説明

透過型液晶パネルの製造方法

【課題】コントラスト比の高い透過型液晶パネルを得る。
【解決手段】サファイア基板のC結晶軸と偏光板の透過偏光軸または吸収偏光軸のいずれかの偏光軸を合わせて貼付する、基板の一方がサファイア基板である透過型液晶パネルの製造方法であって、クロスニコルに配置したリファレンス偏光板の間に透過型液晶パネルを挿入し、サファイア基板の一部に一方のリファレンス偏光板を透過した光を透過させ、透過型液晶パネルを回転し、他方のリファレンス偏光板を透過する光が最小になる位置を検出し、透過型液晶パネルに偏光板を貼付するためのマーキングをする透過型液晶パネルの製造方法とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は透過型液晶パネルの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
以前よりホームシアター用途を中心に使用されてきた液晶プロジェクタ装置は、液晶パネルの高精細化・ランプの高輝度化による映写画像の向上により、パソコン映像をそのまま投影して使用するプレゼンツールへと発展を遂げて来た。
【0003】
この液晶プロジェクタ装置は、例えば図9に示すように構成されている。図9は単板式液晶プロジェクタ装置の要部構成模式図である。図中、31はメタルハライドランプ・キセノンランプ・UHP等の高輝度ランプ光源、32は反射鏡、34は一対の偏光板、35は透過型液晶パネル、36は一対のレンズ、37は赤外線カットフィルター、38は投写レンズ、39は吸気ファン、40は排気ファン、41は筐体である。
【0004】
このような構成において、光源31と反射鏡32の反射光は、赤外線カットフィルター37で赤外線成分をカットした後、レンズ36、偏光板34を経て通過し、さらに透過型液晶パネル35の映像を投写レンズ38で拡大してスクリーン(不図示)に投影する。一方、吸気ファン39と排気ファン40が筐体41の側面に設けられ、透過型液晶パネル35及び偏光板34、光源31等を冷却している。
【0005】
これらの液晶プロジェクタ装置の場合、その液晶画像形成部に偏光板34、34を用いるために、光が大幅に吸収されてしまうこと、また、装置の小型化を図るため、1インチ近傍のサイズにまで面積の小型化が図られた透過型液晶パネル35の画像を数十インチから数百インチまで拡大し投影すること、などにより投影された映像の明るさの低減が避けられない。
【0006】
そこで、光源31としては高輝度のメタルハライドランプ、UHPランプ、キセノンランプなどの高出力のランプが使用されている。しかも、使用用途が、パソコン映像をそのまま投影して使用するプレゼンツールへと拡大するにつれ、更に小型化、高精細化、高輝度化が要求が強くなり、ますます高出力のランプが選択されるようになってきている。
【0007】
そのため、液晶プロジェクタ装置においては、熱による不都合をなくすことが重要な課題となっている。
【0008】
例えば、一般に液晶表示部を構成する偏光板としては沃素系偏光板を用いるが、これでは耐光性・耐熱性・耐湿熱性が十分ではないため、特に液晶プロジェクタ装置には、耐光性・耐熱性・耐湿性により優れる染料系偏光板が使用されている。
【0009】
しかし、特に入射側の偏光板34の場合、光の透過率が40%程度しかなく、大半の光を吸収し発熱してしまい、70℃以上になると特性が維持できないという問題がある。また、透過型液晶パネル35自体も熱には弱く、60℃以上になると特性に支障を来すという問題がある。そこで、液晶プロジェクタ装置では、冷却ファンを発熱部に取り付ける空冷方式、液冷方式、ペルチェ素子等の電子冷却方式、偏光変換器を光源直後に設置する方式等の冷却方式が考案されてきたが一長一短があった。
【0010】
そこで光源からの光をレンズ、偏光板を介して透過型液晶パネルを通過させ、投影するようにした液晶プロジェクタ装置において、上記レンズ、偏光板における偏光体の保持板、液晶パネルを構成する透明基板のうちの少なくとも一種をサファイア基板で形成することが考案された。液晶プロジェクタ装置における透過型液晶パネルの透明基板として熱伝導性の高いサファイア基板を用いることによって、放熱性を高めるようにしたものである。(特許文献1)。
【0011】
図8は、透明基板にサファイア基板を使用した透過型液晶パネルの正面図(A)と断面図(B)である。透過型液晶パネル1は、入射側に位置する画素電極及びスイッチング素子を形成する透明基板2と、出射側に位置する対向電極を形成する透明基板3との間隙に液晶4を保持する構造を取っている。透過型液晶パネル1を構成する入射側の画素電極及びスイッチング素子を形成する透明基板2、及び出射側の対向電極を形成する透明基板3をサファイア基板で形成し、透過型液晶パネル1を構成したものである。
【0012】
この透明基板2、3を成すサファイア基板について、いずれも透過すべき偏光の偏光軸とサファイアの結晶軸によるC結晶軸又はC結晶軸投影線方向又はC結晶軸と直交する軸との成す角度が、±2゜好ましくは±0.5゜以内となるように構成するか、またはサファイア基板の面方位をC面±2゜好ましくは±0.5゜以内とする必要がある。
【0013】
この場合、透過型液晶パネル1を構成する透明基板2、3自体が十分な放熱特性を持つサファイアから成るため、前記透明基板2、3の外面側に直接偏光板5、6を接合することができる。
【0014】
単結晶サファイアは、アルミナ(Al23)の単結晶体であり、Al原子・O原子が配置し結晶を形成している。図7は単結晶サファイアの斜視図(A)とA面サファイア基板の平面図(B)である。図7(A)に示すようにサファイアは六方晶系であり、その中心軸がC結晶軸、これに垂直な面がC面(0001)である。そして、C結晶軸から放射状にのびるA軸(a1,a2,a3)に垂直な面がA面(11−20)となる。R面(1、−1、0、2)は、C結晶軸と一定の角度(約32.383゜)を有して存在する。
【0015】
【特許文献1】特開平11−337919号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
サファイア基板は結晶軸に入射する偏光方向により位相差が発生する。位相差によりクロスニコル(90°に直交)の偏光板の黒レベルに対して、光が漏れコントラストが低下する。
【0017】
サファイア基板上に設けるLSIは露光装置を使用して形成する。露光はサファイア基板上に設けるアライメントマークを使用して精度良く行えるが、露光装置にセットするサファイア基板の回転方向精度は高くない。
【0018】
透過型液晶パネルでは2枚の偏光板の透過偏光軸または吸収偏光軸のいずれかの偏光軸をクロスニコルにして使用するが、透過型液晶パネルに偏光板を貼るのに位置合わせが必要であり、位置ズレが発生するとさらにコントラスト比が低下するという問題がある。一般に偏光板は型抜きで形成され、型抜きされた外形を目安にして位置決めされるだけで、サファイア基板のC結晶軸と合わせることはされていない。
【課題を解決するための手段】
【0019】
サファイア基板のC結晶軸と偏光板の透過偏光軸または吸収偏光軸のいずれかの偏光軸を合わせて貼付する、基板の一方がサファイア基板である透過型液晶パネルの製造方法であって、クロスニコルに配置したリファレンス偏光板の間に透過型液晶パネルを挿入し、サファイア基板の一部に一方のリファレンス偏光板を透過した光を透過させ、透過型液晶パネルを回転し、他方のリファレンス偏光板を透過する光が最小になる位置を検出し、透過型液晶パネルに偏光板を貼付するためのマーキングをする透過型液晶パネルの製造方法とする。
【0020】
前記マーキングはC結晶軸方向と該C結晶軸に直交する軸方向が分かるように行い、更に形成されるマークはサファイア基板側、ガラス基板側の両方向から識別できる透過型液晶パネルの製造方法とする。
【0021】
マーキング用薄膜はSOS基板のLSI加工工程で形成する前記透過型液晶パネルの製造方法とする。
【発明の効果】
【0022】
サファイア基板と単結晶シリコン基板を貼付したSOS基板を使用し、サファイア基板のC結晶軸と偏光板の透過偏光軸または吸収偏光軸のいずれかの偏光軸を正確に合わせることで、コントラストの高い透過型液晶パネルが形成できる。
【0023】
リファレンス偏光板を使用して液晶パネルのサファイア基板のC結晶軸方向を検出してマーキングし、マークに位置決めして偏光板を貼付するので、サファイア基板の露光装置へのセットのばらつきに関係なく補正ができ、サファイア基板のC結晶軸と偏光板の偏光軸ズレを防止できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
サファイア基板のC結晶軸と偏光板の透過偏光軸または吸収偏光軸のいずれかの偏光軸を合わせて貼付する、基板の一方がサファイア基板である透過型液晶パネルの製造方法であって、クロスニコルに配置したリファレンス偏光板の間に透過型液晶パネルを挿入し、サファイア基板の一部に一方のリファレンス偏光板を透過した光を透過させ、透過型液晶パネルを回転し、他方のリファレンス偏光板を透過する光が最小になる位置を検出し、透過型液晶パネルに偏光板を貼付するためのマーキングをする透過型液晶パネルの製造方法とする。
【実施例1】
【0025】
図1は本発明に係る透過型液晶パネルの正面図(A)と断面図(B)であり、図2は各部品の分解図である。透過型液晶パネル11は、出射側に位置する画素電極及びスイッチング素子を形成する透明基板12と、入射側に位置する対向電極を形成する透明基板13との間隙に液晶14を保持する構造を取っている。透過型液晶パネル11を構成する出射側の画素電極及びスイッチング素子を形成する透明基板12はSOS基板であり、入射側の対向電極を形成する透明基板13はガラス基板または石英基板で形成し、透過型液晶パネル11を構成したものである。透明基板13もサファイアであってもよいが、光の透過率を考慮するとガラス基板か石英基板の方が好ましい。
【0026】
透明基板(以下サファイア基板という)12と透明基板(以下ガラス基板という)13はシール剤19により接着され、液晶注入口20より液晶14を注入して、封止剤21で封口されている。各透明基板の液晶側には夫々配向膜17、18が形成されている。各透明基板の反対面には偏光板15、16が夫々の透過軸がクロスニコルに接着される。図1(A)の矢印は単結晶サファイアのC結晶軸方向であり、偏光板15の透過軸はC結晶軸に合わせ、偏光板16の透過軸はC結晶軸に直交する軸に合わせる。
【0027】
図3は90°ツイストネマチック液晶を使用する透過型液晶パネルのサファイア基板と配向膜の配向軸及び液晶分子の関係を示す図で、サファイア基板側から見た模式図である。図中の矢印は単結晶サファイアのC結晶軸を示す。
【0028】
図3(A)において、サファイア基板に形成された配向膜の配向軸はY軸に平行であり、配向膜に接触する液晶分子は実線の方向に配向されている。点線で示す液晶分子は対向するガラス基板に形成された配向膜に接しているものであり、ガラス基板に形成された配向膜はX軸に平行に配向されている。
【0029】
図3(B)において、サファイア基板に形成された配向膜の配向軸はY軸から左回りに45°傾いて形成されており、配向膜に接触する液晶分子は実線の方向に配向されている。点線で示す液晶分子は対向するガラス基板に形成された配向膜に接しているものであり、ガラス基板に形成された配向膜はY軸から右回りに45°傾いて配向されている。
【0030】
図4はサファイア基板側の偏光板の透過偏光軸または吸収偏光軸のいずれかの偏光軸、サファイア基板のC結晶軸、配向膜の配向軸方向とガラス基板側の偏光板の透過偏光軸または吸収偏光軸のいずれかの偏光軸と、配向膜の配向軸方向を示す模式図である。本例は矩形状サファイア基板12の辺に対しC結晶軸が45°傾いている例であり、C結晶軸と偏光板15の透過軸方向と配向膜17の配向軸を一致させている。ガラス基板13に形成する配向膜18の配向軸と偏光板16の透過軸はサファイア基板12側の各軸とクロスニコルに配置されている。
【0031】
図5は単結晶サファイアの主面がA面、C面、R面のコントラスト比のグラフである。縦軸はコントラスト比であり、横軸は回転角を示す。縦軸の両脇に±1°の位置を示している。測定は、2枚の偏光板の透過偏光軸または吸収偏光軸のいずれかの偏光軸をクロスニコルさせ、その間にサファイア基板を入れ、サファイア基板を回転させる。一方の偏光板の外側に光源、他方の偏光板の外側に光センサを配置し、光源の光が光センサに到達する光量を測定すると黒レベルが測定できる。2枚の偏光板の透過偏光軸または吸収偏光軸のいずれかの偏光軸を平行にして、同様にサファイア基板を回転して白レベルを黒レベルと同一角度で測定する。白/黒でコントラスト比が出せる。A面のコントラスト比が高いことが分かる。
【0032】
図6は本発明で使用する位置あわせ装置の模式図であり、同図(A)は位置確認工程、(B)はマーキング工程である。
【0033】
図6(A)において12はサファイア基板、13はガラス基板、22、23はリファレンス偏光板、24は光源である。リファレンス偏光板22、23を最も光源24からの光が透過しない状態のクロスニコルに配置し、その間にサファイア基板12を出射側にして透過型液晶パネルを挿入する。サファイア基板12の一部に光源24の光を透過させ、透過型液晶パネルを回転してリファレンス偏光板22から出射する光が最小になる位置を探す。リファレンス偏光板22から出射する光が最小になる位置が、リファレンス偏光板22、23とサファイア基板12の最大のコントラストを達成する軸が一致した位置である。
【0034】
次に、図6(B)に示すように、サファイア基板12にレーザーでマーキングする。マーキングはサファイア基板の対角線でも4箇所でも良いが、C結晶軸方向とC結晶軸に直交する軸方向が分かるようにマークする。好ましくは、サファイア基板側とガラス基板側から認識できるようにすると良い。マーキング位置と偏光板の透過偏光軸または吸収偏光軸のいずれかの偏光軸を合わせてクロスニコルに貼付することでサファイア基板12、ガラス基板13と偏光板15、16の偏光軸を正確にあわせて貼付することができ、位置ズレが防止できる。マーキング用薄膜はSOS基板のLSI加工工程で形成するが、本マーキング用として形成するのではなくLSI工程で形成する薄膜を利用すれば良い。
【0035】
本発明による透過型液晶パネルを図9に示す液晶プロジェクタ装置に用いることにより、コントラストの高い液晶プロジェクタ装置が実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明による透過型液晶パネルの正面図(A)と断面図(B)
【図2】各部品の分解図
【図3】90°ツイストネマチック液晶を使用する液晶パネルのA面サファイア基板と配向膜の配向軸及び液晶分子の関係を示す図で、サファイア基板側から見た模式図
【図4】サファイア基板側の偏光板の透過偏光軸または吸収偏光軸のいずれかの偏光軸、サファイア基板のC結晶軸、配向膜の配向軸方向とガラス基板側の偏光板の透過偏光軸または吸収偏光軸のいずれかの偏光軸と、配向膜の配向軸方向を示す模式図
【図5】単結晶サファイアの主面がA面、C面、R面のコントラスト比のグラフ
【図6】本発明で使用する位置あわせ装置の模式図であり、同図(A)は位置確認工程、(B)はマーキング工程
【図7】単結晶サファイアの斜視図(A)とA面サファイア基板の平面図(B)
【図8】透明基板にサファイア基板を使用した液晶パネルの正面図(A)と断面図(B)
【図9】単板式型液晶プロジェクタ装置の要部構成模式図
【符号の説明】
【0037】
1 透過型液晶パネル
2 透明基板
3 透明基板
4 液晶
5 偏光板
6 偏光板
11 透過型液晶オア寝る
12 透明基板(サファイア基板)
13 透明基板(ガラス基板)
14 液晶
15 偏光板
16 偏光板
17 配向膜
18 配向膜
19 シール剤
20 液晶注入口
21 封止剤
22 リファレンス偏光板
23 リファレンス偏光板
24 光源
31 光源
32 反射鏡
34 偏光板
35 液晶パネル
36 レンズ
37 赤外線カットフィルター
38 投写レンズ
39 吸気ファン
40 排気ファン
41 筐体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
サファイア基板のC結晶軸と偏光板の透過偏光軸または吸収偏光軸のいずれかの偏光軸を合わせて貼付する、基板の一方がサファイア基板である透過型液晶パネルの製造方法であって、クロスニコルに配置したリファレンス偏光板の間に透過型液晶パネルを挿入し、サファイア基板の一部に一方のリファレンス偏光板を透過した光を透過させ、透過型液晶パネルを回転し、他方のリファレンス偏光板を透過する光が最小になる位置を検出し、透過型液晶パネルに偏光板を貼付するためのマーキングをすることを特徴とする透過型液晶パネルの製造方法。
【請求項2】
前記マーキングはC結晶軸方向と該C結晶軸に直交する軸方向が分かるように行うことを特徴とする請求項1記載の透過型液晶パネルの製造方法。
【請求項3】
形成されるマークはサファイア基板側、ガラス基板側の両方向から識別できることを特徴とする請求項1又は2記載の透過型液晶パネルの製造方法。
【請求項4】
マーキング用薄膜はSOS基板のLSI加工工程で形成することを特徴とする請求項1記載の透過型液晶パネルの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2009−229755(P2009−229755A)
【公開日】平成21年10月8日(2009.10.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−74589(P2008−74589)
【出願日】平成20年3月21日(2008.3.21)
【出願人】(000166948)シチズンファインテックミヨタ株式会社 (438)
【Fターム(参考)】