説明

運転支援装置、方法およびプログラム

【課題】無駄な内燃機関の始動を抑制し、燃費を向上させる技術の提供。
【解決手段】車両に搭載された内燃機関の冷却水の温度を示す情報を取得し、前記車両の走行予定経路を示す情報を取得し、前記冷却水の温度が前記内燃機関を始動すべき第1の温度以下であり、かつ、前記車両の現在位置から所定距離以内の前記走行予定経路に前記内燃機関が始動される区間が含まれる場合には、前記内燃機関の始動を防止するための制御を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関の始動タイミングを調整する運転支援装置、方法およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、所定の条件で内燃機関を強制始動する技術が知られている。例えば、特許文献1に開示された技術においては、燃料電池用燃料の残量が基準値より少なくなった場合に内燃機関を強制始動させる構成とし、さらに、車両が搭載する空調機の運転状態に応じて基準値が大きい値に変更される構成としている。また、特許文献1においては、バッテリの残容量は不充分であるが燃料電池用燃料が充分に存在する場合には内燃機関ではなくモータを始動する構成も開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−298806号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
内燃機関は車両に搭載されたバッテリの残容量や燃料電池用燃料の残量以外の要素にも連動して始動されるように構成されることが多く、従来の技術ではバッテリの残容量や燃料電池用燃料の残量以外の要素に連動して内燃機関を始動させることはできない。特に、内燃機関以外の動力源で駆動可能な車両においては、内燃機関の冷却水の温度が第1の温度以下である場合に内燃機関が強制始動される構成が採用されることが多い。しかし、この構成において、内燃機関の冷却水の温度が第1の温度以下である場合に常に内燃機関を強制始動すると燃料消費量が多くなる。
本発明は、上記課題にかんがみてなされたもので、内燃機関の始動を抑制し、燃費を向上させる技術の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の目的を達成するため、本発明においては、冷却水の温度が内燃機関を始動すべき第1の温度以下であり、かつ、車両の現在位置から所定距離以内の走行予定経路に内燃機関が始動される区間が含まれる場合には、内燃機関の始動を防止するための制御を行う。すなわち、車両の現在位置から所定距離以内の走行予定経路に内燃機関が始動される区間が含まれる場合には、車両が現在位置以後に所定距離を走行すると内燃機関が始動される。このため、内燃機関を始動すべき条件(冷却水の温度が第1の温度以下)が成立している場合であっても、車両の現在位置から所定距離以内の走行予定経路に内燃機関が始動される区間が含まれる場合には、内燃機関が始動されない状態とする。この結果、内燃機関が始動される区間に車両が到達する以前において内燃機関が始動されることが防止され、その後、内燃機関が始動される区間に車両が到達すると内燃機関が始動される。従って、内燃機関の始動が抑制されて燃費が向上する。
【0006】
ここで、温度情報取得手段は、内燃機関の冷却水の温度を示す情報を取得することができればよく、センサによって取得しても良いし、冷却水の温度等に連動する装置(サーモスタット等)の駆動状態に基づいて冷却水の温度を示す情報を取得する構成としても良い。
【0007】
走行予定経路情報取得手段は、車両の走行予定経路を示す情報を取得することができればよく、走行予定経路は、利用者等によって予め設定された経路であっても良いし、車両の現在以降の推定経路であっても良い。後者としては、車両に搭載された方向指示器が示す方向に存在する道路を車両の現在以降の推定経路とする構成や、車両が現在存在する道路と道路番号や道路種別が同じ道路を車両の現在以降の推定経路とする構成等を採用可能である。
【0008】
内燃機関始動制御手段は、冷却水の温度が第1の温度以下であり、かつ、車両の現在位置から所定距離以内の走行予定経路に内燃機関が始動される区間が含まれる場合に内燃機関の始動を防止するための制御を行うことができればよい。内燃機関の始動を防止するための制御は、内燃機関に対して直接実施されても良いし、間接的に実施されても良い。例えば、前者としては、運転支援装置が内燃機関の始動を管理するECUに対して制御信号によって指示を与えることにより、当該内燃機関が始動されないように制御する構成を採用可能である。後者としては、運転支援装置が各種の案内を行う案内部に対して制御信号によって指示を与えることにより、内燃機関の始動を防止するための作業を利用者に行わせる案内が当該案内部から出力されるように制御する構成を採用可能である。
【0009】
なお、内燃機関始動制御手段は、内燃機関の始動を防止するための制御を行うことができればよく、車両において内燃機関が駆動されていない状態において、駆動が開始されないように制御を実行すればよい。
【0010】
第1の温度は内燃機関を始動すべき冷却水の温度として予め規定されていればよい。すなわち、車両の現在位置から所定距離以内の走行予定経路に内燃機関が始動される区間が含まれない、通常の場合において、冷却水の温度が過度に低下することを防止するための温度として第1の温度が予め決められていればよい。
【0011】
所定距離は、当該所定距離の走行後に内燃機関が始動される場合に内燃機関を停止しても良い距離(あるいはその時間に相当する距離)として設定されていればよい。すなわち、当該所定距離を走行するまで内燃機関を始動しないとしても冷却水の温度が過度に低下しないように所定距離が設定されていればよい。
【0012】
内燃機関が始動される区間は、当該区間を走行することによって冷却水の温度に依存しない理由によって内燃機関が始動される区間であればよい。例えば、区間を構成する道路に対応付けられた平均車速が所定の車速以上である区間においては、スロットルペダルの操作によって内燃機関が始動されるとみなし、当該区間を、内燃機関が始動される区間とする構成を採用可能である。また、現在の車両の状態と比較した場合に車両の前方の区間で内燃機関が始動される場合には、当該区間を内燃機関が始動される区間としてもよい。例えば、車両の現在位置が渋滞区間内であり、当該渋滞区間より前方に渋滞が解消している区間が存在する場合に当該渋滞が解消している区間を内燃機関が始動される区間としてもよい。また、車両が現在停止している場合に、車両の前方の区間を内燃機関が始動される区間としてもよい。なお、以上のような、内燃機関が始動される区間は、地図情報に基づいて特定してもよい。例えば、各道路における平均車速を示す情報を地図情報に含める構成としておけば、当該地図情報を参照することによって内燃機関が始動される区間を特定することが可能である。
【0013】
さらに、冷却水の温度に加えて別の要素が内燃機関を始動するための条件となっている構成に本発明を適用しても良い。例えば、冷却水の温度が第1の温度以下であり、かつ、車両に搭載された暖房機が駆動されている場合に内燃機関を始動するための条件が満たされているとみなす構成を想定可能である。すなわち、車両に搭載された暖房機においては、内燃機関の冷却水の熱と熱交換を行うことによって空気を暖めて暖房を機能させるため、冷却水の温度が第1の温度以下になると暖房が機能しない。このため、一般的には、冷却水の温度が第1の温度以下であり、かつ、車両に搭載された暖房機が駆動されている場合には内燃機関を始動するための条件が満たされ、内燃機関が始動される構成になっている。
【0014】
そこで、冷却水の温度が第1の温度以下であり、かつ、車両に搭載された暖房機が駆動されていることによって内燃機関を始動するための条件が満たされている場合であっても、車両から所定距離以内の走行予定経路に内燃機関が始動される区間が含まれる場合には、内燃機関の始動を禁止する制御を行う構成としてもよい。この構成によれば、内燃機関が始動される区間に車両が到達するまでの区間において内燃機関は始動されないため、内燃機関の始動を抑制して燃費を向上させることができる。さらに、所定距離走行後には内燃機関が駆動されるため暖房機を有効に機能させることができ、暖房機が機能するまでの期間が過度に長くなることがなく、利用者に違和感を与えない。
【0015】
なお、内燃機関を始動するための条件が満たされ、かつ、車両から所定距離以内の走行予定経路に内燃機関が始動される区間が含まれる場合に、暖房機の駆動を停止させる案内を行うための制御を行う構成としてもよい。この構成によれば、内燃機関が始動される区間に車両が到達するまでの区間において内燃機関を始動するための条件が満たされなくなるように促すことができる。この結果、利用者が暖房機を停止させれば、内燃機関の始動が抑制されて燃費が向上する。さらに、車両内の温度が第2の温度以下である場合には、暖房機の駆動を停止させる案内を行うための制御を行わない構成としても良い。この構成によれば、利用者が暖房機を停止させる可能性が低い場合に無駄な案内を行うことを防止することができる。
【0016】
さらに、本発明のように、内燃機関を始動するための条件が満たされている場合であっても、所定距離以内の走行によって内燃機関が始動される区間に到達するのであれば、内燃機関の始動を防止する手法は、プログラムや方法としても適用可能である。また、以上のような装置、プログラム、方法は、単独の装置として実現される場合もあれば、車両に備えられる各部と共有の部品を利用して実現される場合もあり、各種の態様を含むものである。例えば、以上のような装置を備えたナビゲーション装置や方法、プログラムを提供することが可能である。また、一部がソフトウェアであり一部がハードウェアであったりするなど、適宜、変更可能である。さらに、装置を制御するプログラムの記録媒体としても発明は成立する。むろん、そのソフトウェアの記録媒体は、磁気記録媒体であってもよいし光磁気記録媒体であってもよいし、今後開発されるいかなる記録媒体においても全く同様に考えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】運転支援装置を含むナビゲーション装置のブロック図である。
【図2】運転支援処理を示すフローチャートである。
【図3】運転支援処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
ここでは、下記の順序に従って本発明の実施の形態について説明する。
(1)ナビゲーション装置の構成:
(2)運転支援処理:
(3)他の実施形態:
【0019】
(1)ナビゲーション装置の構成:
図1は、本発明にかかる運転支援装置を含むナビゲーション装置10の構成を示すブロック図である。ナビゲーション装置10は、CPU,RAM,ROM等を備える制御部20、記録媒体30を備えており、記録媒体30やROMに記憶されたプログラムを制御部20で実行することができる。本実施形態においては、このプログラムとして運転支援プログラム21を実行可能である。運転支援プログラム21は、車両の走行予定に応じて内燃機関の始動を制御する機能を備えており、当該運転支援プログラム21は、図示しないナビゲーションプログラムの処理によって予め走行予定経路が設定された状態で実行される。
【0020】
記録媒体30には、予め地図情報30aが記録されており、走行予定経路が設定されると当該走行予定経路を示す走行予定経路情報30bが記録される。地図情報30aは、走行予定経路の探索や車両の位置の特定、内燃機関が始動される区間の特定に利用される情報であり、車両が走行する道路上に設定されたノードを示すノードデータ,ノード間の道路の形状を特定するための形状補間点データ,ノード同士の連結を示すリンクデータ,道路やその周辺に存在する地物を示すデータ等を含んでいる。本実施形態においては、各リンクデータに対して各リンクが示す道路における平均旅行時間を示す情報が対応付けられている。制御部20は、当該平均旅行時間およびリンクの端点に相当するノード間の距離に基づいてリンクが示す道路における平均車速を特定することが可能である。従って、本実施形態においては、実質的に各道路に対して各道路を走行する車両の平均車速が対応付けられている。また、走行予定経路情報30bは、走行予定経路上のノードを示す情報であり、制御部20は、当該走行予定経路情報30bを参照することによって、車両の前方の走行予定経路を特定することが可能である。
【0021】
本実施形態における車両は、GPS受信部41と車速センサ42とジャイロセンサ43と暖房機44と駆動制御ECU45と内燃機関46と電動機47と温度センサ48とを備えている。GPS受信部41は、GPS衛星からの電波を受信し、図示しないインタフェースを介して車両の現在位置を算出するための情報を出力する。制御部20は、この信号を取得して車両の現在位置を取得する。車速センサ42は、車両が備える車輪の回転速度に対応した信号を出力する。制御部20は、図示しないインタフェースを介してこの信号を取得し、車両の速度を取得する。ジャイロセンサ43は、車両に作用する角速度に対応した信号を出力する。制御部20は図示しないインタフェースを介してこの信号を取得し、車両の走行方向を取得する。車速センサ42およびジャイロセンサ43は、GPS受信部41の出力信号から特定される車両の現在位置を補正するなどのために利用される。また、車両の現在位置は、当該車両の走行軌跡に基づいて適宜補正される。
【0022】
本実施形態の車両は、燃料タンクに蓄積された燃料を動力源とする内燃機関46と、充電池を動力源とする電動機47とを備えたハイブリッド車両である。これらの内燃機関46と電動機47とは図示しない動力伝達機構に連結されており、当該動力伝達機構により回転駆動力を車両の推進力に変換することによって車両を前進、あるいは後進させる。内燃機関46と電動機47は、駆動制御ECU45に制御される。駆動制御ECU45は、図示しないスロットルペダルの操作に応じて内燃機関46と電動機47とに対して制御信号を出力可能であり、内燃機関46と電動機47とに対して制御信号を出力して内燃機関46と電動機47とのいずれかまたは双方が回転駆動力を発生させるように制御する。なお、内燃機関46内には、冷却水を流すための配管が形成されており、当該配管は暖房機44内も通っている。従って、冷却水は内燃機関46および暖房機44内の配管を通りながら循環している。また、本実施形態において、駆動制御ECU45から出力される内燃機関46および電動機47を駆動するための制御信号は、制御部20に対しても出力される。従って、制御部20は、当該制御信号に基づいて内燃機関46や電動機47が駆動されているか否かを特定することができる。
【0023】
暖房機44は、車室内に向けて開口した開口部に対して送風する機構とヒータユニットとを備えており、当該ヒータユニットは上述の配管内を通る冷却水と熱交換を行うための熱交換部を備えている。すなわち、車室内に送られる空気が熱交換部を通ることによって配管内の冷却水と熱交換を行い、熱交換後の空気が車室内に送られる構成となっている。従って、冷却水の温度が上昇していない場合には車室内に送られる空気が充分に暖まらず、暖房が有効に機能しない。
【0024】
そこで、本実施形態においては、冷却水の温度が第1の温度以下であり、かつ、暖房機44が駆動されている場合に、内燃機関46を駆動して冷却水を暖められるように構成してある。すなわち、本実施形態における車両には冷却水の温度を検出するための温度センサ48が備えられており、当該温度センサ48の出力信号が駆動制御ECU45および制御部20に入力されるように構成されている。駆動制御ECU45および制御部20は、当該温度センサ48の出力信号に基づいて冷却水の温度を示す情報を取得することができる。さらに、暖房機44が駆動されると当該暖房機44から駆動中であることを示す信号が駆動制御ECU45および制御部20に対して出力され、駆動制御ECU45および制御部20は当該信号に基づいて暖房機44が駆動中であることを特定可能である。
【0025】
そして、駆動制御ECU45は、冷却水の温度が第1の温度以下であり、かつ、暖房機44が駆動されている場合に、内燃機関46を始動するための制御信号を出力するように構成されている。内燃機関46が駆動されていない場合、当該制御信号に応じて内燃機関46が始動され、暖房が有効に機能するように冷却水が暖められることになる。なお、第1の温度は、暖房機44において暖房を有効に機能させるために内燃機関46を始動すべき冷却水の温度として予め規定された温度であり、本実施形態においては、車両の現在位置から所定距離以内の走行予定経路に内燃機関46が始動される区間が含まれない、通常の場合において、冷却水の温度が過度に低下することを防止するための温度として予め決められた温度である。
【0026】
このような、冷却水の温度および暖房機44の駆動状態に応じた内燃機関46の制御を行うと、暖房機44による暖房を有効に機能させることが可能である。しかし、冷却水の温度が第1の温度以下であり、かつ、暖房機44が駆動されている状態において、常に、停止中の内燃機関46を始動させると、内燃機関46による燃料消費量が増加してしまう。すなわち、車両の現在位置に近い区間において内燃機関46が始動されるのであれば、当該区間に到達するまで内燃機関46を始動しない状態を維持しても暖房機44の効果はさほど変わらない。従って、当該区間に到達するまで内燃機関46が始動されない状態であるとしても、当該区間に到達するとすぐに内燃機関46が駆動されて暖房機44が機能し、利用者が違和感を覚えることはない。
【0027】
そこで、本実施形態においては、運転支援プログラム21の処理により、冷却水の温度が第1の温度以下であり、かつ、暖房機44が駆動されている場合であっても、車両の現在位置から所定距離以内の走行予定経路に内燃機関が始動される区間が含まれる場合には内燃機関46を始動しないように構成している。なお、所定距離は、当該所定距離を走行するまで内燃機関を始動しないとしても冷却水の温度が過度に低下しないように設定されている。すなわち、暖房機44が機能していないとしても利用者が違和感を覚えない距離を所定距離に設定すればよい。
【0028】
この処理を行うため、運転支援プログラム21は、温度情報取得部21aと走行予定経路情報取得部21bと内燃機関始動制御部21cとを備えている。温度情報取得部21aは、内燃機関46の冷却水の温度を示す情報を取得する機能を制御部20に実現させるモジュールである。すなわち、制御部20は、温度情報取得部21aの処理により、温度センサ48の出力信号を参照し、内燃機関46の冷却水の温度を示す情報を取得する。走行予定経路情報取得部21bは、車両の走行予定経路を示す情報を取得する機能を制御部20に実現させるモジュールである。すなわち、制御部20は、走行予定経路情報取得部21bの処理により、走行予定経路情報30bを取得する。
【0029】
内燃機関始動制御部21cは、冷却水の温度が第1の温度以下であり、かつ、暖房機44が駆動されており、かつ、車両の現在位置から所定距離以内の走行予定経路に内燃機関が始動される区間が含まれる場合には内燃機関46の始動を禁止する機能を制御部20に実現させるモジュールである。すなわち、冷却水の温度が第1の温度以下であり、かつ、暖房機44が駆動されている場合、制御部20は、内燃機関始動制御部21cの処理により、地図情報30aおよび走行予定経路情報30bに基づいて車両の現在位置から所定距離以内の走行予定経路に内燃機関46が始動される区間が含まれるか否かを判定する。そして、車両の現在位置から所定距離以内の走行予定経路に内燃機関が始動される区間が含まれると判定された場合、制御部20は、駆動制御ECU45に対して内燃機関46の始動を禁止することを示す制御信号を出力する。
【0030】
当該内燃機関46の始動を禁止することを示す制御信号が出力された場合、駆動制御ECU45は、内燃機関46を始動しない。すなわち、冷却水の温度が第1の温度以下であり、かつ、暖房機44が駆動されている場合であっても、内燃機関46に対して当該内燃機関46の始動するための制御信号を出力しない。なお、当該内燃機関46の始動を禁止することを示す制御信号によって内燃機関46の始動を禁止する状態は、内燃機関46が始動される区間に車両が到達することによって解除される。従って、内燃機関46が始動される区間に車両が到達した後において、冷却水の温度が第1の温度以下であり、かつ、暖房機44が駆動されている場合には内燃機関46が始動される。このため、本実施形態によれば、内燃機関46が始動される区間に車両が到達するまでの区間において内燃機関46が始動されることが防止され、内燃機関46が始動される区間に車両が到達すると内燃機関46が始動され、利用者に違和感を与えない範囲で内燃機関46の始動を抑制して燃費を向上させることができる。
【0031】
(2)運転支援処理:
次に、運転支援プログラム21による運転支援処理を説明する。運転支援プログラム21は、所定の期間(例えば、100ms)毎に実行される。図2は運転支援プログラム21が実行する運転支援処理を示すフローチャートである。運転支援プログラム21の処理が開始されると、制御部20は、内燃機関始動制御部21cの処理により、現在電動機走行中であるか否かを判定する(ステップS100)。すなわち、制御部20は、駆動制御ECU45が出力する制御信号に基づいて、内燃機関46が駆動されておらず、かつ、電動機47が駆動されている状態であるか否かを判定する。ステップS100にて、電動機走行中であると判定されない場合には処理を終了する。ステップS100にて、電動機走行中であると判定された場合、制御部20は、暖房機44が駆動中であるか否かを判定する(ステップS102)。すなわち、制御部20は、駆動制御ECU45が出力する制御信号に基づいて、暖房機44が駆動されているか否かを判定する。ステップS102にて、暖房機44が駆動中であると判定されない場合、電動機走行を継続する(ステップS120)。すなわち、制御部20の処理によって駆動制御ECU45に指示は行わず、利用者のスロットルペダル等による操作に応じて電動機47による走行が行われている状態を維持する。
【0032】
一方、ステップS102にて、暖房機44が駆動中であると判定された場合、制御部20は、温度情報取得部21aおよび内燃機関始動制御部21cの処理により、冷却水の温度が第1の温度以下であるか否かを判定する(ステップS105)。すなわち、制御部20は、温度情報取得部21aの処理により、温度センサ48の出力信号に基づいて冷却水の温度を示す情報を取得し、内燃機関始動制御部21cの処理により、当該冷却水の温度を示す情報に基づいて冷却水の温度が第1の温度以下であるか否かを判定する。
【0033】
ステップS105において、冷却水の温度が第1の温度以下であると判定されない場合、制御部20は、電動機走行を継続する(ステップS120)。すなわち、冷却水の温度が第1の温度以下でない状態で暖房機44が駆動された場合、内燃機関46を始動させなくても暖房機44は有効に機能するため、電動機47による走行が行われている状態を維持する。
【0034】
ステップS105において、冷却水の温度が第1の温度以下であると判定された場合、制御部20は、走行予定経路情報取得部21bおよび内燃機関始動制御部21cの処理により、車両の現在位置から所定距離以内の走行予定経路に内燃機関が始動される区間が存在するか否かを判定する(ステップS110)。すなわち、制御部20は、走行予定経路情報取得部21bの処理により、記録媒体30を参照して走行予定経路情報30bを取得する。さらに、制御部20は、内燃機関始動制御部21cの処理により、GPS受信部41,車速センサ42,ジャイロセンサ43の出力信号に基づいて車両の現在位置を特定する。また、制御部20は、地図情報30aを参照して車両の現在位置より前方の走行予定経路を特定し、車両の現在位置より前方の所定距離以内の区間に、平均車速が所定値以上の道路が存在するか否かを判定する。すなわち、本実施形態においては、平均車速が所定値以上の道路が走行予定経路に含まれる場合、その区間を内燃機関46が始動される区間とみなしている。なお、内燃機関46が始動される区間に車両が到達した場合、所定距離以内に内燃機関46が始動される区間が存在する状態とはみなされない。
【0035】
ステップS110において、車両の現在位置から所定距離以内の走行予定経路に内燃機関46が始動される区間が存在すると判定されない場合、内燃機関46を始動する(ステップS115)。すなわち、暖房機44から当該暖房機44が駆動中であることを示す信号が出力され、温度センサ48から冷却水が第1の温度以下であることを示す信号が出力されていると、駆動制御ECU45がこれらの信号に応じて内燃機関46を始動する。このように、所定距離以内の走行予定経路に内燃機関46が始動される区間が存在しない場合には、駆動制御ECU45が内燃機関46を始動するため、暖房機44が有効に機能する状態となる。なお、所定距離以内の走行予定経路に内燃機関46が始動される区間が存在する状態において、車両が当該区間に到達すると、ステップS110において、所定距離以内の走行予定経路に内燃機関46が始動される区間が存在すると判定されなくなる。従って、所定距離以内の走行予定経路に内燃機関46が始動される区間に車両が到達するとステップS115にて内燃機関46が始動される。
【0036】
一方、ステップS110において、車両の現在位置から所定距離以内の走行予定経路に内燃機関46が始動される区間が存在すると判定された場合、制御部20は、電動機走行を継続する(ステップS120)。すなわち、制御部20は、駆動制御ECU45に対して内燃機関46の始動を禁止するための制御信号を出力する。この場合、暖房機44から当該暖房機44が駆動中であることを示す信号が出力され、温度センサ48から冷却水が第1の温度以下であることを示す信号が出力されているとしても、駆動制御ECU45は内燃機関46を始動しない。このため、電動機47による走行が行われている状態が維持される。
【0037】
このように、所定距離以内の走行予定経路に内燃機関46が始動される区間が存在する場合、車両が当該区間に到達することによって過度に冷却水が低下する前に内燃機関46が始動されると考えられるため、本実施形態においては、電動機47による走行が行われている状態を維持する。従って、内燃機関46を始動するための条件が満たされている場合であっても、所定距離以内の走行予定経路に内燃機関46が始動される区間が存在する場合には、内燃機関46が始動されることが防止されていることになる。
【0038】
電動機47による走行が継続された状態においては、図2のステップS102以降の処理が所定期間毎に実行される。従って、内燃機関46が始動される区間に車両が到達すると、ステップS110において、所定距離以内に内燃機関46が始動される区間が存在する状態ではないとみなされるため、ステップS115にて内燃機関46が始動される。以上の処理により、内燃機関46が始動される区間に車両が到達するまでの区間において内燃機関46が始動されることが防止され、内燃機関46が始動される区間に車両が到達すると内燃機関46が始動される。従って、暖房機44を機能させるために内燃機関46を始動することが防止され、燃費を向上させることができる。
【0039】
(3)他の実施形態:
以上の実施形態は本発明を実施するための一例であり、内燃機関を始動するための条件が満たされている場合であっても、所定距離以内の走行によって内燃機関が始動される区間に到達するのであれば、内燃機関の始動を防止する限りにおいて、他にも種々の実施形態を採用可能である。例えば、内燃機関の冷却水の温度は、冷却水の温度に連動する装置(サーモスタット等)の始動状態に基づいて取得する構成としても良い。
【0040】
また、走行予定経路は、車両の現在以降の推定経路であっても良い。例えば、車両に搭載された方向指示器が示す方向に存在する道路を車両の現在以降の推定経路とする構成や、車両が現在存在する道路と道路番号や道路種別が同じ道路を車両の現在以降の推定経路とする構成等を採用可能である。
【0041】
さらに、内燃機関の始動を防止するための制御は、上述のように内燃機関に対して直接実施されても良いし、間接的に実施されても良い。後者としては、例えば、各種の案内を行う案内部に対して運転支援装置が制御信号によって指示を与えることにより、内燃機関の始動を防止するための作業を利用者に行わせる案内が当該案内部から出力されるように制御する構成を採用可能である。
【0042】
図3は、当該案内によって内燃機関の始動を防止する際に採用される運転支援処理の例を示すフローチャートである。当該図3に示す処理は、図1に示す構成に加えて画像や音声等を出力するユーザI/F部を備える車両において実行される。また、図3に示す処理において、ステップS200〜S215のそれぞれは図2に示すステップS100〜S115のそれぞれと同様である。そして、図3に示すステップS220において、制御部20は内燃機関始動制御部21cの処理によって、暖房機44の停止を促す案内を行う。すなわち、制御部20は、ユーザI/F部に対して、暖房機44の停止を促す画像や音声を出力するための制御信号を出力する。ユーザI/F部は当該制御信号に応じて暖房機44の停止を促す画像や音声を出力する。
【0043】
この結果、利用者が暖房機44を停止させれば、内燃機関46を始動するための条件の一つとなっている「暖房機44が駆動中」という条件を満たさなくなるため、スロットルペダル等によって内燃機関46が始動される他の条件を満たさない限り内燃機関46の始動が停止される。この構成によれば、暖房機44を機能させるために内燃機関46を始動することが防止され、燃費を向上させることが可能である。なお、車両内の温度が第2の温度以下である場合には暖房機44の停止を促す案内を行わない構成としても良い。この構成によれば、利用者が暖房機44を停止させる可能性が低い場合に無駄な案内を行うことを防止することができる。
【0044】
さらに、内燃機関が始動される区間は、当該区間を走行することによって冷却水の温度に依存しない理由によって内燃機関が始動される区間であればよい。従って、地図情報30aが示す平均車速によって内燃機関が始動される区間を特定する構成の他にも種々の構成を採用可能である。例えば、現在の車両の状態と比較した場合に車両の前方の区間で内燃機関が始動される場合には、当該区間を内燃機関が始動される区間としてもよい。具体的には、車両の現在位置が渋滞区間内であり、当該渋滞区間より前方に渋滞が解消している区間が存在する場合に当該渋滞が解消している区間を内燃機関が始動される区間としてもよい。また、車両が現在停止している場合に、車両の前方の区間を内燃機関が始動される区間としてもよい。
【0045】
さらに、上述の実施形態においては、冷却水の温度が第1の温度以下であり、かつ、暖房機44が駆動されている状態であることが、内燃機関を始動するための条件となっていたが、暖房機44が駆動されていること以外の他の条件が内燃機関を始動するための条件となっている構成に本発明を適用してもよい。また、冷却水の温度が第1の温度以下であることが内燃機関を始動するための条件であり、暖房機44の駆動状態は条件に含まれない構成に本発明を適用しても良い。すなわち、冷却水の温度が第1の温度以下である場合、通常であれば、内燃機関が始動されるが、冷却水の温度が第1の温度以下であり、かつ、車両の現在位置から所定距離以内の走行予定経路に内燃機関が始動される区間が含まれる場合に、内燃機関の始動を防止するための制御を行う構成としても良い。
【符号の説明】
【0046】
10…ナビゲーション装置、20…制御部、21…運転支援プログラム、21a…温度情報取得部、21b…走行予定経路情報取得部、21c…内燃機関始動制御部、30…記録媒体、30a…地図情報、30b…走行予定経路情報、41…GPS受信部、42…車速センサ、43…ジャイロセンサ、44…暖房機、45…駆動制御ECU、46…内燃機関、47…電動機、48…温度センサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載された内燃機関の冷却水の温度を示す情報を取得する温度情報取得手段と、
前記車両の走行予定経路を示す情報を取得する走行予定経路情報取得手段と、
前記冷却水の温度が前記内燃機関を始動すべき第1の温度以下であり、かつ、前記車両の現在位置から所定距離以内の前記走行予定経路に前記内燃機関が始動される区間が含まれる場合には、前記内燃機関の始動を防止するための制御を行う内燃機関始動制御手段と、
を備える運転支援装置。
【請求項2】
前記内燃機関始動制御手段は、前記冷却水の温度が前記第1の温度以下であり、かつ、前記車両に搭載された暖房機が駆動されており、かつ、前記車両から所定距離以内の前記走行予定経路に前記内燃機関が始動される区間が含まれる場合には、前記内燃機関の始動を禁止する制御を行う、
請求項1に記載の運転支援装置。
【請求項3】
前記内燃機関始動制御手段は、前記冷却水の温度が前記第1の温度以下であり、かつ、前記車両に搭載された暖房機が駆動されており、かつ、前記車両から所定距離以内の前記走行予定経路に前記内燃機関が始動される区間が含まれる場合には、前記暖房機の駆動を停止させる案内を行うための制御を行う、
請求項1または請求項2のいずれかに記載の運転支援装置。
【請求項4】
前記内燃機関始動制御手段は、前記車両内の温度が第2の温度以下である場合には、前記案内を行うための制御を実行しない、
請求項3に記載の運転支援装置。
【請求項5】
前記内燃機関始動制御手段は、地図情報に基づいて前記内燃機関が始動される区間を特定する、
請求項1〜請求項4のいずれかに記載の運転支援装置。
【請求項6】
車両に搭載された内燃機関の冷却水の温度を示す情報を取得する温度情報取得工程と、
前記車両の走行予定経路を示す情報を取得する走行予定経路情報取得工程と、
前記冷却水の温度が前記内燃機関を始動すべき第1の温度以下であり、かつ、前記車両の現在位置から所定距離以内の前記走行予定経路に前記内燃機関が始動される区間が含まれる場合には、前記内燃機関の始動を防止するための制御を行う内燃機関始動制御工程と、
を含む運転支援方法。
【請求項7】
車両に搭載された内燃機関の冷却水の温度を示す情報を取得する温度情報取得機能と、
前記車両の走行予定経路を示す情報を取得する走行予定経路情報取得機能と、
前記冷却水の温度が前記内燃機関を始動すべき第1の温度以下であり、かつ、前記車両の現在位置から所定距離以内の前記走行予定経路に前記内燃機関が始動される区間が含まれる場合には、前記内燃機関の始動を防止するための制御を行う内燃機関始動制御機能と、
をコンピュータに実現させる運転支援プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−190761(P2011−190761A)
【公開日】平成23年9月29日(2011.9.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−58775(P2010−58775)
【出願日】平成22年3月16日(2010.3.16)
【出願人】(000100768)アイシン・エィ・ダブリュ株式会社 (3,717)
【Fターム(参考)】