遊星差動ねじ型回転直動変換機構及びアクチュエータ
【課題】遊星差動ねじ型回転直動変換機構のプラネタリシャフトにおいて、ナットやサンシャフトとの間にクリアランスが存在してもそれを解消してプラネタリシャフトの姿勢を安定化することで回転直動変換効率の低下を防止することを目的とする。
【解決手段】プラネタリシャフト8,10の支持軸8eはリテーナ16の支持孔16a,16bの内面に公転軌道Re方向にて当接している。当接部分である直線Ls1,Hs1に相当する内面での法線ベクトルは公転軌道Reの径方向成分(ここでは内周方向)及び接線方向成分を共に含んでいる。したがって支持軸8eは内周方向への力Fi,Fjを与えられ、各プラネタリシャフト8,10は径方向内側のサンシャフトに押しつけられる。このためサンシャフト側との間にクリアランスが存在していても、そのクリアランスを解消して確実な噛合状態が形成される。このことにより課題が達成される。
【解決手段】プラネタリシャフト8,10の支持軸8eはリテーナ16の支持孔16a,16bの内面に公転軌道Re方向にて当接している。当接部分である直線Ls1,Hs1に相当する内面での法線ベクトルは公転軌道Reの径方向成分(ここでは内周方向)及び接線方向成分を共に含んでいる。したがって支持軸8eは内周方向への力Fi,Fjを与えられ、各プラネタリシャフト8,10は径方向内側のサンシャフトに押しつけられる。このためサンシャフト側との間にクリアランスが存在していても、そのクリアランスを解消して確実な噛合状態が形成される。このことにより課題が達成される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラネタリシャフトとサンシャフトとの間、及びプラネタリシャフトとナットとの間でねじによる噛合とギヤによる噛合とを形成し、ナットとサンシャフトとの間で回転直動間の変換を行う遊星差動ねじ型回転直動変換機構及びこの遊星差動ねじ型回転直動変換機構を用いたアクチュエータに関する。
【背景技術】
【0002】
遊星差動ねじ型回転直動変換機構が知られている(例えば特許文献1,2参照)。この遊星差動ねじ型回転直動変換機構では、ねじとその両側に配置したギヤとを組み合わせることにより、安定して効率的な回転直動変換を行おうとするものである。
【0003】
特に特許文献1では一方のギヤに付いては他方のギヤとねじとに対して相対回転可能とすることで、プラネタリシャフト(遊星軸)の姿勢を安定し回転運動から直線運動への変換効率の低下を防止しようとするものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第4516547号公報(第10頁、図1〜5)
【特許文献2】特開2007−192388号公報(第6〜8頁、図1〜7)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1では2つのナット(円環軸)のずれによる公転軌道方向でのプラネタリシャフトの傾きを防止することはできるが、ギヤ間のクリアランスによる公転軌道径方向でのプラネタリシャフトの傾きについては考慮されていない。このためギヤ間距離が変化してプラネタリシャフトの姿勢が安定せず、回転直動変換効率の低下を招いていた。
【0006】
特許文献2では、リテーナにより複数全てのプラネタリシャフトの両端を支持しているが、リテーナの支持孔とプラネタリシャフトの軸部とのクリアランスによって公転軌道径方向での傾きは完全には防止できない。
【0007】
更にこのようなリテーナの支持孔とプラネタリシャフトの軸部とのクリアランスの問題を除いたとしても、リテーナによる支持は、複数のプラネタリシャフト間の相対的な位置安定のみである。したがってリテーナにて一体化された複数のプラネタリシャフト全体としては、ナットやサンシャフトに対してクリアランスを生じており、リテーナ全体としてずれることにより、ギヤ間距離が変化することには変わりはない。したがって複数のプラネタリシャフト全体として姿勢が安定せず、回転直動変換効率の低下を招くおそれがある。
【0008】
本発明は、前述したクリアランスが存在していてもそれを解消してプラネタリシャフトの姿勢を安定化することで回転直動変換効率の低下を防止することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
以下、上記目的を達成するための手段及びその作用・効果について記載する。
請求項1に記載の遊星差動ねじ型回転直動変換機構は、サンシャフト、このサンシャフトを内周側に収納したナット、及びサンシャフトとナットとの間の公転軌道空間に配置された複数のプラネタリシャフトを備え、プラネタリシャフトとサンシャフトとの間、及びプラネタリシャフトとナットとの間でねじによる噛合とギヤによる噛合とを形成して、ナットの回転駆動に伴うプラネタリシャフト公転時のねじ間の差動によりナットとサンシャフトとの間で回転直動間の変換を行う遊星差動ねじ型回転直動変換機構であって、前記複数のプラネタリシャフトの軸部を支持部にて自転可能に支持することにより前記複数のプラネタリシャフト同士を連結するリテーナが設けられると共に、前記リテーナの支持部の内面にて、前記プラネタリシャフトの軸部外周面が公転方向で当接する部分の法線ベクトルは、プラネタリシャフト公転軌道の径方向成分及び接線方向成分を共に含んでいることを特徴とする。
【0010】
ここで、リテーナは、支持部にてプラネタリシャフトの軸部を自転可能に支持している。このことにより複数のプラネタリシャフト同士を連結している。支持部の内面には、プラネタリシャフトの軸部外周面が公転方向で当接する部分が存在する。この部分での法線ベクトルはプラネタリシャフト公転軌道の径方向成分及び接線方向成分を共に含んでいる。
【0011】
したがってプラネタリシャフトは、公転時において支持部の内面に公転方向にて当接すると、その当接部分から当接力に対応する反力を受けることになる。当接部分での法線ベクトルはプラネタリシャフト公転軌道の径方向成分及び接線方向成分を共に含んでいることから、プラネタリシャフトが受ける反力についても公転軌道の径方向成分及び接線方向成分を有している。
【0012】
この内で径方向成分の反力は、プラネタリシャフトを、径方向の内側あるいは外側に押しつける力となる。径方向成分が内側へ向かう力である場合にはプラネタリシャフトはサンシャフトに押しつけられる。径方向成分が外側へ向かう力である場合にはプラネタリシャフトはナットに押しつけられることになる。
【0013】
このことによりプラネタリシャフトのねじやギヤは、サンシャフトあるいはナットのねじやギヤに対してクリアランスが存在していてもそれが解消され、サンシャフト側あるいはナット側に対して確実な噛み合い状態となる。こうしてプラネタリシャフトの姿勢が安定化することになる。
【0014】
このように、クリアランスが存在していてもそれを解消してプラネタリシャフトの姿勢を安定化でき、このことにより回転直動変換効率の低下を防止することができる。
請求項2に記載の遊星差動ねじ型回転直動変換機構では、請求項1に記載の遊星差動ねじ型回転直動変換機構において、前記複数のプラネタリシャフトには、前記サンシャフト及び前記ナットにおけるギヤに噛合するギヤが欠如したものと欠如していないものとの両者が存在することを特徴とする。
【0015】
このように複数のプラネタリシャフトにおいて一部にギヤが欠如したものが存在する構成とする場合がある。ギヤが欠如したものはナットが回転してもギヤ欠如部分では公転方向の駆動力を受けることが無く、逆にサンシャフト側から反公転方向のトルクを受けることになる。このことによりギヤが欠如していないプラネタリシャフトとの間でリテーナを介して、公転軌道上で押し合いあるいは引っ張り合う関係となる。
【0016】
このような力関係により、いずれのプラネタリシャフトも、その軸部は、リテーナの支持部の内面における当接部分で強い当接力を生じ、反力における径方向成分も大きくなる。したがって、プラネタリシャフトは、径方向内側のサンシャフトあるいは径方向外側のナットに強く押しつけられることになる。
【0017】
このことによりギヤが欠如していないプラネタリシャフトも、ギヤが欠如しているプラネタリシャフトも、いずれもサンシャフトあるいはナットに対してクリアランスを十分に解消することができ、確実な噛み合い状態となる。こうしてプラネタリシャフトの姿勢が安定化する。
【0018】
請求項3に記載の遊星差動ねじ型回転直動変換機構では、請求項2に記載の遊星差動ねじ型回転直動変換機構において、前記リテーナは、前記複数のプラネタリシャフトの全ての軸部に対応する支持部の内面にて、前記プラネタリシャフトの軸部外周面が公転方向で当接する部分での法線ベクトルが、プラネタリシャフト公転軌道の径方向成分及び接線方向成分を共に含んでいることを特徴とする。
【0019】
このことにより複数のプラネタリシャフトの全てについて、径方向内側のサンシャフトあるいは径方向外側のナットに強く押しつけられることになり、全てのプラネタリシャフトはナットあるいはサンシャフトに対してギヤ間やねじ間のクリアランスを十分に解消することができ、確実な噛み合い状態となる。こうして全てのプラネタリシャフトの姿勢が安定化することになる。
【0020】
請求項4に記載の遊星差動ねじ型回転直動変換機構では、請求項2に記載の遊星差動ねじ型回転直動変換機構において、前記リテーナは、前記ギヤが欠如したプラネタリシャフトの軸部に対応する支持部の内面にて、前記プラネタリシャフトの軸部外周面が公転方向で当接する部分での法線ベクトルがプラネタリシャフト公転軌道の径方向成分及び接線方向成分を共に含み、前記ギヤが欠如していないプラネタリシャフトの軸部に対応する支持部の内面にて、前記プラネタリシャフトの軸部外周面が公転方向で当接する部分での法線ベクトルがプラネタリシャフト公転軌道の径方向成分を有さないことを特徴とする。
【0021】
特にギヤが欠如したプラネタリシャフトでは、その欠如部分ではギヤ同士の噛み合いが形成されていないので、姿勢が不安定化しやすい。したがって特にギヤが欠如したプラネタリシャフトについて上述のごとく形成することにより、そのプラネタリシャフトは径方向内側のサンシャフトあるいは径方向外側のナットに強く押しつけられる。このことによりギヤが欠如したプラネタリシャフトはサンシャフトあるいはナットに対してクリアランスを十分に解消することができ、確実な噛み合い状態となる。こうして特に不安定化しやすいギヤが欠如したプラネタリシャフトの姿勢を安定化できる。
【0022】
請求項5に記載の遊星差動ねじ型回転直動変換機構では、請求項2〜4のいずれか一項に記載の遊星差動ねじ型回転直動変換機構において、前記ギヤが欠如していないプラネタリシャフトは軸方向中央にねじが形成され両端にそれぞれギヤが形成されたものであり、前記ギヤが欠如したプラネタリシャフトは軸方向中央にねじが形成され一方の端部のみにギヤが形成されたものであることを特徴とする。
【0023】
ギヤが欠如していないプラネタリシャフトについては、両端にそれぞれギヤが形成されているので、前述したごとく径方向内側のサンシャフトあるいは径方向外側のナットに強く押しつけられることにより、プラネタリシャフトはサンシャフトあるいはナットに対してクリアランスを十分に解消することができる。このことにより両端部でギヤの噛み合いが確実に行われ、プラネタリシャフトの姿勢が十分に安定化する。
【0024】
ギヤが欠如しているプラネタリシャフトについても、一方の端部にはギヤが形成されている。このようなプラネタリシャフトにおいても前述したごとく径方向内側のサンシャフトあるいは径方向外側のナットに強く押しつけられることにより、プラネタリシャフトはサンシャフトあるいはナットに対してクリアランスを十分に解消することができる。このことにより一方の端部のみにギヤが形成されたプラネタリシャフトにおいてもその姿勢が十分に安定化する。
【0025】
請求項6に記載の遊星差動ねじ型回転直動変換機構では、請求項2〜4のいずれか一項に記載の遊星差動ねじ型回転直動変換機構において、前記ギヤが欠如していないプラネタリシャフトは軸方向中央にねじが形成され両端にそれぞれギヤが形成されたものであり、前記ギヤが欠如したプラネタリシャフトは軸方向中央にねじが形成され両端にはギヤが形成されていないものであることを特徴とする。
【0026】
このようにギヤが欠如しているプラネタリシャフトが、両端のいずれにもギヤが形成されていないものであっても、前述したごとく径方向内側のサンシャフトあるいは径方向外側のナットに強く押しつけられることにより、プラネタリシャフトはサンシャフトあるいはナットに対してねじ間のクリアランスを十分に解消することができる。
【0027】
このことにより両端にギヤが存在するプラネタリシャフトも、両端のいずれにもギヤが存在しないプラネタリシャフトも共に、サンシャフトあるいはナットに対してクリアランスを十分に解消することができ、これらのプラネタリシャフトの姿勢を安定化できる。
【0028】
請求項7に記載の遊星差動ねじ型回転直動変換機構では、請求項1〜6のいずれか一項に記載の遊星差動ねじ型回転直動変換機構において、前記支持部の内面は軸直交方向断面が半円と半円とを2本の直線で接続した長円形であり、前記直線の一方又は両方に対応する内面が、前記プラネタリシャフトの軸部外周面が公転方向で当接する部分であることを特徴とする。
【0029】
このようにリテーナに設けた支持部は、その軸直交方向の断面を上述した長円形としても良い。この長円形の直線部分に対応する内面にプラネタリシャフトの軸部外周面を、公転方向で当接させることにより、公転軌道の径方向の反力をプラネタリシャフトに生じさせて、サンシャフトあるいはナットとの間のクリアランスを解消することができる。
【0030】
請求項8に記載の遊星差動ねじ型回転直動変換機構では、請求項1〜6のいずれか一項に記載の遊星差動ねじ型回転直動変換機構において、前記支持部の内面は軸直交方向断面が楕円形であり、楕円形の長径方向に沿った楕円弧の一方又は両方に対応する内面が、前記プラネタリシャフトの軸部外周面が公転方向で当接する部分であることを特徴とする。
【0031】
このようにリテーナに設けた支持部は、その軸直交方向の断面を上述した楕円形としても良い。この楕円弧に対応する内面にプラネタリシャフトの軸部外周面を、公転方向で当接させることにより、公転軌道の径方向の反力をプラネタリシャフトに生じさせて、サンシャフトあるいはナットとの間のクリアランスを解消することができる。
【0032】
請求項9に記載の遊星差動ねじ型回転直動変換機構では、請求項1〜6のいずれか一項に記載の遊星差動ねじ型回転直動変換機構において、前記支持部の内面は軸直交方向断面が円形であると共に前記プラネタリシャフトの軸部に対してプラネタリシャフト公転軌道の径方向へ偏心していることを特徴とする。
【0033】
このようにリテーナに設けた支持部は、その軸直交方向の断面を円形としても良い。この円形はプラネタリシャフトの軸部に対してプラネタリシャフト公転軌道の径方向へ偏心している。すなわちプラネタリシャフトの軸心の公転軌道が支持部の断面円形中心を通過しておらず、径方向内側あるいは径方向外側に断面円形がずれている状態である。
【0034】
このことによっても支持部の内面にてプラネタリシャフトの軸部外周面が公転方向で当接する部分での法線ベクトルを、プラネタリシャフト公転軌道の径方向成分及び接線方向成分を共に含んだものにできる。
【0035】
このような断面円形の支持部内面にプラネタリシャフトの軸部外周面を、公転方向で当接させることによっても、公転軌道の径方向の反力をプラネタリシャフトに生じさせて、サンシャフトあるいはナットとの間のクリアランスを解消することができる。特に支持部の内面が断面円形であるので加工が容易である。
【0036】
請求項10に記載のアクチュエータは、回転駆動源の回転を直線運動に変換して出力するアクチュエータであって、請求項1〜9のいずれか一項に記載の遊星差動ねじ型回転直動変換機構を備え、前記ナットを前記回転駆動源にて回転させることにより、前記サンシャフトに接続された部材を直線運動させることを特徴とする。
【0037】
プラネタリシャフトがサンシャフトやナットに対してクリアランスを有していてもそれを解消してプラネタリシャフトの姿勢を安定化できる遊星差動ねじ型回転直動変換機構を用いているので、回転直動変換効率の高いアクチュエータを構成することができる。
【0038】
請求項11に記載のアクチュエータでは、請求項10に記載のアクチュエータにおいて、前記サンシャフトに接続された部材は、軸方向にスライドさせることによりバルブ特性を変更する内燃機関の可変動弁機構に設けられたコントロールシャフトであることを特徴とする。
【0039】
このようなアクチュエータを内燃機関の可変動弁機構に用いることにより、バルブ特性を円滑に調節でき、内燃機関の燃費を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】実施の形態1の遊星差動ねじ型回転直動変換機構の斜視図。
【図2】実施の形態1の遊星差動ねじ型回転直動変換機構の部分破断斜視図。
【図3】実施の形態1の遊星差動ねじ型回転直動変換機構の部分破断斜視図。
【図4】(A),(B)実施の形態1の2種類のプラネタリシャフトとリテーナとの配置関係説明図。
【図5】(A),(B)実施の形態1のナットの断面構成説明図。
【図6】(A),(B)実施の形態1のサンシャフトの構成説明図。
【図7】(A)〜(C)実施の形態1のプラネタリシャフトの構成説明図。
【図8】実施の形態1のリテーナの正面図。
【図9】実施の形態1のリテーナとプラネタリシャフトの支持軸との関係を示す説明図。
【図10】実施の形態1の遊星差動ねじ型回転直動変換機構の諸元説明図。
【図11】実施の形態1のリテーナの支持孔内面における支持軸当接位置での法線ベクトルの説明図。
【図12】実施の形態1の遊星差動ねじ型回転直動変換機構においてナットの回転開始時における回転入力と直動出力間での変換効率の実測例を示すグラフ。
【図13】実施の形態2のリテーナの正面図。
【図14】実施の形態2のリテーナとプラネタリシャフトの支持軸との関係を示す説明図。
【図15】実施の形態2のリテーナの支持孔内面における支持軸当接位置での法線ベクトルの説明図。
【図16】実施の形態3のリテーナの正面図。
【図17】実施の形態3の別例のリテーナの正面図。
【図18】実施の形態3のリテーナとプラネタリシャフトの支持軸との関係を示す説明図。
【図19】実施の形態3の別例のリテーナとプラネタリシャフトの支持軸との関係を示す説明図。
【図20】実施の形態3のリテーナの支持孔内面における支持軸当接位置での法線ベクトルの説明図。
【図21】実施の形態3の別例のリテーナの支持孔内面における支持軸当接位置での法線ベクトルの説明図。
【図22】実施の形態4の遊星差動ねじ型回転直動変換機構の部分破断斜視図。
【図23】(A),(B)実施の形態4のプラネタリシャフトの構成説明図。
【図24】実施の形態4の2種類のプラネタリシャフトとリテーナとの配置関係説明図。
【図25】(A),(B)実施の形態4の2種類のプラネタリシャフトとリテーナとの配置関係説明図。
【図26】実施の形態5のリテーナとプラネタリシャフトの支持軸との関係を示す説明図。
【図27】実施の形態5の別例のリテーナとプラネタリシャフトの支持軸との関係を示す説明図。
【図28】実施の形態6のリテーナとプラネタリシャフトの支持軸との関係を示す説明図。
【図29】実施の形態6の別例のリテーナとプラネタリシャフトの支持軸との関係を示す説明図。
【図30】リテーナの支持孔の別例を示す構成説明図。
【図31】リテーナの支持孔の別例を示す構成説明図。
【図32】リテーナの支持孔の別例を示す構成説明図。
【図33】リテーナの支持孔の別例を示す構成説明図。
【図34】リテーナの支持孔の別例を示す構成説明図。
【図35】リテーナの支持孔の別例を示す構成説明図。
【図36】リテーナの支持孔の別例を示す構成説明図。
【図37】リテーナの支持孔の別例を示す構成説明図。
【図38】リテーナの支持孔の別例を示す構成説明図。
【図39】リテーナの支持孔の別例を示す構成説明図。
【発明を実施するための形態】
【0041】
[実施の形態1]
〈構成〉図1〜3は上述した発明が適用された遊星差動ねじ型回転直動変換機構2を表している。この遊星差動ねじ型回転直動変換機構2は、内燃機関の可変動弁機構に用いられるアクチュエータに組み込まれるものである。
【0042】
遊星差動ねじ型回転直動変換機構2は、ナット4、サンシャフト6、及び複数(ここでは6本)のプラネタリシャフト8,10を主体として構成されている。ナット4内の空間にはサンシャフト6が収納され、ナット4とサンシャフト6との間の公転軌道空間に6本のプラネタリシャフト8,10が配置されている。
【0043】
ナット4の前面側(図1:FR)は前面カラー12が取り付けられ、この前面カラー12の中央口からサンシャフト6の先端部6aが突出している。ナット4の背面側(図1:RR)は背面カラー14により密閉状態にて閉塞されている。尚、図3では前面カラー12及び背面カラー14を外して示している。
【0044】
ナット4とサンシャフト6との間に配置された6本のプラネタリシャフト8,10は、2種類存在する。この6本のプラネタリシャフト8,10は、一方の種類の3本のプラネタリシャフト8が公転軌道空間内にて均等の位相間隔(120°)にて配列され、更に他方の種類の3本のプラネタリシャフト10についても均等の位相間隔(120°)にて配列されている。
【0045】
2種類のプラネタリシャフト8,10は、図4に示したごとく40°の間隔に近接したペアが形成されており、この40°間隔の2種類のプラネタリシャフト8,10のペアが公転軌道空間に均等の位相間隔(120°)にて配列された状態となっている。
【0046】
これら6本のプラネタリシャフト8,10は、背面側にてリテーナ16により自転可能に支持された状態で連結されて、前述した各位相間隔を維持している。尚、図4の(A)はプラネタリシャフト8,10とリテーナ16との関係を示す斜視図、(B)は背面側から見た図である。
【0047】
図5の(A)にナット4の断面を示す。ナット本体4cは円筒形であり、内周面に雌ねじ状のナットねじ4dを形成している。図5の(B)に示すごとくナットねじ4dの前面側には前面側リングギヤ4eが嵌合され、背面側には背面側リングギヤ4fが嵌合されている。
【0048】
図6の(A)にサンシャフト6を示す。サンシャフト6において、前述した先端部6aには内燃機関に設けられているコントロールシャフトに接続する接続部6bと、内燃機関に固定されるアクチュエータハウジングのストレートスプラインに軸方向摺動可能に噛み合うストレートスプライン部6cとが設けられている。尚、上記コントロールシャフトは、軸方向にスライドさせることによりバルブ特性を変更する内燃機関の可変動弁機構の部材である。
【0049】
そしてナット4の内部空間に配置される部分には、サンねじ6dを中心に、前面側と背面側にそれぞれサンギヤ6e,6fが形成されている。尚、図6の(B)に示すごとく、背面側のサンギヤ6fはサンシャフト本体6gとは別個に形成されたものであり、サンシャフト本体6gにサンギヤ6fを嵌合することでサンシャフト6として一体化されている。
【0050】
プラネタリシャフト8,10は図7に示すごとくである。図7の(A)は駆動側プラネタリシャフト8であり、前面側から前面プラネタリギヤ8a、プラネタリねじ8b及び背面プラネタリギヤ8cを主体として構成されている。
【0051】
前面プラネタリギヤ8aは、図7の(B)に示すごとくプラネタリねじ8b、前面軸部8d及び支持軸8eとは一体化されている。この一体化されたものが従動側プラネタリシャフト10に相当する。
【0052】
このような従動側プラネタリシャフト10において、その背面側にある支持軸8eを、図7の(C)に断面で示す背面プラネタリギヤ8cの軸受孔8fに挿入して、回転可能に支持することにより、図7の(A)に示した駆動側プラネタリシャフト8が形成される。
【0053】
ここで図2〜4に示したごとくプラネタリシャフト8,10を連結しているリテーナ16について説明する。
図8に示すごとくリテーナ16は、プラネタリシャフト8,10の数と配置に対応して支持部に相当する6つの支持孔16a,16bを有し、この支持孔16a,16bにてプラネタリシャフト8,10を自転可能に支持している。
【0054】
図8は背面側からリテーナ16を見た図である。このリテーナ16がプラネタリシャフト8,10を支持した状態を図9に示す。ここで支持孔16a,16bの一方の駆動側支持孔16aは駆動側プラネタリシャフト8の支持軸8eを支持し、他方の従動側支持孔16bは従動側プラネタリシャフト10の支持軸8eを支持する。
【0055】
ここで各支持孔16a,16bの軸直交方向断面形状は、図8,9に示されているごとく、いずれも2つの半円Lc1,Lc2,Hc1,Hc2を平行な直線Ls1,Ls2,Hs1,Hs2で接続した形状となっている。
【0056】
一方の駆動側支持孔16aについては、外周側の半円Hc1と内周側の半円Hc2とを、2つの直線Hs1,Hs2とで接続している。ただし外周側の半円Hc1は、内周側の半円Hc2に対して反時計回りに位相がずれており、このことにより2つの直線Hs1,Hs2は外周に向かって反時計回り方向に傾斜している。したがって駆動側支持孔16aにおいて2つの直線Hs1,Hs2に対応する平面状の内面は、外側に向かって反時計回り方向に傾斜した面を形成している。
【0057】
他方の従動側支持孔16bについては、外周側の半円Lc1と内周側の半円Lc2とを、2つの直線Ls1,Ls2とで接続している。ただし外周側の半円Lc1は、内周側の半円Lc2に対して時計回りに位相がずれており、このことにより2つの直線Ls1,Ls2は外周に向かって時計回り方向に傾斜している。したがって従動側支持孔16bにおいて2つの直線Ls1,Ls2に対応する平面状の内面は、外側に向かって時計回り方向に傾斜した面を形成している。
【0058】
プラネタリシャフト8,10の支持軸8eの公転軌道Reは、図8,9に一点鎖線にて示すごとく、各支持孔16a,16bにおいて外側の半円の中心点Hp,Lpを通過している。
〈作用〉ここで遊星差動ねじ型回転直動変換機構2は車両用内燃機関において、吸気バルブのバルブリフト量可変機構に適用されており、前述したごとくサンシャフト6は、先端部6aにおいてバルブリフト量可変機構のコントロールシャフトに接続されている。この接続状態では、コントロールシャフトから、サンシャフト6は常にナット4内から前面側へ引き出される力を受けている。
【0059】
ナット4はその外周に設けられた電動モータ(回転駆動源に相当)により回転駆動される。ここでサンシャフト6、プラネタリシャフト8,10及びナット4の諸元は図10に示すごとくである。
【0060】
この構成において、サンシャフト6には、バルブリフト量可変機構のコントロールシャフトから前面側に引き出される力が与えられることにより、図9に示した背面側から見た状態では、従動側プラネタリシャフト10の支持軸8eは、サンねじ6d側からプラネタリねじ8bを介して常に反時計回転方向のトルクを受けている。
【0061】
駆動側プラネタリシャフト8についてもサンねじ6dからプラネタリねじ8bを介して反時計回転方向のトルクを受けることは同じである。しかし、駆動側プラネタリシャフト8には支持軸8eに背面プラネタリギヤ8cが配置されており、この背面プラネタリギヤ8cは背面側リングギヤ4f及び背面側サンギヤ6fに噛合することで、サンねじ6dからのトルクに対抗している。
【0062】
したがって、駆動側プラネタリシャフト8の支持軸8eは、リテーナ16を介して従動側プラネタリシャフト10の支持軸8eが反時計回転方向のトルクにより反時計回りに位相がずれるのを阻止している。
【0063】
この力関係により、従動側プラネタリシャフト10の支持軸8eは、反時計回転方向のトルクにより、従動側支持孔16bに対して公転軌道方向の反時計回り側の内面に当接力Fbにて当接する。
【0064】
そして駆動側プラネタリシャフト8の支持軸8eはリテーナ16を介して受ける従動側プラネタリシャフト10の当接力Fbにより、駆動側支持孔16aに対して公転軌道方向の時計回り側の内面に当接力Faにて当接する。
【0065】
いずれのプラネタリシャフト8,10も、支持軸8eの外径は外周側の半円Hc1,Lc1と同径であり、いずれの支持軸8eの中心も、その公転軌道Reは、外周側の半円Hc1,Lc1の中心点Hp,Lpを通過する配置状態となっている。
【0066】
このため従動側プラネタリシャフト10の支持軸8eによる当接力Fbは、従動側支持孔16bの内面において、内周側に時計回転方向に傾いている直線Ls1に相当する平面状内面に、支持軸8eの外周面が公転軌道方向で当接することにより生じている。直線Ls1に相当する平面状内面は、内周側に時計回転方向に傾いているため、その法線ベクトルVLは図11に示すごとくプラネタリシャフト公転軌道Reの径方向成分VL1(ここでは内周側に向かう成分)及び接線方向成分VL2を共に含んでいる。したがってこのような平面状内面に公転軌道方向で当接することによりにより、図9に示したごとくリテーナ16の内周側に向かう力Fiが従動側プラネタリシャフト10の支持軸8eに生じる。
【0067】
同様に駆動側プラネタリシャフト8の支持軸8eによる当接力Faは、駆動側支持孔16aの内面において、内周側に反時計回転方向に傾いている直線Hs1に相当する平面状内面に、支持軸8eの外周面が公転軌道方向で当接することにより生じている。直線Hs1に相当する平面状内面は、内周側に反時計回転方向に傾いているため、その法線ベクトルVHはプラネタリシャフト公転軌道Reの径方向成分VH1(ここでは内周側に向かう成分)及び接線方向成分VH2を共に含んでいる。したがってこのような平面状内面に公転軌道方向で当接することにより、図9に示したごとくリテーナ16の内周側に向かう力Fjが駆動側プラネタリシャフト8の支持軸8eに生じる。
【0068】
このようにいずれのプラネタリシャフト8,10においても、背面側の支持軸8eがリテーナ16の内周側に向かう力Fi,Fjが生じることから、駆動側プラネタリシャフト8においては、特に背面プラネタリギヤ8cが背面側のサンギヤ6fに押しつけられ、プラネタリねじ8bがサンねじ6dに押しつけられる。従動側プラネタリシャフト10においては、特にプラネタリねじ8bがサンねじ6dに押しつけられる。
【0069】
このような構成にて、ナット4が、外周側に取り付けられた電動モータにより回転される。例えば、バルブリフト量可変機構のコントロールシャフトからの引き出し力に抗して、サンシャフト6をナット4内に引き込む場合、すなわちバルブリフト量を増加させる場合には、背面側から見た図8,9における時計回りにナット4を回転する。
【0070】
3本の駆動側プラネタリシャフト8は、2つのプラネタリギヤ8a,8cとプラネタリねじ8bとで、ナット4の2つのリングギヤ4e,4fとナットねじ4dとに噛合しているため、ナット4の回転により、ナット4とサンシャフト6との間の公転軌道空間にて自転しつつ公転する。同様に3本の従動側プラネタリシャフト10は、1つのプラネタリギヤ8aとプラネタリねじ8bとがナット4の1つのリングギヤ4eとナットねじ4dとに噛合しているため、ナット4の回転により公転軌道空間にて自転しつつ公転する。
【0071】
サンシャフト6は、サンギヤ6e,6f及びサンねじ6dによりプラネタリシャフト8,10に噛合している。そしてサンシャフト6はストレートスプライン部6cにより回転が阻止されている。
【0072】
したがってプラネタリシャフト8,10が、ナット4とサンシャフト6との間で自転しつつ公転することにより、サンシャフト6は、軸方向、この場合はサンシャフト6自身をナット4内に引き込む方向に移動する。
【0073】
コントロールシャフトからの引き出し力の方向へ、サンシャフト6を移動させる場合、すなわちナット4内からサンシャフト6を引き出すことでバルブリフト量を減少させる場合には、背面側から見た図8,9において反時計回りにナット4を回転する。
【0074】
この場合も、プラネタリシャフト8,10は自転しつつ公転して、サンシャフト6を軸方向に移動させ、サンシャフト6をナット4内から突出させる。
このようにバルブリフト量可変機構のコントロールシャフトから伝達される引き出し力方向へサンシャフト6を移動させる場合においても、従動側プラネタリシャフト10は図8,9において常に反時計回りのトルクをサンシャフト6側から受けつつ反時計回りに回転する。駆動側プラネタリシャフト8についてもリテーナ16を介して従動側プラネタリシャフト10側から反時計回りのトルクを受けつつ反時計回りに戻す回転力をナット4側から与えられることになる。
【0075】
したがって、ナット4を回転させて、サンシャフト6をコントロールシャフトからの力に抗して移動させる場合も、コントロールシャフトからの力の方向へ移動させる場合も、従動側プラネタリシャフト10の支持軸8eは同方向の当接力Fbを生じ、駆動側プラネタリシャフト8の支持軸8eは同方向の当接力Faを生じる。
【0076】
このことによりナット4の停止時も、いずれの方向への回転時においても、常に内周方向への力Fi,Fjが6本のプラネタリシャフト8,10に生じていることになる。
図12にナット4の回転開始時における回転入力と直動出力間での変換効率の実測例を示す。図示左側が実施例、すなわち本実施の形態の遊星差動ねじ型回転直動変換機構2をアクチュエータに組み込んだ場合の変換効率の時間変化を示す。そして図示右側が比較例、すなわち従来の円形の支持孔により径方向の力が支持軸8eに生じないリテーナを用いた遊星差動ねじ型回転直動変換機構をアクチュエータに組み込んだ場合の変換効率の時間変化を示す。図12のグラフでは、実施例の方が変換効率が高く、かつ変換効率も安定している。
〈効果〉(1)プラネタリシャフト8,10の支持軸8eは、上述したごとくのメカニズムにより、リテーナ16の支持孔16a,16bの内面に対して公転軌道Re方向においてそれぞれ逆方向に当接している。当接部分である直線Ls1,Hs1に相当する内面での法線ベクトルVL,VHは、プラネタリシャフト公転軌道Reの径方向成分VL1,VH1(ここでは内周方向)及び接線方向成分VL2,VH2を共に含んでいる。
【0077】
したがってプラネタリシャフト8,10の各支持軸8eは内周方向への力Fj,Fiを与えられる。このことにより各プラネタリシャフト8,10は、径方向内側のサンシャフト6に押しつけられることになる。
【0078】
このようにして駆動側プラネタリシャフト8も従動側プラネタリシャフト10も、噛み合う相手方、ここでは特にサンシャフト6側との間にクリアランスが存在していても、そのクリアランスを解消して確実な噛合状態が形成される。このことによりプラネタリシャフト8,10の姿勢を安定化でき、このような遊星差動ねじ型回転直動変換機構2を用いたアクチュエータの回転直動変換効率の低下を防止することができる。
(2)特に駆動側プラネタリシャフト8の背面プラネタリギヤ8cは、支持軸8eに回転可能に支持されているため、背面プラネタリギヤ8cと支持軸8eとの間においてもクリアランスが生じる可能性がある。しかし遊星差動ねじ型回転直動変換機構2が、内燃機関におけるバルブリフト量可変機構のアクチュエータに組み込まれて配置されたことにより、前述したごとく内周方向への力Fjを常に発生する。このためサンシャフト6側とのクリアランスを解消して駆動側プラネタリシャフト8の姿勢を安定化することができる。
【0079】
更に従動側プラネタリシャフト10においては背面プラネタリギヤ8cが欠如していることにより、駆動側プラネタリシャフト8側よりも姿勢の不安定性が生じやすい。しかし前述したごとくアクチュエータに組み込まれたことで内周方向への力Fiを常に発生する。このためプラネタリねじ8bとサンねじ6dとの間でのクリアランスを解消してプラネタリシャフトの姿勢を安定化することができる。
(3)両端にプラネタリギヤ8a,8cが存在する駆動側プラネタリシャフト8については、前述したごとく背面プラネタリギヤ8cにおける姿勢安定化により前面プラネタリギヤ8aの姿勢も安定化する。このことにより両端部でサンギヤ6e,6fに対する噛み合いが確実に行われ、駆動側プラネタリシャフト8の姿勢を十分に安定化することができる。
【0080】
背面プラネタリギヤ8cが欠如している従動側プラネタリシャフト10についても、その欠如している端部におけるプラネタリねじ8bでの姿勢の安定化により、前面プラネタリギヤ8aの姿勢も安定化する。このことにより一端でサンねじ6dに対する噛み合い、他端でサンギヤ6eに対する噛み合いが確実に行われ、従動側プラネタリシャフト10の姿勢を十分に安定化することができる。
(4)外周側の半円Lc1,Hc1と内周側の半円Lc2,Hc2とを2本の直線Ls1,Ls2,Hs1,Hs2で接続した長円形を、軸直交方向断面の形状として、支持孔16a,16bを形成している。ここで直線Ls1,Ls2,Hs1,Hs2の内で、特に支持軸8eの外周面が公転軌道Re方向において当接する直線Ls1,Hs1に相当する平面状内面は、その法線ベクトルVL,VHがプラネタリシャフト公転軌道Reの径方向成分VL1,VH1及び接線方向成分VL2,VH2を共に含んでいる。このような簡易な形状の支持孔16a,16bにて内周方向への力Fi,Fjを、支持軸8eに対して生じさせることができる。
(5)本実施の形態の遊星差動ねじ型回転直動変換機構2が組み込まれたアクチュエータを利用して、吸気バルブのバルブリフト量可変機構を構成しているので、回転直動変換効率の低下が防止でき、エネルギー効率の高いアクチュエータとすることができる。このことによりバルブ特性、ここではバルブリフト量を円滑に調節でき、内燃機関の燃費を向上させることができる。
【0081】
[実施の形態2]
〈構成〉本実施の形態では、図13〜15に示すごとく、リテーナ116の支持孔116a,116bの配置状態が前記実施の形態1とは異なる。他の構成は前記実施の形態1と同じであり、同一の構成については同一の符号にて説明する。
【0082】
ここで支持孔116a,116bの軸直交方向断面形状は、外周側の半円Lc11,Hc11、内周側の半円Lc12,Hc12及びこれらを接続する直線Ls11,Ls12,Hs11,Hs12から形成される長円形である点については、前記実施の形態1の支持孔と同じである。
【0083】
ただし、この長円形の傾きは、前記実施の形態1とは逆であり、外周側の半円Lc11,Hc11が離れるように径方向に対して傾斜している。
このことにより駆動側プラネタリシャフト8の支持軸8eを支持する支持孔116aの2つの直線Hs11,Hs12は外周に向かって時計回り方向に傾斜している。すなわち駆動側支持孔116aにおいて2つの直線Hs11,Hs12に対応する平面状内面は、外側に向かって時計回り方向に傾斜した面を形成している。従動側プラネタリシャフト10の支持軸8eを支持する支持孔116bの2つの直線Ls11,Ls12は外周に向かって反時計回り方向に傾斜している。すなわち従動側支持孔116bにおいて2つの直線Ls11,Ls12に対応する平面状内面は、外側に向かって反時計回り方向に傾斜した面を形成している。
【0084】
そして更にプラネタリシャフト8,10の支持軸8eの公転軌道Reは、図13,14に一点鎖線にて示したごとく、外周側の半円Lc11,Hc11の中心点でなく、内周側の半円Lc12,Hc12の中心点Lq,Hqを通過している。
〈作用〉前記実施の形態1にて述べたごとく、従動側プラネタリシャフト10の支持軸8eは従動側支持孔116bに対して反時計回転方向のトルクにより公転軌道方向の反時計回り側の内面に当接力Fbにて当接する。
【0085】
そして駆動側プラネタリシャフト8の支持軸8eはリテーナ116を介して受ける従動側プラネタリシャフト10の当接力Fbにより、駆動側支持孔116aに対して公転軌道方向の時計回り側の内面に当接力Faにて当接する。
【0086】
いずれのプラネタリシャフト8,10も、支持軸8eの外径は内周側の半円Hc12,Lc12と同径であり、いずれの支持軸8eの中心も、その公転軌道Reは、内側の半円Hc12,Lc12の中心点Hq,Lqを通過する配置状態となっている。
【0087】
このため従動側プラネタリシャフト10の支持軸8eによる当接力Fbは、従動側支持孔116bの内面において、内周側に反時計回転方向に傾いている直線Ls11に相当する平面状内面に、支持軸8eの外周面が公転軌道方向で当接することにより生じている。直線Ls11に相当する平面状内面は、内周側に反時計回転方向に傾いているため、その法線ベクトルVLは図15に示すごとくプラネタリシャフト公転軌道Reの径方向成分VL11(ここでは外周側に向かう成分)及び接線方向成分VL12を共に含んでいる。したがってこのような平面状内面に公転軌道方向で当接することによりにより、図14に示したごとくリテーナ116の外周側に向かう力Fmが従動側プラネタリシャフト10の支持軸8eに生じる。
【0088】
同様に駆動側プラネタリシャフト8の支持軸8eによる当接力Faは、駆動側支持孔116aの内面において、内周側に時計回転方向に傾いている直線Hs11に相当する平面状内面に、支持軸8eの外周面が公転軌道方向で当接することにより生じている。直線Hs11に相当する平面状内面は、内周側に時計回転方向に傾いているため、その法線ベクトルVHはプラネタリシャフト公転軌道Reの径方向成分VH11(ここでは外周側に向かう成分)及び接線方向成分VH12を共に含んでいる。したがってこのような平面状内面に公転軌道方向で当接することにより、図14に示したごとくリテーナ116の外周側に向かう力Fnが駆動側プラネタリシャフト8の支持軸8eに生じる。
【0089】
このようにいずれのプラネタリシャフト8,10においても、背面側の支持軸8eがリテーナ116の外周側に向かう力Fm,Fnが生じることから、駆動側プラネタリシャフト8においては、特に背面プラネタリギヤ8cが背面側リングギヤ4f(図2,3)に押しつけられ、プラネタリねじ8bがナットねじ4d(図2,3)に押しつけられる。従動側プラネタリシャフト10においては、特にプラネタリねじ8bがナットねじ4dに押しつけられる。
【0090】
このような構成にて、ナット4を、外周側に取り付けられた電動モータにより回転することにより、3本の駆動側プラネタリシャフト8及び3本の従動側プラネタリシャフト10を、ナット4とサンシャフト6との間で公転軌道空間にて自転しつつ公転させる。このことによりナット4内にサンシャフト6を引き込んだり、ナット4内からサンシャフト6を突き出したりすることで、バルブリフト量可変機構のコントロールシャフトを軸方向に移動させる。
【0091】
コントロールシャフトをいずれの方向に軸移動させる場合にも、前記実施の形態1にて説明したごとく、バルブリフト量可変機構のコントロールシャフト側から伝達される引き出し力により、従動側プラネタリシャフト10は図13,14において常に反時計回りのトルクを受けつつ公転する。駆動側プラネタリシャフト8についてもリテーナ116を介して従動側プラネタリシャフト10側から反時計回りのトルクを受けつつ公転する。
【0092】
したがって、ナット4を回転させてサンシャフト6を、コントロールシャフトからの力に抗して移動させる場合も、コントロールシャフトからの力の方向に移動させる場合も、従動側プラネタリシャフト10の支持軸8eは当接力Fbを生じ、駆動側プラネタリシャフト8の支持軸8eは当接力Faを生じる。
【0093】
このことにより常に外周方向への力Fm,Fnが6本のプラネタリシャフト8,10に生じることになる。
〈効果〉(1)直線Ls11,Hs11に対応する平面に、プラネタリシャフト8,10の各支持軸8eが当接することにより生じる径方向の力Fm,Fnは、前記実施の形態1の場合とは逆に、外周側、すなわちナット4側に向けられる。
【0094】
この場合も背面プラネタリギヤ8cやプラネタリねじ8bが背面側リングギヤ4fやナットねじ4dに押しつけられることになり、プラネタリシャフト8,10の姿勢が安定化する。
【0095】
したがって前記実施の形態1と同様な効果を生じる。
[実施の形態3]
〈構成〉前記実施の形態1,2において、駆動側プラネタリシャフト8を支持するリテーナ16,116の駆動側支持孔16a,116aが長円形にされているが、図16〜21に示すごとく、本実施の形態のリテーナ216,316では、駆動側支持孔216a,316aは円形である。尚、図16,18,20については前記実施の形態1のリテーナ16において駆動側支持孔16aを円形にしたものに相当し、図17,19,21については前記実施の形態2のリテーナ116において駆動側支持孔116aを円形にしたものに相当する。従動側支持孔216b,316bについては前記各実施の形態と同一の形状及び配置である。
〈作用〉図16,18,20に示したリテーナ216においても、図17,19,21に示したリテーナ316においても、従動側プラネタリシャフト10の支持軸8eには、前記実施の形態1,2と同様に、従動側支持孔216b,316bの直線Ls21,Ls31に相当する内面により、当接力Fbに基づく径方向の力Fi,Fmを生じる。
【0096】
駆動側プラネタリシャフト8の支持軸8eを支持している駆動側支持孔216a,316aについては、円形の中心点Hxをプラネタリシャフト公転軌道Reが通過している。このため従動側プラネタリシャフト10の支持軸8eによりリテーナ216,316が図示反時計回りにトルクを受けた場合には、駆動側プラネタリシャフト8の支持軸8eの外周は当接点Hyに当接する。この当接点Hyにおける円接線は、プラネタリシャフト公転軌道Reに垂直である。すなわち当接点Hyにおける法線ベクトルはプラネタリシャフト公転軌道Reの径方向成分を有さない。このため駆動側プラネタリシャフト8の支持軸8eが、当接力Fbにより当接することにより生じる反力には径方向の成分が存在しない。
〈効果〉(1)従動側プラネタリシャフト10については、図16,18,20に示したリテーナ216では前記実施の形態1の効果を生じる。前記図17,19,21に示したリテーナ316では前記実施の形態2の効果を生じる。
【0097】
駆動側プラネタリシャフト8については、2つのリテーナ216,316のいずれを用いても径方向の力は生じない。しかし駆動側プラネタリシャフト8は両端にプラネタリギヤ8a,8cが存在することから、元々安定度は従動側プラネタリシャフト10側よりも高い。したがって安定度の低い従動側プラネタリシャフト10を安定化することにより、遊星差動ねじ型回転直動変換機構全体として回転直動変換効率の低下を防止することができる。
【0098】
[実施の形態4]
〈構成〉図22に示すごとく、本実施の形態の遊星差動ねじ型回転直動変換機構402では、2つのリテーナ416,417が組み込まれている。一方の背面側リテーナ416は前記実施の形態1のリテーナ16(図8)と同一形状であり、同一状態で配置されている。他方の前面側リテーナ417は、背面側リテーナ416と同一形状であるが、プラネタリシャフト408,410の前面軸部408d,410dをそれぞれ自転可能に支持している。
【0099】
駆動側プラネタリシャフト408は図23の(A)に示すごとく、前記実施の形態1の駆動側プラネタリシャフト8[図7の(A)]と同一形状であり、前面プラネタリギヤ408a、プラネタリねじ408b、背面プラネタリギヤ408c、前面軸部408d及び支持軸408eを備えている。
【0100】
従動側プラネタリシャフト410については、図23の(B)に示すごとく、前面プラネタリギヤは存在せず、前面側には円柱部410aを形成している。これ以外の部分である、前面軸部410d、プラネタリねじ410b及び支持軸410eについては、前記実施の形態1の従動側プラネタリシャフト10[図7の(B)]の各部と同じである。
【0101】
尚、ナット4及びサンシャフト6の構成は前記実施の形態1と同じである。
〈作用〉図24に示すごとく、全部で6本のプラネタリシャフト408,410は、背面側と前面側との両端側にて2つのリテーナ416,417にて自転可能に支持されて連結されている。
【0102】
図25の配置図に示すごとく、リテーナ416,417の駆動側支持孔416a,417aは前記実施の形態1の駆動側支持孔16aと同一形状であり、従動側支持孔416b,417bも前記実施の形態1の従動側支持孔16bと同一形状である。尚、図25の(A)は背面側から見た背面側リテーナ416に対する2種類のプラネタリシャフト408,410の配置関係を示し、(B)は前面側から見た前面側リテーナ417に対する2種類のプラネタリシャフト408,410の配置関係を示す。
【0103】
このような構成から、前記実施の形態1の作用において説明したごとく、内側に向かう径方向の力Fi,Fjは6本のプラネタリシャフト408,410の各両端に発生し、このことにより各プラネタリシャフト408,410は、一層確実にサンシャフト6側に押しつけられる。
〈効果〉(1)各プラネタリシャフト408,410は、一層確実にサンシャフト6側に押しつけられることから、遊星差動ねじ型回転直動変換機構402の全てのプラネタリシャフト408,410が高度に安定化し、前記実施の形態1に述べた効果をより高めることができる。
【0104】
[実施の形態5]
〈構成〉前述した各プラネタリシャフトを自転可能に軸支するリテーナの支持孔の他の形状を図26,27に示す。
【0105】
図26のリテーナ516は、支持孔516a,516bの軸直交方向断面を楕円形としている。駆動側支持孔516a側の楕円形と従動側支持孔516b側の楕円形とは、リテーナ516の径方向に対して、長軸がリテーナ516の外側で離れ、内側で近づくようにそれぞれ傾けられている。
【0106】
図27のリテーナ616についても支持孔616a,616bの軸直交方向断面を楕円形としている。ただし駆動側支持孔616a側の楕円形と従動側支持孔616b側の楕円形とは、リテーナ616の径方向に対して、長軸がリテーナ616の外側で近づき、内側で離れるようにそれぞれ傾けられている。
〈作用〉図26の構成では、従動側プラネタリシャフト10の支持軸8eが、従動側支持孔516bの内周面にて曲率が小さい側の内面に対して当接する。すなわち楕円形の長径方向に沿った楕円弧の一方に対応する内面が、従動側プラネタリシャフト10の支持軸8eの外周面が公転方向で当接する部分Ls51となる。
【0107】
この当接部分Ls51での法線ベクトルは、破線の矢線にて示すごとくプラネタリシャフト公転軌道Reの径方向成分及び接線方向成分を共に含んでいるので、当接力Fbは、当接点で実線の矢線のごとく分力して、従動側プラネタリシャフト10の支持軸8eには、径方向外側への力Fqが生じる。
【0108】
駆動側支持孔516aに当接する駆動側プラネタリシャフト8の支持軸8eについては前記実施の形態1にて説明したごとくリテーナ516を介して当接力Faが生じ、駆動側支持孔516aの内周面にて曲率が小さい側の内面に対して当接する。すなわち楕円形の長径方向に沿った楕円弧の一方に対応する内面が、駆動側プラネタリシャフト8の支持軸8eの外周面が公転方向で当接する部分Hs51となる。
【0109】
この当接部分Hs51での法線ベクトルは、破線の矢線にて示すごとくプラネタリシャフト公転軌道Reの径方向成分及び接線方向成分を共に含んでいるので、当接力Faは、当接点で実線の矢線のごとく分力して、駆動側プラネタリシャフト8の支持軸8eには、径方向外側への力Fpが生じる。
【0110】
図27の構成では、当接する部分Ls61,Hs61での法線ベクトルは、プラネタリシャフト公転軌道Reの径方向成分及び接線方向成分を共に含んでいるが、径方向成分は内側を向いている。したがって、従動側プラネタリシャフト10の支持軸8eには径方向内側への力Frが生じ、同様に駆動側プラネタリシャフト8の支持軸8eについても径方向内側への力Fsが生じる。
〈効果〉(1)このように図26のごとく楕円形の支持孔516a,516bであっても、前記実施の形態2の効果を生じる。図27のごとく楕円形の支持孔616a,616bであっても、前記実施の形態1の効果を生じる。
【0111】
[実施の形態6]
〈構成〉前述した各プラネタリシャフトを自転可能に軸支するリテーナの支持孔の他の形状を図28,29に示す。
【0112】
図28,29のリテーナ716,816は支持孔716a,716b,816a,816bを円形としている。ただし共にプラネタリシャフト8,10の支持軸8eとは偏心状態にある。
【0113】
図28においては、駆動側プラネタリシャフト8の支持軸8eの中心軸位置8pは駆動側支持孔716aの中心軸位置716pとはずらされている。ここでは支持軸8eの中心軸位置8pに対して駆動側支持孔716aの中心軸位置716pは、径方向外側及び反時計回り方向へずらされている。従動側プラネタリシャフト10の支持軸8eの中心軸位置10pは従動側支持孔716bの中心軸位置716qとはずらされている。ここでは支持軸8eの中心軸位置10pに対して従動側支持孔716bの中心軸位置716qは径方向外側及び時計回り方向へずらされている。
【0114】
図29においては、駆動側プラネタリシャフト8の支持軸8eの中心軸位置8pは駆動側支持孔816aの中心軸位置816pとはずらされている。ここでは支持軸8eの中心軸位置8pに対して駆動側支持孔816aの中心軸位置816pは、径方向内側及び反時計回り方向へずらされている。従動側プラネタリシャフト10の支持軸8eの中心軸位置10pは従動側支持孔816bの中心軸位置816qとはずらされている。ここでは支持軸8eの中心軸位置10pに対して従動側支持孔816bの中心軸位置816qは、径方向内側及び時計回り方向へずらされている。
〈作用〉図28の構成では、上述のごとく偏心状態とされていることにより、従動側プラネタリシャフト10の支持軸8eが従動側支持孔716bの内周面において当接する部分Ls71での法線ベクトルは、破線の矢線にて示すごとくプラネタリシャフト公転軌道Reの径方向成分及び接線方向成分を共に含んでいる。したがって、当接力Fbは、当接点で分力して、従動側プラネタリシャフト10の支持軸8eには、実線の矢線のごとく径方向外側への力Ftを生じる。
【0115】
駆動側支持孔716aに当接する駆動側プラネタリシャフト8の支持軸8eについては、駆動側支持孔716aの内周面にて当接する部分Hs71での法線ベクトルは、破線の矢線にて示すごとくプラネタリシャフト公転軌道Reの径方向成分及び接線方向成分を共に含んでいる。したがって、当接力Faは、当接点で分力して、駆動側プラネタリシャフト8の支持軸8eには、実線の矢線のごとく径方向外側への力Fuを生じる。
【0116】
図29の構成では、上述のごとく偏心状態とされていることにより、従動側プラネタリシャフト10の支持軸8eが従動側支持孔816bの内周面にて当接する部分Ls81での法線ベクトルは、破線の矢線にて示すごとくプラネタリシャフト公転軌道Reの径方向成分及び接線方向成分を共に含んでいる。したがって、当接力Fbは、当接点で分力して、従動側プラネタリシャフト10の支持軸8eには、実線の矢線のごとく径方向内側への力Fvが生じる。
【0117】
駆動側支持孔816aに当接する駆動側プラネタリシャフト8の支持軸8eについては、駆動側支持孔816aの内周面にて当接する部分Hs81での法線ベクトルは、破線の矢線にて示すごとくプラネタリシャフト公転軌道Reの径方向成分及び接線方向成分を共に含んでいる。したがって、当接力Faは、当接点で分力して、駆動側プラネタリシャフト8の支持軸8eには、実線の矢線のごとく径方向内側への力Fwが生じる。
〈効果〉(1)このように円形の支持孔716a,716b,816a,816bであっても、図28の構成では前記実施の形態2の効果を生じ、図29の構成では前記実施の形態1の効果を生じる。
【0118】
[その他の実施の形態]
・前記実施の形態4(図22〜25)において、各リテーナ416,417は、前記実施の形態1のリテーナ16と同一形状の支持孔であったが、各リテーナ416,417について前記実施の形態2のリテーナ116と同一形状の支持孔とすることにより、6本のプラネタリシャフト408,410をナット4側に押しつけることで安定化しても良い。
【0119】
更に各リテーナ416,417は、前記実施の形態3,5,6のリテーナと同一形状の支持孔としても良い。 更に後述する図30〜39のリテーナと同一形状の支持孔としても良い。
【0120】
・前記実施の形態6では円形の支持孔716a,716b,816a,816bの中心軸位置716p,716q,816p,816qは、支持軸8eの中心軸位置8p,10pに対して、径方向のみでなく周方向にもずらされていた。径方向へずれていれば、周方向にはずれていなくても、支持軸8eに対してリテーナの内側あるいは外側へ向かう力を生じさせることができる。したがって内側あるいは外側への径方向のずれのみが存在するように円形の支持孔を形成しても良い。
【0121】
・前記各実施の形態では、駆動側プラネタリシャフト8に対する支持孔と従動側プラネタリシャフト10に対する支持孔とは共に、径方向において同方向の力を、支持軸8eに与えるものであった。これ以外に駆動側プラネタリシャフト8と従動側プラネタリシャフト10とで、当接により支持軸8eに対して径方向に生じさせる力を逆方向としても良い。
【0122】
例えば図30に示すリテーナ902の例では前記実施の形態1のリテーナ16(図8,11)の駆動側支持孔16aの代わりに、前記実施の形態2のリテーナ116(図13,15)における駆動側支持孔116aを適用した例である。したがって従動側支持孔16bにて従動側プラネタリシャフト10の支持軸8eに生じる径方向の力は内側となり、駆動側支持孔116aにて駆動側プラネタリシャフト8の支持軸8eに生じる径方向の力は外側となる。
【0123】
図31に示すリテーナ904の例では前記実施の形態1のリテーナ16(図8,11)の従動側支持孔16bの代わりに、前記実施の形態2のリテーナ116(図13,15)における従動側支持孔116bを適用した例である。したがって従動側支持孔116bにて従動側プラネタリシャフト10の支持軸8eに生じる径方向の力は外側となり、駆動側支持孔16aにて駆動側プラネタリシャフト8の支持軸8eに生じる径方向の力は内側となる。
【0124】
図32に示すリテーナ906の例では前記実施の形態5のリテーナ516(図26)の駆動側支持孔516aの代わりに、同じく前記実施の形態5のリテーナ616(図27)における駆動側支持孔616aを適用した例である。したがって従動側支持孔516bにて従動側プラネタリシャフト10の支持軸8eに生じる径方向の力は外側となり、駆動側支持孔616aにて駆動側プラネタリシャフト8の支持軸8eに生じる径方向の力は内側となる。
【0125】
図33に示すリテーナ908の例では前記実施の形態5のリテーナ516(図26)の従動側支持孔516bの代わりに、同じく前記実施の形態5のリテーナ616(図27)における従動側支持孔616bを適用した例である。したがって従動側支持孔616bにて従動側プラネタリシャフト10の支持軸8eに生じる径方向の力は内側となり、駆動側支持孔516aにて駆動側プラネタリシャフト8の支持軸8eに生じる径方向の力は外側となる。
【0126】
図34に示すリテーナ910の例では前記実施の形態6のリテーナ716(図28)の駆動側支持孔716aの代わりに、同じく前記実施の形態6のリテーナ816(図29)における駆動側支持孔816aを適用した例である。したがって従動側支持孔716bにて従動側プラネタリシャフト10の支持軸8eに生じる径方向の力は外側となり、駆動側支持孔816aにて駆動側プラネタリシャフト8の支持軸8eに生じる径方向の力は内側となる。
【0127】
図35に示すリテーナ912の例では前記実施の形態6のリテーナ716(図28)の従動側支持孔716bの代わりに、同じく前記実施の形態6のリテーナ816(図29)における従動側支持孔816bを適用した例である。したがって従動側支持孔816bにて従動側プラネタリシャフト10の支持軸8eに生じる径方向の力は内側となり、駆動側支持孔716aにて駆動側プラネタリシャフト8の支持軸8eに生じる径方向の力は外側となる。
【0128】
・前記実施の形態1〜6及び図30〜35の例では、内燃機関側の可変動弁機構側との力関係から、プラネタリシャフト8,10の支持軸8eの当接は、公転軌道Reにおいて時計回り方向あるいは反時計回り方向の一方向であった。遊星差動ねじ型回転直動変換機構を適用するアクチュエータの用途によっては、当接方向は、時計回りあるいは反時計回りの一方向に限らず両方が生じる場合がある。このような場合には図36,37のリテーナ1016,1116に示すごとくの支持孔1016a,1016b,1116a,1116bを採用する。これら支持孔1016a,1016b,1116a,1116bは、対向して存在する2つの直線Ls111,Ls112,Hs111,Hs112,Ls121,Ls122,Hs121,Hs122に相当する2つの内面を形成している。これらの内面は、それぞれ支持軸8eの外周面が公転方向で当接する部分の法線ベクトルが、公転軌道Reの径方向成分及び接線方向成分を共に含んでいる。
【0129】
このことにより支持軸8eの当接が、時計回りと反時計回りとの両方が生じる場合にも対処でき、いずれの方向に当接しても支持軸8eをサンシャフト側あるいはナット側へ押しつけることができる。このことにより当接がいずれの方向であってもプラネタリシャフト8,10の姿勢を安定化でき、回転直動変換効率の低下を防止することができる。
【0130】
・前記各実施の形態ではリテーナの支持孔の軸直交方向断面は、長円形、楕円形、円形であったが、プラネタリシャフトの軸部外周面が公転方向で当接する部分の法線ベクトルがプラネタリシャフト公転軌道の径方向成分及び接線方向成分を共に含んでいるものであれば、他の断面形状でも良い。例えば図38,39のリテーナ1216,1316に示すごとく、支持孔1216a,1216b,1316a,1316bの軸直交方向断面を、略三角形状としても良い。
【0131】
図38のリテーナ1216の例では、略三角形状の支持孔1216a,1216bのそれぞれの二辺Ls211,Ls221,Hs211,Hs221に相当する内面が、支持軸8eが公転軌道Reにて時計回りあるいは反時計回りのいずれの方向に当接しても、支持軸8eは径方向外側へ押しつけられる。すなわちナット側に押しつけられて、プラネタリシャフト8,10の姿勢を安定化して回転直動変換効率の低下を防止することができる。
【0132】
図39のリテーナ1316の例では、略三角形状の支持孔1316a,1316bのそれぞれの二辺Ls311,Ls321,Hs311,Hs321に相当する内面により、支持軸8eが公転軌道Reにて時計回りあるいは反時計回りのいずれの方向に当接しても、支持軸8eは径方向内側へ押しつけられる。すなわちサンシャフト側に押しつけられて、プラネタリシャフト8,10の姿勢を安定化して回転直動変換効率の低下を防止することができる。
【符号の説明】
【0133】
2…遊星差動ねじ型回転直動変換機構、4…ナット、4c…ナット本体、4e,4f…リングギヤ、6…サンシャフト、6a…先端部、6b…接続部、6c…ストレートスプライン部、6e,6f…サンギヤ、6g…サンシャフト本体、8…駆動側プラネタリシャフト、8a…前面プラネタリギヤ、8b…プラネタリねじ、8c…背面プラネタリギヤ、8d…前面軸部、8e…支持軸、8f…軸受孔、8p…中心軸位置、10…従動側プラネタリシャフト、10p…中心軸位置、12…前面カラー、14…背面カラー、16…リテーナ、16a…駆動側支持孔、16b…従動側支持孔、116…リテーナ、116a…駆動側支持孔、116b…従動側支持孔、216,316…リテーナ、216a,316a…駆動側支持孔、216b,316b…従動側支持孔、402…遊星差動ねじ型回転直動変換機構、408…駆動側プラネタリシャフト、408a…前面プラネタリギヤ、408c…背面プラネタリギヤ、408d…前面軸部、408e…支持軸、410…従動側プラネタリシャフト、410a…円柱部、410d…前面軸部、410e…支持軸、416…背面側リテーナ、417…前面側リテーナ、416a,417a…駆動側支持孔、416b,417b…従動側支持孔、516…リテーナ、516a…駆動側支持孔、516b…従動側支持孔、616…リテーナ、616a…駆動側支持孔、616b…従動側支持孔、716…リテーナ、716a…駆動側支持孔、716b…従動側支持孔、716p,716q…中心軸位置、816…リテーナ、816a…駆動側支持孔、816b…従動側支持孔、816p,816q…中心軸位置、902,904,906,908,910,912…リテーナ、1016,1116…リテーナ、1016a,1016b,1116a,1116b…支持孔、1216,1316…リテーナ、1216a,1216b,1316a,1316b…支持孔、Fa,Fb…当接力、Fi,Fj,Fm,Fn,Fp,Fq,Fr,Fs,Ft,Fu,Fv,Fw…径方向の力、Re…プラネタリシャフト公転軌道、VL,VH…法線ベクトル。
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラネタリシャフトとサンシャフトとの間、及びプラネタリシャフトとナットとの間でねじによる噛合とギヤによる噛合とを形成し、ナットとサンシャフトとの間で回転直動間の変換を行う遊星差動ねじ型回転直動変換機構及びこの遊星差動ねじ型回転直動変換機構を用いたアクチュエータに関する。
【背景技術】
【0002】
遊星差動ねじ型回転直動変換機構が知られている(例えば特許文献1,2参照)。この遊星差動ねじ型回転直動変換機構では、ねじとその両側に配置したギヤとを組み合わせることにより、安定して効率的な回転直動変換を行おうとするものである。
【0003】
特に特許文献1では一方のギヤに付いては他方のギヤとねじとに対して相対回転可能とすることで、プラネタリシャフト(遊星軸)の姿勢を安定し回転運動から直線運動への変換効率の低下を防止しようとするものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第4516547号公報(第10頁、図1〜5)
【特許文献2】特開2007−192388号公報(第6〜8頁、図1〜7)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1では2つのナット(円環軸)のずれによる公転軌道方向でのプラネタリシャフトの傾きを防止することはできるが、ギヤ間のクリアランスによる公転軌道径方向でのプラネタリシャフトの傾きについては考慮されていない。このためギヤ間距離が変化してプラネタリシャフトの姿勢が安定せず、回転直動変換効率の低下を招いていた。
【0006】
特許文献2では、リテーナにより複数全てのプラネタリシャフトの両端を支持しているが、リテーナの支持孔とプラネタリシャフトの軸部とのクリアランスによって公転軌道径方向での傾きは完全には防止できない。
【0007】
更にこのようなリテーナの支持孔とプラネタリシャフトの軸部とのクリアランスの問題を除いたとしても、リテーナによる支持は、複数のプラネタリシャフト間の相対的な位置安定のみである。したがってリテーナにて一体化された複数のプラネタリシャフト全体としては、ナットやサンシャフトに対してクリアランスを生じており、リテーナ全体としてずれることにより、ギヤ間距離が変化することには変わりはない。したがって複数のプラネタリシャフト全体として姿勢が安定せず、回転直動変換効率の低下を招くおそれがある。
【0008】
本発明は、前述したクリアランスが存在していてもそれを解消してプラネタリシャフトの姿勢を安定化することで回転直動変換効率の低下を防止することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
以下、上記目的を達成するための手段及びその作用・効果について記載する。
請求項1に記載の遊星差動ねじ型回転直動変換機構は、サンシャフト、このサンシャフトを内周側に収納したナット、及びサンシャフトとナットとの間の公転軌道空間に配置された複数のプラネタリシャフトを備え、プラネタリシャフトとサンシャフトとの間、及びプラネタリシャフトとナットとの間でねじによる噛合とギヤによる噛合とを形成して、ナットの回転駆動に伴うプラネタリシャフト公転時のねじ間の差動によりナットとサンシャフトとの間で回転直動間の変換を行う遊星差動ねじ型回転直動変換機構であって、前記複数のプラネタリシャフトの軸部を支持部にて自転可能に支持することにより前記複数のプラネタリシャフト同士を連結するリテーナが設けられると共に、前記リテーナの支持部の内面にて、前記プラネタリシャフトの軸部外周面が公転方向で当接する部分の法線ベクトルは、プラネタリシャフト公転軌道の径方向成分及び接線方向成分を共に含んでいることを特徴とする。
【0010】
ここで、リテーナは、支持部にてプラネタリシャフトの軸部を自転可能に支持している。このことにより複数のプラネタリシャフト同士を連結している。支持部の内面には、プラネタリシャフトの軸部外周面が公転方向で当接する部分が存在する。この部分での法線ベクトルはプラネタリシャフト公転軌道の径方向成分及び接線方向成分を共に含んでいる。
【0011】
したがってプラネタリシャフトは、公転時において支持部の内面に公転方向にて当接すると、その当接部分から当接力に対応する反力を受けることになる。当接部分での法線ベクトルはプラネタリシャフト公転軌道の径方向成分及び接線方向成分を共に含んでいることから、プラネタリシャフトが受ける反力についても公転軌道の径方向成分及び接線方向成分を有している。
【0012】
この内で径方向成分の反力は、プラネタリシャフトを、径方向の内側あるいは外側に押しつける力となる。径方向成分が内側へ向かう力である場合にはプラネタリシャフトはサンシャフトに押しつけられる。径方向成分が外側へ向かう力である場合にはプラネタリシャフトはナットに押しつけられることになる。
【0013】
このことによりプラネタリシャフトのねじやギヤは、サンシャフトあるいはナットのねじやギヤに対してクリアランスが存在していてもそれが解消され、サンシャフト側あるいはナット側に対して確実な噛み合い状態となる。こうしてプラネタリシャフトの姿勢が安定化することになる。
【0014】
このように、クリアランスが存在していてもそれを解消してプラネタリシャフトの姿勢を安定化でき、このことにより回転直動変換効率の低下を防止することができる。
請求項2に記載の遊星差動ねじ型回転直動変換機構では、請求項1に記載の遊星差動ねじ型回転直動変換機構において、前記複数のプラネタリシャフトには、前記サンシャフト及び前記ナットにおけるギヤに噛合するギヤが欠如したものと欠如していないものとの両者が存在することを特徴とする。
【0015】
このように複数のプラネタリシャフトにおいて一部にギヤが欠如したものが存在する構成とする場合がある。ギヤが欠如したものはナットが回転してもギヤ欠如部分では公転方向の駆動力を受けることが無く、逆にサンシャフト側から反公転方向のトルクを受けることになる。このことによりギヤが欠如していないプラネタリシャフトとの間でリテーナを介して、公転軌道上で押し合いあるいは引っ張り合う関係となる。
【0016】
このような力関係により、いずれのプラネタリシャフトも、その軸部は、リテーナの支持部の内面における当接部分で強い当接力を生じ、反力における径方向成分も大きくなる。したがって、プラネタリシャフトは、径方向内側のサンシャフトあるいは径方向外側のナットに強く押しつけられることになる。
【0017】
このことによりギヤが欠如していないプラネタリシャフトも、ギヤが欠如しているプラネタリシャフトも、いずれもサンシャフトあるいはナットに対してクリアランスを十分に解消することができ、確実な噛み合い状態となる。こうしてプラネタリシャフトの姿勢が安定化する。
【0018】
請求項3に記載の遊星差動ねじ型回転直動変換機構では、請求項2に記載の遊星差動ねじ型回転直動変換機構において、前記リテーナは、前記複数のプラネタリシャフトの全ての軸部に対応する支持部の内面にて、前記プラネタリシャフトの軸部外周面が公転方向で当接する部分での法線ベクトルが、プラネタリシャフト公転軌道の径方向成分及び接線方向成分を共に含んでいることを特徴とする。
【0019】
このことにより複数のプラネタリシャフトの全てについて、径方向内側のサンシャフトあるいは径方向外側のナットに強く押しつけられることになり、全てのプラネタリシャフトはナットあるいはサンシャフトに対してギヤ間やねじ間のクリアランスを十分に解消することができ、確実な噛み合い状態となる。こうして全てのプラネタリシャフトの姿勢が安定化することになる。
【0020】
請求項4に記載の遊星差動ねじ型回転直動変換機構では、請求項2に記載の遊星差動ねじ型回転直動変換機構において、前記リテーナは、前記ギヤが欠如したプラネタリシャフトの軸部に対応する支持部の内面にて、前記プラネタリシャフトの軸部外周面が公転方向で当接する部分での法線ベクトルがプラネタリシャフト公転軌道の径方向成分及び接線方向成分を共に含み、前記ギヤが欠如していないプラネタリシャフトの軸部に対応する支持部の内面にて、前記プラネタリシャフトの軸部外周面が公転方向で当接する部分での法線ベクトルがプラネタリシャフト公転軌道の径方向成分を有さないことを特徴とする。
【0021】
特にギヤが欠如したプラネタリシャフトでは、その欠如部分ではギヤ同士の噛み合いが形成されていないので、姿勢が不安定化しやすい。したがって特にギヤが欠如したプラネタリシャフトについて上述のごとく形成することにより、そのプラネタリシャフトは径方向内側のサンシャフトあるいは径方向外側のナットに強く押しつけられる。このことによりギヤが欠如したプラネタリシャフトはサンシャフトあるいはナットに対してクリアランスを十分に解消することができ、確実な噛み合い状態となる。こうして特に不安定化しやすいギヤが欠如したプラネタリシャフトの姿勢を安定化できる。
【0022】
請求項5に記載の遊星差動ねじ型回転直動変換機構では、請求項2〜4のいずれか一項に記載の遊星差動ねじ型回転直動変換機構において、前記ギヤが欠如していないプラネタリシャフトは軸方向中央にねじが形成され両端にそれぞれギヤが形成されたものであり、前記ギヤが欠如したプラネタリシャフトは軸方向中央にねじが形成され一方の端部のみにギヤが形成されたものであることを特徴とする。
【0023】
ギヤが欠如していないプラネタリシャフトについては、両端にそれぞれギヤが形成されているので、前述したごとく径方向内側のサンシャフトあるいは径方向外側のナットに強く押しつけられることにより、プラネタリシャフトはサンシャフトあるいはナットに対してクリアランスを十分に解消することができる。このことにより両端部でギヤの噛み合いが確実に行われ、プラネタリシャフトの姿勢が十分に安定化する。
【0024】
ギヤが欠如しているプラネタリシャフトについても、一方の端部にはギヤが形成されている。このようなプラネタリシャフトにおいても前述したごとく径方向内側のサンシャフトあるいは径方向外側のナットに強く押しつけられることにより、プラネタリシャフトはサンシャフトあるいはナットに対してクリアランスを十分に解消することができる。このことにより一方の端部のみにギヤが形成されたプラネタリシャフトにおいてもその姿勢が十分に安定化する。
【0025】
請求項6に記載の遊星差動ねじ型回転直動変換機構では、請求項2〜4のいずれか一項に記載の遊星差動ねじ型回転直動変換機構において、前記ギヤが欠如していないプラネタリシャフトは軸方向中央にねじが形成され両端にそれぞれギヤが形成されたものであり、前記ギヤが欠如したプラネタリシャフトは軸方向中央にねじが形成され両端にはギヤが形成されていないものであることを特徴とする。
【0026】
このようにギヤが欠如しているプラネタリシャフトが、両端のいずれにもギヤが形成されていないものであっても、前述したごとく径方向内側のサンシャフトあるいは径方向外側のナットに強く押しつけられることにより、プラネタリシャフトはサンシャフトあるいはナットに対してねじ間のクリアランスを十分に解消することができる。
【0027】
このことにより両端にギヤが存在するプラネタリシャフトも、両端のいずれにもギヤが存在しないプラネタリシャフトも共に、サンシャフトあるいはナットに対してクリアランスを十分に解消することができ、これらのプラネタリシャフトの姿勢を安定化できる。
【0028】
請求項7に記載の遊星差動ねじ型回転直動変換機構では、請求項1〜6のいずれか一項に記載の遊星差動ねじ型回転直動変換機構において、前記支持部の内面は軸直交方向断面が半円と半円とを2本の直線で接続した長円形であり、前記直線の一方又は両方に対応する内面が、前記プラネタリシャフトの軸部外周面が公転方向で当接する部分であることを特徴とする。
【0029】
このようにリテーナに設けた支持部は、その軸直交方向の断面を上述した長円形としても良い。この長円形の直線部分に対応する内面にプラネタリシャフトの軸部外周面を、公転方向で当接させることにより、公転軌道の径方向の反力をプラネタリシャフトに生じさせて、サンシャフトあるいはナットとの間のクリアランスを解消することができる。
【0030】
請求項8に記載の遊星差動ねじ型回転直動変換機構では、請求項1〜6のいずれか一項に記載の遊星差動ねじ型回転直動変換機構において、前記支持部の内面は軸直交方向断面が楕円形であり、楕円形の長径方向に沿った楕円弧の一方又は両方に対応する内面が、前記プラネタリシャフトの軸部外周面が公転方向で当接する部分であることを特徴とする。
【0031】
このようにリテーナに設けた支持部は、その軸直交方向の断面を上述した楕円形としても良い。この楕円弧に対応する内面にプラネタリシャフトの軸部外周面を、公転方向で当接させることにより、公転軌道の径方向の反力をプラネタリシャフトに生じさせて、サンシャフトあるいはナットとの間のクリアランスを解消することができる。
【0032】
請求項9に記載の遊星差動ねじ型回転直動変換機構では、請求項1〜6のいずれか一項に記載の遊星差動ねじ型回転直動変換機構において、前記支持部の内面は軸直交方向断面が円形であると共に前記プラネタリシャフトの軸部に対してプラネタリシャフト公転軌道の径方向へ偏心していることを特徴とする。
【0033】
このようにリテーナに設けた支持部は、その軸直交方向の断面を円形としても良い。この円形はプラネタリシャフトの軸部に対してプラネタリシャフト公転軌道の径方向へ偏心している。すなわちプラネタリシャフトの軸心の公転軌道が支持部の断面円形中心を通過しておらず、径方向内側あるいは径方向外側に断面円形がずれている状態である。
【0034】
このことによっても支持部の内面にてプラネタリシャフトの軸部外周面が公転方向で当接する部分での法線ベクトルを、プラネタリシャフト公転軌道の径方向成分及び接線方向成分を共に含んだものにできる。
【0035】
このような断面円形の支持部内面にプラネタリシャフトの軸部外周面を、公転方向で当接させることによっても、公転軌道の径方向の反力をプラネタリシャフトに生じさせて、サンシャフトあるいはナットとの間のクリアランスを解消することができる。特に支持部の内面が断面円形であるので加工が容易である。
【0036】
請求項10に記載のアクチュエータは、回転駆動源の回転を直線運動に変換して出力するアクチュエータであって、請求項1〜9のいずれか一項に記載の遊星差動ねじ型回転直動変換機構を備え、前記ナットを前記回転駆動源にて回転させることにより、前記サンシャフトに接続された部材を直線運動させることを特徴とする。
【0037】
プラネタリシャフトがサンシャフトやナットに対してクリアランスを有していてもそれを解消してプラネタリシャフトの姿勢を安定化できる遊星差動ねじ型回転直動変換機構を用いているので、回転直動変換効率の高いアクチュエータを構成することができる。
【0038】
請求項11に記載のアクチュエータでは、請求項10に記載のアクチュエータにおいて、前記サンシャフトに接続された部材は、軸方向にスライドさせることによりバルブ特性を変更する内燃機関の可変動弁機構に設けられたコントロールシャフトであることを特徴とする。
【0039】
このようなアクチュエータを内燃機関の可変動弁機構に用いることにより、バルブ特性を円滑に調節でき、内燃機関の燃費を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】実施の形態1の遊星差動ねじ型回転直動変換機構の斜視図。
【図2】実施の形態1の遊星差動ねじ型回転直動変換機構の部分破断斜視図。
【図3】実施の形態1の遊星差動ねじ型回転直動変換機構の部分破断斜視図。
【図4】(A),(B)実施の形態1の2種類のプラネタリシャフトとリテーナとの配置関係説明図。
【図5】(A),(B)実施の形態1のナットの断面構成説明図。
【図6】(A),(B)実施の形態1のサンシャフトの構成説明図。
【図7】(A)〜(C)実施の形態1のプラネタリシャフトの構成説明図。
【図8】実施の形態1のリテーナの正面図。
【図9】実施の形態1のリテーナとプラネタリシャフトの支持軸との関係を示す説明図。
【図10】実施の形態1の遊星差動ねじ型回転直動変換機構の諸元説明図。
【図11】実施の形態1のリテーナの支持孔内面における支持軸当接位置での法線ベクトルの説明図。
【図12】実施の形態1の遊星差動ねじ型回転直動変換機構においてナットの回転開始時における回転入力と直動出力間での変換効率の実測例を示すグラフ。
【図13】実施の形態2のリテーナの正面図。
【図14】実施の形態2のリテーナとプラネタリシャフトの支持軸との関係を示す説明図。
【図15】実施の形態2のリテーナの支持孔内面における支持軸当接位置での法線ベクトルの説明図。
【図16】実施の形態3のリテーナの正面図。
【図17】実施の形態3の別例のリテーナの正面図。
【図18】実施の形態3のリテーナとプラネタリシャフトの支持軸との関係を示す説明図。
【図19】実施の形態3の別例のリテーナとプラネタリシャフトの支持軸との関係を示す説明図。
【図20】実施の形態3のリテーナの支持孔内面における支持軸当接位置での法線ベクトルの説明図。
【図21】実施の形態3の別例のリテーナの支持孔内面における支持軸当接位置での法線ベクトルの説明図。
【図22】実施の形態4の遊星差動ねじ型回転直動変換機構の部分破断斜視図。
【図23】(A),(B)実施の形態4のプラネタリシャフトの構成説明図。
【図24】実施の形態4の2種類のプラネタリシャフトとリテーナとの配置関係説明図。
【図25】(A),(B)実施の形態4の2種類のプラネタリシャフトとリテーナとの配置関係説明図。
【図26】実施の形態5のリテーナとプラネタリシャフトの支持軸との関係を示す説明図。
【図27】実施の形態5の別例のリテーナとプラネタリシャフトの支持軸との関係を示す説明図。
【図28】実施の形態6のリテーナとプラネタリシャフトの支持軸との関係を示す説明図。
【図29】実施の形態6の別例のリテーナとプラネタリシャフトの支持軸との関係を示す説明図。
【図30】リテーナの支持孔の別例を示す構成説明図。
【図31】リテーナの支持孔の別例を示す構成説明図。
【図32】リテーナの支持孔の別例を示す構成説明図。
【図33】リテーナの支持孔の別例を示す構成説明図。
【図34】リテーナの支持孔の別例を示す構成説明図。
【図35】リテーナの支持孔の別例を示す構成説明図。
【図36】リテーナの支持孔の別例を示す構成説明図。
【図37】リテーナの支持孔の別例を示す構成説明図。
【図38】リテーナの支持孔の別例を示す構成説明図。
【図39】リテーナの支持孔の別例を示す構成説明図。
【発明を実施するための形態】
【0041】
[実施の形態1]
〈構成〉図1〜3は上述した発明が適用された遊星差動ねじ型回転直動変換機構2を表している。この遊星差動ねじ型回転直動変換機構2は、内燃機関の可変動弁機構に用いられるアクチュエータに組み込まれるものである。
【0042】
遊星差動ねじ型回転直動変換機構2は、ナット4、サンシャフト6、及び複数(ここでは6本)のプラネタリシャフト8,10を主体として構成されている。ナット4内の空間にはサンシャフト6が収納され、ナット4とサンシャフト6との間の公転軌道空間に6本のプラネタリシャフト8,10が配置されている。
【0043】
ナット4の前面側(図1:FR)は前面カラー12が取り付けられ、この前面カラー12の中央口からサンシャフト6の先端部6aが突出している。ナット4の背面側(図1:RR)は背面カラー14により密閉状態にて閉塞されている。尚、図3では前面カラー12及び背面カラー14を外して示している。
【0044】
ナット4とサンシャフト6との間に配置された6本のプラネタリシャフト8,10は、2種類存在する。この6本のプラネタリシャフト8,10は、一方の種類の3本のプラネタリシャフト8が公転軌道空間内にて均等の位相間隔(120°)にて配列され、更に他方の種類の3本のプラネタリシャフト10についても均等の位相間隔(120°)にて配列されている。
【0045】
2種類のプラネタリシャフト8,10は、図4に示したごとく40°の間隔に近接したペアが形成されており、この40°間隔の2種類のプラネタリシャフト8,10のペアが公転軌道空間に均等の位相間隔(120°)にて配列された状態となっている。
【0046】
これら6本のプラネタリシャフト8,10は、背面側にてリテーナ16により自転可能に支持された状態で連結されて、前述した各位相間隔を維持している。尚、図4の(A)はプラネタリシャフト8,10とリテーナ16との関係を示す斜視図、(B)は背面側から見た図である。
【0047】
図5の(A)にナット4の断面を示す。ナット本体4cは円筒形であり、内周面に雌ねじ状のナットねじ4dを形成している。図5の(B)に示すごとくナットねじ4dの前面側には前面側リングギヤ4eが嵌合され、背面側には背面側リングギヤ4fが嵌合されている。
【0048】
図6の(A)にサンシャフト6を示す。サンシャフト6において、前述した先端部6aには内燃機関に設けられているコントロールシャフトに接続する接続部6bと、内燃機関に固定されるアクチュエータハウジングのストレートスプラインに軸方向摺動可能に噛み合うストレートスプライン部6cとが設けられている。尚、上記コントロールシャフトは、軸方向にスライドさせることによりバルブ特性を変更する内燃機関の可変動弁機構の部材である。
【0049】
そしてナット4の内部空間に配置される部分には、サンねじ6dを中心に、前面側と背面側にそれぞれサンギヤ6e,6fが形成されている。尚、図6の(B)に示すごとく、背面側のサンギヤ6fはサンシャフト本体6gとは別個に形成されたものであり、サンシャフト本体6gにサンギヤ6fを嵌合することでサンシャフト6として一体化されている。
【0050】
プラネタリシャフト8,10は図7に示すごとくである。図7の(A)は駆動側プラネタリシャフト8であり、前面側から前面プラネタリギヤ8a、プラネタリねじ8b及び背面プラネタリギヤ8cを主体として構成されている。
【0051】
前面プラネタリギヤ8aは、図7の(B)に示すごとくプラネタリねじ8b、前面軸部8d及び支持軸8eとは一体化されている。この一体化されたものが従動側プラネタリシャフト10に相当する。
【0052】
このような従動側プラネタリシャフト10において、その背面側にある支持軸8eを、図7の(C)に断面で示す背面プラネタリギヤ8cの軸受孔8fに挿入して、回転可能に支持することにより、図7の(A)に示した駆動側プラネタリシャフト8が形成される。
【0053】
ここで図2〜4に示したごとくプラネタリシャフト8,10を連結しているリテーナ16について説明する。
図8に示すごとくリテーナ16は、プラネタリシャフト8,10の数と配置に対応して支持部に相当する6つの支持孔16a,16bを有し、この支持孔16a,16bにてプラネタリシャフト8,10を自転可能に支持している。
【0054】
図8は背面側からリテーナ16を見た図である。このリテーナ16がプラネタリシャフト8,10を支持した状態を図9に示す。ここで支持孔16a,16bの一方の駆動側支持孔16aは駆動側プラネタリシャフト8の支持軸8eを支持し、他方の従動側支持孔16bは従動側プラネタリシャフト10の支持軸8eを支持する。
【0055】
ここで各支持孔16a,16bの軸直交方向断面形状は、図8,9に示されているごとく、いずれも2つの半円Lc1,Lc2,Hc1,Hc2を平行な直線Ls1,Ls2,Hs1,Hs2で接続した形状となっている。
【0056】
一方の駆動側支持孔16aについては、外周側の半円Hc1と内周側の半円Hc2とを、2つの直線Hs1,Hs2とで接続している。ただし外周側の半円Hc1は、内周側の半円Hc2に対して反時計回りに位相がずれており、このことにより2つの直線Hs1,Hs2は外周に向かって反時計回り方向に傾斜している。したがって駆動側支持孔16aにおいて2つの直線Hs1,Hs2に対応する平面状の内面は、外側に向かって反時計回り方向に傾斜した面を形成している。
【0057】
他方の従動側支持孔16bについては、外周側の半円Lc1と内周側の半円Lc2とを、2つの直線Ls1,Ls2とで接続している。ただし外周側の半円Lc1は、内周側の半円Lc2に対して時計回りに位相がずれており、このことにより2つの直線Ls1,Ls2は外周に向かって時計回り方向に傾斜している。したがって従動側支持孔16bにおいて2つの直線Ls1,Ls2に対応する平面状の内面は、外側に向かって時計回り方向に傾斜した面を形成している。
【0058】
プラネタリシャフト8,10の支持軸8eの公転軌道Reは、図8,9に一点鎖線にて示すごとく、各支持孔16a,16bにおいて外側の半円の中心点Hp,Lpを通過している。
〈作用〉ここで遊星差動ねじ型回転直動変換機構2は車両用内燃機関において、吸気バルブのバルブリフト量可変機構に適用されており、前述したごとくサンシャフト6は、先端部6aにおいてバルブリフト量可変機構のコントロールシャフトに接続されている。この接続状態では、コントロールシャフトから、サンシャフト6は常にナット4内から前面側へ引き出される力を受けている。
【0059】
ナット4はその外周に設けられた電動モータ(回転駆動源に相当)により回転駆動される。ここでサンシャフト6、プラネタリシャフト8,10及びナット4の諸元は図10に示すごとくである。
【0060】
この構成において、サンシャフト6には、バルブリフト量可変機構のコントロールシャフトから前面側に引き出される力が与えられることにより、図9に示した背面側から見た状態では、従動側プラネタリシャフト10の支持軸8eは、サンねじ6d側からプラネタリねじ8bを介して常に反時計回転方向のトルクを受けている。
【0061】
駆動側プラネタリシャフト8についてもサンねじ6dからプラネタリねじ8bを介して反時計回転方向のトルクを受けることは同じである。しかし、駆動側プラネタリシャフト8には支持軸8eに背面プラネタリギヤ8cが配置されており、この背面プラネタリギヤ8cは背面側リングギヤ4f及び背面側サンギヤ6fに噛合することで、サンねじ6dからのトルクに対抗している。
【0062】
したがって、駆動側プラネタリシャフト8の支持軸8eは、リテーナ16を介して従動側プラネタリシャフト10の支持軸8eが反時計回転方向のトルクにより反時計回りに位相がずれるのを阻止している。
【0063】
この力関係により、従動側プラネタリシャフト10の支持軸8eは、反時計回転方向のトルクにより、従動側支持孔16bに対して公転軌道方向の反時計回り側の内面に当接力Fbにて当接する。
【0064】
そして駆動側プラネタリシャフト8の支持軸8eはリテーナ16を介して受ける従動側プラネタリシャフト10の当接力Fbにより、駆動側支持孔16aに対して公転軌道方向の時計回り側の内面に当接力Faにて当接する。
【0065】
いずれのプラネタリシャフト8,10も、支持軸8eの外径は外周側の半円Hc1,Lc1と同径であり、いずれの支持軸8eの中心も、その公転軌道Reは、外周側の半円Hc1,Lc1の中心点Hp,Lpを通過する配置状態となっている。
【0066】
このため従動側プラネタリシャフト10の支持軸8eによる当接力Fbは、従動側支持孔16bの内面において、内周側に時計回転方向に傾いている直線Ls1に相当する平面状内面に、支持軸8eの外周面が公転軌道方向で当接することにより生じている。直線Ls1に相当する平面状内面は、内周側に時計回転方向に傾いているため、その法線ベクトルVLは図11に示すごとくプラネタリシャフト公転軌道Reの径方向成分VL1(ここでは内周側に向かう成分)及び接線方向成分VL2を共に含んでいる。したがってこのような平面状内面に公転軌道方向で当接することによりにより、図9に示したごとくリテーナ16の内周側に向かう力Fiが従動側プラネタリシャフト10の支持軸8eに生じる。
【0067】
同様に駆動側プラネタリシャフト8の支持軸8eによる当接力Faは、駆動側支持孔16aの内面において、内周側に反時計回転方向に傾いている直線Hs1に相当する平面状内面に、支持軸8eの外周面が公転軌道方向で当接することにより生じている。直線Hs1に相当する平面状内面は、内周側に反時計回転方向に傾いているため、その法線ベクトルVHはプラネタリシャフト公転軌道Reの径方向成分VH1(ここでは内周側に向かう成分)及び接線方向成分VH2を共に含んでいる。したがってこのような平面状内面に公転軌道方向で当接することにより、図9に示したごとくリテーナ16の内周側に向かう力Fjが駆動側プラネタリシャフト8の支持軸8eに生じる。
【0068】
このようにいずれのプラネタリシャフト8,10においても、背面側の支持軸8eがリテーナ16の内周側に向かう力Fi,Fjが生じることから、駆動側プラネタリシャフト8においては、特に背面プラネタリギヤ8cが背面側のサンギヤ6fに押しつけられ、プラネタリねじ8bがサンねじ6dに押しつけられる。従動側プラネタリシャフト10においては、特にプラネタリねじ8bがサンねじ6dに押しつけられる。
【0069】
このような構成にて、ナット4が、外周側に取り付けられた電動モータにより回転される。例えば、バルブリフト量可変機構のコントロールシャフトからの引き出し力に抗して、サンシャフト6をナット4内に引き込む場合、すなわちバルブリフト量を増加させる場合には、背面側から見た図8,9における時計回りにナット4を回転する。
【0070】
3本の駆動側プラネタリシャフト8は、2つのプラネタリギヤ8a,8cとプラネタリねじ8bとで、ナット4の2つのリングギヤ4e,4fとナットねじ4dとに噛合しているため、ナット4の回転により、ナット4とサンシャフト6との間の公転軌道空間にて自転しつつ公転する。同様に3本の従動側プラネタリシャフト10は、1つのプラネタリギヤ8aとプラネタリねじ8bとがナット4の1つのリングギヤ4eとナットねじ4dとに噛合しているため、ナット4の回転により公転軌道空間にて自転しつつ公転する。
【0071】
サンシャフト6は、サンギヤ6e,6f及びサンねじ6dによりプラネタリシャフト8,10に噛合している。そしてサンシャフト6はストレートスプライン部6cにより回転が阻止されている。
【0072】
したがってプラネタリシャフト8,10が、ナット4とサンシャフト6との間で自転しつつ公転することにより、サンシャフト6は、軸方向、この場合はサンシャフト6自身をナット4内に引き込む方向に移動する。
【0073】
コントロールシャフトからの引き出し力の方向へ、サンシャフト6を移動させる場合、すなわちナット4内からサンシャフト6を引き出すことでバルブリフト量を減少させる場合には、背面側から見た図8,9において反時計回りにナット4を回転する。
【0074】
この場合も、プラネタリシャフト8,10は自転しつつ公転して、サンシャフト6を軸方向に移動させ、サンシャフト6をナット4内から突出させる。
このようにバルブリフト量可変機構のコントロールシャフトから伝達される引き出し力方向へサンシャフト6を移動させる場合においても、従動側プラネタリシャフト10は図8,9において常に反時計回りのトルクをサンシャフト6側から受けつつ反時計回りに回転する。駆動側プラネタリシャフト8についてもリテーナ16を介して従動側プラネタリシャフト10側から反時計回りのトルクを受けつつ反時計回りに戻す回転力をナット4側から与えられることになる。
【0075】
したがって、ナット4を回転させて、サンシャフト6をコントロールシャフトからの力に抗して移動させる場合も、コントロールシャフトからの力の方向へ移動させる場合も、従動側プラネタリシャフト10の支持軸8eは同方向の当接力Fbを生じ、駆動側プラネタリシャフト8の支持軸8eは同方向の当接力Faを生じる。
【0076】
このことによりナット4の停止時も、いずれの方向への回転時においても、常に内周方向への力Fi,Fjが6本のプラネタリシャフト8,10に生じていることになる。
図12にナット4の回転開始時における回転入力と直動出力間での変換効率の実測例を示す。図示左側が実施例、すなわち本実施の形態の遊星差動ねじ型回転直動変換機構2をアクチュエータに組み込んだ場合の変換効率の時間変化を示す。そして図示右側が比較例、すなわち従来の円形の支持孔により径方向の力が支持軸8eに生じないリテーナを用いた遊星差動ねじ型回転直動変換機構をアクチュエータに組み込んだ場合の変換効率の時間変化を示す。図12のグラフでは、実施例の方が変換効率が高く、かつ変換効率も安定している。
〈効果〉(1)プラネタリシャフト8,10の支持軸8eは、上述したごとくのメカニズムにより、リテーナ16の支持孔16a,16bの内面に対して公転軌道Re方向においてそれぞれ逆方向に当接している。当接部分である直線Ls1,Hs1に相当する内面での法線ベクトルVL,VHは、プラネタリシャフト公転軌道Reの径方向成分VL1,VH1(ここでは内周方向)及び接線方向成分VL2,VH2を共に含んでいる。
【0077】
したがってプラネタリシャフト8,10の各支持軸8eは内周方向への力Fj,Fiを与えられる。このことにより各プラネタリシャフト8,10は、径方向内側のサンシャフト6に押しつけられることになる。
【0078】
このようにして駆動側プラネタリシャフト8も従動側プラネタリシャフト10も、噛み合う相手方、ここでは特にサンシャフト6側との間にクリアランスが存在していても、そのクリアランスを解消して確実な噛合状態が形成される。このことによりプラネタリシャフト8,10の姿勢を安定化でき、このような遊星差動ねじ型回転直動変換機構2を用いたアクチュエータの回転直動変換効率の低下を防止することができる。
(2)特に駆動側プラネタリシャフト8の背面プラネタリギヤ8cは、支持軸8eに回転可能に支持されているため、背面プラネタリギヤ8cと支持軸8eとの間においてもクリアランスが生じる可能性がある。しかし遊星差動ねじ型回転直動変換機構2が、内燃機関におけるバルブリフト量可変機構のアクチュエータに組み込まれて配置されたことにより、前述したごとく内周方向への力Fjを常に発生する。このためサンシャフト6側とのクリアランスを解消して駆動側プラネタリシャフト8の姿勢を安定化することができる。
【0079】
更に従動側プラネタリシャフト10においては背面プラネタリギヤ8cが欠如していることにより、駆動側プラネタリシャフト8側よりも姿勢の不安定性が生じやすい。しかし前述したごとくアクチュエータに組み込まれたことで内周方向への力Fiを常に発生する。このためプラネタリねじ8bとサンねじ6dとの間でのクリアランスを解消してプラネタリシャフトの姿勢を安定化することができる。
(3)両端にプラネタリギヤ8a,8cが存在する駆動側プラネタリシャフト8については、前述したごとく背面プラネタリギヤ8cにおける姿勢安定化により前面プラネタリギヤ8aの姿勢も安定化する。このことにより両端部でサンギヤ6e,6fに対する噛み合いが確実に行われ、駆動側プラネタリシャフト8の姿勢を十分に安定化することができる。
【0080】
背面プラネタリギヤ8cが欠如している従動側プラネタリシャフト10についても、その欠如している端部におけるプラネタリねじ8bでの姿勢の安定化により、前面プラネタリギヤ8aの姿勢も安定化する。このことにより一端でサンねじ6dに対する噛み合い、他端でサンギヤ6eに対する噛み合いが確実に行われ、従動側プラネタリシャフト10の姿勢を十分に安定化することができる。
(4)外周側の半円Lc1,Hc1と内周側の半円Lc2,Hc2とを2本の直線Ls1,Ls2,Hs1,Hs2で接続した長円形を、軸直交方向断面の形状として、支持孔16a,16bを形成している。ここで直線Ls1,Ls2,Hs1,Hs2の内で、特に支持軸8eの外周面が公転軌道Re方向において当接する直線Ls1,Hs1に相当する平面状内面は、その法線ベクトルVL,VHがプラネタリシャフト公転軌道Reの径方向成分VL1,VH1及び接線方向成分VL2,VH2を共に含んでいる。このような簡易な形状の支持孔16a,16bにて内周方向への力Fi,Fjを、支持軸8eに対して生じさせることができる。
(5)本実施の形態の遊星差動ねじ型回転直動変換機構2が組み込まれたアクチュエータを利用して、吸気バルブのバルブリフト量可変機構を構成しているので、回転直動変換効率の低下が防止でき、エネルギー効率の高いアクチュエータとすることができる。このことによりバルブ特性、ここではバルブリフト量を円滑に調節でき、内燃機関の燃費を向上させることができる。
【0081】
[実施の形態2]
〈構成〉本実施の形態では、図13〜15に示すごとく、リテーナ116の支持孔116a,116bの配置状態が前記実施の形態1とは異なる。他の構成は前記実施の形態1と同じであり、同一の構成については同一の符号にて説明する。
【0082】
ここで支持孔116a,116bの軸直交方向断面形状は、外周側の半円Lc11,Hc11、内周側の半円Lc12,Hc12及びこれらを接続する直線Ls11,Ls12,Hs11,Hs12から形成される長円形である点については、前記実施の形態1の支持孔と同じである。
【0083】
ただし、この長円形の傾きは、前記実施の形態1とは逆であり、外周側の半円Lc11,Hc11が離れるように径方向に対して傾斜している。
このことにより駆動側プラネタリシャフト8の支持軸8eを支持する支持孔116aの2つの直線Hs11,Hs12は外周に向かって時計回り方向に傾斜している。すなわち駆動側支持孔116aにおいて2つの直線Hs11,Hs12に対応する平面状内面は、外側に向かって時計回り方向に傾斜した面を形成している。従動側プラネタリシャフト10の支持軸8eを支持する支持孔116bの2つの直線Ls11,Ls12は外周に向かって反時計回り方向に傾斜している。すなわち従動側支持孔116bにおいて2つの直線Ls11,Ls12に対応する平面状内面は、外側に向かって反時計回り方向に傾斜した面を形成している。
【0084】
そして更にプラネタリシャフト8,10の支持軸8eの公転軌道Reは、図13,14に一点鎖線にて示したごとく、外周側の半円Lc11,Hc11の中心点でなく、内周側の半円Lc12,Hc12の中心点Lq,Hqを通過している。
〈作用〉前記実施の形態1にて述べたごとく、従動側プラネタリシャフト10の支持軸8eは従動側支持孔116bに対して反時計回転方向のトルクにより公転軌道方向の反時計回り側の内面に当接力Fbにて当接する。
【0085】
そして駆動側プラネタリシャフト8の支持軸8eはリテーナ116を介して受ける従動側プラネタリシャフト10の当接力Fbにより、駆動側支持孔116aに対して公転軌道方向の時計回り側の内面に当接力Faにて当接する。
【0086】
いずれのプラネタリシャフト8,10も、支持軸8eの外径は内周側の半円Hc12,Lc12と同径であり、いずれの支持軸8eの中心も、その公転軌道Reは、内側の半円Hc12,Lc12の中心点Hq,Lqを通過する配置状態となっている。
【0087】
このため従動側プラネタリシャフト10の支持軸8eによる当接力Fbは、従動側支持孔116bの内面において、内周側に反時計回転方向に傾いている直線Ls11に相当する平面状内面に、支持軸8eの外周面が公転軌道方向で当接することにより生じている。直線Ls11に相当する平面状内面は、内周側に反時計回転方向に傾いているため、その法線ベクトルVLは図15に示すごとくプラネタリシャフト公転軌道Reの径方向成分VL11(ここでは外周側に向かう成分)及び接線方向成分VL12を共に含んでいる。したがってこのような平面状内面に公転軌道方向で当接することによりにより、図14に示したごとくリテーナ116の外周側に向かう力Fmが従動側プラネタリシャフト10の支持軸8eに生じる。
【0088】
同様に駆動側プラネタリシャフト8の支持軸8eによる当接力Faは、駆動側支持孔116aの内面において、内周側に時計回転方向に傾いている直線Hs11に相当する平面状内面に、支持軸8eの外周面が公転軌道方向で当接することにより生じている。直線Hs11に相当する平面状内面は、内周側に時計回転方向に傾いているため、その法線ベクトルVHはプラネタリシャフト公転軌道Reの径方向成分VH11(ここでは外周側に向かう成分)及び接線方向成分VH12を共に含んでいる。したがってこのような平面状内面に公転軌道方向で当接することにより、図14に示したごとくリテーナ116の外周側に向かう力Fnが駆動側プラネタリシャフト8の支持軸8eに生じる。
【0089】
このようにいずれのプラネタリシャフト8,10においても、背面側の支持軸8eがリテーナ116の外周側に向かう力Fm,Fnが生じることから、駆動側プラネタリシャフト8においては、特に背面プラネタリギヤ8cが背面側リングギヤ4f(図2,3)に押しつけられ、プラネタリねじ8bがナットねじ4d(図2,3)に押しつけられる。従動側プラネタリシャフト10においては、特にプラネタリねじ8bがナットねじ4dに押しつけられる。
【0090】
このような構成にて、ナット4を、外周側に取り付けられた電動モータにより回転することにより、3本の駆動側プラネタリシャフト8及び3本の従動側プラネタリシャフト10を、ナット4とサンシャフト6との間で公転軌道空間にて自転しつつ公転させる。このことによりナット4内にサンシャフト6を引き込んだり、ナット4内からサンシャフト6を突き出したりすることで、バルブリフト量可変機構のコントロールシャフトを軸方向に移動させる。
【0091】
コントロールシャフトをいずれの方向に軸移動させる場合にも、前記実施の形態1にて説明したごとく、バルブリフト量可変機構のコントロールシャフト側から伝達される引き出し力により、従動側プラネタリシャフト10は図13,14において常に反時計回りのトルクを受けつつ公転する。駆動側プラネタリシャフト8についてもリテーナ116を介して従動側プラネタリシャフト10側から反時計回りのトルクを受けつつ公転する。
【0092】
したがって、ナット4を回転させてサンシャフト6を、コントロールシャフトからの力に抗して移動させる場合も、コントロールシャフトからの力の方向に移動させる場合も、従動側プラネタリシャフト10の支持軸8eは当接力Fbを生じ、駆動側プラネタリシャフト8の支持軸8eは当接力Faを生じる。
【0093】
このことにより常に外周方向への力Fm,Fnが6本のプラネタリシャフト8,10に生じることになる。
〈効果〉(1)直線Ls11,Hs11に対応する平面に、プラネタリシャフト8,10の各支持軸8eが当接することにより生じる径方向の力Fm,Fnは、前記実施の形態1の場合とは逆に、外周側、すなわちナット4側に向けられる。
【0094】
この場合も背面プラネタリギヤ8cやプラネタリねじ8bが背面側リングギヤ4fやナットねじ4dに押しつけられることになり、プラネタリシャフト8,10の姿勢が安定化する。
【0095】
したがって前記実施の形態1と同様な効果を生じる。
[実施の形態3]
〈構成〉前記実施の形態1,2において、駆動側プラネタリシャフト8を支持するリテーナ16,116の駆動側支持孔16a,116aが長円形にされているが、図16〜21に示すごとく、本実施の形態のリテーナ216,316では、駆動側支持孔216a,316aは円形である。尚、図16,18,20については前記実施の形態1のリテーナ16において駆動側支持孔16aを円形にしたものに相当し、図17,19,21については前記実施の形態2のリテーナ116において駆動側支持孔116aを円形にしたものに相当する。従動側支持孔216b,316bについては前記各実施の形態と同一の形状及び配置である。
〈作用〉図16,18,20に示したリテーナ216においても、図17,19,21に示したリテーナ316においても、従動側プラネタリシャフト10の支持軸8eには、前記実施の形態1,2と同様に、従動側支持孔216b,316bの直線Ls21,Ls31に相当する内面により、当接力Fbに基づく径方向の力Fi,Fmを生じる。
【0096】
駆動側プラネタリシャフト8の支持軸8eを支持している駆動側支持孔216a,316aについては、円形の中心点Hxをプラネタリシャフト公転軌道Reが通過している。このため従動側プラネタリシャフト10の支持軸8eによりリテーナ216,316が図示反時計回りにトルクを受けた場合には、駆動側プラネタリシャフト8の支持軸8eの外周は当接点Hyに当接する。この当接点Hyにおける円接線は、プラネタリシャフト公転軌道Reに垂直である。すなわち当接点Hyにおける法線ベクトルはプラネタリシャフト公転軌道Reの径方向成分を有さない。このため駆動側プラネタリシャフト8の支持軸8eが、当接力Fbにより当接することにより生じる反力には径方向の成分が存在しない。
〈効果〉(1)従動側プラネタリシャフト10については、図16,18,20に示したリテーナ216では前記実施の形態1の効果を生じる。前記図17,19,21に示したリテーナ316では前記実施の形態2の効果を生じる。
【0097】
駆動側プラネタリシャフト8については、2つのリテーナ216,316のいずれを用いても径方向の力は生じない。しかし駆動側プラネタリシャフト8は両端にプラネタリギヤ8a,8cが存在することから、元々安定度は従動側プラネタリシャフト10側よりも高い。したがって安定度の低い従動側プラネタリシャフト10を安定化することにより、遊星差動ねじ型回転直動変換機構全体として回転直動変換効率の低下を防止することができる。
【0098】
[実施の形態4]
〈構成〉図22に示すごとく、本実施の形態の遊星差動ねじ型回転直動変換機構402では、2つのリテーナ416,417が組み込まれている。一方の背面側リテーナ416は前記実施の形態1のリテーナ16(図8)と同一形状であり、同一状態で配置されている。他方の前面側リテーナ417は、背面側リテーナ416と同一形状であるが、プラネタリシャフト408,410の前面軸部408d,410dをそれぞれ自転可能に支持している。
【0099】
駆動側プラネタリシャフト408は図23の(A)に示すごとく、前記実施の形態1の駆動側プラネタリシャフト8[図7の(A)]と同一形状であり、前面プラネタリギヤ408a、プラネタリねじ408b、背面プラネタリギヤ408c、前面軸部408d及び支持軸408eを備えている。
【0100】
従動側プラネタリシャフト410については、図23の(B)に示すごとく、前面プラネタリギヤは存在せず、前面側には円柱部410aを形成している。これ以外の部分である、前面軸部410d、プラネタリねじ410b及び支持軸410eについては、前記実施の形態1の従動側プラネタリシャフト10[図7の(B)]の各部と同じである。
【0101】
尚、ナット4及びサンシャフト6の構成は前記実施の形態1と同じである。
〈作用〉図24に示すごとく、全部で6本のプラネタリシャフト408,410は、背面側と前面側との両端側にて2つのリテーナ416,417にて自転可能に支持されて連結されている。
【0102】
図25の配置図に示すごとく、リテーナ416,417の駆動側支持孔416a,417aは前記実施の形態1の駆動側支持孔16aと同一形状であり、従動側支持孔416b,417bも前記実施の形態1の従動側支持孔16bと同一形状である。尚、図25の(A)は背面側から見た背面側リテーナ416に対する2種類のプラネタリシャフト408,410の配置関係を示し、(B)は前面側から見た前面側リテーナ417に対する2種類のプラネタリシャフト408,410の配置関係を示す。
【0103】
このような構成から、前記実施の形態1の作用において説明したごとく、内側に向かう径方向の力Fi,Fjは6本のプラネタリシャフト408,410の各両端に発生し、このことにより各プラネタリシャフト408,410は、一層確実にサンシャフト6側に押しつけられる。
〈効果〉(1)各プラネタリシャフト408,410は、一層確実にサンシャフト6側に押しつけられることから、遊星差動ねじ型回転直動変換機構402の全てのプラネタリシャフト408,410が高度に安定化し、前記実施の形態1に述べた効果をより高めることができる。
【0104】
[実施の形態5]
〈構成〉前述した各プラネタリシャフトを自転可能に軸支するリテーナの支持孔の他の形状を図26,27に示す。
【0105】
図26のリテーナ516は、支持孔516a,516bの軸直交方向断面を楕円形としている。駆動側支持孔516a側の楕円形と従動側支持孔516b側の楕円形とは、リテーナ516の径方向に対して、長軸がリテーナ516の外側で離れ、内側で近づくようにそれぞれ傾けられている。
【0106】
図27のリテーナ616についても支持孔616a,616bの軸直交方向断面を楕円形としている。ただし駆動側支持孔616a側の楕円形と従動側支持孔616b側の楕円形とは、リテーナ616の径方向に対して、長軸がリテーナ616の外側で近づき、内側で離れるようにそれぞれ傾けられている。
〈作用〉図26の構成では、従動側プラネタリシャフト10の支持軸8eが、従動側支持孔516bの内周面にて曲率が小さい側の内面に対して当接する。すなわち楕円形の長径方向に沿った楕円弧の一方に対応する内面が、従動側プラネタリシャフト10の支持軸8eの外周面が公転方向で当接する部分Ls51となる。
【0107】
この当接部分Ls51での法線ベクトルは、破線の矢線にて示すごとくプラネタリシャフト公転軌道Reの径方向成分及び接線方向成分を共に含んでいるので、当接力Fbは、当接点で実線の矢線のごとく分力して、従動側プラネタリシャフト10の支持軸8eには、径方向外側への力Fqが生じる。
【0108】
駆動側支持孔516aに当接する駆動側プラネタリシャフト8の支持軸8eについては前記実施の形態1にて説明したごとくリテーナ516を介して当接力Faが生じ、駆動側支持孔516aの内周面にて曲率が小さい側の内面に対して当接する。すなわち楕円形の長径方向に沿った楕円弧の一方に対応する内面が、駆動側プラネタリシャフト8の支持軸8eの外周面が公転方向で当接する部分Hs51となる。
【0109】
この当接部分Hs51での法線ベクトルは、破線の矢線にて示すごとくプラネタリシャフト公転軌道Reの径方向成分及び接線方向成分を共に含んでいるので、当接力Faは、当接点で実線の矢線のごとく分力して、駆動側プラネタリシャフト8の支持軸8eには、径方向外側への力Fpが生じる。
【0110】
図27の構成では、当接する部分Ls61,Hs61での法線ベクトルは、プラネタリシャフト公転軌道Reの径方向成分及び接線方向成分を共に含んでいるが、径方向成分は内側を向いている。したがって、従動側プラネタリシャフト10の支持軸8eには径方向内側への力Frが生じ、同様に駆動側プラネタリシャフト8の支持軸8eについても径方向内側への力Fsが生じる。
〈効果〉(1)このように図26のごとく楕円形の支持孔516a,516bであっても、前記実施の形態2の効果を生じる。図27のごとく楕円形の支持孔616a,616bであっても、前記実施の形態1の効果を生じる。
【0111】
[実施の形態6]
〈構成〉前述した各プラネタリシャフトを自転可能に軸支するリテーナの支持孔の他の形状を図28,29に示す。
【0112】
図28,29のリテーナ716,816は支持孔716a,716b,816a,816bを円形としている。ただし共にプラネタリシャフト8,10の支持軸8eとは偏心状態にある。
【0113】
図28においては、駆動側プラネタリシャフト8の支持軸8eの中心軸位置8pは駆動側支持孔716aの中心軸位置716pとはずらされている。ここでは支持軸8eの中心軸位置8pに対して駆動側支持孔716aの中心軸位置716pは、径方向外側及び反時計回り方向へずらされている。従動側プラネタリシャフト10の支持軸8eの中心軸位置10pは従動側支持孔716bの中心軸位置716qとはずらされている。ここでは支持軸8eの中心軸位置10pに対して従動側支持孔716bの中心軸位置716qは径方向外側及び時計回り方向へずらされている。
【0114】
図29においては、駆動側プラネタリシャフト8の支持軸8eの中心軸位置8pは駆動側支持孔816aの中心軸位置816pとはずらされている。ここでは支持軸8eの中心軸位置8pに対して駆動側支持孔816aの中心軸位置816pは、径方向内側及び反時計回り方向へずらされている。従動側プラネタリシャフト10の支持軸8eの中心軸位置10pは従動側支持孔816bの中心軸位置816qとはずらされている。ここでは支持軸8eの中心軸位置10pに対して従動側支持孔816bの中心軸位置816qは、径方向内側及び時計回り方向へずらされている。
〈作用〉図28の構成では、上述のごとく偏心状態とされていることにより、従動側プラネタリシャフト10の支持軸8eが従動側支持孔716bの内周面において当接する部分Ls71での法線ベクトルは、破線の矢線にて示すごとくプラネタリシャフト公転軌道Reの径方向成分及び接線方向成分を共に含んでいる。したがって、当接力Fbは、当接点で分力して、従動側プラネタリシャフト10の支持軸8eには、実線の矢線のごとく径方向外側への力Ftを生じる。
【0115】
駆動側支持孔716aに当接する駆動側プラネタリシャフト8の支持軸8eについては、駆動側支持孔716aの内周面にて当接する部分Hs71での法線ベクトルは、破線の矢線にて示すごとくプラネタリシャフト公転軌道Reの径方向成分及び接線方向成分を共に含んでいる。したがって、当接力Faは、当接点で分力して、駆動側プラネタリシャフト8の支持軸8eには、実線の矢線のごとく径方向外側への力Fuを生じる。
【0116】
図29の構成では、上述のごとく偏心状態とされていることにより、従動側プラネタリシャフト10の支持軸8eが従動側支持孔816bの内周面にて当接する部分Ls81での法線ベクトルは、破線の矢線にて示すごとくプラネタリシャフト公転軌道Reの径方向成分及び接線方向成分を共に含んでいる。したがって、当接力Fbは、当接点で分力して、従動側プラネタリシャフト10の支持軸8eには、実線の矢線のごとく径方向内側への力Fvが生じる。
【0117】
駆動側支持孔816aに当接する駆動側プラネタリシャフト8の支持軸8eについては、駆動側支持孔816aの内周面にて当接する部分Hs81での法線ベクトルは、破線の矢線にて示すごとくプラネタリシャフト公転軌道Reの径方向成分及び接線方向成分を共に含んでいる。したがって、当接力Faは、当接点で分力して、駆動側プラネタリシャフト8の支持軸8eには、実線の矢線のごとく径方向内側への力Fwが生じる。
〈効果〉(1)このように円形の支持孔716a,716b,816a,816bであっても、図28の構成では前記実施の形態2の効果を生じ、図29の構成では前記実施の形態1の効果を生じる。
【0118】
[その他の実施の形態]
・前記実施の形態4(図22〜25)において、各リテーナ416,417は、前記実施の形態1のリテーナ16と同一形状の支持孔であったが、各リテーナ416,417について前記実施の形態2のリテーナ116と同一形状の支持孔とすることにより、6本のプラネタリシャフト408,410をナット4側に押しつけることで安定化しても良い。
【0119】
更に各リテーナ416,417は、前記実施の形態3,5,6のリテーナと同一形状の支持孔としても良い。 更に後述する図30〜39のリテーナと同一形状の支持孔としても良い。
【0120】
・前記実施の形態6では円形の支持孔716a,716b,816a,816bの中心軸位置716p,716q,816p,816qは、支持軸8eの中心軸位置8p,10pに対して、径方向のみでなく周方向にもずらされていた。径方向へずれていれば、周方向にはずれていなくても、支持軸8eに対してリテーナの内側あるいは外側へ向かう力を生じさせることができる。したがって内側あるいは外側への径方向のずれのみが存在するように円形の支持孔を形成しても良い。
【0121】
・前記各実施の形態では、駆動側プラネタリシャフト8に対する支持孔と従動側プラネタリシャフト10に対する支持孔とは共に、径方向において同方向の力を、支持軸8eに与えるものであった。これ以外に駆動側プラネタリシャフト8と従動側プラネタリシャフト10とで、当接により支持軸8eに対して径方向に生じさせる力を逆方向としても良い。
【0122】
例えば図30に示すリテーナ902の例では前記実施の形態1のリテーナ16(図8,11)の駆動側支持孔16aの代わりに、前記実施の形態2のリテーナ116(図13,15)における駆動側支持孔116aを適用した例である。したがって従動側支持孔16bにて従動側プラネタリシャフト10の支持軸8eに生じる径方向の力は内側となり、駆動側支持孔116aにて駆動側プラネタリシャフト8の支持軸8eに生じる径方向の力は外側となる。
【0123】
図31に示すリテーナ904の例では前記実施の形態1のリテーナ16(図8,11)の従動側支持孔16bの代わりに、前記実施の形態2のリテーナ116(図13,15)における従動側支持孔116bを適用した例である。したがって従動側支持孔116bにて従動側プラネタリシャフト10の支持軸8eに生じる径方向の力は外側となり、駆動側支持孔16aにて駆動側プラネタリシャフト8の支持軸8eに生じる径方向の力は内側となる。
【0124】
図32に示すリテーナ906の例では前記実施の形態5のリテーナ516(図26)の駆動側支持孔516aの代わりに、同じく前記実施の形態5のリテーナ616(図27)における駆動側支持孔616aを適用した例である。したがって従動側支持孔516bにて従動側プラネタリシャフト10の支持軸8eに生じる径方向の力は外側となり、駆動側支持孔616aにて駆動側プラネタリシャフト8の支持軸8eに生じる径方向の力は内側となる。
【0125】
図33に示すリテーナ908の例では前記実施の形態5のリテーナ516(図26)の従動側支持孔516bの代わりに、同じく前記実施の形態5のリテーナ616(図27)における従動側支持孔616bを適用した例である。したがって従動側支持孔616bにて従動側プラネタリシャフト10の支持軸8eに生じる径方向の力は内側となり、駆動側支持孔516aにて駆動側プラネタリシャフト8の支持軸8eに生じる径方向の力は外側となる。
【0126】
図34に示すリテーナ910の例では前記実施の形態6のリテーナ716(図28)の駆動側支持孔716aの代わりに、同じく前記実施の形態6のリテーナ816(図29)における駆動側支持孔816aを適用した例である。したがって従動側支持孔716bにて従動側プラネタリシャフト10の支持軸8eに生じる径方向の力は外側となり、駆動側支持孔816aにて駆動側プラネタリシャフト8の支持軸8eに生じる径方向の力は内側となる。
【0127】
図35に示すリテーナ912の例では前記実施の形態6のリテーナ716(図28)の従動側支持孔716bの代わりに、同じく前記実施の形態6のリテーナ816(図29)における従動側支持孔816bを適用した例である。したがって従動側支持孔816bにて従動側プラネタリシャフト10の支持軸8eに生じる径方向の力は内側となり、駆動側支持孔716aにて駆動側プラネタリシャフト8の支持軸8eに生じる径方向の力は外側となる。
【0128】
・前記実施の形態1〜6及び図30〜35の例では、内燃機関側の可変動弁機構側との力関係から、プラネタリシャフト8,10の支持軸8eの当接は、公転軌道Reにおいて時計回り方向あるいは反時計回り方向の一方向であった。遊星差動ねじ型回転直動変換機構を適用するアクチュエータの用途によっては、当接方向は、時計回りあるいは反時計回りの一方向に限らず両方が生じる場合がある。このような場合には図36,37のリテーナ1016,1116に示すごとくの支持孔1016a,1016b,1116a,1116bを採用する。これら支持孔1016a,1016b,1116a,1116bは、対向して存在する2つの直線Ls111,Ls112,Hs111,Hs112,Ls121,Ls122,Hs121,Hs122に相当する2つの内面を形成している。これらの内面は、それぞれ支持軸8eの外周面が公転方向で当接する部分の法線ベクトルが、公転軌道Reの径方向成分及び接線方向成分を共に含んでいる。
【0129】
このことにより支持軸8eの当接が、時計回りと反時計回りとの両方が生じる場合にも対処でき、いずれの方向に当接しても支持軸8eをサンシャフト側あるいはナット側へ押しつけることができる。このことにより当接がいずれの方向であってもプラネタリシャフト8,10の姿勢を安定化でき、回転直動変換効率の低下を防止することができる。
【0130】
・前記各実施の形態ではリテーナの支持孔の軸直交方向断面は、長円形、楕円形、円形であったが、プラネタリシャフトの軸部外周面が公転方向で当接する部分の法線ベクトルがプラネタリシャフト公転軌道の径方向成分及び接線方向成分を共に含んでいるものであれば、他の断面形状でも良い。例えば図38,39のリテーナ1216,1316に示すごとく、支持孔1216a,1216b,1316a,1316bの軸直交方向断面を、略三角形状としても良い。
【0131】
図38のリテーナ1216の例では、略三角形状の支持孔1216a,1216bのそれぞれの二辺Ls211,Ls221,Hs211,Hs221に相当する内面が、支持軸8eが公転軌道Reにて時計回りあるいは反時計回りのいずれの方向に当接しても、支持軸8eは径方向外側へ押しつけられる。すなわちナット側に押しつけられて、プラネタリシャフト8,10の姿勢を安定化して回転直動変換効率の低下を防止することができる。
【0132】
図39のリテーナ1316の例では、略三角形状の支持孔1316a,1316bのそれぞれの二辺Ls311,Ls321,Hs311,Hs321に相当する内面により、支持軸8eが公転軌道Reにて時計回りあるいは反時計回りのいずれの方向に当接しても、支持軸8eは径方向内側へ押しつけられる。すなわちサンシャフト側に押しつけられて、プラネタリシャフト8,10の姿勢を安定化して回転直動変換効率の低下を防止することができる。
【符号の説明】
【0133】
2…遊星差動ねじ型回転直動変換機構、4…ナット、4c…ナット本体、4e,4f…リングギヤ、6…サンシャフト、6a…先端部、6b…接続部、6c…ストレートスプライン部、6e,6f…サンギヤ、6g…サンシャフト本体、8…駆動側プラネタリシャフト、8a…前面プラネタリギヤ、8b…プラネタリねじ、8c…背面プラネタリギヤ、8d…前面軸部、8e…支持軸、8f…軸受孔、8p…中心軸位置、10…従動側プラネタリシャフト、10p…中心軸位置、12…前面カラー、14…背面カラー、16…リテーナ、16a…駆動側支持孔、16b…従動側支持孔、116…リテーナ、116a…駆動側支持孔、116b…従動側支持孔、216,316…リテーナ、216a,316a…駆動側支持孔、216b,316b…従動側支持孔、402…遊星差動ねじ型回転直動変換機構、408…駆動側プラネタリシャフト、408a…前面プラネタリギヤ、408c…背面プラネタリギヤ、408d…前面軸部、408e…支持軸、410…従動側プラネタリシャフト、410a…円柱部、410d…前面軸部、410e…支持軸、416…背面側リテーナ、417…前面側リテーナ、416a,417a…駆動側支持孔、416b,417b…従動側支持孔、516…リテーナ、516a…駆動側支持孔、516b…従動側支持孔、616…リテーナ、616a…駆動側支持孔、616b…従動側支持孔、716…リテーナ、716a…駆動側支持孔、716b…従動側支持孔、716p,716q…中心軸位置、816…リテーナ、816a…駆動側支持孔、816b…従動側支持孔、816p,816q…中心軸位置、902,904,906,908,910,912…リテーナ、1016,1116…リテーナ、1016a,1016b,1116a,1116b…支持孔、1216,1316…リテーナ、1216a,1216b,1316a,1316b…支持孔、Fa,Fb…当接力、Fi,Fj,Fm,Fn,Fp,Fq,Fr,Fs,Ft,Fu,Fv,Fw…径方向の力、Re…プラネタリシャフト公転軌道、VL,VH…法線ベクトル。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
サンシャフト、このサンシャフトを内周側に収納したナット、及びサンシャフトとナットとの間の公転軌道空間に配置された複数のプラネタリシャフトを備え、プラネタリシャフトとサンシャフトとの間、及びプラネタリシャフトとナットとの間でねじによる噛合とギヤによる噛合とを形成して、ナットの回転駆動に伴うプラネタリシャフト公転時のねじ間の差動によりナットとサンシャフトとの間で回転直動間の変換を行う遊星差動ねじ型回転直動変換機構であって、
前記複数のプラネタリシャフトの軸部を支持部にて自転可能に支持することにより前記複数のプラネタリシャフト同士を連結するリテーナが設けられると共に、
前記リテーナの支持部の内面にて、前記プラネタリシャフトの軸部外周面が公転方向で当接する部分の法線ベクトルは、プラネタリシャフト公転軌道の径方向成分及び接線方向成分を共に含んでいることを特徴とする遊星差動ねじ型回転直動変換機構。
【請求項2】
請求項1に記載の遊星差動ねじ型回転直動変換機構において、前記複数のプラネタリシャフトには、前記サンシャフト及び前記ナットにおけるギヤに噛合するギヤが欠如したものと欠如していないものとの両者が存在することを特徴とする遊星差動ねじ型回転直動変換機構。
【請求項3】
請求項2に記載の遊星差動ねじ型回転直動変換機構において、前記リテーナは、前記複数のプラネタリシャフトの全ての軸部に対応する支持部の内面にて、前記プラネタリシャフトの軸部外周面が公転方向で当接する部分での法線ベクトルが、プラネタリシャフト公転軌道の径方向成分及び接線方向成分を共に含んでいることを特徴とする遊星差動ねじ型回転直動変換機構。
【請求項4】
請求項2に記載の遊星差動ねじ型回転直動変換機構において、前記リテーナは、前記ギヤが欠如したプラネタリシャフトの軸部に対応する支持部の内面にて、前記プラネタリシャフトの軸部外周面が公転方向で当接する部分での法線ベクトルがプラネタリシャフト公転軌道の径方向成分及び接線方向成分を共に含み、前記ギヤが欠如していないプラネタリシャフトの軸部に対応する支持部の内面にて、前記プラネタリシャフトの軸部外周面が公転方向で当接する部分での法線ベクトルがプラネタリシャフト公転軌道の径方向成分を有さないことを特徴とする遊星差動ねじ型回転直動変換機構。
【請求項5】
請求項2〜4のいずれか一項に記載の遊星差動ねじ型回転直動変換機構において、前記ギヤが欠如していないプラネタリシャフトは軸方向中央にねじが形成され両端にそれぞれギヤが形成されたものであり、前記ギヤが欠如したプラネタリシャフトは軸方向中央にねじが形成され一方の端部のみにギヤが形成されたものであることを特徴とする遊星差動ねじ型回転直動変換機構。
【請求項6】
請求項2〜4のいずれか一項に記載の遊星差動ねじ型回転直動変換機構において、前記ギヤが欠如していないプラネタリシャフトは軸方向中央にねじが形成され両端にそれぞれギヤが形成されたものであり、前記ギヤが欠如したプラネタリシャフトは軸方向中央にねじが形成され両端にはギヤが形成されていないものであることを特徴とする遊星差動ねじ型回転直動変換機構。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか一項に記載の遊星差動ねじ型回転直動変換機構において、前記支持部の内面は軸直交方向断面が半円と半円とを2本の直線で接続した長円形であり、前記直線の一方又は両方に対応する内面が、前記プラネタリシャフトの軸部外周面が公転方向で当接する部分であることを特徴とする遊星差動ねじ型回転直動変換機構。
【請求項8】
請求項1〜6のいずれか一項に記載の遊星差動ねじ型回転直動変換機構において、前記支持部の内面は軸直交方向断面が楕円形であり、楕円形の長径方向に沿った楕円弧の一方又は両方に対応する内面が、前記プラネタリシャフトの軸部外周面が公転方向で当接する部分であることを特徴とする遊星差動ねじ型回転直動変換機構。
【請求項9】
請求項1〜6のいずれか一項に記載の遊星差動ねじ型回転直動変換機構において、前記支持部の内面は軸直交方向断面が円形であると共に前記プラネタリシャフトの軸部に対してプラネタリシャフト公転軌道の径方向へ偏心していることを特徴とする遊星差動ねじ型回転直動変換機構。
【請求項10】
回転駆動源の回転を直線運動に変換して出力するアクチュエータであって、請求項1〜9のいずれか一項に記載の遊星差動ねじ型回転直動変換機構を備え、前記ナットを前記回転駆動源にて回転させることにより、前記サンシャフトに接続された部材を直線運動させることを特徴とするアクチュエータ。
【請求項11】
請求項10に記載のアクチュエータにおいて、前記サンシャフトに接続された部材は、軸方向にスライドさせることによりバルブ特性を変更する内燃機関の可変動弁機構に設けられたコントロールシャフトであることを特徴とするアクチュエータ。
【請求項1】
サンシャフト、このサンシャフトを内周側に収納したナット、及びサンシャフトとナットとの間の公転軌道空間に配置された複数のプラネタリシャフトを備え、プラネタリシャフトとサンシャフトとの間、及びプラネタリシャフトとナットとの間でねじによる噛合とギヤによる噛合とを形成して、ナットの回転駆動に伴うプラネタリシャフト公転時のねじ間の差動によりナットとサンシャフトとの間で回転直動間の変換を行う遊星差動ねじ型回転直動変換機構であって、
前記複数のプラネタリシャフトの軸部を支持部にて自転可能に支持することにより前記複数のプラネタリシャフト同士を連結するリテーナが設けられると共に、
前記リテーナの支持部の内面にて、前記プラネタリシャフトの軸部外周面が公転方向で当接する部分の法線ベクトルは、プラネタリシャフト公転軌道の径方向成分及び接線方向成分を共に含んでいることを特徴とする遊星差動ねじ型回転直動変換機構。
【請求項2】
請求項1に記載の遊星差動ねじ型回転直動変換機構において、前記複数のプラネタリシャフトには、前記サンシャフト及び前記ナットにおけるギヤに噛合するギヤが欠如したものと欠如していないものとの両者が存在することを特徴とする遊星差動ねじ型回転直動変換機構。
【請求項3】
請求項2に記載の遊星差動ねじ型回転直動変換機構において、前記リテーナは、前記複数のプラネタリシャフトの全ての軸部に対応する支持部の内面にて、前記プラネタリシャフトの軸部外周面が公転方向で当接する部分での法線ベクトルが、プラネタリシャフト公転軌道の径方向成分及び接線方向成分を共に含んでいることを特徴とする遊星差動ねじ型回転直動変換機構。
【請求項4】
請求項2に記載の遊星差動ねじ型回転直動変換機構において、前記リテーナは、前記ギヤが欠如したプラネタリシャフトの軸部に対応する支持部の内面にて、前記プラネタリシャフトの軸部外周面が公転方向で当接する部分での法線ベクトルがプラネタリシャフト公転軌道の径方向成分及び接線方向成分を共に含み、前記ギヤが欠如していないプラネタリシャフトの軸部に対応する支持部の内面にて、前記プラネタリシャフトの軸部外周面が公転方向で当接する部分での法線ベクトルがプラネタリシャフト公転軌道の径方向成分を有さないことを特徴とする遊星差動ねじ型回転直動変換機構。
【請求項5】
請求項2〜4のいずれか一項に記載の遊星差動ねじ型回転直動変換機構において、前記ギヤが欠如していないプラネタリシャフトは軸方向中央にねじが形成され両端にそれぞれギヤが形成されたものであり、前記ギヤが欠如したプラネタリシャフトは軸方向中央にねじが形成され一方の端部のみにギヤが形成されたものであることを特徴とする遊星差動ねじ型回転直動変換機構。
【請求項6】
請求項2〜4のいずれか一項に記載の遊星差動ねじ型回転直動変換機構において、前記ギヤが欠如していないプラネタリシャフトは軸方向中央にねじが形成され両端にそれぞれギヤが形成されたものであり、前記ギヤが欠如したプラネタリシャフトは軸方向中央にねじが形成され両端にはギヤが形成されていないものであることを特徴とする遊星差動ねじ型回転直動変換機構。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか一項に記載の遊星差動ねじ型回転直動変換機構において、前記支持部の内面は軸直交方向断面が半円と半円とを2本の直線で接続した長円形であり、前記直線の一方又は両方に対応する内面が、前記プラネタリシャフトの軸部外周面が公転方向で当接する部分であることを特徴とする遊星差動ねじ型回転直動変換機構。
【請求項8】
請求項1〜6のいずれか一項に記載の遊星差動ねじ型回転直動変換機構において、前記支持部の内面は軸直交方向断面が楕円形であり、楕円形の長径方向に沿った楕円弧の一方又は両方に対応する内面が、前記プラネタリシャフトの軸部外周面が公転方向で当接する部分であることを特徴とする遊星差動ねじ型回転直動変換機構。
【請求項9】
請求項1〜6のいずれか一項に記載の遊星差動ねじ型回転直動変換機構において、前記支持部の内面は軸直交方向断面が円形であると共に前記プラネタリシャフトの軸部に対してプラネタリシャフト公転軌道の径方向へ偏心していることを特徴とする遊星差動ねじ型回転直動変換機構。
【請求項10】
回転駆動源の回転を直線運動に変換して出力するアクチュエータであって、請求項1〜9のいずれか一項に記載の遊星差動ねじ型回転直動変換機構を備え、前記ナットを前記回転駆動源にて回転させることにより、前記サンシャフトに接続された部材を直線運動させることを特徴とするアクチュエータ。
【請求項11】
請求項10に記載のアクチュエータにおいて、前記サンシャフトに接続された部材は、軸方向にスライドさせることによりバルブ特性を変更する内燃機関の可変動弁機構に設けられたコントロールシャフトであることを特徴とするアクチュエータ。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図32】
【図33】
【図34】
【図35】
【図36】
【図37】
【図38】
【図39】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図32】
【図33】
【図34】
【図35】
【図36】
【図37】
【図38】
【図39】
【公開番号】特開2013−19464(P2013−19464A)
【公開日】平成25年1月31日(2013.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−153092(P2011−153092)
【出願日】平成23年7月11日(2011.7.11)
【出願人】(000004695)株式会社日本自動車部品総合研究所 (1,981)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年1月31日(2013.1.31)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年7月11日(2011.7.11)
【出願人】(000004695)株式会社日本自動車部品総合研究所 (1,981)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】
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