説明

通信システム及び路側通信装置

【課題】車載通信装置のコスト増加を抑えつつ、通信を効率化して、通信トラフィック増大に対処する。
【解決手段】通信エリア内に存在する車載通信装置20との間の通信が可能な路側通信装置10を備えた通信システムであって、前記路側通信装置10は、アンテナが複数のアンテナ素子11−1〜11−4によって構成され、複数のアンテナ素子11−1〜11−4による空間多重処理を行う空間多重処理部17,18を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車載通信装置等との間で通信を行う路側通信装置を用いた通信システム及び路側通信装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、交通安全の促進や交通事故の防止などを目的として、路上等に設置されたインフラ装置(路側通信装置)から車載装置が情報を受信し、当該情報を活用することで、車両の安全性を向上させたり、利便性を向上させたりするシステムが検討されている。
【0003】
そのようなシステムとして、特許文献1には、交差点に設定された無線送信装置から信号機の情報を車両に送信し、車両がその情報を活用して、ブレーキ制御を行うものが開示されている。
【特許文献1】特許第2806801号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
路側通信装置と車載通信装置とからなる通信システム(ITS(Intelligent Transport System))では、路側通信装置と車載通信装置との間の「路車間通信」によって車載通信装置が路側通信装置から交通情報等を取得したり、車載通信装置同士の「車車間通信」によって車両同士が各車両の情報を交換して、交通の安全を確保することが行われる。
また、前記通信システムでは、路側通信装置同士の「路路間通信」によって、路側通信装置が必要な情報をやりとりすることもある。
【0005】
このような通信システムにおける通信は、電波需要が増大し、周波数割り当てが逼迫する昨今の状況においては、限られた狭い周波数帯域内で行われるため、無線資源を効率的に活用する必要がある。限られた狭い周波数帯域内で、路車間通信、車車間通信、及び路路間通信を行う場合、特に、都市部など車両が集中する状況下においては、非常に多くの車両からのトラフィックが発生することを考えると、時分割多重(TDM:Time Division Multiplex)を基本とした通信方式を選択することが一般的である。
つまり、路車間通信、車車間通信、及び必要であれば路路間通信それぞれにタイムスロットを割り当てて、時分割多重により、限られた周波数帯域を、路車間通信、車車間通信、及び路路間通信で共有することになる。
【0006】
しかし、車載通信装置の普及が進むと、通信トラフィックが増加し、車車間通信や、路車間通信のためのタイムスロットを確保することが困難になる。また、時分割多重を、スロッテッドアロハ(Slotted-ALOHA)等の競合型アクセス方式で行った場合、車載通信装置の数が多くなると送信タイミングの衝突が増える。
【0007】
そこで、本発明は、通信を効率化して、通信トラフィック増大に対処することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
第1の本発明は、通信エリア内に存在する車載通信装置との間の通信が可能な路側通信装置を備えた通信システムであって、前記路側通信装置は、アンテナが複数のアンテナ素子によって構成され、複数のアンテナ素子による空間多重処理を行う空間多重処理部を備えていることを特徴とする。
【0009】
第1の本発明によれば、路側通信装置が、複数のアンテナ有しており、空間多重処理が行えるため、限られた周波数帯域でも効率的な通信が行える。
【0010】
第2の本発明は、路側通信装置同士による通信である路路間通信と車載通信装置同士の通信である車車間通信とが行えるとともに、前記路路間通信と前記車車間通信とが時分割多重によって行われる通信システムであって、前記車載通信装置は、そのアンテナが1個以上のアンテナ素子によって構成され、前記路側通信装置は、そのアンテナが複数のアンテナ素子によって構成され、複数のアンテナ素子による空間多重処理を行う空間多重処理部を備え、同一の路路間通信用のタイムスロットを、空間多重によって、複数の路路間通信で共有するよう構成されている。
【0011】
第2の本発明によれば、路側通信装置は、複数のアンテナ素子を有するマルチアンテナであるため、時分割される路路間通信と車車間通信のうち、路路間通信を空間多重によって効率的に行え、車車間通信のための時間を多く確保することができる。しかも、路路間通信を空間多重とすることで、路路間通信のデータのセキュリティ性も向上する。
【0012】
路路間通信の信号を送信する路側通信装置は、通信相手である複数の路側通信装置のそれぞれに対して、一又は複数のアンテナ素子による1又は複数の信号系列を割り当てることで、同一の路路間通信用のタイムスロットにおいて、同時に複数の路路間通信を行うのが好ましい。
この場合、同一の路路間通信用のタイムスロットにおいて、複数の路路間通信を同時に行うことができる。
【0013】
路側通信装置は、通信相手である路側通信装置の数よりも多い数のアンテナ素子を有しているのが好ましい。この場合、通信トラフィックの増大や、データ再送の必要性がある場合に、新たなスロット割り当てをしなくとも、データを送信することが可能となる。
【0014】
路側通信装置は、通信トラフィックの大きい通信相手ほど、多くの信号系列が割り当てるよう構成されているのが好ましい。また、路側通信装置は、データ再送が必要な通信相手に対して、複数の信号系列を割り当てるよう構成されているのが好ましい。
【0015】
路路間通信の信号を送信する路側通信装置は、通信相手である複数の路側通信装置のそれぞれに対して、複数のアンテナ素子による複数の信号系列を割り当てて、路路間通信用のタイムスロットを時分割することにより、同一の路路間通信用のタイムスロットにおいて複数の路路間通信を行うのが好ましい。この場合、同一の路路間通信用タイムスロットを、時分割して、複数の路路間通信を行うことができる。
【0016】
第3の本発明は、車載通信装置から路側通信装置への通信である車−路通信と、車載通信装置同士の通信である車車間通信とが行えるとともに、前記車−路通信と前記車車間通信とが時分割多重によって行われる通信システムであって、前記路側通信装置は、そのアンテナが複数のアンテナ素子によって構成され、複数のアンテナ素子による空間多重処理を行う空間多重処理部を備え、前記車載通信装置は、そのアンテナが、1個以上のアンテナ素子によって構成されているとともに、路側通信装置の空間多重処理部による信号分離処理のためのトレーニングシンボルを送信可能に構成され、同一の車−路通信のタイムスロットを、空間多重によって、複数の車−路通信で共有するよう構成されている。
【0017】
第3の本発明によれば、路側通信装置が、複数のアンテナ素子を有するマルチアンテナであるとともに、車載通信装置が、信号分離のためのトレーニングシンボルを送信可能であるため、複数の車−路通信が同一に行われて衝突しても、路側通信装置側で信号を分離できる。したがって、同一の車−路通信のタイムスロットが、複数の車−路通信で共有され、車−路通信を効率的に行える。
【0018】
前記車載通信装置は、通信が路側通信装置によって集中制御されるインフラモードになると、前記トレーニングシンボルを送信するのが好ましい。インフラモードにおいて前記トレーニングシンボルを送信することで、路側通信装置側での信号分離が可能となる。
【0019】
前記車−路通信は、同一のタイムスロットを複数の車載通信装置が利用して送信する可能性のある競合型アクセスによって行われ、前記空間多重処理部は、当該競合型アクセスによって生じた複数の車載通信装置からの信号の衝突を、各車載通信装置のそれぞれの信号に分離するのが好ましい。競合型アクセスの場合、複数の信号が衝突し易いが、本発明によれば、信号が衝突しても、信号を分離することができる。
【0020】
前記車−路通信では、路側通信装置のアンテナ素子以下の数の車載通信装置が、同一の車−路通信用のタイムスロットに割り当てられるのが好ましい。路側通信装置のアンテナ素子以下の数の車載通信装置を、車−路通信用のタイムスロットに割り当てることで、確実に信号を分離することができる。
【0021】
第4の本発明は、路側通信装置同士の通信である路路間通信と、車載通信装置から路側通信装置への通信である車−路通信とが行える通信システムであって、前記路側通信装置は、そのアンテナが複数のアンテナ素子によって構成され、複数のアンテナ素子による空間多重処理を行う空間多重処理部を備え、前記車載通信装置は、そのアンテナが、1個以上のアンテナ素子によって構成されているとともに、路側通信装置の空間多重処理部による信号分離処理のためのトレーニングシンボルを送信可能に構成され、同一のタイムスロットを、空間分割多重により、前記路路間通信と前記車−路通信とで共有するものである。
【0022】
第4の本発明によれば、同一のタイムスロットを路路間通信と車−路間通信とで共用でき、効率的に路路間通信と車−路間通信を行うことができる。
【0023】
第5の本発明は、車載通信装置同士の通信である車車間通信が、路側通信装置によって集中制御されるとともに、同一のタイムスロットを複数の車載通信装置が利用して送信する可能性のある競合型アクセス方式の通信システムにおいて、前記路側通信装置は、そのアンテナが複数のアンテナ素子によって構成され、複数のアンテナ素子による空間多重処理を行う空間多重処理部を備え、前記車載通信装置は、そのアンテナが、1個以上のアンテナ素子によって構成されているとともに、路側通信装置の空間多重処理部による信号分離処理のためのトレーニングシンボルを送信可能に構成され、前記路側通信装置は、競合型アクセスによって衝突した複数の車車間通信の信号を、空間多重処理部によって、複数の車車間通信の信号に分離して、複数の車車間通信のモニタリングを行うよう構成されている。
【0024】
第5の本発明によれば、複数の車車間通信の信号が衝突しても、路側通信装置側では、これを分離して、効率的に車車間通信のモニタリングが行える。
【0025】
第6の本発明は、通信エリア内に存在する車載通信装置との間の通信が可能な路側通信装置であって、複数のアンテナ素子によって構成されたアンテナと、複数のアンテナ素子による空間多重処理を行う空間多重処理部と、を備えている。
第6の本発明によれば、路側通信装置が、複数のアンテナを有しており、空間多重処理が行えるため、限られた周波数帯域でも効率的な通信が行える。
【0026】
第7の本発明は、路側通信装置同士による通信である路路間通信と車載通信装置同士の通信である車車間通信とが時分割多重によって行われるように通信を制御する路側通信装置であって、複数のアンテナ素子によって構成されたアンテナと、複数のアンテナ素子による空間多重処理を行う空間多重処理部と、同一の路路間通信用のタイムスロットを、空間多重によって、複数の路路間通信で共有するよう制御する通信制御部と、を備えている。
【0027】
第7の本発明によれば、路側通信装置は、複数のアンテナ素子を有するマルチアンテナであるため、時分割される路路間通信と車車間通信のうち、路路間通信を空間多重によって効率的に行え、車車間通信のための時間を多く確保することができる。しかも、路路間通信を空間多重とすることで、路路間通信のデータのセキュリティ性も向上する。
【0028】
第8の本発明は、車載通信装置から路側通信装置への通信である車−路通信と車載通信装置同士の通信である車車間通信とが時分割多重によって行われるように通信を制御する路側通信装置であって、前記路側通信装置は、複数のアンテナ素子によって構成されたアンテナと、複数のアンテナ素子による空間多重処理を行う空間多重処理部と、を備え、前記空間多重処理部は、1個以上のアンテナ素子によって構成されているアンテナを有する車載通信装置から送信された信号分離処理のためのトレーニングシンボルに基づいて、同一の車−路通信のタイムスロットにおける複数の車−路通信の信号を分離するよう構成されている。
【0029】
第8の本発明によれば、路側通信装置が、複数のアンテナ素子を有するマルチアンテナであるとともに、車載通信装置が、信号分離のためのトレーニングシンボルを送信可能であるため、複数の車−路通信が同一に行われて衝突しても、路側通信装置側で信号を分離できる。したがって、同一の車−路通信のタイムスロットが、複数の車−路通信で共有され、車−路通信を効率的に行える。
【0030】
第9の本発明は、路側通信装置同士の通信である路路間通信と車載通信装置から路側通信装置への通信である車−路通信とが行われるように通信を制御する路側通信装置であって、前記路側通信装置は、複数のアンテナ素子によって構成されたアンテナと、複数のアンテナ素子による空間多重処理を行う空間多重処理部と、を備え、前記空間多重処理部は、1個以上のアンテナ素子によって構成されているアンテナを有する車載通信装置及び他の路側通信装置から送信された信号分離処理のためのトレーニングシンボルに基づいて、同一のタイムスロットにおける前記路路間通信の信号と前記車−路通信の信号とを分離するよう構成されている。
【0031】
第9の本発明によれば、同一のタイムスロットを路路間通信と車−路間通信とで共用でき、効率的に路路間通信と車−路間通信を行うことができる。
【0032】
第10の本発明は、車載通信装置同士の通信である車車間通信を集中制御するとともに、同一のタイムスロットを複数の車載通信装置が利用して送信する可能性のある競合型アクセス方式によって通信を制御する路側通信装置であって、前記路側通信装置は、複数のアンテナ素子によって構成されたアンテナと、複数のアンテナ素子による空間多重処理を行う空間多重処理部と、を備え、前記空間処理部は、1個以上のアンテナ素子によって構成されているアンテナを有する車載通信装置から送信された信号分離処理のためのトレーニングシンボルに基づいて、競合型アクセスによって衝突した複数の車車間通信の信号を、複数の車車間通信の信号に分離して、複数の車車間通信のモニタリングを行うよう構成されている。
【0033】
第10の本発明によれば、複数の車車間通信の信号が衝突しても、路側通信装置側では、これを分離して、効率的に車車間通信のモニタリングが行える。
【発明の効果】
【0034】
上記各本発明によれば、通信の効率化が図られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0035】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
図1は、通信システムを示している。この通信システムは、交差点又は交差点近傍などの路側に設置された複数の路側通信装置10A,10Bを有している。なお、複数の路側通信装置10A,10Bを個々に区別しない場合、「路側通信装置10」という。
【0036】
路側通信装置10は、当該路側通信装置10は車両20A〜20Gに搭載された車載通信装置との間で通信を行うことができる。なお、以下では、符号20A〜20Gは、車載通信装置を示すものとして用いる。また、複数の車載通信装置20A〜20Gを個々に区別しない場合、「車載通信装置20」という。
【0037】
車載通信装置20は、路側通信装置10の通信エリアに入ると、通信が当該路側通信装置10によって集中制御されるインフラモードによる通信を行う。また、路側通信装置10の通信エリア外では、車載通信装置20は、自律制御による通信を行うアドホックモードとなる。
【0038】
この通信システムでは、時分割多重方式により通信を行う。より具体的には、この通信システムでは、予約領域を設けたスロッテドアロハ(Slotted-ALOHA)等の競合型アクセス方式が採用されている。
【0039】
また、この通信システムで行われる通信としては、路側通信装置10が当該路側通信装置10の通信エリア内の車載通信装置20との間で通信を行う「路車間通信」、通信エリア内の車載通信装置20同士の「車車間通信」、及び、路側通信装置10同士の「路路間通信」がある。
【0040】
さらに、前記「路車間通信」のうち、車載通信装置20から路側通信装置10へ信号を送信する場合(アップリンク)を「車−路通信」といい、路側通信装置10から車載通信装置20へ信号を送信する場合(ダウンリンク)を「路−車通信」というものとする。
このように、「路車間通信」を、「路−車通信」と「車−路通信」とで区別した場合、本通信システムでは、「車車間通信」及び「路路間通信」を含めて、4種類の通信が存在することになる。そして、本通信システムでは、限られた所定の(狭い)周波数帯域を、これらの4種類の通信で共用する。
【0041】
図2は、路側通信装置10及び車載通信装置20の機能の詳細を示している。
路側通信装置10は、アンテナ11と装置本体12とを有している。装置本体12は、路側送受信ユニット14,15、及び通信制御装置16を有している。アンテナ11は、4つ(複数)のアンテナ素子11−1,11−2,11−3,11−4によって構成されている。
なお、図2では、理解を容易にするため、2つの路側通信装置10,10の送受信ユニット14,15のうち、左側の路側通信装置10の送受信ユニット14は、主に送信機能に着目して描かれており、右側の送受信ユニット15は、主に受信機能に着目して描かれている。ただし、実際には、送受信ユニット14,15全体での機能に違いはない。
【0042】
車載通信装置20は、アンテナ21と装置本体22とを有している。装置本体22は、車載送受信ユニット24,25及び通信制御部26を有している。アンテナ21は、1つのアンテナ素子によって構成されているが、2つ以上のアンテナ素子を有していても良い。
なお、図2では、理解を容易にするため、2つの車載通信装置20,20の送受信ユニット24,25のうち、左側の車載通信装置20の送受信ユニット24は、主に送信機能に着目して描かれており、右側の送受信ユニット25は、主に受信機能に着目して描かれている。ただし、実際には、送受信ユニット14,15全体での機能に違いはない。
【0043】
上記のように、路側通信装置10は、複数のアンテナ素子を有するマルチアンテナシステムとして構成されているのに対し、車載通信装置20は1つのアンテナ素子からなるため、構造が簡素であり、コストが抑えられている。
【0044】
路側通信装置10の路側送受信ユニット14は、空間多重のために、アンテナ素子の数に対応して4系統(複数系統)の送信機能を有している。それぞれの系統は、逆離散フーリエ変換等の処理を行う信号処理部14a、周波数変換を行うRF部14b等を含んでいる。
路側送受信ユニット14の空間多重処理部17は、送信すべき信号の空間多重処理を行い、複数の信号系列を複数のアンテナ素子11−1〜11−4から同時に送信する。
【0045】
また、路側通信装置10の路側送受信ユニット15は、伝送路から送信されてきた複数の信号系列を分離するために、アンテナ素子の数に対応して4系統(複数系統)の受信機能を有している。それぞれの系統は、周波数変換を行うRF部15b、離散フーリエ変換等の処理を行う信号処理部15a等を含んでいる。
路側受信ユニット15の空間多重処理部18は、複数のアンテナ素子11−1〜11−4によって受信した複数の信号系列を分離する。
【0046】
路側通信装置10の通信制御部16は、時分割多重のための制御、空間多重処理部17,18における処理の制御、その他の制御を行う。
ここでの時分割多重は、「路路間通信」、「車車間通信」、「路−車通信」、「車−路通信」の各通信についての時分割多重である。
【0047】
図3は、本実施形態におけるタイムスロットの利用例を示している。図3において、「路路」は「路路間通信」示し、「車車」は「車車間通信」を示し、「路車」は「路−車通信」を示し、「車路」は「車−路通信」を示している。
【0048】
図3において、「路路間通信」のタイムスロットは、複数(4つ)の路路間通信で共用されている。 また、「車路通信」のタイムスロットも、複数(4つ)の車路通信で共用されている。さらに、一つのタイムスロットを、「路路間通信」と「車路通信」とで共用することも行われている。このような共用は、空間多重(SDM:Space Division Multiplexing)により行われており、詳細は後述する。
【0049】
時分割多重における一つのタイムスロットを路側通信装置10が関与する通信(路路間通信と車−路通信)によって共用することで、路側通信装置10が関与する通信の占有時間を減らして、電波の有効活用が達成できる。そして、路路間通信等の占有時間が短くなることで、「車車間通信」の占有時間を多く確保することが可能となる。
したがって、車載通信装置20の数が増大しても、車車間通信の送信タイミングの衝突する頻度を抑えることができる。しかも、車載通信装置20は、マルチアンテナシステムではないため、一般ユーザが購入する車載通信装置20のコスト増加も回避できる。
【0050】
さて、「路路間通信」において空間多重分割を行う場合、通信制御部16及び路側送受信ユニット14の空間多重処理部17は、次のような処理を行う。
まず、一つの路側通信装置10の通信相手となる路側通信装置10が複数存在する場合、時分割多重だけでは、複数の「路路間通信」のためのタイムスロットが必要となる。時分割多重だけで通信を行う場合、路路間通信の信号を送信しようとする路側通信装置10は、通信相手となる複数の路側通信装置に対し、それぞれ異なるタイミング(異なるタイムスロット)で、「路路間通信」を行う必要がある。
【0051】
これに対し、本実施形態では、路側通信装置10は、マルチアンテナであるため、「路路間通信」は、MIMO通信(Multiple Input Multiple Output)となることを利用して、空間多重(SDM)による多重化を行う。
具体的には、通信制御部16は、時分割多重処理において、通信相手である複数の路側通信装置10に対する複数の路路間通信のために、通信相手の数に応じたタイムスロットを確保するのではなく、複数の路路間通信で共用可能な一つ又は通信相手の数よりも少ない数の路路間通信用タイムスロットを確保する。
【0052】
そして、空間多重処理部17では、路路間通信用タイムスロット内において、通信相手である他の複数の路側通信装置10へ送信すべき複数系統のデータを、空間多重し、送信する。
一つの路路間通信用タイムスロット内における、空間多重の仕方は、図4に示すように、2通りある。
【0053】
ここで、図4(a)中、路側通信装置Aは、路路間通信のための信号を送信しようとしている路側通信装置であり、他の4つの路側通信装置B〜Eは、路側通信装置Aの通信相手である。
一つの路路間通信用タイムスロット内における空間多重(SDM)の仕方の一つ目は、図4(b)に示すように、各通信相手B〜Eそれぞれに対し、路側送受信ユニット14の複数の信号系列それぞれを1つずつ、割り当てるやり方である。この場合、通信相手毎に空間多重が行われる。
【0054】
一つの路路間通信用タイムスロット内における空間多重の仕方の二つ目は、図4(c)に示すように、4つの(複数の)信号系列をすべて(又は2以上4未満)を、複数の通信相手B〜Eのうち、特定の通信相手に割り当て、その通信相手へ送信すべきデータを、空間多重によって複数の信号系列を用いて高速に送信するやり方である。この場合、個々の通信相手への通信が高速化されるため、路路間通信用タイムスロット内を、各通信相手B〜Eで時分割して、一つの路路間通信用タイムスロットを、複数の通信相手B〜Eで共用することができる。
【0055】
図4(b)(c)のいずれの仕方でも、一つの路路間通信用タイムスロット全体でみると、空間多重によって、当該路路間通信用タイムスロットが複数の路路間通信によって共用されることになる。
【0056】
上記のように、路路間通信を空間多重化することで、交通量の多い都市部等において、路側通信装置10を多数設置することで、路路間通信の通信頻度が多くなっても、路路間通信の占有時間がさほど増加せず、無線資源(タイムスロット)を効率的に利用できる。
また、路路間通信を空間多重する際に使用するデータスロット内のトレーニングシンボルを路路間通信専用のユニークなものとすることで、路路間通信のデータのセキュリティ性も向上する。つまり、路路間通信を空間多重とし、その信号分離のためのトレーニングシンボルを一般に公開しなければ、路路間通信のデータを車載通信装置等の他の装置が読み取ることができず、路路間通信のデータのセキュリティ性が向上する。
【0057】
図4の例では、一つの通信相手(路側通信装置)に、一つのアンテナ素子(信号系列)を割り当てたが、図5(a)に示すように、一つの通信相手(路側通信装置)に、複数のアンテナ素子(信号系列)を割り当てても良い。すなわち、路側通信装置10が、路路間通信における通信相手の数(4つ)よりも多い数のアンテナ素子数(5つ)を有していれば、通信相手へのトラフィックが増大した場合には、トラフィックが増大した通信相手(路側通信装置E)へ複数のアンテナ素子(信号系列)11−4,11−5を割り当てることで、多くのデータを送信することができる。
【0058】
また、路側通信装置10が、路路間通信における通信相手の数(4つ)よりも多い数のアンテナ素子数(5つ)を有していれば、データ再送の場合に、新たなスロット割り当てなしに、送信することができる。すなわち、通信相手の数よりも多い冗長なアンテナ素子(信号系列)11−5をデータ再送用に用いることができる。
例えば、ある路路間通信用タイムスロットにおいて、路側通信装置Aから路側通信装置Eへのデータ送信が失敗した場合、再送用のタイムスロットを確保しなくとも、次の路路間通信用タイムスロットにおいて、アンテナ素子(信号系列)11−5を用いて、データを再送することができる。
【0059】
上記のような、一つの通信相手に割り当てられる信号系列数の調整は、通信制御部16によって行われる。通信制御部16は、通信相手毎の通信トラフィックを監視し、トラフィックの大きい通信相手に対して、多くの信号系列が割り当てる。また、通信制御部16は、再送が必要な通信相手に対しては、複数の信号系列を割り当て、本来送信すべきデータと再送すべきデータが同時に送信されるように制御する。
【0060】
続いて、「車−路通信」において空間多重分割を行う場合における、車載通信装置20、並びに路側通信装置10の空間多重処理部18での処理を説明する。
例えば、複数の車載通信装置20A〜20Dが、同時に、路側通信装置10Aに対して「車−路通信」を行った場合、スロッテッドアロハ方式等による競合型アクセスによる時分割処理だけでは、複数の「車−路通信」が衝突してしまう。
【0061】
ところが、本実施形態では、車載通信装置20はシングルアンテナであるものの、路側通信装置10はマルチアンテナであるため、複数の車載通信装置20から同時に路側通信装置10へ同時に送信する場合、複数のSIMO(Single Input Multiple Output)を組み合わせたMIMO通信とみなすことができる。
【0062】
本実施形態では、複数の「車−路通信」もMIMO通信とみなして、空間多重処理により、同時になされた複数の「車−路通信」を分離する。
具体的には、各車載通信装置20A〜20Dは、シングルアンテナであるが、「車−路通信」の際に、MIMOチャネル推定用のトレーニングシンボル(信号分離処理のためのトレーニングシンボル)をプリアンブル等として送信する。なお、MIMOチャネル推定用のトレーニングシンボルは、「車車間通信」の際にも送信される(理由は後述)。
【0063】
ここで、車載通信装置20は、アドホックモードにおける通信(車車間通信)では、MIMOチャネル推定用のトレーニングシンボルは送信しない。車載通信装置20は、路側通信装置10の通信エリアに入って、アドホックモードからインフラモードに切り替わると、「車車間通信」又は「車−路通信」の際に、MIMOチャネル推定用のトレーニングシンボルを送出する。
【0064】
さて、複数の車載通信装置20A〜20Dが、同時に、路側通信装置10Aに対して「車−路通信」を行って信号が衝突したとする。この場合であっても、路側通信装置10Aの路側受信ユニット15の空間多重処理部18は、各車載通信装置20A〜20Dから送信されたMIMOチャネル推定用のトレーニングシンボルを用いて、チャネル推定を行い、各車載通信装置20A〜20Dが送信した信号を分離する。なお、路側通信装置10Aの路側送受信ユニット15の空間多重処理部18は、路側通信装置11のアンテナ素子数以下の数の車載通信装置20であれば、同時に「車−路通信」を行っても信号を分離することができる。
【0065】
路側通信装置10の通信制御部16は、時分割処理において、「車−路通信」のためのタイムスロットを確保し、路側通信装置10のアンテナ素子数以下の車載通信装置10に対して、当該タイムスロットを割り当てる通信制御を行っても良い。この場合、「車−路通信」の一つのタイムスロットにおいて同時に通信する車載通信装置10の数は、路側通信装置10のアンテナ数以下であることが保証され、信号分離を確実に行うことができる。
【0066】
「車−路通信」のタイムスロット内における、空間多重の仕方は、図6のとおりである。
ここで、図6(a)中、路側通信装置Aは、車−路通信のための信号を受信しようとしている路側通信装置であり、4つの車載通信装置a〜dは、車−路通信のための信号を(同時)に送信しようとしている車載通信装置である。
【0067】
4つの車載通信装置a〜dが同時に、車−路通信のための信号を送信して衝突しても、路側通信装置Aは、空間多重処理によって、衝突した信号を分離することができる。したがって、路側通信装置Aは、図6(b)に示すように、複数の車載通信装置a〜dの信号を同時に受信できる。
【0068】
さらに、図3に示すように、同一のタイムスロットを1又は複数の「路路間通信」と1又は複数の「車−路通信」とで共用することもできる。つまり、路側通信装置10は、路路間通信の信号を送信するタイムスロットと、「車−路通信」用のタイムスロットを同時とする割り当てが可能である。このような「路路間通信」と「車−路通信」を多重化する空間多重は、路側通信装置10の通信相手となる他の路側通信装置10及び車載通信装置20の総数が、路側通信装置10のアンテナ数以下であれば行える。
【0069】
一つのタイムスロットの、「路路間通信」と「車−路通信」とによる共用の仕方は、図7のとおりである。
ここで、図7(a)中、路側通信装置Aは、路路間通信のための信号を受信しようとしているとともに、車−路通信のための信号も受信しようとしている路側通信装置であり、2つの路側通信装置B,Cは、路路間通信のための信号を(同時に)送信しようとしている路側通信装置である。また、2つの車載通信装置a,bは、車−路通信のための信号を(前記路路通信と同時に)に送信しようとしている車載通信装置である。
【0070】
図7(b)に示すように、路側通信装置Aは、路側通信装置B,C、及び車載通信装置a,bからの信号を同時に受信する。そして、路側通信装置Aは、空間多重により、路側通信装置B、Cからの路路間通信と、車載通信装置a,bからの車−路通信の信号を分離して受信することができる。
【0071】
また、前述のように、車載通信装置20からは、「車車間通信」の際にも、MIMOチャネル推定用のトレーニングシンボルが送信される。「車車間通信」は、SISO(Single Input Single Output)であるため、MIMOチャネル推定用のトレーニングシンボルは、車車間通信のためには利用されないが、路側通信装置10が、「車車間通信」をモニタリングする際に利用される。
【0072】
ここで、路側通信装置10は、「車車間通信」をモニタリングすることで、そのモニタリング結果を、通信エリア内の「車車間通信」の集中制御やその他の処理に利用することができる。
ところが、「車車間通信」の際には、複数の「車車間通信」の信号が競合して、衝突することがある。この場合、「車車間通信」は失敗するが、それをモニタリングしている路側通信装置10は、MIMOチャネル推定用のトレーニングシンボルを利用して、チャネル推定を行い、衝突した複数の各車載通信装置20A〜20Dが送信した信号を分離する。
【0073】
したがって、路側通信装置10は、複数の「車車間通信」が衝突しても、モニタリングが可能であり、効率的に「車車間通信」のモニタリングが可能である。また、衝突した「車車間通信」を、モニタリングした路側通信装置10が、信号を分離した上で、当該「車車間通信」を再送信することで、車車間通信の重要な情報が失われることを防ぐこともできる。
【0074】
このように、路側通信装置10の路側送受信ユニット15の空間多重処理部18は、他の路側通信装置10からの信号(路路間通信の信号)、車載通信装置20からの信号(車−路通信の信号及び車車間通信の信号)のいずれを受信する際にも、MIMO通信であるとして、空間多重化された信号分離の処理を行う。
【0075】
一方、路側通信装置10の路側送受信ユニット14の空間多重処理部(マルチアンテナ処理部)17は、路路間通信の際には、空間分割多重(SDM)の処理を行うが、一つのアンテナ素子21しか有しない車載通信装置20への通信である「路−車通信」の際には、空間分割多重処理を行わない。路−車通信の際には、空間多重処理部(マルチアンテナ処理部)17は、空間分割多重処理以外の、他のマルチアンテナ処理(例えば、ダイバーシチ効果を得るための時空間ブロック符号化処理(STBC:Space Time Block Codeing)を行う。また、空間多重処理部(マルチアンテナ処理部)17は、単に、通信に使用するアンテナ素子を選択切替して、ダイバーシチ効果を得るようにしてもよい。また、空間多重処理部(マルチアンテナ処理部)17は、アンテナ素子からの信号を位相合成して、アンテナビーム成形を行っても良い。
【0076】
このような空間多重処理部(マルチアンテナ処理部)の処理の切替は、通信制御部16によって行われる。すなわち、通信制御部16は、「路路間通信」を行う際には、空間多重処理部(マルチアンテナ処理部)に、空間多重(SDM)処理を行わせ、「路−車通信」を行う際には、空間多重処理部(マルチアンテナ処理部)に、STBC等のSDM以外の処理を行わせるように、処理の切替制御を行う。
【0077】
図8は、車載通信装置20の変形例を示している。変形例に係る車載通信装置20は、2つのアンテナ素子21−1,21−2を有している。この車載通信装置20は、複数のアンテナ素子を有しているが、路側通信装置10のようにMIMO通信を行うものではなく、通信に使用するアンテナ素子21−1,21−2を通信制御部26によって切り替えて、ダイバーシチ効果が得られるように構成されたものである。具体的には、RF部24bが、使用されるアンテナ素子21−1,21−2を切り替えるためのアンテナスイッチ24b−1を有しており、このアンテナスイッチ24b−1を通信制御部26が受信状況又は送信状況に応じて切り替えることで、ダイバーシチ効果が得られる。ダイバーシチ効果を得るだけで有れば、車載通信装置20に複数のアンテナ素子を設けても、MIMO通信を行うものに比べて、コスト安である。
【0078】
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、様々な変形が可能である。例えば、車載通信装置20も、複数のアンテナ素子を備え、空間分割多重処理が可能なものであっても良い。
【図面の簡単な説明】
【0079】
【図1】通信システムの全体図である。
【図2】路側通信装置及び車載通信装置の機能ブロック図である。
【図3】時分割多重のタイムスロットを示す図である。
【図4】路路間通信の空間多重の仕方の説明図である。
【図5】(a)は、信号系列の割り当ての一例を示し、(b)は、信号系列の割り当ての他の一例を示す図である。
【図6】車−路通信の空間多重の仕方の説明図である。
【図7】路路間通信と車−路通信との空間多重の仕方の説明図である。
【図8】変形例に係る車載通信装置を示すブロック図である。
【符号の説明】
【0080】
10 路側通信装置
11−1 アンテナ素子
11−2 アンテナ素子
11−3 アンテナ素子
11−4 アンテナ素子
17 空間多重処理部
18 空間多重処理部
20 車載通信装置
21 アンテナ(アンテナ素子)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
通信エリア内に存在する車載通信装置との間の通信が可能な路側通信装置を備えた通信システムであって、
前記路側通信装置は、アンテナが複数のアンテナ素子によって構成され、複数のアンテナ素子による空間多重処理を行う空間多重処理部を備えていることを特徴とする通信システム。
【請求項2】
路側通信装置同士による通信である路路間通信と車載通信装置同士の通信である車車間通信とが行えるとともに、前記路路間通信と前記車車間通信とが時分割多重によって行われる通信システムであって、
前記車載通信装置は、そのアンテナが1個以上のアンテナ素子によって構成され、
前記路側通信装置は、そのアンテナが複数のアンテナ素子によって構成され、複数のアンテナ素子による空間多重処理を行う空間多重処理部を備え、
同一の路路間通信用のタイムスロットを、空間多重によって、複数の路路間通信で共有するよう構成されていることを特徴とする通信システム。
【請求項3】
路路間通信の信号を送信する路側通信装置は、通信相手である複数の路側通信装置のそれぞれに対して、一又は複数のアンテナ素子による1又は複数の信号系列を割り当てることで、同一の路路間通信用のタイムスロットにおいて、同時に複数の路路間通信を行うことを特徴とする請求項2記載の通信システム。
【請求項4】
路側通信装置は、通信相手である路側通信装置の数よりも多い数のアンテナ素子を有していることを特徴とする請求項2記載の通信システム。
【請求項5】
路側通信装置は、通信トラフィックの大きい通信相手ほど、多くの信号系列が割り当てるよう構成されていることを特徴とする請求項3又は4記載の通信システム。
【請求項6】
路側通信装置は、データ再送が必要な通信相手に対して、複数の信号系列を割り当てるよう構成されていることを特徴とする請求項3〜5のいずれかに記載の通信システム。
【請求項7】
路路間通信の信号を送信する路側通信装置は、通信相手である複数の路側通信装置のそれぞれに対して、複数のアンテナ素子による複数の信号系列を割り当てて、路路間通信用のタイムスロットを時分割することにより、同一の路路間通信用のタイムスロットにおいて複数の路路間通信を行うことを特徴とする請求項2記載の通信システム。
【請求項8】
車載通信装置から路側通信装置への通信である車−路通信と、車載通信装置同士の通信である車車間通信とが行えるとともに、前記車−路通信と前記車車間通信とが時分割多重によって行われる通信システムであって、
前記路側通信装置は、そのアンテナが複数のアンテナ素子によって構成され、複数のアンテナ素子による空間多重処理を行う空間多重処理部を備え、
前記車載通信装置は、そのアンテナが、1個以上のアンテナ素子によって構成されているとともに、路側通信装置の空間多重処理部による信号分離処理のためのトレーニングシンボルを送信可能に構成され、
同一の車−路通信のタイムスロットを、空間多重によって、複数の車−路通信で共有するよう構成されていることを特徴とする通信システム。
【請求項9】
前記車載通信装置は、通信が路側通信装置によって集中制御されるインフラモードになると、前記トレーニングシンボルを送信することを特徴とする請求項8記載の通信システム。
【請求項10】
前記車−路通信は、同一のタイムスロットを複数の車載通信装置が利用して送信する可能性のある競合型アクセスによって行われ、
前記空間多重処理部は、当該競合型アクセスによって生じた複数の車載通信装置からの信号の衝突を、各車載通信装置のそれぞれの信号に分離することを特徴とする請求項8又は9記載の通信システム。
【請求項11】
前記車−路通信では、路側通信装置のアンテナ素子以下の数の車載通信装置が、同一の車−路通信用のタイムスロットに割り当てられることを特徴とする請求項8又は9記載の通信システム。
【請求項12】
路側通信装置同士の通信である路路間通信と、車載通信装置から路側通信装置への通信である車−路通信とが行える通信システムであって、
前記路側通信装置は、そのアンテナが複数のアンテナ素子によって構成され、複数のアンテナ素子による空間多重処理を行う空間多重処理部を備え、
前記車載通信装置は、そのアンテナが、1個以上のアンテナ素子によって構成されているとともに、路側通信装置の空間多重処理部による信号分離処理のためのトレーニングシンボルを送信可能に構成され、
同一のタイムスロットを、空間分割多重により、前記路路間通信と前記車−路通信とで共有することを特徴とする通信システム。
【請求項13】
車載通信装置同士の通信である車車間通信が、路側通信装置によって集中制御されるとともに、同一のタイムスロットを複数の車載通信装置が利用して送信する可能性のある競合型アクセス方式の通信システムにおいて、
前記路側通信装置は、そのアンテナが複数のアンテナ素子によって構成され、複数のアンテナ素子による空間多重処理を行う空間多重処理部を備え、
前記車載通信装置は、そのアンテナが、1個以上のアンテナ素子によって構成されているとともに、路側通信装置の空間多重処理部による信号分離処理のためのトレーニングシンボルを送信可能に構成され、
前記路側通信装置は、競合型アクセスによって衝突した複数の車車間通信の信号を、空間多重処理部によって、複数の車車間通信の信号に分離して、複数の車車間通信のモニタリングを行うよう構成されていることを特徴とする通信システム。
【請求項14】
通信エリア内に存在する車載通信装置との間の通信が可能な路側通信装置であって、
複数のアンテナ素子によって構成されたアンテナと、
複数のアンテナ素子による空間多重処理を行う空間多重処理部と、
を備えていることを特徴とする路側通信装置。
【請求項15】
路側通信装置同士による通信である路路間通信と車載通信装置同士の通信である車車間通信とが時分割多重によって行われるように通信を制御する路側通信装置であって、
複数のアンテナ素子によって構成されたアンテナと、
複数のアンテナ素子による空間多重処理を行う空間多重処理部と、
同一の路路間通信用のタイムスロットを、空間多重によって、複数の路路間通信で共有するよう制御する通信制御部と、
を備えていることを特徴とする路側通信装置。
【請求項16】
車載通信装置から路側通信装置への通信である車−路通信と車載通信装置同士の通信である車車間通信とが時分割多重によって行われるように通信を制御する路側通信装置であって、
前記路側通信装置は、複数のアンテナ素子によって構成されたアンテナと、複数のアンテナ素子による空間多重処理を行う空間多重処理部と、を備え、
前記空間多重処理部は、1個以上のアンテナ素子によって構成されているアンテナを有する車載通信装置から送信された信号分離処理のためのトレーニングシンボルに基づいて、同一の車−路通信のタイムスロットにおける複数の車−路通信の信号を分離するよう構成されていることを特徴とする路側通信装置。
【請求項17】
路側通信装置同士の通信である路路間通信と車載通信装置から路側通信装置への通信である車−路通信とが行われるように通信を制御する路側通信装置であって、
前記路側通信装置は、複数のアンテナ素子によって構成されたアンテナと、複数のアンテナ素子による空間多重処理を行う空間多重処理部と、を備え、
前記空間多重処理部は、1個以上のアンテナ素子によって構成されているアンテナを有する車載通信装置及び他の路側通信装置から送信された信号分離処理のためのトレーニングシンボルに基づいて、同一のタイムスロットにおける前記路路間通信の信号と前記車−路通信の信号とを分離するよう構成されていることを特徴とする路側通信装置。
【請求項18】
車載通信装置同士の通信である車車間通信を集中制御するとともに、同一のタイムスロットを複数の車載通信装置が利用して送信する可能性のある競合型アクセス方式によって通信を制御する路側通信装置であって、
前記路側通信装置は、複数のアンテナ素子によって構成されたアンテナと、
複数のアンテナ素子による空間多重処理を行う空間多重処理部と、を備え、
前記空間処理部は、1個以上のアンテナ素子によって構成されているアンテナを有する車載通信装置から送信された信号分離処理のためのトレーニングシンボルに基づいて、競合型アクセスによって衝突した複数の車車間通信の信号を、複数の車車間通信の信号に分離して、複数の車車間通信のモニタリングを行うよう構成されていることを特徴とする路側通信装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2008−283567(P2008−283567A)
【公開日】平成20年11月20日(2008.11.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−127215(P2007−127215)
【出願日】平成19年5月11日(2007.5.11)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】