説明

通信モジュール、通信システム、センサシステムおよび電力監視システム

【課題】ID登録を簡便に実行可能な通信モジュール等を提供する。
【解決手段】通信モジュール200は、通信端子221,223と、信号伝達制御手段227と、処理部228と、メモリ229とを含む。信号伝達制御手段227は、モジュール外部から前段側通信端子221へ入力される下り信号SDを後段側通信端子223へ通過させる下り信号通過状態と、下り信号SDが後段側通信端子223へ伝達するのを阻止する下り信号阻止状態とを切り替え可能である。下り信号SDは、メインユニット100から発信されるID登録指示の信号を含む。メモリ229は、当該通信モジュール200に割り当てられるIDを格納する。処理部228は、下り信号阻止状態でID登録指示を受信し、当該ID登録指示の受信後に信号伝達制御手段227を制御して下り信号阻止状態を下り信号通過状態に変更する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、通信モジュール、通信システム、センサシステムおよび電力監視システムに係る。
【背景技術】
【0002】
従来より、ブレーカに電力測定装置を設けた構成が知られており(特許文献1参照)、さらには、そのような構成を利用して使用電力量を監視するシステムが知られている(特許文献2参照)。特許文献2に記載の電力監視システムでは、分岐ブレーカの電流を検出するセンサと、測定電流データを送出するセンサユニットとが、分岐ブレーカごとに設けられている。また、特許文献2に記載の電力監視システムでは、複数のセンサユニットから送出されるデータは、計測制御ユニットによって収集される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−103538号公報
【特許文献2】特開2008−89435号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献2によれば、上記の電力監視システムでは分岐ブレーカとセンサに通し番号が付されている(特許文献2の段落0026参照)。しかし、通し番号をどのように付与するのかについては言及されていない。
【0005】
上記通し番号、あるいは識別情報(以下「ID」とも称する)を機器に登録する手法として、例えばディップスイッチ等のスイッチ部品の利用が考えられる。しかし、当該スイッチ部品によれば、ID登録はユーザが手作業で行わなければならず、煩雑である。このため、ID登録を自動で行いうる簡便なシステムが要望されている。
【0006】
ID登録の自動化の要望は、上記のような電力監視システムに限られるものではなく、例えば複数のモジュールを含んだ各種のシステムに対しても当てはまる。
【0007】
本発明は、モジュールのID登録を簡便に実行可能な通信システムを提供することを目的とし、また、そのような通信システムを構築可能な通信モジュールを提供することを目的とする。また、本発明は、当該通信システムが適用されたセンサシステムを提供すること、および、当該センサシステムが適用された電力監視システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第1の態様に係る通信モジュールは、ディジーチェーン接続されてモジュール外部と通信を行う通信モジュールであって、メインユニットまたは前段の通信モジュールとのディジーチェーン接続に用いられる前段側通信端子と、後段の通信モジュールとのディジーチェーン接続に用いられる後段側通信端子と、モジュール外部から前記前段側通信端子へ入力される下り信号を前記後段側通信端子へ通過させる下り信号通過状態と、前記下り信号が前記後段側通信端子へ伝達するのを阻止する下り信号阻止状態とを切り替え可能な信号伝達制御手段と、前記下り信号を受信可能に設けられた処理部と、前記処理部がアクセス可能に設けられており、当該通信モジュールに割り当てられる識別情報(ID)を格納するためのメモリとを備え、前記下り信号は、前記IDの登録処理を実行させるために前記メインユニットから発信されるID登録指示の信号を含み、前記処理部は、前記下り信号阻止状態で前記ID登録指示を受信し、当該ID登録指示の受信後に前記信号伝達制御手段を制御して前記下り信号阻止状態を前記下り信号通過状態に変更する。
【0009】
また、第2の態様に係る通信システムは、メインユニットと、前記メインユニットとディジーチェーン接続された複数の通信モジュールとを備え、前記複数の通信モジュールのそれぞれは、第1の態様に係る通信モジュールで構成されている。
【0010】
また、第3の態様に係る通信システムは、第2の態様に係る通信システムであって、前記複数の通信モジュールのそれぞれは、前記メインユニットへ前記IDの登録要求を発信し、前記メインユニットは、前記ID登録要求に応答して前記ID登録指示を発信する。
【0011】
また、第4の態様に係る通信システムは、第3の態様に係る通信システムであって、前記複数の通信モジュールのそれぞれは、前記ID登録要求を所定回数発信しても前記ID登録指示を受信できなかった場合には、前記信号伝達制御手段を制御して前記下り信号阻止状態を前記下り信号通過状態に変更する。
【0012】
また、第5の態様に係るセンサシステムは、第2ないし第4の態様のうちのいずれか1つに係る通信システムを備えるセンサシステムであって、前記複数の通信モジュールをそれぞれ有する複数のセンサモジュールを備える。
【0013】
また、第6の態様に係るセンサシステムは、第5の態様に係るセンサシステムであって、前記複数のセンサモジュールのそれぞれは、動作モードを切り替えるためのモード設定手段を有する。
【0014】
また、第7の態様に係る電力監視システムは、第5または6の態様に係るセンサシステムを備える電力監視システムであって、前記複数のセンサモジュールのそれぞれは、各自に割り当てられた電力供給系統の電力量を測定する電力測定モジュールを構成している。
【0015】
また、第8の態様に係る通信システムは、メインユニットと、前記メインユニットに接続された第1通信ラインと、第2通信ラインと、前記第1通信ラインと前記第2通信ラインとに接続されており、前記メインユニットから前記第1通信ラインへ伝達される下り信号を前記第1通信ラインから前記第2通信ラインへ通過させる下り信号通過状態と、前記下り信号が前記第2通信ラインへ伝達するのを阻止する下り信号阻止状態とを切り替え可能な信号伝達制御手段と、前記第1通信ラインに接続された第1処理部と、前記第1処理部がアクセス可能に設けられており、前記第1処理部に割り当てられる識別情報(ID)を格納するための第1メモリと、前記第2通信ラインに接続された第2処理部と、前記第2処理部がアクセス可能に設けられており、前記第2処理部に割り当てられるIDを格納するための第2メモリとを備え、前記下り信号は、前記IDの登録処理を実行させるために前記メインユニットから発信されるID登録指示の信号を含み、前記第1処理部は、前記下り信号阻止状態で前記ID登録指示を受信し、当該ID登録指示の受信後に前記信号伝達制御手段を制御して前記下り信号阻止状態を前記下り信号通過状態に変更し、前記第2処理部は、前記下り信号通過状態への変更後に、前記メインユニットから発信される新たな前記ID登録指示を受信する。
【0016】
また、第9の態様に係る通信システムは、第8の態様に係る通信システムであって、前記第1および第2の処理部のそれぞれは、前記メインユニットへ前記IDの登録要求を発信し、前記メインユニットは、前記ID登録要求に応答して前記ID登録指示を発信する。
【0017】
また、第10の態様に係る通信システムは、第9の態様に係る通信システムであって、前記第1処理部は、前記ID登録要求を所定回数発信しても前記ID登録指示を受信できなかった場合には、前記信号伝達制御手段を制御して前記下り信号阻止状態を前記下り信号通過状態に変更する。
【0018】
また、第11の態様に係るセンサシステムは、第8ないし第10の態様のうちのいずれか1つに係る通信システムを備えるセンサシステムであって、前記第1処理部を有する第1センサモジュールと、前記第2処理部を有する第2センサモジュールとを備える。
【0019】
また、第12の態様に係るセンサシステムは、第11の態様に係るセンサシステムであって、前記第1および第2のセンサモジュールのそれぞれは、動作モードを切り替えるためのモード設定手段を有する。
【0020】
また、第13の態様に係る電力監視システムは、第11または12の態様に係るセンサシステムを備える電力監視システムであって、前記第1および第2のセンサモジュールのそれぞれは、各自に割り当てられた電力供給系統の電力量を測定する電力測定モジュールを構成している。
【発明の効果】
【0021】
第1の態様によれば、処理部は下り信号阻止状態でID登録指示を受信する。すなわち、ID登録指示を受信するまでは、下り信号阻止状態にされる。このため、複数の通信モジュールをメインユニットに対してディジーチェーン接続することによって、メインユニットに近い通信モジュールから順次に、しかも自動的にID登録処理を実行させることが可能である。これにより、ユーザによるID登録作業を不要にすることができる。また、IDの重複登録を防止することができる。したがって、簡便な通信システムを構築することができる。
【0022】
また、第1の態様によれば、ID登録処理を実行させる通信モジュールの選択はID登録指示が到達しているか否かに依り、ID登録指示の到達位置は各通信モジュールが下り信号通過状態にあるか下り信号阻止状態にあるかに拠る。このため、かかるモジュール選択は、ID登録指示を伝送するための通信ライン(通信モジュールの通信端子に接続される)を用いて行われる。つまり、モジュール選択のための専用ラインを必要としない。したがって、モジュール内の配線および通信システム内の配線の本数が少なくて済む。配線数が少ないことは配線スペースの削減をもたらすため、通信モジュール自体の小型化および通信システムの小型化を図ることができる。
【0023】
また、第1の態様によれば、上記のように、ID登録処理を実行させる通信モジュールを、メインユニットに近い側から順次、自動的に選択することが可能である。このため、メインユニットは、ID登録指示において、登録処理を実行させる通信モジュールを個々に指定する必要がない。したがって、メインユニットの処理負担を軽減することができる。
【0024】
第2の態様によれば、上記の種々の効果を奏する通信システムを提供することができる。
【0025】
第3の態様によれば、ID登録には、通信モジュールからのID登録要求を必要とする。このため、通信モジュールからの要求無しにメインユニットがID登録指示を発信し、通信モジュールからの応答が無くなった時点でID登録指示の発信を終了する構成に比べて、より確実にID登録を行うことができる。なぜならば、例えば、通信エラー等によりID登録指示を受信できない場合であっても、ID登録要求を再度、発信することによりID登録指示を取得可能だからである。
【0026】
第4の態様によれば、例えばディジーチェーン接続の途中に位置する通信モジュールがID登録指示を受信できなかった場合でも、それよりも後段の通信モジュールを、ID登録処理を実行可能な状態にすることができる。また、1つの通信モジュールがID登録のために通信を占有することを回避することができる。
【0027】
第5の態様によれば、上記の種々の効果を奏するセンサシステムを提供することができる。
【0028】
第6の態様によれば、動作モードの異なる複数種類のセンサモジュールを用意する必要がない。このため、センサモジュールの種類を間違って設置することを防止できる。また、センサモジュールの設置後に動作モードを設定することができる。また、センサモジュールの種類を気にすることなく設置作業を行うことができるので、良好な作業性を提供することができる。
【0029】
第7の態様によれば、上記の種々の効果を奏する電力監視システムを提供することができる。
【0030】
第8の態様によれば、第1処理部は下り信号阻止状態でID登録指示を受信する。すなわち、ID登録指示を受信するまでは、下り信号阻止状態にされる。このため、メインユニットに近い処理部から順次に、しかも自動的にID登録処理を実行させることが可能である。これにより、ユーザによるID登録作業を不要にすることができる。また、IDの重複登録を防止することができる。したがって、簡便な通信システムを構築することができる。
【0031】
また、第8の態様によれば、ID登録処理を実行させる処理部の選択はID登録指示が到達しているか否かに依り、ID登録指示の到達位置は各処理部の間が下り信号通過状態にあるか下り信号阻止状態にあるかに拠る。このため、かかる処理部の選択は、ID登録指示を伝送するための通信ラインを用いて行われる。つまり、処理部の選択のための専用ラインを必要としない。したがって、通信システム内の配線の本数が少なくて済む。配線数が少ないことは配線スペースの削減をもたらすため、通信システムの小型化を図ることができる。
【0032】
また、第8の態様によれば、上記のように、ID登録処理を実行させる処理部を、メインユニットに近い側から順次、自動的に選択することが可能である。このため、メインユニットは、ID登録指示において、登録処理を実行させる処理部を個々に指定する必要がない。したがって、メインユニットの処理負担を軽減することができる。
【0033】
第9の態様によれば、第3の態様と同様の効果を得ることができる。
【0034】
第10の態様によれば、第4の態様と同様の効果を得ることができる。
【0035】
第11の態様によれば、第5の態様と同様の効果を得ることができる。
【0036】
第12の態様によれば、第6の態様と同様の効果を得ることができる。
【0037】
第13の態様によれば、第7の態様と同様の効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】第1実施形態に係る通信システムを概説するブロック図である。
【図2】第1実施形態に係る通信システムの動作を概説するフローチャートである。
【図3】第2実施形態に係る通信システムの動作を概説するフローチャートである。
【図4】第3実施形態に係る電力監視システムを概説するブロック図である。
【図5】第3実施形態に係る電力監視メインユニットを概説するブロック図である。
【図6】第3実施形態に係る電力測定モジュールを概説するブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0039】
以下に、本発明の実施形態を、図面を参照しつつ説明する。
【0040】
<第1実施形態>
<通信システムの構成>
図1に、第1実施形態に係る通信システム1を概説するブロック図を示す。図1に例示の通信システム1は、メインユニット100と、通信モジュール200と、配線300とを含んでいる。図1では2台の通信モジュール200および3本の通信ライン300を例示しているが、これらの数に限定されるものではない。以下の説明では、2台の通信モジュール200を符号201,202で以て区別し、3本の通信ライン300を符号301〜303で以て区別する場合もある。
【0041】
通信システム1では、メインユニット100と複数の通信モジュール200とがディジーチェーン接続されている。図1の例では、メインユニット100が通信ライン301を介して通信モジュール201に接続されており、通信モジュール201は通信ライン302を介して通信モジュール202に接続されており、通信モジュール202は通信ライン303を介して不図示の通信モジュール200に接続されている。
【0042】
通信ライン300は、いわゆる通信ケーブルによって構成可能である。なお、説明を分かりやすくするために、通信システム1における通信ラインを太線で図示している。
【0043】
なお、上記のディジーチェーン接続形態において、メインユニット100に近い側を前段側または上位側のように表現し、メインユニット100から遠い側を後段側または下位側のように表現する。また、上記のディジーチェーン接続形態において、メインユニット100に最も近い通信モジュール201を、第1段目または第1の通信モジュール200(または201)と称する場合もある。同様に、通信モジュール202を第2段目または第2の通信モジュール200(または202)と称する場合もある。
【0044】
上記のディジーチェーン接続形態の下、メインユニット100は各通信モジュール200と双方向に通信可能に構成されている。ここで、メインユニット100から通信モジュール200へ向けて伝達される信号を下り信号SDと称し、逆に通信モジュール200からメインユニット100へ向けて伝達される信号を上り信号SUと称することにする。
【0045】
なお、各通信モジュール200が他の通信モジュール200と双方向に通信可能に構成されていてもよい。この場合、下り信号SDは後段側の通信モジュール200へ向けて伝達される信号であり、上り信号SUは前段側の通信モジュール200へ向けて伝達される信号である。
【0046】
ここではI2Cバス方式を利用した通信を例示するが、他の方式を利用することも可能である。また、電気信号による通信の他に、例えば光通信を利用することも可能である。なお、I2Cバス方式の通信ラインは、シリアルデータライン(SDA)とシリアルクロックライン(SCL)の2本のバスラインを含んで構成されるが、図面では1本のバスラインで以て簡略に図示している。
【0047】
<メインユニットの構成>
ここで例示するメインユニット100は、通信端子111と、通信ライン113,114と、バッファ115と、処理部116と、外部通信回路117とを有している。
【0048】
通信端子111は、通信モジュール200とのディジーチェーン接続に用いられる端子であり、通信ライン301の一端が接続される。ここでは、メインユニット100が通信ライン301のケーブルを接続するためのコネクタ112を有し、当該コネクタ112の端子が通信端子111を構成する場合を例示する。
【0049】
通信ライン113は、一端が通信端子111に接続され、他端がバッファ115に接続されている。また、通信ライン114は、一端がバッファ115に接続されている。すなわち、通信ライン113,114はバッファ115を介して接続されている。なお、通信ライン113,114は電気配線によって構成可能である。また、バッファ115は、ここでは、いわゆる双方向バッファである。
【0050】
処理部116は、メインユニット100における各種の処理を行う。処理部116は例えば、マイクロコンピュータ(換言すればマイクロプロセッサ)と、メモリとを含んで構成可能である。
【0051】
この場合、マイクロコンピュータが、メモリに予め格納されているプログラムに記述された処理ステップ(換言すれば処理手順)を実行することにより、各種の処理が行われる。上記メモリは例えばROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、書き換え可能な不揮発性メモリ(EPROM(Erasable Programmable ROM)等)の1つまたは複数を含んで構成される。当該メモリは、上記のように処理部116が実行するプログラムを格納する他に、各種の情報やデータ等を格納し、また、プログラムを実行するための作業領域を提供する。
【0052】
かかる構成によれば、上記マイクロコンピュータは1つまたは複数の処理ステップに対応する各種手段として機能し、または、上記マイクロコンピュータによって1つまたは複数の処理ステップに対応する各種機能が実現される。なお、上記マイクロコンピュータによって実現される各種の手段または機能の一部または全部をハードウェアによって実現することも可能である。
【0053】
また、処理部116は、通信モジュール200との通信を行うための通信機能を有している。例えば、処理部116は自身の上記マイクロコンピュータと通信モジュール200との間の通信を担う通信回路を有し、かかる通信回路と上記マイクロコンピュータとによって処理部116の通信機能が実現される。処理部116の当該通信回路は通信ライン114に接続されている。ここでは、通信回路としてI2Cバス方式に準拠した回路が例示される。
【0054】
外部通信回路117は、処理部116が外部のホスト機器等との通信を行うための回路である。外部通信として、有線通信と無線通信との一方または両方を利用する形態が考えられる。
【0055】
<通信モジュールの構成>
ここで例示する通信モジュール200は、通信端子221,223と、通信ライン225,226と、バッファ227と、処理部228と、メモリ229とを有している。
【0056】
通信端子221は、メインユニット100または前段の通信モジュール200とのディジーチェーン接続に用いられる端子である。また、もう一つの通信端子223は、後段の通信モジュール200とのディジーチェーン接続に用いられる端子である。かかる点に鑑み、通信端子221を前段側通信端子221とも称し、通信端子223を後段側通信端子223とも称することにする。
【0057】
図1の例によれば、第1段目の通信モジュール201において、前段側通信端子221は、メインユニット100に繋がる通信ライン301の他端が接続され、後段側通信端子223は、第2段目の通信モジュール202に繋がる通信ライン302の一端が接続される。また、第2段目の通信モジュール202において、前段側通信端子221は、第1段目の通信モジュール201に繋がる通信ライン302の他端が接続され、後段側通信端子223は、不図示の通信モジュール200に繋がる通信ライン303の一端が接続される。
【0058】
ここでは、通信モジュール200が通信ライン(通信ライン301または通信ライン302が対応する)のケーブルを接続するためのコネクタ222を有し、当該コネクタ222の端子が前段側通信端子221を構成する場合を例示する。また、通信モジュール200が通信ライン(通信ライン302または通信ライン303が対応する)のケーブルを接続するためのコネクタ224を有し、当該コネクタ224の端子が後段側通信端子223を構成する場合を例示する。
【0059】
通信ライン225は、一端が前段側通信端子221に接続され、他端がバッファ227に接続されている。また、通信ライン226は、一端がバッファ227に接続され、他端が後段側通信端子223に接続されている。すなわち、通信ライン225,226はバッファ227を介して接続されている。なお、通信ライン225,226は電気配線によって構成可能である。
【0060】
バッファ227は、ここでは、いわゆる双方向バッファである。
【0061】
特に、バッファ227は、いわゆるスリーステート・バッファによって構成されている。スリーステート・バッファは、入力信号をそのまま出力するだけでなく、出力をハイ・インピーダンス状態にすることができる構成を有している。入力信号をそのまま出力させるか、それとも出力をハイ・インピーダンス状態にするかの切り替えは、制御信号(ゲート信号とも称される)によって制御可能である。バッファ227は処理部228に接続されており、制御部228から上記制御信号が供給される。
【0062】
バッファ227を入力信号をそのまま出力する状態(いわゆるイネーブル状態)に設定することにより、信号が通信端子221,223間を通過可能な状態(以下、信号通過状態とも称する)になる。これに対し、バッファ227の出力をハイ・インピーダンスにした状態(いわゆるディセーブル状態)に設定することにより、信号が通信端子221,223間を伝達することが阻止される状態(以下、信号阻止状態とも称する)になる。このため、例示の通信モジュール200では、スリーステート・バッファ227によって、信号伝達制御手段が構成されている。なお、スリーステート・バッファ以外の要素によって、信号伝達制御手段を構成しても構わない。
【0063】
ここで、バッファ227は双方向バッファであり、また、通信端子221,223間を伝達する信号は下り信号SDと上り信号SUとがある。このため、信号通過状態には、下り信号SDを前段側通信端子221から後段側通信端子223へ通過させる下り信号通過状態と、上り信号SUを後段側通信端子223から前段側通信端子221へ通過させる上り信号通過状態とが含まれる。
【0064】
また、信号阻止状態には、下り信号SDが前段側通信端子221から後段側通信端子223へ伝達するのを阻止する下り信号阻止状態と、上り信号SUが後段側通信端子223から前段側通信端子221へ伝達するのを阻止する上り信号阻止状態とが含まれる。
【0065】
なお、後述するID登録動作では、下り信号SDに関して、下り信号通過状態と下り信号阻止状態との切り替えが少なくとも実行可能であればよい。
【0066】
処理部228は、通信モジュール200における各種の処理を行う。処理部228は例えば、マイクロコンピュータ(換言すればマイクロプロセッサ)と、メモリとを含んで構成可能である。
【0067】
この場合、マイクロコンピュータが、メモリに予め格納されているプログラムに記述された処理ステップ(換言すれば処理手順)を実行することにより、各種の処理が行われる。上記メモリは例えばROM、RAM、書き換え可能な不揮発性メモリ(EPROM等)の1つまたは複数を含んで構成される。当該メモリは、上記のように処理部228が実行するプログラムを格納する他に、各種の情報やデータ等を格納し、また、プログラムを実行するための作業領域を提供する。
【0068】
かかる構成によれば、上記マイクロコンピュータは1つまたは複数の処理ステップに対応する各種手段として機能し、または、上記マイクロコンピュータによって1つまたは複数の処理ステップに対応する各種機能が実現される。なお、上記マイクロコンピュータによって実現される各種の手段または機能の一部または全部をハードウェアによって実現することも可能である。
【0069】
また、処理部228は、メインユニット100との通信を行うための通信機能を有している。例えば、処理部228は自身の上記マイクロコンピュータとメインユニット100との間の通信を担う通信回路を有し、かかる通信回路と上記マイクロコンピュータとによって処理部228の通信機能が実現される。ここでは、通信回路としてI2Cバス方式に準拠した回路が例示される。
【0070】
処理部228の当該通信回路は通信ライン225に接続されている。これにより、処理部228は下り信号SDおよび上り信号SUを受信可能である。特に、処理部228は、通信ライン225のうちでバッファ227よりも前段側(換言すれば上流側)の位置に接続されている。このため、処理部228は、前段側(換言すれば下流側)に位置するバッファ227が信号通過状態にあるのか、それとも信号阻止状態にあるのかに関わらず、前段側端子221へ入力された下り信号SDを受信可能である。
【0071】
なお、処理部228の上記通信回路は、他の通信モジュール200との双方向通信がさらに可能な構成であってもよい。
【0072】
メモリ229は、モジュールID(以下、単にIDとも称する)を格納するための記憶領域を提供する。
【0073】
ここで、モジュールIDは、通信システム1において各通信モジュール200を他の通信モジュール200と識別するための識別情報である。各通信モジュール200にはそれぞれ固有のモジュールIDが割り当てられている。なお、モジュールIDはモジュールアドレス等と称される場合もある。
【0074】
メモリ229は、処理部228が、より具体的には処理部228の上記マイクロコンピュータがアクセス可能に設けられている。メモリ229は例えばRAM、EPROM等の書き換え可能なメモリで構成可能である。
【0075】
ここでは説明を分かりやすくするために、モジュールIDを格納するためのメモリ229が処理部228内の上記メモリとは別個に設けられている場合を例示する。これに対し、メモリ229を処理部228内に設けることも可能である。例えば、処理部228の上記メモリの一部の記憶領域を、モジュールIDを格納するためのメモリ229として利用しても構わない。
【0076】
<通信システム1の構成についての考察>
ここで、通信システム1の構成について考察する。
【0077】
上記構成において、メインユニット100の通信端子111から第1段目の通信モジュール201のバッファ227までの間の通信経路を、第1通信ライン351と称する場合、当該第1通信ライン351は、通信ライン301と、第1段目の通信モジュール201に含まれる前段側通信端子221および通信ライン225とによって構成されている。
【0078】
また、第1段目の通信モジュール201のバッファ227から第2段目の通信モジュール202のバッファ227までの間の通信経路を、第2通信ライン352と称する場合、当該第2通信ライン352は、第1段目の通信モジュール201に含まれる通信ライン226および後段側通信端子223と、通信ライン302と、第2段目の通信モジュール202に含まれる前段側通信端子221および通信ライン225とによって構成されている。
【0079】
この場合、第1通信ライン351は、メインユニット100と、第1段目の通信モジュール201に含まれるバッファ227とを接続している。また、バッファ227は、第1通信ライン351と第2通信ライン352との間に接続され、両通信ライン351,352間の信号通過状態と信号阻止状態とを切り替える。
【0080】
また、第1段目の通信モジュール201に含まれる処理部228およびメモリ229を第1処理部228および第1メモリ229と称する場合、第1処理部228は第1通信ライン351に接続されており、第1メモリ229は第1処理部228がアクセス可能に設けられている。
【0081】
同様に、第2段目の通信モジュール202に含まれる処理部228およびメモリ229を第2処理部228および第2メモリ229と称する場合、第2処理部228は第2通信ライン352に接続されており、第2メモリ229は第2処理部228がアクセス可能に設けられている。
【0082】
また、第1段目の通信モジュール201のモジュールIDは、当該通信モジュール201の処理部228に割り当てられたIDであると捉えることも可能である。同様に、第2段目の通信モジュール202のモジュールIDは、当該通信モジュール202の処理部228に割り当てられたIDであると捉えることも可能である。
【0083】
ここでは第1段目および第2段目の通信モジュール201,202を例に挙げて説明したが、上記の説明は当該2つの通信モジュール201,202に限られるものではない。例えば、第2段目および第3段目の通信モジュール200の処理部228を、第1処理部および第2処理部と称することも可能である。この場合、第1処理部が接続される第1通信ラインは、上記の2つの通信ライン351,352と第1段目の通信モジュール201のバッファ227とによって構成される。
【0084】
<通信モジュールのモジュールIDの登録処理>
上記のように各通信モジュール200には固有のモジュールIDが割り当てられる。以下に、モジュールIDの登録処理を、図1に加えて図2のフローチャートも参照して、説明する。
【0085】
図2に例示のモジュールID登録処理ST1は、基本的に、処理ステップ(以下、単にステップとも称する)ST101〜ST103,ST201〜ST205を含んでいる。
【0086】
電源投入等により、メインユニット100および通信モジュール200が起動する(ステップST101,ST201)。かかる起動ステップST101,ST201において、メインユニット100および通信モジュール200は、リセット状態になり、初期設定を行う。初期設定には、例えば、各種の動作チェック、動作パラメータの設定等が含まれる。
【0087】
特に通信モジュール200では、起動ステップST201の実行により、バッファ227が信号阻止状態になる。例えば、バッファ227がリセット後に自動的に信号通過状態になる構成の場合、処理部228がバッファ227を信号阻止状態に制御する。あるいは、例えば、バッファ227がリセット後に自動的に信号阻止状態になる構成の場合は、特別な制御は必要ない。なお、通信モジュール200は、起動ステップST201の後、通信待機モードになる。
【0088】
その後、メインユニット100の処理部116は、通信モジュール200にモジュールIDの登録処理を実行させるための指示(以下、ID登録指示とも称する)に係る信号を、通信端子111を介して出力する(ステップST102)。なお、当該信号は下り信号SDである。ID登録指示は、例えば設定すべきモジュールIDのデータを有したフォーマットを有している。
【0089】
ID登録指示は通信モジュール200によって受信される(ステップST202)。より具体的には、前段側通信端子221を介して処理部228がID登録指示を受信する。ここで、起動直後は全ての通信モジュール200が信号阻止状態になっているので、起動直後のID登録指示は第1段目の通信モジュール201のみに伝達されることになる。
【0090】
ID登録指示を受信した通信モジュール201は、ID登録処理を実行する(ステップST203)。より具体的には、受信したID登録指示に従って、固有のモジュールIDをメモリ229に格納する。
【0091】
ID登録処理が完了したならば、通信モジュール201は、バッファ227を制御して、現状の信号阻止状態を信号通過状態に変更する(ステップST204)。
【0092】
その後、通信モジュール201はID登録処理が完了したことをメインユニット100へ報告する(ステップST205)。より具体的には、処理部228がID登録完了報告に係る信号を出力することにより、当該信号が前段側通信端子221を介してメインユニットへ伝達される。なお、当該信号は上り信号SUである。
【0093】
メインユニット100はID登録完了の報告を受信すると(ステップST103)、上記のID登録指示ステップST102を再度、実行する。これにより発信された新たなID登録指示は、第1段目の通信モジュール201の前段側通信端子221へ入力される。第1段目の通信モジュール201は既に信号通過状態にあるので、前段側通信端子221へ入力されたID登録指示は後段側通信端子223を介して2段目の通信モジュール202へ伝達される。なお、第1段目の通信モジュール201の処理部228は、今回のID登録指示を受信することになるが、既にID登録を済ませているので無視すればよい。
【0094】
第2段目の通信モジュール202はID登録指示を受信した後(ステップST202)、第1段目の通信モジュール201と同様に上記ステップST203〜ST205を実行する。これにより、第2段目の通信モジュール202にモジュールIDが登録される。
【0095】
第3段目以降の通信モジュール200も、第1段目および第2段目の通信モジュール201,202と同様に動作して、自身のモジュールIDを登録する。
【0096】
ここで、メインユニット100は、例えば通信モジュール200からのID登録完了報告が所定時間送信されてこないことを以て、ID登録が完了したと判断することが可能である。なお、上記所定時間は、ID登録指示の発信から、これに応答するID登録完了報告の受信までにかかる時間よりも長く設定される。
【0097】
なお、上記では信号阻止状態から信号通過状態へ変更するステップST204を、ID登録処理ステップST203の後に実行する場合を例示したが、当該状態変更ステップST204はID登録指示の受信ステップST202の後であれば実行可能である。例えば、状態変更ステップST204の後に、ID登録処理ステップST203を実行してもよい。あるいは、例えば、ID登録完了報告ステップST205の後に、状態変更ステップST204を実行してもよい。
【0098】
<効果>
通信モジュール200の処理部228は、下り信号阻止状態でID登録指示を受信する(ステップST201〜ST202参照)。すなわち、ID登録指示を受信するまでは、下り信号阻止状態にされる。このため、複数の通信モジュール200がメインユニット100に対してディジーチェーン接続された構成を有する通信システム1では、メインユニット100に近い通信モジュール200から順次に、しかも自動的にID登録処理を実行させることが可能である。
【0099】
これにより、ユーザによるID登録作業を不要にすることができる。また、IDの重複登録を防止することができる。したがって、簡便な通信システムを構築することができる。
【0100】
また、ID登録処理を実行させる通信モジュール200の選択は、その通信モジュール200にID登録指示が到達しているか否かに依る。さらに、ID登録指示の到達位置は、各通信モジュール200が下り信号通過状態にあるか下り信号阻止状態にあるかに拠る。このため、かかるモジュール選択は、ID登録指示を伝送するための通信ライン301等を用いて行われる。つまり、モジュール選択のための専用ラインを必要としない。
【0101】
したがって、通信モジュール200内の配線および通信システム1内の配線の本数が少なくて済む。配線数が少ないことは配線スペースの削減をもたらすため、通信モジュール200の小型化および通信システム1の小型化を図ることができる。
【0102】
また、上記のように、ID登録処理を実行させる通信モジュール200を、メインユニット100に近い側から順次、自動的に選択することが可能である。このため、メインユニット100は、ID登録指示において、登録処理を実行させる通信モジュール200を個々に指定する必要がない。したがって、メインユニット100の処理負担を軽減することができる。
【0103】
<第2実施形態>
第2実施形態では、第1実施形態とは異なるID登録処理を説明する。なお、第1実施形態に係る通信システム1は第2実施形態においても共通するため、ここでは既述の説明を援用する。
【0104】
図3に、第2実施形態に係るモジュールIDの登録処理を概説するフローチャートを示す。図3に例示のモジュールID登録処理ST1Bは、基本的に、ステップST121〜ST125,ST221〜ST227を含んでいる。
【0105】
メインユニット100および通信モジュール200は、既述のステップST101,ST201(図2参照)と同様に、起動する(ステップST121,ST122)。特に、通信モジュール200では、起動ステップST221の実行により、バッファ227が信号阻止状態になる。なお、通信モジュール200は、起動ステップST221の後、通信待機モードになる。
【0106】
その後、メインユニット100の処理部116は、通信モジュール200の要求を受け付けるための要求受付に係る信号を、通信端子111を介して出力する(ステップST122)。なお、当該信号は下り信号である。
【0107】
上記要求受付は通信モジュール200によって受信される(ステップST222)。より具体的には、前段側通信端子221を介して処理部228が要求受付を受信する。ここで、起動直後は全ての通信モジュール200が信号阻止状態になっているので、起動直後の要求受付は第1段目の通信モジュール201のみに伝達されることになる。
【0108】
第1段目の通信モジュール201は、要求受付の受信に応答して、ID登録の要求をメインユニット100へ発信する(ステップST223)。より具体的には、処理部228がID登録の要求に係る信号を出力することにより、当該信号が前段側通信端子221を介してメインユニットへ出力される。なお、当該信号は上り信号である。
【0109】
上記ID登録要求はメインユニット100によって受信される(ステップST123)。より具体的には、通信端子111を介して処理部116がID登録要求を受信する。
【0110】
そして、メインユニット100は、ID登録要求の受信に応答して、既述のステップST102と同様にID登録指示を発信する(ステップST124)。
【0111】
ID登録指示は、既述のステップST202と同様に、通信モジュール200によって受信される(ステップST224)。ここで、起動直後は全ての通信モジュール200が信号阻止状態になっているので、起動直後のID登録指示は、ID登録要求を発信した第1段目の通信モジュール201のみに伝達される。
【0112】
その後、通信モジュール201は、既述のステップST203〜ST205と同様に、ID登録処理を実行し(ステップST225)、信号阻止状態を信号通過状態に変更し(ステップST226)、ID登録の完了報告を行う(ステップST227)。かかるID登録の完了報告は、既述のステップST103と同様に、メインユニット100によって受信される(ステップST125)。
【0113】
その後、メインユニット100は、上記の要求受付ステップST122を再度、実行する。かかる要求受付は、第1段目の通信モジュール201の前段側通信端子221へ入力される。第1段目の通信モジュール201は既に信号通過状態にあるので、前段側通信端子221へ入力された要求受付は後段側通信端子223を介して2段目の通信モジュール202へ伝達される。なお、このとき、第1段目の通信モジュール201の処理部228は、今回の要求登録を受信することになるが、既にID登録を済ませているので無視すればよい。
【0114】
第2段目の通信モジュール202は要求受付を受信した後(ステップST222)、第1段目の通信モジュール201と同様に上記ステップST223〜ST227を実行する。この際、メインユニット100も、第1段目の通信モジュール201に対する処理と同様に、上記ステップST123〜ST125を実行する。これにより、第2段目の通信モジュール202にモジュールIDが登録される。
【0115】
第3段目以降の通信モジュール200も、第1段目および第2段目の通信モジュール201,202と同様に動作して、自身のモジュールIDを登録する。
【0116】
なお、上記では信号阻止状態から信号通過状態へ変更するステップST226を、ID登録処理ステップST225の後に実行する場合を例示したが、当該状態変更ステップST226はID登録指示の受信ステップST224の後であれば実行可能である。例えば、状態変更ステップST226の後に、ID登録処理ステップST225を実行してもよい。あるいは、例えば、ID登録完了報告ステップST227の後に、状態変更ステップST226を実行してもよい。
【0117】
ここで、通信モジュール200は、ID登録要求を所定回数(1回または複数回に予め設定される)発信してもID登録指示を受信できなかった場合には、バッファ227を制御して信号阻止状態を信号通過状態に変更するのが好ましい。これによれば、例えばディジーチェーン接続の途中に位置する通信モジュール200が、通信エラー等によりID登録指示を受信できなかった場合でも、それよりも後段の通信モジュール200を、ID登録処理を実行可能な状態にすることができる。また、1つの通信モジュール200がID登録のために通信を占有することを回避することができる。
【0118】
上記ID登録処理ST1Bによれば、ID登録には、通信モジュール200からのID登録要求を必要とする。このため、通信モジュール200からの要求無しにメインユニット100がID登録指示を発信し、通信モジュール200からの応答が無くなった時点でID登録指示の発信を終了する構成に比べて、より確実にID登録を行うことができる。なぜならば、例えば、通信エラー等によりID登録指示を受信できない場合であっても、通信モジュール200がID登録要求を再度、発信することによりID登録指示を取得可能だからである。
【0119】
ここで、メインユニット100は、例えば通信モジュール200からのID登録完了報告が所定時間送信されてこないことを以て、ID登録が完了したと判断することが可能である。なお、上記所定時間は、ID登録指示の発信から、これに応答するID登録完了報告の受信までにかかる時間よりも長く設定される。
【0120】
上記判断の下、メインユニット100は要求受付の発信を終了することも可能である。これに対し、メインユニット100が要求受付の間欠的な発信を継続するのが好ましい。これは、上記のように通信エラー等によりID登録指示を受信できずにID登録が未完了の通信モジュール200に対し、ID登録の機会を再度、与えることができるからである。また、ID登録後の通常動作時においても通信モジュール200から種々の要求を受け付けることが可能になるため、多彩な処理、動作等を実現することができるからである。
【0121】
<第3実施形態>
第3実施形態では、通信システム1を適用したセンサシステムを説明する。ここでは、センサシステムの例として電力監視システムを例示する。図4に、第3実施形態に係る電力監視システム2を概説するブロック図を示す。図4には、電力監視システム2が分電盤500に取り付けられた状態を例示している。まず、分電盤500を説明する。
【0122】
<分電盤の構成>
分電盤500は、ここでは、単相3線式を例示する。図4に例示の分電盤500は、主幹ブレーカ510と、主幹線路520と、4つの分岐線路530と、4つの分岐ブレーカ540とを含んでいる。以下の説明では、4つの分岐線路530を符号531〜534で以て区別し、4つの分岐ブレーカ540を符号541〜544で以て区別する場合もある。なお、これらの要素510,520,530,540の数はここでの例示に限定されるものではない。
【0123】
主幹ブレーカ510は、一次側(すなわち電源側)の端子が例えば引き込み線に接続され、二次側(すなわち負荷側)の端子が主幹線路520に接続されている。主幹線路520は3本の主幹電線、より具体的には中性線520aと電圧線520b,520cとを含んでいる。2つの電圧線520b,520cは中性線520aの電圧に対して互いに逆位相の電圧(ここでは100Vを例示する)を供給する電線である。このため、中性線520aと電圧線520bとによって第1の100V供給系統が構成され、中性線520aと電圧線520cとによって第2の100V供給系統が構成され、電圧線520b,520cによって200V供給系統が構成される。なお、例えば100V供給系統は、100Vの電圧を供給可能な電力供給系統のことである。
【0124】
分岐線路531,532は第1の100V供給系統から分岐し、分岐線路533は200V供給系統から分岐し、分岐線路534は第2の100V供給系統から分岐している。分岐線路531の途中には分岐ブレーカ541が挿入されており、同様に分岐線路532〜534の途中に分岐ブレーカ542〜544がそれぞれ挿入されている。なお、各分岐線路530は2本の分岐電線530a,530bで構成されている。
【0125】
<電力監視システムの構成>
次に、電力監視システム2を説明する。図4に例示するように、電力監視システム2は、電力監視メインユニット600と、4つの電力測定モジュール700と、4本のケーブル800とを含んでいる。以下の説明では、4つの電力測定モジュール700を符号701〜704で以て区別する場合もある。なお、これらの要素600,700,800の数はここでの例示に限定されるものではない。
【0126】
図4に例示するように、電力監視メインユニット600と電力測定モジュール701〜704はケーブル800を介してディジーチェーン接続されている。図4の例では、第1段目の電力測定モジュール701が分岐線路531に対して設けられており、同様に第2ないし第4段目の電力測定モジュール702〜704が分岐線路532〜534に対してそれぞれ設けられている。
【0127】
より具体的には、電力測定モジュール701は分岐ブレーカ541の一次側において分岐電線530aに取り付けられており、同様に電力測定モジュール702〜704は分岐ブレーカ542〜544の一次側において分岐電線530aにそれぞれ取り付けられている。なお、もう一方の分岐電線530bに電力測定モジュール700を取り付けても構わない。
【0128】
<電力監視メインユニットの構成>
電力監視メインユニット600は、各電力測定モジュール700が測定した電力量の情報を収集する。また、電力監視メインユニット600は、必要に応じて、外部のホスト機器と情報のやりとりを行う。
【0129】
図5に、電力監視メインユニット600を概説するブロック図を示す。図5に示すように、電力監視メインユニット600は、既述の通信システム1(図1参照)のメインユニット100を有している。図5に例示の電力監視メインユニット600は、さらに電圧値信号生成部601と、信号端子602とを有している。
【0130】
電圧値信号生成部601は、所定箇所の電圧値を測定し、測定結果に関する信号(電圧値信号と称することにする)を出力する。電圧値信号は、後述のように、各電力測定モジュール700での電力値算出に利用される。図4および図5の例では、電圧値信号生成部601は、第1の100V供給系統の主幹電線520a,520bに接続されており、両電線520a,520b間の電圧を測定する。電圧値信号は、ここでは、電圧値信号生成部601が取得した電圧値が100Vであることを示す内容を有していればよく、当該信号自体が100Vの電圧である必要はない。
【0131】
なお、電圧値信号生成部601は、第2の100V供給系統、または、200V供給系統に接続しても構わない。あるいは、分岐線路541〜544のいずれかに電圧値信号生成部601を接続することも可能である。
【0132】
信号端子602は、上記の電圧値信号を電力監視メインユニット600の外部へ出力するための端子である。図5では、電力監視メインユニット600がケーブル800を接続するためのコネクタ603を有し、当該コネクタ603の端子が信号端子602を構成する場合を例示している。
【0133】
また、図5の例では、コネクタ603の他の端子に、通信システム1に係る通信端子111が割り当てられている。ここでは、ケーブル800は、上記電圧値信号用の信号ラインと、通信システム1に係る通信ラインとを含んでいるものとする。
【0134】
<電力測定モジュールの構成>
電力測定モジュール700は、所定の電力供給系統に対して設けられ、当該割り当てられた電力供給系統の使用電力量を測定する。また、電力測定モジュール700は、測定結果の情報を電力監視メインモジュール600へ送信する。
【0135】
図6に、電力測定モジュール700を概説するブロック図を示す。図6に示すように、電力測定モジュール700は、既述の通信システム1(図1参照)の通信モジュール200を有している。図6に例示の電力測定モジュール700は、さらに、電流測定部721と、電力量算出部722と、信号端子723,725と、モード設定手段730とを有している。
【0136】
電流測定部721は、例えばCTセンサで構成され、ここでは分岐電線520aに流れる電流を測定し、測定結果を電力量算出部722へ出力する。
【0137】
信号端子723は、電力監視メインユニット600から送出される上記電圧値信号を受信するための端子である。信号端子725は、受信した電圧値信号を電力測定モジュール700の外部へ出力するための端子である。このため、上記電圧値信号は、電力監視メインユニット600または前段の電力測定モジュール700から前段側の信号端子723を介して当該電力測定モジュール700へ入力され、後段側の信号端子725を介して次段の電力測定モジュール700へ出力される。
【0138】
図6の例では、電力測定モジュール700が、前段側のケーブル800を接続するためのコネクタ724を有し、当該コネクタ724の端子が前段側の信号端子723を構成している。また、図6の例では、電力測定モジュール700が、後段側のケーブル800を接続するためのコネクタ726を有し、当該コネクタ726の端子が後段側の信号端子725を構成している。
【0139】
また、図6の例では、コネクタ724,726の他の端子に、通信システム1に係る通信端子211,223がそれぞれ割り当てられている。
【0140】
電力監視メインユニット600から送出される電圧値信号は、上記のように前段側信号端子723から後段側信号端子725へ伝達されるとともに、電力量算出部722へ供給される。
【0141】
電力量算出部722は、上記電圧値信号によって表される電圧値(ここでは100V)と、電流測定部721による測定電流値とを用いて、電力量を算出する。例えば、電圧値信号によって表される電圧値と、電流測定部721による測定電流値とを乗算することによって、電力量を算出する。
【0142】
モード設定手段730は、その電力測定モジュール700が100V供給系統に設けられているのか、それとも200V供給系統に設けられているのかの区別を設定するものである。モード設定手段730は、処理部228に接続されている。
【0143】
モード設定手段730は、例えばトグルスイッチによって構成可能である。この場合、トグルスイッチが操作されるたびに、処理部228は自身の動作モードを100V供給系統用と200V供給系統用の動作モードとに切り替える。
【0144】
あるいは、モード設定手段730は、例えば磁気センサによって構成することも可能である。この場合、電力測定モジュール700に磁石が近づけられ、これを磁気センサが検出するたびに、処理部228が上記の動作モードを切り替える。なお、磁気センサ以外のセンサも利用可能である。
【0145】
処理部228は、モード設定手段730によって設定された動作モードに従って、電力量算出部722から取得した算出電力量に適宜、補正を施す。
【0146】
上記電圧値信号は、ここでは、電圧値が100Vであることを示す信号である。このため、100V供給系統の電力測定モジュール701,702,704に関しては、電力量算出部722によって算出された電力量は、測定対象としている電力供給系統の電力量を反映している。これに対し、200V供給系統の電力測定モジュール703に関しては、算出結果に対して何らかの補正が必要である。
【0147】
かかる点に鑑みると、処理部228による補正処理として次の処理が考えられる。すなわち、電力測定モジュール701〜704のいずれの処理部228も電力量算出部722から取得した算出電力量に所定係数を乗算するように構成し、当該係数を100V供給系統と200V供給系統とで切り替えるように構成する。
【0148】
より具体的には、100V供給系統の電力測定モジュール701,702,704では処理部228は上記係数を”1”に設定し、200V供給系統の電力測定モジュール703では処理部228が上記係数を”2”に設定する。これによれば、200V供給系統の電力量を適切に得ることができる。
【0149】
あるいは、200V供給系統の電力測定モジュール703だけが、電力量算出部722から取得した算出電力量を2倍にする補正処理を行うように構成してもよい。
【0150】
なお、200V供給系統の電力測定モジュール703のモジュールIDを電力監視メインユニット600に予め与えておくことにより、当該電力測定モジュール703が電力監視メインユニット600からの指示に基づいて上記の補正演算を行うように構成することも可能である。これによれば、モード設定手段730を設ける必要がなくなり、小型化を図ることができる。
【0151】
処理部228は、上記のようにして取得された電力量を、通信システム1(図1参照)の構成を利用して電力監視メインユニット600へ送信する。
【0152】
電力監視システム2によれば、通信システム1が奏する様々な効果を享受することができる。
【0153】
また、モード設定手段730の採用により、動作モードの異なる複数種類の電力測定モジュール700を用意する必要がない。このため、電力測定モジュール700の種類を間違って設置することを防止できる。また、電力測定モジュール700の設置後に動作モードを設定することができる。また、電力測定モジュール700の種類を気にすることなく設置作業を行うことができるので、良好な作業性を提供することができる。
【0154】
電力監視システム2は、通信システム1を適用したセンサシステムの一例に過ぎない。すなわち、上記例示の電流測定部721に代えて各種センサを通信モジュール200と組み合わせてセンサモジュールを構成することにより、種々のセンサシステムを提供することが可能である。
【符号の説明】
【0155】
1 通信システム
2 電力監視システム(センサシステム)
100 メインユニット
200〜202 通信モジュール
221 前段側通信端子
223 後段側通信端子
227 バッファ(信号伝達制御手段)
228 処理部
229 メモリ
351 第1通信ライン
352 第2通信ライン
600 電力監視メインユニット
700〜704 電力測定モジュール(センサモジュール)
730 モード設定手段
SD 下り信号
ST1,ST1B ID登録処理

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ディジーチェーン接続されてモジュール外部と通信を行う通信モジュールであって、
メインユニットまたは前段の通信モジュールとのディジーチェーン接続に用いられる前段側通信端子と、
後段の通信モジュールとのディジーチェーン接続に用いられる後段側通信端子と、
モジュール外部から前記前段側通信端子へ入力される下り信号を前記後段側通信端子へ通過させる下り信号通過状態と、前記下り信号が前記後段側通信端子へ伝達するのを阻止する下り信号阻止状態とを切り替え可能な信号伝達制御手段と、
前記下り信号を受信可能に設けられた処理部と、
前記処理部がアクセス可能に設けられており、当該通信モジュールに割り当てられる識別情報(ID)を格納するためのメモリと
を備え、
前記下り信号は、前記IDの登録処理を実行させるために前記メインユニットから発信されるID登録指示の信号を含み、
前記処理部は、前記下り信号阻止状態で前記ID登録指示を受信し、当該ID登録指示の受信後に前記信号伝達制御手段を制御して前記下り信号阻止状態を前記下り信号通過状態に変更する、
通信モジュール。
【請求項2】
メインユニットと、
前記メインユニットとディジーチェーン接続された複数の通信モジュールと
を備え、
前記複数の通信モジュールのそれぞれは、請求項1に記載の通信モジュールで構成されている、
通信システム。
【請求項3】
請求項2に記載の通信システムであって、
前記複数の通信モジュールのそれぞれは、前記メインユニットへ前記IDの登録要求を発信し、
前記メインユニットは、前記ID登録要求に応答して前記ID登録指示を発信する、
通信システム。
【請求項4】
請求項3に記載の通信システムであって、
前記複数の通信モジュールのそれぞれは、前記ID登録要求を所定回数発信しても前記ID登録指示を受信できなかった場合には、前記信号伝達制御手段を制御して前記下り信号阻止状態を前記下り信号通過状態に変更する、通信システム。
【請求項5】
請求項2ないし4のうちのいずれか1項に記載の通信システムを備えるセンサシステムであって、
前記複数の通信モジュールをそれぞれ有する複数のセンサモジュールを備える、
センサシステム。
【請求項6】
請求項5に記載のセンサシステムであって、
前記複数のセンサモジュールのそれぞれは、動作モードを切り替えるためのモード設定手段を有する、センサシステム。
【請求項7】
請求項5または6に記載のセンサシステムを備える電力監視システムであって、
前記複数のセンサモジュールのそれぞれは、各自に割り当てられた電力供給系統の電力量を測定する電力測定モジュールを構成している、電力監視システム。
【請求項8】
メインユニットと、
前記メインユニットに接続された第1通信ラインと、
第2通信ラインと、
前記第1通信ラインと前記第2通信ラインとに接続されており、前記メインユニットから前記第1通信ラインへ伝達される下り信号を前記第1通信ラインから前記第2通信ラインへ通過させる下り信号通過状態と、前記下り信号が前記第2通信ラインへ伝達するのを阻止する下り信号阻止状態とを切り替え可能な信号伝達制御手段と、
前記第1通信ラインに接続された第1処理部と、
前記第1処理部がアクセス可能に設けられており、前記第1処理部に割り当てられる識別情報(ID)を格納するための第1メモリと、
前記第2通信ラインに接続された第2処理部と、
前記第2処理部がアクセス可能に設けられており、前記第2処理部に割り当てられるIDを格納するための第2メモリと
を備え、
前記下り信号は、前記IDの登録処理を実行させるために前記メインユニットから発信されるID登録指示の信号を含み、
前記第1処理部は、前記下り信号阻止状態で前記ID登録指示を受信し、当該ID登録指示の受信後に前記信号伝達制御手段を制御して前記下り信号阻止状態を前記下り信号通過状態に変更し、
前記第2処理部は、前記下り信号通過状態への変更後に、前記メインユニットから発信される新たな前記ID登録指示を受信する、
通信システム。
【請求項9】
請求項8に記載の通信システムであって、
前記第1および第2の処理部のそれぞれは、前記メインユニットへ前記IDの登録要求を発信し、
前記メインユニットは、前記ID登録要求に応答して前記ID登録指示を発信する、
通信システム。
【請求項10】
請求項9に記載の通信システムであって、
前記第1処理部は、前記ID登録要求を所定回数発信しても前記ID登録指示を受信できなかった場合には、前記信号伝達制御手段を制御して前記下り信号阻止状態を前記下り信号通過状態に変更する、通信システム。
【請求項11】
請求項8ないし10のうちのいずれか1項に記載の通信システムを備えるセンサシステムであって、
前記第1処理部を有する第1センサモジュールと、
前記第2処理部を有する第2センサモジュールと
を備える、センサシステム。
【請求項12】
請求項11に記載のセンサシステムであって、
前記第1および第2のセンサモジュールのそれぞれは、動作モードを切り替えるためのモード設定手段を有する、センサシステム。
【請求項13】
請求項11または12に記載のセンサシステムを備える電力監視システムであって、
前記第1および第2のセンサモジュールのそれぞれは、各自に割り当てられた電力供給系統の電力量を測定する電力測定モジュールを構成している、電力監視システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−24081(P2011−24081A)
【公開日】平成23年2月3日(2011.2.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−168643(P2009−168643)
【出願日】平成21年7月17日(2009.7.17)
【出願人】(591128453)株式会社メガチップス (322)
【Fターム(参考)】