説明

透気性シートで表面を被覆した木炭ボードの製造方法

【課題】 バインダーとしてグルコマンナンを用いた木炭ボードであって、透気性シートで表面を被覆した木炭ボードを低コストで製造する方法を提供すること。
【解決手段】 金型1の底面に第1のフッ素樹脂板4を敷き詰める工程、第1のフッ素樹脂4の上に全面にわたって植物性不織布6を重ねて敷き詰める工程、第1のフッ素樹脂板4と植物性不織布6が敷き詰められた金型1に木炭成型材料3を流し込む工程、金型1に流し込まれた木炭成型材料3の表面に第2のフッ素樹脂板5を敷き詰める工程、蓋2で蓋をされた木炭成型材料3を加圧成型する工程、金型1からの木炭ボード半加工品の取り出し工程、及び金型1から取り出された木炭ボード半加工品を乾燥・固化させる工程を含んで構成されている。前記木炭成型材料は、粉状若しくは粒状の木炭又はこれらを混合した木炭と少量のグルコマンナン粉とに水を加えて練り合わせする練り合わせ工程を経て得られたものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バインダーとしてグルコマンナンを用いた木炭ボードの製造方法の改良に関する。なお、本明細書において木炭とは、木炭だけでなく竹炭を含む概念である。また、グルコマンナンとは、コンニャク精粉、コンニャク飛粉、コンニャク芋原料、及びこれらの混合物を含む概念である。
【背景技術】
【0002】
バインダーとしてグルコマンナンを用いた木炭ボードの製造方法は、特許第3357020号公報(特許文献1)に記載された本発明者等によるものがあるが。これは、粉状若しくは粒状の木炭又はこれらを混合した木炭と少量のグルコマンナン粉とに水を加えて練り合わせする練り合わせ工程、該練り合わせ工程により得られた木炭成型材料を金型に流し込んで加圧成型する加圧成型工程、及び該加圧成型工程により得られた木炭半加工品を乾燥し固化する乾燥・固化工程とからなる木炭成型品の製造方法である。
【0003】
そして、この方法により製造された木炭ボードは、天然の材料のみを原料とするものであるから、その製造、使用及び廃棄の全ての工程で環境汚染することが殆どないことと、除湿性、脱臭性、吸音性、電磁波遮断性を保持しながら、用途に応じた形状に成型されたものであるから、健康住宅用建材として最適なものであるという特長を有するものである。
【0004】
また、バインダーとしてグルコマンナンを用いた木炭ボードの製造方法は、特開2005−111931号公報(特許文献2)に記載された本発明者によるものがある。これは植物性補強層と木炭層の2層構造の木炭ボードの製造方法であって、植物性補強材料を金型に敷き詰める工程、粉状若しくは粒状の木炭又はこれらを混合した木炭と少量のグルコマンナン粉とに水を加えて練り合わせする練り合わせ工程、前記練り合わせ工程により得られた木炭成型材料を植物性補強材料が敷き詰められた金型に流し込んで加圧成型する加圧成型工程、及び前記加圧成型工程により得られた木炭ボード半加工品を乾燥し固化する乾燥・固化工程を含む木炭ボードの製造方法である。前記植物性補強材料は木材のカンナ屑、木材の鋸屑、和紙の植物性繊維材料である。
【0005】
また、特開2000−158419号公報(特許文献3)には、竹炭の粉末に糊を混合してから、その粉末を藺草を原料として形成した和紙の間に挟んで加圧圧縮して、所定の厚さに固化した板材を形成し、該板材を所定の期間養生させてから、用途に応じた大きさに裁断することを特徴とする木炭ボードの製造方法が開示されている。しかしながら、特許文献4に記載の竹炭ボードの製造方法は、その実施は不可能なものである。何故なら、竹炭の粉末に混合される糊は植物性であることが望ましいことと水溶性であると記載されているが、そのような糊はこの出願当時存在したという事実がないからである。
【0006】
また、特開2004−232197号公報(特許文献4)には、有害物質を吸収する木炭ボードと、この木炭ボードの両面叉は片面に張設された透気性フィルムとを備えた建具用外装材が記載されている。前記透気性フィルムは和紙叉は難燃性不織布であり、前記透気性フィルムは澱粉を主成分とする糊で木炭ボードの表面に貼り付けられている。この建具用外装材は、完成品である建具用外装材においては木炭ボードの表面と透気性フィルムとの間には澱粉を主成分とする糊が固化した接着層が形成されている。この接着層は木炭ボードの表面の全域にわたって形成されており、しかも透気性を有しない。従って、澱粉を主成分とする糊が固化した接着層によって、木炭ボードの吸着能力が遮断されてしまうので、有害物質を吸収する木炭ボードとして機能しないものである。
【0007】
上述の特許文献3や特許文献4からも明らかな如く、木炭の吸着能力が低下しないようにし且つ強い接着力を保持しながら透気性シートで片面又は両面を被覆し、壁紙を綺麗に貼付したような仕上がりの純植物性の木炭ボードの出現が建材市場等で強く望まれている。しかしながら、上述の透気性シートで表面を被覆した純植物性の木炭ボードは未だに商品化されていない。そこで、バインダーとしてグルコマンナンを用いた木炭ボードを実用化した本発明者は、上述の市場の要求に応えるために、上述の透気性シートで表面を被覆した純植物性の木炭ボードの開発に数年来取り組んできた。
【0008】
本発明者が実験的に開発した透気性シートで表面を被覆した木炭ボードの製造方法は、特許文献2に記載された製造方法を基礎にしたものであって、透気性シートを金型に敷き詰める工程、粉状若しくは粒状の木炭又はこれらを混合した木炭と少量のグルコマンナン粉とに水を加えて練り合わせする練り合わせ工程、前記練り合わせ工程により得られた木炭成型材料を前記透気性シートが敷き詰められた金型に流し込んで加圧成型する加圧成型工程、及び前記加圧成型工程により得られた木炭ボード半加工品を乾燥し固化する乾燥・固化工程を含む木炭ボードの製造方法である。
【0009】
この実験的な製造方法で、バインダーであるグルコマンナンの量を特別に増やすことなく、透気性シートで表面を被覆した木炭ボード、それも壁紙を綺麗に貼ったような仕上がりの木炭ボードが製造できることが確認できた。ところが、安く大量の商品を提供するために大判のボードを製造することに挑戦したところ、加圧成型工程の後に金型から木炭ボード半加工品を金型から取り出すことが難しいという事実に遭遇した。木炭ボード半加工品が金型の表面に密着しているため、作業者は木炭ボード半加工品を強い力で引き剥がすことになる。このため、木炭ボード半加工品が曲がったり、その表面を被覆した透気性シートが剥がれたり破損するなどの問題があった。つまり、壁紙を綺麗に貼ったような仕上がりの木炭ボードとしては全く価値の無い製品が多数発生するという問題があった。しかも、上述の曲がりや破損が生じないように慎重な作業を行うと、作業時間がかかり過ぎるという問題、製造コストが高くなるという問題があった。木炭ボード半加工品は、乾燥・固化工程の前の工程であるため強度は小さく且つグルコマンナンの接着力も小さいので、非常に取り扱い難い物品である。なお、実験では大判の木炭ボードのサイズを450mm×900mmとした。
【特許文献1】特許第3357020号公報
【特許文献2】特開2005−111931号公報
【特許文献3】特開2000−158419号公報
【特許文献4】特開2004−232197号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明が解決しようとする第1の課題は、バインダーとしてグルコマンナンを用いた木炭ボードであって、木炭の吸着能力が低下しないようにし且つ強い接着力を保持しながら前記木炭ボードの片面又は両面を透気性シートで被覆することである。
本発明が解決しようとする第2の課題は、バインダーとしてグルコマンナンを用いた木炭ボードであって、木炭の吸着能力が低下しないようにし且つ強い接着力を保持しながら透気性シートで片面又は両面を被覆し、壁紙を綺麗に貼付したような仕上がりの木炭ボードを低コストで製造する方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上述の課題を解決する第1の木炭ボードの製造方法を、バインダーとしてグルコマンナンを用いた木炭ボードの公知の基本的な製造方法を構成する必須構成工程に、第1のフッ素樹脂板を金型に敷く工程、前記第1のフッ素樹脂板の上に第1の透気性シートを敷く工程、及び前記金型に流し込まれた木炭成型材料の表面に第2のフッ素樹脂板を敷く工程を付加して構成した。
【0012】
上述の課題を解決する第2の木炭ボードの製造方法を、バインダーとしてグルコマンナンを用いた木炭ボードの公知の基本的な製造方法を構成する必須構成工程に、第1のフッ素樹脂板を金型に敷く工程、前記金型に流し込まれた木炭成型材料の表面に透気性シートを敷く工程、及び前記透気性シートの上に第2のフッ素樹脂板を敷く工程を付加して構成した。
【0013】
上述の課題を解決する第3の木炭ボードの製造方法を、バインダーとしてグルコマンナンを用いた木炭ボードの公知の基本的な製造方法を構成する必須構成工程に、第1のフッ素樹脂板を金型に敷く工程、前記第1のフッ素樹脂板の上に第1の透気性シートを敷く工程、前記金型に流し込まれた木炭成型材料の表面に第2の透気性シートを敷く工程、及び前記第2の透気性シートの上に第2のフッ素樹脂板を敷く工程を付加して構成した。
【発明の効果】
【0014】
本発明により、バインダーとしてグルコマンナンを用いた木炭ボードであって、木炭の吸着能力が低下しないようにし且つ強い接着力を保持しながら透気性シートで片面又は両面を被覆し、壁紙を綺麗に貼付したような仕上がりの木炭ボードを大量に安く提供することが可能になった。
【0015】
本発明に係る第1の製造方法は、バインダーとしてグルコマンナンを用いた木炭ボードの公知の基本的な製造方法を構成する必須構成工程に、第1のフッ素樹脂板を金型に敷く工程、前記第1のフッ素樹脂板の上に透気性シートを敷く工程、前記金型に流し込まれた木炭成型材料の表面に第2のフッ素樹脂板を敷く工程を付加して構成されたものであるから、公知の基本的な製造方法を大幅に変更するものではなく、従って低コストの製造方法が提供された。また、前記金型の底面と前記植物性不織布との間には第1のフッ素樹脂板が介在し、且つ前記金型の蓋と前記木炭成型材料の表面との間には第2のフッ素樹脂板が介在しているので、加圧成型後に木炭ボード半加工品を前記金型から取り出す作業は簡単に且つ迅速に行われる。従って、金型からの取り出し工程での木炭ボード半加工品の破損事故が激減し、製造コストが大幅に低減できるようになった。
【0016】
また、本発明に係る第2の製造方法は、バインダーとしてグルコマンナンを用いた木炭ボードの公知の基本的な製造方法を構成する必須構成工程に、第1のフッ素樹脂板を金型に敷く工程、前記金型に流し込まれた木炭成型材料の表面に透気性シートを敷く工程、及び前記透気性シートの上に第2のフッ素樹脂板を敷く工程を付加して構成されたものであるから、公知の基本的な製造方法を大幅に変更するものではなく、従って低コストの製造方法が提供された。また、前記金型の底面と前記木炭成型材料の表面との間には第1のフッ素樹脂板が介在し、且つ前記金型の蓋と前記透気性シートとの間には第2のフッ素樹脂板が介在しているので、加圧成型後に木炭ボード半加工品を前記金型から取り出す作業は簡単に且つ迅速に行われる。従って、金型からの取り出し工程での木炭ボード半加工品の破損事故が激減し、製造コストが大幅に低減できるようになった。
【0017】
更にまた、本発明に係る第3の製造方法は、バインダーとしてグルコマンナンを用いた木炭ボードの公知の基本的な製造方法を構成する必須構成工程に、第1のフッ素樹脂板を金型に敷く工程、前記第1のフッ素樹脂板の上に第1の透気性シートを敷く工程、前記金型に流し込まれた木炭成型材料の表面に第2の透気性シートを敷く工程、及び前記第2の透気性シートの上に第2のフッ素樹脂板を敷く工程を付加して構成されたものであるから、公知の基本的な製造方法を大幅に変更するものではなく、従って低コストの製造方法が提供された。また、前記金型の底面と前記第1の透気性シートとの間には第1のフッ素樹脂板が介在し、且つ前記金型の蓋と前記第2の透気性シートとの間には第2のフッ素樹脂板が介在しているので、加圧成型後に木炭ボード半加工品を前記金型から取り出す作業は簡単に且つ迅速に行われる。従って、金型からの取り出し工程での木炭ボード半加工品の破損事故が激減し、製造コストが大幅に低減できるようになった。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
本発明を実施するための最良の形態は、粉状若しくは粒状の木炭又はこれらを混合した木炭と少量のグルコマンナン粉とに水を加えて練り合わせて木炭成型材料を製造する工程、第1のフッ素樹脂板を前記金型に敷く工程、第1のフッ素樹脂板の上に透気性シートを敷く工程、前記第1のフッ素樹脂板と前記透気性シートが敷かれた前記金型に前記木炭成型材料を流し込む工程、前記金型に流し込まれた木炭成型材料の表面に第2のフッ素樹脂板を敷く工程、前記第2のフッ素樹脂板の上からホットプレスで前記金型に流し込まれた木炭成型材料を加圧成型する加圧成型工程、前記加圧成型工程により得られた木炭ボード半加工品を前記金型から取り出す工程、及び、前記木炭ボード半加工品を乾燥し固化する乾燥・固化工程を含む透気性シートで表面を被覆した木炭ボードの製造方法である。
【実施例1】
【0019】
本発明の実施例1の製造方法は、図5のフローチャートに示す如く、木炭成型材料3の製造工程S101、金型1の底面に第1のフッ素樹脂板4を敷き詰める工程S102、第1のフッ素樹脂4の上に全面にわたって植物性不織布6を重ねて敷き詰める工程S103、第1のフッ素樹脂板4と植物性不織布6が敷き詰められた金型1に木炭成型材料3を流し込む工程S104、金型1に流し込まれた木炭成型材料3の表面に第2のフッ素樹脂板5を敷き詰める工程S105、加圧成型工程S106を含む。
【0020】
工程S104において、金型1に流し込まれた木炭成型材料3の表面は、概ね平坦になるようにならされる。第2のフッ素樹脂板5を敷き詰める工程S105まで完了した状態は、図1の模式的な断面図に示す如く、金型1の中に第1のフッ素樹脂板4、植物性不織布6、木炭成型材料3、第2のフッ素樹脂板5がこの順に積層された状態にある。第2のフッ素樹脂板5を敷き詰めるが完了した後は、蒸気抜き孔を備えた蓋2が第2のフッ素樹脂板5の上に載置され、金型1は蓋をされる。蒸気抜き孔付の鉄板2で蓋をされた金型1はホットプレス機に設置される。
【0021】
そして、加圧成型工程S106において、金型1に流し込まれた木炭成型材料3はホットプレス機によって所定温度で所定時間かけて加圧成型される。木炭ボードの半加工品の取り出し工程S107において、所定時間経過後にホットプレス機は解圧され、前記木炭ボードの半加工品はホットプレス機から取り出される。最後に、加圧成型品の乾燥・固化工程S108において、前記木炭ボードの半加工品は室内または室外(天日)で乾燥・固化され、木炭ボードは完成する。
【0022】
金型1の底面のサイズは450mm×900mmである。第1のフッ素樹脂板4と第2のフッ素樹脂板5はいずれも、サイズは450mm×900mmで、厚みは8mmの市販のフッ素樹脂板である。透気性シートである植物性不織布6には、450mm×900mmサイズのユニチカ株式会社のポリ乳酸を素材とするスパンボンド不織布「テラマック(商標)」を用いた。前記ポリ乳酸は、トウモロコシなど再生可能な植物資源からとれるでんぷん原料に乳酸発酵を経て化学合成法によって作られるポリマーである。
【0023】
前記木炭成型材料3は、図8のフローチャートに示す如く、グルコマンナン粉12を水13によく分散させて或る程度吸水・膨潤させる吸水・膨潤工程S11と、練り合わせ工程S12を経て得られた材料である。吸水・膨潤工程S11においてグルコマンナン粉12に加えられる水13は、粉状または粒状の木炭11に対して45〜90重量%程度の量の水の全量又は一部である。吸水・膨潤工程S11で使われなかった残りの水13は、練り合わせ工程S12で使われる。吸水・膨潤工程S11は、練り合わせ工程S12で粉状または粒状の木炭11とグルコマンナン12がより均一に混ざり合うように設けたものである。練り合わせ工程S12においては、粉状または粒状の木炭11と吸水・膨潤工程S11を経た少量の膨潤したグルコマンナンは、水13を加えて攪拌機で十分に練り合わせられる。
【0024】
グルコマンナン粉12の量は、粉状又は粒状の木炭11に対して1.5〜6.0重量%程度で十分である。しかし、多少の製造コストアップを容認できる範囲であれば、6.0重量%を超える量、例えば10.0重量%であってもよい。練り合わせのために加えられる水13は、粉状または粒状の木炭11に対して45〜90重量%程度である。
【0025】
本発明の実施例1の製造方法で製造された木炭ボードは、図2に示す如く、450mm×900mmで厚さは5〜6mmの木炭層4Aの片面全面に植物性不織布6が接着された木炭ボード、即ち透気性シートで表面を被覆した大判の木炭ボードである。
【0026】
上述の説明から明らかな如く、本発明の実施例1の製造方法は、バインダーとしてグルコマンナンを用いた木炭ボードの公知の基本的な製造方法を構成する必須構成工程に、第1のフッ素樹脂板4を金型1に敷く工程、第1のフッ素樹脂板4の上に植物性不織布6を敷く工程、金型1に流し込まれた木炭成型材料3の表面に第2のフッ素樹脂板5を敷く工程を付加して構成されたものであるから、公知の基本的な製造方法を大幅に変更するものではなく、従って低コストの製造方法である。
【0027】
また、金型1の底面と植物性不織布6との間には第1のフッ素樹脂板が介在し、且つ金型1の蓋2と木炭成型材料3の表面との間には第2のフッ素樹脂板が介在しているので、450mm×900mmという大判の木炭ボード半加工品を金型1から取り出す作業は簡単に且つ迅速に簡単に行われる。しかも、木炭ボード半加工品が曲がったり、その表面を被覆した透気性シートが剥がれたり破損するなどの問題は全くなくなった。従って、金型1からの取り出し工程での木炭ボード半加工品の破損事故が激減し、この点でも製造コストの大幅な低減が可能になった。要するに、実施例1の製造方法により、450mm×900mmまたはそれ以上の木炭ボードであって、透気性シートで片面全面を被覆した大判の木炭ボードを工業的に製造できるようになった。
【実施例2】
【0028】
本発明の実施例2の製造方法は、図6のフローチャートに示す如く、木炭成型材料3の製造工程S201、金型1の底面に第1のフッ素樹脂板4を敷き詰める工程S202、第1のフッ素樹脂板4が敷き詰められた金型1に木炭成型材料3を流し込む工程S203、金型1に流し込まれた木炭成型材料3の表面に植物性不織布7を重ねて敷き詰める工程S204、植物性不織布6の上に全面にわたって第2のフッ素樹脂5を重ねて敷き詰める工程S205、加圧成型工程S206を含む。
【0029】
工程S203において、金型1に流し込まれた木炭成型材料3の表面は、概ね平坦になるようにならされる。第2のフッ素樹脂板5を敷き詰める工程S105まで完了した状態は、図3の模式的な断面図に示す如く、金型1の中に第1のフッ素樹脂板4、木炭成型材料3、植物性不織布7、第2のフッ素樹脂板5がこの順に積層された状態にある。第2のフッ素樹脂板5を敷き詰めが完了した後は、蒸気抜き孔を備えた蓋2が第2のフッ素樹脂板5の上に載置され、金型1は蓋をされる。蒸気抜き孔付の鉄板2で蓋をされた金型1はホットプレス機に設置される。
【0030】
そして、加圧成型工程S206において、金型1に流し込まれた木炭成型材料3はホットプレス機によって所定温度で所定時間かけて加圧成型される。木炭ボードの半加工品の取り出し工程S207において、所定時間経過後にホットプレス機は解圧され、前記木炭ボードの半加工品はホットプレス機から取り出される。最後に、加圧成型品の乾燥・固化工程S208において、前記木炭ボードの半加工品は室内または室外(天日)で乾燥・固化され、木炭ボードは完成する。
【0031】
金型1の底面のサイズは450mm×900mmである。第1のフッ素樹脂板4と第2のフッ素樹脂板5はいずれも、サイズは450mm×900mmで、厚みは8mmの市販のフッ素樹脂板である。透気性シートである植物性不織布7には、450mm×900mmサイズのスパンボンド不織布「テラマック(商標)」を用いた。前記木炭成型材料3は、図8のフローチャートに示す如き方法で製造されたものである。
【0032】
本発明の実施例2の製造方法で製造された木炭ボードは、450mm×900mmで厚さは5〜6mmの木炭層の片面全面に植物性不織布7が接着された木炭ボード、即ち透気性シートで表面を被覆した大判の木炭ボードである。
【0033】
上述の説明から明らかな如く、本発明の実施例2の製造方法は、バインダーとしてグルコマンナンを用いた木炭ボードの公知の基本的な製造方法を構成する必須構成工程に、第1のフッ素樹脂板4を金型1に敷く工程、金型1に流し込まれた木炭成型材料3の表面に植物性不織布7を敷く工程、及び植物性不織布7の上に第2のフッ素樹脂板5を敷く工程を付加して構成されたものであるから、公知の基本的な製造方法を大幅に変更するものではなく、従って低コストの製造方法である。
【0034】
また、金型1の底面と木炭成型材料3の表面の間には第1のフッ素樹脂板4が介在し、且つ金型1の蓋2と植物性不織布7との間には第2のフッ素樹脂板5が介在しているので、450mm×900mmという大判の木炭ボード半加工品を金型1から取り出す作業は簡単に且つ迅速に簡単に行われる。しかも、木炭ボード半加工品が曲がったり、その表面を被覆した透気性シートが剥がれたり破損するなどの問題は全くなくなった。従って、金型1からの取り出し工程での木炭ボード半加工品の破損事故が激減し、この点でも製造コストの大幅な低減が可能になった。要するに、実施例2の製造方法により、450mm×900mmまたはそれ以上の木炭ボードであって、透気性シートで片面全面を被覆した大判の木炭ボードを工業的に製造できるようになった。
【実施例3】
【0035】
本発明の実施例3の製造方法は、図7のフローチャートに示す如く、木炭成型材料3の製造工程S301、金型1の底面に第1のフッ素樹脂板4を敷き詰める工程S302、第1のフッ素樹脂4の上に全面にわたって第1の植物性不織布6を重ねて敷き詰める工程S303、第1のフッ素樹脂板4と植物性不織布6が敷き詰められた金型1に木炭成型材料3を流し込む工程S304、金型1に流し込まれた木炭成型材料3の表面に第2の植物性不織布7を重ねて敷き詰める工程S305、第2の植物性不織布7の上に全面にわたって第2のフッ素樹脂5を重ねて敷き詰める工程S306、加圧成型工程S307を含む。
【0036】
工程S304において、金型1に流し込まれた木炭成型材料3の表面は、概ね平坦になるようにならされる。第2のフッ素樹脂板5を敷き詰める工程S306まで完了した状態は、図4の模式的な断面図に示す如く、金型1の中に第1のフッ素樹脂板4、第1の植物性不織布6、木炭成型材料3、第2の植物性不織布7、第2のフッ素樹脂板5がこの順に積層された状態にある。第2のフッ素樹脂板5を敷き詰めが完了した後は、蒸気抜き孔を備えた蓋2が第2のフッ素樹脂板5の上に載置され、金型1は蓋をされる。蒸気抜き孔付の鉄板2で蓋をされた金型1はホットプレス機に設置される。
【0037】
そして、加圧成型工程S307において、金型1に流し込まれた木炭成型材料3はホットプレス機によって所定温度で所定時間かけて加圧成型される。木炭ボードの半加工品の取り出し工程S308において、所定時間経過後にホットプレス機は解圧され、前記木炭ボードの半加工品はホットプレス機から取り出される。最後に、加圧成型品の乾燥・固化工程S208において、前記木炭ボードの半加工品は室内または室外(天日)で乾燥・固化され、木炭ボードは完成する。
【0038】
金型1の底面のサイズは450mm×900mmである。第1のフッ素樹脂板4と第2のフッ素樹脂板5はいずれも、サイズは450mm×900mmで、厚みは8mmの市販のフッ素樹脂板である。第1の植物性不織布6と第2の植物性不織布7には、450mm×900mmサイズのスパンボンド不織布「テラマック(商標)」を用いた。前記木炭成型材料3は、図8のフローチャートに示す如き方法で製造されたものである。
【0039】
本発明の実施例3の製造方法で製造された木炭ボードは、450mm×900mmで厚さは5〜6mmの木炭層の一方の片面全面に第1の植物性不織布6が且つ他方の片面全面に第2の植物性不織布7がそれぞれ接着された木炭ボード、即ち透気性シートで表面を被覆した大判の木炭ボードである。
【0040】
上述の説明から明らかな如く、本発明の実施例3の製造方法は、バインダーとしてグルコマンナンを用いた木炭ボードの公知の基本的な製造方法を構成する必須構成工程に、第1のフッ素樹脂板4を金型1に敷く工程、第1のフッ素樹脂板4の上に第1の植物性不織布6を敷く工程、金型1に流し込まれた木炭成型材料3の表面に第2の植物性不織布7を敷く工程、及び第2の植物性不織布7の上に第2のフッ素樹脂板5を敷く工程を付加して構成されたものであるから、公知の基本的な製造方法を大幅に変更するものではなく、従って低コストの製造方法である。
【0041】
また、金型1の底面と第1の植物性不織布6の間には第1のフッ素樹脂板が介在し、且つ金型1の蓋2と植物性不織布7との間には第2のフッ素樹脂板が介在しているので、450mm×900mmという大判の木炭ボード半加工品を金型1から取り出す作業は簡単に且つ迅速に簡単に行われる。しかも、木炭ボード半加工品が曲がったり、その表面を被覆した透気性シートが剥がれたり破損するなどの問題は全くなくなった。従って、金型1からの取り出し工程での木炭ボード半加工品の破損事故が激減し、この点でも製造コストの大幅な低減が可能になった。要するに、実施例3の製造方法により、450mm×900mmまたはそれ以上の木炭ボードであって、透気性シートで両面全面を被覆した大判の木炭ボードを工業的に製造できるようになった。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】実施例1において、木炭成型材料が流し込まれた金型の模式的な断面図である。
【図2】実施例1により製造された透気性シートで片面全面を被覆した大判の木炭ボードの模式的な斜視図である。
【図3】実施例2において、木炭成型材料が流し込まれた金型の模式的な断面図である。
【図4】実施例3において、木炭成型材料が流し込まれた金型の模式的な断面図である。
【図5】実施例1の透気性シートで片面を被覆した木炭ボードの製造方法のフローチャートである。
【図6】実施例2の透気性シートで片面を被覆した木炭ボードの製造方法のフローチャートである。
【図7】実施例3の透気性シートで両面を被覆した木炭ボードの製造方法のフローチャートである。
【図8】木炭成型材料の製造方法を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0043】
1 金型
2 蓋
3,14 木炭成型材料
3A 木炭層
4,5 フッ素樹脂板
6,7 植物性不織布
11 粉状又は粒状の木炭
12 グルコマンナン粉
13 水
S11 吸水・膨潤工程
S12 練り合わせ工程
S101,S201,S301 木炭成型材料の製造工程
S102,S202,S302 第1のフッ素樹脂板を敷く工程
S103,S204,S303,S306 不織布を敷く工程
S104,S203,S304 金型に木炭成型材料を流し込む工程
S105,S202,S302 第2のフッ素樹脂板を敷く工程
S106,S206,S307 加圧成型工程
S107,S207,S308 金型からの加圧成型品の取り出し工程
S108,S208,S309 加圧成型品の乾燥・固化工程
































【特許請求の範囲】
【請求項1】
粉状若しくは粒状の木炭又はこれらを混合した木炭と少量のグルコマンナン粉とに水を加えて練り合わせて木炭成型材料を製造する工程、
第1のフッ素樹脂板を前記金型に敷く工程、
第1のフッ素樹脂板の上に透気性シートを敷く工程、
前記第1のフッ素樹脂板と前記透気性シートが敷かれた前記金型に前記木炭成型材料を流し込む工程、
前記金型に流し込まれた木炭成型材料の表面に第2のフッ素樹脂板を敷く工程、
前記第2のフッ素樹脂板の上からホットプレスで前記金型に流し込まれた木炭成型材料を加圧成型する加圧成型工程、
前記加圧成型工程により得られた木炭ボード半加工品を前記金型から取り出す工程、及び、
前記木炭ボード半加工品を乾燥し固化する乾燥・固化工程を含む透気性シートで表面を被覆した木炭ボードの製造方法。
【請求項2】
粉状若しくは粒状の木炭又はこれらを混合した木炭と少量のグルコマンナン粉とに水を加えて練り合わせて木炭成型材料を製造する工程、
第1のフッ素樹脂板を前記金型に敷く工程、
前記第1のフッ素樹脂板が敷かれた前記金型に前記木炭成型材料を流し込む工程、
前記金型に流し込まれた木炭成型材料の表面に透気性シートを敷く工程、
前記透気性シートの上に第2のフッ素樹脂板を敷く工程、
前記第2のフッ素樹脂板の上からホットプレスで前記金型に流し込まれた前記木炭成型材料を加圧成型する加圧成型工程、
前記加圧成型工程により得られた木炭ボード半加工品を前記金型から取り出す工程、及び、
前記木炭ボード半加工品を乾燥し固化する乾燥・固化工程を含む透気性シートで表面を被覆した木炭ボードの製造方法。
【請求項3】
粉状若しくは粒状の木炭又はこれらを混合した木炭と少量のグルコマンナン粉とに水を加えて練り合わせて木炭成型材料を製造する工程、
第1のフッ素樹脂板を金型に敷く工程、
前記第1のフッ素樹脂板の上に第1の透気性シートを敷く工程、
前記第1のフッ素樹脂板と前記第1の透気性シートが敷かれた前記金型に前記木炭成型材料を流し込む工程、
前記金型に流し込まれた前記木炭成型材料の表面に第2の透気性シートを敷く工程、
前記第2の透気性シートの上に第2のフッ素樹脂板を敷く工程、
前記第2のフッ素樹脂板の上からホットプレスで前記金型に流し込まれた前記木炭成型材料を加圧成型する加圧成型工程、
前記加圧成型工程により得られた木炭ボード半加工品を前記金型から取り出す工程、及び、
前記木炭ボード半加工品を乾燥し固化する乾燥・固化工程を含む透気性シートで表面を被覆した木炭ボードの製造方法。
【請求項4】
前記練り合わせ工程は、粉状若しくは粒状の木炭又はこれらを混合した木炭、該木炭よりも少量のグルコマンナン、及び前記グルコマンナンよりも更に少量のカルシウム化合物を混合したものに水を加えて練り合わせる練り合わせ工程であることを特徴とすると請求項1から3のいずれかに記載された透気性シートで表面を被覆した木炭ボードの製造方法。
【請求項5】
前記透気性シートは和紙であることを特徴とすると請求項1から3のいずれかの1から3のいずれか記載された透気性シートで表面を被覆した木炭ボードの製造方法。
【請求項6】
前記透気性シートは植物性不織布であることを特徴とすると請求項1から3のいずれかに記載された透気性シートで表面を被覆した木炭ボードの製造方法。




























【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2008−302603(P2008−302603A)
【公開日】平成20年12月18日(2008.12.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−152275(P2007−152275)
【出願日】平成19年6月8日(2007.6.8)
【出願人】(594076289)
【Fターム(参考)】