説明

透明複合シート、積層シート及び液晶表示素子

【課題】ガラスクロスを複合化させることにより熱膨張係数が低いだけでなく、ガラスクロスの繊維形状を反映した凹凸が表面に生じ難い透明複合シートを得る。
【解決手段】本発明に係る透明複合シート1は、対向する第1,第2の面1a,1bを有する。本発明に係る透明複合シート1は、透明樹脂硬化物と、該透明樹脂硬化物中に埋め込まれたガラスクロスとを含有する。本発明に係る透明複合シート1では、該シート表面のガラスクロスの経糸もしくは緯糸の周期と一致した表面凹凸の振幅が、第1の面1aで0.5〜5μmであり、第2の面1bで0.4μm以下である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば表示素子用基板などの透明性が要求される用途に用いられる透明複合シートに関し、より詳細には、透明樹脂硬化物と、該透明樹脂硬化物中に埋め込まれたガラスクロスとを含有する透明複合シート、並びに該透明複合シートを用いた積層シート及び液晶表示素子に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示素子又は有機EL表示素子等の表示素子用基板、並びに太陽電池用基板等に、ガラス基板が広く用いられている。ガラス基板は、割れやすく、曲げ性が低く、更に軽量化できないという問題がある。このため、近年、ガラス基板の代わりに、プラスチック基板を用いることが検討されている。
【0003】
しかしながら、従来のプラスチック基板の熱膨張係数は、ガラスの熱膨張係数に比べて、10〜20倍程度大きいことがある。表示素子及び太陽電池では、半導体層又は導電層が無機材料で構成されていることが多い。従って、熱膨張係数が大きいプラスチック基板を用いて表示素子又は太陽電池を製造すると、半導体層又は導電層などを形成するための加熱及び冷却プロセスにおいて、プラスチック基板と上記無機材料層との熱膨張係数の差により、該無機材料層にクラックが生じることがある。さらに、熱膨張係数が大きいプラスチック基板を用いて表示素子を製造すると、製造工程における温度ばらつきによってプラスチック基板の寸法が大きく変化する。そのため、フォトリソグラフプロセスにおけるマスクアライメントが困難になることがある。
【0004】
熱膨張係数を低くするために、例えば、下記の特許文献1には、ガラスクロスに樹脂組成物を塗布し、含浸させ、乾燥することにより得られたプラスチック基板が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−151291号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載のプラスチック基板では、ガラスクロスに樹脂組成物を含浸させ、乾燥することにより樹脂組成物を硬化させる際に、樹脂組成物の硬化収縮によって、プラスチック基板の表面にガラスクロスの繊維形状を反映した凹凸が生じやすい。このため、プラスチック基板を通して視認される透過像に、歪みが生じるという問題がある。
【0007】
また、プラスチック基板の表面にガラスクロスの繊維形状を反映した凹凸が生じると、このプラスチック基板を液晶表示素子用基板として使用した際に、液晶封入層の厚みが不均一となる。その結果、表示画像にムラを生じて、いわゆるセルギャップムラが生じる。
【0008】
本発明の目的は、ガラスクロスを複合化させることにより熱膨張係数を低くすることができるだけでなく、ガラスクロスの繊維形状を反映した凹凸を表面に生じ難くすることができる透明複合シート、並びに該透明複合シートを用いた積層シート及び液晶表示素子を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る透明複合シートは、対向する第1,第2の面を有する。本発明に係る透明複合シートは、透明樹脂硬化物と、該透明樹脂硬化物中に埋め込まれたガラスクロスとを含有し、シート表面のガラスクロスの経糸もしくは緯糸の周期と一致した表面凹凸の振幅が、上記第1の面で0.5〜5μmであり、上記第2の面で0.4μm以下である。
【0010】
本発明のある特定の局面で提供される積層シートは、本発明の透明複合シートと、該透明複合シートの上記第1の面に積層された偏光板と、該偏光板を上記透明複合シートに貼り合わせるように上記偏光板と上記透明複合シートの上記第1の面との間に配置された粘着剤層とを備える。
【0011】
本発明に係る液晶表示素子は、第1の基板と、該第1の基板にギャップを隔てて対向された第2の基板と、上記第1及び第2の基板間に配置された液晶層とを備える。上記第1及び第2の基板の少なくとも一方が、上記透明複合シートと、該透明複合シートの上記第1の面に積層された偏光板と、該偏光板を上記透明複合シートに貼り合わせるように上記透明複合シートの第1の面と上記偏光板との間に設けられた粘着剤層とを備える積層シートである。
【0012】
本発明に係る透明複合シートの製造方法は、硬化後に透明性を有する硬化性透明樹脂が含浸されているガラスクロスを用意する工程と、金属、ガラス及びセラミックスからなる群から選択された少なくとも一種の材料を有し、かつ平坦面を有する剛体と、平坦面を有し、かつ上記剛体よりも柔軟な柔軟体との間に、上記硬化性透明樹脂が含浸されているガラスクロスを挟み込み、加熱及び光線の照射の内の少なくとも一方により上記硬化性透明樹脂を硬化する工程とを備える。上記柔軟体として、好ましくは、樹脂フィルムが用いられる。上記硬化性透明樹脂を硬化する工程において、上記硬化性透明樹脂に光線を照射するとともに、該硬化性透明樹脂を加熱することが好ましい。
【発明の効果】
【0013】
本発明の透明複合シートでは、透明樹脂硬化物中にガラスクロスが埋め込まれているため熱膨張係数を低くし得る。さらに、本発明の透明複合シートでは、ガラスクロスの繊維形状を反映した表面の凹凸の振幅が第1の面で0.5〜5μmであり、第2の面で0.4μm以下であるため、第2の面において第1の面に対して平坦性が高められている。従来のガラスクロスが埋め込まれた透明複合シートでは、ガラスクロスの繊維形状を反映して、表面の凹凸は、0.5μm以上と大きかったのに対し、本発明の透明複合シートでは、第2の面の平坦性が効果的に高められている。従って、第2の面を例えば液晶表示素子の液晶層側に位置するように透明複合シートを液晶表示素子の液晶素子用基板として用いた場合、セルギャップのばらつきを小さくすることができる。
【0014】
また、本発明の積層シートのように、ガラスクロスの繊維形状を反映した表面凹凸の振幅が0.5〜5μmと相対的に大きい第1の面側に、粘着剤層を介して偏光板を貼り合わせることにより、粘着剤層で上記表面の凹凸を埋めることができる。従って、透明複合シートを用いた積層シートである基板を通して視認される透過像の歪みを低減することができる。
【0015】
よって、液晶を封止する第1及び第2の基板を有する液晶表示素子の第1及び第2の基板の少なくとも一方に本発明に係る透明複合シートを有する積層シートを用いることにより、液晶表示素子の表示品質を高めることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】図1は、本発明の一実施形態に係る透明複合シートを模式的に示す部分切欠断面図である。
【図2】図2は、図1に示す透明複合シートを用いた積層シートを模式的に示す部分切欠断面図である。
【図3】図3は、図1に示す透明複合シートの使用例を模式的に示す部分切欠断面図である。
【図4】図4は、図1に示す透明複合シートを用いた液晶表示素子を示す部分切欠断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0018】
本発明者らは、透明樹脂硬化物にガラスクロスが埋め込まれている透明複合シートを用いた表示素子における透視像の歪みを低減するために、鋭意検討した。その結果、ガラスクロスに透明樹脂を含浸させて硬化する際に、一方の面を金属又はガラスのような剛体に接触させ、もう一方の面を樹脂フィルムのような柔軟体に接触させるように挟み込んだ状態で硬化することにより、剛体に接触されている一方の面において表面の凹凸を効果的に小さくし得ることを見出した。この凹凸が相対的に小さい面を第2の面とし、第2の面とは反対側の面を第1の面とする。
【0019】
前述した通り、従来のガラスクロスに透明樹脂を含浸させた透明複合シートでは、ガラスクロスの繊維形状が反映する凹凸が表面に生じることとなる。これに対して、上記のように剛体の平坦面に接触されている状態で、透明樹脂を含浸させたガラスクロスの透明樹脂を硬化した場合、上記第2の面では、剛体の平坦面は、剛体であるため硬化収縮による応力を受け難い。従って、剛体の平坦面に接触する第2の面は、従来の透明複合シートの表面よりも平坦となる。
【0020】
一方で、第1の面は、剛体よりも柔らかい部材の平坦面に接触しているため、硬化収縮に際しての応力の影響を受け、第2の面よりも大きな凹凸を有することとなる。しかしながら、透明複合シートを例えば表示素子の基板として用いる場合、第2の面の平坦性が高められれば、第1の面側における凹凸については、粘着剤層の一部を埋め込むことなどにより、透光性を確保することができる。
【0021】
すなわち、本発明の特徴は、対向する第1,第2の面を有する透明複合シートであって、該透明複合シートが、透明樹脂硬化物と、該透明樹脂硬化物中に埋め込まれたガラスクロスとを含有し、ガラスクロスの繊維形状を反映した表面凹凸の振幅が、第1の面では0.5〜5μmと相対的に大きいが、第2の面において0.4μm以下と非常に小さいことにある。そのため、使用する際に、第1の面の凹凸に粘着剤などを積層することにより、透明複合シートを表示素子の光が透過する基板として用いた場合、透視像の歪みを確実に軽減することができる。
【0022】
以下、本発明に係る透明複合シートを得るのに用いられる各成分の詳細及び透明複合シートの製造方法を説明する。
【0023】
(透明樹脂硬化物(A))
本発明に係る透明複合シート(A)に用いられる透明樹脂硬化物は、透明性を有する樹脂硬化物であれば特に限定されない。このような透明性を有する硬化物を与える透明樹脂(a)としては、ポリエステル樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリ(メタ)アクリル樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂、(メタ)アクリル樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ビニルエステル樹脂、ポリイミド樹脂、メラミン樹脂、及びユリア樹脂等が挙げられる。上記透明樹脂(a)は、1種のみが用いられてもよく、2種以上併用されてもよい。
【0024】
本明細書において、上記(メタ)アクリルは、アクリル及びメタクリルを総称しており、アクリルでもよくメタクリルでもよいことを示す。同様に、(メタ)アクリレートは、アクリレートでもよく、メタクリレートであってもよいことを示す。(メタ)アクリロイルは、アクリロイルとメタクリロイルとを示す。
【0025】
透明樹脂(a)は、硬化性透明樹脂である。透明樹脂(a)は、硬化前に室温(25℃)で液状の硬化性樹脂であることが好ましい。室温(25℃)で液状であれば、室温にてガラスクロスに容易に含浸させることができる。
【0026】
上記透明樹脂(a)としては、上記の硬化前に室温(25℃)で液状の硬化性樹脂を得やすいことから、(メタ)アクリル樹脂、エポキシ樹脂及びアリル樹脂からなる群から選択された少なくとも一種であることが好ましい。特に、耐熱性及び透明性の双方を高め得るので、シルセスキオキサン骨格を有する透明樹脂が望ましい。
【0027】
硬化前に室温で液状の硬化性樹脂である上記(メタ)アクリル樹脂としては、(メタ)アクリルオリゴマーが挙げられる。上記(メタ)アクリル樹脂は、加熱及び活性光線の照射の内の少なくとも一方により架橋し、硬化する。上記(メタ)アクリル樹脂の硬化物は、可視光線に対して、高い透過性を有する。上記(メタ)アクリル樹脂は、TFT素子又はカラーフィルターを形成できるような耐熱性を高める架橋構造を得るため、2つ以上の(メタ)アクリロイル基を有することが好ましい。
【0028】
上記(メタ)アクリル樹脂は、脂環構造を有する(メタ)アクリレート又はトリアジン環構造を有する(メタ)アクリレートであることがより好ましい。上記脂環構造を有する(メタ)アクリレートは、ノルボルナンジメチロールジ(メタ)アクリレート又はジシクロペンタジエンジメタノールジ(メタ)アクリレートであることが好ましい。上記トリアジン環構造を有する(メタ)アクリレートは、イソシアヌル酸トリス(2−アクリロイルオキシエチル)又はε−カプロラクトン変性イソシアヌル酸トリス(2−アクリロイルオキシエチル)であることが好ましい。これらの好ましい(メタ)アクリレート樹脂の使用により、透明複合シートの透明性及び耐熱性をより一層高めることができる。
【0029】
透明樹脂(a)を硬化させる方法としては、加熱する方法、活性光線を照射する方法、並びに加熱と活性エネルギー線の照射との双方を用いる方法が挙げられる。透明樹脂(a)は、加熱及び活性光線の照射の内の少なくとも一方により硬化する樹脂であることが好ましい。
【0030】
透明樹脂(a)が(メタ)アクリル樹脂である場合には、活性光線を照射する方法が好ましい。硬化反応を確実に完結させ、かつ透明複合シートの製造効率を高める観点からは、透明樹脂(a)に活性光線を照射するとともに、該透明樹脂(a)を加熱することが好ましい。すなわち、透明樹脂(a)が加熱された状態で、加熱された透明樹脂(a)に活性光線を照射することが好ましい。なお、活性光線のみで硬化させた後、さらに加熱することによっても、硬化反応をより一層確実に完結させることができる。
【0031】
透明な樹脂においても重合活性化が容易で、高エネルギーによる速やかな反応が可能であり、照射線源としても汎用されておりかつ遮蔽が容易であるので、上記活性光線は、紫外線であることが好ましい。該紫外線を照射するための光源としては、例えば、メタルハライドランプ及び高圧水銀灯ランプ等が挙げられる。
【0032】
透明樹脂(a)を活性光線の照射により架橋し、硬化させるために、上記透明樹脂(a)と光重合開始剤とを含有する透明樹脂組成物を用いることが好ましい。以下、透明樹脂(a)と光重合開始剤などの他の成分とを含む組成物を透明樹脂組成物とする。透明樹脂(a)が上記(メタ)アクリル樹脂である場合には、光重合開始剤として、ラジカルを発生する光重合開始剤が好適に用いられる。
【0033】
上記光重合開始剤は特に限定されないが、例えば、ベンゾフェノン、N,N’−テトラエチル−4,4’−ジアミノベンゾフェノン、4−メトキシ−4’−ジメチルアミノベンゾフェノン、2,2−ジエトキシアセトフェノン、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、ベンジルジメチルケタール、α−ヒドロキシイソブチルフェノン、チオキサントン、2−クロロチオキサントン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルホリノプロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン−1、2−ジメチルアミノ−2−(4−メチル−ベンジル)−1−(4−モルフォリン−4−イル−フェニル)−ブタン−1−オン、2,6−ジメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド、t−ブチルアントラキノン、1−クロロアントラキノン、2,3−ジクロロアントラキノン、3−クロロ−2−メチルアントラキノン、2−エチルアントラキノン、1,4−ナフトキノン、9,10−フェナントラキノン、1,2−ベンゾアントラキノン、1,4−ジメチルアントラキノン、2−フェニルアントラキノン、2−(o−クロロフェニル)−4,5−ジフェニルイミダゾール2量体、2−メルカプトベンゾチアゾール、2−メルカプトベンゾオキサゾール、及び4−(p−メトキシフェニル)−2,6−ジ−(トリクロロメチル)−s−トリアジン等が挙げられる。上記光重合開始剤は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0034】
透明樹脂(a)100重量部に対して、上記光重合開始剤の含有量の好ましい下限は0.01重量部、より好ましい下限は0.1重量部、好ましい上限は2重量部、より好ましい上限は1重量部である。上記光重合開始剤の含有量が多いほど、透明樹脂(a)の硬化が確実にかつ速やかに進行する。特に、上記光重合開始剤の含有量が上記好ましい下限値より多いと、透明樹脂を充分に硬化させることができる。上記光重合開始剤の含有量が上記好ましい上限値以上であると、硬化反応が急激に進行し、更に硬化時の割れ及び透明樹脂硬化物の着色等の問題が生じやすくなる。
【0035】
加熱及び活性光線の照射の内の少なくとも一方により、透明樹脂(a)を架橋し、硬化させた後に、さらに高温で熱処理を行ってもよい。熱処理により、架橋反応をさらに進行させ、透明複合シートの耐薬品性等を改善し、線膨張係数等の特性を安定にすることができる。上記熱処理の条件は、窒素雰囲気下又は真空状態で、150〜250℃の温度及び1〜24時間の条件であることが好ましい。
【0036】
透明樹脂(a)としてエポキシ樹脂を用いてもよい。該エポキシ樹脂としては、例えば従来公知のエポキシ樹脂を使用できる。エポキシ樹脂は特に限定されない。上記エポキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノールA型、ビスフェノールF型又はビスフェノールS型などのエポキシ樹脂、フェノールノボラック型又はクレゾールノボラック型などのノボラック型エポキシ樹脂、トリグリシジルイソシアヌレート型又はヒダントイン型などの含窒素環型エポキシ樹脂、脂環式型エポキシ樹脂、脂肪族型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、グリシジルエーテル型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型などのジシクロ型エポキシ樹脂、エステル型エポキシ樹脂、並びにエーテルエステル型エポキシ樹脂等が挙げられる。これらのエポキシ樹脂の変性物を用いてもよい。透明複合シートの変色を防止する観点からは、上記エポキシ樹脂は、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、トリグリシジルイソシアヌレート型エポキシ樹脂及びジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂からなる群から選択された少なくとも一種であることが好ましい。また、耐熱性及び透明性の双方を高め得ることから、シルセスキオキサン骨格を有するエポキシ樹脂を用いてもよい。上記エポキシ樹脂は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0037】
透明樹脂(a)を硬化させるために、上記透明樹脂組成物は、硬化剤を含有していてもよい。特に透明樹脂(a)がエポキシ樹脂である場合に、上記透明樹脂組成物は、硬化剤を含有することが好ましい。上記硬化剤としては、特に限定されないが、有機酸化合物、アミン化合物及び酸無水物化合物などが挙げられる。硬化剤は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。上記透明樹脂組成物は、光重合開始剤及び硬化剤の内の少なくとも一種を含有することが好ましい。
【0038】
上記有機酸化合物としては、テトラヒドロフタル酸、メチルテトラヒドロフタル酸、ヘキサヒドロフタル酸及びメチルヘキサヒドロフタル酸等が挙げられる。上記アミン化合物としては、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、メタフェニレンジアミン、ジアミンジフェニルメタン及びジアミノジフェニルスルホン酸等が挙げられる。これらのアミン化合物のアミンアダクトを用いてもよい。
【0039】
また、他の硬化剤としては、例えば、アミド化合物、ヒドラジド化合物、イミダゾール化合物、イミダゾリン化合物、フェノール化合物、ユリア化合物及びポリスルフィッド化合物等が挙げられる。
【0040】
上記アミド化合物としては、ジシアンジアミド及びポリアミド等が挙げられる。上記ヒドラジド化合物としては、ジヒドラジット等が挙げられる。上記イミダゾール化合物としては、メチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、エチルジイミダゾール、イソプロピルイミダゾール、2,4−ジメチルイミダゾール、フェニルイミダゾール、ウンデシルイミダゾール、ヘプタデシルイミダゾール及び2−フェニル−4−メチルイミダゾール等が挙げられる。上記イミダゾリン化合物としては、メチルイミダゾリン、2−エチル−4−メチルイミダゾリン、エチルイミダゾリン、イソプロピルイミダゾリン、2,4−ジメチルイミダゾリン、フェニルイミダゾリン、ウンデシルイミダゾリン、ヘプタデシルイミダゾリン及び2−フェニル−4−メチルイミダゾリン等が挙げられる。
【0041】
上記硬化剤として、酸無水物化合物も使用できる。該酸無水物化合物の使用により、透明複合シートの変色をより一層防止できる。上記酸無水物化合物としては、無水フタル酸、無水マレイン酸、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸、無水ナジック酸、無水グルタル酸、テトラヒドロフタル酸無水物、メチルテトラヒドロフタル酸無水物、ヘキサヒドロフタル酸無水物、メチルテトラヒドロフタル酸無水物、ヘキサヒドロフタル酸無水物、メチルヘキサヒドロフタル酸無水物、メチルナジック酸無水物、ドデセニルコハク酸無水物、ジクロロコハク酸無水物、ベンゾフェノンテトラカルボン酸無水物及びクロレンディック酸無水物等が挙げられる。
【0042】
上記エポキシ樹脂と上記酸無水物化合物とを併用する場合、エポキシ樹脂と硬化剤との含有量は特に制限されない。エポキシ樹脂のエポキシ基1当量に対して、酸無水物化合物の酸無水物の当量の好ましい下限は0.5当量、より好ましい下限は0.7当量、好ましい上限は1.5当量、より好ましい上限は1.2当量である。上記硬化剤の当量が上記好ましい下限より多いと、透明複合シートの着色を充分に抑制できる。上記硬化剤の当量が上記好ましい上限より少ないと、透明複合シートの耐湿性が良好になる。
【0043】
上記透明樹脂組成物は、硬化促進剤を含有していてもよい。該硬化促進剤は特に限定されない。上記硬化促進剤としては、例えば、第三級アミン、イミダゾール化合物、第四級アンモニウム塩、第四級ホスホニウム塩、有機金属塩、リン化合物及び尿素化合物等が挙げられる。上記硬化促進剤は、第三級アミン、イミダゾール化合物及び第四級ホスホニウム塩からなる群から選択された少なくとも一種であることが好ましい。上記硬化促進剤は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0044】
上記硬化促進剤の含有量は特に制限されない。透明樹脂(a)100重量部に対して、上記硬化促進剤の含有量の好ましい下限は0.05重量部、より好ましい下限は0.2重量部、好ましい上限は7.0重量部、より好ましい上限は3.0重量部である。上記硬化促進剤の含有量が上記好ましい下限より多いと、透明樹脂組成物を充分に硬化させることができる。上記硬化促進剤の含有量が上記好ましい上限より少ないと、透明複合シートの着色をより一層抑制できる。
【0045】
透明樹脂(a)として、シルセスキオキサン骨格を有するチオール基含有化合物である硬化性樹脂を用いてもよい。
【0046】
上記シルセスキオキサン骨格を有するチオール基含有化合物は、下記式(1)で表されるチオール基含有シラン化合物の加水分解縮合物(以下、加水分解縮合物(a1)ともいう)である。シルセスキオキサン骨格を有するチオール基含有化合物である硬化性樹脂を使用することにより、透明樹脂硬化物(A)の透明性及び耐熱性をより一層高めることができる。
R1Si(OR2) ・・・式(1)
【0047】
上記式(1)中、R1は、チオール基を有しかつ芳香環を有さない炭素数1〜8の有機基、又はチオール基を有しかつ芳香環を有する有機基を表し、R2は、水素原子、芳香環を有さない炭素数1〜8の有機基、又は芳香環を有する有機基を表す。
【0048】
上記R1としては、具体的には、チオール基を有する炭素数1〜8の脂肪族炭化水素基、チオール基を有する炭素数1〜8の脂環式炭化水素基、又はチオール基を有する芳香族炭化水素基等が挙げられる。上記R2としては、具体的には、水素原子、炭素数1〜8の脂肪族炭化水素基、炭素数1〜8の脂環式炭化水素基、及び芳香族炭化水素基等が挙げられる。チオール基を有する場合の「炭化水素基」は、炭素原子と水素原子とだけでなく、チオール基に由来する硫黄原子も含む基である。複数の上記R2は同一であってもよく、異なっていてもよい。
【0049】
上記式(1)で表されるチオール基含有シラン化合物を含有する成分(以下、成分(a11)ともいう)を加水分解及び縮合させることにより、加水分解縮合物(a1)を得ることができる。すなわち、加水分解反応及び縮合反応により、加水分解縮合物(a1)を得ることができる。
【0050】
上記式(1)で表されるチオール基含有シラン化合物としては、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリプロポキシシラン、3−メルカプトプロピルトリブトキシシラン、1,4−ジメルカプト−2−(トリメトキシシリル)ブタン、1,4−ジメルカプト−2−(トリエトキシシリル)ブタン、1,4−ジメルカプト−2−(トリプロポキシシリル)ブタン、1,4−ジメルカプト−2−(トリブトキシシリル)ブタン、2−メルカプトメチル−3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、2−メルカプトメチル−3−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、2−メルカプトメチル−3−メルカプトプロピルトリプロポキシシラン、2−メルカプトメチル−3−メルカプトプロピルトリブトキシシラン、1,2−ジメルカプトエチルトリメトキシシラン、1,2−ジメルカプトエチルトリエトキシシラン、1,2−ジメルカプトエチルトリプロポキシシラン、及び1,2−ジメルカプトエチルトリブトキシシラン等が挙げられる。なかでも、加水分解反応の反応性が高く、かつ入手が容易であるため、3−メルカプトプロピルトリメトキシシランが好ましい。上記式(1)で表されるチオール基含有シラン化合物は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0051】
加水分解縮合物(a1)を得る際に、上記式(1)で表されるチオール基含有シラン化合物は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。さらに、加水分解縮合物(a1)を得る際に、上記チオール基含有シラン化合物以外の架橋性化合物を用いてもよい。加水分解縮合物(a1)には、上記チオール基含有シラン化合物のみを用いたものだけでなく、上記チオール基含有シラン化合物と、該チオール基含有シラン化合物以外の架橋性化合物とを用いたものも含まれる。上記成分(a11)には、上記式(1)で表されるチオール基含有シラン化合物と、必要に応じて用いられる上記架橋性化合物とが含まれる。
【0052】
透明樹脂(a)は、加水分解縮合物(a1)に加えて、エポキシ基を有する化合物(以下、エポキシ化合物(a2)ともいう)及びイソシアネート基を有する化合物(以下、イソシアネート化合物(a3)ともいう)の内の少なくとも一種をさらに含むことが好ましい。この場合には、加熱により透明樹脂(a)を効率的に架橋させ、硬化させることができる。
【0053】
エポキシ化合物(a2)としては、特に限定されないが、例えばフェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂、水添ビスフェノールF型エポキシ樹脂、スチルベン型エポキシ樹脂、トリアジン骨格含有エポキシ樹脂、フルオレン骨格含有エポキシ樹脂、線状脂肪族エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、トリフェノールフェノールメタン型エポキシ樹脂、アルキル変性トリフェノールメタン型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン骨格含有エポキシ樹脂、ナフタレン骨格含有エポキシ樹脂及びアリールアルキレン型エポキシ樹脂等が挙げられる。エポキシ化合物(a2)は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0054】
エポキシ化合物(a2)は、ビスフェノールA型エポキシ樹脂(三菱化学社製の商品名「エピコート828」など)、ビスフェノールF型エポキシ樹脂(三菱化学社製の商品名「エピコート807」など)、水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂(東都化成社製の商品名「サントートST−3000」など)、又は脂環式エポキシ樹脂(ダイセル化学工業社製の商品名「セロキサイド2021」など)であることが好ましい。これらの好ましいエポキシ化合物(a2)の使用により、透明樹脂硬化物(A)の透明性及び耐熱性をより一層高めることができる。
【0055】
上記エポキシ化合物(a2)の分子量は高い方が好ましい。高分子量のエポキシ化合物(a2)の使用により、透明樹脂硬化物(A)の可撓性が高くなる。高分子量のエポキシ化合物(a2)としては、エポキシ当量が2000g/当量以上のエポキシ樹脂(三菱化学社製の商品名「エピコート1010」及び「エピコート4007P」など)、エポキシ変性シリコーン樹脂(信越化学工業社製の商品名「X−22−163A」など)、並びにポリエチレングリコールジグリシジルエーテル等が挙げられる。なかでも、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテルが好ましい。
【0056】
イソシアネート化合物(a3)は特に限定されないが、例えば、芳香族ジイソシアネート、脂肪族ジイソシアネート及び脂環族ジイソシアネート等が挙げられる。イソシアネート化合物(a3)としては、具体的には、1,5−ナフチレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルジメチルメタンジイソシアネート、4,4’−ジベンジルイソシアネート、ジアルキルジフェニルメタンジイソシアネート、テトラアルキルジフェニルメタンジイソシアネート、1,3−フェニレンジイソシアネート、1,4−フェニレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、ブタン−1,4−ジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソプロピレンジイソシアネート、メチレンジイソシアネート、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、シクロヘキサン−1,4−ジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、水素化キシリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタン−4,4’−ジイソシアネート、1,3−ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン、メチルシクロヘキサンジイソシアネート、及びm−テトラメチルキシリレンジイソシアネート、並びにダイマー酸のカルボキシル基をイソシアネート基に転化したダイマージイソシアネート等が挙げられる。イソシアネート化合物(a3)は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0057】
透明樹脂硬化物(A)の透明性及び耐熱性を高める観点からは、イソシアネート化合物(a3)は、イソホロンジイソシアネートであることが好ましい。
【0058】
イソシアネート化合物(a3)の分子量は高い方が好ましい。高分子量のイソシアネート化合物(a3)の使用により、透明樹脂硬化物(A)の可撓性が高くなる。高分子量のイソシアネート化合物(a3)としては、ポリオールのジイソシアネート変性物、及びポリメリックMDI(三井武田ケミカル社製の商品名「コスモネートM」など)等が挙げられる。上記ポリオールとしては、ポリカーボネートジオール及びポリエステルジオール等が挙げられる。
【0059】
加熱による透明樹脂(a)の硬化反応を促進するために、エポキシ化合物(a2)と触媒とを併用してもよい。エポキシ化合物(a2)と併用される触媒としては、例えば、三級アミン、イミダゾール化合物、有機ホスフィン及びテトラフェニルボロン塩等が挙げられる。
【0060】
上記三級アミンとしては、1,8−ジアザ−ビシクロ[5.4.0]ウンデセン−7、トリエチレンジアミン、ベンジルジメチルアミン、トリエタノールアミン、ジメチルアミノエタノール、トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール等が挙げられる。上記イミダゾール化合物としては、2−メチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、2−フェニル−4−メチルイミダゾール及び2−ヘプタデシルイミダゾール等が挙げられる。上記有機ホスフィンとしては、トリブチルホスフィン、メチルジフェニルホスフィン、トリフェニルホスフィン、ジフェニルホスフィン及びフェニルホスフィン等が挙げられる。上記テトラフェニルボロン塩としては、テトラフェニルホスホニウム テトラフェニルボレート、2−エチル−4−メチルイミダゾール テトラフェニルボレート、及びN−メチルモルホリン テトラフェニルボレート等が挙げられる。
【0061】
上記イソシアネート化合物(a3)と触媒とを併用することが好ましい。イソシアネート化合物(a3)と併用される触媒としては、有機スズ化合物及び三級アミン等が挙げられる。
【0062】
上記有機スズ化合物としては、ジブチルスズジラウレート及びオクチル酸スズ等が挙げられる。上記三級アミンとしては、1,8−ジアザ−ビシクロ[5.4.0]ウンデセン−7、トリエチレンジアミン、ベンジルジメチルアミン、トリエタノールアミン、ジメチルアミノエタノール、及びトリス(ジメチルアミノメチル)フェノール等が挙げられる。
【0063】
透明樹脂(a)100重量部に対して、上記エポキシ化合物(a2)及びイソシアネート化合物(a3)と併用される触媒の含有量は、0.01〜5重量部の範囲内であることが好ましい。
【0064】
透明樹脂(a)100重量%中、加水分解縮合物(a1)と、エポキシ化合物(a2)及びイソシアネート化合物(a3)の内の少なくとも一種との配合比は、用途に応じて適宜に決定できる。
【0065】
[加水分解縮合物(a1)に含まれるチオール基のモル数]/[エポキシ化合物(a2)に含まれるエポキシ基とイソシアネート化合物(a3)に含まれるイソシアネート基との合計のモル数](以下、モル比Cともいう)は、0.9〜1.1の範囲内であることが好ましい。上記モル比Cが0.9以上であると、硬化後にエポキシ基及びイソシアネート基が残存し難くなり、透明樹脂硬化物(A)の耐候性が高くなる。上記モル比が1.1以下であると、チオール基が残存し難くなり、チオール基の分解による悪臭が生じ難くなる。
【0066】
透明樹脂(a)は、加水分解縮合物(a1)に加えて、炭素−炭素二重結合を有する化合物(以下、不飽和化合物(a4)ともいう)をさらに含むことが好ましい。該不飽和化合物(a4)の使用により、加熱及び活性光線の照射により、透明樹脂組成物を硬化させることができる。
【0067】
不飽和化合物(a4)は特に限定されない。不飽和化合物(a4)の上記炭素−炭素二重結合としては、ビニル基、(メタ)アクリロイル基及びアリル基等が挙げられる。上記炭素−炭素二重結合は、加水分解縮合物(a1)のチオール基と反応(エン−チオール反応)する。この反応の反応機構は、重合開始剤の有無により異なる。このため、加水分解縮合物(a1)及び不飽和化合物(a4)は、最適な配合量に適宜調整される。
【0068】
上記重合開始剤が用いられない場合は、炭素−炭素二重結合1個に対して、チオール基1個が付加反応する。上記重合開始剤が用いられる場合は、炭素−炭素二重結合1個に対して、チオール基1個が付加反応することに加えて、連鎖的ラジカル反応が進行する。この結果、上記重合開始剤が用いられない場合は、加水分解縮合物(a1)に含まれるチオール基と不飽和化合物(a4)に含まれる炭素−炭素二重結合とは、1:1(モル比)で反応する。上記重合開始剤が用いられる場合には、加水分解縮合物(a1)に含まれるチオール基と、不飽和化合物(a4)に含まれる炭素−炭素二重結合とは、1:1(モル比)では反応しない。
【0069】
上記の観点から、重合開始剤が用いられない場合は、加水分解縮合物(a1)と不飽和化合物(a4)との配合比、すなわち[加水分解縮合物(a1)に含まれるチオール基のモル数]/[不飽和化合物(a4)に含まれる炭素−炭素二重結合のモル数](以下、モル比D1ともいう)は、0.9〜1.1の範囲内であることが好ましい。上記モル比D1は1.0であることがより好ましい。上記モル比D1が0.9以上であると、硬化後に炭素−炭素二重結合が残存し難くなり、透明樹脂硬化物(A)の耐候性が高くなる。上記モル比が1.1以下であると、チオール基が残存し難くなり、チオール基の分解による悪臭が生じ難くなる。
【0070】
重合開始剤が用いられる場合は、加水分解縮合物(a1)と不飽和化合物(a4)との配合比、すなわち[加水分解縮合物(a1)に含まれるチオール基のモル数]/[不飽和化合物(a4)に含まれる炭素−炭素二重結合のモル数](以下、モル比D2といもいう)は、0.01〜1.1の範囲内であることが好ましい。上記モル比D2が0.01以上であると、透明樹脂硬化物(A)の水蒸気バリア性をより一層高めることができる。さらに、硬化後に炭素−炭素二重結合が残存し難くなり、透明樹脂硬化物(A)の耐候性が高くなる。上記モル比D2が1.1以下であると、チオール基が残存し難くなり、チオール基の分解による悪臭が生じ難くなる。
【0071】
また、炭素−炭素二重結合を有する官能基とチオール基との反応より優先して、炭素−炭素二重結合を有する官能基同士が反応するのを抑制するために、不飽和化合物(a4)は、アリル基を有することが好ましい。
【0072】
アリル基を1つ有する化合物としては、けい皮酸、モノアリルシアヌレート、モノアリルイソシアヌレート、ペンタエリスリトールモノアリルエーテル、トリメチロールプロパンモノアリルエーテル、グリセリンモノアリルエーテル、ビスフェノールAモノアリルエーテル、ビスフェノールFモノアリルエーテル、エチレングリコールモノアリルエーテル、ジエチレングリコールモノアリルエーテル、トリエチレングリコールモノアリルエーテル、プロピレングリコールモノアリルエーテル、ジプロピレングリコールモノアリルエーテル、及びトリプロピレングリコールモノアリルエーテル等が挙げられる。
【0073】
アリル基を2つ有する化合物としては、ジアリルフタレート、ジアリルイソフタレート、ジアリルシアヌレート、ジアリルイソシアヌレート、ペンタエリスリトールジアリルエーテル、トリメチロールプロパンジアリルエーテル、グリセリンジアリルエーテル、ビスフェノールAジアリルエーテル、ビスフェノールFジアリルエーテル、エチレングリコールジアリルエーテル、ジエチレングリコールジアリルエーテル、トリエチレングリコールジアリルエーテル、プロピレングリコールジアリルエーテル、ジプロピレングリコールジアリルエーテル、及びトリプロピレングリコールジアリルエーテル等が挙げられる。
【0074】
アリル基を3つ以上含有する化合物としては、トリアリルイソシアヌレート、ペンタエリスリトールトリアリルエーテル、ペンタエリスリトールテトラアリルエーテル、及びトリメチロールプロパントリアリルエーテル等が挙げられる。アリル基を有する化合物は、トリアリルイソシアヌレート、ジアリルフタレート又はペンタエリスリトールトリアリルエーテルであることが特に好ましい。
【0075】
不飽和化合物(a4)の分子量は高いことが好ましい。高分子量の不飽和化合物(a4)の使用により、透明樹脂硬化物(A)の可撓性が高くなる。高分子量の不飽和化合物(a4)としては、メチルアリルシロキサンとジメチルシロキサンとの共重合物、エピクロルヒドリンとアリルグリシジルエーテルとの共重合物(ダイソー社製の商品名「エピクロマー」、及び日本ゼオン社製の商品名「Gechron」など)、並びにアリル基末端ポリイソブチレンポリマー(カネカ社製の商品名「エピオン」)等が挙げられる。
【0076】
[不飽和化合物(a4)に含まれる炭素−炭素二重結合のモル数]/[不飽和化合物(a4)のモル数](以下、モル比Eともいう)は2以上であることが好ましい。上記モル比Eは、1分子あたりに含まれる炭素−炭素二重結合の平均個数を示す。上記モル比Eが2以上であると、透明樹脂(a)の硬化性が高くなり、かつ透明樹脂硬化物(A)の架橋密度が高くなる。このため、透明樹脂硬化物(A)の耐熱性及び硬度が高くなる傾向がある。
【0077】
加水分解縮合物(a1)を用いる場合には、重合開始剤を用いなくてもよい。ただし、上記透明樹脂組成物は、加水分解縮合物(a1)を含む場合にも、重合開始剤を含有していてもよい。該重合開始剤としては、光カチオン重合開始剤及び光ラジカル重合開始剤等が挙げられる。上記重合開始剤は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0078】
上記光カチオン重合開始剤としては、紫外線の照射により酸を発生する化合物であるスルホニウム塩、ヨードニウム塩、メタロセン化合物及びベンゾイントシレート等が挙げられる。上記光カチオン重合開始剤の市販品としては、ユニオンカーバイド社製の商品名「サイラキュアUVI−6970」、「サイラキュアUVI−6974」及び「サイラキュアUVI−6990」、チバ・ジャパン社製の商品名「イルガキュア264」、並びに日本曹達社製の商品名「CIT−1682」等が挙げられる。
【0079】
上記光ラジカル重合開始剤は特に限定されない。上記光ラジカル重合開始剤としては、例えば、ベンゾフェノン、N,N’−テトラエチル−4,4’−ジアミノベンゾフェノン、4−メトキシ−4’−ジメチルアミノベンゾフェノン、2,2−ジエトキシアセトフェノン、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、ベンジルジメチルケタール、α−ヒドロキシイソブチルフェノン、チオキサントン、2−クロロチオキサントン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルホリノプロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン−1、2−ジメチルアミノ−2−(4−メチル−ベンジル)−1−(4−モルフォリン−4−イル−フェニル)−ブタン−1−オン、2,6−ジメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド、t−ブチルアントラキノン、1−クロロアントラキノン、2,3−ジクロロアントラキノン、3−クロロ−2−メチルアントラキノン、2−エチルアントラキノン、1,4−ナフトキノン、9,10−フェナントラキノン、1,2−ベンゾアントラキノン、1,4−ジメチルアントラキノン、2−フェニルアントラキノン、2−(o−クロロフェニル)−4,5−ジフェニルイミダゾール2量体、2−メルカプトベンゾチアゾール、2−メルカプトベンゾオキサゾール、及び4−(p−メトキシフェニル)−2,6−ジ−(トリクロロメチル)−s−トリアジン等が挙げられる。中でも、硬化樹脂の着色を抑制できることから、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトンが好ましい。また、エン−チオール反応の抑制効果を有し、透明樹脂(a)の保存安定性を高めることができることから、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルホリノプロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン−1、2−ジメチルアミノ−2−(4−メチル−ベンジル)−1−(4−モルフォリン−4−イル−フェニル)−ブタン−1−オン等のα−アミノアルキルフェノン系光ラジカル重合開始剤が好ましい。
【0080】
透明樹脂(a)100重量部に対して、上記重合開始剤の含有量の好ましい下限は1重量部、好ましい上限は15重量部、より好ましい上限は10重量部、さらに好ましい上限は5重量部である。
【0081】
透明樹脂(a)の保存安定性をより一層高めるために、エン−チオール反応抑制剤を使用できる。該エン−チオール反応抑制剤としては、リン化合物、ラジカル重合禁止剤、三級アミン及びイミダゾール化合物等が挙げられる。
【0082】
上記リン化合物としては、トリフェニルホスフィン及び亜リン酸トリフェニル等が挙げられる。上記ラジカル重合禁止剤としては、p−メトキシフェノール、ハイドロキノン、ピロガロール、ナフチルアミン、tert−ブチルカテコール、塩化第一銅、2,6−ジ−tert−ブチル−p−クレゾール、2,2’−メチレンビス(4−エチル−6−tert−ブチルフェノール)、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、N−ニトロソフェニルヒドロキシルアミンアルミニウム塩、及びジフェニルニトロソアミン等が挙げられる。上記三級アミンとしては、ベンジルジメチルアミン、2−(ジメチルアミノメチル)フェノール、2,4,6−トリス(ジアミノメチル)フェノール、及びジアザビシクロウンデセン等が挙げられる。上記イミダゾール化合物としては、2−メチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、2−エチルへキシルイミダゾール、2−ウンデシルイミダゾール及び1−シアノエチル−2−メチルイミダール等が挙げられる。
【0083】
上記リン化合物のなかでも、亜リン酸トリフェニルが好ましい。該亜リン酸トリフェニルは、エン−チオール反応の抑制効果が高く、かつ室温で液状であるため、取り扱いが容易である。透明樹脂(a)100重量部に対して、上記リン化合物の含有量は0.1〜10重量部の範囲内であることが好ましい。上記リン化合物の含有量が0.1重量部以上であると、エン−チオール反応を充分に抑制できる。上記リン化合物の含有量が10重量部以下であると、硬化後に上記リン化合物の残存量が少なくなり、上記リン化合物に由来する透明樹脂硬化物(A)の物性の低下を抑制できる。
【0084】
上記ラジカル重合禁止剤のなかでも、N−ニトロソフェニルヒドロキシルアミンアルミニウム塩が好ましい。該N−ニトロソフェニルヒドロキシルアミンアルミニウム塩は、少量でもエン−チオール反応を抑制でき、かつ透明樹脂硬化物(A)の透明性を高めることができる。透明樹脂(a)100重量部に対して、上記ラジカル重合禁止剤の含有量は0.0001〜0.1重量部の範囲内であることが好ましい。上記ラジカル重合禁止剤の含有量が0.001重量部以上であると、エン−チオール反応を充分に抑制できる。上記ラジカル重合禁止剤の含有量が0.1重量部以下であると、硬化性が高くなる傾向がある。
【0085】
上記三級アミンのなかでも、ベンジルジメチルアミンが好ましい。該ベンジルジメチルアミンは、エン−チオール反応の抑制効果が高く、かつ室温で液状であるため、取り扱いが容易である。透明樹脂(a)100重量部に対して、上記三級アミンの含有量は0.001〜5重量部の範囲内であることが好ましい。上記三級アミンの含有量が0.001重量部以上であると、エン−チオール反応を充分に抑制できる。上記三級アミンの含有量が5重量部以下であると、加水分解縮合物(a1)中の未反応の水酸基及びアルコキシ基の縮合反応が生じ難くなり、ゲル化が生じ難くなる。
【0086】
加水分解縮合物(a1)と不飽和化合物(a4)との配合比は、用途に応じて適宜変更できる。また、加水分解縮合物(a1)と不飽和化合物(a4)とを併用する場合には、必要に応じて溶剤を配合できる。
【0087】
透明樹脂硬化物(A)のアッベ数は、35〜50の範囲内であることが好ましい。透明樹脂硬化物(A)のアッベ数が上記範囲内である場合には、透明複合シートの光線透過率をより一層高くすることができる。
【0088】
透明樹脂硬化物(A)は、例えば、上記透明複合シートの作製の際に、ガラスクロス(b)を添加しなかった材料を硬化させることによっても得られる。また、透明樹脂硬化物(A)は、例えば、透明樹脂(a)と、該透明樹脂(a)を硬化させるための光重合開始剤及び硬化剤の内の少なくとも一方等とを混合した混合物を硬化させることによっても得られる。
【0089】
(ガラスクロス(b))
ガラスクロス(b)のフィラメント径は3〜10μmであることが好ましい。フィラメント径が3μm以上であると、引っ張り強度がより一層高くなる。フィラメント径が10μm以下であると、折り曲げ強度がより一層高くなる。
【0090】
単糸の太さは、Tex番手で10〜20であることが好ましい。10番手以上であると、ガラスクロス(b)の厚みが厚くなり、強度又は熱膨張性の低減効果を充分に得ることができる。20番手以下であると、開繊処理が容易である。
【0091】
単糸の撚り数は2/インチ以下であることが好ましい。撚り数が2/インチ以下であると、開繊度2以上の開繊処理が容易である。
ガラスクロス(b)の経糸及び緯糸の密度(織り密度)はそれぞれ40〜70本/インチであることが好ましい。40本/インチ以上であると、ガラスクロス(b)の目(バスケットホール)が充分に小さくなり、透明複合シートの表面の凹凸を低減できる。70本/インチ以下であると、ガラスクロス(b)の目が詰まり過ぎることなく、開繊処理が容易になる。
【0092】
透明複合シートの透視像の歪みをより一層低減することができるので、ガラスクロス(b)は、下記式(X)の開繊度が2〜4の範囲内であるように開繊処理したガラスクロスであることが好ましい。
開繊度=開繊処理後のガラスクロス(b)における繊維束の糸幅/ガラス繊維単糸の径 ・・・式(X)
【0093】
透明複合シートの透視像の歪みをより一層低減することができるので、本発明に係る透明複合シートに含まれているガラスクロス(b)は、フィラメント径3〜10μm、Tex番手10〜20、撚り数2/インチ以下のガラス繊維単糸により形成されており、かつ、ガラスクロス(b)は、経糸及び緯糸の密度が40〜70本/インチである織布を、上記式(X)の開繊度が2〜4の範囲内であるように開繊処理したガラスクロスであることが好ましい。
【0094】
ガラスクロス(b)の厚さは、使用する糸の種類、織り密度及び開繊度によって変化するため、厳密な範囲を定義することが困難である。ガラスクロス(b)の厚みを例示すると、経糸と緯糸とが交わる厚い部分で、40〜80μm程度である。
【0095】
ガラスクロス(b)の材質として、ソーダガラス、ホウ珪酸ガラス及び無アルカリガラス等が用いられる。なかでも、無アルカリガラスが好ましい。無アルカリガラスの使用により、透明複合シートを表示素子用基板又は太陽電池用基板として用いたときに、ガラスクロス(b)に由来するアルカリ成分が半導体素子に悪影響を及ぼさなくなる。
【0096】
ガラスクロス(b)の繊維は、Eガラス又はTガラスであることが好ましい。該Eガラスは、ガラス繊維強化回路基板用の芯材として広く用いられている。繊維径、繊維束径、ガラスクロスとしての目付、織り密度及び厚さ等に関して、上記Eガラスは、種々の規格品が揃っている。また、性能向上、コスト低減及び入手の容易性の観点から、Eガラスが好適に用いられる。
【0097】
ガラスクロス(b)の繊維は、Tガラスであることがより好ましい。Tガラス繊維は、Eガラス繊維よりも、高強度及び低熱膨張等の点で優れている。
【0098】
ガラスクロス(b)の引っ張り弾性率の好ましい下限は5GPa、より好ましい下限は10GPa、好ましい上限は500GPa、より好ましい上限は200GPaである。上記引っ張り弾性率が低すぎると、透明複合シートの強度が低くなる傾向がある。
【0099】
透明樹脂(a)100重量部に対して、ガラスクロス(b)の含有量の好ましい下限は50重量部、より好ましい下限は100重量部、好ましい上限は300重量部、より好ましい上限は200重量部である。ガラスクロス(b)の含有量が少なすぎると、ガラスクロス(b)による熱膨張の低減効果が不十分となる傾向がある。ガラスクロス(b)の含有量が多すぎると、ガラスクロス(b)に透明樹脂(a)を含浸させることが困難となり、透明複合シートの表面又は内部にボイドが発生して、透明性が低下しやすくなる。
【0100】
(他の成分)
上記透明樹脂組成物、上記透明樹脂硬化物(A)及び上記透明複合シートはそれぞれ、各種用途での必要性に応じて、可塑剤、耐候剤、酸化防止剤、熱安定剤、滑剤、帯電防止剤、増白剤、着色剤、導電剤、離型剤、表面処理剤及び粘度調節剤等を含有していてもよい。
【0101】
(透明複合シート)
図1に、本発明の一実施形態に係る透明複合シートを模式的に部分切欠断面図で示す。
【0102】
図1に示すように、透明複合シート1は、第1の面1aと、第2の面1bとを有する。本実施形態では、第1の面1aは凹凸を有し、第2の面1bは平坦面である。上記表面凹凸の振幅は、第1の面1aで0.5〜5μmであり、第2の面1bで0.4μm以下である。
【0103】
本発明に係る透明複合シートは、透明樹脂(a)が硬化した透明樹脂硬化物(A)と、該透明樹脂硬化物(A)中に埋め込まれているガラスクロス(b)とを含有する。
【0104】
本発明に係る透明複合シートの製造方法としては、ガラスクロスに透明樹脂を含浸して硬化する際に、一方の面を金属又はガラスのような剛体に接触させ、もう一方の面(他方の面)を樹脂フィルムのような柔軟体に接触させるように挟み込んだ状態で、透明樹脂(a)を硬化する製造方法が挙げられる。それによって、剛体に接している面では硬化収縮による表面凹凸が生じにくく、柔軟体に接触している面において集中的に表面凹凸が発生する。従って、得られる透明複合シートでは、一方の面が平坦となり、もう一方の面のみが凹凸を有するようになる。
【0105】
上記剛体は平坦面を有する。上記剛体は、金属、ガラス及びセラミックスからなる群から選択された少なくとも一種の材料を有することが好ましい。上記柔軟体は平坦面を有する。上記柔軟体は、上記剛体よりも柔軟な柔軟体である。
具体的な製造方法としては特に限定されないが、例えば以下のような方法が挙げられる。
【0106】
常温又は加熱下で流動性を有する透明樹脂(a)をガラスクロス(b)上に一定量塗布して、透明樹脂(a)をガラスクロス(b)に含浸(吸収)させて、複合材料を得る。該複合材料は透明複合材料である。該複合材料は、硬化性透明樹脂が含浸されているガラスクロスである。次に、必要に応じて、該複合材料を乾燥する。その後、複合材料を金属ロールと樹脂フィルムで挟み込む。それによって、複合材料の一方の面を金属ロールに接触させ、他方の面を樹脂フィルムに接触される。この状態で、透明複合材料の厚みを調整しながら、該厚みを均一化し、この状態で、加熱及び活性光線の照射のうち少なくとも一方を行う。それによって、透明複合材料を架橋し、硬化させ、透明複合シートを形成する。その後、金属ロール及び樹脂フィルムから透明複合シートから剥離することにより、透明複合シートが得られる。
【0107】
なお、透明樹脂(a)をガラスクロス(b)に含浸させるに際しては、透明樹脂(a)にガラスクロス(b)を浸漬し、必要に応じて超音波を照射しながら透明樹脂(a)をガラスクロス(b)に含浸させてもよい。
【0108】
また、金属ロールではなく、金属ベルトを用い、金属ベルトと樹脂フィルムとで上記透明複合材料を挟み込んでもよい。また、樹脂フィルムにかえて、上記剛体よりも柔軟な柔軟体を用いてもよい。
【0109】
また、硬化反応を確実に完結させるために、活性光線のみで透明樹脂(a)を硬化させた後、さらに加熱してもよい。
【0110】
また、金属ロールなどの剛体を加熱した状態で、該剛体に接した複合材料に活性光線を照射してもよい。すなわち、加熱と活性光線の照射とを同時に行ってもよく、加熱による硬化と活性光線の照射による硬化とを同時に進行させてもよい。
【0111】
さらに、樹脂フィルムを用いずに、透明複合材料の一方の面を金属ロールに接触させ、もう一面に何も接触させない状態で透明複合材料を硬化させてもよい。ただし、この場合には、何も接しない面でのガラスクロス上の樹脂量が変動しやすくなる。従って、得られる透明複合シートに反りが発生し易い。
【0112】
本発明に係る透明複合シートの厚みは、特に制限されないが、ガラスクロス(b)の仕様、並びに透明樹脂(a)とガラスクロス(b)との比率を考慮すると、25〜200μmの範囲内であることが好ましい。
【0113】
透明複合シートの厚みを200μmより厚くする必要がある場合には、シート状の透明複合材料を複数積層した後に硬化させるか、又は、透明複合材料のシート化と硬化とを繰り返して、透明複合シートを得ることが好ましい。また、適当な接着層を介して複数枚の透明複合シートを積層してもよい。
【0114】
(表面凹凸の大きさ)
本発明に係る透明複合シートは、対向する第1,第2の面を有し、シートの表面のガラスクロスの経糸もしくは緯糸の周期と一致した表面凹凸の振幅が、上記第1の面において0.5〜5μmであり、上記第2の面で0.4μm以下である。前述した透明複合シートの製造方法から明らかなように、透明複合材料が樹脂フィルムのような柔軟体に接触される面では表面に凹凸が生じ、金属、ガラス又はセラミックスのような剛体に接触される面では凹凸が表面に生じ難い。従って、上記柔軟体に接触される面が、上記第1の面となり、剛体に接触される面が上記第2の面となり、上記特定の振幅範囲がそれぞれ実現される。セルギャップのばらつきをより一層小さくしたり、透過像の歪みをより一層低減したりする観点からは、上記表面凹凸の振幅は、第2の面で0.3μm以下であることが好ましく、0.2μm以下であることがより好ましい。
【0115】
なお、上記表面凹凸の振幅は、一般的な触針式表面形状測定装置を用いて測定することができる。
【0116】
本発明に係る透明複合シートの光透過率は、80%以上であることが好ましく、85%以上であることがより好ましく、90%以上であることがさらに好ましく、92%以上であることが特に好ましい。光透過率が高いほど、例えば、液晶表示素子又は有機EL表示素子などの表示素子基板等に透明複合シートを用いて、画像表示装置を得た場合に、表示品位が高くなり、画像が鮮明になる。
【0117】
上記光透過率は、市販の分光光度計を用いて、波長550nmの全光線透過率を測定することによって求めることができる。
【0118】
透明複合シートの水蒸気バリア性を高めるために、本発明に係る透明複合シートの水蒸気透過率は、40℃相対湿度90%において、1×10−1g/m・日以下であることが好ましい。透明複合シートの寸法安定性を高めるためには、本発明に係る透明複合シートの30〜250℃における平均線膨張係数は、20ppm/℃以下であることが好ましい。
【0119】
本発明に係る透明複合シートのヘイズ値は、10%以下であることが好ましく、3%以下であることがより好ましく、2%以下であることがより好ましい。
【0120】
上記ヘイズ値は、JIS K7136に基づいて測定される。測定装置として、市販のヘイズメーカーが用いられる。測定装置としては、例えば、東京電色社製「全自動ヘーズメーターTC−HIIIDPK」等が挙げられる。
【0121】
本発明に係る透明複合シートには、表面平滑化層、ハードコート層又はガスバリア層を積層してもよい。
【0122】
上記表面平滑化層又はハードコート層を形成する際には、例えば、透明複合シート上に、既知の表面平滑化剤又はハードコート剤を塗布し、必要に応じて溶剤を除去するために乾燥する。次に、加熱及び活性光線の照射の内の少なくとも一方により、表面平滑化剤又はハードコート剤を硬化させる。
【0123】
透明複合シート上に表面平滑化剤又はハードコート剤を塗布する方法は、特に制限されない。例えば、ロールコート法、スピンコート法、ワイヤバーコート法、ディップコート法、エクストルージョン法、カーテンコート法又はスプレーコート法等の従来公知の方法を採用できる。
【0124】
本発明に係る透明性複合材シートにガスバリア層を積層することにより、水蒸気又は酸素のバリア性を高めてもよい。ガスバリア層は特に限定されない。上記ガスバリア層の材料としては、例えば、アルミニウムなどの金属、SiO及びSiNなどの珪素化合物、酸化マグネシウム、酸化アルミニウム、並びに酸化亜鉛等が挙げられる。水蒸気バリア性、透明性及び透明複合シートへの密着性を高める観点からは、SiO及びSiNなどの珪素化合物が好ましい。
【0125】
ガスバリア層を形成する方法は、特に限定されず、蒸着法及びスパッタリング法等の乾式法、並びにゾル−ゲル法等の湿式法が挙げられる。なかでも、スパッタリング法が好ましい。スパッタリング法により形成されたガスバリア層は、緻密でガスバリア性に優れており、かつ、透明複合シートへの密着性も良好である。
【0126】
(積層シート及び透明複合シートの応用)
図2に、図1に示す透明複合シートを用いた積層シートの一例を模式的に部分切欠断面図で示す。
【0127】
図2に示すように、積層シート11は、透明複合シート1と、偏光板12と、粘着剤層13とを有する。偏光板12は、透明複合シート1の第1の面1aに積層されている。粘着剤層13は、偏光板12と透明複合シート1の第1の面1aとの間に設けられている。粘着剤層13は、偏光板12と透明複合シート1の第1の面1aに貼り合わせるように設けられている。
【0128】
本発明に係る透明複合シートでは、第1の面側において、第2の面側よりも表面に大きな凹凸がある。しかしながら、前述したように、透明複合シートを、例えば液晶表示素子などの表示素子の基板として用いる場合、第1の面に粘着剤層を積層することなどにより、第1の面の表面の凹凸の影響を緩和又は解消すればよい。
【0129】
従って、本発明は、液晶表示素子などの光学用途に用いられる積層シートに好適に用いることができる。このような積層シートとしては、本発明の透明複合シートと、透明複合シートの第1の面に積層された偏光板と、該偏光板を透明複合シートの第1の面に貼り合わせるように偏光板と透明複合シートの第1の面との間に設けられた粘着剤層とを備える積層シートを挙げることができる。この積層シートでは、透明複合シートの第1の面に偏光板が間接に積層されている。この場合、透明複合シートの第1の面の凹凸の影響が粘着剤層により緩和又は解消されるため、透明な粘着剤層を用いることにより、積層シートを透過した光の透過像の歪みを生じ難くすることができる。
【0130】
また、本発明に係る積層シートは、本発明の透明複合シートを2枚有し、2枚の透明複合シートの第2の面同士を貼り合わせることにより積層一体化されている構造を有していてもよい。すなわち、図3に示す積層シート21のように、2つの透明複合シート1を、第2の面1b同士を貼り合わせて用いてもよい。この場合には、2枚の透明複合シートの各外側に位置している第1の面に、それぞれ、粘着剤層を介して上記と同様に偏光板を貼り合わせる。このようにして得られた積層シートでは、第1の面の表面の凹凸の影響は、上記粘着剤層により緩和又は解消され、かつ透明複合シート同士が貼り合わされている部分では、表面の凹凸の少ない第2の面同士が対向することになるため、透過像の歪みが生じ難い。なお、透明複合シートの第2の面同士を貼り合わせる際には、適宜の粘着剤を用いればよい。
【0131】
また、1つの上記透明複合シートを第1の面側からある部材の一方の表面に積層し、かつ他の上記透明複合シートを第1の面側から上記部材の他方の表面に積層した積層シートとして、上記透明複合シートを用いることもできる。この積層シートでは、外側の表面が上記透明複合シートの第2の面になる。
【0132】
また、本発明においては、上記透明複合シート及び積層シートは、例えば、液晶表示素子などの表示素子の光透過性基板として好適に用いられる。このような液晶表示素子としては、第1の基板と、該第1の基板にギャップを隔てて対向された第2の基板と、第1の及び第2の基板間に配置された液晶層とを備える適宜の液晶表示素子を挙げることができる。本発明によれば、この液晶表示素子において、第1及び第2の基板の少ないとも一方が、本発明の透明複合シートと、該透明複合シートの第1の面に積層された偏光板と、偏光板を透明複合シートの第1の面に貼り合わせるように透明複合シートの第1の面と偏光板との間に設けられた粘着剤層とを備える積層シートである。従って、上記積層シートにおいて、透過像の歪みが生じ難いため、液晶表示素子の特性の表示品質の向上を図ることができる。
【0133】
図4に、図1に示す透明複合シートを用いた液晶表示素子の一例を模式的に断面図で示す。
【0134】
図4に示す液晶表示素子31は、第1の基板である積層シート11と、第2の基板である積層シート11と、液晶層32とを備える。第1の基板である積層シート11と、第2の基板である積層シート11とはギャップを隔てて対向されている。第1の基板である積層シート11と第2の基板である積層シート11との間に液晶層32が配置されている。また、液晶層32は、第1の基板である積層シート11における透明複合シート1の第2の面1bと、第2の基板である積層シート11の透明複合シート1の第2の面1bとに接している。
【0135】
この場合、透明複合シートを2枚積層した構造を有する積層シートを用いてもよい。すなわち、2枚の透明複合シートの第2の面同士を貼り合わせ、各透明複合シートの第1の面の外側に粘着剤層を介して偏光板を積層した積層シートを用いてもよい。言い換えれば、積層シートは、上記透明複合シートの第2の面に、第2の面同士が貼り合わされるように積層された第2の透明複合シートと、第2の透明複合シートの第1の面に積層された第2の偏光板と、第2の透明複合シートの第1の面と第2の偏光板との間に設けられた第2の粘着剤層とをさらに備えていてもよい。
【0136】
以下、実施例及び比較例を挙げて、本発明を具体的に説明する。本発明は、以下の実施例のみに限定されない。
【0137】
(実施例1)
透明樹脂(a)であるトリシクロデカンジメタノールジメタクリレート(NKエステル DCP、新中村化学工業社製)50重量部及びビス[4−(アクリロイロキシエトキシ)フェニル]フルオレン(オグソールEA−0200、大阪ガスケミカル社製)48重量部に、光重合開始剤である1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン(イルガキュア184、チバ・ジャパン社製)0.5重量部を加えて混合し、透明樹脂液1を得た。
【0138】
得られた透明樹脂液1に、厚さ42μm、目付け48g/mのEガラスであるガラスクロス(b)を連続的に浸漬して、透明樹脂液1をガラスクロス(b)に含浸させた。このようにして、透明複合材料を得た。
【0139】
引き続き、透明樹脂液1がガラスクロス(b)に含浸された透明複合材料の片面に厚み100μmの表面が平坦なポリエステルフィルム(東洋紡社製、品番コスモシャインA4100)を重ねながら、表面が平坦な金属ロール上で透明複合材料上にポリエステルフィルムをラミネートし、透明複合材料の厚みを均一化した。次に、ポリエステルフィルムがラミネートされた透明複合材料を金属ロール上で搬送しながらポリエステルフィルム側から高圧水銀灯にて2000mJ/cm(365nm)のUV光を照射して、透明複合材料中の透明樹脂を架橋し、硬化した。その後、ポリエステルフィルムを剥離して、透明複合シートを得た。
【0140】
(実施例2)
透明樹脂(a)である3,4−エポキシシクロヘキセニルメチル−3’,4’−エポキシシクロヘキセンカルボキシレート(セロキサイド2021P、ダイセル化学工業社製)30重量部及びビスアリールフルオレン系エポキシ樹脂(オンコートEX−1010、長瀬産業社製)20重量部に、硬化剤であるメチルヘキサヒドロ無水フタル酸とヘキサヒドロ無水フタル酸との7:3(重量比)混合物(リカシッドMH−700、新日本理化社製)42重量部と、硬化促進剤(ヒシコーリンPX−4ET、日本化学工業社製)1重量部とを添加し、混合し、透明樹脂液2を得た。
【0141】
得られた透明樹脂液2に、厚さ68μm、目付け81g/mのEガラスであるガラスクロス(b)を浸漬して、超音波を照射しながら透明樹脂液2をガラスクロス(b)に含浸させた。このようにして、透明樹脂液2がガラスクロス(b)に含浸された透明複合材料を得た。
【0142】
その後、透明複合材料を引き上げて、表面が平坦なステンレス板上に載せ、減圧チャンバー内で10Paの圧力まで減圧しながら脱泡した。減圧チャンバーより取り出したステンレス板上の透明複合材料の表面に厚み75μmの表面が平坦なポリイミドフィルム(東レ・デュポン社製、品番カプトン300H)を重ねながら、ラミネーターを通し、透明複合材料の厚みを均一化した。次に、オーブン内で100℃で60分間加熱したのち、更に200℃で180分加熱して、透明複合材料中の透明樹脂を架橋し、硬化した。その後、ポリイミドフィルムを剥離して、透明複合シートを得た。
【0143】
(実施例3)
透明樹脂(a)であるシルセスキオキサン骨格を有するチオール基含有化合物(上記加水分解縮合物(a1)に相当する、HBSQ101、荒川化学工業社製)50重量部及びイソシアヌル酸トリアリル30重量部に、光重合開始剤である2−メチル−1[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モリフォリノプロパン−1−オン(イルガキュア907、チバ・ジャパン社製)0.2重量部を添加し、混合し、透明樹脂液3を得た。
【0144】
得られた透明樹脂液3に、厚さ42μm、目付け48g/mのEガラスであるガラスクロス(b)を連続的に浸漬して、透明樹脂液3をガラスクロス(b)に含浸させた。このようにして、透明樹脂液3がガラスクロス(b)に含浸された透明複合材料を得た。
【0145】
引き続き、透明複合材料の片面に厚み100μmの表面が平坦なポリエステルフィルム(東洋紡社製、品番コスモシャインA4100)を重ねながら、表面が平坦な金属ロール上で透明複合材料上にポリエステルフィルムをラミネートし、厚みを均一化した。次に、ポリエステルフィルムがラミネートされた透明複合材料を金属ロール上で搬送しながらポリエステルフィルム側から2000mJ/cm(365nm)のUV光を照射して、シート状の透明複合材料を架橋し、硬化した。その後、ポリエステルフィルムを剥離して、透明複合シートを得た。
【0146】
(実施例4)
ガラスクロス(b)を、厚さ92μm、目付け104g/mのガラスクロスに変更したこと以外は実施例3と同様にして、透明複合シートを得た。
【0147】
(実施例5)
透明樹脂(a)であるポリシルセスキオキサン溶液(上記加水分解縮合物(a1)に相当する、コンポセランSQ102−1、荒川化学工業社製)70重量部及びイソホロンジイソシアネート50重量部に、反応触媒であるジブチルスズジラウレート0.2重量部を添加し、混合し、透明樹脂液4を得た。
【0148】
得られた透明樹脂液4に、厚さ68μm、目付け81g/mのEガラスであるガラスクロス(b)を浸漬し、超音波を照射しながら透明樹脂液4をガラスクロス(b)に含浸させた。このようにして、透明複合材料を得た。
【0149】
その後、透明複合材料を引き上げて、表面が平坦なステンレス板上に載せ、オーブン内で80℃で10分間乾燥した。次に、ステンレス板上の透明複合材料の表面に100μmの表面が平坦なポリエステルフィルム(東洋紡社製、品番コスモシャインA4100)を重ねながら、ラミネーターを通し、透明複合材料の厚みを均一化し、オーブン内で120℃で20分間加熱して、ポリエステルフィルムがラミネートされた透明複合材料を架橋し、硬化した。その後、ポリエステルフィルムを剥離して、透明複合シートを得た。
【0150】
(比較例1)
実施例1で作製した透明樹脂液1に、厚さ42μm、目付け48g/mのEガラスであるガラスクロス(b)を連続的に浸漬して、透明樹脂液1をガラスクロス(b)に含浸した。このようにして、透明複合材料を得た。
【0151】
引き続き、透明複合材料の両面にポリエステルフィルムを重ねながら、金属ロール上でラミネートし、透明複合材料の厚みを均一化した。次に、金属ロール上で搬送しながらポリエステルフィルム側から高圧水銀灯にて2000mJ/cm(365nm)のUV光を照射して、ポリエステルフィルムがラミネートされた透明複合材料を架橋し、硬化した。その後、ポリエステルフィルムを剥離して、透明複合シートを得た。
【0152】
(比較例2)
実施例2において作製した透明樹脂液2に、厚さ68μm、目付け81g/mのEガラスであるガラスクロス(b)を浸漬して、超音波を照射しながら透明樹脂液3をガラスクロス(b)に含浸させた。このようにして、透明複合材料を得た。
【0153】
その後、透明複合材料を引き上げて、周辺部をステンレス板に貼り付けて固定した厚み75μmのポリイミドフィルム(東レ・デュポン社製、品番カプトン300H)上に載せ、減圧チャンバー内で10Paの圧力まで減圧しながら脱泡した。減圧チャンバーより取り出したポリイミドフィルムが貼り付けられたステンレス板上の透明複合材料の露出面にさらに厚み75μmのポリイミドフィルム(東レ・デュポン社製、品番カプトン300H)を重ねながら、ラミネーターを通し、透明複合材料の厚みを均一化した。次に、オーブン内で100℃で60分間加熱したのち、更に200℃で180分加熱して、ポリエステルフィルムがラミネートされた透明複合材料を架橋し、硬化した。その後、ポリイミドフィルムを剥離して、透明複合シートを得た。
【0154】
(実施例6)
透明樹脂(a)である9,9−ビス[4−(2−アクリロイルオキシエトキシ)フェニル]フルオレン(A−BPEF、新中村化学工業社製)27重量部及びエトキシ化イソシアヌル酸トリアクリレート(A−9300、新中村化学工業社製)63重量部に、重合開始剤である2−メチル−1[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モリフォリノプロパン−1−オン(イルガキュア907、チバ・ジャパン社製)0.2重量部を加えて混合し、透明樹脂液6を得た。
【0155】
得られた透明樹脂液6に、厚さ42μm、目付け48g/mのEガラスであるガラスクロス(b)を連続的に浸漬して、透明樹脂液6をガラスクロス(b)に含浸させた。このようにして、透明複合材料を得た。
【0156】
引き続き、透明樹脂液6がガラスクロス(b)に含浸された透明複合材料の片面に厚み100μmの表面が平坦なポリエステルフィルム(東洋紡社製、品番コスモシャインA4100)を重ねながら、表面温度が130℃に加熱された表面が平坦な金属ロール上で透明複合材料上にポリエステルフィルムをラミネートし、透明複合材料の厚みを均一化した。次に、ポリエステルフィルムがラミネートされた透明複合材料を加熱された上記金属ロール上で搬送しながらポリエステルフィルム側から高圧水銀灯にて2000mJ/cm(365nm)のUV光を照射して、透明複合材料中の透明樹脂を架橋し、硬化した。金属ロールから剥離した後、さらにポリエステルフィルムを剥離して、透明複合シートを得た。
【0157】
(実施例7)
透明樹脂(a)であるエトキシ化イソシアヌル酸トリアクリレート(A−9300、新中村化学工業社製)48重量部、ε−カプロラクトン変性エトキシ化イソシアヌル酸トリアクリレート(A−9300−1CL、新中村化学工業社製)48重量部、及び9,9−ビス[4−(2−アクリロイルオキシエトキシ)フェニル]フルオレン(A−BPEF、新中村化学工業社製)4重量部に、重合開始剤である1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン(イルガキュア184、チバ・ジャパン社製)0.4重量部を加えて混合し、透明樹脂液7を得た。
【0158】
得られた透明樹脂液7に、厚さ70μm、目付け80g/mのTガラスであるガラスクロス(b)を連続的に浸漬して、透明樹脂液7をガラスクロス(b)に含浸させた。このようにして、透明複合材料を得た。
【0159】
引き続き、透明樹脂液7がガラスクロス(b)に含浸された透明複合材料の片面に厚み100μmの表面が平坦なポリエステルフィルム(東洋紡社製、品番コスモシャインA4100)を重ねながら、表面温度が100℃に加熱された表面が平坦な金属ロール上で透明複合材料上にポリエステルフィルムをラミネートし、透明複合材料の厚みを均一化した。次に、ポリエステルフィルムがラミネートされた透明複合材料を加熱された上記金属ロール上で搬送しながらポリエステルフィルム側から高圧水銀灯にて2000mJ/cm(365nm)のUV光を照射して、透明複合材料中の透明樹脂を架橋し、硬化した。金属ロールから剥離した後、さらにポリエステルフィルムを剥離して、透明複合シートを得た。
【0160】
(評価)
(1)透明複合シートの厚み
尾崎製作所製厚みゲージを用いて、透明複合シートの厚みを測定した。
【0161】
(2)屈折率
デジタルアッベ屈折計(エルマ製)により、屈折率nD(波長589.3nm)を測定した。実施例及び比較例で用いた透明樹脂溶液1〜7を硬化させて、実施例及び比較例で用いた透明樹脂(a)の硬化物(透明樹脂硬化物(A))の屈折率を評価した。ガラスクロス(b)の屈折率については、メーカー公称値を採用した。
【0162】
(3)表面凹凸(振幅)
触針式表面形状測定装置P−16+(KLA−Tencor製)により、透明複合シート表面の形状を測定した。透明複合シート表面において、シート内のガラスクロスの経糸及び緯糸と略45°をなす方向に、経糸および緯糸の交点と、経糸および緯糸に囲まれた繊維が存在しない点(バスケットホール)を通る線上での表面形状を測定し、経糸および緯糸の交点と、経糸及び緯糸に囲まれた繊維が存在しない点(バスケットホール)において周期的に現れる表面凹凸の振幅を求めた。
【0163】
(4)像鮮明度
JIS K7374に準拠して、写像性測定器ICM−1T(スガ試験機社製)を用いて、得られた透明複合シートの写像性を測定した。光学くし目幅0.125mmにおける像鮮明度(%)を求めた。
【0164】
(5)光線透過率
分光光度計UV−310PC(島津製作所製)を用いて、得られた透明複合シートの550nmにおける光線透過率を測定した。
【0165】
(6)ヘイズ値
JIS K7136に基づいて、全自動ヘーズメーターTC−HIIIDPK(東京電色社製)を用いて、得られた透明複合シートのヘイズを測定した。
【0166】
(7)引張強度
JIS K7164に準拠して、テンシロン万能材料試験機RTC−1310A(オリエンテック社製)を用いて、得られた透明複合シートの引張強度を測定した。試験片の幅は25mmとした。
【0167】
(8)線膨張係数
TMA/EXSTAR6000型熱応力歪測定装置(セイコー電子社製)を用いて、得られた透明複合シートを30℃から250℃まで10℃/分の速度で昇温した後、10℃/分の速度で0℃まで冷却した。その後、再度、10℃/分の速度で昇温し、この昇温時の30℃〜250℃における平均線膨張係数を求めた。
【0168】
(9)ガラス転移温度(Tg)
DVA−200型粘弾性測定装置(アイティー計測制御社製)を用いて、得られた透明複合シートを室温から300℃まで20℃/分の速度で昇温した後、30℃まで冷却し、再度、20℃/分の速度で昇温して粘弾性特性を測定した。この2回目の昇温時におけるtanδのピーク温度をガラス転移温度とした。
【0169】
結果を下記の表1に示す。
【0170】
下記の表1では、透明複合シートを得る際に用いた透明樹脂(a)とガラスクロス(b)との含有量を示した。
【0171】
【表1】

【符号の説明】
【0172】
1…透明複合シート
1a…第1の面
1b…第2の面
11…積層シート
12…偏光板
13…粘着剤層
21…積層シート
31…液晶表示素子
32…液晶層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
対向する第1,第2の面を有する透明複合シートであって、
透明樹脂硬化物と、該透明樹脂硬化物中に埋め込まれたガラスクロスとを含有し、
シート表面のガラスクロスの経糸もしくは緯糸の周期と一致した表面凹凸の振幅が、前記第1の面で0.5〜5μmであり、前記第2の面で0.4μm以下である、透明複合シート。
【請求項2】
請求項1に記載の透明複合シートと、
前記透明複合シートの前記第1の面に積層された偏光板と、
前記偏光板を前記透明複合シートに貼り合わせるように前記偏光板と前記透明複合シートの前記第1の面との間に設けられた粘着剤層とを備える、積層シート。
【請求項3】
第1の基板と、該第1の基板にギャップを隔てて対向された第2の基板と、前記第1及び第2の基板間に配置された液晶層とを備え、
前記第1及び第2の基板の少なくとも一方が、請求項1に記載の透明複合シートと、該透明複合シートの前記第1の面に積層された偏光板と、該偏光板を前記透明複合シートに貼り合わせるように前記透明複合シートの第1の面と前記偏光板との間に設けられた粘着剤層とを備える積層シートである、液晶表示素子。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−215628(P2011−215628A)
【公開日】平成23年10月27日(2011.10.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−138084(P2011−138084)
【出願日】平成23年6月22日(2011.6.22)
【分割の表示】特願2011−511558(P2011−511558)の分割
【原出願日】平成23年3月10日(2011.3.10)
【出願人】(000002174)積水化学工業株式会社 (5,781)
【Fターム(参考)】