通話規制方法
【課題】電話番号などの事前登録を必要とせず、地震災害発生時の通話が確立し難い状況においても、通話の重要度を認識・判断しつつ、通話の輻輳を軽減し、本当に必要な重要度の高い通話を接続確立させることができる技術を提供する。
【解決手段】本通話規制方法では、携帯端末の通話の制御において、地震計測システムからの地震データをもとに、携帯端末に対応付けられるエリアごとの震度等を認識する。震度等から当該エリアに関わる通話の優先度を判断及び設定する。交換機では、優先度に応じた通話の接続確立及び規制の制御(接続制限処理)を行う。これにより、地震災害発生時に通話需要が増加した状況でも、重要度の高い通話、即ち優先度の高い通話を、優先的に接続確立させる。
【解決手段】本通話規制方法では、携帯端末の通話の制御において、地震計測システムからの地震データをもとに、携帯端末に対応付けられるエリアごとの震度等を認識する。震度等から当該エリアに関わる通話の優先度を判断及び設定する。交換機では、優先度に応じた通話の接続確立及び規制の制御(接続制限処理)を行う。これにより、地震災害発生時に通話需要が増加した状況でも、重要度の高い通話、即ち優先度の高い通話を、優先的に接続確立させる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、通信システムにおける携帯端末間の通話やその輻輳などを制御する技術に関し、特に、通話需要が増加・集中する場合の通話規制(制限)に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、大規模な地震災害が生じると、すぐに、被災者及び被災地域の安否確認・報告等のため、携帯電話網における通話需要(発着信)が急増する。これにより通話要求が無線回線の許容量を上回り、通話が確立し難い状況となることが予想される。
【0003】
そういった状況下では、例えば緊急を要する被災者の安否確認・報告等の通話が発生するが、このような通話も、他の通常の一般的なものと同等に扱われてしまう。これでは上記安否確認等のような本当に必要な通話、重要度が高いと考えられる通話が確立しない可能性がある。
【0004】
特開2001−186254号公報(特許文献1)には、災害時における電話回線の通話を規制する方法として、通話規制時間を用いる技術が記載されている。
【特許文献1】特開2001−186254号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前記特許文献1の技術では、事前に登録した電話番号のみつながる不公平を改善するため、強制的に通話時間を均等に制限することにより接続の不公平を解消している。
【0006】
しかしながら、前記特許文献1の方法では、前述のような本当に必要な通話、重要度の高い通話も、通常の一般的な通話と同様に扱われ、通話時間が制限されてしまう不具合があった。
【0007】
本発明は以上のような問題に鑑みてなされたものであり、その目的は、電話番号などの事前登録を必要とせず、地震災害発生時の通話が確立し難い状況においても、通話の重要度を認識・判断しつつ、通話の輻輳を軽減し、本当に必要な重要度の高い通話を接続確立させることができる技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本願において開示される発明のうち、代表的なものの概要を簡単に説明すれば、次のとおりである。前記目的を達成するために、本発明は、無線通信システム(携帯電話網)の携帯端末(携帯電話機)の通話及びその輻輳の制御などに係わる技術であって、以下に示す技術的手段を備えることを特徴とする。
【0009】
本発明の通話規制方法では、地震災害発生時に携帯端末の通話需要が増加・集中して、通常時のように余裕を持って、無線回線(無線チャネル等)を割り当てて通話接続確立することが難しい状況となった場合でも、以下のように通話接続確立及び通話規制(制限)の制御処理を行うことによって、当該状況に対処して輻輳を軽減するものである。
【0010】
本方法では、まず、携帯端末に対応付けられるエリアまたは位置、例えば交換機の管轄する通話エリア等に対して、震度などの地震状況を表す情報が対応付けられる。例えば気象庁の地震計測システムと連携することにより、日時、震度、エリア/位置情報などを含む最新の地震データを受信または取得する。そして、本方法では、そのエリア/位置の地震状況に応じて、通話及びその接続確立の優先度を、判断及び設定する。例えば、震度が大きいエリアでは、通話需要、発着信の必要性が高く、優先度が高いと決定付ける。また、例えば、発信元と着信先のエリアの両方の震度をみて、通話の接続確立の優先順位や、通話の規制の待ち時間を決定する。このような優先度の設定によって、本当に必要な重要度の高い通話及びそうでない一般的な通話を、類推的に判別するものである。
【0011】
そして、本方法では、通話要求の発生、即ち携帯端末からの発信に対し、上記優先度に応じて、通話の接続確立及び規制の制御処理を行う。これにより、重要度の高いと判別された通話、即ち優先度の高い通話は、優先的に接続確立され、また、そうでないと判別された通話は規制される。これらにより、特に、規模の大きな地震被災地及び被災者における安否確認等の本当に必要な通話が接続確立しやすくなることを実現する。
【0012】
本方法では、例えば、通話エリア及び無線基地局群などを管轄して通話接続の交換制御を行う交換機において、前記優先度に応じた一連の制御を行う。例えば、交換機は、無線基地局などを介して発信元の携帯端末から発信データを受けると、制御情報を参照して、発信元と着信先の携帯端末のエリア/位置に応じて、優先度を認識し、それに応じてその通話要求を処理する。例えば、複数の通話要求に対して、優先度が高いものは、優先順位に従って待ち時間無しで接続確立し、優先度が低いものは、接続確立せず待ち時間を設けて規制する。
【0013】
また、エリア/位置の震度のランクなどに応じて、前記優先度による制御が有効に継続・起動する制限時間を設定して制御を実行し、地震状況の変化にも対処する。
【発明の効果】
【0014】
本願において開示される発明のうち、代表的なものによって得られる効果を簡単に説明すれば以下のとおりである。本発明によれば、電話番号などの事前登録を必要とせず、地震災害発生時の通話が確立し難い状況においても、通話の重要度を認識・判断しつつ、通話の輻輳を軽減し、本当に必要な重要度の高い通話を接続確立させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、実施の形態を説明するための全図において、同一部には原則として同一符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。
【0016】
図1〜図12を用いて、本発明の一実施の形態の通話規制方法及びその方法に従って制御を行う通信システムを説明する。本実施の形態は、特徴として、携帯電話網の交換機で主に制御するものであり、携帯端末に対応するエリアの震度をもとにした優先度に応じて、通話規制及び接続確立の制御を行う。
【0017】
<システム>
図1において、本通信システムの全体の構成を説明する。本通信システムは、公衆網107を含んで構成される携帯電話網を中心とした構成例を示している。公衆網107には、複数の交換機103、及び気象庁−地震計測システム106が接続されている。交換機103には、無線制御局102が接続されており、無線制御局102には、複数の無線基地局101が接続されている。無線基地局101に対し、ユーザ(例:U1,U2)が使用する携帯端末(携帯電話機)100が無線接続される。交換機103には、ホームメモリ局104及び制御DB(データベース)105が接続もしくは内蔵されている。無線制御局102が管轄・カバーするエリア(例:A1,A2)を有する。
【0018】
ユーザ(例:U1)が使用する携帯端末100からの発信については、その発信元の携帯端末100が位置しているエリア(例:A1)の無線制御局102と交換機103が、近傍の無線基地局101に通話のための無線回線(無線チャネル等)の設定(割り当て)を要求する。そして、発信元に対して、着信先の携帯端末100を、着信先のエリア(例:A2)の無線基地局101、無線制御局102、及び交換機103を介して接続する。
【0019】
制御DB105は、本システムでの特徴的な制御のための情報を保持するものであり、気象庁−地震計測システム106から、日本全国の地震データを受信する。制御DB105と気象庁−地震計測システム106は、常時接続状態であり、制御DB105は、常に最新の地震データを受信及び保持する。
【0020】
ホームメモリ局104は、公知の交換制御のための情報を保持しており、全ての携帯端末100の位置情報、通話記録(発信記録)などを保持する。位置情報は、例えば、無線基地局情報である。
【0021】
発信の場合、発信元の携帯端末100が位置しているエリア(例:A1)の交換機103は、ホームメモリ局104から発信元の携帯端末100の位置情報と着信先情報を得る。そして、この得た情報から、発信元の無線基地局101のエリア(例:A1)に地震災害が生じているか、その規模はどの程度か、また、着信先の携帯端末100が属する交換機103のエリア(例:A2)に地震災害が生じているか等を、制御DB105に対して問い合わせる。
【0022】
着信の場合、着信先の携帯端末100が位置しているエリア(例:A2)の交換機103が、無線制御局102を介して配下の全ての無線基地局101に対して、無線回線の設定を要求する。そして、その無線基地局101は、自身のエリア(無線セル等)内の全ての携帯端末100に対して一斉呼び出しを行う。そして、着信先の携帯端末100が応答することにより接続が確立される。
【0023】
<携帯端末>
図2において、携帯端末(携帯電話機)100の構成は、制御部210、メモリ220、無線通信部230、記憶部240、入力部250、及び出力部260等から構成される、一般的な携帯型通信端末装置である。無線通信部230を通じて、無線基地局101との間で無線通信処理を行うことにより、発着信を含む通話機能を実現する。
【0024】
<交換機>
図3において、交換機103の構成を説明する。交換機103は、制御部310、メモリ320、通信部330、入力部340、及び出力部350等から構成される。制御部310は、制御DB105等を参照して、本方法で特徴的な制御を行う。
【0025】
気象庁−地震計測システム106は、DBに常に最新の地震データ410を保持する。交換機103は、気象庁−地震計測システム106と常時相互接続し、常に最新の地震データ410を受信して制御DB105に保持する。また、交換機103は、ホームメモリ局104と制御DB105を参照し、携帯端末100による通話要求に対して優先度を付加して、通話要求に対する通話確立を調整する。
【0026】
ホームメモリ局104は、携帯端末100に関する、端末位置情報テーブル910と、発信記録テーブル1010を保持する。発信記録テーブル1010は、発信データの内容が保持される。
【0027】
制御DB105は、交換機震度対応テーブル510、震度分類テーブル610、優先度基準テーブル710、交換機通信情報テーブル810を保持する。
【0028】
本実施の形態では、主となる制御手段を、交換機103及び制御DB105としているが、これは一例であって、ホームメモリ局104や無線基地局101などの他の装置で行う形態としてもよい。
【0029】
<地震データ>
図4において、気象庁−地震計測システム106が保持している、地震データ410のテーブル例を示している。このデータ項目には、観測点名称411、震度(計測震度)412、及び震度計測日時413等が有り、常に最新の地震情報に更新されている。交換機103は、気象庁−地震計測システム106のDBから、これらのデータを受信し、制御DB105の交換機震度対応テーブル510に書き込む。震度412は、マグニチュード等の単位である。地震データ410の受信方法は、気象庁の公開データの入手方法に従っても可能であるが、公知であるファイルのダウンロード技術や通信パケットによる伝送技術によっても可能である。
【0030】
<交換機震度対応テーブル>
図5において、制御DB105が保持している交換機震度対応テーブル510の例を示している。このテーブルでは、交換機103及びそのエリアに対して、震度等の地震情報が対応付けられる。このデータ項目には、交換機設置場所511毎に、交換機番号512、その配下の無線制御局番号513、その配下の無線基地局番号514、震度(計測震度)515、及び震度計測日時516等が有る。これらの情報は、気象庁−地震計測システム106から受信する地震データ410をもとに書き込まれる。交換機設置場所511は、制御単位となるエリアに対応付けられる。
【0031】
<震度分類テーブル>
図6において、制御DB105が保持している震度分類テーブル610の例を示している。このテーブルでは、震度に応じてランクに分類しており、ランク別に対応付けられる制御の制限時間を表している。このデータ項目には、ランク611別に、計測震度(震度)612、及び制限時間613が有る。例えば震度612が7.0以上の場合、最上位のランク611である「A」に分類され、その制限時間613が6時間になる。ランク611は、優先度の対応付けに用いる。制限時間613は、詳しくは後述するが、ランク611に応じて、通話規制の制御を実施する期間、即ち、当該交換機103において、本方法及びシステムの制御が有効に継続・起動する時間を決めるものである。
【0032】
<優先度基準テーブル>
図7において、制御DB105が保持している優先度基準テーブル710の例(震度7以上の場合)を示している。このテーブルでは、ランク611と優先度を対応付けている。このデータ項目には、優先順位(接続優先順位)711別に、待ち時間712、発信元ランク713、及び着信先ランク714が有る。これらのデータをもとに、交換機103で通話規制(制限)を実施する。
【0033】
優先順位711は、優先度に対応しており、通話要求に対する通話接続確立の優先順位である。待ち時間712は、通話要求に対して通話接続確立を規制する際における待ち時間である。これが例えば0の場合は、待たせずにすぐに接続確立し、例えば1の場合は、地震や輻輳の旨のメッセージを流す等して、1時間後まで接続確立を無効にする。発信元ランク713は、発信元のエリアのランク611、着信先ランク714は、着信先のエリアのランク611である。
【0034】
本例では、発信元ランク713及び着信先ランク714ともに「A」の場合、接続優先順位711を「1」(最上位)とする。ランク611の組み合わせで優先順位711が変わる。また、発信元ランク713が「A」または「B」では、待ち時間712が0になり、「C」では1時間になる。
【0035】
<交換機通信情報テーブル>
図8において、制御DB105が保持している交換機通信情報テーブル810の例を示している。このテーブルでは、通話要求(発信データ)ごとに接続状況などの情報をまとめている。このデータ項目には、通話要求毎に、発信日時811、交換機番号812、発信元電話番号813、着信先電話番号814、発信元ランク815、着信先ランク816、優先順位(接続優先順位)817、接続状態818、及び待ち時間819等が有る。
【0036】
通話要求を受けた交換機103は、その通話要求の発信データ(携帯端末100から発信して交換機103へと流れるデータ)から、前述の各テーブルを参照し、接続状況を本交換機通信情報テーブル810に書き込む。
【0037】
図9,図10において、ホームメモリ局104が保持している端末位置情報テーブル910,発信記録テーブル1010を示している。
【0038】
図9の端末位置情報テーブル910では、当該エリア及び交換機103において、携帯端末100がどの無線基地局102に属しているか(無線接続されるか)を表している。このデータ項目には、携帯端末100毎に、登録電話番号911、及び無線基地局番号912が有る。登録電話番号911は、その時点で当該エリア及び交換機103に登録される携帯端末100の電話番号である。
【0039】
図10の発信記録テーブル1010では、携帯端末100からの発信データをもとに発信記録を保存している。このデータ項目には、発信要求毎に、発信日時1011、発信元電話番号1012、及び着信先電話番号1013が有る。
【0040】
なお、地震の場所(411)と交換機103の設置場所(511)とは、名称(例:X市)で一致させているが、緯度・経度の情報などでも可能である。
【0041】
<状態遷移>
次に、図11において、携帯端末100、無線基地局101、無線制御局102、交換機103、ホームメモリ局104、制御DB105、及び気象庁−地震計測システム106の間での状態遷移(制御の概略)を説明する。
【0042】
まず、携帯端末100と無線基地局101及び無線制御局102とは、相互接続状態である(S1101)。以下Sは処理ステップ等を表す。また、交換機103は、無線基地局101及び無線制御局102を通じて、携帯端末100の位置情報を得る(S1102)。
【0043】
また、交換機103と制御DB105は、相互接続状態である(S1103)。また、交換機103とホームメモリ局104は、相互接続状態である(S1104)。
【0044】
一方、交換機103は、気象庁−地震計測システム106から、随時、地震データ410を受信する(S1105)。
【0045】
交換機103は、上記の情報(位置情報、制御DB情報、ホームメモリ局情報、地震データ410など)、特に最新の地震データ410から、本制御での制限(優先度による通話規制)の開始を判断する地震データ判定処理を行う(S1106)。この処理結果に応じて、交換機103は、接続制限処理を実行する(S1108)。交換機103は、制限の必要が無ければ、通常動作状態となり、制限が必要であれば、接続制限処理状態となる。特に最新の地震データ410の受信が、本制御及び処理のトリガとなる。
【0046】
また他方、携帯端末100では、任意タイミングで、ユーザの発信操作に応じた発信動作により、発信データが交換機103に向けて送信される(S1107)。この時、当該エリアの交換機103が、接続制限処理(S1108)を行っているものとする。接続制限処理(S1108)において、交換機103は、発信データの受信に対して、優先度に応じた通話接続確立の処理を実行する。即ち、S1109以降で、優先度が高い場合、発信元と着信先の携帯端末100における通話接続確立が行われ、優先度が低い場合、接続確立は行われない。
【0047】
また、この接続制限処理(S1108)の実施時間は、前記制限時間613に従うものであり、交換機103は、接続制限状態のタイムアウトを判断する。タイムアウトにより接続制限解除後も、最新の地震データ410等に基づき、同様の制御を繰り返す。また、或る制限時間613での制御処理を実施中に、最新の地震データ410を受信して地震の状況が変化した場合には、それに対応して制御処理内容を更新する。
【0048】
<処理フロー>
次に、図12において、交換機103における地震データ判定(S1106)及び接続制限処理(S1108)の詳しい処理フローを説明する。
【0049】
地震データ判定(S1106)において、まず、S1201では、交換機103が、相互接続している気象庁−地震計測システム106から、地震データ410を前述の方法にて受信する。
【0050】
S1202では、当該エリアに関する制限システム(前記制限時間613による通話規制)が起動中(有効状態)かどうか判断する。起動中でない場合(N)、S1203へ進む。
【0051】
そして、S1203では、当該受信した地震データ410を制御DB105へ登録する処理を行う(制限システムを更新する)。即ち、当該受信した地震データ410の内容から、制御DB105の交換機震度対応テーブル510の内容を更新する。
【0052】
次に、S1204では、受信した地震データ410に更新があった場合に、その更新データをもとに、制御DB105の震度分類テーブル610により、ランク611等の対応付けを行う。本例では、このランク611が「C」の場合と、「A」,「B」の場合とで処理を分岐する。
【0053】
S1204で、ランク611が「C」の場合(Y)、S1205で、該当エリアへの制限処理を実行せずに通常動作する(前記制限時間613が0)。
【0054】
S1204で、ランク611が「A」または「B」の場合(N)、S1206以降で、該当エリアへの制限処理を実行する。この制限処理の続く期間は、制御DB105の震度分類テーブル610の制限時間613の値を参照してそれに従う。
【0055】
一方、前記S1202で起動中の場合(Y)、S1216で、当該エリアに関するランクが、現在の起動中の制限システムのランクより上かどうか判断する。これは、最新の地震データ410をもとに、同エリアに関して、地震のランク611がより大きくなった場合、制限の制御内容を更新し、地震のランク611が同じ又は小さい場合は、過去の制限の制御内容を更新せずに継続するものである。
【0056】
S1216で、現在のランクよりも上ではない場合(N)、S1217で、当該受信した地震データ410を破棄(無視)して現在の制限システムを継続する。現在のランクよりも上の場合(Y)、S1218で、当該受信した地震データ410を制御DB105へ登録する処理を行う(制限システムを更新する)。そして、S1219で、制限処理の経過時間をカウントしている制限タイマをクリアして0にし、S1206以降で、更新された制限時間613での当該エリアへの制限処理を実行する。
【0057】
接続制限処理(S1108)において、S1206では、ランク611及び制限時間613に応じた制限システムを起動し、S1207で、制限タイマのカウントを開始する。
【0058】
制限システム起動中において、携帯端末100から、無線基地局101及び無線制御局102を経て、交換機103に対し、発信(通話要求)が行われると(S1107)、以下のように処理する。まず、S1208で、交換機103は、携帯端末100から受信した発信データの内容を、ホームメモリ局104の発信記録テーブル1010に登録する。
【0059】
次にS1209で、当該通話要求を受けている交換機103は、ホームメモリ局104の端末位置情報テーブル910及び発信記録テーブル1010から、発信元電話番号1012、着信先電話番号1013、及びそれらに対応する無線基地局番号912を得る。そして、当該交換機103は、それら電話番号と震度などとを照合する処理を行う。即ち、当該交換機103は、その無線基地局番号912から、制御DB105の交換機震度対応テーブル510を参照し、当該通話要求で接続対象となる無線基地局101(着信先の携帯端末100と接続するもの)の属するエリア/位置に地震が発生しているかどうか及びその震度等を参照・確認する。そして、これらの値を、交換機通信情報テーブル810へ入力・格納する。
【0060】
次にS1210で、当該交換機103は、制御DB105の交換機通信情報テーブル810から、次の順番(発信日時811)の通話要求レコードを参照し、発信元ランク815及び着信先ランク816がともに「C」であるかどうかを確認する。上記ともに「C」である場合(Y)、当該発信元及び着信先のエリアで少なくとも大きな地震災害は発生していない状況であるから、S1211で、当該交換機103は、通常動作となる。
【0061】
上記ともに「C」である以外の場合(N)、S1212で、当該交換機103は、当該発信元及び着信先のエリアの少なくとも一方で所定震度以上の大きな地震災害が発生している状況であるから、制御DB105の交換機通信情報テーブル810を参照して、優先度に対応する優先順位817に従った接続確立及び制限の処理を実施する。ここでの優先度の基準は、前記優先度基準テーブル710の通りである。
【0062】
次にS1213で、当該交換機103は、制限時間613による接続制限状態(制限システムの起動時間)のタイムアウトを判断する。まだタイムアウトにならない時は(N)、接続制限状態を持続し、S1208以降の同様の処理を繰り返す。タイムアウトとなる場合は(Y)、S1214で制限タイマのクリアによって、S1215で接続制限状態を解除、即ち当該制限システムを起動終了する。その後、S1201に戻り(A)、気象庁−地震計測システム106からの最新の地震データ410の受信をもとに、同様の制御処理を行う。
【0063】
上記処理において、当該交換機103は、制御DB105の交換機震度対応テーブル510から、上記タイムアウトとなる制限時間613切れのレコードを検索する。上記タイムアウトの判断では、交換機震度対応テーブル510から対象の交換機レコードを抽出し、計測震度515をもとに、震度分類テーブル610を参照して制限時間613を得る。そして、この制限時間613の値と、交換機震度対応テーブル510の震度計測日時516とを比較することにより、タイムアウトを判断する。該当交換機103のタイムアウトのレコードがある場合は削除し、気象庁−地震計測システム106から最新の地震データ410を受信する。同様のタイムアウトのレコードが無い場合は、接続制限状態を持続する。
【0064】
<処理例>
次に、以上のような構成における、具体的なイベントケース及び処理例を、以下説明する。
【0065】
(1) まず、2006年5月24日17時30分に、X市に、震度7.5の地震が発生したとする(イベントE1とする)。ここで以下、X市は、図1のエリアA1,A2を含むものとする。そして、エリアA1のユーザU1の携帯端末100(M1とする)からエリアA2のユーザU2の携帯端末100(M2とする)に対して通話接続する場合を考える。
【0066】
交換機103の制御DB105は、気象庁−地震計測システム106から、上記イベントE1についての地震データ410を受信する。交換機103は、当該エリアに関わる制限システムの起動状況を確認する。この確認の結果、現在、制限システムが未起動の状況であるとする。
【0067】
交換機103は、制御DB105の交換機震度対応テーブル510における交換機設置場所511が「X市」であるデータレコードを更新する(トリガ定義済み)。即ち、そのデータレコードは、震度515が「7.5」、震度計測日時516が「2006/5/24 17:30」に更新される。
【0068】
そして、震度515が「7.5」の場合、震度分類テーブル610から、計測震度612が「7.0〜」(7.0以上)でランク611が「A」に該当し、制限時間613が「6h」(6時間)に対応付けられる。
【0069】
上記から、本システムは、「X市」に対応付けられるエリア群(例:A1,A2)について、交換機103での接続制限を開始する(制限システムを起動する)。この制御における制限が持続する時間は、制限時間613の設定に従い、基本として、開始時点から6時間後までとなる。
【0070】
(2) 次に、2006年5月24日17時35分に、電話番号「090-1111-111A」の携帯端末100(M1)から、電話番号「090-1111-111B」の携帯端末100(M2)へと、発信(通話要求)したものとする(イベントE2とする)。
【0071】
上記発信元の携帯端末100(M1)からの発信データが、無線基地局101等を経由して、当該携帯端末100(M1)が属するエリアA1の該当交換機103(発信元の交換機103とする)に到達すると、その交換機103のホームメモリ局104では、一般的な携帯電話網の制御処理として、発信データをもとに発信記録テーブル1010が記録済みになる。ホームメモリ局104は、発信記録テーブル1010において、発信日時1011に「2006/5/24 17:35」、発信元電話番号1012に「090-1111-111A」、着信先電話番号1013に「090-1111-111B」を記録する。
【0072】
上記発信元の交換機103は、上記発信データから、通話要求相手先(着信先)の電話番号「090-1111-111B」がわかるので、この着信先電話番号1013を検索キーとして、ホームメモリ局104の端末位置情報テーブル910から検索する。これにより、着信先の携帯端末100(M2)の属するエリアA2の無線基地局番号912として「1000-12」を得る。
【0073】
そして、発信元の交換機103は、上記無線基地局番号912である「1000-12」を検索キーとして、制御DB105の交換機震度対応テーブル510から、着信先の携帯端末100(M2)の属するエリアA2を管轄する該当交換機103(着信先の交換機103とする)の設置場所(エリア)に地震が起きているかどうかを確認する。本例では、無線基地局番号912が「1000-12」のエリアでは、日時「2006/5/24 17:30」に、震度515が「7.5」の地震が起きていることがわかり、また、この無線基地局101が属する交換機番号512が「1000」であることがわかる。
【0074】
また、着信先のエリアA2の震度「7.5」は、制御DB105の震度分類テーブル610から、ランク611が「A」であることがわかる。また、発信元のエリアA1の交換機103は、前述のイベントE1のように、ランク611が「A」で接続制限を実施中である。
【0075】
上記のように、発信元のエリアA1がランク「A」、着信先のエリアA2がランク「A」となる。これらの情報をもとに、制御DB105の優先度基準テーブル710及び交換機通信情報テーブル810から、本通話要求の処理は、通話接続確立に関する優先順位711,817が「1」(最優先)であり、待ち時間712,819が「0」(無し)であることがわかる。この待ち時間712,819は、発信元のエリアA1の交換機103が着信先に対して発信処理開始するまでの待ち時間である。即ち、本例では、当該発信元のエリアA1の交換機103は、着信先のエリアA2の交換機103に対して、待ち時間無しにすぐに発信処理(接続確立要求など)する。これによって、発信元と着信先の携帯端末100(M1,M2)間の接続確立の処理を行い、すぐに通話が可能になる。
【0076】
発信元のエリアA1の交換機103は、制御DB105の交換機通信情報テーブル810に、各発信データなどを書き込む。即ち、発信日時811に「2006/5/24 17:35」、発信元電話番号813に「090-1111-111A」、着信先電話番号814に「090-1111-111B」を書き込む。また、他のテーブルをもとに、交換機番号812は「1000」、発信元ランク815は「A」、着信先ランク816は「A」、優先順位817は「1」、待ち時間819は「0」などが書き込まれている。また、接続状態818は、当該通話接続処理における状態として、「接続中」(接続確立済みで通話中)が書き込まれる。
【0077】
発信元のエリアA1の交換機103は、制御DB105の交換機通信情報テーブル810をソートして、優先順位817や待ち時間819をもとに発信規制を行う。即ち、優先順位817が低く待ち時間819が大きい発信(通話要求)について、接続確立を規制する。これにより、発信元のエリアA1の交換機103からの発信に起因する輻輳を減らすことができる。
【0078】
その後、イベントE1の規模以上の地震の発生が無く、制限時間613に対応する制限実施経過時間として6時間が経過した場合は、当該エリアに関する制限が解除される(制限システムを終了する)。
【0079】
(3) 次に、2006年5月24日17時40分に、X市に、震度7.7の地震が発生したとする(イベントE3とする)。このイベントE3は、イベントE1の地震の少し後に、更にそれ以上の震度の地震が発生した場合である。
【0080】
交換機103の制御DB105は、気象庁−地震計測システム106から、上記イベントE3の地震データ410を受信する。
【0081】
交換機103は、制限システムの起動状況を確認する。この確認により、現在、前記イベントE1に係わる制限システムが起動中である。
【0082】
制御DB105は、交換機震度対応テーブル510の交換機設置場所511が「X市」であるデータレコードを調べる。今回の震度「7.7」は、前回の震度「7.5」よりも大きい。よって、データレコードを書き換える(トリガ定義済み)。即ち、震度515の「7.5」を「7.7」へ、震度計測日時516の「2006/5/24 17:30」を「2006/5/24 17:40」へと書き換える。
【0083】
上記震度分類テーブル610から、計測震度612が「7.7」の場合、制限時間613が6時間であることがわかる。
【0084】
本システムは、「X市」に対応付けられる交換機103のイベントE1に係わる制限(実施・起動中であったもの)を解除して、新規にイベントE3に係わる制限を開始する。即ち、この新規の制限開始時点から6時間後まで制限を実施する。以降は前記同様の処理である。
【0085】
以上のように、本実施の形態によれば、電話番号などの事前登録を必要とせず、地震災害発生時に、震度、エリア、優先度等の対応付けによって、通話の重要度を認識・判断しつつ、通話需要の増加による通話の輻輳を軽減し、本当に必要な重要度の高い通話を優先的に接続確立させることができる。
【0086】
以上、本発明者によってなされた発明を実施の形態に基づき具体的に説明したが、本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることは言うまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0087】
本発明は、地震に関わる情報処理システム及び携帯電話網に関わる情報処理システムに利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0088】
【図1】本発明の一実施の形態の通話規制方法に従って制御を行う通信システムの全体の構成を示す図である。
【図2】本発明の一実施の形態の通信システムにおける、携帯端末の構成例を示す図である。
【図3】本発明の一実施の形態の通信システムにおける、交換機の構成を示す図である。
【図4】本発明の一実施の形態の通信システムにおける、気象庁−地震計測システムが保持する地震データの構成例を示す図である。
【図5】本発明の一実施の形態の通信システムにおける、制御DBが保持する交換機震度対応テーブルの構成例を示す図である。
【図6】本発明の一実施の形態の通信システムにおける、制御DBが保持する震度分類テーブルの構成例を示す図である。
【図7】本発明の一実施の形態の通信システムにおける、制御DBが保持する優先度基準テーブルの構成例を示す図である。
【図8】本発明の一実施の形態の通信システムにおける、制御DBが保持する交換機通信情報テーブルの構成例を示す図である。
【図9】本発明の一実施の形態の通信システムにおける、ホームメモリ局が保持する端末位置情報テーブルの構成例を示す図である。
【図10】本発明の一実施の形態の通信システムにおける、ホームメモリ局が保持する発信記録テーブル(発信データ)の構成例を示す図である。
【図11】本発明の一実施の形態の通信システムにおける、携帯端末、無線基地局、無線制御局、ホームメモリ局、制御DB、交換機、及び気象庁−地震計測システムの間における状態遷移(制御の概略)を示す図である。
【図12】本発明の一実施の形態の通信システムにおける、交換機での接続制限処理の詳しい処理フローを示す図である。
【符号の説明】
【0089】
100(M1,M2)…携帯端末、101…無線基地局、102…無線制御局、103…交換機、104…ホームメモリ局、105…制御DB、106…気象庁−地震計測システム、107…公衆網、210…制御部、220…メモリ、230…無線通信部、240…記憶部、250…入力部、260…出力部、310…制御部、320…メモリ、330…通信部、340…入力部、350…出力部、410…地震データ、411…観測点名称、412…計測震度(震度)、413…震度計測日時、510…交換機震度対応テーブル、511…交換機設置場所、512…交換機番号、513…無線制御局番号、514…無線基地局番号、515…震度、516…震度計測日時、610…震度分類テーブル、611…ランク、612…計測震度、613…制限時間、710…優先度基準テーブル、711…接続優先順位、712…待ち時間、713…発信元ランク、714…着信先ランク、810…交換機通信情報テーブル、811…発信日時、812…交換機番号、813…発信元電話番号、814…着信先電話番号、815…発信元ランク、816…着信先ランク、817…優先順位、818…接続状態、819…待ち時間、910…端末位置情報テーブル、911…登録電話番号、912…無線基地局番号、1010…発信記録テーブル、1011…発信日時、1012…発信元電話番号、1013…着信先電話番号、A1,A2…エリア、U1,U2…ユーザ。
【技術分野】
【0001】
本発明は、通信システムにおける携帯端末間の通話やその輻輳などを制御する技術に関し、特に、通話需要が増加・集中する場合の通話規制(制限)に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、大規模な地震災害が生じると、すぐに、被災者及び被災地域の安否確認・報告等のため、携帯電話網における通話需要(発着信)が急増する。これにより通話要求が無線回線の許容量を上回り、通話が確立し難い状況となることが予想される。
【0003】
そういった状況下では、例えば緊急を要する被災者の安否確認・報告等の通話が発生するが、このような通話も、他の通常の一般的なものと同等に扱われてしまう。これでは上記安否確認等のような本当に必要な通話、重要度が高いと考えられる通話が確立しない可能性がある。
【0004】
特開2001−186254号公報(特許文献1)には、災害時における電話回線の通話を規制する方法として、通話規制時間を用いる技術が記載されている。
【特許文献1】特開2001−186254号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前記特許文献1の技術では、事前に登録した電話番号のみつながる不公平を改善するため、強制的に通話時間を均等に制限することにより接続の不公平を解消している。
【0006】
しかしながら、前記特許文献1の方法では、前述のような本当に必要な通話、重要度の高い通話も、通常の一般的な通話と同様に扱われ、通話時間が制限されてしまう不具合があった。
【0007】
本発明は以上のような問題に鑑みてなされたものであり、その目的は、電話番号などの事前登録を必要とせず、地震災害発生時の通話が確立し難い状況においても、通話の重要度を認識・判断しつつ、通話の輻輳を軽減し、本当に必要な重要度の高い通話を接続確立させることができる技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本願において開示される発明のうち、代表的なものの概要を簡単に説明すれば、次のとおりである。前記目的を達成するために、本発明は、無線通信システム(携帯電話網)の携帯端末(携帯電話機)の通話及びその輻輳の制御などに係わる技術であって、以下に示す技術的手段を備えることを特徴とする。
【0009】
本発明の通話規制方法では、地震災害発生時に携帯端末の通話需要が増加・集中して、通常時のように余裕を持って、無線回線(無線チャネル等)を割り当てて通話接続確立することが難しい状況となった場合でも、以下のように通話接続確立及び通話規制(制限)の制御処理を行うことによって、当該状況に対処して輻輳を軽減するものである。
【0010】
本方法では、まず、携帯端末に対応付けられるエリアまたは位置、例えば交換機の管轄する通話エリア等に対して、震度などの地震状況を表す情報が対応付けられる。例えば気象庁の地震計測システムと連携することにより、日時、震度、エリア/位置情報などを含む最新の地震データを受信または取得する。そして、本方法では、そのエリア/位置の地震状況に応じて、通話及びその接続確立の優先度を、判断及び設定する。例えば、震度が大きいエリアでは、通話需要、発着信の必要性が高く、優先度が高いと決定付ける。また、例えば、発信元と着信先のエリアの両方の震度をみて、通話の接続確立の優先順位や、通話の規制の待ち時間を決定する。このような優先度の設定によって、本当に必要な重要度の高い通話及びそうでない一般的な通話を、類推的に判別するものである。
【0011】
そして、本方法では、通話要求の発生、即ち携帯端末からの発信に対し、上記優先度に応じて、通話の接続確立及び規制の制御処理を行う。これにより、重要度の高いと判別された通話、即ち優先度の高い通話は、優先的に接続確立され、また、そうでないと判別された通話は規制される。これらにより、特に、規模の大きな地震被災地及び被災者における安否確認等の本当に必要な通話が接続確立しやすくなることを実現する。
【0012】
本方法では、例えば、通話エリア及び無線基地局群などを管轄して通話接続の交換制御を行う交換機において、前記優先度に応じた一連の制御を行う。例えば、交換機は、無線基地局などを介して発信元の携帯端末から発信データを受けると、制御情報を参照して、発信元と着信先の携帯端末のエリア/位置に応じて、優先度を認識し、それに応じてその通話要求を処理する。例えば、複数の通話要求に対して、優先度が高いものは、優先順位に従って待ち時間無しで接続確立し、優先度が低いものは、接続確立せず待ち時間を設けて規制する。
【0013】
また、エリア/位置の震度のランクなどに応じて、前記優先度による制御が有効に継続・起動する制限時間を設定して制御を実行し、地震状況の変化にも対処する。
【発明の効果】
【0014】
本願において開示される発明のうち、代表的なものによって得られる効果を簡単に説明すれば以下のとおりである。本発明によれば、電話番号などの事前登録を必要とせず、地震災害発生時の通話が確立し難い状況においても、通話の重要度を認識・判断しつつ、通話の輻輳を軽減し、本当に必要な重要度の高い通話を接続確立させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、実施の形態を説明するための全図において、同一部には原則として同一符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。
【0016】
図1〜図12を用いて、本発明の一実施の形態の通話規制方法及びその方法に従って制御を行う通信システムを説明する。本実施の形態は、特徴として、携帯電話網の交換機で主に制御するものであり、携帯端末に対応するエリアの震度をもとにした優先度に応じて、通話規制及び接続確立の制御を行う。
【0017】
<システム>
図1において、本通信システムの全体の構成を説明する。本通信システムは、公衆網107を含んで構成される携帯電話網を中心とした構成例を示している。公衆網107には、複数の交換機103、及び気象庁−地震計測システム106が接続されている。交換機103には、無線制御局102が接続されており、無線制御局102には、複数の無線基地局101が接続されている。無線基地局101に対し、ユーザ(例:U1,U2)が使用する携帯端末(携帯電話機)100が無線接続される。交換機103には、ホームメモリ局104及び制御DB(データベース)105が接続もしくは内蔵されている。無線制御局102が管轄・カバーするエリア(例:A1,A2)を有する。
【0018】
ユーザ(例:U1)が使用する携帯端末100からの発信については、その発信元の携帯端末100が位置しているエリア(例:A1)の無線制御局102と交換機103が、近傍の無線基地局101に通話のための無線回線(無線チャネル等)の設定(割り当て)を要求する。そして、発信元に対して、着信先の携帯端末100を、着信先のエリア(例:A2)の無線基地局101、無線制御局102、及び交換機103を介して接続する。
【0019】
制御DB105は、本システムでの特徴的な制御のための情報を保持するものであり、気象庁−地震計測システム106から、日本全国の地震データを受信する。制御DB105と気象庁−地震計測システム106は、常時接続状態であり、制御DB105は、常に最新の地震データを受信及び保持する。
【0020】
ホームメモリ局104は、公知の交換制御のための情報を保持しており、全ての携帯端末100の位置情報、通話記録(発信記録)などを保持する。位置情報は、例えば、無線基地局情報である。
【0021】
発信の場合、発信元の携帯端末100が位置しているエリア(例:A1)の交換機103は、ホームメモリ局104から発信元の携帯端末100の位置情報と着信先情報を得る。そして、この得た情報から、発信元の無線基地局101のエリア(例:A1)に地震災害が生じているか、その規模はどの程度か、また、着信先の携帯端末100が属する交換機103のエリア(例:A2)に地震災害が生じているか等を、制御DB105に対して問い合わせる。
【0022】
着信の場合、着信先の携帯端末100が位置しているエリア(例:A2)の交換機103が、無線制御局102を介して配下の全ての無線基地局101に対して、無線回線の設定を要求する。そして、その無線基地局101は、自身のエリア(無線セル等)内の全ての携帯端末100に対して一斉呼び出しを行う。そして、着信先の携帯端末100が応答することにより接続が確立される。
【0023】
<携帯端末>
図2において、携帯端末(携帯電話機)100の構成は、制御部210、メモリ220、無線通信部230、記憶部240、入力部250、及び出力部260等から構成される、一般的な携帯型通信端末装置である。無線通信部230を通じて、無線基地局101との間で無線通信処理を行うことにより、発着信を含む通話機能を実現する。
【0024】
<交換機>
図3において、交換機103の構成を説明する。交換機103は、制御部310、メモリ320、通信部330、入力部340、及び出力部350等から構成される。制御部310は、制御DB105等を参照して、本方法で特徴的な制御を行う。
【0025】
気象庁−地震計測システム106は、DBに常に最新の地震データ410を保持する。交換機103は、気象庁−地震計測システム106と常時相互接続し、常に最新の地震データ410を受信して制御DB105に保持する。また、交換機103は、ホームメモリ局104と制御DB105を参照し、携帯端末100による通話要求に対して優先度を付加して、通話要求に対する通話確立を調整する。
【0026】
ホームメモリ局104は、携帯端末100に関する、端末位置情報テーブル910と、発信記録テーブル1010を保持する。発信記録テーブル1010は、発信データの内容が保持される。
【0027】
制御DB105は、交換機震度対応テーブル510、震度分類テーブル610、優先度基準テーブル710、交換機通信情報テーブル810を保持する。
【0028】
本実施の形態では、主となる制御手段を、交換機103及び制御DB105としているが、これは一例であって、ホームメモリ局104や無線基地局101などの他の装置で行う形態としてもよい。
【0029】
<地震データ>
図4において、気象庁−地震計測システム106が保持している、地震データ410のテーブル例を示している。このデータ項目には、観測点名称411、震度(計測震度)412、及び震度計測日時413等が有り、常に最新の地震情報に更新されている。交換機103は、気象庁−地震計測システム106のDBから、これらのデータを受信し、制御DB105の交換機震度対応テーブル510に書き込む。震度412は、マグニチュード等の単位である。地震データ410の受信方法は、気象庁の公開データの入手方法に従っても可能であるが、公知であるファイルのダウンロード技術や通信パケットによる伝送技術によっても可能である。
【0030】
<交換機震度対応テーブル>
図5において、制御DB105が保持している交換機震度対応テーブル510の例を示している。このテーブルでは、交換機103及びそのエリアに対して、震度等の地震情報が対応付けられる。このデータ項目には、交換機設置場所511毎に、交換機番号512、その配下の無線制御局番号513、その配下の無線基地局番号514、震度(計測震度)515、及び震度計測日時516等が有る。これらの情報は、気象庁−地震計測システム106から受信する地震データ410をもとに書き込まれる。交換機設置場所511は、制御単位となるエリアに対応付けられる。
【0031】
<震度分類テーブル>
図6において、制御DB105が保持している震度分類テーブル610の例を示している。このテーブルでは、震度に応じてランクに分類しており、ランク別に対応付けられる制御の制限時間を表している。このデータ項目には、ランク611別に、計測震度(震度)612、及び制限時間613が有る。例えば震度612が7.0以上の場合、最上位のランク611である「A」に分類され、その制限時間613が6時間になる。ランク611は、優先度の対応付けに用いる。制限時間613は、詳しくは後述するが、ランク611に応じて、通話規制の制御を実施する期間、即ち、当該交換機103において、本方法及びシステムの制御が有効に継続・起動する時間を決めるものである。
【0032】
<優先度基準テーブル>
図7において、制御DB105が保持している優先度基準テーブル710の例(震度7以上の場合)を示している。このテーブルでは、ランク611と優先度を対応付けている。このデータ項目には、優先順位(接続優先順位)711別に、待ち時間712、発信元ランク713、及び着信先ランク714が有る。これらのデータをもとに、交換機103で通話規制(制限)を実施する。
【0033】
優先順位711は、優先度に対応しており、通話要求に対する通話接続確立の優先順位である。待ち時間712は、通話要求に対して通話接続確立を規制する際における待ち時間である。これが例えば0の場合は、待たせずにすぐに接続確立し、例えば1の場合は、地震や輻輳の旨のメッセージを流す等して、1時間後まで接続確立を無効にする。発信元ランク713は、発信元のエリアのランク611、着信先ランク714は、着信先のエリアのランク611である。
【0034】
本例では、発信元ランク713及び着信先ランク714ともに「A」の場合、接続優先順位711を「1」(最上位)とする。ランク611の組み合わせで優先順位711が変わる。また、発信元ランク713が「A」または「B」では、待ち時間712が0になり、「C」では1時間になる。
【0035】
<交換機通信情報テーブル>
図8において、制御DB105が保持している交換機通信情報テーブル810の例を示している。このテーブルでは、通話要求(発信データ)ごとに接続状況などの情報をまとめている。このデータ項目には、通話要求毎に、発信日時811、交換機番号812、発信元電話番号813、着信先電話番号814、発信元ランク815、着信先ランク816、優先順位(接続優先順位)817、接続状態818、及び待ち時間819等が有る。
【0036】
通話要求を受けた交換機103は、その通話要求の発信データ(携帯端末100から発信して交換機103へと流れるデータ)から、前述の各テーブルを参照し、接続状況を本交換機通信情報テーブル810に書き込む。
【0037】
図9,図10において、ホームメモリ局104が保持している端末位置情報テーブル910,発信記録テーブル1010を示している。
【0038】
図9の端末位置情報テーブル910では、当該エリア及び交換機103において、携帯端末100がどの無線基地局102に属しているか(無線接続されるか)を表している。このデータ項目には、携帯端末100毎に、登録電話番号911、及び無線基地局番号912が有る。登録電話番号911は、その時点で当該エリア及び交換機103に登録される携帯端末100の電話番号である。
【0039】
図10の発信記録テーブル1010では、携帯端末100からの発信データをもとに発信記録を保存している。このデータ項目には、発信要求毎に、発信日時1011、発信元電話番号1012、及び着信先電話番号1013が有る。
【0040】
なお、地震の場所(411)と交換機103の設置場所(511)とは、名称(例:X市)で一致させているが、緯度・経度の情報などでも可能である。
【0041】
<状態遷移>
次に、図11において、携帯端末100、無線基地局101、無線制御局102、交換機103、ホームメモリ局104、制御DB105、及び気象庁−地震計測システム106の間での状態遷移(制御の概略)を説明する。
【0042】
まず、携帯端末100と無線基地局101及び無線制御局102とは、相互接続状態である(S1101)。以下Sは処理ステップ等を表す。また、交換機103は、無線基地局101及び無線制御局102を通じて、携帯端末100の位置情報を得る(S1102)。
【0043】
また、交換機103と制御DB105は、相互接続状態である(S1103)。また、交換機103とホームメモリ局104は、相互接続状態である(S1104)。
【0044】
一方、交換機103は、気象庁−地震計測システム106から、随時、地震データ410を受信する(S1105)。
【0045】
交換機103は、上記の情報(位置情報、制御DB情報、ホームメモリ局情報、地震データ410など)、特に最新の地震データ410から、本制御での制限(優先度による通話規制)の開始を判断する地震データ判定処理を行う(S1106)。この処理結果に応じて、交換機103は、接続制限処理を実行する(S1108)。交換機103は、制限の必要が無ければ、通常動作状態となり、制限が必要であれば、接続制限処理状態となる。特に最新の地震データ410の受信が、本制御及び処理のトリガとなる。
【0046】
また他方、携帯端末100では、任意タイミングで、ユーザの発信操作に応じた発信動作により、発信データが交換機103に向けて送信される(S1107)。この時、当該エリアの交換機103が、接続制限処理(S1108)を行っているものとする。接続制限処理(S1108)において、交換機103は、発信データの受信に対して、優先度に応じた通話接続確立の処理を実行する。即ち、S1109以降で、優先度が高い場合、発信元と着信先の携帯端末100における通話接続確立が行われ、優先度が低い場合、接続確立は行われない。
【0047】
また、この接続制限処理(S1108)の実施時間は、前記制限時間613に従うものであり、交換機103は、接続制限状態のタイムアウトを判断する。タイムアウトにより接続制限解除後も、最新の地震データ410等に基づき、同様の制御を繰り返す。また、或る制限時間613での制御処理を実施中に、最新の地震データ410を受信して地震の状況が変化した場合には、それに対応して制御処理内容を更新する。
【0048】
<処理フロー>
次に、図12において、交換機103における地震データ判定(S1106)及び接続制限処理(S1108)の詳しい処理フローを説明する。
【0049】
地震データ判定(S1106)において、まず、S1201では、交換機103が、相互接続している気象庁−地震計測システム106から、地震データ410を前述の方法にて受信する。
【0050】
S1202では、当該エリアに関する制限システム(前記制限時間613による通話規制)が起動中(有効状態)かどうか判断する。起動中でない場合(N)、S1203へ進む。
【0051】
そして、S1203では、当該受信した地震データ410を制御DB105へ登録する処理を行う(制限システムを更新する)。即ち、当該受信した地震データ410の内容から、制御DB105の交換機震度対応テーブル510の内容を更新する。
【0052】
次に、S1204では、受信した地震データ410に更新があった場合に、その更新データをもとに、制御DB105の震度分類テーブル610により、ランク611等の対応付けを行う。本例では、このランク611が「C」の場合と、「A」,「B」の場合とで処理を分岐する。
【0053】
S1204で、ランク611が「C」の場合(Y)、S1205で、該当エリアへの制限処理を実行せずに通常動作する(前記制限時間613が0)。
【0054】
S1204で、ランク611が「A」または「B」の場合(N)、S1206以降で、該当エリアへの制限処理を実行する。この制限処理の続く期間は、制御DB105の震度分類テーブル610の制限時間613の値を参照してそれに従う。
【0055】
一方、前記S1202で起動中の場合(Y)、S1216で、当該エリアに関するランクが、現在の起動中の制限システムのランクより上かどうか判断する。これは、最新の地震データ410をもとに、同エリアに関して、地震のランク611がより大きくなった場合、制限の制御内容を更新し、地震のランク611が同じ又は小さい場合は、過去の制限の制御内容を更新せずに継続するものである。
【0056】
S1216で、現在のランクよりも上ではない場合(N)、S1217で、当該受信した地震データ410を破棄(無視)して現在の制限システムを継続する。現在のランクよりも上の場合(Y)、S1218で、当該受信した地震データ410を制御DB105へ登録する処理を行う(制限システムを更新する)。そして、S1219で、制限処理の経過時間をカウントしている制限タイマをクリアして0にし、S1206以降で、更新された制限時間613での当該エリアへの制限処理を実行する。
【0057】
接続制限処理(S1108)において、S1206では、ランク611及び制限時間613に応じた制限システムを起動し、S1207で、制限タイマのカウントを開始する。
【0058】
制限システム起動中において、携帯端末100から、無線基地局101及び無線制御局102を経て、交換機103に対し、発信(通話要求)が行われると(S1107)、以下のように処理する。まず、S1208で、交換機103は、携帯端末100から受信した発信データの内容を、ホームメモリ局104の発信記録テーブル1010に登録する。
【0059】
次にS1209で、当該通話要求を受けている交換機103は、ホームメモリ局104の端末位置情報テーブル910及び発信記録テーブル1010から、発信元電話番号1012、着信先電話番号1013、及びそれらに対応する無線基地局番号912を得る。そして、当該交換機103は、それら電話番号と震度などとを照合する処理を行う。即ち、当該交換機103は、その無線基地局番号912から、制御DB105の交換機震度対応テーブル510を参照し、当該通話要求で接続対象となる無線基地局101(着信先の携帯端末100と接続するもの)の属するエリア/位置に地震が発生しているかどうか及びその震度等を参照・確認する。そして、これらの値を、交換機通信情報テーブル810へ入力・格納する。
【0060】
次にS1210で、当該交換機103は、制御DB105の交換機通信情報テーブル810から、次の順番(発信日時811)の通話要求レコードを参照し、発信元ランク815及び着信先ランク816がともに「C」であるかどうかを確認する。上記ともに「C」である場合(Y)、当該発信元及び着信先のエリアで少なくとも大きな地震災害は発生していない状況であるから、S1211で、当該交換機103は、通常動作となる。
【0061】
上記ともに「C」である以外の場合(N)、S1212で、当該交換機103は、当該発信元及び着信先のエリアの少なくとも一方で所定震度以上の大きな地震災害が発生している状況であるから、制御DB105の交換機通信情報テーブル810を参照して、優先度に対応する優先順位817に従った接続確立及び制限の処理を実施する。ここでの優先度の基準は、前記優先度基準テーブル710の通りである。
【0062】
次にS1213で、当該交換機103は、制限時間613による接続制限状態(制限システムの起動時間)のタイムアウトを判断する。まだタイムアウトにならない時は(N)、接続制限状態を持続し、S1208以降の同様の処理を繰り返す。タイムアウトとなる場合は(Y)、S1214で制限タイマのクリアによって、S1215で接続制限状態を解除、即ち当該制限システムを起動終了する。その後、S1201に戻り(A)、気象庁−地震計測システム106からの最新の地震データ410の受信をもとに、同様の制御処理を行う。
【0063】
上記処理において、当該交換機103は、制御DB105の交換機震度対応テーブル510から、上記タイムアウトとなる制限時間613切れのレコードを検索する。上記タイムアウトの判断では、交換機震度対応テーブル510から対象の交換機レコードを抽出し、計測震度515をもとに、震度分類テーブル610を参照して制限時間613を得る。そして、この制限時間613の値と、交換機震度対応テーブル510の震度計測日時516とを比較することにより、タイムアウトを判断する。該当交換機103のタイムアウトのレコードがある場合は削除し、気象庁−地震計測システム106から最新の地震データ410を受信する。同様のタイムアウトのレコードが無い場合は、接続制限状態を持続する。
【0064】
<処理例>
次に、以上のような構成における、具体的なイベントケース及び処理例を、以下説明する。
【0065】
(1) まず、2006年5月24日17時30分に、X市に、震度7.5の地震が発生したとする(イベントE1とする)。ここで以下、X市は、図1のエリアA1,A2を含むものとする。そして、エリアA1のユーザU1の携帯端末100(M1とする)からエリアA2のユーザU2の携帯端末100(M2とする)に対して通話接続する場合を考える。
【0066】
交換機103の制御DB105は、気象庁−地震計測システム106から、上記イベントE1についての地震データ410を受信する。交換機103は、当該エリアに関わる制限システムの起動状況を確認する。この確認の結果、現在、制限システムが未起動の状況であるとする。
【0067】
交換機103は、制御DB105の交換機震度対応テーブル510における交換機設置場所511が「X市」であるデータレコードを更新する(トリガ定義済み)。即ち、そのデータレコードは、震度515が「7.5」、震度計測日時516が「2006/5/24 17:30」に更新される。
【0068】
そして、震度515が「7.5」の場合、震度分類テーブル610から、計測震度612が「7.0〜」(7.0以上)でランク611が「A」に該当し、制限時間613が「6h」(6時間)に対応付けられる。
【0069】
上記から、本システムは、「X市」に対応付けられるエリア群(例:A1,A2)について、交換機103での接続制限を開始する(制限システムを起動する)。この制御における制限が持続する時間は、制限時間613の設定に従い、基本として、開始時点から6時間後までとなる。
【0070】
(2) 次に、2006年5月24日17時35分に、電話番号「090-1111-111A」の携帯端末100(M1)から、電話番号「090-1111-111B」の携帯端末100(M2)へと、発信(通話要求)したものとする(イベントE2とする)。
【0071】
上記発信元の携帯端末100(M1)からの発信データが、無線基地局101等を経由して、当該携帯端末100(M1)が属するエリアA1の該当交換機103(発信元の交換機103とする)に到達すると、その交換機103のホームメモリ局104では、一般的な携帯電話網の制御処理として、発信データをもとに発信記録テーブル1010が記録済みになる。ホームメモリ局104は、発信記録テーブル1010において、発信日時1011に「2006/5/24 17:35」、発信元電話番号1012に「090-1111-111A」、着信先電話番号1013に「090-1111-111B」を記録する。
【0072】
上記発信元の交換機103は、上記発信データから、通話要求相手先(着信先)の電話番号「090-1111-111B」がわかるので、この着信先電話番号1013を検索キーとして、ホームメモリ局104の端末位置情報テーブル910から検索する。これにより、着信先の携帯端末100(M2)の属するエリアA2の無線基地局番号912として「1000-12」を得る。
【0073】
そして、発信元の交換機103は、上記無線基地局番号912である「1000-12」を検索キーとして、制御DB105の交換機震度対応テーブル510から、着信先の携帯端末100(M2)の属するエリアA2を管轄する該当交換機103(着信先の交換機103とする)の設置場所(エリア)に地震が起きているかどうかを確認する。本例では、無線基地局番号912が「1000-12」のエリアでは、日時「2006/5/24 17:30」に、震度515が「7.5」の地震が起きていることがわかり、また、この無線基地局101が属する交換機番号512が「1000」であることがわかる。
【0074】
また、着信先のエリアA2の震度「7.5」は、制御DB105の震度分類テーブル610から、ランク611が「A」であることがわかる。また、発信元のエリアA1の交換機103は、前述のイベントE1のように、ランク611が「A」で接続制限を実施中である。
【0075】
上記のように、発信元のエリアA1がランク「A」、着信先のエリアA2がランク「A」となる。これらの情報をもとに、制御DB105の優先度基準テーブル710及び交換機通信情報テーブル810から、本通話要求の処理は、通話接続確立に関する優先順位711,817が「1」(最優先)であり、待ち時間712,819が「0」(無し)であることがわかる。この待ち時間712,819は、発信元のエリアA1の交換機103が着信先に対して発信処理開始するまでの待ち時間である。即ち、本例では、当該発信元のエリアA1の交換機103は、着信先のエリアA2の交換機103に対して、待ち時間無しにすぐに発信処理(接続確立要求など)する。これによって、発信元と着信先の携帯端末100(M1,M2)間の接続確立の処理を行い、すぐに通話が可能になる。
【0076】
発信元のエリアA1の交換機103は、制御DB105の交換機通信情報テーブル810に、各発信データなどを書き込む。即ち、発信日時811に「2006/5/24 17:35」、発信元電話番号813に「090-1111-111A」、着信先電話番号814に「090-1111-111B」を書き込む。また、他のテーブルをもとに、交換機番号812は「1000」、発信元ランク815は「A」、着信先ランク816は「A」、優先順位817は「1」、待ち時間819は「0」などが書き込まれている。また、接続状態818は、当該通話接続処理における状態として、「接続中」(接続確立済みで通話中)が書き込まれる。
【0077】
発信元のエリアA1の交換機103は、制御DB105の交換機通信情報テーブル810をソートして、優先順位817や待ち時間819をもとに発信規制を行う。即ち、優先順位817が低く待ち時間819が大きい発信(通話要求)について、接続確立を規制する。これにより、発信元のエリアA1の交換機103からの発信に起因する輻輳を減らすことができる。
【0078】
その後、イベントE1の規模以上の地震の発生が無く、制限時間613に対応する制限実施経過時間として6時間が経過した場合は、当該エリアに関する制限が解除される(制限システムを終了する)。
【0079】
(3) 次に、2006年5月24日17時40分に、X市に、震度7.7の地震が発生したとする(イベントE3とする)。このイベントE3は、イベントE1の地震の少し後に、更にそれ以上の震度の地震が発生した場合である。
【0080】
交換機103の制御DB105は、気象庁−地震計測システム106から、上記イベントE3の地震データ410を受信する。
【0081】
交換機103は、制限システムの起動状況を確認する。この確認により、現在、前記イベントE1に係わる制限システムが起動中である。
【0082】
制御DB105は、交換機震度対応テーブル510の交換機設置場所511が「X市」であるデータレコードを調べる。今回の震度「7.7」は、前回の震度「7.5」よりも大きい。よって、データレコードを書き換える(トリガ定義済み)。即ち、震度515の「7.5」を「7.7」へ、震度計測日時516の「2006/5/24 17:30」を「2006/5/24 17:40」へと書き換える。
【0083】
上記震度分類テーブル610から、計測震度612が「7.7」の場合、制限時間613が6時間であることがわかる。
【0084】
本システムは、「X市」に対応付けられる交換機103のイベントE1に係わる制限(実施・起動中であったもの)を解除して、新規にイベントE3に係わる制限を開始する。即ち、この新規の制限開始時点から6時間後まで制限を実施する。以降は前記同様の処理である。
【0085】
以上のように、本実施の形態によれば、電話番号などの事前登録を必要とせず、地震災害発生時に、震度、エリア、優先度等の対応付けによって、通話の重要度を認識・判断しつつ、通話需要の増加による通話の輻輳を軽減し、本当に必要な重要度の高い通話を優先的に接続確立させることができる。
【0086】
以上、本発明者によってなされた発明を実施の形態に基づき具体的に説明したが、本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることは言うまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0087】
本発明は、地震に関わる情報処理システム及び携帯電話網に関わる情報処理システムに利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0088】
【図1】本発明の一実施の形態の通話規制方法に従って制御を行う通信システムの全体の構成を示す図である。
【図2】本発明の一実施の形態の通信システムにおける、携帯端末の構成例を示す図である。
【図3】本発明の一実施の形態の通信システムにおける、交換機の構成を示す図である。
【図4】本発明の一実施の形態の通信システムにおける、気象庁−地震計測システムが保持する地震データの構成例を示す図である。
【図5】本発明の一実施の形態の通信システムにおける、制御DBが保持する交換機震度対応テーブルの構成例を示す図である。
【図6】本発明の一実施の形態の通信システムにおける、制御DBが保持する震度分類テーブルの構成例を示す図である。
【図7】本発明の一実施の形態の通信システムにおける、制御DBが保持する優先度基準テーブルの構成例を示す図である。
【図8】本発明の一実施の形態の通信システムにおける、制御DBが保持する交換機通信情報テーブルの構成例を示す図である。
【図9】本発明の一実施の形態の通信システムにおける、ホームメモリ局が保持する端末位置情報テーブルの構成例を示す図である。
【図10】本発明の一実施の形態の通信システムにおける、ホームメモリ局が保持する発信記録テーブル(発信データ)の構成例を示す図である。
【図11】本発明の一実施の形態の通信システムにおける、携帯端末、無線基地局、無線制御局、ホームメモリ局、制御DB、交換機、及び気象庁−地震計測システムの間における状態遷移(制御の概略)を示す図である。
【図12】本発明の一実施の形態の通信システムにおける、交換機での接続制限処理の詳しい処理フローを示す図である。
【符号の説明】
【0089】
100(M1,M2)…携帯端末、101…無線基地局、102…無線制御局、103…交換機、104…ホームメモリ局、105…制御DB、106…気象庁−地震計測システム、107…公衆網、210…制御部、220…メモリ、230…無線通信部、240…記憶部、250…入力部、260…出力部、310…制御部、320…メモリ、330…通信部、340…入力部、350…出力部、410…地震データ、411…観測点名称、412…計測震度(震度)、413…震度計測日時、510…交換機震度対応テーブル、511…交換機設置場所、512…交換機番号、513…無線制御局番号、514…無線基地局番号、515…震度、516…震度計測日時、610…震度分類テーブル、611…ランク、612…計測震度、613…制限時間、710…優先度基準テーブル、711…接続優先順位、712…待ち時間、713…発信元ランク、714…着信先ランク、810…交換機通信情報テーブル、811…発信日時、812…交換機番号、813…発信元電話番号、814…着信先電話番号、815…発信元ランク、816…着信先ランク、817…優先順位、818…接続状態、819…待ち時間、910…端末位置情報テーブル、911…登録電話番号、912…無線基地局番号、1010…発信記録テーブル、1011…発信日時、1012…発信元電話番号、1013…着信先電話番号、A1,A2…エリア、U1,U2…ユーザ。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
携帯端末間の通話を制御する通信システムにおける通話規制方法であって、
前記携帯端末に対応付けられるエリア又は位置ごとの地震状況を認識し、
前記通話に係わるエリア又は位置の地震状況に応じて、その通話の優先度を判断して対応付け、
前記携帯端末からの通話要求の発信に対して、その通話の前記優先度を認識し、その優先度に応じて、その通話の接続確立及び規制の制御処理を行い、
地震災害発生時に、前記優先度の高い通話を優先的に接続確立させることを特徴とする通話規制方法。
【請求項2】
請求項1記載の通話規制方法において、
地震計測システムから提供される、日時、震度、エリア又は位置の情報を含む最新の地震データをもとに、前記携帯端末に対応付けられるエリア又は位置ごとの地震状況を認識することを特徴とする通話規制方法。
【請求項3】
請求項1記載の通話規制方法において、
前記通話の発信元及び/又は着信先の携帯端末に対応付けられるエリア又は位置の地震状況の震度に応じて、前記優先度として、前記通話及びその接続確立の優先順位と、前記通話の規制のための待ち時間とを判断して対応付けることを特徴とする通話規制方法。
【請求項4】
請求項1記載の通話規制方法において、
前記携帯端末間の通話を制御する交換機は、交換機単位の通話エリアごとに前記地震状況を認識し、前記通話の優先度を判断して対応付け、前記通話の接続確立及び規制の制御処理を行うことを特徴とする通話規制方法。
【請求項5】
請求項1記載の通話規制方法において、
前記通話の接続確立及び規制の制御処理を、前記通話に係わるエリア又は位置の地震状況に応じた制限時間で実行し、
前記地震状況が更新された場合、その更新された地震状況に応じた、更新された制限時間で、前記制御処理を実行することを特徴とする通話規制方法。
【請求項1】
携帯端末間の通話を制御する通信システムにおける通話規制方法であって、
前記携帯端末に対応付けられるエリア又は位置ごとの地震状況を認識し、
前記通話に係わるエリア又は位置の地震状況に応じて、その通話の優先度を判断して対応付け、
前記携帯端末からの通話要求の発信に対して、その通話の前記優先度を認識し、その優先度に応じて、その通話の接続確立及び規制の制御処理を行い、
地震災害発生時に、前記優先度の高い通話を優先的に接続確立させることを特徴とする通話規制方法。
【請求項2】
請求項1記載の通話規制方法において、
地震計測システムから提供される、日時、震度、エリア又は位置の情報を含む最新の地震データをもとに、前記携帯端末に対応付けられるエリア又は位置ごとの地震状況を認識することを特徴とする通話規制方法。
【請求項3】
請求項1記載の通話規制方法において、
前記通話の発信元及び/又は着信先の携帯端末に対応付けられるエリア又は位置の地震状況の震度に応じて、前記優先度として、前記通話及びその接続確立の優先順位と、前記通話の規制のための待ち時間とを判断して対応付けることを特徴とする通話規制方法。
【請求項4】
請求項1記載の通話規制方法において、
前記携帯端末間の通話を制御する交換機は、交換機単位の通話エリアごとに前記地震状況を認識し、前記通話の優先度を判断して対応付け、前記通話の接続確立及び規制の制御処理を行うことを特徴とする通話規制方法。
【請求項5】
請求項1記載の通話規制方法において、
前記通話の接続確立及び規制の制御処理を、前記通話に係わるエリア又は位置の地震状況に応じた制限時間で実行し、
前記地震状況が更新された場合、その更新された地震状況に応じた、更新された制限時間で、前記制御処理を実行することを特徴とする通話規制方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2008−67020(P2008−67020A)
【公開日】平成20年3月21日(2008.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−242237(P2006−242237)
【出願日】平成18年9月7日(2006.9.7)
【出願人】(000233295)日立情報通信エンジニアリング株式会社 (195)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年3月21日(2008.3.21)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年9月7日(2006.9.7)
【出願人】(000233295)日立情報通信エンジニアリング株式会社 (195)
【Fターム(参考)】
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