説明

通信環境制御装置および通信環境制御方法

【課題】消費電力を抑えた状態で周囲ノイズを低減することができる通信環境制御装置を提供すること。
【解決手段】通信環境制御装置500は、第1の端末装置と第2の端末装置との間の通信の環境を制御する装置であって、第1の端末装置の周囲に存在する電気機器を特定する機器状態取得部503と、第1の端末装置と第2の端末装置との間の通信の経路に接続するネットワーク入出力部501と、その経路上を第2の端末装置から第1の端末装置へと送信される通信データを監視し、その通信データに周囲ノイズの低減の要求が含まれるとき、当該要求を取得する呼情報取得部502と、要求を取得したことを条件として、第1の端末装置の周囲に存在する電気機器の動作を停止またはその動作レベルを低減させる制御情報生成部506とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、端末装置間の通信の環境を制御する通信環境制御装置および通信環境制御方法に関する。特に、本発明は、ネットワークを介した映像・音声でのコミュニケーション機能を有する端末装置間の通信の環境を、制御する通信環境制御装置および通信環境制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ネットワークインフラの充実や、映像・音声のデジタル符号化技術の発達により、ネットワークを介したデータ伝送によるコミュニケーション機能を有する端末装置が普及してきている。特に、話者の映像や音声を他の端末機器との間で相互に伝送し、会話や会議などの双方向コミュニケーション(以下、適宜「VC」と表す)を可能にする機器(以下「VC端末」という)の普及が進んでいる。
【0003】
VC端末は、マイクロフォンなどの音声入力装置と、スピーカなどの音声出力装置とを備える。第1のユーザのVC端末は、第1のユーザの発話音声を入力として音声データに変換し、通信相手である第2のユーザのVC端末へ送信する。第2のユーザのVC端末は、受信した音声データを音声に変換し、元の第1のユーザの発話音声を再生出力する。これにより、第2のユーザは第1のユーザの発話音声を聞くことができる。
【0004】
ところが、第1のユーザのVC端末の周囲に、エアコンやテレビなどの比較的大きな動作音や音声を発する電気機器が存在すると、その音がノイズとなって第1のユーザの発話音声がよく聞き取れない場合がある。以下、周囲の電気機器が動作時に発する音は、「周囲ノイズ」という。
【0005】
そこで、音声を入力する側のVC端末(以下「自局側VC端末」という)において、音声データに対するノイズ除去の処理を行う技術が、例えば特許文献1に記載されている。
【0006】
特許文献1に記載の技術では、自局側VC端末内で、入力音声の音声データに対して信号処理を施し、周囲ノイズの推定と発話音声からの分離とを行う。信号処理としては、スペクトル減算法など、各種一般的なノイズ除去手法を用いることができる。スペクトル減算法は、発話音声と定常的雑音の信号的特性の違いに基づき、入力音声を周波数成分に分解後、定常雑音スペクトル分を減算することにより雑音成分を除去する手法である。
【0007】
このような従来技術によれば、自局側VC端末の周囲ノイズを擬似的に低減し、音声データの受信側のVC端末(以下「対局側VC端末」という)において、発話音声を高品質に再生することができる。
【0008】
ところで、一般に利用されているVC端末の多くは、携帯電話機など、小形のモバイル端末の形態を取る。このようなモバイル端末では、通常はバッテリ駆動であることから、できるだけ低消費電力で動作することが求められる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平10−171497号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、従来技術は、周囲ノイズの監視を継続的に行わなければならず、また、周囲ノイズが検知された場合にはノイズ除去のための信号処理を行うため、低消費電力化が難しいという課題がある。
【0011】
また、VC端末がカメラなどによる撮影映像の交換を行う場合、自局側VC端末の周囲の照明器具やテレビ画面などの光が逆光となり、対局側VC端末側で第1のユーザの映像が見辛くなる場合がある。このような光ノイズ(これについても、以下「周囲ノイズ」という)に対する対策に従来技術を応用することが考えられるが、やはり消費電力を抑えることが難しいという課題がある。
【0012】
本発明の目的は、消費電力を抑えた状態で周囲ノイズを低減することができる通信環境制御装置および通信環境制御方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の通信環境制御装置は、第1の端末装置と第2の端末装置との間の通信の環境を制御する通信環境制御装置であって、前記第1の端末装置の周囲に存在する電気機器を特定する機器状態取得部と、前記第1の端末装置と前記第2の端末装置との間の前記通信の経路に接続するネットワーク入出力部と、前記経路上を前記第2の端末装置から前記第1の端末装置へと送信される通信データを監視し、前記通信データに周囲ノイズの低減の要求が含まれるとき、当該要求を取得する呼情報取得部と、前記要求を取得したことを条件として、前記第1の端末装置の周囲に存在する電気機器の動作を停止またはその動作レベルを低減させる制御情報生成部とを有する。
【0014】
本発明の通信環境制御方法は、第1の端末装置と第2の端末装置との間の通信の環境を制御する通信環境制御方法であって、前記第1の端末装置の周囲に存在する電気機器を特定するステップと、前記第1の端末装置と前記第2の端末装置との間の前記通信の経路に接続し、前記経路上を前記第2の端末装置から前記第1の端末装置へと送信される通信データを監視するステップと、前記通信データに周囲ノイズの低減の要求が含まれるとき、当該要求を取得するステップと、前記要求を取得したことを条件として、前記第1の端末装置の周囲に存在する電気機器の動作を停止またはその動作レベルを低減させるステップとを有する。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、消費電力を抑えた状態で周囲ノイズを低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の実施の形態1に係る通信システムの構成の一例を示すシステム構成図
【図2】本実施の形態1におけるVC端末の構成の一例を示すブロック図
【図3】本実施の形態1に係るVC高品位化制御装置の構成の一例を示すブロック図
【図4】本実施の形態1における呼制御情報の内容の一例を示す図
【図5】本実施の形態1における機器状態情報の内容の一例を示す図
【図6】本実施の形態1におけるノイズ傾向情報の内容の一例を示す図
【図7】本実施の形態1におけるVC端末間の通信の流れを示す模式図
【図8】本実施の形態1における呼情報の構成の一例を示す図
【図9】本実施の形態1に係るVC高品位化制御装置の動作の一例を示すフローチャート
【図10】本実施の形態1における新状態判定および周囲機器制御処理の一例を示すフローチャート
【図11】本実施の形態1における機器状態変化数およびノイズ指数変化量の算出結果の一例を示す図
【図12】本発明の実施の形態2に係るVC高品位化制御装置の構成の一例を示すブロック図
【図13】本実施の形態2におけるノイズ傾向情報の内容の一例を示す図
【図14】本実施の形態2における機器制御属性情報の内容の一例を示す図
【図15】本実施の形態2における新状態判定および周囲機器制御処理の一例を示すフローチャート
【図16】本実施の形態2におけるペナルティ度数およびノイズ指数変化量の算出結果の一例を示す図
【図17】本発明の実施の形態3に係るVC高品位化制御装置の構成の一例を示すブロック図
【図18】本実施の形態3に係るVC高品位化制御装置の動作の一例を示すフローチャート
【図19】本実施の形態3におけるユーザ機器操作監視処理の一例を示すフローチャート
【図20】本実施の形態3における機器制御属性情報の内容の一例を示す図
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の各実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0018】
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1に係る通信環境制御装置としてのVC高品位化制御装置を含む通信システムの構成の一例を示す。
【0019】
図1に示す通信システム100は、第1の住宅200−1に居住する第1のユーザと、第2の住宅200−2に居住する第2のユーザとの間で、映像・音声の双方向コミュニケーション(VC)を行うことを可能にするシステムである。
【0020】
通信システム100において、第1の住宅200−1には、インターネットなどの外部ネットワーク300に接続する自局側ルータ210−1が、敷設されている。更に、第1の住宅200−1には、自局側ルータ210−1に接続する無線LAN(local area network)など、自局側LAN220−1が敷設されている。また、第2の住宅200−2には、同様に、外部ネットワーク300に接続する対局側ルータ210−2と、これに接続する対局側LAN220−2とが敷設されている。
【0021】
第1のユーザが携帯する自局側VC端末400−1は、モバイル情報通信端末であり、自局側LAN220−1に接続し、自局側ルータ210−1を介して外部ネットワーク300に接続する。また、第2のユーザが携帯する対局側VC端末400−2は、モバイル情報通信端末であり、対局側LAN220−2に接続し、対局側ルータ210−2を介して外部ネットワーク300に接続する。すなわち、自局側VC端末400−1と対局側ルータ210−2とは、外部ネットワーク300を介して通信を行うことが可能となっている。
【0022】
また、第1の住宅200−1には、自局側VC端末400−1の周囲に存在する電気機器(以下「周囲機器」という)として、第1〜第3の機器231〜233が存在しているものとする。第1〜第3の機器231〜233は、例えば第1のユーザが居る部屋のエアコンなどである。
【0023】
ここでは、第1および第2の機器231、232は、PLC(power line communication:電力線通信)ネットワークなど、宅内機器ネットワーク240に接続している。そして、この宅内機器ネットワーク240は、ゲートウェイ装置である宅内機器制御管理装置250を介して、自局側LAN220−1に接続している。すなわち、第1および第2の機器231、232は、宅内機器制御管理装置250を介して間接的に自局側LAN220−1に接続しているものとする。なお、宅内機器制御管理装置250は、本実施の形態で着目するゲートウェイ機能以外に、宅内機器制御管理装置250は第1および第2の機器231、232の動作状態の管理や制御を行う機能を有してもよい。また、第3の機器233は、直接に自局側LAN220−1に接続している。
【0024】
また、通信システム100は、本発明に係る通信環境制御装置であるVC高品位化制御装置500を配置している。
【0025】
VC高品位化制御装置500は、自局側LAN220−1に接続し、自局側LAN220−1と対局側LAN220−2との間の通信を監視可能となっている。また、VC高品位化制御装置500は、自局側LAN220−1および宅内機器ネットワーク240を介して、第1〜第3の機器231〜233と通信可能となっている。
【0026】
VC高品位化制御装置500は、自局側VC端末400−1の周囲機器が第1〜第3の機器231〜233であることを特定する。対局側VC端末400−2は、自局側VC端末400−1の入力音声の周囲ノイズ(以下単に「周囲ノイズ」という)の低減の要求を、自局側VC端末400−1に送る。このとき、VC高品位化制御装置500は、自局側LAN220−1を監視し、対局側VC端末400−2からの低減の要求を、取得する。そして、VC高品位化制御装置500は、この要求を取得したことを条件として、自局側VC端末400−1の周囲機器である第1〜第3の機器231〜233の動作を停止させる。
【0027】
なお、本実施の形態において、自局側VC端末400−1および対局側VC端末400−2は、音声および撮影映像を入力し、入力した音声および撮影映像のデータを、通信相手に送信する装置であるものとする。また、自局側VC端末400−1および対局側VC端末400−2は、通信相手から受信したデータから音声および撮影映像を再生出力する装置であるものとする。
【0028】
また、本実施の形態における周囲ノイズは、以下、自局側VC端末400−1の周囲機器がその動作時に発する音とする。したがって、VC高品位化制御装置500が監視し、対局側VC端末400−2から取得する要求は、自局側VC端末400−1の周囲機器から発せられる音の低減の要求であるものとする。
【0029】
また、本実施の形態では、対局側VC端末400−2は、ボタンの押下などの所定の操作をトリガとして、通信相手に送信する呼制御情報に、周囲ノイズの低減の要求を示すメッセージを含めるものとする。すなわち、対局側VC端末400−2は、第2のユーザから、周囲ノイズにより第1のユーザの発話音声を聞き取り辛いとの意思表示をされるごとに、ノイズ低減要求を送信する。
【0030】
また、本実施の形態では、自局側LAN220−1および宅内機器ネットワーク240(以下、適宜、「宅内ネットワーク」と総称する)は、ある居室内に敷設されているものとする。したがって、本実施の形態において、VC高品位化制御装置500は、自局側VC端末400−1および第1〜第3の機器231〜233が宅内ネットワークに接続している。このことをもって、VC高品位化制御装置500は、自局側VC端末400−1の周囲に第1〜第3の機器231〜233が存在していると判断するものとする。
【0031】
また、第1〜第3の機器231〜233は、宅内ネットワークにブロードキャストされた問い合わせメッセージに対して、応答メッセージを返信する機能を有するものとする。また、第1〜第3の機器231〜233は、宅内ネットワークを介して送られてきた制御情報に従って、自己の動作状態を変更する機能を有するものとする。すなわち、第1〜第3の機器231〜233は、VC高品位化制御装置500からの問い合わせや制御が可能となっている。これらの機能は、例えば、SIP(session initiation protocol)などの一般的な制御プロトコルにより実現することができる。
【0032】
このような通信システム100は、周囲ノイズを低減すべきタイミングで、VC高品位化制御装置500により、周囲機器の動作を停止させることができる。したがって、通信システム100は、音声データに対する周囲ノイズの監視やその低減のための信号処理を行うことなく、自局側VC端末400−1の周囲ノイズを低減することができる。
【0033】
次に、自局側VC端末400−1および対局側VC端末400−2の構成と、VC高品位化制御装置500の構成とについて説明する。自局側VC端末400−1と対局側VC端末400−2は、同一の構成を有するため、「VC端末400」としてまとめてその構成を説明する。また、説明中のVC端末400に対応する自局側LAN220−1または対局側LAN220−2は、「LAN220」として説明する。そして、説明中のVC端末400に対応する自局側ルータ210−1または対局側ルータ210−2は、「ルータ210」として説明する。
【0034】
図2は、VC端末400の構成の一例を示すブロック図である。
【0035】
図2において、VC端末400は、ネットワーク入出力部401、セッション制御部402、ストリーム送受信部403、コーデック(codec : coder/decoder)処理部404としての映像コーデック処理部405および音声コーデック処理部406、音声出力部407、音声入力部408、操作入力部410、画面生成部411、映像入力部412、映像合成部413、および映像出力部414を有する。
【0036】
ネットワーク入出力部401は、LAN220に通信可能に接続するネットワークインタフェースである。
【0037】
セッション制御部402は、ネットワーク入出力部401を介して、通信相手と制御データのやり取りを行い、通信相手との間のセッションを制御する。制御データは、通話開始における制御要請およびこれに対する了解通知や、通信相手との接続可能性を確認するための能力情報などの、VC機能に関する制御情報を含む。この制御情報は、例えば、SIP(session initiation protocol:RFC3261)などの標準化されたプロトコルや、アプリケーションサービスごとに定義された制御文字列とすることができる。また、制御データの送受信を行うための通信プロトコルは、標準化されたプロトコルを利用することができる。通信プロトコルは、例えば、TCP(transmission control protocol:RFC793)/IP(internet protocol:RFC791)などである。
【0038】
また、セッション制御部402は、後述の操作入力部410において所定の操作が行われたとき、ノイズ低減要求を含む呼情報を生成し、通信相手に送信する。所定の操作は、ノイズ低減要求を発したい場合に行うべき操作としてユーザに通知されている操作であり、例えば、所定のボタンの押下である。
【0039】
ストリーム送受信部403は、ネットワーク入出力部401を介して、通信相手と映像音声データのやり取りを行い、セッション確立中の通話を実現する。映像音声データは、例えば、ストリーミングデータの形態を取る。ストリーミング再生を行うための伝送プロトコルは、例えば、RTP(real-time transport protocol:RFC3550)などの標準化されたプロトコルなどを利用することができる。また、ストリーミング再生を行うための伝送プロトコルは、アプリケーションごとに定義された制御構造を持つプロトコルなどでもよい。また、映像音声データの送受信を行うための通信プロトコルは、標準化されたプロトコルを利用することができる。通信プロトコルは、例えば、UDP(user datagram protocol:RFC768)/IPなどである。
【0040】
コーデック処理部404は、セッション制御部402などから入力される制御要請に応じて、送信対象となる映像データおよび音声データの符号化処理と、受信した符号化データの復号処理とを行う。
【0041】
映像コーデック処理部405は、コーデック処理部404において、映像データに関するコーデック処理を受け持つ。使用される映像コーデックの方式は、セッション制御部402により、通信相手との能力情報の交換に基づいて決定される。使用される映像コーデックの方式は、標準化された映像符号化方式を利用することができる。映像コーデックは、例えば、MPEG(Moving Picture Experts Group)4 Part2(ISO/IEC14496−2)や、ITU−T H.264などである。
【0042】
音声コーデック処理部406は、コーデック処理部404において、音声データに関するコーデック処理を受け持つ。使用される音声コーデックの方式は、セッション制御部402により、通信相手との能力情報の交換に基づいて決定される。使用される音声コーデックの方式は、標準化された音声符号化形式を利用することができる。音声コーデックは、例えば、AMR−NB(adaptive multi-rate narrow band)や、MPEG−2 AAC(advanced audio codec)(ISO/IEC13818−7)などである。
【0043】
音声出力部407は、例えばスピーカであり、音声コーデック処理部406によって復号化された音声データに基づいて、通信相手で入力された音声を再生出力する。
【0044】
音声入力部408は、例えばマイクロフォンであり、音声を入力して音声データに変換する。
【0045】
操作入力部410は、例えばタッチパネルであり、ユーザからVC端末400に対する操作を受け付ける。
【0046】
画面生成部411は、ユーザの操作や通信相手からの制御要請などに応じて必要なUI(user interface)グラフィクスを生成する。
【0047】
映像入力部412は、例えば、CMOS(complementary metal oxide semiconductor)センサを有し、ユーザの映像を入力し、映像データに変換する。
【0048】
映像合成部413は、映像コーデック処理部405により復号処理された映像データ、映像入力部412により入力された映像データ、および画面生成部411が生成したUIグラフィクスを合成処理する。
【0049】
映像出力部414は、例えば、液晶ディスプレイであり、映像合成部413が合成処理した映像を出力する。
【0050】
このようなVC端末400は、通信相手との間で、撮影映像および入力音声の交換を行うことができ、双方のユーザ間の映像や音声による双方向コミュニケーションを可能にする。また、VC端末400は、ユーザによる所定の操作を受けて、ノイズ低減要求を発することができる。
【0051】
なお、本実施の形態では説明を割愛するが、VC端末400は、ネットワーク415上での通信相手の発見機能および検索機能や、他のVC端末400の登録機能および検索機能などを備えたディレクトリサーバの形態を採り得る。
【0052】
図3は、VC高品位化制御装置500の構成の一例を示すブロック図である。
【0053】
図3において、VC高品位化制御装置500は、ネットワーク入出力部501、呼情報取得部502、機器状態取得部503、ノイズ傾向情報格納部504、制御判定部505、および制御情報生成部506を有する。
【0054】
ネットワーク入出力部501は、LAN220に通信可能に接続するネットワークインタフェースである。すなわち、ネットワーク入出力部501は、第1の端末装置と第2の端末装置との間の通信の経路(ここでは自局側LAN220−1)に接続する。なお、本実施の形態において、第1の端末装置は、ノイズ低減要求の送信先である自局側VC端末400−1を指す。また、第2の端末装置は、ノイズ低減要求の送信元である対局側VC端末400−2を指す。
【0055】
呼情報取得部502は、ネットワーク入出力部501を介して、VC高品位化制御装置500が接続しているLAN(ここでは自局側LAN220−1)上を伝送される呼情報を抽出する。そして、呼情報取得部502は、抽出した呼情報から、VC高品位化制御装置500が接続するLAN(ここでは自局側LAN220−1)の呼状態情報を、生成して保持する。呼状態情報は、かかるLANに接続されたVC端末400(ここでは自局側VC端末400−1)の現在の呼状態を示す情報である。
【0056】
図4は、呼制御情報の内容の一例を示す図である。
【0057】
図4に示すように、呼状態情報610は、VC端末400のID(以下「VC端末ID」という)611に対応付けて、そのVC端末400のアドレス612およびVC状態613を記述する。アドレス612は、VC端末400が自局側LAN220−1、外部ネットワーク300、および対局側LAN220−2(以下、適宜「通信ネットワーク」と総称する)にアクセスするためのネットワークアドレスである。VC状態613は、VC端末400のVC機能のステータスである。
【0058】
例えば、呼状態情報610は、「VC1」というVC端末ID611、「192.000.000.000」というアドレス612、および「CONNECTED,NC=OFF」というVC状態613を記述する。この呼状態情報610は、現在、自局側LAN220−1に直接に接するVC端末400が、「VC1」をIDとし、「192.000.000.000」をネットワークアドレスとする端末のみ(ここでは自局側VC端末400−1)である。また、このVC状態613は、現在、「CONNECTED」であることから、当該VC端末400が通信中であることを示す。また、VC状態613は、「NC=OFF」であることから、その音声ノイズ抑制機能がOFF状態であることを示す。
【0059】
更に、呼情報取得部502は、ネットワーク入出力部501を介して、対局側VC端末400−2から発せられた、周囲ノイズの低減の要求を抽出する。より具体的には、呼情報取得部502は、上述の経路上を第2の端末装置(ここでは対局側VC端末400−2)から第1の端末装置(ここでは自局側VC端末400−1)へと、送信される通信データを監視する。そして、呼情報取得部502は、通信データにノイズ低減要求が含まれるとき、当該要求を取得(抽出)する。そして、呼情報取得部502は、ノイズ低減要求を取得するごとに、その旨を制御判定部505へ通知する。呼情報の抽出およびノイズ低減要求の取得の詳細については、後述する。
【0060】
機器状態取得部503は、周囲ノイズの低減の対象となり得るVC端末400を特定する。より具体的には、機器状態取得部503は、呼情報取得部502が保持する呼状態情報(図4参照)を参照して、VC高品位化制御装置500が接続しているLAN上において通信を行っているVC端末400を特定する。ここでは、呼状態情報から、「VC1」に対応する自局側VC端末400−1を特定する。そして、機器状態取得部503は、ネットワーク入出力部501を介して、特定したVC端末400の周囲機器(ここでは第1〜第3の機器231〜233)を特定する。更に、機器状態取得部503は、ネットワーク入出力部501を介して、各周囲機器の現在の動作状態(以下「現動作状態」という)を取得し、取得した現動作状態を保持する。周囲機器の特定および現動作状態の取得の詳細については、後述する。
【0061】
図5は、機器状態情報の内容の一例を示す図である。
【0062】
図5に示すように、機器状態情報620は、周囲機器(ここでは第1〜第3の機器231〜233)の電気機器としてのID(以下「機器ID」という)621に対応付けて、その電気機器の現動作状態622を記述する。
【0063】
例えば、機器状態情報620は、「M1」、「M2」、「M3」という機器ID621に対応付けて、順に、「電源ON,音量15」、「電源OFF」、「電源ON」と記述している。この機器状態情報620は、自局側VC端末400−1の周囲機器が、「M1」、「M2」、「M3」を機器IDとする電気機器(ここでは第1〜第3の機器231〜233)であることを示す。また、この機器状態情報620は、機器ID「M1」の電気機器の電源が入っており、その音量が「15」であり、機器ID「M2」の電気機器の電源が入っておらず、かつ、機器ID「M3」の電気機器の電源が入っていることを示す。
【0064】
ノイズ傾向情報格納部504は、ノイズ傾向情報を格納する。ノイズ傾向情報は、各電気機器(周囲機器を含む)の動作状態をそれぞれ異なる内容で規定する複数の周囲状態情報を記述し、かつ、周囲状態情報が示す周囲機器の動作状態と周囲ノイズの発生との対応の傾向を記述した情報である。
【0065】
図6は、ノイズ傾向情報の内容の一例を示す図である。
【0066】
図6に示すように、ノイズ傾向情報630は、周囲状態情報ごとに、その周囲状態情報の識別情報である状態名631に対応付けて、機器ID632と動作状態633との組、およびノイズ指数634を記述する。ノイズ指数は、各電気機器を対応する動作状態で動作させときの、周囲ノイズのレベルの推定値である。
【0067】
例えば、ノイズ傾向情報630は、「状態A」という状態名631の周囲状態情報において、「M1」、「M2」、「M3」という機器ID632に対応付けて、順に、その動作状態633を記述している。動作状態は、順に、「電源ON」、「電源OFF」、「電源ON」が記述されている。すなわち、「状態A」では、「M1」、「M3」を機器IDとする電気機器(ここでは第1、第3の機器231、233)の電源はONである状態が、定義されている。また、「状態A」では、「M2」を機器IDとする電気機器(ここでは第2の機器232)の電源はOFFである状態が、定義されている。
【0068】
また、ノイズ傾向情報630は、「状態A」という状態名631の周囲状態情報に対応付けて、「13」というノイズ指数634を記述している。このノイズ傾向情報630は、上述の「状態A」では、ノイズ指数が「13」であることを示す。
【0069】
なお、本実施の形態では、ノイズ指数は、後述の制御判定部505により、逐次更新されていくものとする。ただし、ノイズ指数は、固定値であってもよい。
【0070】
制御判定部505は、ノイズ低減要求の対象(ここでは自局側VC端末400−1)ごとに、ノイズ低減要求の受信回数を、周囲ノイズの低減についての要求レベルとして取得する。また、制御判定部505は、機器状態取得部503が保持する機器状態情報(図5参照)を参照し、周囲機器の現動作状態を取得する。制御判定部505は、ノイズ傾向情報格納部504が格納するノイズ傾向情報(図6参照)を参照し、要求レベルおよび現動作状態に応じて、周囲状態情報を選択する。すなわち、制御判定部505は、VC高品位化の実現のための周囲機器の具体的制御内容を決定する。そして、制御判定部505は、選択した周囲状態情報が規定する機器IDと動作状態との組を、制御情報生成部506へ通知する。要求レベルおよび現動作状態に基づく周囲状態情報の選択の詳細については、後述する。
【0071】
また、制御判定部505は、各電気機器の動作状態の組み合わせと、その動作状態の組み合わせにおいて取得した要求レベルとに基づいて、ノイズ傾向情報格納部504が格納するノイズ傾向情報のノイズ指数を設定する。本実施の形態における制御判定部505は、動作状態の組み合わせごとに、その組み合わせが継続している間のノイズ低減要求の受信回数をカウントし、カウント値をノイズ指数として、ノイズ傾向情報を更新するものとする。すなわち、本実施の形態において、ノイズ指数は、対応する動作状態におけるノイズ低減要求が発せられた頻度を示す。したがって、本実施の形態では、ノイズ指数がより高い動作状態ほど、周囲ノイズがコミュニケーションを阻害する可能性がより高いといえる。
【0072】
制御情報生成部506は、制御判定部505から機器IDと動作状態との組を通知されるごとに、その機器IDが示す電気機器の動作状態をその動作状態へと変更させるための制御情報を生成する。そして、制御情報生成部506は、生成した制御情報を、ネットワーク入出力部501を介して、対象となる周囲機器に送信する。
【0073】
なお、VC高品位化制御装置500は、例えば、CPU(central processing unit)、制御プログラムを格納したROM(read only memory)などの記憶媒体、およびRAM(random access memory)などの作業用メモリを有する。この場合、上記した各部の機能は、CPUが制御プログラムを実行することにより実現される。
【0074】
このようなVC高品位化制御装置500は、自局側VC端末400−1の周囲機器を特定し、対局側LAN220−2からの周囲ノイズの低減の要求の取得(抽出)があったときに、周囲機器の動作を停止させることができる。これにより、VC高品位化制御装置500は、音声データに対する周囲ノイズの監視やその低減のための信号処理を行うことなく、自局側VC端末400−1の周囲ノイズを低減することができる。すなわち、VC高品位化制御装置500は、消費電力を抑えた状態で周囲ノイズを低減することができる。
【0075】
また、VC高品位化制御装置500は、ノイズ低減の要求レベルに応じてノイズ指数を動的に変化させ、このノイズ指数に基づいて周囲機器の動作を制御する。したがって、VC高品位化制御装置500は、周囲環境に即したノイズ傾向を反映させた制御を実現することができる。
【0076】
ここでは、自局側VC端末400−1と対局側VC端末400−2との間で行われる通信の様子について簡単に説明する。
【0077】
図7は、自局側VC端末400−1と対局側VC端末400−2との間の通信の流れと、その通信データの概要とを示す模式図である。
【0078】
図7に示すように、例えば、第1のユーザは、自局側VC端末400−1において、第2のユーザに電話をかける操作を行ったとする。すると、自局側VC端末400−1は、対局側VC端末400−2に対して、呼情報を送信する(S1100)。呼情報は、通信開始要求(INVITE)と、送信元および宛先のID(from VC1 to VC2)と、音声コーデックの方式および映像コーデックの方式(A=AMR,V=MPEG4V)とを含む。呼情報は、通信データに格納されて送受信される。
【0079】
図8は、本実施の形態における通信データのうち、呼情報を含む場合の通信データの構成の一例を示す図である。
【0080】
図8に示すように、通信データ710は、通信ヘッダ情報711と通信データ本体712とを有する。通信ヘッダ情報711は、通信元情報713および通信先情報714を含む。通信元情報713は、通信元アドレスなど通信元(通信データ710の送信元)に関する情報である。通信先情報714は、通信先アドレスなど通信先(通信データ710の宛先)に関する情報である。
【0081】
呼情報720は、通信データ本体712に格納される。呼情報720は、リクエスト情報およびステータス情報721、ヘッダ情報722、およびメッセージ本文723から構成される。
【0082】
リクエスト情報およびステータス情報721は、例えば、通信開始要求を示す「INVITE」、通信開始成立を示す「ACK」、通信終了通知を示す「BYE」、情報通知を示す「MESSAGE」、呼び出し中通知を示す「180 RINGING」、および了解通知を示す「200 OK」である。ヘッダ情報722は、例えば、メッセージの送信元および宛先など、メッセージに関する情報である。メッセージ本文723は、例えば、リクエストやステータスに関する本文情報である。本実施の形態のメッセージ本文では、特に、ノイズ低減要求である「REQ for audio NR」を含む。
【0083】
図7に示すように、対局側VC端末400−2は、呼び出し状態となり、呼び出し中通知および音声コーデックの方式および映像コーデックの方式を含む呼情報を返信する(S1200)。この結果、自局側VC端末400−1は、相手待ち状態となる。そして、第2のユーザが通話ボタンを押すと、対局側VC端末400−2は、了解通知(200 OK)を含む呼情報を送信する(S1300)。これを受けて自局側VC端末400−1が通信開始成立(ACK)を含む呼情報を返信すると(S1400)、自局側VC端末400−1と対局側VC端末400−2は通話中となる。
【0084】
ここで、第2のユーザは、周囲ノイズにより第1のユーザの発話音声が聞き取り辛いと感じ、周囲ノイズの低減を要求するための所定の操作を行ったとする。すると、対局側VC端末400−2は、ノイズ低減要求(REQ for audio NR)を含む呼情報を、自局側VC端末400−1へ送信する(S1500)。
【0085】
そして、第1のユーザが、電話を切る操作を、自局側VC端末400−1において行ったとする。すると、自局側VC端末400−1は、通信終了通知(BYE)を含む呼情報を対局側VC端末400−2へ送信する(S1600)。これを受けて、対局側VC端末400−2は、電話を切る処理を行い、了解通知(200 OK)を含む呼情報を返信する(S1700)。この結果、自局側VC端末400−1と対局側VC端末400−2は待受け状態に戻る。
【0086】
このように、自局側VC端末400−1と対局側VC端末400−2との間では、通話開始から通話終了までに、複数の呼情報がやり取りされる。そして、周囲ノイズにより第1のユーザの発話音声が第2のユーザ側で聞き取り辛くなったときは、ノイズ低減要求を含む呼情報が伝送される(S1500)。VC高品位化制御装置500は、自局側LAN220−1上を自局側VC端末400−1へと伝送されるこの呼情報からノイズ低減要求を抽出し、ノイズ低減のための処理を行うことになる。
【0087】
次に、VC高品位化制御装置500の動作について説明する。
【0088】
図9は、VC高品位化制御装置500の動作の一例を示すフローチャートである。
【0089】
まず、ステップS2100において、ネットワーク入出力部501は、自局側LAN220−1上を伝送される通信データ(図8参照)を検知したか否かを判断する。具体的には、ネットワーク入出力部501は、通信データの到着に伴う割り込み処理などによりデータ到着を一時記憶しておき、この情報を元に、検知と判断する。またこの際に、ネットワーク入出力部501は、通信データに含まれる通信先情報を参照し、自局側LAN220−1内を宛先としない通信データについては、これを検知していないと判断してもよい。
【0090】
ネットワーク入出力部501は、自局側LAN220−1上を伝送される通信データを検知していない場合(S2100:NO)、後述のステップS2700へ進む。また、ネットワーク入出力部501は、自局側LAN220−1上を伝送される通信データを検知した場合(S2100:YES)、検知した通信データを取得し、呼情報取得部502へ出力して、ステップS2200へ進む。
【0091】
ステップS2200において、呼情報取得部502は、入力された通信データが呼情報を含んでいるか否かを判断する。具体的には、呼情報取得部502は、入力された通信データの通信データ本体を参照し、呼情報のデータ構造(図8参照)を構成しているかの判定を行う。より具体的には、通信データ本体の先頭に、リクエスト情報・ステータス情報が含まれているか否かにより判定する。呼情報取得部502は、通信データが呼情報を含んでいない場合(S2200:NO)、後述のステップS2700へ進む。呼情報取得部502は、通信データが呼情報を含んでいる場合(S2200:YES)、ステップS2300へ進む。
【0092】
ステップS2300において、呼情報取得部502は、取得された呼情報の内容を解析する。具体的には、呼情報取得部502は、呼情報の各領域(図8参照)から、情報を取得する。
【0093】
そして、ステップS2400において、呼情報取得部502は、取得された呼情報が、自局側VC端末400−1に対するノイズ低減要求を含むか否かを判断する。具体的には、呼情報取得部502は、呼情報のリクエスト情報が「MESSAGE」であり、呼情報の宛先が「VC1」であり、かつ、呼情報のメッセージ本文が「REQ for audio NR」であるか否かを判断する。呼情報取得部502は、取得された呼情報が、自局側VC端末400−1に対するノイズ低減要求を含む場合(S2400:YES)、ステップS2500へ進む。また、呼情報取得部502は、取得された呼情報が、自局側VC端末400−1に対するノイズ低減要求を含まない場合(S2400:NO)、ステップS2600へ進む。
【0094】
ステップS2500において、VC高品位化制御装置500は、新状態判定および周囲機器制御処理を実行する。新状態判定および周囲機器制御処理は、周囲ノイズの削減のために周囲機器の状態を判定しこれを制御する処理である。
【0095】
図10は、新状態判定および周囲機器制御処理の一例を示すフローチャートである。
【0096】
まず、ステップS2510において、機器状態取得部503は、自局側VC端末400−1の周囲機器を特定する。具体的には、例えば、機器状態取得部503は、自局側LAN220−1に接続する電気機器を問い合わせるメッセージを、宅内ネットワークにブロードキャストする。そして、機器状態取得部503は、返信された応答メッセージに基づいて、自局側VC端末400−1および第1〜第3の機器231〜233が宅内ネットワークに接続していることを特定する。そして、機器状態取得部503は、自局側VC端末400−1の周囲機器が第1〜第3の機器231〜233であると判断する。
【0097】
そして、ステップS2520において、機器状態取得部503は、各周囲機器(ここでは第1〜第3の機器231〜233)の現動作状態を取得し、機器状態情報(図5参照)を生成して保持する。具体的には、例えば、機器状態取得部503は、各周囲機器に対して現動作状態を問い合わせるメッセージを送信し、返信された応答メッセージから、現動作状態を示す情報を取得する。
【0098】
なお、機器状態取得部503は、ステップS2510の自局側LAN220−1に接続する電気機器を問い合わせるメッセージに、現動作状態を問い合わせるメッセージを含めてもよい。また、機器状態取得部503は、例えば、図9のステップS2100の前など、他のタイミングでステップS2510、S2520の処理を行ってもよい。ただし、この場合には、機器状態取得部503は、できるだけ最新の状態を取得することができるように、周期的にステップS2510、S2520の処理を行うことが望ましい。
【0099】
そして、ステップS2530において、制御判定部505は、ノイズ傾向情報(図6参照)を参照し、機器状態取得部503が保持する機器状態情報に対応する周囲状態情報を特定する。すなわち、制御判定部505は、周囲機器の組み合わせおよびそれぞれの動作状態の組み合わせが、どの周囲状態情報に該当するかを判定する。そして、制御判定部505は、特定した周囲状態情報が示す各周囲機器の動作状態を、現在の状態と判定する。
【0100】
図5および図6の例では、制御判定部505は、「状態A」を現在の状態と判定することになる。
【0101】
そして、ステップS2540において、制御判定部505は、ノイズ傾向情報から、現在の状態よりもノイズ指数が小さい状態に該当する周囲状態情報を抽出する。図5および図6の例では、制御判定部505は、「状態B」および「状態C」を抽出することになる。そして、制御判定部505は、ノイズ指数が小さい状態に遷移する際の機器状態変化数およびノイズ指数変化量を算出する。ここで、機器状態変化数とは、周囲機器ごとの動作のオンオフ状態の変化数である。また、ノイズ指数変化量とは、ノイズ指数の変化の量である。
【0102】
図11は、機器状態変化数およびノイズ指数変化量の算出結果の一例を示す図である。
【0103】
図6に示す「状態A」から「状態B」への遷移では、機器ID「M1」の周囲機器がオンからオフとなり、機器ID「M2」の周囲機器がオフからオンとなる。したがって、図11に示すように、その機器状態変化数は、「2」となる。また、ノイズ指数は、13から2へと変化するので、ノイズ指数変化量は「−11」となる。
【0104】
一方、図6に示す「状態A」から「状態C」への遷移では、機器ID「M1」の周囲機器がオンからオフとなる。したがって、図11に示すように、その機器状態変化数は、「1」となる。また、ノイズ指数は、13から0へと変化するので、ノイズ指数変化量は「−13」となる。
【0105】
そして、ステップS2550において、制御判定部505は、算出した機器状態変化数およびノイズ指数変化量から、適用すべき新たな周囲動作状態として選択する。本実施の形態において、制御判定部505は、ノイズ指数変化量が負の値、すなわちノイズ指数が良化しているもののうち、機器状態変化数が最も少ないものを選択する。したがって、制御判定部505は、「状態C」を、新たな周囲動作状態として選択する。
【0106】
そして、ステップS2560において、制御判定部505は、ノイズ傾向情報格納部504に格納されたノイズ傾向情報のうち、現在の状態と判定した周囲状態情報のノイズ指数を更新する。現在の状態において、ノイズ低減要求が新たに1回送信されたことから、制御判定部505は、該当するノイズ指数を1だけ増加させる。図5および図6の例では、制御判定部505は、「状態A」のノイズ指数を「13」から「14」に増加させることになる。
【0107】
そして、ステップS2570において、制御情報生成部506は、制御判定部505が選択した周囲動作状態に移行させるための制御情報を生成し、対応する周囲機器へ送信して、図9の処理へ戻る。上述の例では、制御情報生成部506は、第2の機器232に対して、動作の停止を命令する制御情報を送信することになる。この結果、第2の機器232の動作音はなくなり、周囲ノイズは低減する。
【0108】
そして、図9のステップS2600において、制御情報生成部506は、呼情報取得部502が保持する呼状態情報(図4参照)と、機器状態取得部503が保持する機器状態情報(図5参照)とを、それぞれ更新する。より具体的には、制御情報生成部506は、呼状態取得部502に対して、VC端末毎の現呼状態情報を、制御情報が示す呼状態(つまりVC端末の、選択された新たな呼状態)に一致させる。ただし、本実施の形態の制御においては、制御情報生成部506は、呼状態情報に変化がないため、何も行わない。また、制御情報生成部506は、機器状態取得部503に対して、機器状態情報の現動作状態を、制御情報が示す周囲動作状態(つまり選択された新たな周囲機器の動作状態)に一致させる。
【0109】
そして、ステップS2700において、ネットワーク入出力部501は、ユーザ操作などにより処理の終了を指示されたか否かを判断する。ネットワーク入出力部501は、処理の終了を指示されていない場合(S2700:NO)、ステップS2100へ戻り、通信データの監視を継続する。また、ネットワーク入出力部501は、処理の終了を指示された場合(S2700:YES)、処理を終了する。
【0110】
このような動作により、VC高品位化制御装置500は、自局側VC端末400−1の周囲機器を特定し、各周囲機器の現動作状態を取得することができる。また、VC高品位化制御装置500は、対局側VC端末400−2からノイズ低減要求が送信されたときにこれを取得し、特定した周囲機器の動作を停止させることができる。
【0111】
また、1回の周囲動作状態の切り替えで、周囲ノイズが十分に低減されない場合には、ノイズ低減要求が再び発せられることになる。すると、VC高品位化制御装置500は、ノイズ指数が更に小さい周囲動作状態へと切り替えることになる。本実施の形態では、このような処理が繰り返されることにより、周囲ノイズの低減を段階的に行っていくことができ、第1のユーザの周囲環境の変化を極力抑えることができる。したがって、本実施の形態では、第1のユーザおよび第2のユーザの双方の通信環境を、バランスよく維持および改善することができる。
【0112】
このように、本実施の形態に係るVC高品位化制御装置500は、自局側VC端末400−1の周囲機器を特定し、対局側VC端末400−2からノイズ低減要求が発せられたときに周囲機器の動作を停止させる。これにより、本実施の形態に係るVC高品位化制御装置500は、周囲ノイズの検出やその除去のための音声データに対する信号処理を特に行うことなく、周囲ノイズを低減することができる。したがって、本実施の形態に係るVC高品位化制御装置500は、上述の従来技術に比べて、消費電力を抑えた状態で、周囲ノイズを低減することができる。すなわち、本実施の形態に係るVC高品位化制御装置500は、双方向コミュニケーションの高品質化を、より省電力で実現することができる。
【0113】
また、本実施の形態に係るVC高品位化制御装置500は、周囲ノイズの発生そのものを抑制する。したがって、VC高品位化制御装置500は、定常雑音としての特性を有さないテレビの音声など、従来の音声信号処理では除去が困難な周囲ノイズであっても、これを低減することができる。
【0114】
また、本実施の形態に係るVC高品位化制御装置500は、対局側VC端末400−2からのノイズ低減要求を、周囲ノイズ低減のトリガとする。自局側VC端末400−1側の第1のユーザには、周囲ノイズの影響の程度がよく分からない場合がある。また、音声データに対する解析では、周囲ノイズの影響の程度を精度よく判定することができない場合もある。本実施の形態に係るVC高品位化制御装置500は、周囲ノイズの影響の程度を判定する主体である第2のユーザから直接にトリガを得ることができるので、周囲ノイズ低減を適切なタイミングで行うことができる。
【0115】
(実施の形態2)
本発明の実施の形態2は、電気機器ごとの動作維持の優先度の度合いを考慮して、周囲機器の動作を制御するようにした例である。
【0116】
図12は、本実施の形態に係るVC高品位化制御装置の構成の一例を示すブロック図であり、実施の形態1の図3に対応するものである。図3と同一部分には同一符号を付し、これについての説明を省略する。また、本実施の形態に係るVC高品位化制御装置は、実施の形態1と同様に、図1に示す通信システム100に配置されているものとする。
【0117】
図12において、本実施の形態に係るVC高品位化制御装置500aは、図3の構成に加えて機器制御属性情報格納部507aを有し、更に、図3の制御判定部505とは異なる制御判定部505aを有する。
【0118】
本実施の形態におけるノイズ傾向情報は、各電気機器の動作状態として、オンオフ状態以外の状態を併せて規定するものとする。
【0119】
図13は、本実施の形態におけるノイズ傾向情報の内容の一例を示す図であり、実施の形態1の図6に対応するものである。図6と対応する部分には同一符号を付し、これについての説明を省略する。
【0120】
図13に示すように、ノイズ傾向情報630aは、音量調整が可能な電気機器については、動作状態633aとして、オンオフ状態だけでなく、音量状態を併せて記述する。例えば、「状態D」と「状態E」との間で、機器ID「M1」の電子機器は、オンオフ状態は同一であるが音量状態は異なる。すなわち、本実施の形態に係るVC高品位化制御装置500aは、周囲機器に対して、電源制御だけでなく、音量制御をも行うことができるようになっている。
【0121】
図12の機器制御属性情報格納部507aは、電気機器の動作状態ごとにその動作状態の優先度を規定する機器制御属性情報を格納する。
【0122】
図14は、機器制御属性情報の内容の一例を示す図である。
【0123】
図14に示すように、機器制御属性情報640aは、機器ID641aに対応付けて、制御優先度情報642aを記述し、制御優先度情報642aに対応付けて、優先度値643aを記述する。制御優先度情報642aは、ノイズ低減のための制御の優先度に関する情報である。優先度値643aは、制御優先度情報642aに従ってノイズ低減のための制御を行う、優先度(つまり制御優先度情報642a自体の優先度)の度合いを示す値である。優先度値643aは、言い換えると、制御優先度情報642aに反する制御を行った場合における、第1のユーザの周囲環境の悪化の度合いを示し、その制御のペナルティの大きさを示す。
【0124】
例えば、機器制御属性情報640aは、「M1」という機器ID641aに対応付けて、「音量制御を電源制御より優先」という制御優先度情報642aを記述している。これは、第1の機器231は、音量制御を電源制御より優先して行うことを示す。また、機器制御属性情報640aは、「M2」という機器ID641aに対応付けて、「M1の電源制御より先に電源制御」という制御優先度情報642aを記述している。これは、第1の機器231の音量制御よりも先に、第2の機器232の電源制御を行うことを示す。
【0125】
また、機器制御属性情報640aは、上述の「音量制御を電源制御より優先」という制御優先度情報642aに対応付けて、「50」という優先度値643aを記述している。そして、機器制御属性情報640aは、上述の「M1の電源制御より先に電源制御」という制御優先度情報642aに対応付けて、「100」という優先度値643aを記述している。これらは、第2の機器232の電源制御よりも先に第1の機器231の音量制御を行うことのほうが、第1の機器231の電源制御を音量制御より優先して行うことよりもペナルティが大きいということを示す。なお、本実施の形態では、例えば、優先度値643aの最大値は、「100」とする。
【0126】
図12の制御判定部505aは、機器制御属性情報格納部507aが格納する制御優先度情報642aに基づいて、選択候補となる周囲状態情報ごとにペナルティ度数を算出する。そして、制御判定部505aは、ペナルティ度数が最も低い周囲状態情報を、最終的に選択する。ここで、ペナルティ度数とは、ある動作状態に各電気機器が遷移したときの優先度に反する度合いを示す値である。
【0127】
本実施の形態に係るVC高品位化制御装置500aは、実施の形態1の図9に示す動作と同様に動作するが、ステップS2500の新状態判定および周囲機器制御処理のみ、図10に示す処理とは異なる処理を行う。
【0128】
図15は、本実施の形態における新状態判定および周囲機器制御処理の一例を示すフローチャートであり、実施の形態1の図10に対応するものである。図10と同一部分には同一ステップ番号を付し、これについての説明を省略する。
【0129】
制御判定部505aは、現在の周囲機器の動作状態を判定すると(S2530)、ステップS2540aへ進む。図5および図13に示す例では、制御判定部505aは、「状態D」を現在の状態と判定することになる。
【0130】
ステップS2540aにおいて、制御判定部505aは、ノイズ傾向情報(図13参照)から、現在の状態よりもノイズ指数が小さい状態に該当する1つまたは複数の周囲状態情報を、選択候補として抽出する。図5および図13に示す例では、制御判定部505aは、「状態E」および「状態F」を選択候補として抽出することになる。そして、制御判定部505aは、選択候補ごとに、ノイズ指数変化量を算出すると共に、機器制御属性情報(図14参照)を参照してペナルティ度数を算出する。本実施の形態における制御判定部505aは、機器制御属性情報のうち、該当する制御優先度情報の優先度値の合計値を、ペナルティ度数として算出する。
【0131】
図16は、ペナルティ度数およびノイズ指数変化量の算出結果の一例を示す図である。
【0132】
図13に示す「状態D」から「状態E」への遷移では、ノイズ指数が20から10へと変化するので、ノイズ指数変化量は「−10」となる。また、図14に示す制御優先度情報のうち該当するものは無いため、ペナルティ度数は、「0」となる。
【0133】
一方、図13に示す「状態D」から「状態F」への遷移では、ノイズ指数が20から0へと変化するので、ノイズ指数変化量は「−20」となる。また、図14に示す制御優先度情報の全てが該当するため、ペナルティ度数は、「250」となる。
【0134】
そして、ステップS2550aにおいて、制御判定部505aは、算出したノイズ指数変化量およびペナルティ度数に基づいて、選択候補の中から、適用すべき新たな周囲動作状態を最終的に選択する。そして、制御判定部505aは、ステップS2560へ進む。本実施の形態における制御判定部505aは、ノイズ指数変化量が負の値、すなわち、ノイズ指数が良化しているもののうち、ペナルティ度数が最小のものを選ぶ。したがって、制御判定部505aは、「状態E」を、新たな周囲動作状態として選択する。
【0135】
このように、本実施の形態に係るVC高品位化制御装置500aは、電気機器ごとの動作維持の優先度に基づき、ペナルティができるだけ低くなるように、ノイズ低減のための制御を行うことができる。
【0136】
本実施の形態では、例えば、自局側VC端末400−1の周囲に冷蔵庫が存在する場合を想定する。この冷蔵庫の動作を停止させることは、周囲ノイズを低減することができるが、庫内温度が維持されなくなるため、第1のユーザにとって非常に不都合である。したがって、本実施の形態に係るVC高品位化制御装置500aは、機器制御属性情報を適用することにより、第1のユーザに不都合が生じることを極力抑えることができる。したがって、VC高品位化制御装置500aは、第1のユーザおよび第2のユーザの双方の通信環境を、更にバランスよく維持および改善することができる。
【0137】
(実施の形態3)
本発明の実施の形態3は、電気機器の動作状態の変化に基づいて機器制御属性情報を更新するようにした例である。
【0138】
図17は、本実施の形態に係るVC高品位化制御装置の構成の一例を示すブロック図であり、実施の形態2の図12に対応するものである。図12と同一部分には同一符号を付し、これについての説明を省略する。また、本実施の形態に係るVC高品位化制御装置は、実施の形態2と同様に、実施の形態1の図1に示す通信システム100に配置されているものとする。
【0139】
図17において、本実施の形態に係るVC高品位化制御装置500bは、図12の構成に加えて、機器制御属性生成部508bを有し、更に、図12の機器状態取得部503とは異なる機器状態取得部503bを有する。
【0140】
機器状態取得部503bは、実施の形態2と同様に周囲機器の特定およびその現動作状態の取得を行うほか、宅内ネットワークに接続された各電気機器の動作状態の変化を検知し、その変化内容を取得する。ただし、ここで検知の対象とする変化は、VC高品位化制御装置500の制御による変化以外の変化、つまり、第1のユーザの手動操作による変化である。したがって、以下、機器状態取得部503bが検出の対象とする電気機器の動作状態の変化は、「ユーザ機器操作」といい、その変化の内容は、「ユーザ機器操作情報」という。そして、機器状態取得部503bは、取得したユーザ機器操作情報を、機器制御属性生成部508bへ出力する。
【0141】
機器制御属性生成部508bは、機器状態取得部503bから入力されたユーザ機器操作情報に基づいて、機器制御属性情報格納部507aが格納する機器制御属性情報を生成および更新する。より具体的には、機器制御属性生成部508aは、ユーザ機器操作情報から、第1のユーザの各電気機器に対する操作の優先度のパターンを推定し、更に、各操作優先度パターンについて、そのパターン自体の優先度を推定する。そして、機器制御属性生成部508aは、推定した操作優先度パターンを制御優先度情報とし、推定した操作優先度パターン自体の優先度の度合いを優先度値とする。
【0142】
図18は、本実施の形態に係るVC高品位化制御装置500bの動作の一例を示すフローチャートであり、実施の形態1の図9と対応するものである。図9と同一部分には、同一ステップ番号を付し、これについての説明を省略する。
【0143】
ステップS2000bにおいて、VC高品位化制御装置500bは、ユーザ機器操作に応じて機器制御属性情報を生成および更新するユーザ機器操作監視処理を実行してから、ステップS2100へ進む。なお、VC高品位化制御装置500bは、ステップS2700の前など、他のタイミングでユーザ機器操作監視処理を行ってもよい。
【0144】
図19は、ユーザ機器操作監視処理の一例を示すフローチャートである。
【0145】
まず、ステップS2010bにおいて、機器状態取得部503bは、新たなユーザ機器操作があったか否かを判断する。より具体的には、機器状態取得部503bは、例えば、各電気機器に対して現動作状態を問い合わせるメッセージを送信し、返信された応答メッセージから、現動作状態を示す情報を取得する。そして、機器状態取得部503bは、電気機器ごとに、少なくとも、今回取得した情報と前回取得した情報とを保持する。そして、機器状態取得部503bは、電気機器ごとにこれらの情報を比較し、動作状態の変化の有無があったとき、新たなユーザ機器操作があったと判断する。
【0146】
なお、このように定期的に各電器機器の現動作状態の取得を行う場合には、機器状態取得部503bは、図15のステップS2520における現動作状態の取得を必ずしも行わなくてもよい。
【0147】
また、機器状態取得部503bは、音量を下げる操作および電源をオフにする操作など、省電力化に関連する動作状態の変化のみを、ユーザ機器操作として扱うようにしてもよい。
【0148】
機器状態取得部503bは、新たなユーザ機器操作がない場合(S2010b:NO)、そのまま図18の処理へ戻る。また、機器状態取得部503bは、新たなユーザ機器操作があった場合(S2010b:YES)、ユーザ機器操作情報を機器制御属性生成部508bへ出力して、ステップS2020bへ進む。
【0149】
ステップS2020bにおいて、機器制御属性生成部508bは、入力されたユーザ機器操作情報を分析して、上述の操作優先度パターンおよびその優先度の高さを推定する。そして、機器制御属性生成部508bは、推定した操作優先度パターンについて、推定した優先度の度合いを優先度値として記述した機器制御属性情報を、機器制御属性情報格納部507aに格納させる。
【0150】
既に機器制御属性情報が格納されている場合、機器制御属性生成部508bは、その機器制御属性情報に対して、上述の制御優先度情報および優先度値を追加する更新を行う。また、既に機器制御属性情報に上述の制御優先度情報が記述されている場合には、その優先度値を更新する。そして、機器制御属性生成部508bは、図18の処理へ戻る。
【0151】
具体的には、例えば、機器制御属性生成部508bは、新たなユーザ機器操作情報に該当する制御優先度情報が存在しない場合、その制御優先度情報を追加し、その優先度値を1とする。機器制御属性生成部508bは、新たなユーザ機器操作情報に該当する制御優先度情報が既に存在する場合、100を最大値としてその優先度値を1増加させる。機器制御属性生成部508bは、新たなユーザ機器操作情報に反する制御優先度情報が存在する場合、1を最小値としてその優先度値を1減少させる。また、機器制御属性生成部508bは、ユーザ機器操作が行われていない電気機器については、デフォルトで「電源制御不可」とする制御優先度情報を対応付け、その優先度値を「100」とする。
【0152】
なお、機器制御属性生成部508bは、各電気機器の属性を取得し、属性に応じて優先度値の増減幅やデフォルト値を変えてもよい。
【0153】
また、機器制御属性生成部508bは、入力されたユーザ機器操作情報と保持して蓄積し、蓄積されたユーザ機器操作情報からユーザ機器操作の傾向を分析して、機器制御属性情報を生成または更新してもよい。この場合、機器制御属性生成部508bは、必ずしも機器制御属性情報を生成または更新するとは限らない。また、機器制御属性情報格納部507aにまだ機器制御属性情報が格納されていない間、制御判定部505aは、実施の形態1のように、機器制御属性情報を用いずに周囲状態情報を選択するようにしてもよい。
【0154】
また、この場合、機器制御属性生成部508bは、現状の優先度値を用いることなく、新たな優先度値を決定してもよい。また、機器制御属性生成部508bは、制御優先度情報ごとの頻度などに基づいて値の重み付けを行う関数を準備し、あるいは動的に算出し、この関数を適用して算出した値を、優先度値としてもよい。
【0155】
図20は、本実施の形態における機器制御属性情報の内容の一例を示す図であり、実施の形態2の図14に対応するものである。図14と対応する部分には同一符号を付し、これについての説明を省略する。
【0156】
図20に示すように、操作の優先度のパターンが多様である場合、これに基づいて生成および更新される機器制御属性情報640bは、1つの機器ID641aに複数の制御優先度情報642bを対応付けて記述し得る。また、このような機器制御属性情報640bでは、記述される制御優先度情報642bおよびその優先度値643bが、ユーザ機器操作に応じて、時間と共に変化し得る。
【0157】
このように、本実施の形態に係るVC高品位化制御装置500bは、第1のユーザの操作の傾向に沿うように、機器制御属性情報を動的に設定することができる。ユーザの操作の傾向は、通常、そのユーザにとっての制御の優先度に合致する。したがって、本実施の形態に係るVC高品位化制御装置500bは、第1のユーザにとってより好ましい制御を実現することができる。
【0158】
なお、本発明に係る通信環境制御装置(VC高品位化制御装置)が低減の対象とする周囲ノイズは、以上説明した各実施の形態では周囲機器の動作音としたが、これに限定されない。本発明に係る通信環境制御装置が低減の対象とする周囲ノイズは、照明器具やテレビ画面の光などの周囲機器が動作時に発する光や、周囲機器が動作時に発する電磁波などであってもよい。
【0159】
また、本発明に係る通信環境制御装置が制御の対象とする周囲機器の動作状態は、上述の例に限定されない。本発明に係る通信環境制御装置は、例えば、送風の強弱、照明器具やテレビ画面の輝度および向きなど、各種の動作状態を制御するようにしてもよい。
【0160】
また、本発明に係る通信環境制御装置が周囲ノイズ低減の対象とする端末装置は、以上説明した各実施の形態ではモバイル情報通信端末としたが、これに限定されない。本発明に係る通信環境制御装置が周囲ノイズ低減の対象とする端末装置は、例えば、机の上などにマイクロフォンおよびマイクロフォンが設置された、パーソナルコンピュータなどの据え置き型の装置であってもよい。
【0161】
また、本発明に係る通信環境制御装置が同時に周囲ノイズ低減の対象とする端末装置は、複数であってもよい。この場合、通信環境制御装置は、端末装置ごとにノイズ低減要求を取得し、周囲機器を特定し、ノイズ傾向情報を管理し、周囲機器の動作制御を行えばよい。
【0162】
また、本発明に係る通信環境制御装置は、電気機器が広い範囲に分布して固定位置で設置されている場合には、端末装置の位置を特定することにより周囲機器を特定してもよい。この場合、通信環境制御装置は、例えば、どの位置範囲(例えば部屋)にどの電気機器が設置されているかを記述した対応表を予め保持しておけばよい。そして、通信環境制御装置は、GPS(global positioning system)や無線タグ等の公知の位置検出技術により、端末装置の位置(例えばどの部屋に位置するか)を検出し、対応表を参照して周囲機器を特定すればよい。
【0163】
また、本発明に係る通信環境制御装置は、機器状態変化数として、電気機器単位での変化ではなく、「空調機器」「照明機器」などに区別される電気機器の機能単位での変化をカウントするようにしてもよい。この場合、通信環境制御装置は、空調機をオフにして扇風機をオンにするというような機器動作の代替を行う場合に、機器状態変化数を「2」ではなく「1」とすることができる。これにより、通信環境制御装置は、周囲ノイズの低減に際して、機器動作の代替を積極的に行うことができる。
【0164】
また、本発明に係る通信環境制御装置は、対局側VC端末で要求したい低減のレベルに応じた数値情報をノイズ低減要求に含めて送信することができる場合には、この数値情報に基づいて要求レベルを判断してもよい。
【0165】
また、本発明に係る通信環境制御装置は、端末装置のバッテリ残量が少ない場合にのみ、端末装置における信号処理によるノイズ低減機能を停止させ、周囲機器の動作制御によるノイズ低減機能を行うようにしてもよい。この場合、通信環境制御装置は、端末装置のバッテリ情報を取得し、バッテリ残量が閾値以下となっており、かつ、ノイズ低減要求があったとき、このような機能の代替を行うようにすればよい。
【0166】
また、本発明に係る通信環境制御装置は、端末装置が系統電源に接続されていない場合にのみ、端末装置における信号処理によるノイズ低減機能を停止させ、周囲機器の動作制御によるノイズ低減機能を行うようにしてもよい。この場合、通信環境制御装置は、端末装置の電源接続情報を取得し、端末装置が系統電源に接続しておらず、かつ、ノイズ低減要求があったとき、このような機能の代替を行うようにすればよい。
【0167】
また、本発明に係る通信環境制御装置は、端末装置の種別に応じて、端末装置における信号処理によるノイズ低減と、周囲機器の動作制御によるノイズ低減とのいずれを採用するかを決定するようにしてもよい。この場合、例えば、通信環境制御装置は、携帯電話機等のバッテリ駆動が前提の端末装置については、周囲機器の動作制御によるノイズ低減を選択する。そして、通信環境制御装置は、デスクトップ型のパーソナルコンピュータ等の電源駆動が前提の端末装置については、端末装置における信号処理によるノイズ低減を選択する。
【0168】
また、これらのようにノイズ低減手法を切り替える場合、通信環境制御装置は、端末装置の信号処理によるノイズ低減を行うか否かを、周囲機器状態に含めて扱ってもよい。これにより、通信環境制御装置は、端末装置の消費電力の低減を必要な場合にのみ限定して、周囲機器の動作状態の変化を最小限に抑えることができるので、双方向コミュニケーションの更なる高品位化を実現することができる。
【0169】
また、本発明に係る通信環境制御装置の各機能部は、上述のように制御プログラムにより実現されるソフトウェアの他、集積回路であるLSI(large scale integrated circuit)により実現されてもよい。この場合、各機能部は、個別に1チップ化されてもよいし、複数で1チップ化されてもよい。なお、ここでのLSIは、その集積度の違いにより、IC(integrated circuit)、システムLSI、スーパーLSI、ウルトラLSI等と呼称され得る。
【0170】
また、本発明に係る通信環境制御装置の各機能部を実現する集積回路は、LSIに限定されず、専用回路または汎用プロセッサとしてもよい。また、集積回路は、製造後にプログラムが可能なFPGA(field programmable gate array)や、内部の回路セルの接続や設定を再構成することが可能なリコンフィギュラブル・プロセッサとしてもよい。更には、半導体技術の進歩または派生する別技術により、バイオ技術による集積回路化等、LSIに置き換わる集積回路化の技術が登場した場合には、その技術を用いてもよいことは勿論である。
【0171】
また、本発明に係る通信環境制御装置は、周囲ノイズ低減の対象となる端末装置の通信相手からのノイズ低減要求を取得可能であり、かつ、周囲機器の特定およびその動作制御を可能であれば、どこに配置されてもよい。例えば、通信環境制御装置は、周囲ノイズ低減の対象となる端末装置、ルータ、宅内機器制御管理装置、あるいは制御対象となる電気機器に、一体的に設けることができる。通信環境制御装置を適応した端末装置において、図9などで説明した処理は、周囲ノイズの監視やその低減のための定常的な信号処理に比べて計算リソースの使用量を少なく抑えることができるため、端末装置における省電力効果が見込まれる。
【産業上の利用可能性】
【0172】
本発明に係る通信環境制御装置および通信環境制御方法は、消費電力を抑えた状態で周囲ノイズを低減することができる通信環境制御装置および通信環境制御方法として有用である。
【符号の説明】
【0173】
100 通信システム
200−1 第1の住宅
200−2 第2の住宅
210 ルータ
210−1 自局側ルータ
210−2 対局側ルータ
220 LAN
220−1 自局側LAN
220−2 対局側LAN
231 第1の機器
232 第2の機器
233 第3の機器
240 宅内機器ネットワーク
250 宅内機器制御管理装置
300 外部ネットワーク
400 VC端末
400−1 自局側VC端末
400−2 対局側VC端末
401 ネットワーク入出力部
402 セッション制御部
403 ストリーム送受信部
404 コーデック処理部
405 映像コーデック処理部
406 音声コーデック処理部
407 音声出力部
408 音声入力部
410 操作入力部
411 画面生成部
412 映像入力部
413 映像合成部
414 映像出力部
500、500a、500b VC高品位化制御装置
501 ネットワーク入出力部
502 呼情報取得部
503、503b 機器状態取得部
504 ノイズ傾向情報格納部
505、505a 制御判定部
506 制御情報生成部
507a 機器制御属性情報格納部
508b 機器制御属性生成部


【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の端末装置と第2の端末装置との間の通信の環境を制御する通信環境制御装置であって、
前記第1の端末装置の周囲に存在する電気機器を特定する機器状態取得部と、
前記第1の端末装置と前記第2の端末装置との間の前記通信の経路に接続するネットワーク入出力部と、
前記経路上を前記第2の端末装置から前記第1の端末装置へと送信される通信データを監視し、前記通信データに周囲ノイズの低減の要求が含まれるとき、当該要求を取得する呼情報取得部と、
前記要求を取得したことを条件として、前記第1の端末装置の周囲に存在する電気機器の動作を停止またはその動作レベルを低減させる制御情報生成部と、を有する、
通信環境制御装置。
【請求項2】
前記周囲ノイズは、前記第1の端末装置の周囲に存在する前記電気機器が動作時に発する音および光の少なくとも1つを含む、
請求項1記載の通信環境制御装置。
【請求項3】
前記ネットワーク入出力部は、
前記電気機器と通信可能に接続し、
前記制御情報生成部は、
前記ネットワーク入出力部を介して、前記第1の端末装置の周囲に存在する電気機器に対して、動作状態の変更内容を示す制御情報を送信する、
請求項2記載の通信環境制御装置。
【請求項4】
前記ネットワーク入出力部は、
前記第1の端末装置と前記第2の端末装置とが接続する第1のネットワークと、複数の前記電気機器が接続する第2のネットワークとのそれぞれに対して、通信可能に接続する、
請求項3記載の通信環境制御装置。
【請求項5】
前記要求は、前記ノイズ低減要求の受信回数または前記ノイズ低減要求に含まれる数値情報に応じた要求レベルを含み、
前記機器状態取得部は、
前記電気機器の現動作状態を取得し、
前記電気機器の動作状態をそれぞれ異なる内容で規定する複数の周囲状態情報を記述したノイズ傾向情報を格納するノイズ傾向情報格納部と、
前記要求レベルおよび前記現動作状態に応じて前記ノイズ傾向情報から前記周囲状態情報を選択する制御判定部、を更に有し、
前記制御情報生成部は、
前記制御判定部が選択した前記周囲状態情報に基づいて前記制御情報を生成する、
請求項2記載の通信環境制御装置。
【請求項6】
前記周囲状態情報は、前記周囲ノイズのレベルの推定値であるノイズ指数にそれぞれ対応付けられており、
前記制御情報生成部は、
前記要求レベルが高いほど、より高い前記ノイズ指数に対応する前記周囲状態情報を優先して選択する、
請求項5に記載の通信環境制御装置。
【請求項7】
前記制御判定部は、
前記周囲状態情報に対し、前記電気機器がその周囲状態情報が示す動作状態にあった間に前記呼情報取得部が取得した前記要求の前記要求レベルに基づいて、前記ノイズ指数を設定する、
請求項6に記載の通信環境制御装置。
【請求項8】
前記周囲状態情報は、前記電気機器ごとの動作のオンオフ状態を示す情報を含み、
前記制御判定部は、
前記オンオフ状態の変化数がより少なくなるような前記周囲状態情報を優先して選択する、
請求項5に記載の通信環境制御装置。
【請求項9】
前記電気機器の動作状態ごとにその動作状態の優先度を規定する機器制御属性情報を格納する機器制御属性情報格納部、を更に有し、
前記制御判定部は、
前記優先度が高い前記電気機器が動作を維持するような前記周囲状態情報を優先して選択する、
請求項5に記載の通信環境制御装置。
【請求項10】
前記機器制御属性情報は、前記電気機器ごとの動作維持の優先度の度合いを示す優先度値を含み、
前記制御判定部は、
前記優先度値に基づいて、選択候補となる前記周囲状態情報ごとに、該当する動作状態に各電気機器が遷移したときの前記優先度に反する度合いを示すペナルティ度数として算出し、算出した前記ペナルティ度数がより低い前記周囲状態情報を優先して選択する、
請求項9に記載の通信環境制御装置。
【請求項11】
前記制御情報生成部による変化以外の前記電気機器の動作状態の変化であるユーザ機器操作を検知し、検知した前記ユーザ機器操作に基づいて、前記優先度を設定する機器制御属性生成部、を更に有する、
請求項9に記載の通信環境制御装置。
【請求項12】
第1の端末装置と第2の端末装置との間の通信の環境を制御する通信環境制御方法であって、
前記第1の端末装置の周囲に存在する電気機器を特定するステップと、
前記第1の端末装置と前記第2の端末装置との間の前記通信の経路に接続し、前記経路上を前記第2の端末装置から前記第1の端末装置へと送信される通信データを監視するステップと、
前記通信データに周囲ノイズの低減の要求が含まれるとき、当該要求を取得するステップと、
前記要求を取得したことを条件として、前記第1の端末装置の周囲に存在する電気機器の動作を停止またはその動作レベルを低減させるステップと、を有する、
通信環境制御方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【公開番号】特開2012−169972(P2012−169972A)
【公開日】平成24年9月6日(2012.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−30687(P2011−30687)
【出願日】平成23年2月16日(2011.2.16)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】