説明

連続焼鈍炉の炉内雰囲気調整方法

【課題】従来の方法では、炉内の水分除去が不十分で、露点を目標の−45℃以下とするのに長時間を要するため、容易に低露点雰囲気とならしめる炉内雰囲気改善法を提供する。
【解決手段】炉内雰囲気ガスから一部取り出したガスをリファイナー7で脱湿した後、再び炉内12へ供給する、連続焼鈍炉3の雰囲気調整方法において、前記取り出したガスを前記リファイナーに通した後、熱交換器6にてガス温度を400〜600℃にする昇温を行った上で、焼鈍炉壁10から炉壁耐火物11内部を経由させて炉内へ供給する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、連続焼鈍炉の炉内雰囲気調整方法に関し、詳しくは、鋼板及び溶融亜鉛めっき鋼板の製造に用いる連続焼鈍炉の炉内を容易に低露点雰囲気とならしめる、連続焼鈍炉の炉内雰囲気改善方法に関する。
【背景技術】
【0002】
鋼板に連続的に熱処理を施す連続焼鈍炉において、熱処理後の鋼板の化成処理性向上および高張力鋼板のめっき性を向上させるために炉内雰囲気ガスの露点−45℃以下が目標とされることが知られている。
連続焼鈍炉において、炉立上げ時の炉内は大気雰囲気で充満されており、炉内および炉壁耐火物内部には、大気中の水分が浸透している。かかる水分は炉を運転することによって徐々に除去されていくが、炉内が鋼板製造可能な露点範囲になるには十数時間から数日の運転が必要で非効率的である。この理由としては、炉立上げ後、耐火物内部に浸透していた水分が徐々に炉内へ供給されることによって炉内の露点が下がるまでに時間を要するということが挙げられる。従来の炉内雰囲気調整方法の一つとして特許文献1のように炉内空間に直接雰囲気ガスを供給するとともに、炉壁耐火物の最外面側から炉内空間に向けて50℃〜120℃の低温の雰囲気ガスを送供給する方法が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平07−173526号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、炉内は還元雰囲気となっているため鋼板の還元による炉内での水分発生や、焼鈍炉入口から鋼板に随伴して多少の外気が侵入するなどの外的要因により、常に水分が取り込まれているため、目標の露点−45℃以下を常時保持するためには従来の方法では水分除去が不十分であるという問題があった。したがって、除湿器であるリファイナー(被除湿ガスの温度は120℃以下とされる)は必須であるとともに、その機能を最大限に活用する技術もまた必要不可欠となる。特に、発明者らの検討では、特許文献1に記載の50℃〜120℃の低温のガスを炉内に供給すると、耐火物が冷やされて、その内部の水分が蒸発しにくくなり、炉内の低露点化にとって効率が悪く、さらに、低温にさらされた部分に炉内の水蒸気が集まり易く、その周辺の露点が炉全体に比べて上昇し、局部的に−45℃より高くなって、その部分にさらされた鋼板の局部的なめっき性を阻害する場合があることを把握した。
【課題を解決するための手段】
【0005】
発明者らは前記課題を解決するために鋭意検討し、その結果、炉内雰囲気ガスから一部取り出したガスを一旦リファイナーに通して除湿し、さらに該リファイナーを通過して120℃以下となったガスは、これを炉内へ吹き込む前に、前記取り出したガスとの熱交換により400〜600℃に昇温させて炉内に戻すのがよいとの知見を得た。また、焼鈍炉内の任意の場所を低露点化したい場合に当該箇所の焼鈍炉壁に前記戻すガスの供給配管を複数分散させて配設すると良いことも分かった。
【0006】
本発明は、上記知見に基づいてなされたものであり、すなわち、
(1) 連続焼鈍炉の炉内雰囲気ガスの低露点化のために前記炉内雰囲気ガスから一部取り出したガスをリファイナーで脱湿した後、再び炉内へ供給する、連続焼鈍炉の雰囲気調整方法において、前記取り出したガスを前記リファイナーに通した後、ガス温度を400〜600℃にする昇温を行った上で、焼鈍炉壁から炉壁耐火物内部を経由させて炉内へ供給することを特徴とする連続焼鈍炉の炉内雰囲気調整方法であり、又、
(2) 前記ガス温度の昇温は、前記取り出したガスを高温側、前記リファイナーを通過後のガスを低温側とした熱交換により行うことを特徴とする(1)に記載の連続焼鈍炉の炉内雰囲気調整方法であり、又、
(3) (1)又は(2)において、前記昇温後のガスを炉内へ供給する供給配管は、炉内への供給口を複数とし、隣り合う供給口同士の間隔を0.1〜1.5mとし、炉壁1m当たりの供給口個数を1個以上として、設置することを特徴とする連続焼鈍炉の炉内雰囲気調整方法である。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、雰囲気ガスを一部炉外に取り出してリファイナー利用により脱湿して炉内に戻すため、炉内に戻すガスの露点が従来よりも低くなる。また、炉外に取り出されたガスは、前記熱交換によって、400〜600℃の高温とされてから炉内に戻されるため、定常運転時の炉内の温度低下を抑える効果に加え、前記高温のガスを耐火物内部に通流させることによって耐火物内部の水分の蒸発を促進させ、効率的に耐火物内部の水分を除去でき、更なる炉内の低露点化ができるようにもなる。さらに、ガスを炉内に戻すためのガス戻し配管を炉壁に複数分散させて設置することによってより効率的に耐火物内部の水分を除去できるようになるという効果もある。これらにより、焼鈍炉内の露点を均一に−45℃以下に保持することが可能となり、鋼板の局部的なめっき性阻害もなくなり、均一で良好なめっき鋼板の製造に結びついた。
【0008】
よって、本発明によれば、焼鈍炉を点検・修理するために炉を開放し立ち上げる時のみならず、定常運転時に気候などにより耐火物内部の露点が高目となったときであっても、品質安定性に優れる連続焼鈍鋼板が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の実施例を示す概略図
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明において、雰囲気ガスを一部炉外に取り出して、リファイナーにて除湿する点までは従来と同様であるが、従来とは違って、リファイナーから出たガスの温度(リファイナーから出た直後は120℃以下である)を、400〜600℃に昇温させた上で炉内に戻すことが肝要である。炉内に戻す時のガス温度が400℃に満たないと、炉内の温度低下を招く原因となり、耐火物が冷やされて、その内部の水分が蒸発しにくくなり、炉内の低露点化にとって効率が悪く、さらに低温に曝された部分には炉内の水蒸気が集まり易く、その周辺の露点が炉全体に比べて上昇し、局部的に−45℃より高くなって、その部分に曝された鋼板の局部的なめっき性を阻害する場合がある。一方、炉内に戻す時のガス温度が600℃を上回ると、周辺の炉壁が赤熱するため、炉壁の寿命を短くしてしまう惧れがある。
【0011】
リファイナーから出たガスの温度を400〜600℃とするための昇温方法は、リファイナーに入る前のガス(700〜800℃程度の炉内雰囲気温度よりも高々100℃低い程度の高温である)を高温側の熱媒とし、リファイナーから出たガスを低温側の熱媒とした熱交換による方法が、省エネルギーの観点から好ましい。
さらに、前記昇温後のガスを炉内に戻すための戻し配管は、炉内への出口を複数とし、隣り合う出口同士の間隔を0.1〜1.5mとし、炉壁1m当たりの出口個数を1個以上として、設置することが好ましい。この好ましい条件が満足されないと、耐火物内にガスが行き渡らない部分が増え、低露点化の効果が低くなる。
【0012】
また、炉内からガスを取り出すための取り出し口と、前記供給口とは、互いに離して設置することが好ましい。前記取り出し口と前記供給口の位置同士が互いに近いと、その近い両位置間だけをガスが循環するため、焼鈍炉内の一部分だけが低露点化され、炉内全体の低露点化が望めないためである。したがって、前記取り出し口と前記供給口の位置同士は互いになるべく離すことによって、炉内の広い範囲でガスを循環させることができ、炉内広範囲での低露点化が達成できる。
【0013】
なお、前記取り出し口は、焼鈍炉内の露点が他の箇所と比べて高い箇所に設置することが好ましい。露点が他の箇所と比べて高い箇所に前記取り出し口を設置することによって露点の高いガスを積極的に取り込み、脱湿された低露点ガスを供給するため、効率的に炉内の露点を下げることができる。
【実施例】
【0014】
図1は典型的な縦型連続焼鈍炉に対して本発明を実施した一例を示す概略図である。図1において、1は鋼板、2は焼鈍炉内のロール、3は焼鈍炉(連続焼鈍炉)、4は雰囲気ガスの取り出し配管、5は送風機、6は熱交換器、7はリファイナー、8は昇温したガスの供給配管、9は昇温したガス、10は炉壁、11は炉壁耐火物、12は炉内である。取り出し配管4の炉壁10への接続端が前記取り出し口であり、供給配管8の炉壁10への接続端が前記供給口である。
【0015】
連続焼鈍炉3において、炉立上げ時もしくは定常運転時に炉内12の雰囲気ガスの露点が他の箇所に比べてΔ30℃程度高い、湿度の高い箇所に設置された取り出し配管4から、炉内雰囲気ガスの一部を送風機5によって取り出した。該取り出したガスは熱交換器6に通した。この時、定常運転時であれば取り出したガスは温度が高い(本例では約800℃)ため高温側熱媒であり、リファイナー7を通って低温(120℃以下)となったガスは低温側熱媒であり、これら両熱媒間で熱交換が行われる。高温側熱媒のガスは熱交換器6を通過した後、リファイナーを通過することによってガス内部の水分を除去され、低温側熱媒となった後、再び熱交換器6を通過させることで、約400℃に昇温させた。該昇温したガス9は、取り出し配管4の取り出し口から鋼板1の進行方向下流側に約20m隔てて供給口が位置するように設置した供給配管8に通し、炉壁10から炉壁耐火物11内部を経由させて炉内12に供給した。
【0016】
該供給したガスは炉壁耐火物11内部を通過する間、そこに浸透していた水分の蒸発を促進させ強制的に炉内12へと排出させた。この繰り返しにより1時間を経ずに炉壁耐火物11内の水分を除去し、焼鈍炉内の雰囲気ガスを露点−50℃に保持できて、めっき性の良好な鋼板の高効率製造が可能になった。
尚、本例における供給配管8の供給口は、炉壁の縦方向と横方向にそれぞれ、1mの間隔で5個ずつ配列したが、図1では1個のみ示し、他は省略した。
【0017】
これに対し従来の連続焼鈍炉では、炉内の露点が下がらず、−30℃程度であり、1昼夜を経てようやく−45℃に到達し、低露点化には著しく効率が悪く、この間に不めっきの鋼板を大量に製造してしまい、大きな問題であった。
【符号の説明】
【0018】
1 鋼板
2 ロール
3 焼鈍炉
4 取り出し配管
5 送風機
6 熱交換器
7 リファイナー
8 供給配管
9 昇温したガス
10 炉壁
11 炉壁耐火物
12 炉内

【特許請求の範囲】
【請求項1】
連続焼鈍炉の炉内雰囲気ガスの低露点化のために前記炉内雰囲気ガスから一部取り出したガスをリファイナーで脱湿した後、再び炉内へ供給する、連続焼鈍炉の雰囲気調整方法において、前記取り出したガスを前記リファイナーに通した後、ガス温度を400〜600℃にする昇温を行った上で、焼鈍炉壁から炉壁耐火物内部を経由させて炉内へ供給することを特徴とする連続焼鈍炉の炉内雰囲気調整方法。
【請求項2】
前記ガス温度の昇温は、前記取り出したガスを高温側、前記リファイナーを通過後のガスを低温側とした熱交換により行うことを特徴とする請求項1に記載の連続焼鈍炉の炉内雰囲気調整方法。
【請求項3】
請求項1又は2において、前記昇温後のガスを炉内へ供給する供給配管は、炉内への供給口を複数とし、隣り合う供給口同士の間隔を0.1〜1.5mとし、炉壁1m当たりの供給口個数を1個以上として、設置することを特徴とする連続焼鈍炉の炉内雰囲気調整方法。

【図1】
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【公開番号】特開2012−111995(P2012−111995A)
【公開日】平成24年6月14日(2012.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−261918(P2010−261918)
【出願日】平成22年11月25日(2010.11.25)
【出願人】(000001258)JFEスチール株式会社 (8,589)
【Fターム(参考)】