透明導電体及び透明発熱体
【課題】視認性と発熱性に優れた透明性の発熱体(透明発熱体)に用いて好適な透明導電体を提供する。
【解決手段】対向して配置された第1電極12a及び第2電極12bと、第1電極12a及び第2電極12b間に配置された透明導電部14とを有する第1透明導電体10Aであって、透明導電部14は、1つの透明フイルム基材上に形成された複数の導電性の金属細線によるメッシュパターン18を有し、このメッシュパターン18は、第1電極12aと第2電極12b間の電気抵抗分布が変化するパターンにて形成されている。
【解決手段】対向して配置された第1電極12a及び第2電極12bと、第1電極12a及び第2電極12b間に配置された透明導電部14とを有する第1透明導電体10Aであって、透明導電部14は、1つの透明フイルム基材上に形成された複数の導電性の金属細線によるメッシュパターン18を有し、このメッシュパターン18は、第1電極12aと第2電極12b間の電気抵抗分布が変化するパターンにて形成されている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両のデフロスタ(霜取り装置)、窓ガラス等の一部として使用可能で、電流を流すことで発熱し発熱シートとしても機能し、また、例えば窓ガラス等に設置された色素増感型太陽電池の電極等としても使用することができる透明導電体と、該透明導電体を用いた透明発熱体に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、車両用灯具の照度低下の要因としては、以下のようなことが挙げられる。
【0003】
(1)前面カバーの外周面への積雪の付着。
【0004】
(2)前面カバーの外周面に雨水や洗車水が付着したまま凍結。
【0005】
(3)光源として消費電力(発生熱量)が少ないにも拘わらず、光量が多いHIDランプの使用による上記(1)(2)の助長。
【0006】
従来、上述した車両用灯具の照度低下を防ぐために、特許文献1及び2記載の構造が提案されている。
【0007】
特許文献1記載の構造は、導通パターンが印刷された透明な電気絶縁性のシート状部材で構成された発熱体を、レンズ成形品にインモールド成形によって固着するものであって、特に、発熱体の導通パターンを貴金属粉及び溶剤可溶な熱可塑性樹脂とを含む組成物で形成するというものである。
【0008】
特許文献2記載の構造は、車両用ランプのレンズ部内に発熱体を付着し、所定の条件下で発熱体に通電し、レンズ部を暖めるようにしている。発熱体はITO(Indium Tin Oxide)のような透明導電膜で構成することが記載されている。
【0009】
また、発電効率を顕著に低下させることなく、電磁波の反射によって生じる悪影響を軽減することができる色素増感型太陽電池として、特許文献3が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2007−26989号公報
【特許文献2】特開平10−289602号公報
【特許文献3】特開2006−190585号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、特許文献1記載の発熱体は、導通パターンの幅が50〜500μmと広く、特に実施例では、0.3mm幅の印刷導線を使用している。この場合、導線があることが肉眼で見えてしまうため、透明性の点で問題がある。
【0012】
発熱体は、窓ガラス(建物の窓ガラスや車両のフロントガラスを含む)にも組み込むことが考えられるが、その場合、透明性が必須要件となることは明らかであり、特許文献1記載の発熱体を使用することはできない。
【0013】
また、このような太い導線を使用する場合は、必要な抵抗値(例えば40オーム前後)を得るために、例えばヘッドランプの前面カバー上を1本の導線をジグザグに引き回して長い導線を形成することが考えられる。しかし、隣接する導線間に電位差を生じ、マイグレーションの原因になるという問題もある。
【0014】
一方、特許文献2記載の発熱体は、ITOのような透明導電膜を使用している。そのため、透明導電膜を曲面成形品の表面に形成する際には、真空中でスパッタする以外に方法がなく、効率やコスト等を考慮すると不利である。
【0015】
また、窓ガラス等に発熱体を組み込む場合、インモールド成形等を用いて、窓ガラス内に透明導電膜が形成されたフイルムを組み込むことが考えられるが、ITOのような透明導電膜はセラミックであることから、広範囲に透明導電膜が形成されたフイルムをインモールド成形工程等に投入する際に割れたり断線するおそれがあり、ハンドリング性に欠けるという問題がある。また、透明導電膜が形成されたフイルムをインモールド成形で曲げると割れるおそれがあり、このため、曲面成形品で形成され、且つ、透明ヒータを設けた例えば車両灯具用前面カバーに適用させることが困難である。
【0016】
このように、従来の発熱体は、車両灯具用前面カバー専用にしたり、窓ガラス専用にするということができず、汎用性がなかった。
【0017】
一方、環境にやさしい車両として、太陽電池、例えば色素増感型太陽電池を搭載することが考えられ、この場合、発電効率を上げるために、色素増感型太陽電池の電極を車両の窓ガラス(フロントガラス等)に設置することが考えられる。電極を窓ガラスに設置する場合、透明性が損なわないことが必須となる。特に、運転者の視線が向けられる部分における透明性を十分に確保することが重要となる。また、太陽電池の電極を窓ガラスに設置する場合、上述した特許文献3にもあるように、電磁波の反射による通信環境等への影響を招くことから、電磁波シールド機能を持たせることも考慮する必要がある。
【0018】
本発明は、かかる事情に鑑みなされたものであり、電流を流すことで発熱シートとして使用する場合に、発熱効率を向上させることができると共に車両用灯具や外灯等による光のぎらつきを防止することができ、しかも、例えば車両のフロントガラスに設置した際に、透明性を損なうことがなく、特に、運転者の視線が向けられる部分での透明性を十分に確保することができる透明導電体及び透明発熱体を提供することを目的とする。
【0019】
また、本発明の他の目的は、太陽電池の電極として使用した場合に、電磁波シールド膜として機能し、さらに、表面抵抗を低く保持して、発電効率の低下を防止することができ、しかも、例えば車両のフロントガラスに設置した際に、透明性を損なうことがなく、特に、運転者の視線が向けられる部分での透明性を十分に確保することができる透明導電体を提供することにある。
【0020】
また、本発明の他の目的は、車両灯具用前面カバー、建物の窓ガラス、車両用の窓ガラス等に適用することが可能で、汎用性に富む透明導電体及び透明発熱体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0021】
本発明の目的は、下記の構成により達成される。
【0022】
[1] 第1の本発明に係る透明導電体は、対向して配置された第1電極及び第2電極と、前記第1電極及び前記第2電極間に配置された透明導電部とを有する透明導電体であって、前記透明導電部は、1つの透明フイルム基材上に形成された複数の導電性の金属細線によるメッシュパターンを有し、前記メッシュパターンは、前記第1電極と前記第2電極間の電気抵抗分布が変化するパターンにて形成されていることを特徴とする。
【0023】
[2] 第1の本発明において、前記第1電極と前記第2電極間に少なくとも第1領域及び第2領域を有し、前記第1領域における電気抵抗分布の最大抵抗値をRm1とし、前記第2領域における電気抵抗分布の最大抵抗値をRm2としたとき、Rm1≠Rm2であることを特徴とする。
【0024】
[3] 第1の本発明において、前記Rm1と前記Rm2の関係が、Rm1<Rm2のとき、前記第1電極から前記第2電極に向かって少なくとも第1領域、第2領域、第1領域の順番で配列されていることを特徴とする。
【0025】
[4] 第1の本発明において、前記第1電極と前記第2電極間に少なくとも第1領域及び第2領域を有し、前記第1領域のメッシュパターンの線幅をd1とし、前記第2領域のメッシュパターンの線幅をd2としたとき、d1≠d2であることを特徴とする。
【0026】
[5] [4]において、前記d1と前記d2の関係が、d1>d2のとき、前記第1電極から前記第2電極に向かって少なくとも第1領域、第2領域、第1領域の順番で配列されていることを特徴とする。
【0027】
[6] 第1の本発明において、前記第1電極と前記第2電極間に少なくとも第1領域及び第2領域を有し、前記第1領域のメッシュパターンの配列ピッチをP1とし、前記第2領域のメッシュパターンの配列ピッチをP2としたとき、P1≠P2であることを特徴とする。
【0028】
[7] [6]において、前記P1と前記P2の関係が、P1<P2のとき、前記第1電極から前記第2電極に向かって少なくとも第1領域、第2領域、第1領域の順番で配列されていることを特徴とする。
【0029】
[8] 第1の本発明において、前記メッシュパターンを構成する前記複数の金属細線のうち、一部の金属細線は、交差部間が少なくとも1つの円弧を有し、且つ、前記円弧の向きが互い違いにして配列された波線形状に形成されていることを特徴とする。
【0030】
[9] 第1の本発明において、前記メッシュパターンは、各メッシュ形状の外周線上であって、且つ、前記メッシュ形状の中心に対して点対称の位置にある任意の一対の接線が互いに平行であることを特徴とする。
【0031】
[10] 第1の本発明において、前記円弧の中心角が75〜105°であることを特徴とする。
【0032】
[11] 第1の本発明において、前記交差部における交差角度がほぼ90°であることを特徴とする。
【0033】
[12] 第1の本発明において、前記メッシュパターンの前記金属細線が、前記透明フイルム基材上に設けられた銀塩感光層を露光して現像することによって形成された金属銀部を有することを特徴とする。
【0034】
[13] 次に、第2の本発明に係る透明発熱体は、上述した第1の本発明に係る透明導電体を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0035】
以上説明したように、電流を流すことで発熱シートとして使用する場合に、発熱効率を向上させることができると共に車両用灯具や外灯等による光のぎらつきを防止することができ、しかも、例えば車両のフロントガラスに設置した際に、透明性を損なうことがなく、特に、運転者の視線が向けられる部分での透明性を十分に確保することができる。
【0036】
また、本発明に係る透明導電体によれば、太陽電池の電極として使用した場合に、電磁波シールド膜として機能し、さらに、表面抵抗を低く保持して、発電効率の低下を防止することができ、しかも、例えば車両のフロントガラスに設置した際に、透明性を損なうことがなく、特に、運転者の視線が向けられる部分での透明性を十分に確保することができる。
【0037】
また、本発明に係る透明導電体及び透明発熱体によれば、車両灯具用前面カバー、建物の窓ガラス、車両用の窓ガラス等に適用することが可能で、汎用性に富む。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】第1透明導電体(第1透明発熱体)の一構成例を示す平面図である。
【図2】第1透明導電体の第1メッシュパターンを一部省略して示す平面図である。
【図3】第1透明導電体の第2メッシュパターンを一部省略して示す平面図である。
【図4】第1透明導電体における電極間の電気抵抗特性を示す図である。
【図5】第2透明導電体(第2透明発熱体)の一構成例を示す平面図である。
【図6】第2透明導電体の第1メッシュパターンを一部省略して示す平面図である。
【図7】第2透明導電体の第2メッシュパターンを一部省略して示す平面図である。
【図8】第2透明導電体のメッシュパターンを模式的に示す説明図である。
【図9】第3透明導電体(第3透明発熱体)の一構成例を示す平面図である。
【図10】第3透明導電体の第1メッシュパターンを一部省略して示す平面図である。
【図11】第3透明導電体のメッシュパターンを模式的に示す説明図である。
【図12】第4透明導電体(第4透明発熱体)の一構成例を示す平面図である。
【図13】第4透明導電体の第1メッシュパターンを一部省略して示す平面図である。
【図14】図14A〜図14Eは本実施の形態に係る透明導電体の第1の製造方法を示す工程図である。
【図15】図15A及び図15Bは本実施の形態に係る透明導電体の第2の製造方法を示す工程図である。
【図16】図16A及び図16Bは本実施の形態に係る透明導電体の第3の製造方法を示す工程図である。
【図17】本実施の形態に係る透明導電体の第4の製造方法を示す工程図である。
【発明を実施するための形態】
【0039】
以下、本発明に係る透明導電体及び透明発熱体の実施の形態例を図1〜図17を参照しながら説明する。
【0040】
先ず、第1の本実施の形態に係る透明導電体(以下、第1透明導電体10Aと記す)は、車両のデフロスタ(霜取り装置)や、窓ガラス等の一部として使用可能な透明導電体である。この第1透明導電体10Aは、電流を流すことで発熱する透明発熱体としても機能する。
【0041】
そして、この第1透明導電体10Aは、図1に示すように、図1上、対向して配置された第1電極12a及び第2電極12bと、これら第1電極12a及び第2電極12b間に配置された透明導電部14とを有する。図1では、自動車のフロントガラス15(二点鎖線で示す)内に第1透明導電体10Aを設置した例を示し、フロントガラス15の上部に第1電極12aが配置され、下部に第2電極12bが配置された例を示している。なお、フロントガラス15内に第1透明導電体10Aを設置する方法としては、例えばフロントガラス15を構成する2枚の貼合せガラスの間に第1透明導電体10Aを設置することが好ましく採用される。
【0042】
そして、透明導電部14は、1つの透明フイルム基材16(図14E参照)上に形成された複数の導電性の金属細線によるメッシュパターン18を有する。メッシュパターン18は、第1電極12aと第2電極12b間の電気抵抗分布が変化するパターンにて形成されている。
【0043】
具体的には、先ず、メッシュパターン18のうち、図1上、上部(第1電極12a寄り)に位置している第1領域20aと、中央部に位置している第2領域20bと、下部(第2電極12b寄り)に位置している第3領域20cに注目する。
【0044】
第1領域20aのパターンと第3領域20cのパターンはほぼ同じメッシュパターン(第1メッシュパターン18Aと記す)であり、第2領域20bのパターンは第1メッシュパターン18Aとは異なるメッシュパターン(第2メッシュパターン18Bと記す)となっている。
【0045】
第1メッシュパターン18Aは、図2に示すように、一方向(図2においてx方向)に第1ピッチL1で並ぶ複数の直線状の第1金属細線22aと、他方向(図2においてy方向)に第2ピッチL2で並ぶ複数の直線状の第2金属細線22bとがそれぞれ交差して形成されたメッシュパターンを有する。第1金属細線22aと第2金属細線22bの交差角度はほぼ90°とされている。交差角度の好ましい値を「ほぼ90°」としたのは、製造ばらつきを考慮したものであって、理想的には、交差角度は90°であることが望ましい。なお、第1ピッチL1及び第2ピッチL2は、150μm以上6000μm以下から選択可能である。また、第1金属細線22a及び第2金属細線22bの線幅dは、5μm以上200μmから選択可能である。もちろん、透明性を向上させたい場合は、5μm以上50μm以下から選択してもよい。
【0046】
第1ピッチL1という表現は、全ての第1金属細線22aが一定間隔で並ぶことを示すが、一部の第1金属細線22aについて、第1ピッチL1の長さを変えてもよい。この場合、隣り合う第1金属細線22aの間隔と表現した方が適切となる。これは、第2金属細線22bについても同様である。従って、隣り合う第1金属細線22aの間隔並びに隣り合う第2金属細線22bの間隔は、150μm以上6000μm以下が好ましく、さらに好ましくは、300μm以上1000μm以下である。
【0047】
一方、第2メッシュパターン18Bは、図3に示すように、上述した第1メッシュパターン18Aとほぼ同じパターンを有するが、交差部24の第1金属細線22a及び第2金属細線22bに沿った配列ピッチが、第1メッシュパターンの2倍のピッチである点で異なる。すなわち、第1メッシュパターン18Aの1つの開口部30の開口面積をAa、第2メッシュパターン18Bの1つの開口部30の開口面積をAbとしたとき、
Ab=4×Aa
の関係を有するように第2メッシュパターン18Bが形成されている。
【0048】
そして、図1に示すように、この第1透明導電体10Aを第1透明発熱体32Aとして使用する場合は、例えば第1電極12aから第2電極12bに電流を流す。これにより、第1透明発熱体32Aが発熱し、第1透明発熱体32Aに接する又は第1透明発熱体32Aを組み込んだ加熱対象物(例えば、建物の窓ガラス、車両用の窓ガラス、車両用灯具の前面カバー等)が加熱される。その結果、加熱対象物に付着していた雪等が取り除かれることになる。
【0049】
ここで、メッシュパターン18の第1電極12aと第2電極12b間の電気抵抗分布を考慮したとき、第1領域20a及び第3領域20cにおける電気抵抗分布は緩やかな分布となり、第2領域における電気抵抗分布は中央部の抵抗値が他よりも高くなった分布となる。
【0050】
すなわち、図4に示すように、第1領域20aにおける電気抵抗分布の最大抵抗値をRm1、第2領域20bにおける電気抵抗分布の最大抵抗値をRm2、第3領域20cにおける電気抵抗分布の最大抵抗値をRm3としたとき、
Rm1≒Rm3<Rm2
となる。
【0051】
従って、第1透明導電体10Aの第1電極12aと第2電極12b間に一定電圧を印加して、例えば第1電極12aから第2電極12bに向かって電流を流したとき、メッシュパターン18の第2領域20bの単位時間当たりの発熱量(発熱効率)が他の部分(第1領域20a及び第3領域20c)よりも多くなる。また、第2領域20bは、開口部30の開口面積Abが他の部分(第1領域20a及び第3領域20c)の開口面積Aaよりも大きいことから、第2領域20bの可視光透過率は他の部分よりも高くなり、より透光性が向上する。例えば第2領域20bの可視光透過率は85%以上99%以下であり、その他の部分は70%以上85%以下となる。
【0052】
このように、第1透明導電体10Aは、局部的に発熱効率及び透光性を向上させることができることから、第1透明発熱体32Aとして例えば窓ガラスに適用する場合は、窓ガラスのうち、雪の溶解を早めたい箇所、透明性が必要な箇所等に応じて、第1メッシュパターン18A及び第2メッシュパターン18Bの配置を決定すればよい。特に、車両の窓ガラス(フロントガラス)に適用した場合は、運転者と対向する部分は、雪の溶解を早めたい箇所で、且つ、透明性が必要な箇所であり、しかも、電流の経路が長くなることから、第2メッシュパターン18Bを配置し、その周りに第1メッシュパターン18Aを配置すればよい。
【0053】
ただ、運転者と対向する部分のみに第2メッシュパターン18Bを配置した場合(例えば第2領域20bの中央部のみに第2メッシュパターン18Bを配置した場合)、電流が第2メッシュパターン18Bを避けて流れるおそれがあることから、第2領域20bの全域に第2メッシュパターン18Bを配置することで、第2メッシュパターン18Bにも電流が流れることになり、運転者と対向する部分の発熱効率を高め、透光性を向上させることが可能となる。
【0054】
また、第1透明導電体は、金属細線の線幅を1μm以上、40μm以下にでき、金属細線の配列ピッチを0.1mm以上、50mm以下にすることができることから、透明性の点で優れる。
【0055】
従来のように、線状発熱体をジグザグに引き回す構成の場合は、隣接する導線間で電位差が生じ、マイグレーションの原因になるという問題があったが、メッシュ形状であれば、隣接する金属細線間は初めから短絡状態であるためマイグレーションがあっても問題にならない。
【0056】
また、メッシュパターン18を、展性、延性に優れた金属細線等で構成することができるため、最小曲率半径が300mm以下の三次元曲面に沿って形成することも可能である。
【0057】
上述の例では、第2領域20bに形成される第2メッシュパターン18Bの第1ピッチL1及び第2ピッチL2を、第1領域20a及び第3領域20cに形成される第1メッシュパターン18Aの第1ピッチL1及び第2ピッチL2の2倍にした例を示したが、これに限らず、運転者と対向する部分の発熱効率を高め、透光性を向上させることができれば、正の実数倍でもよい。
【0058】
また、第1メッシュパターン18A及び第2メッシュパターン18Bの各第1ピッチL1をほぼ同じにし、且つ、各第2ピッチL2をほぼ同じにして、第1メッシュパターン18Aを構成する第1金属細線22a及び第2金属細線22bの線幅dを、第2メッシュパターン18Bを構成する第1金属細線22a及び第2金属細線22bの線幅dよりも大きくするようにしてもよい。
【0059】
もちろん、第2メッシュパターン18Bの第1ピッチL1及び第2ピッチL2を、第1メッシュパターン18Aよりも大きく設定し、且つ、第2メッシュパターン18Bの線幅dを、第1メッシュパターン18Aよりも小さくするようにしてもよい。
【0060】
次に、第2の実施の形態に係る透明導電体(以下、第2透明導電体10Bと記す)について図5〜図8を参照しながら説明する。
【0061】
この第2透明導電体は、図5に示すように、上述した第1透明導電体10Aとほぼ同様の構成を有するが、第1メッシュパターン18A及び第2メッシュパターン18Bが以下のように異なる。
【0062】
すなわち、第1メッシュパターン18Aを主体に説明すると、第1メッシュパターン18Aにおける交差部24間の第1金属細線22a及び第2金属細線22bは、少なくとも1つの湾曲を有する波線形状に形成されている。
【0063】
特に、この第1メッシュパターン18Aは、湾曲が円弧状であって、交差部24間に2つの円弧26がそれぞれ山谷の方向を逆にして連続形成された形状を有する。各円弧26はそれぞれ中心角が75°〜105°とされている。好ましくはほぼ90°である。また、第1金属細線22aと第2金属細線22bの交差角度はほぼ90°とされている。中心角の好ましい値並びに交差角度の好ましい値を「ほぼ90°」としたのは、製造ばらつきを考慮したものであって、理想的には、中心角及び交差角度は90°であることが望ましい。
【0064】
また、上述の波線形状は、一定の周期を有する。周期は、円弧26の配列周期をいう。すなわち、2つの円弧26がそれぞれ山谷の方向を逆にして連続配列された長さを1周期としている。図6の例では、交差部24間を1周期とした例を示している。1周期は、50μm〜2000μmが好ましい。ここで、交差部24の第1金属細線22a及び第2金属細線22bに沿った配列ピッチを、波線形状の周期で表すことも可能である。では、図6では、交差部24の配列ピッチは波線形状の1周期に相当することになる。従って、「交差部24の配列ピッチを、波線形状のn周期(nは実数)に規定する」として製造することも可能となる。このようなことから、上述の波線形状は、一定の周期を有するようにしているが、平行に隣接する波線形状の周期をそれぞれ異ならせてメッシュパターンを形成するようにしてもよい。
【0065】
また、第1金属細線22a及び第2金属細線22bの波線形状は、一定の振幅hを有する。振幅hは、互いに隣接する2つの交差部24を結んだ仮想線28を考えたとき、波線形状の山の頂上から仮想線28に垂線を引いたとき、山の頂上と交点(垂線と仮想線28との交点)間の距離を指す。振幅hは、10μm〜500μmが好ましい。本実施の形態では、第1金属細線22a及び第2金属細線22bの波線形状は、一定の振幅を有するようにしているが、交差部24間に並ぶ2つの円弧26の各振幅hをそれぞれ異ならせてもよいし、平行に隣接する波線形状の各円弧26の振幅を異ならせてもよい。
【0066】
また、この第1メッシュパターン18Aは、図6に示すように、1つの開口部30と、該1つの開口部30を囲む4つの金属細線の組み合わせ形状をメッシュ形状Mと定義したとき、図8に模式的に示すように、交差部24の配列に沿って隣接する任意の2つのメッシュ形状M1及びM2の各中心C1及びC2を結ぶ線分のうち、一方のメッシュ形状M1の中心から交差部24までの第1線分の長さLaと、他方のメッシュ形状M2の中心から交差部24までの第2線分の長さLbとが同じになっている。
【0067】
また、図8に示すように、例えば第2金属細線22bの延在方向に沿って隣接する任意の2つのメッシュ形状M3及びM4の各中心C3及びC4を結ぶ線分のうち、一方のメッシュ形状M3の中心C3から第1金属細線22aまでの第3線分の長さLcと、他方のメッシュ形状M4の中心C4から第1金属細線22aまでの第4線分の長さLdとが同じである。
【0068】
さらに、図8に示すように、各メッシュ形状Mの外周線上であって、且つ、メッシュ形状Mの中心Cに対して点対称の位置にある任意の一対の接線が互いに平行となっている。具体的には、図8において、例えば第1の一対の接線(1)(1)、第2の一対の接線(2)(2)、第3の一対の接線(3)(3)が挙げられているが、各一対の接線がそれぞれ互いに平行となっており、しかも、接線の方向は、第1の一対の接線(1)(1)、第2の一対の接線(2)(2)、第3の一対の接線(3)(3)でそれぞれ異なっている。光の屈折や回折は接線方向に強く現れるが、第2透明導電体10Bでは、異なった接線方向が多数組み合わされた形態となるため、光の屈折や回折が拡散され、これにより、ぎらつきが目立たなくなる。
【0069】
一方、第2メッシュパターン18Bは、図7に示すように、上述した第1メッシュパターン18Aとほぼ同じパターンを有するが、交差部24の第1金属細線22a及び第2金属細線22bに沿った配列ピッチが、波線形状の2周期に相当している点で異なる。すなわち、第1メッシュパターン18Aの1つの開口部30の開口面積をAa、第2メッシュパターン18Bの1つの開口部30の開口面積をAbとしたとき、
Ab=4×Aa
の関係を有するように第2メッシュパターン18Bが形成されている。
【0070】
この第2メッシュパターンにおいても、図8と同様の関係を有することから、光の屈折や回折が拡散され、ぎらつきが目立たなくなる。
【0071】
そして、図5に示すように、この第2透明導電体10Bを第2透明発熱体32Bとして使用する場合は、例えば第1電極12aから第2電極12bに電流を流す。これにより、第2透明発熱体32Bが発熱し、第2透明発熱体32Bに接する又は第2透明発熱体32Bを組み込んだ加熱対象物(例えば、建物の窓ガラス、車両用の窓ガラス、車両用灯具の前面カバー等)が加熱される。その結果、加熱対象物に付着していた雪等が取り除かれることになる。
【0072】
このように、第2透明導電体10Bにおいては、上述した第1透明導電体10Aと同様の効果を有するほか、以下の効果を有する。
【0073】
すなわち、第2透明導電体10Bにおいては、メッシュパターン18は、ほとんど直線部分を有さないことから、メッシュパターン18の交差部24上に回折ポイントが直線状に並ぶということがなくなり、交差部24上での干渉光の強度は小さくなる。これは、第1金属細線22a及び第2金属細線22b上でも同様であり、第1金属細線22a及び第2金属細線22b上での干渉光の強度も小さくなる。すなわち、メッシュ形状Mによる回折光の干渉によるぎらつき等を抑制することができる。従って、第2透明導電体10Bは、例えば窓ガラス(建物、車両用の窓ガラス)や車両用灯具の前面カバーに取り付けられる第2透明発熱体32Bとして好適となる。なお、波線形状への直線部分の形成は、適用する対象(窓ガラス、車両用灯具の前面カバー等)や波線形状の周期や振幅等を考慮して適宜選択すればよい。このことから、波線形状として正弦波曲線を採用してもよい。
【0074】
次に、第3の実施の形態に係る透明導電体(以下、第3透明導電体10Cと記す)について図9〜図11を参照しながら説明する。
【0075】
この第3透明導電体10Cは、図9に示すように、上述した第2透明導電体10Bとほぼ同様の構成を有するが、第1メッシュパターン18A及び第2メッシュパターン18Bが以下のように異なる。
【0076】
すなわち、第1メッシュパターン18Aを主体に説明すると、第1メッシュパターン18Aは、図10に示すように、複数の第1金属細線22aのうち、1つ置きの第1金属細線22a1(一方の第1金属細線22a1)は、湾曲が円弧状であって、交差部24間に2つの円弧26がそれぞれ山谷の方向を逆にして連続形成された形状を有する。複数の第1金属細線22aのうち、第1金属細線22a1以外の第1金属細線22a2(他方の第1金属細線22a2)は、湾曲が円弧状であって、交差部24間に4つの円弧26がそれぞれ山谷の方向を逆にして連続形成された形状を有する。
【0077】
ここで、円弧の配列周期、すなわち、2つの円弧26がそれぞれ山谷の方向を逆にして連続配列された長さを1周期としたとき、一方の第1金属細線22a1の交差部間の円弧の配列周期は1周期、他方の第1金属細線22a2の交差部間の円弧の配列周期は2周期となっている。
【0078】
つまり、第3透明導電体10Cは、平行に隣り合う第1金属細線22a(一方の第1金属細線22a1及び他方の第1金属細線22a2)の各円弧の配列周期がそれぞれ異なる。
【0079】
これは第2金属細線22bにおいても同様であり、一方の第2金属細線22b1における交差部24間の円弧の配列周期は1周期であり、他方の第2金属細線22b2における交差部24間の円弧の配列周期は2周期となっている。
【0080】
もちろん、一方の第1金属細線22a1における交差部24間の円弧の配列周期をi周期、他方の第1金属細線22a2における交差部24間の円弧の配列周期をj周期とし、一方の第2金属細線22b1における交差部24間の円弧の配列周期をp周期、他方の第2金属細線22b2における交差部24間の円弧の配列周期をq周期としたとき、以下の関係を有するようにしてもよい。
【0081】
(1) i≠j、i=p、j=q
(2) i≠j、i≠p、j=q、p≠q
(3) i≠j、i=p、j≠q、p≠q
(4) i≠j、i≠p、j≠q、p≠q
また、この第3透明導電体10Cは、図11に模式的に示すように、交差部24の配列に沿って隣接する任意の2つのメッシュ形状M1及びM2の各中心C1及びC2を結ぶ線分のうち、一方のメッシュ形状M1の中心から交差部24までの第1線分の長さLaと、他方のメッシュ形状M2の中心から交差部24までの第2線分の長さLbとが同じになっている。
【0082】
また、図11に示すように、例えば第2金属細線22bの延在方向に沿って隣接する任意の2つのメッシュ形状M3及びM4の各中心C3及びC4を結ぶ線分のうち、一方のメッシュ形状M3の中心C3から第1金属細線22aまでの第3線分の長さLcと、他方のメッシュ形状M4の中心C4から第1金属細線22aまでの第4線分の長さLdとが同じである。
【0083】
この第3透明導電体10Cにおいても、局部的に発熱効率及び透光性を向上させることができることから、第3透明発熱体32C(図9参照)として例えば窓ガラスに適用する場合は、窓ガラスのうち、雪の溶解を早めたい箇所、透明性が必要な箇所等に応じて、第1メッシュパターン18A及び第2メッシュパターン18Bの配置を決定すればよい。
【0084】
また、この第3透明導電体10Cにおいても、メッシュパターン18は、ほとんど直線部分を有さないことから、回折光の干渉によるぎらつき等をさらに低減することができる。
【0085】
次に、第4の実施の形態に係る透明導電体(以下、第4透明導電体10Dと記す)について図12及び図13を参照しながら説明する。
【0086】
この第4透明導電体10Dは、図12に示すように、上述した第3透明導電体10Cとほぼ同様の構成を有するが、第1メッシュパターン18A及び第2メッシュパターン18Bが以下のように異なる。
【0087】
すなわち、第1メッシュパターン18Aを主体に説明すると、第1メッシュパターン18Aは、図13に示すように、平行に隣り合う第1金属細線22a1及び22a2のうち、一方の第1金属細線22a1は各交差部24間が少なくとも1つの湾曲(例えば円弧26)を有する波線形状に形成され、他方の前記第1金属細線22a2は直線状に形成されている。
【0088】
同様に、平行に隣り合う第2金属細線22b1及び22b2のうち、一方の第2金属細線22b1は各交差部24間が少なくとも1つの湾曲(例えば円弧26)を有する波線形状に形成され、他方の第2金属細線22b2は直線状に形成されている。
【0089】
なお、一方の第1金属細線22a1及び一方の第2金属細線22b1の各波線形状の周期は1周期となっている。
【0090】
この第4透明導電体10Dにおいても、局部的に発熱効率及び透光性を向上させることができることから、第4透明発熱体32D(図12参照)として例えば窓ガラスに適用する場合は、窓ガラスのうち、雪の溶解を早めたい箇所、透明性が必要な箇所等に応じて、第1メッシュパターン18A及び第2メッシュパターン18Bの配置を決定すればよい。
【0091】
また、この第4透明導電体10Dにおいては、メッシュパターン18のうち、直線部分を有さない部分においては、メッシュパターン18の交差部24上に回折ポイントが直線状に並ぶということがなくなることから、メッシュ形状による回折光の干渉によるぎらつき等を抑制することができ、例えば窓ガラス(建物、車両用の窓ガラス)や車両用灯具の前面カバーに取り付けられる透明発熱体として好適となる。
【0092】
次に、第1透明導電体10A〜第4透明導電体10D(総称して透明導電体10と記す)の製造方法について図14A〜図17を参照しながら説明する。
【0093】
第1の製造方法は、透明フイルム基材16上に設けられた銀塩感光層を露光し、現像、定着することによって形成された金属銀部と、該金属銀部に担持された導電性金属にてメッシュパターン18を形成する。
【0094】
具体的には、図14Aに示すように、ハロゲン化銀36(例えば臭化銀粒子、塩臭化銀粒子や沃臭化銀粒子)をゼラチン38に混ぜてなる銀塩感光層40を透明フイルム基材16上に塗布する。なお、図14A〜図14Cでは、ハロゲン化銀36を「粒々」として表記してあるが、あくまでも本発明の理解を助けるために誇張して示したものであって、大きさや濃度等を示したものではない。
【0095】
その後、図14Bに示すように、銀塩感光層40に対してメッシュパターン18の形成に必要な露光を行う。ハロゲン化銀36は、光エネルギーを受けると感光して「潜像」と称される肉眼では観察できない微小な銀核を生成する。
【0096】
その後、潜像を肉眼で観察できる可視化された画像に増幅するために、図14Cに示すように、現像処理を行う。具体的には、潜像が形成された銀塩感光層40を現像液(アルカリ性溶液と酸性溶液のどちらもあるが通常はアルカリ性溶液が多い)にて現像処理する。この現像処理とは、ハロゲン化銀粒子ないし現像液から供給された銀イオンが現像液中の現像主薬と呼ばれる還元剤により潜像銀核を触媒核として金属銀に還元されて、その結果として潜像銀核が増幅されて可視化された銀画像(現像銀42)を形成する。
【0097】
現像処理を終えたあとに銀塩感光層40中には光に感光できるハロゲン化銀36が残存するのでこれを除去するために図14Dに示すように定着処理液(酸性溶液とアルカリ性溶液のどちらもあるが通常は酸性溶液が多い)により定着を行う。
【0098】
この定着処理を行うことによって、露光された部位には金属銀部44が形成され、露光されていない部位にはゼラチン38のみが残存し、光透過性部46となる。すなわち、透明フイルム基材16上に金属銀部44と光透過性部46との組み合わせが形成されることになる。
【0099】
ハロゲン化銀36として臭化銀を用い、チオ硫酸塩で定着処理した場合の定着処理の反応式は以下の通りである。
AgBr(固体)+2個のS2O3イオン → Ag(S2O3)2
(易水溶性錯体)
【0100】
すなわち、2個のチオ硫酸イオンS2O3とゼラチン38中の銀イオン(AgBrからの銀イオン)が、チオ硫酸銀錯体を生成する。チオ硫酸銀錯体は水溶性が高いのでゼラチン38中から溶出されることになる。その結果、現像銀42が金属銀部44として定着されて残ることになる。
【0101】
従って、現像工程は、潜像に対し還元剤を反応させて現像銀42を析出させる工程であり、定着工程は、現像銀42にならなかったハロゲン化銀36を水に溶出させる工程である。詳細は、T.H.James, The Theory of the Photographic Process, 4th ed., Macmillian Publishing Co.,Inc, NY,Chapter15, pp.438−442. 1977を参照されたい。
【0102】
なお、現像処理は多くの場合アルカリ性溶液で行われることから、現像処理工程から定着処理工程に入る際に、現像処理にて付着したアルカリ溶液が定着処理溶液(多くの場合は酸性溶液である)に持ち込まれるため、定着処理液の活性が変わるといった問題がある。また、現像処理槽を出た後、膜に残留した現像液により意図しない現像反応がさらに進行する懸念もある。そこで、現像処理後で、定着処理工程に入る前に、酢酸(酢)溶液等の停止液で銀塩感光層40を中和もしくは酸性化することが好ましい。
【0103】
そして、図14Eに示すように、例えばめっき処理(無電解めっきや電気めっきを単独ないし組み合わせる)を行って、金属銀部44のみに導電性金属48を担持させることによって、透明フイルム基材16上に金属銀部44と、該金属銀部44に担持された導電性金属48にて第1金属細線22a及び第2金属細線22bによるメッシュパターン18が形成されることになる。
【0104】
ここで、上述した銀塩感光層40を用いた方法(銀塩写真技術)と、フォトレジストを用いた方法(レジスト技術)との違いを説明する。
【0105】
レジスト技術では、露光処理により光重合開始剤が光を吸収して反応が始まりフォトレジスト膜(樹脂)自体が重合反応して現像液に対する溶解性の増大又は減少させ、現像処理により露光部分又は未露光部分の樹脂を除去する。なお、レジスト技術で現像液とよばれる液は還元剤を含まず、未反応の樹脂成分を溶解する例えばアルカリ性溶液である。一方、本発明の銀塩写真技術の露光処理では上記に記載したように、光を受けた部位のハロゲン化銀36内において発生した光電子と銀イオンからいわゆる「潜像」と呼ばれる微小な銀核が形成され、その潜像銀核が現像処理(この場合の現像液は必ず現像主薬と呼ばれる還元剤を含む)により増幅されて可視化された銀画像になる。このように、レジスト技術と銀塩写真技術とでは、露光処理から現像処理での反応が全く異なる。
【0106】
レジスト技術の現像処理では露光部分又は未露光部分の重合反応しなかった樹脂部分が除去される。一方、銀塩写真技術の現像処理では、潜像を触媒核にして現像液に含まれる現像主薬と呼ばれる還元剤により還元反応がおこり、目に見える大きさまで現像銀42が成長するものであって、未露光部分のゼラチン38の除去は行われない。このように、レジスト技術と銀塩写真技術とでは、現像処理での反応も全く異なる。
【0107】
なお、未露光部分のゼラチン38に含まれるハロゲン化銀36は、その後の定着処理によって溶出されるものであって、ゼラチン38自体の除去は行われない。
【0108】
このように、銀塩写真技術では反応(感光)主体がハロゲン化銀であるのに対し、レジスト技術では光重合開始剤である。また、現像処理では、銀塩写真技術ではバインダ(ゼラチン38)は残存するが、レジスト技術ではバインダがなくなる。このような点で、銀塩写真技術とフォトレジスト技術は大きく相違する。
【0109】
そして、銀塩感光層40に対する露光にて使用されるマスクは、メッシュパターン18、すなわち、交差部24間の金属細線が少なくとも1つの湾曲を有する波線形状に形成されたメッシュパターン18に対応したマスクパターンを有するようにしてもよい。
【0110】
あるいは、銀塩感光層40に対するデジタル書込み露光によって、銀塩感光層40に、メッシュパターン18を露光するようにしてもよい。
【0111】
その他の製造方法(第2の製造方法)としては、図15Aに示すように、例えば透明フイルム基材16上に形成された銅箔50上のフォトレジスト膜52を露光、現像処理してレジストパターン54を形成し、図15Bに示すように、レジストパターン54から露出する銅箔50をエッチングすることによって、メッシュパターン18を形成するようにしてもよい。この場合、フォトレジスト膜52に対する露光にて使用されるマスクは、メッシュパターン18に対応したマスクパターンを有するようにしてもよい。
【0112】
あるいは、フォトレジスト膜52に対するデジタル書込み露光によって、フォトレジスト膜52に、メッシュパターン18を露光するようにしてもよい。
【0113】
また、第3の製造方法としては、図16Aに示すように、透明フイルム基材16上に金属微粒子を含むペースト56を印刷し、図16Bに示すように、ペースト56に金属めっき58を行うことによって、メッシュパターン18を形成するようにしてもよい。
【0114】
あるいは、第4の製造方法として、図17に示すように、透明フイルム基材16に、メッシュパターン18をスクリーン印刷版又はグラビア印刷版によって印刷形成するようにしてもよい。
【0115】
次に、本実施の形態に係る透明導電体10において、特に好ましい態様であるハロゲン化銀写真感光材料を用いる導電性金属薄膜の作製方法を中心にして述べる。
【0116】
本実施の形態に係る透明導電体10は、上述したように、透明フイルム基材16上に感光性ハロゲン化銀塩を含有する乳剤層を有する感光材料を露光し、現像処理を施すことによって露光部及び未露光部に、それぞれ金属銀部44及び光透過性部46を形成し、さらに金属銀部44に物理現像及び/又はめっき処理を施すことによって金属銀部44に導電性金属48を担持させることで製造することができる。
【0117】
本実施の形態に係る透明導電体10の形成方法は、感光材料と現像処理の形態によって、次の3通りの形態が含まれる。
【0118】
(1) 物理現像核を含まない感光性ハロゲン化銀黒白感光材料を化学現像又は熱現像して金属銀部44を該感光材料上に形成させる態様。
【0119】
(2) 物理現像核をハロゲン化銀乳剤層中に含む感光性ハロゲン化銀黒白感光材料を溶解物理現像して金属銀部44を該感光材料上に形成させる態様。
【0120】
(3) 物理現像核を含まない感光性ハロゲン化銀黒白感光材料と、物理現像核を含む非感光性層を有する受像シートを重ね合わせて拡散転写現像して金属銀部44を非感光性受像シート上に形成させる態様。
【0121】
上記(1)の態様は、一体型黒白現像タイプであり、感光材料上に電磁波シールドフイルムや光透過性導電膜等の透光性導電性膜が形成される。得られる現像銀は化学現像銀又は熱現像銀であり、高比表面のフィラメントである点で後続するめっき又は物理現像過程で活性が高い。
【0122】
上記(2)の態様は、露光部では、物理現像核近縁のハロゲン化銀粒子が溶解されて現像核上に沈積することによって感光材料上に透光性電磁波シールド膜や光透過性導電性膜等の透光性導電性膜が形成される。これも一体型黒白現像タイプである。現像作用が、物理現像核上への析出であるので高活性であるが、現像銀は比表面は小さい球形である。
【0123】
上記(3)の態様は、未露光部においてハロゲン化銀粒子が溶解されて拡散して受像シート上の現像核上に沈積することによって受像シート上に電磁波シールドフイルムや光透過性導電性膜等の透光性導電性膜が形成される。いわゆるセパレートタイプであって、受像シートを感光材料から剥離して用いる態様である。
【0124】
いずれの態様もネガ型現像処理及び反転現像処理のいずれの現像を選択することもできる(拡散転写方式の場合は、感光材料としてオートポジ型感光材料を用いることによってネガ型現像処理が可能となる)。
【0125】
ここでいう化学現像、熱現像、溶解物理現像、拡散転写現像は、当業界で通常用いられている用語どおりの意味であり、写真化学の一般教科書、例えば菊地真一著「写真化学」(共立出版社、1955年刊行)、C.E.K.Mees編「The Theory of Photographic Processes, 4th ed.」(Mcmillan社、1977年刊行)に解説されている。本件は液処理に係る発明であるが、その他の現像方式として熱現像方式を適用する技術も参考にすることができる。例えば、特開2004−184693号、同2004−334077号、同2005−010752号の各公報、特願2004−244080号、同2004−085655号の各明細書に記載された技術を適用することができる。
【0126】
(感光材料)
[透明フイルム基材16]
本実施の形態の製造方法に用いられる感光材料の透明フイルム基材16としては、プラスチックフイルム等を用いることができる。
【0127】
上記プラスチックフイルムの原料としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、及びポリエチレンナフタレート等のポリエステル類;ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリスチレン、EVA等のポリオレフィン類;ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、PVB等のビニル系樹脂;その他、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリサルホン(PSF)、ポリエーテルサルホン(PES)、ポリカーボネート(PC)、ポリアミド、ポリイミド、アクリル樹脂、トリアセチルセルロース(TAC)等を用いることができる。
【0128】
本実施の形態においては、透光性、耐熱性、取り扱い易さ及び価格の点から、上記プラスチックフイルムはポリエチレンテレフタレートフイルム又はトリアセチルセルロース(TAC)であることが好ましい。
【0129】
窓ガラス用の透明発熱体では透光性が要求されるため、透明フイルム基材16の透光性は高いことが望ましい。この場合におけるプラスチックフイルムの全可視光透過率は70〜100%が好ましく、さらに好ましくは85〜100%であり、特に好ましくは90〜100%である。また、本発明では、前記プラスチックフイルムとして本発明の目的を妨げない程度に着色したものを用いることもできる。
【0130】
本実施の形態におけるプラスチックフイルムは、単層で用いることもできるが、2層以上を組み合わせた多層フイルムとして用いることも可能である。
【0131】
[保護層]
用いられる感光材料は、後述する乳剤層上に保護層を設けていてもよい。本実施の形態において「保護層」とは、ゼラチンや高分子ポリマーといったバインダからなる層を意味し、擦り傷防止や力学特性を改良する効果を発現するために感光性を有する乳剤層に形成される。上記保護層はめっき処理する上では設けない方が好ましく、設けるとしても薄い方が好ましい。その厚みは0.2μm以下が好ましい。上記保護層の塗布方法の形成方法は特に限定されず、公知の塗布方法を適宜選択することができる。
【0132】
[乳剤層]
本実施の形態の製造方法に用いられる感光材料は、透明フイルム基材16上に、光センサとして銀塩を含む乳剤層(銀塩含有層)を有することが好ましい。本実施の形態における乳剤層には、銀塩のほか、必要に応じて、染料、バインダ、溶媒等を含有することができる。
【0133】
<銀塩>
本実施の形態で用いられる銀塩としては、ハロゲン化銀等の無機銀塩が好ましく、特に銀塩がハロゲン化銀写真感光材料用ハロゲン化銀粒子の形で用いられるのが好ましい。ハロゲン化銀は、光センサとしての特性に優れている。
【0134】
ハロゲン化銀写真感光材料の写真乳剤の形で好ましく用いられるハロゲン化銀について説明する。
【0135】
本実施の形態では、光センサとして機能させるためにハロゲン化銀を使用することが好ましく、ハロゲン化銀に関する銀塩写真フイルムや印画紙、印刷製版用フイルム、フォトマスク用エマルジョンマスク等で用いられる技術は、本実施の形態においても用いることができる。
【0136】
上記ハロゲン化銀に含有されるハロゲン元素は、塩素、臭素、ヨウ素及びフッ素のいずれであってもよく、これらの組み合わせでもよい。例えば、AgCl、AgBr、AgIを主体としたハロゲン化銀が好ましく用いられ、さらにAgBrやAgClを主体としたハロゲン化銀が好ましく用いられる。塩臭化銀、沃塩臭化銀、沃臭化銀もまた好ましく用いられる。より好ましくは、塩臭化銀、臭化銀、沃塩臭化銀、沃臭化銀であり、最も好ましくは、塩化銀50モル%以上を含有する塩臭化銀、沃塩臭化銀が用いられる。
【0137】
なお、ここで、「AgBr(臭化銀)を主体としたハロゲン化銀」とは、ハロゲン化銀組成中に占める臭化物イオンのモル分率が50%以上のハロゲン化銀をいう。このAgBrを主体としたハロゲン化銀粒子は、臭化物イオンのほかに沃化物イオン、塩化物イオンを含有していてもよい。
【0138】
<バインダ>
乳剤層には、銀塩粒子を均一に分散させ、且つ、乳剤層と支持体との密着を補助する目的でバインダを用いることができる。本発明において、上記バインダとしては、非水溶性ポリマー及び水溶性ポリマーのいずれもバインダとして用いることができるが、水溶性ポリマーを用いることが好ましい。
【0139】
上記バインダとしては、例えば、ゼラチン、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリビニルピロリドン(PVP)、澱粉等の多糖類、セルロース及びその誘導体、ポリエチレンオキサイド、ポリサッカライド、ポリビニルアミン、キトサン、ポリリジン、ポリアクリル酸、ポリアルギン酸、ポリヒアルロン酸、カルボキシセルロース等が挙げられる。これらは、官能基のイオン性によって中性、陰イオン性、陽イオン性の性質を有する。
【0140】
乳剤層中に含有されるバインダの含有量は、特に限定されず、分散性と密着性を発揮し得る範囲で適宜決定することができる。
【0141】
<溶媒>
上記乳剤層の形成に用いられる溶媒は、特に限定されるものではないが、例えば、水、有機溶媒(例えば、メタノール等のアルコール類、アセトン等のケトン類、ホルムアミド等のアミド類、ジメチルスルホキシド等のスルホキシド類、酢酸エチル等のエステル類、エーテル類等)、イオン性液体、及びこれらの混合溶媒を挙げることができる。
【0142】
本発明の乳剤層に用いられる溶媒の含有量は、前記乳剤層に含まれる銀塩、バインダ等の合計の質量に対して30〜90質量%の範囲であり、50〜80質量%の範囲であることが好ましい。
【0143】
次に、メッシュパターン18を形成するための各工程について説明する。
【0144】
[露光]
本実施の形態では、透明フイルム基材16上に設けられた銀塩乳剤層58を有する感光材料への露光が行われる。露光は、電磁波を用いて行うことができる。電磁波としては、例えば、可視光線、紫外線等の光、X線等の放射線等が挙げられる。さらに露光には波長分布を有する光源を利用してもよく、特定の波長の光源を用いてもよい。
【0145】
パターン像を形成させる露光方式としては、均一光をマスクパターンを介して感光面に照射してマスクパターンを像様形成させる面露光方式と、レーザ光等のビームを走査してパターン状の照射部を感光性面上に形成させる走査露光方式とがある。コンパクトで、安価、さらに寿命が長く、安定性が高い装置を設計するためには、露光は半導体レーザを用いて行うことが最も好ましい。
【0146】
[現像処理]
本実施の形態では、乳剤層を露光した後、さらに現像処理が行われる。現像処理は、銀塩写真フイルムや印画紙、印刷製版用フイルム、フォトマスク用エマルジョンマスク等に用いられる通常の現像処理の技術を用いることができる。現像液については特に限定はしないが、PQ現像液、MQ現像液、MAA現像液等を用いることもでき、市販品では、例えば、富士フイルム社処方のCN−16、CR−56、CP45X、FD−3、パピトール、KODAK社処方のC−41、E−6、RA−4、D−19、D−72等の現像液、又はそのキットに含まれる現像液を用いることができる。また、リス現像液を用いることもできる。
【0147】
リス現像液としては、KODAK社処方のD85等を用いることができる。本発明では、上記の露光及び現像処理を行うことにより露光部に金属銀部44、好ましくはパターン状金属銀部が形成されると共に、未露光部に上述した光透過性部46が形成される。
【0148】
現像処理後の露光部に含まれる金属銀の質量は、露光前の露光部に含まれていた銀の質量に対して50質量%以上の含有率であることが好ましく、80質量%以上であることがさらに好ましい。露光部に含まれる銀の質量が露光前の露光部に含まれていた銀の質量に対して50質量%以上であれば、高い導電性を得ることができるため好ましい。
【0149】
[物理現像及びめっき処理]
本実施の形態では、上述した露光及び現像処理により形成された金属銀部44の導電性を向上させる目的で、金属銀部44に導電性金属粒子を担持させるための物理現像及び/又はめっき処理を行ってもよい。本実施の形態では物理現像又はめっき処理のいずれか一方のみで導電性金属粒子を金属銀部44に担持させることが可能であるが、さらに物理現像とめっき処理とを組み合わせて導電性金属粒子を金属銀部44に担持させることもできる。
【0150】
[カレンダー処理]
現像処理済みの金属銀部44(全面金属銀部、金属メッシュパターン部又は金属配線パターン部)にカレンダー処理を施して平滑化するようにしてもよい。これによって金属銀部44の導電性が顕著に増大する。カレンダー処理は、カレンダーロールにより行うことができる。カレンダーロールは通常一対のロールからなる。
【0151】
カレンダー処理に用いられるロールとしては、エポキシ、ポリイミド、ポリアミド、ポリイミドアミド等のプラスチックロール又は金属ロールが用いられる。特に、両面に乳剤層を有する場合は、金属ロール同士で処理することが好ましい。片面に乳剤層を有する場合は、シワ防止の点から金属ロールとプラスチックロールの組み合わせとすることもできる。線圧力の上限値は1960N/cm(200kgf/cm、面圧に換算すると699.4kgf/cm2)以上、さらに好ましくは2940N/cm(300kgf/cm、面圧に換算すると935.8kgf/cm2)以上である。線圧力の上限値は、6880N/cm(700kgf/cm)以下である。
【0152】
カレンダーロールで代表される平滑化処理の適用温度は10℃(温調なし)〜100℃が好ましく、より好ましい温度は、金属メッシュパターンや金属配線パターンの画線密度や形状、バインダ種によって異なるが、おおよそ10℃(温調なし)〜50℃の範囲にある。
【0153】
[蒸気接触処理]
カレンダー処理の直前あるいは直後に蒸気に接触させるとカレンダー処理による効果をより引き出すことができる。すなわち、導電性を著しく向上させることができる。使用する蒸気の温度は80℃以上が好ましく、100℃以上140℃以下がさらに好ましい。蒸気への接触時間は10秒から5分程度が好ましく、1分から5分がさらに好ましい。
【0154】
なお、本発明は、以下に記載の公開番号の技術と適宜組合わせて使用することができる。特開2004−221564号公報、特開2004−221565号公報、特開2007−200922号公報、特開2006−352073号公報、国際公開第2006/001461号パンフレット、特開2007−129205号公報、特開2007−235115号公報、特開2007−207987号公報、特開2006−012935号公報、特開2006−010795号公報、特開2006−228469号公報、特開2006−332459号公報、特開2007−207987号公報、特開2007−226215号公報、国際公開第2006/088059号パンフレット、特開2006−261315号公報、特開2007−072171号公報、特開2007−102200号公報、特開2006−228473号公報、特開2006−269795号公報、特開2006−267635号公報、特開2006−267627号公報、国際公開第2006/098333号パンフレット、特開2006−324203号公報、特開2006−228478号公報、特開2006−228836号公報、特開2006−228480号公報、国際公開2006/098336号パンフレット、国際公開第2006/098338号パンフレット、特開2007−009326号公報、特開2006−336057号公報、特開2006−339287号公報、特開2006−336090号公報、特開2006−336099号公報、特開2007−039738号公報、特開2007−039739号公報、特開2007−039740号公報、特開2007−002296号公報、特開2007−084886号公報、特開2007−092146号公報、特開2007−162118号公報、特開2007−200872号公報、特開2007−197809号公報、特開2007−270353号公報、特開2007−308761号公報、特開2006−286410号公報、特開2006−283133号公報、特開2006−283137号公報、特開2006−348351号公報、特開2007−270321号公報、特開2007−270322号公報、国際公開第2006/098335号パンフレット、特開2007−088218号公報、特開2007−201378号公報、特開2007−335729号公報、国際公開第2006/098334号パンフレット、特開2007−134439号公報、特開2007−149760号公報、特開2007−208133号公報、特開2007−178915号公報、特開2007−334325号公報、特開2007−310091号公報、特開2007−311646号公報、特開2007−013130号公報、特開2006−339526号公報、特開2007−116137号公報、特開2007−088219号公報、特開2007−207883号公報、特開2007−207893号公報、特開2007−207910号公報、特開2007−013130号公報、国際公開第2007/001008号パンフレット、特開2005−302508号公報、特開2005−197234号公報。
【0155】
なお、本発明に係る透明導電体及び透明発熱体は、上述の実施の形態に限らず、本発明の要旨を逸脱することなく、種々の構成を採り得ることはもちろんである。
【符号の説明】
【0156】
10…透明導電体
10A〜10D…第1透明導電体〜第4透明導電体
12a、12b…第1電極、第2電極
14…透明導電部
16…透明フイルム基材
18A、18B…第1メッシュパターン、第2メッシュパターン
20a〜20c…第1領域〜第3領域
22a、22a1、22a2…第1金属細線
22b、22b1、22b2…第2金属細線
24…交差部
26…円弧
30…開口部
32A〜32D…第1透明発熱体〜第4透明発熱体
40…銀塩感光層
44…金属銀部
46…光透過性部
48…導電性金属
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両のデフロスタ(霜取り装置)、窓ガラス等の一部として使用可能で、電流を流すことで発熱し発熱シートとしても機能し、また、例えば窓ガラス等に設置された色素増感型太陽電池の電極等としても使用することができる透明導電体と、該透明導電体を用いた透明発熱体に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、車両用灯具の照度低下の要因としては、以下のようなことが挙げられる。
【0003】
(1)前面カバーの外周面への積雪の付着。
【0004】
(2)前面カバーの外周面に雨水や洗車水が付着したまま凍結。
【0005】
(3)光源として消費電力(発生熱量)が少ないにも拘わらず、光量が多いHIDランプの使用による上記(1)(2)の助長。
【0006】
従来、上述した車両用灯具の照度低下を防ぐために、特許文献1及び2記載の構造が提案されている。
【0007】
特許文献1記載の構造は、導通パターンが印刷された透明な電気絶縁性のシート状部材で構成された発熱体を、レンズ成形品にインモールド成形によって固着するものであって、特に、発熱体の導通パターンを貴金属粉及び溶剤可溶な熱可塑性樹脂とを含む組成物で形成するというものである。
【0008】
特許文献2記載の構造は、車両用ランプのレンズ部内に発熱体を付着し、所定の条件下で発熱体に通電し、レンズ部を暖めるようにしている。発熱体はITO(Indium Tin Oxide)のような透明導電膜で構成することが記載されている。
【0009】
また、発電効率を顕著に低下させることなく、電磁波の反射によって生じる悪影響を軽減することができる色素増感型太陽電池として、特許文献3が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2007−26989号公報
【特許文献2】特開平10−289602号公報
【特許文献3】特開2006−190585号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、特許文献1記載の発熱体は、導通パターンの幅が50〜500μmと広く、特に実施例では、0.3mm幅の印刷導線を使用している。この場合、導線があることが肉眼で見えてしまうため、透明性の点で問題がある。
【0012】
発熱体は、窓ガラス(建物の窓ガラスや車両のフロントガラスを含む)にも組み込むことが考えられるが、その場合、透明性が必須要件となることは明らかであり、特許文献1記載の発熱体を使用することはできない。
【0013】
また、このような太い導線を使用する場合は、必要な抵抗値(例えば40オーム前後)を得るために、例えばヘッドランプの前面カバー上を1本の導線をジグザグに引き回して長い導線を形成することが考えられる。しかし、隣接する導線間に電位差を生じ、マイグレーションの原因になるという問題もある。
【0014】
一方、特許文献2記載の発熱体は、ITOのような透明導電膜を使用している。そのため、透明導電膜を曲面成形品の表面に形成する際には、真空中でスパッタする以外に方法がなく、効率やコスト等を考慮すると不利である。
【0015】
また、窓ガラス等に発熱体を組み込む場合、インモールド成形等を用いて、窓ガラス内に透明導電膜が形成されたフイルムを組み込むことが考えられるが、ITOのような透明導電膜はセラミックであることから、広範囲に透明導電膜が形成されたフイルムをインモールド成形工程等に投入する際に割れたり断線するおそれがあり、ハンドリング性に欠けるという問題がある。また、透明導電膜が形成されたフイルムをインモールド成形で曲げると割れるおそれがあり、このため、曲面成形品で形成され、且つ、透明ヒータを設けた例えば車両灯具用前面カバーに適用させることが困難である。
【0016】
このように、従来の発熱体は、車両灯具用前面カバー専用にしたり、窓ガラス専用にするということができず、汎用性がなかった。
【0017】
一方、環境にやさしい車両として、太陽電池、例えば色素増感型太陽電池を搭載することが考えられ、この場合、発電効率を上げるために、色素増感型太陽電池の電極を車両の窓ガラス(フロントガラス等)に設置することが考えられる。電極を窓ガラスに設置する場合、透明性が損なわないことが必須となる。特に、運転者の視線が向けられる部分における透明性を十分に確保することが重要となる。また、太陽電池の電極を窓ガラスに設置する場合、上述した特許文献3にもあるように、電磁波の反射による通信環境等への影響を招くことから、電磁波シールド機能を持たせることも考慮する必要がある。
【0018】
本発明は、かかる事情に鑑みなされたものであり、電流を流すことで発熱シートとして使用する場合に、発熱効率を向上させることができると共に車両用灯具や外灯等による光のぎらつきを防止することができ、しかも、例えば車両のフロントガラスに設置した際に、透明性を損なうことがなく、特に、運転者の視線が向けられる部分での透明性を十分に確保することができる透明導電体及び透明発熱体を提供することを目的とする。
【0019】
また、本発明の他の目的は、太陽電池の電極として使用した場合に、電磁波シールド膜として機能し、さらに、表面抵抗を低く保持して、発電効率の低下を防止することができ、しかも、例えば車両のフロントガラスに設置した際に、透明性を損なうことがなく、特に、運転者の視線が向けられる部分での透明性を十分に確保することができる透明導電体を提供することにある。
【0020】
また、本発明の他の目的は、車両灯具用前面カバー、建物の窓ガラス、車両用の窓ガラス等に適用することが可能で、汎用性に富む透明導電体及び透明発熱体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0021】
本発明の目的は、下記の構成により達成される。
【0022】
[1] 第1の本発明に係る透明導電体は、対向して配置された第1電極及び第2電極と、前記第1電極及び前記第2電極間に配置された透明導電部とを有する透明導電体であって、前記透明導電部は、1つの透明フイルム基材上に形成された複数の導電性の金属細線によるメッシュパターンを有し、前記メッシュパターンは、前記第1電極と前記第2電極間の電気抵抗分布が変化するパターンにて形成されていることを特徴とする。
【0023】
[2] 第1の本発明において、前記第1電極と前記第2電極間に少なくとも第1領域及び第2領域を有し、前記第1領域における電気抵抗分布の最大抵抗値をRm1とし、前記第2領域における電気抵抗分布の最大抵抗値をRm2としたとき、Rm1≠Rm2であることを特徴とする。
【0024】
[3] 第1の本発明において、前記Rm1と前記Rm2の関係が、Rm1<Rm2のとき、前記第1電極から前記第2電極に向かって少なくとも第1領域、第2領域、第1領域の順番で配列されていることを特徴とする。
【0025】
[4] 第1の本発明において、前記第1電極と前記第2電極間に少なくとも第1領域及び第2領域を有し、前記第1領域のメッシュパターンの線幅をd1とし、前記第2領域のメッシュパターンの線幅をd2としたとき、d1≠d2であることを特徴とする。
【0026】
[5] [4]において、前記d1と前記d2の関係が、d1>d2のとき、前記第1電極から前記第2電極に向かって少なくとも第1領域、第2領域、第1領域の順番で配列されていることを特徴とする。
【0027】
[6] 第1の本発明において、前記第1電極と前記第2電極間に少なくとも第1領域及び第2領域を有し、前記第1領域のメッシュパターンの配列ピッチをP1とし、前記第2領域のメッシュパターンの配列ピッチをP2としたとき、P1≠P2であることを特徴とする。
【0028】
[7] [6]において、前記P1と前記P2の関係が、P1<P2のとき、前記第1電極から前記第2電極に向かって少なくとも第1領域、第2領域、第1領域の順番で配列されていることを特徴とする。
【0029】
[8] 第1の本発明において、前記メッシュパターンを構成する前記複数の金属細線のうち、一部の金属細線は、交差部間が少なくとも1つの円弧を有し、且つ、前記円弧の向きが互い違いにして配列された波線形状に形成されていることを特徴とする。
【0030】
[9] 第1の本発明において、前記メッシュパターンは、各メッシュ形状の外周線上であって、且つ、前記メッシュ形状の中心に対して点対称の位置にある任意の一対の接線が互いに平行であることを特徴とする。
【0031】
[10] 第1の本発明において、前記円弧の中心角が75〜105°であることを特徴とする。
【0032】
[11] 第1の本発明において、前記交差部における交差角度がほぼ90°であることを特徴とする。
【0033】
[12] 第1の本発明において、前記メッシュパターンの前記金属細線が、前記透明フイルム基材上に設けられた銀塩感光層を露光して現像することによって形成された金属銀部を有することを特徴とする。
【0034】
[13] 次に、第2の本発明に係る透明発熱体は、上述した第1の本発明に係る透明導電体を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0035】
以上説明したように、電流を流すことで発熱シートとして使用する場合に、発熱効率を向上させることができると共に車両用灯具や外灯等による光のぎらつきを防止することができ、しかも、例えば車両のフロントガラスに設置した際に、透明性を損なうことがなく、特に、運転者の視線が向けられる部分での透明性を十分に確保することができる。
【0036】
また、本発明に係る透明導電体によれば、太陽電池の電極として使用した場合に、電磁波シールド膜として機能し、さらに、表面抵抗を低く保持して、発電効率の低下を防止することができ、しかも、例えば車両のフロントガラスに設置した際に、透明性を損なうことがなく、特に、運転者の視線が向けられる部分での透明性を十分に確保することができる。
【0037】
また、本発明に係る透明導電体及び透明発熱体によれば、車両灯具用前面カバー、建物の窓ガラス、車両用の窓ガラス等に適用することが可能で、汎用性に富む。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】第1透明導電体(第1透明発熱体)の一構成例を示す平面図である。
【図2】第1透明導電体の第1メッシュパターンを一部省略して示す平面図である。
【図3】第1透明導電体の第2メッシュパターンを一部省略して示す平面図である。
【図4】第1透明導電体における電極間の電気抵抗特性を示す図である。
【図5】第2透明導電体(第2透明発熱体)の一構成例を示す平面図である。
【図6】第2透明導電体の第1メッシュパターンを一部省略して示す平面図である。
【図7】第2透明導電体の第2メッシュパターンを一部省略して示す平面図である。
【図8】第2透明導電体のメッシュパターンを模式的に示す説明図である。
【図9】第3透明導電体(第3透明発熱体)の一構成例を示す平面図である。
【図10】第3透明導電体の第1メッシュパターンを一部省略して示す平面図である。
【図11】第3透明導電体のメッシュパターンを模式的に示す説明図である。
【図12】第4透明導電体(第4透明発熱体)の一構成例を示す平面図である。
【図13】第4透明導電体の第1メッシュパターンを一部省略して示す平面図である。
【図14】図14A〜図14Eは本実施の形態に係る透明導電体の第1の製造方法を示す工程図である。
【図15】図15A及び図15Bは本実施の形態に係る透明導電体の第2の製造方法を示す工程図である。
【図16】図16A及び図16Bは本実施の形態に係る透明導電体の第3の製造方法を示す工程図である。
【図17】本実施の形態に係る透明導電体の第4の製造方法を示す工程図である。
【発明を実施するための形態】
【0039】
以下、本発明に係る透明導電体及び透明発熱体の実施の形態例を図1〜図17を参照しながら説明する。
【0040】
先ず、第1の本実施の形態に係る透明導電体(以下、第1透明導電体10Aと記す)は、車両のデフロスタ(霜取り装置)や、窓ガラス等の一部として使用可能な透明導電体である。この第1透明導電体10Aは、電流を流すことで発熱する透明発熱体としても機能する。
【0041】
そして、この第1透明導電体10Aは、図1に示すように、図1上、対向して配置された第1電極12a及び第2電極12bと、これら第1電極12a及び第2電極12b間に配置された透明導電部14とを有する。図1では、自動車のフロントガラス15(二点鎖線で示す)内に第1透明導電体10Aを設置した例を示し、フロントガラス15の上部に第1電極12aが配置され、下部に第2電極12bが配置された例を示している。なお、フロントガラス15内に第1透明導電体10Aを設置する方法としては、例えばフロントガラス15を構成する2枚の貼合せガラスの間に第1透明導電体10Aを設置することが好ましく採用される。
【0042】
そして、透明導電部14は、1つの透明フイルム基材16(図14E参照)上に形成された複数の導電性の金属細線によるメッシュパターン18を有する。メッシュパターン18は、第1電極12aと第2電極12b間の電気抵抗分布が変化するパターンにて形成されている。
【0043】
具体的には、先ず、メッシュパターン18のうち、図1上、上部(第1電極12a寄り)に位置している第1領域20aと、中央部に位置している第2領域20bと、下部(第2電極12b寄り)に位置している第3領域20cに注目する。
【0044】
第1領域20aのパターンと第3領域20cのパターンはほぼ同じメッシュパターン(第1メッシュパターン18Aと記す)であり、第2領域20bのパターンは第1メッシュパターン18Aとは異なるメッシュパターン(第2メッシュパターン18Bと記す)となっている。
【0045】
第1メッシュパターン18Aは、図2に示すように、一方向(図2においてx方向)に第1ピッチL1で並ぶ複数の直線状の第1金属細線22aと、他方向(図2においてy方向)に第2ピッチL2で並ぶ複数の直線状の第2金属細線22bとがそれぞれ交差して形成されたメッシュパターンを有する。第1金属細線22aと第2金属細線22bの交差角度はほぼ90°とされている。交差角度の好ましい値を「ほぼ90°」としたのは、製造ばらつきを考慮したものであって、理想的には、交差角度は90°であることが望ましい。なお、第1ピッチL1及び第2ピッチL2は、150μm以上6000μm以下から選択可能である。また、第1金属細線22a及び第2金属細線22bの線幅dは、5μm以上200μmから選択可能である。もちろん、透明性を向上させたい場合は、5μm以上50μm以下から選択してもよい。
【0046】
第1ピッチL1という表現は、全ての第1金属細線22aが一定間隔で並ぶことを示すが、一部の第1金属細線22aについて、第1ピッチL1の長さを変えてもよい。この場合、隣り合う第1金属細線22aの間隔と表現した方が適切となる。これは、第2金属細線22bについても同様である。従って、隣り合う第1金属細線22aの間隔並びに隣り合う第2金属細線22bの間隔は、150μm以上6000μm以下が好ましく、さらに好ましくは、300μm以上1000μm以下である。
【0047】
一方、第2メッシュパターン18Bは、図3に示すように、上述した第1メッシュパターン18Aとほぼ同じパターンを有するが、交差部24の第1金属細線22a及び第2金属細線22bに沿った配列ピッチが、第1メッシュパターンの2倍のピッチである点で異なる。すなわち、第1メッシュパターン18Aの1つの開口部30の開口面積をAa、第2メッシュパターン18Bの1つの開口部30の開口面積をAbとしたとき、
Ab=4×Aa
の関係を有するように第2メッシュパターン18Bが形成されている。
【0048】
そして、図1に示すように、この第1透明導電体10Aを第1透明発熱体32Aとして使用する場合は、例えば第1電極12aから第2電極12bに電流を流す。これにより、第1透明発熱体32Aが発熱し、第1透明発熱体32Aに接する又は第1透明発熱体32Aを組み込んだ加熱対象物(例えば、建物の窓ガラス、車両用の窓ガラス、車両用灯具の前面カバー等)が加熱される。その結果、加熱対象物に付着していた雪等が取り除かれることになる。
【0049】
ここで、メッシュパターン18の第1電極12aと第2電極12b間の電気抵抗分布を考慮したとき、第1領域20a及び第3領域20cにおける電気抵抗分布は緩やかな分布となり、第2領域における電気抵抗分布は中央部の抵抗値が他よりも高くなった分布となる。
【0050】
すなわち、図4に示すように、第1領域20aにおける電気抵抗分布の最大抵抗値をRm1、第2領域20bにおける電気抵抗分布の最大抵抗値をRm2、第3領域20cにおける電気抵抗分布の最大抵抗値をRm3としたとき、
Rm1≒Rm3<Rm2
となる。
【0051】
従って、第1透明導電体10Aの第1電極12aと第2電極12b間に一定電圧を印加して、例えば第1電極12aから第2電極12bに向かって電流を流したとき、メッシュパターン18の第2領域20bの単位時間当たりの発熱量(発熱効率)が他の部分(第1領域20a及び第3領域20c)よりも多くなる。また、第2領域20bは、開口部30の開口面積Abが他の部分(第1領域20a及び第3領域20c)の開口面積Aaよりも大きいことから、第2領域20bの可視光透過率は他の部分よりも高くなり、より透光性が向上する。例えば第2領域20bの可視光透過率は85%以上99%以下であり、その他の部分は70%以上85%以下となる。
【0052】
このように、第1透明導電体10Aは、局部的に発熱効率及び透光性を向上させることができることから、第1透明発熱体32Aとして例えば窓ガラスに適用する場合は、窓ガラスのうち、雪の溶解を早めたい箇所、透明性が必要な箇所等に応じて、第1メッシュパターン18A及び第2メッシュパターン18Bの配置を決定すればよい。特に、車両の窓ガラス(フロントガラス)に適用した場合は、運転者と対向する部分は、雪の溶解を早めたい箇所で、且つ、透明性が必要な箇所であり、しかも、電流の経路が長くなることから、第2メッシュパターン18Bを配置し、その周りに第1メッシュパターン18Aを配置すればよい。
【0053】
ただ、運転者と対向する部分のみに第2メッシュパターン18Bを配置した場合(例えば第2領域20bの中央部のみに第2メッシュパターン18Bを配置した場合)、電流が第2メッシュパターン18Bを避けて流れるおそれがあることから、第2領域20bの全域に第2メッシュパターン18Bを配置することで、第2メッシュパターン18Bにも電流が流れることになり、運転者と対向する部分の発熱効率を高め、透光性を向上させることが可能となる。
【0054】
また、第1透明導電体は、金属細線の線幅を1μm以上、40μm以下にでき、金属細線の配列ピッチを0.1mm以上、50mm以下にすることができることから、透明性の点で優れる。
【0055】
従来のように、線状発熱体をジグザグに引き回す構成の場合は、隣接する導線間で電位差が生じ、マイグレーションの原因になるという問題があったが、メッシュ形状であれば、隣接する金属細線間は初めから短絡状態であるためマイグレーションがあっても問題にならない。
【0056】
また、メッシュパターン18を、展性、延性に優れた金属細線等で構成することができるため、最小曲率半径が300mm以下の三次元曲面に沿って形成することも可能である。
【0057】
上述の例では、第2領域20bに形成される第2メッシュパターン18Bの第1ピッチL1及び第2ピッチL2を、第1領域20a及び第3領域20cに形成される第1メッシュパターン18Aの第1ピッチL1及び第2ピッチL2の2倍にした例を示したが、これに限らず、運転者と対向する部分の発熱効率を高め、透光性を向上させることができれば、正の実数倍でもよい。
【0058】
また、第1メッシュパターン18A及び第2メッシュパターン18Bの各第1ピッチL1をほぼ同じにし、且つ、各第2ピッチL2をほぼ同じにして、第1メッシュパターン18Aを構成する第1金属細線22a及び第2金属細線22bの線幅dを、第2メッシュパターン18Bを構成する第1金属細線22a及び第2金属細線22bの線幅dよりも大きくするようにしてもよい。
【0059】
もちろん、第2メッシュパターン18Bの第1ピッチL1及び第2ピッチL2を、第1メッシュパターン18Aよりも大きく設定し、且つ、第2メッシュパターン18Bの線幅dを、第1メッシュパターン18Aよりも小さくするようにしてもよい。
【0060】
次に、第2の実施の形態に係る透明導電体(以下、第2透明導電体10Bと記す)について図5〜図8を参照しながら説明する。
【0061】
この第2透明導電体は、図5に示すように、上述した第1透明導電体10Aとほぼ同様の構成を有するが、第1メッシュパターン18A及び第2メッシュパターン18Bが以下のように異なる。
【0062】
すなわち、第1メッシュパターン18Aを主体に説明すると、第1メッシュパターン18Aにおける交差部24間の第1金属細線22a及び第2金属細線22bは、少なくとも1つの湾曲を有する波線形状に形成されている。
【0063】
特に、この第1メッシュパターン18Aは、湾曲が円弧状であって、交差部24間に2つの円弧26がそれぞれ山谷の方向を逆にして連続形成された形状を有する。各円弧26はそれぞれ中心角が75°〜105°とされている。好ましくはほぼ90°である。また、第1金属細線22aと第2金属細線22bの交差角度はほぼ90°とされている。中心角の好ましい値並びに交差角度の好ましい値を「ほぼ90°」としたのは、製造ばらつきを考慮したものであって、理想的には、中心角及び交差角度は90°であることが望ましい。
【0064】
また、上述の波線形状は、一定の周期を有する。周期は、円弧26の配列周期をいう。すなわち、2つの円弧26がそれぞれ山谷の方向を逆にして連続配列された長さを1周期としている。図6の例では、交差部24間を1周期とした例を示している。1周期は、50μm〜2000μmが好ましい。ここで、交差部24の第1金属細線22a及び第2金属細線22bに沿った配列ピッチを、波線形状の周期で表すことも可能である。では、図6では、交差部24の配列ピッチは波線形状の1周期に相当することになる。従って、「交差部24の配列ピッチを、波線形状のn周期(nは実数)に規定する」として製造することも可能となる。このようなことから、上述の波線形状は、一定の周期を有するようにしているが、平行に隣接する波線形状の周期をそれぞれ異ならせてメッシュパターンを形成するようにしてもよい。
【0065】
また、第1金属細線22a及び第2金属細線22bの波線形状は、一定の振幅hを有する。振幅hは、互いに隣接する2つの交差部24を結んだ仮想線28を考えたとき、波線形状の山の頂上から仮想線28に垂線を引いたとき、山の頂上と交点(垂線と仮想線28との交点)間の距離を指す。振幅hは、10μm〜500μmが好ましい。本実施の形態では、第1金属細線22a及び第2金属細線22bの波線形状は、一定の振幅を有するようにしているが、交差部24間に並ぶ2つの円弧26の各振幅hをそれぞれ異ならせてもよいし、平行に隣接する波線形状の各円弧26の振幅を異ならせてもよい。
【0066】
また、この第1メッシュパターン18Aは、図6に示すように、1つの開口部30と、該1つの開口部30を囲む4つの金属細線の組み合わせ形状をメッシュ形状Mと定義したとき、図8に模式的に示すように、交差部24の配列に沿って隣接する任意の2つのメッシュ形状M1及びM2の各中心C1及びC2を結ぶ線分のうち、一方のメッシュ形状M1の中心から交差部24までの第1線分の長さLaと、他方のメッシュ形状M2の中心から交差部24までの第2線分の長さLbとが同じになっている。
【0067】
また、図8に示すように、例えば第2金属細線22bの延在方向に沿って隣接する任意の2つのメッシュ形状M3及びM4の各中心C3及びC4を結ぶ線分のうち、一方のメッシュ形状M3の中心C3から第1金属細線22aまでの第3線分の長さLcと、他方のメッシュ形状M4の中心C4から第1金属細線22aまでの第4線分の長さLdとが同じである。
【0068】
さらに、図8に示すように、各メッシュ形状Mの外周線上であって、且つ、メッシュ形状Mの中心Cに対して点対称の位置にある任意の一対の接線が互いに平行となっている。具体的には、図8において、例えば第1の一対の接線(1)(1)、第2の一対の接線(2)(2)、第3の一対の接線(3)(3)が挙げられているが、各一対の接線がそれぞれ互いに平行となっており、しかも、接線の方向は、第1の一対の接線(1)(1)、第2の一対の接線(2)(2)、第3の一対の接線(3)(3)でそれぞれ異なっている。光の屈折や回折は接線方向に強く現れるが、第2透明導電体10Bでは、異なった接線方向が多数組み合わされた形態となるため、光の屈折や回折が拡散され、これにより、ぎらつきが目立たなくなる。
【0069】
一方、第2メッシュパターン18Bは、図7に示すように、上述した第1メッシュパターン18Aとほぼ同じパターンを有するが、交差部24の第1金属細線22a及び第2金属細線22bに沿った配列ピッチが、波線形状の2周期に相当している点で異なる。すなわち、第1メッシュパターン18Aの1つの開口部30の開口面積をAa、第2メッシュパターン18Bの1つの開口部30の開口面積をAbとしたとき、
Ab=4×Aa
の関係を有するように第2メッシュパターン18Bが形成されている。
【0070】
この第2メッシュパターンにおいても、図8と同様の関係を有することから、光の屈折や回折が拡散され、ぎらつきが目立たなくなる。
【0071】
そして、図5に示すように、この第2透明導電体10Bを第2透明発熱体32Bとして使用する場合は、例えば第1電極12aから第2電極12bに電流を流す。これにより、第2透明発熱体32Bが発熱し、第2透明発熱体32Bに接する又は第2透明発熱体32Bを組み込んだ加熱対象物(例えば、建物の窓ガラス、車両用の窓ガラス、車両用灯具の前面カバー等)が加熱される。その結果、加熱対象物に付着していた雪等が取り除かれることになる。
【0072】
このように、第2透明導電体10Bにおいては、上述した第1透明導電体10Aと同様の効果を有するほか、以下の効果を有する。
【0073】
すなわち、第2透明導電体10Bにおいては、メッシュパターン18は、ほとんど直線部分を有さないことから、メッシュパターン18の交差部24上に回折ポイントが直線状に並ぶということがなくなり、交差部24上での干渉光の強度は小さくなる。これは、第1金属細線22a及び第2金属細線22b上でも同様であり、第1金属細線22a及び第2金属細線22b上での干渉光の強度も小さくなる。すなわち、メッシュ形状Mによる回折光の干渉によるぎらつき等を抑制することができる。従って、第2透明導電体10Bは、例えば窓ガラス(建物、車両用の窓ガラス)や車両用灯具の前面カバーに取り付けられる第2透明発熱体32Bとして好適となる。なお、波線形状への直線部分の形成は、適用する対象(窓ガラス、車両用灯具の前面カバー等)や波線形状の周期や振幅等を考慮して適宜選択すればよい。このことから、波線形状として正弦波曲線を採用してもよい。
【0074】
次に、第3の実施の形態に係る透明導電体(以下、第3透明導電体10Cと記す)について図9〜図11を参照しながら説明する。
【0075】
この第3透明導電体10Cは、図9に示すように、上述した第2透明導電体10Bとほぼ同様の構成を有するが、第1メッシュパターン18A及び第2メッシュパターン18Bが以下のように異なる。
【0076】
すなわち、第1メッシュパターン18Aを主体に説明すると、第1メッシュパターン18Aは、図10に示すように、複数の第1金属細線22aのうち、1つ置きの第1金属細線22a1(一方の第1金属細線22a1)は、湾曲が円弧状であって、交差部24間に2つの円弧26がそれぞれ山谷の方向を逆にして連続形成された形状を有する。複数の第1金属細線22aのうち、第1金属細線22a1以外の第1金属細線22a2(他方の第1金属細線22a2)は、湾曲が円弧状であって、交差部24間に4つの円弧26がそれぞれ山谷の方向を逆にして連続形成された形状を有する。
【0077】
ここで、円弧の配列周期、すなわち、2つの円弧26がそれぞれ山谷の方向を逆にして連続配列された長さを1周期としたとき、一方の第1金属細線22a1の交差部間の円弧の配列周期は1周期、他方の第1金属細線22a2の交差部間の円弧の配列周期は2周期となっている。
【0078】
つまり、第3透明導電体10Cは、平行に隣り合う第1金属細線22a(一方の第1金属細線22a1及び他方の第1金属細線22a2)の各円弧の配列周期がそれぞれ異なる。
【0079】
これは第2金属細線22bにおいても同様であり、一方の第2金属細線22b1における交差部24間の円弧の配列周期は1周期であり、他方の第2金属細線22b2における交差部24間の円弧の配列周期は2周期となっている。
【0080】
もちろん、一方の第1金属細線22a1における交差部24間の円弧の配列周期をi周期、他方の第1金属細線22a2における交差部24間の円弧の配列周期をj周期とし、一方の第2金属細線22b1における交差部24間の円弧の配列周期をp周期、他方の第2金属細線22b2における交差部24間の円弧の配列周期をq周期としたとき、以下の関係を有するようにしてもよい。
【0081】
(1) i≠j、i=p、j=q
(2) i≠j、i≠p、j=q、p≠q
(3) i≠j、i=p、j≠q、p≠q
(4) i≠j、i≠p、j≠q、p≠q
また、この第3透明導電体10Cは、図11に模式的に示すように、交差部24の配列に沿って隣接する任意の2つのメッシュ形状M1及びM2の各中心C1及びC2を結ぶ線分のうち、一方のメッシュ形状M1の中心から交差部24までの第1線分の長さLaと、他方のメッシュ形状M2の中心から交差部24までの第2線分の長さLbとが同じになっている。
【0082】
また、図11に示すように、例えば第2金属細線22bの延在方向に沿って隣接する任意の2つのメッシュ形状M3及びM4の各中心C3及びC4を結ぶ線分のうち、一方のメッシュ形状M3の中心C3から第1金属細線22aまでの第3線分の長さLcと、他方のメッシュ形状M4の中心C4から第1金属細線22aまでの第4線分の長さLdとが同じである。
【0083】
この第3透明導電体10Cにおいても、局部的に発熱効率及び透光性を向上させることができることから、第3透明発熱体32C(図9参照)として例えば窓ガラスに適用する場合は、窓ガラスのうち、雪の溶解を早めたい箇所、透明性が必要な箇所等に応じて、第1メッシュパターン18A及び第2メッシュパターン18Bの配置を決定すればよい。
【0084】
また、この第3透明導電体10Cにおいても、メッシュパターン18は、ほとんど直線部分を有さないことから、回折光の干渉によるぎらつき等をさらに低減することができる。
【0085】
次に、第4の実施の形態に係る透明導電体(以下、第4透明導電体10Dと記す)について図12及び図13を参照しながら説明する。
【0086】
この第4透明導電体10Dは、図12に示すように、上述した第3透明導電体10Cとほぼ同様の構成を有するが、第1メッシュパターン18A及び第2メッシュパターン18Bが以下のように異なる。
【0087】
すなわち、第1メッシュパターン18Aを主体に説明すると、第1メッシュパターン18Aは、図13に示すように、平行に隣り合う第1金属細線22a1及び22a2のうち、一方の第1金属細線22a1は各交差部24間が少なくとも1つの湾曲(例えば円弧26)を有する波線形状に形成され、他方の前記第1金属細線22a2は直線状に形成されている。
【0088】
同様に、平行に隣り合う第2金属細線22b1及び22b2のうち、一方の第2金属細線22b1は各交差部24間が少なくとも1つの湾曲(例えば円弧26)を有する波線形状に形成され、他方の第2金属細線22b2は直線状に形成されている。
【0089】
なお、一方の第1金属細線22a1及び一方の第2金属細線22b1の各波線形状の周期は1周期となっている。
【0090】
この第4透明導電体10Dにおいても、局部的に発熱効率及び透光性を向上させることができることから、第4透明発熱体32D(図12参照)として例えば窓ガラスに適用する場合は、窓ガラスのうち、雪の溶解を早めたい箇所、透明性が必要な箇所等に応じて、第1メッシュパターン18A及び第2メッシュパターン18Bの配置を決定すればよい。
【0091】
また、この第4透明導電体10Dにおいては、メッシュパターン18のうち、直線部分を有さない部分においては、メッシュパターン18の交差部24上に回折ポイントが直線状に並ぶということがなくなることから、メッシュ形状による回折光の干渉によるぎらつき等を抑制することができ、例えば窓ガラス(建物、車両用の窓ガラス)や車両用灯具の前面カバーに取り付けられる透明発熱体として好適となる。
【0092】
次に、第1透明導電体10A〜第4透明導電体10D(総称して透明導電体10と記す)の製造方法について図14A〜図17を参照しながら説明する。
【0093】
第1の製造方法は、透明フイルム基材16上に設けられた銀塩感光層を露光し、現像、定着することによって形成された金属銀部と、該金属銀部に担持された導電性金属にてメッシュパターン18を形成する。
【0094】
具体的には、図14Aに示すように、ハロゲン化銀36(例えば臭化銀粒子、塩臭化銀粒子や沃臭化銀粒子)をゼラチン38に混ぜてなる銀塩感光層40を透明フイルム基材16上に塗布する。なお、図14A〜図14Cでは、ハロゲン化銀36を「粒々」として表記してあるが、あくまでも本発明の理解を助けるために誇張して示したものであって、大きさや濃度等を示したものではない。
【0095】
その後、図14Bに示すように、銀塩感光層40に対してメッシュパターン18の形成に必要な露光を行う。ハロゲン化銀36は、光エネルギーを受けると感光して「潜像」と称される肉眼では観察できない微小な銀核を生成する。
【0096】
その後、潜像を肉眼で観察できる可視化された画像に増幅するために、図14Cに示すように、現像処理を行う。具体的には、潜像が形成された銀塩感光層40を現像液(アルカリ性溶液と酸性溶液のどちらもあるが通常はアルカリ性溶液が多い)にて現像処理する。この現像処理とは、ハロゲン化銀粒子ないし現像液から供給された銀イオンが現像液中の現像主薬と呼ばれる還元剤により潜像銀核を触媒核として金属銀に還元されて、その結果として潜像銀核が増幅されて可視化された銀画像(現像銀42)を形成する。
【0097】
現像処理を終えたあとに銀塩感光層40中には光に感光できるハロゲン化銀36が残存するのでこれを除去するために図14Dに示すように定着処理液(酸性溶液とアルカリ性溶液のどちらもあるが通常は酸性溶液が多い)により定着を行う。
【0098】
この定着処理を行うことによって、露光された部位には金属銀部44が形成され、露光されていない部位にはゼラチン38のみが残存し、光透過性部46となる。すなわち、透明フイルム基材16上に金属銀部44と光透過性部46との組み合わせが形成されることになる。
【0099】
ハロゲン化銀36として臭化銀を用い、チオ硫酸塩で定着処理した場合の定着処理の反応式は以下の通りである。
AgBr(固体)+2個のS2O3イオン → Ag(S2O3)2
(易水溶性錯体)
【0100】
すなわち、2個のチオ硫酸イオンS2O3とゼラチン38中の銀イオン(AgBrからの銀イオン)が、チオ硫酸銀錯体を生成する。チオ硫酸銀錯体は水溶性が高いのでゼラチン38中から溶出されることになる。その結果、現像銀42が金属銀部44として定着されて残ることになる。
【0101】
従って、現像工程は、潜像に対し還元剤を反応させて現像銀42を析出させる工程であり、定着工程は、現像銀42にならなかったハロゲン化銀36を水に溶出させる工程である。詳細は、T.H.James, The Theory of the Photographic Process, 4th ed., Macmillian Publishing Co.,Inc, NY,Chapter15, pp.438−442. 1977を参照されたい。
【0102】
なお、現像処理は多くの場合アルカリ性溶液で行われることから、現像処理工程から定着処理工程に入る際に、現像処理にて付着したアルカリ溶液が定着処理溶液(多くの場合は酸性溶液である)に持ち込まれるため、定着処理液の活性が変わるといった問題がある。また、現像処理槽を出た後、膜に残留した現像液により意図しない現像反応がさらに進行する懸念もある。そこで、現像処理後で、定着処理工程に入る前に、酢酸(酢)溶液等の停止液で銀塩感光層40を中和もしくは酸性化することが好ましい。
【0103】
そして、図14Eに示すように、例えばめっき処理(無電解めっきや電気めっきを単独ないし組み合わせる)を行って、金属銀部44のみに導電性金属48を担持させることによって、透明フイルム基材16上に金属銀部44と、該金属銀部44に担持された導電性金属48にて第1金属細線22a及び第2金属細線22bによるメッシュパターン18が形成されることになる。
【0104】
ここで、上述した銀塩感光層40を用いた方法(銀塩写真技術)と、フォトレジストを用いた方法(レジスト技術)との違いを説明する。
【0105】
レジスト技術では、露光処理により光重合開始剤が光を吸収して反応が始まりフォトレジスト膜(樹脂)自体が重合反応して現像液に対する溶解性の増大又は減少させ、現像処理により露光部分又は未露光部分の樹脂を除去する。なお、レジスト技術で現像液とよばれる液は還元剤を含まず、未反応の樹脂成分を溶解する例えばアルカリ性溶液である。一方、本発明の銀塩写真技術の露光処理では上記に記載したように、光を受けた部位のハロゲン化銀36内において発生した光電子と銀イオンからいわゆる「潜像」と呼ばれる微小な銀核が形成され、その潜像銀核が現像処理(この場合の現像液は必ず現像主薬と呼ばれる還元剤を含む)により増幅されて可視化された銀画像になる。このように、レジスト技術と銀塩写真技術とでは、露光処理から現像処理での反応が全く異なる。
【0106】
レジスト技術の現像処理では露光部分又は未露光部分の重合反応しなかった樹脂部分が除去される。一方、銀塩写真技術の現像処理では、潜像を触媒核にして現像液に含まれる現像主薬と呼ばれる還元剤により還元反応がおこり、目に見える大きさまで現像銀42が成長するものであって、未露光部分のゼラチン38の除去は行われない。このように、レジスト技術と銀塩写真技術とでは、現像処理での反応も全く異なる。
【0107】
なお、未露光部分のゼラチン38に含まれるハロゲン化銀36は、その後の定着処理によって溶出されるものであって、ゼラチン38自体の除去は行われない。
【0108】
このように、銀塩写真技術では反応(感光)主体がハロゲン化銀であるのに対し、レジスト技術では光重合開始剤である。また、現像処理では、銀塩写真技術ではバインダ(ゼラチン38)は残存するが、レジスト技術ではバインダがなくなる。このような点で、銀塩写真技術とフォトレジスト技術は大きく相違する。
【0109】
そして、銀塩感光層40に対する露光にて使用されるマスクは、メッシュパターン18、すなわち、交差部24間の金属細線が少なくとも1つの湾曲を有する波線形状に形成されたメッシュパターン18に対応したマスクパターンを有するようにしてもよい。
【0110】
あるいは、銀塩感光層40に対するデジタル書込み露光によって、銀塩感光層40に、メッシュパターン18を露光するようにしてもよい。
【0111】
その他の製造方法(第2の製造方法)としては、図15Aに示すように、例えば透明フイルム基材16上に形成された銅箔50上のフォトレジスト膜52を露光、現像処理してレジストパターン54を形成し、図15Bに示すように、レジストパターン54から露出する銅箔50をエッチングすることによって、メッシュパターン18を形成するようにしてもよい。この場合、フォトレジスト膜52に対する露光にて使用されるマスクは、メッシュパターン18に対応したマスクパターンを有するようにしてもよい。
【0112】
あるいは、フォトレジスト膜52に対するデジタル書込み露光によって、フォトレジスト膜52に、メッシュパターン18を露光するようにしてもよい。
【0113】
また、第3の製造方法としては、図16Aに示すように、透明フイルム基材16上に金属微粒子を含むペースト56を印刷し、図16Bに示すように、ペースト56に金属めっき58を行うことによって、メッシュパターン18を形成するようにしてもよい。
【0114】
あるいは、第4の製造方法として、図17に示すように、透明フイルム基材16に、メッシュパターン18をスクリーン印刷版又はグラビア印刷版によって印刷形成するようにしてもよい。
【0115】
次に、本実施の形態に係る透明導電体10において、特に好ましい態様であるハロゲン化銀写真感光材料を用いる導電性金属薄膜の作製方法を中心にして述べる。
【0116】
本実施の形態に係る透明導電体10は、上述したように、透明フイルム基材16上に感光性ハロゲン化銀塩を含有する乳剤層を有する感光材料を露光し、現像処理を施すことによって露光部及び未露光部に、それぞれ金属銀部44及び光透過性部46を形成し、さらに金属銀部44に物理現像及び/又はめっき処理を施すことによって金属銀部44に導電性金属48を担持させることで製造することができる。
【0117】
本実施の形態に係る透明導電体10の形成方法は、感光材料と現像処理の形態によって、次の3通りの形態が含まれる。
【0118】
(1) 物理現像核を含まない感光性ハロゲン化銀黒白感光材料を化学現像又は熱現像して金属銀部44を該感光材料上に形成させる態様。
【0119】
(2) 物理現像核をハロゲン化銀乳剤層中に含む感光性ハロゲン化銀黒白感光材料を溶解物理現像して金属銀部44を該感光材料上に形成させる態様。
【0120】
(3) 物理現像核を含まない感光性ハロゲン化銀黒白感光材料と、物理現像核を含む非感光性層を有する受像シートを重ね合わせて拡散転写現像して金属銀部44を非感光性受像シート上に形成させる態様。
【0121】
上記(1)の態様は、一体型黒白現像タイプであり、感光材料上に電磁波シールドフイルムや光透過性導電膜等の透光性導電性膜が形成される。得られる現像銀は化学現像銀又は熱現像銀であり、高比表面のフィラメントである点で後続するめっき又は物理現像過程で活性が高い。
【0122】
上記(2)の態様は、露光部では、物理現像核近縁のハロゲン化銀粒子が溶解されて現像核上に沈積することによって感光材料上に透光性電磁波シールド膜や光透過性導電性膜等の透光性導電性膜が形成される。これも一体型黒白現像タイプである。現像作用が、物理現像核上への析出であるので高活性であるが、現像銀は比表面は小さい球形である。
【0123】
上記(3)の態様は、未露光部においてハロゲン化銀粒子が溶解されて拡散して受像シート上の現像核上に沈積することによって受像シート上に電磁波シールドフイルムや光透過性導電性膜等の透光性導電性膜が形成される。いわゆるセパレートタイプであって、受像シートを感光材料から剥離して用いる態様である。
【0124】
いずれの態様もネガ型現像処理及び反転現像処理のいずれの現像を選択することもできる(拡散転写方式の場合は、感光材料としてオートポジ型感光材料を用いることによってネガ型現像処理が可能となる)。
【0125】
ここでいう化学現像、熱現像、溶解物理現像、拡散転写現像は、当業界で通常用いられている用語どおりの意味であり、写真化学の一般教科書、例えば菊地真一著「写真化学」(共立出版社、1955年刊行)、C.E.K.Mees編「The Theory of Photographic Processes, 4th ed.」(Mcmillan社、1977年刊行)に解説されている。本件は液処理に係る発明であるが、その他の現像方式として熱現像方式を適用する技術も参考にすることができる。例えば、特開2004−184693号、同2004−334077号、同2005−010752号の各公報、特願2004−244080号、同2004−085655号の各明細書に記載された技術を適用することができる。
【0126】
(感光材料)
[透明フイルム基材16]
本実施の形態の製造方法に用いられる感光材料の透明フイルム基材16としては、プラスチックフイルム等を用いることができる。
【0127】
上記プラスチックフイルムの原料としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、及びポリエチレンナフタレート等のポリエステル類;ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリスチレン、EVA等のポリオレフィン類;ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、PVB等のビニル系樹脂;その他、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリサルホン(PSF)、ポリエーテルサルホン(PES)、ポリカーボネート(PC)、ポリアミド、ポリイミド、アクリル樹脂、トリアセチルセルロース(TAC)等を用いることができる。
【0128】
本実施の形態においては、透光性、耐熱性、取り扱い易さ及び価格の点から、上記プラスチックフイルムはポリエチレンテレフタレートフイルム又はトリアセチルセルロース(TAC)であることが好ましい。
【0129】
窓ガラス用の透明発熱体では透光性が要求されるため、透明フイルム基材16の透光性は高いことが望ましい。この場合におけるプラスチックフイルムの全可視光透過率は70〜100%が好ましく、さらに好ましくは85〜100%であり、特に好ましくは90〜100%である。また、本発明では、前記プラスチックフイルムとして本発明の目的を妨げない程度に着色したものを用いることもできる。
【0130】
本実施の形態におけるプラスチックフイルムは、単層で用いることもできるが、2層以上を組み合わせた多層フイルムとして用いることも可能である。
【0131】
[保護層]
用いられる感光材料は、後述する乳剤層上に保護層を設けていてもよい。本実施の形態において「保護層」とは、ゼラチンや高分子ポリマーといったバインダからなる層を意味し、擦り傷防止や力学特性を改良する効果を発現するために感光性を有する乳剤層に形成される。上記保護層はめっき処理する上では設けない方が好ましく、設けるとしても薄い方が好ましい。その厚みは0.2μm以下が好ましい。上記保護層の塗布方法の形成方法は特に限定されず、公知の塗布方法を適宜選択することができる。
【0132】
[乳剤層]
本実施の形態の製造方法に用いられる感光材料は、透明フイルム基材16上に、光センサとして銀塩を含む乳剤層(銀塩含有層)を有することが好ましい。本実施の形態における乳剤層には、銀塩のほか、必要に応じて、染料、バインダ、溶媒等を含有することができる。
【0133】
<銀塩>
本実施の形態で用いられる銀塩としては、ハロゲン化銀等の無機銀塩が好ましく、特に銀塩がハロゲン化銀写真感光材料用ハロゲン化銀粒子の形で用いられるのが好ましい。ハロゲン化銀は、光センサとしての特性に優れている。
【0134】
ハロゲン化銀写真感光材料の写真乳剤の形で好ましく用いられるハロゲン化銀について説明する。
【0135】
本実施の形態では、光センサとして機能させるためにハロゲン化銀を使用することが好ましく、ハロゲン化銀に関する銀塩写真フイルムや印画紙、印刷製版用フイルム、フォトマスク用エマルジョンマスク等で用いられる技術は、本実施の形態においても用いることができる。
【0136】
上記ハロゲン化銀に含有されるハロゲン元素は、塩素、臭素、ヨウ素及びフッ素のいずれであってもよく、これらの組み合わせでもよい。例えば、AgCl、AgBr、AgIを主体としたハロゲン化銀が好ましく用いられ、さらにAgBrやAgClを主体としたハロゲン化銀が好ましく用いられる。塩臭化銀、沃塩臭化銀、沃臭化銀もまた好ましく用いられる。より好ましくは、塩臭化銀、臭化銀、沃塩臭化銀、沃臭化銀であり、最も好ましくは、塩化銀50モル%以上を含有する塩臭化銀、沃塩臭化銀が用いられる。
【0137】
なお、ここで、「AgBr(臭化銀)を主体としたハロゲン化銀」とは、ハロゲン化銀組成中に占める臭化物イオンのモル分率が50%以上のハロゲン化銀をいう。このAgBrを主体としたハロゲン化銀粒子は、臭化物イオンのほかに沃化物イオン、塩化物イオンを含有していてもよい。
【0138】
<バインダ>
乳剤層には、銀塩粒子を均一に分散させ、且つ、乳剤層と支持体との密着を補助する目的でバインダを用いることができる。本発明において、上記バインダとしては、非水溶性ポリマー及び水溶性ポリマーのいずれもバインダとして用いることができるが、水溶性ポリマーを用いることが好ましい。
【0139】
上記バインダとしては、例えば、ゼラチン、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリビニルピロリドン(PVP)、澱粉等の多糖類、セルロース及びその誘導体、ポリエチレンオキサイド、ポリサッカライド、ポリビニルアミン、キトサン、ポリリジン、ポリアクリル酸、ポリアルギン酸、ポリヒアルロン酸、カルボキシセルロース等が挙げられる。これらは、官能基のイオン性によって中性、陰イオン性、陽イオン性の性質を有する。
【0140】
乳剤層中に含有されるバインダの含有量は、特に限定されず、分散性と密着性を発揮し得る範囲で適宜決定することができる。
【0141】
<溶媒>
上記乳剤層の形成に用いられる溶媒は、特に限定されるものではないが、例えば、水、有機溶媒(例えば、メタノール等のアルコール類、アセトン等のケトン類、ホルムアミド等のアミド類、ジメチルスルホキシド等のスルホキシド類、酢酸エチル等のエステル類、エーテル類等)、イオン性液体、及びこれらの混合溶媒を挙げることができる。
【0142】
本発明の乳剤層に用いられる溶媒の含有量は、前記乳剤層に含まれる銀塩、バインダ等の合計の質量に対して30〜90質量%の範囲であり、50〜80質量%の範囲であることが好ましい。
【0143】
次に、メッシュパターン18を形成するための各工程について説明する。
【0144】
[露光]
本実施の形態では、透明フイルム基材16上に設けられた銀塩乳剤層58を有する感光材料への露光が行われる。露光は、電磁波を用いて行うことができる。電磁波としては、例えば、可視光線、紫外線等の光、X線等の放射線等が挙げられる。さらに露光には波長分布を有する光源を利用してもよく、特定の波長の光源を用いてもよい。
【0145】
パターン像を形成させる露光方式としては、均一光をマスクパターンを介して感光面に照射してマスクパターンを像様形成させる面露光方式と、レーザ光等のビームを走査してパターン状の照射部を感光性面上に形成させる走査露光方式とがある。コンパクトで、安価、さらに寿命が長く、安定性が高い装置を設計するためには、露光は半導体レーザを用いて行うことが最も好ましい。
【0146】
[現像処理]
本実施の形態では、乳剤層を露光した後、さらに現像処理が行われる。現像処理は、銀塩写真フイルムや印画紙、印刷製版用フイルム、フォトマスク用エマルジョンマスク等に用いられる通常の現像処理の技術を用いることができる。現像液については特に限定はしないが、PQ現像液、MQ現像液、MAA現像液等を用いることもでき、市販品では、例えば、富士フイルム社処方のCN−16、CR−56、CP45X、FD−3、パピトール、KODAK社処方のC−41、E−6、RA−4、D−19、D−72等の現像液、又はそのキットに含まれる現像液を用いることができる。また、リス現像液を用いることもできる。
【0147】
リス現像液としては、KODAK社処方のD85等を用いることができる。本発明では、上記の露光及び現像処理を行うことにより露光部に金属銀部44、好ましくはパターン状金属銀部が形成されると共に、未露光部に上述した光透過性部46が形成される。
【0148】
現像処理後の露光部に含まれる金属銀の質量は、露光前の露光部に含まれていた銀の質量に対して50質量%以上の含有率であることが好ましく、80質量%以上であることがさらに好ましい。露光部に含まれる銀の質量が露光前の露光部に含まれていた銀の質量に対して50質量%以上であれば、高い導電性を得ることができるため好ましい。
【0149】
[物理現像及びめっき処理]
本実施の形態では、上述した露光及び現像処理により形成された金属銀部44の導電性を向上させる目的で、金属銀部44に導電性金属粒子を担持させるための物理現像及び/又はめっき処理を行ってもよい。本実施の形態では物理現像又はめっき処理のいずれか一方のみで導電性金属粒子を金属銀部44に担持させることが可能であるが、さらに物理現像とめっき処理とを組み合わせて導電性金属粒子を金属銀部44に担持させることもできる。
【0150】
[カレンダー処理]
現像処理済みの金属銀部44(全面金属銀部、金属メッシュパターン部又は金属配線パターン部)にカレンダー処理を施して平滑化するようにしてもよい。これによって金属銀部44の導電性が顕著に増大する。カレンダー処理は、カレンダーロールにより行うことができる。カレンダーロールは通常一対のロールからなる。
【0151】
カレンダー処理に用いられるロールとしては、エポキシ、ポリイミド、ポリアミド、ポリイミドアミド等のプラスチックロール又は金属ロールが用いられる。特に、両面に乳剤層を有する場合は、金属ロール同士で処理することが好ましい。片面に乳剤層を有する場合は、シワ防止の点から金属ロールとプラスチックロールの組み合わせとすることもできる。線圧力の上限値は1960N/cm(200kgf/cm、面圧に換算すると699.4kgf/cm2)以上、さらに好ましくは2940N/cm(300kgf/cm、面圧に換算すると935.8kgf/cm2)以上である。線圧力の上限値は、6880N/cm(700kgf/cm)以下である。
【0152】
カレンダーロールで代表される平滑化処理の適用温度は10℃(温調なし)〜100℃が好ましく、より好ましい温度は、金属メッシュパターンや金属配線パターンの画線密度や形状、バインダ種によって異なるが、おおよそ10℃(温調なし)〜50℃の範囲にある。
【0153】
[蒸気接触処理]
カレンダー処理の直前あるいは直後に蒸気に接触させるとカレンダー処理による効果をより引き出すことができる。すなわち、導電性を著しく向上させることができる。使用する蒸気の温度は80℃以上が好ましく、100℃以上140℃以下がさらに好ましい。蒸気への接触時間は10秒から5分程度が好ましく、1分から5分がさらに好ましい。
【0154】
なお、本発明は、以下に記載の公開番号の技術と適宜組合わせて使用することができる。特開2004−221564号公報、特開2004−221565号公報、特開2007−200922号公報、特開2006−352073号公報、国際公開第2006/001461号パンフレット、特開2007−129205号公報、特開2007−235115号公報、特開2007−207987号公報、特開2006−012935号公報、特開2006−010795号公報、特開2006−228469号公報、特開2006−332459号公報、特開2007−207987号公報、特開2007−226215号公報、国際公開第2006/088059号パンフレット、特開2006−261315号公報、特開2007−072171号公報、特開2007−102200号公報、特開2006−228473号公報、特開2006−269795号公報、特開2006−267635号公報、特開2006−267627号公報、国際公開第2006/098333号パンフレット、特開2006−324203号公報、特開2006−228478号公報、特開2006−228836号公報、特開2006−228480号公報、国際公開2006/098336号パンフレット、国際公開第2006/098338号パンフレット、特開2007−009326号公報、特開2006−336057号公報、特開2006−339287号公報、特開2006−336090号公報、特開2006−336099号公報、特開2007−039738号公報、特開2007−039739号公報、特開2007−039740号公報、特開2007−002296号公報、特開2007−084886号公報、特開2007−092146号公報、特開2007−162118号公報、特開2007−200872号公報、特開2007−197809号公報、特開2007−270353号公報、特開2007−308761号公報、特開2006−286410号公報、特開2006−283133号公報、特開2006−283137号公報、特開2006−348351号公報、特開2007−270321号公報、特開2007−270322号公報、国際公開第2006/098335号パンフレット、特開2007−088218号公報、特開2007−201378号公報、特開2007−335729号公報、国際公開第2006/098334号パンフレット、特開2007−134439号公報、特開2007−149760号公報、特開2007−208133号公報、特開2007−178915号公報、特開2007−334325号公報、特開2007−310091号公報、特開2007−311646号公報、特開2007−013130号公報、特開2006−339526号公報、特開2007−116137号公報、特開2007−088219号公報、特開2007−207883号公報、特開2007−207893号公報、特開2007−207910号公報、特開2007−013130号公報、国際公開第2007/001008号パンフレット、特開2005−302508号公報、特開2005−197234号公報。
【0155】
なお、本発明に係る透明導電体及び透明発熱体は、上述の実施の形態に限らず、本発明の要旨を逸脱することなく、種々の構成を採り得ることはもちろんである。
【符号の説明】
【0156】
10…透明導電体
10A〜10D…第1透明導電体〜第4透明導電体
12a、12b…第1電極、第2電極
14…透明導電部
16…透明フイルム基材
18A、18B…第1メッシュパターン、第2メッシュパターン
20a〜20c…第1領域〜第3領域
22a、22a1、22a2…第1金属細線
22b、22b1、22b2…第2金属細線
24…交差部
26…円弧
30…開口部
32A〜32D…第1透明発熱体〜第4透明発熱体
40…銀塩感光層
44…金属銀部
46…光透過性部
48…導電性金属
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対向して配置された第1電極及び第2電極と、
前記第1電極及び前記第2電極間に配置された透明導電部とを有する透明導電体であって、
前記透明導電部は、1つの透明フイルム基材上に形成された複数の導電性の金属細線によるメッシュパターンを有し、
前記メッシュパターンは、前記第1電極と前記第2電極間の電気抵抗分布が変化するパターンにて形成されていることを特徴とする透明導電体。
【請求項2】
請求項1記載の透明導電体において、
前記第1電極と前記第2電極間に少なくとも第1領域及び第2領域を有し、
前記第1領域における電気抵抗分布の最大抵抗値をRm1とし、
前記第2領域における電気抵抗分布の最大抵抗値をRm2としたとき、
Rm1≠Rm2
であることを特徴とする透明導電体。
【請求項3】
請求項2記載の透明導電体において、
前記Rm1と前記Rm2の関係が、
Rm1<Rm2
のとき、
前記第1電極から前記第2電極に向かって少なくとも第1領域、第2領域、第1領域の順番で配列されていることを特徴とする透明導電体。
【請求項4】
請求項1記載の透明導電体において、
前記第1電極と前記第2電極間に少なくとも第1領域及び第2領域を有し、
前記第1領域のメッシュパターンの線幅をd1とし、
前記第2領域のメッシュパターンの線幅をd2としたとき、
d1≠d2
であることを特徴とする透明導電体。
【請求項5】
請求項4記載の透明導電体において、
前記d1と前記d2の関係が、
d1>d2
のとき、
前記第1電極から前記第2電極に向かって少なくとも第1領域、第2領域、第1領域の順番で配列されていることを特徴とする透明導電体。
【請求項6】
請求項1記載の透明導電体において、
前記第1電極と前記第2電極間に少なくとも第1領域及び第2領域を有し、
前記第1領域のメッシュパターンの配列ピッチをP1とし、
前記第2領域のメッシュパターンの配列ピッチをP2としたとき、
P1≠P2
であることを特徴とする透明導電体。
【請求項7】
請求項6記載の透明導電体において、
前記P1と前記P2の関係が、
P1<P2
のとき、
前記第1電極から前記第2電極に向かって少なくとも第1領域、第2領域、第1領域の順番で配列されていることを特徴とする透明導電体。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか1項に記載の透明導電体において、
前記メッシュパターンを構成する前記複数の金属細線のうち、一部の金属細線は、交差部間が少なくとも1つの円弧を有し、且つ、前記円弧の向きが互い違いにして配列された波線形状に形成されていることを特徴とする透明導電体。
【請求項9】
請求項8記載の透明導電体において、
前記メッシュパターンは、各メッシュ形状の外周線上であって、且つ、前記メッシュ形状の中心に対して点対称の位置にある任意の一対の接線が互いに平行であることを特徴とする透明導電体。
【請求項10】
請求項8又は9記載の透明導電体において、
前記円弧の中心角が75〜105°であることを特徴とする透明導電体。
【請求項11】
請求項8〜10のいずれか1項に記載の透明導電体において、
前記交差部における交差角度がほぼ90°であることを特徴とする透明導電体。
【請求項12】
請求項1〜11のいずれか1項に記載の透明導電体において、
前記メッシュパターンの前記金属細線が、前記透明フイルム基材上に設けられた銀塩感光層を露光して現像することによって形成された金属銀部を有することを特徴とする透明導電体。
【請求項13】
請求項1〜12のいずれかに記載の透明導電体を備えたことを特徴とする透明発熱体。
【請求項1】
対向して配置された第1電極及び第2電極と、
前記第1電極及び前記第2電極間に配置された透明導電部とを有する透明導電体であって、
前記透明導電部は、1つの透明フイルム基材上に形成された複数の導電性の金属細線によるメッシュパターンを有し、
前記メッシュパターンは、前記第1電極と前記第2電極間の電気抵抗分布が変化するパターンにて形成されていることを特徴とする透明導電体。
【請求項2】
請求項1記載の透明導電体において、
前記第1電極と前記第2電極間に少なくとも第1領域及び第2領域を有し、
前記第1領域における電気抵抗分布の最大抵抗値をRm1とし、
前記第2領域における電気抵抗分布の最大抵抗値をRm2としたとき、
Rm1≠Rm2
であることを特徴とする透明導電体。
【請求項3】
請求項2記載の透明導電体において、
前記Rm1と前記Rm2の関係が、
Rm1<Rm2
のとき、
前記第1電極から前記第2電極に向かって少なくとも第1領域、第2領域、第1領域の順番で配列されていることを特徴とする透明導電体。
【請求項4】
請求項1記載の透明導電体において、
前記第1電極と前記第2電極間に少なくとも第1領域及び第2領域を有し、
前記第1領域のメッシュパターンの線幅をd1とし、
前記第2領域のメッシュパターンの線幅をd2としたとき、
d1≠d2
であることを特徴とする透明導電体。
【請求項5】
請求項4記載の透明導電体において、
前記d1と前記d2の関係が、
d1>d2
のとき、
前記第1電極から前記第2電極に向かって少なくとも第1領域、第2領域、第1領域の順番で配列されていることを特徴とする透明導電体。
【請求項6】
請求項1記載の透明導電体において、
前記第1電極と前記第2電極間に少なくとも第1領域及び第2領域を有し、
前記第1領域のメッシュパターンの配列ピッチをP1とし、
前記第2領域のメッシュパターンの配列ピッチをP2としたとき、
P1≠P2
であることを特徴とする透明導電体。
【請求項7】
請求項6記載の透明導電体において、
前記P1と前記P2の関係が、
P1<P2
のとき、
前記第1電極から前記第2電極に向かって少なくとも第1領域、第2領域、第1領域の順番で配列されていることを特徴とする透明導電体。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか1項に記載の透明導電体において、
前記メッシュパターンを構成する前記複数の金属細線のうち、一部の金属細線は、交差部間が少なくとも1つの円弧を有し、且つ、前記円弧の向きが互い違いにして配列された波線形状に形成されていることを特徴とする透明導電体。
【請求項9】
請求項8記載の透明導電体において、
前記メッシュパターンは、各メッシュ形状の外周線上であって、且つ、前記メッシュ形状の中心に対して点対称の位置にある任意の一対の接線が互いに平行であることを特徴とする透明導電体。
【請求項10】
請求項8又は9記載の透明導電体において、
前記円弧の中心角が75〜105°であることを特徴とする透明導電体。
【請求項11】
請求項8〜10のいずれか1項に記載の透明導電体において、
前記交差部における交差角度がほぼ90°であることを特徴とする透明導電体。
【請求項12】
請求項1〜11のいずれか1項に記載の透明導電体において、
前記メッシュパターンの前記金属細線が、前記透明フイルム基材上に設けられた銀塩感光層を露光して現像することによって形成された金属銀部を有することを特徴とする透明導電体。
【請求項13】
請求項1〜12のいずれかに記載の透明導電体を備えたことを特徴とする透明発熱体。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【公開番号】特開2010−205432(P2010−205432A)
【公開日】平成22年9月16日(2010.9.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−46530(P2009−46530)
【出願日】平成21年2月27日(2009.2.27)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年9月16日(2010.9.16)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年2月27日(2009.2.27)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】
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