説明

通信制御装置

【課題】ノイズ等の外乱に起因する通信不良の発生を抑制するとともに、通信時間の短縮化を図ることができる通信制御装置を提供する。
【解決手段】通信制御装置20は、携帯機10から送信されるデータ信号の受信強度を判定する受信回路22と、受信したデータ信号に基づいてドアロック装置24を駆動制御する通信制御部21とを備えている。通信制御部21は、受信したデータ信号の受信強度に基づき、該データ信号に含まれる指令データのうちの部分的なデータ異常の有無を判断するとともに、該部分的なデータ異常が生じていると判断した際に、該指令データのうちの異常判断部分のみを含む前記データ信号の再送する旨を示す部分データ要求信号を携帯機10に送信する。そして、通信制御部21は、該携帯機10から再送された部分データを用いて指令データを補完する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば携帯機との無線通信に基づいて車両のドア錠の施解錠制御を行うドア錠施解錠装置などとして適用される通信制御装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、セキュリティ機器を無線による相互通信によって遠隔操作する通信制御システムとして、例えば特許文献1に記載される車両用通信制御システムが提案されている。
この車両用通信制御システムでは、車両ユーザによって所持される携帯機と、車両に搭載された通信制御装置との間で無線による相互通信を行わせることにより、車両のドア錠を自動的に施解錠させたり、エンジンの始動を許可したりするようになっている。
【0003】
詳しくは、通信制御装置は、車両周辺の所定領域や車両室内の所定領域にリクエスト信号を送信するようになっている。また、携帯機は、対応する通信制御装置から送信されたリクエスト信号を受信すると、自身に予め設定された識別コード(IDコード)を含むIDコード信号を自動的に返信するようになっている。そして、通信制御装置は、IDコード信号を受信すると、該IDコード信号のIDコードと自身に予め設定されたIDコードとの比較(照合)を行い、該IDコード同士が一致したことを条件として、ドア錠を自動的に解錠させたり、エンジンを始動許可状態にしたりする制御を行うようになっている。
【特許文献1】特開2001−311333号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、例えば携帯機から送信されるIDコード信号にノイズ等の外乱が混入した場合には、該IDコード信号に含まれるIDコードのデータが変質してしまい、通信制御装置は、本来のIDコードを認識することができない。こうした場合、IDコードの照合が成立しなくなることから、通信制御装置は、リクエスト信号を再度送信して携帯機からIDコード信号を再送させるようになっている。
【0005】
しかしながら、携帯機からIDコード信号を再送させる場合には、少なくともリクエスト信号の送信時間、該リクエスト信号に基づく携帯機の内部処理時間、IDコード信号の送信時間、及び該IDコード信号に基づく通信制御装置の内部処理時間が必要であり、携帯機と通信制御装置との通信時間が長くなって応答性が悪くなってしまう。このため、こうした外乱に起因する通信不良の発生時においても、携帯機と通信制御装置との間の通信応答性の悪化を軽減することが要望されている。
【0006】
また、従来の通信制御システムでは、特に、IDコード信号の送信時間内に短時間のノイズが干渉した場合においても該IDコード信号のデータに異常が生じてしまう。このため、こうした短時間のノイズが周期的に発生するとともに、IDコード信号の送信周期と同期した場合などには、従来の通信制御システムでは連続的に通信不良が生じてしまうおそれがある。すなわち、該従来の通信制御システムでは、ノイズ耐性の点においても改善の余地が残されている。
【0007】
本発明はこうした実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、ノイズ等の外乱に起因する通信不良の発生を抑制するとともに、通信時間の短縮化を図ることができる通信制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するために、請求項1に記載の発明では、対応する携帯機から無線送信されるデータ信号を受信するとともに、そのデータ信号に含まれる指令データに基づいて制御を行う通信制御装置であって、前記データ信号の受信強度を判定する受信強度判定手段と、そのデータ信号の受信強度に基づき、該データ信号に含まれる指令データのうちの部分的なデータ異常の有無を判断するとともに、該部分的なデータ異常が生じていると判断した際に、該指令データのうちの異常判断部分のみを含む前記データ信号の再送する旨を示す部分データ要求信号を前記携帯機に送信し、該携帯機から再送された部分データを用いて指令データを補完するデータ処理手段とを備えることを要旨とする。
【0009】
上記構成によると、携帯機から送信されるデータ信号の受信強度が受信強度判定手段によって判定される。そして、データ処理手段は、その受信強度に基づいて、該データ信号に含まれる指令データに部分的なデータ異常が生じているか否かを判断し、該データ異常が生じていると判断した際には、その異常判断部分のみを含むデータ信号の再送を指示する部分データ要求信号を携帯機に送信する。そして、データ処理手段は、前回受信した正常と判断した指令データと、携帯機から再送された部分データとを用いて、正常な指令データを求める。このため、携帯機から送信されるデータ信号の送信時間よりも短い時間の外乱が該データ信号に干渉した場合、データ処理手段は、その外乱によって変質した異常データのみを携帯機に再送させることにより、指令データ全体を確実に認識可能となる。しかも、再送されるデータ信号に含まれる指令データは異常判断部分からなる部分データのみであるため、その送信時間も短くなる。よって、該再送されるデータ信号に外乱が干渉しにくくなり、通信不良が生じにくくなる。
【0010】
また、携帯機は、部分データ要求信号を受信した際には、指令データとして部分データのみを含むデータ信号を再送すればよいため、そのデータ信号の送信時間は、指令データの全てを含む場合の送信時間と比べて短くて済む。よって、携帯機の消費電力量を抑制することも可能となる。
【0011】
請求項2に記載の発明では、請求項1に記載の通信制御装置において、前記データ処理手段は、前記データ信号の受信強度が予め設定された閾値を超えた場合には、その閾値を超えた受信強度で受信した部分データを異常データであると判断することを要旨とする。
【0012】
上記構成によると、データ処理手段は、データ信号の受信強度が閾値を超えるか否かに基づいて、指令データに異常データが含まれているか否かの判断を行う。通常、外乱が混入したデータ信号の電波強度は、該外乱が混入していない場合に比べて高くなる傾向にある。このため、受信強度の閾値を設定するとともに、その閾値を超えた受信強度のデータ信号を異常データとして認識させることにより、異常データを高確率で検知可能となる。しかも、異常データを検知するためには閾値を設定するだけで済むため、データ処理手段による異常データの判定処理が容易となる。
【0013】
請求項3に記載の発明では、請求項2に記載の通信制御装置において、前記データ処理手段は、前記データ信号の受信時には、その受信強度の平均値を基準強度として設定するとともに、該受信強度がその基準強度に対して前記閾値を超えた場合に、その閾値を超えた受信強度で受信した部分データを異常データであると判断することを要旨とする。
【0014】
上記構成によると、データ処理手段は、閾値は基準強度に対するマージンとして設定され、データ信号の受信強度が基準強度に対してその閾値を超えた場合に、その閾値を超えた受信強度で受信した部分データを異常データとして認識する。このため、携帯機が通信制御装置の近傍に位置している場合など、データ信号の受信強度が全体的に強い場合において、該データ信号が正常であるにも拘わらず、データ処理手段が該データ信号に異常が生じていると判断してしまうのを好適に抑制することができる。
【0015】
請求項4に記載の発明では、請求項2または請求項3に記載の通信制御装置において、前記データ処理手段は、前記データ信号の受信強度が前記閾値を超えた場合であっても、その閾値超時間が予め設定された無効時間内である場合には、その閾値を超えた受信強度で受信した部分データを異常データとは判断しないことを要旨とする。
【0016】
上記構成によると、データ処理手段は、たとえデータ信号の受信強度が閾値を超えた場合であっても、その閾値超時間が予め設定された無効時間内の場合には、データ信号に異常が生じているとは判断しない。一般に、データ信号の受信強度に極短時間の変動が生じたとしても、その変動によってはデータ信号の指令データが変質しない場合も多々ある。このため、データ信号に影響が及ばない時間を無効時間として設定すれば、データ信号が正常であるにも拘わらず、異常データであると判断してしまうのを抑制することができる。
【0017】
請求項5に記載の発明では、請求項2〜4のいずれか1項に記載の通信制御装置において、前記データ処理手段は、前記データ信号の受信強度の変化度合いの値が予め設定された変化閾値を超え、且つ該受信強度が前記閾値を超えた場合に、その閾値を超えた受信強度で受信した部分データを異常データであると判断することを要旨とする。
【0018】
上記構成によると、一般に、データ信号の受信強度は携帯機と通信制御装置との位置関係によって変化する。このため、受信強度の変化度合いが緩やかな場合には、通信制御装置に対する携帯機の近接または離間と推測される。これに対し、受信強度の変化度合いが急峻な場合には、データ信号に外乱が重畳したと推測される。よって、受信強度の変化度合いの値が変化閾値を超えるとともに、その受信強度が閾値を超えた場合に、その閾値を超えた受信強度で受信した部分データを異常データであると判断することにより、一層好適に異常データの判別を行うことが可能となる。
【0019】
請求項6に記載の発明では、請求項1に記載の通信制御装置において、前記データ処理手段は、受信した前記データ信号を時系列順に小ブロックに分割するとともに、それら分割された箇所の受信強度波形が予め設定された基準強度波形と近似範囲外の場合に、該当するブロックのデータに異常が生じていると判断することを要旨とする。
【0020】
上記構成によると、データ処理手段は、基準強度波形と近似範囲内にない受信強度波形のブロックを判別した際には、その判別したブロックを指定する部分データ要求信号を携帯機に送信することにより、該ブロックと対応する指令データを含むデータ信号を携帯機から得ることができる。同様に、携帯機は、部分データ要求信号に含まれる指定ブロックと対応する指令データをデータ信号に含んで再送すればよい。すなわち、データ処理手段及び携帯機は、異常判定された指令データを容易に特定することができる。また、部分データ要求信号の構造を簡素化することができるとともに、通信制御装置と携帯機との高い通信応答性を確保することができる。
【発明の効果】
【0021】
以上詳述したように、本発明によれば、ノイズ等の外乱に起因する通信不良の発生を抑制するとともに、通信時間の短縮化を図ることができる通信制御装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、本発明を車両用通信制御システムとして具体化した一実施形態を図1〜図3に基づき詳細に説明する。
図1に示すように、車両用通信制御システム1は、車両2の所有者(ユーザ)によって所持される携帯機10と、該車両2に配設される通信制御装置20とを備えている。
【0023】
<携帯機10の構成>
携帯機10は無線通信機能を有し、通信制御装置20と相互通信可能となっている。詳しくは、携帯機10は、CPU、ROM、RAM等からなるコンピュータユニットによって構成された制御部11と、その制御部11に電気的に接続された受信回路12及び送信回路13と、該携帯機10の意匠面に設けられてユーザによって操作可能な操作部14とを備えている。
【0024】
受信回路12は、通信制御装置20から送信される種々の無線信号(リクエスト信号、部分データ要求信号)を受信すると、該無線信号をパルス信号に復調して制御部11に出力する。
【0025】
送信回路13は、制御部11から入力されるIDコード信号、施解錠操作信号または再送信号からなるデータ信号を所定周波数の電波に変調して外部に送信する。
操作部14は、例えば押しボタンスイッチによって構成され、解錠操作を行うための解錠操作スイッチと、施錠操作を行うための施錠操作スイッチとによって構成されている。そして、該操作部14が操作されると、その操作信号が制御部11に入力される。
【0026】
制御部11は不揮発性のメモリ11Mを備え、そのメモリ11Mには予め設定された固有のIDコードと、施錠コード及び解錠コードとが記録されている。そして、制御部11は、操作部14から操作信号が入力されたり、受信回路12から種々の復調信号が入力されたりすると、対応するデータ信号(施解錠操作信号、IDコード信号、再送信号)の出力制御を行う。具体的には、制御部11は、操作部14から操作信号が入力されると対応する施解錠操作信号を出力し、受信回路12からリクエスト信号が入力されるとIDコード信号を出力し、該受信回路12から部分データ要求信号が入力されると再送信号を出力する。なお、施解錠操作信号とは施錠コードまたは解錠コードとIDコードとを含む信号であり、IDコード信号とはIDコードを含む信号である。また、再送信号とは、部分データ要求信号によって指定されたIDコードの一部分を示す信号である。すなわち、例えばIDコードが16桁のコードによって構成されている場合に3〜5桁目のコードを指定する旨を含む部分データ要求信号が入力されると、制御部11は、そのIDコードのうちの3〜5桁目のコードのみを含む再送信号を送信する。このため、再送信号は、基本的にはIDコード信号よりもデータ長が短い信号となる。
【0027】
<通信制御装置20の構成>
通信制御装置20は、CPU、ROM、RAM等からなるコンピュータユニットによって構成されたデータ処理手段としての通信制御部21を備えている。この通信制御部21には、送信回路22及び受信強度判定手段としての受信回路23が電気的に接続されている。
【0028】
送信回路22は、通信制御部21から応答要求信号(リクエスト信号、部分データ要求信号)が入力されると、それら応答要求信号を所定周波数の電波に変調して車両2の周辺に送信する。なお、送信回路22は、車両2の周辺の1〜2m程度の狭領域において携帯機10との通信が可能となる強度で、該応答要求信号を送信する。
【0029】
受信回路23は、携帯機10から送信される施解錠操作信号、IDコード信号及び再送信号を受信可能となっている。そして、受信回路23は、それら信号をパルス信号に復調して通信制御部21に出力する。また、受信回路23は、受信した無線信号の受信強度を検出可能となっており、該受信強度をA/D変換した受信強度信号を通信制御部21に出力する。このため、通信制御部21は、受信回路23からの受信強度信号により、受信回路23によって受信された電波の強度を認識可能となる。
【0030】
通信制御部21は不揮発性のメモリ21Mを備え、そのメモリ21Mには、対応する携帯機10に設定されたIDコードと同等のIDコードが記録されている。また、通信制御部21には、ドアロック装置24が電気的に接続されている。なお、ドアロック装置24は、アクチュエータを用いてドア錠を自動的に施解錠する装置であり、通信制御部21から解錠信号が入力されるとドア錠を解錠し、施錠信号が入力されるとドア錠を施錠するとともに、ドア錠の施解錠状態を示す施解錠状態信号を通信制御部21に出力する。このため、通信制御部21は、ドアロック装置24から入力される施解錠状態信号に基づいて、ドア錠の施解錠状態を認識可能となる。
【0031】
こうした通信制御部21は、車外領域に送信したリクエスト信号に基づいて携帯機10との相互通信が成立したことを条件としてドアロック装置24を駆動制御するドア錠制御を行う。詳しくは、通信制御部21は、送信回路22に対してリクエスト信号を出力することにより、該リクエスト信号を車外領域に送信させる。そして、該リクエスト信号に応答して送信された携帯機10からの応答信号(IDコード信号)が受信回路23によって受信されると、通信制御部21は、該IDコード信号に含まれるIDコードとメモリ21Mに記録されたIDコードとの比較(IDコード照合)を行う。その結果、該IDコード照合が成立すると、通信制御部21は、携帯機10との相互通信が成立したと判断して、ドアロック装置24に対して解錠信号を出力してドア錠を解錠させる。また、通信制御部21は、こうしたドア錠の解錠状態において、携帯機10との通信が途絶した際に、ドアロック装置24に対して施錠信号を出力してドア錠を施錠させる。
【0032】
このため、携帯機10を所持するユーザは、車両2に近づくだけでドア錠を自動的に解錠させることができるとともに、該車両2から離間するだけでドア錠を自動的に施錠させることができる。すなわち、ユーザは、何ら操作を行うことなく、ドア錠を施解錠させることができる。
【0033】
ところで、携帯機からのIDコード信号にノイズ等の外乱が混入した場合には、該IDコード信号に含まれるIDコードが変質してしまい、通信制御部21によるIDコード照合が成立しなくなってしまうおそれがある。そこで、通信制御部21は、こうした外乱の混入有無を検知するとともに、該外乱の混入判断時にはIDコード信号の補完処理を行う。以下、こうした通信制御部21によって行われる補完処理を含む通信処理を、図2及び図3を用いて説明する。
【0034】
図2に示すように、まずステップS1において通信制御部21は、送信回路22からリクエスト信号を送信する。そして、ステップS2において通信制御部21は、該リクエスト信号に応答した携帯機10からのIDコード信号を受信回路23によって受信したか否かを判断する。なお、ここで通信制御部21は、IDコード信号と等しいデータ長の無線信号を受信回路23によって受信したか否かに基づいて、IDコード信号の受信有無を判断する。すなわち、通信制御部21は、例えば図3(a)にポイントP1で示すように、リクエスト信号に応答した無線信号の受信有無を判断するとともに、その無線信号のデータ長L1が、IDコード信号のデータ長と等しいか否かに基づいて、IDコード信号の受信有無を判断する。
【0035】
その結果、通信制御部21は、IDコード信号を受信したと判断した場合にはステップS3において異常データの判別処理を行う。そして、通信制御部21は、ステップS4においてIDコード信号に異常データが存在すると判断した場合には、ステップS5において部分データ要求信号を送信回路22から送信する。
【0036】
詳しくは、異常データの判別処理において通信制御部21は、例えば図3(a)に示すように、IDコード信号の受信強度に、予め設定された閾値Thを超えた箇所があるか否かを判断する。なお、本実施形態において閾値Thは、絶対値として設定されている。詳しくは、該閾値Thは、携帯機10からのIDコード信号に影響を及ぼす外乱が該IDコード信号に重畳した際に超えると見込まれる受信強度に基づいて設定されている。すなわち、この閾値Thは、IDコード信号の受信強度よりも高く、外乱が重畳したIDコード信号の受信強度よりも低い値に設定されている。その結果、通信制御部21は、例えばポイントP2で示すように該閾値Thを超える箇所が存在する場合には、その閾値Thを超えた箇所(斜線で示す箇所)に該当する部分データを異常データと判断する。そして、通信制御部21は、IDコード信号に異常データが存在すると判断した場合には、同図にポイントP3で示すように、その異常データと判断した部分データの送信を要求する旨を示す部分データ要求信号を携帯機10に送信する。
【0037】
その後、続くステップS6において通信制御部21は、部分データ要求信号に応答して送信される携帯機10からの再送信号を受信したか否かを判断する。具体的には、通信制御部21は、同図にポイントP4で示すように、部分データ要求信号によって指定した部分データのデータ長に相当するデータ長の無線信号(例えば図3に示すデータ長L2の無線信号)を受信したか否かを判断する。そして、通信制御部21は、その受信した無線信号の受信強度が前記閾値Thを超えているか否かを判断し、該閾値Thを超えていない場合に再送信号を受信したと判断する。なお、部分データのデータ長に相当するデータ長(L2)とは、部分データのデータ長にヘッダ及びフッタ等のデータを付加したデータ長を示す。
【0038】
そして、通信制御部21は、再送信号を受信すると、ステップS7において指令データの補完処理を行う。具体的には、通信制御部21は、前段において取得したIDコード信号のうちの異常データと判断した箇所に、再送信号に含まれる部分データを補完することにより、IDコードを認識する。なお、通信制御部21は、ステップS6において再送信号を正常に受信していないと判断した場合には、再びステップS5において部分データ要求信号を携帯機10に送信する。
【0039】
ステップS7において指令データの補完処理を完了した場合、または前記ステップS4においてIDコード信号に異常データが存在しないと判断した場合、通信制御部21は、ステップS8においてIDコード照合を行う。すなわち、通信制御部21は、IDコード信号に含まれるIDコードと、メモリ21Mに記録されたIDコードとが一致するか否かを判断する。そして、ステップS9において通信制御部21は、両IDコードが一致すると判断した場合、すなわちIDコード照合が成立したと判断した場合、ステップS10においてドアロック装置24に対して駆動信号を出力してドア錠を解錠させる。
【0040】
ところで、通信制御部21は、前記ステップS2においてIDコード信号を受信していないと判断した場合、またはステップS9において両IDコードが一致しないと判断した場合には、ステップS11においてドア錠が解錠状態であるか否かを判断する。その結果、通信制御部21は、ドア錠が施錠状態であればここでの処理を一旦終了し、ドア錠が解錠状態であれば、ステップS12においてドアロック装置24に対して駆動信号を出力してドア錠を施錠させる。
【0041】
なお、本実施形態において通信制御部21は、ステップS2においてIDコード信号を受信していない場合、及びステップS9においてIDコード照合が一致しない場合には、ステップS11,S12においてドア錠を施錠させるとともに、ステップS9においてIDコード照合が一致した場合にはドア錠を解錠させるようになっている。しかし、通信制御部21は、IDコード信号を受信していない場合及びIDコード照合が一致しない場合にはドア錠の駆動制御を何もせずにここでの処理を一旦終了するようになっていてもよい。それとともに、通信制御部21は、ステップS9においてIDコード照合が一致した場合には、例えばアウトサイドドアハンドルに設けられたドアハンドルセンサによって人の接触が検出された際にドア錠を解錠させ、該ドアハンドルに設けられたロックスイッチが操作された際にドア錠を施錠させるなど、種々の態様でドア錠の施解錠制御を行うようになっていてもよい。すなわち、通信制御部21は、ドア錠を施錠させる際にも、IDコード照合の成立を条件としていてもよい。
【0042】
ちなみに、こうしたデータ補完処理が行われない従来の通信制御装置においては、図3(b)に示すように、受信した無線信号の受信強度を二値データとして取得し、該二値データがHレベルの場合に、無線信号の受信状態であると判断するようになっている。そして、同図にポイントP11及びポイントP12で示すように、通信制御装置は、リクエスト信号に応答して送信された携帯機10からのIDコード信号に異常データが存在する場合には、ポイントP13で示すように、再びリクエスト信号を送信して携帯機10からIDコード信号を送信させる。しかしながら、ポイントP14で示すように、特に短時間ノイズが周期的に存在する環境下においては、再度送信された携帯機10からのIDコード信号に、再び異常が生じてしまうおそれがある。よって、こうした場合にあっては、通信制御装置はIDコード信号を正常に受信することができなくなってしまうおそれがある。
【0043】
これに対し、本実施形態では、図3(a)にポイントP5で示すように、短時間ノイズが周期的に存在する場合であっても、再送信号のデータ長L2はIDコード信号のデータ長L1に比べて短くなることから、こうした周期的に存在する短時間ノイズの影響を受けにくい。すなわち、通信制御部21は、IDコード信号を確実に受信することができるようになる。
【0044】
なお、ここではリクエスト信号に対するIDコード信号が通信制御装置20によって受信された場合における通信制御部21の通信制御のみを説明したが、施解錠操作信号が通信制御装置20によって受信された場合においても、通信制御部21は、同等の通信制御を行うようになっている。すなわち、通信制御部21が、施解錠操作信号を受信した際に、その施解錠操作信号に異常データが含まれていると判断した場合には、前記同様に部分データ要求信号を送信して携帯機10に再送信号を送信させるようになっている。このため、携帯機10の操作部14の操作によってドア錠を施解錠させる場合に外乱に起因する通信不良が生じた場合には、ユーザは、該操作部14を何回も操作しなくても、該操作に基づくドア錠の施解錠を通信制御装置20に行わせることが可能となる。
【0045】
したがって、本実施形態によれば以下のような効果を得ることができる。
(1)通信制御部21は、携帯機10から送信されるデータ信号(IDコード信号、施解錠操作信号、再送信号)の受信強度に基づいて、該データ信号に含まれる指令データ(IDコード、施解錠コード)に部分的なデータ異常が生じているか否かを判断する。その結果、通信制御部21は、データ信号にデータ異常が生じていると判断した際には、その異常判断部分の部分データのみを含むデータ信号の再送を指示する部分データ要求信号を携帯機10に送信する。そして、通信制御部21は、前回受信したデータ信号のうちの正常と判断した部分データと、携帯機10から再送された部分データとを用いて、正常な指令データを求める。このため、携帯機10から送信される各種データ信号の送信時間よりも短い時間の外乱(短時間ノイズ)が該データ信号に干渉した場合、通信制御部21は、その短時間ノイズによって変質した異常データのみを携帯機10に再送させることにより、指令データ全体を確実に認識することができる。しかも、再送信号は、指令データ全てではなく異常判断部分のみからなる部分データを含んでいるだけであるため、その送信時間も短くなる。よって、該再送信号に外乱が干渉しにくくなり、通信不良を生じにくくさせることができる。
【0046】
(2)携帯機10は、部分データ要求信号を受信した際には、全ての指令データを含むデータ信号ではなく、異常判断部分のみを含むデータ信号(再送信号)を送信すればよい。このため、該再送信号の送信時間は、指令データの全てを含む場合の送信時間と比べて短くて済む。よって、携帯機10の消費電力量を抑制することもできる。
【0047】
(3)通信制御部21は、各種データ信号の受信強度が閾値Thを超えるか否かに基づいて、指令データに異常データが含まれているか否かの判断を行う。通常、外乱が混入したデータ信号の電波強度は、外乱が混入していない場合に比べて高くなる傾向にある。このため、受信強度の閾値Thを設定するとともに、その閾値Thを超えた受信強度のデータ信号を異常データとして認識させることにより、異常データを高確率で検知可能となる。しかも、異常データを検知するためには閾値Thを設定するだけで済むため、通信制御部21による異常データの判定処理が容易となる。
【0048】
なお、本発明の実施形態は以下のように変更してもよい。
・ 前記実施形態において、通信制御部21のメモリ21Mには閾値Thが記録され、通信制御部21は、受信したデータ信号の受信強度がその閾値Thよりも高い場合にその該当箇所の指令データを異常データと判断するようになっている。しかしながら、通信制御部21による異常データの判断処理を、次のように変更してもよい。
【0049】
すなわち、通信制御部21のメモリ21Mに、例えば図4に示すような予め設定された基準波形を記録する。そして、同図に示すように、通信制御部21は、受信したデータ信号の受信強度波形を複数(ここでは10個)の小ブロックΔ0〜Δ9に分割するとともに、それら分割された各箇所の受信強度波形と、メモリ21Mに記録された基準波形の各ブロックΔ0〜Δ9の部分波形とを比較する。そして、通信制御部21は、各ブロックΔ0〜Δ9と対応する部分波形が、一致または近似の範囲内にあるときには該ブロックと対応する部分データが正常であると判断し、近似の範囲外にあるときには該ブロックと対応する部分データに異常が生じていると判断するようになっていてもよい。よって、図4に示した受信強度波形の場合、通信制御部21は、同図に斜線で示すように、ブロックΔ4,Δ5と対応する部分データが異常データであると判断し、該部分データを再送する旨の部分データ要求信号を携帯機10に送信することとなる。
【0050】
このようにしても、前記(1)及び(2)と同等の作用効果を得ることができる。しかも、携帯機10における制御部11のメモリ11Mにも各ブロックΔ0〜Δ9を設定しておけば、通信制御部21は、ブロックを指定する旨の部分データ要求信号を送信すればよい。このため、部分データ要求信号として必要なデータ量を低減することができる。同様に、携帯機10の制御部11は、部分データ要求信号に含まれる指定ブロックと対応する部分データをデータ信号に含んで再送すればよい。すなわち、通信制御部21及び制御部11は、異常判定された指令データを容易に特定することができる。また、部分データ要求信号の構造を簡素化することができるとともに、通信制御装置20と携帯機10との高い通信応答性を確保することができる。
【0051】
・ 通信制御部21は、リクエスト信号を送信してから部分データ要求信号の送信を開始する時間(図3に示す時間t1)、すなわち部分データ要求信号の送信タイミングを、可変としてもよい。なお、通信制御部21は、該時間t1をランダムに変更したり、予め設定された変更時間に沿って変更したりするなど、どのように可変させてもよい。このようにすれば、たとえ周期的な短時間ノイズのような外乱が存在する環境下においても、該再送信号に外乱が干渉しにくくなり、通信不良を生じにくくさせることができる。
【0052】
・ 前記実施形態において、通信制御部21は、図2に示したステップS3における異常データの判別処理時に、前記データ信号における前記閾値Thを超えた箇所に加え、その閾値Thを超える直前のデータと、該閾値Thを超えた状態から該閾値Th以下となった直後のデータとを含めて異常データとして認識するようになっていてもよい。すなわち、通信制御部21は、例えば図5に示すように、データ信号における閾値超箇所はもちろん、その箇所の直前及び直後の微少時間Δtに相当する箇所をも異常データとして認識するようになっていてもよい。このようにすれば、異常データの検出をより確実に行うことができる。
【0053】
・ 前記実施形態において閾値Thは絶対値として設定され、通信制御部21は、受信した無線信号の受信強度が該閾値Thを超えた場合に、その閾値Thを超えた部分に該当する部分データを異常データと判断するようになっている。しかしながら、例えば図6(a)に示すように、閾値Thは、無線信号(データ信号)の受信強度の平均値Aveからなる基準強度に対する相対値Th1によって設定されてもよい。そして、通信制御部21は、データ信号の受信強度が該平均値Aveに対して該相対値Th1を超えた際に、その超えた箇所に相当する部分データ(同図に示す時間t2と対応する部分データ)を異常データであると判断するようになっていてもよい。なお、この場合に通信制御部21は、同図に時間t3で示すように、受信強度に明確な変化が生じ始めてからその変化が収束するまでの間に相当する部分データを異常データとして認識するようになっていてもよい。
【0054】
このようにすれば、携帯機10が通信制御装置20の近傍に位置している場合など、データ信号の受信強度が全体的に強い場合において、該データ信号が正常であるにも拘わらず、通信制御部21が該データ信号に異常が生じていると判断してしまうのを好適に抑制することができる。
【0055】
・ また、図6(b)に示すように、たとえ無線信号(データ信号)の受信強度が前記相対値Th1を超えたとしても、その超えた時間が予め設定された無効時間t4以下の場合には、通信制御部21は、データ信号に異常が生じていないと判断するようになっていてもよい。一般に、データ信号の受信強度に極短時間の変動が生じたとしても、その変動によってはデータ信号の指令データが変質しない場合も多々ある。このため、データ信号に影響が及ばない時間を無効時間t4として設定すれば、データ信号が正常であるにも拘わらず、異常データであると通信制御部21が判断してしまうのを抑制することができる。なお、こうした変更例は、前記実施形態に適用されてもよい。
【0056】
・ さらに、図6(c)に示すように、たとえ無線信号(データ信号)の受信強度が前記相対値Th1を超えたとしても、そのデータ信号の受信強度の変化度合い(変化率)の値Aが、予め設定された変化度合いの値(変化閾値)Th2よりも低い場合には、通信制御部21は、データ信号に異常が生じていないと判断するようになっていてもよい。一般に、データ信号の受信強度は携帯機と通信制御装置との位置関係によって変化することから、受信強度の変化度合いが緩やかな場合には、通信制御装置20に対する携帯機10の近接または離間と推測される。これに対し、受信強度の変化度合いが急峻な場合には、データ信号に外乱が重畳したと推測される。よって、このようにすれば、一層好適に異常データの判別を行うことができる。なお、こうした変更例は、前記実施形態に適用されてもよい。
【0057】
・ 前記実施形態では、通信制御装置20は、車両2に搭載され、携帯機10との無線通信に基づいて該車両2のドア錠の施解錠を制御するようになっている。しかしながら、こうした通信制御装置20は、必ずしもドア錠の施解錠を制御することに限らず、例えば携帯機10との無線通信に基づいてエンジンの始動許可制御を行うようになっていたり、車両2のセキュリティの設定・解除を行うようになっていたりしてもよい。また、通信制御装置20は、車両2に限らず、住宅等の建物におけるドア錠の施解錠を制御したり、その他のセキュリティの設定・解除を行うようになっていたりしてもよい。
【0058】
次に、特許請求の範囲に記載された技術的思想のほかに、前述した実施形態によって把握される技術的思想を以下に列挙する。
(1) 請求項1〜6のいずれか1項に記載の通信制御装置において、前記データ処理手段は、前記部分データ要求信号の送信時には、その送信タイミングを変化させる機能を有すること。この(1)に記載の技術的思想によれば、周期的に発生する外乱が再送信号に影響してしまうのを軽減することができる。
【0059】
(2) 無線通信機能を有する携帯機と、その携帯機から無線送信されるデータ信号を受信するとともに、そのデータ信号に含まれる指令データに基づいて制御を行う通信制御装置とを備える通信制御システムであって、前記携帯機は、前記通信制御装置から送信される部分データ要求信号を受信した際に、前記指令データにおいて該部分データ要求信号によって指示された部分データを再送する処理を行う制御手段を備え、前記通信制御装置は、前記データ信号の受信強度を判定する受信強度判定手段と、そのデータ信号の受信強度に基づき、該データ信号に含まれる指令データのうちの部分的なデータ異常の有無を判断するとともに、該部分的なデータ異常が生じていると判断した際に、該指令データのうちの異常判断部分のみを含む前記データ信号の再送する旨を示す部分データ要求信号を前記携帯機に送信し、該携帯機から再送された部分データを用いて指令データを補完するデータ処理手段とを備えること。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】本発明の一実施形態の携帯機及び通信制御装置の概略構成を示すブロック図。
【図2】同実施形態のデータ処理手段によって行われる処理を示すフローチャート。
【図3】(a)は同実施形態の通信制御装置の通信態様の一例を示すタイムチャート、(b)は従来の通信制御装置の通信態様の一例を示すタイムチャート。
【図4】他の実施形態の異常データの判別処理例を示すタイムチャート。
【図5】他の実施形態の異常データの判別処理例を示すタイムチャート。
【図6】(a)〜(c)は他の実施形態の異常データの判別処理例を示すタイムチャート。
【符号の説明】
【0061】
1…通信制御システム、10…携帯機、20…通信制御装置、21…データ処理手段としての通信制御部、21M…メモリ、23…受信強度判定手段としての受信回路。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
対応する携帯機から無線送信されるデータ信号を受信するとともに、そのデータ信号に含まれる指令データに基づいて制御を行う通信制御装置であって、
前記データ信号の受信強度を判定する受信強度判定手段と、
そのデータ信号の受信強度に基づき、該データ信号に含まれる指令データのうちの部分的なデータ異常の有無を判断するとともに、該部分的なデータ異常が生じていると判断した際に、該指令データのうちの異常判断部分のみを含む前記データ信号の再送する旨を示す部分データ要求信号を前記携帯機に送信し、該携帯機から再送された部分データを用いて指令データを補完するデータ処理手段とを備えることを特徴とする通信制御装置。
【請求項2】
前記データ処理手段は、前記データ信号の受信強度が予め設定された閾値を超えた場合には、その閾値を超えた受信強度で受信した部分データを異常データであると判断することを特徴とする請求項1に記載の通信制御装置。
【請求項3】
前記データ処理手段は、前記データ信号の受信時には、その受信強度の平均値を基準強度として設定するとともに、該受信強度がその基準強度に対して前記閾値を超えた場合に、その閾値を超えた受信強度で受信した部分データを異常データであると判断することを特徴とする請求項2に記載の通信制御装置。
【請求項4】
前記データ処理手段は、前記データ信号の受信強度が前記閾値を超えた場合であっても、その閾値超時間が予め設定された無効時間内である場合には、その閾値を超えた受信強度で受信した部分データを異常データとは判断しないことを特徴とする請求項2または請求項3に記載の通信制御装置。
【請求項5】
前記データ処理手段は、前記データ信号の受信強度の変化度合いの値が予め設定された変化閾値を超え、且つ該受信強度が前記閾値を超えた場合に、その閾値を超えた受信強度で受信した部分データを異常データであると判断することを特徴とする請求項2〜4のいずれか1項に記載の通信制御装置。
【請求項6】
前記データ処理手段は、受信した前記データ信号を時系列順に小ブロックに分割するとともに、それら分割された箇所の受信強度波形が予め設定された基準強度波形と近似範囲外の場合に、該当するブロックのデータに異常が生じていると判断することを特徴とする請求項1に記載の通信制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−336150(P2007−336150A)
【公開日】平成19年12月27日(2007.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−164545(P2006−164545)
【出願日】平成18年6月14日(2006.6.14)
【出願人】(000003551)株式会社東海理化電機製作所 (3,198)
【Fターム(参考)】