説明

連続焼鈍炉における冷却装置

【課題】鋼帯の冷却装置としてエアージェットクーラーを採用した連続焼鈍炉において、錆等の異物がエアー噴流に混入して鋼帯の表面に噴射され、鋼帯表面に製品欠陥を生じる問題を、生産性を低下させることなく回避可能とした連続焼鈍炉における冷却装置を提供する。
【解決手段】遠心式循環ブロワ1と、遠心式循環ブロワ1の前段に設けられた熱交換器4と、熱交換器4の後段に設けられた遠心式循環ブロワ1で昇圧された冷却ガスを、連続焼鈍炉内6に返送する冷却ガス返送管7と、冷却ガス返送管7の先端にあって冷却ガスを連続焼鈍炉6へ吹き込む冷却ノズル3とを有し、冷却ガス返送管7から冷却ガスの一部を吸引後、異物除去処理を行うサイクロ2ンと、異物除去処理後の清浄ガスを、循環ブロワの前段に返送する清浄ガス返送管8を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は連続焼鈍炉における冷却装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
鋼帯の冷却装置には、従来より、冷却ガスを直接鋼帯に噴射して鋼帯の冷却を行う、いわゆる、ジェットクーラーが採用されている。しかし、ジェットクーラーにおいては、炉内の異物がロールと鋼板の間に噛みこまれて押し疵となり、鋼帯表面に製品欠陥を生じる等、品質上からも問題があった。
【0003】
特に、自動車用外板などの美麗な鋼板を製造する連続焼鈍炉においては、これらの押し疵を回避することが求められ、従来、その対策として、ジェットクーラーの風量を下げて冷却ガスの噴流による異物の巻き上がりを防止したり、ラインを定期的に停止して炉内清掃を実施する等の手段が採用されてきた。しかし、ジェットクーラーの風量を下げて操業する場合には生産速度の低下を余儀なくされ、ラインを定期的に停止して炉内清掃を実施する場合には稼働時間の減少を余儀なくされ、いずれも生産性の観点から問題があった。
【0004】
ジェットクーラーにおける、前記製品欠陥の問題に対し、本願出願人は、鋼帯とジェットクーラーのノズルヘッダーとの間にメッシュフェンスを設ける構成によって冷却用ガスに混入していたゴミ・錆等の微粉を、メッシュフェンスで除去し、さらに、メッシュフェンスに冷却水を散水する散水ノズルを設ける構成によってメッシュフェンスに付着したゴミ、錆等の微粉を洗い落す技術を開示している(特許文献1)。
【0005】
しかし、自動車用外板などの美麗な鋼板を製造する連続焼鈍炉に、特許文献1の技術を適用するためには、メッシュフェンスと散水ノズルを新たに設けることが必要なるが通常、焼鈍炉の冷却帯は不活性雰囲気なので、散水すると露点が上昇して鋼板が酸化するため散水することができない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平7−3337号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は前記問題を解決し、鋼帯の冷却装置としてジェットクーラーを採用した連続焼鈍炉において、錆等の異物が冷却ガス噴流に混入して鋼帯の表面に噴射され、鋼帯表面に製品欠陥を生じる問題を、生産性を低下させることなく、かつ大がかりな設備改変によらず、回避可能とした連続焼鈍炉における冷却装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するためになされた本発明の連続焼鈍炉における炉内の冷却装置は、連続焼鈍炉内雰囲気ガスの一部を吸引する遠心式循環ブロワと、遠心式循環ブロワの前段に設けられ、吸引された連続焼鈍炉内雰囲気ガスの冷却を行う熱交換器と、熱交換器の後段に設けられた遠心式循環ブロワで昇圧された冷却ガスを、連続焼鈍炉内に返送する冷却ガス返送管と、冷却ガス返送管の先端にあって冷却ガスを連続焼鈍炉へ吹き込む冷却ノズルとを有する連続焼鈍炉における炉内の冷却装置において、冷却ガス返送管から冷却ガスの一部を吸引後、異物除去処理を行うサイクロンと、異物除去処理後の清浄ガスを、遠心式循環ブロワの前段に返送する清浄ガス返送管を備えることを特徴とするものである。
【0009】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の連続焼鈍炉における炉内の冷却装置において、循環ブロワは、内部に回転羽根を備え、冷却ガス返送管は、回転羽根の回転中心軸より下側位置で、循環ブロワと連結し、循環ブロワから冷却ガス返送管に送りだされる冷却ガスの内、回転羽根の回転円の接線方向へ送りだされる冷却ガスをサイクロンに吸引することを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係る連続焼鈍炉における炉内の冷却装置は、鋼帯の冷却装置として、連続焼鈍炉内雰囲気ガスの一部を吸引・冷却して利用する循環式のジェットクーラーを採用した従来の連続焼鈍炉において、連続焼鈍炉内雰囲気ガスの一部を遠心式循環ブロワで吸引し、冷却後に連続焼鈍炉内に返送する冷却ガス返送管から、冷却ガスの一部を吸引後、異物除去処理を行うサイクロンと、異物除去処理後の清浄ガスを、循環ブロワの前段に返送する清浄ガス返送管を備える構成により、連続焼鈍炉内に返送する冷却ガスに含まれる異物を除去可能とした。すなわち、本発明の構成によれば、鋼帯の冷却装置としてジェットクーラーを採用した連続焼鈍炉において、冷却ガスの噴射時に巻き上げられた炉内の異物が、ロールと鋼板の間に噛みこまれて押し疵となり、鋼帯表面に製品欠陥を生じる問題を、生産性を低下させることなく、かつ大がかりな設備改変によらず、回避可能することができる。
【0011】
循環ブロワに導入された連続焼鈍炉内雰囲気ガス中の異物は、回転羽根の遠心力により、大きな異物程、外側に濃化していく。従って、請求項2記載の発明のように、循環ブロワから冷却ガス返送管に送りだされる冷却ガスの内、回転羽根の回転円の接線方向へ送りだされる冷却ガスをサイクロンに吸引する構成によれば、最小限の処理量で効率的な異物除去が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明に係る連続焼鈍炉における炉内の冷却装置の全体説明図である。
【図2】実施例により、本発明の効果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に本発明の好ましい実施形態を示す。
【0014】
本発明に係る連続焼鈍炉における炉内の冷却装置は、図1に示すように、連続焼鈍炉6の炉内雰囲気ガスの一部を吸引する遠心式循環ブロワ1と、遠心式循環ブロワの前段に設けられ、吸引された連続焼鈍炉内雰囲気ガスの冷却を行う熱交換器4と、熱交換器の後段に設けられた遠心式循環ブロワ1で昇圧された冷却ガスを、連続焼鈍炉内に返送する冷却ガス返送管7と、冷却ガス返送管7の先端にあって冷却ガスを連続焼鈍炉へ吹き込む冷却ノズル3と、冷却ガス返送管7から冷却ガスの一部を吸引後、異物除去処理を行うサイクロン2と、異物除去処理後の清浄ガスを、循環ブロワ1の前段に返送する清浄ガス返送管8を備えている。
【0015】
遠心式循環ブロワ1は、内部に回転羽根9を備え、冷却ガス返送管7は、回転羽根9の回転中心軸より下側位置で、遠心式循環ブロワ1と連結し、遠心式循環ブロワ1から冷却ガス返送管7に送りだされる冷却ガスのうち、回転羽根9の回転円の接線方向へ送りだされる冷却ガスは、サイクロン2に吸引される。
【0016】
連続焼鈍炉6の炉内から吸引された炉内雰囲気ガスには、ゴミ・錆等の異物が混入している。遠心式循環ブロワ1に導入された連続焼鈍炉内雰囲気ガス中の異物は、回転羽根9の遠心力により、大きな異物程、遠心式循環ブロワ1の外側に濃化していく。従って、回転羽根9の回転円の接線方向へ送りだされる冷却ガスには、高濃度の異物が混入している。本発明では、高濃度の異物が混入した冷却ガスを選択的にサイクロン2に吸引して異物除去後に、清浄ガスを遠心式循環ブロワ1の前段に返送する構成により、最小限の処理量で効率的な異物除去を可能としている。
【0017】
本発明では、遠心式循環ブロワ1で、異物を遠心式循環ブロワ1外側に濃化した後、高濃度の異物が混入した冷却ガスを選択的にサイクロン2に吸引するため、異物除去目的でサイクロン2内に抜き取るガスを最小量に抑えることが可能となり、これによりサイクロン2で発生する圧力損失も最小限に抑えることができる。
【0018】
また、本発明のように、遠心式循環ブロワ1の吐出側からサイクロン2に流れ、その後、遠心式循環ブロワ1吸引側へ戻るガスの流路が設けられた場合、遠心式循環ブロワ1の能力(風量、風圧)が低下することが懸念されるが、本発明では前記のように、異物除去目的でサイクロン2内に抜き取るガスを最小量に抑えることができるため、遠心式循環ブロワ1の能力低下代も最小限に抑えることができ、遠心式循環ブロワ1の増強等の追加設備投資は不要である。
【0019】
サイクロン2は、従来一般に使用されるものを用いればよい。サイクロン形状は、除去したい異物の直径と密度、流体の物性と風量などによりサイクロン形状決定をする従来公知の一般式に従って決定すればよい。なお、サイクロンの下部に2重の弁を設ける構成とすれば、操業中に捕集した異物を回収できる。
【実施例】
【0020】
図1に示す連続焼鈍炉における炉内の冷却装置を用いて、連続焼鈍炉6内から炉内雰囲気ガス(500〜600℃)を吸引し、熱交換器4に導入して水で間接的に冷却(200〜300℃)を行った後、吸引したガスを遠心式循環ブロワ1(550m/分)に導入し、回転羽根9により昇圧した。この時、ガス中の異物は、遠心力により大径のものほど、遠心式循環ブロワ1の外側に濃化している。その結果、遠心式循環ブロワ1の出口底部の異物濃度が高くなっている。
【0021】
遠心式循環ブロワ1の出口底部とサイクロン2(φ300mm*L600mm)の入側を接続し、サイクロン2の出側と遠心式循環ブロワ1の入側を接続すると、遠心式循環ブロワ1の出側の圧力が高く(1〜3kpa)、遠心式循環ブロワ1の入側の圧力が低い(0〜数pa)ため、サイクロン2に前記の異物濃度が高いガスが流れる。
【0022】
このようにして、サイクロン2に前記の異物濃度が高いガスを導入して、異物除去を行った。本実施例では、50μm以上の異物は底部に沈降し、清浄なガスは上部より排出されるサイクロンを使用した。
【0023】
図2には、上記実施例により異物除去処理を行った結果を示している。図2に示すように、本発明によれば、従来法に比べ炉内の有害な(50μm以上)異物個数が減少し、その結果、鋼板表面の異物噛みこみによる押し疵の深さも約半分に改善された。
【符号の説明】
【0024】
1 遠心式循環ブロワ
2 サイクロン
3 冷却ノズル
4 熱交換器
5 鋼板
6 連続焼鈍炉
7 冷却ガス返送管
8 清浄ガス返送管
9 回転羽根


【特許請求の範囲】
【請求項1】
連続焼鈍炉内雰囲気ガスの一部を吸引する遠心式循環ブロワと、遠心式循環ブロワの前段に設けられ、吸引された連続焼鈍炉内雰囲気ガスの冷却を行う熱交換器と、熱交換器の後段に設けられた遠心式循環ブロワで昇圧された冷却ガスを、連続焼鈍炉内に返送する冷却ガス返送管と、冷却ガス返送管の先端にあって冷却ガスを連続焼鈍炉へ吹き込む冷却ノズルとを有する連続焼鈍炉における炉内の冷却装置において、
冷却ガス返送管から冷却ガスの一部を吸引後、異物除去処理を行うサイクロンと、異物除去処理後の清浄ガスを、遠心式循環ブロワの前段に返送する清浄ガス返送管を備えることを特徴とする連続焼鈍炉における炉内の冷却装置。
【請求項2】
循環ブロワは、内部に回転羽根を備え、冷却ガス返送管は、回転羽根の回転中心軸より下側位置で、循環ブロワと連結し、循環ブロワから冷却ガス返送管に送りだされる冷却ガスの内、回転羽根の回転円の接線方向へ送りだされる冷却ガスをサイクロンに吸引する
ことを特徴とする請求項1記載の連続焼鈍炉における炉内の冷却装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−184782(P2011−184782A)
【公開日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−54046(P2010−54046)
【出願日】平成22年3月11日(2010.3.11)
【出願人】(000006655)新日本製鐵株式会社 (6,474)
【Fターム(参考)】