説明

透明樹脂薄板のスタックモールド

【課題】金型間にそれぞれ設けられるキャビティで良好な透明樹脂薄板を成形することが可能な透明樹脂薄板のスタックモールドを提供する。
【解決手段】固定金型15と可動金型17の間に少なくとも1枚以上の中間金型18を配設した透明樹脂薄板のスタックモールド11において、金型15,17,18間にそれぞれ設けられるキャビティ19,20は端部にホットランナ27,32およびホットランナノズル33を介して溶融樹脂が送られるゲート部37が設けられ、前記ホットランナノズル33または前記ゲート部37はキャビティ19,20への溶融樹脂の注入量が調節可能となっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、射出成形に用いられる透明樹脂薄板のスタックモールドに関するものである。
【背景技術】
【0002】
射出成形(射出圧縮成形およびその一分野の射出プレスを含む)により導光板等の透明樹脂薄板を複数枚同時に成形する際は、特許文献1に示されるように固定金型と可動金型の間の同一面上に複数のキャビティが形成される成形金型で成形を行うことが一般的である。しかし前記成形金型は、キャビティの投影面積が大きくなるので、型締力の大きい型締装置が必要となる。また成形金型を取付けるためには、タイバー間隔が広く固定盤および可動盤も大面積の大型の型締装置が必要となるという点で不利である。これらの点は、携帯電話用等の小型の導光板を成形する場合は大きな問題とはならないが、パーソナルコンピュータの表示装置用などに用いられる比較的大型の導光板を成形する場合には問題となる。よって大型の導光板(対角寸法10インチ以上)は、1個取りの成形金型で成形されているのが現状である。また特許文献1等の導光板の成形金型では、キャビティごとに溶融樹脂注入量を調節する機能を有していないので、各キャビティで成形される導光板の板厚を均等にするためにはキャビティ形成ブロックを調整するなどの作業が必要であった。
【0003】
上記の問題に対して、大型の型締装置を用いずに複数枚の成形品を成形することの可能な成形金型として、特許文献2、特許文献3のスタックモールドが知られている。スタックモールドは、固定金型と可動金型の間に少なくとも1枚以上の中間金型を配設したものである。特許文献2は、ディスク基板の成形に関するものであるが、同時に複数のキャビティに溶融樹脂を射出充填した後、一つのパンチの作動装置により複数のキャビティ内で成形されるディスク基板に中心開口を設ける。このためキャビティごとに溶融樹脂の注入量を制御できず、各キャビティで成形されるディスク基板を均等な厚みに成形することが困難であった。
【0004】
特許文献3には、図2等に記載されるように、固定金型と中間金型とが型開きされた際に、溶融樹脂流路が分断されるものと、図10等に記載されるように中間金型のホットランナが固定金型を貫通しており、直接ノズルが当接されるものの両方のタイプが開示されている。また前記以外に中間金型にノズルタッチ面が設けられ、射出装置のロングノズルが挿入されノズルタッチするタイプも存在する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−307882号公報(図2)
【特許文献2】特開平9−207171号公報(0031、0032、図1)
【特許文献3】特開2000−71288号公報(図2、図10)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明では上記の問題を鑑みて、金型間にそれぞれ設けられるキャビティで良好な透明樹脂薄板を成形することが可能な透明樹脂薄板のスタックモールドを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の透明樹脂薄板のスタックモールドは、固定金型と可動金型の間に少なくとも1枚以上の中間金型を配設した透明樹脂薄板のスタックモールドにおいて、前記金型間にそれぞれ設けられるキャビティは端部にホットランナおよびホットランナノズルを介して溶融樹脂が送られるゲート部が設けられ、前記ホットランナノズルまたは前記ゲート部はキャビティへの溶融樹脂の注入量が調節可能となっていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明の透明樹脂薄板のスタックモールドは、固定金型と可動金型の間に少なくとも1枚以上の中間金型を配設した透明樹脂薄板のスタックモールドにおいて、前記金型間にそれぞれ設けられるキャビティは端部にホットランナおよびホットランナノズルを介して溶融樹脂が送られるゲート部が設けられ、前記ホットランナノズルまたは前記ゲート部はキャビティへの溶融樹脂の注入量が調節可能であるので、従来と比較して小型の型締装置を用いて、各キャビティで良好な透明樹脂薄板を成形することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】図1は、実施例1の透明樹脂薄板のスタックモールドの型開時における側面図である。
【図2】図2は、実施例1の透明樹脂薄板のスタックモールドの型閉時における側面図である。
【図3】図3は、図1における矢印A方向から中間金型を見た図である。
【図4】図4は、図3におけるB−B線における透明樹脂薄板のスタックモールド全体の水平断面図(同一面の断面ではない)である。
【図5】図5は、図1における矢印C方向から可動金型を見た図である。
【図6】図6は、図5におけるD−D線における透明樹脂薄板のスタックモールド全体の水平断面図である。
【図7】図7は、実施例2の透明樹脂薄板のスタックモールドの型開時における断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
透明樹脂薄板のスタックモールドは、固定金型と可動金型の間に少なくとも1枚以上の中間金型が配設されており、それらの金型の間にはそれぞれキャビティが形成される。従って透明樹脂薄板のスタックモールドのキャビティは、型開閉方向に投影された際に重なるように連設され、比較的小型の型締装置を用いることができる。そして金型間にそれぞれ設けられるキャビティは端部にホットランナおよびホットランナノズルを介して溶融樹脂が送られるゲート部が設けられている。これは透明樹脂薄板を成形する際は、中央部にダイレクトゲートや開口を設けることができない理由によるものである。また透明樹脂薄板のスタックモールドでは、ホットランナを介して射出される溶融樹脂が、ホットランナノズルまたはゲート部により溶融樹脂注入量が調節されてそれぞれのキャビティに注入可能となっている。
【実施例1】
【0011】
透明樹脂薄板のスタックモールドである実施例1の導光板のスタックモールド11について、図1ないし図6を参照して説明する。導光板のスタックモールド11は、射出圧縮成形(射出プレス成形を含む)可能な射出成形機12の型締装置13の固定盤14に固定金型15が取付けられ、可動盤16に可動金型17が取付けられる。固定金型15と可動金型17の間には1枚の中間金型18が設けられ、固定金型15と中間金型18の間にはキャビティ19,19が形成され、可動金型17と中間金型18との間にはキャビティ20,20が形成される。なお実施例1では中間金型18は1枚のみであるが2枚以上を備えたものでもよく、その場合は中間金型同士の間にもキャビティが形成される。
【0012】
図1および図4に示されるように中間金型18は、中間金型18の両面18a,18bから突出して設けられたガイドロッド21が、固定金型15のガイドブッシュ22と可動金型17のガイドブッシュ23にそれぞれ挿通されることにより、移動可能に保持されている。また図1、図2に示されるように固定金型15の側面には、中間金型移動機構であるラックピニオン機構24のラック歯25aが型開閉方向に向けて固定され、可動金型17の側面には、前記ラック歯25aと平行に一定間隔を隔ててラック歯25bが固定されている。中間金型18側面の前記ラック歯25a,25bの中間位置には、ラックピニオン機構24のピニオン歯車26が回転可能に取付けられている。そしてスタックモールド11は、前記ラックピニオン機構24により、型開閉時に固定金型15と中間金型18の間隔と、可動金型17と中間金型18との間隔が常時等しくなるようになっている。なお中間金型移動機構としては、リンク機構、バネ、およびシリンダ等を用いてもよい。また中間金型18の固定金型側の面18aから固定金型側に向けてホットランナ27からなる溶融樹脂流路が内部に形成された円筒状のランナブロック28が突出して設けられている。そして前記ランナブロック28は、固定金型15の孔29に挿通されており、固定金型15に対して移動可能となっている。そしてランナブロック28の射出装置30側の面は、ノズルタッチ面31となっている。
【0013】
図3では破線、図4では断面で示されるように、中間金型18内には、ホットランナからなる溶融樹脂流路が内部に形成されたマニホールドブロック32が形成されている。マニホールドブロック32のホットランナは、前記ランナブロック28のホットランナ27に接続されている。そしてマニホールドブロック32は、図3に示されるようにホットランナ27に対して上下方向に向けて接続され、その後に屈曲してそれぞれ両側左右方向に向けて配設されている。そして水平方向に設けられたマニホールドブロック32から固定金型側と可動金型側にそれぞれ向けてホットランナノズル33が設けられている。ホットランナノズル33はそれぞれ個別にヒータの温度制御が可能となっており、また周囲には冷却媒体流路34が設けられている。なお各ホットランナノズル33にバルブゲートを設けてもよい。中間金型18の固定金型側の面18aと可動金型側の面18bは、略同じであるので、図3により可動金型側の面18bについて説明する。中間金型18の面18bには、ホットランナノズル33に接続されるノズル孔35が開口されている。また前記面18bには、ノズル孔35の部分から幅が拡張されたコールドランナ部36が形成され、コールドランナ部36に接続されてフィルムゲート部37を境にしてキャビティ形成面38が形成されている。またキャビティ形成面38の周囲は、可動金型17と当接されるパーティング面39となっている。従って中間金型18の可動金型側の面18bには左右に2面のキャビティ形成面38,38が形成され、一方のキャビティ形成面38は上部の端部にフィルムゲート部37が形成され、他方のキャビティ形成面38は下部の端部にフィルムゲート部37が形成されている。また中間金型18のキャビティ形成面38の内部にも冷却媒体流路34が形成されている。なお中間金型18のノズル孔35が直接ゲート部を構成するものでもよく、その場合ゲート部はキャビティ形成面38の端部に直接設けられる。前記のように同一成形面においてゲート部を上部と下部に設けることにより、射出時にゲート部近傍に強い樹脂圧を受けた場合に樹脂圧が中間金型18全体に平均化されるから、固定金型15と中間金型18の平行度をより一層保つことができる。ただしマニホールドブロック32の長さを短くするためにキャビティ19,19のそれぞれ内側部分の端面にゲート部を設けてもよい。またゲート部の形状や数は限定されない。
【0014】
図4、図6において断面で示されるように固定金型15は、型取付板41と本体部42(母型)が設けられ、その中心には、上記ランナブロック28が挿通される孔29が形成されている。そして固定金型15の本体部42における中間金型18のキャビティ形成面38と対向する部分には、キャビティ形成コアブロック43が固定されている。キャビティ形成コアブロック43の内部には冷却媒体流路44が形成されている。また前記キャビティ形成コアブロック43の周囲には枠ブロック46が本体部42に対してバネ45により取付けられている。そして前記枠ブロック46は、キャビティ形成コアブロック43に対して型開閉方向に移動可能となっている。また枠ブロック46において中間金型18のコールドランナ部36およびフィルムゲート部37に対向する部分には、同様にコールドランナ部およびフィルムゲート部が設けられている。そして枠ブロック46の前記コールドランナ部およびフィルムゲート部以外の部分は、中間金型18のパーティング面39と当接される当接面となっている。また固定金型15において中間金型18のノズル孔35に対向する部分には、導光板とコールドランナを突き出すエジェクタの突出ピン47が設けられ、エジェクタの駆動装置としての油圧シリンダ48は本体部42の内部に設けられている。なおエジェクタ装置は必須ではなく、キャビティ形成コアブロック43と枠ブロック46のクリアランスから圧搾エアを噴出させて離型を行うもの等でもよい。またフィルムゲート部にゲートカッタを設けてもよい。更に中間金型18のキャビティ形成面38または固定金型15のキャビティ形成コアブロック43の表面に転写パターンを形成するかスタンパを取付けてもよい。なおスタックモールド11は、固定金型15にホットランナノズル33が設けられ、固定金型側からキャビティ19内に溶融樹脂を注入するものでもよい。
【0015】
図4、図5、および図6に示されるように、可動金型17の構造は、固定金型15と似ている。可動金型17は、型取付板51に対して本体部52(母型)が固定され、本体部52には内部に冷却媒体流路53が形成されたキャビティ形成コアブロック54が固定されている。キャビティ形成コアブロック54の周囲には枠ブロック56が本体部52に対してバネ55により取付けられている。そして前記枠ブロック56は、キャビティ形成コアブロック54に対して型開閉方向に移動可能となっている。キャビティ形成コアブロック54の設けられる位置は、中間金型18のキャビティ形成面38と対向する部分であって、枠ブロック56、枠ブロック56のコールドランナ部57、フィルムゲート部58、当接面59、エジェクタの突出ピン60等が配設される位置についても、中間金型18の対応する部分に対向する位置に配設されている。そして可動金型17についても固定金型15と同様に圧搾エアを採用してもよく、キャビティ形成コアブロック54の表面に転写パターンを形成するかスタンパを取付けてもよい。またエジェクタ装置やゲートカッタの駆動装置は、型締装置13に設けられたものを用いてもよい。
【0016】
次に導光板のスタックモールド11が取付けられた射出成形機12による導光板の射出プレス成形方法について説明する。射出成形機12の型締装置13を作動させ可動盤16および可動金型17を型閉方向に移動させて、型締完了時よりも僅かに手前のキャビティ19,19,20,20の容積が僅かに拡大された位置に可動金型17を停止させる。この際にラックピニオン機構24を用いた中間金型移動機構によりキャビティ19,19とキャビティ20,20の間隔は等しく型閉される。なおラックピニオン機構24のピニオン歯車26とラック歯25a,25bの間にバックラッシがあったとしても、固定金型15のバネ45と可動金型17のバネ55によりキャンセルされる。そして図2に示されるように中間金型18の移動により中間金型18に固定されたランナブロック28は、射出装置30側に移動し、固定盤14のノズル挿入孔61から突出された位置で射出装置30のノズル62が当接される。
【0017】
次に射出装置30を作動させて加熱筒63内で計量しておいた溶融樹脂を、ランナブロック28およびマニホールドブロック32内のホットランナ27等、ホットランナノズル33、ノズル孔35、コールドランナ部、およびフィルムゲート部を介してそれぞれのキャビティ19,19,20,20に射出充填する。実施例1では、ノズル62から各キャビティ19,19,20,20までの距離は、略同距離であるので、溶融樹脂の速度や圧力を略均等な状態で各キャビティ19,19,20,20へ射出充填を行うことができる。そしてホットランナノズル33のヒータ温度、または冷却媒体流路34へ送られる冷却媒体の温度を個別に温度制御することにより、各キャビティ19,19,20,20への溶融樹脂の注入量を調節可能となっている。またはホットランナノズル33の部分にバルブゲートが設けられているタイプではバルブの作動開始または閉鎖のタイミングを制御することにより、各キャビティ19,19,20,20への溶融樹脂注入量を調節するようにしてもよい。更にはゲートカッタが設けられているタイプではゲートカットの当初の突出量またはゲートカッタの作動制御を行うことにより、各キャビティ19,19,20,20への溶融樹脂注入量を調節するようにしてもよい。そして溶融樹脂の注入量の制御は、前記調節のうち複数を行うものでもよい。
【0018】
そして各キャビティ19,19,20,20内に溶融樹脂がある程度射出されたことが、射出装置30の図示しないスクリュの前進位置、キャビティ19,19,20,20に設けられた樹脂圧センサ、タイマー計時等により検出されたら、型締装置13により各キャビティ19,19,20,20内の溶融樹脂の圧縮を開始する。この際に前記の中間金型移動機構のラックピニオン機構24により型開閉方向に設けられたキャビティ19,19内の溶融樹脂と、キャビティ20,20内の溶融樹脂を同時に加圧することができる。この際の型締装置13の型締力は、圧縮成形により溶融樹脂からの反力を受けるので、同一面上に同じ枚数のキャビティを形成して成形するもの(投影面積が倍のもの)と比較して、半分にはならないが、一例として60〜90%にすることができる。そして各キャビティ19,19,20,20内の溶融樹脂の冷却が完了すると型締装置13の作動によりキャビティ19,19と、キャビティ20,20が同時に開放され、型開きがされる。型開完了時の中間金型18の位置は、固定金型15と可動金型17の中間位置である。そしてエジェクタ装置の突出ピン47,60がそれぞれ作動されて、固定金型15および可動金型17に付着して型開きされた導光板とコールドランナとが突き出される。同時に図示しない取出機により導光板等が保持され、後工程へ送られる。
【0019】
なお上記においては、キャビティ19,20の間隔を僅かに開いた状態で射出を行い、射出途中または射出後に圧縮を行う射出プレスについて記載したが、当初キャビティ19,20を型締力が比較的弱い状態で完全に型閉状態とし、射出によりキャビティ19,20を僅かに型開きさせ、その後射出中または射出後に圧縮を行う射出圧縮成形を行うようにしてもよい。
【実施例2】
【0020】
図7に示される実施例2の導光板のスタックモールド71は、パーティング面同時を当接した状態で射出から冷却完了までの工程を行う一般的な射出成形用の成形金型である。実施例1のスタックモールド11との相違点を中心に説明すると、導光板のスタックモールド71の中間金型72については、内部にホットランナのマニホールドブロック73が設けられているが、実施例1におけるランナブロック28に相当するものは設けられていない。マニホールドブロック73の中央部には、固定金型74側に向けてホットランナ75が設けられ、前記ホットランナ75の内部の溶融樹脂流路には油圧シリンダ76によって作動するバルブゲート77が設けられ、ホットランナ75のノズル孔78がパーティング面79に形成されている。また中間金型72のパーティング面79にはキャビティ形成面80が形成されている。またマニホールドブロック73に接続されるホットランナノズル81は、それぞれヒータ温度制御により各キャビティへの溶融樹脂の注入量が調節可能となっている。
【0021】
また固定金型74についてもホットランナ82が設けられ、前記ホットランナ82の内部の溶融樹脂流路には油圧シリンダ83によって作動するバルブゲート84が設けられ、ホットランナ82のノズル孔85がパーティング面86に形成されている。そして固定金型74のパーティング面86にはキャビティ形成面87が形成されている。前記中間金型72のキャビティ形成面80と固定金型74のキャビティ形成面87の間に形成されるキャビティは、型締された際に容積が変更不可能となっている。また可動金型88についてもパーティング面89にキャビティ形成面90が形成されており、中間金型72のキャビティ形成面80と可動金型88のキャビティ形成面90の間には型締された際に容積が変更不可能なキャビティが形成される。
【0022】
そして図7に示される実施例2の導光板のスタックモールド71は、型締された際にパーティング面79とパーティング面86、パーティング面79とパーティング面89とが面当接され、ホットランナ75のノズル孔78とホットランナ82のノズル孔85が連通される。そして双方のバルブゲート77,84を開放することにより図示しない射出装置からキャビティに向けて略均等に溶融樹脂が射出可能となる。
【実施例3】
【0023】
前記の実施例1は、固定金型15と中間金型18との間で2枚の導光板が同時に成形され、可動金型17と中間金型18の間でも2枚の導光板が同時に成形されるものについて記載した。しかし実施例3では、固定金型と中間金型の間、および可動金型と中間金型の間にそれぞれ1個設けられたキャビティで、それぞれ1枚づつ導光板を成形する。実施例3の各キャビティは、型開閉方向に投影した際のゲート部の配設位置が相違するように配設されている。具体的には固定金型と中間金型の間のキャビティにおいてゲート部が設けられる位置を上方の端部に設けた場合、中間金型と可動金型の間のキャビティにおいてゲート部が設けられる位置は下方の端部に設けられる。前記配置を取ることにより、射出時における射出圧によりキャビティを開く方向の力がゲート部側の方により強く働いたとしても、2枚のキャビティのゲート部が反対側にあることにより、該射出時にキャビティを開く力を均等にすることができ、成形される導光板の板厚を均等にしやすくすることができる。なお型開閉方向に投影した際のゲート部の位置は、重なっていなければ、上側と右側といった組合わせであってもよい。実施例3のスタックモールドは、一般的な射出成形金型としても射出圧縮成形金型としても採用できる。
【実施例4】
【0024】
前記の実施例1では、射出された溶融樹脂は略同時に型開閉方向にそれぞれ設けられたキャビティ19,19,20,20へ注入され、型締装置13により略同時に各キャビティ19,19,20,20の溶融樹脂を圧縮する射出圧縮成形が行われる。しかし各キャビティの圧縮をそれぞれ個別に行うものでもよい。例えば固定金型と中間金型の間のキャビティと、可動金型と中間金型の間のキャビティの圧縮を個別に制御するものでもよい。具体的には固定金型と中間金型、可動金型と中間金型の間に間隔を個別に調整可能な図示しない調整シリンダ(反抗シリンダ)とストッパ等からなる機構を複数設ける。そして型締装置による圧縮に対して、前記各調整シリンダの前進力を個別に制御して反抗させることにより、固定金型と中間金型の間のキャビティと、可動金型と中間金型の間のキャビティの圧縮を個別に制御することができる。また前記調整シリンダを複数設け個別に平行制御すれば透明樹脂薄板の平行度を高めることもできる。なお調整シリンダは、固定金型と中間金型、可動金型と中間金型のいずれか一方のみに設けてもよく、更には固定金型の替わりに固定盤、可動金型の替わりに可動盤に取付けてもよい。
【実施例5】
【0025】
また固定金型と中間金型の間のキャビティと、可動金型と中間金型の間のキャビティは、別のタイミングで射出充填および圧縮を行い、射出圧縮成形を行うようにしてもよい。実施例5の場合は、中間金型内の固定金型側のホットランナノズルのゲートバルブと、可動金型側のホットランナノズルのゲートバルブを別のタイミングで開閉する。そして一方のキャビティ(例えば固定金型と中間金型の間のキャビティ)へ射出して圧縮を加えている際は、他方のキャビティ(可動金型と中間金型の間のキャビティ)は、ゲートバルブを閉鎖し図示しないフック装置等により可動金型と中間金型を型締状態に固定させておく。そして一方のキャビティでの成形が完了すると、次に一方の成形完了したキャビティをフック装置等により型締状態とし、他方のキャビティの型締状態を解除するとともにゲートバルブを開放して、他方のキャビティへ射出して圧縮を加える。
【産業上の利用可能性】
【0026】
本発明は、導光板以外にも光拡散板、レンズ、アクリル製ガラスや車輌用樹脂窓材等のキャビティ端部にゲート部を設ける透明樹脂薄板全般に有効である。これらの透明樹脂薄板は、その用途上の理由から中央部にゲート跡や孔を形成することが出来ない。なお前記透明樹脂薄板は、樹脂材料は限定されず、美観上の理由や紫外線対策等のために薄く着色されたものを除外するものではない。また透明樹脂薄板は、均等圧な板厚のものに限定されず、長さ(最長部)が板厚(最厚部)の5倍以上程度を薄板とする。
【符号の説明】
【0027】
11,71 導光板のスタックモールド(透明樹脂薄板のスタックモールド)
12 射出成形機
13 型締装置
15,74 固定金型
17,88 可動金型
18,72 中間金型
19,20 キャビティ
28 ランナブロック
32,73 マニホールドブロック(ホットランナ)
33 ホットランナノズル
37 フィルムゲート部(ゲート部)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
固定金型と可動金型の間に少なくとも1枚以上の中間金型を配設した透明樹脂薄板のスタックモールドにおいて、
前記金型間にそれぞれ設けられるキャビティは端部にホットランナおよびホットランナノズルを介して溶融樹脂が送られるゲート部が設けられ、
前記ホットランナノズルまたは前記ゲート部はキャビティへの溶融樹脂の注入量が調節可能となっていることを特徴とする透明樹脂薄板のスタックモールド。
【請求項2】
前記金型間にそれぞれ設けられるキャビティは、容積変更可能に設けられ射出圧縮成形を行うことが可能な請求項1に記載の透明樹脂薄板のスタックモールド。
【請求項3】
前記金型間にそれぞれ設けられるキャビティは、個別に容積変更可能に設けられていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の透明樹脂薄板のスタックモールド。
【請求項4】
前記金型間にそれぞれ設けられるキャビティは、型開閉方向に投影した際のゲート部の配設位置が相違することを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載の透明樹脂薄板のスタックモールド。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−173074(P2010−173074A)
【公開日】平成22年8月12日(2010.8.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−14984(P2009−14984)
【出願日】平成21年1月27日(2009.1.27)
【出願人】(000155159)株式会社名機製作所 (255)
【Fターム(参考)】