説明

透明で伝導性の金属合金酸化物を有する基板を真空被覆する方法並びに金属合金酸化物でできた透明で伝導性の層

本発明は、真空チャンバー(1)内で、基板(2)上で、ホスト材料及びドープ材料を含んだ透明で伝導性の層を堆積する方法であって、ホスト材料は、亜鉛酸化物又はインジウム酸化物からなり、かつドープ材料は、第3主族又は第4主族からの少なくとも1つの金属又は半金属の元素の酸化物を含む前記方法において、PVD法を使用したホスト材料の堆積の間に、酸素及び前駆物質が真空チャンバー(1)内に供給され、前駆物質は、第3主族又は第4主族からの少なくとも1つの元素を含み、かつドープ材料の濃度が、勾配を有する層厚推移において形成される。本発明はさらに金属合金酸化物でできた透明で伝導性の層に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、透明で伝導性の金属合金酸化物でできた層の堆積のための真空法並びに透明で伝導性の金属合金酸化物でできた層に関する。その際、金属合金酸化物はドープ材料が挿入されているホスト材料を含み、ドープ材料の濃度は、ホスト材料内で、勾配のある層厚推移において形成される。少なくとも90%の金属合金酸化物に対するモル割合を示す層成分を、本発明による意味でのホスト材料とみなす。
【背景技術】
【0002】
透明で伝導性の層は、多くの技術的機器において使用されている。典型的な使用は、平面ディスプレイ、薄層太陽電池、電子ペーパー及びディスプレイ入力機能を有するモバイル機器である。ここに表される、本発明において意図される伝導性とは、0.1Ωcmより低い比抵抗を有する材料を意味するものとして理解される。ここに表される、本発明において意図される透明とは、1μmの層厚において、入射光線(波長550nm)を60%以下だけ弱める材料を意味する。
【0003】
伝導性の金属合金酸化物(透明伝導性酸化物、TCO)でできた透明な層の製造物は広く知れわたっている。このような層は、ホスト材料及びドープ材料からなる。ドープ材料を含まず、酸素欠陥によってのみ伝導性が調整されるTCOは、本発明の対象ではなく、以下で議論もされない。
【0004】
最も重要で実用的な意義を有するTCOは、インジウム−錫−酸化物(ITO、錫に対するインジウムの比率は、質量%で約90:10)である。ITOは、1×10−4Ωcmから6×10−4Ωcmまでの範囲の比抵抗を有する。被覆中、被覆される基板が、本質的に室温を超えないで熱せられる場合に(温度<100℃)、ITOでは、より高い電気抵抗が得られる。ITOの代替物は、温められていない基板で5×10−4Ωcm未満の抵抗値を調整できる、インジウム−亜鉛−酸化物(IZO)である(WO 03/024712 A1)。
【0005】
両方の材料は、それらが金属インジウムの非常に高い含量を示すという特徴を有する。これらの材料については、限られた資源しかなく、それらは既に過去において大きな価格高騰をもたらした。このことは、透明な電極を割安にすべきである場合、あるいは非常に小さい平面抵抗が要求され、これら両方のTCOにおいて、より厚い層厚が要求される場合、特に好ましくない。さらに、材料のITO及びIZOは、電磁線の1000nmから2000nmの間のスペクトル領域において、限定された透過性しか有しておらず、これは太陽電池における使用に際して、好ましくない結果をもたらす。
【0006】
上述の理由から、代わりに、亜鉛酸化物が透明な伝導性の層のための出発材料として使用されている。しかしながら、2×10−4Ωcmから2×10−3Ωcmまでの範囲の電気抵抗に達するために、亜鉛酸化物にドープ材料を添加させなければならない。添加される元素として、たいていは第3主族の元素が使用される。好ましくは、アルミニウムがドープ材料として使用される。アルミニウムの量率と亜鉛の量率との典型的な比率(それぞれ原子%)は、その際、0.5〜5の間にある。アルミニウムの代わりに、ゲルマニウムもドープ材料として使用される(JP2006147325A)。さらに、ドーピングとして、複数の元素を有する化合物も提案されている(JP6293956A)。
【0007】
現在、上述のホスト格子の全てを有するTCO層も、主に固体状態での噴霧(スパッタリング)によって製造されている。さらに、所望の層材料のブロック(Block)(ターゲット)が希ガスイオンと衝突される。これらのイオンは、ブロックの結合からいくつかの原子を離し、引き続きこれらの原子が層として基板上に堆積する。
【0008】
スパッタリングのための広く周知な装置は、マグネトロンであり、その場合、相応する電気線および磁界の重ね合わせによって、層形成するターゲット材料のより高い引きはがしが達成される。その際、平面マグネトロンと同様、ロールマグネトロンも使用される(DE102008009339 A1)。これらの方法では、堆積される層材料は専らターゲットの材料に由来する。このようなTCO−層は、セラミックス層なので、これらのターゲットもセラミックスのターゲットにあたる。
【0009】
TCOのための他の被覆方法は、反応性スパッタリングであり、その場合、純粋な金属のターゲットが使用される。相応して、そのようなプロセスでは、追加の酸素を気相による供給させなければならない。さらにまた、所望の特性を達成するために、非常に精密なプロセス制御が必要である(B. Szyszka et al. SVC 48rd Annual Technical Conference Proceedings (2005) 691)。
【0010】
TCOの堆積のためのさらなる別の方法は、化学蒸着を使用し、その場合、互いに異なったガス状の出発材料からなる混合物が、基板上で反応される(S. Fay et al. Thin Solid Films 515 (2007) 8558)。その際、ホスト材料用の出発材料(この場合には、ジエチル亜鉛と水)と同様、ドープ材料用の出発材料(B)も、気体として導入される。
【0011】
さらに、TCO−層はレーザーアブレーションを介して製造される(Naghavi et al. Thin Solid Films 360 (2000) 233)。
【0012】
いずれの挙げられた方法、特に、実際には、最も利用されているセラミックスターゲットからのスパッタリングは、経済的な関心が持たれる堆積速度において、ドープ材料の濃度の垂直な変化を可能にさせないといった欠点を有している。それは、特に、実際には広く周知なセラミックスターゲットからのスパッタリングに当てはまる。この方法では、成分の濃度は、既にターゲットの組成を介して決定される。場合により、酸素含有量は、被覆の間、酸素の追加の導入を介して変えることができる。反応性スパッタリングでの条件も同様である。ここで、ターゲットは、ホスト材料及びドープ材料用に予定される金属の合金からなる。成分の濃度は、同時に層中のホスト材料及びドープ材料の比率を定める。同様に、それはレーザーアブレーションに当てはまる。化学蒸着は、たしかに、真空チャンバーにおいて導入されるガスの供給量を変えることにより、層成分の濃度の変更を可能にする。比較的高い作業圧力(上述の引用では、10Paの範囲)が、特に、大表面の被覆の場合に、真空チャンバー内のガス混合物の組成の迅速な変更を可能とさせない。層厚推移における層組成の変化は、それにより、不十分な範囲でのみ達成されうる。
【0013】
それ故、公知の方法では、複数の被覆ステーションが連続して使用される場合に、層厚推移において勾配を有する透明な伝導性の層を形成できるにすぎないが、このことは、またしても、設備の取り付けに際しての高められた出費を意味し、かつ追加の輸送ステップにより製造プロセスを、より費用のかかるものにする。
【0014】
課題
それ故、本発明の基礎をなす技術的課題は、従来の技術の欠点を克服させる透明で伝導性の層を堆積する方法、および金属合金酸化物でできた透明で伝導性の層を製造する方法をあみだすことである。特に、層は、少ない比抵抗およびそれゆえ高い電気伝導性を示すべきである。さらに、本発明に従った方法で、真空チャンバー内において従来技術と比してドープ材料濃度の急な勾配を有する層が堆積し得るべきである。
【0015】
この技術的課題の解決は、請求項1及び8の特徴を有する対象によってもたらされる。本発明のさらに有利な形態は、従属請求項からもたらされる。
【0016】
本発明による方法では、真空チャンバーの内部で基板上で、透明で電気伝導性の層が金属合金酸化物から堆積される。その際、金属合金酸化物は、ホスト材料とドープ材料を含有する。ホスト材料として、亜鉛酸化物またはインジウム酸化物が使用され、それらは層形成する金属合金酸化物に関して、少なくとも90%のモル分率を成している。電気伝導性の増加のために、ホスト材料中に第3主族または第4主族からの少なくとも1つの金属または半金属の元素の酸化物を含むドープ材料が導入される。その際、特に適した元素は、ホウ素、アルミニウム、ガリウムおよびインジウムである(インジウムは、当然、ホスト材料として亜鉛酸化物を使用する場合だけである)。これらの元素の使用により、ホスト材料の伝導性の改善において、特に良好な結果が得られる。
【0017】
本発明による方法は、さらに、ホスト材料が、PVD−プロセス、例えばスパッタリングまたはあらゆる種類の真空蒸発を使用して堆積される点で傑出している。ドープ材料は、ホスト材料中に、ホスト材料のPVD−堆積工程の間に、真空チャンバー内へと作業ガス以外にも、さらに酸素および前駆物質を入れることにより導入され、その際、前駆物質は、第3主族または第4主族からの金属または半金属の元素を含有している。真空チャンバー内に流れ込む前駆物質は、真空チャンバー内で分解され、かつ分解された成分は、真空チャンバー内に存在する異なる粒子と化学反応する。このようにして、前駆物質の中に含まれている金属または半金属の元素は、真空チャンバー内に存在する酸素により酸化し、かつドープ材料として、ホスト材料中に、層構成の間に挿入される。第3主族または第4主族からの金属または半金属の元素は、後に簡素化されて「ドープ元素」と名付けられ、かつその酸化物は、「ドープ元素酸化物」と呼ばれる。
【0018】
ドープ元素酸化物の他に、プロセスに応じて、前駆物質の別の分解生成物、例えば、ドープ元素自体は、酸化されていない状態で、あるいは真空チャンバー内で行われる化学反応の別の反応生成物は、ホスト材料中に挿入し得ると理解される。しかしながら、これらは、本発明に本質的なことではなく、それ故、この詳細な説明の対象ではない。しかしながら、本発明に本質的なことは、真空チャンバー内に入れられる前駆物質の供給量が、ホスト材料中に挿入される粒子の合計が、堆積されている層材料のモル分率の10%を超えない高さでのみ調整されることである。
【0019】
ドープ材料により、電荷キャリアの数が増大するため、ホスト材料のドープは、その伝導性を向上させる。しかしながら、同時にドープ材料は、ホスト材料の格子中の欠陥としても作用し、それにより電荷キャリアの移動度を制限する。したがって、伝導性層については、層厚にわたってみてドープ材料の濃度に関する勾配を示す場合に好ましい。それというのも、ドープ材料の高い濃度を有する部分的な層が形成され、それが追加の電荷キャリアを提供して、低いドープ材料濃度を有する部分的な層を形成するが、そのため、さらに電荷キャリアの高い移動度が、ホスト材料の格子中の少ない欠陥に基づき可能になるからである。
【0020】
本発明による方法では、それ故、層厚推移においてドープ材料の濃度に関する勾配を示す透明で伝導性な層が堆積される。
【0021】
真空チャンバー内に、PVD法を使用したホスト材料の堆積とPVD法との組み合わせは、比較的少量のドープ材料の元素を含有した前駆物質を同時に入れた場合、層厚推移におけるドープ材料の濃度を変える多くの可能性を開く。
【0022】
被覆の間に動かされる基板では、層厚推移におけるドープ材料の濃度勾配は、例えば、前駆物質のための導入口を、基板の運動方向でみて、ホスト材料の堆積のための装置の前および/または装置の後ろに配置することによって、調整することができる。この装置の前にある導入口は、層底部中でドープ材料の高い濃度を生じさせ、その濃度は、層成長とともに連続して減少する。前駆物質のための導入口が、ホスト材料の堆積のための装置の後ろに配置される場合、逆の態様をとる。その際、層は、層表面でドープ材料の最も高い濃度を示し、その濃度は、層底部に向けて低くなる。
【0023】
ホスト材料の堆積のための装置の前および該装置の後ろの導入口の配置の場合、既記の両者のドープ材料に関する層厚推移における濃度プロフィールも重複し得る。一実施形態において、ホスト材料の堆積のための装置の前および後ろで、前駆物質の供給量は、堆積された層が、層底部および層表面で、そのつど、ドープ材料の濃度の極大を示すように調整される。したがって、層底部および層表面では、そのつど、高い電荷キャリア密度を有する部分層が形成される。これら両方の部分層の間に部分層が存在し、そこでは両方の層面から提供された電荷キャリアが、層材料に沿って高い移動度を伴って広がり得る。このように、堆積された層は、高い伝導性を示す。
【0024】
本発明による方法の使用により、しかしながら、基板は、層厚推移におけるドープ材料の濃度勾配を伴って形成させるために動いている状態で被覆され得るだけでなく、これは、基板の被覆に際し、動いていない状態においても可能である。
【0025】
層厚推移におけるドープ材料の濃度勾配は、本発明によれば、例えば、真空チャンバー内への前駆物質の供給量を変化させることによって調整することもできる。ホスト材料の堆積速度を変えずに、前駆物質の供給量をより低く調整するほど、堆積された層材料において、ドープ材料の濃度は、より低くなる。
【0026】
代替または追加でも、ホスト材料の堆積速度は変更できる。ホスト材料が、例えば、マグネトロン−スパッタリング法を用いて堆積される場合には、ホスト材料の堆積速度を変更するために、例えば、マグネトロンに加えられる電力を変更することができる。前駆物質の供給量を変えずに、ホスト材料の堆積速度をより高くするほど、堆積される層材料の内部でのドープ材料の濃度は、より低くなる。
【0027】
これらの実施形態では、基板は、動いていない状態でも、動いている状態でも、本発明によれば被覆できる。動いていない状態で被覆された基板の場合、基板表面にわたってみて堆積された層は、層組成に関しても、電気的な性質に関しても均質な特性を示す。
【0028】
動いている状態で基板が被覆され、そのうえ、ドープ材料の濃度を、例えば、前駆物質供給量を変更するか、またはホスト材料の堆積速度を変えることにより変更すると、層組成は、基板の運動方向にみて変化し、すなわち、堆積された層は、層堆積のこの形態の場合、基板の運動方向において、ドープ材料の濃度勾配をも示すと理解される。しかし、前駆物質供給量の変化またはホスト材料の堆積速度の変化が、貫流量またはホスト材料の堆積速度の変化の少なくとも1つの完全な周期が、基板の表面上のある地点が完全に被覆窓に沿って通過する期間内で行われるように周期的に行われる場合に、堆積された層の電気的特性は、この実施形態では、基板表面にわたって少なくともほとんど均質である。この期間は、以下で被覆期間とも呼ぶ。
【0029】
この代わりに、そのガス混合物の組成は、真空チャンバー内において、本発明による方法での前駆物質の供給量変化によって、マグネトロン−スパッタリングで、または真空蒸発で支配的な真空チャンバー内の低圧に基づき、かつドープのために不可欠な少量の前駆物質供給量の場合に、一桁の秒単位の範囲内および必要であれば10分の1秒単位の範囲内でも、問題なく実現できることがわかる。それにより、堆積された層の層厚推移において、ドープ材料濃度の非常に急な勾配を調整することができる。その結果、層厚にわたってみて、ドープ材料濃度の多数の極大を形成することも可能である。そのとき、高い電荷キャリア密度を有する部分層および高い電荷キャリア移動度を有する部分層が繰り返し交互に現れ、層の伝導性に有利な作用を及ぼす。被覆の間、基板が移動されると、ドープ材料濃度の極大は、基板の運動方向において、層平面内で波形にひろがる。
【0030】
1つの実施形態において、ドープ元素を含む前駆物質の供給量は、層厚推移におけるドープ材料濃度の2つの隣接した極大が、最大で500nm互いに離れるほど迅速に変更される。好ましい実施形態において、両方の極大は、最大で150nm互いに離れている。それ故、堆積された層材料の非常に高い電気的な伝導性が実現できる。
【0031】
ドープ元素を含む前駆物質としては、1または複数の上述のドープ元素が含まれているあらゆる公知の前駆物質が使用され得る。例えば、ここでは、前駆物質である、TEOS、TMS、SiH、AlCl、B(CH、B(C、Al(CH、B、Al(Cが挙げられる。
【0032】
前駆物質が、ドープ元素の他に同時にハロゲンもさらに含んでいる場合、同様に好ましい。真空チャンバーのガス混合物において、ハロゲンが存在する場合に、ホスト材料の格子中のいくつかの酸素分子は、ハロゲンと交換され、それにより、伝導性のさらなる改善が達成され得ることが知られている。
【0033】
金属合金酸化物でできた本発明による透明で伝導性な層は、ホスト材料およびドープ材料からなり、その際、ホスト材料は亜鉛酸化物またはインジウム酸化物であり、かつかつドープ材料は、第3主族又は第4主族からの少なくとも1つの金属又は半金属の元素の酸化物を含んでいる。その場合、層厚推移におけるドープ材料の濃度は、少なくとも2つの極大を有する。1つの実施形態において、両方の極大は、層平面内で、波形にひろがる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明による方法を実施し得る装置の図の概略図を示す
【実施例】
【0035】
本発明は、以下の実施例に基づいてより詳細に説明される。図1は、本発明による方法を実施し得る装置の概略図を示す。図1における装置は真空チャンバー1を有し、その真空チャンバー1中で、最も多い層成分として亜鉛酸化物を有する透明な伝導性の層が、PETシートとして形成されている基板2の表面上で堆積される。層を形成する亜鉛酸化物は、反応性のマグネトロンスパッタリング加工によって基板2上に堆積される。すなわち、マグネトロンスパッタリングのために使用される作業ガスのアルゴン以外に、さらに酸素も真空チャンバー1への供給口3を介して供給され、150sccmでアルゴン及び70sccmで酸素が真空チャンバー1中に流れる。
【0036】
上に、それぞれ127mm×350mmの大きさの亜鉛ターゲット5が存在する2つのマグネトロン4によって、亜鉛粒子が飛散され、それらの亜鉛粒子は、真空チャンバー1内に存在する酸素との反応において、亜鉛酸化物として基板表面上に堆積する。ガス放電は、6kwの出力を有する、2つのマグネトロン4の間の、スイッチ切り替え式の双極の電力供給装置6により点火され、2つのマグネトロンのいずれもが、ガス放電のカソード又はアノードとして相互にスイッチ切り替えされる。
【0037】
電気伝導性を高くするために、ホスト材料として作用する亜鉛酸化物を珪素酸化物粒子でドープさせる。このために、亜鉛ターゲット5の反応性マグネトロン−スパッタリングの間に、気体状で珪素含有の前駆物質であるテトラエチルオルトシリケート(TEOS)が、同様に入口3を介して真空チャンバー1中へ供給される。マグネトロン−プラズマの作用のもと、前駆物質は分解され、分解生成物の化学反応が引き起こされる。このようにして、TEOSに含有されている珪素も、化学結合によって結合され、酸化珪素の形態においても、ドープ材料として堆積された亜鉛酸化物格子中に挿入される。
【0038】
被覆工程の間に、基板2の移動方向において0.1m/minの速さで、基板2を、40cmの長さの被覆窓7のそばを通過させる。それにより、基板2の表面上のある地点は、1回完全に被覆窓に沿って通過されるまでに4分必要とする。
【0039】
さらに、前駆物質の流入量は、被覆の間で定期的に変更される。その際、0sccmから7sccmにかけて連続して60s以内で流入量を増大させ、引き続き、7sccmから0sccmにかけて60s以内で減少させ、次いで、再び、7sccmへと60s以内で増大させる。
【0040】
したがって、前駆物質の流入量の増大及び減少の期間は、被覆時間の間に、2度完全に経過され、そのため、堆積された層の厚さにわたって、2つの極大がドープ材料の濃度に関して形成される。被覆の間、基板は移動しているため、これら両方の極大は、層平面内で、被覆方向において波状に走る。基板2の被覆方向は、矢印を用いて図1中に示されている。
【0041】
既記の堆積条件では、700nmの厚さの透明な伝導性の層が堆積された。その層は、70%より高い透明度及び表面単位あたり40Ωの層抵抗を有する。
【0042】
上述した実施例において、前駆物質流入量は、60s以内に極小と極大の間で変更された。既に説明したように、これらの交換は、一桁の秒範囲においても、又はましてや10分の1の秒範囲においても実行できる。これは、2つのマグネトロン4の代わりに、ホスト材料に属する亜鉛又はインジウムが蒸発される少なくとも1つの蒸発るつぼが配置された場合にも当てはまる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
真空チャンバー(1)内で、基板(2)上で、ホスト材料及びドープ材料を含んだ透明で伝導性の層を堆積する方法であって、ホスト材料は、亜鉛酸化物又はインジウム酸化物からなり、かつドープ材料は、第3主族又は第4主族からの少なくとも1つの金属又は半金属の元素の酸化物を含む前記方法において、PVD法を使用したホスト材料の堆積の間に、酸素及び前駆物質が真空チャンバー(1)内に供給され、前駆物質は、第3主族又は第4主族からの少なくとも1つの元素を含み、かつドープ材料の濃度が、勾配のある層厚推移において形成されることを特徴とする、透明で伝導性の層を堆積する方法。
【請求項2】
勾配は、真空チャンバー(1)中で前駆物質の流入量及び/又はホスト材料の堆積速度を時間に依存して変化させることによって形成されることを特徴とする、請求項1記載の方法。
【請求項3】
層厚推移におけるドープ材料の濃度勾配が、少なくとも2つの極大をもって形成されることを特徴とする、請求項1又は2記載の方法。
【請求項4】
層厚推移における2つの極大が、最大500nmの間隔をもって形成されることを特徴とする、請求項3記載の方法。
【請求項5】
層厚推移における2つの極大が、最大150nmの間隔をもって形成されることを特徴とする、請求項4記載の方法。
【請求項6】
基板が、固定された状態で被覆されることを特徴とする、請求項1〜5までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
基板(2)が、動いている状態で被覆されることを特徴とする、請求項1〜5までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
ホスト材料及びドープ材料からなる透明で伝導性の層であって、ホスト材料は、亜鉛酸化物又はインジウム酸化物であり、かつドープ材料は、第3主族又は第4主族からの少なくとも1つの金属又は半金属の元素の酸化物を含んでいる前記層において、層厚推移におけるドープ材料の濃度が、少なくとも2つの極大を示すことを特徴とする、透明で伝導性の層。
【請求項9】
少なくとも2つの極大は、層平面内で波形にひろがることを特徴とする、請求項8に記載の層。

【図1】
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【公表番号】特表2013−517381(P2013−517381A)
【公表日】平成25年5月16日(2013.5.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−549261(P2012−549261)
【出願日】平成22年12月16日(2010.12.16)
【国際出願番号】PCT/EP2010/007673
【国際公開番号】WO2011/088875
【国際公開日】平成23年7月28日(2011.7.28)
【出願人】(594102418)フラウンホーファー−ゲゼルシャフト ツル フェルデルング デル アンゲヴァンテン フォルシュング エー ファウ (63)
【氏名又は名称原語表記】Fraunhofer−Gesellschaft zur Foerderung der angewandten Forschung e.V.
【住所又は居所原語表記】Hansastrasse 27c, D−80686 Muenchen, Germany
【Fターム(参考)】