説明

通信制御装置、路側通信機、移動通信機、及び、通信システム

【課題】通信資源の有効利用を図ることができる通信制御装置、路側通信機、移動通信機、及び通信システムを提供する。
【解決手段】本発明の通信制御装置は、複数の路側通信機2の内の一の路側通信機2が送信すべき提供情報D1が、一のタイムスロットの間に送信可能な情報量であるか否かを判定する判定部23aと、判定部23aの判定結果に応じて、前記一の路側通信機2が送信すべき提供情報D1の一部を他の路側通信機2に送信させ、提供情報D1の一部以外の部分を前記一の路側通信機2に送信させる送信制御部23bとを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、高度道路交通システム(ITS:Intelligent Transport System)に用いられる通信制御装置、路側通信機、移動通信機、及び、通信システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、交通安全の促進や交通事故の防止を目的として、道路に設置されたインフラ装置からの情報を受信し、この情報を活用することで車両の安全性を向上させる高度道路交通システムが検討されている(例えば、特許文献1参照)。
この交通システムは、主に、インフラ側の無線通信装置である複数の路側通信機と、各車両に搭載される無線通信装置である車載通信機(移動通信機)とによって構成される。
【0003】
この場合、各通信主体間で行う通信の組み合わせには、路側通信機と車載通信機とが行う路車(又は車路)間通信と、車載通信機同士が行う車車間通信とが含まれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第2806801号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記交通システムにおいては、路車間通信や、路路間通信等の各通信の共存を図るに当たって、帯域を有効利用してどのような通信制御を行うかが課題となる。そこで、限られた周波数帯域内で路車間及び車車間といった各通信を行うべく、マルチアクセス(Multiple Access)方式が用いられることが検討されている。
【0006】
このマルチアクセス方式としては、周波数分割多重(FDMA:Frequency Division Multiple Access)や符号分割多重(CDMA:Code Division Multiple Access)があるが、山間部などで少数の車載通信機のみでの通信も想定される車車間通信としてのマルチアクセス方式としては、例えばCSMA(Carrier Sense Multiple Access)に代表される自律的なランダムアクセス方式を採用するのが好ましい。
【0007】
しかし、路側通信機が存在するエリアでは、路車間通信及び車車間通信が共存する。この場合、インフラ側である路側通信機の取り扱う情報の優先度が高いのが一般的であるため、車車間通信よりも路車間通信や路路間通信が優先的に行われる仕組みが必要である。
そこで、路側通信機の情報送信を優先的に行うためには、通信に用いる周波数を一定時間ごとに時分割して路側通信機の送信専用の時間スロットを設ける、時分割多重(TDMA:Time Division Multiple Access)によるマルチアクセスが有効となる。
【0008】
従って、例えば、交差点ごとに設置された複数の路側通信機群で構成される通信システムを想定すると、各路側通信機が送信するタイムスロットをTDMA方式で割り当て、残ったタイムスロットをCSMA方式による車車間通信に使用させるのが、合理的な通信システムになると考えられる。
【0009】
ここで、ITS用の通信帯域としては、700MHz帯で概ね10MHz幅とする規格が検討されているが、上記交通システムにおいて、このような比較的狭い帯域幅で与えられる限られた通信資源を如何に有効利用するかが問題になる。
すなわち、路側通信機が送信する情報には、交差点に設置された交通信号灯器の灯色予定時間等を示す信号現示情報の他、交差点内に位置する移動通信機の位置等に関する情報や、周辺の道路の長さ等の道路構造を示す道路線形情報が含まれている。
従って、ある路側通信機の通信エリア内の交通量が増えて移動通信機の数が増えると、当該路側通信機が送信すべき情報の量が増加する。送信すべき情報量が増加すると、路側通信機は、TDMA方式によって割り当てられたタイムスロット(所定の時間帯)の間で、送信すべき情報の全てを送信できなくなるおそれがある。
【0010】
ただし、全ての路側通信機の通信エリアにおいて交通量が増加するといったことが頻繁に発生するわけではなく、ある路側通信機の通信エリア内の交通量が増加したとしても、他の路側通信機の通信エリアにおいてはその交通量が少ない場合がある。このとき、通信エリア内の交通量が増加した路側通信機では、その交通量の増加に伴って送信情報量が増加し、送信すべき情報の全てを送信できない状態となる一方、他の路側通信機の通信エリアにおいては交通量が少ないことから割り当てられているタイムスロットに対して送信情報量が少なく、結果的に無駄な送信時間が与えられてしまう場合がある。
このように、従来の通信システムでは、当該通信システム全体としての通信資源を有効に利用しているとは言えなかった。
【0011】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、通信資源の有効利用を図ることができる通信制御装置、路側通信機、移動通信機、及び通信システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
(1)本発明は、複数の路側通信機それぞれが、予め割り当てられた通信時間帯の間に、道路上の移動通信機に対して送信すべき路側情報を当該移動通信機に送信する通信システムに用いられる通信制御装置であって、前記複数の路側通信機の内の一の路側通信機が送信すべき前記路側情報が、前記通信時間帯の間に送信可能な情報量であるか否かを判定する判定部と、前記判定部の判定結果に応じて、前記一の路側通信機が送信すべき前記路側情報の一部を他の路側通信機に送信させ、前記路側情報の一部以外の部分を前記一の路側通信機に送信させる送信制御部と、を備えていることを特徴としている。
【0013】
上記構成の通信制御装置によれば、通信時間帯の間に送信可能な情報量であるか否かの判定結果に応じて、一の路側通信機により送信される路側情報の一部を、他の路側通信機に送信させる送信制御部を備えているので、例えば、一の路側通信機により送信される路側情報の情報量が通信時間帯の間に送信可能な情報量でないと判定された場合、その路側情報の一部を他の路側通信機に送信させるように設定することで、一の路側通信機が送信できない情報を他の路側通信機に送信させることができる。この結果、各路側通信機の間で通信資源を横断的に活用することができ、通信システム全体として、通信資源を有効利用することができる。
【0014】
従って、例えば、一の路側通信機の通信エリアの交通量の増加等により当該路側通信機の送信すべき情報量が増加することで、その情報量が当該路側通信機の通信時間帯の間に送信できない場合にも、その路側情報の一部を他の路側通信機に送信させることで、一の路側通信機が送信できない情報を他の路側通信機に送信させることができる。この結果、通信システム全体として、各路側通信機が送信すべき路側情報を送信することができる。
【0015】
(2),(3)前記路側情報は、所定の判断基準で分類される第一情報及び第二情報を含んでいるものであることが好ましい。この場合、情報の重要度や、情報量等を所定の判断基準として分類することができるが、具体的には、情報の更新頻度により分類し、前記第一情報を、更新頻度の高い高頻度更新情報、前記第二情報を、前記第一情報よりも更新頻度の低い低頻度更新情報とすることが好ましい。
(4)より具体的には、前記第二情報は、前記複数の路側通信機それぞれで互いに異なる内容を示す情報であり、前記送信制御部は、前記第二情報を前記路側情報の一部として前記他の路側通信機に送信させることが好ましい。
この構成によれば、一の路側通信機により送信される路側情報の情報量が通信時間帯の間に送信可能な情報量でないと判定された場合にも、更新頻度の低い第二情報を他の路側通信機に送信させることで、更新頻度の高い第一情報を優先的に一の路側通信機によって送信することができる。これにより、更新頻度が高いことから時間的に早く送信しなければならない情報である第一情報を速やかに送信できる。
また、第二情報においては、他の路側通信機により送信することでその送信機会を確保することができる。加えて、第二情報は、更新頻度が低いことから早期に送信する必要性が低く、他の路側通信機によって後回しで送信したとしても、情報としての有効性を損なうことはない。
【0016】
(5)また、前記第二情報は、前記複数の路側通信機それぞれで互いに同一の内容を示す情報であり、前記判定部の判定結果に応じて、前記第二情報を複数の分割情報とする分割部をさらに備え、前記送信制御部は、前記複数の分割情報の内の一部又は全部を、前記路側情報の一部として前記他の路側通信機に送信させるものであってもよい。
この構成においても、一の路側通信機により送信される路側情報の情報量が通信時間帯の間に送信可能な情報量でないと判定されれば、更新頻度の高い第一情報を優先的に一の路側通信機によって送信することができる。これにより、更新頻度が高い第一情報を速やかに送信できる。
一方、更新頻度の低い第二情報については、分割部によって分割された複数の分割情報の内の一部又は全部を他の路側通信機に送信させることで、第二情報全体としての送信機会が確保される。
【0017】
(6)また、前記複数の路側通信機の内、少なくとも一部の路側通信機は、当該一部の路側通信機以外の路側通信機とは異なる通信メディアによって前記移動通信機との間で通信を行うものであってもよい。
この場合、例えば、路側情報の一部以外の部分と、路側情報の一部とを互いに異なる通信メディアで送信することができ、各通信メディアの特性に応じた情報の送信を行うことができる。
【0018】
(7)上記通信制御装置は、路側通信機や、移動通信機に対して独立して設けられた装置とすることもできるが、路側通信機が上記通信制御装置を備えた構成であってもよい。
【0019】
(8)また、本発明は、分割部を有する通信制御装置と、複数の路側通信機とを備えた通信システムにおいて、前記複数の路側通信機それぞれが送信する路側情報を受信する移動通信機であって、前記複数の路側通信機それぞれから送信される前記複数の分割情報を受信する受信部と、受信した前記複数の分割情報を結合し、前記第二情報を復元する結合部を備えていることを特徴としている。
【0020】
上記構成の移動通信機によれば、複数の分割情報を互いに異なる路側通信機から受信したとしても、結合部によって第二情報を復元できるので、当該第二情報を確実に取得することができる。
【0021】
(9)また、本発明は、複数の路側通信機それぞれが、予め割り当てられた通信時間帯の間に、道路上の移動通信機に対して送信すべき路側情報を前記移動通信機に送信する通信システムであって、一の路側通信機が前記通信時間帯の間に前記路側情報が送信できるか否かを判定する判定部と、前記判定部の判定結果に応じて、前記一の路側通信機において送信すべき前記路側情報の一部を、他の路側通信機に送信させる送信制御部を備えることを特徴としている。
上記構成の通信システムによれば、上述のように、通信資源を有効利用することができる。
【発明の効果】
【0022】
以上のように、本発明の通信制御装置、路側通信機、移動通信機、及び通信システムによれば、通信資源の有効利用を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】高度道路交通システムの実施の一形態を示す概略斜視図である。
【図2】高度道路交通システムの管轄エリアを示す平面図である。
【図3】本システムの無線通信におけるタイムスロットの一例を示す概念図である。
【図4】路側通信機と車載通信機の内部構成を示すブロック図である。
【図5】図2における各交差点に設置された路側通信機それぞれのタイムスロットに格納されている提供情報の態様を示した模式図である。
【図6】本発明の第二実施形態に係る路側通信機と、車載通信機の内部構成を示すブロック図である。
【図7】本発明の第二実施形態における、図2中の各交差点に設置された路側通信機それぞれのタイムスロットに格納されている提供情報の態様を示した模式図である。
【図8】図7において分割された道路線形情報Dを示すとともにこれを復元する際の態様を示した模式図である。
【図9】光ビーコンを設置した場合における、高度道路交通システムの管轄エリアを示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
〔システムの全体構成〕
図1は、高度道路交通システム(ITS)の実施の一形態を示す概略斜視図である。本実施形態の高度道路交通システムは、交通信号機1、路側通信機2、車載通信機3(図2参照)、中央装置4、車載通信機(移動通信機)3を搭載した車両5、及び、車両感知器や監視カメラ等よりなる路側センサ6を含む。
各交通信号機1と路側通信機2とは、複数の交差点Ji(図例では、i=1〜12)のそれぞれに設置されており、通信回線7を介してルータ8に接続されている。このルータ8は交通管制センター内の中央装置4に接続されている。
【0025】
中央装置4は、自身が管轄する監視エリアに含まれる各交差点Jiの交通信号機1及び路側通信機2とLAN(Local Area Network)を構成している。従って、中央装置4は、各交通信号機1及び各路側通信機2との間で双方向通信が可能である。なお、中央装置4は、交通管制センターではなく道路上に設置してもよい。
【0026】
路側センサ6は、各交差点Jiに流入する車両台数をカウントする等の目的で、管轄エリア内の道路の各所に設置されている。この路側センサ6は、直下を通行する車両5を超音波や赤外線によって感知する車両感知器、或いは、道路の交通状況を時系列に撮影する監視カメラ等よりなり、交差点Jiの交通状況としての交通量を検知し、交差点Jiの交通量を示すセンサ情報として取得する。路側センサ6は、取得したセンサ情報である、車両通過時に生じる感知信号よりなる車両感知器の感知情報等について、通信回線7を介して中央装置4に送信する。
なお、図1及び図2では、図示を簡略化するために、各交差点Jiに信号灯器が1つだけ描写されているが、実際の各交差点Jiには、互いに交差する道路の上り下り用として少なくとも4つの信号灯器が設置されている。
【0027】
中央装置4は、ワークステーション(WS)やパーソナルコンピュータ(PC)等よりなる制御部を有している。この制御部は、路側通信機2、路側センサ6からの各種の交通情報の収集・処理(演算)・記録、信号制御及び情報提供を統括的に行う。
中央装置4は、通信回線7を介してLAN側と接続された通信インタフェースである通信部を有しており、この通信部は、交通信号機1の切り替えタイミングに関する信号制御指令を所定時間ごとに交通信号機1に送信する。
また、中央装置4の通信部は、路側通信機2から、当該通信機2が受信した車載通信機3(車両5)からの自己の現在位置等を含む車両情報や、路側センサ6から受信した車両感知器の感知情報や画像情報等からなるセンサ情報等を、ほぼリアルタイム(例えば、0.1〜1.0秒周期)で受信しており、中央装置4の制御部は、これらの各種情報に基づいて前記系統制御や広域制御を実行する。
中央装置4の制御部は、受信した上記車両情報や、センサ情報等に基づいて道路の渋滞状況を把握することで、渋滞情報や、各交差点の交通状況に関する交差点情報を含んだ交通情報を生成する。中央装置4は、通信部を介して、前記信号制御指令や、信号現示情報、前記交通情報の他、道路の形状を示す道路線形情報や、前記センサ情報を含んだ提供情報D1を路側通信機2に対して送信する。(図1参照)
【0028】
〔無線通信の方式等〕
図2は、高度道路交通システムの管轄エリアを示す平面図である。本実施形態の交通システムは、車載通信機3との間で無線通信が可能な路側通信機2と、キャリアセンス方式で他の通信機2,3と無線通信を行う移動無線送受信機(移動通信機)の一種である車載通信機3とを備えている。なお、図2では、交差点J1を構成する紙面上下方向に延びる道路は片側二車線の道路であり、他の道路は片側一車線のものとして例示されているが、道路構造はこれに限られるものではない。
【0029】
路側通信機2は、路側の各交差点Jiに設置されていて、図2では交通信号機1の支柱に取り付けられている。一方、車載通信機3は、道路を走行する各車両5にそれぞれ搭載されている。
各路側通信機2は、その周囲に広がる所定範囲の通信エリアA(路側通信機2の送信信号が十分に届く範囲)を有し、この通信エリアAを走行する各車両5の車載通信機3との無線通信が可能である。また、各路側通信機2は、通信エリアAが重複する場合、その通信エリアAが重複する他の路側通信機2とも無線通信が可能である。
【0030】
本実施形態の交通システム(通信システム)では、路側通信機2と車載通信機3との間(「路」から「車」への路車間通信と「車」から「路」への車路間通信との双方を含む。)の通信(路車間通信)と、車載通信機3同士(車車間通信)について、無線通信が用いられている。また、中央装置4は、各路側通信機2と有線での双方向通信が可能であるが、この中央装置4と路側通信機2との間の通信についても無線通信であってもよい。
【0031】
路側通信機2は、自身が無線送信するための時間(路側用タイムスロット)を時分割多重(TDMA)方式で割り当てており、路側用タイムスロット以外の時間帯には、無線送信を行わない。路側用タイムスロット以外の時間帯は、車載通信機3のためのCSMA方式による送信時間として開放されている。この時間帯では、複数の車載通信機3が、CSMA/CA方式によって送信機会を獲得して、車車間通信、車路間通信を行う。
【0032】
また、各路側通信機2は、自身の送信タイミングを制御するために他の路側通信機2との間で、時刻同期を行うための時刻同期機能を有している。この路側通信機2の時刻同期は、例えば、自身の時計をGPS時刻に合わせるGPS同期や、自身の時計を他の路側通信機2からの送信信号を基準に合わせるエア同期等によって行われる。
【0033】
本実施形態では、複数の路側通信機2の中から一つの親機が予め選定されている。この親機は、総括的に路側用タイムスロットを割り当てる機能を有しており、自身に対するスロット割り当てを自律的に行うと共に、自己が管理する複数の他の路側通信機2(子機)を含めて電波干渉が生じないタイミングとなるように、子機に対するタイムスロットの割り当ても行う。
【0034】
図3は、本システムの無線通信におけるタイムスロットの一例を示す概念図である。図3において、横軸は時間軸を示しており、路側通信機2、及び、子機S1,S2として設定された二つの他の路側通信機2に対して、時間軸上に設定されたタイムスロットを示している。
図に示すように、親機M(路側通信機2)は、自己及び他の路側通信機2(子機S1,S2)が無線送信するための路側用タイムスロットTaを、各路側通信機2ごとに設定する。路側用タイムスロットTaが設定された時間帯においては、対象の路側通信機2による無線通信が許容される。各路側通信機2用のタイムスロットTa以外の時間帯は、車載通信機3が車車間通信を行うためのタイムスロットTbとして開放される。このため、各路側通信機2は、車載用タイムスロットTbでは無線送信を行わない。各路側用タイムスロットTaと車載用タイムスロットTbとは、時分割で交互に割り当てられ、両スロットTa,Tbそれぞれは一定の周期で繰り返される。
【0035】
より具体的には、親機Mは、自己が送信するためのタイムスロットTaを一定の周期(第一の周期Δt1)で設定する。さらに、この第一の周期Δt1の間に、自己が管理する子機用のタイムスロットTaそれぞれを、予め定めた順番で、車載用タイムスロットTbのための時間を置いて割り当てる。これにより、これら子機のタイムスロットTaについても、第一の周期Δt1で設定される。
図例では、第一の周期Δt1が100ミリ秒に設定されている。さらに、子機S1用のタイムスロットTaの開始時は、親機M用のタイムスロットTaの開始時から40ミリ秒後に設定され、子機S2用のタイムスロットTaの開始時は、親機M用のタイムスロットTaの開始時から70ミリ秒後に設定されている。また、親機M、子機S1、及び子機S2のタイムスロットTaの時間幅は、それぞれ、4ミリ秒、4ミリ秒、及び3ミリ秒に設定されている。
【0036】
親機Mは、上記のように第一の周期Δt1内に設定された各タイムスロットTaについて、当該第一の周期Δt1ごとに繰り返し、自己及び子機S1,S2が無線送信するための路側用タイムスロットTaを、各路側通信機2ごとに設定する。
【0037】
親機Mは、上記のように各タイムスロットTaを設定すると、その設定を示すスロット情報D2を生成し、自己のために設定したタイムスロットTaを用いて車載通信機3に対してブロードキャスト送信する。また、親機Mは、子機に対しては、路路間通信もしくは中央装置4を介して、スロット情報D2を送信する。
親機Mは、スロット情報D2を送信することで、図3に示すようにタイムスロットが設定されることを、各子機及び車載通信機3に周知させる。これによって、各路側通信機2及び車載通信機3は、上記タイムスロットに従って通信を行うことが可能となる。
【0038】
なお、本実施形態では、予め親機Mとして設定された路側通信機2が路側用タイムスロットを割り当てる機能を有している場合を例示するが、当該機能は、各路側通信機2それぞれが有していても良いし、路側通信機2とは別個に路側に設置してもよく、また、中央装置4に設けても良い。
【0039】
〔路側通信機の構成〕
図4は、路側通信機2と、車載通信機3の内部構成を示すブロック図である。
路側通信機2は、無線通信のためのアンテナ20に接続された無線通信部21と、中央装置4と双方向通信するための有線通信部22と、これらの通信制御を行うプロセッサ(CPU:Central Processing Unit)等よりなる制御部23と、制御部23に接続されたROMやRAM等の記憶装置よりなる記憶部24とを備えている。
無線通信部21は、無線通信のために通常用いられる構成とすることができ、発振器、変調器、復調器、アンプ等を備えている。
記憶部24は、制御部23が実行する通信制御のためのコンピュータプログラムや、各通信機2,3の通信機ID等を記憶している。
【0040】
路側通信機2の制御部23は、当該路側通信機2が上述の親機Mに設定されている場合には、タイムスロットの設定を行い、その設定を示すスロット情報D2を生成する。そして、設定したタイムスロットに従った無線通信を無線通信部21に行わせるとともに、そのスロット情報D2を無線通信部21を介してブロードキャスト送信する。
また、当該路側通信機2が子機に設定されている場合、制御部23は、親機Mから送信されるスロット情報D2を取得し、このスロット情報D2に示されるタイムスロットに従った無線通信を無線通信部21に行わせる。子機である路側通信機2の制御部23は、さらに、このスロット情報D2をブロードキャスト送信する。
以上のようにして、制御部23は、時分割多重方式によって路車間の無線通信を無線通信部21に行わせる。
【0041】
路側通信機2の制御部23は、図4に示すように、判定部23a、及び送信制御部23bを備えている。
このうち、送信制御部23bは、無線通信部21が受信した車載通信機3の前記車両情報を記憶部24に一時的に記憶させ、有線通信部22を介して中央装置4に転送する。
また、送信制御部23bは、有線通信部22が受信した中央装置4からの前記信号制御指令や、前記信号現示情報、前記交通情報、道路の形状を示す道路線形情報、センサ情報等を含んだ提供情報D1を記憶部24に一時的に記憶させ、無線通信部21を介してブロードキャスト送信する。
【0042】
路側通信機2が送信する路側情報としての提供情報D1は、中央装置4から自己が取得した情報の他、自己が他の装置から直接取得した情報を含んでおり、車載通信機3を搭載した車両5による安全運転支援制御のために有用な情報である。
具体的に、提供情報D1には、上述のように、前記信号制御指令や、前記信号現示情報、前記交通情報、道路の形状を示す道路線形情報、センサ情報等を含んでいる。
なお、道路線形情報は、情報提供地点からある対象地点あるいは対象区間までの道路構造を示す情報であり、例えば、道路の長さ、傾斜、カーブの度合い等の情報である。この道路線形情報は、予め路側通信機2が記憶し又は中央装置4から取得できる情報である。
【0043】
提供情報D1の内、前記信号制御指令や、前記信号現示情報、前記交通情報、センサ情報は、刻々と変化する時間的に動的な情報であり、このような情報は、更新頻度を高くして送信すべき高頻度更新情報となる。
特に、信号現示情報は、信号制御器又は中央装置4の制御によって交通信号機1が設置されている道路の渋滞状況に応じて変化させることがあるため、更新頻度を高くして送信すべき情報である。
一方、前記道路線形情報は、その道路のある対象地点(交差点やカーブ)を通過するまでは、その情報は有効であることから、更新し続ける必要はない。このため、このような道路線形情報は時間的に静的な情報であり、更新頻度を低くして送信してもよい低頻度更新情報である。
信号現示情報や車両の位置情報、道路線形情報などには、例えば固有の識別子が割り当てられ、当該情報が高頻度更新情報か低頻度更新情報かが各識別子に対し予め指定される。これによって、信号現示情報や車両の位置情報、道路線形情報などそれぞれを当該情報の更新頻度にしたがって高頻度更新情報か低頻度更新情報かに分類することができる。
【0044】
以上のように、路側通信機2が送信する提供情報D1には、更新頻度の高い高頻度更新情報(第一情報)と、これよりも更新頻度の低い低頻度更新情報(第二情報)とを含んで構成されている。
【0045】
さらに、送信制御部23bは、判定部23aの判定に応じて、送信する提供情報D1の内の一部としての低頻度更新情報である道路線形情報を自己以外の他の路側通信機2に送信させるための送信依頼通知を生成して中央装置4に送信するとともに、自己のタイムスロットにおいては、道路線形情報(低頻度更新情報)以外の部分である高頻度更新情報を提供情報D1として送信するように制御する機能を有している。また、自己以外の他の路側通信機2から送信依頼通知を受信すると、その通知に応じて、当該他の路側通信機2が送信すべき提供情報D1の内の一部である道路線形情報を送信する機能を有している。これら機能については、後に詳述する。
【0046】
判定部23aは、自己の路側通信機2が送信すべき提供情報D1の情報量を把握し、その情報量について有線通信部22を介して中央装置4に所定の頻度で送信する機能を有している。また、判定部23aは、送信制御部23bが送信すべき提供情報D1が、自己に割り当てられているタイムスロットTaの間に送信可能な情報量であるか否かを判定する機能を有している。この判定部23aの機能については、後に詳述する。
【0047】
〔車載通信機〕
車載通信機3は、無線通信のためのアンテナ30に接続され、前記提供情報D1や前記スロット情報D2等を含む情報を受信する通信部31と、この通信部31に対する通信制御を行うプロセッサ等よりなる制御部32と、この制御部32に接続されたROMやRAM等の記憶装置よりなる記憶部33とを備えている。
記憶部33は、制御部32が実行する通信制御のためのコンピュータプログラムや、各通信装置2,3の通信機ID等を記憶している。
車載通信機3の制御部32は、上記コンピュータプログラムを実行することで達成される機能部として、通信制御部32aと通知部32bとを備えている。
【0048】
通信制御部32aは、車車間通信のためのキャリアセンス方式による無線通信を通信部31に行わせることができ、路側通信機2との間の時分割多重方式での通信制御機能は有していない。
従って、通信制御部32aは、所定の搬送波周波数の受信レベルを常時感知しており、その値がある閾値以上である場合は無線送信を行わず、当該閾値未満になった場合にのみ無線送信を行うようになっている。
【0049】
また、通信制御部32aは、車両5(車載通信機3)の現時の位置、速度及び方向等を含む車両情報を、通信部31を介して外部にブロードキャストで無線送信させることができる。車両5の位置や方向は、通常は、GPS等の車両5側のセンサ類が自律的に測定した情報であるが、光ビーコン等のインフラ側から取得可能な場合もある。速度は、車両5の速度センサに基づいた情報である。
【0050】
前記通信部31は、他の車両5が送信した当該車両5の速度や位置についての車両情報や、路側通信機2が送信した前記提供情報D1及び前記スロット情報D2を受信する。通信部31がこれら情報を受信すると、通信制御部32aは、これら各情報に基づいて安全運転支援制御のための処理を実行することができる。すなわち、このような情報を車載通信機3が受信することで、当該情報に基づき、車載通信機3は、右直衝突や出合い頭衝突等を回避するための安全運転支援制御のための処理を、車両5の機構と共同して行う。
【0051】
さらに、通信制御部32aは、路側通信機2から直接受信した前記スロット情報D2又は他の車載通信機3から通知された前記スロット情報D2に基づいて、自己の無線送信の実行と停止との制御を行う機能を有している。
また、前記通知部32bは、通信部31が受信した前記スロット情報D2及び提供情報D1を、他の移動通信機3に対して、通信部31を介して通知(転送)する機能を有している。なお、この通信部31が受信した前記スロット情報D2及び提供情報D1には、路側通信機2から直接受信した情報の他、他の車載通信機3から直接受信した(通知された)情報がある。
【0052】
〔判定部及び送信制御部の機能について(第一実施例)〕
次に、路側通信機2の判定部23a及び送信制御部23bの機能について説明する。
路側通信機2は、上述のように、更新頻度の高い高頻度更新情報と、これよりも更新頻度の低い低頻度更新情報とを含んだ提供情報D1をブロードキャスト送信する。
図5は、図2における各交差点に設置された路側通信機それぞれのタイムスロットに格納されている提供情報の態様を示した模式図である。
なお、以下の説明では、図2に示す交差点J1,J2,J3それぞれに設置された三つの路側通信機2が一の管轄エリアを形成しているものとする。
また、図2において、交差点J1は、片側二車線の幹線道路が交差して構成されているので、片側一車線の道路同士が交差する他の交差点J2,J3と比較して、交通量の多い交差点であるものとする。
【0053】
図5(a)は、各交差点において通常の交通量である場合の路側通信機2それぞれのタイムスロットに格納されている提供情報の態様を示している。図に示すように、各タイムスロットTaには、高頻度更新情報(図中、破線ハッチング部分)と、低頻度更新情報(図中、実線ハッチング部分)とが格納されている。
このうち、低頻度更新情報は道路線形情報により構成されているが、本実施形態では、各路側通信機2は、それぞれ、自己が設置されている周辺の道路線形情報を送信するように構成されている。従って、各交差点J1,J2,J3に設置された路側通信機2(以下、それぞれ、路側通信機2J1,2J2,2J3ともいう)は、それぞれ異なる道路線形情報A,B,Cを送信している。
【0054】
また、高頻度更新情報には、その交差点(路側通信機2)の周囲に設定される通信エリアAに存在する車両に関する車両情報が含まれているので、他の交差点と比較して交通量が多い交差点J1の路側通信機2J1は、高頻度更新情報の情報量が他の交差点に設置されているものよりも比較的多くなっている。なお、これら各路側通信機2の提供情報D1の情報量は、上述したように、自己の有する送信制御部23bが把握し、中央装置4に所定の頻度で送信する。
【0055】
ここで、交差点J1の交通量がさらに増加し、路側通信機2J1が送信すべき高頻度更新情報の情報量が増加すると、提供情報D1全体の情報量が増加し、一のタイムスロットTaで送信可能な情報量を超えることがある。
図5(b)は、路側通信機2J1が送信すべき提供情報D1の情報量が一のタイムスロットTaで送信可能な情報量を超えた状態を示している。
図5(b)において、路側通信機2J1のタイムスロットTaを見ると、図5(a)の場合と比較して、高頻度更新情報が増加しており、低頻度更新情報である道路線形情報Aを送信するための時間が不足していることが判る。なお、低頻度更新情報である道路線形情報は、情報内容が頻繁に更新されることはないので、その情報量はほぼ一定と考えてよい。
【0056】
路側通信機2の判定部23aは、上述のように、自己の路側通信機2が送信すべき提供情報D1の情報量を把握し、送信制御部23bが送信すべき提供情報D1が、自己に割り当てられている一のタイムスロットTaで送信可能な情報量であるか否かを判定する機能を有している。
従って、図5(b)のように、提供情報D1の情報量が増加し、一のタイムスロットTaで送信可能な情報量を超えた場合、路側通信機2J1の判定部23は、送信すべき提供情報D1が一のタイムスロットTaで送信可能な情報量でないと判定する。
送信すべき提供情報D1が一のタイムスロットTaで送信できない旨の判定を判定部23aが行うと、送信制御部23bは、提供情報D1の一部である道路線形情報を、自己以外の他の路側通信機2に送信させるための送信依頼通知を生成し、有線通信部22を介して中央装置4に送信する。
また、送信依頼通知を送信した路側通信機2J1の送信制御部23bは、自己のタイムスロットTaにおいては、道路線形情報(低頻度更新情報)以外の部分である高頻度更新情報を提供情報D1として送信するように制御する。
【0057】
各路側通信機2が送信すべき提供情報の情報量について各路側通信機2から通知を受けている中央装置4は、上記送信依頼通知を受けると、送信依頼通知を送信した路側通信機2J1が属する管轄エリアにおける他の路側通信機2J2,2J3が送信すべき現状の提供情報D1の情報量を参照する。
【0058】
そして、中央装置4は、送信すべき提供情報D1の情報量が最も少ない他の路側通信機2を例えば選択し、その路側通信機2に対して、路側通信機2J1からの送信依頼通知を転送する。図5において、中央装置4は、送信すべき提供情報D1の情報量が最も少ない交差点J2に設置された路側通信機2J2に送信依頼通知を転送する。
【0059】
路側通信機2J2の送信制御部23bは、送信依頼通知を受信すると、その通知に応じて、路側通信機2J1が送信すべき提供情報D1の内の一部である道路線形情報Aを自己のタイムスロットTaを用いて送信する。なお、ここで、路側通信機2J2は、予め、道路線形情報A,B,Cの全てをその記憶部24に格納しておき、送信依頼通知に応じて、そのいずれかを選択して自己のスロットを用いて送信することもできるし、中央装置4から、送信依頼通知と同時に当該送信依頼に係る道路線形情報を送信してもらい、送信することもできる。
【0060】
以上のようにして、路側通信機2J1は、送信すべき提供情報D1の情報量が増加して全ての提供情報D1について送信できないと判断した場合には、送信依頼通知を中央装置4に送信し、路側通信機2J1が送信すべき提供情報D1の内の一部である道路線形情報Aを他の路側通信機2J2に肩代わりさせて送信させることができる。これにより、路側通信機2J1が、道路線形情報Aを送信せずとも、各路側通信機2が属する管轄エリア全体としては、道路線形情報A,B,Cの送信機会を確保することができる。
【0061】
上記構成の路側通信機2J1の制御部23によれば、送信すべき提供情報D1が一のタイムスロットTaの間に送信可能な情報量であるか否かの判定結果に応じて、路側通信機2J1により送信される提供情報D1の一部である道路線形情報を、他の路側通信機2に送信させる送信制御部23bを備えているので、上記のように、路側通信機2J1により送信される提供情報D1の情報量が一のタイムスロットTaの間に送信可能な情報量でないと判定された場合、その提供情報D1の一部を他の路側通信機2J2に送信させるように設定することで、路側通信機2J1が送信できない情報を他の路側通信機2J2に送信させることができる。この結果、各路側通信機2の間で通信資源を横断的に活用することができ、通信システム全体として、通信資源を有効利用することができる。
【0062】
また、上記実施形態では、提供情報D1は、更新頻度の高い高頻度情報と、この高頻度更新情報よりも更新頻度の低い低頻度更新情報である道路線形情報とを含んでおり、この道路線形情報は、各路側通信機2J1,2J2,2J3それぞれで互いに異なる内容を示す道路線形情報A,B,Cであり、送信制御部23bは、判定部23aの判定に応じて、道路線形情報を提供情報D1の一部として自己以外の他の路側通信機2に送信させる。
【0063】
このため、一の路側通信機2により送信される提供情報D1の情報量が一のタイムスロットTaの間に送信可能な情報量でないと判定された場合にも、低頻度更新情報である道路線形情報を他の路側通信機2に送信させることで、高頻度更新情報を優先的に一の路側通信機2によって送信することができる。これにより、更新頻度が高いことから時間的に早く送信しなければならない情報である高頻度更新情報を速やかに送信できる。
また、低頻度更新情報においては、他の路側通信機2により送信することでその送信機会を確保することができる。加えて、低頻度更新情報は、更新頻度が低いことから早期に送信する必要性が低く、他の路側通信機2によって後回しで送信したとしても、情報としての有効性を損なうことはない。
【0064】
また、上記実施形態では、路側通信機2J1は、送信依頼通知を他の路側通信機2J2に対して送信する際、中央装置4を介して送信する場合を例示したが、例えば、各路側通信機2J1,2J2,2J3が、個別に路路間通信によって直接送信依頼通知を送信してもよい。
【0065】
また、上記実施形態では、各路側通信機2J1,2J2,2J3の制御部23がそれぞれ判定部23aを有する構成を示したが、中央装置4のみに判定部23aを備え、各路側通信機2J1,2J2,2J3の提供情報D1の情報量を把握して、各路側通信機2による道路線形情報の送信についての制御を行うように構成することもできるし、判定部23aを備えることで、各路側通信機2が行う道路線形情報の送信依頼に関する機能を包括的に管理する管理装置を独立して設けることもできる。
【0066】
〔第二実施例〕
図6は、本発明の第二実施形態に係る路側通信機と、車載通信機の内部構成を示すブロック図である。本実施形態と、第一実施形態との相違点は、路側通信機2の制御部23が情報分割部23cをさらに備えている点、及び、車載通信機3の制御部32が結合部32cをさらに備えている点である。
【0067】
路側通信機2の情報分割部23cは、判定部23aが、送信すべき提供情報D1が一のタイムスロットTaで送信できない旨の判定をすると、低頻度更新情報である道路線形情報を分割して、複数の分割情報を得る機能を有している。
また、車載通信機3の結合部32cは、上記情報分割部23cにより得られる複数の分割情報を結合して、元の道路線形情報を復元する機能を有している。
【0068】
図7は、本実施形態における、図2中の各交差点に設置された路側通信機それぞれのタイムスロットに格納されている提供情報の態様を示した模式図である。
図7(a)は、各交差点において通常の交通量である場合の路側通信機2それぞれのタイムスロットに格納されている提供情報の態様を示している。図に示すように、各タイムスロットTaには、高頻度更新情報(図中、破線ハッチング部分)と、低頻度更新情報(図中、実線ハッチング部分)とが格納されている。
このうち、低頻度更新情報には道路線形情報が含まれているが、本実施形態では、各路側通信機2は、管轄エリア全体の道路線形情報を送信するように構成されている。従って、各交差点J1,J2,J3に設置された路側通信機2J1,2J2,2J3は、それぞれ同一の内容を示す情報である道路線形情報Dを送信している。
【0069】
図7(b)は、路側通信機2J1が送信すべき提供情報D1の情報量が一のタイムスロットTaで送信可能な情報量を超えた状態を示している。
図7(b)においては、図7(a)の場合と比較して、高頻度更新情報が増加したことから、低頻度更新情報である道路線形情報Dを送信するための時間が不足している。
この場合、上記第一実施形態と同様、路側通信機2J1の判定部23は、送信すべき提供情報D1が一のタイムスロットTaで送信可能な情報量でないと判定する。
送信すべき提供情報D1が一のタイムスロットTaで送信できない旨の判定を判定部23aが行うと、情報分割部23cは、低頻度更新情報の内、前記一のタイムスロットTaで送信可能な情報量の部分を分割することで第一の分割情報d1を生成する。なおここで、情報分割部23cは、道路線形情報Dをパケット単位で分割する。
【0070】
路側通信機2J1の送信制御部23bは、この第一の分割情報d1を高頻度更新情報とともに自己のタイムスロットTaによって送信する。
また、路側通信機2J1の送信制御部23bは、道路線形情報Dの内の第一の分割情報d1、及び、残余の第二の分割情報d2を認識するためのアドレス情報を含んだ送信依頼通知を生成し、有線通信部22を介して中央装置4に送信する。
上記アドレス情報は、道路線形情報Dを分割した部分のパケットのアドレスを示しており、後に前記アドレス情報を受信した装置は、このアドレス情報によって、第一の分割情報d1及び第二の分割情報d2を認識することができる。
【0071】
中央装置4は、上記送信依頼通知を受けると、送信依頼通知を送信した路側通信機2J1が属する管轄エリアにおける他の路側通信機2J2,2J3が送信すべき現状の提供情報D1の情報量を参照する。
そして、中央装置4は、送信すべき提供情報D1の情報量が最も少ない他の路側通信機2を選択し、その路側通信機2に対して、路側通信機2J1からの送信依頼通知を転送する。図7において、中央装置4は、送信すべき提供情報D1の情報量が最も少ない交差点J2に設置された路側通信機2J2に、前記アドレス情報を含んだ送信依頼通知を転送する。
【0072】
路側通信機2J2の送信制御部23bは、上記送信依頼通知を受信すると、その通知に含まれるアドレス情報を参照し、上記第二の分割情報d2を認識する。そして、路側通信機2J1が送信すべき提供情報D1の内の一部である第二の分割情報d2を自己のタイムスロットTaを用いて送信する。なお、ここで、路側通信機2J2は、自己も道路線形情報Dを送信しているため、この道路線形情報D、及び上記アドレス情報を利用して、第二の分割情報d2を生成することができる。
【0073】
以上のようにして、路側通信機2J1は、送信すべき提供情報D1の情報量が増加して全ての提供情報D1について送信できないと判断した場合には、送信依頼通知を中央装置4に送信し、路側通信機2J1が送信すべき提供情報D1の内の一部である第二の分割情報d2を他の路側通信機2J2に肩代わりさせて送信させることができる。
この結果、上記第一の実施形態と同様、各路側通信機2の間で通信資源を横断的に活用することができ、通信システム全体として、通信資源を有効利用することができる。
【0074】
なお、上記実施形態では、情報分割部23cは、道路線形情報Dを第一の分割情報d1と第二の分割情報d2の二つの情報に分割したが、より多数に分割して、複数の路側通信機2に分割情報の送信を肩代わりさせることもできる。
【0075】
次に、上記第一の分割情報d1及び第二の分割情報d2を受信した車載通信機3の機能について、説明する。
図6に示すように、本実施形態の車載通信機3の制御部32は、結合部32cを有している。この結合部32cは、上述のように路側通信機2の情報分割部23cが道路線形情報Dを分割することで生成する第一の分割情報d1と、第二の分割情報d2とを結合して、元の道路線形情報Dに復元する機能を有している。
【0076】
図8は、図7において分割された道路線形情報Dを示すとともにこれを復元する際の態様を示した模式図である。
図において、本実施形態の道路線形情報Dは、例えば、n個のパケットで構成されている。路側通信機2J1の情報分割部23cは、m個のパケットで構成される第一の分割情報d1を生成しブロードキャスト送信したとする。
【0077】
この場合、路側通信機2J2は、自己が送信すべき道路線形情報Dの他、路側通信機2J1が送信すべき提供情報D1の一部であるn−m個のパケットで構成される第二の分割情報d2をブロードキャスト送信する。
【0078】
車載通信機3は、路側通信機2J1からはm個のパケットで構成される第一の分割情報d1を受信し、その後、路側通信機2J2からはn−m個のパケットで構成される第二の分割情報d2を受信する。
【0079】
車載通信機3の結合部32cは、上記m個のパケットからなる第一の分割情報d1を受信すると、この第一の分割情報d1が道路線形情報Dの一部であることを認識し、自己の記憶部33に一時的に格納する。
その後、n−m個のパケットからなる第二の分割情報d2とを受信すると、結合部32cは、この第二の分割情報d2が道路線形情報Dの一部であること、及び、先に受信した第一の分割情報d1に対応する情報であることを認識する。
次いで結合部32cは、これら第一の分割情報d1及び第二の分割情報d2を結合することで、道路線形情報Dを復元する。そして、車載通信機3は、復元された道路線形情報Dを用いて安全運転支援制御を行う。
【0080】
このように本実施形態の車載通信機3によれば、道路線形情報Dの内の第一の分割情報d1と、第二の分割情報d2とを互いに異なる路側通信機2から受信したとしても、結合部32cによって道路線形情報Dを復元できるので、低頻度更新情報としての道路線形情報Dを確実に取得することができる。
【0081】
本発明は、上記各実施形態に限定されるものではない。上記各実施形態では、提供情報D1の一部である道路線形情報、又は第二の分割情報d2を自己以外の他の路側通信機2に送信させる場合を例示したが、例えば、図9に示すように、車載通信機3との間で無線通信が可能な路側通信機2以外に、道路上に設置された、車載通信機3との間で赤外線通信可能な路側通信機としての光ビーコン40に送信させることもできる。この光ビーコン40は、路側通信機2と同様、中央装置4との間でLANを構成しており、双方向通信が可能である。
【0082】
上記のように路側通信機として、車載通信機3との間で無線通信を行う路側通信機2の他、無線通信とは異なる通信メディアである光通信によって車載通信機3と通信を行う光ビーコン40を備えることで、提供情報D1の一部以外の部分と、提供情報D1の一部である道路線形情報、又は第二の分割情報d2とを互いに異なる通信メディアで送信することができる。
仮に、一の路側通信機2が、提供情報D1の一部である道路線形情報、又は第二の分割情報d2を光ビーコン40に送信させれば、他の路側通信機2の無線通信資源の消費を抑えることができる。また、道路上で車両5(車載通信機3)が渋滞によって停止あるいは移動速度が低い場合には、当該車載通信機3に対して、光ビーコン40による情報送信を十分に行うことができる。このように、各通信メディアの特性に応じて送信方法を適宜選択して行うことができる。
【0083】
また上記実施形態では、提供情報D1を高頻度更新情報と低頻度更新情報に分類していたが、送信すべき情報の分類はこれに限られるものではない。情報の重要度や情報量などその他の基準によって分類することができる。例えば提供情報D1のうち重要度の高い情報を第一情報に、重要度の低い情報を第二情報に分類した場合に、当該提供情報D1を一の路側通信機が送信する時間が不足しているとき、第一情報を当該一の路側通信機から送信させ、第二情報を他の路側通信機から送信させるようにしてもよい。提供情報D1のうち情報量の多い情報を第一情報に、情報量の少ない情報を第二情報に分類した場合に、当該提供情報D1を一の路側通信機が送信する送信する時間が不足しているとき、第一情報を当該一の路側通信機から送信させ、第二情報を他の路側送信機から送信させることもできる。
【0084】
本発明に関して、今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した意味ではなく、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0085】
2 路側通信機
3 車載通信機(移動通信機)
21 無線送受信部
23 制御部
23a 判定部
23b 送信制御部
23c 情報分割部
31 通信部
32 制御部
32c 結合部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の路側通信機それぞれが、予め割り当てられた通信時間帯の間に、道路上の移動通信機に対して送信すべき路側情報を当該移動通信機に送信する通信システムに用いられる通信制御装置であって、
前記複数の路側通信機の内の一の路側通信機が送信すべき前記路側情報が、前記通信時間帯の間に送信可能な情報量であるか否かを判定する判定部と、
前記判定部の判定結果に応じて、前記一の路側通信機が送信すべき前記路側情報の一部を他の路側通信機に送信させ、前記路側情報の一部以外の部分を前記一の路側通信機に送信させる送信制御部と、を備えていることを特徴とする通信制御装置。
【請求項2】
前記路側情報は、所定の判断基準で分類される第一情報及び第二情報を含んでいる請求項1に記載の通信制御装置。
【請求項3】
前記第一情報が、更新頻度の高い高頻度更新情報であり、前記第二情報が、前記第一情報よりも更新頻度の低い低頻度更新情報である請求項2に記載の通信制御装置。
【請求項4】
前記第二情報は、前記複数の路側通信機それぞれで互いに異なる内容を示す情報であり、
前記送信制御部は、前記第二情報を前記路側情報の一部として前記他の路側通信機に送信させる請求項3に記載の通信制御装置。
【請求項5】
前記第二情報は、前記複数の路側通信機それぞれで互いに同一の内容を示す情報であり、
前記判定部の判定結果に応じて、前記第二情報を複数の分割情報とする分割部をさらに備え、
前記送信制御部は、前記複数の分割情報の内の一部又は全部を、前記路側情報の一部として前記他の路側通信機に送信させる請求項3に記載の通信制御装置。
【請求項6】
前記複数の路側通信機の内、少なくとも一部の路側通信機は、当該一部の路側通信機以外の路側通信機とは異なる通信メディアによって前記移動通信機との間で通信を行う請求項1〜5のいずれか一項に記載の通信制御装置。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか一項に記載の通信制御装置を備えた路側通信機。
【請求項8】
請求項5に記載の通信制御装置と、複数の路側通信機とを備えた通信システムにおいて、前記複数の路側通信機それぞれが送信する路側情報を受信する移動通信機であって、
前記複数の路側通信機それぞれから送信される前記複数の分割情報を受信する受信部と、
受信した前記複数の分割情報を結合し、前記第二情報を復元する結合部を備えていることを特徴とする移動通信機。
【請求項9】
複数の路側通信機それぞれが、予め割り当てられた通信時間帯の間に、道路上の移動通信機に対して送信すべき路側情報を前記移動通信機に送信する通信システムであって、
一の路側通信機が前記通信時間帯の間に前記路側情報が送信できるか否かを判定する判定部と、
前記判定部の判定結果に応じて、前記一の路側通信機において送信すべき前記路側情報の一部を、他の路側通信機に送信させる送信制御部を備えることを特徴とする通信システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−114647(P2011−114647A)
【公開日】平成23年6月9日(2011.6.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−269956(P2009−269956)
【出願日】平成21年11月27日(2009.11.27)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】