説明

透明導電性粉体

【課題】本発明は、色彩上の表現が要求される意匠性分野においての使用のために充分な透明性を有する導電性粉体、特に、溶剤やポリマーマトリックスに対する分散性に優れ、低いPWCでも導電性が得られる透明導電性粉体を提供することを目的とする。
【解決手段】(a)第1の基材としての薄片状酸化アルミニウムと、(b)この第1の基材の表面を被覆し、タングステンがドープ、またはタングステンとリンがドープ、またはリンがドープされた酸化スズを含有する被覆層とを有する第1の粉体成分を含有することを特徴とする透明導電性粉体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂組成物、塗料、プライマーなどの用途において、ポリマーマトリックスに配合して、導電性を付与するのに適した透明導電性粉体に関する。より詳細には、樹脂組成物、塗料やプライマー等の、色彩のある意匠の求められる分野での広範な色彩表現への使用に対応しうる透明導電性粉体に関する。
【背景技術】
【0002】
導電性粉体は、種々の領域の用途、例えば、プラスチック材料(塗膜、フィルム、シート、成形品等)の帯電防止処理、または、プラスチック材料に静電塗装を行うための導電性プライマーに用いられている。従来、導電性粉体として、安価であるためカーボンブラックが多く使われてきた。しかしながら、カーボンブラックは暗色を有するため、透明性が要求される分野や、淡色の色彩によるデザインが要求される用途では、その使用が制限される。
【0003】
これらの色彩への要求を解決するために、アンチモンをドープしたスズ酸化物(Antimony doped Tin Oxide。以下「ATO」という)が知られている。しかし、近年、ATOの構成元素であるアンチモンの毒性が懸念され、アンチモンを含有しない導電性粉体が求められている。例えば、タングステンをドープしたスズ酸化物を構成要素とする導電性材料が公知である(特許文献1、特許文献2参照)。
【0004】
しかし、これらの導電性粉体は、タングステンをドープしたスズ酸化物の単独粒子で構成されるため、ポリマーマトリックス中の分散性が十分でなく、また酸化スズの比重が大きいため、単位重量当りの粒子数が少なくなり、導電性の向上が図れないという問題がある。所望の導電性を得るためには、ポリマーマトリックス中の粉体重量濃度(以下「PWC」という。)を上げる必要がある。しかし、PWCの増加は、塗料の粘度上昇及び価格上昇を招くため好ましくなく、PWCの低減、即ちPWC当たりの導電性を上げることが求められていた。
【0005】
一方、白色無機顔料を基材として、タングステンをドープしたスズ酸化物で被覆した複合粒子も提案されている(特許文献3、特許文献4参照)。しかし、白色導電性粉体の提供を目的としているため、広範な色彩表現による意匠が要求される分野には、その使用が制限される。
【0006】
さらに、特許文献5にも、タングステンをドープしたスズ酸化物で基材を被覆した導電性粉体が開示されているが、アルミナフレークを基材とする具体的な記載はなく、また淡色で透明性が高い導電性粉体については開示されていない。
【0007】
また、リンをドープした酸化スズ及びリンをドープした酸化スズで被覆した複合粒子も提案されている(特許文献6、7、8、4参照)。
【0008】
しかしながら、リン単独のドーピングでは、空気中で放置すると時間経過と共に導電性が低下するという問題点がある。
【0009】
さらに、透明なアルミナフレークを基材として使用することは、従来技術には全く記載がない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開平9−278445号公報
【特許文献2】特表平9−503739号公報
【特許文献3】特開2002−179948号公報
【特許文献4】特開2004−349167号公報
【特許文献5】ドイツ国特許10148055号公報
【特許文献6】特開昭60−260424号公報
【特許文献7】特開平6−92636号公報
【特許文献8】特開2006−172916号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、色彩上の表現が要求される意匠性分野に使用可能な透明性を有する導電性粉体、特に、溶剤やポリマーマトリックスに対する分散性に優れ、低いPWCでも導電性が得られ、更に経時安定性にも優れる透明導電性粉体を提供することを目的とする。
【0012】
さらに、本発明は、上記の性能を有する透明導電性粉体の新規な製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、
(a)第1の基材としての、ドープまたはアンドープ薄片状酸化アルミニウムと、
(b)この第1の基材の表面を被覆し、タングステンがドープされた酸化スズ、またはリンがドープされた酸化スズの少なくとも1つを含有する被覆層と
を有する第1の粉体成分を含有する透明導電性粉体に関する。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、透明性を有する導電性粉体、特に、溶剤やポリマーマトリックスに対する分散性に優れ、低いPWCでも導電性が得られ、更に経時安定性にも優れる透明導電性粉体を提供することができる。このために、色彩上の表現が要求される意匠性分野に特に有利に使用される。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】実施例5で製造した透明導電性粉体のSEM像である。
【図2】比較例2で製造した透明導電性粉体のSEM像である。
【図3】比較例3で製造した透明導電性粉体のSEM像である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の製造方法と共に、本発明の透明導電性粉体を説明する。
【0017】
本発明の透明導電性粉体は、第1の粉体成分と、任意成分として第2の粉体成分を含有する。第1の粉体成分は主として透明性と導電性の向上に寄与し、第2の粉体成分は、第1粉体成分と相補って導電性を高め、結果的にPWCを低下させるために補助的に使用される。
【0018】
第1の粉体成分は、薄片状酸化アルミニウムが第1の基材として働き、表面が、タングステンでドープされた酸化スズ、またはタングステンとリンでドープされた酸化スズ、またはリンでドープされた酸化スズを含有する被覆層で被覆された粉体である。
【0019】
第1の基材として使用される薄片状酸化アルミニウムは、金属元素がドープされていてもドープされていなくてもよく、一般に耐熱性及び耐酸性を有し、機械的強度にも優れる。
【0020】
薄片状酸化アルミニウムの形状は、平均粒子径が好ましくは1〜100μmであり、より好ましくは5〜60μmである。
【0021】
またその厚みは、好ましくは1μm以下であり、より好ましくは0.05〜0.5μmである。アスペクト比(平均粒子径/厚さ)は、好ましくは10以上、より好ましくは50以上である。
【0022】
特に、アスペクト比が大きく、かつ、厚みが薄い粒子は、樹脂マトリックス中において、粒子同士が接触しやすくなり、低いPWCで所望の導電性を得ることが可能となる。その結果、樹脂マトリックスに配合した場合、より高い透明性を有する樹脂マトリックスが得られる。ただし、粒子の厚さとしては0.05μm以下になると機械的な強度が弱くなり、破壊され易くなるため、使用上現実的でない。
【0023】
本発明で使用される薄片状酸化アルミニウムは、金属元素がドープされていることが好ましく、それにより製造工程において、表面に形成される被覆層の付着が容易になる作用を有する。ドープする金属元素としては、例えばチタンおよび/またはスズが挙げられ、チタンが好ましい。ドープする金属元素は酸化物換算重量で、酸化アルミニウム(100重量%)に対して0.1〜4重量%で存在することが好ましい。
【0024】
薄片状酸化アルミニウムは、1つの粒子(1次粒子)が単結晶を形成しているものであり、その結果、第1の基材は透明であり、これを用いた第1の粉体成分の1つの粒子も透明性が高くなるために、透明導電性粉体の透明性が向上する。また、第1の基材の屈折率は、2.0以下が好ましく、特に1.2〜1.8が好ましい。その結果、樹脂マトリックスに配合した場合、より高い透明性を有する樹脂組成物が得られる。
【0025】
第1の基材として用いられる金属元素ドープ薄片状酸化アルミニウムとして、具体的には、例えば特許3242561号公報に記載されたチタンドープ薄片状酸化アルミニウム(即ち、酸化チタンを含有する薄片状酸化アルミニウム)が挙げられる。このチタンドープ薄片状酸化アルミニウムは、表面が平滑であり、アスペクト比(平均粒子径/厚さ)が大きく、かつ双晶及び凝集が無く、分散性が良好で、かつ、透明性が高い基材であり、前述の各物性を満足する。さらに、後述する被覆層の付着性も向上し、基材上に均一な被覆層を形成することが可能である。
【0026】
また、スズドープ薄片状酸化アルミニウムは、上記においてチタン塩をスズ塩に置き換えて製造することができる。また特開2005−082441号公報の方法によっても製造することができる。
【0027】
このようにして得られる金属元素ドープ薄片状酸化アルミニウムまたはアンドープ薄片状酸化アルミニウムは、屈折率が2.0以下のものであり、好ましくは単結晶のものである。
【0028】
本発明の特徴である透明性を阻害しない範囲で、第1の基材に加えて、その他の薄片状基材を併用することもできる。その他の薄片状基材は、屈折率が上記の2.0以下の材料から選ばれることが好ましく、例えば薄片状二酸化ケイ素(例えば特表平7−500366に記載)等が挙げられる。
【0029】
次に、第2の粉体成分の基材である第2の基材について説明する。第2の基材は、好ましくは屈折率が2.0以下、特に1.2〜1.8の範囲の材料が好ましく、二酸化ケイ素粒子、酸化アルミニウム粒子、およびそれらの混合物から選ばれることが好ましい。第2の基材の形状は、「薄片状ではない形状」が選ばれ、針状粒子、球状粒子等が挙げられる。ここで、針状粒子であれば、その長軸と短軸の比(すなわち、長軸/短軸)が、2〜100の範囲、好ましくは10〜50の範囲である。球状(楕円球等を含む)の場合もその長軸と短軸の比(すなわち、長軸/短軸)が1〜10の範囲、好ましくは1〜5の範囲である。
【0030】
粒子の大きさとしては、平均粒子径が20μm以下、好ましくは1μm以上で10μm以下のものが挙げられる。針状の場合は、長軸に垂直の断面の平均径がこの範囲であることが好ましい。
【0031】
代表例としては、商業的に入手可能な二酸化ケイ素(シリカ粒子)としては、例えば電気化学工業(株)製の「FS−3DC」、旭硝子(株)製の「サンスフェア(商標)NP−30」、Quarzwerke社製の「SIKRON(商標)SF600」、U.S.SILICA社製の「MIN−U−SIL(商標)10」が挙げられる。また、酸化アルミニウムとして、日本軽金属(株)製のアルミナ粒子「AT200」が挙げられる。
【0032】
このような形状の第2の基材から得られる第2の粉体成分を併用することにより、後述するようにより低いPWCで導電性が得られる透明導電性粉体が得られる。
【0033】
本発明の透明導電性粉体は、第1の粉体成分および第2の粉体成分をそれぞれ個別にTTOを有する被覆層またはTPTOを有する被覆層またはPTOを有する被覆層を形成した後に混合してもよいし、また、第1の基材および第2の基材を予め混合し、これらの基材の表面に同時にTTOまたはTPTOまたはPTOを含有する被覆層を形成することで、第1の粉体成分および第2の粉体成分の混合物として得ることもできる。
【0034】
例えば第1の基材と第2の基材を混合して、両基材を同時に被覆する場合には、第1の基材と第2の基材との配合比は、重量比で9:1〜2:8の範囲が好ましく、より好ましくは8:2〜5:5である。
【0035】
第1の基材および第2の基材から、個別に第1の粉体成分および第2の粉体成分をそれぞれ個別に製造した場合には、本発明における透明導電性粉体の第1の粉体成分と第2の粉体成分との配合比は、重量比で9:1〜2:8の範囲が好ましく、より好ましくは8:2〜5:5である。
【0036】
次に、被覆層および形成方法について説明する。第1の粉体成分および第2の粉体成分の被覆層は、それぞれ第1の基材および第2の基材を被覆し、タングステンがドープされた酸化スズ(TTO)、または、タングステンとリンがドープされた酸化スズ(TPTO)、または、リンがドープされた酸化スズ(PTO)を含有する。
【0037】
以下の説明において、特に言及しない限り、「被覆層」は、第1の粉体成分の被覆層および第2の粉体成分の被覆層の両方を意味し、「基材」は、第1の基材および第2の基材の両方を意味する。また、「被覆層」、および以下の「第1被覆層」、「第2被覆層」は、最終製品(例えば焼成後)の透明導電性粉体に存在する層を意味することに加え、その製造段階で現れる層(例えば焼成前の水和物層)も意味するものとする。
【0038】
被覆層は、タングステンがドープ、または、タングステンとリンがドープ、または、リンがドープされた酸化スズの層が、第1および第2の粉体成分粒子の少なくとも最表面に存在するように構成される。被覆層は、好ましくは第1被覆層と第2被覆層を有し、第2被覆層は第1および第2の粉体成分粒子の最表面を構成する層であり、タングステンがドープ、または、タングステンとリンがドープ、または、リンがドープされた酸化スズ層である。第1被覆層は、好ましくは酸化スズ層であり、タングステンがドープ、または、タングステンとリンがドープ、または、リンがドープされた酸化スズ層でも良い。
【0039】
TTO被覆層に使用されるスズとタングステンとの比は、atomic ratio(原子比)で99.7:0.3〜80:20に相当する量である。好ましくは99:1〜90:10である。TPTO被覆層に使用されるスズとタングステンとリンの比は、atomic ratio(原子比)で99.4:0.3:0.3〜70:10:20に相当する量である。好ましくは98:1:1〜85:5:10である。PTO被覆層に使用されるスズとリンとの比は、atomic ratio(原子比)で99.7:0.3〜80:20に相当する量である。好ましくは99:1〜90:10である。
【0040】
特に、被覆層の最表面層近傍でこの量が存在すればよい。従って、第1被覆層と第2被覆層で構成されるときは、第2被覆層がこの条件を満たすことが好ましい。
【0041】
また、タングステンとリンをドープすることによって、大気中焼成においても導電性が向上し、良好な経時安定性を得ることができる。(表4参照)
【0042】
第1被覆層と基材の間に二酸化ケイ素等の酸化スズを含有しない被覆層を設けてもよく、また第1被覆層を酸化スズ層(タングステンドープ、タングステンとリンドープ、リンドープおよびアンドープのいずれか一種)とし、第1被覆層と第2被覆層の間に二酸化ケイ素層を設けても良い。更には第2被覆層と基材の間の第1被覆層として二酸化ケイ素層を設けてもよい。二酸化ケイ素は、屈折率が低いことから透明性に効果的である。
【0043】
以下の製造方法では、最も好ましい実施形態として、第1被覆層としてタングステンドープ、またはタングステンとリンドープ、またはリンドープまたはアンドープの酸化スズ層、第1被覆層に引き続いて第2被覆層としてタングステンがドープ、またはタングステンとリンがドープ、またはリンがドープされた酸化スズ層を形成する例を説明する。
【0044】
まず基材を水に分散し懸濁液とする。この懸濁液のpHは、次の第1被覆層の形成に特に差し障りがないように適宜設定すればよく、通常は特にpHをコントロールすることなく基材を水に懸濁させればよい。
【0045】
スズ化合物の水溶液に使用されるスズ化合物としては、塩化スズ、硫酸スズ、硝酸スズ等のスズ塩類;およびスズ酸ナトリウム、スズ酸カリウム、スズ酸リチウム等のスズ酸塩類を挙げることができる。
【0046】
また、タングステン化合物の水溶液に使用されるタングステン化合物としては、タングステン酸アンモニウム、タングステン酸カリウム、タングステン酸ナトリウム、メタタングステン酸アンモニウム、メタタングステン酸カリウム、メタタングステン酸ナトリウム、パラタングステン酸アンモニウム、パラタングステン酸カリウム、パラタングステン酸ナトリウム、オキシ塩化タングステン等を挙げることができる。
【0047】
また、リン化合物の水溶液に使用されるリン化合物としては、オルトリン酸、メタリン酸、ピロリン酸、トリポリリン酸、亜リン酸、次亜リン酸等を挙げることができる。
【0048】
スズ化合物として(i)スズ塩類を使用する場合と(ii)スズ酸塩類を使用する場合に分けて説明する。
【0049】
(i)スズ塩類を使用する場合:
まず、第1被覆層の形成工程では、好ましくはpH1.5〜2.2の範囲にコントロールしながら基材の懸濁液に、スズ塩水溶液を添加して、酸化スズの水和物を基材表面に析出させて第1被覆層を形成する。スズ塩水溶液は酸性が強いため、アルカリ性水溶液を使用して上記のpHを保つ。アルカリ性水溶液は特に限定されないが、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、アンモニア水等の一般的なアルカリ水溶液を使用すればよい。pH条件は、より好ましくは、pH1.6〜2.0の範囲である。尚、懸濁液へのスズ塩水溶液、アルカリ性水溶液等の添加方法は、原料の全量が被覆層に取り込まれるように少しずつ滴下する方法が好ましい。これは以下の他の溶液の添加においても同じである。
【0050】
第1被覆層をタングステンがドープ、またはタングステンとリンがドープ、またはリンがドープされた酸化スズ層とするためには、上記pH条件を保ちながら、スズ塩水溶液に加えて、タングステン化合物水溶液、またはタングステン化合物水溶液およびリン化合物水溶液の組み合わせ、またはリン化合物水溶液も同時に添加する。このときpHを一定に保つためにアルカリ性水溶液、またはタングステン化合物をアルカリ水溶液に溶解させたアルカリ性混合溶液を使用しても良い。
【0051】
次の第2被覆層の形成工程では、好ましくはpH2.2〜3.5の範囲にコントロールしながら、スズ塩水溶液に加えて、タングステン化合物水溶液、またはタングステン化合物水溶液およびリン化合物水溶液の組み合わせ、またはリン化合物水溶液を添加して、第2被覆層を形成する。このとき、pHを一定に保つためにアルカリ性水溶液、またはタングステン化合物をアルカリ水溶液に溶解させたアルカリ性混合溶液を使用しても良い。被覆するpHは、より好ましくは、pH2.6〜3.2の範囲である。
【0052】
また、第1被覆工程および第2被覆工程中、添加(好ましくは滴下)は通常は撹拌しながら行われ、温度は、適宜設定することができるが、例えば室温〜100℃、好ましくは40〜90℃の範囲である。条件を適切に選択して、滴下したスズ成分およびタングステン成分、または、リン成分を基材表面に析出・付着させることができる。
【0053】
このように被覆する際のpHを2段階に設定することにより、亀裂(クラック)のない平滑な被覆層が容易に得られる。例えば、pHを1.5〜2.0の範囲内でのみ被覆すると、被覆層にクラックが発生し易い。このクラックの発生は、個々の粉体の導電性および透明性を低下させる。また、pHを2.2〜3.5の範囲内のみで被覆すると、被覆層の表面に未付着の粒子が析出し、被覆層の平滑性が失われ易い。この未付着の微粒子の存在が多くなるほど、個々の粉体の流動性が低下し、樹脂マトリックス中において、良好な分散性が得られないため、低いPWCで所望の導電性を得ることができない。
【0054】
このように、第1被覆層の形成工程の後、第2被覆層の形成工程を経ることによってクラックのない透明導電性粉体を容易に得ることができる。
【0055】
(ii)スズ酸塩類を使用する場合:
まず、第1被覆層の形成工程では、好ましくはpH4〜6の範囲にコントロールしながら基材の懸濁液に、スズ酸塩水溶液を添加して、酸化スズの水和物を基材表面に析出させて第1被覆層を形成する。スズ酸塩水溶液はアルカリ性であるため、酸性水溶液を使用して上記のpHを保つ。酸性水溶液は特に限定されないが、塩酸、硫酸、硝酸、酢酸等の一般的な酸を使用すればよい。被覆するpH条件は、より好ましくは、pH4.5〜5.5の範囲である。尚、懸濁液へのスズ酸塩水溶液、酸性水溶液等の添加方法は、原料の全量が被覆層に取り込まれるように少しずつ滴下する方法が好ましい。
【0056】
第1被覆層をタングステンがドープ、またはタングステンとリンがドープ、またはリンがドープされた酸化スズ層とするためには、上記pH条件を保ちながら、スズ酸塩水溶液に加えて、タングステン化合物水溶液、またはタングステン化合物水溶液およびリン化合物水溶液の組み合わせ、またはリン化合物水溶液も同時に添加する。
【0057】
次の第2被覆層の形成工程では、好ましくはpH2.2〜3.5の範囲にコントロールしながら、スズ酸塩水溶液に加えて、タングステン化合物水溶液、またはタングステン化合物水溶液およびリン化合物水溶液の組み合わせ、またはリン化合物水溶液を添加して、第2被覆層を形成する。このときのpHの調整にも前記と同様の酸性水溶液を使用する。被覆するpH条件は、より好ましくは、pH2.6〜3.2の範囲である。
【0058】
また、第1被覆工程および第2被覆工程中、添加(好ましくは滴下)は通常は撹拌しながら行われ、温度は、適宜設定することができるが、例えば室温〜100℃、好ましくは40〜90℃の範囲である。条件を適切に選択して、仕込みのスズ成分およびタングステン成分、または、リン成分を基材表面に析出・付着させることができる。
【0059】
このように被覆する際のpHを2段階に設定することにより、未付着粒子の少ない平滑な被覆層が容易に得られる。例えば、pHを4〜6の範囲内でのみ被覆すると、粉体のpHが8以上になり、粉体の導電性を低下させ易い(後述する表3参照)。また、pHを2.5〜3.5の範囲内のみで被覆すると、被覆層の表面に未付着の粒子が析出し、被覆層の平滑性が失われ易い。この未付着の微粒子の存在が多くなるほど、個々の粉体の流動性が低下し、樹脂マトリックス中において、良好な分散性が得られないため、低いPWCで所望の導電性を得ることができない。
【0060】
(i)および(ii)のどちらの場合でも、被覆層を形成した後、固形物を洗浄・ろ別し、必要により乾燥後、300〜1100℃、好ましくは700〜1000℃の温度で、焼成する。焼成雰囲気として、空気、酸素、または窒素等の不活性ガス雰囲気を挙げることができる。
【0061】
本発明は、空気中で焼成する方法も採用できる点で有利であり、それにより製造コストが低減でき、より無彩色の導電性粉体が得られる点で、好ましい。通常、空気または酸素よりも、不活性ガスの焼成条件の中で、より高い導電性を有する傾向がある。不活性ガス雰囲気下での焼成条件を適用することが望ましい。焼成雰囲気条件は、目的により、空気、酸素または不活性ガス(窒素等)の一つから適切に採用することができる。
【0062】
以上のように得られる透明導電性粉体では、基材を被覆する被覆層(特に第1被覆層がタングステンドープ、またはタングステンとリンドープ、またはリンドープ、またはアンドープの酸化スズ層で、第2被覆層がタングステンがドープ、またはタングステンとリンがドープ、またはリンがドープされた酸化スズ層である好ましい形態の場合)の量は、基材100重量部当たり、酸化物換算で25〜300重量部に相当する量である。好ましくは、60〜150重量部である。これらの量より被覆量を増しても導電性が向上する効果が得られないにもかかわらず、十分な透明性が得られなくなるため好ましくない。一方、被覆量が少ないと、十分な導電性を得ることができない。
【0063】
また、第1被覆層と第2被覆層の割合は、酸化物換算の重量比で、第1被覆層:第2被覆層が5:95〜60:40となるように原料の添加量を調整すればよい。より好ましくは10:90〜45:55である。第1被覆層がアンドープ酸化スズ層である場合は、タングステン、または、リンの使用量が少なくてすむために経済的である。
【0064】
焼成後に得られる透明導電性粉体のpHは、最外層の第2被覆層の形成条件により変化する。粉体のpHは、JIS K5101−17−2で規定される方法により、粉体を常温で水に懸濁させた液のpHを測定することで決められる。本発明の透明導電性粉体は、pH8以下を示すことが好ましく、より好ましくはpH2〜6の範囲内である。粉体のpHが8より高くなると、導電性が大幅に低下してしまうためである(後述する表3参照)。被覆時における溶液のpHは4未満でないと、粉体のpHが8より高くなり、導電性が大幅に低下してしまうため、4未満に制御する必要があることが実験より明らかになった(後述する表3参照)。
【0065】
得られる第1の粉体成分および第2の粉体成分のうち、特に第1の粉体成分は透明性に優れる。好ましい形態では、第1の基材が単結晶で透明性が高く、第1の粉体成分の粒子そのものが透明である。さらに、使用上粉体成分と樹脂マトリックスの屈折率が近いために、樹脂マトリックスに分散したときにその界面での光反射が少なく、透明性が高くなるという特徴がある。第1の粉体は、樹脂中に粉体濃度30重量%で含有させ、8μmのフィルムをPETシート上に形成してその全光線透過率をJIS K−7361により測定したとき、70%以上を示す特徴を有することが好ましい。
【0066】
本発明の透明導電性粉体は、前述のとおり第1の粉体成分に加えて、導電性を高めるためには第2の粉体成分を含有することが好ましい。第2の粉体成分を含むときは、その添加の効果がわかる程度に添加することが好ましく、第1の粉体成分と第2の粉体成分の比は、例えば重量比で9:1〜2:8、好ましくは8:2〜5:5の範囲である。
【0067】
以上のように、本発明の透明導電性粉体、特に第1の粉体成分により透明な導電性粉体を得ることができる。さらには、第2の基材として針状または粒状の無機粒子を用いる第2の粉体成分を併用することにより、第1の粉体成分を構成する薄片状粒子が、第2の粉体成分を介して接触しやすくなり、低PWCで所望の導電性を得ることが可能となった。その結果、樹脂マトリックスへの導電性粉体の使用量も低減することができ、より透明性の高い樹脂組成物が得られる。そして、使用量(濃度)の低減化により、例えば導電性塗料としたときのコスト上昇および粘度上昇を抑えることができる。さらに、塗料中における他の成分の添加許容範囲が増大するため、導電性粉体を使用した製品設計上の自由度が増し、使用目的・用途を拡大することができる。
【0068】
このように、第1の粉体成分と第2の粉体成分を配合した本発明の組成物の代表的例では、樹脂マトリックス中、PWCが30%で、50MΩ以下、好ましくは20MΩ以下の表面抵抗を示し、8μmのフィルムをPETシート上に形成してその全光線透過率をJIS K−7361により測定したとき、好ましくは70%以上、より好ましくは75%以上を示す。
【0069】
さらに本発明の透明導電性粉体の使用例を説明する。本発明の透明導電性粉体は、広範囲の用途に用いられる。例えば樹脂組成物、プライマー、調合物、塗料、ラッカー、印刷インク、プラスチック、フィルム、具体的には、プラスチック材料(塗膜、フィルム、シート、成形品等)の帯電防止処理、または、プラスチック材料に静電塗装を行うための導電性プライマーなどに用いられる。
【0070】
これら用途を、以下にさらに具体的に示す。樹脂組成物への使用例として、本発明の透明導電性粉体を樹脂に組み込む場合は、直接樹脂と混合したり、または予めペレットとしてから樹脂と混合し、押し出し成形や、カレンダーリング、ブロウイング等により各種成形体とする事が出来る。樹脂成分としてはポリオレフィン系の熱可塑性樹脂、エポキシ系、ポリエステル系やポリアミド(ナイロン)系の熱硬化性樹脂の何れも用いる事が出来る。
【0071】
さらに、本発明の透明導電性粉体は、特に、導電性フィルムおよびプラスチックの製造に、例えば、当業者に知られている導電性を必要とする全ての用途(例えば帯電防止用途を含む)のための導電性フィルムおよびシート、プラスチック容器および型製品に用いることができる。本発明の導電性顔料の組み込みに適したプラスチックは、全ての一般的プラスチック、例えば、熱硬化性材料または熱可塑性材料である。
【0072】
当然に、本発明の透明導電性粉体にウエルドライン防止表面処理(例えば、カプセル化処理など)を施したものを用いることができる。さらに、本発明における樹脂組成物には本発明の透明導電性粉体と共に後述する顔料を併用することができる。
【0073】
本発明の透明導電性粉体を帯電防止用塗料に使用する場合、有機溶剤型塗料及び、NAD系、水性塗料、エマルション塗料、コロイダル塗料、粉体塗料への使用が例示できる。
【0074】
この塗料は、木材、プラスチック、金属鋼板、ガラス、セラミック、紙、フィルム、シート、LCディスプレイ用反射板の半透明膜等に塗装する事ができる。
【0075】
塗料への使用用途としては、自動車用、建築用、船舶用、家電製品用、缶用、産業機器用、路面表示用、プラスチック用、家庭用等が例示される。
【0076】
塗装方法はスプレー塗装等の吹きつけ塗装を用いることができるが、静電塗装、電着塗装等、特に限定されない。
【0077】
塗装体の塗膜構造としては、限定されないが、たとえば下地層、中塗り層、本発明の透明導電性粉体含有層及びクリア層の順、又は、下地層、本発明の透明導電性粉体含有中塗り層及びクリア層の順序を有する塗膜構造が例示される。さらに、本発明における塗料には本発明の透明導電性粉体と共に下記に述べる顔料を併用することができる。
【0078】
プライマーへの使用例としては、ポリオレフィン樹脂とアクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂からなる群より選ばれる少なくとも1種の改質樹脂との混合樹脂、架橋剤等を含有する水性塗料又は有機溶剤系塗料に用いることができる。
【0079】
水性プライマーには更に、バインダー成分を含有するものであり、バインダー成分は水溶化又は水分散化するために十分な親水性基を有するものであれば特に限定されない。更に消泡剤、増粘剤、界面活性剤等のその他の添加剤を配合しても良い。
【0080】
上記プライマーにより塗装される塗装物品としては特に限定されず、例えば、自動車内外装品、住居用内外装や家庭電化製品の外板部等を挙げることができる。また、上記塗装物品の基材としては特に限定されず、金属板、樹脂板、硝子板、セラミックス板等が挙げられ、更に樹脂板としては、例えば、ポリオレフィン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ABS樹脂、ウレタン樹脂、ナイロン、ポリフェニレンオキサイド樹脂等を挙げることができる。上記基材は、必要に応じて脱脂処理、水洗処理等を施したものであってもよい。
【0081】
本発明の透明導電性粉体を含有するプライマーは、透明性の高い導電性プライマーを提供し、上塗りする塗膜の色彩にほとんど影響を与えない利点がある。そして、種々の絶縁材料に導電性を付与し、その上に静電塗装を可能とする。従って、静電塗装用導電プライマーとして使用することができる。塗装方法は、静電塗装、電着塗装、吹き付け塗装等、特に限定されない。さらに、本発明におけるプライマーには本発明の透明導電性粉体と共に下記に述べる顔料を併用することができる。
【0082】
インク、プラスチック、ゴム、およびその他の調合物への使用に関して、本発明の透明導電性粉体は、導電性を有することを意図する調合物に使用可能であり、通常使用される全てのタイプの原料および助剤と組み合わせることができる。
【0083】
具体的には、印刷インク(グラビア、オフセット、スクリーンまたはフレキソ印刷用の印刷インク)、複写機用トナー、レーザーマーキング、化粧料等へ使用することができる。さらに、本発明におけるインク、プラスチック、ゴム、およびその他の調合物には本発明の透明導電性粉体と共に下記に述べる顔料を併用することができる。
【0084】
上記の樹脂組成物、塗料、ラッカー、プライマー、調合物において、本発明の透明導電性粉体と併用できる顔料としては、以下のものが例示できる。即ち、二酸化チタン、炭酸カルシウム、クレー、タルク、硫酸バリウム、ホワイトカーボン、酸化クロム、亜鉛華、硫化亜鉛、亜鉛粉末、金属粉顔料、鉄黒、黄色酸化鉄、べんがら、黄鉛、カーボンブラック、モリブデートオレンジ、紺青、群青、カドミウム系顔料、蛍光顔料、溶性アゾ顔料、不溶性アゾ顔料、縮合型アゾ顔料、フタロシアニン顔料、縮合多環顔料、複合酸化物系顔料、グラファイト、雲母(たとえば、白雲母、金雲母、合成雲母、弗素四珪素雲母等)、金属酸化物被覆雲母(たとえば、酸化チタン被覆雲母、二酸化チタン被覆雲母、(水和)酸化鉄被覆雲母、酸化鉄及び酸化チタン被覆雲母、低次酸化チタン被覆雲母等)、金属酸化物被覆グラファイト(たとえば、二酸化チタン被覆グラファイト等)、薄片状アルミナ、金属酸化物被覆アルミナ(たとえば、二酸化チタン被覆アルミナ、酸化鉄被覆薄片状アルミナ、三酸化二鉄被覆薄片状アルミナ、四酸化三鉄被覆薄片状アルミナ、干渉色性金属酸化物被覆薄片状アルミナ等)、MIO、金属酸化物被覆MIO、金属酸化物被覆シリカフレーク、金属酸化物被覆ガラスフレーク等が挙げられる。
【0085】
また、本発明の透明導電性粉体および併用することができる顔料は、分散性向上のため、粉体表面を直接または間接的に、シランカップリング剤、チタンカップリング剤にて処理する事が出来る。さらに、各種付加的な表面処理を施すことによりそれらの用途に応じた(要求品質に合った)粉体とする事が出来る。例えば、自動車塗料用途などで要求される耐光性、耐水性、耐候性の処理(例えば特開昭63−130673、特開平1−292067、特開平07−268241、特開2000−505833、特開2002−194247、特開2007−138053等の方法)や、例えば塗料分野、印刷分野で要求される高配向性(リーフィング効果)処理(例えば特開2001−106937、特願平11−347084等の方法)、水系塗料または水系印刷インク用の水系処理(例えば特開平8−283604等の方法)、化粧品用途でのシリコーンによる分散性改良やハイドロジェンポリシロキサンによる撥水撥油処理などや、また樹脂へ使用する場合のウエルドライン防止表面処理(例えば特開平3−100068、特開平3−93863)、また、分散性向上などの各種処理等を施す事が出来る。従って、「本発明の透明導電性粉体」には、上述の各種表面処理したものも含まれる。
【0086】
同様に、上記使用例において有機染料、顔料および/またはさらなる他の導電性材料、例えば、カーボンブラック、透明および不透明の白色粉体(ATO、アルミニウムドープ酸化亜鉛など)、着色および黒色の顔料、および薄片状酸化鉄、有機顔料、ホログラフ顔料、LCP(液晶ポリマー)および従来の、雲母、金属、ガラス、金属酸化物被覆薄片(Al、Fe、SiO、ガラスに基づく)に基づく透明、着色、金属光沢干渉顔料、および黒色光沢顔料とブレンドすることもできる。
【0087】
更に、本発明の透明導電性粉体は、ITO代替のディスプレイ用、ソーラーセル用、印刷電子部品用、帯電防止用、偽造防止用の導電材料として使用することができる。
【実施例】
【0088】
以下に、本発明を実施例により示す。ただし、これに限定されるものではない。
【0089】
実施例中、TTO層は、タングステンがドープされた酸化スズを有する被覆層を意味し、PTO層は、リンがドープされた酸化スズを有する被覆層を意味し、TPTOは、タングステンとリンがドープされた酸化スズを有する被覆層を意味する。
【0090】
この特許出願および与えられた例において、「導電性粉体」は以下のように定義される。
【0091】
導電性粉体は、その粉体抵抗によって特徴づけられる。この特許出願において、導電性粉体は、10Ωcm未満、好ましくは10Ωcm未満、および最も好ましくは10Ωcm未満の粉体抵抗値を有している。これらの必要条件は、導電性顔料の、例えば床材料のような導電性、帯電防止、または帯電放散コーティングにおける用途から来るものである。例えば、ESD基準DIN EN 10015+IEC 61340−5−1およびIEC 61340−5−2 (H. Berndt, Elektrostatik, VDE−Verlag, Berlin, 1998, Chapt. 10)に述べられているように、ESD保護区域に許容される表面抵抗値は10から10Ωの範囲である。1種以上の絶縁体バインダーと導電性顔料を含有する調合物でこれらの範囲を達成するために、適用される導電性顔料の粉体抵抗は、上記の方法に従って決定された時、調合物に要求される表面抵抗値より、少なくとも10の3乗は小さくなければならない。
【0092】
顔料粉体の粉体抵抗を測定するために、0.5〜3gの量の顔料を、内径2cmのアクリル製チューブに入れ、2つの対向する金属プランジャーの間で、10kgの重りによりを圧縮する。圧縮した顔料粉体に、金属プランジャーを介して抵抗計を接触させることによって、電気抵抗を測定する。圧縮した顔料層の厚さLおよび直径dから、顔料の固有抵抗率ρが、下式に従って決定される。
【0093】
【数1】

【0094】
<参考例1>(第1の基材の作製)
チタンドープ薄片状酸化アルミニウムの製造方法:
硫酸アルミニウム18水和物111.9g、硫酸ナトリウム(無水)57.3g及び硫酸カリウム46.9gを300mlの脱イオン水に60℃以上に加温しながら溶解させる。完全に溶解後、加温を止め更に硫酸チタニル(濃度34.4%)1.0gを加え、混合水溶液(a)を調製する。別に、リン酸三ナトリウム12水和物1.35g及び炭酸ナトリウム54.0gを150mlの脱イオン水に溶解させ、混合水溶液(b)を調製する。混合水溶液(a)を約60℃に加温し、これに攪拌しながら混合水溶液(b)を混合水溶液(a)に加えてゲル化させ、更に15分間攪拌する。このゲル状物を蒸発乾燥し、その後1200℃で5時間熱処理する。得られた処理物に水を加えて攪拌しながら遊離の硫酸塩を溶解させ、不溶性の固体をろ過分離、水洗、乾燥させてチタンドープ薄片状酸化アルミニウムを得る。
【0095】
<実施例1>(第1の基材と第2の基材の混合物へTTOを2層被覆)
参考例1で得た91.87gのチタンドープ薄片状酸化アルミニウム(平均粒子径:18μm、平均厚さ:220nm、アスペクト比:82)と39.38gの粒子状二酸化ケイ素(電気化学工業(株)製(FS−3DC)、平均粒子径:約3μm)を、1.75リットルの脱イオン水に分散させ、懸濁液を得る。撹拌しながら75℃の温度まで昇温する。第一層のTTO層の被覆のために、希塩酸を用いて当該懸濁液のpHを1.8とする。当該懸濁液に、予め調製したSnCl溶液(74.21gのSnCl・5HOを、105mlの18.5%−HClに溶解したもの)を141mlと、2.16gのNaWO・2HOに16重量%のNaOH水溶液を加えて282mlとしたものを用いて、同時滴下により他に用意した16重量%のNaOH水溶液を用いてpHを1.8に保ちながら被覆する。引き続きTTO層の第二層を被覆するため、NaOH水溶液によりpHを2.8とする。第二層のTTO被覆のために、予め調製したSnCl溶液(221.11gのSnCl・5HOを313mlの18.5%−HClに溶解したもの)を422mlと、6.46gのNaWO・2HOに16重量%のNaOH水溶液を加えて844mlとしたものを用いて、同時滴下により他に用意した16重量%のNaOH水溶液を用いてpHを2.8に保ちながら被覆する。
【0096】
得られた懸濁液をろ過、脱イオン水で洗浄し、105℃で乾燥し、さらに窒素雰囲気下900℃で10分焼成し、透明導電性粉体を得る。
【0097】
<実施例2>
大気中900℃で10分間焼成すること以外は、実施例1記載の製造方法で透明導電性粉体を得る。
【0098】
<実施例3>(第1の基材と第2の基材を個別にTTOを2層被覆)
参考例1で得た91.87gのチタンドープ薄片状酸化アルミニウム(平均粒子径:18μm、平均厚さ:220nm、アスペクト比:82)を、1.75リットルの脱イオン水に分散させ、懸濁液を得る。撹拌しながら75℃の温度まで昇温する。第一層のTTO層の被覆のために、希塩酸を用いて当該懸濁液のpHを1.8とする。当該懸濁液に、予め調製したSnCl溶液(74.21gのSnCl・5HOを、105mlの18.5%−HClに溶解したもの)を141mlと、2.16gのNaWO・2HOに16重量%のNaOH水溶液を加えて282mlとしたものを用いて、同時滴下により他に用意した16重量%のNaOH水溶液を用いてpHを1.8に保ちながら被覆する。引き続きTTO層の第二層を被覆するため、NaOH水溶液によりpHを2.8とする。第二層のTTO被覆のために、予め調製したSnCl溶液(221.11gのSnCl・5HOを313mlの18.5%−HClに溶解したもの)を422mlと、6.46gのNaWO・2HOに16重量%のNaOH水溶液を加えて844mlとしたものを用いて、同時滴下により他に用意した16重量%のNaOH水溶液を用いてpHを2.8に保ちながら被覆する。
【0099】
一方、上記製法において、チタンドープ薄片状酸化アルミニウムの代わりに粒子状二酸化ケイ素(電気化学工業(株)製(FS−3DC)、平均粒子径:約3μm)を用いて同様にして乾燥粉体Bを得る。
【0100】
得られた乾燥粉体AとBを、6: の重量比となるように混合し、その後、窒素雰囲気下900℃で10分焼成し、透明導電性粉体を得る。
【0101】
<実施例4>
大気中900℃で10分間焼成すること以外は、実施例3記載の製造方法で透明導電性粉体を得る。
【0102】
<実施例5>(第1の基材にTTOを2層被覆)
参考例1で得た131.25gのチタンドープ薄片状酸化アルミニウム(平均粒子径:18μm、平均厚さ:220nm、アスペクト比:82)を、1.75リットルの脱イオン水に分散させ、懸濁液を得る。撹拌しながら75℃の温度まで昇温する。第一層のTTO層の被覆のために、希塩酸を用いて当該懸濁液のpHを1.8とする。当該懸濁液に、予め調製したSnCl溶液(74.21gのSnCl・5HOを、105mlの18.5%−HClに溶解したもの)を141mlと、2.16gのNaWO・2HOに16重量%のNaOH水溶液を加えて282mlとしたものを用いて、同時滴下により他に用意した16重量%のNaOH水溶液を用いてpHを1.8に保ちながら被覆する。引き続きTTO層の第二層を被覆するため、NaOH水溶液によりpHを2.8とする。第二層のTTO被覆のために、予め調製したSnCl溶液(221.11gのSnCl・5HOを313mlの18.5%−HClに溶解したもの)を422mlと、6.46gのNaWO・2HOに16重量%のNaOH水溶液を加えて844mlとしたものを用いて、同時滴下により他に用意した16重量%のNaOH水溶液を用いてpHを2.8に保ちながら被覆する。
【0103】
得られた懸濁液をろ過、脱イオン水で洗浄し、105℃で乾燥し、さらに窒素雰囲気下900℃で10分焼成し、透明導電性粉体を得る。
【0104】
<実施例6>
大気中900℃で10分間焼成すること以外は、実施例5記載の製造方法で透明導電性粉体を得る。
【0105】
<粉体参考例1>(第2の基材にTTOを2層被覆)
131.25gの粒子状二酸化ケイ素(電気化学工業(株)製(FS−3DC)、平均粒子径:約3μm)を、1.75リットルの脱イオン水に分散させ、懸濁液を得る。撹拌しながら75℃の温度まで昇温する。第一層のTTO層の被覆のために、希塩酸を用いて当該懸濁液のpHを1.8とする。当該懸濁液に、予め調製したSnCl溶液(74.21gのSnCl・5HOを、105mlの18.5%−HClに溶解したもの)を141mlと、2.16gのNaWO・2HOに16重量%のNaOH水溶液を加えて282mlとしたものを用いて、同時滴下により他に用意した16重量%のNaOH水溶液を用いてpHを1.8に保ちながら被覆する。引き続きTTO層の第二層を被覆するため、NaOH水溶液によりpHを2.8とする。第二層のTTO被覆のために、予め調製したSnCl溶液(221.11gのSnCl・5HOを313mlの18.5%−HClに溶解したもの)を422mlと、6.46gのNaWO・2HOに16重量%のNaOH水溶液を加えて844mlとしたものを用いて、同時滴下により他に用意した16重量%のNaOH水溶液を用いてpHを2.8に保ちながら被覆する。
【0106】
得られた懸濁液をろ過、脱イオン水で洗浄し、105℃で乾燥し、さらに窒素雰囲気下900℃で10分焼成し、透明導電性粉体を得る。
【0107】
<粉体参考例2>
大気中900℃で10分間焼成すること以外は、粉体参考例1記載の製造方法で透明導電性粉体を得る。
【0108】
<参考例2>(アンドープAl基材の作製)
硫酸アルミニウム18水和物111.9g、硫酸ナトリウム(無水)57.3g及び硫酸カリウム46.9gを300mlの脱イオン水に60℃以上に加温しながら溶解させる。完全に溶解後、加温を止め、混合水溶液(a)を調製する。別に、リン酸三ナトリウム12水和物1.35g及び炭酸ナトリウム54.0gを150mlの脱イオン水に溶解させ、混合水溶液(b)を調製した。混合水溶液(a)を約60℃に加温し、これに攪拌しながら混合水溶液(b)を混合水溶液(a)に加えてゲル化させ、更に15分間攪拌する。このゲル状物を蒸発乾燥し、その後1200℃で5時間熱処理する。得られた処理物に水を加えて攪拌しながら遊離の硫酸塩を溶解させ、不溶性の固体をろ過分離、水洗、乾燥させてアンドープ薄片状酸化アルミニウムを得る。
【0109】
<実施例7a>
チタンドープ薄片状酸化アルミニウムの代わりに参考例2で得たドープしていない薄片状酸化アルミニウムを基材として用いること以外は、実施例5記載の製造方法で透明導電性粉体を得る。
【0110】
<実施例7b>
チタンドープ薄片状酸化アルミニウムの代わりに参考例2で得たドープしていない薄片状酸化アルミニウムを基材として用いること以外は、実施例6記載の製造方法で透明導電性粉体を得る。
【0111】
<比較例1>
チタンドープ薄片状酸化アルミニウムの代わりにルチル型二酸化チタン(チタン工業製KR−310)を基材として用いる他は、実施例5記載の製造方法で白色導電性粉体を得る。
【0112】
<比較例2>(第1の基材にTTOをpH=1.8で1層被覆)
131.25gのチタンドープ薄片状酸化アルミニウム(平均粒子径:18μm、平均厚さ:220nm、アスペクト比:82)を、1.75リットルの脱イオン水に分散させ、懸濁液を得る。撹拌しながら75℃の温度まで昇温する。TTO層の被覆のために、希塩酸を用いて当該懸濁液のpHを1.8とする。当該懸濁液に、予め調製したSnCl溶液(295.32gのSnCl・5HOを、418mlの18.5%−HClに溶解したもの)を563mlと、8.62gのNaWO・2HOに16重量%のNaOH水溶液を加えて1126mlとしたものを用いて、同時滴下により他に用意した16重量%のNaOH水溶液を用いてpHを1.8に保ちながら被覆する。
【0113】
得られた懸濁液をろ過、脱イオン水で洗浄し、105℃で乾燥し、さらに窒素雰囲気下900℃で10分焼成し、透明導電性粉体を得る。得られた粉体は表面にクラックがあることがSEM写真により確認された(図2)。
【0114】
<比較例3>(第1の基材にTTOをpH=2.8で1層被覆)
参考例1で得た131.25gのチタンドープ薄片状酸化アルミニウム(平均粒子径:18μm、平均厚さ:220nm、アスペクト比:82)を、1.75リットルの脱イオン水に分散させ、懸濁液を得る。撹拌しながら75℃の温度まで昇温する。TTO層の被覆のために、希塩酸を用いて当該懸濁液のpHを2.8とする。当該懸濁液に、予め調製したSnCl溶液(295.32gのSnCl・5HOを、418mlの18.5%−HClに溶解したもの)を563mlと、8.62gのNaWO・2HOに16重量%のNaOH水溶液を加えて1126mlとしたものを用いて、同時滴下により他に用意した16重量%のNaOH水溶液を用いてpHを2.8に保ちながら被覆する。
【0115】
得られた懸濁液をろ過、脱イオン水で洗浄し、105℃で乾燥し、さらに窒素雰囲気下900℃で10分焼成し、透明導電性粉体を得る。得られた粉体は表面に未付着の粒子があることがSEM写真により確認された(図3)。
【0116】
<実施例8>
TTO層の第二層を被覆するためのpHを3.0とする他は、実施例5記載の製造方法で透明導電性粉体を得た。
【0117】
<実施例9>
TTO層の第二層を被覆するためのpHを3.2とする他は、実施例5記載の製造方法で透明導電性粉体を得た。
【0118】
<実施例10>
TTO層の第二層を被覆するためのpHを3.5とする他は、実施例5記載の製造方法で透明導電性粉体を得た。
【0119】
<比較例4>
TTO層の第二層を被覆するためのpHを4.0とする他は、実施例5記載の製造方法で透明導電性粉体を得た。
【0120】
<実施例11>(第1の基材にTPTOを2層被覆)
参考例1で得た131.25gのチタンドープ薄片状酸化アルミニウム(平均粒子径:18μm、平均厚さ:220nm、アスペクト比:82)を、1.75リットルの脱イオン水に分散させ、懸濁液を得る。撹拌しながら75℃の温度まで昇温する。第一層のTPTO層の被覆のために、希塩酸を用いて当該懸濁液のpHを1.8とする。当該懸濁液に、予め調製したSnCl溶液(74.21gのSnCl・5HOを、105mlの18.5%−HClに溶解したもの)と85%オルトリン酸水溶液(1.23g)を加えた141mlの溶液と、2.16gのNaWO・2HOに16重量%のNaOH水溶液を加えて282mlとしたものを用いて、同時滴下により他に用意した16重量%のNaOH水溶液を用いてpHを1.8に保ちながらTPTO層を被覆する。引き続きTPTO層の第二層を被覆するため、NaOH水溶液によりpHを2.8とする。第二層のTPTO被覆のために、予め調製したSnCl溶液(221.11gのSnCl・5HOを313mlの18.5%−HClに溶解したもの)と85%オルトリン酸水溶液(3.63g)を加えた422mlの溶液と、6.46gのNaWO・2HOに16重量%のNaOH水溶液を加えて844mlとしたものを用いて、同時滴下により他に用意した16重量%のNaOH水溶液を用いてpHを2.8に保ちながら被覆する。
【0121】
得られた懸濁液をろ過、脱イオン水で洗浄し、105℃で乾燥し、さらに窒素雰囲気下900℃で10分焼成し、透明導電性粉体を得る。
【0122】
<実施例12>
大気中900℃で10分間焼成すること以外は、実施例11記載の製造方法で透明導電性粉体を得る。
【0123】
<実施例13>(第1の基材にPTO層を2層被覆)
参考例1で得た131.25gのチタンドープ薄片状酸化アルミニウム(平均粒子径:18μm、平均厚さ:220nm、アスペクト比:82)を、1.75リットルの脱イオン水に分散させ、懸濁液を得る。撹拌しながら75℃の温度まで昇温する。第一層のPTO層の被覆のために、希塩酸を用いて当該懸濁液のpHを1.8とする。当該懸濁液に、予め調製したSnCl溶液(74.21gのSnCl・5HOを、105mlの18.5%−HClに溶解したもの)と85%オルトリン酸水溶液(1.23g)を加えた141mlの溶液と、同時滴下により他に用意した32重量%のNaOH水溶液を用いてpHを1.8に保ちながらPTO層を被覆する。引き続きPTO層の第二層を被覆するため、NaOH水溶液によりpHを2.8とする。第二層のPTO被覆のために、予め調製したSnCl溶液(221.11gのSnCl・5HOを313mlの18.5%−HClに溶解したもの)と85%オルトリン酸水溶液(3.63g)を加えた422mlの溶液と、同時滴下により他に用意した32重量%のNaOH水溶液を用いてpHを2.8に保ちながら被覆する。
【0124】
得られた懸濁液をろ過、脱イオン水で洗浄し、105℃で乾燥し、さらに窒素雰囲気下900℃で10分焼成し、透明導電性粉体を得る。
【0125】
<比較例5>
大気中900℃で10分間焼成すること以外は、実施例13記載の製造方法で透明導電性粉体を得る。
【0126】
上記の実施例、比較例の層構成、焼成条件、測定結果を表1〜表4に示す。測定は次の方法により行う。
【0127】
・「粉体体積抵抗率:Rv(Ωcm)」の測定方法:
得られた粉体を1cmの断面積(S)において、10kg/cmの圧力でプレスし、粉体の電気抵抗値(R)を抵抗測定器(アドバンテスト製R8340)にて測定する。そして、プレスされた粉体の厚み(t)を測定し、次式:
Rv=R×S/t(Ωcm)
よりRvを求める。
【0128】
・「表面抵抗Rs(Ω)」の測定方法:
評価用塗板の作製方法
1. 塗料の調整方法
所定の濃度に配合したアクリルラッカー(オリジン電気製プラネット(商標))と得られた試料を手練りで混錬する。攪拌機で2分間混錬後、シンナーで希釈する。作製した塗料の粘度は、フォードカップNo.4法において、12.5秒である。
【0129】
2. 塗装条件
プラスチックプレート(ABS樹脂)にスプレーガン(IWATA製W−100)にて塗装を行い、60℃で20分間乾燥する。乾燥後、塗膜の膜厚は、20〜30μmである。
【0130】
3. 測定方法
抵抗測定器(アドバンテストR8340)にて、測定電圧を500Vに設定し、JISK 6911の5.13抵抗率測定方法に準じてRsを測定する。
【0131】
・「透明性」の測定方法:
得られた試料を塗料(大日精化工業製VSメヂウム(商標))にPWCとして、30重量%の濃度で分散させ、さらにPETフィルム(東レ製ルミラー(商標)S10、厚み50μm、全光線透過率86%)の表面に、バーコーター(No.20)を用いてコートした後、室温で乾燥させる。コートしたフィルムの厚みは、8μmである。ヘイズメーター(村上色彩技術研究所製HM−150型)にて、当該フィルムを用い、JIS K−7361により、全光線透過率(%)を測定する。
【0132】
・「粉体のpH」の測定方法:
JIS K5101−17−2で規定される方法において、得られた試料のpHを測定する。
【0133】
・経時安定性試験:
粉体体積抵抗率(Rv)の加速試験を、調製した透明導電性粉体を100℃で2時間静置し、加速試験前後のRvを測定する。
【0134】
本明細書において、「TTO」は「タングステンがドープされた酸化スズ」を意味し、「TPTO」は「タングステンとリンがドープされた酸化スズ」を意味し、「PTO」は「リンがドープされた酸化スズ」を意味する。
【0135】
【表1】

【0136】
【表2】

【0137】
【表3】

【0138】
【表4】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)第1の基材としての、ドープまたはアンドープ薄片状酸化アルミニウムと、
(b)この第1の基材の表面を被覆し、タングステンがドープされた酸化スズ、またはリンがドープされた酸化スズの少なくとも1つを含有する被覆層と
を有する第1の粉体成分を含有することを特徴とする透明導電性粉体。
【請求項2】
(a)第1の基材としての、ドープまたはアンドープ薄片状酸化アルミニウムと、
(b)この第1の基材の表面を被覆し、タングステンがドープされた酸化スズ(以下「TTO」という。)を含有する被覆層と
を有する第1の粉体成分を含有することを特徴とする請求項1記載の透明導電性粉体。
【請求項3】
前記薄片状酸化アルミニウムに、金属元素がドープされていることを特徴とする請求項1または2に記載の透明導電性粉体。
【請求項4】
前記薄片状酸化アルミニウムの屈折率が2.0以下であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の透明導電性粉体。
【請求項5】
前記(b)の被覆層が、タングステンとリンがドープされた酸化スズ(以下「TPTO」という。)を含有することを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の透明導電性粉体。
【請求項6】
前記(b)の被覆層が、リンがドープされた酸化スズ(以下「PTO」という。)を含有することを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の透明導電性粉体。
【請求項7】
前記第1の基材の平均粒子径が1〜100μmであることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の透明導電性粉体。
【請求項8】
前記第1の基材の厚みが1μm以下であることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の透明導電性粉体。
【請求項9】
前記第1の基材のアスペクト比(平均粒子径/厚み)が5以上であることを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載の透明導電性粉体。
【請求項10】
前記第1の基材にドープする金属元素が、チタンおよびスズからなる群より選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする請求項1〜9のいずれかに記載の透明導電性粉体。
【請求項11】
前記第1の基材が、単結晶であることを特徴とする請求項1〜10記載の透明導電性粉体。
【請求項12】
(a)第2の基材としての無機粒子と、
(b)この第2の基材の表面を被覆し、TTOまたはTPTOまたはPTOを含有する被覆層と
を有する第2の粉体成分を、さらに含有することを特徴とする請求項1〜11のいずれかに記載の透明導電性粉体。
【請求項13】
前記第2の基材が、二酸化ケイ素粒子および/または酸化アルミニウム粒子であることを特徴とする請求項1〜12のいずれかに記載の透明導電性粉体。
【請求項14】
前記第1の粉体成分および前記第2の粉体成分との重量混合比が9:1〜2:8であることを特徴とする請求項1〜13のいずれかに記載の透明導電性粉体。
【請求項15】
前記第1の粉体の被覆層の被覆量が、前記第1の基材100重量部あたり、酸化物換算で25〜300重量部の範囲であることを特徴とする請求項1〜14のいずれかに記載の透明導電性粉体。
【請求項16】
前記第2の粉体の被覆層の被覆量が、前記第2の基材100重量部あたり、酸化物換算で25〜300重量部の範囲であることを特徴とする請求項1〜15のいずれかに記載の透明導電性粉体。
【請求項17】
前記第1の粉体の被覆層が、少なくとも2つの層を含み、最表面層がTTOを含有する被覆層またはTPTOを含有する被覆層またはPTOを含有する被覆層であることを特徴とする請求項1〜16のいずれかに記載の透明導電性粉体。
【請求項18】
前記第2の粉体の被覆層が、少なくとも2つの層を含み、最表面層がTTOを含有する被覆層またはTPTOを含有する被覆層またはPTOを含有する被覆層であることを特徴とする請求項1〜17のいずれかに記載の透明導電性粉体。
【請求項19】
前記第1の粉体の被覆層が、第1被覆層と、最表面の第2被覆層を含み、前記第2被覆層がTTOを含有する被覆層またはTPTOを含有する被覆層またはPTOを含有する被覆層であり、第1被覆層と第2被覆層の被覆量の重量比が、酸化物換算で5:95〜60:40の範囲であることを特徴とする請求項1〜18のいずれかに記載の透明導電性粉体。
【請求項20】
前記第2の粉体の被覆層が、第1被覆層と、最表面の第2被覆層を含み、前記第2被覆層がTTOを含有する被覆層またはTPTOを含有する被覆層またはPTOを含有する被覆層であり、第1被覆層と第2被覆層の被覆量が、酸化物換算の重量比で5:95〜60:40の範囲であることを特徴とする請求項1〜19のいずれかに記載の透明導電性粉体。
【請求項21】
樹脂中に透明導電性粉体を粉体濃度30重量%で含有させた8μmのフィルムの全光線透過率が70%以上であることを特徴とする請求項1〜20のいずれかの透明導電性粉体。
【請求項22】
前記第1の粉体成分の、JIS K5101−17−2により測定されるpHが1.5〜8であることを特徴とする請求項1〜21のいずれかに記載の透明導電性粉体。
【請求項23】
前記第1の粉体の被覆層が、少なくとも酸化スズを含有する第1被覆層と、TTOまたはTPTOまたはPTOを含有する第2被覆層を有し、
前記第1被覆層と前記第2被覆層は、異なるpH条件で被覆され、前記第2被覆層が、pH2.2〜3.5の範囲で被覆されたことを特徴とする請求項1〜22のいずれかに記載の透明導電性粉体。
【請求項24】
前記第2の粉体の被覆層が、少なくとも酸化スズを含有する第1被覆層と、TTOまたはTPTOまたはPTOを含有する第2被覆層を有し、
前記第1被覆層と前記第2被覆層は、異なるpH条件で被覆され、前記第2被覆層が、pH2.2〜3.5の範囲で被覆されたことを特徴とする請求項1〜23のいずれかに記載の透明導電性粉体。
【請求項25】
(a)第1の基材としてのドープまたはアンドープ薄片状酸化アルミニウム、および/または前記第1の基材とは異なる第2の基材としての無機粒子を水に懸濁する工程と、
(b)前記懸濁液に、スズ化合物の水溶液を添加して、第1被覆層を形成する工程と、
(c)前記第1被覆層形成後の懸濁液に、(1)スズ化合物の水溶液およびタングステン化合物の水溶液を添加、または(2)スズ化合物の水溶液、タングステン化合物の水溶液およびリン化合物の水溶液を添加、または(3)スズ化合物の水溶液およびリン化合物の水溶液を添加して、第2被覆層を形成する工程と
を有することを特徴とする請求項1〜24のいずれかの透明導電性粉体の製造方法。
【請求項26】
前記スズ化合物が、スズ塩類から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする請求項25記載の方法。
【請求項27】
前記第1被覆層の形成工程および前記第2被覆層の形成工程において、アルカリ性水溶液によりpHを調整することを特徴とする請求項25または26記載の方法。
【請求項28】
請求項1〜24のいずれかに記載の透明導電性粉体を樹脂中に混合した樹脂組成物。
【請求項29】
請求項1〜24のいずれかに記載の透明導電性粉体を含む塗料、プライマー、インク、プラスチック、ゴム、またはラッカー。
【請求項30】
請求項1〜24のいずれかに記載の透明導電性粉体を含む透明導電性プライマー。
【請求項31】
請求項1〜24のいずれかに記載の透明導電性粉体を含む塗料を塗装してなる塗膜。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2010−535866(P2010−535866A)
【公表日】平成22年11月25日(2010.11.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−519369(P2010−519369)
【出願日】平成20年8月4日(2008.8.4)
【国際出願番号】PCT/EP2008/006395
【国際公開番号】WO2009/018984
【国際公開日】平成21年2月12日(2009.2.12)
【出願人】(591032596)メルク パテント ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (1,043)
【氏名又は名称原語表記】Merck Patent Gesellschaft mit beschraenkter Haftung
【住所又は居所原語表記】Frankfurter Str. 250,D−64293 Darmstadt,Federal Republic of Germany
【Fターム(参考)】