説明

通信端末

【構成】 携帯電話機(10)はプロセッサ24を含み、プロセッサはセレクタ54の切り替えを制御する。通話処理では、マイク(18)を通して入力された送話音声信号(第1送信信号)は、デジタル音声信号に変換され、プロセッサの指示の下、CDMA信号処理回路60によって符号化処理および変調処理を施され、カプラ56a、セレクタ、PA52a、デュプレクサ50aおよびアンテナ12aを介して出力される。また、カプラ56aからの出力信号は、検波回路64で電圧値に変換され、プロセッサに入力される。プロセッサは、電圧値に基づいてPA52aの反射波の電力値を検出し、電力値が所定の閾値を超える場合には、PA52aを含む送信系が故障していると判断して、セレクタに切替信号を送信し、カプラの出力端T1をPA52bの入力端に接続する。
【効果】 送信系を切り替えることにより、確実に通話処理を実行する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は通信端末に関し、特にたとえば、音声通話およびデータ通信を実行可能なデュアル端末として用いられる、通信端末に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の通信端末の一例が特許文献1に開示されている。この特許文献1のホットスタンバイ送受信システムでは、切替制御盤は切替器を制御して二つの系の受信信号の一方を選択させるとともに、切替器を制御して回線品質の良い片方の系の受信信号を選択させる。具体的には、受信レベルが低下したり、故障したりした受信機が予備の受信機に切り替えられる。また、切替制御盤は、出力制御盤を制御して、切替器で選択していない方の系の送信信号のレベルを低下させる。
【特許文献1】特開平7−22989号[H04B 7/10]
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、特許文献1のホットスタンバイ送受信システムでは、受信レベルを監視することにより受信系の故障を検出することができるが、送信系の故障を検出するのは困難である。したがって、故障に対応することができず、送信信号を送信できない場合があった。
【0004】
それゆえに、この発明の主たる目的は、新規な、通信端末を提供することである。
【0005】
また、この発明の他の目的は、送信系が故障しても確実に送信信号を送信することができる、通信端末を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記の課題を解決するために、以下の構成を採用した。なお、括弧内の参照符号および補足説明等は、本発明の理解を助けるために後述する実施の形態との対応関係を示したものであって、本発明を何ら限定するものではない。
【0007】
第1の発明は、第1アンテナと、第2アンテナと、第1アンテナに接続された第1増幅器と、第2アンテナに接続された第2増幅器と、第1アンテナおよび第2アンテナに送信信号を出力する出力部と、出力部から出力された送信信号の出力先として第1アンテナまたは第2アンテナを選択する選択部と、第1増幅器の入力側に配置された第1結合器と、第1結合器から出力された第1信号に基づいて選択部の選択を制御する制御部を備える、通信端末である。
【0008】
第1の発明では、通信端末(10)は、第1アンテナ(12a)と、第2アンテナ(12b)とを備える。第1アンテナには、第1増幅器(52a)が接続され、第2アンテナには、第2増幅器(52b)が接続される。出力部(24、58)は、第1アンテナおよび第2アンテナに送信信号を出力する。選択部(24、54)は、出力部から出力された送信信号の出力先として第1アンテナまたは第2アンテナを選択する。第1結合器(56a)は、第1増幅器の入力側に配置される。制御部(24、S5、S39、S55)は、第1結合器から出力された第1信号に基づいて選択部の選択を制御する。たとえば、第1信号に基づいて第1増幅器の故障を検出して、送信信号の出力先として第2アンテナを選択する。
【0009】
第1の発明によれば、第1増幅器を含む送信系の故障を検出すると、送信系を切り替えることにより、送信信号を出力するので、確実に送信信号を送信することができる。
【0010】
第2の発明は、第1の発明に従属し、制御部は、出力部から出力される送信信号が音声信号であり、かつ選択部によって当該送信信号の出力先として第2アンテナが選択されているとき、当該選択部の選択を制御しない。
【0011】
第2の発明では、制御部は、出力部から出力される送信信号が音声信号であり、かつ選択部によって当該送信信号の出力先として第2アンテナが選択されているとき(S7で“NO”)、当該選択部の選択を制御しない。つまり、第1増幅器を含む送信系が故障している場合に、第2増幅器を含む送信系が選択されている場合に、通話により、音声信号が送信されている場合には、出力先の選択は制御されない。したがって、音声による通話が優先される。
【0012】
第2の発明によれば、音声による通話が優先されるので、確実に通話処理を実行することができる。
【0013】
第3の発明は、第1または第2の発明に従属し、第2増幅器の入力側に配置された第2結合器をさらに備え、制御部は、第1信号および第2結合器から出力された第2信号の少なくとも一方に基づいて選択部の選択を制御する。
【0014】
第3の発明では、通信端末は、第2増幅器の入力側に配置された第2結合器(56b)をさらに備える。制御部は、第1信号および第2結合器から出力された第2信号の少なくとも一方に基づいて選択部の選択を制御する。
【0015】
第3の発明によれば、第2信号に基づいて第2増幅器を含む送信系の故障を検出した場合には、送信信号の出力先として第1アンテナを選択することができる。
【0016】
第4の発明は、第3の発明に従属し、通話中かどうかを判断する通話中判断部をさらに備え、制御部は、出力部から出力される送信信号が音声信号以外の他の信号であるとき、通話中判断部によって通話中でないことが判断されたとき、当該他の信号の出力先として第1アンテナを選択するように選択部を制御する。
【0017】
第4の発明では、通信端末は、通話中判断部(24、S53)をさらに備える。通話中判断部は、通話中かどうか、すなわち通話処理の実行中であるかどうかを判断する。制御部は、出力部から出力される送信信号が音声信号以外の他の信号であり、通話中判断部によって通話中でないことが判断されたとき(S53で“NO”)、当該他の信号の出力先として第1アンテナを選択するように選択部を制御する。
【0018】
第4の発明によれば、第2増幅器を含む送信系が故障した場合に、通話中でなければ、送信系を切り替えて、第1アンテナから他の信号を送信することができる。ただし、通話中であれば、送信系を切り替えないので、通話を優先することができる。
【0019】
第5の発明は、第3または第4の発明に従属し、送信信号は、音声信号および音声信号以外の他の信号を含み、通話開始かどうかを判断する通話開始判断部をさらに備え、制御部は、出力部から出力される他の信号の出力先として第1アンテナが選択されている場合に、通話開始判断部によって通話開始が判断されたとき、出力部から出力される音声信号の出力先として第1アンテナを選択するように選択部を制御する。
【0020】
第5の発明では、送信信号は、音声信号および音声信号以外の他の信号を含む。つまり、音声通話とデータ通信とが実行される。携帯端末は、通話開始判断部(24、S59)をさらに備える。通話開始判断部は、通話開始かどうかを判断する。制御部は、出力部から出力される他の信号の出力先として第1アンテナが選択されている場合に、通話開始判断部によって通話開始が判断されたとき(S59で“YES”)、出力部から出力される音声信号の出力先として第1アンテナを選択するように選択部を制御する。つまり、第1アンテナを用いてデータ通信による他の信号を送信している場合であっても、通話が開始されると、優先して音声信号が第1アンテナから出力される。
【0021】
第5の発明においても、第4の発明と同様に、通話を優先することができる。
【発明の効果】
【0022】
この発明によれば、第1増幅器の入力側に結合器を配置するので、第1増幅器を含む送信系の故障を検出することができ、送信系を切り替えて第2増幅器を用いることにより、確実に送信信号を送信することができる。
【0023】
この発明の上述の目的,その他の目的,特徴および利点は、図面を参照して行う以下の実施例の詳細な説明から一層明らかとなろう。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】図1はこの発明の一実施例の携帯電話機の電気的な構成を示すブロック図である。
【図2】図2は図1に示す無線通信回路の具体的な構成の一例を示すブロック図である。
【図3】図3は図1に示すRAMのメモリマップの一例を示す図解図である。
【図4】図4は図1に示すプロセッサの選択処理を示すフロー図である。
【図5】図5は他の実施例の無線通信回路の具体的な構成の他の例を示すブロック図である。
【図6】図6は他の実施例のプロセッサの選択処理の一部を示すフロー図である。
【図7】図7は他の実施例のプロセッサの選択処理の他の一部であって、図6に後続するフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
<第1実施例>
図1を参照して、この第1実施例の携帯電話機10は、通信端末の一種であり、コンピュータまたはCPUと呼ばれるプロセッサ24を含む。プロセッサ24には、無線通信回路14、A/D変換器16、D/A変換器20、キー入力装置26、表示ドライバ28、フラッシュメモリ32およびRAM34が接続される。無線通信回路14にはアンテナ12aおよびアンテナ12bが接続される。また、A/D変換器16にはマイク18が接続され、D/A変換器20にはスピーカ22が接続される。さらに、表示ドライバ28には、ディスプレイ30が接続される。
【0026】
プロセッサ24は携帯電話機10の全体制御を司る。RAM34は、プロセッサ24の作業領域(描画領域を含む)ないしバッファ領域として用いられる。フラッシュメモリ32には、携帯電話機10の文字、画像、音声、音および映像のようなコンテンツのデータが記録される。
【0027】
A/D変換器16は、マイク18を通して入力される音声ないし音についてのアナログ音声信号を、デジタル音声信号に変換する。D/A変換器20は、デジタル音声信号をアナログ音声信号に変換(復号)して、図示しないアンプを介してスピーカ22に与える。したがって、アナログ音声信号に対応する音声ないし音がスピーカ22から出力される。なお、プロセッサ24は、アンプの増幅率を制御することで、スピーカ22から出力される音声の音量を調整することができる。
【0028】
キー入力装置26は、テキストを入力するための文字キーや、カーソルキー、通話キーおよび終話キーなどを備える。使用者が操作したキーの情報(キーデータ)はプロセッサ24に入力される。また、キー入力装置26に含まれる各キーが操作されると、クリック音が鳴る。したがって、使用者は、クリック音を聞くことで、キー操作に対する操作感を得ることができる。
【0029】
表示ドライバ28は、プロセッサ24の指示の下、ディスプレイ30の表示を制御する。また、表示ドライバ28は、ディスプレイ30に表示する画像ないし画面に対応する表示画像データを一時的に記憶するビデオメモリ(図示せず)を含む。
【0030】
無線通信回路14は、CDMA(Code Division Multiple Access)方式およびLTE(Long Term Evolution)方式での無線通信を行うための回路である。つまり、この第1実施例の携帯電話機10は、CDMA方式およびLTE方式で通信可能なデュアル端末であり、CDMA方式で音声通話(音声通信)を行い、LTE方式でデータ通信を行う。この第1実施例では、CDMA方式およびLTE方式で通信されるのは、1900MHz帯のデータないし信号である。ただし、周波数帯は単なる一例であり、限定されるべきない。
【0031】
たとえば、使用者がキー入力装置26を用いて電話発信(発呼)を指示すると、無線通信回路14は、プロセッサ24の指示の下、電話発信処理を実行し、アンテナ12aを介して電話発信信号を出力する。電話発信信号は、基地局および通信網(図示せず)を経て相手の電話機に送信される。そして、相手の電話機において着信処理が行われると、通信可能状態が確立され、プロセッサ24は通話処理を実行する。
【0032】
通常の通話処理について具体的に説明すると、相手の電話機から送られてきた変調音声信号(以下、「第1受信信号」という。)はアンテナ12aによって受信される。受信された第1受信信号には、無線通信回路14によって復調処理および復号処理が施される。そして、これらの処理によって得られた受話音声信号は、プロセッサ24を介してD/A変換器20に与えられ、D/A変換器20によってアナログ音声信号に変換された後、スピーカ22から出力される。一方、マイク18を通して取り込まれた送話音声信号(以下、「第1送信信号」という。)は、A/D変換器16によってデジタル音声信号に変換された後、プロセッサ24に与えられる。デジタル音声信号に変換された第1送信信号には、プロセッサ24の指示の下、無線通信回路14によって符号化処理および変調処理が施され、アンテナ12aを介して出力される。したがって、変調音声信号は、基地局および通信網を介して相手の電話機に送信される。
【0033】
また、相手の電話機からの電話発信信号がアンテナ12aによって受信されると、無線通信回路14は、電話着信(着呼)をプロセッサ24に通知する。これに応じて、プロセッサ24は、表示ドライバ28を制御して、着信通知に記述された発信元情報(電話番号など)をディスプレイ30に表示する。また、これとほぼ同時に、プロセッサ24は、図示しないスピーカから着信音(着信メロディ、着信音声と言うこともある。)を出力させる。
【0034】
そして、使用者が通話キーを用いて応答操作を行うと、無線通信回路14は、プロセッサ24の指示の下、電話着信処理を実行する。さらに、通信可能状態が確立され、プロセッサ24は上述した通常の通話処理を実行する。
【0035】
また、通話可能状態に移行した後に終話キーによって通話終了操作が行われると、プロセッサ24は、無線通信回路14を制御して、通話相手に通話終了信号を送信する。そして、通話終了信号の送信後、プロセッサ24は通話処理を終了する。また、先に通話相手から通話終了信号を受信した場合も、プロセッサ24は通話処理を終了する。さらに、通話相手によらず、移動通信網から通話終了信号を受信した場合も、プロセッサ24は通話処理を終了する。
【0036】
データ通信処理について具体的に説明すると、相手の電話機またはコンピュータ(サーバを含む。以下、同じ。)から送られてきたデータ(以下、「第2受信信号」という。)はアンテナ12bによって受信される。第2受信信号には、無線通信回路14によって復調処理および復号処理が施される。そして、これらの処理が施された第2受信信号は、プロセッサ24に与えられ、プロセッサ24の指示に従ってフラッシュメモリ32またはRAM34に記憶される。一方、フラッシュメモリ32またはRAM34から読み出されたデータ(以下、「第2送信信号」という。)は、プロセッサ24の指示の下、無線通信回路14によって符号化処理および変調処理が施され、アンテナ12bを介して出力される。したがって、第2送信信号は、基地局および通信網を介して相手の電話機またはコンピュータに送信される。
【0037】
また、相手の電話機またはコンピュータからの第2受信信号がアンテナ12bによって受信されると、無線通信回路14は、データ受信をプロセッサ24に通知する。これに応じて、プロセッサ24は、表示ドライバ28を制御して、第2受信信号を受信した旨のメッセージをディスプレイ30に表示する。また、これとほぼ同時に、プロセッサ24は、図示しないスピーカから受信音(受信メロディ、受信音声と言うこともある。)を出力させる。
【0038】
なお、詳細な説明は省略するが、第2送信信号および第2受信信号は、通話処理で送受信される音声信号とは異なる信号(データ)であり、典型的には、電子メールのデータ、画像や音楽などのコンテンツについてのデータ、キー入力装置26からのキーデータなどである。
【0039】
図2は図1に示す無線通信回路14の具体的な構成を示すブロック図である。図2に示すように、無線通信回路14は、デュプレクサ50aおよびデュプレクサ50bを含む。デュプレクサ50aには、図1に示したアンテナ12aが接続されるとともに、パワーアンプ(以下、「PA」という。)52aの出力端が接続される。また、デュプレクサ50aと高周波回路(第1実施例では、「RFIC」)58の内部に設けられるCDMA信号処理回路60とが接続される。また、PA52aの入力端は、セレクタ54を介してカプラ56aの出力端T1に接続される。また、カプラ56aの出力端T2は、RFIC58の内部に設けられる検波回路64に接続される。さらに、カプラ56aの出力端T3は、終端抵抗R1を介して接地される。また、カプラ56aの入力端は、CDMA信号処理回路60に接続される。さらに、CDMA信号処理回路60および検波回路64は、それぞれ、プロセッサ24に接続される。
【0040】
デュプレクサ50bには、図1に示したアンテナ12bが接続されるとともに、PA52bの出力端が接続される。また、デュプレクサ50bとRFIC58の内部に設けられるLTE信号処理回路62とが接続される。また、PA52bの入力端は、セレクタ54を介して、LTE信号処理回路62の出力端T11に接続される。
【0041】
デュプレクサ50a(50bも同様である。)は、アンテナ12aから送信される送信信号と、アンテナ12aから受信される受信信号の周波数領域を分離するフィルタ素子である。アンテナ12aで受信されたCDMA信号(第1実施例では、第1受信信号)は、無線通信回路14内部のCDMA信号処理回路60によって復調処理および復号処理を施され、プロセッサ24に与られる。
【0042】
一方、プロセッサ24から送信されるデジタルのCDMA信号(第1実施例では、第1送話信号)には、CDMA信号処理回路60によって符号化処理および変調処理を施され、カプラ56aを介してセレクタ54に与えられる。セレクタ54は、プロセッサ24からの切替信号に従って、カプラ56aの出力端T1をPA52aの入力端またはPA52bの入力端に接続する。通常、カプラ56aの出力端T1はPA52aの入力端に接続され、LTE信号処理回路62の出力端T11はPA52bの入力端に接続される。したがって、第1送信信号は、PA52aに入力され、PA52aでは、第1送信信号が増幅され、増幅された第1送信信号がデュプレクサ50aを介してアンテナ12aから送信(出力)される。
【0043】
同様に、アンテナ12bで受信されたLTE信号(第1実施例では、第2受信信号)は、無線通信回路14内部のLTE信号処理回路62によって復調処理および復号処理を施され、プロセッサ24に与えられる。
【0044】
一方、プロセッサ24から送信されるLTE信号(第1実施例では、第2送信信号)には、LTE信号処理回路62によって符号化処理および変調処理を施され、セレクタ54に与えられる。通常、セレクタ54は、LTE信号処理回路62の出力端子T11から出力される第2送信信号を、PA52bに与える。PA52bでは、第2送信信号が増幅され、増幅された第2送信信号がデュプレクサ50bを介してアンテナ12bから出力される。
【0045】
また、カプラ56aの出力端T2から出力された出力信号は、RFIC58内の検波回路64に与えられる。検波回路64では、出力信号を電圧値に変換し、変換された電圧値のデータをプロセッサ24に与える。通常、出力端子T11はPA52bの入力端に接続されるため、この電圧値に基づいて、プロセッサ24は、PA52aの反射波の電力値(以下、「電力値A」という。)を検出する。プロセッサ24は、検出した反射波の電力値Aが所定の閾値を超える場合には、PA52aが故障していると判断する。ただし、アンテナ12aの負荷変動によって、反射波の電力値Aが所定の閾値を超える場合もあり、厳密には、PA52aを含む送信系が故障していると判断する。以下、PAが故障していると判断する場合について同様である。
【0046】
なお、所定の閾値は実験等で決定される経験値であり、開発者等が設定する値である。また、図示は省略するが、電圧値の範囲に対応して電力値を記載したテーブル(電力値変換テーブル)が記憶されており、プロセッサ24は、この電力値変換テーブルを参照して電力値を決定(検出)する。
【0047】
プロセッサ24は、PA52aが故障していると判断すると、セレクタ54に切替信号を送信し、カプラ56aの出力端T1をPA52bの入力端に接続する。つまり、送信系を切り替える。したがって、カプラ56aの出力端T1から出力される第1送信信号は、PA52bで増幅され、デュプレクサ50bを介して、アンテナ12bから出力される。このため、PA52aが故障した場合であっても、使用者の音声信号を通話相手の電話機に送信することができる。つまり、通話処理を確実に実行することができるのである。
【0048】
ただし、プロセッサ24は、検出した反射波の電力値Aが所定の閾値以下である場合には、PA52aが故障していないと判断する。かかる場合には、セレクタ54は切り替えられないため、カプラ56aの出力端T1はPA52aの入力端に接続されたままであり、LTE信号処理回路62の出力端はPA52bの入力端に接続されたままである。
【0049】
また、詳細な説明は省略するが、PA52aが故障している場合には、通話処理中においては、たとえば、データ通信の開始が指示されるなどにより、データ通信のタイミングになったとしても、セレクタ54を切り替えないようにしてある。これは、音声通話を優先するためである。
【0050】
このため、PA52aが故障している状態で、通話処理が実行されている場合には、LTE信号処理回路62を用いたデータ通信(LTE信号の送受信)は行われない。したがって、PA52aが故障している場合には、なるべく早く修理に出すべき旨のメッセージをディプレイ30に表示したり、その旨を示す音(メロディ、音楽)を図示しないスピーカから出力したりすることにより、使用者に報知するようにしてある。
【0051】
また、PA52aが故障し、カプラ56aの出力端T1がPA52bの入力端に接続されている場合にも、カプラ56aの出力端T2からの出力信号は検波回路64に与えられる。したがって、かかる場合には、プロセッサ24は、検波回路64からの電圧値のデータに基づいて、PA52bの反射波の電力値(以下、「電力値B」という。)が検出される。プロセッサ24は、検出した反射波の電力値Bが所定の閾値を超える場合には、PA52bが故障していると判断する。
【0052】
PA52bが故障していると判断され場合には、PA52aおよびPA52bの両方が故障であることを意味する。かかる場合には、音声通話およびデータ通信を実行できないため、音声通話ができない旨および修理に出すべき旨のメッセージをディプレイ30に表示したり、その旨を示す音(メロディ、音楽)を図示しないスピーカから出力したりすることにより、使用者に報知する。
【0053】
図3は、図1に示したRAM34のメモリマップの一例を示す図解図である。図3に示すように、RAM34は、プログラム記憶領域340およびデータ記憶領域342を含む。プログラム記憶領域340には、通話プログラム340a、通信プログラム340b、電力値検出プログラム340cおよび選択プログラム340dなどが記憶される。
【0054】
通話プログラム340aは、通常の通話処理を実行するためのプログラムである。通信プログラム340bは、他の電話機またはコンピュータと通信するためのプログラムである。電力値検出プログラム340cは、検波回路64から送信される電圧値のデータに基づいて、PA52aの反射波の電力値AまたはPB52bの反射波の電力値Bを検出するためのプログラムである。ただし、電力値検出プログラム340cは、電力値変換テーブルデータ342bに対応する電力値変換テーブルを参照して、電力値AまたはBを決定する。選択プログラム340dは、CDMA信号すなわち第1送信信号の出力先を選択するためのプログラムであり、具体的には、セレクタ54の切り替えを制御する。
【0055】
図示は省略するが、プログラム記憶領域340には、携帯電話機10が備える機能(電子メール、アラーム、スケジュールなど)を実行するためのプログラムも記憶される。
【0056】
データ記憶領域342には、電圧値データバッファ342aが設けられる。電圧値データバッファ342aには、検波回路64からプロセッサ24に与えられる電圧値のデータが時系列に従って記憶(一時記憶)される。また、データ記憶領域342には、電力値変換テーブルデータ342bが記憶される。電力値変換テーブルデータ342bは、電力値変換テーブルのデータであり、電圧値データバッファ342aに記憶された電圧値のデータに対応する電圧値を電力値に変換するために用いられる。したがって、電圧値からPA52aの電力値AまたはPB52bの電力値Bが決定(検出)される。
【0057】
図示は省略するが、データ記憶領域342には、携帯電話機10のプログラムの実行に必要な、他のデータが記憶されたり、カウンタ(タイマ)またはフラグが設けられたりする。
【0058】
具体的には、図1に示したプロセッサ24が図4に示すような選択処理を実行する。図示は省略するが、通話処理やデータ通信処理は、選択処理とは異なるタスクで並列的に実行されている。
【0059】
なお、図4に示す選択処理が開始される前では、セレクタ54によって、カプラ56aの出力端T1はPA52aの入力端に接続され、LTE信号処理回路62の出力端T11はPA52bの入力端に接続される。
【0060】
図4に示すように、プロセッサ24は、選択処理を開始すると、ステップS1で、電力値Aを検出する。つまり、プロセッサ24は、検波回路64から出力される電圧値のデータに基づいて、PA52aの反射波の電力値Aを検出する。
【0061】
なお、図示は省略するが、検波回路64からの電圧値のデータを検出する処理が別のタスクで実行されており、この処理で検出された電圧値のデータが電圧値データバッファ342aに記憶される。したがって、プロセッサ24は、電圧値データバッファ342aを参照して、電圧値のデータに基づく電力値Aを検出する。以下、電力値Bを検出する場合も同様である。
【0062】
次のステップS3では、電力値Aが所定の閾値を超えているかどうかを判断する。ステップS3で“NO”であれば、つまり電力値Aが所定の閾値以下である場合には、そのままステップS1に戻る。
【0063】
一方、ステップS3で“YES”であれば、つまり電力値Aが所定の閾値を超える場合には、PA52aが故障していると判断して、ステップS5で、カプラ56aの出力端T1をPA52bの入力端側に接続する切替信号をセレクタ54に出力する。したがって、セレクタ54では、カプラ56aの出力端T1がPA52bの入力端に接続される。次のステップS7では、通話終了かどうかを判断する。ここでは、プロセッサ24は、キー入力装置26の終話キーがオンされたり、通話相手の電話機からの通話終了信号を受信したりしたかどうかを判断する。
【0064】
ステップS7で“YES”であれば、つまり通話終了であれば、ステップS9で、LTE信号処理回路62の出力端T11をPA52bの入力端に接続する切替信号をセレクタ54に出力する。そして、ステップS11で、修理すべきことを報知して、ステップS1に戻る。上述したように、ステップS11では、プロセッサ24は、なるべく早く修理に出すべき旨のメッセージをディスプレイ30に表示したり、その旨を示す音を図示しないスピーカから出力したりする。
【0065】
一方、ステップS7で“NO”であれば、つまり通話終了でなければ、ステップS13で、電力値Bを検出する。つまり、プロセッサ24は、検波回路64から出力される電圧値のデータに基づいて、PA52bの反射波の電力値Bを検出する。次のステップS15では、電力値Bが所定値よりも大きいかどうかを判断する。
【0066】
ステップS15で“NO”であれば、つまり電力値Bが所定の閾値以下であれば、そのままステップS7に戻る。一方、ステップS15で“YES”であれば、つまり電力値Bが所定の閾値を超えている場合には、PA52bも故障していると判断して、ステップS17で、通話出来ないことと、修理に出すべきことを報知して、選択処理を終了する。上述したように、ステップS17では、プロセッサ24は、通話出来ない旨および修理に出すべき旨のメッセージをディスプレイ30に表示したり、その旨を示す音を図示しないスピーカから出力したりする。
【0067】
第1実施例によれば、カプラをパワーアンプの入力端側に配置するので、このパワーアンプの故障を検出することができる。つまり、送信系の故障を確実に検出することができる。したがって、送信系を切り替えることにより、確実に音声通話に実行することができる。
<第2実施例>
図5に示すように、第2実施例の携帯電話機10では、無線通信回路14において、セレクタ54と、LTE信号処理回路62および検波回路64との間に、さらにカプラ56bを設けるようにした以外は、上述の第1実施例と同様であるため、重複した説明は省略する。
【0068】
図5に示すように、カプラ56bの入力端には、LTE信号処理回路62の出力端T11が接続される。カプラ56bの出力端T4はセレクタ54に接続される。カプラ56bの出力端T5は、検波回路64に接続される。また、カプラ56bの出力端T6は、終端抵抗R2を介して接地される。
【0069】
したがって、第2実施例では、カプラ56bの出力端T5から出力された出力信号も、検波回路64に入力される。検波回路64では、カプラ56bからの出力信号を電圧値に変換し、変換した電圧値のデータをプロセッサ24に与える。通常は、カプラ56bの出力端子T4はPA52bの入力端に接続されるため、プロセッサ24は、PA52bの反射波の電力値Bを検出する。プロセッサ24は、検出したPA52bの反射波の電力値Bが所定の閾値を超える場合には、PA52bが故障していると判断する。
【0070】
また、第2実施例では、セレクタ54は、プロセッサ24からの切替信号に従って、カプラ56bの出力端T4をPA52aの入力端に接続することが可能である。したがって、プロセッサ24は、PA52bが故障していると判断すると、セレクタ54に、カプラ56bの出力端T4をPA52aの入力端に接続する切替信号を出力する。
【0071】
ただし、音声通話が行われている場合には、PA52bが故障し、データ通信を実行するタイミングになったとしても、プロセッサ24は切替信号を出力せずに、音声通話を継続する。また、PA52bが故障し、カプラ56bの出力端T4がPA52aの入力端に接続され、データ通信が行われている場合に、音声通話(通話処理)が開始されると、セレクタ54は切り替えられ、カプラ56aの出力端T1がPA52aの入力端に接続される。つまり、第1実施例と同様に、音声通話が優先されるのである。
【0072】
図6および図7は、第2実施例のプロセッサ24の選択処理のフロー図である。以下、第2実施例の選択処理について説明するが、第1実施例で説明した処理と同じ処理については簡単に説明することにする。
【0073】
図6に示すように、プロセッサ24は、選択処理を開始すると、ステップS31で、電力値Aおよび電力値Bを検出する。つまり、プロセッサ24は、PA52aの反射波の電力値Aと、PA52bの反射波の電力値Bとを検出する。次のステップS33では、電力値Aが所定の閾値を超えているかどうかを判断する。
【0074】
ステップS33で“NO”であれば、そのまま図7に示すステップS51に進む。一方、ステップS33で“YES”であれば、PA52aが故障していると判断して、ステップS35で、電力値Bが所定の閾値を超えているかどうかを判断する。ステップS35で“YES”であれば、PA52bも故障していると判断して、ステップ37で、通話出来ないことと、修理すべきことを報知して、選択処理を終了する。
【0075】
一方、ステップS35で“NO”であれば、ステップS39で、カプラ56aの出力端T1をPA52bの入力端に接続する切替信号をセレクタ54に出力する。続くステップS41では、通話終了かどうかを判断する。ステップS41で“YES”であれば、ステップS43で、LTE信号処理回路62の出力端T11をPA52bの入力端に接続する切替信号をセレクタ54に出力し、ステップS45で、修理するべきことを報知して、ステップS31に戻る。
【0076】
また、ステップS41で“NO”であれば、ステップS47で、電力値Bを検出する。そして、ステップS49で、電力値Bが所定の閾値を超えているかどうかを判断する。ステップS49で“YES”であれば、PA52bも故障したと判断して、ステップS37に進む。一方、ステップS49で“NO”であれば、ステップS41に戻る。
【0077】
図7に示すように、ステップS51では、電力値Bが所定の閾値を超えたかどうかを判断する。ステップS51で“NO”であれば、そのまま図6に示したステップS31に戻る。一方、ステップS51で“YES”であれば、PA52bが故障していると判断して、ステップS53で、通話中かどうかを判断する。ここでは、プロセッサ24は、他のタスクで通話処理を実行中であるかどうかを判断するのである。
【0078】
ステップS53で“YES”であれば、つまり通話中であれば、そのままステップS31に戻る。つまり、音声通話が優先される。一方、ステップS53で“NO”であれば、つまり通話中でなければ、ステップS55で、カプラ56bの出力端T4をPA52aの入力端に接続する切替信号をセレクタ54に出力する。次のステップS57では、データ通信を終了したかどうかを判断する。ここでは、プロセッサ24は、他のタスクで実行中のデータ通信処理を終了したかどうかを判断する。
【0079】
ステップS57で“YES”であれば、つまりデータ通信の終了であれば、後述するステップS65に進む。一方、ステップS57で“NO”であれば、つまりデータ通信の実行中であれば、ステップS59で、通話開始かどうかを判断する。ここでは、プロセッサ24は、別のタスクで通話処理が開始されたかどうかを判断する。
【0080】
ステップS59で“NO”であれば、つまり通話開始でなければ、ステップS61で、電力値Aを検出する。そして、ステップS63で、電力値Aが所定の閾値を超えたかどうかを判断する。ステップS63で“NO”であれば、そのままステップS55に戻る。一方、ステップS63で“YES”であれば、PA52aも故障すれば、図6に示したステップS37に進む。
【0081】
一方、ステップS59で“YES”であれば、つまり通話開始であれば、ステップS65で、カプラ56aの出力端T1をPA52aの入力端に接続する切替信号をセレクタ54に出力する。つまり、データ通信中であっても、通話処理が優先される。そして、ステップS67で、修理するべきことを報知して、ステップS31に戻る。
【0082】
第2実施例においても、第1実施例と同様に、音声通話の送信系のパワーアンプの入力端側にカプラを配置するので、このパワーアンプを含む送信系の故障を容易に検出することができる。したがって、送信系を切り替えることにより、確実に音声通話を実行することができる。
【0083】
また、第2実施例では、データ通信についての送信系のパワーアンプの入力端側にもカプラを設けるので、このパワーアンプを含む送信系が故障した場合には、送信系を切り替えることにより、確実にデータ通信を実行することができる。
【0084】
なお、上述の実施例では、CDMA方式で音声通話の処理を実行し、LTE方式でデータ通信の処理を実行するようにしたが、これらは単なる一例であり、限定されるべきでない。たとえば、W−CDMA方式、GSM方式、TDMA方式、FDMA方式およびPHS方式のような他の方式を採用することもできるが、この実施例では、送信系を切り替えるようにするため、音声通話とデータ通信とは同じ周波数帯に設定する必要がある。
【0085】
また、以上の説明で挙げた具体的な数値は、いずれも単なる一例であり、製品の仕様などの必要に応じて適宜変更可能である。
【符号の説明】
【0086】
10 …携帯電話機
14 …無線通信回路
18 …マイク
22 …スピーカ
24 …プロセッサ
26 …キー入力装置
28 …表示ドライバ
30 …ディスプレイ
32 …フラッシュメモリ
34 …RAM
50a,50b …デュプレクサ
52a,52b …パワーアンプ
54 …セレクタ
56a,56b …カプラ
58 …RFIC

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1アンテナと、
第2アンテナと、
前記第1アンテナに接続された第1増幅器と、
前記第2アンテナに接続された第2増幅器と、
前記第1アンテナおよび前記第2アンテナに送信信号を出力する出力部と、
前記出力部から出力された送信信号の出力先として前記第1アンテナまたは前記第2アンテナを選択する選択部と、
前記第1増幅器の入力側に配置された第1結合器と、
前記第1結合器から出力された第1信号に基づいて前記選択部の選択を制御する制御部を備える、通信端末。
【請求項2】
前記制御部は、前記出力部から出力される前記送信信号が音声信号であり、かつ前記選択部によって当該送信信号の出力先として前記第2アンテナが選択されているとき、当該選択部の選択を制御しない、請求項1記載の通信端末。
【請求項3】
前記第2増幅器の入力側に配置された第2結合器をさらに備え、
前記制御部は、前記第1信号および前記第2結合器から出力された第2信号の少なくとも一方に基づいて前記選択部の選択を制御する、請求項1または2記載の通信端末。
【請求項4】
通話中かどうかを判断する通話中判断部をさらに備え、
前記制御部は、前記出力部から出力される前記送信信号が音声信号以外の他の信号であり、前記通話中判断部によって通話中でないことが判断されたとき、当該他の信号の出力先として前記第1アンテナを選択するように前記選択部を制御する、請求項3記載の通信端末。
【請求項5】
前記送信信号は、音声信号および音声信号以外の他の信号を含み、
通話開始かどうかを判断する通話開始判断部をさらに備え、
前記制御部は、前記出力部から出力される前記他の信号の出力先として前記第1アンテナが選択されている場合に、前記通話開始判断部によって通話開始が判断されたとき、前記出力部から出力される音声信号の出力先として前記第1アンテナを選択するように前記選択部を制御する、請求項3または4記載の通信端末。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−30836(P2013−30836A)
【公開日】平成25年2月7日(2013.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−163508(P2011−163508)
【出願日】平成23年7月26日(2011.7.26)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.GSM
【出願人】(000006633)京セラ株式会社 (13,660)
【Fターム(参考)】