説明

透明ポリイミド複合管状物およびその製造方法

【課題】
優れた光透過率と機械的特性および耐薬品性を有し、気泡などの欠陥がなく背面露光感光ドラムの透明支持体あるいは転写、定着など電子写真方式の画像成形装置等の部材に有用な透明なポリイミド複合管状物、及びこのポリイミド複合管状物を低コストで簡易的に製造できる方法を提供すること。
【解決手段】
機械的特性の高い内層及び光透過率の高い外層からなる少なくとも2層のポリイミド樹脂被膜からなる管状物であって、前記被膜の光透過率が波長550nmにおいて50%以上であり、引張強度が15kgf/mm以上、引張弾性率が350kgf/mm以上の特性を有する透明ポリイミド複合管状物及びその製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、機械的特性および耐熱性に優れ、かつ光の透過率が高いポリイミド樹脂管状物に関するものである。さらに詳しくは、例えば複写機、プリンタ、ファクシミリ及びこれらの複合機など、電子写真方式の画像形成装置の部材として用いることができるポリイミド樹脂管状物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ポリイミド樹脂は、耐熱性、寸法安定性、機械的特性、電気的特性等に優れているため、電気、電子、航空宇宙分野等に広く用いられている。ポリイミド樹脂成形物は、一般に極性重合溶媒中でテトラカルボン酸二無水物とジアミンを反応させて得られるポリイミド前駆体溶液を形成し、それをイミド化することにより得られる。
【0003】
ポリイミド前駆体溶液から管状体あるいはシームレスベルトを製造する方法として、特許文献1や特許文献2に開示されているように、成形金型の外面や内面に所定の厚みでポリイミド前駆体溶液を形成した後、加熱あるいは化学的にイミド転化を完結させ、金型から分離して管状物やシームレスベルトを得る方法が知られている。また、特許文献3に開示されているように、円筒型内にポリイミド前駆体溶液を注入後、円筒型を回転させ、自己保持性が得られるまで加熱した後、イミド転化させ管状物を得る方法なども知られている。
【0004】
これらのポリイミド樹脂管状物は、特に電子写真方式の画像形成装置において帯電、感光、転写搬送、中間転写、転写定着及び定着などの電子写真プロセスの中で、その特性を生かし多く部材として使用されている。近年電子写真技術は、小型化、軽量化、高速化と同時に、カラー化を含む画像の鮮明さが追求されている。このような背景の中で電子写真感光体(背面露光感光体、または裏面露光感光体)の用途として透明な高分子材料からなる管状物が注目されている。
【0005】
背面露光感光体に関する技術は、複写機やプリンタなどに用いる感光体であって、円筒状の透明支持体上にITO(酸化インジウムスズ)などの透明度導電層と、光導電体層を積層して感光ドラムを形成し、露光手段を感光ドラム内側に収納し、ドラム内部からの光で潜像を形成する、いわゆる背面、または裏面露光と呼ばれる技術である。背面露光感光ドラムに用いる透明支持体の材料としては、透明性が長期に維持できる材料としてポリカーボネート、ポリエチレン、アクリル樹脂、ポリエチレンテレフタレートなどが用いられる。また無機材料ではガラス、石英なども使用することができ特許文献4にガラス製透明支持体が記載されている。特許文献5には基材としてポリエステルフィルムを用いたものが開示され、特許文献6には基材としてポリイミド樹脂膜を用いたものが記載されている。また、特許文献7には無色透明なポリイミド樹脂とその製造方法が開示されている。
【0006】
しかし、特許文献4記載の技術では、ガラス製透明支持体は光の透光率および耐熱性は非常に優れているが、破損しやすい、あるいは高分子材料と比較して重いなどの欠点を持っている。またコンパクト化、軽量化のために厚みを薄くしようとするほど破損しやすい。また特許文献5には、ポリエステル以外の透明支持体材料としてポリエチレン、ポリカーボネート、アクリル樹脂などが記載されているが、これらの樹脂はガラス転移温度が低く、また光導電層を形成する際の耐溶剤性、耐熱性や寸法安定性および機械的特性の面で問題がある。
【0007】
特許文献6には、ポリイミド樹脂を透明支持体とし、透明導電層、感光層の三層の複合感光体ドラムが開示されている。しかし、ポリイミドを構成する芳香族テトラカルボン酸モノマーとして2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン二無水物が使われており、このモノマーは価格が非常に高く、量産時の製造コストの面で好ましくない。また、その他の芳香族テトラカルボン酸として、3,3',4,4'−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、3,3',4,4'−テトラカルボキシジフェニルエーテル二無水物などを使用した実施例も記載され、厚み30μmで波長660nmの光透過率が開示されているが、これらのモノマーから形成されるポリイミド膜は、背面露光感光ドラムの用途として必要とする厚み(50〜120μm)に形成すると、当然のことながら光の透過率が急激に低下する問題を有している。
【0008】
本出願人は、アミン成分が置換芳香族ジアミン(ビス[置換−アミノフェニル]スルホン(置換−DDS)を主成分として含み、酸成分が芳香族テトラカルボン酸二無水物(ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(BPDA)及び2,2−ビス[4−(ジカルボキシフェノキシ)フェニル]プロパン酸二無水物(BPADA)を主成分として含み、極性有機溶媒中で反応させて得られるポリイミド前駆体溶液と、この前駆体溶液をイミド転化してなる無色透明なポリイミド被膜を、特許文献7のようにすでに提案している。しかし、このような無色透明のポリイミドであってもイミド転化温度を300度C以上に上げると黄色度が高まり、光の透過率が低下する問題があり、また300度C以下のイミド転化温度では透明性は改善されるが、機械的強度が低下する問題、及びガラス転移温度が低いという問題があった。また、透明支持体(管状物)の厚みを厚くし、透明性と機械的特性を両立させようとすると、管状物の製造時に高粘度のポリイミド前駆体溶液を使用するため気泡が発生し、イミド転化した被膜の中にもボイドとして残留する問題があった。
【特許文献1】特開平6−23770号公報
【特許文献2】特開平1−156017号公報
【特許文献3】特公昭60−166424号公報
【特許文献4】特開平11−084703号公報
【特許文献5】特開平05−281761号公報
【特許文献6】特開平05−249705号公報
【特許文献7】特開2004−210976号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
背面露光感光ドラムは、一般にガラスや高分子材料よりなる透明管状物(透明支持体)の外面にITO(酸化インジウムスズ)等からなる透明導電層が蒸着または塗布法などにより形成され、その外層にアモルファスシリコン(a−Si)や有機光導電体(OPC)などの光導電層が形成される。さらに、その外層に表面保護や帯電、絶縁耐圧維持等のために、ポリイミド、ポリエチレン、SiN、SiC等が用いられている。また、ドラム内部に収納される露光用光源として、発光ダイオード(LED)、電界発光素子(EL)、半導体レーザなどが用いられる。
【0010】
透明支持体として必要な特性は、感光ドラム回転体として十分な機械的特性、透明導電層形成時の耐熱性、光導電層成形時の耐薬品性、及び光透過率が高いことである。
【0011】
したがって、本発明は、優れた光透過率と機械的特性および耐薬品性を有し、気泡などの欠陥のない透明ポリイミド複合管状物と、低コストで簡易的に製造できる方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の透明ポリイミド複合管状物は、少なくとも内層及び外層の2層からなるポリイミド樹脂被膜からなり、当該被膜の光透過率が波長550nmにおいて50%以上であることを特徴とするものである。すなわち、機械的特性に優れたポリイミド層と、光透過率の高いポリイミド層を複合一体化した透明ポリイミド複合管状物である。また本発明の透明ポリイミド複合管状物の製造方法は、金型表面にあらかじめ管状物の内層ポリイミド前駆体(機械的特性の優れたポリイミド樹脂)を形成し、イミド転化の完結前又は完結後にその外面に外層となるポリイミド前駆体(光透過率の高いポリイミド樹脂)を形成し、これら少なくとも2層のポリイミド層をイミド化することにより、一体化することを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0013】
本発明は、優れた機械的特性を有するポリイミド樹脂を内層に形成し、その外層に光の透過率の高いポリイミド層を形成した少なくとも2層構造のポリイミド樹脂をイミド化により一体化した複合管状物であって、管状物被膜の光透過率が波長550nmにおいて50%以上とすることにより、従来技術に比較して機械的特性と光の透過率の両特性、並びに耐熱性、耐薬品性を兼ね備えた透明ポリイミド複合管状物を提供することができる。また本発明の管状物の製造方法においてはポリイミド前駆体溶液を金型表面に溶液状で成形する場合、内層と外層をそれぞれ完成品の管状物の厚みの約1/2程度に分けて成形できるため気泡や厚みムラのないポリイミド管状物を得ることができる。同時に管状物の内層に、機械的特性の高いポリイミド樹脂を形成することによって、管状物を金型からスムーズに脱型することができる。本発明で作製される透明ポリイミド複合管状物は背面露光感光ドラムの透明支持体として、あるいは転写・定着ベルトなどの用途として有用に用いることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の透明ポリイミド複合管状物と、その製造方法について詳細に説明する。本発明は、少なくとも2層のポリイミド樹脂からなる管状物であって、管状物被膜の光透過率が波長550nmにおいて、50%以上の透明ポリイミド複合管状物である。背面露光感光ドラムなどの用途においては、光透過率は高い方が望ましいが、露光用光線の波長は400〜800nmの範囲で特定した波長で使用されるため、光透過率は波長550nmにおいて少なくとも50%以上であることが好ましく、また780nmの波長においては75%以上であることが好ましい。前記透明ポリイミド複合管状物を回転体として使用するための機械特性は、引張強度が15kgf/mm以上、引張弾性率が350kgf/mm以上であることが好ましい。より好ましくは引張強度が20kgf/mm以上、引張弾性率が400kgf/mm以上である。ポリイミド管状物の機械的特性は、ポリイミド樹脂のモノマーの違い、およびイミド化温度などによって決まり、同じモノマーからなるポリイミド樹脂ではイミド化温度が高い方が引張強度や引張弾性率も高くなる傾向にある。しかしながらイミド化温度が高くなると、ポリイミド被膜の黄色化が進むため、光の透過率は低下してくる。したがってポリイミド管状物の光の透過率と引張強度などの特性は相反する特性になるが、光の透過率および引張弾性等が上記した範囲であれば背面露光ドラムなどの用途に最適に用いることができる。
【0015】
本発明の透明ポリイミド複合管状物の被膜の総厚みは、30μm〜150μmの範囲が電子写真方式の画像形成装置の基材として使用する場合に好ましく、背面露光感光ドラムの透明支持体として用いる場合には50μm〜100μmの範囲であることが好ましい。本発明の透明ポリイミド複合管状物は機械的特性と光透過率の両特性を兼ね備える構成であって、内層のポリイミド樹脂被膜の厚さが被膜総厚みの10%以上50%未満であることが好ましい。10%未満では、支持体としての機械的強度が劣り、また50%以上では、所望の光透過率が得られなくなるからである。
【0016】
また本発明の透明ポリイミド複合管状物を200度Cで1時間加熱したときに、管状物内径の熱収縮率が0.3%未満であることが好ましい。より好ましくは0.15%以下である。管状物の製作にあたっては、最終の使用目的、たとえば背面露光用透明支持体などの仕様に基づき、管状物製造のための金型設計からスタートすることになるが、管状物を作製した後、導電性被膜や光導電層を形成していくときの加工条件の影響や完成された最終仕様の管状物の寸法安定性のためも熱収縮率は小さい方が好ましい。
【0017】
本発明の透明ポリイミド複合管状物において、内層の好ましい原料は、ジアミン又はその誘導体(以下、ジアミン成分という)として下記化学式(A)のパラフェニレンジアミンを、テトラカルボン酸二無水物又はその誘導体(以下、テトラカルボン酸二無水物成分という)として下記化学式(B)の3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物を、極性溶媒中で反応させてなるポリイミド前駆体組成物である。あるいは、ジアミン成分として下記化学式(C)の2,2−ビス(トリフルオロメチル)−4、4’−ジアミノビフェニルを、テトラカルボン酸二無水物成分として下記化学式(D)のピロメリット酸二無水物を、極性溶媒中で反応させてなるポリイミド前駆体組成物である。これらをイミド化して得られるポリイミド樹脂は、機械的特性及び寸法安定性に優れている。
【0018】
【化1】

【0019】
【化2】

【0020】
【化3】

【0021】
【化4】

【0022】
本発明の透明ポリイミド管状物において、管状物の外層の好ましい原料組成は、ジアミン成分として下記化学式(I)又は化学式(II)から選ばれる少なくとも1種のジアミンを、テトラカルボン酸二無水物成分として下記化学式(III)又は化学式(IV)(Xは−O−、−S−、−SO−、−CH−、−CF−、−C(CH−、−C(CF−、−CO−又は直接結合を表わす)から選ばれる少なくとも1種のテトラカルボン酸二無水物を、極性溶媒中で反応させてなるポリイミド前駆体組成物である。これらの原料組成から得られるポリイミド樹脂は、光透過率が高いため好ましい。
【0023】
【化5】

【0024】
【化6】

【0025】
【化7】

【0026】
【化8】

【0027】
前記ジアミン成分としては、ジアミン、ジイソシアネート、ジアミノジシラン類が挙げられるが、好ましいのはジアミンである。
【0028】
前記外層の透明ポリイミド樹脂のジアミン成分として、特に好ましいものは、下記の化学式(I)のジアミノジフェニルスルホンである。ジアミノジフェニルスルホンは、パラ体(4,4’−ジアミノジフェニルスルホン)であってもよいし、メタ体(3,3’−ジアミノジフェニルスルホン)であってもよい。またパラ体、メタ体を混合して反応させてもよい。
【0029】
【化9】

【0030】
本発明において、被膜の内層及び外層を形成するポリイミド前駆体溶液を製造する際、本発明の性質を損なわない範囲内で、以下のジアミンを1種以上混合して反応させても何ら差し支えない。例えば、メタフェニレンジアミン、パラフェニレンジアミン、2,5−ジアミノトルエン、2,6−ジアミノトルエン、4,4’−ジアミノビフェニル、3,3’−ジメチル−4,4’−ビフェニル、3,3’−ジメトキシ−4,4’−ビフェニル、2,2−ビス(トリフルオロメチル)−4、4’−ジアミノビフェニル、3,3’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、2,2−ビス−(4−アミノフェニル)プロパン、3,3’−ジアミノジフェニルスルフィド、4,4’−ジアミノジフェニルスルフィド、3,3’−ジアミノジフェニルエーテル、3,4’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、1,5−ジアミノナフタレン、4,4’−ジアミノジフェニルジエチルシラン、4,4’−ジアミノジフェニルシラン、4,4’−ジアミノジフェニルエチルホスフィンオキシド、1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス(3−アミノフェニル)1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス(4−アミノフェニル)1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、9,9−ビス(4−アミノフェニル)フルオレン等の芳香族ジアミン、テトラメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン等の脂肪族ジアミン、シクロヘキサンジアミン、イソホロンジアミン、ノルボルナンジアミン、ビス(4−アミノシクロヘキシル)メタン、ビス(4−アミノ−3−メチルシクロヘキシル)メタン等の脂環式ジアミンが挙げられる。
【0031】
一方、前記テトラカルボン酸二無水物成分としては、テトラカルボン酸、カルボン酸エステル、テトラカルボン酸二無水物などが挙げられるが、好ましいのはテトラカルボン酸二無水物である。
【0032】
前記外層の透明ポリイミド樹脂のテトラカルボン酸二無水物成分として特に好ましいのは、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(BPDA)および2,2−ビス[4−(ジカルボキシフェノキシ)フェニル]プロパン二無水物(BPADA)である。BPDAおよびBPADAは、混合して反応させることが好ましい。
【0033】
BPDAおよびBPADAを混合する場合のモル比は、BPDA:BPADA=9:1〜5:5の範囲であることが好ましい。この範囲であれば、透明性を高く維持したままで機械的特性も改善できるからである。
【0034】
本発明において、被膜の内層及び外層を形成するポリイミド前駆体溶液を製造する際、本発明の性質を損なわない範囲内で、以下のテトラカルボン酸二無水物を1種以上混合して反応させても何ら差し支えない。ピロメリット酸二無水物、1,2,5,6−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、2,2’,3,3’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,3,3’4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2’,3,3’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、2,3,3’,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)スルホン二無水物、ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)メタン二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)メタン二無水物、1,1−ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)エタン二無水物、1,1−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)エタン二無水物、4,4’−(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸無水物、オキシジフタル酸無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)スルホン二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)スルホキシド二無水物、チオジフタル酸二無水物、3,4,9,10−ペリレンテトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7−アントラセンテトラカルボン酸二無水物、1,2,7,8−フェナントレンテトラカルボン酸二無水物、9,9−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)フルオレン二無水物や9,9−ビス[4−(3,4’−ジカルボキシフェノキシ)フェニル]フルオレン二無水物等の芳香族テトラカルボン酸二無水物、シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4−シクロペンタンテトラカルボン酸二無水物、2,3,4,5−テトラヒドロフランテトラカルボン酸二無水物、1,2,4,5−シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物、3,4−ジカルボキシ−1−シクロヘキシルコハク酸二無水物、3,4−ジカルボキシ−1,2,3,4−テトラヒドロ−1−ナフタレンコハク酸二無水物が挙げられる。
【0035】
好ましい実施形態において、ポリイミド前駆体溶液は極性溶媒中において90度Cより低い温度で不活性雰囲気において上述したテトラカルボン酸二無水物成分およびジアミン成分を反応させることにより製造される。反応時間は6時間以上である。
【0036】
ポリイミド前駆体溶液を製造する場合、テトラカルボン酸二無水物成分およびジアミン成分を可能な限り等モル比で反応させて分子量を上げることが好ましい。従って、テトラカルボン酸二無水物成分/ジアミン成分のモル比を0.9〜1.1/1.0、さらに好ましくは1.00〜1.04/1.0の範囲に維持することが好ましい。本発明のポリイミド前駆体の分子量は、好ましくは10,000〜500,000、さらに好ましくは50,000〜300,000である。
【0037】
ポリイミド前駆体溶液の製造において有用な極性溶媒は、例えば、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジエチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、N−メチルカプロラクタム、ヘキサメチルホスホリックトリアミド、1,2−ジメトキシエタン、ジグライム、トリグライムなどが挙げられる。好ましい溶媒はN,N−ジメチルアセトアミド(DMAC)、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)である。これらの溶媒を単独で又は混合物としてあるいはトルエン、キシレン、すなわち芳香族炭化水素などの他の溶媒と混合して用いることができる。
【0038】
ポリイミド前駆体溶液には、本発明の性質を損なわない範囲内で、加工助剤又は流動補助剤(例えば、モダフロウ(MODAFLOW)(登録商標)流動補助剤)、酸化防止剤、帯電防止剤、無機顔料(例えば、二酸化チタン、TiO)、および充填剤(例えば、ポリテトラフルオロエチレン、フッ素化エチレン/プロピレンコポリマー)などの添加剤を含有することもできる。
【0039】
ポリイミドの前駆体溶液の取り扱いを容易にするために、溶液中のポリイミド前駆体の濃度は、10重量〜50重量%、好ましくは10重量〜40重量%の範囲であり、また溶液の粘度は約500〜約5,000ポイズの範囲であることが好ましい。
【0040】
本発明の透明ポリイミド複合管状物の製造方法は、円筒状金型表面に、あらかじめ内層となるべきポリイミド前駆体を形成し、イミド転化の完結前又は完結後に、内層の外面に外層となるべきポリイミド前駆体を形成し、これら内層及び外層からなる少なくとも2層のポリイミド層をイミド化により、一体化することが好ましく、機械的特性が優れ、光透過率の高い管状物を安価な方法で製造することができる。より好ましい製造方法は、内層のポリイミド前駆体形成物を100度C〜250度Cの温度で半硬化させその後、外層のポリイミド前駆体を前記半硬化内層ポリイミド層の外面に形成し、しかる後200度C〜400度Cの温度でイミド化により一体化する方法である。この方法であると管状物の熱履歴時間(管状物が加熱されている時間)が少なく、光透過率を向上させることができ好ましい。
【0041】
本発明の透明ポリイミド複合管状物を背面露光感光体の透明支持体として用いる場合には、外層の外面に透明導電性膜を形成することが好ましい。この透明導電性膜の表面抵抗は、1010Ω/□以下であることが好ましい。1010Ω/□以下の表面抵抗値であれば、背面露光感光体表面に帯電した静電気を逃がす(除電する)ことができるからである。表面抵抗値は、10Ω/□以下がより好ましく、10Ω/□以下がさらに好ましい。透明導電性膜としては、例えば、酸化インジウムスズ(ITO)、酸化スズなどの金属酸化物等を用いることができる。いずれの場合も、透明導電性膜の厚さは50nm〜5μmの範囲が好ましい。50nmより薄いと良好な表面抵抗が得られず、5μmより厚いと良好な透明性が得られないからである。この透明導電性膜は、例えば、真空蒸着、スパッタリング、イオンプレーティング、プラズマCVD等によって形成できる。この薄膜を170度C以上の高温で比較的短時間で熱処理(アニール処理)することにより、透明性、耐熱性、導電性を向上させてもよい。本発明の透明ポリイミド複合管状物は高い耐熱性を有するため、アニール処理をすることができる。あるいは、本発明の透明ポリイミド複合管状物は高い耐溶剤性を有するため、酸化インジウムスズ(ITO)、酸化スズなどの金属酸化物の微粒子を溶媒等に分散させた透明導電性塗料を、浸漬塗布、スプレー塗布、ドクターブレード、ワイヤーバー塗布法等の公知の塗布法を用いて塗布し、100度C〜200度Cで焼き付けることによっても透明導電性膜を形成できる。したがって、透明ポリイミド管状物の内径の200度C1時間の加熱収縮率が0.3%未満であると、アニール後や焼付け後においても内径、全長等の寸法変化が小さく好ましい。また本発明の内層として用いるポリイミド樹脂であると、内外層をイミド化によって一体複合化した場合、管状物内径の200度C1時間の加熱収縮率を0.3%未満にすることができる。
【0042】
以下、実施例及び比較例に基づいて詳細を説明する。各実施例及び比較例で作製したポリイミド前駆体溶液の粘度およびポリイミド管状物の諸特性は、下記の測定方法で測定した。
(1)粘度
ブルックフィールド社製の粘度計LVTを用いて、23±1度Cでの透明ポリイミド前駆体溶液の粘度を測定した。
(2)光透過率
島津製作所社製の分光光度計UV−2550を使用して光透過率を測定した。
(3)膜厚
サンコー社製の渦電流膜厚計EDY−1000を用いて膜厚を測定した。
(4)内径
キーエンス社のレーザ寸法測定器LS−5000を用いて25±1度Cで測定したポリイミド管状物の外径と膜厚の差から透明ポリイミド管状物の内径を算出した。
(5)内径の加熱収縮率
加熱前の内径(D1)、加熱後の内径(D2)を測定し、下記の式により加熱収縮率を求めた。
(加熱収縮率)={(D1−D2)/D1}×100
(6)機械的物性
島津製作所製のオートグラフAGS−10kNGを用いて、引張速度50mm/分で測定した。
(7)表面抵抗
JIS K7194に準じて、4探針法で表面抵抗を測定した。
(8)密着試験
Quad group社製セバスチャンV型テスターを用い、エポキシ樹脂接着剤付きアルミニウム製スタッドピンとエポキシ樹脂接着剤付きセラミック製のバッキングプレートを用いて密着試験を行った。
【実施例1】
【0043】
(1)被膜の内層を形成するためのポリイミド前駆体溶液(a)の合成
3000mLの3つ口セパラブルフラスコに、ポリテトラフルオロエチレン製の攪拌羽を取り付けた攪拌棒と窒素ガス導入管を取り付けて反応容器とし、反応はすべて、窒素雰囲気下で行なった。ポリイミド前駆体溶液の濃度が17.5重量%となるように、ジアミン成分として、大新化学社から商品名“PPD”で販売されているパラフェニレンジアミン(PPD)77.46g(0.717モル)、反応溶媒として三菱化学社から販売されているN−メチル−2−ピロリドン(NMP)1,211gを投入し、PPDがNMPに完全に溶解後、テトラカルボン酸二無水物成分として、三菱化学社から商品名“BPDA”で販売されているビフェニルテトラカルボン酸二無水物(BPDA)210.86g(0.717モル)を固体のままで添加し、40度Cで12時間反応させ、粘度1,000ポイズの粘稠なポリイミド前駆体溶液を得た。
【0044】
(2)被膜の外層を形成するためのポリイミド前駆体溶液(b)の合成
3000mLの3つ口セパラブルフラスコに、ポリテトラフルオロエチレン製の攪拌羽を取り付けた攪拌棒と窒素ガス導入管を取り付けて反応容器とし、反応はすべて、窒素雰囲気下で行なった。ポリイミド前駆体溶液の濃度が33重量%となるように、ジアミン成分として、和歌山精化工業社から商品名“セイカキュアーS”で販売されている4、4’−ジアミノジフェニルスルホン(44DDS)203.86g(0.822モル)、反応溶媒として三菱ガス化学社から販売されているN,N−ジメチルアセトアミド(DMAC)1,005gを投入し、44DDSがDMACに完全に溶解後、テトラカルボン酸二無水物成分として、上海市合成樹脂研究所から商品名“BPADA”で販売されている2,2−ビス[4−(ジカルボキシフェノキシ)フェニル]プロパン二無水物(BPADA)107.93g(0.208モル)および三菱化学社から商品名“BPDA”で販売されている3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(BPDA)183.07g(0.623モル)を固体のままで添加し、40度Cで12時間反応させ、粘度1,000ポイズの粘稠な透明ポリイミドの前駆体溶液を得た。
【0045】
(3)内層ポリイミド被膜の作製
外径30.0mm、長さ500mmのアルミニウム製金型を用意した。前記金型は外面の平均表面粗さ(Rz)が1μm以下になるように研磨加工し、表面に酸化ケイ素コーティング剤をディッピング法によりコーティングし、150度Cで30分および370度Cで30分加熱して焼き付け酸化ケイ素膜で被覆した金型を用いた。次に前記ポリイミド前駆体溶液(a)の中に前記金型を400mm部分まで浸漬し、前記ポリイミド前駆体溶液(a)を付着させた後、内径30.7mmのリング状ダイスを前記金型の上部から挿入し自重で落下走行させ、前記金型の表面にポリイミド前駆体(a)を液状成形した。その後、80度Cで45分、120度Cで45分、200度Cで30分間加熱し、半硬化させ内層のポリイミド被膜を作製した。このポリイミド被膜の厚みは32μmであった。
【0046】
(4)本発明の透明ポリイミド複合管状物の作製
次に、前記半硬化ポリイミド被膜を金型に装着したまま、前記(2)項で作製した透明ポリイミド前駆体溶液(b)の容器に、深さ380mmまで浸漬し付着させた後、内径31.2mmのリング状ダイスを前記金型の上部から挿入し自重で落下走行させ、透明ポリイミド前駆体(b)を液状成形した。その後イミド化処理として、80度Cで30分、120度Cで40分、200度Cで30分、250度Cまで45分で昇温させ同温度で30分、さらに275度Cの温度まで10分で昇温し、同温度で30分加熱しイミド化を行い、内外2層からなる透明ポリイミド複合管状物を製作した。冷却後、管状物を金型から脱型し、複合管状物の特性を測定した。ポリイミド被膜の総厚みは、85±5μmであり、引張強度は18.0kgf/mm、引張弾性率は430kgf/mmであった。また、波長550nm及び780nmにおける光透過率は、それぞれ74.2%、84.8%であり、背面露光などの用途に必要とする特性を有する透明ポリイミド複合管状物を得ることができた。
なお前記2層構造のポリイミド複合管状物において、内層のポリイミド被膜の総厚みに対する比率は約35%であった。また、200度Cで1時間加熱処理した後の内径の収縮率は、0.07%であった。
【実施例2】
【0047】
実施例1において、内層の厚みを25μm、及び外層の厚み62μmに変更した以外は、実施例1の条件で透明ポリイミド複合管状物を作製し、特性を測定した。この透明ポリイミド管状物の平均厚みは82±3μmであった。また波長550nm及び780nmの光透過率は78.0%、90.0%であり、引張強度は16.2kgf/mm2、引張弾性率は360kgf/mmであり機械的特性はやや低下したが、光透過率の優れた透明ポリイミド複合管状物を得ることができた。また熱収縮率は0.1%であった。
【実施例3】
【0048】
実施例1において(4)項における最終のイミド化温度を320度Cにした以外は実施例1と同様の条件で透明ポリイミド複合管状物を作製し特性を測定した。管状物の平均厚みは83±3μmであった。また波長550nm及び780nmの光透過率は69.5%、81.0%であり、引張強度は20.2kgf/mm2、引張弾性率は480kgf/mmであり機械的特性および光透過率の優れた透明ポリイミド管状物を得ることができた。この実施例での熱収縮率は0.04%であった。
【実施例4】
【0049】
実施例1において下記の条件で作製した外層のポリイミド前駆体を用いた以外は実施例1と同様の条件で透明ポリイミド管状物を作製し特性を測定した。本実施例で外層として用いたポリイミド前駆体溶液は、3000mLの3つ口セパラブルフラスコに、ポリテトラフルオロエチレン製の攪拌羽を取り付けた攪拌棒と窒素ガス導入管を取り付けて反応容器とし、反応はすべて、窒素雰囲気下で行なった。ポリイミド前駆体溶液の濃度が33重量%となるように、ジアミン成分として、小西化学工業社から商品名“DAS”で販売されている3、3’−ジアミノジフェニルスルホン(33DDS)203.86g(0.822モル)、反応溶媒として三菱ガス化学社から販売されているN,N−ジメチルアセトアミド(DMAC)1,005gを投入し、44DDSがDMACに完全に溶解後、テトラカルボン酸二無水物成分として、上海市合成樹脂研究所から商品名“BPADA”で販売されている2,2−ビス[4−(ジカルボキシフェノキシ)フェニル]プロパン二無水物(BPADA)107.93g(0.208モル)および三菱化学社から商品名“BPDA”で販売されている3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(BPDA)183.07g(0.623モル)を固体のままで添加し、40度Cで12時間反応させ、粘度約1,000ポイズ透明ポリイミド前駆体溶液を得た。この実施例で得られた透明ポリイミド管状物の特性は下記の通りである。管状物の平均厚みは80±3μmであった。また波長550nm及び780nmの光透過率は75.6%、86.0%であり、また引張強度は19.3kgf/mm2、引張弾性率は450kgf/mmであり機械的特性および光透過率の優れた透明ポリイミド管状物を得ることができた。熱収縮率は0.07%であった。
【実施例5】
【0050】
(透明ポリイミド複合管状物への透明導電性膜の成形処理)
高周波(RF)マグネトロンスパッタ装置のスパッタ電極上に、スズが5重量%ドープされた酸化インジウムターゲットを取り付け、回転導入機が連結された基板側に、実施例1で作製した2層からなる厚さ85±5μmのポリイミド管状物を246.0mmにカットし脱脂処理した後、ターゲットから180mmの位置に取り付けた。次に、油回転ポンプを用いて粗引き減圧し、さらに油拡散ポンプを用いて、2.0×10−4Torrまで真空引きを約2時間かけて行った。次に、アルゴンガスを92sccm、酸素ガスを8sccm流入させて、1.0×10−2Torrに保った。次に、RF進行波400W、RF反射波0Wで、約2分30秒分毎に、45度ずつ回転させて20分間スパッタして、酸化インジウムスズ(ITO)からなる透明導電薄膜を形成し、200度Cで1時間アニール処理して透明ポリイミド層の外層の外面に導電性膜を成形した複合管状物を得た。アニール前後で、内径、全長が変化することはなかった。この導電性膜を成形した透明ポリイミド複合管状物の波長550nmおよび波長780nmの光透過率は、それぞれ72.0%、83.0%であった。また透明導電性薄膜は密着試験において薄膜が剥離することなく、透明導電性膜の表面抵抗は、5×10Ω/□であった。このような特性を持つ透明ポリイミド複合管状物は、この後にさらに光導電性被膜などの形成も容易であり、背面露光感光体として使用することができるものであった。その断面図を、図1の(a)及び(b)に示す。
【0051】
(比較例1)
実施例1において、被膜の内層の厚みを50μm、及び外層の厚みを30μmに変更した以外は、実施例1と同様の条件で複合管状物を作製し、特性を測定した。この複合管状物の平均厚みは79μm±4であった。また波長550nm及び780nmの光透過率は48%、及び70%であり、また引張強度は38.8kgf/mm2、引張弾性率は850kgf/mmであり光透過率が低下し背面露光感光体の透明支持体の用途には十分な特性が得られなかった。熱収縮率は0.02%であった。
【0052】
(比較例2)
実施例1において、内層の厚みを15μm、及び外層の厚みを65μmに変更した以外は実施例1と同様の条件で複合管状物を作製し、特性を測定した。この複合管状物の平均厚みは82μm±4であった。また波長550nm及び780nmの光透過率は78.5%、90.5%であり、また引張強度は11.2kgf/mm、引張弾性率は338kgf/mmであり光透過率は高い特性を得ることができたが、機械的特性は低く、また熱収縮率も0.33%で寸法安定性の悪いものであった。また金型からの分離も金型と管状物内面の境界面に圧縮空気を送り込みようやく脱型することができる状態であった。
【0053】
(比較例3)
実施例1において、内層のポリイミド前駆体溶液として(商品名PyreML、品番RC5019、(株)IST社製)を用いた以外は実施例1と同様に、透明ポリイミド管状物を作製し、その特性を測定した。前記PyreML:RC5019ポリイミド前駆体溶液はテトラカルボン酸二無水物成分としてピロメリット酸二無水物(PMDA)およびジアミン成分として4,4’−ジアミノジフェニルエーテル(ODA)を用いたものである。この複合管状物の平均厚みは85μm±5であった。また波長550nm及び780nmの光透過率は75.1%、85.8%であり、また引張強度は12kgf/mm2、引張弾性率は305kgf/mmであり十分な機械特性が得られなかった。熱収縮率は0.53%であった。金型から管状物を分離することが困難であった。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】本発明の用途例の1つである背面露光感光ドラムの縦断面図(a)及び横断面図(b)である。
【符号の説明】
【0055】
1:少なくとも内層及び外層の2層からなる円筒状透明支持体
2:透明導電層
3:光導電層
4:表面保護層
5:背面露光感光ドラム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも内層及び外層の2層からなるポリイミド樹脂被膜からなり、当該被膜の光透過率が波長550nmにおいて50%以上であることを特徴とする透明ポリイミド複合管状物。
【請求項2】
前記被膜の引張強度が15kgf/mm以上、引張弾性率が350kgf/mm以上であることを特徴とする請求項1に記載の透明ポリイミド複合管状物。
【請求項3】
前記被膜の総厚みが30μm以上150μm以下であって、前記内層の厚みが総厚みの10%以上50%未満であることを特徴とする請求項1に記載の透明ポリイミド複合管状物。
【請求項4】
前記被膜の光透過率が波長780nmにおいて75%以上であることを特徴とする請求項1に記載の透明ポリイミド複合管状物。
【請求項5】
200度Cで1時間加熱後、内径の収縮率が0.3%未満であることを特徴とする請求項1に記載の透明ポリイミド複合管状物
【請求項6】
前記内層を構成するポリイミドが、下記化学式(A)のパラフェニレンジアミン及び下記化学式(B)の3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物を主成分として得られることを特徴とする請求項1に記載の透明ポリイミド複合管状物。
【化1】

【化2】

【請求項7】
前記外層を構成するポリイミドが、下記化学式(I)又は化学式(II)から選ばれる少なくとも1種のジアミン又はその誘導体と、少なくとも1種のテトラカルボン酸二無水物又はその誘導体とを主成分として得られることを特徴とする請求項1に記載の透明ポリイミド複合管状物。
【化3】

【化4】

【請求項8】
前記テトラカルボン酸二無水物又はその誘導体が、下記化学式(III)又は化学式(IV)(Xは−O−、−S−、−SO−、−CH−、−CF−、−C(CH−、−C(CF−、−CO−又は直接結合を表わす)から選ばれる少なくとも1種の化合物からなることを特徴とする請求項7に記載の透明ポリイミド複合管状物。
【化5】

【化6】

【請求項9】
(a)円筒状金型表面にポリイミド前駆体からなる内層を形成し、
(b)前記内層のイミド転化完結前又は完結後に、
(c)前記内層の外面にポリイミド前駆体からなる外層を形成し、
(d)前記内層及び外層の少なくとも2層からなるポリイミド層を、イミド化によって一体化する
工程を有することを特徴とする透明ポリイミド複合管状物の製造方法。
【請求項10】
前記外層の外面に少なくとも1層の透明導電性膜を形成したことを特徴とする請求項1に記載の透明ポリイミド複合管状物。
【請求項11】
前記透明導電性膜の表面抵抗が1010Ω/□以下であることを特徴とする請求項10に記載の透明ポリイミド複合管状物。

【図1】
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【公開番号】特開2006−150951(P2006−150951A)
【公開日】平成18年6月15日(2006.6.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−312590(P2005−312590)
【出願日】平成17年10月27日(2005.10.27)
【出願人】(391059399)株式会社アイ.エス.テイ (102)
【Fターム(参考)】