割合で希釈し、母液のpHは10.65であり、補充液は上記濃縮液4部に対して水3部の割合で希釈し補充液のpHは10.62であった。
【0056】
・定着液(B)処方
濃縮液1Lあたりの処方を示す。
チオ硫酸アンモニウム 360g
エチレンジアミン・四酢酸・2Na・2水塩 0.09g
チオ硫酸ナトリウム・5水塩 33.0g
メタ亜硫酸ナトリウム 57.0g
水酸化ナトリウム 37.2g
酢酸(100%) 90.0g
酒石酸 8.7g
グルコン酸ナトリウム 5.1g
硫酸アルミニウム 25.2g
pH 4.85
使用にあたっては、上記濃縮液1部に対して水2部の割合で希釈する。使用液のpHは4.8である。補充液は上記使用液と同じ希釈したものを用い、感材1m2当たり、258mlで行った。
【0057】
(メッキ処理)
上記現像処理によって得られたメッシュパターン用の銀像を有するフィルムに対し、引き続き下記組成の活性化液および無電解銅メッキ液に浸漬することにより、メッシュパターン銀像の上に無電解銅メッキを施した。ここで活性化処理は35℃で5分間行った。また無電解銅メッキは35℃にて、表面抵抗率が0.3Ω/□以下になるまでの期間処理を行った。
【0058】
(活性化液組成):1Lあたり
PdCl2 0.2g
HCl(2規定水溶液) 25.6ml
水を加え上記を溶解し1Lとする。
【0059】
(無電解銅メッキ液組成):
硫酸銅 0.06モル/L
ホルマリン 0.22モル/L
トリエタノールアミン 0.12モル/L
ポリエチレングリコール 100ppm
黄血塩 50ppm
α,α’−ビピリジン20ppmを含有する水溶液
pH=12.5
【0060】
各試料に上記の露光、現像およびメッキ処理を行ったことにより、金属細線部および金属が実質的に存在しない光透過部からなる、光透過性導電性膜が形成された。ここで金属細線部は露光パターンに応じたメッシュ状パターンを呈しており、ライン/スペース幅はいずれの試料においても15μm/285μmであった。またいずれの試料においても、光透過部の開口率は約90%であった。
【0061】
[導電膜試料2の作製]
前記シリコーンオイル添加量を50mg/m2に変更したこと以外は、試料1と同様にして試料2を作製した。
【0062】
[導電膜試料3の作製]
前記シリコーンオイル添加量を25mg/m2に変更したこと以外は、試料1と同様にして試料3を作製した。
【0063】
[導電膜試料4の作製]
前記シリコーンオイル添加量を150mg/m2に変更したこと以外は、試料1と同様にして試料4を作製した。
【0064】
[導電膜試料5の作製]
前記シリコーンオイル添加量を200mg/m2に変更したこと以外は、試料1と同様にして試料5を作製した。
【0065】
[導電膜試料6〜8の作製]
試料1〜3におけるシリコーンオイルをそれぞれ下記流動パラフィン(粒度分布の中心値:1.8μm、ISP社製)に変更したこと以外は、試料1〜3と同様にして試料6〜8を作製した。
−(CH2)n− (n=15〜50)
【0066】
[導電膜試料9の作製]
前記シリコーンオイルを平均粒径1.5μmのポリメタクリル酸メチル(PMMA)粒子(粒度分布の中心値:3.0μm、藤倉化成株式会社製)に変更し、添加量を0.86g/m2としたこと以外は、試料1と同様にして試料9を作製した。
【0067】
[導電膜試料10及び11の作製]
前記PMMA粒子の添加量を0.43g/m2又は0.21g/m2としたこと以外は、試料7と同様にして試料10及び11を作製した。
【0068】
[導電膜試料12の作製]
前記シリコーンオイルを添加しなかったこと以外は、試料1と同様にして試料12を作製した。
【0069】
[導電膜試料13の作製]
前記試料2に対し、乳剤層におけるゼラチン塗布量を1g/m2から2g/m2に変更したこと以外は、試料2と同様にして試料13を作製した。
【0070】
[透光性電磁波シールドフィルタの作製]
各導電膜試料に、下記に示すハードコート液を#14のワイヤーバーを用いて、メッシュ状パターンの上に塗布した。塗布後、80℃3分乾燥し、UVを800mJ/m2照射し、ハードコート膜を硬化させた。
・ハードコート液処方
メチルエチルケトン 48g
ペンタエリスリトールトリアクリレート混合物 40g
(KAYARAD PET−30、商品名、日本化薬製)
重合開始剤 2g
(IRGACURE−127、商品名、チバ・ジャパン製)
【0071】
(評価)
作製した各透光性電磁波シールドフィルタにおいて、ハードコート膜と各試料との密着性を、JIS K−5600−5−6に規定されているクロスカット法およびその評価基準に従って試験し、評価した。JIS K−5600−5−6に規定されているとおり、「カットの縁が完全に滑らかで、どの格子の目にも剥がれがない場合」を0とし、剥離面積の程度により5までの整数で評価した。ここで、5が最も剥離面積が大きい。
また、ハードコート層の塗布面状についても評価した。塗布面状が良好な場合を○、不良な場合を×、その中間を△とした。
結果を表1に示す。
【0072】
【表1】

【0073】
表1の結果から明らかなように、ハードコート液に含まれる溶媒(メチルエチルケトン)に溶解する化合物を乳剤層に含有しない比較例の透光性電磁波シールドフィルタ(試料12)では、ハードコート層と導電膜との密着性が悪く、著しい剥がれが生じた。これに対し、ハードコート液に含まれる溶媒(メチルエチルケトン)に溶解する化合物であるシリコーンオイル、流動パラフィン、又はPMMA粒子を乳剤層に含有する本発明の透光性電磁波シールドフィルタ(試料1〜11及び13)ではハードコート層と導電膜の密着性に優れることがわかった。
【0074】
なお、シリコーンオイルの添加量を増やした試料4及び5では、剥離がなかったものの、導電層に点欠陥が発生した。このことから、PDPパネルに応じてシリコーンオイルの添加量を調整することが必要であることがわかった。
さらに、乳剤層含有化合物の塗布量が同じ場合には、乳剤層全体に対する乳剤層含有化合物の体積分率が高い方が密着性がより優れることがわかった(試料2と試料13との比較)。
【0075】
また、メチルエチルケトンを、ジエチルケトン、メチルイソブチルケトン又はシクロヘキサノンにそれぞれ変更したこと以外は試料1と同様にして試料を作製し、上記と同様に評価したところ、剥離がほとんどなく、ハードコート層と導電膜との密着性に優れることがわかった。
【0076】
実施例2
(乳剤Aの調製)
・1液:
水 750ml
ゼラチン(フタル化処理ゼラチン) 20g
塩化ナトリウム 3g
1,3−ジメチルイミダゾリジン−2−チオン 20mg
ベンゼンチオスルホン酸ナトリウム 10mg
クエン酸 0.7g
・2液
水 300ml
硝酸銀 150g
・3液
水 300ml
塩化ナトリウム 38g
臭化カリウム 32g
ヘキサクロロイリジウム(III)酸カリウム
(0.005%KCl 20%水溶液) 5ml
ヘキサクロロロジウム酸アンモニウム
(0.001%NaCl 20%水溶液) 7ml
【0077】
3液に用いるヘキサクロロイリジウム(III)酸カリウム(0.005%KCl 20%水溶液)及びヘキサクロロロジウム酸アンモニウム(0.001%NaCl 20%水溶液)は、それぞれの錯体粉末をそれぞれKCl20%水溶液、NaCl20%水溶液に溶解し、40℃で120分間加熱して調製した。
【0078】
38℃、pH4.5に保たれた1液に、2液と3液の各々90%に相当する量を攪拌しながら同時に20分間にわたって加え、0.16μmの核粒子を形成した。続いて下記4液、5液を8分間にわたって加え、さらに、2液と3液の残りの10%の量を2分間にわたって加え、0.21μmまで成長させた。さらに、ヨウ化カリウム0.15gを加え5分間熟成し粒子形成を終了した。
【0079】
・4液
水 100ml
硝酸銀 50g
・5液
水 100ml
塩化ナトリウム 13g
臭化カリウム 11g
黄血塩 5mg
【0080】
その後、常法に従ってフロキュレーション法によって水洗した。具体的には、温度を35℃に下げ、硫酸を用いてハロゲン化銀が沈降するまでpHを下げた(pH3.6±0.2の範囲であった)。
【0081】
次に、上澄み液を約3リットル除去した(第一水洗)。さらに3リットルの蒸留水を加えてから、ハロゲン化銀が沈降するまで硫酸を加えた。再度、上澄み液を3リットル除去した(第二水洗)。第二水洗と同じ操作をさらに1回繰り返して(第三水洗)、水洗・脱塩行程を終了した。
【0082】
水洗・脱塩後の乳剤をpH6.4,pAg7.5に調整し、ベンゼンチオスルホン酸ナトリウム10mg、ベンゼンチオスルフィン酸ナトリウム3mg、チオ硫酸ナトリウム15mgと塩化金酸10mgを加え55℃にて最適感度を得るように化学増感を施し、安定剤として1,3,3a,7−テトラアザインデン100mg、防腐剤としてプロキセル(商品名,ICI Co.,Ltd.製)100mgを加えた。最終的に塩化銀を70モル%、沃化銀を0.08モル%含む平均粒子径0.22μm、変動係数9%のヨウ塩臭化銀立方体粒子乳剤を得た。最終的に乳剤として、pH=6.4,pAg=7.5,電導度=40μS/m,密度=1.4×103kg/m3,粘度=20mPa・sとなった。
【0083】
(試料14の作製)
上記乳剤Aに増感色素(SD−1)5.7×10-4モル/モルAgを加えて分光増感を施した。さらにKBr3.4×10−4モル/モルAg、化合物(Cpd−3)8.0×10-4モル/モルAgを加え、よく混合した。
【0084】
次いで1,3,3a,7−テトラアザインデン1.2×10-4モル/モルAg、ハイドロキノン1.2×10−2モル/モルAg、クエン酸3.0×10−4モル/モルAg、2,4−ジクロロ−6−ヒドロキシ−1,3,5−トリアジンナトリウム塩を90mg/m2、ゼラチンに対して15wt%の粒径10μmのコロイダルシリカ、水性ラテックス(aqL−6)を50mg/m2、ポリエチルアクリレートラテックスを100mg/m2、メチルアクリレートと2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸ナトリウム塩と2−アセトキシエチルメタクリレートのラテックス共重合体(質量比88:5:7)を100mg/m2、コアシェル型ラテックス(コア:スチレン/ブタジエン共重合体(質量比37/63)、シェル:スチレン/2−アセトキシエチルアクリレート(質量比84/16)、コア/シェル比=50/50)を100mg/m2、ゼラチンに対し4wt%の化合物(Cpd−7)を添加し、クエン酸を用いて塗布液pHを5.6に調整した。
【0085】
支持体としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)(厚さ100μm)を用いた。乳剤層のAg/バインダー体積比率(銀/GEL比(vol))が2.4/1.0になるように層を設けた。
乳剤Aを用いて、上記のように調製した乳剤層塗布液をAg16g/m2、ゼラチン0.83g/m2になるように塗布した。
【0086】
【化7】

【0087】
【化8】

【0088】
(露光・現像処理)
次いで、前記で調製した試料14にライン/スペース=5μm/295μmの現像銀像を与えうる格子状のフォトマスクライン/スペース=295μm/5μm(ピッチ300μm)の、スペースが格子状であるフォトマスクを介して高圧水銀ランプを光源とした平行光を用いて露光し、下記の現像液で現像し、さらに定着液(商品名:CN16X用N3X−R:富士フイルム社製)を用いて現像処理を行った後、純水でリンスし、サンプル14を得た。
【0089】
[現像液の組成]
現像液1リットル中に、以下の化合物が含まれる。
ハイドロキノン 0.037mol/L
N−メチルアミノフェノール 0.016mol/L
メタホウ酸ナトリウム 0.140mol/L
水酸化ナトリウム 0.360mol/L
臭化ナトリウム 0.031mol/L
メタ重亜硫酸カリウム 0.187mol/L
【0090】
(カレンダー処理)
上記のように現像処理したサンプルをカレンダー処理した。カレンダーロールは金属ロール(鉄芯+ハードクロムメッキ、ロール直径250mm)からなり、線圧力400kgf/cmをかけてローラー間にサンプルを通し、表面抵抗率(オーム/sq、Ω/□)を測定した。
サンプル14はカレンダー処理400kgf/cmを行った。
【0091】
(試料15の作製)
乳剤Aに実施例1と同じシリコーンオイルを100mg/m添加した以外は、試料14と同様にして試料15を作成した。
【0092】
(試料16の作製)
乳剤Aに実施例1と同じ流動パラフィンを100mg/m添加した以外は、試料14と同様にして試料16を作成した。
【0093】
(試料17の作製)
乳剤Aに実施例1と同じPMMA粒子を860mg/m添加した以外は、試料14と同様にして試料17を作成した。
【0094】
(評価及び結果)
実施例1と同様な評価を行った。その結果を表2に示す。
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持体上に導電層を有し、該導電層上にハードコート層を有する透光性電磁波シールドフィルタであって、
前記導電層が、前記支持体上に塗設されたハロゲン化銀及びバインダーを含有する乳剤層を露光及び現像処理することで形成されたものであり、
前記ハードコート層が、所定の溶媒を用いたハードコート形成用塗布液を前記導電層上に塗布して形成されたものであり、
前記乳剤層が、ハードコート形成用の前記溶媒に溶解する化合物を含有することを特徴とする透光性電磁波シールドフィルタ。
【請求項2】
前記ハードコート形成用の溶媒が、ケトン類、エステル類およびアルコール類からなる群から選択される少なくとも1つであることを特徴とする請求項1記載の透光性電磁波シールドフィルタ。
【請求項3】
前記乳剤層における前記のハードコート形成用の溶媒に溶解する化合物の含有量が、乳剤層全体に対して6体積%以上であることを特徴とする請求項1又は2に記載の透光性電磁波シールドフィルタ。
【請求項4】
前記のハードコート形成用の溶媒に溶解する化合物が、シリコーンオイル又はパラフィン系オイルであることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の透光性電磁波シールドフィルタ。
【請求項5】
前記乳剤層における前記シリコーンオイル又はパラフィン系オイルの含有量が20〜300mg/mであることを特徴とする請求項4記載の透光性電磁波シールドフィルタ。
【請求項6】
前記のハードコート形成用溶媒に溶解する化合物の粒度分布の中心値が0.01〜10μmであることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の透光性電磁波シールドフィルタ。
【請求項7】
前記シリコーンオイルを構成するポリシロキサンの重合数が2〜100であることを特徴とする請求項4〜6のいずれか1項に記載の透光性電磁波シールドフィルタ。
【請求項8】
前記パラフィン系オイルを構成するパラフィン系炭化水素の炭素数が2〜1000であることを特徴とする請求項4〜6のいずれか1項に記載の透光性電磁波シールドフィルタ。
【請求項9】
前記の乳剤層に含有されるバインダーがゼラチンであることを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載の透光性電磁波シールドフィルタ。
【請求項10】
支持体上に塗設されたハロゲン化銀及びバインダーを含有する乳剤層を露光及び現像処理することで導電層を形成する工程と、
所定の溶媒を用いたハードコート形成用塗布液を前記導電層上に塗布してハードコート層を形成する工程と、
を有し、前記乳剤層が、ハードコート形成用の前記溶媒に溶解する化合物を含有することを特徴とする透光性電磁波シールドフィルタの製造方法。
【請求項11】
支持体上に導電層を有する透光性電磁波シールドフィルタ用導電膜であって、
前記導電膜は、前記導電層上にハードコート層が形成されて透光性電磁波シールドフィルタとして使用されるものであり、
前記導電層が、前記支持体上に塗設されたハロゲン化銀及びバインダーを含有する乳剤層を露光及び現像処理することで形成されたものであり、
前記ハードコート層が、所定の溶媒を用いたハードコート形成用塗布液を前記導電層上に塗布して形成されたものであり、
前記乳剤層が、ハードコート形成用の前記溶媒に溶解する化合物を含有することを特徴とする透光性電磁波シールドフィルタ用導電膜。

【公開番号】特開2010−251734(P2010−251734A)
【公開日】平成22年11月4日(2010.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−69390(P2010−69390)
【出願日】平成22年3月25日(2010.3.25)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】