説明

透明基板一体型の発光材料

実施形態によれば、ガラス中に可視像を形成することができる。紫外線を投射するプロジェクタを用いて発光材料を励起させることにより、ガラス中に可視像を形成できる。ガラス中の発光粒子の大きさは400ナノメートルに満たないため、ガラスの中で明瞭な画像を形成できる。実施形態では、透明基板の透明性を維持しながら透明基板の可視照射を行って画像を表示することが可能である。よって例えば、自動車の運転者は運転中にフロントガラスに画像(例えば地図画像)を見ることができる。また別の例としては、ウィンドウショッピングをする人々は、接近中の店舗の窓において広告を見ることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発光材料を含む装置に関する。
【背景技術】
【0002】
画像の再生は、多くの人々の生活にプラスの効果をもたらした。初期の画像再生技術の1つである映写機により、そこに実際に男優及び女優がいなくても、観客は演劇作品を見ることができるようになった。テレビが発明されたことにより、人々は自宅でくつろぎながら動画を見ることができるようになった。最初のテレビであるブラウン管(CRT)テレビは、今日もなお利用されている技術である。コンピュータ時代には、コンピュータから出力される画像をモニタで再生することが望まれている。多くのテレビと同様、コンピュータモニタ多くのはCRT技術を使用している。
【0003】
CRT技術に代わるものとして別の技術が開発されてきた。例えば、コンピュータモニタとテレビの双方で液晶ディスプレイ(LCD)技術が普及している。比較的薄いディスプレイであるLCDは多くの人々にとって便利なものである。他のディスプレイの例としては、プラズマディスプレイ、背面投射型ディスプレイ、及びプロジェクタがある。ディスプレイ技術の向上にともない、新しい応用が数多く開発されてきた。例えば、ガラスの中で可視像を形成するディスプレイの開発に向けて数多くの試みがなされている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、数多くの技術的難題があり、ガラスやその他の透明材料での可視像の形成が妨げられてきた。具体的にガラスは、これを略透明な状態に保つこと、そして十分な照度と明瞭度で可視像を表示することは困難であった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
実施形態によれば、ガラス中に可視像を形成することができる。紫外線を投射するプロジェクタを用いて発光材料を励起させることにより、ガラス中に可視像を形成できる。ガラス中の発光粒子の大きさは400ナノメートルに満たないため、ガラスの中で明瞭な画像を形成できる。実施形態では、透明基板の透明性を維持しながら透明基板の可視照射を行って画像を表示することが可能である。よって例えば、自動車の運転者は運転中にフロントガラスに画像(例えば地図画像)を見ることができる。また別の例としては、ウィンドウショッピングをする人々は、接近中の店舗の窓において広告を見ることができ、その間窓の透明性は維持される。
【0006】
実施形態は、発光材料を含む装置に関する。この発光材料は略透明な基板(例えばガラスまたはティントガラス)に一体化される。発光材料はプロジェクタからの紫外線の吸収に応じて可視光を発する。
【0007】
実施形態は、略透明な基板(例えばガラスまたはティントガラス)に一体化された発光材料を含む装置に関する。この発光材料は、紫外線の吸収に応じて可視光を発するよう構成される。発光材料は複数の発光粒子を含む。各発光粒子の直径は400ナノメートル未満である。
【0008】
実施形態は、略透明な基板(例えばガラスまたはティントガラス)を含む装置に関する。この装置はまた、透明な基板の透明性を維持したまま、透明な基板を選択的に可視発光させて透明基板に画像を表示させる手段を含む。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
図1は、実施形態による略透明なディスプレイの例示図である。観察者10は、基板14を通して任意の物体(例えば立方体12)を見ることができる。基板14は透明であっても、あるいは略透明であってもよい。観察者10は基板14を通して任意の物体12を見つつ、基板14にて形成される画像(例えば円15と三角形16)を見ることもできる。基板14は車両フロントガラス、建物の窓、ガラス基板、プラスチック基板、ポリマー基板、または当業者が推察する他の透明(または略透明)な媒体の一部であってよい。着色、基板保護、光フィルタリング(例えば外部紫外線のフィルタリング)、及びその他機能を提供するため、他の基板で基板14を補ってもよい。
【0010】
図2及び図3は、実施形態による光源(例えばプロジェクタ18またはレーザ20)からの励起光(例えば紫外線または赤外線)により照射される透明ディスプレイの例示図である。基板14は光源(例えばプロジェクタ18またはレーザ20)から励起光を受け取ることができる。受け取られた励起光は基板14にて発光材料により吸収できる。発光材料が励起光を受けると、可視光を発することができる。その結果、基板14を励起光で選択的に照射することによって、基板14にて画像(例えば円15と三角形16)を形成できる。
【0011】
本発明の実施形態では、励起光は紫外線であってよい。励起光が紫外線である場合には、発光材料が紫外線に応じて可視光を発する時にダウンコンバージョン物理現象が発生する。具体的には、紫外線は可視光より短い波長と高いエネルギーとを有する。よって、発光材料が紫外線を吸収して、より低エネルギーの可視光を発する際に紫外線は可視光にダウンコンバートされるが、これは紫外線が可視光に変換される際にそのエネルギーレベルが低下するためである。実施形態において、この発光材料は蛍光材料である。
【0012】
本発明の実施形態では、励起光は赤外線であってよい。励起光が赤外線である場合には、発光材料が赤外線に応じて可視光を発する時にアップコンバージョン物理現象が発生する。具体的には、赤外線は可視光より長い波長と低いエネルギーとを有する。よって、発光材料が赤外線を吸収して、より高いエネルギーの可視光を発する際には、赤外線は可視光にアップコンバートされるが、これは赤外線が可視光に変換される際にそのエネルギーレベルが上昇するためである。実施形態において、この発光材料は蛍光材料である。アップコンバージョン物理現象においては、全可視光量子の発光に対して複数の赤外線光量子の吸収が必要となり得る。
【0013】
図2に示す実施形態においてはプロジェクタ18によって励起光が出力される。プロジェクト18はデジタルプロジェクタであってよい。実施形態におけるプロジェクタ18はマイクロミラーアレイ(MMA)プロジェクタ(例えばデジタル光処理(DLP)プロジェクタ)である。紫外線を出力するMMAプロジェクタは、そのカラーホイールが紫外線スペクトルに相応しい光フィルタを具備する点を除き、可視光を出力するMMAプロジェクタと同様であってもよい。プロジェクタ18は別の実施形態において、液晶ディスプレイ(LCD)プロジェクタである。プロジェクタは別の実施形態において、リキッドクリスタル・オン・シリコン(LCOS:反射型液晶素子)プロジェクタであってよい。プロジェクタは別の実施形態において、アナログプロジェクタ(例えばスライドフィルムプロジェクタまたは映画フィルムプロジェクタ)であってよい。当業者であれば、基板14上での紫外線投射に用いることのできる別タイプのプロジェクタを推察できよう。
【0014】
図3に示す実施形態においては、励起光がレーザ20から出力される。レーザ20から出力されるレーザビームの強度及び動きの少なくとも一方を調節して、基板14に画像を形成することができる。ダウンコンバージョンの実施形態におけるレーザ20からの出力は紫外線であってよい。アップコンバージョンの実施形態におけるレーザ20からの出力は赤外線であってよい。
【0015】
図4は、実施形態による略透明な基板の中に分散する発光材料(例えば発光粒子22)の例示図である。励起光が発光粒子22によって吸収されると、発光粒子が可視光を発する。よって、ダウンコンバージョンの実施形態においては、紫外線が発光粒子22によって吸収される時に発光粒子から可視光が発せられる。同様に、アップコンバージョンの実施形態では、赤外線が発光粒子22によって吸収される時に発光粒子から可視光が発せられる。図5は、基板14の表面に堆積した発光粒子24の例示図である。発光粒子24を基板14に塗布することによって、基板14に一体化してもよい。
【0016】
発光材料(例えば発光粒子22と発光粒子24)は、発せられる可視光とは異なる波長である電磁放射(例えば可視光、紫外線、または赤外線)の吸収に応じて可視光を発する蛍光材料であってもよい。粒子の大きさを可視光の波長より小さくすることにより、粒子による可視光の拡散を減少する又はなくすことができる。可視光の波長より小さい粒子の例としてナノ粒子または分子がある。実施形態では、各発光粒子の直径は約400ナノメートル未満である。実施形態では、各発光粒子の直径は約300ナノメートル未満である。実施形態では、各発光粒子の直径は約200ナノメートル未満である。実施形態では、各発光粒子の直径は約100ナノメートル未満である。発光粒子は個別の分子であってもよい。
【0017】
物理的特性が異なる種々の発光粒子(例えば発光粒子22と発光粒子24)を併せて使用してもよい。例えば、基板14にカラー画像を形成するため、相異なる色に対応する異なるタイプの発光粒子を使用してもよい。例えば、第一のタイプの発光粒子を赤色に、第二のタイプの発光粒子を緑色に、さらに第三のタイプの発光粒子を青色に対応させてもよい。第一のタイプ、第二のタイプ、及び第三のタイプの発光粒子は原色であるが、当業者はカラー表示を促進するため異なる色の組み合わせ(例えば色のタイプと色の数)を推察するであろう。
【0018】
ダウンコンバージョンの実施形態では、赤色光を発する発光粒子はユウロピウムを、緑色光を発する発光粒子はテルビウムを、さらに青色光または黄色光を発する発光粒子はセリウム(及びツリウムの少なくとも一方)を含み得る。アップコンバージョンの実施形態では、赤色光を発する発光粒子はプラセオジムを、緑色光を発する発光粒子はエルビウムを、さらに青色光を発する発光粒子はツリウムを含み得る。実施形態では、発光粒子は相異なる色(例えば赤、緑、及び青)を発する蛍光分子である。実施形態では、発光粒子は純有機又は有機金属色素中に含まれる。
【0019】
異なるタイプの発光粒子にそれぞれ範囲の異なる励起光を吸収させることにより、相異なる色を発色させてもよい。これに応じ、基板14において発光粒子から発せられる可視色を制御するように、励起光の波長範囲を調節してもよい。実施形態では、異なるタイプの発光粒子をともに混合し基板14に一体化してもよい。励起光の空間変調及び強度変調と併せて、励起光の波長を調節することにより、特定の色特性を備える可視光を基板14において形成できる。例えば、原色に対応する種々発光粒子を特定的に組み合わせて選択的に励起させることにより、ほぼ全ての可視色を基板14から発することができる。
【0020】
DLPプロジェクタの実施形態でDLPプロジェクタから発せられる紫外線の波長は、特定の紫外線パスフィルタを備えるカラーホイールを用いて調節できる。他のプロジェクタ実施形態とレーザ実施形態においても同様の調節技法を使用してもよい。実施形態では、特定色の光を出力するため、それぞれ特定の紫外線波長範囲に対応し特定タイプの発光粒子を励起する複数のプロジェクタと複数のレーザを使用してもよい。
【0021】
図6は、略透明な基板において個別のピクセル領域(例えばストライプ領域26、ストライプ領域28、及びストライプ領域30)に分散する、相異なる可視色に対応する種々の発光粒子の例示図である。実施形態において、基板14は異なるタイプの発光粒子が分散する種々の領域を含んでもよい。例えば、ストライプ領域26には第一のタイプの発光粒子(例えば赤色光に対応する発光粒子)を、ストライプ領域28には第二のタイプの発光粒子(例えば緑色光に対応する発光粒子)を、ストライプ領域30には第三のタイプの発光粒子(例えば青色光に対応する発光粒子)を分散させてもよい。ストライプ領域26、ストライプ領域28、及びストライプ領域30は縞状(即ち列状)に形成されてよい。
【0022】
プロジェクタまたはレーザ(例えばプロジェクタ18またはレーザ20)は、異なるタイプの発光粒子全てを励起し、励起光の空間変調により相異なる色を選択的に照射する励起光波長範囲を使用してもよい。例えば一例の図6では、基板14の所与の領域で緑可視光を発するため、プロジェクタ18またはレーザ20はストライプ領域28の一部(例えば緑色光に対応する発光粒子を含む)を照射してもよい。異なるタイプの発光粒子を空間的に分離する実施形態においては励起光の空間変調によって色を選択できるため、励起光源で励起光の波長を変調させて異なる色を生成する必要はない。
【0023】
同様に、図7に示す実施形態では、異なるタイプの発光粒子を基板14中に分散させる代わりに、基板14の領域(例えばストライプ領域32、ストライプ領域34、及びストライプ領域36)上に異なるタイプの発光粒子を塗布してもよい。図8に示す実施形態では、相異なる可視色に対応した異なるタイプの発光粒子が、行列38の形態で基板14の個別の領域に区切られている。図8は、相異なる色に対応した異なるタイプの光励起粒子を含む個別の行列領域(例えば領域40、領域42、及び領域44)を示す。当業者は、実施形態を逸脱することなく、図6から図8に示すピクセル構成とは異なる、適用可能な他のピクセル構成を推察するであろう。一例の図8は基板14上に塗布された発光粒子を示すものであるが、図6に示す実施形態と同様、発光粒子を基板14中に分散させてもよい。
【0024】
実施形態は、視像またはコンピュータ情報を視覚的に透明なスクリーン上に表示するための方法、材料、構成要素、及び設計に関する。紫外線(UV)又はそれ未満の波長を有する可視像または情報を、膜、コーティング、または板の形態の蛍光スクリーン上に投影するため、光学式プロジェクタを使用してもよい。実施形態では、スクリーンは非投影領域の視覚的透明性又は略透明性を維持したまま、UV又はそれ未満の波長の視像を、より高い波長の可視蛍光像にダウンコンバートする。
【0025】
実施形態ではUVランプ又はそれより低い波長の可視ランプをプロジェクタで使用し、同プロジェクタは液晶ディスプレイ(LCD)であっても、あるいはデジタルライトプロセッサ(DLP)であってもよい。プロジェクタはコンピュータ、PDA、DVD、VCR、TV、その他の情報入力装置へ接続してもよい。実施形態における蛍光スクリーンは、蛍光性有機色素または無機リン光材料で満たされた透明または半透明のガラスまたはプラスチック板でよい。実施形態における蛍光スクリーンは、蛍光性有機色素または無機リン光材料を塗布された透明または半透明のガラスまたはプラスチック板でよい。実施形態における蛍光スクリーンは、蛍光性有機色素または無機リン光材料で満たされた透明または半透明の薄いガラスシートまたはプラスチック膜でよい。実施形態における蛍光スクリーンは、蛍光性有機色素または無機リン光材料を塗布された透明または半透明の薄いガラスシートまたはプラスチック膜でよい。
【0026】
透明または略透明なディスプレイには多くの用途がある。例えば透明または略透明なディスプレイは、自動車、オートバイ、航空機、船等の移動車両の透明または半透明の窓に画像を表示でき、その画像は車両の状態に関する情報であってもよい。現在ダッシュボードの電子ディスプレイに表示されている指示(例えばGPS地図)を車両の窓(例えばフロントガラス、ウインドシールド)に投影できる。運転者は、車両の状態及び指示の少なくとも一方を見るために道路から目をそらさずにすむ。透明または略透明なディスプレイは、透明または半透明の窓に画像または広告を表示でき、そのような透明窓投影表示はあらゆる部屋または建物に適用でき、窓の視界を遮ることなく構造物の窓を通じて情報を効果的に伝達できる。
【0027】
実施形態においては、フルカラーの蛍光投影表示を透明スクリーン上に表示するため、フルカラー(例えば赤、緑、青、すなわちRGB)の分子色素をスクリーンの異なるピクセル領域に置くことができ、各々のピクセルはRGB素子を包含する。実施形態では、プロジェクタからスクリーン上の3組のRGB素子に3つの分離変調UVビームを当てることができる。投射UV光を多色蛍光スクリーン上の各ピクセルの対応するRGB素子に向けて制御し、分割することによって、透明なスクリーン上にフルカラー像を表示できる。
【0028】
実施形態において、スクリーンはまたRGB素子を用いてピクセル化される。各ピクセルはそれぞれRGBに対応した3つの部分を備える。ピクセル化したスクリーンには単一の投射UVビームを照射できる。異なる色に対して種々のRGB混合を得るため、一ピクセル上に同じUV投射ビームをシフトさせて一ピクセル内の一定面積のRGB素子をカバーすることもできる。その結果、ただひとつの投射ビームでフルカラーの投影像を形成できる。一ピクセルのRGBのカラーバランスを計算しスクリーン上の適切なRGB素子面積へ変換でき、次にビームをシフトさせることにより各RGB素子の適切な相対的面積比率をカバーし、ピクセル上に適当な色を表示できる。
【0029】
実施形態における蛍光スクリーンは、蛍光性有機色素または無機リン光材料で満たされた透明または半透明のガラスまたはプラスチック板でよい。実施形態における蛍光スクリーンは、蛍光性有機色素または無機リン光材料が塗布された透明または半透明のガラスまたはプラスチック板でよい。実施形態における蛍光スクリーンは、蛍光性有機色素または無機リン光材料で満たされた透明または半透明の薄いガラスシートまたはプラスチック膜でよい。実施形態における蛍光スクリーンは、蛍光性有機色素または無機リン光材料が塗布された透明または半透明の薄いガラスシートまたはプラスチック膜でよい。
【0030】
蛍光スクリーン用のガラスは、可視光に対し透明または半透明の無機固体を含んでもよい。そのような無機固体の例として酸化物とハロゲン化物がある。ガラスは、ケイ酸塩、ホウケイ酸塩、鉛結晶、アルミナ、シリカ、溶融シリカ、石英、ガラスセラミックス、金属フッ化物、その他同様の材料を含んでもよい。部屋、建物、及び移動車両の少なくとも1つの窓としてこの種のガラスを使用してもよい。
【0031】
蛍光スクリーン用のプラスチックは、可視光に対し透明または半透明の有機及び高分子固体を含んでもよい。蛍光スクリーン用の熱可塑性物質は、透明ゲル等の特別な熱硬化性固体を含んでもよい。プラスチックの例として、ポリアクリル酸、ポリカーボネート、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、PVC、シリコーン、その他同様の材料が挙げられる。
【0032】
ガラス及びプラスチックは、これらを蛍光色素と組み合わせることによって蛍光投射型ディスプレイへと加工してもよい。蛍光色素は、より高いエネルギーの光子を吸収し、より低いエネルギーの光子を発することのできる有機分子または材料である。可視光を発するため、そのような分子は190nmから590nmの典型的波長範囲、または300nmから450nmの波長範囲、UV光又はより低い波長の可視(例えば紫または青)光を吸収してもよい。蛍光色素の例として、ラムダフィジック(Lambda Physik)又はエキシトン(Exciton)をはじめとする、様々な色素メーカーから市販されている色素分子が挙げられる(ただしそれらに限定されない)。透明ディスプレイに使用できる蛍光色素として、ピロメテン、クマリン、ローダミン、フルオレセイン、その他芳香族炭化水素とその誘導体を挙げられる。加えて、透明ディスプレイで使用できる蛍光材料となり得る、不飽和結合を含むポリマーは数多くある。例えばその中には(MEH−PPV、PPV等)、ポリマー発光ダイオード(PLED)等の光電子デバイスに使用されてきたものもある。
【0033】
ガラスまたはプラスチックは、これらをリン光材料と組み合わせることによって、蛍光投射型ディスプレイへと加工してもよい。ダウンコンバージョンのリン光材料として、金属酸化物、金属ハロゲン化物、金属カルコゲン化物(金属硫化物)、またはそれらの混成物、例えば金属酸ハロゲン化物及び金属酸カルコゲン化物等を含む、無機またはセラミック粒子またはナノ粒子が挙げられるが、それらに限定されない。これらの無機リン光材料は蛍光灯及び電子モニタで幅広く適用されてきた。これらは、より短い波長の投射光(例えばUVと青色光)をより高い波長の可視光に変換するのに適用できる。これらを透明のスクリーンまたは窓に分散または塗布して、それに対応したより短い波長の投射光によって励起させることで、可視像を表示できる。
【0034】
蛍光性リン光材料または色素分子は、紫外線(例えば240ナノメートルを越える波長)から青色光(例えば500ナノメートル未満)に及ぶ投射光によって可視光へと励起できる。プロジェクタ用ランプはこの波長範囲で光を発してもよく、そのようなランプは市販されている(例えば日焼け用に使用されているもの)。これらはまたハロゲンランプ、特別な白熱ランプ、そしてアーク蒸気ランプ(例えば水銀、キセノン、重陽子等)であってよい。このようなランプにリン光材料を含ませて、より短い波長のUVをより長い波長のUVに変換するようにしてもよい。
【0035】
投射型蛍光ディスプレイには、金属酸化物ホスト材料(金属ケイ酸塩、金属ホウ酸塩、金属リン酸塩、金属アルミン酸塩)、金属酸ハロゲン化物、酸硫化物、金属ハロゲン化物、金属硫化物、及びカルコゲン化物を含有するリン光材料を適用することができる。蛍光ディスプレイで使用できるリン光材料の一例としてはガーネット系リン光材料(すなわち、Ce添加(Y1−m(Al1−n12(ここで0≦m、n≦1;Aは他の稀土類元素を含み、BはB及びGaの少なくとも一方を含む))がある。さらに、一般的な稀土類元素(例えばEu、Tb、Ce、Dy、Er、Pr、及びTmの少なくとも1つ)及び遷移元素または主族元素(例えばMn、Cr、Ti、Ag、Cu、Zn、Bi、Pb、Sn、及びTlの少なくとも1つ)を蛍光活性化因子として含有するリン光材料を投射型蛍光ディスプレイに適用してもよい。一部の非添加材料(例えば金属、Ca、Zn、Cd、タングステン酸塩、金属バナジウム酸塩、及びZnO)も発光材料であり、投射型蛍光ディスプレイに適用してもよい。
【0036】
有機色素及び無機リン光材料をガラスまたはプラスチックのホスト材料中に充填又は塗布して、蛍光透明スクリーンを作製してもよい。色素分子はホスト材料中に溶解されれば、可視光を拡散せずに或る程度可視光を吸収し、ホスト材料に幾分色を付加し得る。対照的に、リン光材料はその粒子がより大きければ可視光を拡散し、ホスト材料の光透過性に影響を及ぼす。実施形態は、リン光材料粒子の可視光拡散を緩和する種々の手法に関する。実施形態では、リン光材料粒子の粒径を減少させること、リン光材料粒子濃度を低減してホスト材料中で均一に分散させること、そしてリン光材料の屈折率に近い屈折率を有するホスト材料を選択、あるいはホスト材料の屈折率に近い屈折率を有するリン光材料を選択すること等により、拡散を緩和させる。
【0037】
前述の実施形態(例えば略透明な基板に一体化される発光材料)及び利点は一例であって、添付の請求項を制限するものではないことを理解されたい。上記の教示は他の装置及び方法に適用することができ、これは当業者であれば理解できよう。当業者には数多くの代用、変更、及び変形が明らかであろう。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】略透明なディスプレイの例示図である。
【図2】プロジェクタからの励起光で照射される透明なディスプレイの例示図である。
【図3】レーザからの励起光で照射される透明なディスプレイの例示図である。
【図4】略透明な基板中に分散する発光粒子の例示図である。
【図5】略透明な基板の表面の上に堆積した発光粒子の例示図である。
【図6】略透明な基板内の個別ストライプ領域中に分散する、相異なる可視色に対応した異なるタイプの発光粒子の例示図である。
【図7】略透明な基板の個別ストライプ領域上に堆積した、相異なる可視色に対応した異なるタイプの発光粒子の例示図である。
【図8】略透明な基板の個別行列領域の上に堆積した、相異なる可視色に対応した異なるタイプの発光粒子の例示図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明基板一体型の発光材料を備える装置であって、
前記発光材料がプロジェクタからの紫外線の吸収に応じて可視光を発するよう構成される、装置。
【請求項2】
前記プロジェクタが一画像の複数の部分を同時に出力を行うよう構成される、
請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記プロジェクタがデジタルプロジェクタである、
請求項1に記載の装置。
【請求項4】
前記デジタルプロジェクタがマイクロミラーアレイによるプロジェクタである、
請求項3に記載の装置。
【請求項5】
前記マイクロミラーアレイによるプロジェクタが、デジタル光処理プロジェクタである、
請求項4に記載の装置。
【請求項6】
前記デジタルプロジェクタが液晶ディスプレイプロジェクタである、
請求項3に記載の装置。
【請求項7】
前記デジタルプロジェクタが反射型液晶素子プロジェクタである、
請求項3に記載の装置。
【請求項8】
前記プロジェクタがアナログプロジェクタである、
請求項1に記載の装置。
【請求項9】
前記発光材料が蛍光材料である、
請求項1に記載の装置。
【請求項10】
前記発光材料が複数の発光粒子を備える、
請求項1に記載の装置。
【請求項11】
前記複数の発光粒子の各々が約400ナノメートル未満の直径を有する、
請求項10に記載の装置。
【請求項12】
前記複数の発光粒子の各々が約300ナノメートル未満の直径を有する、
請求項11に記載の装置。
【請求項13】
前記複数の発光粒子の各々が約200ナノメートル未満の直径を有する、
請求項12に記載の装置。
【請求項14】
前記複数の発光粒子の各々が約100ナノメートル未満の直径を有する、
請求項13に記載の装置。
【請求項15】
前記複数の発光粒子の各々が個別の分子である、
請求項10に記載の装置。
【請求項16】
赤色光を発する前記複数の発光粒子がユウロピウムを備える、
請求項10に記載の装置。
【請求項17】
緑色光を発する前記複数の発光粒子がテルビウムを備える、
請求項10に記載の装置。
【請求項18】
青色光または黄色光を発する前記複数の発光粒子がセリウムを備える、
請求項10に記載の装置。
【請求項19】
青色光を発する前記複数の発光粒子がエルビウムを備える、
請求項10に記載の装置。
【請求項20】
青色光を発する前記複数の発光粒子が有機蛍光色素に含まれる、
請求項10に記載の装置。
【請求項21】
前記発光材料が:
第一の可視色を発する第一の材料と;
前記第一の可視色とは異なる第二の可視色を発する第二の材料と;
を備える、
請求項1に記載の装置。
【請求項22】
前記第一の材料が前記略透明な基板の第一の領域に一体化され、
前記第二の材料が前記略透明な基板の第二の領域に一体化される、
請求項21に記載の装置。
【請求項23】
前記第一の領域と前記第二の領域とがピクセルである、
請求項22に記載の装置。
【請求項24】
前記ピクセルが縞状に形成される、
請求項23に記載の装置。
【請求項25】
前記ピクセルが行列状に形成される、
請求項23に記載の装置。
【請求項26】
前記第一の可視色が、プロジェクタによって前記第一の領域を選択的に紫外線投射することにより発せられ、
前記第二の可視色が、プロジェクタによって前記第二の領域を選択的に紫外線投射することにより発せられる、
請求項22に記載の装置。
【請求項27】
前記発光材料が、前記第一の可視色と前記第二の可視色とは異なる第三の可視色を発する第三の材料を備える、
請求項21に記載の装置。
【請求項28】
前記第一の可視色、前記第二の可視色、及び前記第三の可視色が原色である、
請求項27に記載の装置。
【請求項29】
前記第一の領域と前記第二の領域において、略同時に選択的に紫外線投射を組み合わせて行うによって第四の色が発せられる、
請求項26に記載の装置。
【請求項30】
前記第四の色が非原色である、
請求項29に記載の装置。
【請求項31】
透明基板一体型の発光材料を備える装置であって:
前記発光材料が紫外線の吸収に応じて可視光を発するよう構成され;
前記発光材料が複数の発光粒子を備え;
前記発光粒子の各々が約400ナノメートル未満の直径を有する、
装置。
【請求項32】
前記複数の発光粒子の各々が約300ナノメートル未満の直径を有する、
請求項31に記載の装置。
【請求項33】
前記複数の発光粒子の各々が約200ナノメートル未満の直径を有する、
請求項32に記載の装置。
【請求項34】
前記複数の発光粒子の各々が約100ナノメートル未満の直径を有する、
請求項33に記載の装置。
【請求項35】
前記複数の発光粒子の各々が個別の分子である、
請求項31に記載の装置。
【請求項36】
前記複数の発光粒子が蛍光材料である、
請求項31に記載の装置。
【請求項37】
赤色光を発する前記複数の発光粒子がユウロピウムを備える、
請求項31に記載の装置。
【請求項38】
緑色光を発する前記複数の発光粒子がテルビウムを備える、
請求項31に記載の装置。
【請求項39】
青色光または黄色光を発する前記複数の発光粒子がセリウムを備える、
請求項31に記載の装置。
【請求項40】
青色光を発する前記複数の発光粒子がエルビウムを備える、
請求項31に記載の装置。
【請求項41】
青色光を発する前記複数の発光粒子が有機蛍光色素に含まれる、
請求項31に記載の装置。
【請求項42】
前記発光材料が:
第一の可視色を発する第一の材料と;
前記第一の可視色とは異なる第二の可視色を発する第二の材料と;
を備える、
請求項31に記載の装置。
【請求項43】
前記第一の材料が前記略透明な基板の第一の領域に一体化され、
前記第二の材料が前記略透明な基板の第二の領域に一体化される、
請求項42に記載の装置。
【請求項44】
前記第一の領域と前記第二の領域とがピクセルである、
請求項43に記載の装置。
【請求項45】
前記ピクセルが縞状に形成される、
請求項44に記載の装置。
【請求項46】
前記ピクセルが行列状に形成される、
請求項44に記載の装置。
【請求項47】
前記ピクセルが紫外線光線からの紫外線の吸収に応じて可視光を発するよう構成される、
請求項44に記載の装置。
【請求項48】
前記紫外線光線は紫外線を発するレーザ装置からのものである、
請求項47に記載の装置。
【請求項49】
前記ピクセルが紫外線光線の空間変調に応じて選択的に可視光を発するよう構成される、
請求項47に記載の装置。
【請求項50】
前記ピクセルが紫外線光線の強度変調に応じて選択的に可視光を発するよう構成される、
請求項47に記載の装置。
【請求項51】
前記第一の可視色が、プロジェクタによって前記第一の領域を選択的に紫外線投射することにより発せられ、
前記第二の可視色が、プロジェクタによって前記第二の領域を選択的に紫外線投射することにより発せられる、
請求項43に記載の装置。
【請求項52】
前記発光材料が、前記第一の可視色と前記第二の可視色とは異なる第三の可視色を発する第三の材料を備える、
請求項42に記載の装置。
【請求項53】
前記第一の可視色、前記第二の可視色、及び前記第三の可視色が原色である、
請求項52に記載の装置。
【請求項54】
前記第一の領域と前記第二の領域において、略同時に選択的に紫外線投射を組み合わせて行うによって第四の色が発せられる、
請求項42に記載の装置。
【請求項55】
前記第四の色が非原色である、
請求項54に記載の装置。
【請求項56】
前記発光材料が前記略透明な基板に等質的に一体化された、
請求項31に記載の装置。
【請求項57】
前記紫外線の強度を調節することにより、前記略透明な基板から略単色の光を異なる強度で発する、
請求項56に記載の装置。
【請求項58】
前記紫外線がブロードバンドUVプロジェクタから出力される、
請求項57に記載の装置。
【請求項59】
前記紫外線がプロジェクタから発生する、
請求項31に記載の装置。
【請求項60】
前記プロジェクタが一画像の複数の部分を同時に出力するよう構成される、
請求項59に記載の装置。
【請求項61】
前記プロジェクタがデジタルプロジェクタである、
請求項59に記載の装置。
【請求項62】
前記デジタルプロジェクタがマイクロミラーアレイによるプロジェクタである、
請求項61に記載の装置。
【請求項63】
前記マイクロミラーアレイによるプロジェクタが、デジタル光処理プロジェクタである、
請求項62に記載の装置。
【請求項64】
前記デジタルプロジェクタが液晶ディスプレイプロジェクタである、
請求項61に記載の装置。
【請求項65】
前記デジタルプロジェクタが反射型液晶素子プロジェクタである、
請求項61に記載の装置。
【請求項66】
前記プロジェクタがアナログプロジェクタである、
請求項59に記載の装置。
【請求項67】
略透明な基板と;
前記透明な基板の透明性を維持したまま、前記透明な基板の可視照射を選択的に発生させて、前記透明な基板に画像を表示する手段と;
を備える、
装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公表番号】特表2008−506972(P2008−506972A)
【公表日】平成20年3月6日(2008.3.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−538441(P2006−538441)
【出願日】平成16年11月3日(2004.11.3)
【国際出願番号】PCT/US2004/036493
【国際公開番号】WO2005/043232
【国際公開日】平成17年5月12日(2005.5.12)
【出願人】(506133699)スーパーイメージング,インコーポレーション (1)
【Fターム(参考)】