説明

速度算出装置及び速度算出方法並びにナビゲーション装置及びナビゲーション機能付携帯電話機

【課題】車両の速度を高精度に算出できるようにする。
【解決手段】PND1の制御部12は、自律速度算出部22により、加速度αz及びピッチレートωyの相互相関ρα,ωを用いて当該加速度αz及びピッチレートωyの相関が最も高くなるような時間差ΔTを算出し、設置距離Dを当該時間差ΔTで除算することにより時間差速度VTを算出する。この結果PND1は、GPS信号を受信することができない場合であっても、車両9の速度として当該時間差速度VTを用いることができる。さらにPND1は、時間差速度VTを基に車両9の現在位置を高精度に算出することができ、適切な範囲の地図画面を表示部2に表示できると共に正しい経路案内を行うことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は速度算出装置及び速度算出方法並びにナビゲーション装置及びナビゲーション機能付携帯電話機に関し、例えば携帯型ナビゲーション装置に適用して好適なものである。
【背景技術】
【0002】
従来、ナビゲーション装置においては、複数のGPS(Global Positioning System)衛星からの測位信号(以下、これをGPS信号とも呼ぶ)を受信し、当該GPS信号に基づいて移動体(例えば車両等)の現在位置を算出するようになされている。
【0003】
しかしながらこのようなナビゲーション装置では、当該ナビゲーション装置を載置した車両が例えばトンネルや地下駐車場等の中に入った場合、GPS衛星からのGPS信号を受信できず、当該GPS信号に基づいて車両の現在位置を算出することができない。
【0004】
そこでナビゲーション装置のなかには、GPS信号が受信できなくなった場合であっても、コーナリング時において、車両の進行方向に直交した水平方向の加速度と、当該進行方向に直交した垂直軸周りの角速度とを基に進行方向の速度を算出し、当該進行方向の速度に基づいて現在位置を算出するものがある(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−76389公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、かかる構成のナビゲーション装置においては、水平方向の加速度及び垂直軸周りの角速度とを基に算出する進行方向の速度の精度が必ずしも高くないため、当該速度を基に算出する現在位置にもある程度の誤差が含まれてしまう。
【0007】
この結果ナビゲーション装置は、地図表示や経路案内等における位置精度が低下してしまい、適切な地図や経路を提示できない恐れがある、という問題があった。
【0008】
本発明は以上の点を考慮してなされたもので、車両の速度を高精度に算出し得る速度算出装置及び速度算出方法、並びに車両の位置を高精度に算出し得るナビゲーション装置及びナビゲーション機能付携帯電話機を提案しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
かかる課題を解決するため本発明の速度算出装置及び速度算出方法においては、移動面に沿って移動する移動体に取り付けられた本体部に搭載された水平角速度検出部により、移動面の傾斜角度に応じて発生する移動体の進行方向と直交した水平軸周りの角速度でなる水平軸角速度を検出し、本体部に搭載された垂直加速度検出部により、移動面の形状に応じて発生する垂直方向の加速度でなる垂直加速度を検出し、所定の時間差算出部により、移動面の所定箇所に起因して水平軸角速度に表れる特徴成分と垂直加速度に表れる特徴成分との時間差を算出し、所定の速度算出部により、移動体全体として水平角速度が作用すると見なしうる位置から本体部の設置位置までの距離を表す設置距離と時間差との比率を基に、移動体の進行方向の速度を表す時間差速度を算出するようにした。
【0010】
移動体には、移動面の形状に応じて当該移動体内の箇所毎に垂直加速度が発生する一方、移動体全体として水平角速度が変化し当該水平角速度が所定の箇所に作用すると見なし得る。このため本発明では、水平角速度が作用すると見なし得る箇所から設置位置までの距離と、垂直加速度及び水平角速度の時間差との比率から、当該移動体の速度を精度良く算出することができる。
【0011】
また本発明のナビゲーション装置においては、移動面に沿って移動する移動体に取り付けられた本体部に搭載され、移動面の傾斜角度に応じて発生する移動体の進行方向と直交した水平軸周りの角速度でなる水平軸角速度を検出する水平角速度検出部と、本体部に搭載され、移動面の形状に応じて発生する垂直方向の加速度でなる垂直加速度を検出する垂直加速度検出部と、移動面の所定箇所に起因して水平軸角速度に表れる特徴成分と垂直加速度に表れる特徴成分との時間差を算出する時間差算出部と、移動体全体として水平角速度が作用すると見なしうる位置から本体部の設置位置までの距離を表す設置距離と時間差との比率を基に、移動体の進行方向の速度を表す時間差速度を算出する速度算出部と、移動体の進行方向に垂直な垂直軸周りの角速度を算出する垂直方向角速度検出部と、垂直軸周りの角速度に基づいて移動体が旋回した角度を算出する角度算出部と、速度算出部により算出された進行方向の速度と、角度算出部により算出された角度とに基づいて、移動体の位置を算出する位置算出部とを設けるようにした。
【0012】
移動体には、移動面の形状に応じて当該移動体内の箇所毎に垂直加速度が発生する一方、移動体全体として水平角速度が変化し当該水平角速度が所定の箇所に作用すると見なし得る。このため本発明では、水平角速度が作用すると見なし得る箇所から設置位置までの距離と、垂直加速度及び水平角速度の時間差との比率から、当該移動体の速度を精度良く算出することができ、当該移動体の速度及び算出された角度を基に、当該移動体の位置を精度良く算出することができる。
【0013】
さらに本発明のナビゲーション機能付携帯電話機においては、移動面に沿って移動する移動体に取り付けられた本体部に搭載され、移動面の傾斜角度に応じて発生する移動体の進行方向と直交した水平軸周りの角速度でなる水平軸角速度を検出する水平角速度検出部と、本体部に搭載され、移動面の形状に応じて発生する垂直方向の加速度でなる垂直加速度を検出する垂直加速度検出部と、移動面の所定箇所に起因して水平軸角速度に表れる特徴成分と垂直加速度に表れる特徴成分との時間差を算出する時間差算出部と、移動体全体として水平角速度が作用すると見なしうる位置から本体部の設置位置までの距離を表す設置距離と時間差との比率を基に、移動体の進行方向の速度を表す時間差速度を算出する速度算出部と、移動体の進行方向に垂直な垂直軸周りの角速度を算出する垂直方向角速度検出部と、垂直軸周りの角速度に基づいて移動体が旋回した角度を算出する角度算出部と、速度算出部により算出された進行方向の速度と、角度算出部により算出された角度とに基づいて、移動体の位置を算出する位置算出部と、所定の基地局との間で無線通信を行うことにより通話処理を行う携帯電話部とを設けるようにした。
【0014】
移動体には、移動面の形状に応じて当該移動体内の箇所毎に垂直加速度が発生する一方、移動体全体として水平角速度が変化し当該水平角速度が所定の箇所に作用すると見なし得る。このため本発明では、水平角速度が作用すると見なし得る箇所から設置位置までの距離と、垂直加速度及び水平角速度の時間差との比率から、当該移動体の速度を精度良く算出することができ、当該移動体の速度及び算出された角度を基に、当該移動体の位置を精度良く算出することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、水平角速度が作用すると見なし得る箇所から設置位置までの距離と、垂直加速度及び水平角速度の時間差との比率から、当該移動体の速度を精度良く算出することができる。かくして本発明は、移動体の速度を高精度に算出し得る速度算出装置及び速度算出方法を実現できる。
【0016】
また本発明によれば、水平角速度が作用すると見なし得る箇所から設置位置までの距離と、垂直加速度及び水平角速度の時間差との比率から、当該移動体の速度を精度良く算出することができ、当該移動体の速度及び算出された角度を基に、当該移動体の位置を精度良く算出することができる。かくして本発明は、移動体の位置を高精度に算出し得るナビゲーション装置及びナビゲーション機能付携帯電話機を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】PNDの全体構成を示す略線図である。
【図2】車両に対するPNDの取付位置を示す略線図である。
【図3】PNDにおけるセンサ構成及び座標径の定義を示す略線図である。
【図4】車両前方における加速度及びピッチレートの測定結果を示す略線図である。
【図5】車両中央における加速度及びピッチレートの測定結果を示す略線図である。
【図6】車両後方における加速度及びピッチレートの測定結果を示す略線図である。
【図7】車両の進行方向を示す略線図である。
【図8】前進時における加速度及びピッチレートの測定結果を示す略線図である。
【図9】後退時における加速度及びピッチレートの測定結果を示す略線図である。
【図10】カーブ走行時の様子を示す略線図である。
【図11】自律速度及び角度を用いた現在位置の算出を示す略線図である。
【図12】第1の実施の形態によるPNDの回路構成を示す略線図である。
【図13】第1の実施の形態による自律速度算出部の構成を示す略線図である。
【図14】離散的なずれ量と加速度及びピッチレートの波形との関係を示す略線図である。
【図15】ずれ量と相互相関値との関係を示す略線図である。
【図16】現在位置算出処理手順を示すフローチャートである。
【図17】速度算出処理手順を示すフローチャートである。
【図18】時間差算出処理手順を示す略線図である。
【図19】時間差速度の算出結果を示す略線図である。
【図20】GPS速度の算出結果を示す略線図である。
【図21】第2の実施の形態によるPNDの回路構成を示す略線図である。
【図22】第2の実施の形態による自律速度算出部の構成を示す略線図である。
【図23】凹凸路面の走行時の様子を示す略線図である。
【図24】離散的な時間差と時間差速度との関係を示す略線図である。
【図25】携帯電話機の全体構成を示す略線図である。
【図26】携帯電話機の回路構成を示す略線図である。
【図27】他の実施の形態による使用例を示す略線図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、発明を実施するための形態(以下実施の形態とする)について、図面を用いて説明する。なお、説明は以下の順序で行う。
1.第1の実施の形態(ナビゲーション装置・時間差速度を用いる例)
2.第2の実施の形態(ナビゲーション装置・時間差速度及びうねり速度を切り替えて用いる例)
3.第3の実施の形態(携帯電話装置)
4.他の実施の形態
【0019】
<1.第1の実施の形態>
[1−1.PNDの構成]
本発明においては、ナビゲーション装置として、図1に示すような携帯型ナビゲーション装置(以下、これをPND(Personal Navigation Device)1とも呼ぶ)を用いる。
【0020】
PND1は、その前面に表示部2が設けられており、内蔵された不揮発性メモリ等(後述する)に格納されている地図データに応じた地図画像等を表示部2に表示し、その内容をユーザに提示し得るようになされている。
【0021】
またPND1は、クレードル10に装着されると、当該クレードル10に対し機械的かつ電気的に接続される。このクレードル10は、吸盤10Aを介して、図2に示す車両9のダッシュボード上等に取付けられるようになされている。
【0022】
これによりPND1は、クレードル10を介して車両9のバッテリから供給される電源電力により動作すると共に、当該クレードル10から取り外されたときには内蔵のバッテリから供給される電力によって独立した状態でも動作するようになされている。
【0023】
因みに車両9に対するクレードル10及びPND1の取付箇所としては、車両9の車室内における比較的前方の設置位置N1の他、当該車室内におけるほぼ中央の設置位置N2や当該車室内の比較的後方の設置位置N3等とすることもできる。
【0024】
ここでPND1は、その表示部2が車両9の進行方向に対してほぼ垂直となるように設置されている。このときPND1の座標系は、図3に示すように、車両9の前後方向(進行方向)をX軸、当該X軸に直交した水平方向をY軸、上下方向をZ軸によって表される。
【0025】
この座標系では、車両9の進行方向をX軸の正と定義し、また右方向をY軸の正と定義し、さらに下方向をZ軸の正と定義することとする。
【0026】
またPND1は、その内部に3軸加速度センサ4、Y軸ジャイロセンサ5及びZ軸ジャイロセンサ6が設けられている。
【0027】
3軸加速度センサ4は、所定のサンプリング周期で、X軸に沿った加速度αx、Y軸に沿った加速度αy、及びZ軸に沿った加速度αzをそれぞれ電圧値として検出するようになされている。
【0028】
またY軸ジャイロセンサ5及びZ軸ジャイロセンサ6は、所定のサンプリング周期で、Y軸周りのピッチレートωy及びZ軸周りのヨーレートωzをそれぞれ電圧値として検出するようになされている。
【0029】
[1−2.基本原理]
ところで本発明のPND1は、3軸加速度センサ4及びY軸ジャイロセンサ5等により検出した加速度及びピッチレート等に基づき、路面上を移動する車両9の速度(以下これを自律速度Vと呼ぶ)を算出した上で現在位置を算出する自律測位処理を行い得るようにもなされている。ここでは、当該速度及び現在位置を算出する基本原理について説明する。
【0030】
因みに移動体としての車両9は、車軸を2軸有し、一般的な乗用車と同様、前側の車軸を中心に回転する前輪及び後ろ側の車軸を中心に回転する後輪をそれぞれ2輪ずつ有する4輪自動車とする。
【0031】
[1−2−1.速度算出の基本原理]
一般に、移動面としての路面は完全に平坦であることは殆ど無く、ある程度の凹凸を有していることが多い。車両9は、路面上を走行する際、重力の作用により各車輪を路面に当接させながら当該車輪を回転させることにより、当該路面に沿って移動する。
【0032】
ここで、例えば車両9が段差に乗り上げた瞬間を想定すると、垂直方向の加速度は、車両の前方では大きな値となる一方、車両の後方では小さな値となる。すなわち車両9では、当該車両9内の各箇所ごとに、当該箇所に応じて垂直方向の加速度が生じる。
【0033】
このため車両9に取り付けられたPND1は、3軸加速度センサ4により、その取付位置における加速度αzを検出することができる。
【0034】
一方、車両9では、各車輪が路面に当接した状態を維持しながら移動するため、ボディ全体が傾きを変化させ、Y軸(図3)周りの角速度(すなわちピッチレートωy)が生じる。この角速度は、前後の各車輪が路面の形状に追従することに起因して生じるため、前後の車軸の中点WM(図2)に作用すると見なすことができる。
【0035】
すなわち、例えば車両9において前方の設置位置N1(図2)にPND1が設置されている場合、加速度αzは設置位置N1における検出値となり、ピッチレートωyは車軸の中点WMにおける検出値となる。
【0036】
例えば一部が隆起した路面上を車両9が前進走行している場合、所定の時点Tαで加速度αzの検出値に当該隆起箇所に応じた特徴成分が表れた後、ある程度の時間差ΔTを経て、所定の時点Tωでピッチレートωyの検出値に当該隆起箇所に応じた特徴成分が表れることになる。
【0037】
ここで、車両9の設置位置N1(前方)、N2(中央)及びN3(後方)にそれぞれPND1を設置して実際の道路を走行し、このとき得られた加速度αz及びピッチレートωyの測定結果を図4、図5及び図6にグラフとして示す。
【0038】
図4から、車両9における前方の設置位置N1にPND1を設置した場合、加速度αzがピッチレートωyよりも約0.08[s]先行することがわかる。
【0039】
また図5から、車両9におけるほぼ中央の設置位置N2にPND1を設置した場合、加速度αzとピッチレートωyとはほぼ同時に変化することがわかる。
【0040】
さらに図6から、車両9における後方の設置位置N3にPND1を設置した場合、加速度αzがピッチレートωyよりも約0.2[s]遅延することがわかる。
【0041】
このように、車両9におけるPND1の設置位置に応じて、加速度αz及びピッチレートωyに表れる特徴成分の前後関係や時間差ΔTが異なることが確認された。
【0042】
ここで時間差ΔTは、時間、距離及び速度の一般的な関係から、PND1が設置された設置位置N1から車軸の中点WMまでの距離(以下これを設置距離Dと呼ぶ)と、このときの車両9の速度とに応じた値となる。
【0043】
すなわちPND1は、設置距離D及び時間差ΔTを得ることができれば、次に示す(1)式に従った演算処理を行うことにより、車両9の速度(以下このように算出した速度を時間差速度VTと呼ぶ)を算出することができる。
【0044】
【数1】

【0045】
ところで車両9は、図7(A)及び(B)に示すように、前進するのみでなく後退する場合もある。
【0046】
ここで、車両9における前方の設置位置N1にPND1を設置して実際の道路を前進及び後退させ、このとき得られた加速度αz及びピッチレートωyの測定結果を図8及び図9にグラフとして示す。
【0047】
図8から、前方の設置位置N1にPND1を設置した車両9が前進する場合には、図4の場合と同様、加速度αzがピッチレートωyよりも先行することが分かる。
【0048】
一方、図9から前方の設置位置N1にPND1を設置した車両9が後退する場合には、図6の場合と同様、すなわち車両9における後方の設置位置N3にPND1を取り付けた場合と同様、加速度αzがピッチレートωyよりも遅延することが分かる。
【0049】
このような関係から、PND1は、車両9における設置位置が判明していれば、加速度αz及びピッチレートωyの前後関係、すなわちいずれが先行又は遅延しているかを判別することにより、当該車両9の進行方向(前進又は後退)を認識することも可能となる。
【0050】
このように本発明では、設置距離D及び時間差ΔTを基に車両9の自律速度Vとして時間差速度VTを算出し、また加速度αz及びピッチレートωyの前後関係を基に当該車両9の進行方向を認識し得るようになされている。
【0051】
[1−2−2.現在位置の算出原理]
次に、上述した速度算出原理により算出した自律速度Vと、Z軸回りの角速度とに基づいて現在位置を算出する現在位置算出原理について説明する。
【0052】
図10に示すように、PND1は、車両9が例えば左旋回している時のZ軸回りの角速度(以下、これをヨーレートとも呼ぶ)ωzをZ軸ジャイロセンサ6(図3)によって所定のサンプリング周期(例えば0.02[s])で検出する。
【0053】
次にPND1は、図11に示すように、前回の位置P0における自律速度V(時間差速度VT)と、ヨーレートωzにサンプリング周期を積算することにより得られる角度θとを基に、前回の位置P0から現在位置P1までの変化量を求める。そしてPND1は、この変化量を前回の位置P0に加えることによって現在位置P1を算出し得るようになされている。
【0054】
[1−3.PNDの回路構成]
図12に示すように、PND1は、制御部12及び各種センサが設けられナビゲーション機能を実現するナビゲーションユニット11を中心に構成されている。
【0055】
制御部12は、CPU(Central Processing Unit)構成でなり、例えば不揮発性メモリ等でなる記憶部13から読み出した基本プログラムによって全体を統括制御するようになされている。
【0056】
また制御部12は、記憶部13から読み出した各種アプリケーションプログラムに従い、後述する速度算出処理や現在位置算出処理等を実行するようになされている。
【0057】
さらにPND1は、表示部2と一体化したタッチパネル等でなる操作部3を有している。操作部3は、タッチパネル等を介してユーザによる操作指示を受け付けると、その操作内容を制御部12に通知する。
【0058】
制御部12は、操作部3から通知される操作内容に応じて、目的地の設定等といったユーザの操作内容に応じた処理を行うようになされている。
【0059】
ナビゲーション処理を行う場合、制御部12は、GPS処理部21、自律速度算出部22、角度算出部23、位置算出部25及びナビゲーション部26として機能するようになされている。
【0060】
制御部12は、GPS衛星からGPS信号を受信できる場合には、GPS処理部21により、当該GPS信号に基づいて測位するGPS測位処理を行い得るようになされている。
【0061】
すなわちPND1は、GPSアンテナANT1によって受信した複数のGPS衛星からのGPS信号を制御部12のGPS処理部21へ送出する。
【0062】
GPS処理部21は、複数のGPS信号をそれぞれ復調することにより得られる軌道データと、複数のGPS衛星から車両9までの距離データとに基づいて車両9の現在位置を正確に測位することにより現在位置データNPD1を得、これをナビゲーション部26へ送出する。
【0063】
またGPS処理部21は、過去及び現在の現在位置データNPD1を基に車両9の速度(以下これをGPS速度VGと呼ぶ)を算出し、これを自律速度算出部22へ送出する。
【0064】
ところでPND1は、GPS衛星からのGPS信号を受信できないときにGPS測位処理を行うことができない。そこでPND1は、主にGPS信号を受信できないときに、各種センサの検出値を基に自律速度Vを算出した上で現在位置を算出する自律測位処理を行い得るようにもなされている。
【0065】
具体的にPND1は、この自律速度Vとして、上述した算出原理に基づく時間差速度VTを算出するようになされている。
【0066】
すなわち3軸加速度センサ4は、加速度αx、αy及びαzを例えば50[Hz]のサンプリング周波数で検出し、当該加速度αx、αy及びαzのうち、加速度αzが示された加速度データADを制御部12の自律速度算出部22へ送出する。
【0067】
Y軸ジャイロセンサ5は、ピッチレートωyを例えば50[Hz]のサンプリング周波数で検出しており、当該ピッチレートωyが示されたピッチレートデータPDを制御部12の自律速度算出部22へ送出する。
【0068】
自律速度算出部22は、3軸加速度センサ4から供給された加速度データADに相当する加速度αzと、Y軸ジャイロセンサ5から供給されたピッチレートデータPDに相当するピッチレートωyとを基に、(1)式を用いて1秒当たり50回、時間差速度VTを算出する(詳しくは後述する)。
【0069】
続いて自律速度算出部22は、時間差速度VTを自律速度Vとし、当該自律速度Vを表す自律速度データVDを位置算出部25へ送出する。
【0070】
またZ軸ジャイロセンサ6は、ヨーレートωzを例えば50[Hz]のサンプリング周波数で検出しており、当該ヨーレートωzが示されたヨーレートデータYDを制御部12の角度算出部23へ送出する。
【0071】
角度算出部23は、Z軸ジャイロセンサ6から供給されたヨーレートデータYDに相当するヨーレートωzにサンプリング周期(0.02[s])を積算することにより、車両9が右旋回又は左旋回したときの角度θを算出し、その角度θが示された角度データDDを位置算出部25へ送出する。
【0072】
位置算出部25は、自律速度算出部22から供給された自律速度データVDに相当する自律速度V、及び角度算出部23から供給された角度データDDに相当する角度θを基に、図11に示したような前回の位置P0から現在位置P1までの変化量を求める。
【0073】
そして位置算出部25は、この変化量を前回の位置P0に加えることによって現在位置P1を算出し、その現在位置P1が示された現在位置データNPD2をナビゲーション部26へ送出する。
【0074】
ナビゲーション部26は、GPS処理部21から供給された現在位置データNPD1又は位置算出部25から供給された現在位置データNPD2を基に、車両9の現在位置が含まれる周辺の地図データを記憶部13から読み出す。
【0075】
そしてナビゲーション部26は、その現在位置が含まれる地図画像を生成した後、表示部2へ出力することにより当該地図画像を表示するようになされている。
【0076】
このようにPND1は、GPS信号に基づいた現在位置データNPD1又は各種センサの検出値を基に生成された現在位置データNPD2を基に、車両9の現在位置が含まれる周辺の地図画像を生成して表示部2に表示させるようになされている。
【0077】
[1−4.速度算出処理]
次に、3軸加速度センサ4から供給された加速度データADに相当する加速度αz及びY軸ジャイロセンサ5から供給されたピッチレートデータPDに相当するピッチレートωyに基づき、自律速度算出部22によって時間差速度VTを算出する速度算出処理について説明する。
【0078】
自律速度算出部22は、速度算出処理を実行する際、図13に示すように、アンチエイリアシングフィルタ31、アナログ・ディジタル(A/D)変換器32、ローパスフィルタ・ハイパスフィルタ(LPF/HPF)処理部33、時間差算出部34、時間差速度算出部35、平滑化フィルタ36、自律速度出力部37及び設置距離設定部38として機能する。
【0079】
自律速度算出部22は、3軸加速度センサ4から供給される加速度データAD及びY軸ジャイロセンサ5から供給されるピッチレートデータPDをそれぞれアンチエイリアシングフィルタ32へ供給する。
【0080】
アンチエイリアシングフィルタ31は、加速度データAD及びピッチレートデータPDについて、A/D変換器33におけるサンプリング周波数(50[Hz])の半分を超える周波数成分をそれぞれ除去し、これらをA/D変換器32へ送出する。
【0081】
A/D変換器32は、50[Hz]のサンプリング周波数で加速度データAD及びピッチレートデータPDをそれぞれアナログ信号からディジタル信号へ変換し、その結果生成される加速度データAD1及びピッチレートデータPD1をLPF/HPF処理部33へ供給する。
【0082】
LPF/HPF処理部33は、加速度データAD1及びピッチレートデータPD1の直流成分及び高域成分をそれぞれ除去し、その結果得られる加速度データAD2及びピッチレートデータPD2を時間差算出部34へ供給する。
【0083】
時間差算出部34は、加速度データAD2及びピッチレートデータPD2を基に、互いに対応する特徴成分同士が出現する時間差ΔTを算出する。
【0084】
ここで時間差算出部34は、加速度データAD2が表す加速度αz及びピッチレートデータPD2が表すピッチレートωyの相関を利用して時間差ΔTを算出し、これを時間差速度算出部35へ送出するようになされている(詳しくは後述する)。
【0085】
また時間差算出部34は、加速度αz又はピッチレートωyのいずれが先行しているかを表す先行情報IAを生成し、これを時間差速度算出部35へ送出するようになされている。
【0086】
時間差速度算出部35は、時間差算出部34から供給された時間差ΔT及び設置距離D(算出処理については後述する)を上述した(1)式に代入することにより時間差速度VTを算出する。また時間差速度算出部35は、先行情報IAを基に、車両9の進行方向が前方又は後方のいずれであるかを判断し、その判断結果に応じて時間差速度VTの符号を正(前進)又は負(後退)に設定する。その上で時間差速度算出部35は、時間差速度VTを表す時間差速度データVTD0を平滑化及びノイズ除去部36へ送出する。
【0087】
平滑化及びノイズ除去部36は、時間差速度計算部35から供給された時間差速度データVTD0に対して所定の平滑化及びノイズ除去処理を施すことにより、時間差速度VTに含まれる誤差を縮小し、その結果得られる時間差速度データVTDを自律速度出力部37へ送出する。
【0088】
自律速度出力部37は、平滑化及びノイズ除去部36から供給された時間差速度データVTDを所定の最低出力閾値THLと比較する。
【0089】
ここで最低出力閾値THLは、例えば3[km/h]に設定されている。時間差速度データVTが最低出力閾値THL未満である場合、実際には車両9が移動しておらず静止しており、加速度センサ4等の誤検出等に基づく値である可能性が高いと考えられる。
【0090】
そこで自律速度出力部37は、時間差速度データVTDが最低出力閾値THL未満であれば時間差速度データVTDを値「0」に置き換え、当該時間差速度データVTDを自律速度データVDとして位置算出部25(図12)へ送出する。
【0091】
このように自律速度算出部22は、加速度αz及びピッチレートωyの相関を用いて時間差ΔTを算出した上で、(1)式に従って時間差速度VTを算出するようになされている。
【0092】
[1−4−1.時間差の算出処理]
次に、時間差算出部34による時間差ΔTの算出処理について説明する。時間差算出部34は、LPF/HPF処理部33からサンプリング周期毎に供給される加速度αz(加速度データAD2)及びピッチレートωy(ピッチレートデータPD2)を、記憶部13(図12)に順次記憶させるようになされている。
【0093】
続いて時間差算出部34は、現時点から過去の算出期間CP内(例えば過去1[s]内)に得られた加速度αzを記憶部13から読み出し、これらの加速度αzについて次の(2)式に従い標準偏差σαを算出する。
【0094】
【数2】

【0095】
因みに(2)式では、算出期間CP内に得られた加速度αzの個数をnとし、また算出期間内に得られた各加速度αzを便宜的にαz1、αz2、…、αznと表記している。
【0096】
また時間差算出部34は、現時点から算出期間CP内に得られたピッチレートωyを記憶部13から読み出し、これらのピッチレートωyについて次の(3)式に従い標準偏差σωを算出する。
【0097】
【数3】

【0098】
因みに(3)式では、(2)式の場合と同様、算出期間CP内に得られたピッチレートωyの個数をnとし、また算出期間内に得られた各ピッチレートωyを便宜的にωy1、ωy2、…、ωynと表記している。
【0099】
さらに時間差算出部34は、記憶部13から読み出した加速度αz及びピッチレートωyそれぞれについて、平均値μα及びμωをそれぞれ算出する。
【0100】
続いて時間差算出部34は、加速度αz及びピッチレートωyそれぞれの標準偏差σα及びσω並びにそれぞれの平均値μα及びμωを用いて、次の(4)式に従い加速度αz及びピッチレートωyの共分散cov(αz,ωy)を算出する。
【0101】
【数4】

【0102】
その後時間差算出部34は、共分散cov(αz,ωy)並びに標準偏差σα及びσωを用いて、次の(5)式に従い加速度αz及びピッチレートωyの相互相関ρα,ωを算出する。
【0103】
【数5】

【0104】
ここで相互相関ρα,ωは、そのときの算出期間CPにおける加速度αz及びピッチレートωyの相関性の高さに応じて高い値となる。
【0105】
これを換言すれば、加速度αz又はピッチレートωyの波形を時間軸方向に適宜移動させることにより、相互相関ρα,ωの値を高めることができる。
【0106】
ここで、一般には、PND1が車両9の車室内における前方に設置され、且つ当該車両9が前進する場合が多い、すなわち加速度αzがピッチレートωyよりも先行している可能性が高いと考えられる。
【0107】
そこで時間差算出部34は、加速度αzの波形を所定の移動範囲(例えば0.4[s])に渡って1サンプリング期間(例えば0.02[s])ずつ過去にずらしながら相互相関ρα,ωを順次算出し、当該相互相関ρα,ωとこのときのずれ量Hとを対応付けて記憶部13(図12)に記憶させる。
【0108】
ところで、実際には、車両9が後退する場合や、PND1が当該車両9の車室内における後方に設置される場合も考えられる。すなわちピッチレートωyが加速度αzよりも先行する場合もあり得る。
【0109】
そこで時間差算出部34は、加速度αzを過去へずらしながら算出した相互相関ρα,ωの最大値が所定の閾値未満であった場合、車両9が後退している、又はPND1が車両9の車室内における後方に設置されていると判断する。
【0110】
そして時間差算出部34は、加速度αzの波形を初期状態に戻し、ピッチレートωyの波形を移動範囲に渡って1サンプリング期間ずつ過去にずらしながら相互相関ρα,ωを順次算出し、当該相互相関ρα,ωとこのときのずれ量Hとを対応付けて記憶部13に記憶させる。
【0111】
次に時間差算出部34は、記憶部13に記憶している相互相関ρα,ωが最も大きくなるときのずれ量Hを選択する。
【0112】
ここで、相互相関ρα,ωの算出時におけるずれ量Hは、サンプリング間隔毎の離散的な値となっている。しかしながら、相互相関ρα,ωを最も高め得るずれ量Hは、サンプリング間隔毎の離散的な値とは限らず、むしろその中間の値である可能性が高い。
【0113】
例えば図14に示すように、ずれ量Hが所定のずれ量H2及びH3のときの加速度αz2及びαz3の中間に、ピッチレートωyが位置している場合が考えられる。
【0114】
そこで時間差算出部34は、相互相関ρα,ωの値を関数として表し、この関数を基に、当該相互相関ρα,ωの値が最大となるようなずれ量Hを、サンプリング間隔よりも細かい精度で算出するようになされている。
【0115】
具体的に時間差算出部34は、相互相関ρα,ωの値が、次の(6)式に示すように、係数a及びb並びに定数cを用いた2次関数として変化するものとする。
【0116】
【数6】

【0117】
そして時間差算出部34は、相互相関ρα,ωの値が最大となるとき及びその前後の3点について、相互相関ρα,ωの値及びずれ量Hの値を(6)式に代入した連立方程式を立て、これを解くことにより(6)式の2次関数における各係数及び定数を特定する。
【0118】
続いて時間差算出部34は、2次関数の傾きが「0」となるとき、すなわち(6)式をずれ量Hについて微分することにより得られる(7)式が値「0」となるときに、相互相関ρα,ωの値が最大になるものとする。
【0119】
【数7】

【0120】
具体的に時間差算出部34は、(7)式の値を「0」として変形することにより得られる(8)式に係数a及びbの値を代入することより、ずれ量Hを算出する。
【0121】
【数8】

【0122】
このように算出されたずれ量Hは、(7)式の値を「0」とする、すなわち(6)式の相互相関ρα,ωの値を最大とするような値となる。そこで時間差算出部34は、算出されたずれ量Hを時間差ΔTとし、時間差速度算出部35(図13)へ送出する。
【0123】
例えば図15に示すように、ずれ量Hが0.02、0.04、0.06、…、0.14[s]であるときにおける相互相関ρα,ωの値が0.926、0.950、0.954、0.943、…、0.829であった場合を仮定する。
【0124】
この場合、ずれ量Hが0.06[s]のときに相互相関ρα,ωの値が最大となるため、時間差算出部34は、ずれ量Hが0.04、0.06及び0.08[s]のときの各値を(6)式に代入することにより連立方程式を立て、これを解いて係数a及びb並びに定数cを求める。
【0125】
続いて時間差算出部34は、求めた係数a及びbを(8)式に代入することにより、ずれ量H=0.0553[s]を算出し、これを時間差ΔTとする。
【0126】
また時間差算出部34は、相互相関ρα,ωの値が最大となったときに過去へずらしていた方の波形、すなわち先行していた方の波形が加速度αz又はピッチレートωyのいずれであったかを表す先行情報IAを生成する。
【0127】
このように時間差算出部34は、加速度αz及びピッチレートωyの相互相関ρα,ωを最大とするようなずれ量Hを算出し、これを時間差ΔTとするようになされている。
【0128】
[1−4−2.設置距離の設定]
ところでPND1では、(1)式について上述したように、設置距離Dを時間差ΔTで除算することにより、車両9の速度(すなわち時間差速度VT)を算出することができる。
【0129】
このような関係から、PND1は、車両9の速度及び時間差ΔTが判明している場合、これらを用いて設置距離Dを逆算することができる。また車両9の速度については、GPS処理部21(図12)がGPS信号を受信できる場合には、GPS速度VGを当該車両9の速度とすることができる。
【0130】
そこで自律速度算出部22の設置距離設定部38は、GPS処理部21からGPS速度VGが供給される場合、当該GPS速度VG及び時間差算出部34から供給される時間差ΔTを基に、次の(9)式に従って設置距離Dを算出する。
【0131】
【数9】

【0132】
また設置距離設定部38は、GPS速度VGの符号(正又は負)と先行情報IAとを比較することにより、PND1が車両9の前方又は後方のいずれに設置されているかを判断することもできる。
【0133】
すなわち設置距離設定部38は、GPS速度VGが正であり且つ先行情報IAが加速度αzの先行を表している場合(車両9が前進中)、又はGPS速度VGが負であり且つ先行情報IAがピッチレートωyの先行を表している場合(車両9が後退中)、PND1が車両9の前方に設置されていると判断する。
【0134】
また設置距離設定部38は、GPS速度VGが正であり且つ先行情報IAがピッチレートωyの先行を表している場合(車両9が前進中)、又はGPS速度VGが負であり且つ先行情報IAが加速度αzの先行を表している場合(車両9が後退中)、PND1が車両9の後方に設置されていると判断する。
【0135】
その上で設置距離設定部38は、PND1が車両9の前方に設置されていると判断した場合には設置距離Dの符号を正とし、当該PND1が当該車両9の後方に設置されていると判断した場合には設置距離Dの符号を負とする。
【0136】
さらに設置距離設定部38は、設置距離Dを随時算出すると共に記憶部13(図12)に記憶させておくようになされている。そして設置距離設定部38は、GPS処理部21からGPS速度VGが供給されない場合、記憶部13から読み出した最新の設置距離Dを時間差速度算出部35へ供給するようになされている。
【0137】
また設置距離設定部38は、ユーザの操作により設置距離Dの値が入力された場合には、この値を記憶部13に記憶させると共に時間差速度算出部35へ供給するようになされている。
【0138】
[1−4−3.進行方向の判断処理]
時間差速度算出部35は、先行情報IAにより、加速度αz又はピッチレートωyのいずれが先行しているかを認識することができる。
【0139】
また時間差速度算出部35は、設置距離Dの符号から、PND1が車両9の前方又は後方のいずれに設置されているかを認識することができる。
【0140】
ここで、加速度αzが先行し且つPND1が車両9の前方に設置されている場合(図8)、及びピッチレートωyが先行し且つPND1が車両9の後方に設置されている場合、上述した基本原理に基づき、当該車両9は前進していることになる。
【0141】
一方、ピッチレートωyが先行し且つPND1が車両9の前方に設置されている場合(図9)、及び加速度αzが先行し且つPND1が車両9の後方に設置されている場合、上述した基本原理に基づき、当該車両9は後退していることになる。
【0142】
そこで時間差速度算出部35は、先行情報IA及び設置距離Dの符号を基に、車両9の進行方向を判断する。そして時間差速度算出部35は、(1)式に従って算出した時間差速度VTの符号を、当該車両9の進行方向に基づき、前進であれば正とし、後退であれば負とするようになされている。
【0143】
[1−5.位置算出処理手順及び速度算出処理手順]
次に、位置算出処理手順及び速度算出処理手順について、図16、図17及び図18のフローチャートを用いて説明する。
【0144】
PND1の制御部12は、電源が投入されると位置算出処理ルーチンRT1(図16)を開始してステップSP1へ移る。ステップSP1において制御部12は、自律速度算出部22により時間差速度VTを算出する。
【0145】
このとき制御部12は、速度算出処理ルーチンRT2(図17)を開始し、ステップSP11へ移る。ステップSP11において制御部12は、自律速度算出部22のアンチエイリアシングフィルタ31により、3軸加速度センサ4により検出された加速度データAD及びY軸ジャイロセンサ5により検出されたピッチレートデータPDそれぞれに対してアンチエイリアス処理を施し、次のステップSP12へ移る。
【0146】
ステップSP12において制御部12は、A/D変換器32により、加速度データAD及びピッチレートデータPDそれぞれに対してA/D変換処理を施して加速度データAD1及びピッチレートデータPD1を生成し、次のステップSP13へ移る。
【0147】
ステップSP13において制御部12は、LPF/HPF処理部33により、加速度データAD1及びピッチレートデータPD1それぞれについて直流成分及び高域成分をそれぞれ除去して加速度データAD2及びピッチレートデータPD2とし、次のステップSP14へ移る。
【0148】
ステップSP14において制御部12は、時間差算出部34により、加速度データAD2及びピッチレートデータPD2を基に時間差ΔTを算出する。
【0149】
このとき制御部12は、時間差算出処理ルーチンRT3(図18)を開始し、ステップSP21へ移る。ステップSP21において制御部12は、以降の処理においてずらす波形を加速度αzに設定し、次のステップSP22へ移る。
【0150】
ステップSP22において制御部12は、ずれ量H及び当該ずれ量Hに基づいた算出期間CPを設定し、次のステップSP23へ移る。
【0151】
ステップSP23において制御部12は、記憶部13から算出期間CP内の加速度αzを読み出し、(2)式に従い標準偏差σαを算出すると共に平均値μαを算出し、次のステップSP24へ移る。
【0152】
ステップSP24において制御部12は、記憶部13から算出期間CP内のピッチレートωyを読み出し、(3)式に従い標準偏差σωを算出すると共に平均値平均値μωを算出し、次のステップSP25へ移る。
【0153】
ステップSP25において制御部12は、(4)式に従い加速度αz及びピッチレートωyの共分散cov(αz,ωy)を算出した上で、(5)式に従い加速度αz及びピッチレートωyの相互相関ρα,ωを算出し、次のステップSP26へ移る。
【0154】
ステップSP26において制御部12は、相互相関ρα,ωとこのときのずれ量Hとを対応付けて記憶部13に記憶させ、次のステップSP27へ移る。
【0155】
ステップSP27において制御部12は、移動範囲内の全ずれ量Hについて相互相関ρα,ωを算出したか否かを判定する。ここで否定結果が得られると、制御部12は再度ステップSP22へ戻り、残りのずれ量Hについて相互相関ρα,ωを算出する。
【0156】
一方ステップSP27において肯定結果が得られると、制御部12は次のステップSP28へ移る。
【0157】
ステップSP28において制御部12は、相互相関ρα,ωの最大値が閾値以上か否かを判定する。ここで否定結果が得られると、このことはピッチレートωyの波形が加速度αzの波形よりも先行している可能性が高いことを表しており、このとき制御部12は次のステップSP29へ移る。
【0158】
ステップSP29において制御部12は、ずらす波形をピッチレートωyに設定し、再度ステップSP22へ戻ってピッチレートωyの波形をずらしながら相互相関ρα,ωを算出する。
【0159】
一方ステップSP28において肯定結果が得られると、このことは時間差ΔTの算出に必要な相互相関ρα,ωを全て算出したことを表しており、このとき制御部12は次のステップSP30へ移る。
【0160】
ステップSP30において制御部12は、相互相関ρα,ωが最大となるとき及びその前後におけるずれ量Hの値を(6)に代入した連立方程式を立て、これを解くことにより係数a及びbを算出し、次のステップSP31へ移る。
【0161】
ステップSP31において制御部12は、算出した係数a及びbを(8)式に代入することによりずれ量Hを算出し、これを時間差ΔTとして次のステップSP32へ移る。ステップSP32において制御部12は、時間差算出処理ルーチンRT3を終了することにより元の速度算出処理手順RT2(図17)へ戻り、ステップSP15へ移る。
【0162】
ステップSP15において制御部12は、速度算出部35により、時間差ΔT及び設置距離Dを基に時間差速度VTを算出してこれを速度データVTD0とし、次のステップSP16へ移る。
【0163】
ステップSP16において制御部12は、平滑化及びノイズ除去部36により、速度データVTD0に平滑化及びノイズ除去処理を施して速度データVTDとし、次のステップSP17へ移る。
【0164】
ステップSP17において制御部12は、速度出力部37により、時間差速度VTが3[km/h]未満であれば速度データVTDを値0に補正した上で、当該速度データVTDを自律速度データVDとして出力し、次のステップSP18へ移る。
【0165】
ステップSP18において制御部12は、速度算出処理ルーチンRT2を終了することにより元の位置算出処理ルーチンRT1(図16)へ戻り、ステップSP2へ移る。
【0166】
ステップSP2において制御部12は、角度算出部23により、ヨーレートデータYDに相当するヨーレートωzにサンプリング周期を積算することにより角度θを算出して角速度データDDとし、次のステップSP3へ移る。
【0167】
ステップSP3において制御部12は、位置算出部25により、自律速度データVD及び角度データDDに基づいて現在位置データNPD2を算出し、これをナビゲーション部26(図12)へ供給した後、次のステップSP4へ移って位置算出処理ルーチンRT1を終了する。
【0168】
[1−6.速度算出結果]
次に、車両9にPND1を設置して実際の道路を走行した際の、自律速度算出部22による時間差速度VTの算出結果を図19に示す。また、これと比較するために、このときGPS処理部21により得られたGPS速度VGの算出結果を図20に示す。
【0169】
因みに図19及び図20では、車両9が速度0の状態から走行を開始して約110秒後に停車した場合を表しており、また参考のために累積距離を破線で示している。
【0170】
図19及び図20を対比すると、ある程度の誤差を含むものの、時間差速度VTがGPS速度VGに近い値であること、すなわち当該時間差速度VTが車両9の速度を精度良く表していることがわかる。
【0171】
このように、PND1では、加速度αz及びピッチレートωyを基に得られた時間差速度VTにより、車両9の速度を良好な精度で算出できることが示された。
【0172】
[1−7.動作及び効果]
以上の構成において、PND1は、3軸加速度センサ4により車両9に発生する垂直方向の加速度αzを検出すると共に、Y軸ジャイロセンサ5により当該車両9に発生する進行方向と直交するY軸周りのピッチレートωyを検出する。
【0173】
そしてPND1は、加速度αz及びピッチレートωyを基に時間差ΔTを算出した上で、当該時間差ΔT及び設置距離Dを用いて(1)式により時間差速度VTを算出する。
【0174】
従ってPND1は、センサとして3軸加速度センサ4及びY軸ジャイロセンサ5のみを用いた簡易な構成により、GPS信号を受信することができない場合であっても、車両9の速度を精度良く算出することができる。その上でPND1は、車両9の現在位置を高精度に算出することができ、適切な範囲の地図画面を表示部2に表示させると共に正しい経路案内を行うことができる。
【0175】
すなわちPND1は、路面の凹凸等に起因して車両9が垂直方向に変位し、また傾きを変化させる際に、垂直方向の加速度αzとY軸周りのピッチレートωyとの間に時間差が生じることを利用することにより、車両9の速度として時間差速度VTを容易に算出することができる。
【0176】
これを換言すれば、PND1は、車両9内における設置位置ごとに垂直方向の加速度αzの発生タイミングが異なる一方、ピッチレートωyが当該車両9全体に発生する単一の値となり且つ車軸の中点に作用すると見なし得ることを利用することにより、時間差ΔT及び設置距離Dを用いて時間差速度VTを算出することができる。
【0177】
この結果PND1は、一般的な据置型のナビゲーション装置において必要な車速パルス信号を車両9から取得する必要無く、車両9に固定されるだけで、時間差速度VTを算出して現在位置を得ることができる。このためPND1は、吸盤10A(図1)を介した極めて容易な取付作業によりクレードル10を車両9に固定し、当該クレードル10に当該PND1を装着させるだけで良いため、ユーザの使い勝手を格段に向上させることができる。
【0178】
またPND1の制御部12は、自律速度算出部22の時間差算出部34によって、(2)〜(5)式に従って加速度αz及びピッチレートωyの相互相関ρα,ωを算出することにより、当該加速度αz及びピッチレートωyの相関が最も高くなるような時間差ΔTを確実に得ることができる。これによりPND1は、加速度αz及びピッチレートωyにおける特徴成分同士の時間差ΔTを高い精度で得ることができる。
【0179】
これを別の観点から見れば、PND1は、3軸加速度センサ4及びY軸ジャイロセンサ5によりそれぞれ生成される検出信号の信号レベルに関する誤差にとらわれることなく、各信号波形に変化が表れる時間差ΔTを用いて時間差速度VTを算出することができる。
【0180】
このためPND1は、3軸加速度センサ4及びY軸ジャイロセンサ5による検出信号の精度が低い場合や、検出信号にノイズ等が含まれてしまう場合であっても、各波形に特徴成分が表れる時点さえ認識できれば、時間差ΔT及び時間差速度VTを高精度に算出することができる。
【0181】
さらにPND1の制御部12は、加速度αz及びピッチレートωyの相互相関ρα,ωの値を(6)式のようなずれ量Hの2次関数と見なすことにより、(8)式を用いて当該ずれ量Hをサンプリング周期よりも高い精度で算出することができ、これを時間差ΔTとすることができる。
【0182】
そのうえPND1の制御部12は、GPS速度VGを取得できるときに、時間差ΔTを用いて(9)式の演算を行うことにより、設置距離Dを算出することができる。これによりPND1は、一般的なユーザによる測定が困難な設置距離Dを容易に且つ精度良く得ることができ、結果的にユーザの手間を省略できると共に時間差速度VTの算出精度を高めることができる。
【0183】
またPND1の制御部12は、加速度αz及びピッチレートωyのいずれが先行しているかを判断することにより、車両9の進行方向についても精度良く認識することができる。
【0184】
以上の構成によれば、PND1の制御部12は、自律速度算出部22により、加速度αz及びピッチレートωyの相互相関ρα,ωを用いて当該加速度αz及びピッチレートωyの相関が最も高くなるような時間差ΔTを算出し、設置距離Dを当該時間差ΔTで除算することにより時間差速度VTを算出する。この結果PND1は、GPS信号を受信することができない場合であっても、車両9の速度として当該時間差速度VTを用いることができる。さらにPND1は、時間差速度VTを基に車両9の現在位置を高精度に算出することができ、適切な範囲の地図画面を表示部2に表示できると共に正しい経路案内を行うことができる。
【0185】
<2.第2の実施の形態>
[2−1.PND及び自律速度算出部の構成]
第2の実施の形態によるPND50は、第1の実施の形態によるPND1と比較して、制御部12に代えて制御部52を有している点が相違するものの、他の部分は同様に構成されている。
【0186】
制御部52は、図12との対応部分に同一符号を付した図21に示すように、制御部12と比較して、自律速度算出部22に代えて自律速度算出部53を有し、また気圧センサ7及び高度算出部24を有している点が相違するものの、他の部分は同様に構成されている。
【0187】
気圧センサ7は、周囲の気圧PRを例えば50[Hz]のサンプリング周波数で検出しており、当該気圧PRが示された気圧データPRDを高度算出部24へ送出する。
【0188】
高度算出部24は、気圧センサ7から供給された気圧データPRDに相当する気圧PRに基づいて車両9の高度を算出し、その高度が示された高度データHDをナビゲーション部26へ送出する。
【0189】
ナビゲーション部26は、GPS処理部21から供給された現在位置データNPD1又は位置算出部25から供給された現在位置データNPD2、及び高度算出部24から供給された高度データHDを基に、車両9の現在位置が含まれる周辺の地図データを記憶部13から読み出す。
【0190】
そしてナビゲーション部26は、その現在位置が含まれる地図画像を生成した後、表示部2へ出力することにより当該地図画像を表示するようになされている。
【0191】
自律速度算出部53は、時間差速度VTを算出する時間差速度生成部54と、路面のうねりを利用して車両9の速度(以下これをうねり速度VUと呼ぶ)を算出するうねり速度生成部55と、当該時間差速度VT又は当該うねり速度VUを切り替えて自律速度データVDとして出力する出力切替部56とを有している。
【0192】
[2−2.時間差速度算出部の構成]
時間差速度生成部54は、図13との対応部分に同一符号を付した図22に示すように、第1の実施の形態における自律速度算出部22と比較して、時間差算出部34及び速度出力部37に代わる時間差算出部61及び速度出力部62を有している点が相違するものの、他は同様に構成されている。
【0193】
時間差算出部61は、相互相関ρα,ωを用いた第1の実施の形態と異なり、加速度αz及びピッチレートωyの極大値又は極小値を用いて時間差ΔTを算出するようになされている。
【0194】
すなわち時間差算出部61は、記憶部13に記憶されている加速度αzのうち、現時点から過去の算出期間CP内(例えば過去1[s]内)に得られた加速度αzを読み出し、これらの加速度αzについて極大値である極大加速度αzmaxを求めると共に、当該極大加速度αzmaxが得られた時点Tαzmaxを認識する。
【0195】
また時間差算出部61は、記憶部13に記憶されているピッチレートωyのうち、現時点から過去の算出期間CP内に得られたピッチレートωyを読み出し、これらのピッチレートωyについて極大値である極大ピッチレートωymaxを求めると共に、当該極大ピッチレートωymaxが得られた時点Tωymaxを認識する。
【0196】
因みに時間差算出部61は、算出期間CP内に得られた加速度αzの極大値である極大加速度αzmaxを得られなかった場合には、当該極大加速度αzmaxに代えて加速度αzの極小値である極小加速度αzminを求めると共に、当該極小加速度αzminが得られた時点Tαzminを認識する。この場合時間差算出部61は、ピッチレートωyについても極小ピッチレートωyminを求めると共に、当該極小ピッチレートωyminが得られた時点Tωyminを認識する。
【0197】
その後時間差算出部61は、時点Tαzmaxと時点Tωymaxとの差分又は時点Tαzminと時点Tωyminとの差分を時間差ΔTとし、これを時間差速度算出部35及び設置距離設定部38へ供給するようになされている。
【0198】
また時間差速度出力部62は、時間差速度データVTDにより示される時間差速度VTが3[km/h]未満であれば値0に補正した上で、当該時間差速度データVTDを出力切替部56へ出力するようになされている。
【0199】
ところで、加速度αz及びピッチレートωyについては、算出期間CP内に複数の極大値又は極小値が含まれる場合が考えられる。
【0200】
そこで時間差速度算出部54では、直前の時間差速度VTを記憶部13に記憶させると共に、新たに算出した時間差速度VTが直前の時間差速度VTに最も近くなるような極大値又は極小値を採用して当該時間差速度VTを算出するようになされている。
【0201】
このように時間差速度生成部54は、加速度αz及びピッチレートωyの極大値又は極小値を用いて時間差ΔTを算出した上で時間差速度VTを算出するようになされている。
【0202】
[2−3.うねり速度算出部の構成]
次に、うねり速度生成部55によるうねり速度VUの算出について説明する。
【0203】
[2−3−1.うねり速度の算出原理]
まず、うねり速度VUの算出原理について説明する。実際上、移動面としての道路を走行中の車両9は、平らな道路を走行することが殆どなく、図23(A)に示すような全体として凹状の道路、及び図23(B)に示すような全体として凸状の道路を走行するのが実状である。
【0204】
この車両9の例えばダッシュボード上(すなわち設置位置N1)に載置されたPND50は、車両9が凹状の道路(図23(A))を走行したとき、3軸加速度センサ4(図21)によって、Z軸に沿った下方向の加速度αzを例えば50[Hz]のサンプリング周波数で検出する。
【0205】
またPND50は、Y軸ジャイロセンサ5(図21)によってY軸周りの角速度、すなわちピッチレートωyを50[Hz]のサンプリング周波数で検出する。
【0206】
因みにここでは、Z軸に沿った下方向の加速度αzを正と定義し、また図23(A)に示すような凹状の路面に沿って形成される仮想上の円を進行方向に対して上向きに縦回転する際のピッチレートωyを正と定義している。
【0207】
続いてPND50は、加速度αz及びピッチレートωyを用い、次の(10)式によって進行方向の速度Vを1秒間当たり50回算出する。
【0208】
【数10】

【0209】
またPND50は、車両9が凸状の道路(図23(B))を走行するとき、3軸加速度センサ4によってZ軸に沿った上方向の加速度αz’を例えば50[Hz]のサンプリング周波数で検出し、またY軸ジャイロセンサ5によってY軸周りのピッチレートωy’を例えば50[Hz]のサンプリング周波数で検出する。
【0210】
そしてPND50は、加速度αz’及びピッチレートωy’を用い、次の(11)式によって進行方向の速度V’を1秒間当たり50回算出する。
【0211】
【数11】

【0212】
ここでは説明の便宜上、負の加速度αzを加速度αz’として説明しているが、実際には、3軸加速度センサは加速度αz’を加速度αzの負の値として検出している。またピッチレートωy’についても同様に、負のピッチレートωyをピッチレートωy’として説明しているが、実際には、Y軸ジャイロセンサは、ピッチレートωy’をピッチレートωyの負の値として検出している。従って、実際には速度V’も、速度Vとして算出される。
【0213】
このようにPND50は、加速度αz及びピッチレートωyを用いて(10)式により速度V、すなわちうねり速度VUを算出するようになされている。
【0214】
[2−3−2.うねり速度の算出処理]
速度算出部53は、うねり速度算出処理を実行する際、図22に示したように、LPF/HPF処理部63、うねり速度算出部65、平滑化及びノイズ除去部66及びうねり速度出力部67として機能する。
【0215】
LPF/HPF処理部63は、加速度データAD1及びピッチレートデータPD1の直流成分及び高域成分をそれぞれ除去し、その結果得られる加速度データAD3及びピッチレートデータPD3をうねり速度算出部65へ供給する。
【0216】
因みにうねり速度生成部55では、うねり速度算出部65において加速度データAD3及びピッチレートデータPD3に必要な周波数範囲が、時間差速度生成部54の時間差算出部61において加速度データAD2及びピッチレートデータPD2に必要な周波数範囲とは相違している。
【0217】
そこでLPF/HPF処理部63では、時間差速度生成部54のLPF/HPF処理部33とは異なるカットオフ周波数により、加速度データAD1及びピッチレートデータPD1の直流成分及び高域成分をそれぞれ除去している。
【0218】
ところで加速度αz及びピッチレートωyは、図4〜6等に示したように、互いに対応する特徴成分が出現する際に時間差(すなわち位相差)が生じる。
【0219】
そこでうねり速度算出部65は、加速度αz及びピッチレートωyそれぞれについて、最大値及び最小値の差分を用いることにより、その位相差による影響を排除するようになされている。
【0220】
具体的にうねり速度算出部65は、所定の算出期間における加速度データAD3に相当する加速度αzのうち最大値及び最小値をそれぞれ最大加速度αz,max及び最小加速度αz,minとして抽出する。
【0221】
またうねり速度算出部65は、所定の算出期間におけるピッチレートデータPD3に相当するピッチレートωyのうち最大値及び最小値をそれぞれ最大ピッチレートωy,max及び最小ピッチレートωy,minとして抽出する。
【0222】
続いてうねり速度算出部65は、次の(12)式に従った演算を行うことにより、うねり速度VUを算出し、当該うねり速度VUを表すうねり速度データVUD0を平滑化及びノイズ除去部66へ送出する。
【0223】
【数12】

【0224】
平滑化及びノイズ除去部66は、うねり速度データVUD0に対して所定の平滑化及びノイズ除去処理を施すことにより、うねり速度VUに含まれる誤差を縮小し、その結果得られるうねり速度データVUDをうねり速度出力部67へ送出する。
【0225】
うねり速度出力部67は、平滑化及びノイズ除去部66から供給されたうねり速度データVUDを出力切替部56へ送出する。
【0226】
このようにして速度算出部22は、3軸加速度センサ4から供給された加速度データAD、及びY軸ジャイロセンサ5から供給されたピッチレートデータPDに基づいて車両9のうねり速度VUを算出するようになされている。
【0227】
[2−4.速度の切替]
ところでうねり速度VUは、その算出原理上、車両9の速度が比較的大きい場合には高精度に算出され得るものの、当該車両9の速度が比較的小さい場合には精度が低下して誤差が大きくなってしまう。
【0228】
一方、時間差速度VTは、(1)式に示したように、設置距離Dを時間差ΔTで除算することにより算出される。ここで、設置距離Dが1[m]又は0.5[m]の場合について、時間差ΔTが0.02〜0.20[s]であった場合の時間差速度VTをそれぞれ算出した結果を図24(A)及び(B)にそれぞれ示す。
【0229】
因みに時間差ΔTが0.02[s]単位の離散値となっているのは、上述したように加速度αz及びピッチレートωyのサンプリング周期が0.02[s]であるため、当該時間差ΔTの算出結果が0.02[s]刻みの離散値となるからである。
【0230】
また図24(A)及び(B)には、サンプリング周期(0.02[s])を単位として時間差ΔTを表したステップ数も併記している。
【0231】
例えば設置距離Dが1[m]の場合(図24(A))、時間差ΔTが比較的小さい場合、例えば0.02〜0.08[s]の範囲において、算出される時間差速度VT同士の間隔は比較的大きくなっている。このことは、算出される時間差速度VTの精度が低く、当該時間差速度VTに含まれる誤差が大きいことを意味している。
【0232】
また時間差ΔTが比較的大きい場合、例えば0.10〜0.20[s]の範囲において、算出される時間差速度VT同士の間隔は比較的小さくなっている。このことは、算出される時間差速度VTの精度が高く、当該時間差速度VTに含まれる誤差が小さいことを意味している。
【0233】
すなわち時間差速度VTは、うねり速度VUの場合とは反対に、車両9の速度が比較的小さい場合には高精度に算出され得るものの、当該車両9の速度が比較的大きい場合には精度が低下して誤差が大きくなってしまう。
【0234】
そこで自律速度算出部53の出力切替部56(図21)は、車両9の速度が比較的小さい場合には時間差速度VTに切り替え、当該車両9の速度が比較的大きい場合にはうねり速度VUに切り替えるようになされている。
【0235】
具体的に出力切替部56は、車両9が一定速度で走行した場合に算出される時間差速度VTの誤差が10%以下となるよう閾値THを定め、時間差速度VTが当該閾値THを超える場合にはうねり速度VUに切り替えるようになされている。
【0236】
ここで、時間差速度VTの誤差が10%を超える場合について説明する。例えば設置距離D=1[m]のときに、車両9の速度が40[km/h]であったとすると、時間差速度VTは36[km/h]又は45[km/h]のいずれかとなるため、誤差が10%を超える可能性がある。
【0237】
一方、例えば車両9の速度が33[km/h]であったとすると、時間差速度VTは30[km/h]又は36[km/h]のいずれかとなり、誤差が10%以下に収まる可能性が極めて高い。
【0238】
そこで出力切替部56は、設置距離D=1[m]の場合については、閾値THを36[km/h]と定めている。
【0239】
さらに出力切替部56は、設置距離Dが種々の値となる場合についても、それぞれ閾値THを定めている。この場合の閾値THは、離散的な値となる時間差速度VTのうち、互いに隣接する値それぞれの誤差10%の範囲が重なる最大の値となっている。
【0240】
例えば設置距離Dが0.5[m]の場合(図24(B))、時間差ΔTが0.12[s]のとき、時間差速度VTは15[km/h]となり、誤差10%を加算すると16.5[km/h]となる。また時間差ΔTが0.10[s]のとき、時間差速度VTは18[km/h]となり、誤差10%を減算すると16.2[km/h]となる。すなわち時間差ΔTが0.12及び0.10[s]の間では、誤差10%の範囲が重なることになる。
【0241】
一方、図24(B)において、時間差ΔTが0.10[s]のとき、時間差速度VTは18[km/h]であり、誤差10%を加算すると19.8[km/h]となる。また時間差ΔTが0.08[s]のとき、時間差速度VTは22.5[km/h]となり、誤差10%を減算すると20.25[km/h]となる。すなわち時間差ΔTが0.10及び0.08[s]の間では、誤差10%の範囲が重ならないことになる。
【0242】
そこで出力切替部56は、設置距離Dが0.5[m]の場合における閾値THを、誤差10%の範囲が重なる最大の値である18[km/h]に設定する。
【0243】
因みに出力切替部56は、設置距離Dごとに閾値THを対応付け、予め記憶部13に記憶させている。
【0244】
かくして出力切替部56は、時間差速度VTが当該閾値TH以下の場合には、当該時間差速度VTを自律速度データDTとして出力し、時間差速度VTが当該閾値TH以下の場合には、うねり速度VUに切り替えて、すなわちうねり速度VUを自律速度データDTとして出力する。
【0245】
[2−5.動作及び効果]
以上の構成において、第2の実施の形態によるPND50は、3軸加速度センサ4により車両9に発生する垂直方向の加速度αzを検出すると共に、Y軸ジャイロセンサ5により当該車両9に発生する進行方向と直交するY軸周りのピッチレートωyを検出する。
【0246】
そしてPND50は、第1の実施の形態と同様、加速度αz及びピッチレートωyを基に時間差ΔTを算出した上で、当該時間差ΔT及び設置距離Dを用いて(1)式により時間差速度VTを算出する。
【0247】
従ってPND50は、センサとして3軸加速度センサ4及びY軸ジャイロセンサ5のみを用いた簡易な構成により、GPS信号を受信することができない場合であっても、車両9の速度を精度良く算出することができる。その上でPND50は、車両9の現在位置を高精度に算出することができ、適切な範囲の地図画面を表示部2に表示させると共に正しい経路案内を行うことができる。
【0248】
すなわちPND50は、路面の凹凸等に起因して車両9が垂直方向に変位し、また傾きを変化させる際に、垂直方向の加速度αzとY軸周りのピッチレートωyとの間に時間差が生じることを利用することにより、車両9の速度として時間差速度VTを容易に算出することができる。
【0249】
またPND50の制御部52は、自律速度算出部53の時間差速度算出部54において、加速度αz及びピッチレートωyの極大値又は極小値を用いて時間差ΔTを算出することができる。このため制御部52は、相互相関ρα,ωを算出する第1の実施の形態と比較して、演算に要する処理負荷を大幅に軽減することができる。
【0250】
さらにPND50の制御部52は、自律速度算出部53の出力切替部56により、2種類の算出手法により算出された時間差速度VT又はうねり速度VUのいずれかに切り替えて自律速度データDTとすることができる。
【0251】
特に出力切替部56は、速度が比較的小さいときに時間差速度VTの精度が高まり、反対に速度が比較的大きいときにうねり速度VUの精度が高まることを踏まえ、閾値TH以下の場合には時間差速度VTを、それ以外の場合にはうねり速度VUを、自律速度データDTとする。このため出力切替部56は、時間差速度VTのみを用いる第1の実施の形態と比較して、自律速度データDTの精度を格段に高めることができる。
【0252】
またPND50は、その他の点についても、第1の実施の形態によるPND1と同様の作用効果を奏し得る。
【0253】
以上の構成によれば、PND50の制御部52は、時間差速度算出部54によって、加速度αz及びピッチレートωyの極大値及び極小値を用いて時間差ΔTを算出し、設置距離Dを当該時間差ΔTで除算することにより時間差速度VTを算出する。また制御部52は、うねり速度算出部55によって、加速度αを角速度ωにより除算することによりうねり速度VUを算出する。さらに制御部52は、出力切替部56によって、時間差速度VTが閾値TH以下のときは当該時間差速度VTを、それ以外のときはうねり速度VUを、自律速度データDTとする。この結果PND50は、GPS信号を受信することができない場合であっても、車両9の自律速度として時間差速度VT又はうねり速度VUを用いることができる。さらにPND50は、自律速度を基に車両9の現在位置を高精度に算出することができ、適切な範囲の地図画面を表示部2に表示できると共に正しい経路案内を行うことができる。
【0254】
<第3の実施の形態>
第3の実施の形態による携帯電話機101は、図25に示すように、LCD(Liquid Crystal Device)でなり各種表示を行う表示部102、マイク104、スピーカ105及び入力釦等でなる操作部106を有している。
【0255】
また携帯電話機101は、第1の実施の形態によるPND1と同様、クレードル103を介して車両9(図2)に取り付けられるようになされている。
【0256】
図26に示すように、携帯電話機101は、CPU構成の統括制御部109が、携帯電話機としての機能を司る携帯電話ユニット110と、上述した第1の実施の形態と同様のナビゲーション処理を行うナビゲーションユニット11とを制御するようになされている。
【0257】
携帯電話ユニット110は、表示部102及び操作部106に加えて、半導体メモリ等でなり各種データの保存等に用いられる記憶部108と接続されている。因みに図26では表示を簡略化しているが、表示部102、操作部106及び記憶部108はナビゲーションユニット11にもそれぞれ接続されている。
【0258】
携帯電話機101は、通話機能を実行する場合、通話機能や電子メール機能を実現すべく携帯電話ユニット110を用いる。実際上、携帯電話機101の携帯電話ユニット110は、図示しない基地局からアンテナANT2を介して受信した受信信号を送受信部111へ送出する。
【0259】
送受信部111は、送信部及び受信部によって構成されており、受信信号を所定の方式に従って復調等することにより受信データに変換し、これをデコーダ112へ送出する。デコーダ112はマイクロコンピュータ構成でなる携帯電話制御部114の制御に従って受信データをデコードすることにより相手方の通話音声データを復元し、スピーカ105へ出力する。スピーカ105は通話音声データを基に相手方の通話音声を出力する。
【0260】
一方、携帯電話ユニット110は、マイクロフォン104から集音した音声信号をエンコーダ115へ送出する。エンコーダ115は、携帯電話制御部114の制御に従って音声信号をディジタル変換した後に所定の方式でエンコードすることにより得た音声データを送受信部111へ送出する。
【0261】
送受信部111は、音声データを所定の方式に従って変調した後、アンテナANT2を介して基地局(図示せず)へ無線送信する。
【0262】
このとき携帯電話ユニット110の携帯電話制御部114は、操作部106からの操作命令に応じて表示部102に相手方の電話番号や電波受信状況等を表示する。
【0263】
また携帯電話ユニット110の携帯電話制御部114は、通信機能により電子メールを受信する場合、送受信部111からデコーダ112へ受信データを供給し、当該受信データをデコードすることにより復元した電子メールデータを表示部102へ送出し、当該表示部102に電子メールの内容を表示すると共に、記憶部108に記憶する。
【0264】
さらに携帯電話ユニット110の携帯電話制御部114は、通信機能により電子メールを送信する場合、操作部106を介して入力された電子メールデータをエンコーダ115によってエンコードした後、送受信部111及びアンテナANT2を経由して無線送信するようになされている。
【0265】
一方、携帯電話機101は、ナビゲーション機能を実行する場合、統括制御部109がナビゲーションユニット11を制御してナビゲーション処理を実行させるようになされている。
【0266】
ナビゲーションユニット11は、第1の実施の形態と同様、GPS信号を基に得られる現在位置データNPD1、或いは加速度αz及びピッチレートωyを基に得られる現在位置データNPD2を基に、車両9の現在位置が含まれる周辺の地図画像を生成して表示部102に表示させる。
【0267】
このとき自律速度算出部22(図12、図13)は、第1の実施の形態と同様、加速度αz及びピッチレートωyの相関を用いて時間差ΔTを算出し、(1)式に従って時間差速度VTを算出するようになされている。
【0268】
従って第3の実施の形態による携帯電話機101は、ナビゲーションユニット11によって、第1の実施の形態と同様、センサとして3軸加速度センサ4及びY軸ジャイロセンサ5のみを用いた簡易な構成により、GPS信号を受信することができない場合であっても、車両9の速度を精度良く算出することができる。
【0269】
その上で携帯電話機101は、車両9の現在位置を高精度に算出することができ、適切な範囲の地図画面を表示部102に表示させると共に正しい経路案内を行うことができる。
【0270】
すなわち携帯電話機101は、路面の凹凸等に起因して車両9が垂直方向に変位し、また傾きを変化させる際に、垂直方向の加速度αzとY軸周りのピッチレートωyとの間に時間差が生じることを利用することにより、車両9の速度として時間差速度VTを容易に算出することができる。
【0271】
また携帯電話機101は、その他の点についても、第1の実施の形態によるPND1と同様の作用効果を奏し得る。
【0272】
以上の構成によれば、第3の実施の形態による携帯電話機101は、ナビゲーションユニット11の制御部12における自律速度算出部22により、加速度αz及びピッチレートωyの相互相関ρα,ωを用いて当該加速度αz及びピッチレートωyの相関が最も高くなるような時間差ΔTを算出し、設置距離Dを当該時間差ΔTで除算することにより時間差速度VTを算出する。この結果携帯電話機101は、GPS信号を受信することができない場合であっても、車両9の速度として当該時間差速度VTを用いることができる。さらに携帯電話機101は、時間差速度VTを基に車両9の現在位置を高精度に算出することができ、適切な範囲の地図画面を表示部102に表示できると共に正しい経路案内を行うことができる。
【0273】
<4.他の実施の形態>
なお上述した第1の実施の形態においては、自律速度算出部22の時間差算出部34によって相互相関ρα,ωを基に時間差ΔTを算出するようにした場合について述べた。
【0274】
本発明はこれに限らず、例えば(5)式により算出した共分散cov(αz,ωy)をそのまま用いて時間差ΔTを算出する等、加速度αz及びピッチレートωyの相関の高さを表す種々の指標を用い、当該相関が最も高くなるような時間差ΔTを求めるようにしても良い。
【0275】
また上述した第2の実施の形態においては、加速度αz及びピッチレートωyの極大値同士又は極小値同士を用いて時間差ΔTを算出するようにした場合について述べた。
【0276】
本発明はこれに限らず、例えば加速度αz及びピッチレートωyをそれぞれ表す加速度データAD3及びピッチレートデータPD3の極性が互いに逆であるような場合に、加速度αz及びピッチレートωyにおけるいずれか一方の極大値と他方の極小値とを用いて時間差ΔTを算出するようにしても良い。
【0277】
さらに本発明では、相関の高さを表す種々の指標を用いる手法や極値を用いる手法に代えて、他の種々の手法を用いるようにしても良い。要は、加速度αzの波形及びピッチレートωyの波形それぞれの互いに対応する特徴的な箇所同士の時間的なずれ量(すなわち特徴成分同士の時間差)を時間差ΔTとして算出することができれば良い。
【0278】
さらに上述した第1の実施の形態においては、相互相関ρα,ωの値を(6)式の2次関数と見なし、(8)式によりサンプリング間隔よりも細かい精度でずれ量Hを算出するようにした場合について述べた。
【0279】
本発明はこれに限らず、例えばサンプリング周波数が高くサンプリング間隔の離散値であっても十分な精度でずれ量H(すなわち時間差ΔT)が得られるような場合に、相互相関ρα,ωの値が最大となるようなずれ量Hをそのまま時間差ΔTとするようにしても良い。
【0280】
さらに上述した第2の実施の形態においては、時間差算出部61によって複数の極大値又は極小値が検出された場合、新たに算出した時間差速度VTが直前の時間差速度VTに最も近くなるような極大値又は極小値を採用して当該時間差速度VTを算出するようにした場合について述べた。
【0281】
本発明はこれに限らず、例えば加速度αz及びピッチレートωyそれぞれの複数の極大値同士の差分をそれぞれ算出し、このときの差分値の分散が最も小さくなるような差分を時間差ΔTとする等、種々の手法により時間差ΔTを算出するようにしても良い。
【0282】
さらに上述した第1の実施の形態においては、GPS信号を受信できず自律速度Vを算出する場合にのみ、加速度αz及びピッチレートωyから車両9の進行方向を判断して当該自律速度V(時間差速度VT)に反映させる場合について述べた。
【0283】
本発明はこれに限らず、時間差速度VTを算出する場合以外にも、例えば加速度αz及びピッチレートωyから車両9の進行方向を判断し、その判断結果を位置算出部25やナビゲーション部26へ供給して測位処理やナビゲーション処理等に利用するようにしても良い。
【0284】
さらに上述した第1の実施の形態においては、車両9の角速度が中点WM(図2)に作用すると見なした上で、PND1の設置位置から車軸の中点WMまでの距離を設置距離Dとする場合について述べた。
【0285】
本発明はこれに限らず、車両9における重心等の任意の箇所に角速度が作用すると見なした上で、当該箇所からPND1の設置位置までの距離を設置距離Dとするようにしても良い。第2及び第3の実施の形態についても同様である。
【0286】
さらに上述した実施の形態においては、3軸加速度センサ4、Y軸ジャイロセンサ5及びZ軸ジャイロセンサ6におけるサンプリング周期を50[Hz]とするようにした場合について述べた。
【0287】
本発明はこれに限らず、各サンプリング周期を例えば100[Hz]や200[Hz]等のような種々の値としても良く、またセンサごとにサンプリング周期を相違させても良い。この場合、特に第2の実施の形態における閾値THの設定を、当該サンプリング周期に対応するよう設定すれば良い。
【0288】
さらに上述した第1の実施の形態においては、PND1が車両9の車室内における前方に設置され、且つ当該車両9が前進する可能性が高いことから、まず加速度αzの波形を過去へずらしながら時間差ΔTを算出するようにした場合について述べた。
【0289】
本発明はこれに限らず、例えばユーザの操作入力や設置距離設定部38による判断結果等によりPND1の設置位置が車室内の後方であることが判明している場合、まずピッチレートωyの波形を過去へずらしながら時間差ΔTを算出するようにしても良い。
【0290】
さらに上述した第1の実施の形態においては、設置距離設定部38により、GPS速度VGの符号及び先行情報IAを基に、車両9におけるPND1の設置位置(前方又は後方)を判断して設置距離Dの符号を変化させるようにした場合について述べた。
【0291】
本発明はこれに限らず、例えば車両9におけるPND1の設置位置(前方又は後方)についてはユーザに設定させ、設置距離設定部38により生成する設置距離Dを常に正の値とするようにしても良い。第2及び第3の実施の形態についても同様である。
【0292】
さらには、設置距離Dに関し、設置距離設定部38により生成した値とユーザの操作により入力された値とが大きくかけ離れた場合に、設置距離設定部38により生成した値を優先させるようにし、或いはユーザの操作により入力された値を優先させるようにする等、いずれか一方の値を優先的に用いるようにしても良い。第2及び第3の実施の形態についても同様である。
【0293】
さらに上述した第1の実施の形態においては、自律速度出力部37により、時間差速度データVTDが最低出力閾値THL未満であれば時間差速度データVTDを値「0」に置き換えて自律速度データVDとするようにした場合について述べた。
【0294】
本発明はこれに限らず、自律速度出力部37により、例えば時間差速度データVTDが最低出力閾値THL未満であれば直前の時間差速度データVTDに置き換えて自律速度データVDとしても良く、或いは時間差速度データVTDの値にかかわらずそのまま自律速度データVDとする等、種々の補正処理を行うようにしても良い。またこの処理を時間差速度算出部35や平滑化及びノイズ除去部36により行うようにしても良い。第2及び第3の実施の形態についても同様である。
【0295】
さらに上述した実施の形態においては、LPF/HPF処理部33により、3軸加速度センサ4及びY軸ジャイロセンサ5によりそれぞれ検出した加速度データAD及びピッチレートデータPDに対し、LPF/HPF処理部33によりハイパスフィルタ処理及びローパスフィルタ処理を施すようにした場合について述べた。
【0296】
本発明はこれに限らず、LPF/HPF処理部33により、加速度データAD及びピッチレートデータPDに対して、ハイパスフィルタ処理及びローパスフィルタ処理に加えて、移動平均フィルタ処理を施すようにしても良い。また、LPF/HPF処理部33により、加速度データAD及びピッチレートデータPDに対して、ハイパスフィルタ処理、ローパスフィルタ処理及び移動平均フィルタ処理を任意に組み合わせた処理を施すようにしても良い。第2及び第3の実施の形態についても同様である。
【0297】
さらに上述した第1の実施の形態においては、PND1が車両9のダッシュボード上に載置されたクレードル10によって保持されている状態で、時間差速度VTを算出するようにした場合について述べた。
【0298】
本発明はこれに限らず、例えばPND1がクレードル10から機械的或いは電気的に取り外されたことを認識すると、時間差速度VTを0とする、或いは直前の時間差速度VTのまま継続するようにしても良い。第2及び第3の実施の形態についても同様である。
【0299】
さらに上述した第1実施の形態においては、PND1が左右方向に長い横置きの状態で使用されるようにした場合について述べた。
【0300】
本発明はこれに限らず、例えば図27に示すように、PND1が縦方向に長い縦置きの状態で使用されるようにしても良い。この場合PND1は、Y軸ジャイロセンサ5によりZ軸回りのヨーレートωzを検出し、またZ軸ジャイロセンサ6によりY軸周りのピッチレートωyを検出すれば良い。第2及び第3の実施の形態についても同様である。
【0301】
さらに上述した第1の実施の形態においては、3軸加速度センサ4、Y軸ジャイロセンサ5及びZ軸ジャイロセンサ6がPND1の内部に設けられているようにした場合について述べた。
【0302】
本発明はこれに限らず、3軸加速度センサ4、Y軸ジャイロセンサ5及びZ軸ジャイロセンサ6が、PND1の外部に設けられているようにしても良い。第2及び第3の実施の形態についても同様である。
【0303】
またPND1は、3軸加速度センサ4、Y軸ジャイロセンサ5及びZ軸ジャイロセンサ6の取付角度を調節できるような調節機構を例えば筐体の側面に設けるようにしても良い。これによりPND1は、その表示部2が車両9の進行方向に対してほぼ垂直となるように設置されていない場合であっても、調節機構をユーザに調節させることによって、例えばY軸ジャイロセンサ5の回転軸を車両9の垂直方向と揃えることができる。第2及び第3の実施の形態についても同様である。
【0304】
さらに上述した第1の実施の形態においては、PND1の制御部12が、予め記憶部13に格納されているアプリケーションプログラムに従い、上述したルーチンRT1、RT2及びRT3の各処理手順を行うようにした場合について述べた。
【0305】
本発明はこれに限らず、PND1の制御部12が、記憶媒体からインストールしたアプリケーションプログラムや、インターネットからダウンロードしたアプリケーションプログラム、その他種々のルートによってインストールしたアプリケーションプログラムに従って上述した各処理手順を行うようにしても良い。第2及び第3の実施の形態についても同様である。
【0306】
さらに上述した実施の形態においては、水平角速度検出部としてのY軸ジャイロセンサ5と、垂直加速度検出部3軸加速度センサ4と、時間差算出部としての時間差算出部34と、速度算出部としての時間差速度算出部35とによって速度算出部としてのナビゲーションユニット11を構成する場合について述べた。
【0307】
しかしながら本発明はこれに限らず、その他種々の構成でなる水平角速度検出部と、垂直加速度検出部と、時間差算出部と、速度算出部とによって速度算出部を構成するようにしても良い。
【0308】
さらに上述した実施の形態においては、水平角速度検出部としてのY軸ジャイロセンサ5と、垂直加速度検出部3軸加速度センサ4と、時間差算出部としての時間差算出部34と、速度算出部としての時間差速度算出部35と、垂直角速度検出部としてのZ軸ジャイロセンサ6と、角度算出部としての角度算出部23と、位置算出部としての位置算出部25とによってナビゲーション装置としてのナビゲーションユニット11を構成する場合について述べた。
【0309】
しかしながら本発明はこれに限らず、その他種々の構成でなる水平角速度検出部と、垂直加速度検出部と、時間差算出部と、速度算出部と、垂直角速度検出部と、角度算出部と、位置算出部とによってナビゲーション装置を構成するようにしても良い。
【産業上の利用可能性】
【0310】
本発明は、携帯型や据え置き型等のナビゲーション装置や、ナビゲーション機能を搭載した携帯電話機やコンピュータ装置等の種々の電子機器でも利用できる。
【符号の説明】
【0311】
1、50……PND、2、102……表示部、3……操作部、4……3軸加速度センサ、5……Y軸ジャイロセンサ、6……Z軸ジャイロセンサ、7……気圧センサ、9……車両、10……クレードル、11、51……ナビゲーションユニット、12、52……制御部、13、108……記憶部、21……GPS処理部、22、53……自律速度算出部、23……角度算出部、24……高度算出部、25……位置算出部、26……ナビゲーション部、34、61……時間差算出部、35……時間差速度算出部、36……平滑化及びノイズ除去部、37……自律速度出力部、38……設置距離設定部、54……時間差速度生成部、55……うねり速度生成部、56……出力切替部、62……時間差速度出力部、101……携帯電話機、104……マイク、105……スピーカ、109……統括制御部、110……携帯電話ユニット、111……送受信部、114……携帯電話制御部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動面に沿って移動する移動体に取り付けられた本体部に搭載され、上記移動面の傾斜角度に応じて発生する上記移動体の進行方向と直交した水平軸周りの角速度でなる水平軸角速度を検出する水平角速度検出部と、
上記本体部に搭載され、上記移動面の形状に応じて発生する垂直方向の加速度でなる垂直加速度を検出する垂直加速度検出部と、
上記移動面の所定箇所に起因して上記水平軸角速度に表れる特徴成分と上記垂直加速度に表れる特徴成分との時間差を算出する時間差算出部と、
上記移動体全体として上記水平角速度が作用すると見なしうる位置から上記本体部の設置位置までの距離を表す設置距離と上記時間差との比率を基に、上記移動体の進行方向の速度を表す時間差速度を算出する速度算出部と
を有する速度算出装置。
【請求項2】
上記時間差算出部は、
所定期間における上記水平軸角速度及び上記垂直加速度の相関値を基に上記時間差を算出する
請求項1に記載の速度算出装置。
【請求項3】
上記水平角速度検出部及び上記垂直加速度検出部は、所定の検出周期で上記水平角速度及び垂直加速度をそれぞれ検出し、
上記時間差算出部は、
上記水平軸角速度及び上記垂直加速度の検出結果を上記検出周期単位で時間軸方向にずらし、互いに相違する複数種類の時間ずれ量に応じてそれぞれ得られる上記相関値を基に、上記検出周期以下の時間精度で上記時間差を算出する
請求項2に記載の速度算出装置。
【請求項4】
上記時間差算出部は、
所定期間における上記水平軸角速度及び上記垂直加速度の共分散値を基に上記時間差を算出する
請求項1に記載の速度算出装置。
【請求項5】
上記時間差算出部は、
所定期間において上記水平軸角速度波形が極大値又は極小値になる時点と上記垂直加速度波形が極大値又は極小値になる時点との差分を上記時間差として算出する
請求項1に記載の速度算出装置。
【請求項6】
上記時間差算出部は、
上記水平軸角速度の検出値及び上記垂直角速度の検出値の極性が異なる場合、上記期間において上記水平軸角速度が極大値又は極小値になる時点と上記垂直角速度が極小値又は極大値になる時点との差分を上記時間差として算出する
請求項5に記載の速度算出装置。
【請求項7】
上記速度算出部は、
上記時間差算出部により上記時間差が複数通り算出された場合、算出される上記時間差速度が直前の上記時間差速度に最も近くなる上記時間差を選択して当該時間差速度を算出する
請求項1に記載の速度算出装置。
【請求項8】
上記時間差算出部は、
上記時間差を算出すると共に、上記水平軸角速度又は上記垂直加速度のいずれが先行しているかを表す先行情報を生成し、
上記速度算出部は、
上記移動体の上記時間差速度を算出すると共に、上記先行情報を基に当該移動体の進行方向を判別する
請求項1に記載の速度算出装置。
【請求項9】
上記移動体は、少なくとも2軸以上の車軸を中心にそれぞれ回転する車輪を介して上記移動面に沿って移動し、
上記速度算出部は、
上記移動体の進行方向に関する上記車軸間の中点から上記本体部の設置位置までの距離を上記設置距離として上記時間差速度を算出する
請求項1に記載の速度算出装置。
【請求項10】
上記移動体の現在位置を測位する測位手段と、
上記現在位置の測位結果を基に上記移動体の速度を表す測位速度を算出する測位速度算出部と、
上記時間差算出部により算出された上記時間差と上記測位速度とを基に、上記設置距離を算出する設置距離算出部と
をさらに有する請求項1に記載の速度算出装置。
【請求項11】
上記速度算出部により算出された上記時間差速度が所定の下限閾値よりも小さい場合には、当該時間差速度を補正して出力する出力処理部
をさらに有する請求項1に記載の速度算出装置。
【請求項12】
上記出力処理部は、
上記時間差速度が上記下限閾値よりも小さい場合、上記時間差速度を直前に算出された上記時間差速度に置き換える
請求項11に記載の速度算出装置。
【請求項13】
上記出力処理部は、
上記時間差速度が上記下限閾値よりも小さい場合、上記速度を0とする
請求項11に記載の速度算出装置。
【請求項14】
所定の速度検出手法により上記移動体の速度を第2速度として検出する第2速度検出部と、
上記時間差速度が所定の上限閾値よりも大きい場合、上記時間差速度に代えて上記第2速度を出力する出力処理部と
をさらに有する請求項1に記載の速度算出装置。
【請求項15】
上記設置距離に応じて上記上限閾値を設定する上限閾値設定部
をさらに有する請求項14に記載の速度算出装置。
【請求項16】
移動面に沿って移動する移動体に取り付けられた本体部に搭載された水平角速度検出部により、上記移動面の傾斜角度に応じて発生する上記移動体の進行方向と直交した水平軸周りの角速度でなる水平軸角速度を検出する水平角速度検出ステップと、
上記本体部に搭載された垂直加速度検出部により、上記移動面の形状に応じて発生する垂直方向の加速度でなる垂直加速度を検出する垂直加速度検出ステップと、
所定の時間差算出部により、上記移動面の所定箇所に起因して上記水平軸角速度に表れる特徴成分と上記垂直加速度に表れる特徴成分との時間差を算出する時間差算出ステップと、
所定の速度算出部により、上記移動体全体として上記水平角速度が作用すると見なしうる位置から上記本体部の設置位置までの距離を表す設置距離と上記時間差との比率を基に、上記移動体の進行方向の速度を表す時間差速度を算出する速度算出ステップと
を有する速度算出方法。
【請求項17】
移動面に沿って移動する移動体に取り付けられた本体部に搭載され、上記移動面の傾斜角度に応じて発生する上記移動体の進行方向と直交した水平軸周りの角速度でなる水平軸角速度を検出する水平角速度検出部と、
上記本体部に搭載され、上記移動面の形状に応じて発生する垂直方向の加速度でなる垂直加速度を検出する垂直加速度検出部と、
上記移動面の所定箇所に起因して上記水平軸角速度に表れる特徴成分と上記垂直加速度に表れる特徴成分との時間差を算出する時間差算出部と、
上記移動体全体として上記水平角速度が作用すると見なしうる位置から上記本体部の設置位置までの距離を表す設置距離と上記時間差との比率を基に、上記移動体の進行方向の速度を表す時間差速度を算出する速度算出部と、
上記移動体の進行方向に垂直な垂直軸周りの角速度を算出する垂直角速度検出部と、
上記垂直軸周りの角速度に基づいて上記移動体が旋回した角度を算出する角度算出部と、
上記速度算出部により算出された上記進行方向の速度と、上記角度算出部により算出された上記角度とに基づいて、上記移動体の位置を算出する位置算出部と
を有するナビゲーション装置。
【請求項18】
移動面に沿って移動する移動体に取り付けられた本体部に搭載され、上記移動面の傾斜角度に応じて発生する上記移動体の進行方向と直交した水平軸周りの角速度でなる水平軸角速度を検出する水平角速度検出部と、
上記本体部に搭載され、上記移動面の形状に応じて発生する垂直方向の加速度でなる垂直加速度を検出する垂直加速度検出部と、
上記移動面の所定箇所に起因して上記水平軸角速度に表れる特徴成分と上記垂直加速度に表れる特徴成分との時間差を算出する時間差算出部と、
上記移動体全体として上記水平角速度が作用すると見なしうる位置から上記本体部の設置位置までの距離を表す設置距離と上記時間差との比率を基に、上記移動体の進行方向の速度を表す時間差速度を算出する速度算出部と、
上記移動体の進行方向に垂直な垂直軸周りの角速度を算出する垂直角速度検出部と、
上記垂直軸周りの角速度に基づいて上記移動体が旋回した角度を算出する角度算出部と、
上記速度算出部により算出された上記進行方向の速度と、上記角度算出部により算出された上記角度とに基づいて、上記移動体の位置を算出する位置算出部と、
所定の基地局との間で無線通信を行うことにより通話処理を行う携帯電話部と
を有するナビゲーション機能付携帯電話機。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate

【図18】
image rotate

【図19】
image rotate

【図20】
image rotate

【図21】
image rotate

【図22】
image rotate

【図23】
image rotate

【図24】
image rotate

【図25】
image rotate

【図26】
image rotate

【図27】
image rotate


【公開番号】特開2011−117843(P2011−117843A)
【公開日】平成23年6月16日(2011.6.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−275758(P2009−275758)
【出願日】平成21年12月3日(2009.12.3)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】