説明

透明保護フィルム、光学補償フィルム、偏光板、及び液晶表示装置

【課題】使用環境の湿度の変化に対して、Rthの変動が十分に小さい透明保護フィルム、光学補償フィルム、偏光板、及び液晶表示装置の提供。
【解決手段】相対湿度60%RHにおいて下記式(I)〜(III)を満たす透明保護フィルム等である。式(I):0≦Re(630)≦10、式(II):|Rth(630)|≦20、式(III):ΔRth/d×80,000≦20

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学特性の湿度変化に対する安定性に優れた偏光板用途の透明保護フィルム、光学補償フィルム、偏光板、及びこれを用いた液晶表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、セルロースアシレートフィルムは、その強靭性、及び難燃性から写真用支持体や各種光学材料に用いられてきた。特に、近年は液晶表示装置用の光学透明フィルムとして多く用いられている。
例えば、セルロースアシレートフィルムは、光学的に透明性が高いことと、光学的に等方性が高いことから、液晶表示装置のように偏光を取り扱う装置用の光学材料として優れており、これまで偏光子の保護フィルムや、斜め方向からの見た表示を良化(視野角補償)できる光学補償フィルムの支持体として用いられてきた。
【0003】
液晶表示装置の構成要素のひとつである偏光板には、偏光子の少なくとも片側に、該偏光子を保護する保護フィルムが貼合によって形成されている。
一般的な偏光子は、延伸されたポリビニルアルコール(PVA)系フィルムを、ヨウ素又は二色性色素で染色することにより得られる。
前記保護フィルムとしては、PVAに対して直接貼り合わせることができる、セルロースアシレートフィルムが多く用いられ、中でもトリアセチルセルロースフィルムが用いられている。前記保護フィルムとしては、光学的等方性に優れることが重要であり、前記保護フィルムの光学特性が偏光板の特性を大きく左右する。
【0004】
最近の液晶表示装置においては、視野角特性の改善がより強く要求されるようになっており、前記保護フィルムや、光学補償フィルムの支持体などの透明フィルムは、より光学的に等方性であることが求められている。
ここで、光学的に等方性であるとは、光学フィルムの複屈折と厚みの積で表されるレターデーション値が小さいことが重要である。特に、斜め方向からの表示を良化させるためには、正面方向のレターデーション(Re)だけでなく、膜厚方向のレターデーション(Rth)を小さくする必要がある。具体的に、は透明フィルムの光学特性を評価した際に、フィルム正面から測定したReが小さく、角度を変えて測定してもそのReが変化しないことが要求される。
【0005】
これまでに、正面のReを小さくしたセルロースアシレートフィルムはあったが、角度によるRe変化が小さい、即ち、Rthが小さいセルロースアシレートフィルムは、作製が難しかった。
そこで、セルロースアシレートフィルムの代わりに、ポリカーボネート系フィルムや熱可塑性シクロオレフィンフィルムを用いて、Reの角度変化の小さい光学透明フィルムの提案がされている(例えば、特許文献1,2参照)。
しかし、これらの透明フィルムは、保護フィルムとして使用する場合、フィルムが疎水的であるために、PVAとの貼合性に問題がある。また、フィルム面内全体の光学特性が不均一である問題も解決されていなかった。
【0006】
この解決法として、PVAへの貼合適正に優れるセルロースアシレートフィルムを、より光学的異方性を低下させて改良することが強く望まれている。
具体的には、セルロースアシレートフィルムの正面のReをほぼゼロとし、またレターデーションの角度変化も小さい、即ち、Rthもほぼゼロとした、光学的に等方性である光学透明フィルムである。
【0007】
上述のような課題を解決する有力な方法として、特許文献4には、アシル置換度が2.50〜3.00のセルロースアシレート樹脂中に複数の芳香族環とスルフォンアミド基を有するような添加剤を加えたセルロースアシレートが開示されている。
また、特許文献5には、アシル基の置換度が2.50〜2.98のもので、アシル基がアセチル基、プロピオニル基、及びブチリル基から選ばれたセルロースエステル中に質量平均分子量が500以上10,000未満のアクリレート等のオリゴマーを加えたセルロースエステルフィルムが開示されている。
何れも、膜厚方向のレターデーション(Rth)を従来のセルロースエステル系のフィルムより大幅に低減することができるため、斜め方向での光学的等方性に優れる利点がある。
【0008】
しかしながら、上記の従来技術では、環境湿度の変動に対する膜厚方向のレターデーション(Rth)の変動が大きく、その結果、液晶表示装置に適用した際に環境湿度の変動に伴い、色味やコントラスト等の視野角特性が変動してしまう問題があった。
【0009】
【特許文献1】特開2001−318233号公報
【特許文献2】特開2002−328233号公報
【特許文献3】特開2001−247717号公報
【特許文献4】特開2006−30937号公報
【特許文献5】特開2003−12859号公報
【非特許文献1】プラスチック材料講座、第17巻、日刊工業新聞社、「繊維素系樹脂」、121頁(昭和45年)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、従来における前記問題を解決し、以下の目的を達成することを課題とする。即ち、本発明は、使用環境の湿度の変化に対して、Rthの変動が十分に小さい透明保護フィルム、光学補償フィルム、及び偏光板を提供することを目的とする。
また、使用環境の湿度の変化に対して、光学的異方性(Re、Rth)が小さく、実質的に光学的等方性であり、且つ、色味やコントラストの視野角特性の変動が十分に小さい液晶表示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記課題を解決するため、本発明者らが、鋭意検討を重ねた結果、フィルム中のセルロースアシレートが面内及び膜厚方向に配向するのを抑制する化合物、及び環境湿度の変動に対して膜厚方向のレターデーション(Rth)の変動を抑制する化合物を用いることにより、光学的異方性を十分に低下させ、ReがゼロかつRthがゼロに近くなると共に、環境湿度の変動に対するRthの変動が、従来に比して大幅に低減することを知見した。
【0012】
本発明は、本発明者らによる前記知見に基づくものであり、前記課題を解決するための手段は、以下の通りである。即ち、
<1> 相対湿度60%RHにおいて、下記式(I)〜(III)を満たすことを特徴とする透明保護フィルムである。
ただし、下記式(I)〜(III)において、Re(λ)は、Re(λ)=(nx−ny)×dとして定義される波長λnmにおける正面レターデーション値(単位:nm)であり、Rth(λ)は、Rth(λ)={(nx+ny)/2−nz}×dとして定義される波長λnmにおける膜厚方向のレターデーション値(単位:nm)である。
また、nxはフィルム面内の遅相軸方向の屈折率であり、nyはフィルム面内の進相軸方向の屈折率であり、nzはフィルムの厚み方向の屈折率であり、dはフィルムの厚さ(単位:nm)、ΔRthは相対湿度10%で24時間調湿して測定した波長550nmでのRthから相対湿度80%で24時間調湿して測定した波長550nmでのRthを引いた値である。
0≦Re(630)≦10・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・式(I)
|Rth(630)|≦20・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・式(II)
ΔRth/d×80,000≦20・・・・・・・・・・・・・・・式(III)
<2> 下記式(IV)を満たす請求項1に記載の透明保護フィルムである。
ΔRth/d×80,000≦8・・・・・・・・・・・・・・・・式(IV)
<3> 透明支持体が、一分子中に少なくとも複数の水酸基、アミノ基、チオール基、カルボン酸基、から選ばれる官能基を有する化合物Aを含有する前記<1>から<2>のいずれかに記載の透明保護フィルムである。
<4> 化合物Aが、一分子内に複数の異なる官能基を有する前記<3>に記載の透明保護フィルムである。
<5> 化合物Aが、母核として、1〜2個の芳香族環を含有する前記<3>から<4>のいずれかに記載の透明保護フィルムである。
<6> 化合物Aが、水酸基、アミノ基、チオール基、カルボン酸基、から選ばれる官能基を有し、一分子中に含有する該官能基の数を該化合物Aの分子量で割った値を1,000倍した値が、10以上である前記<3>から<5>のいずれかに記載の透明保護フィルムである。
<7> 化合物Aが、芳香族環を2つ含有し、一方の芳香族環に1個以下の水酸基を含有し、他方の芳香族環に3個以下のカルボン酸基を含有し、前記水酸基と、前記カルボン酸基との合計が2〜6個である前記<3>から<6>のいずれかに記載の透明保護フィルムである。
<8> 化合物Aの2つの芳香族環が、下記の一般式(I)〜(VII)の何れかの構造で連結している前記<7>に記載の透明保護フィルムである。
ただし、下記一般式(I)〜(VII)において、R〜Rは、水素原子、芳香族環を除くアルキル基、水酸基、アミノ基、チオール基、カルボン酸基の何れかを表す。
【化8】

【化9】

【化10】

【化11】

【化12】

【化13】

【化14】

<9> 化合物Aの分子量が、180以上500以下である前記<3>から<8>のいずれかに記載の透明保護フィルムである。
<10> セルロースアシレート樹脂のアセチル基置換度が、2.0〜3.0のセルローストリアセテートである前記<1>から<9>のいずれかに記載の透明保護フィルムである。
<11> 質量平均分子量が500以上10,000未満のエチレン性不飽和モノマーを重合して得られたポリマーを含有する前記<1>から<10>のいずれかに記載の透明保護フィルムである。
<12> Re(λ)及びRth(λ)を低下させ、オクタノール−水分配係数(LogP値)が、0〜7である化合物を少なくとも1種含み、該化合物が、セルロースアシレート固形分に対して0.01質量%〜30質量%含まれる前記<1>から<11>のいずれかに記載の透明保護フィルムである。
<13> 透明支持体の少なくとも片面に、ハイブリット配向した円盤状化合物を含む光学異方性層が積層された前記<11>から<12>のいずれかに記載の透明保護フィルムである。
<14> 前記<1>から<12>のいずれかに記載の透明保護フィルム、及び前記<13>に記載の光学補償フィルムの少なくともいずれかと、偏光子とを有することを特徴とする偏光板である。
<15> 液晶セルと、該液晶セルの少なくとも一方の面に設置される前記<14>に記載の偏光板とを有することを特徴とする液晶表示装置である。
<16> 液晶セルが、TNモード、OCBモード、ECBモード、VAモード、及びIPSモードの何れかの液晶セルである前記<15>に記載の液晶表示装置である。
【発明の効果】
【0013】
本発明によると、使用環境の湿度の変化に対して、Rthの変動が十分に小さい透明保護フィルム、光学補償フィルム、及び偏光板を提供することができる。
また、本発明によれば、使用環境の湿度の変化に対して、光学的異方性(Re、Rth)が小さく、実質的に光学的等方性であり、且つ、色味やコントラストの視野角特性の変動が十分に小さい液晶表示装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下に、本発明に係る透明保護フィルム、光学補償フィルム、偏光板、及び液晶表示装置について詳細に説明する。
なお、本実施形態の説明において、「45゜」、「平行」あるいは「直交」とは、厳密な角度±5゜未満の範囲内であることを意味する。厳密な角度との誤差は、4゜未満であることが好ましく、3゜未満であることがより好ましい。また、角度について、「+」は時計周り方向を意味し、「−」は反時計周り方向を意味するものとする。また、「遅相軸」は、屈折率が最大となる方向を意味する。また、「可視光領域」とは、380〜780nmのことをいう。更に、屈折率の測定波長は、特別な記述がない限り、可視光域(λ=550nm)での値である。
【0015】
また、本実施形態の説明において「偏光板」とは、特別な記述がない限り、長尺の偏光板、及び液晶装置に組み込まれる大きさに裁断された偏光板の両者を含む意味で用いている。なお、ここでいう「裁断」には「打ち抜き」及び「切り出し」等も含むものとする。
また、本実施形態の説明では、「偏光膜」と「偏光板」とを区別して用いるが、「偏光板」は「偏光膜」の少なくとも片面に該偏光膜を保護する透明保護膜を有する積層体のことを意味するものとする。
【0016】
また、本実施形態の説明において「分子対称軸」とは、分子が回転対称軸を有する場合は、当該対称軸を指すが、厳密な意味で、分子が回転対称性であることを要求するものではない。
一般的に、円盤状液晶性化合物において、分子対称軸は、円盤面の中心を貫く円盤面に対して垂直な軸と一致し、棒状液晶性化合物において、分子対称軸は、分子の長軸と一致する。
【0017】
更に、本実施形態の説明において、Re(λ)は、波長λにおける面内のレターデーション値を表し、Rth(λ)は、厚さ方向のレターデーション値を表す。
【0018】
(透明保護フィルム、及び光学補償フィルム)
本発明の透明保護フィルムとは、少なくとも透明支持体を有し、積極的に光学補償機能を付与していないものとして定義する。
一方、本発明の光学補償フィルムとは、本発明の透明保護フィルムを用いて、特に積極的に光学補償機能を付与したもの(例えば、Re、Rthを発現する添加物を含有したり、延伸によりRe、Rthを発現させたり、更に光学異方性層を積層したもの)として定義する。本発明の光学補償フィルムは、偏光板の保護フィルムとしての透明保護フィルムの機能も兼ね備えていることが好ましい。
【0019】
<透明支持体>
本発明の透明保護フィルム、及び光学補償フィルムを構成する透明支持体は、透明樹脂材料(以下、「透明樹脂」という。)及び後述する特定の添加物(化合物A)を少なくとも含有し、必要に応じて、レターデーション制御剤、可塑剤などを添加してもよい。
ここで、前記特定の化合物とは、フィルム中のセルロースアシレートが面内及び膜厚方向に配向するのを抑制するために添加される化合物及び、環境湿度の変動に対して膜厚方向のレターデーション(Rth)の変動を抑制する化合物Aである。
本発明の透明保護フィルム、及び光学補償フィルムを構成する透明支持体としては、光透過率が80%以上であるのが好ましい。
【0020】
<<透明樹脂>>
前記透明支持体を形成する透明樹脂としては、セルロースアシレート類が挙げられる。また、前記透明樹脂を延伸することによって、光学異方性を得る。
本発明に用いられるセルロースアシレート原料のセルロースとしては、綿花リンター、ケナフ、木材パルプ(広葉樹パルプ、針葉樹パルプ)などがあり、いずれの原料セルロースから得られるセルロースアシレートでも使用でき、場合により、これらを混合して使用してもよい。
本発明においてはセルロースからエステル化してセルロースアシレートを作製するが、特に好ましい前述のセルロースがそのまま利用できる訳ではなく、リンター、ケナフ、パルプを精製して用いられる。
これらの原料セルロースについての詳細な記載は、例えばプラスチック材料講座(17)繊維素系樹脂(丸澤、宇田著、日刊工業新聞社、1970年発行)や発明協会公開技報2001−1745(7頁〜8頁)に記載のセルロースを用いることができ、本発明のセルロースアシレートフィルムに対しては特に限定されるものではない。
【0021】
本発明において、セルロースアシレートとは、セルロースの脂肪酸エステルのことである。特にセルロースの低級脂肪酸エステルが更に好ましい。
低級脂肪酸とは、炭素原子数が6以下の脂肪酸を意味する。炭素原子数は、2(セルロースアセテート)、3(セルロースプロピオネート)、又は4(セルロースブチレート)であることが好ましい。
セルロースアシレートとしては、セルロースアセテートが好ましく、その例としては、ジアセチルセルロース及びトリアセチルセルロースなどが挙げられる。
また、セルロースアセテートプロピオネートや、セルロースアセテートブチレートのような混合脂肪酸エステルを用いることも好ましく、特にセルロースアセテートプロピオネートが好ましい。
【0022】
本発明に用いられるセルロースアシレートは、セルロースの水酸基への置換度が、下記式(1)〜(2)を満足するものが、溶解性の点で好ましい。
ここで、下記式(1)〜(2)において、「SA」は、セルロースの水酸基の水素原子を置換しているアセチル基の置換度を表し、「SB」は、セルロースの水酸基の水素原子を置換している炭素原子数3〜22のアシル基の置換度を表す。「SB」は、炭素原子数3〜6のアシル基が特に好ましい。
【0023】
2.0≦SA+SB≦3.0・・・・・・・・・・・・式(1)
0≦SA≦3.0・・・・・・・・・・・・・・・・・式(2)
【0024】
また、一般に、セルロースアシレートの2,3,6位の水酸基は、全体の置換度の1/3ずつに均等に分配されるわけではなく、6位水酸基の置換度が小さくなる傾向がある。
本発明では、セルロースアシレートの6位水酸基の置換度が、2,3位に比べて同程度、若しくは、多いほうが好ましい。
全体の置換度に対して6位の水酸基が、30%以上40%以下のアシル基で置換されていることが好ましく、31%以上のアシル基で置換されていることが更に好ましく、32%以上のアシル基で置換されていることが特に好ましい。
また、6位の水酸基は、アセチル基以外に炭素数3以上のアシル基であるプロピオニル基、ブチロイル基、バレロイル基、ベンゾイル基、アクリロイル基などで置換されていてもよい。なお、各位置の置換度の測定は、NMR法などによって求めることができる。
【0025】
本発明の透明支持体に用いられる透明樹脂としては、特に、アセチル基置換度が2.0〜3.0のセルローストリアセテート、又は、全アシル基置換度が2.0〜2.7、アセチル基置換度が1.0〜2.0、プロピオニル基置換度が0.5〜1.5のセルロースアセテートプロピオネートの何れかが好ましい。
また、セルロースアシレートの粘度平均重合度(DP)は、250以上であることが好ましく、290以上であることが更に好ましい。
また、透明支持体は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法により測定される多分散性指数(Mw/Mn)が小さく、分子量分布が狭いことが好ましい。
なお、Mwは質量平均分子量を示し、Mnは数平均分子量を示す。
具体的なMw/Mnの値としては、1.0〜5.0であることが好ましく、1.0〜3.0であることがより好ましく、1.0〜1.7であることが更に好ましい。
【0026】
<<化合物A>>
本発明の透明支持体には、環境湿度の変化に対するRe、及びRthの変動を低減するために、化合物Aが含まれている。
前記化合物Aとしては、一分子中に少なくとも複数の水酸基、アミノ基、チオール基、カルボン酸基、から選ばれる官能基を有することが好ましく、一分子内に複数の異なる官能基を有することがより好ましく、水酸基とカルボン酸基を有することが特に好ましい。
化合物Aは、母核として、1〜2個の芳香族環を含有することが好ましく、一分子中に含有する前記官能基の数を、添加剤の分子量で割った値が、0.01以上であることが好ましい。
これらの特徴は、セルロースアシレート樹脂と水分子とが相互作用(水素結合)する部位に上記化合物Aが結合(水素結合)し、水分子の脱着による電荷分布の変化を抑制するように作用するためと推定している。
【0027】
化合物Aの具体例としては、下記に示す化合物(A−1)〜(A−17)が例示できるが、これらに限定するものではない。
【0028】
【化15】

【0029】
[2つの芳香族環を有する化合物A]
透明支持体の製造工程において、比較的高温(120〜140℃程度)で長時間(数分〜60分程度)加熱する工程を含む場合があり、その際には添加剤が揮散してしまうと工程を汚染してしまう。そのような場合には、2個の芳香族環を含有することで分子量を大きくすることができ、揮散性が改良され、好ましい。
また、1個の芳香族環に1個以下の水酸基を含有し、1個の芳香族環に3個以下のカルボン酸基を含有し、水酸基とカルボン酸基の合計が2個〜6個とすることで、湿度変化に対するRe、Rthの変動低減効果が確保され、好ましい。
1個の芳香族環に2個以上の水酸基を含んだり、水酸基とカルボン酸基の合計で7個以上の官能基を含んだりすると、可視光の短波長領域を吸収するようになり、フィルムが着色してしまう。
また、1個の芳香族環に4個以上のカルボン酸基を含有すると、フィルムを偏光子と貼り合わせる工程でアルカリ液に浸漬する鹸化工程を通したときにフィルムの白濁、光学特性の変化が発生する。
また、2個の芳香族環が、下記の一般式(I)〜(VII)の何れかの構造で連結していることが好ましい。
ただし、下記一般式(I)〜(VII)において、R〜Rは、水素原子、芳香族環を除くアルキル基、水酸基、アミノ基、チオール基、カルボン酸基の何れかを表す。
【化16】

【化17】

【化18】

【化19】

【化20】

【化21】

【化22】

【0030】
更に、化合物Aの分子量は、180以上500以下であることが好ましい。分子量が180未満では、揮散性が不十分となり、500以上では溶媒への溶解性、セルロースアシレート樹脂との相溶性が悪化する。
このような条件を満たす化合物Aの具体例としては、下記に示す化合物(A−18)〜(A−42)が例示できるが、これらに限定するものではない。
【0031】
【化23】

【0032】
【化24】

【0033】
【化25】

【0034】
【化26】

【0035】
<<配向抑制添加剤>>
本発明の光学補償フィルムを構成する透明支持体には、上記化合物Aに加え、該透明支持体が面内及び膜厚方向に配向するのを抑制するために有用な化合物Bを配向抑制添加剤として含有することが好ましい。
該化合物Bとしては、(1)質量平均分子量が500以上10,000未満のエチレン性不飽和モノマーを重合して得られたポリマー、(2)Re(λ)及びRth(λ)を低下させ、オクタノール−水分配係数(LogP値)が、0〜7である化合物、の少なくともいずれか一方から選ばれた化合物(以下、化合物Bと称することがある。)が好ましい。
なお、上記(1)の添加剤については、特開2006−30937号公報に記載のアクリル系ポリマーが好ましく用いられ、(2)の添加剤については特開2006−30937号公報に記載のスルフォンアミドやアミド構造を有するような化合物が好ましく用いられる。
また、上記の化合物Aにレターデーション調整機能がある場合もあり、その場合には両者の添加量を調整することが好ましい。
【0036】
<<可塑剤>>
前記透明支持体には、フィルムとしての機械的物性を改良するため、又は乾燥速度を向上するために、従来公知の可塑剤を添加してもよい。
可塑剤としては、例えば、リン酸エステル類、カルボン酸エステル類等が挙げられ、例えば、発明協会公開技報公技番号公技01−1745号のp.16に記載の化合物等が挙げられる。
なお、前記カルボン酸エステル類を構成するカルボン酸としては、脂肪族カルボン酸、オキシカルボン酸(クエン酸、リンゴ酸等)、芳香族カルボン酸(フタル酸等)等が挙げられる。
また、前記可塑剤に適用する他の化合物としては、特開平11−124445号公報、及び特開2001−247717号公報に記載された、アルカンポリオールとカルボン酸とのエステル化化合物も好ましい。
可塑剤の添加量は、セルロースアシレート100質量部に対して、0.05質量%〜25質量%であることが好ましく、1質量%〜20質量%であることがより好ましい。
また、上記化合物Aとの併用によって添加剤の効果を低減させてしまう場合には、可塑剤の添加量を低減することで調整することが好ましい。上記化合物Aが可塑剤の機能を有する場合も多く、必ずしも上記化合物Aと別に可塑剤を添加する必要はない。
【0037】
<<微粒子>>
本発明では、フィルムのカール抑制、搬送性、或は耐傷性を良好に保持するために、セルロースアシレート組成物(透明支持体)に微粒子を添加するのが好ましい。
添加する微粒子は、前述の機能を呈する素材であれば特に限定はなく、微粒子のモース硬度が2〜10であるものが好ましい。
【0038】
前記微粒子としては、無機化合物、有機化合物のいずれを用いてもよく、無機化合物の微粒子の好ましい具体例としては、ケイ素を含む化合物、二酸化ケイ素、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化アルミニウム、酸化バリウム、酸化ジルコニウム、酸化ストロンチウム、酸化アンチモン、酸化スズ、酸化スズ・アンチモン、炭酸カルシウム、タルク、クレイ、焼成カオリン、焼成ケイ酸カルシウム、水和ケイ酸カルシウム、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウム、及びリン酸カルシウム等が挙げられ、これらの中でも、ケイ素を含む無機化合物や酸化ジルコニウムがより好ましく、透明支持体の濁度を低減できるので二酸化ケイ素が更に好ましい。
【0039】
また、添加する無機化合物の微粒子として、表面処理された無機微粒子を採用することも、セルロースアシレート中への分散性が良好となり好ましい。
前記無機化合物の微粒子の表面処理の方法としては、例えば、特開昭54−57562号公報に記載の方法が挙げられる。また、前記無機化合物の微粒子としては、例えば、特開2001−151936号公報に記載の無機化合物の微粒子が挙げられる。
【0040】
有機化合物の微粒子の好ましい具体例としては、架橋ポリスチレン、シリコーン樹脂、フッ素樹脂、及びアクリル樹脂等のポリマーが挙げられ、これらの中でも、シリコーン樹脂がより好ましく、シリコーン樹脂の中でも、三次元の網状構造を有するシリコーン樹脂が特に好ましい。
【0041】
以上の微粒子の1次平均粒子径(以下、粒径とも称する)としては、0.001μm〜1μmが好ましく、0.005μm〜0.4μmがより好ましく、0.005μm〜0.1μmが更に好ましい。これらの範囲であれば、フィルムとしての機械的な物性を損なうことなく、ヘイズを低く抑え、かつ製膜後のフィルム表面の凹凸を小さくすることができる。
セルロースアシレートに対する微粒子の添加量は、セルロースアシレート100質量部に対して、微粒子は0.01質量部〜0.3質量部が好ましく、0.05質量部〜0.2質量部がより好ましい。
【0042】
<<他の添加剤>>
本発明の透明支持体には、更に、紫外線防止剤、劣化防止剤、剥離剤、帯電防止剤等を添加してもよい。
前記紫外線防止剤としては、例えば、ヒドロキシベンゾフェノン系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物、サリチル酸エステル系化合物、及びシアノアクリレート系化合物等が挙げられる。
また、前記劣化防止剤としては、例えば、酸化防止剤、過酸化物分解剤、ラジカル禁止剤、金属不活性化剤、酸捕獲剤、及びヒンダードアミン等の光安定化剤等が挙げられる。
これら紫外線防止剤、劣化防止剤、剥離剤、帯電防止剤等の詳細は、上記発明協会公開技報公技番号公技01−1745号のp.17〜22に詳細に記載されている素材が好ましく用いられる。
【0043】
<透明支持体の製造方法>
本発明における透明支持体の製造方法としては、ソルベントキャスト法により、セルロースアシレートフィルムを製造することが好ましく、セルロースアシレートを有機溶媒に溶解した溶液(ドープ)を用いてフィルムは製造される。
当該製造方法に用いる有機溶媒としては、従来公知の有機溶媒が挙げられ、例えば、溶解度パラメーター(SP値)で17〜22の範囲のものが好ましい。
ここで、前記溶解度パラメーター(SolubIlIty Parameter)δは、下記式(3)で算出することができる。
δ=(E/V)1/2・・・・・・・・・・式(3)
なお、上記式(3)において、Eは、凝集エネルギー(モル蒸発エネルギー)を示し、Vは、分子容(モル体積)を示す。
また、この溶解度パラメーターについては、例えば、J.Brandrup、E.Hなどの「PolymerHandbook(4th.edItIon)、VII/671〜VII/714」に記載されている。
【0044】
このような有機溶媒の例としては、低級脂肪族炭化水素の塩化物、低級脂肪族アルコール、炭素原子数3から12までのケトン、炭素原子数3〜12のエステル、炭素原子数3〜12のエーテル、炭素原子数5〜8の脂肪族炭化水素類、炭素数6〜12の芳香族炭化水素類等が挙げられる。
なお、エーテル、ケトン及びエステルは、環状構造を有していてもよい。
また、エーテル、ケトン及びエステルの官能基(すなわち、−O−、−CO−、及びCOO−)のいずれかを2つ以上有する化合物も、有機溶媒として用いることができる。
なお、前記有機溶媒は、アルコール性水酸基のような他の官能基を有していてもよい。
2種類以上の官能基を有する有機溶媒の場合、その炭素原子数は、いずれかの官能基を有する化合物の規定範囲内であればよい。
具体的には、例えば、前記発明協会公開技報公技番号公技01−1745号のp.12〜16に詳細に記載されている化合物が挙げられる。
【0045】
特に、本発明では、溶媒は2種類以上の有機溶媒を混合して用いることが好ましく、互いに異なる3種類以上の混合溶媒であることが特に好ましい。
この、互いに異なる3種類以上の混合溶媒としては、第1の溶媒は、炭素原子数が3〜4のケトン、及び炭素原子数が3〜4のエステル或いはその混合液であり、第2の溶媒は、炭素原子数が5〜7のケトン類、又はアセト酢酸エステルから選ばれ、第3の溶媒として、沸点が30℃〜170℃のアルコール、又は沸点が30℃〜170℃の炭化水素から選ばれることが好ましい。
特に、酢酸エステルを20質量%〜90質量%、ケトン類を5質量%〜60質量%、アルコール類を5質量%〜30質量%の混合比で用いることがセルロースアシレートの溶解性の点から好ましい。
また、ハロゲン化炭化水素を含まない非ハロゲン系有機溶媒系が特に好ましい。
技術的には、メチレンクロリドのようなハロゲン化炭化水素は問題なく使用できるが、地球環境や作業環境の観点では、有機溶媒はハロゲン化炭化水素を実質的に含まないことが好ましい。
ここで、「実質的に含まない」とは、有機溶媒中のハロゲン化炭化水素の割合が5質量%未満(好ましくは2質量%未満)であることを意味する。また、製造した透明支持体から、メチレンクロリドのようなハロゲン化炭化水素が全く検出されないことが好ましい。
【0046】
本発明に使用する有機溶媒は、具体的には、例えば特開2002−146043号公報の段落番号〔0021〕〜〔0025〕、及び特開2002−146045号公報の段落番号〔0016〕〜〔0021〕等に記載の有機溶媒の例が挙げられる。
また、本発明に用いるドープには、上記本発明の有機溶媒以外に、フルオロアルコールやメチレンクロライドを本発明の全有機溶媒量の10質量%以下、より好ましくは、5質量%以下含有させることもフィルムの透明性を向上させたり、溶解性を早めたりする上で好ましい。
該フルオロアルコールとしては、例えば、特開平8−143709号公報の段落番号[0020]、特開平11−60807号公報の段落番号[0037]等に記載の化合物が挙げられる。これらのフルオロアルコールは一種又は二種以上使用してもよい。
本発明のセルロースアシレート溶液を調製する際に、容器内に窒素ガスなどの不活性ガスを充満させてもよい。
また、セルロースアシレート溶液の製膜直前の粘度は、製膜の際、流延可能な範囲であればよく、通常10ps・s〜2,000ps・sの範囲に調製されることが好ましく、30ps・s〜400ps・sがより好ましい。
【0047】
本発明のセルロースアシレート溶液(ドープ)の調製については、その溶解方法は特に限定されず、室温溶解法でもよく、冷却溶解法、又は高温溶解方法、更には、これらの組み合わせで実施される。
これらの溶解方法に関しては、例えば特開平5−163301公報、特開昭61−106628公報、特開昭58−127737公報、特開平9−95544公報、特開平10−95854公報、特開平10−45950公報、特開2000−53784公報、特開平11−322946公報、特開平11−322947公報、特開平2−276830公報、特開2000−273239公報、特開平11−71463公報、特開平04−259511公報、特開2000−273184公報、特開平11−323017公報、及び特開平11−302388公報等に記載されたセルロースアシレート溶液の調製法が挙げられる。
また、これらのセルロースアシレートの有機溶媒への溶解方法は、本発明の範囲であれば、適宜これらの技術を適用できる。
更に、セルロースアシレートのドープ溶液は、溶液の濃縮と濾過が通常実施され、同様に前記発明協会公開技報公技番号公技01−1745号に詳細に記載されている。なお、高温度で溶解する場合は、使用する有機溶媒の沸点以上の場合がほとんどであり、その場合は加圧状態で用いられる。
【0048】
次に、本発明において、セルロースアシレート溶液を用いた透明支持体の製造方法について説明する。
透明支持体を製造する方法、及び設備は、透明支持体製造に供するドラム方法、又はバンド方法と称される、従来公知の溶液流延製膜方法及び溶液流延製膜装置が用いられる。
ここで、前記バンド法を例として製膜の工程を説明すると、溶解機(釜)から調製されたドープ(セルロースアシレート溶液)を貯蔵釜に一旦貯蔵し、ドープに含まれている泡を脱泡して最終調製をする。
次に、調製されたドープは、精密濾過により異物を除去することが重要である。具体的には、濾過に用いるフィルターは、ドープ液中の成分が除去されない範囲でできるだけ孔径の小さいものを使うことが好ましい。
また、濾過には絶対濾過精度が0.1μm〜100μmのフィルターが用いられ、更には絶対濾過精度が0.1μm〜25μmであるフィルターを用いることが好ましく用いられる。
ここで、フィルターの厚さは、0.1mm〜10mmが好ましく、0.2mm〜2mmが更に好ましい。その場合、1.47MPa以下の濾過圧力で濾過することが好ましく、0.98MPa以下の濾過圧力で濾過することがより好ましく、0.20MPa以下の濾過圧力で濾過することが更に好ましい。
【0049】
また、精密濾過を行うために、フィルターの孔径を順次小さくして濾過を数回行うことも好ましい。
精密濾過を行うための濾材のタイプは、上記性能を有していれば特に限定されないが、例えばフィラメント型、フェルト型、及びメッシュ型が挙げられる。
また、分散物を精密濾過するための濾材の材質は上記性能を有し、かつ塗布液に悪影響を及ばさなければ特に限定はされないが、例えばステンレス、ポリエチレン、ポリプロピレン、及びナイロン等が挙げられる。
【0050】
調製したドープを、ドープ排出口から、例えば回転数によって高精度に定量送液できる加圧型定量ギヤポンプを通して加圧型ダイに送り、ドープを加圧型ダイの口金(スリット)からエンドレスに走行している流延部の金属支持体の上に均一に流延し、金属支持体がほぼ一周した剥離点で、生乾きのドープ膜(ウェブとも称する)を金属支持体から剥離する。
得られるウェブの両端を、クリップで挟み、幅保持しながらテンターで搬送して乾燥し、続いて、乾燥装置のロール群で搬送し、乾燥を終了して巻き取り機で所定の長さに巻き取る。なお、テンターとロール群の乾燥装置との組み合わせは、その目的により変わる。
これらの各製造工程(流延(共流延を含む)、金属支持体、乾燥、剥離、延伸などに分類される)については、前記発明協会公開技報公技番号01−1745号のp.25〜30に詳細に記載された内容が挙げられる。
流延工程では、1種類のセルロースアシレート溶液を単層流延してもよいし、2種類以上のセルロースアシレート溶液を同時、及び/又は逐次共流延してもよい。
また、流延工程では、流延方向(縦方向)等の一方向のみの1軸延伸、或いは流延方向及び他の方向(横方向)の2軸延伸等が行われることが好ましい。
【0051】
流延工程で用いる金属支持体は、その表面が算術平均粗さ(Ra)が0.015μm以下で、十点平均粗さ(Rz)が、0.05μm以下であることが好ましく、算術平均粗さ(Ra)が、0.001μm〜0.01μmであり、十点平均粗さ(Rz)が、0.001μm〜0.02μmであることがより好ましく、(Ra)/(Rz)比が0.15以上であることが更に好ましい。
このように、金属支持体の表面粗さを所定の範囲とすることで、製膜後のセルロースアシレートフィルムの表面形状を、後述する好ましい範囲内に制御できる。
【0052】
更に本発明のセルロースアシレート溶液は、他の機能層(例えば、接着層、染料層、帯電防止層、アンチハレーション層、UV吸収層、偏光層など)を同時に流延してもよい。
【0053】
<透明支持体の特性>
<<表面の性状>>
本発明に用いる透明支持体の表面は、JIS B0601−1994に基づく該膜の表面凹凸の算術平均粗さ(Ra)が、0.0001μm〜0.05μm、及び最大高さ(Ry)が、0.0002μm〜0.2μmであることが好ましい。
膜表面の凹と凸の形状は、原子間力顕微鏡(AFM)により評価することができる。
本発明の透明支持体の表面状態を上記の凹凸の大きさ内とすることで、後述する透明支持体の表面への密着性付与の塗設において、透明支持体の全面が安定して均一に処理され、処理ムラや塗布ムラ等による光学的な欠陥が解消される。
【0054】
また、本発明に用いる透明支持体の動摩擦係数は、0.4以下であることが好ましく、0.3以下であることが特に好ましい。動摩擦係数が大きいと搬送ロールとの間で強く擦られる結果透明支持体から発塵しやすくなり、透明支持体上への異物付着が多くなり、光学補償フィルムの点欠陥や塗布スジの頻度が許容値を超えてしまう。
動摩擦係数は、5mmφの鋼球を用いる鋼球法により測定することができる。
【0055】
また、本発明に用いる透明支持体の表面抵抗率は、1.2×1012Ω/□以下であることが好ましく、1.0×1012Ω/□以下であることがより好ましく、0.8×1012Ω/□以下であることが特に好ましい。表面抵抗率を本発明の範囲内とすることにより透明支持体や光学補償フィルムへの異物の付着が抑えられ、光学補償フィルムの点欠陥や塗布スジを少なくすることができる。
【0056】
<<透明支持体の機械的特性>>
[引き裂き強度]
透明支持体の引き裂き強度は、30℃、85%RH(相対湿度)において3〜50gであることが好ましい。
【0057】
[引掻き強度]
また、引掻き強度は1g以上であることが好ましく、5g以上であることがより好ましく、10g以上であることが更に好ましい。
これらの範囲において、透明支持体の表面の耐傷性、ハンドリング性が問題なく保持される。
引掻き強度は、円錐頂角が90度で、先端の半径が0.25mのサファイヤ針を用いて透明支持体表面を引掻き、引掻き跡が目視にて確認できる荷重(g)をもって評価することができる。
【0058】
<<透明支持体の吸湿膨張係数>>
本発明の光学補償フィルムに用いる透明支持体の吸湿膨張係数を30×10−5/%RH以下とすることが好ましい。吸湿膨張係数は、15×10−5/%RH以下とすることが好ましく、10×10−5/%RH以下であることが更に好ましい。
また、吸湿膨張係数は小さい方が好ましいが、通常は、1.0×10−5/%RH以上の値である。吸湿膨張係数は、一定温度下において相対湿度を変化させたときの試料の長さの変化量を示す。
この吸湿膨張係数を調節することで、光学補償フィルムの光学補償機能を維持したまま、額縁状の透過率上昇、すなわち歪みによる光漏れを防止することができる。
【0059】
ここで、本実施形態における吸湿膨張係数の測定方法について以下に説明する。
まず、作製した透明支持体から幅5mm、長さ20mmの試料を切り出し、片方の端を固定して25℃、20%RH(R)の雰囲気下にぶら下げた。他方の端に0.5gの重りをぶら下げて、10分間放置し長さ(L)を測定した。次に、温度は25℃のまま、湿度を80%RH(R)にして、長さ(L)を測定した。吸湿膨張係数は、下式により算出した。測定は同一試料につき10サンプル行い、平均値を採用した。
【0060】
吸湿膨張係数[/%RH]={(L−L)/L}/(R−R
【0061】
作製した透明支持体の吸湿による寸度変化を小さくするには、疎水基を有する化合物或は微粒子等を添加することが好ましい。疎水基を有する化合物としては、分子中に脂肪族基や芳香族基のような疎水基を有する可塑剤や劣化防止剤の中で該当する素材が特に好ましく用いられる。これらの化合物の添加量は、調整する溶液(ドープ)に対して0.01〜10質量%の範囲にあることが好ましい。
【0062】
<<透明支持体の残留溶剤量>>
本発明に用いる透明支持体の残留溶剤量は、1.5%以下とすることでカールを抑制できる。該残留溶剤量が1.0%以下であることがより好ましい。
これは、前述のソルベントキャスト方法による成膜時に残留溶剤量を少なくすることで自由体積が小さくなることが主要な効果要因になるためと思われる。
具体的には、透明支持体に対する残留溶剤量が、0.01質量%〜1.5質量%の範囲となる条件で乾燥することが好ましく、0.01質量%〜1.0質量%の範囲となる条件で乾燥することがより好ましい。
本発明において、残留溶剤量とは、対固形分質量に対する揮発分のことで、下記式で表される値とする。なお、下記式において、Wは、試料軟膜質量を示し、Wは、試料軟膜Wを110℃で、2時間乾燥した後の試料質量を示す。
【0063】
残留溶剤量(質量%)=((W−W)/W)×100
【0064】
<透明保護フィルム、及び光学補償フィルムの透湿度>
ここで、本発明の透明保護フィルム、及び光学補償フィルムの透湿度は、JIS規格JISZ0208、B条件(温度40℃、湿度90%RH)において、100〜2,000g/m・24hである。
従来知見では、150g/m・24hを越えると、透明支持体のRe値、Rth値の湿度依存性の絶対値が0.5nm/%RHを超える傾向が強くなり、好ましくない、とされていたが、本発明の化合物Aを含有するセルロースアシレートフィルムは、透湿度は高くても、Re値、Rth値の湿度依存性は低く抑制できる。
【0065】
透湿度の測定法は、「高分子の物性II」(高分子実験講座4 共立出版)p.285−294:蒸気透過量の測定(質量法、温度計法、蒸気圧法、吸着量法)に記載の方法を適用することができる。
【0066】
<光学補償フィルムの含水量>
本発明の透明保護フィルム、光学補償フィルムを構成する透明支持体の含水量は、ポリビニルアルコール等の水溶性ポリマーとの接着性を損なわないために、膜厚の寸法に関わらず、30℃、85%RH下で0.3g/m〜12g/mであることが好ましい。ここでも、本発明の化合物Aを含有するセルロースアシレートフィルムは、含有しないフィルムと比較して含水率は高くなるが、湿度依存性は良化する点で従来知見とは異なる。
【0067】
<透明支持体の光学異方性>
本発明の光学補償フィルムに用いる透明支持体は、光学異方性を殆ど有さないことを特徴とする。その程度を表すレターデーション値Re(面内のレターデーション値)、及びレターデーション値Rth(厚さ方向のレターデーション値)は、それぞれ、下記式で定義される。
Re=(nx−ny)×d
Rth={(nx+ny)/2−nz}×d
なお、上記式中、nxは、前記透明支持体の面内の遅相軸方向の屈折率であり、nyは、前記透明支持体の面内の進相軸方向の屈折率であり、nzは、前記透明支持体の厚み方向の屈折率であり、dは、前記透明支持体の厚さである。
【0068】
なお、遅相軸を傾斜軸(回転軸)として(遅相軸がない場合には、フィルム面内の任意の方向を回転軸とする)、任意の傾斜した2方向からレターデーション値を測定し、その値と平均屈折率の仮定値、及び入力された膜厚値を基にRe値、及びRth値を算出する場合は、上記式を用いて算出するが、他の算出方法として、KOBRA 21ADH、又はWR(王子計測機器(株)製)を用いて、波長λnmの光をフィルム法線方向に入射させて、Re(λ)を測定することができる。
測定されるフィルムが、1軸又は2軸の屈折率楕円体で表されるものである場合には、以下の方法によりRth(λ)が算出される。
Rth(λ)は、前記Re(λ)を、面内の遅相軸(KOBRA 21ADH、又はWRにより判断される)を傾斜軸(回転軸)として(遅相軸がない場合には、フィルム面内の任意の方向を回転軸とする)のフィルム法線方向に対して法線方向から片側50°まで10度ステップで各々その傾斜した方向から波長λnmの光を入射させて全部で6点測定し、その測定されたレターデーション値と平均屈折率の仮定値及び入力された膜厚値を基にKOBRA 21ADH又はWRが算出する。
上記において、法線方向から面内の遅相軸を回転軸として、ある傾斜角度にレターデーションの値がゼロとなる方向をもつフィルムの場合には、その傾斜角度より大きい傾斜角度でのレターデーション値はその符号を負に変更した後、KOBRA 21ADH、又はWRによって算出される。
【0069】
また、測定されるフィルムが、1軸や2軸の屈折率楕円体で表現できないもの、いわゆる光学軸(optic axis)がないフィルムの場合には、以下の方法により、Rth(λ)は算出される。
Rth(λ)は、前記Re(λ)を、面内の遅相軸(KOBRA 21ADH、又はWRにより判断される)を傾斜軸(回転軸)として、フィルム法線方向に対して−50°から+50°まで10°ステップで各々その傾斜した方向から波長λnmの光を入射させて11点測定し、その測定されたレターデーション値と平均屈折率の仮定値及び入力された膜厚値を基にKOBRA 21ADH又はWRが算出する。
また、上記の測定において、平均屈折率の仮定値は、ポリマーハンドブック(JOHN WILEY&SONS,INC)、各種光学フィルムのカタログの値を使用することができる。平均屈折率の値が既知でないものについては、アッベ屈折計で測定することができる。主な光学フィルムの平均屈折率の値を以下に例示する:セルロースアシレート(1.48)、シクロオレフィンポリマー(1.52)、ポリカーボネート(1.59)、ポリメチルメタクリレート(1.49)、ポリスチレン(1.59)である。これら平均屈折率の仮定値と膜厚を入力することで、KOBRA 21ADH又はWRはnx、ny、nzを算出する。この算出されたnx,ny,nzよりNz=(nx−nz)/(nx−ny)が更に算出される。
【0070】
本発明では、下記式(I)〜(II)に示すように、透明保護フィルムの波長630nmにおけるレターデーション値Re(630)が、0〜10nmであることが好ましく、0〜5nmであることがより好ましい。
また、透明保護フィルムの波長630nmにおけるレターデーション値Rth(630)が、−20nm〜20nmであることが好ましい。
上記の特性を満たす透明保護フィルムを偏光板の保護フィルムに用いることにより、液晶表示装置に適用したときの表示特性の視野角依存性が十分に低減される。
なお、上記の特性を実現するためには、上記の透明保護フィルムに、上記化合物Bを好ましい組み合わせで添加することで実現することができる。
【0071】
0≦Re(630)≦10・・・・・・・・・・・・・・式(I)
|Rth(630)|≦20・・・・・・・・・・・・・式(II)
【0072】
<透明保護フィルム、及び光学補償フィルムの光学特性の湿度依存性>
本発明の透明保護フィルム、光学補償フィルムは、その光学特性が、環境湿度の変化に対して変動が小さいことを特徴とする。
特に、厚み方向のレターデーション(Rth)に関して、下記式(III)を満たすことが好ましい。なお、下記式(III)、はフィルムの厚さ(単位:nm)、ΔRthは相対湿度10%で24時間調湿して測定したRth(550)から相対湿度80%で24時間調湿して測定したRth(550)を引いた値である。
ΔRth/d×80,000≦20・・・・・・・・・・・・・・・式(III)
上記の特性を満たすことにより、透明保護フィルム、又は光学補償フィルムとして偏光板の保護フィルムに用いることにより、液晶表示装置に適用した時の環境湿度の変動に対する表示特性の変動を十分に低減することができる。
なお、上記式(I)〜(II)は、偏光板加工適性やハンドリング適性等、実用上好ましい80μの厚みに固定した際、どれだけ湿度に対するフィルムのRthの変動を小さくできるかを示す指標である。
したがって、本発明の透明保護フィルムは、該指標に基づいて、下記式(IV)を満たすことがより好ましい。
ΔRth/d×80,000≦8・・・・・・・・・・・・・・・・式(IV)
さらに、上記の特性を実現するためには、上記透明保護フィルムに、上記の化合物A等を好ましい組み合わせで添加することで実現できる。
【0073】
<<光学異方性の評価方法>>
本発明の透明保護フィルムの面内のレターデーションRe、膜厚方向のレターデーションRthは、以下の方法で測定される。
試料30mm×40mmを、25℃、60%RHで2時間調湿し、Re(λ)は自動複屈折計KOBRA 21ADH(王子計測機器(株)製)において波長λnmの光をフィルム法線方向に入射させて測定する。
また、Rth(λ)は前記Re(λ)、面内の遅相軸を傾斜軸としてフィルム法線方向に対して+40°傾斜した方向から波長λnmの光を入射させて測定したレターデーション値、及び面内の遅相軸を傾斜軸としてフィルム法線方向に対して−40°傾斜した方向から波長λnmの光を入射させて測定したレターデーション値の計3つの方向で測定したレターデーション値を基に、平均屈折率の仮定値1.48、及び膜厚を入力し、算出する。
【0074】
<透明支持体の密着性付与の方法>
本発明の光学補償フィルムの透明支持体は、更に液晶性物質からなる光学補償層を配向膜上に配向させて固定化して形成することで、TNモードやOCBモードの液晶表示装置の表示特性を向上することもできる。このような場合には、配向膜を塗布方式で設ける場合には、該透明支持体の表面に密着性を付与し、配向膜用塗布液が均一に塗工されるように表面処理を施すことが好ましい。
表面処理の方法としては、配向膜の下塗り層を設ける方法が挙げられる。
配向膜の下塗り層を設ける方法としては、例えば、特開平7−333433号公報に記載の下塗り層、或いは、疎水性基と親水性基との両方を含有するゼラチン等の樹脂層を一層のみ塗布する単層法が挙げられる。
その他にも、第1層として高分子フィルムによく密着する層(以下、下塗第1層とする。)を設け、その上に第2層として配向膜とよく密着するゼラチン等の親水性の樹脂層(以下、下塗第2層と略す)を塗布する所謂重層法が挙げられる。この重層法は、例えば、特開平11−248940号公報に記載されている。
【0075】
<<透明支持体の表面処理>>
本発明の透明支持体は、薄層フィルムであることから、透明支持体の表面に直接親水化処理を施すことが好ましい。
表面処理としては、コロナ放電処理、グロー放電処理、火炎処理、紫外線照射処理、オゾン処理、酸処理、アルカリ鹸化処理等が挙げられる。アルカリ鹸化処理がより好ましい。
【0076】
[アルカリ鹸化処理]
アルカリ鹸化処理は、アルカリ溶液を透明支持体に浸漬、噴射若しくは塗布することで行い、塗布で鹸化処理することが好ましい。
【0077】
−アルカリ溶液−
本発明においてアルカリ鹸化処理に用いるアルカリ溶液は、pH11以上であることが好ましく、pH12〜14であることがより好ましい。
アルカリ溶液に用いられるアルカリ剤の例としては、無機アルカリ剤として、水酸化ナトリウム、同カリウム、同リチウム等が挙げられる。
また、有機アルカリ剤としては、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、DBU(1,8−ジアザビシクロ[5,4,0]−7−ウンデセン)、DBN(1,5−ジアザビシクロ[4,3,0]−5−ノネン)、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド、テトラプロピルアンモニウムヒドロキシド、テトラブチルアンモニウムヒドロキシド、トリエチルブチルアンモニウムヒドロキシドなどが挙げられる。
これらのアルカリ剤は、単独又は二種以上を組み合わせて併用することもでき、一部を例えばハロゲン化したような塩の形態として添加してもよい。
これらのアルカリ剤の中でも、水酸化ナトリウム或は水酸化カリウムが、これらの量を調整することにより広いpH領域でのpH調整が可能となるため好ましい。
また、アルカリ溶液の濃度は、使用するアルカリ剤の種類、反応温度及び反応時間に応じて決定されるが、アルカリ剤の含有量は、アルカリ溶液中の0.1〜5mol/Kgが好ましく、0.5〜3mol/Kgがより好ましい。
【0078】
本発明のアルカリ溶液の溶媒は、水及び水溶性有機溶媒の混合溶液を含有することからなることが好ましい。
有機溶媒としては、水と混和可能な有機溶媒であればいずれも用いることができ、沸点が120℃以下の有機溶媒が好ましく、沸点が100℃以下の有機溶媒が特に好ましい。
その中でも好ましい有機溶媒は、無機性/有機性値(I/O値)が、0.5以上、かつ溶解度パラメーターが16〜40(mJ/m)の範囲のものが好ましい。
より好ましくは、I/O値が、0.6〜10、且つ溶解度パラメーターが18〜31(mJ/m)である。
I/O値がこの範囲よりも無機性が強いか、又は溶解度パラメーターが低いと、アルカリ鹸化速度が低下し、また鹸化度の全面均一性も不満足となる。
一方、I/O値が上記範囲よりも有機性が強いか、又は溶解度パラメーターが高いと、鹸化速度は速いが、ヘイズを生じ易く、したがって、全面均一性の点では同様に不満足となる。
【0079】
また、有機溶媒、特に、有機性と溶解性の各範囲の有機溶媒を後述する界面活性剤や、相溶化剤等と組み合わせて用いると高い鹸化速度が維持されて、かつ全面に亘る鹸化度の均一性が向上する。
好ましい特性値を有する有機溶媒は、例えば、有機合成化学協会編、「新版溶剤ポケットブック」((株)オーム社、1994年刊)等に記載されている。また、有機溶媒の無機性/有機性値(I/O値)については、例えば、甲田善生著「有機概念図」(三共出版社1983年刊)p.1〜31に記載されている。
【0080】
具体的には、一価脂肪族アルコール類(メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、ペンタノール等)、二価脂肪族アルコール類(エチレングリコール、プロピレングリコール等)、脂環式アルカノール(シクロヘキサノール、メチルシクロヘキサノール、メトキシシクロヘキサノール、シクロヘキシルメタノール、シクロヘキシルエタノール、シクロヘキシルプロパノール等)、フェニルアルカノール(べンジルアルコール、フェニルエタノール、フェニルプロパノール、フェノキシエタノール、メトキシベンジルアルコール、ベンジルオキシエタノール等)、複素環式アルカノール類(フルフリルアルコール、テトラヒドロフルフリルアルコール等)、グリコール化合物のモノエーテル類(メチルセルソルブ、エチルセルソルブ、プロピルセルソルブ、ブチルセルソルブ、ヘキシルセルソルブ、メチルカルビトール、エチルカルビトール、プロピルカルビトール、ブチルカルビトール、メトキシトリグリコール、エトキシトリグリコール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル等)、ケトン類(アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等)、アミド類(N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルホルムアミド、N−メチル−2−ピロリドン、1,3ジメチルイミダゾリジノン等)、スルホキシド類(ジメチルスルホキシド等)及びエーテル類(テトラヒドロフラン、ピラン、ジオキサン、トリオキサン、ジメチルセルソルブ、ジエチルセルソルブ、ジプロピルセルソルブ、メチルエチルセルソルブ、ジメチルカルビトール、ジメチルカルビトール、メチルエチルカルビトール等)等が挙げられる。用いる有機溶媒は、単独若しくは2種以上を混合して用いてもよい。
【0081】
有機溶媒を単独或いは2種以上を混合する場合の少なくとも一種の有機溶媒は、水への溶解性が大きなものが好ましい。有機溶媒の水の溶解度は、50質量%以上が好ましく、水と自由に混合するものがより好ましい。これによりアルカリ剤、鹸化処理で副生する脂肪酸の塩、空気中の二酸化炭素を吸収して生じた炭酸の塩等への溶解性が充分なアルカリ溶液を調製できる。
有機溶媒の溶媒中の使用割合は、溶媒の種類、水との混和性(溶解性)、反応温度及び反応時間に応じて決定する。
水と有機溶媒の混合比(質量比)は、3/97〜85/15が好ましく、5/95〜60/40がより好ましく、15/85〜40/60が更に好ましい。これらの範囲において、アシレートフィルムの光学特性を損なうことなく容易に、透明支持体の全面が均一に鹸化処理される。
【0082】
本発明に用いるアルカリ溶液が含有する有機溶媒として、上記した好ましいI/O値を有する有機溶媒とは異なる有機溶媒(例えば、フッ化アルコール等)を、後述の界面活性剤、相溶化剤の溶解助剤として併用してもよい。その含有量は、使用液の総質量に対して0.1〜5%が好ましい。
【0083】
本発明に用いるアルカリ溶液は、界面活性剤を含有することが好ましい。界面活性剤を添加することによって表面張力を下げて塗布を容易にしたり、塗膜の均一性を上げてハジキ故障を防止し、かつ有機溶媒が存在すると起こり易いヘイズを抑止し、更に鹸化反応が均一に進行する。
その効果は、後述する相溶化剤の共存によって特に顕著となる。
なお、用いられる界面活性剤には特に制限はなく、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤、フッ素系界面活性剤等のいずれであってもよい。
【0084】
具体的には、例えば、吉田時行著「界面活性剤ハンドブック(新版)」(工学図書、1987年刊行)、「界面活性剤の機能創製・素材開発・応用技術」第1編(技術教育出版、2000年刊行)等記載の公知の化合物が挙げられる。
これらの界面活性剤の中でも、カチオン性界面活性剤としての4級アンモニウム塩類、ノニオン性界面活性剤としての各種のポリアルキレンレングリコール誘導体類、各種のポリエチレンオキサイド付加物類等のポリエチレンオキサイド誘導体類、両性界面活性剤としてのベタイン型化合物類が好ましい。
アルカリ溶液には、ノニオン活性剤とアニオン活性剤、又はノニオン活性剤とカチオン活性剤を共存させて用いることも本発明の効果が高められて好ましい。
【0085】
これらの界面活性剤のアルカリ溶液に対する添加量は、0.001〜10質量%が好ましく、0.01〜5質量%がより好ましい。
【0086】
本発明に用いられるアルカリ溶液は、相溶化剤を含有させることも好ましい。本発明において、「相溶化剤」とは、温度25℃において、相溶化剤100gに対して水の溶解度が50g以上となる親水性化合物をいう。相溶化剤の水の溶解度は、相溶化剤100gに対して、80g以上であるのが好ましく、100g以上であるのがより好ましい。また、相溶化剤が液状化合物である場合は、沸点が100℃以上であるのが好ましく、120℃以上であるのがより好ましい。
【0087】
相溶化剤は、アルカリ溶液を貯留する浴等の壁面に付着したアルカリ溶液の乾燥を防止し、固着を抑制し、アルカリ溶液を安定に保持させる作用を有する。また、透明支持体の表面にアルカリ溶液を塗布して一定時間保持した後、鹸化処理を停止するまでの間に、塗布されたアルカリ溶液の薄膜が乾燥し、固形物の析出を生じ、水洗工程での固形物の洗い出しを困難にすることを防止する作用を有する。更には、溶媒となる水と有機溶剤との相分離を防止する。
特に、界面活性剤と有機溶剤と上述した相溶化剤との共存によって、処理された透明支持体は、ヘイズが少なく、かつ、長尺の連続鹸化処理の場合であっても安定して全面均一な鹸化度となる。
【0088】
相溶化剤は、上記の条件を満たす材料であれば、特に限定されず、例えば、ポリオール化合物、糖類等のヒドロキシル基、及び/又はアミド基を有する繰り返し単位を含む水溶性重合体が好ましく挙げられる。
ポリオール化合物は、低分子化合物、オリゴマー化合物及び高分子化合物のいずれも用いることができる。ポリオール化合物の具体例を以下に挙げる。
脂肪族ポリオール類としては、例えば、炭素数2〜8のアルカンジオール、及びヒドロキシル基を3個以上含有する炭素数3〜18のアルカン類が挙げられる。
前記炭素数2〜8のアルカンジオールとしては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール、グリセリンモノメチルエーテル、グリセリンモノエチルエーテル、シクロヘキサンジオール、シクロヘキサンジメタノール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール等が挙げられる。
また、前記ヒドロキシル基を3個以上含有する炭素数3〜18のアルカン類としては、例えば、グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、トリメチロールブタン、ヘキサントリオール、ペンタエリスリトール、ジグリセリン、ジペンタエリスリトール、イノシットール等が挙げられる。
【0089】
ポリアルキレンオキシポリオール類としては、上記のような同じアルキレンジオール同士が結合していてもよく、異なるアルキレンジオールが互いに結合していてもよいが、同じアルキレンジオール同士が結合したポリアルキレンポリオールがより好ましい。
いずれの場合でも、結合数は3〜100であるのが好ましく、3〜50であるのがより好ましい。具体的には、例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリ(オキシエチレン−オキシプロピレン)が挙げられる。
【0090】
糖類としては、例えば、高分子学会高分子実験学編集委員会編「天然高分子」第二章(共立出版(株)、1984年刊)、小田良平等編「近代工業化学22、天然物工業化学II」((株)朝倉書店、1967年刊)等に記載されている水溶性化合物が挙げられる。その中でも、遊離のアルデヒド基及びケトン基を持たず、還元性を示さない糖類が好ましい。
前記糖類は、一般に、グルコース、スクロース、還元基同士の結合したトレハロース型少糖類、糖類の還元基と非糖類が結合した配糖体、及び糖類に水素添加して還元した糖アルコールに分類されるが、いずれも本発明に好適に用いることができる。
前記糖類としては、例えば、サッカロース、トレハロース、アルキル配糖体、フェノール配糖体、カラシ油配糖体、D,L−アラビット、リビット、キシリット、D,L−ソルビット、D,L−マンニット、D,L−イジット、D,L−タリット、ズリシット、アロズルシット、及び還元水あめが挙げられる。これらの糖類は、単独、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0091】
前記ヒドロキシル基、及び/又はアミド基を有し、繰り返し単位を有する水溶性重合体としては、例えば、天然ガム類(例えば、アラビアガム、グアーガム、トラガンドガム等)、ポリビニルピロリドン、ジヒドキシプロピルアクリレート重合体、セルロース類、又はキトサン類とエポキシ化合物(エチレンオキサイド、又はプロピレンオキサイド)との付加反応体が挙げられる。
それらの中でも、アルキレンポリオール、ポリアルキレンオキシポリオール、糖アルコール等のポリオール化合物が好ましい。
また、相溶化剤の含有量は、アルカリ溶液に対して、0.5〜25質量%であるのが好ましく、1〜20質量%であるのがより好ましい。
【0092】
本発明に用いられるアルカリ溶液は、その他の添加剤を含有してもよい。その他の添加剤としては、例えば、消泡剤、アルカリ溶液安定化剤、pH緩衝剤、防腐剤、及び防菌剤等の公知のものが挙げられる。
【0093】
−アルカリ鹸化方法−
上記のアルカリ溶液を用いた透明支持体の表面処理方法は、従来公知のいずれの方法でもよく、アルカリ溶液に浸漬すること、又はアルカリ溶液を塗布することが好ましく、特に、透明支持体の片面のみをムラ無く均一に鹸化処理する場合は、塗布方式が好ましい。
塗布の方法としては、従来公知の塗布方法が利用でき、例えば、ダイコーター(エクストルージョンコーター、スライドコーター、スリットコーター)、ロールコーター(順転ロールコーター、逆転ロールコーター、グラビアコーター)、ロッドコーター、ブレードコーター等が好ましく利用できる。
【0094】
鹸化処理は、処理する透明支持体の変形、処理液の変質等が生じない温度120℃を越えない範囲の処理温度で行うことが好ましい。
更に、当該処理温度は10℃〜100℃の範囲が好ましく、20℃〜80℃度が更に好ましい。
また、鹸化処理の時間は、アルカリ溶液、処理温度により適宜調整して決定するが、1秒〜60秒の範囲で行われるのが好ましい。
更に、透明支持体をその表面が少なくとも10℃以上の温度で、アルカリ溶液で鹸化処理する工程、透明支持体の温度を少なくとも10℃以上に維持する工程、そして、アルカリ溶液を透明支持体から洗い落とす工程によりアルカリ鹸化処理を実施することが好ましい。
【0095】
透明支持体の表面を、所定の温度にてアルカリ溶液で鹸化する処理には、塗布する前に予め所定の温度に調整する工程、アルカリ液を予め所定の温度に調整しておく工程、或いはこれらを組み合わせた工程等が挙げられる。それらの中でも、塗布する前に予め所定の温度に調整する工程と組み合わせることが好ましい。
鹸化処理の反応工程は、アルカリ溶液の炭酸ガスによる劣化の抑制及び液の長寿命化等から、処理工程を半密閉若しくは密閉構造にする、不活性ガス(窒素ガス、アルゴンガス等)の導入等を行うことが好ましい。
鹸化反応後は、水洗、中和し、水洗等で、透明支持体の表面からアルカリ溶液、及び鹸化処理の反応物とを洗浄し、除去することが好ましい。
【0096】
表面処理後の透明支持体の水との接触角は、20℃〜55℃が好ましく、25℃〜45℃がより好ましい。また、表面エネルギーは、55mN/m以上であることが好ましく、55mN/m〜75mN/mであることがより好ましい。
透明支持体の表面エネルギーは、「ぬれの基礎と応用」(リアライズ社、1989.12.10発行)に記載のように、接触角法、湿潤熱法、及び吸着法により求めることができる。その中でも、接触角法を用いることが好ましい。
この接触角法は、具体的には、表面エネルギーが既知である2種の溶液を透明支持体に滴下し、液滴の表面と透明支持体表面との交点において、液滴に引いた接線と透明支持体表面のなす角で、液滴を含む方の角を接触角と定義し、計算により透明支持体の表面エネルギーを算出する方法である。
【0097】
<配向膜>
本発明の配向膜は、有機化合物(好ましくはポリマー)塗布液を塗布して形成される配向膜が好ましい。配向膜の膜自身の強度、下層或は上層となる光学異方性層との密着性の観点から硬化されたポリマー膜であることが好ましい。配向膜は、その上に設けられる液晶性化合物の配向方向を規定するために設けられる。配向規定の方法としては、従来公知のラビング、磁場或は電場の付与、光照射等の方法が挙げられる。
【0098】
本発明に供される配向膜は、液晶セルの表示モードの種類に応じることができる。
OCB、HAN等の、液晶セル内の棒状液晶性分子の多くが実質的に垂直に配向している表示モードでは、光学的異方性層の液晶性分子を実質的に水平に配向させる機能を有する。
一方、STN等の、液晶セル内の棒状液晶性分子の多くが実質的に水平に配向している表示モードでは、光学的異方性層の液晶性分子を実質的に垂直に配向させる機能を有する。
また、TN等の、液晶セル内の棒状液晶性分子の多くが実質的に斜めに配向している表示モードでは、光学的異方性層の液晶性分子を実質的に斜めに配向させる機能を有する。
【0099】
本発明の配向膜に使用される具体的なポリマーの種類については、前述した様々な表示モードに対応するディスコティック液晶性分子を用いた光学補償フィルムについての文献に記載がある。
配向膜に使用されるポリマーは、それ自体架橋可能なポリマーあるいは架橋剤により架橋されるポリマーのいずれも使用することができ、これらの組み合わせを複数使用することができる。
前記ポリマーの例として、例えば特開平8−338913号公報の段落番号[0022]に記載された化合物が挙げられる。その中でも、水溶性ポリマー(例えば、ポリ(N−メチロールアクリルアミド)、カルボキシメチルセルロース、ゼラチン、ポリビニルアルコール、変性ポリビニルアルコール)が好ましく、その中でも、ゼラチン、ポリビニルアルコール及び変性ポリビニルアルコールが更に好ましく、ポリビニルアルコール及び変性ポリビニルアルコールが特に好ましい。
ポリビニルアルコールの鹸化度は、70mol%〜100mol%が好ましく、80mol%〜100mol%が更に好ましく、85mol%〜95mol%が特に好ましい。また、ポリビニルアルコールの重合度は、100〜3,000であることが好ましい。
【0100】
変性ポリビニルアルコールの変性基は、共重合変性、連鎖移動変性、又はブロック重合変性により導入できる。
前記変性基の例としては、親水性基(カルボン酸基、スルホン酸基、ホスホン酸基、アミノ基、アンモニウム基、アミド基、チオール基等)、炭素数10個〜100個の炭化水素基、フッ素原子置換の炭化水素基、チオエーテル基、重合性基(不飽和重合性基、エポキシ基、アジリニジル基等)、アルコキシシリル基(トリアルコキシ、ジアルコキシ、モノアルコキシ)等が挙げられる。
これらの変性ポリビニルアルコール化合物の具体例として、例えば、特開2000−56310号公報の段落番号[0074]、特開2000−155216号公報の段落番号[0022]〜[0145]、特開2002−62426号公報の段落番号[0018]〜[0022]に記載のもの等が挙げられる。
【0101】
前記配向膜に使用するポリマー(好ましくは水溶性ポリマー、更に好ましくはポリビニルアルコール、又は変性ポリビニルアルコール)の架橋剤の例には、アルデヒド、N−メチロール化合物、ジオキサン誘導体、カルボキシル基を活性化することにより作用する化合物、活性ビニル化合物、活性ハロゲン化合物、イソオキサゾール及びジアルデヒド澱粉が含まれる。二種類以上の架橋剤を併用してもよい。具体的には、例えば、特開2002−62426号公報の段落番号[0023]〜[0024]記載の化合物等が挙げられる。その中でも、反応活性の高いアルデヒド、特にグルタルアルデヒドが好ましい。
【0102】
架橋剤の添加量は、ポリマーに対して0.1質量%〜20質量%が好ましく、0.5質量%〜15質量%がより好ましい。
また、配向膜に残存する未反応の架橋剤の量は、1.0質量%以下であることが好ましく、0.5質量%以下であることが更に好ましい。配向膜中に1.0質量%を超える量で架橋剤が残存していると、充分な耐久性が得られない。そのような配向膜を液晶表示装置に使用すると、長期使用、あるいは高温高湿の雰囲気下に長期間放置した場合にレチキュレーションが発生することがある。
配向膜は、基本的に、配向膜形成用組成物である前記ポリマー、架橋剤及び特定のカルボン酸を含む塗布液を透明支持体上に塗布した後、加熱乾燥し(架橋させ)、配向処理することにより形成することができる硬化膜である。
架橋反応は、前記のように、透明支持体上に塗布した後、任意の時期に行なってよい。ポリビニルアルコールのような水溶性ポリマーを、配向膜形成用組成物として用いる場合には、塗布液は消泡作用のある有機溶媒(例、メタノール)と水の混合溶媒とすることが好ましい。その比率は、質量比で水:メタノールが0:100〜99:1が好ましく、0:100〜91:9であることがより好ましい。これにより、泡の発生が抑えられ、配向膜、更には光学異方性層の層表面の欠陥が著しく減少する。
【0103】
配向膜の塗布方法は、スピンコーティング法、ディップコーティング法、カーテンコーティング法、ダイコーティング法(エクストルージョンコーティング法、スライドコーティング法、スリットコーティング法等)、ロッドコーティング法、又はロールコーティング法が好ましい。特にロッドコーティング法、ダイコーティング法が好ましい。
また、乾燥後の膜厚は、0.1μm〜10μmが好ましい。加熱乾燥は、20℃〜110℃で行なうことができる。充分な架橋を形成するためには、60℃〜100℃が好ましく、80℃〜100℃が特に好ましい。乾燥時間は1分〜36時間で行なうことができるが、好ましくは1分〜30分である。
【0104】
更に、本発明の配向膜形成用組成物を含有する塗布液を、透明支持体に塗布、乾燥し、配向手段で配向させた後に、光学異方性層用塗布液が塗布されるときに、該配向膜の表面がpH2.0〜6.9の範囲に保持されることが好ましく、pH2.5〜5.0の範囲に保持されることがより好ましい。
また、該光学異方性層用塗布液を塗布する際に、塗布の幅方向での配向膜表面のpHの変動幅△pHが、±0.30の範囲で行われることが好ましく、前記△pHが、±0.15の範囲で行われることがより好ましい。
配向膜の表面のpH値の測定方法は、該配向膜を塗設した試料を(温度25℃/湿度65%RH)の環境下に1日静置した後、窒素雰囲気下で純水を10mL乗せて速やかにpHメーターでpH値を読み取ることによって行う。
本発明の配向膜の表面のpH値を特定とし、かつ塗布幅方向での△pHを制御するには、上記のロッドコーティング方式による塗布により達成される。更には、配向膜の表面の乾燥温度、乾燥風を用いる場合のその風量、風向等を適宜調節することも有効である。
【0105】
<ラビング処理>
ラビング処理は、配向膜の表面を、紙や布で一定方向に、数回こすることにより実施する。このとき、長さ及び太さが均一な繊維を均一に植毛した布を用いることが好ましい。
本発明においてラビング処理は、上記の布を貼りつけたロールを、配向膜を設けた透明支持体の搬送方向と任意の角度で配置し、布を植毛した毛先が前記配向膜に接触する状態で、透明支持体を1m/分〜100m/分の速度で送りながら、ロールを、100〜100,000回/分の速度で回転させることで行われる。
また、前記ロールと透明支持体の搬送方向(長手方向)とのなす角度は、任意に調整して行うことができ、当該角度は、45°〜90°の範囲が好ましく、その調整された角度を±5°の範囲内で制御することが更に好ましい。
【0106】
本発明の配向膜のラビング処理において、均一で安定した配向状態にラビングするには温度と湿度を一定に制御して行うことが好ましい。具体的には、当該温度が20℃〜28℃、当該湿度が35%RH以上、60%RH未満に制御することが好ましい。特に、当該湿度を35%RH〜50%RHで行うことが好ましい態様として挙げられる。
また、配向膜の表面を、ラビング布でラビング処理する場合、ラビング布と配向膜との摩擦によって静電気が発生し、発生した静電気が配向膜の表面に帯電するため、空気中の浮遊塵埃を前記配向膜の表面に吸着する原因となる。前記配向膜の表面に塵埃が付着すると、前記配向膜による液晶の配向状態が不均一になったり、光学的な点状欠陥等の視認性の悪化が生じる。
【0107】
上記静電気に対する対策としては、前記配向膜に帯電する静電気に対して逆極性のイオンを発生するイオンバー、軟X線の照射等の除電装置を用いて、静電気の除去と、ラビングで生じた微粉や付着した塵埃等を超音波除塵装置により除去とを、前記配向膜に対してラビング処理の前後で行うことが好ましい。この方法は、例えば、特開平7−333613号公報、及び特開平11−305233号公報に記載されている。
更には、長尺ロールを連続して処理する場合において、ラビング布の帯電電位が|1|KVを越えないように表面電位を検知して、この帯電量を超えないようにラビング布を除電することが好ましい。ラビング布の帯電電位としては、|0.5|KV以下が好ましく、0〜|0.2|KVで行うことがより好ましい。なお、電荷の正負は配向膜とラビング材料との組み合わせにより決まる。
【0108】
また、湿式方法として、特開2001−38306号公報記載されている、ラビングを行ったウェブが走行している状態で、液体、好ましくは配向膜を膨潤させないフロリナート、ヘキサン、トルエン等の溶剤で濡らした弾性体に擦った後、該弾性体で連続的に擦った面に液体、好ましくは前に使用した溶剤を噴射する湿式の除塵処理を行う方法(ラビング後の除塵方法)を適用することも好ましい。
上記の方法により、配向の乱れ、及び異物付着等による光学的な欠陥が軽減若しくは解消される。
【0109】
<光学異方性層>
光学異方性層を有する光学補償フィルムは、ベンド配向、ハイブリッド配向などを示すネマチック液晶からなる液晶セルの複屈折をキャンセルするために好ましく用いられ、構成、原理については、特許第3118197号明細書などに詳細が示されている。
【0110】
光学異方性層を有する光学補償フィルムは、液晶セルに起因する複屈折をキャンセルするため、液晶セル内のネマチック液晶のラビング方向と、光学補償フィルムの、光学異方性層のレターデーションが最小値となる方向をシート面上へ正射影した方向とを平行にすることが好ましい。
【0111】
光学異方性層に使用する液晶性化合物としては、棒状液晶性化合物や円盤状液晶性化合物(ディスコティック液晶性化合物とも称する)を用いることができる。
棒状液晶性化合物としては、アゾメチン類、アゾキシ類、シアノビフェニル類、シアノフェニルエステル類、安息香酸エステル類、シクロヘキサンカルボン酸フェニルエステル類、シアノフェニルシクロヘキサン類、シアノ置換フェニルピリミジン類、アルコキシ置換フェニルピリミジン類、フェニルジオキサン類、トラン類及びアルケニルシクロヘキシルベンゾニトリル類が好ましく用いられる。
これら低分子液晶化合物は、重合性基を分子内に有することが好ましい(例えば、特開2000−304932号公報段落番号[0016]等記載)。
以上のような低分子液晶性化合物だけではなく、高分子液晶性化合物も用いることができる。
高分子液晶性化合物は、以上のような低分子液晶性化合物に相当する側鎖を有するポリマーである。高分子液晶性化合物を用いた光学補償フィルムについては、特開平5−53016号公報に記載がある。
【0112】
液晶性化合物としては、ディスコティック液晶性化合物が好ましい。
更に、ディスコティック液晶性化合物の円盤状構造単位の面が、透明支持体の表面に対して傾き、かつ円盤状構造単位の面と透明支持体の表面とのなす角度が、光学異方性層の深さ方向に変化していることが好ましい。
このような光学異方性層は、透明支持体上に配向膜を設け、その上に液晶性化合物からなる層を積層させ、ディスコティック液晶性化合物を例えば重合させるなどして、液晶性分子の配向を固定することで形成することができる。
【0113】
ディスコティック液晶性化合物は、様々な文献に記載されている。例えば、「C.Destrade et al.,Mol.Crysr.LIq.Cryst.,vol.71,page 111 (1981)」、「日本化学会編、季刊化学総説、No.22、液晶の化学、第5章、第10章第2節(1994)」、「B.Kohne et al.,Angew.Chem.Soc.Chem.Comm.,page 1794 (1985)」、及び「J.Zhang et al.,J.Am.Chem.Soc.,vol. 116,page 2655 (1994)」に記載されている。なお、ディスコティック液晶の重合については、特開平8−27284公報に記載がある。
【0114】
ディスコティック液晶性化合物を重合により固定するためには、ディスコティック液晶性化合物の円盤状構造単位に、置換基として重合性基を結合させる必要がある。円盤状構造単位と重合性基は、連結基を介して結合するディスコティック液晶性化合物が好ましく、これにより重合反応においても配向状態を保つことができる。
重合性基は、ラジカル重合性基、又はカチオン重合性基から選ばれる重合性基であることが好ましく、エチレン性不飽和重合性基(アクリロイルオキシ基、メタクロイルオキシ基等)、エポキシ基であることが最も好ましい。このような化合物については、例えば、特開2000−155216号公報段落番号[0151]〜「0168」記載の化合物等が挙げられる。
【0115】
なお、STNモードのような棒状液晶性分子がねじれ配向している液晶セルを、光学的に補償するためには、ディスコティック液晶性分子もねじれ配向させることが好ましい。上記連結基に、不斉炭素原子を導入すると、ディスコティック液晶性分子を螺旋状にねじれ配向させることができる。また、不斉炭素原子を含む光学活性を示す化合物(カイラル剤)を光学的異方性層に添加しても、ディスコティック液晶性分子を螺旋状にねじれ配向させることができる。
【0116】
二種類以上のディスコティック液晶性化合物を併用してもよい。例えば、上述したような重合性ディスコティック液晶性化合物と非重合性ディスコティック液晶性化合物とを併用することができる。
非重合性ディスコティック液晶性化合物は、重合性ディスコティック液晶性化合物の重合性基を、水素原子、又はアルキル基に変更した化合物であることが好ましい。すなわち、非重合性ディスコティック液晶性化合物としては、例えば特許第2640083号明細書に記載の化合物等が挙げられる。
【0117】
<光学異方性層の他の添加剤>
光学異方性層には、上記の液晶性化合物と共に、可塑剤、界面活性剤、重合性モノマー等を併用して、塗工膜の均一性、膜の強度、液晶性化合物の配向性等を向上させることができる。これらの添加剤は、液晶性化合物と相溶性を有し、液晶性分子の傾斜角(例えば、ディスコティック液晶性化合物の場合、円盤状構造単位の面の透明支持体の表面からの傾斜角)の変化を与えられるか、あるいは配向を阻害しないことが好ましい。
【0118】
重合性モノマーとしては、ラジカル重合性若しくはカチオン重合性の化合物が挙げられる。好ましくは、多官能性ラジカル重合性モノマーであり、上記の重合性基含有の液晶性化合物と共重合性のものが好ましい。例えば、特開2002−296423号公報の段落番号[0018]〜[0020]に記載のものが挙げられる。上記化合物の添加量は、ディスコティック液晶性分子に対して一般に1〜50質量%の範囲にあり、5〜30質量%の範囲にあることが好ましい。
界面活性剤としては、従来公知の化合物が挙げられるが、特にフッ素系化合物が好ましい。具体的には、例えば特開2001−330725号公報の段落番号[0028]〜[0056]記載の化合物が挙げられる。
【0119】
ディスコティック液晶性化合物とともに使用するポリマーは、ディスコティック液晶性分子に傾斜角の変化を与えられることが好ましい。
ポリマーの例としては、セルロースアシレートを挙げることができる。セルロースアシレートの好ましい例としては、特開2000−155216号公報の段落番号[0178]記載のものが挙げられる。
なお、上記ポリマーの添加量は、液晶性分子の配向を阻害しないように、液晶性分子に対して0.1質量%〜10質量%の範囲にあることが好ましく、0.1質量%〜8質量%の範囲にあることがより好ましい。
また、ディスコティック液晶性化合物のディスコティックネマティック液晶相−固相転移温度は、70℃〜300℃が好ましく、70℃〜170℃がより好ましい。
【0120】
<<光学異方性層の組成>>
光学異方性層は、液晶性化合物、更に下記の重合性開始剤や任意の添加剤(例、可塑剤、モノマー、界面活性剤、セルロースアシレート、1,3,5−トリアジン化合物、カイラル剤)を含む塗布液を、配向膜の上に塗布することで形成する。
塗布液の調製に使用する溶媒としては、有機溶媒が好ましく用いられる。有機溶媒の例には、アミド(例、N,N−ジメチルホルムアミド、N−メチル−2−ピロリドン、1,3−ジメチルイミダゾリジノン)、スルホキシド(例、ジメチルスルホキシド)、ヘテロ環化合物(例、ピリジン)、炭化水素(例、トルエン、ヘキサン)、アルキルハライド(例、クロロホルム、ジクロロメタン)、エステル(例、酢酸メチル、酢酸ブチル)、ケトン(例、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン)、エーテル(例、テトラヒドロフラン、1,2−ジメトキシエタン)が含まれる。アルキルハライド及びケトンが好ましい。二種類以上の有機溶媒を併用してもよい。
塗布液の塗布は、公知の方法(例、押し出しコーティング法、ダイレクトグラビアコーティング法、リバースグラビアコーティング法、ダイコーティング法、ワイヤーバーコーティング法)により実施できる。
【0121】
[液晶性分子の配向状態の固定]
前記液晶性分子は、実質的に均一に配向していることが好ましく、実質的に均一に配向している状態で固定されていることがより好ましく、重合反応により液晶性分子の配向が固定されていることが更に好ましい。重合反応としては、熱重合開始剤を用いる熱重合反応と光重合開始剤を用いる光重合反応とが挙げられ、これらのうち、光重合反応が好ましい。
【0122】
光重合開始剤の例には、α−カルボニル化合物(米国特許第2367661号明細書、及び米国特許第2367670号明細書に記載)、アシロインエーテル(米国特許第2448828号明細書に記載)、α−炭化水素置換芳香族アシロイン化合物(米国特許第2722512号明細書に記載)、多核キノン化合物(米国特許第3046127号明細書、及び米国特許第2951758号明細書に記載)、トリアリールイミダゾールダイマーとp−アミノフェニルケトンとの組み合わせ(米国特許第3549367号明細書に記載)、アクリジン及びフェナジン化合物(特開昭60−105667号公報、及び米国特許第4239850号明細書に記載)、及びオキサジアゾール化合物(米国特許第4212970号明細書に記載)が含まれる。
光重合開始剤の使用量は、塗布液の固形分の0.01質量%〜20質量%であることが好ましく、0.5質量%〜5質量%であることがより好ましい。
【0123】
ディスコティック液晶性分子の重合のための光照射は、紫外線を用いることが好ましい。
照射エネルギーは、20mJ/cm〜5,000mJ/cmであることが好ましく、100mJ/cm〜800mJ/cmであることがより好ましい。
また、光重合反応を促進するため、加熱条件下で光照射を実施してもよい。光照射による光ラジカル重合の場合は空気、又は不活性気体中で行うことができ、ラジカル重合性モノマーの重合の誘導期を短くするか、又は重合率を十分に高める等のためにできるだけ酸素濃度を少なくした雰囲気とすることが好ましい。
【0124】
光学異方性層の厚さは、0.5μm〜100μmであることが好ましく、0.5μm〜30μmであることがより好ましく、0.5μm〜5μmであることが更に好ましい。但し、液晶セルのモードによっては、高い光学的異方性を得るために、光学的異方性層を厚く(3〜10μm)する場合がある。
【0125】
光学的異方性層内での液晶性分子の配向状態は、前述したように、液晶セルの表示モードの種類に応じて決定される。液晶性分子の配向状態は、具体的には、液晶性分子の種類、配向膜の種類及び光学異方性層内の添加剤(例、可塑剤、バインダー、界面活性剤)の使用によって制御される。
【0126】
<光学補償フィルムの遅相軸角度>
本発明の光学補償フィルムは面内異方性を有し、その光学異方性は透明支持体、又はレターデーション制御剤をあらかじめ添加した透明支持体を延伸する、あるいは透明支持体上に配向膜を塗布し、ラビング後液晶を配向させる等により発現させることができる。
この場合、面内で屈折率の最も大きい方向(遅相軸の方向)と長尺ロール形態の光学補償フィルムの長手方向(搬送方向)とのなす角度(遅相軸角度)は、延伸の角度、あるいはラビングの角度によって0°〜90°まで任意に制御することができる。
また、この遅相軸角度の面内でのばらつきは、遅相軸角度の平均値に対し3°以下であることが好ましく、2°以下であることがより好ましく、1°以下であることが更に好ましい。
【0127】
<光学補償フィルムの表面処理>
本発明では、光学補償フィルムの偏光膜側の面を表面処理することにより、光学補償フィルムと偏光膜との接着を改善する。表面処理としては、コロナ放電処理、グロー放電処理、火炎処理、紫外線照射処理、酸処理又はアルカリ鹸化処理を用いる。
コロナ放電処理、グロー放電処理、火炎処理、紫外線照射処理、酸処理等の処理方法は、例えば、発明協会公開技報公技番号公技01−1745号に記載の内容が挙げられる。本発明は、アルカリ鹸化処理することが好ましく、前述の[透明支持体の表面処理]の[アルカリ鹸化処理]と同様の内容のものが挙げられる。
【0128】
(偏光板)
本発明の偏光板は、上述の透明保護フィルム、及び/又は光学補償フィルムと、該透明保護フィルム、及び/又は光学補償フィルムを、偏光膜(偏光子)の少なくともいずれか一方の面に設置されてなる。
【0129】
<透明保護膜>
偏光板の透明保護膜としては、本発明の光学補償フィルムと、対になるもう一方の透明支持体が用いられる。ここで、保護膜が透明であるとは、光透過率が80%以上であることを意味する。
透明保護膜としては、一対の透明保護膜か、本発明の光学補償フィルムと、対になるもう一方の透明保護膜が用いられる。ここで、保護膜が透明であるとは、光透過率が80%以上であることを意味する。本発明の透明保護膜、光学補償フィルムは偏光板の液晶セルと貼り合わせる側に用いることで、液晶表示装置の表示特性の環境湿度変化に対する変動を低減できる。液晶セルと貼り合わせる側とは反対側の透明保護膜としては、従来のセルロースアシレートフィルムが用いられる。
透明保護膜として用いるセルロースアシレートフィルムは、前述した透明支持体の製造方法の説明におけるソルベントキャスト法により形成することが好ましい。透明保護膜の厚さは、10μm〜200μmであることが好ましく、20μm〜100μmであることが更に好ましく、60μm〜100μmが特に好ましい。
【0130】
<偏光膜>
本発明の偏光板に用いられる偏光膜(偏光子)は、ヨウ素系偏光膜、二色性染料を用いる染料系偏光膜やポリエン系偏光膜などを用いることができる。ヨウ素系偏光膜及び染料系偏光膜は、一般にポリビニルアルコール系フィルムを用いて製造される。
偏光膜としては、いかなる製法の偏光膜をも適用することができる。例えば、ポリビニルアルコール系フィルムを連続的に供給し、その両端を保持手段により保持しつつ張力を付与して延伸する際に、フィルムの一方端の実質保持開始点から実質保持解除点までの保持手段の軌跡L1と、もう一端の実質保持開始点から実質保持解除点までの保持手段の軌跡L2が、左右の実質保持解除点の距離Wに対し、下記式(4)の関係にあると共に、左右の実質保持開始点を結ぶ直線は、保持工程に導入されるフィルムの中心線と略直交するものとし、左右の実質保持解除点を結ぶ直線は、次工程に送り出されるフィルムの中心線と略直交するようにして延伸したものであってもよい(米国特許出願公開第2002/8840号明細書参照。)
|L2−L1|>0.4W・・・・・・・・・・・式(4)
【0131】
偏光膜は、機械的強度が弱く、また、吸湿性を有するなどの特性を持つため保護能を有するフィルム(保護膜)を両側に配置することにより保護して偏光板を得ることができる。
本発明の偏光板用の偏光膜の保護膜としては、前述のとおり本発明の光学補償フィルムとセルローストリアセテートなどを一対にして用いることができる。
【0132】
本発明の偏光板に用いられる透明保護膜の遅相軸と、偏光膜の透過軸とのなす角度は、3°以下になるように配置することが好ましく、2°以下になるように配置することがより好ましく、1°以下になるように配置することが更に好ましい。
光学補償フィルムと対になる保護膜としては、他にもハードコート層付基材フィルムや機能性薄膜付フィルムなどを併用することもできる。例えば、その最表面が防汚性及び耐擦傷性を有する反射防止膜を設けてなることも好ましい。反射防止膜は、従来公知のいずれのものも用いることができる。
【0133】
特に、上記の透明保護膜の空気側面の上に反射防止膜を設けてなることが好ましい。前記空気側面とは、偏光膜の透明保護膜として、本発明のセルロースアシレート光学補償フィルムを用いた面とは変更膜を挟んで反対側の面であり、視認側の面をいう。これにより、液晶表示装置の描画画像は外光の写り込みや、ギラツキ感の無い鮮明な画像が得られ、好ましい。
【0134】
[反射防止膜]
反射防止膜は、防汚性層でもある低屈折率層を透明支持体上に設けてなることが好ましく、低屈折率層、及び低屈折率層より高い屈折率を有する少なくとも一層の層(即ち、高屈折率層、中屈折率層等)とを透明支持体上に設けてなることがより好ましい。
前記反射防止膜の形成方法としては、屈折率の異なる無機化合物(金属酸化物等)の透明薄膜を積層させた多層膜を、化学蒸着(CVD)法や物理蒸着(PVD)法、金属アルコキシド等の金属化合物のゾルゲル方法で、コロイド状金属酸化物粒子皮膜を形成後に後処理して薄膜を形成する方法が挙げられる。
この後処理としては、紫外線照射やプラズマ処理が挙げられ、前記紫外線照射については、特開平9−157855号公報に記載された技術を用いることができる。
また、前記プラズマ処理については、特開2002−327310号公報に記載された技術を用いることができる。
また、生産性が高い反射防止膜として、無機粒子をマトリックスに分散されてなる薄膜を積層塗布してなる反射防止膜が挙げられる。
更には、上述したような塗布による反射防止膜に最上層表面が微細な凹凸の形状を有することにより防眩性を付与した反射防止膜も挙げられる。
【0135】
−塗布型反射防止膜の層構成−
反射防止膜は、前述のとおり、透明支持体上に低屈折率層より高い屈折率を有する少なくとも一層の層(高屈折率層)、及び低屈折率層(最外層)の順序の層構成からなることが好ましい。
低屈折率層より高い屈折率を有する少なくとも一層を二層とする場合には、透明支持体上に中屈折率層、高屈折率層、及び低屈折率層(最外層)の順序の層構成からなることが好ましい。
このような構成の反射防止膜は、「高屈折率層の屈折率>中屈折率層の屈折率>透明支持体の屈折率>低屈折率層の屈折率」の関係を満足する屈折率を有するように設計される。なお、各屈折率層の屈折率は相対的なものである。
また、透明支持体と中屈折率層の間に、ハードコート層を設けてもよい。更には、反射防止膜は、中屈折率ハードコート層、高屈折率層及び低屈折率層からなってもよい。
反射防止膜は、例えば、特開平8−122504号公報、特開平8−110401号公報、特開平10−300902号公報、特開2002−243906号公報、特開2000−111706号公報等に記載のものが挙げられる。
また、各層に他の機能を付与させてもよく、例えば、防汚性の低屈折率層、帯電防止性の高屈折率層としたもの(例、特開平10−206603号公報、特開2002−243906号公報等)等が挙げられる。
反射防止膜のヘイズ値は、5%以下あることが好ましく、3%以下がより好ましい。また、反射防止膜の強度は、JIS K5400に従う鉛筆硬度試験でH以上であることが好ましく、2H以上であることがより好ましく、3H以上であることが更に好ましい。
【0136】
−反射防止膜に用いる透明支持体−
透明支持体の光透過率は、80%以上であることが好ましく、86%以上であることがより好ましい。
また、透明支持体のヘイズ値は、2.0%以下であることが好ましく、1.0%以下であることがより好ましい。更に、透明支持体の屈折率は、1.4〜1.7であることが好ましい。
透明支持体としては、プラスチックフィルムを用いることが好ましい。このプラスチックフィルムの材料の例としては、セルロースアシレート、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリエステル(例、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等)、ポリスチレン、ポリオレフィン、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリアリレート、ポリエーテルイミド、ポリメチルメタクリレート及びポリエーテルケトン等が挙げられる。これらの中でも、偏光板に反射防止膜を設ける場合には、セルロースアシレートフィルムが好ましい。
【0137】
−−高屈折率層及び中屈折率層−−
反射防止膜の高い屈折率を有する層は、平均粒径100nm以下の高屈折率の無機化合物超微粒子及びマトリックスバインダーを含有する硬化性膜から成ることが好ましい。
高屈折率の無機化合物微粒子としては、屈折率1.65以上の無機化合物が挙げられ、好ましくは屈折率1.9以上のものが挙げられる。例えば、TI、Zn、Sb、Sn、Zr、Ce、Ta、La、In等の酸化物、これらの金属原子を含む複合酸化物等が挙げられる。
特に好ましくは、Co、Zr、ALから選ばれる少なくとも1つの元素を含有する二酸化チタンを主成分とする無機微粒子(以降、「特定の酸化物」と称することもある)が挙げられ、特に好ましい元素はCoである。
TIに対する、Co、Al、Zrの総含有量は、TIに対して0.05質量%〜30質量%であることが好ましく、0.1質量%〜10質量%がより好ましく、0.2質量%〜7質量%が更に好ましく、0.3質量%〜5質量%が特に好ましく、0.5質量%〜3質量%が最も好ましい。
Co、Al、Zrは、二酸化チタンを主成分とする無機微粒子の内部や表面に存在する。Co、Al、Zrが二酸化チタンを主成分とする無機微粒子の内部に存在することがより好ましく、内部と表面の両方に存在することが最も好ましい。これらの特定の金属元素は、酸化物として存在してもよい。
また、他の好ましい無機粒子として、チタン元素と酸化物が屈折率1.95以上となる金属元素から選ばれる少なくとも1種の金属元素(以下、「Met」とも略称する)との複合酸化物の粒子で、かつ該複合酸化物は、Coイオン、Zrイオン、及びAlイオンから選ばれる金属イオンの少なくとも1種がドープされてなる無機微粒子(「特定の複酸化物」と称することもある)が挙げられる。
ここで、該酸化物の屈折率が1.95以上となる金属酸化物の金属元素としては、Ta、Zr、In、Nd、Sb,Sn、及びBIが好ましく、Ta、Zr、Sn、及びBIが特に好ましい。
複合酸化物にドープされる金属イオンの含有量は、複合酸化物を構成する全金属[TI+Met]量に対して、25質量%を越えない範囲で含有することが屈折率維持の観点から好ましく、0.05質量%〜10質量%がより好ましく、0.1質量%〜5質量%が更に好ましく、0.3質量%〜3質量%が特に好ましい。
ドープした金属イオンは、金属イオン、金属原子の何れで存在してもよく、複合酸化物の表面から内部まで適宜に存在することが好ましい。表面と内部との両方に存在することがより好ましい。
【0138】
上記のような超微粒子とするには、粒子表面を表面処理剤で処理する方法、高屈折率粒子をコアとしたコアシェル構造とする方法、及び、特定の分散剤を併用する方法等が挙げられる。
粒子表面を表面処理剤で処理する方法に挙げられる表面処理剤としては、例えば、特開平11−295503号公報、特開平11−153703号公報、及び特開2000−9908号公報に記載されたシランカップリング剤等、特開2001−310432号公報等に記載されたアニオン性化合物或は有機金属カップリング剤が開示されている。
また、高屈折率粒子をコアとしたコアシェル構造とする方法としては、特開2001−166104、及び米国特許公開2003/0202137号公報等に記載の技術を用いることができる。
更に、特定の分散剤を併用する方法は、特開平11−153703号公報、米国特許第6210858明細書、及び特開2002−2776069号公報等に記載の技術が挙げられる。
【0139】
マトリックスを形成する材料としては、従来公知の熱可塑性樹脂、硬化性樹脂皮膜等が挙げられる。
更に、ラジカル重合性、及び/又はカチオン重合性の重合性基を少なくとも2個以上含有の多官能性化合物含有組成物、加水分解性基を含有の有機金属化合物及びその部分縮合体組成物から選ばれる少なくとも1種の組成物が好ましい。例えば、特開2000−47004号公報、特開2001−315242号公報、特開2001−31871号公報、特開2001−296401号公報等に記載の化合物が挙げられる。
また、金属アルコキシドの加水分解縮合物から得られるコロイド状金属酸化物と金属アルコキシド組成物から得られる硬化性膜も好ましい。例えば、特開2001−293818号公報等に記載されているものが挙げられる。
高屈折率層の屈折率は、1.70〜2.20であることが好ましい。高屈折率層の厚さは、5nm〜10μmであることが好ましく、10nm〜1μmであることが更に好ましい。
中屈折率層の屈折率は、低屈折率層の屈折率と高屈折率層の屈折率との間の値となるように調整する。中屈折率層の屈折率は、1.50〜1.70であることが好ましい。中屈折率層の厚さは、5nm〜10μmであることが好ましく、10nm〜1μmであることが更に好ましい。
【0140】
−−低屈折率層−−
低屈折率層は、高屈折率層の上に順次積層して成ることが好ましい。低屈折率層の屈折率は、1.20〜1.55であることが好ましく、1.30〜1.50がより好ましい。
また、低屈折率層は、耐擦傷性、防汚性を有する最外層として構築することが好ましい。耐擦傷性を大きく向上させる手段として表面への滑り性付与が有効で、従来公知のシリコーンの導入、フッ素の導入等からなる薄膜層の手段を適用できる。
【0141】
含フッ素化合物の屈折率は、1.35〜1.50であることが好ましく、1.36〜1.47であることがより好ましい。また、含フッ素化合物は、フッ素原子を35〜80質量%の範囲で含む架橋性、若しくは重合性の官能基を含む化合物が好ましい。
例えば、特開平9−222503号公報の明細書の段落番号[0018]〜[0026]、特開平11−38202号公報の明細書の段落番号[0019]〜[0030]、特開2001−40284号公報の明細書の段落番号[0027]〜[0028]、特開2000−284102号公報、及び特開2004−45462号公報の明細書等に記載の化合物が挙げられる。
シリコーン化合物としては、ポリシロキサン構造を有する化合物であり、高分子鎖中に硬化性官能基、あるいは重合性官能基を含有して、膜中で橋かけ構造を有するものが好ましい。例えば、反応性シリコーン(例、サイラプレーン(チッソ(株)製等)、両末端にシラノール基含有のポリシロキサン(特開平11−258403号公報等)等が挙げられる。
【0142】
架橋又は重合性基を有する含フッ素及び/又はシロキサンのポリマーの架橋又は重合反応は、重合開始剤、増感剤等を含有する最外層を形成するための塗布組成物を塗布と同時又は塗布後に光照射や加熱することにより実施することが好ましい。重合開始剤、増感剤としては、従来公知のものを用いることができる。
【0143】
また、シランカップリング剤等の有機金属化合物と特定のフッ素含有炭化水素基含有のシランカップリング剤とを触媒共存下に縮合反応で硬化するゾルゲル硬化膜も好ましい。
例えば、ポリフルオロアルキル基含有シラン化合物又はその部分加水分解縮合物(特開昭58−142958号公報、特開昭58−147483号公報、特開昭58−147484号公報、特開平9−157582号公報、特開平11−106704号公報記載等記載の化合物)、フッ素含有長鎖基であるポリ「パーフルオロアルキルエーテル」基を含有するシリル化合物(特開2000−117902号公報、特開2001−48590号公報、特開2002−53804号公報記載の化合物等)等が挙げられる。
低屈折率層は、上記以外の添加剤として充填剤(例えば、二酸化珪素(シリカ)、含フッ素粒子(フッ化マグネシウム,フッ化カルシウム,フッ化バリウム)等の一次粒子平均径が1〜150nmの低屈折率無機化合物を含有することが好ましい。
特に、上記低屈折率層はその屈折率上昇をより一層少なくするために、中空の無機微粒子を用いることが好ましい。
中空の無機微粒子の屈折率は、1.17〜1.40が好ましく、1.17〜1.37がより好ましく、1.17〜1.35であることが更に好ましい。ここでの屈折率は、粒子全体としての屈折率を表し、中空の無機微粒子を形成している外殻のみの屈折率を表すものではない。
このとき、粒子内の空腔の半径をa、粒子外殻の半径をbとすると、下記式(5)で表される空隙率w(%)は以下の通り計算される。
【0144】
w=(4πa/3)/(4πb/3)×100・・・・・・・・・・式(5)
【0145】
空隙率は、10%〜60%が好ましく、20%〜60%がより好ましく、30〜60%が更に好ましい。また、中空粒子の屈折率は、粒子の強度及び該中空粒子を含む低屈折率層の耐擦傷性の観点から、1.17以上とすることが好ましい。
該低屈折率層中の中空の無機微粒子の平均粒径は、該低屈折率層の厚みの30%以上、100%以下であることが好ましく、前記低屈折率層の厚みの35%以上80%以下がより好ましく、前記低屈折率層の厚みの40%以上60%以下が更に好ましい。
即ち、低屈折率層の厚みが100nmであれば、無機微粒子の粒径は30nm以上100nm以下が好ましく、35nm以上80nm以下がより好ましく、40nm以上60nm以下が更に好ましい。
なお、これら中空の無機微粒子の屈折率はアッベ屈折率計(アタゴ(株)製)にて測定をおこなうことができる。
【0146】
他の添加剤としては、特開平11−3820公報の段落番号[0020]〜[0038]に記載の有機微粒子等)、シランカップリング剤、滑り剤、界面活性剤等を含有することができる。
【0147】
低屈折率層が、最外層の下層に位置する場合、低屈折率層は気相法(真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法、プラズマCVD法等)により形成されてもよい。
安価に製造できる点で、塗布法が好ましい。
低屈折率層の膜厚は、30nm〜200nmであることが好ましく、50nm〜150nmであることがより好ましく、60nm〜120nmであることが更に好ましい。
【0148】
−反射防止膜の他の層−
反射防止膜には、更に、ハードコート層、前方散乱層、プライマー層、帯電防止層、下塗り層や保護層等を設けてもよい。
【0149】
−−ハードコート層−−
ハードコート層は、反射防止膜に物理強度を付与することができ、透明支持体の表面に設けることが好ましい。特に、透明支持体と前記高屈折率層との間にハードコート層を設けることが好ましい。
ハードコート層は、光及び/又は熱の硬化性化合物の架橋反応、又は、重合反応により形成されることが好ましい。
硬化性官能基としては、光重合性官能基が好ましく、又は加水分解性官能基含有の有機金属化合物は有機アルコキシシリル化合物が好ましい。
これらの化合物の具体例としては、高屈折率層で例示したと同様のものが挙げられる。
ハードコート層の具体的な構成組成物としては、例えば、特開2002−144913号公報、特開2000−9908号公報、国際公開WO00/46617号公報等記載のものが挙げられる。
高屈折率層は、ハードコート層を兼ねることができる。このような場合、高屈折率層で記載した手法を用いて微粒子を微細に分散してハードコート層に含有させて形成することが好ましい。
【0150】
ハードコート層は、平均粒径0.2μm〜10μmの粒子を含有させて防眩機能(アンチグレア機能(後述))を付与した防眩層を兼ねることもできる。
ハードコート層の膜厚は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、0.2μm〜10μmであることが好ましく、0.5μm〜7μmであることがより好ましい。
ハードコート層の強度は、JIS K5400に従う鉛筆硬度試験で、H以上であることが好ましく、2H以上であることがより好ましく、3H以上であることが更に好ましい。
また、JIS K5400に従うテーバー試験で、試験前後の試験片の摩耗量が少ないほど好ましい。
【0151】
−−前方散乱層−−
前方散乱層は、液晶表示装置に適用した場合に、上下左右方向に視角を傾斜させたときの視野角改良効果を付与することができ、好ましい。上記ハードコート層中に屈折率の異なる微粒子を分散することで、ハードコート機能と兼ねることもできる。
前方散乱層としては、例えば、前方散乱係数を特定化した特開11−38208号公報、透明樹脂と微粒子の相対屈折率を特定範囲とした特開2000−199809号公報、ヘイズ値を40%以上と規定した特開2002−107512号公報等に記載のものが挙げられる。
【0152】
[反射防止膜の形成]
反射防止膜の各層は、ディップコート法、エアーナイフコート法、カーテンコート法、ローラーコート法、ワイヤーバーコート法、グラビアコート、マイクログラビア法やエクストルージョンコート法(米国特許2681294号明細書)により、塗布により形成することができる。
【0153】
−アンチグレア機能−
反射防止膜は、外光を散乱させるアンチグレア機能を有していてもよい。アンチグレア機能は、反射防止膜の表面に凹凸を形成することにより得られる。反射防止膜がアンチグレア機能を有する場合、反射防止膜のヘイズは、3%〜50%であることが好ましく、5%〜30%であることがより好ましく、5%〜20%であることが更に好ましい。
【0154】
反射防止膜表面に凹凸を形成する方法は、これらの表面形状を充分に保持できる方法であればいずれの方法でも適用できる。
例えば、低屈折率層中に微粒子を使用して膜表面に凹凸を形成する方法(例えば、特開2000−271878号公報等)、低屈折率層の下層(高屈折率層、中屈折率層又はハードコート層)に比較的大きな粒子(粒径0.05μm〜2μm)を少量(0.1質量%〜50質量%)添加して表面凹凸膜を形成し、その上にこれらの形状を維持して低屈折率層を設ける方法(例えば、特開2000−281410号公報、特開2000−95893号公報、特開2001−100004号公報、特開2001−281407号公報等)、最上層(防汚性層)を塗設後の表面に物理的に凹凸形状を転写する方法(例えば、エンボス加工方法として、特開昭63−278839号公報、特開平11−183710号公報、特開2000−275401号公報等記載)等が挙げられる。
【0155】
本発明の反射防止膜を設けた偏光板は、反射防止膜を設けた透明支持体が偏光板の保護フィルムを兼ねることが好ましい。
ここで、透明支持体(好ましくはセルロースアシレートフィルム)の反射防止膜を設けた側とは、反対側のセルロースアシレートフィルム表面を親水化処理して、偏光膜と接着剤で貼りあわせて作製することが好ましい。
該親水化処理としては、上述の[光学補償フィルムの表面処理]と同様のものが挙げられる。
偏光膜の反射防止膜とは、偏光膜を挟んで反対側の面には、前記したとおり、本発明の光学補償フィルムを、保護膜を兼ねたフィルムとして用いる。
ここで、光学補償フィルムの透明支持体の光学異方性層を設けたとは、反対側の表面を親水化処理して、偏光膜と接着剤で貼りあわせて作製することが好ましい。
これにより偏光板の厚みが薄くなり、液晶表示装置の軽量化が可能となり、好ましい。
【0156】
(液晶表示装置)
本発明の液晶表示装置は、液晶セル及びその両側に配置された二枚の偏光板を含有することからなる。前記液晶セルは、二枚の電極基板の間に液晶を担持している。
光学補償フィルムは、液晶セルと一方の偏光板との間に、一枚配置するか、あるいは液晶セルと双方の偏光板との間に二枚配置する。
本発明の液晶表示装置は、透過型、反射型、半透過型のいずれの液晶表示装置においても有効である。
【0157】
本発明の透明保護フィルムは、様々な表示モードの液晶表示装置に用いることができる。該表示モードとしては、例えばTN(Twisted Nematic)モード、STN(Super Twisted Nematic)モード、IPS(In−Plane Switching)モード、FLC(Ferroelectric Liquid Crystal)モード、AFLC(Anti−ferroelectric Liquid Crystal)モード、ECB(Electrically Controlled Birefringence)モード等、ECBモードとしては例えばOCB(Optically Compensatory Bend)モード、HAN(Hybrid Aligned Nematic)モード、VA(Vertically Aligned)モード、MVAモード、ホモジニアス配向モード等各種のモードの液晶セルが用いられる。これらの中でもTNモード並びにOCBモード、HANモード、VAモード、MVAモード及びホモジニアス配向モード等のECBモードの液晶セルが好ましい。
また、上記表示モードを配向分割した表示モードも提案されている。本発明の透明保護フィルムは、いずれの表示モードの液晶表示装置においても有効である。また、透過型、反射型、半透過型のいずれの液晶表示装置においても有効である。
液晶セルについては、「’99PDP/LCD構成材料・ケミカルスの市場」1999年7月30日、シーエムシー、「EL,PDP,LCDディスプレイ技術と市場の最新動向−」2001年3月、東レリサーチセンター等に記載されている。
【0158】
各液晶モードにおける光学異方性層の好ましい形態について、以下で説明する。
【0159】
<TNモード液晶表示装置>
TNモードの液晶セルは、カラーTFT液晶表示装置として最も多く利用されており、多数の文献に記載がある。TNモードの黒表示における液晶セル中の配向状態は、セル中央部で棒状液晶性分子が立ち上がり、セルの基板近傍では棒状液晶性分子が寝た配向状態にある。
本発明の透明保護フィルムを、TNモードの液晶セルを有するTN型液晶表示装置の光学補償フィルムの支持体として用いてもよい。TNモードの液晶セルとTN型液晶表示装置については、古くからよく知られている。
TNモード液晶表示装置に用いる光学補償フィルムについては、特開平3−9325号、特開平6−148429号、特開平8−50206号、特開平9−26572号の各公報に記載がある。
また、モリ(MorI)他の論文(Jpn. J. Appl. Phys. Vol.36(1997)p.143や、Jpn. J. Appl. Phys. Vol.36(1997)p.1068)に記載がある。
上記の記載中で透明保護フィルムとして用いられている従来のトリアセチルセルロースの替わりに本発明の透明保護フィルムを用い、光学補償に必要なRthの不足分を積層する液晶化合物が配向した光学補償層で補うか、新たに円盤状化合物の水平配向層やコレステリック液晶層等による負のCプレート層を積層することにより、液晶表示装置とした時の所謂額縁故障を改善することができる。
【0160】
(STNモード液晶表示装置)
本発明の透明保護フィルムを、STNモードの液晶セルを有するSTN型液晶表示装置の光学補償フィルムの支持体として用いてもよい。
一般的に、STNモード液晶表示装置では、液晶セル中の棒状液晶性分子が90°〜360°の範囲にねじられており、棒状液晶性分子の屈折率異方性(Δn)とセルギャップ(d)との積(Δnd)が300nm〜1,500nmの範囲にある。STN型液晶表示装置に用いる光学補償フィルムについては、特開2000−105316号公報に記載がある。
【0161】
<VAモード液晶表示装置>
VAモードの液晶セルでは、電圧無印加時に棒状液晶性分子が実質的に垂直に配向している。
VAモードの液晶セルには、(1)棒状液晶性分子を電圧無印加時に実質的に垂直に配向させ、電圧印加時に実質的に水平に配向させる狭義のVAモードの液晶セル(特開平2−176625号公報記載)に加えて、(2)視野角拡大のため、VAモードをマルチドメイン化した(MVAモードの)液晶セル(SID97、DIgest of tech. Papers(予稿集)28(1997)845記載)、(3)棒状液晶性分子を電圧無印加時に実質的に垂直配向させ、電圧印加時にねじれマルチドメイン配向させるモード(n−ASMモード)の液晶セル(日本液晶討論会の予稿集58〜59(1998)記載)及び(4)SURVAIVALモードの液晶セル(LCDインターナショナル98で発表)が含まれる。
本発明の透明保護フィルムを、VAモードの液晶セルを有するVAモード液晶表示装置の光学補償フィルムの支持体として用いる場合、本発明の透明保護フィルム上に公知のAプレート+Cプレート等を積層する。
VAモード液晶表示装置は、例えば特開平10−123576号公報に記載されているような配向分割された方式であってもよい。
【0162】
(IPSモード液晶表示装置及びECBモード液晶表示装置)
本発明の透明保護フィルムは、IPSモード及びECBモードの液晶セルを有するIPSモード液晶表示装置及びECBモード液晶表示装置の光学補償フィルムの支持体、又は偏光板の保護膜としても特に有利に用いられる。
これらのモードは、黒表示時に液晶材料が略平行に配向する態様であり、電圧無印加状態で液晶分子を基板面に対して平行配向させて、黒表示する。
これらの態様において、本発明の透明保護フィルムを用いた偏光板は色味の改善、視野角拡大、コントラストの良化に寄与する。
この態様においては、液晶セルの上下の前記偏光板の保護膜のうち、液晶セルと偏光板との間に配置された保護膜(セル側の保護膜)に本発明の透明保護フィルムを用いた偏光板を少なくとも片側一方に用いることが好ましい。
また、偏光板の保護膜と液晶セルの間に光学異方性層を配置し、配置された光学異方性層のリターデーションの値を、液晶層のΔn・dの値の2倍以下に設定するのがより好ましい。
【0163】
(OCBモード液晶表示装置及びHANモード液晶表示装置)
OCBモードの液晶セルは、棒状液晶性分子を液晶セルの上部と下部とで実質的に逆の方向に(対称的に)配向させるベンド配向モードの液晶セルである。
ベンド配向モードの液晶セルを用いた液晶表示装置は、米国特許4583825号、米国特許5410422号の各明細書に開示されている。
棒状液晶性分子が液晶セルの上部と下部とで対称的に配向しているため、ベンド配向モードの液晶セルは、自己光学補償機能を有する。そのため、この液晶モードは、OCB(OptIcally Compensatory Bend)液晶モードとも呼ばれる。
OCBモードの液晶セルもTNモード同様、黒表示においては、液晶セル中の配向状態は、セル中央部で棒状液晶性分子が立ち上がり、セルの基板近傍では棒状液晶性分子が寝た配向状態にある。
本発明の透明保護フィルムは、OCBモードの液晶セルを有するOCBモード液晶表示装置あるいはHANモードの液晶セルを有するHANモード液晶表示装置の光学補償フィルムの支持体としても有利に用いられる。
OCBモード液晶表示装置あるいはHANモード液晶表示装置に用いる光学補償フィルムには、レターデーションの絶対値が最小となる方向が光学補償フィルムの面内にも法線方向にも存在しないことが好ましい。
OCBモード液晶表示装置あるいはHANモード液晶表示装置に用いる光学補償フィルムの光学的性質も、光学的異方性層の光学的性質、支持体の光学的性質及び光学的異方性層と支持体との配置により決定される。
OCBモード液晶表示装置あるいはHANモード液晶表示装置に用いる光学補償フィルムについては、特開平9−197397号公報に記載がある。
また、モリ(MorI)他の論文(Jpn. J. Appl. Phys. Vol.38(1999)p.2837)に記載がある。
上記に記載されたハイブリッド配向した光学補償層を形成するための透明支持体として用いられている従来のトリアセチルセルロースの替わりにセルロースアシレートフィルムを用い、光学補償に必要なRe、Rthの不足分を、新たに棒状液晶性化合物を水平配向させた層を積層して補うことにより、液晶表示装置とした時の所謂額縁故障を改善することができる。
また、上記構成の替わりにλ/4フィルム、環状ポリオレフィン樹脂を延伸して得られる二軸性フィルムを本発明の透明保護フィルム上に積層してもよい。
【0164】
(反射型液晶表示装置)
本発明の透明保護フィルムは、TNモード、STNモード、HANモード、GH(Guest−Host)モードの反射型液晶表示装置の光学補償フィルムとしても有利に用いられる。
これらの表示モードは古くから良く知られている。TNモード反射型液晶表示装置については、特開平10−123478号、WO9848320号、特許第3022477号の各公報に記載がある。また、反射型液晶表示装置に用いる光学補償フィルムについては、WO00−65384号に記載がある。
【0165】
(その他の液晶表示装置)
本発明の透明保護フィルムは、ASM(AxIally SymmetrIc AlIgned MIcrocell)モードの液晶セルを有するASMモード液晶表示装置の光学補償フィルムの支持体としても有利に用いられる。
ASMモードの液晶セルは、セルの厚さが位置調整可能な樹脂スペーサーにより維持されているとの特徴がある。
その他の性質は、TNモードの液晶セルと同様である。ASMモードの液晶セルとASMモード液晶表示装置については、クメ(Kume)他の論文(Kume et al., SID 98 DIgest 1089 (1998))に記載がある。
【実施例】
【0166】
以下、本発明の実施例について説明するが、本発明は下記実施例に何ら限定されるものではない。
【0167】
(実施例1)
<透明保護フィルムの作製>
<<ポリマー1の合成>>
下記組成物を、四つ口フラスコ(投入口、温度計、環流冷却管、窒素導入口、攪拌機を装着)に投入し、徐々に80℃まで昇温し、攪拌しながら5時間重合を行い、重合終了後、ポリマー溶液を多量のメタノールに投入して沈殿させ、更にメタノールで洗浄し、精製して乾燥し質量平均分子量5,000(GPCにて測定)のポリマー1を得た。
【0168】
[ポリマー1の組成]
・メチルアクリレート 10質量部
・2−ヒドロキシエチルアクリレート 1質量部
・アゾビスイソブチロニトリル(AIBN) 1質量部
・トルエン 30質量部
【0169】
<<ドープ組成物1の調整>>
下記ドープ組成物1を加圧密閉容器に投入し、70℃まで加熱しして容器内圧力を1気圧以上とし、撹拌しながらセルロースエステルを完全に溶解させた。
その後、ドープ温度を35℃まで下げて一晩静置し、このドープを安積濾紙(株)製の安積濾紙No.244を使用して濾過した後、更に一晩静置し脱泡した。
次いで、日本精線(株)製のファインメットNM(絶対濾過精度100μm)、ファインポアNF(絶対濾過精度50μm、15μm、5μmの順に順次濾過精度を上げて使用)を使用して濾過圧力1.0×10Paで濾過し、製膜に供した。
【0170】
[ドープ組成物1の組成]
・セルローストリアセテート(置換度2.83) 100質量部
・上記合成のポリマー1 15質量部
・チヌビン326 2質量部
・ジクロロメタン 475質量部
・例示化合物A−7 7.5質量部をメタノール50質量部に溶解した溶液
57.5質量部
【0171】
濾過して得られた35℃のドープ組成物1を用いて、それぞれハンガータイプのダイから22℃の無限移行する無端のステンレスベルト上に流延して製膜した。
その後、流延したステンレスベルトがほぼ一周する前までに有機溶媒を残留溶媒量が25質量%になるまで蒸発させ、ウェブを剥離した。流延から剥離までの時間は2分であった。
剥離後、ウェブをテンターでウェブの両端をクリッピングして幅保持して搬送しながら120℃で乾燥し、クリップをはずし、ロール乾燥機でジグザグに配置してある複数のロールを引き回し、120〜135℃で乾燥した。
その後、冷却してフィルムの両端に幅10mm、高さ5μmのナール加工を施して、初期巻き取り張力を150N/幅とし、最終巻き取り張力を100N/幅で透明保護フィルム(セルロースアシレートフィルム)を巻き取った。
得られた透明保護フィルムの膜厚は40μm、巻き長さは3,000m、幅は1,450mmであった。
【0172】
<透明保護フィルムの評価>
得られた透明保護フィルムの特性値として、KOBRA 21ADH(王子計測機器(株)製)にて、10%RH、60%RH、80%RHの各相対湿度にて24時間調湿した後に波長479.2nm、546.3nm、628.8nmにおいて測定し、カーブフィッティングにより550nm、630nmの値に換算し、測定波長630nmでのRe及びRthの値、測定波長550nmでのΔRth、ΔRth/d×80,000をそれぞれ算出した。算出結果を表1に記載する。
【0173】
(実施例2〜11)
<透明保護フィルムの作製>
上記実施例1において、ドープ組成物1中の例示化合物A−7、及びその添加量を、下記表1に示す例示化合物、及び添加量に代えた以外は実施例1と同様にして、実施例2〜11の透明保護フィルムを作製した。
【0174】
<透明保護フィルムの評価>
得られた実施例2〜11の透明保護フィルムの測定波長630nmでのRe及びRthの値、測定波長550nmでのΔRth、ΔRth/d×80,000を、実施例1と同様にしてそれぞれ算出した。算出結果を表1に記載する。
【0175】
(比較例1)
<透明保護フィルムの作製>
上記実施例1におけるドープ組成物1中の例示化合物A−7、及びその添加量(7.5質量部)を、トリフェニルフォスフェート5.6質量部、及びビフェニルジフェニルフォスフェート1.9質量部に代えた以外は実施例1と同様にして、比較例1の透明保護フィルムを作製した。
【0176】
<透明保護フィルムの評価>
得られた比較例1の透明保護フィルムの測定波長630nmでのRe及びRthの値、測定波長550nmでのΔRth、ΔRth/d×80,000を、実施例1と同様にして算出した。算出結果を表1に記載する。
【0177】
【表1】

【0178】
表1より、実施例1〜11の透明保護フィルムは、膜厚あたりのRthの湿度変動に対する変化が比較例1に対して著しく小さく、大幅に改善されていることが確認された。
【0179】
(実施例12)
<透明保護フィルムの作製>
<<ドープ組成物2の調整>>
下記組成物を実施例1におけるドープ組成物1の調整方法と同様の手順にて十分に溶解して、ドープ組成物2を調製した。
次に、調整したドープ組成物2を流延口から0℃に冷却したドラム上に流延した。
その後、溶媒含有率70質量%の場外で剥ぎ取り、フィルムの巾方向の両端をピンテンター(特開平4−1009号の図3に記載のピンテンター)で固定し、溶媒含有率が3〜5質量%の状態で、横方向(機械方向に垂直な方向)の延伸率が3%となる間隔を保ちつつ乾燥した。
その後、熱処理装置のロール間を搬送することにより、更に乾燥し、厚み80μmの実施例2の透明保護フィルム(セルロースアシレートフィルム)を作製した。
【0180】
[ドープ組成物2の組成]
・置換度2.86のセルロースアセテート 100質量部
・トリフェニルホスフェート(可塑剤) 7.8質量部
・ビフェニルジフェニルホスフェート(可塑剤) 3.9質量部
・ジクロロメタン 300質量部
・1−ブタノール 11質量部
・例示化合物A−7(7.5質量部)をメタノール54質量部に溶解した溶液 61.5質量部
・下記に示す配向抑制添加剤B−1(11.1質量部)、下記に示す波長分散調整剤(1.1質量部)をジクロロメタン22.2質量部、及びメタノール5.6質量部に溶解した溶液 40質量部
【0181】
配向抑制添加剤B−1
【化27】

【0182】
波長分散調整剤
【化28】

【0183】
<透明保護フィルムの評価>
得られた実施例12の透明保護フィルムの測定波長630nmでのRe及びRthの値、測定波長550nmでのΔRth、ΔRth/d×80,000を、実施例1と同様にしてそれぞれ算出した。算出結果を表2に記載する。
【0184】
(実施例13〜22)
<透明保護フィルムの作製>
上記実施例12において、ドープ組成物1中の例示化合物A−7、及びその添加量を、下記表2に示す例示化合物、及び添加量に代えた以外は実施例12と同様にして、実施例13〜22の透明保護フィルムを作製した。
【0185】
<透明保護フィルムの評価>
得られた実施例13〜22の透明保護フィルムの測定波長630nmでのRe及びRthの値、測定波長550nmでのΔRth、ΔRth/d×80,000を、実施例1と同様にしてそれぞれ算出した。算出結果を表2に記載する。
【0186】
(比較例2)
<透明保護フィルムの作製>
上記実施例12におけるドープ組成物2中の例示化合物A−7、及びその添加量(7.5質量部)を、トリフェニルフォスフェート5.6質量部、及びビフェニルジフェニルフォスフェート1.9質量部に代えた以外は実施例12と同様にして、比較例2の透明保護フィルムを作製した。
【0187】
<透明保護フィルムの評価>
得られた比較例2の透明保護フィルムの測定波長630nmでのRe及びRthの値、測定波長550nmでのΔRth、ΔRth/d×80,000を、実施例1と同様にして算出した。算出結果を表2に記載する。
【0188】
【表2】

【0189】
表2より、実施例12〜22の透明保護フィルムは、膜厚あたりのRthの湿度変動に対する変化が比較例2に対して著しく小さく、大幅に改善されていることが確認された。
【0190】
(実施例23)
<第1の偏光板の作製>
実施例1の透明保護フィルムを、1.5規定の水酸化ナトリウム水溶液に、55℃で2分間浸漬した。室温の水洗浴槽中で洗浄し、30℃で0.1規定の硫酸を用いて中和した。再度、室温の水洗浴槽中で洗浄し、更に100℃の温風で乾燥した。このようにして、実施例1の透明保護フィルムの表面を鹸化した。
続いて、厚さ80μmのロール状ポリビニルアルコールフィルムをヨウ素水溶液中で連続して5倍に延伸し、乾燥して偏光膜を得た。
その後、ポリビニルアルコール(PVA−117H,(株)クラレ製)3%水溶液を接着剤として、上記でアルカリ鹸化処理した透明保護フィルムを2枚用意して前記偏光膜を間にして貼り合わせ、実施例1の透明保護フィルムによって両面が保護された第1の偏光板を得た。なお、前記偏向膜に対する前記透明保護フィルムの設置にあたっては、各透明保護フィルムの遅相軸が、該偏光膜の透過軸と平行になるように貼り付けた。
【0191】
(実施例24)
<第1の偏光板の作製>
実施例23における実施例1の透明保護フィルムを、実施例12の透明保護フィルムにそれぞれ代えた以外は、実施例23と同様にして、第1の偏光板を作製した。
【0192】
(比較例3〜4)
<第1の偏光板の作製>
実施例23において用いた実施例1の透明保護フィルムを、比較例1〜2の透明保護フィルムにそれぞれ代えた以外は、実施例23と同様にして、第1の偏光板を作製した。
比較例3〜4の透明保護フィルムは、延伸したポリビニルアルコールとの貼合性が十分であり、優れた偏光板加工適性を有していた。
【0193】
(実施例25)
<第2の偏光板の作製>
延伸したポリビニルアルコールフィルムにヨウ素を吸着させて偏光膜を製作し、ポリビニルアルコール系接着剤を用いて、実施例1で作製した透明保護フィルムを前記偏光膜の一方の面側に貼り付けた。
続いて、市販のセルロースアセテートフィルム(フジタックTF80UL、富士フイルム(株)製)に鹸化処理を行い、ポリビニルアルコール系接着剤を用いて、前記偏光膜の他方の面側に貼り付け、第2の偏光板を作製した。
【0194】
(実施例26)
<第2の偏光板の作製>
実施例25において用いた実施例1の透明保護フィルムを、実施例12の透明保護フィルムに代えた以外は、実施例25と同様にして、第2の偏光板を作製した。
【0195】
(比較例5〜6)
<第2の偏光板の作製>
実施例25において用いた実施例1の透明保護フィルムを、比較例1〜2の透明保護フィルムにそれぞれ代えた以外は、実施例25と同様にして、第2の偏光板を作製した。
【0196】
(比較例7)
<第3の偏光板の作製>
また、実施例25の第1の偏光板の作製方法において、両面を市販のセルロースアセテートフィルム(フジタックTF80UL、富士フイルム(株)製)にした以外は同様にして第3の偏光板を作製した。
【0197】
(実施例27)
<IPSモード液晶表示装置の作製>
<<IPSモード液晶セル1の作製>>
一枚のガラス基板上に、隣接する電極間の距離が20μmとなるように電極を配設し、その上にポリイミド膜を配向膜として設け、ラビング処理を行なった。別に用意した一枚のガラス基板の一方の表面にポリイミド膜を設け、ラビング処理を行なって配向膜とした。
二枚のガラス基板を、配向膜同士を対向させて、基板の間隔(ギャップ;d)を3.9μmとし、二枚のガラス基板のラビング方向が平行となるようにして重ねて貼り合わせ、次いで屈折率異方性(Δn)が0.0769及び誘電率異方性(Δε)が正の4.5であるネマチック液晶組成物を封入した。液晶層のd・Δnの値は300nmであった。
【0198】
このようにして作製したIPSモード液晶セルの一方の側に、実施例23の第1の偏光板の吸収軸が液晶セルのラビング方向と平行になるよう、且つ本発明の透明保護フィルムが液晶セル側になるように貼り付けた。
続いて、IPSモード液晶セルの他方の側に、実施例25の第2の偏光板をクロスニコルの配置で貼り付け、実施例23の第1の偏光板の側にバックライトが配置されるようにして、実施例27のIPSモード液晶表示装置を作製した。
【0199】
(実施例28)
<IPSモード液晶表示装置の作製>
実施例27において用いた実施例23の第1の偏光板を、実施例24の第1の偏光板に代えると共に、実施例27において用いた実施例25の第2の偏光板を、実施例26の第2の偏光板にそれぞれ代えた以外は、実施例27と同様にして、実施例28のIPSモード液晶表示装置を作製した。
【0200】
(比較例8〜9)
<IPSモード液晶表示装置の作製>
実施例27において用いた実施例23の第1の偏光板を、比較例3〜4の第1の偏光板にそれぞれ代えると共に、実施例27において用いた実施例25の第2の偏光板を、比較例5〜6の第2の偏光板にそれぞれ代えた以外は、実施例27と同様にして、比較例8〜9のIPSモード液晶表示装置を作製した。
【0201】
(比較例10)
<IPSモード液晶表示装置の作製>
実施例27において用いた実施例23の第1の偏光板、及び実施例25の第2の偏光板をそれぞれ、比較例7の第3の偏光板に代えた以外は、実施例27と同様にして、比較例10のIPSモード液晶表示装置を作製した。
【0202】
<液晶表示装置の評価>
このように作製した実施例27〜28、及び比較例8〜10のIPSモード液晶表示装置を、60%RHにて1週間調湿した後に、黒の色味を極角60度における全方位角方向の変化(Δuv)を測定した。その測定結果を表3に示す。
表3に示すように、実施例27〜28、及び比較例8〜9の液晶表示装置は、Δuvが0.05以下であり、色味変化が殆ど感じられなかったが、比較例10は、Δuvが0.05を超えており、色味変化が明らかにあった。
したがって、Re、Rthが小さくかつRe、Rthの波長分散が小さい本発明の透明保護フィルムを用いることにより、IPSモード液晶表示装置の色味変化が改善されることが分かった。
また、実施例27〜28、及び比較例8〜10の液晶表示装置を、相対湿度10%RHにて1週間調湿した後に同様の測定を行い、環境湿度の変動に対する表示特性の変動を調べた結果、実施例27〜28の液晶表示装置は、比較例8〜10と比較して、環境湿度が変化してもパネルの色味、輝度の変化が殆ど見られないレベルまで改善されていることが確認された。
【0203】
【表3】

【0204】
(実施例29)
<IPSモード液晶表示装置の作製>
市販のアートンフィルム(JSR社製)を一軸延伸した光学補償フィルムを作製し、該光学補償フィルムを、実施例23で作製した第1の偏光板に貼合して光学補償機能を持たせた。この際、前記光学補償フィルムの面内レターデーションの遅相軸を第1の偏光板の透過軸と直交させることで、正面特性を何ら変えることなく視野角特性を向上させることができる。
光学補償フィルムの面内レターデーションReは270nm、厚さ方向のレターデーションRthは0nm(Nz=0.5)のものを用いた。
第1の偏光板と、前記光学補償フィルムとの積層体を2組作製し、前記光学補償フィルムが各々液晶セル側となるように、「第1の偏光板と光学補償フィルムとの積層体,IPSモードの液晶セル、第1の偏光板と光学補償フィルムとの積層体」の順に重ね合わせて組み込んだ液晶表示装置を作製した。
この際、上下の第1の偏光板の透過軸を直交させ、上側の第1の偏光板の透過軸は、液晶セルの分子長軸方向と平行(すなわち光学補償層の遅相軸と液晶セルの分子長軸方向は直交)とした。
液晶セルや電極・基板はIPSとして従来から用いられているものがそのまま使用できる。液晶セルの配向は水平配向であり、液晶は正の誘電率異方性を有しており、IPS液晶用に開発され市販されているものを用いることができる。
なお、液晶セルの物性は、液晶のΔn:0.099、液晶層のセルギャップ:3.0μm、プレチルト角:5度、ラビング方向:基板上下とも75度とした。
以上のようにして作製した液晶表示装置において、該液晶表示装置の正面からの方位角方向45度、極角方向70度における黒表示時の光漏れ率を測定した。この値が小さいほど斜め45度方向での光漏れが少なく、液晶表示装置のコントラストがよいことを示し、液晶表示装置の視野角特性を評価できる。その結果を表4に示す。
表4に示すように、実施例29の偏光板を用いた場合は、実施例23の第1の偏光板を単に用いた実施例27と比較して、視野角が更に広くなり、黒の色味変化(Δuv)が更に小さくなることが確認された。
【0205】
【表4】

【0206】
(実施例30)
<OCBモード液晶表示装置の作製>
<<λ/4波長板の作製>>
λ/4波長板として、市販のピュアエースWR W147(帝人(株)製)を用いた。当該λ/4波長板(フィルム)のRe(550)は、140nmであった。
【0207】
<<二軸フィルムの作製>>
市販のシクロオレフィンフィルム(ゼオノアZF14,(株)オプテス製)を、二軸延伸機で延伸し、Re(550)が28nmで、且つRth(550)が275nmの二軸フィルムを作製した。
また、二軸性フィルムのレターデーションRe(λ)と、膜厚方向のレターデーションRth(λ)との積(Re(λ)×Rth(λ))を、波長450nm、波長550nm、及び波長630nmにおいて測定したところ、それぞれ7,750、7,700、及び7,700であった。
【0208】
<<OCBモード液晶セルの作製>>
ITO電極付きのガラス基板に、ポリイミド膜を配向膜として設け、配向膜にラビング処理を行った。
得られた二枚のガラス基板をラビング方向が平行となる配置で向かい合わせ、セルギャップを5.7μmに設定した。
その後、セルギャップにΔnが0.1396の液晶性化合物(ZLI1132、メルク社製)を注入し、ベンド配向液晶セルを作製した。
作製した液晶セルのΔn×dは796nmであった。また、液晶セルの大きさは26インチであった。
【0209】
実施例23の第1の偏光板に、上記作製のλ/4波長板、及び二軸フィルムをこの順に配置して、粘着剤で貼り合わせた。
このようにして作製された光学異方性層つき第1の偏光板2枚を、前記光学異方性層が内側となるようにクロスニコル配置とし、その間に液晶セルを挟み込んだ。
このとき、光学異方性層つき第1の偏光板の透過軸と、λ/4フィルムの遅相軸とは45°、二軸フィルムの面内の遅相軸と、液晶セルのラビング方向とは直交し、更に、二軸フィルムの面内の遅相軸と、偏光板の透過軸とが45°となるように、粘着剤を用いて2枚の光学異方性層つき第1の偏光板と、液晶セルとを貼り合わせ、実施例30のOCBモードの液晶表示装置を作製した。なお、この液晶表示装置の液晶セルのΔndは796nmであった。
【0210】
(実施例31)
<OCBモード液晶表示装置の作製>
実施例30において用いた実施例23の第1の偏光板を、実施例24の第1の偏光板に代えた以外は、実施例30と同様にして、実施例31のOCBモード液晶表示装置を作製した。
【0211】
(比較例11〜12)
<OCBモード液晶表示装置の作製>
実施例30において用いた実施例23の第1の偏光板を、比較例3〜4の第1の偏光板にそれぞれ代えた以外は、実施例30と同様にして、比較例11〜12のOCBモード液晶表示装置(26インチ)を作製した。
【0212】
(比較例13)
<OCBモード液晶表示装置の作製>
実施例30において用いた実施例23の第1の偏光板を、比較例7の第3の偏光板に代えた以外は、実施例30と同様にして、比較例13のOCBモード液晶表示装置(26インチ)を作製した。
【0213】
<視野角の評価>
実施例30〜31、及び比較例11〜13の液晶表示装置を、測定機(EZ−Contrast160D、ELDIM社製)を用いて、黒表示(L1)から白表示(L8)までの8段階で視野角を測定した。また、80℃ドライ条件に24時間曝した後に、パネルを点灯させて、光漏れの評価を下記評価基準に基づき目視、官能評価で行った。その結果を表5に示す。ここで、前記「ドライ条件」とは、相対湿度略0%でオーブンなどで加熱する条件を指す。
【0214】
<<評価基準>>
○:額縁状の光漏れが観察されなかった
×:額縁状の光漏れが観察された
【0215】
【表5】

【0216】
表5より、実施例30〜31の液晶表示装置は、比較例11〜13と比較して額縁状の光漏れが改善されていることが確認された。
【0217】
また、実施例30〜31、及び比較例11〜13の液晶表示装置を、相対湿度60%RHにて1週間調湿した後に同様の測定を行った後に、更に相対湿度10%RHにて1週間調湿した後に同様の測定を行い、環境湿度の変動に対する表示特性の変動を調べた結果、実施例30〜31の液晶表示装置は、比較例11〜13と比較して、環境湿度が変化してもパネルの色味、輝度の変化が殆ど見られないレベルまで改善されていることが確認された。
【0218】
(実施例32)
<光学補償フィルムの作製>
実施例1で作製した透明保護フィルムを、1.5Nの水酸化カリウム溶液(40℃)に5分間浸漬した後、硫酸で中和し、純水で水洗、乾燥した。この透明保護フィルムの表面エネルギーを接触角法により求めたところ、68mN/mであった。
【0219】
<<配向膜の形成>>
この透明保護フィルム上(アルカリ処理面)に、下記の組成の配向膜塗布液を#16のワイヤーバーコ−タ−で28ml/m塗布した。60℃の温風で60秒、更に90℃の温風で150秒乾燥し、膜を形成し、透明保護フィルムの遅相軸(波長632.8nmで測定)と45゜の方向に、形成した膜にラビング処理を実施して配向膜を作製した。
【0220】
[配向膜塗布液組成]
・下記に示す変性ポリビニルアルコ−ル 10質量部
・水 371質量部
・メタノ−ル 119質量部
・グルタルアルデヒド(架橋剤) 0.5質量部
・クエン酸エステル(三協化学製 AS3) 0.35質量部
【0221】
【化29】

【0222】
<<液晶性化合物の作製>>
この配向膜の上に、下記に示す棒状液晶性分子(1)43.5質量%、下記に示す棒状液晶性分子(2)43.5質量%、及び下記に示す光重合開始剤3質量%をクロロホルムに溶解した塗布液を塗布し、130℃で3分間加熱して、棒状液晶性分子を水平配向させた。形成された塗布層の厚さは、1.0μmであった。
次に、窒素雰囲気下で紫外線を500w/cmの照度の水銀ランプで紫外線を照射して棒状液晶性分子を重合させた。
【0223】
【化30】

【0224】
【化31】

【0225】
【化32】

【0226】
次に、下記に示す円盤状液晶性分子90質量部、エチレンオキサイド変性トリメチロールプロパントリアクリレート(V#360、大阪有機化学(株)製)10質量部、メラミンホルムアルデヒド/アクリル酸コポリマー(アルドリッチ試薬)0.6質量部、光重合開始剤(イルガキュア907、日本チバガイギー(株)製)3.0質量部、及び光増感剤(カヤキュアーDETX、日本化薬(株)製)1.0質量部を、メチルエチルケトンに溶解して、固形分濃度が38質量%の塗布液を調製した。
【0227】
【化33】

【0228】
この調製した塗布液を、上記棒状液晶分子層上に塗布し、乾燥した。130℃で1分間加熱して、円盤状液晶性分子を配向させた。直ちに室温に冷却し、500mJ/cmの紫外線を照射して、円盤状液晶性分子を重合させ、配向状態を固定した。形成した円盤状液晶層の厚さは、2.5μmであった。以上より、実施例32の光学補償フィルムを作製した。
【0229】
(実施例33)
<光学補償フィルムの作製>
実施例32において用いた実施例1の透明保護フィルムを、実施例12の透明保護フィルムに代えた以外は、実施例32と同様にして、実施例33の光学補償フィルムを作製した。
【0230】
(比較例14〜15)
<光学補償フィルムの作製>
実施例32において用いた実施例1の透明保護フィルムを、比較例1〜2の透明保護フィルムにそれぞれ代えた以外は、実施例32と同様にして、比較例14〜15の光学補償フィルムを作製した。
【0231】
これらの光学異方性層全体のRe(550)は34nm、Rth(550)は250nmであった。
また、波長450nm、550nm及び630nmにおける光学異方性層全体のRe(λ)×Rth(λ)はそれぞれ、10,450、8,500、及び7,360であった。
また、第1光学異方性層(ディスコティック液晶を含有する組成物から形成した層)の面内レターデーションRe_1と、第2光学異方性層(棒状液晶を含有する組成物から形成した層)の膜厚方向のレターデーションRth_2との積(Re_1(λ)×Rth_2(λ))は、波長450nm、550nm及び630nmにおいて、それぞれ11,210、9,180、及び8,120であった。
【0232】
(実施例34)
<第4の偏光板の作製>
延伸したポリビニルアルコールフィルムにヨウ素を吸着させて偏光膜を作製した。
次に、ポリビニルアルコール系接着剤を用いて、実施例32の光学補償フィルムを、実施例1の透明保護膜が前記偏光膜側となるように、前記偏光膜の一方の面に貼り付けた。
市販のセルローストリアシレートフィルム(フジタックTD80UF、富士フイルム(株)製)に鹸化処理を行い、ポリビニルアルコール系接着剤を用いて、前記偏光膜の他方の面側に貼り付けた。このとき、前記偏光膜の透過軸と、市販のセルローストリアシレートフィルムの遅相軸とは、直交するように配置した。このようにして実施例34の第4の偏光板を作製した。
【0233】
(実施例35)
<第4の偏光板の作製>
実施例34において用いた実施例1の透明保護フィルムを、実施例12の透明保護フィルムに代えた以外は、実施例34と同様にして、実施例35の第4の偏光板を作製した。
【0234】
(比較例16〜17)
<第4の偏光板の作製>
実施例34において用いた実施例32の光学補償フィルムを、比較例14〜15の光学補償フィルムにそれぞれ代えた以外は、実施例34と同様にして、比較例16〜17の第4の偏光板を作製した。
【0235】
(実施例36)
<液晶表示装置の作製>
<<液晶セルの作製>>
ITO電極付きのガラス基板に、ポリイミド膜を配向膜として設け、該配向膜にラビング処理を行った。
得られた二枚のガラス基板をラビング方向が平行となる配置で向かい合わせ、セルギャップを9.7μmに設定した。
セルギャップにΔnが0.1396の液晶性化合物(ZLI1132、メルク社製)を注入し、ベンド配向液晶セルを作製した。作製した液晶セルのΔn×dは1,354nmであった。また、液晶セルの大きさは26インチであった。
【0236】
実施例34で作製した偏光板を、実施例32の光学異方性層が内側となるようにクロスニコル配置とし、その間に液晶セルをはさみ込んだ。なお、前記光学異方性層の面内の遅相軸と、前記液晶セルのラビング方向とは直交するように粘着剤を用いて貼り合わせた。このようにして、実施例36の液晶表示装置を作製した。
【0237】
(実施例37)
<液晶表示装置の作製>
実施例36において用いた実施例34の偏光板を、実施例35の偏光板に代えた以外は、実施例36と同様にして、実施例37の液晶表示装置を作製した。
【0238】
(比較例18〜19)
<液晶表示装置の作製>
実施例36において用いた実施例34の偏光板を、比較例16〜17の偏光板にそれぞれ代えた以外は、実施例36と同様にして、比較例18〜19の液晶表示装置を作製した。
【0239】
<<視野角の測定>>
このようにして作製した実施例36〜37、及び比較例18〜19の液晶表示装置について、上記実施例30〜31、及び比較例11〜13の液晶表示装置と同様にして視野角を測定し、光漏れの評価を目視/官能評価で行った。その結果を表6に示す。
【0240】
【表6】

【0241】
また、実施例36〜37、及び比較例18〜19の液晶表示装置を、相対湿度60%RHにて1週間調湿した後に同様の測定を行った後に、更に相対湿度10%RHにて1週間調湿した後に同様の測定を行い、環境湿度の変動に対する表示特性の変動を調べた結果、実施例36〜37の液晶表示装置は、比較例18〜19と比較して、環境湿度が変化してもパネルの色味、輝度の変化が殆ど見られないレベルまで改善されていることが確認された。
【0242】
(実施例38)
<光学補償フィルムの作製>
下記の組成物をミキシングタンクに投入し、加熱しながら攪拌して、各成分を溶解し、セルロースアセテート溶液を調製した。
【0243】
[セルロースアセテート溶液組成]
・酢化度60.9%のセルロースアセテート 100質量部
・トリフェニルホスフェ−ト(可塑剤) 7.8質量部
・ビフェニルジフェニルホスフェ−ト(可塑剤) 3.9質量部
・メチレンクロライド(第1溶媒) 300質量部
・メタノ−ル(第2溶媒) 45質量部
・染料(住化ファインケム(株)製 360FP) 0.0009質量部
【0244】
別のミキシングタンクに、下記に示すレターデーション上昇剤16質量部、メチレンクロライド80質量部、及びメタノ−ル20質量部を投入し、加熱しながら攪拌して、レターデーション上昇剤溶液を調製した。
上記組成のセルロースアセテート溶液464質量部に、レターデーション上昇剤溶液36質量部、及びシリカ微粒子(アイロジル製 R972)1.1質量部を混合し、充分に攪拌してド−プを調製した。レターデーション上昇剤の添加量は、セルロースアセテート100質量部に対して、5.0質量部であった。また、シリカ微粒子の添加量は、セルロースアセテート100質量部に対して、0.15質量部であった。
【0245】
【化34】

【0246】
得られたド−プを、幅2mで長さ65mの長さのバンドを有する流延機を用いて流延した。バンド上での膜面温度が40℃となってから、1分乾燥し、剥ぎ取った後、140℃の乾燥風で、テンターを用いて幅方向に28%延伸した。
この後、135℃の乾燥風で20分間乾燥し、残留溶剤量が0.3質量%の支持体PK−1を製造した。
得られた支持体PK−1の幅は1,340mmであり、厚さは92μmであった。
また、エリプソメーター(M−150、日本分光(株)製)を用いて、Re(590)を測定したところ、38nmであり、Rth(590)を測定したところ、175nmであった。
作製した支持体PK−1のバンド面側に、1.0Nの水酸化カリウム溶液(溶媒:水/イソプロピルアルコ−ル/プロピレングリコ−ル=69.2質量部/15質量部/15.8質量部)を10ml/m塗布し、約40℃の状態で30秒間保持した後、アルカリ液を掻き取り、純水で水洗し、エア−ナイフで水滴を削除した。
その後、100℃で15秒間乾燥した。この支持体PK−1の純水に対する接触角を求めたところ、42°であった。
【0247】
<<配向膜の作製>>
この支持体PK−1上(アルカリ処理面)に、下記の組成の配向膜塗布液を#16のワイヤーバーコ−タ−で28ml/m塗布した。60℃の温風で60秒、更に90℃の温風で150秒乾燥し、配向膜を作製した。
【0248】
[配向膜塗布液組成]
・下記に示す変性ポリビニルアルコ−ル 10質量部
・水 371質量部
・メタノ−ル 119質量部
・グルタルアルデヒド(架橋剤) 0.5質量部
・クエン酸エステル(三協化学製 AS3) 0.35質量部
【0249】
【化35】

【0250】
<ラビング処理>
支持体PK−1を長手方向に速度20m/分で搬送し、長手方向に対して45°にラビング処理されるようにラビングロ−ル(300mm直径)を設定し、650rpmで回転させて、PK−1の配向膜設置表面にラビング処理を施した。ラビングロ−ルと支持体PK−1との接触長さは、18mmとなるように設定した。
【0251】
<光学異方性層の形成>
配向膜上に、下記に示すディスコティック液晶性化合物41.01Kg、エチレンオキサイド変成トリメチロールプロパントリアクリレート(V#360、大阪有機化学(株)製)4.06Kg、セルロースアセテートブチレ−ト(CAB531−1、イ−ストマンケミカル社製)0.45Kg、光重合開始剤(イルガキュア−907、チバガイギ−社製)1.35Kg、増感剤(カヤキュア−DETX、日本化薬(株)製)0.45Kgを102Kgのメチルエチルケトンに溶解した塗布液に、フルオロ脂肪族基含有共重合体(メガファックF780 大日本インキ(株)製)を0.1Kgを加え、#3.0のワイヤ−バ−を391回転でフィルムの搬送方向と同じ方向に回転させて、20m/分で搬送されている支持体PK−1の配向膜面に連続的に塗布した。
【0252】
【化36】

【0253】
室温から100℃に連続的に加温する工程で、溶媒を乾燥させ、その後、130℃の乾燥ゾ−ンでディスコティック液晶化合物層の膜面風速がフィルムの搬送方向に平行に2.5m/secとなるように、約90秒間加熱し、ディスコティック液晶化合物を配向させた。
次に、80℃の乾燥ゾ−ンに搬送させて、フィルムの表面温度が約100℃の状態で、紫外線照射装置(紫外線ランプ:出力160W/cm、発光長1.6m)により、照度600mWの紫外線を4秒間照射し、架橋反応を進行させて、ディスコティック液晶化合物をその配向に固定した。
その後、室温まで放冷し、円筒状に巻き取ってロ−ル状の形態にした。
このようにして、支持体PK−1上に光学異方性層KI−1が形成されたロ−ル状光学補償フィルムKH−1を作製した。
なお、ディスコティック液晶化合物層の膜面温度は、127℃であり、この温度での該層の粘度は、695cpであった。粘度は該層と同じ組成比の液晶層(溶媒は除く)を加熱型のE型粘度系で測定した。
【0254】
作製したロ−ル状光学補償フィルムKH−1の一部を切り取り、サンプルとして用いて、光学特性を測定した。波長546nmで測定した光学異方性層のレターデーション値Reは、Re(0°)が30.5nm、Re(40°)が44.5nm、Re(−40°)が107.5nmであった。
また、光学異方性層中のディスコティック液晶化合物の円盤面と支持体面との角度(傾斜角)は、層の深さ方向で連続的に変化し、平均で32゜であった。
更に、前記サンプルから光学異方性層のみを剥離し、光学異方性層の分子対称軸の平均方向を測定したところ、光学異方性層KI−1の長手方向に対して、45°となっていた。
【0255】
<光学異方性層の転写>
実施例1で作製した透明保護フィルムの一方の面に粘着剤を塗工し、上記光学補償フィルム(KH−1)のディスコティック液晶化合物層側と貼り合わせた後に、PK−1のみを剥離することにより、前記透明保護フィルムの一方の面に光学異方性層KI−1を積層した実施例38の光学補償フィルムを得た。
【0256】
(実施例39)
<光学補償フィルムの作製>
実施例38において用いた実施例1の透明保護フィルムを、実施例12の透明保護フィルムに代えた以外は、実施例38と同様にして、実施例39の光学補償フィルムを作製した。
【0257】
(比較例20〜21)
<光学補償フィルムの作製>
実施例38において用いた実施例1の透明保護フィルムを、比較例1〜2の透明保護フィルムにそれぞれ代えた以外は、実施例38と同様にして、比較例20〜21の光学補償フィルムを作製した。
【0258】
(実施例40)
<第5の偏光板の作製>
厚さ80μmのロール状ポリビニルアルコールフィルムをヨウ素水溶液中で連続して5倍に延伸し、乾燥して偏光膜を得た。
続いて、実施例38の光学補償フィルムを、1.5規定の水酸化ナトリウム水溶液に、55℃で2分間浸漬した。室温の水洗浴槽中で洗浄し、30℃で0.1規定の硫酸を用いて中和した。再度、室温の水洗浴槽中で洗浄し、更に100℃の温風で乾燥した。このようにして、表面がアルカリ鹸化された実施例38の光学補償フィルムを、光学異方性層側が前記偏光膜に対向するように該偏光膜の一方の面に貼り付けた。
その後、ポリビニルアルコール(PVA−117H,(株)クラレ製)3%水溶液を接着剤として、市販のセルローストリアシレートフィルム(フジタックTD80UF、富士フイルム(株)製)に鹸化処理を行ったものを、前記偏光膜の他方の面に貼り付けた。このとき、前記偏光膜の透過軸と市販のセルローストリアシレートフィルムの遅相軸とは、直交するように配置した。
このようにして、実施例40の第5の偏光板を作製した。
【0259】
(実施例41)
<第5の偏光板の作製>
実施例40において用いた実施例38の光学補償フィルムを、実施例39の光学補償フィルムに代えた以外は、実施例40と同様にして、実施例41の第5の偏光板を作製した。
【0260】
(比較例22〜23)
<第5の偏光板の作製>
実施例40において用いた実施例38の光学補償フィルムを、比較例20〜21の光学補償フィルムにそれぞれ代えた以外は、実施例40と同様にして、比較例22〜23の第5の偏光板を作製した。
【0261】
(実施例42)
<液晶表示装置の作製>
ITO電極付きのガラス基板に、ポリイミド膜を配向膜として設け、配向膜にラビング処理を行った。得られた二枚のガラス基板をラビング方向が平行となる配置で向かい合わせ、セルギャップを4.3μmに設定した。セルギャップにΔnが0.1396の液晶性化合物(ZLI1132、メルク社製)を注入し、ベンド配向液晶セルを作製した。液晶セルの大きさは26インチであった。
実施例40の第5の偏光板2枚を積層フィルム側が内側となるようにクロスニコル配置とし、その間に液晶セルをはさみ込んだ。
光学異方性層の面内の遅相軸と液晶セルのラビング方向は直交するように粘着剤を用いて張り合わせた。このようにして実施例42のOCBモードの液晶表示装置を作製した。
【0262】
(実施例43)
<液晶表示装置の作製>
実施例42において用いた実施例40の偏光板を、実施例41の偏光板に代えた以外は、実施例42と同様にして、実施例43の液晶表示装置を作製した。
【0263】
(比較例24〜25)
<液晶表示装置の作製>
実施例42において用いた実施例40の偏光板を、比較例22〜23の偏光板にそれぞれ代えた以外は、実施例42と同様にして、比較例24〜25の液晶表示装置を作製した。
【0264】
<<視野角の測定>>
実施例42〜43、及び比較例24〜25のOCBモード液晶表示装置を、測定機(EZ−Contrast160D、ELDIM社製)を用いて、黒表示(L1)から白表示(L8)までの8段階で視野角を測定した。
また、80℃ドライ条件に24時間曝したのちに、点灯する方法で光漏れの評価を目視/官能評価で行った。その結果を表7に示す。
【0265】
【表7】

【0266】
また、実施例42〜43、及び比較例24〜25の液晶表示装置を、相対湿度60%RHにて1週間調湿した後に同様の測定を行った後に、更に相対湿度10%RHにて1週間調湿した後に同様の測定を行い、環境湿度の変動に対する表示特性の変動を調べた結果、実施例42〜43の液晶表示装置は、比較例24〜25と比較して、環境湿度が変化してもパネルの色味、輝度の変化が殆ど見られないレベルまで改善されていることが確認された。
【0267】
(実施例44)
<<光学補償フィルム(光学異方性層)A1の作製>>
攪拌機、温度計及び還流冷却器を備えた反応槽に水酸化ナトリウム水溶液、及びイオン交換水を仕込み、これに下記構造のモノマーAを55モル%、モノマーBを45モル%の比で溶解させ、少量のハイドロサルファイドを加えた。
次に、これに塩化メチレンを加え、20℃でホスゲンを約60分かけて吹き込んだ。
更に、p−tert−ブチルフェノールを加えて乳化させた後、トリエチルアミンを加えて30℃で約3時間攪拌して反応を終了させた。
反応終了後、有機相を分取し、塩化メチレンを蒸発させてポリカーボネート共重合体を得た。得られた共重合体の組成比はモノマー仕込み量比とほぼ同様であった。
この共重合体をメチレンクロライドに溶解させ、固形分濃度15質量%のドープ溶液を作製した。
このドープ溶液を、バンド流延機を用いてフィルムを作製し、温度210℃においてテンターで21%横延伸を行い、光学補償フィルムとしての光学異方性層A1を作製した。延伸後の膜厚は83μmであった。また、光学異方性層A1のRe(450)、Re(590)、Re(650)、Rth(450)、Rth(590)、Rth(650)を測定した。結果を表8に示す。
【0268】
【化37】

【0269】
【化38】

【0270】
<光学補償フィルムAC1の作製>
2,2’−ビス(3,4−ジスカルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパンと、2,2’−ビス(トリフルオロメチル)−4,4’−ジアミノビフェニルから合成されたポリイミドをシクロヘキサノン中に溶解させ、15質量%のポリイミド溶液を調製した。
ソリッドステートコロナ処理機6KVA(ピラー(株)製)によりコロナ放電処理を行った上記光学異方性層A1の表面に、上記ポリイミド溶液を、乾燥後の膜厚で1.8μm分塗布し、150℃で5分間乾燥させ、上記ポリイミドからなる光学異方性層C1が形成された光学補償フィルムAC1を作製した。
【0271】
別途準備したガラス基板上に、上記ポリイミド溶液を、乾燥後の膜厚で1.8μm分塗布し、150℃で5分間乾燥させ、上記ポリイミドからなる光学異方性層C1Gを作製し、該光学異方性層C1GのRe450、Re590、Re650、Rth450、Rth590、及びRth650を測定した。結果を表8に示す。
【0272】
<第6の偏光板の作製>
厚さ80μmのポリビニルアルコール(PVA)フィルムを、ヨウ素濃度0.05質量%のヨウ素水溶液中に30℃で60秒浸漬して染色し、次いで、ホウ酸濃度4質量%のホウ酸水溶液中に60秒浸漬している間に元の長さの5倍に縦延伸した後、50℃で4分間乾燥させて、厚さ20μmの偏光子を得た。
【0273】
実施例1で作製した透明保護フィルム、及び防眩性反射防止層をトリアセチルセルロースフィルム上に有する市販の保護膜CVL−02(富士フイルム(株)製)を、濃度1.5モル/Lで55℃の水酸化ナトリウム水溶液中に浸漬した後、水で十分に水酸化ナトリウムを洗い流した。
その後、濃度0.005モル/Lで35℃の希硫酸水溶液に1分間浸漬した後、水に浸漬し希硫酸水溶液を十分に洗い流した。最後に試料を120℃で十分に乾燥させた。
【0274】
上記のように鹸化処理を行った実施例1の透明保護フィルムと、防眩性反射防止層を有する市販の保護膜CVL−02とを、前記偏光子を挟むようにポリビニルアルコール系接着剤を用いて貼り合せ、第6の偏光板を作製した。ここで、防眩性反射防止層を有する保護膜CVL−02は、トリアセチルセルロースフィルム側が前記偏光子側となるように前記偏光子に貼り合せた。
【0275】
この第6の偏光板の実施例1の透明保護フィルム側にアクリル系の粘着材を介して、光学補償フィルムAC1を、光学異方性層A1側が粘着材側となるようにして貼り合せ、実施例44の第6の偏光板を作製した。
なお、光学補償フィルムAC1の光学異方性層C1側にもアクリル系粘着剤を塗設した。
このとき、前記偏光子、及び該偏光子の両側の透明保護フィルムは、ロール形態で作製されているため、各ロールフィルムの長手方向が平行となっており、連続的に貼り合わされる。また、光学異方性層A1の遅相軸と前記偏光子の透過軸は平行になっている。
【0276】
(実施例45)
<第6の偏光板の作製>
実施例44において用いた実施例1の透明保護フィルムを、実施例12の透明保護フィルムに代えた以外は、実施例44と同様にして、実施例45の第6の偏光板を作製した。
【0277】
(実施例46)
<第6の偏光板の作製>
実施例44において用いた保護膜CVL−02を、市販のトリアセチルセルロースフィルム(フジタックTFY80UL、富士フイルム(株)製)に代えた以外は、実施例44と同様にして、実施例46の第6の偏光板を作製した。また、フジタックTFY80ULの光学特性の測定結果を表8に記載する。
【0278】
(実施例47)
<第6の偏光板の作製>
実施例44において用いた実施例1の透明保護フィルムを、実施例12の透明保護フィルムに代えると共に、保護膜CVL−02を、市販のトリアセチルセルロースフィルム(フジタックTFY80UL、富士フイルム(株)製)に代えた以外は、実施例44と同様にして、実施例47の第6の偏光板を作製した。
【0279】
(比較例26〜27)
<第6の偏光板の作製>
実施例44において用いた実施例1の透明保護フィルムを、比較例1〜2の透明保護フィルムにそれぞれ代えた以外は、実施例44と同様にして、比較例26〜27の第6の偏光板を作製した。
【0280】
(比較例28)
<第6の偏光板の作製>
実施例44において用いた実施例1の透明保護フィルムを、市販のトリアセチルセルロースフィルム(フジタックTFY80UL、富士フイルム(株)製)に代えた以外は、実施例44と同様にして、比較例28の第6の偏光板を作製した。
【0281】
(比較例29〜30)
<第6の偏光板の作製>
比較例26、27において用いた保護膜CVL−02を、市販のトリアセチルセルロースフィルム(フジタックTFY80UL、富士フイルム(株)製)に代えた以外は、比較例26、27と同様にして、比較例29〜30の第6の偏光板を作製した。
【0282】
(比較例31)
<第6の偏光板の作製>
実施例44において用いた実施例1の透明保護フィルム、及び保護膜CVL−02を、市販のトリアセチルセルロースフィルム(フジタックTFY80UL、富士フイルム(株)製)に代えた以外は、実施例44と同様にして、比較例31の第6の偏光板を作製した。
【0283】
(実施例48)
<VAモード液晶表示装置の作製>
実施例44で作製した偏光板を、26インチワイドのサイズ(画面の比率が16:9)で偏光子の吸収軸が長辺となるように打ち抜いた。
また、実施例46で作製した偏光板を、26インチワイドのサイズで偏光子の吸収軸が短辺となるように打ち抜いた。
VAモードの液晶TV(KDL−L26HVX、ソニー(株)製)の液晶セルに設置された表裏の偏光板、及び位相差板を剥し、実施例44で作製し、上記のように打ち抜いた偏光板を前記液晶セルの視認側に設置すると共に、実施例46で作製し、上記のように打ち抜いた偏光板を前記液晶セルのバックライト側に設置して、実施例48の液晶表示装置を作製した。
なお、上記偏光板の設置にあたっては、液晶セルに貼り付けた後、50℃5kg/cmで20分間保持し、接着させた。この際、視認側の偏光板(実施例44で作製された偏光板)の吸収軸はパネル水平方向に、バックライト側の偏光板(実施例46で作製された偏光板)の吸収軸はパネル鉛直方向となり、粘着材面が液晶セル側となるように配置した。
【0284】
上記のように作製した実施例48の液晶表示装置について、測定機(EZ−Contrast 160D、ELDIM社製)を用いて、黒表示及び白表示の輝度測定から視野角(コントラスト比が20以上の範囲)を算出した。その結果として、方位角45度方向における視野角を表9に示す。
また、実施例48の液晶表示装置について、黒表示のu’v’色度図における色味測定を行い、パネル法線方向(極角0度)の色度(u’,v’)と画面水平方向から反時計方向に45度回転した方位(方位角45度)でパネル法線方向からパネル面へ60度傾けた方向(極角60度)の色度(u’60,v’60)の測定値から、下記式で定義される色味変化指数ΔCu’v’を算出した。結果を表9に示す。
ΔCu’v’=((u’−u’60−(v’−v’600.5
【0285】
また、実施例48の液晶表示装置を、相対湿度60%RHにて1週間調湿した後に同様の測定を行った後に、更に相対湿度10%RHにて1週間調湿した後に同様の測定を行った。環境湿度の変動に対する表示特性の変動を目視で評価した結果を表9に示す。
【0286】
(実施例49)
<液晶表示装置の作製>
実施例48において用いた実施例44の偏光板を、実施例45の偏光板に代えると共に、実施例48において用いた実施例46の偏光板を、実施例47の偏光板に代えた以外は、実施例48と同様にして、実施例49の液晶表示装置を作製した。
実施例48と同様に、視野角、及び色味変化指数ΔCu’v’の算出、並びに環境湿度の変動に対する表示特性の変動を表9に示した。
【0287】
(比較例32)
<液晶表示装置の作製>
実施例48において用いた実施例44の偏光板を、比較例26の偏光板に代えると共に、実施例48において用いた実施例46の偏光板を、比較例29の偏光板に代えた以外は、実施例48と同様にして、比較例32の液晶表示装置を作製した。
実施例48と同様に、視野角、及び色味変化指数ΔCu’v’の算出、並びに環境湿度の変動に対する表示特性の変動を表9に示した。
【0288】
(比較例33)
<液晶表示装置の作製>
実施例48において用いた実施例44の偏光板を、比較例27の偏光板に代えると共に、実施例48において用いた実施例46の偏光板を、比較例30の偏光板に代えた以外は、実施例48と同様にして、比較例33の液晶表示装置を作製した。
実施例48と同様に、視野角、及び色味変化指数ΔCu’v’の算出、並びに環境湿度の変動に対する表示特性の変動を表9に示した。
【0289】
(比較例34)
<液晶表示装置の作製>
実施例48において用いた実施例44の偏光板を、比較例28の偏光板に代えると共に、実施例48において用いた実施例46の偏光板を、比較例31の偏光板に代えた以外は、実施例48と同様にして、比較例34の液晶表示装置を作製した。
実施例48と同様に、視野角、及び色味変化指数ΔCu’v’の算出、並びに環境湿度の変動に対する表示特性の変動を表9に示した。
【0290】
表9に示すように、実施例48〜49の液晶表示装置は、比較例32〜34の液晶表示装置に比べて、視野角特性が改善され、かつ、黒表示時において正面から視角を倒した場合の色変化が改良され、且つ、環境湿度変動に対する変動が小さい液晶表示装置が得られることが確認された。
【0291】
(実施例50)
<光学補償フィルムAC2の作製>
実施例44で作製した光学異方性層A1の表面に、ソリッドステートコロナ処理機6KVA(ピラー(株)製)によりコロナ放電処理を行い、下記の組成の配向膜塗布液を#14のワイヤーバーコーターで24ml/m塗布した。その後、60℃の温風で60秒、更に90℃の温風で150秒乾燥して、光学異方性層A1の表面に配向膜を形成した。
【0292】
[配向膜塗布液組成]
・下記に示す変性ポリビニルアルコール 40質量部
・水 728質量部
・メタノール 228質量部
・グルタルアルデヒド(架橋剤) 2質量部
・クエン酸エステル(AS3、三共化学(株)) 0.69質量部
【0293】
【化39】

【0294】
前記配向膜上に、下記のディスコティック液晶化合物41.01質量部、エチレンオキサイド変成トリメチロールプロパントリアクリレート(V#360、大阪有機化学(株)製)4.06質量部、光重合開始剤(イルガキュアー907、チバガイギー社製)1.35質量部、増感剤(カヤキュアーDETX、日本化薬(株)製)0.45質量部、下記のメラミン系ポリマー0.12質量部を75質量部のメチルエチルケトンに溶解した塗布液に、フルオロ脂肪族基含有共重合体(メガファックF780、大日本インキ(株)製)0.1質量部を加え、#2.8のワイヤーバーを391回転でフィルムの搬送方向と同じ方向に回転させて、20m/分で搬送されている光学異方性層A1の配向膜面に連続的に塗布した。
室温から100℃に連続的に加温する工程で、溶媒を乾燥させ、その後、135℃の乾燥ゾーンで、ディスコティック液晶化合物層にあたる膜面風速がフィルム搬送方向に平行に1.5m/secとなるようにし、約90秒間加熱し、ディスコティック液晶化合物を配向させた。
次に、80℃の乾燥ゾーンに搬送させて、フィルムの表面温度が約100℃の状態で、紫外線照射装置(紫外線ランプ:出力160W/cm、発光長1.6m)により、照度600mWの紫外線を4秒間照射し、架橋反応を進行させ、ディスコティック液晶化合物をその配向に固定した。
その後、室温まで放冷し、円筒状に巻き取ってロール状の形態とし、光学異方性層A1、及び光学異方性層C2を含む、光学補償フィルムAC2を作製した。
コロナ処理した光学異方性層A1の代わりとして別途準備したガラス基板上に、配向膜及び光学異方性層C2を形成し、上記ディスコティック液晶化合物からなる光学異方性層C2Gを作製し、該光学異方性層C2GのRe450、Re590、Re650、Rth450、Rth590、Rth650を測定した。結果を表8に示す。
【0295】
【化40】

【0296】
【化41】

【0297】
<第7の偏光板の作製>
実施例44の光学補償フィルムにおいて、AC1をAC2に代えた以外は実施例44と同様にして、実施例50の第7の偏光板を作製した。更に、光学補償フィルムAC2の光学異方性層C2側にもアクリル系粘着材を塗設した。このとき、偏光子及び該偏光子両側の保護膜はロール形態で作製されているため、各ロールフィルムの長手方向が平行となっており、連続的に貼り合わされる。また、光学異方性層A1の遅相軸と偏光子の透過軸は平行になっている。
【0298】
(実施例51)
<第7の偏光板の作製>
実施例50において用いた実施例1の透明保護フィルムを、実施例12の透明保護フィルムに代えた以外は、実施例50と同様にして、実施例51の第7の偏光板を作製した。
【0299】
(実施例52)
<第7の偏光板の作製>
実施例50において用いた保護膜CVL−02を、市販のトリアセチルセルロースフィルム(フジタックTFY80UL、富士フイルム(株)製)に代えた以外は、実施例50と同様にして、実施例52の第7の偏光板を作製した。
【0300】
(実施例53)
<第7の偏光板の作製>
実施例50において用いた実施例1の透明保護フィルムを、実施例12の透明保護フィルムに代えると共に、保護膜CVL−02を、市販のトリアセチルセルロースフィルム(フジタックTFY80UL、富士フイルム(株)製)に代えた以外は、実施例50と同様にして、実施例53の第7の偏光板を作製した。
【0301】
(比較例35〜36)
<第7の偏光板の作製>
実施例50において用いた実施例1の透明保護フィルムを、比較例1〜2の透明保護フィルムにそれぞれ代えた以外は、実施例50と同様にして、比較例35〜36の第7の偏光板を作製した。
【0302】
(比較例37)
<第7の偏光板の作製>
実施例50において用いた実施例1の透明保護フィルムを、市販のトリアセチルセルロースフィルム(フジタックTFY80UL、富士フイルム(株)製)に代えた以外は、実施例50と同様にして、比較例37の第7の偏光板を作製した。
【0303】
(比較例38〜39)
<第7の偏光板の作製>
実施例50において用いた実施例1の透明保護フィルムを、実施例12の透明保護フィルムに代えると共に、保護膜CVL−02を、市販のトリアセチルセルロースフィルム(フジタックTFY80UL、富士フイルム(株)製)に代えた以外は、実施例50と同様にして、比較例38〜39の第7の偏光板を作製した。
【0304】
(比較例40)
<第7の偏光板の作製>
実施例50において用いた実施例1の透明保護フィルム、及び保護膜CVL−02を、市販のトリアセチルセルロースフィルム(フジタックTFY80UL、富士フイルム(株)製)に代えた以外は、実施例50と同様にして、比較例40の第7の偏光板を作製した。
【0305】
(実施例54)
<VAモード液晶表示装置の作製>
実施例50で作製した偏光板を、26インチワイドのサイズで偏光子の吸収軸が長辺となるように打ち抜いた。
また、実施例52で作製した偏光板を、26インチワイドのサイズで偏光子の吸収軸が短辺となるように打ち抜いた。
VAモードの液晶TV(KDL−L26HVX、ソニー(株)製)の液晶セルに設置された表裏の偏光板、及び位相差板を剥し、実施例50で作製し、上記のように打ち抜いた偏光板を前記液晶セルの視認側に設置すると共に、実施例52で作製し、上記のように打ち抜いた偏光板を前記液晶セルのバックライト側に設置して、実施例54の液晶表示装置を作製した。
なお、上記偏光板の設置にあたっては、液晶セルに貼り付けた後、50℃5kg/cmで20分間保持し、接着させた。この際、視認側の偏光板(実施例50で作製された偏光板)の吸収軸はパネル水平方向に、バックライト側の偏光板(実施例52で作製された偏光板)の吸収軸はパネル鉛直方向となり、粘着材面が液晶セル側となるように配置した。
【0306】
上記のように作製した実施例54の液晶表示装置について、測定機(EZ−Contrast 160D、ELDIM社製)を用いて、黒表示及び白表示の輝度測定から視野角(コントラスト比が20以上の範囲)を算出した。その結果として、方位角45度方向における視野角を表10に示す。
また、実施例54の液晶表示装置について、上記実施例48と同様にして、色味変化指数ΔCu’v’を算出した。結果を表10に示す。
【0307】
また、実施例54の液晶表示装置を、相対湿度60%RHにて1週間調湿した後に同様の測定を行った後に、更に相対湿度10%RHにて1週間調湿した後に同様の測定を行った。環境湿度の変動に対する表示特性の変動を目視で評価した結果を表11に示す。
【0308】
(実施例55)
<液晶表示装置の作製>
実施例54において用いた実施例50の偏光板を、実施例51の偏光板に代えると共に、実施例54において用いた実施例52の偏光板を、実施例53の偏光板に代えた以外は、実施例54と同様にして、実施例55の液晶表示装置を作製した。
実施例54と同様に、視野角、及び色味変化指数ΔCu’v’の算出、並びに環境湿度の変動に対する表示特性の変動を表10に示した。
【0309】
(比較例41)
<VAモードの液晶表示装置の作製>
実施例54において用いた実施例50の偏光板を、比較例35の偏光板に代えると共に、実施例54において用いた実施例52の偏光板を、比較例38の偏光板に代えた以外は、実施例54と同様にして、比較例41の液晶表示装置を作製した。
実施例54と同様に、視野角、及び色味変化指数ΔCu’v’の算出、並びに環境湿度の変動に対する表示特性の変動を表10に示した。
【0310】
(比較例42)
<液晶表示装置の作製>
実施例54において用いた実施例50の偏光板を、比較例36の偏光板に代えると共に、実施例54において用いた実施例52の偏光板を、比較例39の偏光板に代えた以外は、実施例54と同様にして、比較例42の液晶表示装置を作製した。
実施例54と同様に、視野角、及び色味変化指数ΔCu’v’の算出、並びに環境湿度の変動に対する表示特性の変動を表10に示した。
【0311】
(比較例43)
<液晶表示装置の作製>
実施例54において用いた実施例50の偏光板を、比較例37の偏光板に代えると共に、実施例54において用いた実施例52の偏光板を、比較例40の偏光板に代えた以外は、実施例54と同様にして、比較例43の液晶表示装置を作製した。
実施例54と同様に、視野角、及び色味変化指数ΔCu’v’の算出、並びに環境湿度の変動に対する表示特性の変動を表10に示した。
【0312】
表10に示すように、実施例54〜55の液晶表示装置は、比較例41〜43の液晶表示装置に比べて、視野角特性が改善され、かつ、黒表示時において正面から視角を倒した場合の色変化が改良され、且つ、環境湿度変動に対する変動が小さい液晶表示装置が得られることが確認された。
【0313】
(実施例56)
<光学補償フィルムAC3の作製>
実施例44で作製した光学異方性層A1の表面に、ソリッドステートコロナ処理機6KVA(ピラー(株)製)によりコロナ放電処理を行い、実施例50と同様にして配向膜層を形成した。
【0314】
前記配向膜をラビング処理した後、下記の棒状液晶化合物41.01質量部、光重合開始剤(イルガキュアー907、チバガイギー社製)1.35質量部、増感剤(カヤキュアーDETX、日本化薬(株)製)0.45質量部、下記のカイラル構造を有する反応性モノマーを選択反射波長が300nmとなるように添加し、#2のワイヤーバーを391回転でフィルムの搬送方向と同じ方向に回転させて、20m/分で搬送されている光学異方性層A1の配向膜面に連続的に塗布した。
室温から70℃に連続的に加温する工程で、溶媒を乾燥させ、その後、90℃の乾燥ゾーンで、棒状液晶化合物層にあたる膜面風速がフィルム搬送方向に平行に1.5m/secとなるようにし、約90秒間加熱し、棒状液晶化合物をコレステリック配向させた。
次に、80℃の乾燥ゾーンに搬送させて、フィルムの表面温度が約80℃の状態で、紫外線照射装置(紫外線ランプ:出力160W/cm、発光長1.6m)により、照度600mWの紫外線を4秒間照射し、架橋反応を進行させ、棒状液晶化合物をその配向に固定した。
その後、室温まで放冷し、円筒状に巻き取ってロール状の形態とし、光学異方性層A1、及び光学異方性層C3を含む、光学補償フィルムAC3を作製した。
コロナ処理した光学異方性層A1の代わりとして別途準備したガラス基板上に、配向膜及び光学異方性層C3を形成し、上記棒状液晶化合物からなる光学異方性層C3Gを作製し、該光学異方性層C3GのRe450、Re590、Re650、Rth450、Rth590、Rth650を測定した。結果を表8に示す。
【0315】
【化42】

【0316】
【化43】

【0317】
<第8の偏光板の作製>
実施例44の光学補償フィルムにおいて、AC1をAC2に代えた以外は実施例44と同様にして、実施例56の第8の偏光板を作製した。更に、光学補償フィルムAC3の光学異方性層C3側にもアクリル系粘着材を塗設した。このとき、偏光子及び該偏光子両側の保護膜はロール形態で作製されているため、各ロールフィルムの長手方向が平行となっており、連続的に貼り合わされる。また、光学異方性層A1の遅相軸と偏光子の透過軸は平行になっている。
【0318】
(実施例57)
<第8の偏光板の作製>
実施例56において用いた実施例1の透明保護フィルムを、実施例12の透明保護フィルムに代えた以外は、実施例56と同様にして、実施例57の第8の偏光板を作製した。
【0319】
(実施例58)
<第8の偏光板の作製>
実施例56において用いた保護膜CVL−02を、市販のトリアセチルセルロースフィルム(フジタックTFY80UL、富士フイルム(株)製)に代えた以外は、実施例56と同様にして、実施例58の第8の偏光板を作製した。
【0320】
(実施例59)
<第8の偏光板の作製>
実施例56において用いた実施例1の透明保護フィルムを、実施例12の透明保護フィルムに代えると共に、保護膜CVL−02を、市販のトリアセチルセルロースフィルム(フジタックTFY80UL、富士フイルム(株)製)に代えた以外は、実施例56と同様にして、実施例59の第8の偏光板を作製した。
【0321】
(比較例44〜45)
<第8の偏光板の作製>
実施例56において用いた実施例1の透明保護フィルムを、比較例1〜2の透明保護フィルムにそれぞれ代えた以外は、実施例56と同様にして、比較例44〜45の第8の偏光板を作製した。
【0322】
(比較例46)
<第8の偏光板の作製>
実施例56において用いた実施例1の透明保護フィルムを、市販のトリアセチルセルロースフィルム(フジタックTFY80UL、富士フイルム(株)製)に代えた以外は、実施例56と同様にして、比較例46の第8の偏光板を作製した。
【0323】
(比較例47〜48)
<第8の偏光板の作製>
実施例56において用いた実施例1の透明保護フィルムを、実施例12の透明保護フィルムに代えると共に、保護膜CVL−02を、市販のトリアセチルセルロースフィルム(フジタックTFY80UL、富士フイルム(株)製)に代えた以外は、実施例56と同様にして、比較例47〜48の第8の偏光板を作製した。
【0324】
(比較例49)
<第8の偏光板の作製>
実施例56において用いた実施例1の透明保護フィルム、及び保護膜CVL−02を、市販のトリアセチルセルロースフィルム(フジタックTFY80UL、富士フイルム(株)製)に代えた以外は、実施例56と同様にして、比較例49の第8の偏光板を作製した。
【0325】
(実施例60)
<VAモード液晶表示装置の作製>
実施例56で作製した偏光板を、26インチワイドのサイズで偏光子の吸収軸が長辺となるように打ち抜いた。
また、実施例58で作製した偏光板を、26インチワイドのサイズで偏光子の吸収軸が短辺となるように打ち抜いた。
VAモードの液晶TV(KDL−L26HVX、ソニー(株)製)の液晶セルに設置された表裏の偏光板、及び位相差板を剥し、実施例56で作製し、上記のように打ち抜いた偏光板を前記液晶セルの視認側に設置すると共に、実施例58で作製し、上記のように打ち抜いた偏光板を前記液晶セルのバックライト側に設置して、実施例54の液晶表示装置を作製した。
なお、上記偏光板の設置にあたっては、液晶セルに貼り付けた後、50℃5kg/cmで20分間保持し、接着させた。この際、視認側の偏光板(実施例56で作製された偏光板)の吸収軸はパネル水平方向に、バックライト側の偏光板(実施例58で作製された偏光板)の吸収軸はパネル鉛直方向となり、粘着材面が液晶セル側となるように配置した。
【0326】
上記のように作製した実施例60の液晶表示装置について、測定機(EZ−Contrast 160D、ELDIM社製)を用いて、黒表示及び白表示の輝度測定から視野角(コントラスト比が20以上の範囲)を算出した。その結果として、方位角45度方向における視野角を表11に示す。
また、実施例60の液晶表示装置について、上記実施例48と同様にして、色味変化指数ΔCu’v’を算出した。結果を表11に示す。
【0327】
また、実施例60の液晶表示装置を、相対湿度60%RHにて1週間調湿した後に同様の測定を行った後に、更に相対湿度10%RHにて1週間調湿した後に同様の測定を行った。環境湿度の変動に対する表示特性の変動を目視で評価した結果を表11に示す。
【0328】
(実施例61)
<液晶表示装置の作製>
実施例60において用いた実施例56の偏光板を、実施例57の偏光板に代えると共に、実施例60において用いた実施例58の偏光板を、実施例59の偏光板に代えた以外は、実施例60と同様にして、実施例61の液晶表示装置を作製した。
実施例60と同様に、視野角、及び色味変化指数ΔCu’v’の算出、並びに環境湿度の変動に対する表示特性の変動を表11に示した。
【0329】
(比較例50)
<VAモードの液晶表示装置の作製>
実施例60において用いた実施例56の偏光板を、比較例44の偏光板に代えると共に、実施例60において用いた実施例58の偏光板を、比較例47の偏光板に代えた以外は、実施例60と同様にして、比較例41の液晶表示装置を作製した。
実施例60と同様に、視野角、及び色味変化指数ΔCu’v’の算出、並びに環境湿度の変動に対する表示特性の変動を表11に示した。
【0330】
(比較例51)
<VAモードの液晶表示装置の作製>
実施例60において用いた実施例56の偏光板を、比較例45の偏光板に代えると共に、実施例60において用いた実施例58の偏光板を、比較例48の偏光板に代えた以外は、実施例60と同様にして、比較例51の液晶表示装置を作製した。
実施例60と同様に、視野角、及び色味変化指数ΔCu’v’の算出、並びに環境湿度の変動に対する表示特性の変動を表11に示した。
【0331】
(比較例52)
<VAモードの液晶表示装置の作製>
実施例60において用いた実施例56の偏光板を、比較例46の偏光板に代えると共に、実施例60において用いた実施例58の偏光板を、比較例49の偏光板に代えた以外は、実施例60と同様にして、比較例52の液晶表示装置を作製した。
実施例60と同様に、視野角、及び色味変化指数ΔCu’v’の算出、並びに環境湿度の変動に対する表示特性の変動を表11に示した。
【0332】
表11に示すように、実施例60〜61の液晶表示装置は、比較例50〜52の液晶表示装置に比べて、視野角特性が改善され、かつ、黒表示時において正面から視角を倒した場合の色変化が改良され、且つ、環境湿度変動に対する変動が小さい液晶表示装置が得られることが確認された。
【0333】
【表8】

【0334】
【表9】

【0335】
【表10】

【0336】
【表11】

【0337】
以上説明したように、本発明によると、光学異方性が小さく、Re、Rthの波長分散が小さい透明保護フィルムを作製することができると同時に、環境湿度の変化に対するRe、Rthの変動を十分に小さくすることができ、この透明保護フィルムを用いることにより視野角特性に優れる光学補償フィルム、偏光板などの光学材料、及びこれらを用いた液晶表示装置の各々の特性の環境湿度変化に対する変動を十分に小さくすることが可能になった。
【産業上の利用可能性】
【0338】
本発明により、透明保護フィルムの正面のReをほぼゼロとし、また、レターデーションの角度変化も小さい、すなわちRthもほぼゼロとした、光学的に等方性である光学透明フィルムであり、且つ、環境湿度の変化に対するRe、Rthの変動の抑制効果に優れた透明保護フィルム、光学補償フィルムを製造することができるので、液晶表示装置における偏光板に好適に用いることができ、特に本発明の各モードの液晶表示装置に好適に用いることができる。
本発明の液晶表示装置は、液晶セルを光学的に補償し、コントラストの改善及び視角方向に依存したカラーシフトを軽減でき、携帯電話、パソコン用モニタ、テレビ、液晶プロジェクタなどに好適に使用することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
相対湿度60%RHにおいて、下記式(I)〜(III)を満たすことを特徴とする透明保護フィルム。
ただし、下記式(I)〜(III)において、Re(λ)は、Re(λ)=(nx−ny)×dとして定義される波長λnmにおける正面レターデーション値(単位:nm)であり、Rth(λ)は、Rth(λ)={(nx+ny)/2−nz}×dとして定義される波長λnmにおける膜厚方向のレターデーション値(単位:nm)である。
また、nxはフィルム面内の遅相軸方向の屈折率であり、nyはフィルム面内の進相軸方向の屈折率であり、nzはフィルムの厚み方向の屈折率であり、dはフィルムの厚さ(単位:nm)、ΔRthは相対湿度10%で24時間調湿して測定した波長550nmでのRthから相対湿度80%で24時間調湿して測定した波長550nmでのRthを引いた値である。
0≦Re(630)≦10・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・式(I)
|Rth(630)|≦20・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・式(II)
ΔRth/d×80,000≦20・・・・・・・・・・・・・・・式(III)
【請求項2】
下記式(IV)を満たす請求項1に記載の透明保護フィルム。
ΔRth/d×80,000≦8・・・・・・・・・・・・・・・・式(IV)
【請求項3】
一分子中に少なくとも複数の水酸基、アミノ基、チオール基、カルボン酸基、から選ばれる官能基を有する化合物Aを含有する請求項1から2のいずれかに記載の透明保護フィルム。
【請求項4】
化合物Aが、一分子内に複数の異なる官能基を有する請求項3に記載の透明保護フィルム。
【請求項5】
化合物Aが、母核として、1〜2個の芳香族環を含有する請求項3から4のいずれかに記載の透明保護フィルム。
【請求項6】
化合物Aが、水酸基、アミノ基、チオール基、カルボン酸基、から選ばれる官能基を有し、一分子中に含有する該官能基の数を該化合物Aの分子量で割った値を1,000倍した値が、10以上である請求項3から5のいずれかに記載の透明保護フィルム。
【請求項7】
化合物Aが、芳香族環を2つ含有し、一方の芳香族環に1個以下の水酸基を含有し、他方の芳香族環に3個以下のカルボン酸基を含有し、前記水酸基と、前記カルボン酸基との合計が2個〜6個である請求項3から6のいずれかに記載の透明保護フィルム。
【請求項8】
化合物Aの2つの芳香族環が、下記の一般式(I)〜(VII)の何れかの構造で連結している請求項7に記載の透明保護フィルム。
ただし、下記一般式(I)〜(VII)において、R〜Rは、水素原子、芳香族環を除くアルキル基、水酸基、アミノ基、チオール基、カルボン酸基の何れかを表す。
【化1】

【化2】

【化3】

【化4】

【化5】

【化6】

【化7】

【請求項9】
化合物Aの分子量が、180以上500以下である請求項3から8のいずれかに記載の透明保護フィルム。
【請求項10】
セルロースアシレート樹脂のアセチル基置換度が、2.0〜3.0のセルローストリアセテートである請求項1から9のいずれかに記載の透明保護フィルム。
【請求項11】
質量平均分子量が500以上10,000未満のエチレン性不飽和モノマーを重合して得られたポリマーを含有する請求項1から10のいずれかに記載の透明保護フィルム。
【請求項12】
Re(λ)及びRth(λ)を低下させ、オクタノール−水分配係数(LogP値)が、0〜7である化合物を少なくとも1種含み、該化合物が、セルロースアシレート固形分に対して0.01質量%〜30質量%含まれる請求項1から11のいずれかに記載の透明保護フィルム。
【請求項13】
透明支持体の少なくとも片面に、ハイブリット配向した円盤状化合物を含む光学異方性層が積層された請求項11から12のいずれかに記載の光学補償フィルム。
【請求項14】
請求項1から12のいずれかに記載の透明保護フィルム、及び請求項13に記載の光学補償フィルムの少なくともいずれかと、偏光子とを有することを特徴とする偏光板。
【請求項15】
液晶セルと、該液晶セルの少なくとも一方の面に設置される請求項14に記載の偏光板とを有することを特徴とする液晶表示装置。
【請求項16】
液晶セルが、TNモード、OCBモード、ECBモード、VAモード、及びIPSモードの何れかの液晶セルである請求項15に記載の液晶表示装置。

【公開番号】特開2008−224763(P2008−224763A)
【公開日】平成20年9月25日(2008.9.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−59054(P2007−59054)
【出願日】平成19年3月8日(2007.3.8)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】