説明

連続加熱炉

【課題】 燃焼装置が設けられた複数の燃焼ゾーンに被加熱物を順々に導いて加熱する連続加熱炉において、NOxの発生量を少なくしながら、効率のよい加熱処理が行えるようにする。
【解決手段】 燃焼装置20a〜20dが設けられた複数の燃焼ゾーン10a〜10dに被加熱物1を順々に導いて加熱する連続加熱炉において、炉10内において発生した燃焼排ガスを少なくとも1つの燃焼ゾーンにおける燃焼装置に供給する燃焼排ガス供給手段40を設けると共に、この排ガス供給手段により上記の燃焼装置に供給する燃焼排ガスを制御する制御手段44a〜44dを設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、燃焼装置が設けられた複数の燃焼ゾーンに被加熱物を順々に導いて加熱する連続加熱炉に係り、特に、被加熱物の加熱処理時に発生するNOxの量を少なくしながら、効率のよい加熱処理が行えるようにした点に特徴を有するものである。
【背景技術】
【0002】
スラブなどの被加熱物を加熱処理するにあたり、従来から、予熱帯、加熱帯、均熱帯などの燃焼装置が設けられた複数の燃焼ゾーンを有する連続加熱炉内において、被加熱物を順々に上記の各燃焼ゾーンに導き、各燃焼ゾーンに設けられた燃焼装置において燃料を燃焼用空気と混合させて燃焼させ、各燃焼ゾーンにおいて被加熱物を順々に加熱処理することが行われている。
【0003】
ここで、上記のように各燃焼ゾーンに設けられた燃焼装置において燃料を燃焼用空気と混合させて燃焼させるようにした場合、燃焼時における火炎の温度が高くなってNOxが発生しやすくなるという問題があった。
【0004】
そして、従来においては、燃焼により生じた燃焼排ガスを燃焼装置に供給し、燃焼用空気中における酸素濃度を低下させてNOxの発生を抑制するようにし、またこのように燃焼により生じた燃焼排ガスを燃焼装置に供給するにあたり、燃焼用空気の温度などを考慮して、燃焼装置に供給する燃焼排ガスの量を制御するようにしたものが提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
【0005】
しかし、前記のように複数の燃焼ゾーンを有する連続加熱炉において、被加熱物を順々に各燃焼ゾーンに導き、各燃焼ゾーンに設けられた燃焼装置において燃料を燃焼用空気と混合させて燃焼させるにあたり、全ての燃焼ゾーンにおける燃焼装置に対して上記のように燃焼排ガスを供給するようにした場合、NOxの発生は抑制されるようになるが、被加熱物に対する加熱効率が大きく低下し、効率のよい加熱処理が行えなくなるという問題があった。
【特許文献1】特許第2749701号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
この発明は、燃焼装置が設けられた複数の燃焼ゾーンに被加熱物を順々に導いて加熱する連続加熱炉における上記のような問題を解決することを課題とするものであり、上記のように複数の燃焼ゾーンに被加熱物を順々に導き、各燃焼ゾーンに設けられた燃焼装置により被加熱物を加熱処理するあたり、NOxの発生量を少なくしながら、効率のよい加熱処理が行えるようにすることを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明においては、上記のような課題を解決するため、燃焼装置が設けられた複数の燃焼ゾーンに被加熱物を順々に導いて加熱する連続加熱炉において、炉内において発生した燃焼排ガスを少なくとも1つの燃焼ゾーンにおける燃焼装置に供給する燃焼排ガス供給手段を設けると共に、この燃焼排ガス供給手段により上記の燃焼装置に供給する燃焼排ガスを制御する制御手段を設けるようにした。
【0008】
ここで、この発明における連続加熱炉においては、炉内において発生した燃焼排ガスを上記の燃焼排ガス供給手段によって複数の燃焼ゾーンに供給できるようにすると共に、この燃焼排ガス供給手段によって供給する燃焼排ガスを制御する制御手段を、各燃焼ゾーンに対して個別に設けることが好ましい。
【0009】
そして、上記のように排ガス供給手段によって供給する燃焼排ガスを制御する制御手段を各燃焼ゾーンに対して個別に設け、各燃焼ゾーンに設けられた燃焼装置に供給する燃焼排ガスを制御するにあたっては、NOxの発生が多くなる燃焼ゾーンに設けられた燃焼装置に供給する燃焼排ガスの量を多くすることが好ましい。
【発明の効果】
【0010】
この発明においては、燃焼装置が設けられた複数の燃焼ゾーンに被加熱物を順々に導いて加熱する連続加熱炉において、上記のように炉内において発生した燃焼排ガスを少なくとも1つの燃焼ゾーンにおける燃焼装置に供給する燃焼排ガス供給手段を設けると共に、この排ガス供給手段により上記の燃焼装置に供給する燃焼排ガスを制御手段によって制御するようにしたため、上記の燃焼ゾーンにおける燃焼装置の燃焼条件に応じて、燃焼排ガスの供給量を多くして、NOxの発生を抑制するようにし、また燃焼排ガスの供給量を少なくして、燃焼装置における燃焼効率を高めるようにすることができるようになる。
【0011】
また、上記の燃焼ゾーンが多く存在する場合において、上記の燃焼排ガス供給手段によって炉内において発生した燃焼排ガスを複数の燃焼ゾーンに供給できるようにすると共に、この排ガス供給手段による燃焼排ガスの供給を制御する制御手段を、各燃焼ゾーンに対して個別に設けると、それぞれの燃焼ゾーンにおける燃焼装置の燃焼条件に応じて、燃焼排ガスの供給量を多くして、NOxの発生を抑制するようにし、あるいは燃焼排ガスの供給量を少なくして、燃焼装置における燃焼効率を高めるようにすることができるようになる。
【0012】
そして、上記の各燃焼ゾーンにおける燃焼装置に供給する燃焼排ガスの量を上記の制御手段によって個別に制御するにあたり、NOxの発生が多くなる燃焼ゾーンに設けられた燃焼装置に供給する燃焼排ガスの量を、他の燃焼ゾーンに設けられた燃焼装置に供給する燃焼排ガスの量よりも多くさせると、NOxの発生が多くなる燃焼ゾーンにおけるNOxの発生を抑制しながら、連続加熱炉全体として効率のよい加熱処理が行えるようになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、この発明の実施形態に係る連続加熱炉を添付図面に基づいて具体的に説明する。なお、この発明に係る連続加熱炉は、下記の実施形態に示すものに限定されず、発明の要旨を変更しない範囲において、適宜変更して実施できるものである。
【0014】
この実施形態に係る連続加熱炉においては、図1に示すように、炉10内を、予熱帯10aと第1加熱帯10bと第2加熱帯10cと均熱帯10dとからなる4つの燃焼ゾーン10a〜10dに区画すると共に、各燃焼ゾーン10a〜10dにそれぞれ複数の燃焼装置20a〜20dを設けている。
【0015】
そして、スラブなどの被加熱物1を上記の予熱帯10aの前側に設けられた装入扉12を通して炉10内に順々に導入させ、この炉10内に設けられた送りローラなどの炉内スラブ搬送機構13によって上記の被加熱物1を、予熱帯10a,第1加熱帯10b,第2加熱帯10c,均熱帯10dの順に移動させると共に、上記の各燃焼ゾーン10a〜10dに設けられた燃焼装置20a〜20dを燃焼させて、上記の被加熱物1を順々に加熱処理し、このように加熱処理した被加熱物1を均熱帯10dの後側に設けられた抽出扉14を通して炉10内から順々に取り出すようにしている。なお、被加熱物1を炉10内において順々に移動させる炉内スラブ搬送機構13としては、上記のような送りローラ以外にウォーキングビームなどの公知の送り手段を用いることができる。
【0016】
ここで、この実施形態に係る連続加熱炉においては、図2に示すように、上記の各燃焼ゾーン10a〜10dに設けた各燃焼装置20a〜20dに対して燃焼用空気供給手段30により燃焼用空気を供給するにあたり、燃焼用空気を空気送風装置31から送風パイプ32を通して各燃焼ゾーン10a〜10dに対応する各燃焼用空気供給パイプ33a〜33dに送り、各燃焼用空気供給パイプ33a〜33dにそれぞれ流量調整弁34a〜34dを設け、この各流量調整弁34a〜34dにより各燃焼ゾーン10a〜10dに設けた各燃焼装置20a〜20dに供給する燃焼用空気の量を個別に制御するようにしている。
【0017】
また、この実施形態に係る連続加熱炉においては、炉10内において発生した燃焼排ガスを燃焼排ガス供給手段40により各燃焼ゾーン10a〜10dに設けられ各燃焼装置20a〜20dに供給できるようにしている。
【0018】
ここで、この実施形態に係る連続加熱炉においては、上記の炉10内において発生した燃焼排ガスを排ガス送風装置41から排ガス送風パイプ42を通して各燃焼ゾーン10a〜10dに対応する各燃焼排ガス供給パイプ43a〜43dに送るようにし、各燃焼排ガス供給パイプ43a〜43dにそれぞれ排ガス流量調整弁44a〜44dを設けると共に、各燃焼排ガス供給パイプ43a〜43dをそれぞれ対応する燃焼用空気供給パイプ33a〜33dに接続させている。そして、上記の各排ガス流量調整弁44a〜44dにより、各燃焼ゾーン10a〜10dに設けた各燃焼装置20a〜20dに供給する燃焼排ガスの量を個別に制御する一方、余剰の燃焼排ガスを上記の排ガス送風装置41から調整弁45が設けられた排気パイプ46に導くようにしている。なお、各燃焼ゾーン10a〜10dにおけるNOxの発生が十分に低い場合には、各排ガス流量調整弁44a〜44dを全閉にする一方、上記の調整弁45を全開にして、排ガス送風装置41に加わる負荷を低減させるようにする。
【0019】
そして、この実施形態に係る連続加熱炉においては、上記の予熱帯10a,第1加熱帯10b,第2加熱帯10c,均熱帯10dからなる各燃焼ゾーン10a〜10dにおけるNOxの発生状況に応じて、上記の空気送風装置31から送風パイプ32を通して各燃焼ゾーン10a〜10dに設けられた各燃焼装置20a〜20dに供給する燃焼用空気の量を、各燃焼用空気供給パイプ33a〜33dに設けられた各流量調整弁34a〜34dによって個別に調整すると共に、上記の排ガス送風装置41から排ガス送風パイプ42を通して各燃焼ゾーン10a〜10dに設けられた各燃焼装置20a〜20dに供給する燃焼排ガスの量を、各燃焼排ガス供給パイプ43a〜43dに設けられた各排ガス流量調整弁44a〜44dによって個別に調整するようにしている。
【0020】
ここで、例えば、上記の予熱帯10aと第1加熱帯10bとにおいてNOxが多く発生する状況では、上記の燃焼用空気供給パイプ33a,33bに設けられた流量調整弁34a,34bにより、予熱帯10aと第1加熱帯10bとにおける各燃焼装置20a,20bに供給する燃焼用空気の量を、第2加熱帯10cと均熱帯10dとにおける各燃焼装置20c,20dに供給する燃焼用空気の量よりも少なくする一方、上記の燃焼排ガス供給パイプ43a,43bに設けられた排ガス流量調整弁44a,44bにより、予熱帯10aと第1加熱帯10bとにおける各燃焼装置20a,20bに供給する燃焼排ガスの量を、第2加熱帯10cと均熱帯10dとにおける各燃焼装置20c,20dに供給する燃焼排ガスの量より多くする。
【0021】
このようにすると、NOxが多く発生する予熱帯10aと第1加熱帯10bとにおいては、多くの燃焼排ガスが混合された燃焼用空気が各燃焼装置20a,20bに供給されて燃焼されるようになり、NOxの発生が抑制されるようになる一方、第2加熱帯10cと均熱帯10dとにおいては、燃焼排ガスの量が少ない或いは燃焼排ガスが混合されていない燃焼用空気が各燃焼装置20c,20dに供給されて燃焼されるようになり、燃焼効率の高い燃焼が行われるようになる。
【0022】
この結果、この実施形態に係る連続加熱炉においては、NOxの発生を抑制しながら、連続加熱炉全体として効率のよい加熱が行えるようになる。
【0023】
なお、この実施形態に係る連続加熱炉においては、予熱帯10a,第1加熱帯10b,第2加熱帯10c,均熱帯10dからなる各燃焼ゾーン10a〜10dに設けられた各燃焼装置20a〜20dに対して、燃焼排ガス供給手段40により燃焼排ガスを供給できるようにしたが、例えば、上記の均熱帯10dでの燃焼時にNOxが殆ど発生しないような場合には、この均熱帯10dにおける各燃焼装置20dに燃焼排ガスを供給するための燃焼排ガス供給パイプ43dや排ガス流量調整弁44dをなくすことができる。
【0024】
また、この実施形態に係る連続加熱炉においては、炉10内を予熱帯10a,第1加熱帯10b,第2加熱帯10c,均熱帯10dからなる4つの燃焼ゾーン10a〜10dを設けるようにしたが、炉10内に設ける燃焼ゾーンを減少させたり、増加させたりすることも可能である。そして、この場合にも、上記のように燃焼排ガス供給手段から全ての燃焼ゾーンにおける燃焼装置に対して燃焼排ガスを供給できるようにする他、NOxの発生が多くなる適当な燃焼ゾーンにおける燃焼装置に対してだけ燃焼排ガスを供給できるようにすることもできる。
【0025】
また、この実施形態に係る連続加熱炉においては、各燃焼ゾーン10a〜10dに設ける各燃焼装置20a〜20dの種類は特に限定されず、燃焼排ガスの熱を蓄熱する蓄熱部が設けられた蓄熱式バーナーであっても、蓄熱部が設けられていない通常のバーナーであってもよい。
【0026】
また、この実施形態に係る連続加熱炉においては、NOxの発生量を測定しなくても、炉内の温度や炉内雰囲気ガス中における酸素濃度に基づいて、NOxの発生量を予測して、上記のような操作を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】この発明の一実施形態に係る連続加熱炉において、被加熱物を順々に加熱する状態を示した概略説明図である。
【図2】上記の実施形態に係る連続加熱炉において、各燃焼ゾーンに設けた燃焼装置に対して燃焼用空気と燃焼排ガスとを供給させる構成を示した概略説明図である。
【符号の説明】
【0028】
1 被加熱物
10 炉
10a 予熱帯
10b 第1加熱帯
10c 第2加熱帯
10d 均熱帯
12 装入扉
13 炉内スラブ搬送機構
14 抽出扉
20a〜20d 燃焼装置
30 燃焼用空気供給手段
31 空気送風装置
32 送風パイプ
33a〜33d 燃焼用空気供給パイプ
34a〜34d 流量調整弁
40 燃焼排ガス供給手段
41 排ガス送風装置
42 排ガス送風パイプ
43a〜43d 燃焼排ガス供給パイプ
44a〜44d 排ガス流量調整弁(制御手段)
45 調整弁
46 排気パイプ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃焼装置が設けられた複数の燃焼ゾーンに被加熱物を順々に導いて加熱する連続加熱炉において、炉内において発生した燃焼排ガスを少なくとも1つの燃焼ゾーンにおける燃焼装置に供給する燃焼排ガス供給手段が設けられると共に、この排ガス供給手段により上記の燃焼装置に供給する燃焼排ガスを制御する制御手段が設けられてなることを特徴とする連続加熱炉。
【請求項2】
請求項1に記載した連続加熱炉において、炉内において発生した燃焼排ガスを複数の燃焼ゾーンにおける燃焼装置に供給する燃焼排ガス供給手段が設けられると共に、この燃焼排ガス供給手段により供給する燃焼排ガスを制御する制御手段を、各燃焼ゾーンに対して個別に設けたことを特徴とする連続加熱炉。
【請求項3】
請求項2に記載した連続加熱炉において、上記の制御手段により各燃焼ゾーンにおける燃焼装置に供給する燃焼排ガスを制御するにあたり、NOxの発生が多くなる燃焼ゾーンに設けられた燃焼装置に供給する燃焼排ガスの量を多くするようにしたことを特徴とする連続加熱炉。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2008−215666(P2008−215666A)
【公開日】平成20年9月18日(2008.9.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−50894(P2007−50894)
【出願日】平成19年3月1日(2007.3.1)
【出願人】(000211123)中外炉工業株式会社 (170)
【出願人】(000002118)住友金属工業株式会社 (2,544)
【Fターム(参考)】