説明

透明導電性微粒子及びその製造方法

【課題】導電性が良く、光透過率の高い透明導電性超微粒子又は透明導電性薄膜を微粒子に被覆した透明導電性微粒子及びその製造方法、電気光学装置を提供する。
【解決手段】本発明に係る透明導電性微粒子は、内部の断面形状が多角形を有する真空容器1を、前記断面に対して略垂直方向を回転軸として回転させることにより、該真空容器1内の微粒子3を攪拌あるいは回転させながらスパッタリングを行うことで、該微粒子3の表面に該微粒子より粒径の小さい透明導電性超微粒子又は透明導電性薄膜が被覆されたことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、透明導電性微粒子及びその製造方法、電気光学装置に係わり、特に、導電性が良く、光透過率の高い透明導電性超微粒子又は透明導電性薄膜を微粒子に被覆した透明導電性微粒子及びその製造方法に関し、また前記透明導電性微粒子を用いた電気光学装置に関する。
【背景技術】
【0002】
粉体は基礎的にも応用としても非常に魅力的な試料であり、現在様々な分野で利用されている。例えば粉体のきめの細かさを利用して、化粧品のファンデーションに使われたり、フェライトの微粒子は単一磁区を形成する為に磁気テープに塗布する磁性体として利用されている。また粉体の特性にその表面積の大きさがあるが、それを利用した微粒子触媒が作られてもいる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上述したように非常に可能性の大きい材料である為、更に粉体表面に機能性材料を修飾させ、高機能、新機能を発現させる新材料開発技術が求められている。
【0004】
本発明は上記のような事情を考慮してなされたものであり、その目的は、導電性が良く、光透過率の高い透明導電性超微粒子又は透明導電性薄膜を微粒子に被覆した透明導電性微粒子及びその製造方法、電気光学装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するため、本発明に係る透明導電性微粒子は、微粒子の表面に該微粒子より粒径の小さい透明導電性超微粒子又は透明導電性薄膜が被覆されたことを特徴とする。
【0006】
本発明に係る透明導電性微粒子は、内部の断面形状が多角形を有する真空容器を、前記断面に対して略垂直方向を回転軸として回転させることにより、該真空容器内の微粒子を攪拌あるいは回転させながらスパッタリングを行うことで、該微粒子の表面に該微粒子より粒径の小さい透明導電性超微粒子又は透明導電性薄膜が被覆されたことを特徴とする。
【0007】
尚、前記透明導電性超微粒子又は透明導電性薄膜としては、ITO(酸化インジウムスズ;Indium Tin Oxide)超微粒子又はITO薄膜、SnO超微粒子又はSnO薄膜、光が透過できる程度に薄い金属超微粒子又は光が透過できる程度に薄い金属薄膜を用いることも可能である。前記金属超微粒子又は前記金属薄膜に用いられる金属としては、例えばAu、Pt、Ti、Ag、Al、Cu、Pd等が挙げられる。
【0008】
また、本発明に係る透明導電性微粒子において、前記微粒子が絶縁体、発光体及び蛍光体のいずれかからなることが好ましい。前記絶縁体としては、Al、SiO、TiO、ZnO、ZrO、ポリマーのいずれかを用いることも可能である。
【0009】
本発明に係る電気光学装置は、透明導電性微粒子の集合体からなる粉末と、
前記粉末に接続された接地電位電極と、
を具備し、
前記透明導電性微粒子は、微粒子の表面に該微粒子より粒径の小さい透明導電性超微粒子又は透明導電性薄膜が被覆されたものであり、
前記微粒子が発光体又は蛍光体であることを特徴とする。
【0010】
本発明に係る電気光学装置は、透明導電性微粒子の集合体からなる粉末と、
前記粉末に接続された接地電位電極と、
を具備し、
前記透明導電性微粒子は、内部の断面形状が多角形を有する真空容器を、前記断面に対して略垂直方向を回転軸として回転させることにより、該真空容器内の微粒子を攪拌あるいは回転させながらスパッタリングを行うことで、該微粒子の表面に該微粒子より粒径の小さい透明導電性超微粒子又は透明導電性薄膜が被覆されたものであり、
前記微粒子が発光体又は蛍光体であることを特徴とする。
【0011】
本発明に係る電気光学装置は、透明導電性微粒子の集合体からなる粉末と、
前記粉末に接続された第1電極と、
前記粉末に接続された第2電極と、
前記第1電極と前記第2電極との間に電圧を印加する電源と、
を具備し、
前記透明導電性微粒子は、微粒子の表面に該微粒子より粒径の小さい透明導電性超微粒子又は透明導電性薄膜が被覆されたものであり、
前記微粒子が発光体又は蛍光体であることを特徴とする。
【0012】
本発明に係る電気光学装置は、透明導電性微粒子の集合体からなる粉末と、
前記粉末に接続された第1電極と、
前記粉末に接続された第2電極と、
前記第1電極と前記第2電極との間に電圧を印加する電源と、
を具備し、
前記透明導電性微粒子は、内部の断面形状が多角形を有する真空容器を、前記断面に対して略垂直方向を回転軸として回転させることにより、該真空容器内の微粒子を攪拌あるいは回転させながらスパッタリングを行うことで、該微粒子の表面に該微粒子より粒径の小さい透明導電性超微粒子又は透明導電性薄膜が被覆されたものであり、
前記微粒子が発光体又は蛍光体であることを特徴とする。
【0013】
本発明に係る透明導電性微粒子の製造方法は、微粒子を準備する工程と、
重力方向に対して略平行な断面の内部形状が多角形である真空容器内に前記微粒子を収容する工程と、
前記断面に対して略垂直方向を回転軸として前記真空容器を回転させることにより、該真空容器内の微粒子を攪拌あるいは回転させながらスパッタリングを行うことで、該微粒子の表面に該微粒子より粒径の小さい透明導電性超微粒子又は透明導電性薄膜を被覆する工程と、
を具備することを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
以上説明したように本発明によれば、導電性が良く、光透過率の高い透明導電性超微粒子又は透明導電性薄膜を微粒子に被覆した透明導電性微粒子及びその製造方法、電気光学装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の実施の形態による透明導電性微粒子を製造する際に用いる多角バレルスパッタ装置の概略を示す構成図である。
【図2】本発明の実施の形態2による電気光学装置を模式的に示す断面図である。
【図3】本発明の実施の形態3による電気光学装置を模式的に示す断面図である。
【図4】(a),(b)はガラス基板上に成膜したITO薄膜のXRDパターンを示す図である。
【図5】(a)は酸素分量0,10,20%それぞれのITO薄膜の紫外−可視吸光スペクトルを示す図であり、(b)は焼鈍後の試料の紫外−可視吸光スペクトルを示す図である。
【図6】酸素分量0,10,20%それぞれのITO薄膜の電気抵抗を示す図である。
【図7】成膜した試料の外観を示す写真である。
【図8】透明導電性微粒子の紫外可視吸収スペクトルを測定した結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1による透明導電性微粒子を製造する際に用いる多角バレルスパッタ装置の概略を示す構成図である。この多角バレルスパッタ装置は、微粒子(粉体)の表面に、該微粒子より粒径の小さい超微粒子(ここでの超微粒子とは微粒子より粒径の小さい微粒子をいう)又は薄膜を被覆させるための装置である。
【0017】
多角バレルスパッタ装置は、微粒子(粉体試料)3に超微粒子又は薄膜を被覆させる真空容器1を有しており、この真空容器1は直径200mmの円筒部1aとその内部に設置された断面が六角形のバレル(六角型バレル)1bとを備えている。ここで示す断面は、重力方向に対して略平行な断面である。なお、本実施の形態では、六角形のバレル1bを用いているが、これに限定されるものではなく、六角形以外の多角形のバレルを用いることも可能である。
【0018】
真空容器1には回転機構(図示せず)が設けられており、この回転機構により六角型バレル1bを矢印のように回転させることで該六角型バレル1b内の微粒子(粉体試料)3を攪拌あるいは回転させながら被覆処理を行うものである。前記回転機構により六角型バレルを回転させる際の回転軸は、ほぼ水平方向(重力方向に対して垂直方向)に平行な軸である。また、真空容器1内には円筒の中心軸上にITO(10wt%SnO)からなるスパッタリングターゲット2が配置されており、このターゲット2は角度を自由に変えられるように構成されている。これにより、六角型バレル1bを回転させながら被覆処理を行う時、ターゲット2を粉体試料3の位置する方向に向けることができ、それによってスパッタ効率を上げることが可能となる。
【0019】
真空容器1には配管4の一端が接続されており、この配管4の他端には第1バルブ12の一方側が接続されている。第1バルブ12の他方側は配管5の一端が接続されており、配管5の他端はターボ分子ポンプ(TMP)10の吸気側に接続されている。ターボ分子ポンプ10の排気側は配管6の一端に接続されており、配管6の他端は第2バルブ13の一方側に接続されている。第2バルブ13の他方側は配管7の一端に接続されており、配管7の他端はポンプ(RP)11に接続されている。また、配管4は配管8の一端に接続されており、配管8の他端は第3バルブ14の一方側に接続されている。第3バルブ14の他方側は配管9の一端に接続されており、配管9の他端は配管7に接続されている。
【0020】
本装置は、真空容器1内の粉体試料3を加熱するためのヒータ17を備えている。また、本装置は、真空容器1内の粉体試料3に振動を加えるためのバイブレータ18を備えている。また、本装置は、真空容器1の内部圧力を測定する圧力計19を備えている。また、本装置は、真空容器1内に窒素ガスを導入する酸素ガス導入機構15を備えていると共に真空容器1内にアルゴンガスを導入するアルゴンガス導入機構16を備えている。また、本装置は、ターゲット2と六角型バレル1bとの間に高周波を印加する高周波印加機構(図示せず)を備えている。
【0021】
次に、上記多角バレルスパッタ装置を用いて微粒子3に透明導電性薄膜を被覆する透明導電性微粒子の製造方法について説明する。
まず、六角型バレル1b内に約5グラムの粉体試料3を導入する。この粉体試料3としては粒子径が80μmのAl粉体を用いた。また、ターゲット2にはITOを用いた。なお、本実施の形態では、Al粉体を用いているが、これに限定されるものではなく、他の材料、例えばAl、SiO、TiO、ZnO、ZrO、ポリマーなどの絶縁体、発光体、蛍光体からなる粉体を用いることも可能である。本多角バレルスパッタ方法を用いれば、幅広い材料粉体に透明導電性薄膜を被覆することが可能である。
【0022】
次いで、ターボ分子ポンプ10を用いて六角型バレル1b内に高真空状態を作り、ヒータ17で六角型バレルを200℃まで加熱しながら、六角型バレル内を5×10−4Paに減圧した。その後、アルゴンガス供給機構16によりアルゴンを六角型バレル1b内に導入する。この際の六角型バレル内の圧力は2Pa程度である。場合によってはアルゴンと酸素の混合ガスを六角型バレル1b内に導入しても良い。そして、回転機構により六角型バレル1bを50Wで180分間、3.5rpmで回転させることで、六角型バレル1b内の粉体試料3を回転させ、攪拌させる。その際、ターゲットは粉体試料の位置する方向に向けられる。その後、高周波印加機構によりターゲット2と六角型バレル1bとの間に高周波を印加することで、粉体試料3の表面にITOをスパッタリングする。このようにして微粒子3の表面にITO薄膜を被覆することができる。
【0023】
上記実施の形態1によれば、六角型バレル自体を回転させることで粉体自体を回転させ攪拌でき、更にバレルを六角型とすることにより、粉体を重力により定期的に落下させることができる。このため、攪拌効率を飛躍的に向上させることができ、粉体を扱う時にしばしば問題となる水分や静電気力による粉体の凝集を防ぐことができる。つまり回転により攪拌と、凝集した粉体の粉砕を同時かつ効果的に行うことができる。したがって、粒径の非常に小さい微粒子にITO薄膜を被覆することが可能となる。具体的には、粒径が50μm以下の微粒子に超微粒子又は薄膜を被覆することが可能となる。
【0024】
また、本実施の形態では、真空容器1の外側にヒータ17を取り付けており、このヒータ17により六角型バレル1bを200℃まで加熱することができる。このため、真空容器1の内部を真空にする際、ヒータ17で六角型バレルを加熱することにより、該六角型バレル内の水分を気化させ排気することができる。したがって、粉体を扱う時に問題となる水を六角型バレル内から除去することができるため、粉体の凝集をより効果的に防ぐことができる。
【0025】
また、本実施の形態では、真空容器1の外側にバイブレータ18を取り付けており、このバイブレータ18により六角型バレル内の粉体3に振動を加えることができる。これにより、粉体を扱う時に問題となる凝集をより効果的に防ぐことが可能となる。
【0026】
また、本実施の形態では、多角バレルスパッタ装置により粉体試料3の表面に微粒子を被覆しているため、従来技術のめっき法のように廃液の処理が必要なく、環境に対する負荷も小さくできるという利点がある。
【0027】
尚、上記実施の形態1では、バイブレータ18により六角型バレル内の粉体3に振動を加えているが、バイブレータ18の代わりに、又は、バイブレータ18に加えて、六角型バレル内に棒状部材を収容した状態で該六角型バレルを回転させることにより、粉体3に振動を加えることも可能である。これにより、粉体を扱う時に問題となる凝集をより効果的に防ぐことが可能となる。
【0028】
また、上記実施の形態1では、微粒子に被覆する透明導電性薄膜又は透明導電性超微粒子としてITOを用いているが、これに限定されるものではなく、SnO薄膜又はSnO超微粒子、光が透過できる程度に薄い金属薄膜又は光が透過できる程度に薄い金属超微粒子を用いることも可能であり、前記金属薄膜又は前記金属超微粒子に用いられる金属としては、例えばAu、Pt、Ti、Ag、Al、Cu、Pd等が好ましい。
【0029】
また、上述した透明導電性微粒子の用途としては、例えば液晶に代表されるディスプレーの導電性スペーサーが挙げられる。
【0030】
(実施の形態2)
図2は、本発明の実施の形態2による電気光学装置を模式的に示す断面図である。
この電気光学装置は、透明導電性微粒子43の集合体からなる粉末44を備えている。この透明導電性微粒子43は、微粒子41と、その微粒子41を被覆する透明導電性薄膜42とを有するものであり、実施の形態1と同様の方法により作製される。
【0031】
前記微粒子41は、無機EL素子(エレクトロルミネッセンス素子;electroluminescence)などの発光体又は蛍光体からなる。無機EL素子の微粒子は、無機EL材料からなるバルクを粉砕及び加工して微粒子を形成したものである。
【0032】
また、前記透明導電性薄膜は、ITO薄膜、SnO薄膜、光が透過できる程度に薄い金属薄膜を用いることができる。前記金属薄膜に用いられる金属としては、例えばAu、Pt、Ti、Ag、Al、Cu、Pd等が挙げられる。
【0033】
前記粉末44の一部は電極45に接続されており、この電極45は接地電位に接続されている。
【0034】
透明導電性微粒子43の集合体にはチャージが発生することがあり、それにより凝集が起こることがある。これに対し、本実施の形態では、粉末44の一部を電極45に接続し、この電極45を接地電位に接続しているため、チャージを除去することができる。
【0035】
(実施の形態3)
図3は、本発明の実施の形態3による電気光学装置を模式的に示す断面図である。
この電気光学装置は、透明導電性微粒子53の集合体からなる粉末54を備えている。この透明導電性微粒子53は、微粒子51と、その微粒子51を被覆する透明導電性薄膜52とを有するものであり、実施の形態1と同様の方法により作製される。
【0036】
前記微粒子41は、無機EL素子などの発光体又は蛍光体からなる。無機EL素子の微粒子は、無機EL材料からなるバルクを粉砕及び加工して微粒子を形成したものである。
【0037】
また、前記透明導電性薄膜は、実施の形態2と同様であるので、説明を省略する。
【0038】
前記粉末54の一部は第1電極55に接続されており、前記粉末54の他の一部は第2電極56に接続されている。第1電極55と第2電極56との間には電圧を印加する電源57及びスイッチ58が配置されている。スイッチ58をオンすると電源57によって第1電極55と第2電極56との間の粉末54に直流電圧が印加され、発光体又は蛍光体からなる微粒子51に透明導電性薄膜52を介して直流電圧が印加され、その結果、微粒子51が光又は蛍光を発する。
【実施例】
【0039】
SiOガラス基板上にITO薄膜を多角バレルではないスパッタリング装置により成膜したことについて説明する。
まず、ITO薄膜の成膜条件を検討するため、酸素分量を全圧に対し0%、10%、20%と変化させた際のITO薄膜の構造、物性変化を調べた。その他は、使用ターゲットはITO(10wt%SnO)、出力50W、スパッタリング時間60分、室温の条件で固定した。尚、酸素分量が0%の場合はアルゴン流量を20sccmとし、酸素分量が10%の場合はアルゴン流量を18sccm、酸素流量を2sccmとし、酸素分量が20%の場合はアルゴン流量を16sccm、酸素流量を4sccmとした。
【0040】
図4は、上記の条件でガラス基板上に成膜したITO薄膜のXRDパターンを示すものであり、図4(a)は酸素分量を0%にした場合のITO薄膜のXRDパターンであり、図4(b)は酸素分量を20%にした場合のITO薄膜のXRDパターンである。
【0041】
全ての成膜条件(酸素分量0,10,20%)において、観測された回折ピークはIn型の結晶構造に帰属でき、回折ピークの角度についても3つの試料でほぼ一致していた。これより、反応性スパッタリングによるITO薄膜の成膜が可能であることがわかった。
【0042】
図5(a)は、酸素分量0,10,20%それぞれのITO薄膜の紫外−可視吸光スペクトルを示す図である。酸素分量0%のITO薄膜21では可視光全域に渡って吸収が認められたが、酸素分量10%、20%のITO薄膜22,23では400nm以上では殆ど吸収はなかった。
【0043】
上記のITO薄膜を成膜した後の試料をAr雰囲気において450℃で120分間焼鈍した。この焼鈍後の試料の紫外可視吸光スペクトルを図5(b)に示している。
焼鈍後のXRDパターンは焼鈍前と比較して、回折ピークの角度、強度共に目立った変化は見られなかった(例として酸素分量0%のXRDパターンを図4に示す)。しかし紫外可視吸光スペクトルは、図5(b)に示すように、酸素分量0%の試料24でも可視光領域の吸収がなくなり、全ての試料(酸素分量10%のITO薄膜25、酸素分量20%のITO薄膜26)において可視光に対し高透過率を示す事がわかった。
【0044】
次に、ITO薄膜の導電性測定を行った。測定は直流2端子法により行い、端子接点としてIn金属を用いた。端子間距離は1mm、試料幅は10mm、膜厚は80〜120nmである。測定結果を図6に示す。図6は、酸素分量0,10,20%それぞれのITO薄膜の電気抵抗を示す図である。
【0045】
焼鈍前の試料では、酸素分量が減少するに従って抵抗値が低下し、酸素分量0%では約6Ωを示す。単純に比抵抗に換算すると5×10−4Ωcmとなり、他の文献と比較しても十分に低い抵抗値が得られた。焼鈍後の試料の測定結果では、抵抗値変化の傾向は焼鈍前と同じであるが、全てがより低い抵抗値を示した。最も小さい酸素分量0%では約2Ωを示した。
【0046】
以上の結果より、高光透過率、良導電性を示すITO薄膜の成膜には、酸素分量0%において、成膜後に焼鈍を行うことが望ましいことがわかった。
【0047】
次に、粉体微粒子表面にITO薄膜を成膜して透明導電性微粒子を作製した。
酸素分量0%の条件で、バレルスパッタリング法にて粉体表面へのITO薄膜の成膜を行った。粒子径が80μmのAl粉体を一回に約5g六角バレル内に導入し、回転数3.5rpmにて180分間スパッタリングを行った。その他の条件は上記のものと同様である。成膜後の試料はAr雰囲気中で450℃、120分間の焼鈍を行った。
【0048】
図7は、成膜した試料の外観を示す写真である。図7中の成膜していない試料(未修飾試料)27は白色であるのに対し、スパッタリング後の透明導電性微粒子(スパッタリングのみ)28は薄い茶色を呈している。この透明導電性微粒子を焼鈍すると、焼鈍した透明導電性微粒子29はスパッタリングのみの透明導電性微粒子28に対して茶色が薄くなった。これはガラス基板上での傾向と同様である。
【0049】
透明導電性微粒子のXRD測定を行うと、Alの回折ピークの中に小さくInOに帰属できるピークが見られた。また、蛍光X線分析からは、In:Sn=87:13wt%の割合で検出された。ターゲットの混合割合はIn:Sn=88:12wt%であり、ターゲットとほぼ同じ組成のITOが成膜されていると考えられる。
【0050】
次に、上記透明導電性微粒子の紫外可視吸収スペクトルを測定した。測定結果を図8に示す。図8に示すように、担体となるAl粒子30は可視光全域に渡り吸収が小さい。一方、焼鈍後の透明導電性微粒子31は担体粒子30より僅かに吸光度は大きいものの、可視光領域では高い透過率を示した。
【0051】
さらに透明導電性微粒子の電気抵抗測定を行った。測定は金属(Al)の平板の間に透明導電性微粒子を約0.05gはさみ、平板間の電気抵抗を二端子法にて測定した。ITO薄膜を被覆した透明導電性微粒子の抵抗値は5Ωとなり、平板と同じく焼鈍により抵抗値が減少するとわかった(ちなみに、未修飾Al粒子の測定も行ったが、測定機器の測定範囲外(100MΩ以上)であった。)。金属(Pt)を修飾したAl粒子を同様に測定すると0.4Ω程度を示す。金属と比較して約10倍程度の抵抗値であり、十分小さい抵抗値を達成していると言える。
【0052】
以上の結果を総合すると、ITO薄膜を被覆した透明導電性微粒子の成膜がバレルスパッタリング法により可能であることが確認された。
【0053】
尚、本発明は上記実施の形態及び実施例に限定されず、本発明の主旨を逸脱しない範囲内で種々変更して実施することが可能である。例えば、微粒子にITO薄膜を成膜する成膜条件を適宜変更することも可能である。
【符号の説明】
【0054】
1…真空容器
1a…円筒部
1b…六角型バレル
2…ターゲット
3…微粒子(粉体試料)
4〜9…配管
10…ターボ分子ポンプ(TMP)
11…ポンプ(RP)
12〜14…第1〜第3バルブ
15…酸素ガス導入機構
16…アルゴンガス導入機構
17…ヒータ
18…バイブレータ
19…圧力計
21…酸素分量0%のITO薄膜
22…酸素分量10%のITO薄膜
23…酸素分量20%のITO薄膜
24…酸素分量0%の試料
25…酸素分量10%の試料
26…酸素分量20%の試料
27…未修飾試料
28…スパッタリングのみの透明導電性微粒子
29…焼鈍した透明導電性微粒子
30…Al粒子
31…焼鈍後の透明導電性微粒子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
Al、SiO、TiO、ZnO、ZrO及びポリマーのいずれかからなる微粒子の表面に該微粒子より粒径の小さい透明導電性超微粒子又は透明導電性薄膜が被覆されたことを特徴とする透明導電性微粒子。
【請求項2】
内部の断面形状が多角形を有する真空容器を、前記断面に対して略垂直方向を回転軸として回転させることにより、該真空容器内のAl、SiO、TiO、ZnO、ZrO及びポリマーのいずれかからなる微粒子を攪拌あるいは回転させながらスパッタリングを行うことで、該微粒子の表面に該微粒子より粒径の小さい透明導電性超微粒子又は透明導電性薄膜が被覆されたことを特徴とする透明導電性微粒子。
【請求項3】
Al、SiO、TiO、ZnO、ZrO及びポリマーのいずれかからなる微粒子を準備する工程と、
重力方向に対して略平行な断面の内部形状が多角形である真空容器内に前記微粒子を収容する工程と、
前記断面に対して略垂直方向を回転軸として前記真空容器を回転させることにより、該真空容器内の微粒子を攪拌あるいは回転させながらスパッタリングを行うことで、該微粒子の表面に該微粒子より粒径の小さい透明導電性超微粒子又は透明導電性薄膜を被覆する工程と、
を具備することを特徴とする透明導電性微粒子の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図8】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−89510(P2012−89510A)
【公開日】平成24年5月10日(2012.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−272654(P2011−272654)
【出願日】平成23年12月13日(2011.12.13)
【分割の表示】特願2005−225147(P2005−225147)の分割
【原出願日】平成17年8月3日(2005.8.3)
【出願人】(503004965)
【出願人】(595152438)株式会社ユーテック (59)
【Fターム(参考)】