説明

透明導電性被膜形成用塗布液、透明導電性被膜付基材および表示装置

【課題】102〜104Ω/□程度の低い表面抵抗を有し、帯電防止性、透明性、反射防止性、防眩性および電磁遮蔽性に優れるとともに、信頼性にも優れた透明導電性被膜を形成しうる透明導電性被膜形成用塗布液を提供する。
【解決手段】導電性微粒子と極性溶媒とを含む透明導電性被膜形成用塗布液において、導電性微粒子が、アスペクト比が2〜200の範囲にあり、平均長さが5〜100nmの範囲にある棒状導電性微粒子であることを特徴とする透明導電性被膜形成用塗布液。導電性微粒子と極性溶媒とを含む透明導電性被膜形成用塗布液において、導電性微粒子が、棒状微粒子表面に1〜100nmの範囲の粒子径を有する導電性微粒子が接合した棒状導電性微粒子群であり、かつ、該棒状導電性微粒子群のアスペクト比が2〜200の範囲にあり、平均長さが5〜100nmの範囲にあることを特徴とする透明導電性被膜形成用塗布液。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、透明導電性被膜形成用塗布液、透明導電性被膜付基材および該基材を前面板として備えた表示装置に関し、さらに詳しくは、帯電防止性、電磁遮蔽性、透明性、反射防止性等に優れた透明導電性被膜付基材を形成可能な塗布液、および該塗布液を使用して得られた該透明導電性被膜付基材、該透明導電性被膜付基材で構成された前面板を備えた表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、陰極線管、蛍光表示管、液晶表示板などのような表示パネルの透明基材の表面の帯電防止および反射防止を目的として、これらの表面に帯電防止機能および反射防止機能を有する透明被膜を形成することが行われていた。
【0003】
ところで、陰極線管などから放出される電磁波が人体に及ぼす影響が、最近問題にされており、従来の帯電防止、反射防止に加えてこれらの電磁波および電磁波の放出に伴って形成される電磁場を遮蔽することが望まれている。
【0004】
これらの電磁波などを遮蔽する方法の一つとして、陰極線管などの表示パネルの表面に電磁波遮断用の導電性被膜を形成する方法がある。しかし、従来の帯電防止用導電性被膜であれば表面抵抗が少なくとも107Ω/□程度の表面抵抗を有していれば十分であるの
に対し、電磁遮蔽用の導電性被膜では102〜104Ω/□のような低い表面抵抗を有することが必要であった。
【0005】
従来から使用されていたSbドープ酸化錫およびSnドープ酸化インジウムなどの導電性酸化物を含む塗布液を用いて、このような表面抵抗の低い導電性被膜を形成すると、従来の帯電防止性被膜の場合よりも膜厚を厚くする必要があった。しかしながら、導電性被膜の膜厚は、10〜200nm程度にしないと反射防止効果は発現しないため、従来のSbド
ープ酸化錫およびSnドープ酸化インジウムなどの導電性酸化物では、表面抵抗が低く、
電磁波遮断性に優れるとともに、反射防止にも優れた導電性被膜を得ることが困難であるという問題があった。
【0006】
また、低表面抵抗の導電性被膜を形成する方法の一つとして、Agなどの金属微粒子を含む導電性被膜形成用塗布液を用いて基材の表面に金属微粒子含有被膜を形成する方法がある。この方法では、金属微粒子含有被膜形成用塗布液として、コロイド状の金属微粒子が極性溶媒に分散したものが用いられている。このような塗布液では、コロイド状金属微粒子の分散性を向上させるために、金属微粒子表面がポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドンまたはゼラチンなどの有機系安定剤で表面処理されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、このような金属微粒子含有被膜形成用塗布液を用いて形成された導電性被膜は、被膜中で金属微粒子同士が安定剤を介して接触するため、粒界抵抗が大きく、被膜の表面抵抗が低くならないことがあった。このため、成膜後、400℃程度の高温で焼成して安定剤を分解除去する必要があるが、安定剤の分解除去をするため高温で焼成すると、金属微粒子同士の融着や凝集が起こり、導電性被膜の透明性やへーズが低下するという問題があった。また、陰極線管などの場合は、高温に晒すと劣化してしまうという問題もあった。
【0008】
さらに従来のAg等の金属微粒子を含む透明導電性被膜では、金属が酸化されたり、イオン化による粒子成長したり、また場合によっては腐食が発生することがあり、塗膜の導電性や光透過率が低下し、表示装置が信頼性を欠くという問題があった。
【0009】
また、従来の透明導電性被膜では単分散した微粒子が用いられたため、マトリックスの影響、粒子表面に残存する有機安定剤、溶媒、あるいは粒界抵抗等に起因して充分な低抵抗膜が得られない場合、さらには充分な再現性が得られない場合があり、このため、例えば膜の抵抗を低くするために膜厚を厚くするなどすると透明性が低下する等の問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、上記のような従来技術の問題点を解決すべくなされたものであって、102
〜104Ω/□程度の低い表面抵抗を有し、帯電防止性、透明性、反射防止性、防眩性お
よび電磁遮蔽性に優れるとともに、信頼性にも優れた透明導電性被膜を形成しうる透明導電性被膜形成用塗布液、透明導電性被膜付基材、該基材を前面板として備えた表示装置を提供することを目的としている。
【0011】
本発明に係る第2の透明導電性被膜形成用塗布液は、
導電性微粒子と極性溶媒とを含む透明導電性被膜形成用塗布液において、
導電性微粒子が、アスペクト比が2〜200の範囲にある棒状導電性微粒子であることを特徴としている。
【0012】
本発明で係る第3の透明導電性被膜形成用塗布液は、導電性微粒子と極性溶媒とを含む透明導電性被膜形成用塗布液において、
導電性微粒子が、1〜100nmの粒子径を有する導電性微粒子が棒状微粒子表面に接合した棒状導電性微粒子群であり、
かつ、該棒状導電性微粒子群のアスペクト比が2〜200の範囲にあることを特徴としている。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、導電性、電磁遮蔽性に優れるとともに、光透過率の制御が可能であり、反射防止性能および防眩性を有し、信頼性が高い透明導電性被膜を形成しうる透明導電性被膜形成用塗布液を得ることができる。
【0014】
また、本発明によれば、導電性、電磁遮蔽性に優れるとともに、光透過率の制御が可能であり、反射防止性能および防眩性を有し、信頼性が高い透明導電性被膜が形成された透明導電性被膜付基材を得ることができる。
【0015】
このような透明導電性被膜付基材を表示装置の前面板として用いれば、電磁遮蔽性に優れるとともに反射防止性および防眩性にも優れた表示装置を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明に係る透明導電性被膜形成用塗布液中に含まれている鎖状導電性微粒子群の一態様を示す概略図である。
【図2】本発明に係る透明導電性被膜形成用塗布液中に含まれている鎖状導電性微粒子群の別の一態様を示す概略図である。
【図3】本発明に係る透明導電性被膜形成用塗布液中に含まれている鎖状導電性微粒子群の別の一態様を示す概略図である。
【図4】本発明に係る透明導電性被膜形成用塗布液中に含まれている棒状導電性微粒子の一態様を示す概略図である。
【図5】本発明に係る透明導電性被膜形成用塗布液中に含まれている棒状導電性微粒子の別の一態様を示す概略図である。
【図6】本発明に係る透明導電性被膜形成用塗布液中に含まれている棒状導電性微粒子群の一態様を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明について具体的に説明する。
【0018】
[第1の透明導電性被膜形成用塗布液]
まず、本発明に係る第1の透明導電性被膜形成用塗布液について説明する。
【0019】
本発明に係る透明導電性被膜形成用塗布液は、鎖状導電性微粒子群と極性溶媒とを含む。
【0020】
鎖状導電性微粒子群
本発明でいう「鎖状導電性微粒子群」とは、図1に示すように平均粒子径が1〜100nm、好ましくは5〜80nmの一次粒子が少なくとも2個以上鎖状に連続して結合した鎖状構造を有する微粒子をいう。
【0021】
このような鎖状導電性微粒子群は、一次粒子が単に粒子間引力等によって凝集しているのとは相異し、金属粒子同士である場合は金属結合によって、酸化物粒子同士である場合は酸素を介して結合している。さらには、図2に示されるように、「ネック」と呼ばれる粒子の接点部分に一次粒子と同一または異なる成分が結合して一次粒子は互いに面で結合していてもよい。このような鎖状導電性微粒子群は直線状であっても、ジグザグ状であってもよく、弓状に湾曲していてもよい。さらには、図3に示されるように、鎖状導電性微粒子群の末端同士が接合したリング状であってもよい。
【0022】
このような鎖状導電性微粒子群を構成する一次粒子の間には粒界抵抗がなく、有機安定剤、溶媒も存在し得ないので、鎖状導電性微粒子群を含む塗布液を塗布して得られる被膜の抵抗が減少し、低い抵抗の被膜が得られる。
【0023】
導電性微粒子の平均一次粒径が100nmを越えると、鎖状導電性微粒子群の形成が困難となり、また仮にできたとしても導電層中の粒子の接点が減少するために低い抵抗値を有する透明導電性被膜を得ることが困難となる。さらに、平均一次粒径が100nmを越えると、導電性微粒子による光の吸収が大きくなり、被膜の光透過率が低下したり被膜のへーズが大きくなることがあり、このような平均一次粒径が100nmを越えた導電性微粒子を含む被膜付基材を、たとえば陰極線管の前面板として用いると、表示画像の明るさ不充分となり、このため一定の透過率を得るために膜厚を薄くしたり、導電性微粒子の量を少なくしようとすると充分な導電性が得られないことがある。
【0024】
また、導電性微粒子の平均粒径が1nm未満の場合には粒界抵抗が急激に大きくなるため、本発明の目的を達成しうる程度の低い抵抗値を有する透明導電性被膜を得ることができないこともある。また、粒子が小さいために鎖状導電性微粒子群が得られず3次元に凝集した粒子が増加する傾向にあり、低い抵抗値を有する導電性被膜を得ることができないこともある。
【0025】
このような鎖状導電性微粒子群の平均長さは、2〜200nm、好ましくは5〜80nmの範囲にある。
【0026】
平均長さが2nm未満では、接触抵抗が増加し、低抵抗の透明導電性被膜が得られない
ことがあり、また平均長さが200nmを超えると、透明導電性被膜の形成性が低下し、ヘーズ等の光学特性に問題が生じ、さらに外観が悪化するなどの問題がある。
【0027】
なお、本発明では、導電性微粒子がすべて上記のような鎖状導電性微粒子群を形成してもよいが、導電性微粒子の少なくとも一部が鎖状導電性微粒子群を形成していてもよい。このときの鎖状導電性微粒子群の割合は、導電性微粒子中に5%以上の量で含まれていることが望ましい。鎖状導電性微粒子群の割合が5%未満では、抵抗を低下させる効果が不充分になることがある。
【0028】
このような鎖状導電性微粒子群は、Au,Ag,Pd,Cu,Ni,Ru,Rh,Sn,In,
Sb,Fe,Pt,Ti,Cr,Co,Al,Zn,Ta,Pb,Os,Irから選ばれる一種以上の元素からなる金属および/または金属水酸化物または金属酸化物、あるいは異種金属ドープ金属酸化物、これらの混合物からなることが好ましい。
【0029】
鎖状導電性微粒子群が2種以上の元素からなる金属微粒子である場合、好ましい金属の組合せとしては、Au-Cu,Ag-Pt,Ag-Pd,Au-Pd,Au-Rh,Pt-Pd,Pt-Rh,Fe-Ni,Ni-Pd,Fe-Co,Cu-Co,Ru-Ag,Au-Cu-Ag,Ag-Cu-Pt,Ag-Cu-Pd,Ag-Au-Pd,Au-Rh-Pd,Ag-Pt-Pd,Ag-Pt-Rh,Fe-Ni-Pd,Fe-Co-Pd,Cu-Co-Pd などが挙げられる。なお、鎖状導電性微粒子群を構成する2種以上の金属は、固溶状態にある合金であっても、固溶状態にない共晶体であってもよく、合金と共晶体が共存していてもよい。鎖状導電性微粒子群が2種以上の金属から構成されると、金属の酸化やイオン化あるいはイオンマイグレーションが抑制されるため、被膜形成後の導電性微粒子の粒子成長等が抑制される。また、2種以上の金属から構成される鎖状導電性微粒子群は、耐腐食性が高く、導電性、光透過率の低下が小さいので、信頼性に優れた透明導電性被膜を形成することができる。
【0030】
導電性微粒子が金属酸化物、あるいは異種金属ドープ金属酸化物である場合の好ましい例としては、たとえば酸化錫、Sb、FまたはPがドーピングざれた酸化錫、酸化インジ
ウム、SnまたはFがドーピングされた酸化インジウム、酸化アンチモン、低次酸化チタ
ンなどが挙げられる。
【0031】
このような鎖状導電性微粒子群は、金属微粒子分散スラリーまたは金属水酸化物ゲルスラリーに加熱処理を行ったのち、メカニカル分散処理を行い得られたものが好ましい。
【0032】
具体的に鎖状導電性微粒子群は、以下のような方法によって調製される。
(1)たとえば金属から構成される鎖状導電性微粒子群の場合、以下のような方法によって
得ることができる。
【0033】
まず、アルコール・水混合溶媒中で、金属塩を還元して一次粒子径が1〜100nmの金属微粒子分散スラリーを調製する。このとき、通常、還元剤が添加される。還元剤としては、硫酸第1鉄、クエン酸3ナトリウム、酒石酸、水素化ホウ素ナトリウム、ヒドラジン、次亜リン酸ナトリウムなどが使用される。なお、金属塩を2種以上使用する場合、2種以上の金属塩を同時に還元してもよく、また個々の金属塩を還元したのち、混合してもよい。
【0034】
得られた金属微粒子分散スラリーは、イオン性不純物を除去しておくことが望ましい。イオン性不純物を除去する方法は特に限定されるものではなく、たとえば、カチオン性、アニオン性または両性のイオン交換樹脂で処理する方法等が挙げられる。イオン性不純物は、導電性微粒子の塗布液中の量によって、異なるものの、塗布液中のイオン濃度が1000ppm以下となるような量であることが望ましい。イオン性不純物の量が1000ppm以
下であれば塗布液の安定性が高く(ポットライフが長く)することができ、さらには、被膜形成時に導電性微粒子が凝集することが少なくなるので平滑な被膜を形成できる。
【0035】
次に、得られた金属微粒子分散スラリーにメカニカル分散処理を行うこともできる。このメカニカル分散処理によって、生成ゲルが解膠し、鎖状導電性微粒子群が分散したゾルが得られる。このようなメカニカル分散処理としては、サンドミル法、衝撃分散法などが挙げられ、特に、衝撃分散法が好ましく使用される。衝撃分散法は、音速程度などの高速でスラリーを壁に衝突させて分散または粉砕させる方法であり、たとえばArtimizer、Nanomizer等の装置を用いて行われる。このような方法では、粒子内の結合が切断して結晶性が無定型化したり、OH基などの表面官能基の生成による導電性が低下したりすることがなく、安定に分散した鎖状導電性微粒子群分散ゾルが得られるので好ましい。
【0036】
なお、メカニカル分散処理を行う際には、安定剤を添加してもよい。安定剤として具体的には、ゼラチン、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタール酸、アジピン酸、セバシン酸、マレイン酸、フマル酸、フタル酸、クエン酸などの多価カルボン酸およびその塩、複素環化合物あるいはこれらの混合物などが挙げられる。導電性微粒子調製時に使用される安定剤は、後述する塗布液に添加される安定剤と同じであっても異なっていてもよく、また安定剤の使用量は、安定剤のCMC(臨界ミセル生成濃度)の5〜50%、好ましくは5〜30%の範囲であることが望ましい。
【0037】
安定剤の量がCMCの5%未満では、粒子表面の安定剤の量が少ないため、3次元に連結した非鎖状の粒子が生成することがあり、安定剤の量がCMCの50%を越えると鎖状導電性微粒子群の生成せずに単分散粒子が多くなり、鎖状導電性微粒子群の導電パス形成による導電層の抵抗の低下効果が得られないことがある。
【0038】
(2)また、金属から構成される鎖状導電性微粒子群は、上記以外に、以下の方法で調製することができる。
【0039】
まず、前記同様にアルコール・水混合溶媒中で、金属塩を還元して一次粒子径が1〜100nmの金属微粒子分散スラリーを調製する。このとき、通常、還元剤が添加される。還元剤としては、前記と同じものが挙げられる。
【0040】
次に、調製した金属微粒子分散スラリーを圧力容器などを使用した加圧下で加熱処理(以後この処理をオートクレーブ処理という)する。このようなオートクレーブ処理は、通常、約100〜250℃の温度で行われる。この際、安定剤を添加してもよく、安定剤の種類および使用量は前記と同様である。また、この加熱処理を行う際、金属微粒子分散スラリーの撹拌の有無によって、鎖状導電性微粒子群の生成割合および鎖状導電性微粒子群の長さを制御することができる。
【0041】
オートクレーブ処理したのち、前記のようなメカニカル分散処理を行う。
【0042】
また、オートクレーブ処理を行うに際して、さらに金属塩を添加してもよい。使用される金属塩としては、金属微粒子分散スラリー調製時に使用したものと同じものであっても、異なるものであってもよい。このような金属塩を添加していると、加熱処理時に、ネック部に金属のイオンマイグレーションし、粒子の接合が点接合から面接合になり、図2に示されるような「ネック」部を有する鎖状導電性微粒子群が得られる。
(3)さらにまた、金属から構成される鎖状導電性微粒子群は、以下の方法で調製すること
もできる。
【0043】
まず、アルコール・水混合溶媒中で、還元剤および有機安定剤の存在下で、金属塩を還元する。この際、使用される還元剤および有機安定剤としては、前記と同様のものが例示される。なお、有機系安定剤は、生成する金属微粒子1重量部に対し、0.005〜0.5重量部、好ましくは0.01〜0.2重量部含まれていればよい。有機系安定剤の量が0.
005重量部未満の場合は充分な分散性が得られず、0.5重量部を超えて高い場合は、
鎖状導電性微粒子群の生成が少なく単分散粒子が多くなり、さらに過剰の有機系安定剤が存在すると凝集粒子が生成することがあり、また残留する有機安定剤により導電性が阻害されることがある。
【0044】
この方法でも、図2に示されるように、「ネック」を有する鎖状導電性微粒子群を有することができる。
(4)また、鎖状導電性微粒子群が金属酸化物の場合、以下のようにして、調製することが
できる。
【0045】
まず、金属塩または金属アルコキシドが0.1〜5重量%の濃度で含まれるアルコール
溶液を加熱して加水分解させる。このとき必要に応じて温水に加えたり、アルカリを加えもよい。このような加水分解によって、一次粒子径が1〜100nmの金属水酸化物のゲル分散液を調製する。次いで、ゲル分散液を濾別・洗浄し、空気中、200〜800℃の温度で焼成して導電性金属酸化物微粒子を調製する。
【0046】
ついで、この粉末を酸性またはアルカリ性の水および/またはアルコール溶媒に分散させて濃度10〜50重量%の分散液とし、必要に応じて有機安定剤の存在下でこの分散液を前記と同様にメカニカル分散処理する。必要に応じて前記同様にオートクレーブ処理を行ってもよい。
(5)さらにまた、金属酸化物から構成される鎖状導電性微粒子群は、前記ゲル分散液を濾
別・洗浄した後、必要に応じて有機安定剤の存在下で、金属水酸化物をオートクレーブ処理し、さらにメカニカル分散処理を行うことによって得ることができる。この場合、前記と同様にイオン交換樹脂処理して、イオン性不純物を除去してもよい。
【0047】
こうして得られた鎖状導電性微粒子群は、通常、遠心分離などの方法によって生成後の分散液から取り出され、必要に応じて酸などで洗浄されたのち、後述の極性溶媒に分散させて使用される。また、得られた鎖状導電性微粒子群を含む分散液は、そのまま塗布液として使用することもできる。
【0048】
透明導電性被膜形成用塗布液の調製
本発明に係る第1の透明導電性被膜形成用塗布液では、このような鎖状導電性微粒子群が、極性溶媒中に分散している。本発明で用いられる極性溶媒としては、水;メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ジアセトンアルコール、フルフリルアルコール、テトラヒドロフルフリルアルコール、エチレングリコール、ヘキシレングリコールなどのアルコール類;酢酸メチルエステル、酢酸エチルエステルなどのエステル類;ジエチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテルなどのエーテル類;アセトン、メチルエチルケトン、アセチルアセトン、アセト酢酸エステルなどのケトン類などが挙げられる。これらは単独で使用してもよく、また2種以上混合して使用してもよい。
【0049】
また、本発明に係る透明導電性被膜形成用塗布液には、さらにマトリックス形成成分が含まれていてもよい。マトリックス形成成分は、本発明に係る透明導電性被膜形成用塗布液を用いて被膜する際に、導電性微粒子のバインダーとして作用する。このようなマトリックス形成成分としては、SiO2前駆体、TiO2前駆体、ZrO2前駆体または有機高
分子から選ばれる少なくとも一種が好ましく使用され、このうち、特にSiO2前駆体、
有機高分子が好ましい。SiO2前駆体として具体的には、アルコキシシランなどの有機
ケイ素化合物を加水分解して得られる重縮合物あるいはアルカリ金属ケイ酸塩水溶液を脱アルカリして得られるケイ酸重縮合物などが挙げられる。また、有機高分子としては、ポリエチレン、ポリフェノール、エポキシ、ポリアミノ酸、ポリスチレンなどの塗料用樹脂が挙げられる。
【0050】
本発明に係る透明導電性被膜形成用塗布液中には、前記導電性微粒子が0.05〜5重量%、好ましくは0.1〜2重量%の濃度で含まれていることが望ましい。
【0051】
また、マトリックス形成成分は、前記鎖状導電性微粒子群1重量部当たり、0.01〜
0.9重量部、好ましくは0.1〜0.5重量部の量で含まれていればよい。
【0052】
また、本発明に係る透明導電性被膜形成用塗布液には、導電性微粒子の分散性を向上させるため、有機系安定剤が含まれていてもよい。このような有機系安定剤として具体的には、ゼラチン、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリアクリル酸、エチレンジアミン四酢酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタール酸、アジピン酸、セバシン酸、マレイン酸、フマル酸、フタル酸、クエン酸などの多価カルボン酸およびその塩、セルロース誘導体、複素環化合物、界面活性剤あるいはこれらの混合物などが挙げられる。
【0053】
このような有機系安定剤は、導電性微粒子1重量部に対し、0.005〜0.5重量部、好ましくは0.01〜0.5重量部含まれていればよい。有機系安定剤の量が、0.005
重量部未満の場合は充分な分散性が得られず、0.5重量部を超えて高い場合は導電性が
阻害されることがある。
【0054】
さらにまた本発明に係る透明導電性被膜形成用塗布液には、塗布液の可視光の広い波長領域において可視光の透過率が一定になるように、染料、着色顔料あるいは着色粒子を含んでいてもよい。
【0055】
染料、着色顔料または着色粒子としては、公知のものを使用することが可能であり、具体的には、微粒子カーボン、ジアゾ系染料、チタンブラック、フタロシアニン系顔料、ジオキサジン顔料などが挙げられる。
【0056】
透明導電性被膜形成用塗布液中に、染料、着色顔料または着色粒子を含む場合、透明導電性被膜形成用塗布液中の固形分濃度(導電性微粒子と染料、顔料などの添加剤の総量)は、塗布液の流動性、塗布液中の導電性微粒子などの粒状成分の分散性などの点から、15重量%以下、好ましくは0.15〜5重量%の範囲にあることが望ましい。
【0057】
さらに本発明に係る透明導電性被膜形成用塗布液は、液中に存在するアルカリ金属イオン、アンモニウムイオンおよび多価金属イオンならびに鉱酸などの無機陰イオン、酢酸、蟻酸などの有機陰イオンなどのイオン濃度の合計量が、1000ppm以下であることが望ましい。特に鉱酸などの無機陰イオンは、鎖状導電性微粒子群の安定性、分散性を阻害することがあり、塗布液中の含有量はより少ない方が望ましい。イオン濃度が低くなると、透明導電性被膜形成用塗布液中に含まれている粒状成分、特に導電性微粒子の分散状態が良好となり、鎖状導電性微粒子群以外の単に凝集しただけの粒子をほとんど含まない塗布液が得られる。このような透明導電性被膜形成用塗布液中での鎖状導電性微粒子群の単分散状態は、透明導電性被膜の形成過程でも維持される。このため、イオン濃度の低い透明導電性被膜形成用塗布液から透明導電性被膜を形成すると、透明導電性被膜中には前記鎖状導電性微粒子群のみが観察される。
【0058】
また上記のようなイオン濃度の低い透明導電性被膜形成用塗布液を用いると、透明導電性被膜中で鎖状導電性微粒子群を良好に分散させ、均一に配列させることができるので、透明導電性被膜中で導電性微粒子が凝集している場合に比較して、より少ない導電性微粒子で同等の導電性を有する透明導電性被膜を提供することが可能となる。さらに鎖状導電性微粒子群同士の凝集に起因すると思われる点欠陥および厚さむらなどのない透明導電性被膜を基材上に形成することが可能である。
【0059】
このようなイオン濃度の低い透明導電性被膜形成用塗布液を得るための脱イオン処理の方法は、最終的に塗布液中に含まれているイオン濃度が上記のような範囲になるような方法であれば特に制限されないが、たとえば、鎖状導電性微粒子群を調製した分散液、または前記分散液から調製された塗布液を陽イオン交換樹脂および/または陰イオン交換樹脂あるいは両性イオン交換樹脂と接触させる方法、あるいはこれらの液を、限外濾過膜を用いて洗浄処理する方法などが挙げられる。
【0060】
[第2の透明導電性被膜形成用塗布液]
次に、本発明に係る第2の透明導電性被膜形成用塗布液について説明する。
【0061】
本発明に係る第2の透明導電性被膜形成用塗布液は、棒状導電性微粒子と前記極性溶媒とを含むものである。
棒状導電性微粒子
棒状導電性微粒子は、図4に示すように棒状をしており、このような粒子のアスペクト比(粒子長さL/粒子断面径D)が2〜200、好ましくは2〜50の範囲にある。
【0062】
また前記導電性微粒子の平均長さは、2〜200nm、好ましくは5〜100nmの範囲にあることが好ましい。
【0063】
平均長さが2nm未満では、接触抵抗が増加し低抵抗の透明導電性被膜が得られないことがある。また、長さが200nmを超えると、透明導電性被膜の形成性が低下し、ヘーズ等の光学特性に問題が生じ、さらに外観が悪化する等の問題がある。
【0064】
このような棒状導電性微粒子は、平均断面径が1〜100nm、好ましくは2〜80nmの範囲にあることが好ましい。平均断面径が100nmを越えると、導電層中の粒子の接点が減少するため、低い抵抗値を有する透明導電性被膜を得ることが困難となる。また、導電性微粒子による光の吸収が大きくなり、微粒子層の光透過率が低下したりへーズが大きくなることがある。このため、このような平均断面径が100nmを越えた棒状導電性微粒子を含む透明導電性被膜形成用塗布液を用いて形成された被膜付基材を、たとえば陰極線管の前面板として用いたとしても表示画像の明るさが不充分であり、このため一定の透過率を得るために膜厚を薄くしたり、導電性微粒子の量を少なくしようとすると充分な導電性が得られないことがある。
【0065】
また、断面径が1nm未満の棒状導電性微粒子は、鎖状導電性微粒子群の場合と同様に粒界抵抗が急激に大きくなるため、低い抵抗値を有する透明導電性被膜を得ることができないこともある。また、断面径が1nm未満の棒状粒子は3次元に凝集する傾向にあり、低い抵抗値を有する透明導電性被膜を得ることができないこともある。
【0066】
このような棒状導電性微粒子は、、Au,Ag,Pd,Cu,Ni,Ru,Rh,Sn,In,
Sb,Fe,Pt,Ti,Cr,Co,Al,Zn,Ta,Pb,Os,Irから選ばれる一種以上の元素からなる金属および/または金属水酸化物または金属酸化物、あるいは異種金属ドープ金属酸化物、これらの混合物からなることが好ましい。
【0067】
また、このような棒状導電性微粒子は、図5に示されるように、先端部同士が接合し、リング状となっていてもよい。
【0068】
このような棒状導電性微粒子は、例えば以下のような方法によって得ることができる。
【0069】
導電性微粒子が金属酸化物の場合、以下のようにして棒状金属酸化物導電性微粒子を調製することができる。
【0070】
まず、金属塩または金属アルコキシドが含まれるアルコール溶液にアルカリを添加し、金属酸化物沈殿を調製する。次いで、沈殿を濾別・洗浄した後、再度純水に分散させ、圧力容器中で加熱処理(オートクレーブ処理)をしたのち、空気中、200〜800℃の温度で焼成して導電性金属酸化物微粒子を調製する。
【0071】
ついで、この粉末を酸性またはアルカリ性の水および/またはアルコール溶媒に分散させて濃度10〜50重量%の分散液とし、必要に応じて有機安定剤の存在下でこの分散液を前記と同様にメカニカル分散処理する。
【0072】
この場合、前記と同様にイオン交換樹脂処理して、イオン性不純物を除去してもよい。
【0073】
こうして得られた棒状導電性微粒子は、通常、遠心分離などによって生成後の分散液から取り出され、必要に応じて酸などで洗浄されたのち、後述の極性溶媒に分散させて使用される。また、得られた棒状導電性微粒子を含む分散液は、そのまま塗布液として使用することもできる。
【0074】
このようにして得られた棒状導電性微粒子の分散液は、前記鎖状導電性微粒子群と同様にメカニカル分散処理を行ってもよい。
【0075】
透明導電性被膜形成用塗布液の調製
本発明に係る第2の透明導電性被膜形成用塗布液では、このような棒状導電性微粒子が、極性溶媒中に分散している。用いられる極性溶媒としては、前記第1の透明導電性被膜形成用塗布液で例示したものと、同様のものが挙げられる。
【0076】
また、本発明に係る透明導電性被膜形成用塗布液には、さらに前記同様にマトリックス形成成分が含まれていてもよい。
【0077】
本発明に係る透明導電性被膜形成用塗布液中には、前記棒状導電性微粒子が0.05〜5重量%、好ましくは0.1〜2重量%の濃度で含まれていることが望ましい。
【0078】
また、マトリックス形成成分は、前記棒状導電性微粒子1重量部当たり、0.01〜0.9重量部、好ましくは0.1〜0.5重量部の量で含まれていればよい。
【0079】
また、本発明に係る透明導電性被膜形成用塗布液には、棒状導電性微粒子の分散性を向上させるため、前記第1の透明導電性被膜形成用塗布液と同様に、有機系安定剤が含まれていてもよい。有機系安定剤は、導電性微粒子1重量部に対し、0.005〜0.5重量部、好ましくは0.01〜0.5重量部含まれていればよい。有機系安定剤の量が、0.00
5重量部未満の場合は充分な分散性が得られず、0.5重量部を超えて高い場合は導電性
が阻害されることがある。
【0080】
さらにまた本発明に係る透明導電性被膜形成用塗布液には、塗布液の可視光の広い波長
領域において可視光の透過率が一定になるように、染料、着色顔料あるいは着色粒子を含んでいてもよい。透明導電性被膜形成用塗布液中に、染料、着色顔料または着色粒子を含む場合、透明導電性被膜形成用塗布液中の固形分濃度(導電性微粒子と染料、顔料などの添加剤の総量)は、塗布液の流動性、塗布液中の導電性微粒子などの粒状成分の分散性などの点から、15重量%以下、好ましくは0.15〜5重量%の範囲にあることが望まし
い。
【0081】
さらに本発明に係る透明導電性被膜形成用塗布液は、液中に存在するアルカリ金属イオン、アンモニウムイオンおよび多価金属イオンならびに鉱酸などの無機陰イオン、酢酸、蟻酸などの有機陰イオンなどのイオン濃度の合計量が、1000ppm以下であることが望ましい。特に鉱酸などの無機陰イオンは、棒状導電性微粒子の安定性、分散性を阻害することがあり、塗布液中の含有量はより少ない方が望ましい。
【0082】
[第3の透明導電性被膜形成用塗布液]
まず、本発明に係る第3の透明導電性被膜形成用塗布液について説明する。
【0083】
本発明に係る透明導電性被膜形成用塗布液は、棒状導電性微粒子群と極性溶媒とを含む。
【0084】
棒状導電性微粒子群
本発明でいう「棒状導電性微粒子群」とは、図6に示すように、棒状微粒子表面に、1〜100nm、好ましくは5〜80nmの範囲の粒子径を有する導電性微粒子が接合した棒状導電性微粒子群である。
【0085】
このような粒子のアスペクト比(粒子長さL/粒子断面径D)は2〜200、好ましくは2〜50の範囲にある。
【0086】
また前記棒状導電性微粒子群の平均長さは、2〜200nm、好ましくは5〜100nmの範囲にあることが好ましい。
【0087】
平均長さが2nm未満では、接触抵抗が増加し低抵抗の透明導電性被膜が得られないことがある。また、長さが200nmを超えると、透明導電性被膜の形成性が低下し、ヘーズ等の光学特性に問題が生じ、さらに外観が悪化する等の問題がある。
【0088】
このような棒状導電性微粒子群を構成する導電性微粒子は、Au,Ag,Pd,Cu,Ni
,Ru,Rh,Sn,In,Sb,Fe,Pt,Ti,Cr,Co,Al,Zn,Ta,Pb,Os,Irから選ばれる一種以上の元素からなる金属および/または金属水酸化物または金属酸化物、あるいは異種金属ドープ金属酸化物、これらの混合物からなることが好ましい。
【0089】
導電性微粒子が、2種以上の元素からなる金属微粒子である場合、好ましい金属の組合せとしては、Au-Cu,Ag-Pt,Ag-Pd,Au-Pd,Au-Rh,Pt-Pd,Pt-Rh,Fe-Ni,Ni-Pd,Fe-Co,Cu-Co,Ru-Ag,Au-Cu-Ag,Ag-Cu-Pt,Ag-Cu-Pd,Ag-Au-Pd,Au-Rh-Pd,Ag-Pt-Pd,Ag-Pt-Rh,Fe-Ni-Pd,Fe-Co-Pd,Cu-Co-Pd などが挙げられる。なお、導電性微粒子を構成する2種以上の金属は、固溶状態にある合金であっても、固溶状態にない共晶体であってもよく、合金と共晶体が共存していてもよい。導電性微粒子が2種以上の金属から構成されると、金属の酸化やイオン化あるいはイオンマイグレーションが抑制されるため、被膜形成後の導電性微粒子の粒子成長等が抑制される。また、2種以上の金属から構成される導電性微粒子は、耐腐食性が高く、導電性、光透過率の低下が小さいので、信頼性に優れた透明導電性被膜を形成することができる。
【0090】
導電性微粒子が金属酸化物、あるいは異種金属ドープ金属酸化物である場合の好ましい例としては、たとえば酸化錫、Sb、FまたはPがドーピングざれた酸化錫、酸化インジ
ウム、SnまたはFがドーピングされた酸化インジウム、酸化アンチモン、低次酸化チタ
ンなどが挙げられる。
【0091】
棒状微粒子としては、Au,Ag,Pd,Cu,Ni,Ru,Rh,Sn,In,Sb,Fe,Pt,Ti,Cr,Co,Al,Zn,Ta,Pb,Os,Irから選ばれる一種以上の元素からなる
金属、水酸化物、酸化物、あるいは金属ドープ酸化物からなることが好ましい。なお、棒状微粒子は、前記した棒状導電性微粒子であってもよい。また、棒状微粒子は必ずしも導電性である必要はなく、たとえば、アルミナ、シリカ、マグネシアなどの非導電性微粒子であってもよい。
【0092】
具体的に棒状導電性微粒子群は、以下のような方法によって調製される。
(1)たとえば金属から構成される棒状導電性微粒子群の場合、以下のような方法によって
得ることができる。
【0093】
まず、アルコール・水混合溶媒に予めアルミナなどの繊維状金属酸化物粒子を分散させておき、この分散液に上記金属の金属塩を添加したのち、還元すると、繊維状酸化物粒子表面に、導電性微粒子が接合した棒状導電性微粒子群が得られる。なお、得られた導電性微粒子群スラリーには、メカニカル分散処理が行なわれていてもよい。
【0094】
(2)また、棒状導電性微粒子群は、上記以外に、前記鎖状導電性微粒子群分散液と、棒状微粒子の分散液とを混合することによっても得ることができる。棒状微粒子は前記した棒状導電性微粒子であってもよい。
【0095】
透明導電性被膜形成用塗布液の調製
本発明に係る第3の透明導電性被膜形成用塗布液では、このような棒状導電性微粒子群が、極性溶媒中に分散している。用いられる極性溶媒としては、前記第1の透明導電性被膜形成用塗布液で例示したものと、同様のものが挙げられる。
【0096】
また、本発明に係る透明導電性被膜形成用塗布液には、さらに前記同様にマトリックス形成成分が含まれていてもよい。
【0097】
本発明に係る透明導電性被膜形成用塗布液中には、前記棒状導電性微粒子群が0.05〜5重量%、好ましくは0.1〜2重量%の濃度で含まれていることが望ましい。
【0098】
また、マトリックス形成成分は、前記棒状導電性微粒子群1重量部当たり、0.01〜
0.9重量部、好ましくは0.1〜0.5重量部の量で含まれていればよい。
【0099】
また、本発明に係る透明導電性被膜形成用塗布液には、棒状導電性微粒子群の分散性を向上させるため、前記第1および第2の透明導電性被膜形成用塗布液と同様に、有機系安定剤が含まれていてもよい。有機系安定剤は、導電性微粒子1重量部に対し、0.005
〜0.5重量部、好ましくは0.01〜0.5重量部含まれていればよい。有機系安定剤の
量が、0.005重量部未満の場合は充分な分散性が得られず、0.5重量部を超えて高い場合は導電性が阻害されることがある。
【0100】
さらにまた本発明に係る透明導電性被膜形成用塗布液には、塗布液の可視光の広い波長領域において可視光の透過率が一定になるように、染料、着色顔料あるいは着色粒子を含んでいてもよい。透明導電性被膜形成用塗布液中に、染料、着色顔料または着色粒子を含む場合、透明導電性被膜形成用塗布液中の固形分濃度(導電性微粒子と染料、顔料などの
添加剤の総量)は、塗布液の流動性、塗布液中の導電性微粒子などの粒状成分の分散性などの点から、15重量%以下、好ましくは0.15〜5重量%の範囲にあることが望まし
い。
【0101】
さらに本発明に係る透明導電性被膜形成用塗布液は、液中に存在するアルカリ金属イオン、アンモニウムイオンおよび多価金属イオンならびに鉱酸などの無機陰イオン、酢酸、蟻酸などの有機陰イオンなどのイオン濃度の合計量が、1000ppm以下であることが望ましい。特に鉱酸などの無機陰イオンは、棒状導電性微粒子群の安定性、分散性を阻害することがあり、塗布液中の含有量はより少ない方が望ましい。
【0102】
[透明導電性被膜付基材]
次に、本発明に係る透明導電性被膜付基材について具体的に説明する。
【0103】
本発明に係る透明導電性被膜付基材は、
基材と、基材上に設けられた透明導電性被膜と、該透明導電性被膜上に設けられた透明被膜とからなる。
【0104】
なお、本発明では、基材として公知のものを使用することが可能であり、具体的には、ガラス、プラスチック、セラミックなどからなるフィルム、シートあるいはその他の成形体などが挙げられる。
透明導電性被膜
透明導電性被膜は、本発明に係る第1〜第3の透明導電性被膜形成用塗布液を、基材上に塗布・乾燥して形成される。
【0105】
透明導電性被膜を形成する方法としては、たとえば、透明導電性被膜形成用塗布液をディッピング法、スピナー法、スプレー法、ロールコーター法、フレキソ印刷法などの方法で、基材上に塗布したのち、常温〜約90℃の範囲の温度で乾燥する。
【0106】
透明導電性被膜形成用塗布液中に上記のようなマトリックス形成成分が含まれている場合には、マトリックス形成成分の硬化処理を行ってもよい。
【0107】
硬化処理としては、以下のような方法が挙げられる。
【0108】
(ア)加熱硬化
乾燥後の塗膜を加熱して、マトリックス成分を硬化させる。このときの加熱処理温度は、100℃以上、好ましくは150〜300℃であることが望ましい。100℃未満ではマトリックス形成成分が充分硬化しないことがある。また加熱処理温度の上限は基材の種類によって異なるが、基材の転移点以下であればよい。
【0109】
(イ)電磁波硬化
塗布工程または乾燥工程の後に、あるいは乾燥工程中に、塗膜に可視光線よりも波長の短い電磁波を照射して、マトリックス成分を硬化させる。このようなマトリックス形成成分の硬化を促進するために照射する電磁波としては、マトリックス形成成分の種類に応じて紫外線、電子線、X線、γ線などが用いられる。例えば紫外線硬化性マトリックス形成成分の硬化を促進するためには、例えば、発光強度が約250nmおよび360nmにおいて極大となり、光強度が10mW/m以上である高圧水銀ランプを紫外線源として用い、1
00mJ/cm以上のエネルギ ー量の紫外線が照射される。
【0110】
(ウ)ガス硬化
塗布工程または乾燥工程の後に、あるいは乾燥工程中に、塗膜をマトリックス形成成分
の硬化反応を促進するガス雰囲気中に晒すことによって、マトリックス形成成分を硬化させる。マトリックス形成成分のなかには、アンモニアなどの活性ガスで硬化が促進されるマトリックス形成成分があり、このようなマトリックス形成成分を含む透明導電性被膜を、ガス濃度が100〜100000ppm、好ましくは1000〜10000ppmであるような硬化促進性ガス雰囲気下で 1〜60分処理することによってマトリックス形成成分の
硬化を大幅に促進することができる。
【0111】
上記のような方法によって形成された透明導電性被膜の膜厚は、約50〜200nm、好ましくは10〜150nmの範囲が好ましく、この範囲の膜厚であれば電磁遮蔽効果に優れた透明導電性被膜付基材を得ることができる。
透明被膜
本発明に係る透明導電性被膜付基材では、このような透明導電性被膜の上に、前記透明導電性被膜よりも屈折率の低い透明被膜が形成されている。
【0112】
形成される透明被膜の膜厚は、50〜300nm、好ましくは80〜200nmの範囲にあることが好ましい。
【0113】
このような透明被膜は、たとえば、シリカ、チタニア、ジルコニアなどの無機酸化物、およびこれらの複合酸化物などから形成される。本発明では、透明被膜として、特に加水分解性有機ケイ素化合物の加水分解重縮合物、またはアルカリ金属ケイ酸塩水溶液を脱アルカリして得られるケイ酸重縮合物からなるシリカ系被膜が好ましい。このような透明被膜が形成された透明導電性被膜付基材は、反射防止性能に優れている。
【0114】
また、上記透明被膜中には、必要に応じて、フッ化マグネシウムなどの低屈折率材料で構成された微粒子などの添加剤が含まれていてもよい。
【0115】
本発明では、上記のようにして形成された透明導電性被膜の上に、該微粒子層よりも屈折率の低い透明被膜が形成されている。
【0116】
透明被膜の膜厚は、50〜300nm、好ましくは80〜200nmの範囲であることが好ましく、このような範囲の膜厚であると優れた反射防止性を発揮する。
【0117】
透明被膜の形成方法としては、特に制限はなく、この透明被膜の材質に応じて、真空蒸発法、スパッタリング法、イオンプレーティング法などの乾式薄膜形成方法、あるいは上述したようなディッピング法、スピナー法、スプレー法、ロールコーター法、フレキソ印刷法などの湿式薄膜形成方法を採用することができる。
【0118】
上記透明被膜を湿式薄膜形成方法で形成する場合、従来公知の透明被膜形成用塗布液、たとえばシリカ、チタニア、ジルコニアなどの無機酸化物前駆体、またはこれらの複合酸化物前駆体を透明被膜形成成分として含む透明被膜形成用塗布液を用いることが可能である。
【0119】
本発明では、透明被膜形成用塗布液として、加水分解性有機ケイ素化合物の加水分解重縮合物、またはアルカリ金属ケイ酸塩水溶液を脱アルカリして得られるケイ酸を含むシリカ系透明被膜形成用塗布液が好ましく、特に下記一般式[1]で表されるアルコキシシランの加水分解重縮合物を含有しているシリカ系透明被膜形成用塗布液が好ましい。このような塗布液から形成されるシリカ系被膜は、前記透明導電性被膜よりも屈折率が小さく、得られる透明被膜付基材は反射防止性に優れている。
【0120】
aSi(OR')4-a [1]
(式中、Rはビニル基、アリール基、アクリル基、炭素数1〜8のアルキル基、水素原子またはハロゲン原子であり、R'はビニル基、アリール基、アクリル基、炭素数1〜8の
アルキル基、−C24OCn2n+1 (n=1〜4)または水素原子であり、aは1〜3の整数である。)
このようなアルコキシランとしては、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトライソプロポキシシラン、テトラブトキシシラン、テトラオクチルシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、メチルトリイソプロポキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシランなどが挙げられる。
【0121】
上記のアルコキシシランの1種または2種以上を、たとえば水−アルコール混合溶媒中で酸触媒の存在下で加水分解すると、アルコキシシランの加水分解重縮合物を含む透明被膜形成用塗布液が得られる。このような塗布液中に含まれる被膜形成成分の濃度は、酸化物換算で0.5〜20重量%であることが好ましい。本発明で使用される透明被膜形成用
塗布液は、前記透明導電性被膜形成用塗布液の場合と同様に、脱イオン処理を行い、透明導電性塗布液のイオン濃度を前記透明導電性被膜形成用塗布液中の濃度と同じレベルまで低減させてもよい。
【0122】
さらにまた、本発明で使用される透明被膜形成用塗布液には、フッ化マグネシウムなどの低屈折率材料で構成された微粒子、透明被膜の透明度および反射防止性能を阻害しない程度に少量の導電性微粒子、染料、着色顔料、微粒子カーボンなどの添加剤が含まれていてもよい。
【0123】
本発明では、このような透明被膜形成用塗布液を塗布して形成した被膜を、150℃以上の温度で乾燥したり、乾燥後に150℃以上で加熱したり、未硬化の被膜に可視光線よりも波長の短い紫外線、電子線、X線、γ線などの電磁波を照射したり、アンモニアなどの活性ガス雰囲気中に晒すなどの処理を施してもよい。このように処理を行うと、被膜形成成分の硬化が促進され、得られる透明被膜の硬度を高くすることができる。また、上記硬化処理を行う場合、透明被膜形成用塗布液を塗布する際に、透明導電性被膜を約40〜90℃に保持しながら透明被膜形成用塗布液を塗布することが好ましい。透明導電性被膜を約40〜90℃に保持しながら、該透明導電性被膜上に、透明被膜形成用塗布液を塗布することによって、透明被膜の表面にリング状の凹凸が形成され、ギラツキの少ないアンチグレアの透明被膜付基材を得ることができる。
【0124】
[表示装置]
本発明に係る透明導電性被膜付基材は、電磁遮蔽に必要な102〜104Ω/□の範囲の表面抵抗を有し、かつ可視光領域および近赤外領域で充分な反射防止性能と防眩性を有する透明導電性被膜付基材は、表示装置の前面板として好適に用いられる。
【0125】
本発明に係る表示装置は、ブラウン管(CRT)、蛍光表示管(FIP)、プラズマディスプレイ(PDP)、液晶用ディスプレイ(LCD)などのような電気的に画像を表示する装置であり、上記のような透明導電性被膜付基材で構成された前面板を備えている。
【0126】
従来の前面板を備えた表示装置を作動させると、前面板に画像が表示されると同時に電磁波が前面板から放出され、この電磁波が観察者の人体に影響を及ぼすが、本発明に係る表示装置では、前面板が102〜104Ω/□の表面抵抗を有する透明導電性被膜付基材で構成されているので、このような電磁波、およびこの電磁波の放出に伴って生じる電磁場を効果的に遮蔽することができる。
【0127】
また、表示装置の前面板で反射光が生じると、この反射光によって表示画像が見にくく
なるが、本発明に係る表示装置では、前面板が可視光領域および近赤外領域で充分な反射防止性能および防眩性を有する透明導電性被膜付基材で構成されているので、このような反射光を効果的に防止することができる。
【0128】
さらに、ブラウン管の前面板が、本発明に係る透明導電性被膜付基材で構成され、この透明導電性被膜のうち、透明導電性被膜、その上に形成された透明被膜の少なくとも一方に少量の染料または顔料が含まれている場合には、これらの染料または顔料がそれぞれ固有な波長の光を吸収し、これによりブラウン管から放映される表示画像のコントラストを向上させることができる。
【0129】
[実施例]
以下、本発明を実施例により説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
[製造実施例]
a)導電性微粒子分散液の調製
本実施例および比較例で用いた導電性微粒子分散液組成を表1に示す。
鎖状導電性微粒子群(P-1)
まず、純水100gに、あらかじめ金属換算で濃度が10重量%となり、複合金属の金属種が表1の重量比となるように硝酸銀および硝酸パラジウム水溶液を加えた水溶液を調製した。この水溶液に、複合金属1重量部あたり、0.01重量部となるような量でクエン酸3ナトリウム(有機安定化剤および還元剤)を含む水溶液と、硝酸銀および硝酸パラジウムの合計モル数と等モル数の硫酸第一鉄(還元剤)水溶液とを混合した混合溶液を加え、窒素雰囲気下で1時間攪拌して複合金属微粒子の分散液を得た。
【0130】
得られた分散液は遠心分離機により分離した後、濃度1重量%のHClで酸洗浄して、ポリアクリル酸を複合金属1重量部当たり0.0128重量部となるように加え純水に分
散させて表1に示す濃度の分散液を調製した。ついで、得られた分散液をナノマイザーシステム(ナノマイザー(株):LA-33-S)にて処理して、鎖状導電性微粒子群(P-1)の分散液を得た。
鎖状導電性微粒子群(P-2)
純水100gに、あらかじめ塩化白金酸を加え、これに金属換算で濃度が10重量%となり、複合金属の金属種が表1の重量比となるように酢酸パラジウムのアセトン溶液を加えたのち、さらに塩化白金酸および酢酸パラジウムの合計モル数と等モル数のクエン酸3ナトリウムを添加し、窒素雰囲気下で1時間攪拌して複合金属微粒子の分散液を得た。
【0131】
得られた分散液は遠心分離機により分離した後、濃度1重量%のHClで酸洗浄して、ポリアクリル酸を複合金属1重量部当たり0.0128重量部となるように加え純水に分
散させて表1に示す濃度の分散液を調製した。ついで、得られた分散液をナノマイザーシステム処理して、鎖状導電性微粒子群(P-2)の分散液を得た。
鎖状導電性微粒子群(P-3)
前記調製した導電性微粒子(P-1)の分散液を、オートクレーブ中、窒素雰囲気下、15
0℃、 10.0Kg/cm2で1時間攪拌した後、前記ナノマイザーシステムを用いて処
理を行い、鎖状導電性微粒子群(P-3)の分散液を得た。
鎖状導電性微粒子群(P-4)
前記調製した導電性微粒子(P-1)の分散液に、複合金属の金属種が表1の重量比となる
ように硝酸銀水溶液を加え、硝酸銀と等モル数の硫酸第一鉄水溶液を添加し、窒素雰囲気下で1時間攪拌して複合金属微粒子の分散液を得た。得られた分散液は遠心分離機により分離した後、水洗浄して純水に分散させて表1に示す濃度の分散液を調製した。ついで、得られた分散液をナノマイザーシステムにて処理を行い、鎖状導電性微粒子群(P-4)の分
散液を得た。
棒状導電性微粒子群(P-5)
純水100gに、鎖状無機酸化物として、平均長さが50nm、断面の平均径が10nmの繊維状アルミナ微粒子を表1の重量比となるようにあらかじめ加え、これに複合金属の金属種が表1の重量比となるように硝酸銀および硝酸パラジウム水溶液を加えた水溶液を調製した。この水溶液に、複合金属1重量部あたり、0.01重量部となるような量でクエン酸3ナトリウム(有機安定化剤および還元剤)を含む水溶液と、金属換算で濃度が10重量%となり、硝酸銀および硝酸パラジウムの合計モル数と等モル数の硫酸第一鉄(還元剤)水溶液とを混合した混合溶液を加え、窒素雰囲気下で1時間攪拌して複合金属微粒子の分散液を得た。
【0132】
得られた分散液は遠心分離機により分離した後、濃度1重量%のHClで酸洗浄して、ポリアクリル酸を複合金属1重量部当たり0.0128重量部となるように加え純水に分
散させて表1に示す濃度の分散液を調製した。ついで、得られた分散液をナノマイザーシステム(ナノマイザー(株):LA-33-S)にて処理して、棒状導電性微粒子群(P-5)の分散液を得た。
棒状導電性微粒子群(P-6)
前記導電性微粒子(P-5)で使用した繊維状アルミナ微粒子の分散液に、複合金属微粒子(P-1)の分散液を表1の重量比となるように混合し、ナノマイザーシステムを使用して行い、棒状複合金属微粒子群(P-6)の分散液を得た。
棒状導電性導電性微粒子(P-7)
純水100gに、あらかじめ硝酸インジウムおよびフッ素化スズを金属換算で10重量%となり、複合金属の金属種が表1の重量比になるように加え、これに10重量%の水酸化カリウムを加えて、複合金属粒子の沈殿を作製した。この複合金属粒子の沈殿を水洗したのち、金属換算で10重量%となるように純水を加え、これをオートクレーブにて200℃で2時間処理をしたのち、100℃で乾燥した。次いで、乾燥した複合金属粒子を、窒素気流下、550℃で2時間焼成したのち、純水およびアセチルアセトン(有機分散剤)を加え、サンドミルおよびナノマイザーシステムにて処理して、棒状複合金属微粒子(P-7)の分散液を得た。
単分散導電性微粒子(P-8)
純水100gに、あらかじめ金属換算で濃度が10重量%となり、複合金属の金属種が表1の重量比となるように硝酸銀および硝酸パラジウム水溶液を加えた水溶液を調製した。この水溶液に、複合金属1重量部あたり、0.01重量部となるような量でクエン酸3ナトリウム(有機安定化剤および還元剤)を含む水溶液と、硝酸銀および硝酸パラジウムの合計モル数と等モル数の硫酸第一鉄(還元剤)水溶液とを混合した混合溶液を加え、窒素雰囲気下で1時間攪拌して複合金属微粒子の分散液を得た。
【0133】
得られた分散液は遠心分離機により分離した後、水洗浄して、純水に分散させて表1に示す濃度の単分散導電性微粒子(P-8)を調製した。
導電性微粒子(P-9)
純水100gに、あらかじめ金属換算で濃度が10重量%となり、複合金属の金属種が表1の重量比となるように硝酸銀および硝酸パラジウム水溶液を加えた水溶液を調製した。この水溶液に、複合金属1重量部あたり、0.01重量部となるような量でクエン酸3ナトリウム(有機安定化剤および還元剤)を含む水溶液と、硝酸銀および硝酸パラジウムの合計モル数に対し3倍モル数の硫酸第一鉄(還元剤)水溶液とを混合した混合溶液を加え、窒素雰囲気下で1時間攪拌して複合金属微粒子の分散液を得た。得られた分散液は遠心分離機により分離した後、濃度1重量%のHClで酸洗浄して、ポリアクリル酸を複合金属1重量部当たり0.0128重量部となるように加え純水に分散させて表1に示す濃
度の分散液を調製した。次いで、得られた分散液をナノマイザーにて粉砕して、複合金属微粒子(P-9)の分散液を得た。得られた複合金属微粒子(P-9)の形状は、鎖状導電性微粒子群であった。
導電性微粒子(P-10)
純水100gに、あらかじめ金属換算で濃度が10重量%となり、複合金属の金属種が表1の重量比となるように硝酸銀および硝酸パラジウム水溶液を加えた水溶液を調製した。この水溶液に、複合金属1重量部あたり、0.01重量部となるような量でクエン酸3ナトリウム(有機安定化剤および還元剤)を含む水溶液と、硝酸銀および硝酸パラジウムの合計モル数に対し、3倍モル数の硫酸第一鉄(還元剤)水溶液とを混合した混合溶液を加え、窒素雰囲気下で1時間攪拌して複合金属微粒子の分散液を得た。得られた分散液は、遠心分離機により分離した後、濃度1重量%のHClで酸洗浄して、ポリアクリル酸を複合金属1重量部当たり0.03重量部となるように加え純水に分散させて表1に示す濃
度の分散液を調製した。次いで、得られた分散液をナノマイザーにて粉砕して、複合金属微粒子(P-10)の分散液を得た。得られた複合金属微粒子(P-10)の形状は、鎖状導電性微粒子群であった。
導電性微粒子(P-11)
純水100gに、あらかじめ金属換算で濃度が10重量%となり、複合金属の金属種が表1の重量比となるように硝酸銀および硝酸パラジウム水溶液を加えた水溶液を調製した。この水溶液に、複合金属1重量部あたり、0.01重量部となるような量でクエン酸3ナトリウム(有機安定化剤および還元剤)を含む水溶液と、硝酸銀および硝酸パラジウムの合計モル数に対し3倍モル数の硫酸第一鉄(還元剤)水溶液とを混合した混合溶液を加え、窒素雰囲気下で1時間攪拌して複合金属微粒子の分散液を得た。得られた分散液は、遠心分離機により分離した後、濃度1重量%のHClで酸洗浄して、ポリアクリル酸を複合金属1重量部当たり0.20重量部となるように加え純水に分散させて表1に示す濃度
の分散液を調製した。次いで、得られた分散液をナノマイザーにて粉砕して、複合金属微粒子(P-11)の分散液を得た。得られた複合金属微粒子(P-11)は凝集粒子であった。
【0134】
導電性酸化物微粒子(P-12)
純水100gに、あらかじめ硝酸インジウムおよびフッ素化スズを金属換算で10重量%となり、複合金属の金属種が表1の重量比になるように加え、これに10重量%の水酸化カリウムを加えて、複合金属粒子の沈殿を作製した。この複合金属粒子の沈殿を水洗したのち、金属換算で10重量%となるように純水を加え、これに純水およびアセチルアセトン(有機分散剤)を加え、サンドミルおよびナノマイザーシステムにて処理して、単分散複合金属微粒子(P-12)の分散液を得た。
【0135】
導電性カーボン微粒子(P-13)
純水100gに、着色剤として導電性カーボン微粒子(三菱化学(株)製:MA-100)を表
1の濃度になるように加えて導電性微粒子(P-13)分散液を調製した。
【0136】
なお、本発明の導電性微粒子の一次粒子、鎖状および棒状の観察、粒子径、粒子長さなどの測定は、走査型電子顕微鏡(日本電子(株):JMS5300)を用いて100個の粒子に
ついて観察した。
【0137】
また、アスペクト比は、粒子長さをLとし、一次粒子径を粒子の断面径Dとし、L/Dで表した。なお、鎖状導電性微粒子群のアスペクト比は、粒子長さをLとし、一次粒子径を粒子の断面径Dとした。
【0138】
【表1】

【0139】
b)マトリックス形成成分液(M)の調製
正珪酸エチル(SiO2:28重量%)50g、エタノール194.6g、濃硝 酸1.4
gおよび純水34gの混合溶液を室温で5時間攪拌してSiO2濃度5重量%のマトリックス形成成分を含む液(M)を調製した。
c)透明導電性被膜形成用塗布液の調製
表1に示す(P-1)〜(P-13)の分散液と、上記マトリックス形成成分を含む(A)液、水、t-ブタノール、ブチルセルソルブ、クエン酸およびN-メチル-2-ピロリド ンを用いて、表2に示す透明導電性被膜形成用塗布液(C-1)〜(C-14)を調製した。
【0140】
【表2】

【0141】
d)透明被膜形成用塗布液(B-1)の調製
上記マトリックス形成成分を含む(A)液に、エタノール/ブタノール/ジアセ トンアルコール/イソプロパノール(2:1:1:5重量混合比)の混合溶媒を加え、SiO2濃度1重量%の透明被膜形成用塗布液(B-1)を調製した。
【0142】
なお、本発明で使用される導電性被膜形成用塗布液および透明被膜形成用塗布液は両性
イオン交換樹脂(三菱化学(株)製 ダイヤイオン SMNUPB)で脱イオン処理することにより、各塗布液中のイオン濃度の調製を行った。
【0143】
また、塗布液中のアルカリ金属イオン濃度およびアルカリ土類金属イオン濃度は原子
吸光法で測定し、その他の金属イオン濃度は発光分光分析法で測定し、アンモニウムイオンおよびアニオンのイオン濃度はイオンクロマトグラフィー法で測定した。
【0144】
[実施例1〜9]
透明導電性被膜付パネルガラスの製造
ブラウン管用パネルガラス(14")の表面を40℃で保持しながら、スピナー 法で100rpm、90秒の条件で上記透明導電性被膜形成用塗布液(C-1)〜(C-9)をそれぞれ塗布し
乾燥した。
【0145】
次いで、このようにして形成された透明導電性被膜上に、同じように、スピナー法で100rpm、90秒の条件で透明被膜形成用塗布液(B-1)を塗布・乾燥し、表3に示す条件で焼成して透明導電性被膜付基材を得た。
【0146】
これらの透明導電性被膜付基材の表面抵抗を表面抵抗計(三菱油化(株)製:LORESTA)で測定し、ヘーズをへーズコンピューター(日本電色(株)製:3000A)で測定した。反射率は反射率計(大塚電子(株)製:MCPD-2000)を用いて測定し、波長400〜700nmの範囲で反射率が最も低い波長での反射率とした。
【0147】
結果を表3に示す。
【0148】
[比較例1〜5]
透明導電性被膜付パネルガラスの製造
ブラウン管用パネルガラス(14")の表面を40℃で保持しながら、スピナー 法で100rpm、90秒の条件で上記透明導電性被膜形成用塗布液(C-10)〜(C-14)をそれぞれ塗布
し乾燥した。
【0149】
次いで、このようにして形成された透明導電性被膜上に、同じように、スピナー法で100rpm、90秒の条件で透明被膜形成用塗布液(B-1)を塗布・乾燥し、表3に示す条件で焼成して透明導電性被膜付基材を得た。
【0150】
これらの透明導電性被膜付基材の表面抵抗を表面抵抗計(三菱油化(株)製:LORESTA)で測定し、ヘーズをへーズコンピューター(日本電色(株)製:3000A)で測定した。反射率は反射率計(大塚電子(株)製:MCPD-2000)を用いて測定し、波長400〜700nmの範囲で反射率が最も低い波長での反射率とした。
【0151】
結果を表3に示す
【0152】
【表3】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性微粒子と極性溶媒とを含む透明導電性被膜形成用塗布液において、導電性微粒子が、アスペクト比が2〜200の範囲にあり、平均長さが5〜100nmの範囲にある棒状導電性微粒子であることを特徴とする透明導電性被膜形成用塗布液。
【請求項2】
前記棒状導電性微粒子が、Au,Ag,Pd,Cu,Ni,Ru,Rh,Sn,In,Sb,Fe
,Pt,Ti,Cr,Co,Al,Zn,Ta,Pb,Os,Irから選ばれる一種以上の元素からなる金属および/または金属水酸化物または金属酸化物、あるいは異種金属ドープ金属酸化物からなることを特徴とする請求項1に記載の透明導電性被膜形成用塗布液。
【請求項3】
導電性微粒子と極性溶媒とを含む透明導電性被膜形成用塗布液において、導電性微粒子が、棒状微粒子表面に1〜100nmの範囲の粒子径を有する導電性微粒子が接合した棒状導電性微粒子群であり、かつ、該棒状導電性微粒子群のアスペクト比が2〜200の範囲にあり、平均長さが5〜100nmの範囲にあることを特徴とする透明導電性被膜形成用塗布液。
【請求項4】
前記棒状微粒子表面に接合した導電性微粒子が、Au,Ag,Pd,Cu,Ni,Ru,Rh
,Sn,In,Sb,Fe,Pt,Ti,Cr,Co,Al,Zn,Ta,Pb,Os,Irから選ばれる一種以上の元素からなる金属、水酸化物、酸化物、あるいは金属ドープ酸化物からなることを特徴とする請求項3に記載の透明導電性被膜形成用塗布液。
【請求項5】
前記棒状微粒子が、Au,Ag,Pd,Cu,Ni,Ru,Rh,Sn,In,Sb,Fe,Pt,Ti,Cr,Co,Al,Zn,Ta,Pb,Os,Irから選ばれる一種以上の元素からなる金
属、水酸化物、酸化物、あるいは金属ドープ酸化物からなることを特徴とする請求項3または4に記載の透明導電性被膜形成用塗布液。
【請求項6】
前記棒状導電性微粒子が、金属塩または金属アルコキシドが含まれるアルコール溶液にアルカリを添加し、金属酸化物沈殿を調製したのち、沈殿を濾別・洗浄した後、再度純水に分散させ、圧力容器中で加熱処理(オートクレーブ処理)をしたのち、空気中、200〜800℃の温度で焼成し、得られた粉末をアルカリ性の水および/またはアルコール溶媒に分散させた分散液とし、メカニカル分散処理して得られたものであることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の透明導電性被膜形成用塗布液。
【請求項7】
さらに有機系安定剤を含むことを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の透明導電性被膜形成用塗布液。
【請求項8】
さらにマトリックス形成成分を含むことを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の透明導電性被膜形成用塗布液。
【請求項9】
前記マトリックス形成成分がSiO2前駆体、TiO2前駆体、ZrO2前駆体または有
機高分子から選ばれる少なくとも一種からなることを特徴とする請求項8に記載の透明導電性被膜形成用塗布液。
【請求項10】
さらに、染料、着色顔料または着色粒子を含むことを特徴とする請求項1〜9のいずれかに記載の透明導電性被膜形成用塗布液。
【請求項11】
基材と、請求項1〜10のいずれかに記載の透明導電性被膜形成用塗布液を基材上に塗布してなる透明導電性被膜と、該透明導電性被膜上に設けられ、かつ該透明導電性被膜よりも屈折率が低い透明被膜とからなることを特徴とする透明導電性被膜付基材。
【請求項12】
請求項11に記載の透明導電性被膜付基材から構成される前面板を備え、透明被膜が該前面板の外表面に形成されていることを特徴とする表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−103109(P2010−103109A)
【公開日】平成22年5月6日(2010.5.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−234419(P2009−234419)
【出願日】平成21年10月8日(2009.10.8)
【分割の表示】特願平10−374451の分割
【原出願日】平成10年12月28日(1998.12.28)
【出願人】(000190024)日揮触媒化成株式会社 (458)
【Fターム(参考)】