説明

透明太陽電池の電極保持体として用いられるチタン酸化物エアロゲル薄膜または厚膜の製造方法

【課題】透明太陽電池の電極保持体として用いられるチタン酸化物エアロゲル膜の製造方法に関し、気孔率及び比表面積の調節を介して最適の効率を有するTiOまたはTiO−SiO薄膜/厚膜を製造する方法に関する。
【解決手段】色素増感型太陽電池の光電子伝達体として超臨界乾燥法を介して比表面積と気孔率が大きいTiO薄膜/厚膜を製造することができることから一般的なスクリーンプリンティング法によって製造されたTiO薄膜/厚膜に比べて吸着される光増感色素の量を増加させることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、透明太陽電池の電極保持体として用いられるチタン酸化物エアロゲル膜の製造方法に関し、気孔率及び比表面積の調節を介して最適の効率を有するTiOまたはTiO−SiO薄膜/厚膜を製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
産業発達による経済成長で国内の電力需要は急激に増加し、これに必要なエネルギー源は大体に外国から輸入されており、電力生産に必要な石油と石炭などの化石燃料使用によって公害問題と気象異変などの環境問題が徐々に深刻になっている。二酸化炭素発生による地球温暖化現象など様々な環境汚染問題解決のために化石燃料の代わりとして清浄エネルギー源の一つである太陽エネルギーに対する関心が集中されている。
【0003】
太陽電池は、構成する物質によってシリコン、化合物半導体を利用した無機素材からなる太陽電池、ナノ結晶酸化物粒子表面に色素が吸着された色素増感型太陽電池(dye−sensitized solar cell)、また有機分子(donor−acceptor)からなる太陽電池に分けられる。
【0004】
現在、太陽電池製造に広く用いられる半導体材料は、単結晶と多結晶を含む結晶質シリコンが主になっている。単結晶シリコンで製作した太陽電池は、エネルギー変換効率が高い一方で価格が高いということが短所で効率が高い点を勘案して主に大規模の発電用として使用を進んでいる。一方、多結晶シリコン太陽電池は、単結晶シリコンに比べて価格は安いが、効率が少し低いため主に家庭用システムなどに利用されている。しかし、単結晶及び多結晶シリコンは、バルク状態の原材料から太陽電池を製作するため、原材料費が高いということから価格の節減面では限界がある。このような問題点を解決するための方案は、ガラスのような値段が安い基板上に薄膜状の太陽電池を蒸着させることであり、商業化のために値段が安い太陽電池で最近では研究が多く進行されていることがナノスケールの半導体金属酸化物粒子製造とこれを活用した色素増感型太陽電池である。
【0005】
色素増感型太陽電池は、伝導性ガラス基板と太陽光を吸収して光電子を発生させる高分子光増感色素、光電子伝達体としてナノ粒子で構成された多孔性TiO、及び、酸化還元用電解質溶液で構成され、その原理は次の通りである。太陽光が電池に入射される場合、光陽子は先に色素高分子によって吸収される。色素は、太陽光吸収によって励起状態になって電子をTiOの伝導帯に送る。電子は、電極に移動して外部回路に流れて電気エネルギーを伝達し、エネルギーを伝達しただけ低いエネルギー状態になって相対電極に移動する。色素は、TiOに伝達した電子数だけ電解質溶液から供給されて元の状態に戻るが、このときに用いられる電解質は、ヨーダイド/トリヨーダイド対(iodide/tri−iodide couple)として酸化還元によって相対電極から電子を受けて色素に伝達する役割を担当する。これによって電池の開回路電圧(open circuit voltage)は、TiO半導体のフェルミエネルギー準位と電解質の酸化還元準位の差によって決定される。
【0006】
色素が太陽光を吸収して発生させる光電子の伝達体として用いられるTiOは、スピンコーティング、浸漬−引き上げコーティング、スクリーンプリンティング法などの低価のコーティング方法でも容易に製造することができ、価格も安くて光エネルギーに安定し且つ有毒ではないという長所を有する。TiO電極は、TiOコロイド溶液を伝導性ガラス基板表面にコーティングした後、450℃程度で加熱して得られる。熱処理過程を介して10〜30nm大きさのTiO粒子が形成されてナノ気孔性構造が得られる。このようなナノ気孔構造は、比表面積を増加させることができるので、単結晶のように表面積が小さな電極に比べて多量の光増感色素を吸着させることができる。
【0007】
最近まで色素増感太陽電池の効率を高めるための研究は進行しており、ここに関する既存の技術としては下記のようなものがある。電池材料として好適ではないルチル(rutile)構造を有するTiOナノ粒子を既存のアナターゼ(anatase)構造のTiOの代りに用いた研究が進行されたが、エネルギー変換効率は5.6%程度で高くなかった。このように従来技術では、色素増感太陽電池の効率を高めることが解決課題だった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、従来の問題点を解決するためになされたものであって、その目的は、超臨界乾燥法を介するTiOエアロゲル製造薄膜/厚膜を得る方法を提示して色素増感型太陽電池の効率増加方案を提供することにある。
【0009】
また、本発明の他の目的は、TiO膜の比表面積が大きいほど色素の吸着量を増加させることができ、気孔の分布が均一であるほど電気的抵抗の減少によって光転換効率を向上させることができるので、TiOエアロゲルの気孔率及び比表面積の調節を介して最適の効率を有するTiOエアロゲル薄膜/厚膜製造方法を提供することにある。
【0010】
また、本発明の他の目的は、既存薄膜より高い透明性と低い電気伝導度を維持することで、高い光電効果(photoelectric effect)を得て、発生された光電子を効率的に伝達させることができるTiOエアロゲル薄膜/厚膜製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上述の目的を達成するために本発明は、(1)チタンアルコキシド、または炭素数1ないし10のアルキルシリケートとチタンアルコキシドをアルコールまたは蒸溜水と反応させてポリマーTiOまたはTiO−SiOゾル、またはコロイド性TiOゾルまたはTiO−SiOゾルを製造する段階と、(2)上記TiOゾルまたはTiO−SiOゾルを熟成させてコーティング方法によってコーティングに好適に粘度を調節する段階と、(3)上記粘度が調節されたTiOまたはTiO−SiOゾルを基板にコーティングさせてTiOまたはTiO−SiO湿潤ゲル膜を製造する段階と、(4)上記TiOまたはTiO−SiO湿潤ゲル膜をアルコール溶媒で熟成させる段階と、(5)上記熟成されたTiOまたはTiO−SiO膜を超臨界乾燥させる段階とを含むことを特徴とする色素増感太陽電池用TiOまたはTiO−SiOエアロゲル膜の製造方法を提供することにある。
【0012】
本発明の一実施形態によれば、上記アルキルシリケートがテトラエトキシシランである。
【0013】
本発明の一実施形態によれば、上記TiO−SiOゾルがTiO:SiO=9:1〜5:5のモル比であることが好ましい。
【0014】
本発明の一実施形態によれば、上記コロイド性TiOまたはTiO−SiOゾルは、蒸溜水:Tiまたは蒸溜水:(Ti+Si)が2〜5:1のモル比で反応させて得られる。ここで、蒸溜水が2より小さい場合、反応が完全に起きなくて湿潤ゼルの構造が弱く、5以上を添加する場合は反応速度が非常に速くて粘度が非常に早く増加してコーティング用ゾルとして好適ではない問題点がある。
【0015】
本発明の一実施形態によれば、上記アルコールがイソプロパノール、エチルアルコールまたはメタノールからなる群から選択されたアルコールであることが好ましい。
【0016】
本発明の一実施形態によれば、上記ポリマーTiOゾルがチタンイソプロポキシドをイソプロパノールに1:20〜60のモル比で溶解させた後、TIP:HO=1:2〜5のモル比、TIP:HNO=1:0.08〜0.25のモル比になるようにHO及び酸性触媒HNOを添加した後に18〜27℃の恒温槽で30分〜2時間撹拌して製造されることができる。ここで、反応時間は、濃度、触媒量などによって調節することができ、ここでチタンイソプロポキシドのイソプロパノール及びHOに対する濃度が非常に薄い場合にはゲルの構造が弱くて超臨界乾燥後の形態を維持しにくく、濃度が非常に高い場合には粘度が非常に早く増加してコーティング用として用いることができない。また、ここで、0.08以下の窒酸を添加すれば、粒子が均等に分散されず、0.25以上ではゾルのゲル化反応が起きなくて湿潤ゼルを製造することができない。
【0017】
本発明の一実施形態によれば、上記スピンコーティング及び浸漬−引き上げコーティング段階前にコーティング性を向上させるために基板表面を表面修飾するか、基板表面に酸化物緩衝膜をコーティングする段階をさらに含むことができる。
【0018】
本発明の一実施形態によれば、上記酸化物緩衝膜が基板上にTi薄膜を蒸着させた後、200〜500℃で急速熱処理させて形成される。500℃以上であれば、ガラス基板の場合に伝導性ガラスの特性が変化することができる。
【0019】
本発明の一実施形態によれば、上記酸化物緩衝膜がTiOまたはSiOゼロゲルを含む酸化物薄膜であることが好ましい。
【0020】
上記粘度調節段階において、コーティング方法がスピンコーティング方法の場合には10〜20cPの粘度、または浸漬−引き上げコーティング方法の場合には3〜5cP粘度に調節することが好ましい。
【0021】
本発明の一実施形態によれば、上記スピンコーティング方法が上記TiOゾルを500〜3000rpm速度で10〜60秒間遂行されることが好ましい。
【0022】
本発明の一実施形態によれば、上記浸漬−引き上げコーティング法が上記TiOゾルをアルコール雰囲気下で基板上に0.5〜40cm/minの速度に遂行できる。
【0023】
上記基板は、シリコンウェハー、スライドガラス伝導性ガラス(ITO、FTO)などが使用可能であり、特に限定されない。
【0024】
上記TiOまたはTiO−SiO湿潤ゲル膜の熟成段階が常温または60℃程度の高温で行われることが好ましい。
【0025】
本発明の一実施形態によれば、上記超臨界乾燥段階が上記熟成されたTiOまたはTiO−SiO膜をアルコール溶媒で満たした容器に入れた後に溶媒の臨界温度及び臨界圧力以上に高温及び高圧で維持して超臨界流体に転移させる段階及び上記超臨界流体を徐々に除去して常温で冷凍させて乾燥されたエオロゲルを得る段階を含むことができる。
【0026】
上記溶媒は、イソプロパノールであり、上記高温及び高圧が窒素ガスを利用して初期圧力350〜400psiで240〜250℃まで加熱して最終圧力1100〜1350psiに維持することが好ましい。
【0027】
イソプロパノールの臨界点が235℃と690psiであるが、それ以上に維持することで超臨界乾燥が行われ、例えば、図2に示すように、気相領域を経ず超臨界領域に入るために初期圧力を加えることが好ましい。一般的に確実な超臨界乾燥のために1100psi以上に維持されば可能である。
【0028】
以下、本発明をより詳しく説明するが、本発明はこれによって制限されない。
【0029】
本発明の一実施形態によれば、本発明は、金属アルコキシドであるチタンイソプロポキシドとイソプロパノールを出発物質として利用してTiOゾルを製造してスピンコーティングに好適な粘度(10−20cP)を有するように調節する技術を開発した。TiOゾルは、チタンイソプロポキシド(TIP、Aldrich、USA)とイソプロパノール(IPA、Yakuri、Japan)を出発物質にして製造された。例えば、一定量のチタンイソプロポキシドをイソプロパノールに溶解させた後、溶液中のTIP:IPA:HO:HNOのモル比が1:50:4:0.08になるように酸性触媒であるHNO水溶液を徐々に添加し、25℃の恒温槽で1時間撹拌して加水分解及び重合反応が完結されるようにした。このように製造されたゾルは、熟成段階を経ってコーティングに好適な粘度を有するように調節される。
【0030】
熟成段階を経て粘度が調節されたポリマーTiOゾルは、透明伝導性ガラス基板やスライドガラス及びシリコンウェハーなどの基板にスピンコーティング及び浸漬−引き上げコーティングの方法でコーティングされる。ゾルの粘度とコーティング時の回転速度及び浸漬−引き上げ速度を調節することで、様々な厚さのTiO湿潤ゲル薄膜を製造することができ、TiO湿潤ゲル薄膜上にゾルを複数回マルチコーティング(multi−coating)することで、TiO湿潤ゲル厚膜を得ることができる。このように得られたTiO湿潤ゲル薄膜/厚膜は、イソプロパノール雰囲気下で乾燥された後、一定時間の間に該当溶媒内で熟成される。(図1参照)一例として、浸漬−引き上げコーティング及びスピンコーティングによって製造された湿潤ゲル薄膜を60℃の乾燥器でIPA溶液の中で熟成させることで、未反応プロピル基と触媒として用いられたHNO及びHOを除去した。薄膜の超臨界乾燥は、熟成過程を経った湿潤ゲル薄膜をイソプロパノールを入れた圧力容器に入れて加熱して235℃、690psi以上の領域で溶媒を超臨界流体に相転移させて除去することで、エアロゲル薄膜/厚膜を製造した。このとき、窒素ガスを用いて初期に400psiの圧力を250℃で1350psiに維持させて溶媒が気体状に相転移することを防止した。
【0031】
このような本発明によるTiOエアロゲルの製造方法は、チタンイソプロポキシドとイソプロパノールを利用してTiOゾルを製造する段階、TiOゾルをスピンコーティング及び浸漬−引き上げコーティングしてそれをゲル化して湿潤ゲルを製造する段階、湿潤ゲルをイソプロパノール内で熟成する段階及び上記湿潤ゲル薄膜/厚膜を超臨界乾燥する段階を含むことを特徴とする。
【0032】
また、湿潤ゲル薄膜/厚膜の構造を強化するためにゾル製造時にテトラエトキシシランを添加してTiO−SiOゾルを製造する段階をさらに含むこともできる。
【0033】
また、ゾルと基板の粘性を向上させるために基板の表面を修飾するか、膜の接着性を向上させるためにTiO及びSiOなどの酸化物緩衝膜(buffer layer)を形成させる段階を含むこともできる。
【0034】
TiOエアロゲル薄膜/厚膜は、スピンコーティング法または浸漬−引き上げコーティング法によって製造されたTiO湿潤ゲル膜を超臨界乾燥法を介して製造される。ゾル−ゲル工程に製造された湿潤ゲルは、数vol%の固相と90%以上の気孔内にアルコールが満たされている構造状態として、大気中で乾燥する場合、液体が蒸発しながら気−液界面にメニスカス(meniscus)が発生して毛細管応力がかかるようになる。したがって、ゲルは収縮するようになり、気孔も消滅する。収縮現象を防止して微細なゲル網目構造を維持させるために湿潤ゲルを溶媒で満たした密閉された圧力容器(autoclave)に入れた後、溶媒の臨界温度と圧力以上の高温高圧に維持すれば、溶媒は超臨界流体に転移される。超臨界流体は、すべての分子が自由に移動することができる状態として、ゲル内部には気−液界面による表面張力がもう存在しなくなる。このような超臨界流体を徐々に除去して常温で冷凍させると、蒸発乾燥から発生する収縮や亀裂が発生しない乾燥されたゲルを得ることができ、これをエアロゲルという。超臨界乾燥法によって得られたTiOエアロゲル薄膜/厚膜は、網目構造をなすTiO粒子の間に別途の結晶粒が成長しないため、既存の方法によって製造された多結晶(polycrystaline)膜のような膜に比べて結晶粒系(grain boundary)の抵抗が非常に小さいことで、電気伝導性が非常に優れる。また、厚さが厚くなっても既存の膜に比べて透明度が優れて高い光触媒効果(photocatalytic effect)及び光電効果(photoelectric effect)を期待することができる。
【0035】
したがって、本発明では、70%以上の高い気孔性と比表面積を有するTiOエアロゲル薄膜/厚膜を製造して太陽光と直接に反応する光増感色素の量を大きく増加させて色素増感型太陽電池の効率を増加させる方法を提供する。
【発明の効果】
【0036】
本発明によれば、色素増感型太陽電池の光電子伝達体として超臨界乾燥法を介して比表面積と気孔率の大きいTiO薄膜/厚膜を製造することができるので、一般的なスクリーンプリンティング法によって製造されたTiO薄膜/厚膜に比較したとき、吸着される光増感色素の量を増加させることができる。
【0037】
また、高分子バインダーなどの添加なしにゾル−ゲル工程と超臨界乾燥法のみを利用して直接TiO薄膜/厚膜を製造することができることので、工程時間を短縮し、生産費用を節減することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0038】
以下、本発明の好ましい実施形態について図面に基づいて説明する。
【0039】
(実施例1)
チタンイソプロポキシド(TIP、Aldrich、USA)とイソプロパノール(IPA、Yakuri、Japan)を出発物質にして製造した。一定量のチタンイソプロポキシドをイソプロパノールに溶解させた後、溶液中のTIP:IPA:HO:HNOのモル比がチタンイソプロポキシド(TIP、Aldrich、USA)とイソプロパノール(IPA、Yakuri、Japan)を出発物質にして製造された。一定量のチタンイソプロポキシドをイソプロパノールに溶解させた後、溶液中のTIP:IPA:HO:HNOのモル比が1:30:3.5:0.08になるように酸性触媒であるHNO水溶液を徐々に添加して25℃の恒温槽で1時間撹拌して加水分解及び重合反応が完結されるようにした。このように製造されたゾルは、スピンコーティングに好適な10〜20cPの粘度を有するまで常温で熟成し、スピンコーティングは製造されたゾルをITOガラス(ITO glass)/スライドガラス(slide glass)/シリコンウエハ(Si wafer)の上に500〜3000rpmの速度で10〜60秒間にコーティングされた(マルチコーティング時には、10回コーティング)。コーティングが完了された湿潤ゲル薄膜/厚膜は、構造強化のためにイソプロパノール雰囲気下で一定時間維持させた後、イソプロパノール内で2週〜4週間熟成され、以後に超臨界乾燥工程を遂行した。超臨界乾燥は、イソプロパノール50mlを圧力容器に入れた後、窒素ガスを利用して初期に400psiの圧力を加え、250℃まで加熱して最終圧力が1350psiになるようにした。超臨界流体の排気は、エアロゲルの亀裂発生可否と密接な関連があり、亀裂が発生しない範囲内でなるべく速い排気速度が好ましい。また、排気速度のみならず、排気の均一性が重要な変数なので、一定排気速度を維持して最終的にTiOエアロゲル薄膜/厚膜を得ることができた。
【0040】
(実施例2)
チタンイソプロポキシドをイソプロパノールに溶解させた後、溶液中のTIP:IPA:HO:HNOのモル比が1:50:4:0.08になるように酸性触媒であるHNO水溶液を徐々に添加して25℃の恒温槽で1時間撹拌して加水分解及び重合反応が完結されるようにした。ゾルの粘度は、3〜5cPの範囲に調節され、浸漬コーティングはイソプロパノール雰囲気下でITOガラス(ITO glass)/スライドガラス(slide glass)/シリコンウエハ(Si wafer)の上に0.5〜40cm/minの引き上げ速度で遂行された。コーティングが完了された湿潤ゲル薄膜/厚膜は、実施例1と同一な方法で熟成及び超臨界乾燥過程を経た後、TiOエアロゲル薄膜/厚膜を得ることができた。
【0041】
(実施例3)
透明伝導性ガラス基板のコーティング性を改善するために基板上に酸化物緩衝膜(bufferlayer)をコーティングしてTiOゾルの接着性及びコーティング性を向上させた。伝導性ガラスであるITOガラス基板上にTi薄膜を蒸着させた後、500℃で急速熱処理をさせてチタン酸化物薄膜を製造した。TiOゾルは、実施例1と同一条件に製造された。また、実施例1とほぼ同一条件でTiOエアロゲル薄膜/厚膜のコーティング及び超臨界乾燥が実施された。
【0042】
(実施例4)
TiOエアロゲルの構造を強化するためにテトラエトキシシラン(TEOS、Fluka、Switzerland)をチタンイソプロポキシド(TIP、Aldrich、USA)とともに出発物質として用いてイソプロパノール(IPA、Yakuri、Japan)を利用してTiO−SiOゾルを製造した。一定量のチタンイソプロポキシドとテトラエトキシシランをイソプロパノールに溶解させた後、溶液中のTIP:TEOS:IPA:HO:HClのモル比が0.9:0.1:30:3.5:0.08になるように酸性触媒であるHNO水溶液を徐々に添加して25℃恒温槽で1時間を撹拌して加水分解及び重合反応が完結されるようにした。TiO−SiO薄膜/厚膜は、実施例1とほぼ同一条件にコーティングされ、超臨界乾燥も同一条件で実施された。
【0043】
(実施例5及び6)
TIP:TEOSの比が5:5、7:3で用いられることのみを除いて実施例3と同一方法で製造した。
【0044】
(比較例1)
750mlの0.1M窒酸溶液に125mlのチタンイソプロポキシド(Titanium isopropoxide:TIP、Aldrich、USA)を一粒ずつ落として激しく反応させると、加水分解によって白色の沈殿物が発生する。このスラリーを80℃で8時間反応させて粒子を分散させてコロイド化させた後、TiOの量が5wt%になるように蒸溜水を添加する。このスラリーをチタニウムオートクレーブ容器に入れた後、200℃〜250℃で水熱合成をさせた後にロータリーエバポレーター(rotary evaporator)を利用して最終的に固体TiOの量が11wt%になるように濃縮させる。このように製造されたTiOスラリーに乾燥時に膜の亀裂を防止するためにポリエチレングリコール(Polyethylene glyco:PEG、molecular weight20000、Merck、Germany)をTiO量の0〜50%まで添加してペースト(paste)を製造した。製造されたペースト(paste)は、FTOガラス(FTO glass)の上にドクターブレード法を利用して塗布し、製造された膜は分当たり20〜50度に昇温して450℃で30分間熱処理した。
【0045】
(実験例1)
実施例4及び実施例5によって製造されたTiO−SiOエアロゲル膜の場合、BET窒素吸着法で測定した結果は、比表面積がそれぞれ300m/g、400m/gで一般的に用いられる常用TiO粉末であるDegussa P−25粉末と比べて、Degussa P−25は比表面積が50m/gと知られていて、本発明によって製造された膜の比表面積が非常に大きくて色素増感効率が高いことが分かる。
【0046】
(実験例2)
比較例の方法によって260℃、250℃でそれぞれ水熱合成して形成された膜と、実施例1によって形成された膜を走査顕微鏡写真を介して観察した(それぞれ図4及び図5)。上記の写真で確認できるように本発明によって製造された膜の気孔性がさらに高いことが分かる。よって、膜の厚さが同じ場合、さらに多量の光増感色素を吸着することができるということが分かる。
【0047】
(実験例3)
本発明の実施例1、4ないし6によって製造された膜のエアロゲルの結晶状をX線回折法によって測定してその結果を図6に示した。TiOの様々な結晶状のうちでもアナターゼ(anatase)状は、色素増感太陽電池の電子伝達体としてもっとも効果的な状態と知られており、本発明による上記膜は、超臨界乾燥後、比較例1と異なって別途の熱処理過程なしもアナターゼ(anatase)状を得ることができるという長所があり、またTiO−SiOエアロゲル結晶状も造成比にかかわらずアナターゼ(anatase)状であることが分かった。
【0048】
(実験例4)
実施例1、4ないし6によって製造された膜のエアロゲル膜の走査顕微鏡写真と比較例1によって製造された膜の走査燎微鏡写真を介して観察した(図3参照)。
【0049】
これによれば、本発明によるエアロゲル膜の気孔が比較例による従来の膜に比べて均一であり、多孔性であることが肉眼で識別可能に観察されることが分かる。即ち、電気的抵抗の減少によって光転換効率を向上させることができるということが分かる。
【0050】
このように本発明は、TiOエアロゲルの気孔率及び比表面積の調節を介して最適の効率を有するTiOエアロゲル薄膜/厚膜製造方法を提供することができるということが分かる。
【0051】
以上、本発明は、上述した特定の好適な実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲で請求する本発明の基本概念に基づき、当該技術分野における通常の知識を有する者であれば、様々な実施変形が可能であり、そのような変形は本発明の特許請求の範囲に属するものである。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】本発明によるTiOまたはTiO−SiOエアロゲル薄膜の製造方法を示す流れ図である。
【図2】イソプロパノールのP−T状態図と実施例1〜6による超臨界乾燥経路を示す図面である。
【図3】本発明の実施例1、4ないし6によるTiOまたはTiO−SiOバルクエアロゲルの微細構造写真である。
【図4】左側は比較例の方法によって260℃で水熱合成(Journal of American Ceramic Society 80(12) 3157−71(1997))で形成された膜の写真であり、右側は実施例1によるTiOエアロゲル膜のSEM写真である。
【図5】左側は比較例の方法によって250℃で水熱合成を実施して形成された膜の写真であり、右側は実施例1によるTiOエアロゲル膜のSEM写真である。
【図6】本発明の実施例1、4ないし6によるTiOまたはTiO−SiOエアロゲルのXRDデータを示す図面である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(1)チタンアルコキシド、または炭素数1ないし10のアルキルシリケートとチタンアルコキシドをアルコールまたは蒸溜水と反応させてポリマーTiOまたはTiO−SiOゾル、またはコロイド性TiOゾルまたはTiO−SiOゾルを製造する段階と、
(2)前記TiOゾルまたはTiO−SiOゾルを熟成させてコーティング方法によってコーティングに好適に粘度を調節する段階と、
(3)前記粘度が調節されたTiOまたはTiO−SiOゾルを基板にコーティングさせてTiOまたはTiO−SiO湿潤ゲル膜を製造する段階と、
(4)前記TiOまたはTiO−SiO湿潤ゲル膜をアルコール溶媒で熟成させる段階と、
(5)前記熟成されたTiOまたはTiO−SiO膜を超臨界乾燥させる段階と、を含むことを特徴とする色素増感太陽電池用TiOまたはTiO−SiOエアロゲル膜の製造方法。
【請求項2】
前記アルキルシリケートがテトラエトキシシランであることを特徴とする請求項1に記載の色素増感太陽電池用TiOまたはTiO−SiOエアロゲル膜の製造方法。
【請求項3】
前記TiO−SiOゾルがTiO:SiO=9:1〜5:5のモル比を有することを特徴とする請求項1に記載の色素増感太陽電池用TiOまたはTiO−SiOエアロゲル膜の製造方法。
【請求項4】
前記コロイド性TiOまたはTiO−SiOゾルは、蒸溜水:Tiまたは蒸溜水:(Ti+Si)が2〜5:1のモル比で反応させて得られることを特徴とする請求項1に記載の色素増感太陽電池用TiOまたはTiO−SiOエアロゲル膜の製造方法。
【請求項5】
前記アルコールがイソプロパノール、エチルアルコールまたはメタノールからなる群から選択されたアルコールであることを特徴とする請求項1に記載の色素増感太陽電池用TiOまたはTiO−SiOエアロゲル膜の製造方法。
【請求項6】
前記ポリマーTiOゾルがチタンイソプロポキシドをイソプロパノールに1:20〜60のモル比で溶解させた後、TIP:HO=1:2〜5のモル比、TIP:HNO=1:0.08〜0.25のモル比になるようにHO及び酸性触媒HNOを添加した後、18〜27℃の恒温槽で30分〜2時間撹拌して製造されることを特徴とする請求項1に記載の色素増感太陽電池用TiOまたはTiO−SiOエアロゲル膜の製造方法。
【請求項7】
前記スピンコーティング及び浸漬−引き上げコーティング段階前にコーティング性を向上させるために基板表面を表面修飾するか、基板表面に酸化物緩衝膜をコーティングする段階をさらに含むことを特徴とする請求項1に記載の色素増感太陽電池用TiOまたはTiO−SiOエアロゲル膜の製造方法。
【請求項8】
前記酸化物緩衝膜が基板上にTi薄膜を蒸着させた後、200〜500℃で急速熱処理させて形成することを特徴とする請求項7に記載の色素増感太陽電池用TiOまたはTiO−SiOエアロゲル膜の製造方法。
【請求項9】
前記酸化物緩衝膜がTiOまたはSiOゼロゲルを含む酸化物薄膜であることを特徴とする請求項7に記載の色素増感太陽電池用TiOまたはTiO−SiOエアロゲル膜の製造方法。
【請求項10】
前記粘度調節段階において、コーティング方法がスピンコーティング方法の場合には、10〜20cPの粘度、または浸漬−引き上げコーティング方法の場合には、3〜5cP粘度に調節する段階であることを特徴とする請求項1に記載の色素増感太陽電池用TiOまたはTiO−SiOエアロゲル膜の製造方法。
【請求項11】
前記スピンコーティング方法が前記TiOゾルを500〜3000rpm速度で10〜60秒間遂行されることを特徴とする請求項10に記載の色素増感太陽電池用TiOまたはTiO−SiOエアロゲル膜の製造方法。
【請求項12】
前記浸漬−引き上げコーティング法が前記TiOゾルをアルコール雰囲気下で基板上に0.5〜40cm/minの速度で遂行されることを特徴とする請求項10に記載の色素増感太陽電池用TiOまたはTiO−SiOエアロゲル膜の製造方法。
【請求項13】
前記TiOまたはTiO−SiO湿潤ゲル膜の熟成段階が常温または60℃程度の高温で行われることを特徴とする請求項1に記載の色素増感太陽電池用TiOまたはTiO−SiOエアロゲル膜の製造方法。
【請求項14】
前記超臨界乾燥段階が、前記熟成されたTiOまたはTiO−SiO膜をアルコール溶媒で満たした密閉容器に入れた後、溶媒の臨界温度及び臨界圧力以上に高温及び高圧に維持して超臨界流体で転移させる段階、及び、
前記超臨界流体を徐々に取り除いて常温で冷凍させて乾燥したエアロゲルを得る段階であることを特徴とする請求項1に記載の色素増感太陽電池用TiOまたはTiO−SiOエアロゲル膜の製造方法。
【請求項15】
前記溶媒がイソプロパノールであり、前記高温及び高圧が窒素ガスを利用して初期圧力350〜400psiで、240〜250℃まで加熱して最終圧力1100〜1350psiで維持させることを特徴とする請求項14に記載の色素増感太陽電池用TiOまたはTiO−SiOエアロゲル膜の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−87911(P2009−87911A)
【公開日】平成21年4月23日(2009.4.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−283657(P2007−283657)
【出願日】平成19年10月31日(2007.10.31)
【出願人】(595069594)韓国電力公社 (10)
【氏名又は名称原語表記】KOREA ELECTRIC POWER CORPORATION
【Fターム(参考)】