説明

透明導電性積層フィルム及びそれを用いたタッチパネル

【課題】本発明は、干渉縞の発生が少なく、透明性、コントラスト、視認性、及び、耐久性に優れ、ノルボルネン系樹脂からなる基材を用いても、該基材と放射線硬化性樹脂からなる層との間で優れた密着性を得ることのできる導電性積層フィルム、及びタッチパネルを提供する。
【解決手段】透明導電性積層フィルム1は、(I)ノルボルネン系樹脂からなる透明基材フィルム2と、(II)放射線硬化性樹脂組成物の硬化物からなる樹脂層3と、(III)透明導電性層4とがこの順に積層されてなる。(II)樹脂層3を形成する放射線硬化性樹脂組成物は、直鎖アルキレンジ(メタ)アクリレートを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、透明導電性積層フィルム、及び該フィルムを用いたタッチパネルに関する。
【背景技術】
【0002】
パーソナル・デジタル・アシスタント(PDA)、ノートPC、OA機器、医療機器、或いはカーナビゲーションシステム等の電子機器においては、これらのディスプレイに入力手段を兼ね備えたタッチパネルが広く用いられている。
このタッチパネルは、通常、透明なベースフィルムと、該ベースフィルムの片面に設けられた、金属酸化物(例えば、インジウム錫酸化物、錫アンチモン酸等)又は金属(例えば、金、パラジウム、アルミニウム、銀等)の薄膜からなる透明導電膜と、を含むものであるが、金属酸化物又は金属の薄膜は光の反射が大きいため、ディスプレイのコントラストが著しく低下し、画面が極めて見えにくくなる(視認性が低下する)という問題がある。
このような問題を解決するために、例えば、液晶ディスプレイの前面に配置されるタッチパネルであって、液晶ディスプレイ側から順に第1の1/4波長板、スペーサーを介して対向する2枚の透明導電膜、第2の1/4波長板、偏光板を配置してなる液晶ディスプレイ用タッチパネルが提案されている(特許文献1)。
特許文献1に記載の技術によると、画面の視認性をある程度向上させることができるが、未だ不十分であり、コントラストのさらなる向上が望まれている。また、タッチパネルが多層構造であるために、光線透過率や視野角補償性などの光学特性が劣ってしまうという問題がある。
【0003】
また、従来のタッチパネルでは、部材相互間に干渉縞(ニュートンリング)が発生し、パネルの輝度にバラツキが生じてしまうという問題がある。
このような問題を解決するために、例えば、第1透明抵抗膜が形成された第1透明基材と、前記第1透明基材に間隔を開けて向き合い、前記第1透明抵抗膜に対面する第2透明抵抗膜が形成された第2透明基材とを備え、前記第1および第2透明抵抗膜の少なくともいずれか一方には畝部が所定のピッチで複数形成されたことを特徴とする透明座標入力装置が提案されている(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平10−48625号公報
【特許文献2】特開2005−18726号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献2に記載の技術では、干渉縞の発生は抑制できるものの、表面反射光を抑えることはできず、高いコントラストや視認性、耐久性を得る事はできないという問題がある。また、特許文献2に記載の技術では、透明抵抗膜(透明導電層)に畝部を形成する作業が煩雑であるという問題がある。すなわち、この技術では、金型を用いて透明樹脂を射出成形し、表面に畝部を有する透明基材を形成した後、この透明基材に透明抵抗膜を成膜させるか、あるいは、平坦な透明基材上に透明抵抗膜を成膜し、エッチング等の手法により該抵抗膜に畝部を形成する必要がある。
ここで、透明基材と透明導電性層との間に放射線硬化性樹脂からなる層を設けることが考えられるが、溶剤系の放射線硬化性樹脂では畝部を形成することができないため干渉縞の発生を抑制することができず、一方、従来の無溶剤系では、畝部を形成することはできるものの、基材としてノルボルネン系樹脂からなる基材を用いると、該基材と放射線硬化性樹脂からなる層との密着性が不十分となるという問題があった。
そこで、本発明は、干渉縞の発生が少なく(換言すると、優れたアンチニュートンリング性を有し)、透明性、コントラスト、視認性、及び、耐久性に優れ、ノルボルネン系樹脂からなる基材を用いても、該基材と放射線硬化性樹脂からなる層との間で優れた密着性を得ることのできる導電性積層フィルム、及びタッチパネルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、特定の成分組成を有する無溶剤系の放射線硬化性樹脂組成物によれば、本発明の上記目的を達成することができることを見出し、本発明を完成した。
【0007】
すなわち、本発明は、以下の[1]〜[7]を提供するものである。
[1] (I)ノルボルネン系樹脂からなる透明基材フィルムと、(II)放射線硬化性樹脂組成物の硬化物からなる樹脂層と、(III)透明導電性層とがこの順に積層されてなる導電性積層フィルムであって、上記(II)樹脂層を形成する放射線硬化性樹脂組成物が、直鎖アルキレンジ(メタ)アクリレートを含むことを特徴とする透明導電性積層フィルム。
[2] 上記(II)樹脂層が、上記(III)透明導電性層との境界面に凹凸を有するプリズム板状に形成されている上記[1]に記載の透明導電性積層フィルム。
[3] 上記(II)樹脂層を形成するための放射線硬化性樹脂組成物が、ウレタン(メタ)アクリレート化合物を含む上記[1]又は[2]に記載の透明導電性積層フィルム。
[4] 上記(I)透明基材フィルムを構成するノルボルネン系樹脂は、下記式(1)で表わされる少なくとも1種の化合物を含む単量体組成物を(共)重合して得られる樹脂である上記[1]〜[3]のいずれかに記載の透明導電性積層フィルム。
【化1】

(式(1)中、R〜Rは、それぞれ独立に、水素原子;ハロゲン原子;または酸素、窒素、イオウもしくはケイ素を含有していてもよい1価の有機基を表し、RとRと、RとRとが、それぞれ独立に、一体化してアルキリデン基を形成していてもよく、RとRと、RとRと、RとRとが、それぞれ独立に、相互に結合して単環または多環の炭素環もしくは複素環を形成してもよく、xは0〜3の整数を表し、yは0または1を表す。)
[5] 上記(I)透明基材フィルムが、プラズマ処理されたフィルムである上記[1]〜[4]のいずれかに記載の透明導電性積層フィルム。
[6] 上記(III)透明導電性層が、結晶性ITOからなる層である上記[1]〜[5]のいずれかに記載の透明導電性積層フィルム。
[7] 上記[1]〜[6]のいずれかに記載の透明導電性積層フィルムを含むタッチパネル。
【発明の効果】
【0008】
本発明の導電性積層フィルムは、特定の放射線硬化性樹脂組成物を用いているため、(I)透明基材フィルムとして、ノルボルネン系樹脂からなるフィルムを用いているにもかかわらず、該フィルムに対して優れた密着性を得ることができる。
また、本発明の導電性積層フィルムは、無溶剤の放射線硬化性樹脂組成物を用いているため、平坦な表面形状を有する透明基材フィルムの上面に該放射線硬化性樹脂組成物を塗布し、所望の形状(例えば、プリズム面を連続させたような畝形状)を有する部材を密着させるなどして、放射線を照射するという簡易な作業により、特定の形状(例えば、プリズム板状)を有する硬化物層を形成することができる。さらに、この硬化物層の表面に(III)透明導電性層を形成するための結晶性ITO等の材料を成膜させることにより、所望の形状を有する(III)透明導電性層を容易に形成することができる。
さらに、本発明の導電性積層フィルムは、例えば、(II)樹脂層がプリズム板状である場合、干渉縞の発生が少なく(換言すると、優れたアンチニュートンリング性を有し)、透明性、コントラスト、視認性、及び、耐久性に優れる。
本発明のタッチパネルは、上記導電性積層フィルムを含むため、液晶ディスプレイ上に設けられ、入力手段として使用する用途に好適である。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】図1は、本発明の透明導電性積層フィルムの一例を示す断面図である。
【図2】図2は、本発明のタッチパネルの一例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
まず、本発明の導電性積層フィルムについて、適宜図面を参照しつつ説明する。
図1は、本発明の導電性積層フィルムの一例を模式的に示す断面図である。
図1中、本発明の導電性積層フィルム1は、(I)透明基材フィルム2と、(I)透明基材フィルム2の上面に積層して形成された(II)樹脂層3と、(II)樹脂層3の上面に積層して形成された(III)透明導電性層4とからなる。(II)樹脂層3は、特定の放射線硬化性樹脂の硬化物からなるプリズム板状の層である。(III)透明導電性層4は、(II)樹脂層3の上面の形状と同様な形状を有しかつ一定の厚みを有する薄肉の鋸歯状の層である。
【0011】
[(I)透明基材フィルム]
本発明の導電性積層フィルムを構成する(I)透明基材フィルムは、ノルボルネン系樹脂からなるフィルムである。
ノルボルネン系樹脂としては、ノルボルネン骨格を有する環状オレフィン系化合物を1種以上含む単量体組成物を、開環(共)重合あるいは付加(共)重合してなる(共)重合体、あるいはその水素添加物が挙げられる。なお、前記単量体組成物は、ノルボルネン骨格を有する環状オレフィン系化合物と共重合可能な他の単量体を含むことができる。
【0012】
上記ノルボルネン骨格を有する環状オレフィン系化合物としては、下記式(1)で表わされる化合物が挙げられる。
【化2】

(式(1)中、R〜Rは、それぞれ独立に、水素原子;ハロゲン原子;または酸素、窒素、イオウもしくはケイ素を含有していてもよい1価の有機基を表し、RとRと、RとRとが、それぞれ独立に、一体化してアルキリデン基を形成していてもよく、RとRと、RとRと、RとRとが、それぞれ独立に、相互に結合して単環または多環の炭素環もしくは複素環を形成してもよく、xは0〜3の整数を表し、yは0または1を表す。)
【0013】
このような環状オレフィン系化合物の具体例としては、特に限定されるものではないが、以下に示す化合物が挙げられる。
ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン(ノルボルネン)、
5−メチル−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5−エチル−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5−フェニル−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5−(4−ビフェニル)−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5−メトキシカルボニル−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5−メチル−5−メトキシカルボニル−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5−ビニル−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5−エチリデン−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5,5−ジメチル−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5,6−ジメチル−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5−ヒドロキシ−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5−ヒドロキシエチル−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
トリシクロ[4.3.0.12,5]デカ−3−エン、
トリシクロ[4.4.0.12,5]ウンデカ−3−エン、
テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン、
ヘキサシクロ[8.4.0.12,5.17,14.19,12.08,13]ヘプタデカ−3−エン、
8−メチル−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン、
8−エチル−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン、
8−シクロヘキシル−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン、
8−メトキシカルボニル−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン、
8−メチル−8−メトキシカルボニル−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン、
8−ビニル−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン、
8−エチリデン−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン
これらは、1種単独で用いても2種以上併用してもよい。
【0014】
上記ノルボルネン骨格を有する環状オレフィン系化合物と共重合可能な他の化合物としては、上記環状オレフィン系化合物と開環共重合することによりノルボルネン系樹脂を形成するもの、あるいは、上記環状オレフィン系化合物と付加共重合することによりノルボルネン系樹脂を形成するものが挙げられる。
開環共重合するものとしては、例えば、シクロブテン、シクロペンテン、シクロヘプテン、シクロオクテン、ジシクロペンタジエン等のシクロオレフィンが挙げられる。シクロオレフィンは、炭素原子数が4〜20であることが好ましく、5〜12であることがより好ましい。これらは、1種単独で用いても2種以上併用してもよい。
付加共重合するものとしては、反応性不飽和二重結合を有する化合物が好ましく、具体的には、エチレン、プロピレン、ブテン等のオレフィン系化合物;スチレン、α−メチルスチレン、ビニルシクロペンテン等のビニル系不飽和炭化水素化合物;メチルメタクリレート等の(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
【0015】
上記ノルボルネン骨格を有する環状オレフィン系化合物(以下、ノルボルネン系単量体ともいう。)、及び必要に応じて他の単量体を(共)重合してなるノルボルネン系樹脂としては、下記(i)〜(iii)の(共)重合体が好ましい。
(i)ノルボルネン系単量体、及び必要に応じて他の単量体を含む単量体組成物を、開環(共)重合させてなる(共)重合体
(ii)上記(i)の(共)重合体を水素添加してなる、水素添加(共)重合体。
(iii)ノルボルネン系単量体、及び必要に応じて他の単量体を含む単量体組成物を、付加(共)重合させてなる(共)重合体
これらのうち、(I)透明基材フィルムの耐熱着色性や耐光性、この透明基材フィルムを位相差フィルムとした場合の耐久性の観点から、上記(ii)の水素添加(共)重合体、すなわち、ノルボルネン系単量体を含む単量体組成物を開環(共)重合し、得られた(共)重合体の主鎖中の二重結合を水素添加してなる水素添加(共)重合体が好ましく用いられる。このようなノルボルネン系樹脂としては、下記式(1’)で表される構造単位を有する樹脂が挙げられる。
【化3】

(式(1’)中、R〜R、xおよびyは、上記式(1)のR〜R、xおよびyと同様である。)
【0016】
上述のようにして得られた開環(共)重合体又はその水素添加物には、公知の酸化防止剤、例えば、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール、2,2’−ジオキシ−3,3’−ジ−t−ブチル−5,5’−ジメチルジフェニルメタン、テトラキス[メチレン−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン、ペンタエリスリチルテトラキス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]等、および/または紫外線吸収剤、例えば、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン等を添加することによって安定化することができる。また、加工性を向上させる目的で、滑剤などの添加剤を添加することもできる。
【0017】
(添加剤)
上記ノルボルネン系樹脂は、公知の酸化防止剤、紫外線吸収剤などを添加してさらに安定化することができる。また、加工性を向上させるために、滑剤などの従来の樹脂加工において用いられる添加剤を添加することもできる。
上記酸化防止剤としては、例えば、ペンタエリスリチルテトラキス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール、2,2’−ジオキシ−3,3’−ジ−t−ブチル−5,5’−ジメチルジフェニルメタン、テトラキス[メチレン−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン等が挙げられ、上記紫外線吸収剤としては、例えば、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン等が挙げられる。
【0018】
本発明で用いる(I)透明基材フィルムは、上記ノルボルネン系樹脂をフィルムまたはシート状に成形することにより得られる。
具体的な成形方法としては、樹脂の種類あるいはフィルムの所望特性などに応じて適宜選択して行うことができ、例えば、溶融成形法または溶液流延法などの方法を採用することができる。フィルムの成形方法としては、膜厚の均一性および表面平滑性が良好になる点からは溶剤キャスト法が好ましい。また、製造コスト面からは溶融成形法が好ましい。このようにして成形したフィルムは、特に限定されるものではないが、通常、フィルム厚みが70〜250μm、好ましくは80〜200μmであり、フィルムの最大厚みと最小厚みとの差は3μm以内、好ましくは2μm以内である。
【0019】
(I)透明基材フィルムが、位相差を有するフィルム(位相差フィルム)である場合には、上記のようにして樹脂を成形したフィルム状物を原反フィルムとし、これを所望の位相差となるよう延伸処理することにより製造することができる。
位相差フィルムは、具体的には、原反フィルムを公知の一軸延伸法または二軸延伸法により延伸して製造することができる。すなわち、テンター法による横一軸延伸法、ロール間圧縮延伸法、周遠の異なるロールを利用する縦一軸延伸法等、または横一軸と縦一軸とを組み合わせた二軸延伸法、インフレーション法による延伸法等を用いることができる。これらのうち、製造コスト面から縦一軸延伸が好ましい。
【0020】
延伸したフィルムは、延伸により分子が配向し透過光に位相差を与えるようになるが、この位相差は、延伸前のフィルムの位相差値と延伸倍率、延伸温度、延伸配向後のフィルムの厚さにより制御することができる。
【0021】
位相差フィルムの線膨張係数は、温度20℃から100℃の範囲において、好ましくは1×10−4(1/℃)以下であり、より好ましくは9×10−5(1/℃)以下、さらに好ましくは8×10−5(1/℃)以下、特に好ましくは7×10−5(1/℃)以下である。また、延伸方向とそれに垂直方向の線膨張係数差が好ましくは5×10−5(1/℃)以下であり、より好ましくは3×10−5(1/℃)以下であり、さらに好ましくは1×10−5(1/℃)以下である。線膨張係数を上記範囲内とすることで、上記位相差フィルムを本発明の導電性積層フィルムに用いたときに、使用時の温度および湿度などの影響からなる応力変化が及ぼす位相差の変化や透明導電性層の抵抗値変化を抑えることができ、長期に特性の安定した導電性積層フィルムを得ることができる。
【0022】
位相差フィルムの全光線透過率は、タッチパネルの視認性が良好となることから、好ましくは85%以上、より好ましくは88%以上、さらに好ましくは90%以上である。
また、位相差フィルムの厚さは、良好なハンドリングを確保するとともに、ロール状への巻き取りが容易になることから、通常は1〜500μm、好ましくは1〜300μm、より好ましくは10〜250μm、さらに好ましくは50〜200μmである。
【0023】
位相差フィルムの厚み分布は、通常は平均値に対して±20%以内、好ましくは±10%以内、より好ましくは±5%以内、さらに好ましくは±3%以内である。また、1cm当りの厚みの変動は、通常は10%以下、好ましくは5%以下、より好ましくは1%以下、さらに好ましくは0.5%以下である。かかる厚み制御を実施することにより、導電性積層フィルム面内におけるムラを防ぐことができる。
【0024】
位相差フィルムは、波長550nmの透過光に対する面内位相差が128〜148nm、好ましくは133〜143nmであり、1/4λ位相差フィルムであることが特に好ましい。ここで、位相差は複屈折光の屈折率差(Δn)と厚さ(d)との積(Δnd)で定義される。このような位相差を有する位相差フィルムを(I)透明基材フィルムとして用いると、反射光を効果的に防止することができ、高コントラストのタッチパネルを得ることができる。
【0025】
(I)透明基材フィルムは、後述の(II)樹脂層との接着性を高める目的で表面処理を施したものであってもよい。該表面処理としては、プラズマ処理、コロナ処理、アルカリ処理、コーティング処理等が挙げられる。とりわけプラズマ処理を用いることで、(I)透明基材フィルムと(II)樹脂層との密着を強固とすることができる。
【0026】
プラズマ処理条件としては、10〜80℃の温度範囲で、0.1〜1.1kg/cmの圧力範囲で行うことが好ましい。プラズマ処理に用いるガスとしては、特に限定されるものではないが、He、Ar、Ne、Kr、Xe,Rn等の不活性ガス、エチレン、プロピレンなどの重合性不飽和化合物ガス、N、O2、CO、空気等が挙げられる。これらは目的に応じて、適宜に選択され、1種を単独でもしくは2種以上を組み合わせて用いられる。このプラズマ処理は(II)樹脂層と当接する面のみならず、その反対側の面に施してもよい。
また、プラズマ処理をした(I)透明基材フィルム上に、(II)樹脂層を形成する場合、プラズマ処理をした直後のフィルムを用いてもよいが、除電させてから用いることが好ましい。
【0027】
<(II)樹脂層>
(II)樹脂層は、上述の(I)透明基材フィルムの少なくとも一方の面に設けられる層であって、特定の放射線硬化性樹脂の硬化物からなる層である。(II)樹脂層がプリズム板状に形成されている場合、アンチニュートンリング性を確保しながら、クリア感を向上し、ぎらつきを防止することができる。
【0028】
まず、(II)樹脂層を形成するための放射線硬化性樹脂組成物について説明する。
この放射線硬化性樹脂組成物は、例えば、以下の(A)〜(C)成分等を含む。
[(A)成分]
放射線硬化性樹脂組成物を構成する(A)成分は、ウレタン(メタ)アクリレート化合物である。
ウレタン(メタ)アクリレート化合物の一例として、(a)ポリイソシアネートと(b)水酸基含有(メタ)アクリレートとを反応させてなるウレタン(メタ)アクリレートが挙げられる。
(a)ポリイソシアネートとしては、ジイソシアネートが好ましく、芳香族ジイソシアネート、脂肪族ジイソシアネート、脂環式ジイソシアネートを用いることができる。具体的には、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、1,3−キシリレンジイソシアネート、1,4−キシリレンジイソシアネート、1,5−ナフタレンジイソシアネート、m−フェニレンジイソシアネート、p−フェニレンジイソシアネート、3,3’−ジメチル−4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、3,3’−ジメチルフェニレンジイソシアネート、4,4’−ビフェニレンジイソシアネート、1,6−ヘキサンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、メチレンビス(4−シクロヘキシルイソシアネート)、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、ビス(2−イソシアネートエチル)フマレート、6−イソプロピル−1,3−フェニルジイソシアネート、4−ジフェニルプロパンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、水添ジフェニルメタンジイソシアネート、水添キシリレンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート、2,5(または6)−ビス(イソシアネートメチル)−ビシクロ[2.2.1]ヘプタン等が挙げられる。
これらのうち、特に、2,4−トリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート等の芳香族ジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、メチレンビス(4−シクロヘキシルイソシアネート)等の脂環式ジイソシアネートが好ましく、特に、脂環式ジイソシアネートが好ましい。ジイソシアネート成分に芳香族系化合物又は脂環族系化合物を用いることで、加熱時の黄変を抑制することができる。加熱時の低黄変性をさらに向上させる観点から、イソホロンジイソシアネート、メチレンビス(4−シクロヘキシルイソシアネート)等の脂環式ジイソシアネートがさらに好ましい。
これらの化合物は、単独であるいは二種類以上を組み合わせて用いることができる。
【0029】
(b)水酸基含有(メタ)アクリレートとしては、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェニルオキシプロピル(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールモノ(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシアルキル(メタ)アクリロイルフォスフェート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシシクロヘキシル(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールモノ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールモノ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタンジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート;アルキルグリシジルエーテル、アリルグリシジルエーテル、グリシジル(メタ)アクリレートの如きグリシジル基含有化合物と、(メタ)アクリル酸との付加反応により得られる化合物;等を挙げることができる。これら水酸基含有(メタ)アクリレートのうち、特に、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタンジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート等の多官能(メタ)アクリレート((メタ)アクリロイル基を2つ以上有する化合物)が好ましく、中でも、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレートがより好ましい。
これらの水酸基含有(メタ)アクリレート化合物は、1種を単独であるいは、二種類以上組み合わせて用いることができる。
【0030】
紫外線硬化性樹脂組成物に用いる(A)ウレタン(メタ)アクリレート化合物の合成には、さらに、(c)ポリオールを用いることができる。
(c)ポリオールとしては、ポリプロピレングリコール、ポリブチレングリコール、1,2−ブチレンオキシドとエチレンオキシドとの共重合体およびプロピレンオキシドとエチレンオキシドとの共重合体からなる群から選ばれる少なくとも1種のジオール、脂肪族または環式ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリカプロラクトンポリオール等が挙げられる。
【0031】
(A)ウレタン(メタ)アクリレートは、(a)ポリイソシアネートと、(b)水酸基含有(メタ)アクリレートとを反応させることにより製造される。(c)ポリオールを用いる場合には、(a)〜(c)成分を一括で仕込んで反応させる方法、(a)成分と(c)成分を反応させた後で、(b)成分を反応させる方法、(a)成分と(b)成分を反応させた後で、(c)成分を反応させる方法等、種々の方法を採用することができる。
(A)ウレタン(メタ)アクリレートを製造する際には、通常、ナフテン酸銅、ナフテン酸コバルト、ナフテン酸亜鉛、ジラウリル酸ジ−n−ブチル錫、トリエチルアミン、トリエチレンジアミン−2−メチルトリエチレンアミン等のウレタン化触媒が、反応原料の総量に対して0.01〜1質量%の量で用いられる。尚、反応温度は通常、10〜90℃、特に30〜80℃で行うのが好ましい。
【0032】
放射線硬化性樹脂組成物中、(A)成分の配合割合は、組成物の全量を100質量%として、好ましくは0〜79.995質量%であり、より好ましくは0〜69.8質量%である。上記配合割合が79.995質量%を超えると、それに伴い(B)成分の配合割合が少なくなり、ノルボルネン系樹脂からなる基材フィルム(I)に対する密着性が低下するため好ましくない。
なお、(A)成分の配合割合を20質量%以上にすると、硬度が高くなり、後述の(III)透明導電性層としてITOを成膜する際に、得られる導電性層に傷が生じ難くなるので、好ましい。
【0033】
[(B)成分]
放射線硬化性樹脂組成物を構成する(B)成分は、直鎖アルキレンジ(メタ)アクリレートである。このような(B)成分を用いることにより、ノルボルネン系樹脂からなる(I)透明基材フィルムに対して、優れた密着性を有するプリズム板状の樹脂層を形成することができる。
直鎖アルキレンジ(メタ)アクリレートは、CH=C(R)−C(=O)−O−(CH−O−C(=O)−C(R)=CH(式中、Rは水素原子又はメチル基を示し、nは1〜20の整数である。)の構造を有するものであることが好ましい。具体的には、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、1,10−デカンジオールジ(メタ)アクリレート、1,12−ドデカンジオールジ(メタ)アクリレート、等が挙げられる。中でも、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレートが好ましく用いられる。
(B)成分の市販品としては、共栄社化学株式会社製の「ライトアクリレート 1.6HX-A」、第一工業製薬株式会社製の「ニューフロンティアLC-9A」等が挙げられる。
【0034】
放射線硬化性樹脂組成物中、(B)成分の配合割合は、組成物の全量を100質量%として、好ましくは20〜99.995質量%であり、より好ましくは30〜99.8質量%である。上記配合割合が20質量%未満であると、ノルボルネン系樹脂からなる基材フィルムに対する密着性が低下するため好ましくない。
なお、硬度の観点から、(A)成分の配合割合を20質量%以上にする場合、(B)成分の配合割合の上限値は、79.995質量%、好ましくは79.8質量%である。
【0035】
[(C)成分]
放射線硬化性樹脂組成物を構成する(C)成分は、光重合開始剤である。
(C)成分として用いられる光重合開始剤は、光の照射によって、エチレン性不飽和基を重合しうる活性種(ラジカル種)を発生することのできるラジカル性光重合開始剤である。
ここで、光とは、例えば赤外線、可視光線、紫外線、及びX線、電子線、α線、β線、γ線のような電離放射線を意味する。
上記光重合開始剤としては、例えば、アセトフェノン、アセトフェノンベンジルケタール、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、キサントン、フルオレノン、ベンズアルデヒド、フルオレン、アントラキノン、トリフェニルアミン、カルバゾール、3−メチルアセトフェノン、4−クロロベンゾフェノン、4,4’−ジメトキシベンゾフェノン、4,4’−ジアミノベンゾフェノン、ミヒラーケトン、ベンゾインプロピルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンジルジメチルケタール、1−(4−イソプロピルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、チオキサントン、ジエチルチオキサントン、2−イソプロピルチオキサントン、2−クロロチオキサントン、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルホリノ−プロパン−1−オン、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド、ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチルペンチルフォスフィンオキシド等が挙げられる。中でも、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトンが好ましい。
上記光重合開始剤の市販品としては、例えば、Irgacure184、369、651、500、819、907、784、2959、CGI1700、CGI1750、CGI11850、CG24−61、Darocur1116、1173(以上、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製)、LucirinTPO、LR8893、LR8970(以上、BASF社製)、ユベクリルP36(UCB社製)等が挙げられる。
光重合開始剤は、1種を単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いられる。
なお、上記光重合開始剤と共に、光増感剤を用いることができる。光増感剤としては、例えば、トリエチルアミン、ジエチルアミン、N−メチルジエタノールアミン、エタノールアミン、4−ジメチルアミノ安息香酸、4−ジメチルアミノ安息香酸メチル、4−ジメチルアミノ安息香酸エチル、4−ジメチルアミノ安息香酸イソアミル等が挙げられる。
【0036】
放射線硬化性樹脂組成物中、(C)成分の配合割合は、組成物の全量を100質量%として、好ましくは0.005〜10質量%であり、より好ましくは0.2〜5質量%である。上記配合割合が0.005質量%未満では、硬化速度が低下して、硬化に長時間を要することがある。一方、上記配合割合が、10質量%を超えると、組成物の硬化特性や取り扱い性が低下したり、硬化物の光学特性が劣ることがある。
【0037】
[任意成分]
放射線硬化性樹脂組成物には、上述の成分以外にも各種添加剤、例えば、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、シランカップリング剤、塗面改良剤、熱重合禁止剤、レベリング剤、界面活性剤、着色剤、保存安定剤、可塑剤、滑剤、溶媒、フィラー、老化防止剤、濡れ性改良剤、離型剤等を配合することができる。
【0038】
酸化防止剤の市販品としては、例えば、Irganox1010、1035、1076、1222(以上、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製)、Antigen
P、3C、FR、GA−80(住友化学工業社製)等が挙げられる。
紫外線吸収剤の市販品としては、例えば、Tinuvin P、234、320、326、327、328、329、213(以上、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製)、Seesorb102、103、110、501、202、712、704(以上、シプロ化成社製)等が挙げられる。
光安定剤の市販品としては、例えば、Tinuvin 292、144、622LD(以上、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製)、サノールLS770(三共社製)、Sumisorb TM−061(住友化学工業社製)等が挙げられる。
シランカップリング剤としては、例えば、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−メタアクリロキシプロピルトリメトキシシラン等が挙げられる。市販品としては、SH6062、6030(以上、東レ・ダウ
コーニング・シリコーン社製)、KBE903、603、403(以上、信越化学工業社製)等が挙げられる。
塗面改良剤としては、例えば、ジメチルシロキサンポリエーテル等のシリコーン添加剤が挙げられる。市販品としては、DC−57、DC−190(以上、ダウ
コーニング社製)、SH−28PA、SH−29PA、SH−30PA、SH−190(以上、東レ・ダウ コーニング・シリコーン社製)、KF351、KF352、KF353、KF354(以上、信越化学工業社製)、L−700、L−7002、L−7500、FK−024−90(以上、日本ユニカー社製)等が挙げられる。
離型剤の市販品としては、プライサーフA208F(第一工業製薬社製)等が挙げられる。
【0039】
放射線硬化性樹脂組成物は、前記の各成分を常法により混合することにより、製造することができる。この放射線硬化性樹脂組成物は、無溶剤で調製することができるため、特定の畝形状を容易に形成することができる。
得られる放射線硬化性樹脂組成物の粘度は、好ましくは100〜2000mPa・s/25℃、より好ましくは200〜1000mPa・s/25℃である。粘度が高すぎると、基板に樹脂組成物を塗布する際に、塗布ムラやうねりが生じ、あるいはプリズム板状の樹脂層を形成する時に、目的とする形状が得られないことがある。逆に、粘度が低すぎても、目標とする膜厚が得られにくい上に、作業性が悪化することがある。
【0040】
プリズム板状の(II)樹脂層は、上記放射線硬化性樹脂組成物を(I)透明基材フィルムの上面に塗布して塗膜を形成した後、該塗膜に対してプリズム板状の部材を密着させながら、放射線を照射し、前記塗膜を硬化させることにより形成することができる。
塗膜に畝形状を転写するための上記部材としては、転写ロール、転写板等が挙げられる。
塗膜を硬化させる際の放射線としては、特に限定されるものではないが、通常、200〜450nmの紫外〜可視領域の光、好ましくは波長365nmの紫外線を含む光が用いられる。波長200〜450nmでの照射は、照度が100〜1000mW/cm2、照射量が0.1〜5J/cm2、好ましくは0.5〜3J/cm2となるように行なわれて露光される。
照射する放射線の種類としては、可視光、紫外線、赤外線、X線、α線、β線、γ線等を用いることができるが、光源の工業的な汎用性から、好ましくは200〜400nm、特に好ましくは365nmの紫外線を含む波長が好ましい。照射装置としては、例えば、高圧水銀ランプ、低圧水銀ランプ、メタルハライドランプ、エキシマランプなどの広い面積を同時に照射するランプ光源と、パルス、連続発光等のレーザー光源のいずれか一方又は両方の光源から、ミラー、レンズ、光ファイバーを用いて収束光を生じさせるものを用いることができる。
【0041】
このようにして形成される(II)樹脂層は、プリズム面が連続的に形成された断面形状(図1中、3a)を有することが必要であり、通常、一定の厚みの土台部分(図1中、3b)を含むものである。
前記プリズム形状としては、断面多角形状の突条が好ましく、断面三角形状の突状がより好ましい。
プリズム形状のピッチ(図1中、記号Aで示す)は、好ましくは100〜5,000μm、より好ましくは200〜1,000μmの範囲である。ピッチが100μm未満であると、ぎらつきが発生する場合があり、5,000μmを超えるとアンチニュートンリング性が十分に発現しない場合がある。
プリズム形状の高さ(土台部分3bの最上面と、プリズム形状の最上点との距離;図1中、記号Bで示す。)は通常0.1〜10μm、好ましくは0.5〜3μmの範囲に設定される。該高さが0.1μm未満であると、アンチニュートンリング性が発現せず、10μmを超えると、タッチパネルとしての使用に際し、入力時にでこぼこ感が生じてしまう。
また、土台部分の高さ(図1中、記号Cで示す)は、好ましくは0.1〜20μmであり、より好ましくは0.5〜10μmである。該高さが0.1μm未満であると、塗布欠陥を生じ易く作業性に劣ることがあり、一方、20μmを超えると、硬化収縮によってフィルムの反りが大きくなり、次工程の作業性が悪化することがある。
プリズム形状の角度は、例えば下部表示装置に液晶を使用する場合、モアレ対策として、その偏光軸に対して、10〜45°の角度で形成される。故に、基材フィルムに1/4λ位相差フィルムを使用する場合、その遅相軸に対しても10〜80°の角度で形成される事が望ましい。
【0042】
(I)透明基材フィルム/(II)樹脂層からなる積層フィルムの各種物性について説明する。
本発明の導電性積層フィルムは、(I)透明基材フィルム/(II)樹脂層/(III)透明導電性層の構造を有するが、(III)透明導電性層を形成する前の積層フィルム、すなわち、(I)透明基材フィルム/(II)樹脂層の構造を有する上記積層フィルムは、下記のような物性を有することが好ましい。
なお、下記の物性は、(I)透明基材フィルムの片面に(II)樹脂層が形成された場合のものである。
【0043】
(1)ヘイズ(曇価;曇り具合、拡散度合いを表す指標)が、1%以下であることが好ましい。ヘイズが上記範囲外であると、白ぼけが発生しタッチパネルの視認性が低下する。なお、ヘイズは、例えば、スガ試験機社HGM−2DP等を用いて、JIS K−7136に準拠して測定される。
(2)全光線透過率(%)が、80%以上であることが好ましく、83%以上がより好ましく、85%以上がさらに好ましい。全光線透過率が上記範囲内であることにより、タッチパネルの視認性を向上させることができる。なお、全光線透過率は、スガ試験機社HGM−2DP等を用いて、JIS K−7361に準拠して測定される。
(3)透過光b*(%)が、0〜10%であることが好ましく、0〜5%がより好ましく、0〜2%がさらに好ましい。透過光b*が上記範囲内であることにより、タッチパネルの視認性を向上させることができる。なお、透過光b*は、例えば、大塚電子社製 色差計RETS−1200VA等を用いて、JIS Z−8722に準拠して測定される。
(4)鉛筆硬度が、HB以上であることが好ましい。HB未満であると、後述の(III)透明導電性層としてITOを成膜する際に、得られる導電性層に傷が入ることがある。なお、鉛筆硬度は、東洋精機製 NPを用いて、JIS K5600−5−4によって測定される。
【0044】
(5)アンチニュートンリング性は、積層フィルムを平滑なガラス板(厚み3mm、素材:ソーダガラス)の上に(II)樹脂層が密着するように乗せて指で押しつけ、ニュートンリングが発生するかを目視にて評価する場合、ニュートンリングが発生しないことが好ましい。
【0045】
(6)熱収縮率(%)が、1.5%以下であることが好ましく、1.3%以下がより好ましく、1.0%以下がさらに好ましい。熱収縮率が1.5%を超えると、タッチパネルの変形が発生する場合がある。なお、熱収縮率は、150℃に加熱した強制循環式乾燥機の中に積層フィルムを60分間静置させ、ミツトヨ製 寸法測定顕微鏡176−812を用いて加熱前後のフィルムの寸法変化を測定し、熱収縮率を算出するものである。
(7)位相差は、特に限定されるものではないが、波長550nmの透過光に対して測定した位相差(nm)が、128〜148nmであることが好ましく、133〜143nmがより好ましい。位相差が上記から外れると液晶ディスプレイのコントラスト、視認性が低下する場合がある。なお、位相差は、(I)透明基材フィルムが位相差フィルムである場合には、王子計測機器社製の「KOBRA−21ADH/PR」を用いて、測定される。
【0046】
[(III)透明導電性層]
本発明の導電性積層フィルムを構成する(III)透明導電性層は、可視光領域において透過度を有し、かつ導電性を有する層であればよく、特に限定されるものではないが、酸化錫を含有する酸化インジウム(酸化インジウムスズ;本明細書中、「ITO」ともいう)、酸化チタンを含有する酸化インジウム、酸化錫、酸化チタン、ポリチオフェン、無機ナノ粒子等を分散した無機/有機複合系材料などから得られる層が挙げられる。本発明では、(III)透明導電性層が、ITOからなる層であることが好ましく、より具体的には結晶性ITOからなる層であることが好ましい。
【0047】
導電性積層フィルム(III)は、(II)樹脂層の表面に、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法等の従来公知の技術によって、上記材料を成膜させることによって形成することができる。これらのうち、膜の均一性や(II)樹脂層への薄膜の密着性の観点から、スパッタリング法での薄膜形成が好ましい。また、用いる薄膜材料も上記以外に、例えば、アンチモンを含有する酸化錫などの金属酸化物のほか、金、銀、白金、パラジウム、銅、アルミニウム、ニッケル、クロム、チタン、コバルト、錫またはこれらの合金などを用いてもよい。
【0048】
成膜する際のターゲット材としては、ITOからなる透明導電性層を形成する場合、従来公知のITOターゲット剤を用いることができる。このターゲット剤としては、酸化インジウムと酸化錫との質量比が、好ましくは99:0.5〜99:20、より好ましくは99:1〜90:15、さらに好ましくは99:1〜90:10のものが用いられる。質量比が上記範囲外であると、導電性層(III)の抵抗値の上昇が起こることがある。
ITO成膜時の温度は、(I)透明基材フィルムのガラス転移温度(Tg)以下であることが好ましく、「室温〜透明基材フィルムのTg以下」がより好ましく、「室温〜透明樹脂のTg−20℃以下」がさらに好ましい。透明基材フィルムのTgを超える温度で成膜を行うと、透明基材フィルムが劣化することがある。なお、(II)樹脂層のTgが(I)透明基材フィルムのTgよりも低い場合には、(II)樹脂層のTg以下の温度で製膜を行うのが望ましい。
また、ITO成膜時に雰囲気ガスとしてArに微量の酸素、好ましくはArとOとの合計に対して、好ましくは0.05〜20体積%、より好ましくは0.01〜10体積%、さらに好ましくは0.1〜3体積%のOを導入すると、ITO薄膜の透明性と導電性を向上させることができる。
【0049】
(III)透明導電性層としてITO薄膜を形成する場合、そのITOは結晶性ITOを形成することが好ましい。結晶性ITO薄膜の成膜方法は、ターゲット電極(カソード)に印加する電力を間欠的に変化させるパルススパッタリング法、更に、このパルススパッタリング法に複数のカソード配置を基本構成としたデュアルカソードパルススパッタリング法が用いられる。これらのスパッタリング法は、よりよい真空度でのプラズマ放電にも対応させるため、マグネトロンスパッタリング法を用いることが好ましく、また安定したパルス電流の発生と条件設定の自由度をもたせるため、パルス発生ユニットにはバイポーラ型又はユニポーラ型を用いることが好ましい。もしくは、成膜後に150℃程度の温度レベルでアニールをすることにより結晶化する方法でも得ることができる。結晶化ITO膜とすることで耐久性が著しく向上する。
【0050】
得られる導電性層(III)の厚さは、30Å以上であることが好ましい。該厚さが30Å未満であると、所望の導電性(表面抵抗値が1000Ω/□以下)を有する連続被膜が形成され難いことがある。一方、厚くしすぎると透明性の低下などを招くことがあるため、好適な厚さとしては、50〜2000Åである。
【0051】
上記(I)透明基材フィルム、(II)樹脂層、及び(III)透明導電性層を含む本発明の導電性積層フィルムは、さらに、易接着層、反射防止層等を含むことができる。
[易接着層]
易接着層は、本発明の導電性積層フィルムにおいて、(II)樹脂層と(III)透明導電性層との接着性を向上させ、さらにガスバリア性を付与する目的で、前記2つの層の間に設けられる。
易接着層は、接着性の向上の観点から、金属酸化物微粒子を含むことが好ましく、通常、金属酸化物微粒子とポリシロキサンとを含有する組成物からなる塗工液を調製し、当該塗工液を(II)樹脂層に塗工し、乾燥することにより得られる。
上記金属酸化物粒子としては、金属元素の酸化物微粒子であればその種類は特に限定されないが、例えば、酸化アンチモン、酸化ジルコニウム、アナターゼ型酸化チタン、ルチル型酸化チタン、ブルッカイト型酸化チタン、酸化亜鉛、酸化タンタル、酸化インジウム、酸化ハフニウム、酸化スズ、酸化ニオブ、酸化アルミニウム、酸化セリウム、酸化スカンジウム、酸化イットリウム、酸化ランタン、酸化プラセオジウム、酸化ネオジウム、酸化サマリウム、酸化ユウロピウム、酸化ガドリニウム、酸化テルビニウム、酸化ジスプロシウム、酸化ホルミウム、酸化エルビウム、酸化ツリウム、酸化イッテルビウム、酸化ルテチウム、酸化カルシウム、酸化ガリウム、酸化リチウム、酸化ストロンチウム、酸化タングステン、酸化バリウム、酸化マグネシウム、およびこれらの複合体、ならびにインジウム−スズ複合酸化物などの上記金属2種以上の複合体の酸化物などが挙げられる。
上記金属酸化物微粒子の1次平均粒子径は、好ましくは0.1〜100nm、より好ましくは0.1〜70nm、特に好ましくは0.1〜50nmである。金属酸化物微粒子の1次平均粒子径が上記範囲にあると、光透過性に優れた積層フィルムを得ることができる。
【0052】
上記ポリシロキサンとしては、多官能性ポリシロキサンが好ましく、その好適な例としては、ジメチルシロキサン連鎖を有する多官能ポリシロキサンと、ポリジメチルシロキサンとを脱アルコール反応させて得られるポリシロキサンが挙げられる。多官能ポリシロキサンとポリジメチルシロキサンとは、末端官能基がアルコキシル基またはヒドロキシル基であることが好ましく、それぞれ異なる末端官能基を有するジメチルシロキサンとポリジメチルシロキサンとを脱アルコール反応させて、多官能性ポリシロキサンが得られる。
【0053】
[反射防止層]
本発明の導電性積層フィルムは、可視光領域の透過度を向上させる目的で、(II)樹脂層と(III)透明導電性層との間に反射防止層を有することも好ましい。
反射防止層は、通常、酸化ケイ素、フッ化マグネシウム等の低屈折率層と、酸化チタン、酸化ニオブおよび酸化タンタル等の高屈折率層とを含む2層以上の積層構造からなる。
これらの無機酸化物からなる低、高屈折率層の形成方法としては、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法(ドライプロセス)または各金属アルコキサイド、酸化ジルコニウム等の無機酸化物の超微粒子を含む塗布液の塗工法(ウェットプロセス)など公知の方法を採用することができる。
また、低屈折層としてフッ素ポリマーを主成分とする有機材料を塗工することも好ましい。
【0054】
本発明の導電性積層フィルムは、下記の物性を有することが好ましい。
なお、以下の各物性値の測定方法は、特に断りのない場合、上述の積層フィルム((I)透明基材フィルム/(II)樹脂層からなる積層フィルム)の場合と同様である。
(1)ヘイズは、1%以下であることが好ましい。ヘイズが1%以下であると、白ボケを防止し、背景画像をより鮮明に映し出すことができる。
(2)全光線透過率は、タッチパネルの視認性向上の観点から、80%以上であることが好ましく、83%以上がより好ましく、85%以上がさらに好ましい。
(3)透過光b*は、タッチパネルの視認性向上の観点から、0〜12%が好ましく、0〜7%がより好ましく、0〜4%がさらに好ましい。
【0055】
(4)鉛筆硬度は、HB以上が好ましい。鉛筆硬度がHB未満であると、ITO成膜時に透明導電性層に傷が入る場合がある。
(5)アンチニュートンリング性は、ニュートンリングが発生しないことが好ましい。
(6)熱収縮率は、1.5%以下が好ましく、1.3%以下がより好ましく、1.0%以下がさらに好ましい。熱収縮率が1.5%を超えると、タッチパネルの変形が発生する場合がある。
【0056】
(7)位相差は、波長550nmの光に対する位相差(nm)が、128〜148nmであることが好ましく、133〜143nmがより好ましい。位相差が上記から外れると液晶ディスプレイのコントラスト、視認性が低下する。なお、位相差は、王子計測機器社製の「KOBRA−21ADH/PR」を用いて測定される。
(8)表面抵抗(Ω/□)は、200〜1,500Ω/□であることが好ましく、250〜1,000Ω/□がより好ましく、300〜500Ω/□がさらに好ましい。表面抵抗が、1,500Ω/□を超えると、良好な導電性を有する連続皮膜となり難い場合がある。一方、200Ω/□未満であると、透明性の低下およびタッチパネルの誤作動を引き起こし易くなる場合がある。表面抵抗は、例えば、三菱化学社製の低抵抗率計「ロレスタ−GP」を用いて測定される。
【0057】
次に、本発明のタッチパネル(上記導電性積層フィルムを用いてなるタッチパネル)について、図面を参照しつつ説明する。
図2は、本発明のタッチパネルの一例を模式的に示す断面図である。
本発明のタッチパネルは、4線式抵抗膜方式、5線式抵抗膜方式等のタッチパネルであって、上部電極及び/又は下部電極として、上記導電性積層フィルム(以下、(A)導電性積層フィルムともいう。)を用いる。すなわち、上部電極及び下部電極の両方に(A)導電性積層フィルムを用いてもよいし、上部電極、下部電極のいずれか一方に(A)導電性積層フィルムを用い、他方には(A)導電性積層フィルムとは異なる(B)導電性積層フィルムを用いてもよい。そして、このタッチパネルを液晶ディスプレイの前面に配置することでタッチパネル機能を有する表示装置を得ることができる。
【0058】
図2中、本発明のタッチパネル10は、液晶表示素子11と、透明基材フィルム2、畝形状樹脂層3、及び透明導電性層4がこの順に積層してなる(A)導電性積層フィルム1と、透明導電性12、及び透明基材フィルム13がこの順に積層してなる(B)導電性積層フィルム14とを含む。(A)導電性積層フィルム1と、(B)導電性積層フィルム14とは、それぞれか有する透明導電性層4,12が対向するよう、必要に応じてスペーサー等を介して積層されることが好ましい。
【0059】
(B)導電性積層フィルムは、透明基材フィルムと、透明導電性層とを含むものであって、必要に応じて、透明基材フィルムと透明導電性層との間に、易接着層、反射防止層などを設けてなるものであってもよいし、あるいは、透明基材フィルムの、透明導電性層とは反対側の面に、偏光板を設けてなるものであってもよい。
(B)導電性積層フィルムを構成する透明基材フィルムとしては、PETフィルム等の位相差を有さないフィルムや、位相差を有するフィルムを用いることができる。上記透明基材フィルムが位相差を有する場合には、波長550nmの透過光に対する面内位相差が128〜148nmであることが好ましく、より好ましくは133〜143nmである。特に好ましくは、1/4λ位相差フィルムが用いられる。
(B)導電性積層フィルムを構成する透明導電性層としては、上述した(A)導電性積層フィルムを構成する(III)透明導電性層と同様のものが挙げられ、中でもITOからなる透明導電性層が好ましく、結晶性ITOからなる透明導電性層がより好ましい。
透明導電性層は、透明基材フィルム上に必要に応じて易接着層、反射防止層などを介して形成されるが、この易接着層、反射防止層としては、上述の(A)導電性積層フィルムの場合と同様のものが挙げられる。
【0060】
(B)導電性積層フィルムに用いられる偏光板としては、偏光膜、すなわち、入射光を互いに直行する2つの偏光成分に分け、その一方のみを通過させ、他の成分を吸収または分散させる働きを有する膜を有するものであれば特に限定されず、この偏光膜の具体例としては、ポリビニルアルコール(以下「PVA」ともいう。)・ヨウ素系偏光膜;PVA系フィルムに二色性染料を吸着配向させたPVA・染料系偏光膜;PVA系フィルムの脱水反応、ポリ塩化ビニルフィルムの脱塩酸反応等により、ポリエンを形成させたポリエン系偏光膜;分子内にカチオン性基を含有する変性PVAからなるPVA系フィルムの表面および/または内部に二色性染料を有する偏光膜などが挙げられる。これらのうち、PVA・ヨウ素系偏光膜が好ましい。
偏光膜の製造方法は特に限定されず、従来公知の方法を適用することができる。例えば、PVA系フィルムを延伸後、ヨウ素イオンを吸着させる方法;PVA系フィルムを二色性染料による染色後、延伸する方法;PVA系フィルムを延伸後、二色性染料で染色する方法;二色性染料をPVA系フィルムに印刷後、延伸する方法;PVA系フィルムを延伸後、二色性染料を印刷する方法などが挙げられる。より具体的には、ヨウ素をヨウ化カリウム溶液に溶解して、高次のヨウ素イオンを作り、このイオンをPVAフィルムに吸着させて延伸し、次いで1〜5質量%ホウ酸水溶液に浴温度30〜40℃で浸漬して偏光膜を製造する方法;またはPVAフィルムを上記と同様にホウ酸処理して一軸方向に3〜7倍程度延伸した後、0.05〜5質量%の二色性染料水溶液に浴温度30〜40℃で浸漬して染料を吸着し、次いで80〜100℃で乾燥して熱固定して偏光膜を製造する方法などが挙げられる。
【0061】
偏光膜の厚さは、特に限定されるものではないが、10〜50μmが好ましく、15〜45μmがより好ましい。
このような偏光膜を含む偏光板は、そのままの偏光膜、又は、偏光膜の片面に表面処理を行ってなる偏光膜のみから構成されてもよいし、あるいは、これらの偏光膜と、保護膜とから構成されるものであってもよい。保護膜を設けることによって、耐吸湿性等を付与することができる。
偏光板は、透明基材フィルムの、透明導電性層とは反対側の面に設けられるものであり、好ましくは、透明基材フィルムの片面に接着剤層を介して設けられる。この場合、偏光板を構成する偏光膜は、表面処理を行ってなるものであることが好ましい。表面処理としては、コロナ放電処理、プラズマ処理が挙げられる。また、接着剤層を形成する接着剤としては、感圧性接着剤が好ましく、例えば、ポリビニルアルコール系感圧性接着剤、アクリル系感圧性接着剤、ゴム系感圧性接着剤、シリコーン系感圧性接着剤などが挙げられる。
【0062】
(B)導電性積層フィルムとしては、位相差を有する透明基材フィルム(以下、透明基材位相差フィルムともいう。)と、透明導電性層とがこの順に積層してなるフィルム(すなわち、透明導電性層/透明基材位相差フィルムの構造を有するフィルム)が好ましく、さらに、前記透明基材フィルムの透明導電性層とは反対側に、偏光板が積層してなるフィルム(すなわち、透明導電性層/透明基材位相差フィルム/偏光板の構造を有するフィルム)がより好ましい。なお、後者のフィルムにおいては、透明基材位相差フィルムと、偏光板との間には、感圧性接着剤層が介在していることがさらに好ましい。
【0063】
本発明のタッチパネルでは、透明導電性層、1/4λ位相差フィルムである透明基材フィルム、及び偏光板がこの順に一体に積層されてなる(B)導電性積層フィルムを上部電極として用い、対応する下部電極として1/4λ位相差フィルムである(I)透明基材フィルム、(II)樹脂層、及び(III)透明導電性層がこの順に積層されてなる(A)透明導電性積層フィルムを用いることにより、反射光が好適に抑制され、視認性が特に向上するため好ましい。
【実施例】
【0064】
以下、実施例に基づいて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、以下において、「部」はいずれも「質量部」を表す。
【0065】
[製造例1]
ウレタンアクリレート((A)成分)の製造
攪拌機付きの容器内のイソホロンジイソシアネート18.8部と、ジブチル錫ジラウレート0.2部とからなる溶液に対し、新中村化学株式会社製NKエステルA−TMM−3LM−N(反応に関与するのは、水酸基を有するペンタエリスリトールトリアクリレートのみである。)93部を、10℃、1時間の条件で滴下した後、60℃、6時間の条件で攪拌し、反応液とした。
生成物中の残存イソシアネート量をFT−IRで測定したところ、0.1重量%以下であり、反応がほぼ定量的に行われたことを確認した。また、分子内に、ウレタン結合、及びアクリロイル基(重合性不飽和基)を含むことを確認した。
以上により、(A)成分であるウレタンアクリレートが75部得られたほか、反応に関与しなかったペンタエリスリトールテトラアクリレート37部が混在していた。
【0066】
[実施例1]
表1に示す各成分を均一に混合して、樹脂層(II)を形成するための放射線硬化性樹脂組成物を得た。
次いで、ノルボルネン系樹脂であるARTON G7810(JSR社製)をキャスト法にてフィルム化し、その片面をプラズマ処理したものを用意し、プラズマ処理面に、上記放射線硬化性樹脂組成物を塗工して塗膜を形成した。そして、該塗膜に、プリズム形状を有する転写ロールを密着させ、基材フィルム(ARTON)の側から、メタルハライドランプで2J/cmの紫外線を照射することにより、前記塗膜を硬化させ、基材フィルム(ARTON)からの土台3bの高さC(図1参照)が2μm、土台の上面3bを基準としたプリズム形状の高さBが1μm、ピッチAが400μmであるプリズム形状を有する硬化物層を得た。
次いで、得られた硬化物層の表面に、アルゴンガス流入下でインジウムと錫とを含んだターゲットを用いて、下記の条件により透明導電性層をスパッタリング法により形成し、透明導電性積層フィルムを得た。
(条件)
基材温度:50℃以下
ターゲット:In/SnO=90/10(質量比)の酸化物
雰囲気:アルゴン流入下
アルゴン流量:100〜500sccm
出力:1〜1.5Kw
得られた放射線硬化性樹脂組成物の粘度、基材との密着性、膜屈折率、導電性積層フィルムのヘイズ、全光線透過率、透過光b*、鉛筆硬度、アンチニュートリング性、熱収縮率、位相差、及び表面抵抗、下記の方法によって評価した。
結果を、合わせて表1に示す。
【0067】
[評価方法]
(粘度)
放射線硬化性樹脂組成物の粘度を、B型粘度計を用いて、25℃での粘度(mPa・s)を測定した。
(基材との密着性)
JIS K−5600−5−6に準拠して、基材との密着性を評価した。
A :全て密着している
B :一部分が剥がれる
C :大部分が剥がれる
D :全てが剥がれる
(膜屈折率)
アッベ屈折率計を用いて、測定した。
(ヘイズ)
スガ試験機社HGM−2DPを用い、JIS K−7136に準拠してヘイズ(%)を測定した。
(全光線透過率)
スガ試験機社HGM−2DPを用い、JIS K−7361に準拠して全光線透過率(%)を測定した。
(透過光b*)
大塚電子社製 色差計RETS−1200VAを用い、JIS Z−8722に準拠して透過光b*(%)を測定した。
(鉛筆硬度)
東洋精機社製 鉛筆引掻塗膜硬さ試験機NPを用いて、JIS K−5600−5−4に準拠して鉛筆硬度を測定した。
【0068】
(アンチニュートンリング性)
フィルムを平滑なガラス板(厚み3mm、素材:ソーダガラス)の上に粒子含有樹脂層が密着するように乗せて指で押しつけ、ニュートンリングが発生するかを目視にて評価した。
A :ニュートンリングが発生しない
B :ニュートンリングがわずかに発生する
C :ニュートンリングが明らかに発生する
【0069】
(熱収縮率)
150℃に加熱した強制循環式乾燥機の中にフィルムを60分間静置させ、ミツトヨ社製 寸法測定顕微鏡176−812を用いて加熱前後のフィルムの寸法変化を、フィルムの縦方向(MD)、幅方向(TD)についてそれぞれ測定し、熱収縮率(%)を算出した。
(位相差)
王子計測機器社製の「KOBRA−21ADH/PR」を用いて、波長550nmにおける位相差(nm)を測定した。
(表面抵抗)
三菱化学社製の低抵抗率計「ロレスタ−GP」を用い、透明導電層の表面抵抗値(Ω/□)を測定した。
【0070】
[実施例2〜3、比較例1〜3]
放射線硬化性樹脂組成物として、表1に記載の各成分を混合したものを用いたこと以外は実施例1と同様にして、放射線硬化性樹脂組成物、導電性積層フィルム、及びタッチパネルを得た。
放射線硬化性樹脂組成物、導電性積層フィルム、及びタッチパネルの各種物性について、実施例1と同様にして評価した。結果を表1に示す。
【0071】
【表1】

【0072】
表1から、本発明では、(I)透明基材フィルムと(II)樹脂層の密着性が高く、優れた光学特性、優れた機械的特性を有していることがわかる(実施例1〜3)。一方、(B)成分を含まない放射線硬化性樹脂組成物を用いた比較例1〜3では、(I)透明基材フィルムと(II)樹脂層との密着性に劣り、剥離してしまうことがわかる。
【符号の説明】
【0073】
1 (A)透明導電性積層フィルム
2 (I)透明基材フィルム
3 (II)樹脂層
3a 土台部分
3b プリズム形状
A プリズム形状のピッチ
B プリズム形状の高さ
C 土台部分の高さ
4 (III)透明導電性層
10 タッチパネル
11 液晶表示装置
12 透明導電性層
13 透明基材フィルム
14 (B)透明導電性積層フィルム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(I)ノルボルネン系樹脂からなる透明基材フィルムと、(II)放射線硬化性樹脂組成物の硬化物からなる樹脂層と、(III)透明導電性層とがこの順に積層されてなる導電性積層フィルムであって、上記(II)樹脂層を形成する放射線硬化性樹脂組成物が、直鎖アルキレンジ(メタ)アクリレートを含むことを特徴とする透明導電性積層フィルム。
【請求項2】
上記(II)樹脂層が、上記(III)透明導電性層との境界面に凹凸を有するプリズム板状に形成されている請求項1に記載の透明導電性積層フィルム。
【請求項3】
上記(II)樹脂層を形成するための放射線硬化性樹脂組成物が、ウレタン(メタ)アクリレート化合物を含む請求項1又は2に記載の透明導電性積層フィルム。
【請求項4】
上記(I)透明基材フィルムを構成するノルボルネン系樹脂は、下記式(1)で表わされる少なくとも1種の化合物を含む単量体組成物を(共)重合して得られる樹脂である請求項1〜3のいずれか1項に記載の透明導電性積層フィルム。
【化1】

(式(1)中、R〜Rは、それぞれ独立に、水素原子;ハロゲン原子;または酸素、窒素、イオウもしくはケイ素を含有していてもよい1価の有機基を表し、RとRと、RとRとが、それぞれ独立に、一体化してアルキリデン基を形成していてもよく、RとRと、RとRと、RとRとが、それぞれ独立に、相互に結合して単環または多環の炭素環もしくは複素環を形成してもよく、xは0〜3の整数を表し、yは0または1を表す。)
【請求項5】
上記(I)透明基材フィルムが、プラズマ処理されたフィルムである請求項1〜4のいずれか1項に記載の透明導電性積層フィルム。
【請求項6】
上記(III)透明導電性層が、結晶性ITOからなる層である請求項1〜5のいずれか1項に記載の透明導電性積層フィルム。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1項に記載の透明導電性積層フィルムを含むタッチパネル。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−162746(P2010−162746A)
【公開日】平成22年7月29日(2010.7.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−6144(P2009−6144)
【出願日】平成21年1月14日(2009.1.14)
【出願人】(000004178)JSR株式会社 (3,320)
【Fターム(参考)】