説明

通過領域を有する集電体

電気化学的エネルギー貯蔵装置の電極に用いられる、特に実質的に角柱状の集電体(1)であって、電子が集電体(1)内に流入しまたは集電体(1)から流出し得る通過領域(2,2a)を有する集電体(1)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、集電体、前記集電体を有する電極、前記電極を2個有する電気化学的エネルギー貯蔵装置、この種の少なくとも1つの電気化学的エネルギー貯蔵装置を有するバッテリー、及び前記電極を製造するための方法に関する。本発明はリチウムイオン・バッテリーに関連して説明される。本発明はまた、前記バッテリーのタイプにかかわりなくまたはエネルギー供給される駆動装置の種類にかかわりなく使用可能であることを指摘しておく。
【背景技術】
【0002】
従来の技術から、複数の電気化学的エネルギー貯蔵装置を有するバッテリーは公知である。いくつかのバッテリータイプに共通している点は、前記バッテリーのそれぞれの出力密度(kW/kg)が低すぎることである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
そこで本発明の目的は、この種のバッテリーの出力密度を向上させることである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
前記課題は独立請求項に記載の技術思想によって達成される。本発明の好ましい実施形態例は従属請求項に記載されている。
【0005】
本発明による集電体は電気化学的エネルギー貯蔵装置の電極用に備えられている。前記集電体は特に実質的に角柱状の形態を有している。前記集電体は、電子が前記集電体中に流入しまたは前記集電体から流出し得る少なくとも1つの通過領域を有している。前記集電体は前記集電体の通過領域の少なくとも1つが少なくとも複数の第1の接触子を有することを特徴としている。少なくとも1つの第1の接触子は実質的に細片状に形成されている。少なくとも1つの第1の接触子は自由端と結合端とを有している。前記結合端は前記通過領域と結合されるべく設けられている。少なくとも1つの第1の接触子は少なくとも1つの第1の通過領域を出て周囲に突き出している。
【0006】
本発明による集電体とは、特に電子の伝導に用いられる部材として理解されるとよい。前記集電体はさらに、特に、熱伝導に使用される。好ましくは、前記集電体は電極活物質(ないし活物質)および/または間接的に電力需要装置と、特に、導線ないし接続ケーブルによって結合されている。前記集電体は、時には、前記電極活物質および/または前記電力需要装置との間で電子を交換する。好ましくは、前記集電体は前記電極活物質および/または前記導線との間で、時に応じて、熱エネルギーを交換する。好ましくは、前記集電体は少なくとも1つの導電性材料を有する。特に好ましくは、前記集電体の少なくとも1つの材料は、炭素、アルミニウム、銅、ニッケルまたは任意のその他の金属を含む群から選択されたものである。
【0007】
本発明による電極とは、特に電子の吸収および放出に使用される装置として理解されることとする。前記電極は、とりわけ、イオンの吸収および放出に使用される。1電極は、1集電体と少なくとも1つの電極活物質とを有する。
【0008】
好ましくは、電極は、電解質により、反対極性のさらに別の電極と電気的相互作用関係にある。本発明による電極活物質とは、電気的エネルギーを化学的エネルギーに、またその逆に変換するために使用される装置として理解されるとよい。特に、電極活物質はエネルギーを化学的エネルギーの形で蓄えるために使用される。
【0009】
本発明による電気化学的エネルギー貯蔵装置とは、特に、電気的エネルギーの受容、供給および/または貯蔵に使用される装置として理解されることとする。そのため、前記電気化学的エネルギー貯蔵装置は、極性の異なる少なくとも2個の電極ならびに、電解質を有している。好ましくは、極性の異なるこれらの電極はセパレータによって分離されている。前記セパレータは特に電解質の少なくとも一部を吸収しかつ特にイオン伝導性を有するが、ただし電子伝導性は持たないように形成されている。好ましくは、前記電気化学的エネルギー貯蔵装置は、多数のセパレータと共に集成され1つの電極スタックを作り出す多数の電極を有している。この場合、極性の異なる2つの電極ごとにその間に1つのセパレータが配置されている。
【0010】
好適な実施形態では、前記集電体は、実質的に角柱状の形態を有している。好ましくは、前記集電体の形態は、前記電極、前記電気化学的エネルギー貯蔵装置および/または前記バッテリーの幾何的形状に適合されている。好ましくは、前記集電体は薄肉板またはシートとして形成されている。好ましくは、前記集電体は、特に導線と結合するための接続領域を有している。好ましくは、前記集電体は、特に、電極活物質との接触ならびに電子の通過に使用される通過領域を有している。好ましくは、接続領域と通過領域とは前記集電体の外面に配されている。好ましくは、集電体は少なくとも2つの通過領域を有している。
【0011】
本発明による通過領域とは、前記集電体の外面の領域として理解されるとよい。したがって、前記通過領域は、一方で前記集電体のコア領域に接し、他方で前記集電体の周囲に接している。1つの通過領域は、好ましくは、前記集電体の外面の少なくとも大部分に及んでいる。好ましくは、本発明による集電体は少なくとも2通過領域を有している。前記集電体が互いに対向する2つの最大の外面を有する薄肉板として形成されている場合、これらの最大の外面のうちの一方に少なくとも1つの通過領域が配されている。好ましくは、前記最大の外面の各々はそれぞれ通過領域を有している。
【0012】
本発明による第1の接触子とは、特に電子の伝導に使用される固体として理解されることとする。第1の接触子は、好ましくは、前記集電体の通過領域と導電結合されている。前記集電体の作動中、電子は1電極活物質から発して、少なくとも1つの前記第1の接触子を通り、前記集電体中に流入し、または反対の方向に流出する。その際、前記第1の接触子は、とりわけ、集電体と前記電極活物質との接触面積の拡大を結果する。前記第1の接触子は、前記集電体の通過領域と特に物質接合によって緊着された結合端を有している。さらに、第1の接触子は、前記結合端とは反対側に位置し、周囲に突き出している自由端を有している。好ましくは、前記第1の接触子は、0°〜90°の角度をなして通過領域から突き出している。好ましくは、第1の接触子の前記自由端は電極活物質中に延びて入り込んでいる。好ましくは、通過領域は複数の、特に好ましくは、多数の第1の接触子を有している。好ましくは、通過領域は第1の接触子でほとんど覆われている。第1の接触子は対称軸に沿って延びている必要はない。第1の接触子は好ましくは、不規則な、特に製造に起因した形態を有している。好ましくは、第1の接触子は少なくともその一部区域が、湾曲、屈曲および/または捩られている。本発明によれば、第1の接触子は実質的に細片状に形成されている。この場合、特に製造に起因する、細片状形態からの逸脱は許容されるものであり、それも本発明に含まれる。したがって、第1の接触子は好ましくは、丘陵に類似した平たい隆起の形態、羽毛状、棒片状またはパイプ片の形態を有してもよい。好ましくは、第1の接触子は0.01〜1マイクロメートルとくに好ましくは0.01〜0.1マイクロメートルの厚さを有している。好ましくは、第1の接触子は0.1〜100マイクロメートル、特に好ましくは0.1〜10マイクロメートルの長さを有している。第1の接触子は少なくとも1つの導電性材料を有している。好ましくは、第1の接触子は、炭素、アルミニウム、ニッケル、銅、チタン酸カリウム、チタン、炭化物、炭化ケイ素、二酸化チタン、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、酸化スズ、酸化インジウムおよび炭化アルミニウムを含む群うちから選択される材料を有している。好ましくは、第1の接触子と集電体とは同一の少なくとも1つの材料を有している。好ましくは第1の接触子のために、炭素、前記電極活物質の成分および/または前記セパレータの成分と安定した化学的および/または物理的結合を形成ないし実現する材料が選択されている。
【0013】
電子には、前記第1の導電性接触子の外面によって、単なる前記通過領域の面積に比較して拡大された透過面積が供されている。とりわけ、電流密度および電気抵抗が減少する。したがって、集電体の外面ないし通過領域の電子透過性が高まると共に、前記電極ならびに当前記バッテリーセルの出力密度が高まって、目的である前述した課題が解決される。さらに、第1の接触子は、化学的および/または物理的結合によって、特に集電体と電極活物質との団結を向上させる。
【0014】
以下に、本発明の好ましい実施形態を説明する。
好適な実施形態では、本発明による集電体は少なくともその一部区域が第1の物質によって被覆されている。好ましくは、前記集電体の前記通過領域は少なくともその一部区域が第1の物質によって被覆されている。好ましくは、前記第1の物質は粒子を有している。好ましくは、前記第1の物質ないし前記物質の粒子は導電性を有している。好ましくは、前記第1の物質ないし前記物質の粒子は伝熱性を有している。好ましくは、前記集電体の通過領域は第1の物質で全面的に被覆されている。好ましくは、前記第1の物質の層厚さは前記集電体の肉厚以下の寸法となされている。好ましくは、前記第1の物質によるコーティングは、前記コーティング層中で前記第1の物質の粒子の若干が互いに上下に重なり合っているにすぎないように形成されている。好ましくは、前記粒子は実質的に球状に形成されている。好ましくは、前記第1の物質の前記粒子は幾何形状的に不定、不規則に形成されている。好ましくは、前記第1の物質の前記粒子の形態は屑片として形成されている。好ましくは、前記第1の物質は第一には粉末状である。好ましくは、前記第1の物質の粒子の直径は前記集電体の肉厚以下および/または前記第1の物質のコーティング層の厚さ以下である。好ましくは、前記第1の物質の粒子の直径は第1の接触子の長さ以下である。好ましくは、前記第1の物質は少なくとも1つの導電性材料、特に好ましくは炭素を有している。好ましくは、前記第1の物質は、電極活物質の成分も含んだ混合物である。好ましくは、前記第1の物質は、前記セパレータの成分も含んだ混合物である。好ましくは、前記第1の物質のコーティング層はいわゆるハードカーボン層である。好ましくは、前記第1の物質は通過領域の所定の比率を占める区域を被覆している。好ましくは、前記第1の物質のコーティング層は、円形区域または離間配置された帯条区域の形で形成されている。好ましくは、前記第1の物質上に前記電極活物質が被着されているために、前記第1の物質は少なくともその一部区域が前記集電体と前記電極活物質の間に配置されている。
【0015】
好適な実施形態では、少なくとも1つの第1の接触子は前記第1の物質中に延びて入り込んでいる。好ましくは、少なくとも1つの第1の接触子は前記第1の物質を貫いて延びて、特に前記接触子の自由端は前記第1の物質から突き出している。好ましくは、第1の接触子は前記第1の物質ないし前記物質の少なくとも1つの粒子と化学的および/または物理的に結合している。前記第1の物質と少なくとも1つの前記第1の接触子との接触は、時に応じて、電極活物質から前記第1の接触子を通って前記集電体への電子の流れが行われるように形成されている。こうした電子の流れは逆方向にも行われる。その際、第1の接触子は特に前記集電体の表面積の拡大をもたらす作用を果たす。好ましくは、前記第1の接触子の大半は上述したように形成されている。
【0016】
好適な実施形態では、少なくとも2本の前記第1の接触子は互いに結合されている。この場合、特に前記接触子の当前記自由端が互いに結合されている。好ましくは、2本の第1の接触子の当前記自由端は互いに結合されている。好ましくは、少なくとも2本の第1の接触子の結合は前記接触子の自由端の結合、交差結合、編織結合、編組結合、相互の絡み合わせによって行われる。好ましくは、2本の第1の接触子は前記接触子の自由端の結合によってループを形成する。好ましくは、少なくとも3本の第1の接触子は上述したようにして結合されている。好ましくは、前記通過領域は多数の、互いに結合された第1の接触子を有している。好ましくは、前記第1の接触子の大半は、それぞれ、少なくとも1つのさらに別の第1の接触子と結合されている。好ましくは、それぞれ少なくとも2本の第1の接触子の結合は一様には行われずかつ/または使用される製造方法に応じて行われる。好ましくは、いくつかの第1の接触子は、それぞれ、少なくとも1つのさらに別の接触子と結合されている。好ましくは、前記第1の接触子の、1/10、2/10、3/10、4/10、5/10、6/10、7/10、8/10、9/10までは、それぞれ、少なくとも1つのさらなる別の第1の接触子と結合されている。
【0017】
好適な実施形態では、電気化学的エネルギー貯蔵装置向けの電極は本発明による集電体を有している。さらに、前記電極は少なくとも1つの電極活物質を有している。その際、前記電極活物質は、エネルギーの貯蔵、エネルギーの供給および/または前記集電体との電子の交換に使用される。さらに、前記電極活物質は、特に、電気エネルギーから化学的エネルギーへのエネルギー変換およびその逆のエネルギー変換に使用される。好ましくは、前記電極活物質は前記集電体に被着される。好ましくは、前記電極活物質は前記集電体の通過領域に被着されている。好ましくは、第1の物質は少なくもその一部区域が前記電極活物質と前記集電体の間に配置されている。好ましくは、少なくともいくつかの第1の接触子は前記電極活物質中に延びて入り込んでいる。好ましくは、前記電極活物質の粒子は前記第1の接触子の幾本かと化学的および/または物理的に結合されている。好ましくは、電極活物質は、時には、前記集電体との間で電子を交換するが、その際、この電子の交換は特に前記集電体の通過領域内で行われる。好ましくは、前記電極の形態は前記集電体の幾何的形状に実質的に一致している。好ましくは、前記電極活物質はペースト状である。好ましくは、前記電極活物質層の厚さは、前記電極の形成に際して低抵抗ならびに優れた熱伝達が重視される限りにおいて、前記集電体の肉厚以下とする。好ましくは、前記電極活物質層の厚さは、特に、前記電極の高エネルギー密度が重視される限りで、前記集電体の肉厚以上である。好ましくは、実質的に板状の前記集電体は、互いに対向する2つの通過領域を有している。
【0018】
好ましくは、電極活物質は前記双方の通過領域に被着されている。この場合、前記電極活物質の材料は好ましくは同一の組成を有している。好ましくは、前記双方の電極活物質層の厚さは互いに相異している。たとえば、一方の電極活物質層は高い出力密度を顧慮して形成され、他方の電極活物質層は高いエネルギー密度を考慮して形成されている。
【0019】
好適な実施形態では、電気化学的エネルギー貯蔵装置は、それぞれ本発明による集電体を有する少なくとも2つの電極及び1つのセパレータを有している。その際、好ましくは、前記電極の一方は負極ないしアノードとして使用され、他方、第2の電極は正極ないしカソードとして使用される。前記セパレータはイオン伝導性を有するように形成されて、電解質ないし電解液の少なくとも一部を吸収している。ただし、前記セパレータは電子伝導性を持たないように形成されている。前記セパレータは極性の相異する電極間に、この電極の電極活物質が前記セパレータの異なる接触領域と接触するようにして配置されている。これらの接触領域はセパレータの外面に配置されている。
【0020】
好適な実施形態では、電気化学的エネルギー貯蔵装置のセパレータは、実質的に細片状の多数の第2の接触子を備えた接触領域を有している。これら第2の接触子は、電子を伝導し得ないとの点で、前記第1の接触子とは相違している。好ましくは、前記第2の接触子はそれぞれ非導電性材料から形成されている。前記第2の接触子は前記第1の接触子よりも長くかつ太いのが有利である。好ましくは、前記第2の接触子は隣接する前記電極活物質層の厚さよりもごくわずかに短い。好ましくは、前記第2の接触子は、特に表面積の拡大をもたらす窪みおよび/または隆起を特徴とする不規則な形態を有している。好ましくは、第2の接触子は少なくとも1つのアンダカット面を備えるように形成されている。
【0021】
好適な実施形態では、バッテリーは、本発明による集電体を有する少なくとも1つの電気化学的エネルギー貯蔵装置を有している。好ましくは、バッテリーは2またはそれ以上の上述した電気化学的エネルギー貯蔵装置を有している。バッテリーが有する電気化学的エネルギー貯蔵装置の数は整数であって、4で割り切れる数が好ましい。好ましくは、バッテリーの電気化学的エネルギー貯蔵装置は直列接続および/または並列接続にて電気的に接続されている。好ましくは、バッテリーは、それぞれ4つ以上の直列接続された電気化学的エネルギー貯蔵装置からなる複数の群を有している。好ましくは、これらの群は互いに直列および/または並列に接続されている。
【0022】
本発明により、好ましくは、電子伝導性を持たないまたは電子伝導性の劣る、少なくとも部分的に物質透過性を有する支持体からなるセパレータが使用される。この支持体は、好ましくは、少なくとも片面が無機材料でコートされている。好ましくは、少なくとも部分的に物質透過性を有する支持体として、好ましくは不織布として形成された有機材料が使用される。好ましくはポリマーとくに好ましくはポリエチレンテレフタレート(PET)を含んだ前記有機材料は、好ましくは、イオン伝導性、より好ましくは−40℃〜200℃の温度範囲でイオン伝導性を有する無機材料でコーティングされている。この無機材料は好ましくは、Zr、Al、Liの少なくともいずれか1つの元素の酸化物、リン酸塩、硫酸塩、チタン酸塩、ケイ酸塩、アルミノケイ酸塩の群の少なくともいずれか1化合物、特に好ましくはジルコニアを含んでいる。好ましくは、上述のイオン伝導性無機材料は最大直径100nm以下の粒子を有する。この種のセパレータは、たとえば、商標名「Separion」で、Evonik AG(ドイツ)から販売されている。
【0023】
好ましくは前記電気化学的エネルギー貯蔵装置の少なくとも1つの電極、特に好ましくは少なくとも1つのカソードは、科学式LiMPO、この式中、Mは元素周期系の第1遷移元素系列の少なくとも1つの遷移金属カチオンである、の化合物を有している。前記遷移金属カチオンは好ましくは、Mn、Fe、NiおよびTiまたはこれらの元素の組み合わせからなる群から選択される。前記の化合物は好ましくはカンラン石型構造、好ましくは上位のカンラン石を有し、その際、Feが特に好ましい。
【0024】
さらに別の実施形態において、好ましくは、前記電気化学的エネルギー貯蔵装置の少なくとも1つの電極、特に好ましくは少なくとも1つのカソードは、マンガン酸リチウム好ましくはスピネル型のLiMn、コバルト酸リチウム好ましくはLiCoOまたは、ニッケル酸リチウム好ましくはLiNiOまたは、これらの酸化物のうちの2つまたは3つの酸化物からなる混合物または、マンガン、コバルトおよびニッケルを含むリチウム混合酸化物を有している。
【0025】
前記カソード電極は、好ましい実施形態において、少なくとも1つの電極活物質ないし活物質を含み、その際、前記活物質はスピネル構造では存在していないリチウムニッケルマンガンコバルト混合酸化物(NMC)とスピネル型構造を有するリチウムマンガン酸化物(LMO)とからなる混合物を含んでいる。前記活物質は、前記カソード電極の前記活物質の総モル数を基準にして(したがって、前記活物質に加えてさらに導電性添加剤、結合剤、安定剤等を含む可能性があるカソード電極全体を基準にせず)、それぞれ少なくとも30Mol%、好ましくは少なくとも50Mol%のNMCを含んでいると同時に、少なくとも10Mol%、好ましくは少なくとも30Mol%のLMOを含んでいるのが好ましい。NMCとLMOとは合算して、前記カソード電極の前記活物質の総モル数を基準にして(したがって、前記活物質に加えてさらに導電性添加剤、結合剤、安定剤等を含んでいてもよいし、カソード電極全体を基準にせず)、前記活物質のそれぞれ少なくとも60Mol%、より好ましくは少なくとも70Mol%、より好ましくは少なくとも80Mol%、より好ましくは少なくとも90Mol%を占めているのが好ましい。さらに、前記活物質は実質的にNMCとLMOとからなり、したがって、その他の活物質を2Mol%以上の規模で含んでいないのが好ましい。この場合、さらに、前記支持体に被着される材料は実質的に活物質であり、つまり、それぞれ前記材料の総重量を基準にして(したがって、活物質に加えて導電性添加剤、結合剤、安定剤等を含んでもよく、支持体を除く前記カソード電極全体を基準にして)、前記カソード電極の前記支持体に被着される材料の80〜95重量パーセント、より好ましくは86〜93重量パーセントは前記活物質であるのが好ましい。活物質としてのNMCと活物質としてのLMOとの重量パーセントの比は、9(NMC):1(LMO)〜3(NMC):7(LMO)に達するのが好ましく、その際、この比は7(NMC):3(LMO)〜3(NMC):7(LMO)であるのが好ましく、さらに、6(NMC):4(LMO)〜4(NMC):6(LMO)であるのがより好ましい。
【0026】
好適な実施形態では、電極は本発明による集電体を使用して製造される。そのために先ず、本発明による集電体が準備・供給される。続いて、第1の物質が前記集電体とくに前記集電体の通過領域に被着される。その際、前記第1の物質ないし前記物質の粒子は前記第1の接触子の多数と化学的および/または物理的に結合する。好ましくは、前記第1の物質は所定のパターンで前記集電体の前記通過領域に被着されている。したがって、前記集電体の前記通過領域は好ましくは所定の区域のみが前記第1の物質で被覆されている。好ましくは、前記第1の物質は、前記集電体の肉厚以下の層厚さにて被着されている。さらに、電極活物質が前記集電体の前記通過領域に被着される。その際、前記第1の物質は少なくともその一部区域が前記電極活物質と前記集電体の前記通過領域の間に配置されている。前記第1の物質は、好ましくは、炭素と、前記電極活物質の1成分および/または前記セパレータの1成分とを有する混合物である。
【0027】
好ましくは、自動車駆動装置へのエネルギー供給を目的として、本発明による少なくとも1つの集電体を有するバッテリーが設けられている。
本願明細書記載の発明のその他の利点、特徴および適用可能性は、図面を参照して行われる以下の説明から明らかになる。各図は以下を示している。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1a】本発明による集電体の側面図である。
【図1b】本発明による集電体の斜視図である。
【図2】2つの通過領域と接続領域とを有する本発明による集電体と、第1の物質を有する2つの層と、2つの電極活物質とを含んでなる電極の側面図である。
【図3】本発明による2つの集電体と電極とを有する電気化学的エネルギー貯蔵装置の分解図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
図1aは、正確な縮尺では描かれていない側面断面図であるが、本発明による集電体1を示している。集電体1は、この集電体1の互いに対向する外面に配された2つの通過領域2を有している。通過領域2は集電体1の外面の大部分に及んでいる。これら通過領域2各々は多数におよぶ第1の接触子3を有している。これら第1の接触子3はそれぞれ1自由端4を有している。これら第1の接触子3は通過領域2を出て集電体1の周囲に突き出している。第1の接触子3は不規則な形状を有している。第1の接触子3の平均直径は20〜30nmである。個々の第1の接触子3の長さは集電体1の肉厚以下である。第1の接触子3は主に炭化アルミニウムを有する。集電体1は主にアルミニウムを有する。同図から、幾本かの第1の接触子3は少なくとも1つのさらに別の第1の接触子3と結合されて、個々にループも形成していることを看取することができる。その他の第1の接触子3は単独のままである。
【0030】
図1bは、ハッチングで表した通過領域2を有する集電体1の斜視図である。この通過領域2は集電体1の外面に配されて、前記外面の大部分に及んでいる。同一の外面には接続領域9も配されている。図1bにおいて、通過領域2は、図を見易くするために、第1の接触子を付けずに表されている。また、集電体1が接続領域9で接続ケーブルと連結されていることも図示されていない。
【0031】
図2は、2つの通過領域2、2aと接続領域9を設けた集電体1と、第1の物質を有する2つの層5、5aと、2つの電極活物質7、7aとを含んでいる電極6を側方から見た図を示している。集電体1の接続領域9には接続ケーブル8がネジ留めされている。通過領域2、2aは、集電体1の互いに対向する異なる外面に配置されている。第1の接触子3はこれら通過領域2、2aを出て、物質5、5aの層を貫通し、電極活物質7、7a中に延びて入り込んでいる。電極活物質7、7aは、炭素と電気化学的活性成分とからなる混合物を有している。図2において、個々の層の厚さは正確な縮尺ではなく、模式的に表されている。第1の物質を有する層5、5aは種々さまざまなサイズの粒子を有している。これらの粒子は、図をわかりやすくするために、円形で表されているが、実際には不規則な形状を有しており、その形状は使用される製造方法に依存する。電極活物質7、7aは、スピネル型構造では存在していないリチウムニッケルマンガンコバルト混合酸化物(NMC)とスピネル型構造を有するリチウムマンガン酸化物(LMO)とからなる混合物を含んでいる。
【0032】
図3は、2個の電極6、6aと1つのセパレータ11とを有する電気化学的エネルギー貯蔵装置10を示している。電極6、6aの構造は図2に示した構造と実質的に同じである。セパレータ11は第2の接触子12、12a、12bを有している。これら第2の接触子12、12a、12bは接触領域13、13aを出て周囲に突き出している。セパレータ11と第2の接触子12、12a、12bの材料は実質的に同一である。第2の接触子12、12bは不規則な形状を有している。図中には、別な実施形態を表すために、第2の接触子12aも記入されている。これらの接触子は接触領域13、13aを出て実質的に直線状に延びている。電気化学的エネルギー貯蔵装置10が組み立てられた状態において、第2の接触子12、12a、12bはそれぞれ隣接する電極活物質ないし活物質中に延びて入り込んでいる。セパレータ11は電解質の一部(この場合、リチウムイオン)を含んでいる。セパレータ11にはあらかじめ電解液が含浸し、溶媒は蒸発除去されている。セパレータはSeparion(登録商標)から作られている。ペースト状の電極活物質7はカンラン石型構造のLiFePOを有し、カソードないし正極として機能する。電極活物質7aはアノードとして機能し、ハードカーボン層として形成された非晶質炭素修飾を有している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気化学的エネルギー貯蔵装置の電極に用いられ、電子が前記集電体(1)内に流入または前記集電体(1)から流出し得る通過領域(2,2a)を有する、角柱状の集電体(1)において、
前記通過領域(2,2a)は多数の細片状の第1の接触子(3,3a)を有し、前記第1の接触子(3,3a)の少なくとも1つは自由端(4)を有し、前記第1の接触子(3,3a)の少なくとも1つは前記通過領域(2,2a)を出て周囲に突き出していることを特徴とする集電体(1)。
【請求項2】
前記通過領域(2,2a)は少なくともその一部区域が第1の物質(5,5a)によって被覆され、
前記第1の接触子(3,3a)の少なくとも1つの自由端(4)は前記第1の物質(5,5a)中に延び入り、前記第1の接触子(3,3a)の少なくとも1つの自由端(4)は前記第1の物質(5,5a)と結合されるか、または少なくとも2本の前記第1の接触子(3,3a)の自由端(4)どうしは互いに結合されているか、あるいはその両方であることを特徴とする請求項1に記載の集電体(1)。
【請求項3】
請求項1または2に記載の集電体(1)と、エネルギー貯蔵およびエネルギー供給のために、または前記集電体(1)の通過領域(2,2a)との電子交換のために、あるいはその両方のために設けられている電極活物質(7,7a)とを有する、電気化学的エネルギー貯蔵装置(10)の電極(6)。
【請求項4】
請求項3に記載の2つの電極(6,6a)と、前記2つの電極(6,6a)の電極活物質(7,7a)間に配置されたセパレータ(11)とを有する電気化学的エネルギー貯蔵装置(10)。
【請求項5】
前記セパレータ(11)は少なくとも1つの接触領域(13,13a)を有し、
前記接触領域(13,13a)は多数の細片状の第2の接触子(12,12a,12b)を有し、
前記第2の接触子(12,12a,12b)の少なくとも1つは前記接触領域(13,13a)を出て周囲に突き出しており、
前記第2の接触子(12,12a,12b)の少なくとも1つは隣接する電極活物質(7,7a)中に延びて入り込んでいることを特徴とする請求項4に記載の電気化学的エネルギー貯蔵装置(10)。
【請求項6】
少なくとも1つのセパレータ(11)を備え、前記セパレータ(11)は電子伝導性を持たないかまたは電子伝導性が劣っている少なくとも部分的に物質透過性を有する支持体からなり、前記支持体は少なくとも片面が無機材料でコートされ、かつ前記部分的に物質透過性を有する支持体として有機材料が使用され、前記有機材料は不織布として形成されており、前記有機材料はポリマーまたはポリエチレンテレフタレート(PET)あるいはその両方を含み、
かつ前記有機材料は、イオン伝導性、より好ましくは−40℃〜200℃の温度範囲でイオン伝導性を有する無機材料でコートされており、前記無機材料は、Zr、Al、Liの少なくともいずれか1つの元素の酸化物、リン酸塩、硫酸塩、チタン酸塩、ケイ酸塩、アルミノケイ酸塩の群の少なくともいずれか1つの化合物、特に好ましくはジルコニアを含み、前記のイオン伝導性無機材料は好ましくは最大直径100nm以下の粒子を有する請求項4または5に記載の電気化学的エネルギー貯蔵装置(10)。
【請求項7】
少なくとも1つの電極(6)を含み、Mは元素周期系の第1遷移元素系列の少なくとも1つの遷移金属カチオンであるとともに前記遷移金属カチオンは好ましくは、Mn、Fe、NiおよびTiまたはこれらの元素の組み合わせからなる群から選択されたものであるところの化学式LiMPOで示される化合物を有する少なくとも1つのカソードを有し、前記化合物はカンラン石型構造、好ましくは上位のカンラン石を有し、その際、Feが特に好ましいことを特徴とする請求項4から6のいずれか1項に記載の電気化学的エネルギー貯蔵装置(10)。
【請求項8】
少なくとも1つの電極(6)を含み、好ましくは、マンガン酸リチウム好ましくはスピネル型のLiMn、コバルト酸リチウム好ましくはLiCoO、ニッケル酸リチウム好ましくはLiNiOまたはこれらの酸化物のうちの2つまたは3つ酸化物からなる混合物または、マンガン、コバルトおよびニッケルを含むリチウム混合酸化物を有する少なくとも1つのカソードを有することを特徴とする請求項4から7のいずれか1項に記載の電気化学的エネルギー貯蔵装置(10)。
【請求項9】
前記カソード電極(6)は少なくとも1つの活物質が被着または蒸着されている少なくとも1つの支持体を備え、前記活物質はスピネル型構造では存在していないリチウムニッケルマンガンコバルト混合酸化物(NMC)とスピネル型構造を有するリチウムマンガン酸化物(LMO)とからなる混合物を含んでいることを特徴とする請求項4から8のいずれか1項に記載の電気化学的エネルギー貯蔵装置(10)。
【請求項10】
請求項4〜9のいずれか1項に記載の少なくとも1つの電気化学的エネルギー貯蔵装置(10)を有するバッテリー。
【請求項11】
請求項3に記載の電極(6)を製造するための方法であって、
a)前記集電体(1)を準備・供給するステップと、
b)第1の物質(5,5a)を前記集電体の通過領域(2,2a)に被着するステップと、
c)電極活物質(7,7a)を前記第1の物質(5,5a)に被着するステップと、
からなり、
前記第1の物質(5,5a)は前記第1の接触子(3,3a)の少なくとも1つと化学的に結合または物理的に結合あるいはその両方で結合される方法。

【図1a】
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【図1b】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2013−509676(P2013−509676A)
【公表日】平成25年3月14日(2013.3.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−535669(P2012−535669)
【出願日】平成22年10月25日(2010.10.25)
【国際出願番号】PCT/EP2010/006509
【国際公開番号】WO2011/050936
【国際公開日】平成23年5月5日(2011.5.5)
【出願人】(511173550)リ−テック・バッテリー・ゲーエムベーハー (85)
【Fターム(参考)】