説明

透明絶縁保護膜形成用感光性樹脂組成物および透明絶縁膜

【課題】高感度及び高解像度を有し、透明性、耐熱性、接着性に優れる透明絶縁保護膜を与える感光性樹脂組成物、及び上記感光性樹脂組成物を用いて形成されてなる透明絶縁保護膜を提供する。
【解決手段】(A)アルカリ水溶液可溶性樹脂、(B)重合性多官能化合物、(C)光重合開始剤、(D)絶縁粒子、及び(E)溶剤を含む透明絶縁保護膜形成用ネガ型感光性樹脂組成物であって、前記(D)絶縁粒子の粒子径が10nm〜200nmである透明絶縁膜形成用感光性樹脂組成物及びこの樹脂組成物を用いて形成された透明絶縁膜。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、透明絶縁保護膜形成用感光性樹脂組成物及びそれを用いた透明絶縁膜に係り、特に、高透明性、高耐熱性、高接着性に優れるタッチパネル素子用の透明絶縁膜に適したネガ型感光性樹脂組成物及び透明絶縁膜に関する。
【背景技術】
【0002】
タッチパネルの方式は、抵抗膜方式、静電容量方式等があり、抵抗膜方式は、価格は安価であるが、誤作動が多い欠点があり、今後の主流は静電容量方式になると考えられる。静電容量方式の構造は複数あるが、一般的な構造は、基板上に透明導電膜を形成し、その透明導電膜上に感光性樹脂により保護膜を形成する(例えば、特許文献1乃至3参照)。感光性樹脂により保護膜を形成する場合、樹脂に感光特性を持たせるために、重合性多官能化合物、光重合開始剤を使用する(例えば、特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平6−195174号公報
【特許文献2】特開2009−69984号公報
【特許文献3】特開2010−27033号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、従来の感光性樹脂においては、その使用により形成保護膜の透明性が低下してしまう問題があった。また、樹脂保護膜は基板との密着性が悪く、耐熱性が低いため、製造工程内の熱履歴により剥離、透明性の低下が生じてしまう問題もあった。
【0005】
このような問題から、高透明性、高耐熱性、高接着性を持つ感光性樹脂組成物の開発が強く望まれており、本発明は、この問題点を解決し、高感度及び高解像度を有し、さらに、高透明性、高耐熱性、高接着性を有する透明絶縁保護膜形成用感光性樹脂組成物及びこの感光性樹脂組成物を用いて形成される透明絶縁膜を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記目的を達成するために、鋭意研究を重ねた結果、特定の組成を有する感光性樹脂組成物により、その目的を達成し得ることを見出した。本発明は、かかる知見に基づいて完成したものである。
【0007】
すなわち、本発明の透明絶縁膜形成用感光性樹脂組成物は、(A)アルカリ水溶液可溶性樹脂、(B)重合性多官能化合物、(C)光重合開始剤、(D)絶縁粒子、及び(E)溶剤を含む透明絶縁保護膜形成用ネガ型感光性樹脂組成物であって、前記(D)絶縁粒子の粒子径が10nm〜200nmであることを特徴とするものである。
【0008】
また、本発明の透明絶縁膜は、本発明の透明絶縁膜形成用感光性樹脂組成物を用いて形成されたことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明の透明絶縁膜形成用感光性樹脂組成物によれば、高感度及び高解像度を有し、透明性、耐熱性、接着性に優れた樹脂を得ることができるため、優れた透明絶縁膜を形成することができる。
【0010】
また、本発明の透明絶縁膜によれば、得られる透明絶縁膜が、透明性、耐熱性、接着性に優れているため、タッチパネル用途に好適に使用することができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の高感度及び高解像度を有し、透明性、耐熱性、接着性に優れる透明絶縁膜形成用感光性樹脂組成物(以下、単に感光性樹脂組成物と称することがある。)は、(A)アルカリ水溶液可溶性樹脂、(B)重合性多官能化合物、(C)光重合開始剤、(D)絶縁粒子及び(E)溶剤を含むネガ型感光性樹脂組成物である。ここで、(A)アルカリ水溶液可溶性樹脂 100質量部、(B)重合性多官能化合物 50〜250質量部、(C)光重合開始剤 1〜20質量部、(D)絶縁粒子 50〜300質量部及び(E)溶剤を含むネガ型感光性樹脂組成物であることが好ましい。
【0012】
本発明の感光性樹脂組成物における(A)アルカリ水溶液可溶性樹脂としては、本成分を含む感光性樹脂組成物に対して現像処理工程に用いられるアルカリ水溶液に対して可溶性を有するものであればよく、特に限定されるものではない。このアルカリ水溶液可溶性樹脂は、反応性官能基を有するものが好ましく、反応性官能基としては、例えば、エポキシ基、(メタ)アクリロイル基等が挙げられる。
【0013】
このようなアルカリ水溶液可溶性樹脂としては、例えば、(a1)エチレン性不飽和結合を有するカルボン酸及び/又はエチレン性不飽和結合を有するカルボン酸無水物と(a2)その他のエチレン性不飽和結合を有する不飽和化合物との共重合体の一部を、(a3)エチレン性不飽和結合を有するエポキシ化合物、と反応させて得られた樹脂を好ましく用いることができる。
【0014】
(a1)エチレン性不飽和結合を有するカルボン酸及び/又はエチレン性不飽和結合を有するカルボン酸無水物と(a2)その他のエチレン性不飽和結合を有する化合物との共重合体は、(a1)と(a2)を溶媒中で重合開始剤の存在下にラジカル重合することによって製造することができる。
【0015】
この(a1)エチレン性不飽和結合を有するカルボン酸及び/又はエチレン性不飽和結合を有するカルボン酸無水物成分としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸などのモノカルボン酸、マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、メサコン酸、イタコン酸などのジカルボン酸及びこれらのカルボン酸無水物が挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0016】
この(a2)その他のエチレン性不飽和結合を有する不飽和化合物成分としては、例えば、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、n−ブチルメタクリレート、sec−ブチルメタクリレート、t−ブチルメタクリレートなどのメタクリル酸アルキルエステル;メチルアクリレート、イソプロピルアクリレートなどのアクリル酸アルキルエステル;シクロヘキシルメタクリレート、2−メチルシクロヘキシルメタクリレート、ジシクロペンタニルメタクリレート、ジシクロペンタニルオキシエチルメタクリレート、イソボロニルメタクリレートなどのメタクリル酸環状アルキルエステル;シクロヘキシルアクリレート、2−メチルシクロヘキシルアクリレート、ジシクロペンタニルアクリレート、ジシクロペンタニルオキシエチルアクリレート、イソボロニルアクリレートなどのアクリル酸環状アルキルエステル;フェニルメタクリレート、ベンジルメタクリレートなどのメタクリル酸アリールエステル;フェニルアクリレート、ベンジルアクリレートなどのアクリル酸アリールエステル;マレイン酸ジエチル、フマル酸ジエチル、イタコン酸ジエチルなどのジカルボン酸ジエステル;2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシプロピルメタクリレートなどのヒドロキシアルキルエステル;及びスチレン、α−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、ビニルトルエン、p−メトキシスチレン、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、塩化ビニル、塩化ビニリデン、アクリルアミド、メタクリルアミド、酢酸ビニル、1,3−ブタジエン、イソプレン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエンなどが挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0017】
また、上記の(a1)成分と(a2)成分との共重合の際に用いられる溶媒としては、例えば、メタノール、エタノールなどのアルコール類;テトラヒドロフランなどのエーテル類;エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテルなどのグリコールエーテル類;メチルセロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテートなどのエチレングリコールアルキルエーテルアセテート類;ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールエチルメチルエーテルなどのジエチレングリコール類;プロピレングリコールメチルエーテル、プロピレングリコールエチルエーテル、プロピレングリコールプロピルエーテル、プロピレングリコールブチルエーテルなどのプロピレングリコールモノアルキルエーテル類;プロピレングリコールメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールプロピルエーテルアセテート、プロピレングリコールブチルエーテルアセテートなどのプロピレングリコールアルキルエーテルアセテート類;プロピレングリコールメチルエーテルプロピオネート、プロピレングリコールエチルエーテルプロピオネート、プロピレングリコールプロピルエーテルプロピオネート、プロピレングリコールブチルエーテルプロピオネートなどのプロピレングリコールアルキルエーテルプロピオネート類;トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素類;メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、4−ヒドロキシ−4−メチル−2−ペンタノンなどのケトン類;が挙げられる。
【0018】
さらに、(a1)成分と(a2)成分との共重合の際に用いられる溶媒としては、例えば、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、2−ヒドロキシプロピオン酸エチル、2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオン酸メチル、2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオン酸エチル、ヒドロキシ酢酸メチル、ヒドロキシ酢酸エチル、ヒドロキシ酢酸ブチル、乳酸メチル、乳酸エチル、乳酸プロピル、乳酸ブチル、3−ヒドロキシプロピオン酸メチル、3−ヒドロキシプロピオン酸エチル、3−ヒドロキシプロピオン酸プロピル、3−ヒドロキシプロピオン酸ブチル、2−ヒドロキシ−3−メチルブタン酸メチル、メトキシ酢酸メチル、メトキシ酢酸エチル、メトキシ酢酸プロピル、メトキシ酢酸ブチル、エトキシ酢酸メチル、エトキシ酢酸エチル、エトキシ酢酸プロピル、エトキシ酢酸ブチル、プロポキシ酢酸メチル、プロポキシ酢酸エチル、プロポキシ酢酸プロピル、プロポキシ酢酸ブチル、ブトキシ酢酸メチル、ブトキシ酢酸エチル、ブトキシ酢酸プロピル、ブトキシ酢酸ブチル、2−メトキシプロピオン酸メチル、2−メトキシプロピオン酸エチル、2−メトキシプロピオン酸プロピル、2−メトキシプロピオン酸ブチル、2−エトキシプロピオン酸メチル、2−エトキシプロピオン酸エチル、2−エトキシプロピオン酸プロピル、2−エトキシプロピオン酸ブチル、2−ブトキシプロピオン酸メチル、2−ブトキシプロピオン酸エチル、2−ブトキシプロピオン酸プロピル、2−ブトキシプロピオン酸ブチル、3−メトキシプロピオン酸メチル、3−メトキシプロピオン酸エチル、3−メトキシプロピオン酸プロピル、3−メトキシプロピオン酸ブチル、3−エトキシプロピオン酸メチル、3−エトキシプロピオン酸エチル、3−エトキシプロピオン酸プロピル、3−エトキシプロピオン酸ブチル、3−プロポキシプロピオン酸メチル、3−プロポキシプロピオン酸エチル、3−プロポキシプロピオン酸プロピル、3−プロポキシプロピオン酸ブチル、3−ブトキシプロピオン酸メチル、3−ブトキシプロピオン酸エチル、3−ブトキシプロピオン酸プロピル、3−ブトキシプロピオン酸ブチルなどのエステル類等が挙げられる。これらの溶媒は単独で用いてもよく、上記した溶媒を単独で用いてもよいし、2種以上の混合物として用いてもよい。
【0019】
また、(a1)成分と(a2)成分との共重合の際に用いられる重合開始剤としては、一般的にラジカル重合開始剤として知られているものが使用でき、例えば2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス−(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス−(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)などのアゾ化合物;ベンゾイルペルオキシド、ラウロイルペルオキシド、t−ブチルペルオキシビバレート、1,1’−ビス−(t−ブチルペルオキシ)シクロヘキサンなどの有機過酸化物;および過酸化水素などが挙げられる。ラジカル重合開始剤として過酸化物を用いる場合には、過酸化物を還元剤とともに用いてレドックス型開始剤としてもよい。
【0020】
この共重合の際の温度は、使用する単量体の種類によって異なるが、通常40〜150℃程度、好ましくは50〜100℃である。
【0021】
次に、このようにして得られた共重合体のカルボン酸基などの反応性官能基の一部と、(a3)エチレン性不飽和結合を有するエポキシ化合物を反応させることにより、(A)アルカリ水溶液可溶性樹脂が得られる。
【0022】
この(a3)成分としては、例えば、アクリル酸グリシジル、メタクリル酸グリシジル、α−エチルアクリル酸グリシジル、α−n−プロピルアクリル酸グリシジル、α−n−ブチルアクリル酸グリシジル、アクリル酸−3,4−エポキシブチル、メタクリル酸−3,4−エポキシブチル、アクリル酸−6,7−エポキシへプチル、メタクリル酸−6,7−エポキシへプチル、α−エチルアクリル酸−6,7−エポキシへプチル、o−ビニルベンジルグリシジルエーテル、m−ビニルベンジルグリシジルエーテル、p−ビニルベンジルグリシジルエーテルなどが挙げられる。これらのうち、好ましいものとして、メタクリル酸グリシジル、メタクリル酸−6,7−エポキシへプチル、o−ビニルベンジルグリシジルエーテル、m−ビニルベンジルグリシジルエーテル、p−ビニルベンジルグリシジルエーテルなどが挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0023】
この反応は無触媒でも行うことができるが、反応を促進させるために触媒を使用することもでき、その触媒としては、例えば、トリエチルアミン、ベンジルジメチルアミン、ピリジン、トリエチルアンモニウムクロライド、ベンジルトリメチルアンモニウムブロマイド、ベンジルトリメチルアンモニウムアイオダイド、トリフェニルホスフィン、トリフェニルスチビン、メチルトリフェニルスチビン、オクタン酸クロム、オクタン酸ジルコニウム等が挙げられる。
【0024】
これらは1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよく、その使用量は、反応物の質量に対して、通常、0.1〜10質量%程度、好ましくは0.5〜5質量%である。また、反応温度は、通常、60〜150℃程度、好ましくは80〜90℃であり、反応時間は、反応温度に左右され一概に定めることはできないが、通常5〜60時間程度で充分である。
【0025】
このようにして得られた(A)アルカリ水溶液可溶性樹脂は、質量平均分子量Mwが10,000〜20,000の範囲にあることが好ましい。このMwが10,000以上であれば、得られる被膜は現像性、残膜性、パターン形状、耐熱性などが良好であり、一方20,000以下であれば、感度の低下やパターン形状の不良を抑制し得ると共に、感光性樹脂組成物の保存安定性も良好である。より好ましいMwは12,000〜18,000である。
【0026】
なお、上記質量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー法(GPC法)にて測定したポリスチレン換算の値である。
【0027】
当該(A)アルカリ水溶液可溶性樹脂は、固形分酸価が、50〜200mgKOH/gになるように、(a1)、(a2)及び(a3)成分の使用割合を選定することが好ましい。該固形分酸価が50mgKOH/g以上であれば良好な現像性を有し、また200mgKOH/g以下であれば残膜率やパターン形状が良好となる。より好ましい固形分酸価は80〜150mgKOH/gである。
【0028】
本発明の感光性樹脂組成物における(B)重合性多官能化合物としては、官能基数5以上のものを好ましく用いることができる。このような重合性多官能化合物としては、5官能以上のものを好ましく用いることができる。このような重合性多官能化合物としては、5官能以上の(メタ)アクリレート、例えば、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレートやジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレートなどが挙げられる。その市販品としては、例えば、アロニックスM−402[東亜合成化学工業株式会社製]、KAYARADDPHA、同DPEA−12、同DPHA−2C、同D−310、同D−330、同DPCA−20、同DPCA−30、同DPCA−60、同DPCA−120[以上、日本化薬株式会社製]、ビームセット700[荒川化学工業株式会社製]、SR299E、SR9041(以上、サートマー社製)などが挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0029】
また、(B)重合性多官能化合物としては、ガラス転移温度(Tg)が100℃以上のものも好ましく用いることができる。このような重合性多官能化合物としては、例えば、1,3−ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロビレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレートトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、エトキシ化ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、クレゾールノボラック型エポキシ(メタ)アクリレート、フェノールノボラック型エポキシ(メタ)アクリレート、イソシアヌル酸EO変性トリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンPO変性トリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ポリエステルアクリレートなどが挙げられる。その市販品としては、例えば、SR212、SR508、SR368、SR444、SR295、CD540[以上、サートマー社製]、ライトアクリレートNP−A[共栄社化学社製]、リポキシSP−4060、同SP−4010[以上、昭和高分子社製]、アロニックスM−215、同M−305、同M−309、同M−310、同M−315、同M−402、同M−408、同M−450、同M−7100、同M−8030、同M−8060、同M−8100、同M−9050[以上、東亜合成化学工業株式会社製]などが挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0030】
さらに、(B)重合性多官能化合物として、5官能以上のウレタン結合を有する重合性化合物を好ましく用いることができる。このような重合性多官能化合物としては、例えば脂肪族ウレタン(メタ)アクリレート、芳香族ウレタン(メタ)アクリレートなどが挙げられる。その市販品としては、CN−968、CN−975[以上、サートマー社製]、NKオリゴU−15HA、同UA−32、同U−324A、同U−6HA、同UA−100H、同U−6LPA、U−6H[以上、新中村化学工業株式会社製]、ビームセット575[荒川化学工業株式会社製]、アロニックスM−1960[東亜合成化学工業株式会社製]などが挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0031】
本発明の感光性樹脂組成物における(B)重合性多官能化合物は、(A)アルカリ水溶液可溶性樹脂100質量部に対して、50〜250質量部の割合で配合される。該(B)成分の配合量が50質量部以上であれば、架橋反応が充分に進行し、現像による膜減りが生じにくく、一方、250質量部以下であれば、良好な解像性が得られる。該(B)成分の好ましい配合量は80〜200質量部である。
【0032】
本発明の感光性樹脂組成物における(C)成分の光重合開始剤については、光反応開始剤として紫外線中のi線(365nm)、g線(436nm)において効率よく反応性ラジカルを発生させるものであれば特に限定されない。このような化合物としては、例えば、ベンジル、ジアセチル等のα−ジケトン類、ベンゾイン等のアシロイン類、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル等のアシロインエーテル類、チオキサントン、2−メチルチオキサントン、2−イソプロピルチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、チオキサントン−4−スルホン酸、ベンゾフェノン、4,4’−ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン、4,4’−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン等のベンゾフェノン類、アセトフェノン、p−ジメチルアミノアセトフェノン、2,2’−ジエトキシアセトフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオフェノンなどのアセトフェノン類、アントラキノン、1,4−ナフトキノン等のキノン類、2,6−ジ(4’−ジアジドベンザル)シクロヘキサノン、2,6−ジ(4’−ジアジドベンザル)−4−メチルシクロヘキサノン、2,6−(4’−ジアジドベンザル)−4−エチルシクロヘキサノン、2,6−(4’−ジアジドベンザル)−4−ブチルシクロヘキサノン、2,6−(4’−ジアジドベンザル)−4−(t−ブチル)シクロヘキサノン等のアジド類、1−フェニル−1,2−ブタジオン−2−(O−ベンゾイル)オキシム、1−フェニル−プロパンジオン−2−(O−メトキシカルボニル)オキシム、1−フェニル−2−(O−エトキシカルボニル)オキシム、1−フェニル−プロパンジオン−2−(O−ベンゾイル)オキシム、1,3−ジフェニル−プロパントリオン−2−(O−エトキシカルボニル)オキシム、1−フェニル−3−エトキシ−プロパントリオン−2−(O−ベンゾイル)オキシム等のオキシム類、N−フェニルグリシン、N−(p−エチル)フェニルグリシン、N−(p−エチル)フェニルグリシン等のグリシン誘導体、フェナシルクロライド、トリブロモメチルフェニルスルホン、トリス(トリクロロメチル)−s−トリアジンなどのハロゲン化合物、ジ−t−ブチルパーオキサイドなどの過酸化物などが挙げられる。これらの市販品としては、例えば、IRGACURE−184、同369、同500、同651、同907、同1500、Darocur−1173、同1116、同2959、同1664、同4043[以上、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製]、KAYACURE−DETX、同MBP、同DMBI、同EPA、同OA[以上、日本化薬株式会社製]等が挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0033】
本発明の感光性樹脂組成物における(C)成分の光重合開始剤は、効果及び経済性のバランスなどの点から、(A)アルカリ水溶液可溶性樹脂 100質量部に対して、1〜20質量部、好ましくは3〜15質量部の割合で配合される。
【0034】
また、本発明の感光性樹脂組成物においては、光重合開始剤と共に、必要に応じて増感剤を併用することができる。この増感剤としては、例えば、ミヒラーズケトン、4,4’−ビス(ジエチルアミノベンゾフェノン)、2,5−ビス(4’−ジエチルアミノベンザル)シクロペンタノン、2,6−ビス(4’−ジエチルアミノベンザル)シクロヘキサノン、2,6−ビス(4’−ジメチルアミノベンザル)−4−メチルシクロヘキサノン、2,6−ビス(4’−ジエチルアミノベンザル)−4−メチルシクロヘキサノン、4,4’−ビス(ジエチルアミノ)カルコン、4,4’−ビス(ジメチルアミノ)カルコン、p−ジメチルアミノシンナミリデンインダノン、p−ジメチルアミノベンジリデンインダノン、2−(p−ジメチルアミノフェニルビフェニレン)−ベンゾチアゾール、2−(p−ジメチルアミノフェニルビニレン)ベンゾチアゾール、1,3−ビス(4’−ジメチルアミノベンザル)アセトン、3,3’−カルボニル−ビス(7−ジエチルアミノクマリン)、3−アセチル−7−ジメチルアミノクマリン、3−エトキシカルボニル−7−ジメチルアミノクマリン、3−ベンジロキシカルボニル−7−ジメチルアミノクマリン、3−メトキシカルボニル−7−ジエチルアミノクマリン、3−エトキシカルボニル−7−ジエチルアミノクマリン、N−フェニル−N’−エタノールアミン、N−フェニルエタノールアミン、N−p−トリルジエタノールアミン、N−フェニルエタノールアミン、4−モルホリノベンゾフェノン、ジメチルアミノ安息香酸イソアミル、2−メルカプトベンズイミダゾール、2−メルカプトベンゾオキサゾール、2−メルカプトペンゾチアゾール、1−フェニル5−メルカプト−1H−テトラゾールなどが挙げられる。
【0035】
これらは1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよく、その配合量は、効果及び経済性のバランスなどの点から、(A)アルカリ水溶液可溶性樹脂 100質量部に対して、好ましくは0.1〜10質量部、より好ましくは0.3〜8質量部の範囲である。また、これらの増感剤は使用する波長にあわせて、さらには要求感度に合わせて利用することで各波長における解像度を向上させることができる。
【0036】
本発明の感光性樹脂組成物においては、樹脂の保存安定性を向上させるために、所望により重合禁止剤を配合することができる。この重合禁止剤としては、例えば、ヒドロキノン、メチルヒドロキノン、ブチルキノンなどのヒドロキノン誘導体を使用することができる。これらの化合物は1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよく、その配合量は、効果及び経済性などの点から、(A)アルカリ水溶液可溶性樹脂 100質量部に対して、好ましくは0.1〜10質量部、より好ましくは0.2〜5質量部の範囲である。
【0037】
本発明の感光性樹脂組成物における(D)絶縁粒子については、粒子径が10nm〜200nmである絶縁粒子であれば特に限定されない。10nm〜200nmの絶縁粒子としては、例えば、シリカ、アルミナ等が挙げられる。特に熱的安定性などの特性よりシリカ微粒子が好ましい。シリカ微粒子は、ケイ酸ナトリウムと硫酸の中和反応により合成された、いわゆる湿式法により得ることができるがこれに限らない。湿式法にはさらに沈降法、ゲル化法に大別させるが、どちらの方法であってもよい。具体的には東ソー・シリカ株式会社製の“NIPGEL”シリーズ、触媒化成工業株式会社製の“OSCAL”シリーズ、扶桑化学工業株式会社製の高純度オルガノゾル、電気化学工業株式会社製のUltra Fine Powder、日産化学工業株式会社製のオルガノゾル、アドマテックス株式会社製のアドマナノなどの市販品が使用できる。なお、本明細書中で、粒子径は平均粒子径を意味し、その算出方法は動的光散乱法による粒度分布測定で求められる。
【0038】
これらは1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよく、その配合量は、効果及び経済性のバランスなどの点から、(A)アルカリ水溶液可溶性樹脂100質量部に対して、好ましくは50〜300質量部、より好ましくは100〜300質量部の範囲である。
【0039】
本発明の感光性樹脂組成物は、上記(A)〜(D)成分及び必要に応じて用いられる増感剤や重合禁止剤、その他添加成分を(E)溶剤に溶解することにより、通常ワニス状に調製して、使用される。
【0040】
(E)溶剤については、本発明に用いる上記各成分を均一に溶解し、かつ該成分と反応しないものであれば良く、特に制限はない。このような溶剤としては、例えば、メタノール、エタノールなどのアルコール類、テトラヒドロフランなどのエーテル類、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテルなどのグリコールエーテル類、メチルセロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテートなどのエチレングリコールアルキルエーテルアセテート類、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテルなどのジエチレングリコール類、プロピレングリコールメチルエーテル、プロピレングリコールエチルエーテル、プロピレングリコールプロピルエーテル、プロピレングリコールブチルエーテルなどのプロピレングリコールモノアルキルエーテル類、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールプロピルエーテルアセテート、プロピレングリコールブチルエーテルアセテートなどのプロピレングリコールアルキルエーテルアセテート類、トルエンキシレンなどの芳香族炭化水素類、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、4−ヒドロキシ−4−メチル−2−ペンタノンなどのケトン類、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、2−ヒドロキシプロピオン酸エチル、2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオン酸メチル、2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオン酸エチル、ヒドロキシ酢酸メチル、ヒドロキシ酢酸エチル、ヒドロキシ酢酸ブチル、乳酸メチル、乳酸エチル、乳酸プロピル、乳酸ブチルなどのエステル類等が挙げられる。これらの溶剤は単独で用いてもよく、2種以上の混合物として用いてもよい。
【0041】
さらに、上記の溶剤とともに、高沸点溶剤を併用することもできる。併用できる高沸点溶剤としては、例えば、N−メチルホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N−メチルホルムアニリド、N−メチルアセトアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン、ジメチルスルホキシド、ベンジルエチルエーテル、ジヘキシルエーテル、アセトニルアセトン、イソホロン、カプロン酸、カプリル酸、1−オクタノール、1−ノナノール、ベンジルアルコール、酢酸ベンジル、安息香酸エチル、マレイン酸ジエチル、γ−ブチロラクトン、炭酸エチレン、炭酸プロピレン、フェニルセロソルブアセテートなどが挙げられる。
【0042】
本発明の感光性樹脂組成物においては、溶剤の配合量は、該樹脂組成物における他の構成成分を、例えば、ガラス基板上に塗布するのに適した粘度、例えば5〜20mPa・sになるように適宜選定すればよい。
【0043】
この感光性樹脂組成物には、これらの成分の他、必要に応じてレベリング剤、シランカップリング剤、充填剤、着色剤、粘度調整剤等の各種添加剤を配合することができる。
【0044】
次に、本発明の透明絶縁膜の製造方法について説明する。
【0045】
本発明の感光性樹脂組成物における(A)重合性多官能基を有するアルカリ水溶液可溶性樹脂と、(B)重合性多官能化合物は、光照射により発生したラジカルにより重合し、現像液に対して不溶になることでコントラストを発生させ、パターンを形成することができる。ガラス基板への適用を考えた場合、まずこの感光性樹脂組成物を対象とする基板上にスピンコーターなどを用いて被膜を形成し、次にその被膜を90〜130℃程度で加熱し、得られた被膜上にパターンが描画されているマスクを通過させて365nm、436nmといった活性紫外線を照射する。
【0046】
次いで、この被膜を、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、アンモニア等の無機アルカリ水溶液やエチルアミン、n−プロピルアミン等の一級アミン、ジエチルアミン、ジ−n−プロピルアミン等の二級アミン、トリエチルアミン、メチルジメチルアミン等の三級アミン、ジメチルエタノールアミン、トリエタノールアミン等のアルコールアミン、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド等の四級アミンを溶解したアルカリ水溶液を使用して現像処理し、未露光部のみを溶解除去したのち、純水によってリンス洗浄する。現像方式としてはスプレー、パドル、浸漬、超音波等の方式を用いることができる。
【0047】
この操作によって対象基板上に所望するネガ型パターンを得ることができる。さらにこの被膜を熱処理することによって、重合性官能基を有するアルカリ水溶液可溶性樹脂と重合性多官能化合物とがさらに架橋し、密着性、耐熱性、耐薬品性等の膜特性に優れた透明絶縁膜を形成することができる。
【0048】
これらの基板には所望により、シランカップリング剤等の薬品処理、プラズマ処理、イオンプレーティング処理、スパッタリング法、気相反応法、真空蒸着法等の前処理を行うことができる。
【0049】
基板サイズとしては、320mm×400mmの第一世代基板、370mm×4470mmの第二世代基板、550mm×650mmの第三世代基板、680mm×880mm〜730mm×920mmの第四世代基板等が挙げられる。
【実施例】
【0050】
次に、本発明を実施例により、さらに詳細に説明するが、本発明は、これらの例によってなんら限定されるものではない。
【0051】
〔製造例1〕アルカリ水溶液可溶性樹脂Iの製造
冷却管、撹拌機を備えたフラスコに、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル) 7質量部、ジエチレングリコールジメチルエーテル 200質量部を仕込んだ。引き続きアクリル酸 33質量部、アクリル酸 n−ブチルエステル 27質量部を仕込み窒素置換した後、ゆるやかに撹拌を始めた。溶液の温度を70℃に上昇させ、この温度を5時間保持し共重合体を得た。得られた共重合体溶液を室温に戻した後、グリシジルメタクリレート 40質量部及びピリジン 2質量部を仕込み、100℃に加熱して撹拌し、反応溶液の酸価が0.5mgKOH/g以下になるまで反応させた。得られた重合体の質量平均分子量をGPC〔HLC−8020(東ソー株式会社製)〕を用いて測定したところ、ポリスチレン換算で18,000であった。また、固形分酸価を測定したところ、102.8mgKOH/gであった。
【0052】
〔製造例2〕アルカリ水溶液可溶性樹脂IIの製造
冷却管、撹拌機を備えたフラスコに、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル) 7質量部、ジエチレングリコールジメチルエーテル 200質量部を仕込んだ。引き続きメタクリル酸 43質量部、シクロヘキシルメタクリレート 24質量部を仕込み窒素置換した後、ゆるやかに撹拌を始めた。溶液の温度を70℃に上昇させ、この温度を5時間保持し共重合体を得た。得られた共重合体溶液を室温に戻した後、グリシジルメタクリレート 33質量部及びトリフェニルホスフィン 1.6質量部を仕込み、100℃に加熱して撹拌し、反応溶液の酸価が0.5mgKOH/g以下になるまで反応させた。得られた重合体の質量平均分子量をGPC[HJC−8020〔東ソー株式会社製〕を用いて測定したところ、ポリスチレン換算で24,000であった。また、固形分酸価を測定したところ、196.1mgKOH/gであった。
【0053】
〔実施例1〕
窒素導入管を備えた反応フラスコに、製造例1で得たアルカリ水溶液可溶性樹脂I 100質量部、ジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート 300質量部を投入し、60℃で3時間撹拌して溶解させた。次に反応液を室温まで冷却し、重合性多官能化合物としてKAYARAD−DPHA(日本化薬株式会社製)を120質量部、光重合開始剤としてI−369(チバスペシャリティーケミカルズ株式会社製)を10質量部添加し、絶縁粒子としてオルガノシリカゾル(IPA−ST−ZL)(粒子径70−100nm、屈折率1.45、誘電率3.8)を200質量部添加し、室温で撹拌して溶解させた。この溶液を孔径0.5μmのフィルターで濾過し、感光性樹脂組成物を調製した。
【0054】
〔実施例2〜3〕及び〔比較例1〜4〕
実施例1と同様の操作により、表1に示す組成を有する各感光性樹脂組成物を調製した。
【0055】
【表1】

【0056】
なお、ここで用いた原料は、以下の通りである。
2021P:セロキサイド2021P(デイセル化学工業株式会社製)
DPHA:ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(日本化薬株式会社製)
I−369:IRGACURE−369(チバスペシャリティーケミカル株式会社製)
SI−80L:サンエードSI−80L(三新化学工業株式会社製)
IPA−ST−ZL:(粒子径 70−100nm、日産化学工業株式会社製)
IPA−ST:(粒子径 10−20nm、日産化学工業株式会社製)
SO−E1:(粒子径 250nm、株式会社アドマテックス社製)
SO−E3:(粒子径 1000nm、株式会社アドマテックス社製)
【0057】
<特性の評価>
実施例1〜3及び比較例1〜4で調製した各感光性樹脂組成物について、以下に示す特性の評価を行った。その結果を表2にまとめて示す。
【0058】
(1)塗膜性
感光性樹脂組成物を、スピンコーターを用いてガラス基板上にコートし、90℃のベーク板上で2分間加熱して4μmの塗膜を作製した。各サンプルを露光処理し(i線(365nm)のみを透過させるフィルターを用いて、200mJ/cmの露光量)、続いてテトラメチルアンモニウムヒドロキシド(TMAH) 2.38質量%水溶液によってパドル現像を行い、純水にてリンスし、最後にスピン乾燥を行った。この塗膜を温風循環式乾燥機にセットし、100℃から0.5℃/minの速度で220℃まで昇温し、220℃で60分間保持した後、5℃/minの速度で室温まで冷却し、膜厚3μmの塗膜を得た。この塗膜を目視による表面状態の観察及び表面粗さ計(縦倍率500倍)による膜厚均一性評価を、下記の判定基準に従って行った。
【0059】
・表面荒れ:目視により平滑か否かを下記基準により評価した。
○:平滑
×:平滑でなく不均一な格子状の模様や波状の模様がある
・膜均一性:表面粗さ計により、膜厚を測定して得られた最大膜厚、最小膜厚及び平均膜厚を算出し、下記式よりばらつき率(%)を求めた。算出されたばらつき率を下記基準により評価した。
ばらつき率(%)={[(最大膜厚)−(最小膜厚)]/(平均膜厚)}×100
○:ばらつき率が10%以下
×:ばらつき率が10%超
【0060】
(2)硬化後の解像性及びパターンの断面形状
各感光性樹脂組成物を、スピンコーターを用いてガラス基板上にコートし、90℃のべーク板上で2分間加熱して4μmの塗膜を作製した。各サンプルを露光処理し(i線(365nm)のみを透過させるフィルターを用いて、200mJ/cmの露光量)、続いてテトラメチルアンモニウムヒドロキシド(TMAH) 2.38質量%水溶液によってパドル現像を行い、純水にてリンスし、最後にスピン乾燥を行った。この塗膜を温風循環式乾燥機にセットし、100℃から0.5℃/minの速度で220℃まで昇温し、220℃で60分間保持した後、5℃/minの速度で室温まで冷却し、膜厚3μmの塗膜を得た。得られたパターンを光学顕微鏡にて観察し、解像性を下記の判定基準に従って評価した。
・解像性
◎:10μm未満のL/S形成
○:10〜20μmのL/S形成
△:20〜40μm未満のL/S形成
×:40μm以上のL/S形成
【0061】
(3)透明性
各感光性樹脂組成物を、スピンコーターを用いてガラス基板上にコートし、90℃のべーク板上で2分間加熱して4μmの塗膜を作製した。各サンプルを露光処理し(i線(365nm)のみを透過させるフィルターを用いて、200mJ/cmの露光量)、続いてテトラメチルアンモニウムヒドロキシド(TMAH) 2.38質量%水溶液によってパドル現像を行い、純水にてリンスし、最後にスピン乾燥を行った。この塗膜を温風循環式乾燥機にセットし、100℃から0.5℃/minの速度で220℃まで昇温し、220℃で60分間保持した後、5℃/minの速度で室温まで冷却し、膜厚3μmの塗膜を得た。
得られた塗膜をUV−Vis分光光度計(UV−3150島津製作所製)にて300nm〜800nmにおける透過率の測定を行い、400nmでの透過率を求めた。ブランクとしては樹脂をコートしていないガラス基板を用いた。
【0062】
(4)ガラス基板及びITO膜、モリブデン膜との接着性
各感光性樹脂組成物を、スピンコーターを用いて各基板上にコートし、90℃のベーク板上で2分間加熱して4μmの塗膜を作製した。各サンプルを露光処理し(i線(365nm)のみを透過させるフィルターを用いて、200mJ/cmの露光量)、続いてテトラメチルアンモニウムヒドロキシド(TMAH) 2.38質量%水溶液によってパドル現像を行い、純水にてリンスし、最後にスピン乾燥を行った。この塗膜を温風循環式乾燥機にセットし、100℃から0.5℃/minの速度で220℃まで昇温し、220℃で60分間保持した後、5℃/minの速度で室温まで冷却し、膜厚3μmの塗膜を得た。
得られた塗膜表面をJIS K 5600に基づき1mm角×100個の碁盤目にカットし、セロハンテープを貼った後に引き剥がし、塗膜の接着性を、下記の判定基準に従って評価した。
○:剥離なし
×:剥離あり
【0063】
(5)耐熱性(透明性)
各感光性樹脂組成物を、スピンコーターを用いてガラス基板上にコートし、90℃のベーク板上で2分間加熱して4μmの塗膜を作製した。各サンプルを露光処理し(i線(365nm)のみを透過させるフィルターを用いて、200mJ/cmの露光量)、続いてテトラメチルアンモニウムヒドロキシド(TMAH) 2.38質量%水溶液によってパドル現像を行い、純水にてリンスし、最後にスピン乾燥を行った。この塗膜を温風循環式乾燥機にセットし、100℃から0.5℃/minの速度で220℃まで昇温し、220℃で60分間保持した後、5℃/minの速度で室温まで冷却し、膜厚3μmの塗膜を得た。
【0064】
得られた塗膜を250℃で3時間処理しUV−Vis分光光度計(UV−3150島津製作所製)にて300nm〜800nmにおける透過率の測定を行い、400nmでの透過率を求めた。ブランクとしては樹脂をコートしていないガラス基板を用いた。
【0065】
(6)耐熱性(各種基板との接着性)
各感光性樹脂組成物を、スピンコーターを用いてガラス基板上にコートし、90℃のベーク板上で2分間加熱して4μmの塗膜を作製した。各サンプルを露光処理し(i線(365nm)のみを透過させるフィルターを用いて、200mJ/cmの露光量)、続いてテトラメチルアンモニウムヒドロキシド(TMAH) 2.38質量%水溶液によってパドル現像を行い、純水にてリンスし、最後にスピン乾燥を行った。この塗膜を温風循環式乾燥機にセットし、100℃から0.5℃/minの速度で220℃まで昇温し、220℃で60分間保持した後、5℃/minの速度で室温まで冷却し、膜厚3μmの塗膜を得た。
【0066】
得られた塗膜を250℃で3時間処理し表面を1mm角×100個の碁盤目にカットし、セロハンテープを貼った後に引き剥がし、塗膜の接着性を、下記の判定基準に従って評価した。
○:剥離なし
×:剥離あり
【0067】
(7)微小硬度
各感光性樹脂組成物を、スピンコーターを用いてガラス基板上にコートし、90℃のベーク板上で2分間加熱して4μmの塗膜を作製した。各サンプルを露光処理し(i線(365nm)のみを透過させるフィルターを用いて、200mJ/cmの露光量)、続いてテトラメチルアンモニウムヒドロキシド(TMAH) 2.38質量%水溶液によってパドル現像を行い、純水にてリンスし、最後にスピン乾燥を行った。この塗膜を温風循環式乾燥機にセットし、100℃から0.5℃/minの速度で220℃まで昇温し、220℃で60分間保持した後、5℃/minの速度で室温まで冷却し、膜厚3μmの塗膜を得た。
【0068】
測定装置、測定条件は下記に示した通りで行った。
測定装置:島津ダイナミック超微小硬度計DUH−W201[株式会社 島津製作所製]
測定方法:測定用試料を装置にセットし、115° 三角圧子により、0.142mN/secの一定速度で硬化膜に荷重を加え、最大荷重が5mNで測定を行い、硬化膜のダイナミック硬さを測定した。ダイナミック硬さは下記式により求めた。
ダイナミック硬さ=α×P/D
α=3.8584(三角圧子係数)
P=5(試験力)
=押し込み深さ(μm)
【0069】
【表2】

【0070】
以上の結果から、本発明の感光性樹脂組成物が、高感度で高解像性を有し、さらに、透明性、耐熱性、接着性に優れた感光性樹脂組成物であることがわかった。このような特性を有する感光性樹脂組成物により形成される樹脂膜は、タッチパネル用の透明絶縁膜を形成するのに適したものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)アルカリ水溶液可溶性樹脂、(B)重合性多官能化合物、(C)光重合開始剤、(D)絶縁粒子、及び(E)溶剤を含む透明絶縁保護膜形成用ネガ型感光性樹脂組成物であって、
前記(D)絶縁粒子の粒子径が10nm〜200nmであることを特徴とする透明絶縁膜形成用感光性樹脂組成物。
【請求項2】
前記(A)アルカリ水溶液可溶性樹脂を100質量部としたとき、前記(B)重合性多官能化合物を50〜250質量部、前記(C)光重合開始剤を1〜20質量部、前記(D)絶縁粒子を50〜300質量部含んでなることを特徴とする請求項1記載の透明絶縁膜形成用感光性樹脂組成物。
【請求項3】
前記(A)アルカリ水溶液可溶性樹脂が、(a1)エチレン性不飽和結合を有するカルボン酸及び/又はエチレン性不飽和結合を有するカルボン酸無水物と(a2)その他のエチレン性不飽和結合を有する不飽和化合物との共重合体の一部を、(a3)エチレン性不飽和結合を有するエポキシ化合物と反応させて得られた樹脂であることを特徴とする請求項1又は2記載の透明絶縁膜形成用感光性樹脂組成物。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか1項記載の透明絶縁膜形成用感光性樹脂組成物を用いて形成されたことを特徴とする透明絶縁膜。
【請求項5】
ガラス基板上に膜厚3μmで成膜されたとき、波長400nmの光の透過率が97%以上であることを特徴とする請求項4記載の透明絶縁膜。
【請求項6】
ガラス基板上に膜厚3μmで成膜されたとき、250℃で3時間加熱処理した後における波長400nmの光の透過率が92%以上であることを特徴とする請求項4又は5記載の透明絶縁膜。
【請求項7】
ガラス、ITO、Mo、Al、Ag、Au又はCuからなる基板上に膜厚3μmで成膜されたとき、250℃で3時間加熱処理した後におけるJIS K5600に基づく接着性試験で剥離が無いことを特徴とする請求項4乃至6のいずれか1項記載の透明絶縁膜。
【請求項8】
ガラス基板上に膜厚3μmで成膜されたとき、ダイナミック超微小硬度計により115°三角圧子により、0.142mN/sの一定速度で硬化膜に荷重を加え、最大荷重が5mNの条件で測定した樹脂のダイナミック硬さが50以上であることを特徴とする請求項4乃至7のいずれか1項記載の透明絶縁膜。

【公開番号】特開2012−53180(P2012−53180A)
【公開日】平成24年3月15日(2012.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−194340(P2010−194340)
【出願日】平成22年8月31日(2010.8.31)
【出願人】(390022415)京セラケミカル株式会社 (424)
【Fターム(参考)】