説明

通過体の出入方向判別装置及び通過体監視システム

【課題】
通過体の進行方向も正確に把握でき、確実に出入りしたかをチェックする機能を持つ通過体の出入方向を正確に把握できる感知素子とこれを利用した通貨体監視システムを提供するものである。
【解決手段】
通過体の出入りに対応したセンサへの入力物理量に単調性をもって応答する電気出力を出す検知素子の対とその出力の差分値から通過体の出入りの方向を割り出すようにするか、又は、前記の検知素子対を少なくとも2つ以上設置して通過体の出入り方向を割り出すようにしたことを特徴としている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、微妙にずれて到達した通過体でも出入方向が正確に判別できる出入方向判別装置とこれを用いた通過体監視システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から通過体監視システムは、通路、建物や部屋の出入口などいろいろなところで使用されているが、そこには、通過体の通過方向を判別する必要がある場合があった。このような例を、例えば、図5および図6を用いて説明する。図6は、従来の通過体監視システムのブロック図であり、これは、通過体の入場を検知する出入センサ61の出力を受けて、通過体の有するIDTAG65の認識符号器68に格納された認識符号を電波により読み込み、主制御器62側で認識符号登録メモリ69内の登録認識符号との一致を判断し、一致した通過体のみ通過を許可する信号を判別出力器63から出力する機能を有するものである。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
この様な例を特許文献1及び特許文献2に見ることができる。その使用状態は図5のようになっている。再度、図6に戻って、詳しい動作を説明する。通過体が出入センサ61の検知領域に入ると、その出力は主制御器62に入り、ID読取送受信器64を駆動して、ID読み取り電波を送信する。ID読み取り電波は通過体の所持するIDTAG65のTAG側送受信器66で受信されて、副制御器67の制御により認識符号器68内に格納した認識符号を読み出し、TAG側送受信器66から送信する。これをID読取送受信器64が受信して、主制御器62の制御により認識符号登録メモリ69内の登録認識符号と
の一致を判断する。一致した場合には、判別出力器63から通過体に通過許可情報を出し、一致しない場合には、通過不許可情報を出す。
【特許文献1】特開平10−228589
【特許文献2】特開2000−293773
【0004】
以上の通過体監視システムの使用状態を図5を使用して説明する。使用状態は、概ね、5−Aから5−Eの5つの状態がある。5−Aを使い、先ずシステムの概要を説明する。61は、出入センサであり、その検知範囲は実線で示す領域Aであり、64は、ID読取送受信器であり、その検知範囲は、点線で示すBである。5−Aでは、二つの検知範囲AとBが一致している。5−Bでは、範囲Aは範囲Bに含まれている。5−Cでは、範囲Aが範囲Bの右側且つ外側にある。5−Dでは、範囲Aが範囲Bの左側且つ外側にある。5−Eでは、範囲Aの内側に範囲Bが含まれている。これら各々の特徴を表1にまとめる。
表1において、5−Aから5−Eの全てにおいて不都合な状態:許可者と不許可者が同時に入ると侵入可能となることで、この不都合への対応として、本発明者は、特願2004−178882を提出した。許可者が左の領域に入り、通過せずに戻り、不許可者が入ると侵入可能であること、許可者が出入センサに感知された後、戻ると誤報になること、右側から許可者が入り、左側から不許可者が入った場合に侵入可能であることの3つの不都合は、通過体が通過したかを正確に把握できていないことに起因している。従って、これを改善するには、出入センサが1個では不足であって、最低二つ必要である。図3に
示すのは、出入センサが二つ使用した通過体監視システムの使用状態の図であり、図4
に示すのは、出入センサが二つ使用した通過体監視システムのブロック図である。



【表1】

【0005】
図4では、出入センサ61が第1出入センサ41Aと第2出入センサ41Bの二つからなっている以外には、図6と内容は変わらない。図3において3−Aの使用状態で概要を説明すると、この例では、天井(上側壁)にセンサがついている配置である。第1出入センサ41Aの検知範囲は実線で示すAであり、同様に第2出入センサ41Bの検知範囲は実線で示すCであり、Bの領域は、図5で説明したものと同様である。3−Bでは、Cの領域がBの領域の内側に重なっている場合である。3−Cでは、Aの領域もBの領域の内側に重なっている場合である。3−Aでは、二人の許可者が同時に左側と右側の両側から入ると、未だ、認識符号が読み取られていないので、不許可者と誤認する。3−Bと、3−Cでは同様の場合には、不許可者と誤認はない。しかしながら、何れの場合も、各々の通過体の出入りの方向を認知できない欠点が残っているため、管理上の問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、以上のような従来の欠点に鑑み、通過体の進行方向も正確に把握でき、確実に出入りしたかをチェックする機能を持つ通過体監視システムを提供するものである。
通過体の出入りに対応したセンサへの入力物理量に単調性をもって応答する電気出力を出す検知素子の対とその出力の差分値から通過体の出入りの方向を割り出すようにするか、又は、前記の検知素子対を少なくとも2つ以上設置して通過体の出入り方向を割り出すようにしたことを特徴としている。
【0007】
請求項1記載の発明は、通過体の出入方向判別装置であって、通過体の出入りによる信号入力の大きさに応じた電気出力を出す検知素子の一対と、前記検知素子の二つの出力の差分を取る差分器を有し、前記差分器の出力により前記通過体の出入方向を判別することを特徴とする。
【0008】
請求項2記載の発明は、通過体の出入方向判別装置であって、通過体の出入による信号入力に応答する電気出力を出す検知素子の少なくとも二対と、前記対毎の検知素子の二つの出力の差分を取る差分器を有し、前記差分器の出力により前記通過体の出入方向を判別することを特徴とする。
【0009】

請求項3記載の発明は、請求項1又は請求項2記載の通過体の出入方向判別装置において、前記の検知素子は、前記通過体の出入による位置入力への応答出力特性にヒステレシスを有することを特徴とする。
【0010】
請求項4記載の発明は、通過体監視システムであって、認識符号を格納する認識符号器と前記認識符号を送信するTAG側送受信器と前記認識符号器と前記TAG側送受信器を制御する副制御器を有するIDTAGと;
通過体の出入を判別する少なくとも2つ以上の出入センサと;
前記TAG側送受信器から送信される前記認識符号を読み取るID読取送受信器と;
登録認識符号と前記認識符号とを比較して一致判別した出力をだす判別出力器と;
前記登録認識符号を予め格納するための前記認識符号登録メモリと;
前記出入センサ及び前記ID読取送受信器を制御する主制御器と;を有し、
前記の出入センサは、通過体の出入による信号入力に応答する電気出力を出す検知素子の対と、前記対毎の検知素子の二つの出力の差分を取る差分器とを有し、前記差分器の出力により前記通過体の出入方向を判別して、前記通過体の通過を監視することを特徴とする

【0011】
請求項5記載の発明は、請求項4記載の通過体監視システムにおいて、前記の検知素子は、前記通過体の出入による位置入力への応答出力特性にヒステレシスを有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
以上の様に構成されているので、本発明の通過方向判別装置では、通過体の通過方向が正確に把握できるので、通過体監視システムの管理上の精度向上を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
発明を実施するための最良の形態として、通過体の出入りに対応したセンサへの入力物理量に単調性をもって応答する電気出力を出す検知素子の対とその出力の差分値から通過体の出入りの方向を割り出すようにするか、又は、通過体の出入りに対応したセンサへの入力物理量に応答する電気出力を出す検知素子の対を少なくとも二対を有し、それらの対ごとの出力の差分値から通過体の出入りの方向を割り出すように構成したものである。
以下に実施態様を説明する。
【実施例1】
【0014】
図1は、本発明による通過体の通過方向判別装置の一実施態様を示す図である。通過体の出入りに対応したセンサへの入力物理量に単調性をもって応答する電気出力を出す検知素子の1対とその出力の差分値から通過体の出入りの方向を割り出すようになっている。1−Aにおいて、検知素子対10は、二つの検知素子11A、11Bからなっている。検知素子11A、11Bは各々、12A、12Bの検知範囲を有していて、この範囲に通過体が入ってくると、通過体の出入りに対応した入力物理量に単調性をもって応答する電気出力を出すものである。ここでいう単調性を持っての意味は、通過体が入ってくることにより、例えば、光を用いた場合では透過又は反射信号ではセンサへの入力光の増減に対して、その大きさに応じた出力を出すものである。即ち、通過体が停止することで、入力光の強度が一定になっても、その一定の大きさに応じた出力を出すようになっている。このような検知素子としては、フォトダイオード、超音波素子、マイクロ波受信器、量子形赤外線受光素子などが知られている。通過体が例えば、左側から入ると最初に11Aの検知範囲12Aに入るので、11Aの出力がで、その後、11Bの検知範囲12Bに入るので、12Bの出力が出る。通過体の幅がある場合は、暫くの間、一定レベルの出力になる。1−Bには、11A、11Bの出力の時間変化と、差分器13による両出力の差の時間変化を示している。11A、11Bの出力は、通過体の左からの侵入により、11Aが先に出力が立ち上がり、一定値に達している。その後、11Bが同様に変化している。その差分は通過体の速度と検知素子間の距離に応じた時間幅のパルスが得られる。勿論、右側から通過体が入った場合は、このパルスは負の値になる。このパルスの大きさを判定することで出入りの方向が判別できる。一定のレベルに達したパルスが得られるので、応答の速い前記の検知素子を使えば、センサ対が1対でも判断が高速で容易である。又、判断に出力応答の変化領域では無く、一定レベルの領域の大きさを使うので、通過体の位置の揺らぎによる、出力のばたつきがない利点がある。これは、ゆっくりした通過体の動きでの揺らぎがある場合は、ばたつきが生ずるので、ばたつき耐性があるのは好都合である。実施例1の唯一の欠点を挙げると、左側からと右側からほぼ同時に二者の通過体が入った場合には、両者による出力が交差して出入りの方向が分からなくなることである。即ち、先に入った方の方向が分かるが、後に入った方は、通過したかどうかも分からない。
又、このような場合は、検知素子対の各々が別の二者による透過又は反射の影響を受けるため、焦電センサのような変化部だけに応答する単調性のない素子では、出力差が上下非対称な複雑な波形となってしまうので、判別が難しいので使用を控えた方が良い。この様な事情を図7に7−Bに示してある。図7は、単調性のない検知素子での出力応答を説明する図である。このため、そのようなことを回避する目的には、二対以上の検知素子対を用いたものがよい。以下これを図2で説明する。
【実施例2】
【0015】
図2は、通過体の出入りに対応したセンサへの入力物理量に応答する電気出力を出す検知素子の少なくとも2対とその出力の対毎の差分値から通過体の出入りの方向を割り出すようになっている。検知素子対20Aは、二つの検知素子21A、21Bからなっている。同様に検知素子対20Bは、二つの検知素子21C、21Dからなっている。勿論、21Aと21C、21Bと21Dの対の組み合わせも可能である。検知素子21A、21B、21C、21Dは、各々、22A、22B、22C、22Dの検知範囲を有していて、この範囲に通過体が入ってくると、通過体の出入りに対応した入力物理量に応答する電気出力を出すものである。このように二対以上の検知素子対からなる場合は、図1の欠点だった左側からと右側からほぼ同時に入ってくる場合があっても、それは、1つの対の検知素子対の判断が曖昧になるだけで、他の対は、同時に入ってこないため、正しい判断ができる利点がある。判断に使用する対の出力は同じ通過体による出力信号で単に時間ずれがあるだけの出力信号ということが確保できるので、焦電センサのような単調性の無い、即ち、移動の動きに対応した出力のみをだす場合でも、差の信号出力が余り複雑にならないので、使用が可能である。この様な事情を図7の7−Aに示してある。勿論、図1での説明のように単調性のある特性の検知素子の方が差分を取った後の処理が容易である。
2対の検知素子対がある場合には、1対の検知素子対側で先に通過体の速度が得られるのでその結果から想定して他の検知素子対のところでの通過時間が想定できる。図2の2対以上の検知素子対を図3のようなIDTAGと併用した通過体監視システムに適用すれば、
通過体の出入りの方向が確定して極めて都合が良くなる。検知素子からの出力でのトリガでIDTAGの読み出しを駆動することができる。
【0016】
図1、図2の例の検知素子対を構成する検知素子には、入力への応答特性としてヒステレシスを持たせることが、通過体による信号揺らぎに対して有効である。例えば、ゆっくりした動きの通過体や、多少の揺らぎを持った通過体(例えば流体)の場合に有効である。
ヒステリシスとは、入力するときは、ある位置に対応して応答出力がでるが、戻る(例えば揺らぎにより)場合は、同じ位置ではなく、大きく戻らないと戻りによる出力が出ないように電気的出力特性を設定することである。図では示さなかったが、検知素子対は、通過体の両側に設置することも可能である。この場合は、通過体と並行する別の通過体も陰にならずに検知できる。尚、説明に使用した通過体は人間や生物に限ったものではない。
移動するもの一般を指している。
【産業上の利用可能性】
【0017】
本発明は、従来の技術の欠陥であった通過体の出入りの方向が確定できないということを回避することができ、通過体の管理が可能となるので、防犯などの分野では極めて利用価値が高い。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明による通過体の出入方向判別装置の一実施態様を示す図である。
【図2】本発明による通過体の出入方向判別装置の別の一実施態様を示す図である。
【図3】出入センサが二つ使用した通過体監視システムの使用状態を説明する図である。
【図4】出入センサが二つ使用した通過体監視システムのブロック図である。
【図5】従来の通過体監視システムの使用状態を説明する図である。
【図6】従来の通過体監視システムのブロック図である。
【図7】単調性のない検知素子での出力応答を説明する図である。
【符号の説明】
【0019】
10、20A、20B 検知素子対
11A、11B 21A、21B、21C、21D 検知素子
12A、12B、22A、22B、22C、22D 検知範囲
13、23A、23B 差分器
41A 出入センサA
41B 出入センサB
61 出入センサ
62 主制御器
63 判別出力器
64 ID読取送受信器
65 IDTAG
66 TAG側送受信器
67 副制御器
68 認識符号器
69 認識符号登録メモリ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
通過体の出入りによる信号入力の大きさに応じた電気出力を出す検知素子の一対と、前記検知素子の二つの出力の差分を取る差分器を有し、前記差分器の出力により前記通過体の出入方向を判別することを特徴とする通過体の出入方向判別装置。
【請求項2】
通過体の出入による信号入力に応答する電気出力を出す検知素子の少なくとも二対と、前記対毎の検知素子の二つの出力の差分を取る差分器を有し、前記差分器の出力により前記通過体の出入方向を判別することを特徴とする通過体の出入方向判別装置。
【請求項3】
前記の検知素子は、前記通過体の出入による位置入力への応答出力特性にヒステレシスを有することを特徴とする請求項1又は請求項2記載の通過体の出入方向判別装置。
【請求項4】
認識符号を格納する認識符号器と前記認識符号を送信するTAG側送受信器と前記認識符号器と前記TAG側送受信器を制御する副制御器を有するIDTAGと;
通過体の出入を判別する少なくとも2つ以上の出入センサと;
前記TAG側送受信器から送信される前記認識符号を読み取るID読取送受信器と;
登録認識符号と前記認識符号とを比較して一致判別した出力をだす判別出力器と;
前記登録認識符号を予め格納するための前記認識符号登録メモリと;
前記出入センサ及び前記ID読取送受信器を制御する主制御器と;を有し、
前記の出入センサは、通過体の出入による信号入力に応答する電気出力を出す検知素子の対と、前記対毎の検知素子の二つの出力の差分を取る差分器とを有し、前記差分器の出力により前記通過体の出入方向を判別して、前記通過体の通過を監視することを特徴とする通過体監視システム。
【請求項5】
前記の検知素子は、前記通過体の出入による位置入力への応答出力特性にヒステレシスを有することを特徴とする請求項4記載の通過体監視システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−31323(P2006−31323A)
【公開日】平成18年2月2日(2006.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−208187(P2004−208187)
【出願日】平成16年7月15日(2004.7.15)
【出願人】(396020132)株式会社システック (101)
【Fターム(参考)】