説明

遊技機

【課題】遊技機の制御を安定させた状態で電源を切ることを可能にする。
【解決手段】電気部品制御手段が行う制御処理手順は、電源投入時またはリセット時に実行される初期制御処理手順と、初期制御処理手順の実行後に実行され遊技を制御する通常制御処理手順と、前記遊技機に供給される電源が設定電圧より低下した時もしくは電源断時に実行され、設定電圧以下に低下した時もしくは電源断時の遊技状態を記憶手段に記憶させた後待機状態にする電断制御処理手順とで少なくとも構成され、初期制御処理手順では、遊技機に供給されている電源の電圧変化を監視する電源状態監視手段による監視結果に対する電源状態判定処理が行われ、電断制御処理手順実行中にリセット手段からリセット信号が送信されると、電源状態監視手段による監視結果が所定の結果であることを条件に、初期制御処理手順で前記電源状態判定処理を繰り返すようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電源断時に遊技機の制御を安定させた状態で電源を切断することが可能な遊技機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、パチンコ機などの遊技機においては、ウォッチドッグタイマを設け、ウォッチドッグタイマがリセット用時間を経過した際にリセットを行うようにすると共に、リセット用時間よりも短い時間に設定されたタイマクリア時間経過毎にタイマクリア信号をウォッチドッグタイマに送信してリセット用時間経過前にウォッチドッグタイマの経過時間をクリアするように構成した遊技機がある。この構成の遊技機にあっては、プログラムが暴走してタイマクリア信号が送信されなくなった場合に、ウォッチドッグタイマがリセット用時間に至ることによってシステムのリセットが行われる。
【0003】
また、遊技機への供給電源が一定電圧以下に低下したことが検出された場合には、遊技機への電源が完全に停止するまでの間に、プログラムが遊技状態のバックアップ処理を行い、電源供給再開時に電源断前の遊技状態に戻す処理を行っている。
【0004】
さらに、他の遊技機として、制御プログラムにしたがう正常な処理がなされなくなった場合に、所定時間の経過によってリセット手段が機能して遊技動作を強制的に初期状態に戻すようにすると共に、制御プログラムには電源投入に対応して開始される第1処理と、所定時間毎に繰り返し処理される第2処理を含み、さらに第1処理にはリセット手段の動作を初期状態に戻すクリア処理を含むようにした遊技機が提案されている。この遊技機によれば、電源投入に対応して開始される第1処理においてリセット手段の動作を初期状態に戻しているため、回路素子の動作状態にかかわらず、また停電などで中断された処理の再開中であっても、リセット手段により遊技機が強制的に初期状態に戻される現象を極めて生じ難くできる。
【0005】
しかしながら、プログラムの暴走を早く検出するためなどの理由から、遊技機への供給電源が一定電圧以下に低下したことを検出してから完全に遊技機内の電源が切れるまでの時間よりもウォッチドッグタイマのリセット用時間を短く設定すると、一定電圧以下に低下したことを検出したことにより、プログラムがバックアップ処理を行って待機状態に入っているときに、ウォッチドッグタイマのリセット用時間が経過してリセットがかかり、それによりプログラムが先頭から処理を開始し、処理が途中段階に至った時点で遊技機の電源が切れて遊技機の制御が不安定になることがある。
【特許文献1】特開2002−253822号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、前記の点に鑑みなされたもので、遊技機の制御を安定させた状態で電源を切ることが可能な遊技機の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1の発明は、電気部品と、前記電気部品をプログラムにしたがって制御する電気部品制御手段と、前記電気部品制御手段が出力する制御信号を所定時間受信しない時に前記電気部品制御手段にリセット信号を送信するリセット手段と、遊技状態を記憶するための記憶手段と、を備えた遊技機において、前記電気部品制御手段が行う制御処理手順は、電源投入時またはリセット時に実行される初期制御処理手順と、前記初期制御処理手順の実行後に実行され遊技を制御する通常制御処理手順と、前記遊技機に供給される電源が設定電圧以下に低下した時もしくは電源断時に実行され、前記設定電圧以下に低下した時もしくは前記電源断時の遊技状態を前記記憶手段に記憶させた後待機状態にする電断制御処理手順とで少なくとも構成され、前記初期制御処理手順では、前記遊技機に供給されている電源の電圧変化を監視する電源状態監視手段による監視結果に対する電源状態判定処理が行われ、前記電断制御処理手順実行中に前記リセット手段から前記リセット信号が送信されると、前記電源状態監視手段による監視結果が所定の結果であることを条件に、前記初期制御処理手順で前記電源状態判定処理を繰り返すことを特徴とする。
【0008】
請求項2の発明は、請求項1において、前記待機状態は、前記電気部品制御手段の制御プログラムがループ状態又はストップ状態であることを特徴とする。
【0009】
請求項3の発明は、請求項1又は2において、前記所定時間を、前記制御信号が出力されてから前記電断制御処理手順において遊技状態を前記記憶手段に記憶させるまでの時間よりも長く設定したことを特徴とする。
【0010】
請求項4の発明は、請求項1から3の何れか一項において、前記電気部品制御手段による処理において、前記通常制御処理手順が割り込み処理とされ、前記初期制御処理手順が、前記通常制御処理手順の割り込みを禁止する割り込み禁止処理と、前記割り込み禁止処理より後に実行され前記割り込みを許可する割り込み許可処理とを含むと共に、前記電源状態判定処理が前記割り込み許可処理よりも前に実行されることを特徴とする。
【0011】
請求項5の発明は、請求項1から4の何れか一項において、前記電源状態判定処理が前記初期制御処理手順の先頭で実行されることを特徴とする。
【0012】
請求項6の発明は、請求項1から5の何れか一項において、前記遊技機に供給されている電源の電圧が設定電圧以下に低下したことを、前記電源状態監視手段による監視結果が所定の結果であることとすることを特徴とする。
【0013】
請求項7の発明は、請求項1から6の何れか一項において、前記初期制御処理手順は、電源断前の遊技状態を前記記憶手段から読み出して電源断前の遊技状態に復帰させることを特徴とする。
【0014】
請求項8の発明は、請求項1から7の何れか一項において、前記リセット手段は、設定時間が経過するとリセット信号を出力するタイマ機能を備え、前記電気部品制御手段により前記リセット手段に出力する制御信号は、前記タイマ機能のタイマカウンタをクリアして前記設定時間の経過を阻止するクリア信号であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
請求項1の発明によれば、電源投入時またはリセット時に実行される初期制御処理手順において、遊技機に供給されている電源の電圧変化を監視する電源状態監視手段による監視結果に対する電源状態判定処理が行われ、電断制御処理手順実行中にリセット手段からリセット信号が送信されると、前記電源状態監視手段による監視結果が所定の結果であることを条件に、前記初期制御処理手順で前記電源状態判定処理を繰り返す構成としたことにより、電源断時にリセット手段からリセット信号が送信され、電気部品制御手段の制御処置手順が先頭に戻って初期制御処理手順が始まっても、電源が完全に切れるまで、初期制御処理手順における電源状態判定処理で繰り返し処理が行われるため、遊技機の制御を安定させた状態で電源を切ることが可能となり、他の処理の実行中に電源が切断されることによる不具合等を軽減することが可能である。
【0016】
請求項2の発明によれば、待機状態は電気部品制御手段の制御プログラムがループ状態又はストップ状態であることにより、安定した待機状態で遊技機の電源を切ることができ、トラブル等の軽減が可能となる。
【0017】
請求項3の発明によれば、所定時間を、制御信号が出力されてから電断制御処理手順において遊技状態を記憶手段に記憶させるまでの時間よりも長く設定したことにより、常に待機状態に入ってからリセット信号が送信されるため、確実に遊技状態を記憶手段に記憶しバックアップすることが可能となる。
【0018】
請求項4の発明によれば、電気部品制御手段による処理において、通常制御処理手順が割り込み処理とされ、初期制御処理手順が、通常制御処理手順の割り込みを禁止する割り込み禁止処理と、割り込み禁止処理より後に実行され割り込みを許可する割り込み許可処理とを含むと共に、電源状態判定処理が割り込み許可処理よりも前に実行されることにより、割り込み処理が行われる前に電源状態判定処理を行うことが可能となり、遊技機への電源供給断を早く検出して待機状態にすることが可能となる。
【0019】
請求項5の発明によれば、電源状態判定処理が初期制御処理手順の先頭で実行されることにより、電源断時の処理手順を減らし、安定して遊技機の電源を停止することが可能となる。
【0020】
請求項6の発明によれば、遊技機に供給されている電源の電圧が設定電圧以下に低下したことを、電源状態監視手段による監視結果が所定の結果であるとしたことにより、電圧の低下に対応して遊技を制御することができるので、電圧低下によるトラブルを軽減することが可能となる。
【0021】
請求項7の発明によれば、初期制御処理手順が、電源断前の遊技状態を前記記憶手段から読み出して電源断前の遊技状態に復帰させることにより、遊技が始まる前に遊技状態を電源断前の状態に復帰させることが可能となり、スムーズな遊技が可能となる。
【0022】
請求項8の発明によれば、リセット手段は、設定時間が経過するとリセット信号を出力するタイマ機能を備え、電気部品制御手段によりリセット手段に出力する制御信号は、タイマ機能のタイマカウンタをクリアして設定時間の経過を阻止するクリア信号であることにより、予期せぬプログラムの暴走等に対応することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下添付の図面に基づき本発明の好適な実施形態を説明する。図1は本発明の一実施例に係る遊技機について釘を省略して示す正面図、図2は同遊技機の裏面図、図3は同遊技機の制御基板等の接続を簡略に示すブロック図である。
【0024】
図1に示す遊技機1は、遊技媒体として遊技球を用いるパチンコ遊技機であって、遊技盤3の縁に遊技球の外側ガイドレール4及び内側ガイドレール5が略円形に立設され、前記内側ガイドレール5によって囲まれた遊技領域6の中心線上にその上部から下部に向かって順に表示装置9、始動入賞口10、特別電動役物である大入賞口15、アウト口17が配設され、また上方両側には風車18a,18b、その下方に普通図柄変動開始用左ゲート19及び普通図柄変動開始用右ゲート21、その左右に左袖入賞口23と右袖入賞口25、さらには前記大入賞口15の両側に左落とし入賞口27と右落とし入賞口29が配設されている。前記種々の入賞口に遊技球が入賞すると所定数の遊技球が賞品球として払い出される。なお、後に詳述する大当たりになると大入賞口15が開放され、遊技球が入賞し易い大当たり遊技(特別遊技)が実行される。符号F1は外枠、F2は外枠F1に取り付けられた前枠、Gは前枠F2に開閉可能にヒンジで取り付けられたガラス枠である。
【0025】
また、前記遊技機1の前面側には、枠飾り右ランプ35a、枠飾り上ランプ35b及び枠飾り左ランプ35cが設けられ、払い出された遊技球を受けるための上側球受け皿36、該上側球受け皿36の飽和時に遊技球を受けるための下側球受け皿37、効果音等を発するスピーカ38、遊技者の発射操作に応じて遊技球を遊技領域6に向けて弾発発射する発射装置53等がそれぞれ組み付けられている。なお、前記下側球受け皿37の遊技球が満杯になったことを検出する満タンスイッチが遊技機の裏側に設けられていて、前記下側球受け皿37が満杯になって満タンスイッチがONになると、後述の払出装置の作動が停止されると共に前記発射装置53の駆動も停止される。以下、所要の各部についてさらに詳述する。
【0026】
前記表示装置9は、文字又は図柄の少なくとも何れかを表示可能なものであって、液晶,ドットマトリックス若しくはLED表示装置等の表示装置からなり、この実施例では、液晶表示器(TFT−LCDモジュール)で構成され、左上に普通図柄表示部45が組み込まれ、その他の大部分が特別図柄表示部42となっている。
【0027】
前記特別図柄表示部42は、遊技の当たり外れを判定する当否判定手段による判定結果を表示する。本実施例の特別図柄表示部42は、横に並ぶ3つの表示領域に分割された左側表示領域、中央表示領域、右側表示領域を備え、左側表示領域には左特別図柄が(左判定図柄)、中央表示領域には中特別図柄(中判定図柄)が、右側表示領域には右特別図柄(右判定図柄)が、それぞれ大当たりに対する当否判定結果表示用の特別図柄(判定図柄)として、変動表示及び停止表示可能とされている。また、前記特別図柄表示部42には、前記特別図柄(判定図柄)に加えて背景画像(キャラクタ,背景,文字等を含む。)が表示されることもあり、該背景画像が特別図柄の変動開始等の所定条件に起因して変動表示可能となっていてもよい。なお、この実施例における前記左側表示領域、中央表示領域、右側表示領域にそれぞれ変動および停止表示される特別図柄(判定図柄)は、『0,1,2,3,4,5,6,7,8,9,10,11』の12通りの図柄とされている。
【0028】
前記普通図柄表示部45は、記号或いは絵(キャラクタ)等の小当たり判定用普通図柄を変動表示及び停止表示する。本実施例における普通図柄表示部45に変動及び停止表示される普通図柄は、『0,1,2,3,4,5,6,7,8,9』の10通りの図柄とされている。
【0029】
前記始動入賞口10は特別図柄表示部42の真下に設けられ、2つの可動片10a,10bが背面の始動入賞口用ソレノイドによって略垂直で入賞し難い狭小開放状態と略V字形(逆ハの字形)の入賞し易い拡開開放状態間を変化可能に制御されている。前記始動入賞口10の可動片10a,10b間が入賞領域に相当する。前記始動入賞口10の拡開開放は、前記普通図柄表示部45で普通図柄が変動した後特定の普通図柄で確定停止表示されて小当たり(普通図柄当たり)が成立した時に行われる。
【0030】
また、前記遊技盤3の背面には、始動入賞口10に入賞した遊技球を検出する始動入賞口検出スイッチ(始動入賞口センサ)が入賞球用通路に設けられており、本実施例では、前記始動入賞口検出スイッチによる入賞球の検出が、大当たり(遊技の当たり外れ)の当否判定に対する起因及び前記特別図柄(判定図柄)の変動表示開始に対する起因に設定されている。また、前記特別図柄表示部42で特別図柄の変動表示中に、前記始動入賞口10に遊技球が入賞しても、直ちに新たな特別図柄の変動表示を開始することができないため、特別図柄の変動表示を一旦保留し、特別図柄の変動表示によって保留球の数を減らすようになっている。なお、本実施例では、前記特別図柄用保留数の上限値は4個に設定されている。
【0031】
前記普通図柄変動開始用左ゲート19及び普通図柄変動開始用右ゲート21は、前記遊技盤3の背面に設けられた普通図柄変動開始スイッチで両ゲート19,21を通過する遊技球を検出することによって前記普通図柄表示部45で普通図柄の変動を開始させるようになっている。また、前記普通図柄の変動表示中に、前記普通図柄変動開始用左ゲート19及び普通図柄変動開始用右ゲート21を遊技球が通過することによって発生する普通図柄の変動を、最高4回保留数として記憶し、普通図柄の変動開始により普通図柄の保留数を減らすようになっている。さらにまた、前記左袖入賞口23と右袖入賞口25の入賞球を検出する左袖入賞口用検出スイッチと右袖入賞口用検出スイッチ、前記左落とし入賞口27と右落とし入賞口29の入賞球を検出する左落とし入賞口用検出スイッチと右落とし入賞口用検出スイッチが、それぞれ対応する遊技盤背面に設けられている。
【0032】
前記大入賞口15は、前記遊技盤3の背面に設けられた大入賞口開放用ソレノイドによって開閉する開閉板16を備えている。この大入賞口15は、通常は開閉板16が閉じた状態とされ、当該大入賞口15内の一部には、該大入賞口15が開いた際に開口して入賞可能にする特定領域入賞口52を有する。さらに、該特定領域入賞口52には、所定条件時に特定領域開放用ソレノイドにより開閉される開閉扉が設けられている。また、前記特定領域入賞口52には特定入賞球を検出する特定入賞球検出スイッチ(特定領域センサ)が設けられ、該入賞球の検出により大入賞口15を再度開ける継続権利が成立するようにされている。また、前記大入賞口15内の略中央には、大入賞口15に入賞し、かつ前記特定領域入賞口52に入賞しなかった入賞球を検出する入賞球数カウントスイッチ(カウントセンサ)が設けられている。
【0033】
前記発射装置53は、操作レバー54の操作により駆動する発射モータを裏側に有し、該発射モータの駆動により遊技球を弾発発射するようになっている。前記発射装置53により発射された発射球は、前記遊技盤面に立設された外側誘導レール4と内側誘導レール5間で構成される発射球誘導路を介して遊技領域6に誘導される。前記遊技領域6に誘導された遊技球は、転動しつつ下方へ落下し、前記各装置及び各入賞口に入賞するか、或いは何処にも入賞しなければ前記アウト口17から遊技盤3の裏側へ排出される。なお、この例の遊技機1は、プリペイドカードユニット56が接続されている。
【0034】
また、前記遊技機1の裏側には、遊技を制御するための複数の制御装置や球の誘導装置等が設けられている。図2は遊技機1の裏側を示すものであり、制御基板の主なものとして、主制御基板100、払出制御基板110、電源基板120、表示制御基板130、音声制御基板140、ランプ制御基板150、発射制御基板160等が示されている。符号181は払出装置(賞球払出装置と貸球払出装置)、183は球無しスイッチ基板(賞球・球貸し兼用)、185は払出中継基板、187はRAMクリアスイッチ、189は球貯留タンク、191は球誘導樋を示す。制御基板等の電気的接続を、図3のブロック図を用いて簡略に示す。
【0035】
前記主制御基板100は、CPU,RAM,ROM,複数のカウンタを備えたマイクロコンピュータと、該マイクロコンピュータと払出制御基板110及び表示制御基板130を結ぶ入出力回路と、前記マイクロコンピュータと中継基板(中継基板には大入賞口15が接続される。)、音声制御基板140、ランプ制御基板150、始動入賞口検出スイッチ、その他のスイッチやセンサを結ぶ入出力回路等で構成され、遊技に関わる主制御を行う。前記CPUは、制御部,演算部,各種カウンタ,各種レジスタ,各種フラグ等を備え、演算制御を行う他、大当たりや小当たり(始動入賞口10の拡開開放を行う普通図柄当たり)に関する乱数等も生成し、また前記各基板に制御コマンド(制御信号)を出力(送信)可能に構成されている。前記RAMは、始動入賞口検出スイッチの検出信号及び普通図柄変動開始スイッチの検出信号用の記憶領域、CPUで生成される各種乱数値用の記憶領域、各種データを一時的に記憶する記憶領域やフラグ、CPUの作業領域を備える。また、前記ROMには、遊技上の制御プログラムや制御データが書き込まれている他、大当たり及び小当たりの判定値等が書き込まれている。前記主制御基板100は、電源基板120から電源供給を受けて作動する。
【0036】
前記払出制御基板110は、前記主制御基板100と配線等による電気的な接続手段で接続され、前記主制御基板100から出力される制御コマンドを受信して前記払出装置(賞球及び貸球払出装置)181を制御する。前記払出制御基板110は、図4に示すように、CPU,ROM,RAM,ウォッチドッグ回路等から構成され、電源基板120から電源供給を受けて作動し、前記払出装置(賞球払出装置及び前記球貸払出装置)181を制御する。なお、前記払出装置181への遊技球の供給は、前記球貯留タンク189に貯留された遊技球が前記誘導樋191を通り、さらに球無しスイッチ基板183における球無しスイッチを通り、球供給樋(図示せず)を経て行われる。前記払出装置181は、払出モータが回転することにより、回転球受け体(例えばスクリュー形式のもの)を回転し、回転球受け体の球受部に受け入れた遊技球を回転球受体の回転により球送りして1球ずつ排出する公知のものである。
【0037】
前記払出制御基板110のCPUは、本発明においてプログラムにしたがって電気部品を制御する電気部品制御手段に相当し、球払出制御処理を司るICからなり、定期的な割り込み処理により、ウォッチドッグ回路のタイマカウンタをクリアするクリア信号を制御信号として出力する。前記電気部品は、本実施例においては払出制御基板110によって制御される払出装置181が相当する。
【0038】
前記払出制御基板110のウォッチドッグ回路は、本発明のリセット手段に相当すると共に、前記払出制御基板110のCPUが正しく動作しているか否かを監視する回路である。前記ウォッチドッグ回路には、リセット用の設定時間が経過するとリセット信号を送信(出力)するタイマ機能としてウォッチドッグタイマを備え、このウォッチドッグタイマのタイマカウンタがタイムアップ、すなわち設定時間を経過すると、前記払出制御基板110のCPUにリセット信号を送信する。通常、ウォッチドッグタイマは、前記リセット用の設定時間よりも短い時間間隔で行われる定期的な割り込み処理毎に前記払出制御基板110のCPUから出力(送信)されるクリア信号(制御信号)を受信することによって、前記タイマカウンタがクリアされる構成からなるため、前記払出制御基板110のCPUが正常に動作している限り、払出制御基板110のCPUから定期的に出力されるクリア信号によりタイマカウンタが設定時間経過前にクリアされてタイムアップすることがなく、リセット信号を送信することがない。なお、ウォッチドッグ回路は、前記払出制御基板110のCPUとは別に設けてもよいし、前記CPUに内蔵されたものを用いてもよい。
【0039】
前記ウォッチドッグ回路(リセット手段)から送信されたリセット信号を前記払出制御基板110のCPUが受信すると、後述する払出制御処理において、初期制御処理手順が実行される。なお、初期制御処理手順は、電源投入時やリセット時の処理、すなわち遊技機が遊技状態となる前の準備作業である初期設定を行う処理であり、電源投入時とリセット時にのみ行われ、それ以外の遊技状態等では行われることがない。
【0040】
前記払出制御基板110のROMは、払出制御のための不変の情報、すなわち各種のプログラムや定数等が記憶されている。
【0041】
前記払出制御基板110のRAMは、払出制御時にワークエリアとして使用されるものであり、バックアップエリアと制御エリアから構成され、遊技状態を記憶するための記憶手段に相当する。バックアップエリアは、電源基板120のバックアップ用電源回路から供給される電源によっても作動可能な領域であり、そのため、バックアップエリアに記憶されているデータは、外部から遊技機1への電源供給が絶たれた状態でも、バックアップ用電源回路から電源が供給される限り保存される。前記バックアップエリアには、後述の電源断時処理において、遊技状態としての払出データと、チェックデータが記憶される。前記払出データは、前記各入賞口への入賞に対して前記賞球払出装置から遊技球を払い出すためのデータと、前記プリペイドカードユニット56による貸球操作に対して前記球貸払出装置から遊技球を払い出すためのデータであり、前記主制御基板100におけるCPUからの賞球払出制御コマンド(賞球払出指令)や、前記プリペイドカードユニット56からの貸球払出制御コマンド(貸球払出指令)に基づいて設定される。具体的には前記払出データは、例えば賞球払出数または貸球数を加算した値であったり、賞球払出あるいは貸球払出のパターン(例えば3個排出、15個排出等のパターン)毎の今後払出すべき件数であったりする。また、前記チェックデータは、遊技機の電源断時に記憶された前記遊技状態としての払出データからなるバックアップデータが正常であるか否かを、遊技機の電源復帰等の際に判断するために利用されるデータであり、例えばバックアップエリア内における複数領域の値の和であったり、予め設定されている定数であったりする。
【0042】
前記主制御基板100と払出制御基板110及び払出装置(球貸払出装置と賞球払出装置)181間の払出に関する制御信号やデータ等の送受信について説明する。
【0043】
前記下側球受け皿37の遊技球に関する前記満タンスイッチからの検出信号は、前記主制御基板100に入力され、入力された満タンスイッチの検出信号が満タン状態を示していると、払出禁止を指示する払出制御コマンドが主制御基板100から払出制御基板110へ出力される。前記払出制御基板110が払出禁止を指示する払出制御コマンドを受信すると、払出制御基板110のCPUは遊技球の払出処理を停止する。また、前記賞球払出装置の払出機構部分に設けられ、実際に払い出された遊技球数を検出する賞球カウントスイッチからの検出信号は、前記主制御基板100に入力されると共に、前記払出制御基板110のI/Oポート部に入力される。前記遊技領域6における種々の入賞口に入賞すると、前記主制御基板100から賞球個数を示す払出制御コマンドが前記払出制御基板110へ出力されて払出制御基板110のI/Oポート部に入力され、それにより前記払出制御基板110のCPUが払出制御コマンドに応じて賞球払出装置を駆動して遊技球の払出を行う。
【0044】
また、前記払出制御基板110のCPUは、I/Oポート部を介して、貸球数を示す球貸個数信号をI/Oポート部を介して前記払出中継基板185に出力し、さらにまた、前記I/Oポート部を介して、遊技機のエラー表示用LED(図示せず)にエラー信号を出力する。さらに、前記球貸払出装置の払出機構部分に設けられ、実際に払い出された遊技球数を検出する球貸カウントスイッチからの検出信号は前記払出制御基板110のI/Oポート部に入力される。前記払出制御基板110のI/Oポート部を介して前記球貸払出装置の駆動モータに対する制御信号が出力される。さらに、前記払出制御基板110のI/Oポート部には、電源基板120からのRAMクリアスイッチ信号及び電源断信号も入力する。
【0045】
前記電源基板120は、整流回路、コンバータ、バックアップ用電源回路、電源状態監視用回路、RAMクリアスイッチ信号発生回路、を備える。前記整流回路には、遊技機外部から供給される主電源24Vを、遊技機1内へ導通させるONと非導通にするOFFの操作が可能な主動操作作式の電源スイッチが接続されている。前記コンバータは、前記整流回路を経由して供給される主電源24Vから、各制御対象や駆動要素の作動電源(例えば、DC34V、DC24V、DC12V、DC5V)を生成して供給する。前記バックアップ用電源回路は、前記コンバータで生成されたDC5Vを充電して蓄え、バックアップ対象、例えば前記払出制御基板110のRAMにおけるバックアップエリアに、バックアップ用電源(DC5V)を供給する。前記電源状態監視用回路は、本発明における電源状態監視手段に相当し、遊技機1に供給されている電源の電圧変化を監視し、設定電圧以下に低下したことを検出した場合に前記電源断信号をONにして払出制御基板110へ出力する電源断検出手段を備える。本実施例では、前記外部から供給される主電源から前記コンバータで生成される作動電源の電圧(DC12V)を監視し、所定電圧(例えば、DC6V)に低下したことを検出した場合に前記電源断信号をONにして払出制御基板110へ出力し、前記払出制御基板において電源断処理が行われる。なお前記電源状態監視回路が監視する電圧は、前記遊技機外部から供給され、コンバータで変換される前の電源の電圧(AC24V)でもよい。前記RAMクリアスイッチ信号発生回路は、前記遊技機1の裏側に設けられた手動操作式のRAMクリアスイッチ187の操作に応じてRAMクリアスイッチ信号を前記払出制御基板110へ出力する。本実施例では、前記RAMクリアスイッチ187は押しボタン式からなって、操作ボタンを押すことによってRAMクリアスイッチ信号が前記払出制御基板110へ出力される。RAMクリアスイッチ信号が前記払出制御基板110で受信されると、前記払出制御基板110のRAMのバックアップエリアに記憶されていた遊技情報のバックアップデータがクリアされ、リセット後の遊技機1は、リセット前の遊技状態に戻らず、遊技店への導入時等のような初期状態の遊技状態になる。なお、前記RAMクリアスイッチ信号発生回路は、必ずしも前記電源基板120に設ける必要はない。
【0046】
表示制御基板130は、図3に示すように、CPU,RAM,ROMを備えたマイクロコンピュータと、該マイクロコンピュータと前記主制御基板100を結ぶ入力回路と、前記コンピュータと表示装置9を結ぶ出力回路等で構成され、前記主制御基板100から出力される制御信号に基づき、前記特別図柄表示部42及び普通図柄表示部45における表示等を制御する。前記表示制御基板130のCPUは、内部に制御部,演算部,各種カウンタ,各種レジスタ,各種フラグ等を有し演算制御を行うようになっている。また、前記表示制御基板130のRAMは、各種データの記憶領域と前記CPUによる作業領域等を有している。前記表示制御基板130のROMは、表示制御のための不変の情報、すなわち各種のプログラムや画像データ、定数等が記憶されている。
【0047】
音声制御基板140は、前記主制御基板100と配線等の電気的接続手段により接続されて、前記主制御基板100から出力される制御信号に基づき前記スピーカ38から発する音声を制御する。
【0048】
ランプ制御基板150は、前記枠飾りランプ35a〜35cやその他のランプ装置(例えば遊技盤面に設けた表示装置の表示枠体に設けたランプ装置等)を制御する。また、発射制御基板160は、前記発射装置53における発射モータの制御を行う。
【0049】
ここで、前記遊技機1が行う遊技について簡単に説明する。前記遊技機1では、前記発射装置53により遊技領域6へ向けて発射された遊技球が、前記遊技領域9の種々の入賞口に入賞すると所定数の遊技球が賞品球として前記賞球払出装置から上側球受け皿36に払い出される。また、前記普通図柄変動開始用左ゲート19及び普通図柄変動開始用右ゲート21を遊技球が通過し、その遊技球が前記普通図柄変動開始スイッチで検出されると、前記主制御基板100へ検出信号が送られ、普通図柄変動保留数が4個未満の場合には、小当たり判定・普通図柄決定用乱数が取得され、その取得乱数値が主制御基板100のRAMの普通図柄数値記憶領域に一旦記憶される。そして前記記憶された小当たり判定・普通図柄決定用乱数値が順次読み出され、前記読み出された乱数値に基づいて普通図柄の当たり(小当たり)判定が行われ、前記普通図柄表示部45で普通図柄の変動を開始し、所定時間変動後に停止する。その際、前記普通図柄の当たり判定結果が小当たりの場合には、小当たり普通図柄、この例では奇数で停止し、前記始動入賞口10が入賞領域拡大状態になり、遊技球が入賞し易くなる。そして、前記始動入賞口10の入賞領域に遊技球が入賞すると、所定数(この例では5個)の遊技球が賞品球として前記賞球払出装置から払い出される。
【0050】
また、前記始動入賞口10の入賞領域に遊技球が入賞し、始動入賞口検出スイッチによって入賞球が検出されると、前記主制御基板100へ検出信号が送られ、特別図柄変動保留数が4個未満の場合には、大当たり当否判定用乱数値及び大当たり図柄組合せ決定用乱数値が取得され、その取得数値が主制御基板100のRAMの該当する記憶領域に一旦記憶される。そして、前記記憶された大当たり当否判定用乱数値が順次読み出され、当該読み出された大当たり当否判定用乱数値に基づいて大当たりの当否判定が行われ、外れの場合には外れ確定特別図柄の組合せ決定用乱数数値が取得される。また、特別図柄の変動開始前に変動態様決定用乱数値が取得される。そして、取得された変動態様決定用乱数値に基づき決定された選択変動態様にしたがい前記特別図柄柄表示部42で特別図柄が変動を開始し、所定時間経過後停止する。
【0051】
前記特別図柄表示部42で停止表示された確定特別図柄が、大当たり確定特別図柄組合せ、この例ではぞろ目(‘7,7,7’のように同じ数字が並んだ状態)で停止表示されると、大当たりになり、遊技者に有利な特別遊技状態(大当たり遊技状態)に移行する。前記特別遊技状態になると、前記大入賞口15の開閉板16が開いて遊技領域6の表面を落下してくる遊技球を受け止め易くして大入賞口15へ入賞可能にし、該大入賞口15への入賞があると、前記賞球払出装置により所定数の遊技球が賞品球として払い出される。前記開閉板16は、所定時間(例えば29.5秒)経過後、或いは前記特定入賞球検出スイッチと入賞球数カウントスイッチとで検出された入賞球数が所定個数(例えば10個)となった時点で閉じるようにされている。
【0052】
前記大入賞口15の開放中又は大入賞口15が閉じてから約2秒以内に、前記特定領域入賞口52への入賞球を特定入賞球検出スイッチが検出すると、前記大当たりを再度繰り返す継続権利が発生し、所定最高回数(例えば最高16回)、前記開閉板16の開放を繰り返す。
【0053】
次に、前記遊技機1において電源投入から電源断までに行われる処理を、主制御基板100と払出制御基板110及び電源基板120について説明する。
【0054】
前記主制御基板100では、電源投入によって、前記主制御基板100のCPUに対するセキュリティチェックが行われ、その後メインプログラムにしたがってメイン処理Mが実行される。
【0055】
メイン処理Mでは、図5のフローチャートに示すように、後述のメイン処理用割り込み処理(S20)の実行を禁止するための割り込み禁止処理(S11)が行われ、次いで初期設定(S12)が行われる。初期設定(S12)では、前記主制御基板100におけるRAMの全領域が一旦初期化(0にクリア)された後、遊技に対する初期値がRAMに設定され、またCPU周辺デバイスの初期設定が行われる。初期設定は最初の電源投入時にのみ行われ、その後におけるメイン処理Mの繰り返し時には行われない。続いて、割り込み禁止処理(S13)が行われる。ここでの割り込み禁止処理(S13)は、1回目のメイン処理Mの際に行われる前記割り込み禁止処理(S11)が、メイン処理Mの2回目以降の繰り返し時には行われないことから設けられている。その後、必要な乱数更新処理(S14)が行われ、次いで割り込み許可処理(S15)が行われる。割り込み許可処理(S15)では、メイン処理用割り込み処理(S20)の実行を許可する。前記割り込み許可処理(S15)の後、前記割り込み禁止処理(S13)、前記乱数更新処理(S14)、前記割り込み許可(S15)の処理を繰り返すループ処理が行われる。
【0056】
前記メイン処理用割り込み処理(S20)は、4ms毎に行われ、図6のフローチャートに示すように、入力処理(S21)、遊技処理(S22)、払出出力処理(S23)、その他の出力処理(S24)、その他の処理(S25)が行われる。前記入力処理(S21)では、前記各種のスイッチやセンサ等からの情報が入力される。前記遊技処理(S22)では、乱数値の更新、前記スイッチやセンサ等の入力情報に基づく乱数値の取得、取得乱数値に基づく当否判定、図柄の変動態様の決定等が行われる。前記払出出力処理(S23)では、前記入力処理(S21)で入力されたスイッチやセンサ等からの情報に基づき、賞球等の払出制御コマンド等が前記払出制御基板110へ出力される。その他出力処理(S24)では、各基板に必要な遊技情報が出力される。また、その他の処理(S25)では、遊技に必要なその他の処理が行われる。なお、本実施例において前記主制御基板100による処理では、電源断時に特別の処理が行われていない。
【0057】
本発明の電気部品制御手段に相当する前記払出制御基板110のCPUが行う制御処理手順を以下に説明する。前記払出制御基板110のCPUが行う制御処理手順として、電源投入時(リセットによる電源投入時を含む)に行われる払出処理(初期制御処理手順)、払出処理用割り込み処理(通常制御処理手順)、電源断時処理(電断制御処理手順)がある。
【0058】
払出処理は、電源投入時(リセット後の電源投入時の場合を含む)に、記憶手段であるROMに記憶されている払出制御プログラムにしたがって行われる。図7のフローチャートに示すように、払出処理(S30)では、電源状態判定処理(S31)が先頭で行われる。前記電源状態判定処理(S31)では、遊技機に供給されている電源の電圧に対する前記電源基板120の電源状態監視用回路(電源状態監視手段)による監視結果が、電源断信号ONか否か判定される。前記電源断信号は、前記電源状態監視用回路による監視電圧が設定電圧以下に低下したことを電源状態監視用回路が検出したことによりONにされて電源基板120から払出制御基板110へ出力され、それに対して監視電圧が所定電圧以下に低下しない場合にはOFFの状態で電源基板120から払出制御基板110へ出力される。電源断信号ONの場合、すなわち監視電圧が所定電圧以下に低下したと判定されているときには、前記払出処理(S30)において電源状態判定処理(S31)が繰り返される。
【0059】
前記電源状態判定処理(S31)において、電源断信号がOFF、すなわち前記監視電圧が設定電圧以下に低下していないと判定されると、電源状態判定処理(S31)を終えて次の処理に移り、スタックポインタに2200Hがセットされ、マスカブル割り込みが割り込みモード2に設定され、払出処理用割り込み処理(S50)による割り込みが禁止される(S32)。次に前記払出制御基板110のRAMへのアクセスが許可され(S33)、さらに前記RAMクリアスイッチ187がON(RAMクリアスイッチ187が操作された)か、OFF(RAMクリアスイッチ187が操作されていない)か、判定される(S34)。RAMクリアスイッチ187がOFF(RAMクリアスイッチ187が操作されていない)の場合には、電源断フラグがONかOFFかが判定される(S35)。
【0060】
前記S35において電源断フラグがON、すなわち電源断が生じていると判定された場合には、前記払出制御基板110のRAMにおけるバックアップエリアに関してRAMのチェックデータが算出され(S36)、電源断時に前記払出制御基板110のRAMに保存されたRAMのチェックデータと比較される(S37)。RAMのチェックデータ算出は、電源断時に前記払出制御基板110のRAMに対して作成したチェックデータと同様の手法で行われる。例えば、RAMのバックアップエリアを1バイトごとに加算し、加算結果の全ビットを反転した値をチェックデータとすることにより算出される。前記RAMの算出チェックデータと保存チェックデータが一致する場合には、電源断時にRAMのバックアップエリアに保存されたバックアップデータが正常であると判断されて、電源復旧時に使用されるRAMの領域(バックアップエリア等)以外の領域が初期化(0にクリア)され、その後、割り込みマスクレジスタの設定(S39)、払出制御基板110におけるCPU周辺デバイスの初期設定(S40)、払出装置のモータ動作タイマの設定(S41)、払出処理用割り込み処理(S50)に対する割り込み許可(S42)が行われた後待機状態とされ、払出処理用割り込み処理(S50)の割り込みを待つ。なお、前記払出装置のモータ動作タイマの設定(S41)は、モータの駆動準備が整うまでモータの動作を禁止するためのタイマ設定である。また、前記待機状態は、払出処理(S30)の制御プログラムがループ状態またはストップ状態となることを意味する。
【0061】
それに対し、S34でRAMクリアスイッチがONと判定されたり、S35で電源断フラグがOFFと判定されたり、S37でRAMのチェックデータが一致しないと判定されたりした場合には、次に前記払出制御基板110におけるRAMの全領域(バックアップエリアを含む)が初期化され(S43)、その後、前記割り込みマスクレジスタの設定(S39)、払出制御基板110におけるCPU周辺デバイスの初期設定(S40)、払出装置のモータ動作タイマの設定(S41)、払出処理用割り込み処理(S50)に対する割り込み許可(S42)が行われた後、待機状態とされ、払出処理用割り込み処理(S50)の割り込みを待つ。なお、前記CPU周辺デバイスの初期設定(S40)においては、前記ウォッチドッグタイマのタイマカウンタにリセット用の設定時間が初期設定される。前記ウォッチドッグタイマのタイマカウンタの設定時間(リセット用の設定時間)は、前記払出処理用割り込み処理(S50)の実行間隔2msより長く、かつ後述の電源断時処理(電断制御処理手順)の開始から電源断時処理(電断制御処理手順)における待機状態までの時間よりも長く、さらに前記バックアップ用電源回路から払出制御基板110のRAMへ電源が供給されなくなるまでの時間よりも短くされる。
【0062】
前記払出処理用割り込み処理(S50)は、本発明において遊技(払出)を制御する通常制御処理手順に相当し、2msごとに実行される。払出処理用割り込み処理(S50)は、図8のフローチャートに示すように、まずウォッチドッグタイマのクリア信号、払出モータの制御信号、払出を報知するLED信号等が出力される(S51)。ウォッチドッグタイマのクリア信号が出力されることにより、前記ウォッチドッグ回路(ウォッチドッグタイマ)のタイマカウンタが、前記リセット用設定時間の経過前に0にクリアされる。次に、前記主制御基板100からのコマンド受信が行われ、受信したコマンドがエラー信号出力あるいはエラー信号停止の場合にはその状態が記憶され、また受信コマンドが賞球個数指定の場合には、獲得遊技球数として払出制御基板110のRAMに記憶される(S52)。通常制御処理手順は、遊技の進行に従って変化するデータを利用して遊技を制御する一連の手順である。
【0063】
また、プリペイドカードユニット56からの球貸要求信号を受信したか否か確認され(S53)、受信した場合には球貸1動作分の個数として25個が球貸の貸球球数として前記払出制御基板110のRAMに記憶され(S54)、次いで下側球受け皿満杯中又は球無し中か判断される(S55)。なお、前記球貸要求信号を受信していない場合には、前記S54の処理が省略され、下側球受け皿満杯中又は球無し中か判断される(S55)。
【0064】
前記下側球受け皿満杯中又は球無し中かの判断(S55)では、前記下側球受け皿37の満杯を検出する下皿満杯スイッチ及び前記球無しスイッチの検出状態が確認され、下側球受け皿37が満杯中又は球無し中の何れでもない場合には、払出有りか、すなわち賞球の獲得遊技球数又は球貸しの貸球球数が払出制御基板110のRAMに記憶されているか確認され(S56)、払出有り、すなわち賞球の獲得遊技球数又は球貸しの貸球球数が記憶されている場合には、払出モータの駆動等からなる基本払出処理が実行される(S57)。基本払出処理(S57)では、球貸の場合には貸球球数の個数となるまで、一方、賞球の場合には獲得遊技球球数となるまで、払出装置における1動作分の個数を所定数とする払出動作が行われる(S58,S59)。また、その際に払出が正常に行われているか判定され(S59)、払出が正常に行われていない場合には払出リトライ処理(払出の繰り返し)が実行される(S60)。
【0065】
前記S55で下側球受け皿37が満杯中又は球無し中と判断されたり、S56で払出無し、すなわち賞球の獲得遊技球数及び球貸しの貸球球数の何れも記憶されていないと判断された場合、S58で所定球数払い出したと判断された場合、S59で払出が正常であった場合、もしくはS60で払出しリトライ処理が行われた場合には、電源断が発生したか判断され(S61)、電源断が発生していない場合には、前記払出処理用割り込み処理(S50)が2msの間隔で割り込むことで初めから繰り返され(S62)、電源断が発生している場合には電源断時処理(S63)が行われる。
【0066】
前記電源断時処理(S63)は、本発明における電源断制御処理手順に相当する。前記電源断時処理(S63)では、図9のフローチャートに示すように、まず前記払出制御基板110における全出力ポートにOFFが出力され(S63−1)、次に前記払出処理用割り込み処理(S50)が割り込み禁止に設定される(S63−2)。この割り込み禁止設定により、前記払出処理用割り込み処理(S50)により行われていた2msごとのウォッチドッグタイマにおけるタイマカウンタのクリアが行われなくなり、ウォッチドッグタイマにおけるタイマカウンタの計時が進行する。また、現在の遊技状態として払出し状態(賞球あるいは貸球に関するデータ)が、前記払出制御基板110におけるRAMのバックアップエリアに記憶されると共にRAMのバックアップエリアに対するチェックデータが作成保存される(S63−3)。チェックデータは、電源復旧時に使用するRAMのバックアップエリアのデータを例えば1バイトごとに加算し、加算結果の全ビットを反転した値とされる。作成されたチェックデータは、前記払出制御基板110におけるRAMのバックアップエリアに記憶される。次いで、電源断フラグがONに設定され(S63−4)、前記払出制御基板110のRAMに対するアクセスが禁止されてバックアップデータの保護が図られ(S63−5)、その後に待機状態とされる。前記待機状態では、電源断時処理(S63)の制御プログラムがループ状態またはストップ状態となる。なお、前記電源断フラグは、遊技機1の電源が切れた際にOFFに戻る。
【0067】
前記ウォッチドッグタイマにおけるタイマカウンタのリセット用設定時間は、前記電源断時処理の開始から前記遊技機内の電源が完全になくなるまでの時間、例えば前記払出制御基板110のCPUに供給されているバックアップ電源(5V)が無くなるまでの時間よりも短く設定されているため、電源断時処理(S63)の処理最中に前記ウォッチドッグタイマの設定時間が経過してリセット信号が払出制御基板110のCPUに送信(出力)される。前記電源断時処理(電源断制御処理手順)の実行中、すなわち電源断時処理における待機状態中にリセット信号が、前記ウォッチドッグ回路(リセット手段)から前記払出制御基板110のCPUに入力されると、前記払出処理(初期制御処理手順)S30が実行される。
【0068】
前記リセット信号が前記払出制御基板110のCPUに入力することによって行われる前記払出処理(初期制御処理手順)S30では、処理における一巡目の先頭において電源断中信号がONか否かの判定が行われ(S31)、電源断中信号がONと判定された場合(電源断が発生している場合)には、電源断中信号の判定処理(S31)が繰り返されるため、次の処理へ進むことなくループ処理を繰り返している間に払出制御基板110のCPUに対するバックアップ電源が無くなって電源供給が完全に止まり、遊技機の電源が切れることになる。
【0069】
このように構成したことにより、予期せぬプログラムの暴走の検出を早期に行おうとウォッチドッグタイマの設定時間を短く設定した場合に、停電や遊技機の電源切断操作時におけるバックアップ等の電源断時処理中に、ウォッチドッグタイマの設定時間が経過してリセット信号がウォッチドッグ回路から払出制御基板のCPUに送信され、払出制御基板のCPUで初期制御処理手順から開始された場合でも、初期制御処理手順の先頭処理に留め、先の処理に進まないようにしたループ処理状態で、バックアップ用電源を使い切って電源を切り、CPUの処理を終わらせることができるため、常に安定した状態で電源を切ることが可能となる。
【0070】
なお、本実施例では払出制御について本発明を説明したが、本発明は払出制御に限定されるものではなく、主制御等においても構成を同じにすることにより実施可能であり、本発明の効果が得られる。また、本発明はパチンコ機に限定されず、他の遊技機にも適用されるものである。
【図面の簡単な説明】
【0071】
【図1】本発明の一実施例にかかる遊技機の正面図である。
【図2】同遊技機の裏面図である。
【図3】同遊技機の制御基板等の接続を簡略に示すブロック図である。
【図4】同遊技機の主制御基板と払出制御基板及び電源基板との接続を簡略に示すブロック図である。
【図5】同遊技機における主制御基板が行うメイン処理のフローチャートである。
【図6】同メイン処理用割り込み処理のフローチャートである。
【図7】同遊技機における払出制御基板が行う払出処理(初期制御処理手順)のフローチャートである。
【図8】同払出制御基板が行う払出処理用割り込み処理(通常制御処理)のフローチャートである。
【図9】同払出制御基板が行う電源断時処理(電断制御処理手順)のフローチャートである。
【符号の説明】
【0072】
1 遊技機
3 遊技盤
9 表示装置
10 始動入賞口
15 大入賞口
53 発射装置
100 主制御基板
110 払出制御基板
120 電源基板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気部品と、
前記電気部品をプログラムにしたがって制御する電気部品制御手段と、
前記電気部品制御手段が出力する制御信号を所定時間受信しない時に前記電気部品制御手段にリセット信号を送信するリセット手段と、
遊技状態を記憶するための記憶手段と、
を備えた遊技機において、
前記電気部品制御手段が行う制御処理手順は、
電源投入時またはリセット時に実行される初期制御処理手順と、
前記初期制御処理手順の実行後に実行され遊技を制御する通常制御処理手順と、
前記遊技機に供給される電源が設定電圧より低下した時もしくは電源断時に実行され、前記設定電圧以下に低下した時もしくは前記電源断時の遊技状態を前記記憶手段に記憶させた後待機状態にする電断制御処理手順と、
で少なくとも構成され、
前記初期制御処理手順では、前記遊技機に供給されている電源の電圧変化を監視する電源状態監視手段による監視結果に対する電源状態判定処理が行われ、
前記電断制御処理手順実行中に前記リセット手段から前記リセット信号が送信されると、前記電源状態監視手段による監視結果が所定の結果であることを条件に、前記初期制御処理手順で前記電源状態判定処理を繰り返すことを特徴とする遊技機。
【請求項2】
前記待機状態は、前記電気部品制御手段の制御プログラムがループ状態又はストップ状態であることを特徴とする請求項1に記載の遊技機。
【請求項3】
前記所定時間を、前記制御信号が出力されてから前記電断制御処理手順において遊技状態を前記記憶手段に記憶させるまでの時間よりも長く設定したことを特徴とする請求項1または2に記載の遊技機。
【請求項4】
前記電気部品制御手段による処理において、前記通常制御処理手順が割り込み処理とされ、前記初期制御処理手順が、前記通常制御処理手順の割り込みを禁止する割り込み禁止処理と、前記割り込み禁止処理より後に実行され前記割り込みを許可する割り込み許可処理とを含むと共に、前記電源状態判定処理が前記割り込み許可処理よりも前に実行されることを特徴とする請求項1から3の何れか一項に記載の遊技機。
【請求項5】
前記電源状態判定処理が前記初期制御処理手順の先頭で実行されることを特徴とする請求項1から4の何れか一項に記載の遊技機。
【請求項6】
前記遊技機に供給されている電源の電圧が設定電圧以下に低下したことを、前記電源状態監視手段による監視結果が所定の結果であるとすることを特徴とする請求項1から5の何れか一項に記載の遊技機。
【請求項7】
前記初期制御処理手順は、電源断前の遊技状態を前記記憶手段から読み出して電源断前の遊技状態に復帰させることを特徴とする請求項1から6の何れか一項に記載の遊技機。
【請求項8】
前記リセット手段は、設定時間が経過するとリセット信号を送信するタイマ機能を備え、前記電気部品制御手段により前記リセット手段に出力する制御信号は、前記タイマ機能のタイマカウンタをクリアして前記設定時間の経過を阻止するクリア信号であることを特徴とする請求項1から7の何れか一項に記載の遊技機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2006−6769(P2006−6769A)
【公開日】平成18年1月12日(2006.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−190801(P2004−190801)
【出願日】平成16年6月29日(2004.6.29)
【出願人】(599104196)株式会社サンセイアールアンドディ (597)
【Fターム(参考)】