説明

透明フィルム状接着剤および透明フィルム補強ガラス板

【課題】本発明の課題は、耐熱性(耐寒性を含む)および透明性に優れ、かつ、優れた接着力を有する透明フィルム状接着剤を提供することにある。
【解決手段】本発明に係る透明フィルム状接着剤は、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(BPDA)から誘導されるBPDA誘導単位と、2,2−ビス[4−(ジカルボキシフェノキシ)フェニル]プロパン酸二無水物(BPADA)から誘導されるBPADA誘導単位とを少なくとも含む酸二無水物誘導単位と、3,3’−ジアミノジフェニルスルホンおよびビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]スルホンより成る群から選択される少なくとも1種のジアミンから誘導されるジアミン誘導単位とを主成分とするポリイミド樹脂を主成分とする。そして、この透明フィルム状接着剤は、被着体に対して熱融着性を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、透明フィルム状接着剤に関する。また、本発明は、透明フィルム補強ガラス板にも関する。
【背景技術】
【0002】
過去に「耐熱性や透明性に優れ、かつ、高弾性率であるフィルムの形成に有用なポリイミド組成物として、アルコキシシラン基を有する芳香族ジアミン誘導単位を有するポリイミド組成物」が提案されている(例えば、特開平5−59170号公報や特開平5−78573号公報参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平5−59170号公報
【特許文献2】特開平5−78573号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、近年、耐熱性(耐寒性を含む)および透明性に優れ、かつ、優れた接着力を有する接着剤が求められている。
【0005】
本発明の課題は、耐熱性(耐寒性を含む)および透明性に優れ、かつ、優れた接着力を有する透明フィルム状接着剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(1)
本発明の第1局面に係る透明フィルム状接着剤は、ポリイミド樹脂を主成分とする。このポリイミド樹脂は、酸二無水物誘導単位とジアミン誘導単位とを主成分とする。酸二無水物誘導単位には、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(BPDA)から誘導されるBPDA誘導単位と、2,2−ビス[4−(ジカルボキシフェノキシ)フェニル]プロパン酸二無水物(BPADA)から誘導されるBPADA誘導単位とが少なくとも含まれる。ジアミン誘導単位は、3,3’−ジアミノジフェニルスルホンおよびビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]スルホンより成る群から選択される少なくとも1種のジアミンから誘導される構成単位である。つまり、ジアミン誘導単位は、3,3’−ジアミノジフェニルスルホンから誘導される33DDS誘導単位を主単位としてもよいし、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]スルホンから誘導されるBAPSM誘導単位を主単位としてもよいし、33DDS誘導単位とBAPSM誘導単位とを主単位としてもよい。
【0007】
なお、ポリイミド樹脂には、本発明の趣旨が損なわれない範囲で他の酸二無水物やジアミン(例えば、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン等)が共重合されてもかまわない。また、この透明フィルム状接着剤には、本発明の趣旨が損なわれない範囲で他のポリイミド樹脂や、ポリイミド樹脂以外の樹脂がブレンドされてもかまわない。
【0008】
また、このようなポリイミド樹脂は特開2004−210946号公報および特開2004−359931号公報に開示されている。これらの特許公報には、このポリイミド樹脂が耐熱性(高温側のみ)および透明性を有することが開示されているが、このポリイミド樹脂が被着体に対して熱融着性を有することが開示されていない。つまり、本発明は、「公知のポリイミド樹脂の未知の属性を発見し、その属性により、その公知のポリイミド樹脂が新たな用途に適することを見いだしたことに基づく発明」に該当する。したがって、本発明は用途発明として新規性を有する。そして、この透明フィルム状接着剤は、被着体に対して熱融着性を有する。したがって、この透明フィルム状接着剤は、耐熱性(耐寒性を含む)および透明性に優れ、かつ、優れた接着力を有する。
【0009】
なお、本発明において、被着体は金属、樹脂、ガラス等であるのが好ましい。被着体である金属は、アルミ、ステンレス、銅などであるのがより好ましい。被着体である樹脂は、ポリイミド等であるのがより好ましい。被着体であるガラスは、ソーダライムガラスや無アルカリガラスであるのがより好ましく、それらの中でも無アルカリガラスが特に好ましい。本発明の第1局面に係る透明フィルム状接着剤が無アルカリガラスに対して高い熱融着性を示すからである。
【0010】
このような透明フィルム状接着剤は、被着体に載置された状態で所定温度まで加熱されると、自発的に被着体に貼り着く。また、このような透明フィルム状接着剤は、ほぼイミド化が完了しているため、加熱収縮率が非常に小さい。このため、透明フィルム状接着剤は、被着体に過度な応力をかけることなく容易且つ安価に被着体に付着することができる。さらに、このような透明フィルム状接着剤は、ほぼイミド化が完了しているため、接着の際に縮合水が発生しにくい。このため、透明フィルム状接着剤は、同時両面接着によって、2つの被着体同士を接着することができる。
【0011】
(2)
また、本発明の第1局面に係る透明フィルム状接着剤において、BPADA誘導単位は酸二無水物誘導単位の25モル%以上50モル%以下を占めるのが好ましい。この透明フィルム状接着剤は、優れた耐熱性(耐寒性を含む)を示すだけでなく実用に耐え得る熱融着性を備える。
【0012】
(3)
また、本発明の第1局面に係る透明フィルム状接着剤において、ジアミン誘導単位には4,4’−ジアミノジフェニルスルホンから誘導される44DDS誘導単位が含有されるのが好ましい。44DDS誘導単位は透明フィルム状接着剤の耐熱性(耐寒性を含む)や、光透過性、機械的強度等の物性を向上させることが期待されるからである。
【0013】
(4)
また、本発明の第1局面に係る透明フィルム状接着剤はガラス転移温度が210度C以上270度C以下であるのが好ましい。このような透明フィルム状接着剤は、比較的低温で被着体に対して熱融着することができるからである。
【0014】
(5)
また、本発明の第1局面に係る透明フィルム状接着剤は、60度Cから120度Cまでのいずれかの温度をガラス転移温度に足した温度で加熱されることによって被着体に融着するのが好ましい。このような透明フィルム状接着剤は、比較的低温で被着体に対して熱融着することができるからである。
【0015】
(6)
また、本発明の第1局面に係る透明フィルム状接着剤は、JIS K−5600−5−6に示されるクロスカット法の25マス評価において、15マス以上の小片が被着体に付着したままとなるのが好ましく、20マス以上の小片が被着体に付着したままとなるのがより好ましく、全マスの小片が被着体に付着したままとなるのが最も好ましい。このような透明フィルム状接着剤は、実用に耐え得る熱融着性を備えているからである。
【0016】
(7)
また、本発明の第1局面に係る透明フィルム状接着剤は、空気中で350度Cの温度で30分間熱処理された後において50μmのフィルム厚における420nm波長の光線透過率が55%以上であるのが好ましい。このような透明フィルム状接着剤は、ディスプレイ用ガラス板などのガラス板に熱融着された後に高温処理される場合であっても良好な透明性を維持することができるからである。
【0017】
(8)
また、本発明の第1局面に係る透明フィルム状接着剤は二酸化ケイ素粒子を含有するのが好ましい。このような透明フィルム状接着剤は、空気中で350度Cの温度で30分間熱処理された後において50μmのフィルム厚における420nm波長の光線透過率が60%以上となるからである。また、本発明の第1局面において、二酸化ケイ素粒子はアルコキシシラン(テトラエトキシシラン(TEOS)等)から生成されてもよい。また、二酸化ケイ素粒子としてはオルガノシリカ粒子が用いられてもよい。
【0018】
(9)
また、本発明の第1局面に係る透明フィルム状接着剤は空気中で350度Cの温度で30分間熱処理された後において50μmのフィルム厚における420nm波長の光線透過率が60%以上であるのが好ましい。なお、50μmのフィルム厚における420nm波長の光線透過率が65%以上であるのがより好ましい。
【0019】
(10)
また、本発明の第1局面に係る透明フィルム状接着剤は支持フィルムを有するのが好ましい。透明フィルム状接着剤の支持フィルムは、被着体をより補強することができる。
【0020】
(11)
また、本発明の第1局面に係る透明フィルム状接着剤は無色透明であるのが好ましい。無色透明である透明フィルム状接着剤は、ディスプレイ用のガラス板に用いられたとき、着色透明である透明フィルム状接着剤が用いられた場合に比べて、視野が暗くなってディスプレイ装置の機能が損なわれることを抑制することができる。また、透明フィルム状接着剤が支持フィルムを有する場合、支持フィルムも透明であることが好ましい。なお、無色透明とは、光透過率が波長420nmにおいて50%以上の状態を意味する。
【0021】
(12)
本発明の第2局面に係る透明フィルム補強ガラス板は、ガラス板および透明フィルム状接着剤を備える。透明フィルム状接着剤は、本発明の第1局面に係る透明フィルム状接着剤であって、ガラス板に直接的に付着する。
【0022】
このため、この透明フィルム補強ガラス板では、ガラス板が極めて薄く大きい場合であってもガラス板が少しの荷重で損傷することを防止することができる。
【0023】
(13)
本発明の第3局面に係る透明フィルム状接着剤は、ポリアミック酸樹脂を主成分とする。このポリアミック酸樹脂は、酸二無水物誘導単位とジアミン誘導単位とを主成分とする。酸二無水物誘導単位には、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(BPDA)から誘導されるBPDA誘導単位と、2,2−ビス[4−(ジカルボキシフェノキシ)フェニル]プロパン酸二無水物(BPADA)から誘導されるBPADA誘導単位とが少なくとも含まれる。ジアミン誘導単位は、3,3’−ジアミノジフェニルスルホンおよびビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]スルホンより成る群から選択される少なくとも1種のジアミンから誘導される構成単位である。つまり、ジアミン誘導単位は、3,3’−ジアミノジフェニルスルホンから誘導される33DDS誘導単位を主単位としてもよいし、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]スルホンから誘導されるBAPSM誘導単位を主単位としてもよいし、33DDS誘導単位とBAPSM誘導単位とを主単位としてもよい。
【0024】
なお、ポリアミック酸樹脂には、本発明の趣旨が損なわれない範囲で他の酸二無水物やジアミン(例えば、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン等)が共重合されてもかまわない。また、この透明フィルム状接着剤には、本発明の趣旨が損なわれない範囲で他のポリアミック酸樹脂や、ポリアミック酸樹脂以外の樹脂がブレンドされてもかまわない。また、ポリアミック酸樹脂は一部イミド化されていてもよい。
【0025】
本願発明者の鋭意検討の結果、この透明フィルム状接着剤は、被着体に対する接着性、および優れた透明性を有する。また、この透明フィルム状接着剤は、イミド化後には、第1局面の透明フィルムと同一の効果を得ることができる。なお、透明フィルム状接着剤は、2つの被着体同士を接着させる場合、一方の被着体に接着させてイミド化させた後、他方の被着体に接着させるとよい。
【0026】
(14)
また、本発明の第3局面に係る透明フィルム状接着剤において、BPADA誘導単位は酸二無水物誘導単位の25モル%以上50モル%以下を占めるのが好ましい。この透明フィルム状接着剤は、優れた接着性を有する。また、この透明フィルム状接着剤は、イミド化された場合、優れた耐熱性(耐寒性を含む)を示すだけでなく実用に耐え得る熱融着性を備える。
【0027】
(15)
また、本発明の第3局面に係る透明フィルム状接着剤において、ジアミン誘導単位には4,4’−ジアミノジフェニルスルホンから誘導される44DDS誘導単位が含有されるのが好ましい。この透明フィルム状接着剤では、イミド化された場合、44DDS誘導単位は透明フィルム状接着剤の耐熱性(耐寒性を含む)や、光透過性、機械的強度などの物性を向上させることが期待されるからである。
【0028】
(16)
また、本発明の第3局面に係る透明フィルム状接着剤は、JIS K−5600−5−6に示されるクロスカット法の25マス評価において、15マス以上の小片が被着体に付着したままとなるのが好ましく、20マス以上の小片が被着体に付着したままとなるのがより好ましく、全マスの小片が被着体に付着したままとなるのが最も好ましい。このような透明フィルム状接着剤は、実用に耐え得る接着性を備えているからである。
【0029】
(17)
また、本発明の第3局面に係る透明フィルム状接着剤は支持フィルムを有するのが好ましい。透明フィルム状接着剤の支持フィルムは、被着体をより補強することができる。
【0030】
(18)
また、本発明の第3局面に係る透明フィルム状接着剤は、イミド化後、無色透明であるのが好ましい。無色透明である透明フィルム状接着剤は、ディスプレイ用のガラス板に用いられたとき、着色透明である透明フィルム状接着剤が用いられた場合に比べて、視野が暗くなってディスプレイ装置の機能が損なわれることを抑制することができる。また、透明フィルム状接着剤が支持フィルムを有する場合、支持フィルムも透明であることが好ましい。なお、無色透明とは、光透過率が波長420nmにおいて50%以上の状態を意味する。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、実施例を用いて本発明を具体的に説明する。
【実施例】
【0032】
(実施例1)
1.ポリイミド前駆体溶液の合成
500mLの3つ口フラスコに、ポリテトラフルオロエチレン製の撹拌羽付きの撹拌棒を取り付けて重合容器を形成した。そして、その重合容器に三菱ガス化学社製のN,N−ジメチルアセトアミド(以下「DMAC」と略する)100.5gと、小西化学工業株式会社製の3,3−ジアミノジフェニルスルホン(以下「33DDS」と略する)20.386g(0.0822モル)とを投入し、33DDSをDMACに完全に溶解させた。そして、その後、三菱化学社製のビフェニルテトラカルボン酸二無水物(以下「BPDA」と略する)18.31g(0.062モル)と、上海市合成樹脂研究所製の2,2−ビス[4−(ジカルボキシフェノキシ)フェニル]プロパン二無水物(以下「BPADA」と略する)10.79g(0.0208モル)とを重合容器に投入した後、室温で36時間、上記モノマーを重合させてポリイミド前駆体溶液を得た。
【0033】
なお、このポリイミド前駆体溶液の固形分は、固形分が31質量%であった。また、33DDSのモル数に対するBPDAとBPADAとの合計モル数の比は、1.01であった。また、BPDAとBPADAとのモル比は、75:25であった。
【0034】
2.透明ポリイミドフィルムの作製
上述のポリイミド前駆体溶液をデシケータに入れて真空状態とし、その状態のままポリイミド前駆体溶液を1時間放置してポリイミド前駆体溶液のガス抜きを行った。そして、ガス抜きされたポリイミド前駆体溶液を離型処理済みのガラス板上にキャストした後、そのポリイミド前駆体溶液の厚みを、調整用間隙を有する引落しバーを用いて均一にした。そして、そのポリイミド前駆体溶液の液膜が形成されたガラス板をオーブンに入れ、ポリイミド前駆体溶液の液膜を80度Cで30分間乾燥させてポリアミック酸フィルムを形成した後、そのガラス板をオーブンから取り出し、ガラス板上に形成されたポリアミック酸フィルムをガラス板から剥離した。次に、剥離したポリアミック酸フィルムを金枠に挟み込んでオーブンに入れ、120度Cで30分間、150度Cで30分間、300度Cで30分間加熱して、ポリアミック酸フィルム中のポリアミック酸をイミド化させて、透明フィルム状接着剤である透明ポリイミドフィルムを形成した。その後、その透明ポリイミドフィルムをオーブンから取り出して室温まで冷却した後、金枠からその透明ポリイミドフィルムを取り外した。
【0035】
3.透明ポリイミドフィルムの物性測定
以下の通りにして透明ポリイミドフィルムの膜厚、ガラス転移温度、光透過率および引張強度を測定した。
【0036】
(1)膜厚測定
株式会社ミツトヨ製のデジマチックインジケータ(ID−S112)を用いて透明ポリイミドフィルムの膜厚を測定した。なお、デジマチックインジケータの測定子として、球面R1.5mmの測定子を選択した。
【0037】
(2)光透過率測定
透明ポリイミドフィルムを30mm×30mm形状にカットした後、その透明ポリイミドフィルム片の波長420nmの光の透過率を島津製作所製の分光光度計UV−2550を用いて測定した。なお、ガラス板に接着させた状態で透明ポリイミドフィルムの光透過率を測定する場合には、透明ポリイミドフィルム接着前のガラス板を用いて光透過率のゼロ点調整を行った後、ガラス板付きの透明ポリイミドフィルム片の波長420nmの光の透過率を測定した。
【0038】
(3)ガラス転移温度測定
セイコーインスツルメント社製の動的粘弾性装置DM6100を用いて透明ポリイミドフィルムのガラス転移温度を測定した。なお、測定条件は以下の通りである。
−測定条件−
測定環境:常温常圧
フィルムサイズ:縦8mm×横30mm
正弦荷重:振幅98mN,周波数1.0Hz
昇温速度:2℃/min
【0039】
(4)引張強度測定
島津製作所製のオートグラフAGS−500Bを用いて透明ポリイミドフィルムの引張強度を測定した。なお、測定条件は以下の通りである。
−測定条件−
測定環境:常温常圧
試料幅:5mm
チャック間距離:30mm
引張速度:50mm/min
【0040】
上記の項目に係る測定を行った結果、この透明ポリイミドフィルムの膜厚は50μm、ガラス転移温度は260度C、光透過率は72%、および引張強度は154.8Mpaであった(表1参照)。
【0041】
4.ポリイミドフィルムの熱融着性および耐熱性の評価
(1)第1試験片の作製
透明ポリイミドフィルムを厚さ1mmの無アルカリガラス板上にシワや気泡のないように密着させ、ホットプレート上に乗せて常温から温度を上げていき、昇温過程でシワの発生や気泡が出ないことを確認しながら透明ポリイミドフィルムのガラス転移温度近くまで昇温した。その後、前記ホットプレートで加熱した無アルカリガラス板と透明ポリイミドフィルムをさらにオーブンに入れ、透明ポリイミドフィルムのガラス転移温度より120度C高い温度で30分間加熱した。しかる後、透明ポリイミドフィルムと無アルカリガラス板が熱融着されたものをオーブンから取り出して室温まで冷却することで第1試験片を得た。
【0042】
(2)第2試験片の作製
上記第1試験片の製作と同様に、透明ポリイミドフィルムを厚さ1mmの無アルカリガラス板上にシワや気泡のないように密着させ、ホットプレート上に乗せて常温から温度を上げていき、昇温過程でシワの発生や気泡が出ないことを確認しながら透明ポリイミドフィルムのガラス転移温度近くまで昇温した。その後、前記ホットプレートで加熱した無アルカリガラス板と透明ポリイミドフィルムをさらにオーブンに入れ、350度Cで30分間加熱した。しかる後、透明ポリイミドフィルムと無アルカリガラス板が熱融着されたものをオーブンから取り出して室温まで冷却することで第2試験片を得た。
【0043】
(3)第3試験片の作製
第1試験片の無機アルカリガラス板をポリイミドフィルムである東レ・デュポン製のカプトン(登録商標、品番:300H、膜厚:75μm)に変更した以外は、第1試験片と同様にして第3試験片を得た。
【0044】
(4)第4試験片の作製
第1試験片の無機アルカリガラス板を厚さ1mmのアルミ板に変更した以外は、第1試験片と同様にして第4試験片を得た。
【0045】
(5)第5試験片の作製
第1試験片の無機アルカリガラス板を厚さ0.5mmのステンレス板(以下、「SUS板」と略する)に変更した以外は、第1試験片と同様にして第5試験片を得た。
【0046】
(6)第6試験片の作製
耐熱性を有するポリイミドフィルム(以下、「PIフィルム」と略する)からなるドライバックを形成し、透明ポリイミドフィルムを厚さ0.5mmの銅板上に密着したものをドライバックに入れた。そのドライバック中を真空ポンプで減圧させて無酸素状態にし、ホットプレートにより透明ポリイミドフィルムをガラス転移温度以上の温度で加熱した。そして、無酸素状態を保つようにドライバックを密封し、透明ポリイミドフィルムと銅板が入ったドライバックを、オーブンに入れて透明ポリイミドフィルムのガラス転移温度より120度C高い温度で30分間加熱した。その後、透明ポリイミドフィルムと銅板が入ったドライバックをオーブンから取り出して室温まで冷却し、ドライバックから透明ポリイミドフィルムと銅板を取り出して第6試験片を得た。
【0047】
(7)接着力および光透過率の測定
以下の通りにして第1試験片、第2試験片、第3試験片、第4試験片、第5試験片および第6試験片それぞれの接着力を測定した。また、上述のようにして第2試験片の光透過率を測定した。
【0048】
上記の項目に係る測定を行った結果、第2試験片の光透過率は56%であり、ガラス板に接着させた状態の透明ポリイミドフィルムに対する第2試験片の光透過率減少率は22.2%であった(表1参照)。
【0049】
−接着力評価−
JIS K5600−5−6(クロスカット法)に準じて、刃先の間隔が1.0mmになるようにカッターナイフの刃を6枚連結して治具を作製した。そして、その治具を用いて第1試験片、第2試験片、第3試験片、第4試験片、第5試験片および第6試験片の透明ポリイミドフィルムそれぞれを格子状の切り目を入れて、25マスのマス目を形成した。その後、格子状の切り目を入れた透明ポリイミドフィルムの上にテープを貼り、指先でテープを透明ポリイミドフィルムにこすりつけた後に、透明ポリイミドフィルムからテープを剥した。そして、そのときにガラス板に残った透明ポリイミドフィルムの格子の数をカウントし、以下の基準により評価を行った。
○:25マス中、透明ポリイミドフィルムがガラス板に残った小片が15マス以上であった。
×:25マス中、透明ポリイミドフィルムがガラス板に残った小片が14マス以下であった。
【0050】
上記の項目に係る測定を行った結果、透明ポリイミドフィルムを無アルカリガラス板に接着したものをガラス転移温度より120度C高い温度で加熱した場合(第1試験片)、全マスにおいて透明ポリイミドフィルムの小片がガラス板に残ったので、接着力の評価は○であった。透明ポリイミドフィルムを無アルカリガラス板に接着したものを350度Cの温度で加熱した場合(第2試験片)、全マスにおいて透明ポリイミドフィルムの小片がガラス板に残ったので、接着力の評価は○であった。透明ポリイミドフィルムをカプトン(登録商標)に接着した場合(第3試験片)、全マスにおいて透明ポリイミドフィルムの小片がカプトン(登録商標)に残ったので、接着力の評価は○であった。透明ポリイミドフィルムをアルミ板に接着した場合(第4試験片)、全マスにおいて透明ポリイミドフィルムの小片がアルミ板に残ったので、接着力の評価は○であった。透明ポリイミドフィルムをSUS板に接着した場合(第5試験片)、全マスにおいて透明ポリイミドフィルムの小片がSUS板に残ったので、接着力の評価は○であった。透明ポリイミドフィルムを銅板に接着した場合(第6試験片)、全マスにおいて透明ポリイミドフィルムの小片が銅板に残ったので、接着力の評価は○であった(表1参照)。
【0051】
(実施例2)
ポリイミド前駆体溶液のDMACの投入量を100.5145gに代え、33DDSの投入量を18.518g(0.07467モル)に代え、BPDAの投入量を11.086g(0.0377モル)に代え、BPADAの量を19.608g(0.0377モル)に代えた以外は、実施例1と同様に透明ポリイミドフィルムを作製して、その透明ポリイミドフィルムの膜厚、光透過率、ガラス転移温度、引張強度を測定すると共に、無アルカリガラス板およびカプトン(登録商標)に係る熱融着性及び耐熱性の評価試験を行った。
【0052】
上記の項目に係る測定を行った結果、この透明ポリイミドフィルムの膜厚は50μm、ガラス転移温度は236度C、光透過率は73%、および引張強度は144.4Mpaであった。第2試験片の光透過率は58%であり、ガラス板に接着させた状態の透明ポリイミドフィルムに対する第2試験片の光透過率減少率は20.5%であった。透明ポリイミドフィルムを無アルカリガラス板に接着したものをガラス転移温度より120度C高い温度で加熱した場合(第1試験片)、全マスにおいて透明ポリイミドフィルムの小片がガラス板に残ったので、接着力の評価は○であった。透明ポリイミドフィルムを無アルカリガラス板に接着したものを350度Cの温度で加熱した場合(第2試験片)、全マスにおいて透明ポリイミドフィルムの小片がガラス板に残ったので、接着力の評価は○であった。透明ポリイミドフィルムをカプトン(登録商標)に接着した場合(第3試験片)、全マスにおいて透明ポリイミドフィルムの小片がカプトン(登録商標)に残ったので、接着力の評価は○であった(表1参照)。
【0053】
(実施例3)
ポリイミド前駆体溶液のDMACの投入量を101.4066gに代え、33DDSを和歌山精化製のビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン(以下「BAPSM」と略する)24.8999g(0.0576モル)に代え、BPDAの投入量を8.5576g(0.0291モル)に代え、BPADAの投入量を15.1359g(0.0291モル)に代えた以外は、実施例1と同様に透明ポリイミドフィルムを作製して、その透明ポリイミドフィルムの膜厚、光透過率、ガラス転移温度、引張強度を測定すると共に熱融着性及び耐熱性の評価試験を行った。なお、このとき、BPDAとBPADAとのモル比は、50:50であった。
【0054】
上記の項目に係る測定を行った結果、この透明ポリイミドフィルムの膜厚は50μm、ガラス転移温度は215度C、光透過率は71%、および引張強度は113.2Mpaであった。第2試験片の光透過率は66%であり、ガラス板に接着させた状態の透明ポリイミドフィルムに対する第2試験片の光透過率減少率は6.9%であった。透明ポリイミドフィルムを無アルカリガラス板に接着したものをガラス転移温度より120度C高い温度で加熱した場合(第1試験片)、15マスにおいて透明ポリイミドフィルムの小片がガラス板に残ったので、接着力の評価は○であった。透明ポリイミドフィルムを無アルカリガラス板に接着したものを350度Cの温度で加熱した場合(第2試験片)、15マスにおいて透明ポリイミドフィルムの小片がガラス板に残ったので、接着力の評価は○であった。透明ポリイミドフィルムをカプトン(登録商標)に接着した場合(第3試験片)、全マスにおいて透明ポリイミドフィルムの小片がカプトン(登録商標)に残ったので、接着力の評価は○であった。透明ポリイミドフィルムをアルミ板に接着した場合(第4試験片)、全マスにおいて透明ポリイミドフィルムの小片がアルミ板に残ったので、接着力の評価は○であった。透明ポリイミドフィルムをSUS板に接着した場合(第5試験片)、全マスにおいて透明ポリイミドフィルムの小片がSUS板に残ったので、接着力の評価は○であった。透明ポリイミドフィルムを銅板に接着した場合(第6試験片)、全マスにおいて透明ポリイミドフィルムの小片が銅板に残ったので、接着力の評価は○であった(表1参照)。
【0055】
(実施例4)
ポリイミド前駆体溶液9.9gに対して信越化学工業社製のテトラエトキシシラン(TEOS)を0.1g添加した以外は実施例1と同様に透明ポリイミドフィルムを作製して、その透明ポリイミドフィルムの膜厚、光透過率、ガラス転移温度、引張強度を測定すると共に、無アルカリガラス板およびカプトン(登録商標)に係る熱融着性及び耐熱性の評価試験を行った。
【0056】
上記の項目に係る測定を行った結果、この透明ポリイミドフィルムの膜厚は50μm、ガラス転移温度は260度C、光透過率は74%、および引張強度は157.3Mpaであった。第2試験片の光透過率は65%であり、ガラス板に接着させた状態の透明ポリイミドフィルムに対する第2試験片の光透過率減少率は12.3%であった。透明ポリイミドフィルムを無アルカリガラス板に接着したものをガラス転移温度より120度C高い温度で加熱した場合(第1試験片)、全マスにおいて透明ポリイミドフィルムの小片がガラス板に残ったので、接着力の評価は○であった。透明ポリイミドフィルムを無アルカリガラス板に接着したものを350度Cの温度で加熱した場合(第2試験片)、全マスにおいて透明ポリイミドフィルムの小片がガラス板に残ったので、接着力の評価は○であった。透明ポリイミドフィルムをカプトン(登録商標)に接着した場合(第3試験片)、全マスにおいて透明ポリイミドフィルムの小片がカプトン(登録商標)に残ったので、接着力の評価は○であった(表1参照)。
【0057】
(実施例5)
ポリイミド前駆体溶液9.9gに対して信越化学工業社製のテトラエトキシシラン(TEOS)を0.1g添加した以外は実施例2と同様に透明ポリイミドフィルムを作製して、その透明ポリイミドフィルムの膜厚、光透過率、ガラス転移温度、引張強度を測定すると共に、無アルカリガラス板およびカプトン(登録商標)に係る熱融着性及び耐熱性の評価試験を行った。
【0058】
上記の項目に係る測定を行った結果、この透明ポリイミドフィルムの膜厚は50μm、ガラス転移温度は236度C、光透過率は75%、および引張強度は143.2Mpaであった。第2試験片の光透過率は64%であり、ガラス板に接着させた状態の透明ポリイミドフィルムに対する第2試験片の光透過率減少率は14.7%であった。透明ポリイミドフィルムを無アルカリガラス板に接着したものをガラス転移温度より120度C高い温度で加熱した場合(第1試験片)、全マスにおいて透明ポリイミドフィルムの小片がガラス板に残ったので、接着力の評価は○であった。透明ポリイミドフィルムを無アルカリガラス板に接着したものを350度Cの温度で加熱した場合(第2試験片)、全マスにおいて透明ポリイミドフィルムの小片がガラス板に残ったので、接着力の評価は○であった。透明ポリイミドフィルムをカプトン(登録商標)に接着した場合(第3試験片)、全マスにおいて透明ポリイミドフィルムの小片がカプトン(登録商標)に残ったので、接着力の評価は○であった(表1参照)。
【0059】
(実施例6)
ポリイミド前駆体溶液9.9gに対して信越化学工業社製のテトラエトキシシラン(TEOS)を0.1g添加した以外は実施例3と同様に透明ポリイミドフィルムを作製して、その透明ポリイミドフィルムの膜厚、光透過率、ガラス転移温度、引張強度を測定すると共に、無アルカリガラス板およびカプトン(登録商標)に係る熱融着性及び耐熱性の評価試験を行った。
【0060】
上記の項目に係る測定を行った結果、この透明ポリイミドフィルムの膜厚は50μm、ガラス転移温度は215度C、光透過率は71%、および引張強度は109.3Mpaであった。第2試験片の光透過率は67%であり、ガラス板に接着させた状態の透明ポリイミドフィルムに対する第2試験片の光透過率減少率は5.5%であった。透明ポリイミドフィルムを無アルカリガラス板に接着したものをガラス転移温度より120度C高い温度で加熱した場合(第1試験片)、全マスにおいて透明ポリイミドフィルムの小片がガラス板に残ったので、接着力の評価は○であった。透明ポリイミドフィルムを無アルカリガラス板に接着したものを350度Cの温度で加熱した場合(第2試験片)、全マスにおいて透明ポリイミドフィルムの小片がガラス板に残ったので、接着力の評価は○であった。透明ポリイミドフィルムをカプトン(登録商標)に接着した場合(第3試験片)、全マスにおいて透明ポリイミドフィルムの小片がカプトン(登録商標)に残ったので、接着力の評価は○であった(表1参照)。
【0061】
(実施例7)
オルガノシリカ粒子である日産化学工業社製のDMAC−ST(SiO含有量:20wt%)5gに対してポリイミド前駆体溶液11.484gをSiO粒子が凝集しないように少量ずつ加えた以外は実施例3と同様に透明ポリイミドフィルムを作製して、その透明ポリイミドフィルムの膜厚、光透過率、ガラス転移温度、引張強度を測定すると共に、無アルカリガラス板およびカプトン(登録商標)に係る熱融着性及び耐熱性の評価試験を行った。
【0062】
上記の項目に係る測定を行った結果、この透明ポリイミドフィルムの膜厚は30μm、ガラス転移温度は215度C、光透過率は72%、および引張強度は90.5Mpaであった。第2試験片の光透過率は68%であり、ガラス板に接着させた状態の透明ポリイミドフィルムに対する第2試験片の光透過率減少率は5.5%であった。透明ポリイミドフィルムを無アルカリガラス板に接着したものをガラス転移温度より120度C高い温度で加熱した場合(第1試験片)、全マスにおいて透明ポリイミドフィルムの小片がガラス板に残ったので、接着力の評価は○であった。透明ポリイミドフィルムを無アルカリガラス板に接着したものを350度Cの温度で加熱した場合(第2試験片)、全マスにおいて透明ポリイミドフィルムの小片がガラス板に残ったので、接着力の評価は○であった。透明ポリイミドフィルムをカプトン(登録商標)に接着した場合(第3試験片)、全マスにおいて透明ポリイミドフィルムの小片がカプトン(登録商標)に残ったので、接着力の評価は○であった(表1参照)。
【0063】
(比較例1)
小西化学工業株式会社製の3,3−ジアミノジフェニルスルホン(33DDS)20.386g(0.0822モル)を和歌山精化工業製の4,4−ジアミノジフェニルスルホン(44DDS)(商品名:セイカキュア−S)20.386g(0.0822モル)に代えた以外は、実施例1と同様にポリイミドフィルムを作製して、その透明ポリイミドフィルムの膜厚、光透過率、ガラス転移温度、引張強度を測定すると共に、無アルカリガラス板およびカプトン(登録商標)に係る熱融着性及び耐熱性の評価試験を行った。
【0064】
上記の項目に係る測定を行った結果、この透明ポリイミドフィルムの膜厚は50μm、ガラス転移温度は315度C、光透過率は68%、および引張強度は115.6Mpaであった。第2試験片の光透過率は51%であり、ガラス板に接着させた状態の透明ポリイミドフィルムに対する第2試験片の光透過率減少率は25.0%であった。透明ポリイミドフィルムを無アルカリガラス板に接着したものをガラス転移温度より120度C高い温度で加熱した場合(第1試験片)、全マスにおいて透明ポリイミドフィルムの小片がガラス板に残らなかったので、接着力の評価は×であった。透明ポリイミドフィルムを無アルカリガラス板に接着したものを350度Cの温度で加熱した場合(第2試験片)、全マスにおいて透明ポリイミドフィルムの小片がガラス板に残らなかったので、接着力の評価は×であった。透明ポリイミドフィルムをカプトン(登録商標)に接着した場合(第3試験片)、全マスにおいて透明ポリイミドフィルムの小片がカプトン(登録商標)に残らなかったので、接着力の評価は×であった(表1参照)。
【0065】
【表1】

【0066】
(実施例8)
1.ポリアミック酸フィルムの作製
実施例1と同様にして作製したポリイミド前駆体溶液をデシケータに入れてデシケータ内を減圧状態とし、その状態のままポリイミド前駆体溶液を1時間放置してポリイミド前駆体溶液のガス抜きを行った。そして、ガス抜きされたポリイミド前駆体溶液を離型処理済みのガラス板上にキャストした後、そのポリイミド前駆体溶液の厚みを、調整用間隙を有する引落しバーを用いて均一にした。そして、そのポリイミド前駆体溶液の液膜が形成されたガラス板をオーブンに入れ、ポリイミド前駆体溶液の液膜を80度Cで40分間乾燥させて透明フィルム状接着剤であるポリアミック酸フィルムを形成した後、そのガラス板をオーブンから取り出し、ガラス板上に形成されたポリアミック酸フィルムをガラス板から剥離した。
【0067】
2.ポリアミック酸フィルムの接着力測定
東レ・デュポン製のカプトン(登録商標)上にポリアミック酸フィルムを置き、オーブンに入れた。オーブン内の温度を80度Cから300度Cまで560分かけて昇温し、300度Cを10分間キープし、さらに300度Cから380度Cまで60分かけて昇温し、380度Cを30分間キープして加熱した。その後、ポリアミック酸フィルムとカプトン(登録商標)をオーブンから取り出して室温まで冷却して試験片を得た。
【0068】
−接着力評価−
作製した試験片の接着力を実施例1と同様にして測定した。
【0069】
上記の項目に係る測定を行った結果、この透明ポリイミドフィルムのガラス転移温度は260度Cであった。全マスにおいて透明ポリイミドフィルムの小片がカプトン(登録商標)に残ったので、接着力の評価は○であった(表2参照)。
【0070】
(実施例9)
ポリイミド前駆体溶液のDMACの投入量を101.4066gに代え、33DDSを和歌山精化製のビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン(以下「BAPSM」と略する)24.8999g(0.0576モル)に代え、BPDAの投入量を8.5576g(0.0291モル)に代え、BPADAの投入量を15.1359g(0.0291モル)に代えた以外は、実施例8と同様にポリアミック酸フィルムを作製した。
【0071】
オーブンによる加熱条件において、300度Cから380度Cまでの昇温を、300度Cから335度Cまでの昇温に代え、380度Cでのキープを335度Cでのキープに代えた以外は、実施例8と同様にして試験片を得た。作製した試験片の接着力を実施例1と同様にして測定した。
【0072】
上記の項目に係る測定を行った結果、この透明ポリイミドフィルムのガラス転移温度は215度Cであった。全マスにおいて透明ポリイミドフィルムの小片がカプトン(登録商標)に残ったので、接着力の評価は○であった(表2参照)。
【0073】
【表2】

【産業上の利用可能性】
【0074】
本発明に係る透明フィルム状接着剤は、優れた耐熱性(耐寒性を含む)、透明性および接着力を有するという特徴から、ガラスの補強、アルミ板から成るLEDの反射板の保護、フレキシブルプリント基板の保護、冷凍用バックの保護、ディスプレイの保護、および太陽電池の保護などに用いることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(BPDA)から誘導されるBPDA誘導単位と、2,2−ビス[4−(ジカルボキシフェノキシ)フェニル]プロパン酸二無水物(BPADA)から誘導されるBPADA誘導単位とを少なくとも含む酸二無水物誘導単位と、
3,3’−ジアミノジフェニルスルホンおよびビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]スルホンより成る群から選択される少なくとも1種のジアミンから誘導されるジアミン誘導単位とを主成分とする
ポリイミド樹脂を主成分とし、
熱融着性を有する透明フィルム状接着剤。
【請求項2】
前記BPADA誘導単位は、前記酸二無水物誘導単位の25モル%以上50モル%以下を占める請求項1に記載の透明フィルム状接着剤。
【請求項3】
前記ジアミン誘導単位には、4,4’−ジアミノジフェニルスルホンから誘導される44DDS誘導単位が含有される請求項1または2に記載の透明フィルム状接着剤。
【請求項4】
ガラス転移温度が210度C以上270度C以下である請求項1から3のいずれかに記載の透明フィルム状接着剤。
【請求項5】
60度Cから120度Cまでのいずれかの温度をガラス転移温度に足した温度で加熱されることによって被着体に融着する請求項1から4のいずれかに記載の透明フィルム状接着剤。
【請求項6】
JIS K−5600−5−6に示されるクロスカット法の25マス評価において、15マス以上の小片が前記被着体に付着したままとなる請求項1から5のいずれかに記載の透明フィルム状接着剤。
【請求項7】
空気中で350度Cの温度で30分間熱処理された後において50μmのフィルム厚における420nm波長の光線透過率が55%以上である請求項1から6のいずれかに記載の透明フィルム状接着剤。
【請求項8】
二酸化ケイ素粒子を含有する請求項1から6のいずれかに記載の透明フィルム状接着剤。
【請求項9】
空気中で350度Cの温度で30分間熱処理された後において50μmのフィルム厚における420nm波長の光線透過率が60%以上である請求項8に記載の透明フィルム状接着剤。
【請求項10】
支持フィルムを有する請求項1から9のいずれかに記載の透明フィルム状接着剤。
【請求項11】
無色透明である請求項1から10のいずれかに記載の透明フィルム状接着剤。
【請求項12】
ガラス板と、
前記ガラス板に直接的に付着する、請求項1から11のいずれかに記載の透明フィルム状接着剤とを備える透明フィルム補強ガラス板。
【請求項13】
3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(BPDA)から誘導されるBPDA誘導単位と、2,2−ビス[4−(ジカルボキシフェノキシ)フェニル]プロパン酸二無水物(BPADA)から誘導されるBPADA誘導単位とを少なくとも含む酸二無水物誘導単位と、
3,3’−ジアミノジフェニルスルホンおよびビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]スルホンより成る群から選択される少なくとも1種のジアミンから誘導されるジアミン誘導単位とを主成分とする
ポリアミック酸樹脂を主成分とし、
熱融着性を有する透明フィルム状接着剤。
【請求項14】
前記BPADA誘導単位は、前記酸二無水物誘導単位の25モル%以上50モル%以下を占める請求項13に記載の透明フィルム状接着剤。
【請求項15】
前記ジアミン誘導単位には、4,4’−ジアミノジフェニルスルホンから誘導される44DDS誘導単位が含有される請求項13または14に記載の透明フィルム状接着剤。
【請求項16】
JIS K−5600−5−6に示されるクロスカット法の25マス評価において、15マス以上の小片が前記被着体に付着したままとなる請求項13から15のいずれかに記載の透明フィルム状接着剤。
【請求項17】
支持フィルムを有する請求項13から16のいずれかに記載の透明フィルム状接着剤。
【請求項18】
無色透明である請求項13から17のいずれかに記載の透明フィルム状接着剤。

【公開番号】特開2011−137149(P2011−137149A)
【公開日】平成23年7月14日(2011.7.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−270460(P2010−270460)
【出願日】平成22年12月3日(2010.12.3)
【出願人】(391059399)株式会社アイ.エス.テイ (102)
【Fターム(参考)】