説明

運転支援装置

【課題】予め燃費率マップを作成する必要をなくすことにより、コストダウンを図ると共に、車両を選ばずに搭載することができ、しかも、車両の状態に適した運転支援を行うことができる運転支援装置を提供する。
【解決手段】走行状態検出手段10a−1が車両の走行状態情報を検出し、車両状態検出手段10a−2が車両状態情報を検出し、燃費検出手段10a−3が車両の燃費情報を検出する。学習手段10a−4が検出された走行状態情報及び車両状態情報を入力とし、検出された燃費情報を出力とする学習を行う。推論手段10a−5は、学習手段が行った学習結果を用いて、入力された走行状態情報及び車両状態情報に対する燃費情報を推論する。支援手段10a−7が燃費検出手段により検出された現燃費情報と、推論手段により推論された燃費情報との比較に基づいて、運転の支援を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、省燃費運転の支援を行う運転支援装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
上述した運転支援装置としては、例えば、特許文献1に記載された車両運転状態評価システムが提案されている。この車両運転状態評価システムによれば、エンジンの回転速度と負荷と燃費率の関係を規定した燃費率マップを参照して、現在のエンジンの回転数及び負荷から現在のエンジンの燃費率を演算する。
【0003】
また、シフトアップ時のエンジンの回転速度及び負荷を求め、上述した燃費率マップを参照して、シフトアップさせた場合のエンジンの燃費率を演算する。そして、演算された現在の燃費率よりもシフトアップさせた場合の燃費率の方が小さい場合にシフトアップを促すものである。
【0004】
なお、上述した燃費率マップは、エンジン開発時に得られたデータに基づき作成されるか、車両の走行試験を行いその試験結果に基づいて作成されるものであることが記載されている。何れにしても、燃費率マップは、車両に搭載前に予め作成されるものである。
【0005】
しかしながら、上述した従来の車両運転状態評価システムでは、予め燃費率マップを作成しておく必要がある。この燃費率マップは、搭載エンジン毎に異なるものであり、このため、搭載エンジン毎に作成する必要があり、コスト的に問題となる。また、燃費率マップが作成されていないエンジンを搭載した車両には、使うことができないという問題もある。さらに、燃費率マップは、搭載エンジンの違いだけでなく、搭載車両毎に微妙に異なる場合もあるため、従来のシステムでは、正確な燃費運転の支援を行うことができない。
【0006】
また、車両の経時変化により燃費率マップが変化してしまっても、正確な燃費運転の支援を行うことができなくなる。さらに、運転の指示はシフトアップのみであり、具体的なアクセル開度の指示は行っていない。
【0007】
さらに、燃費の良し悪しはドライバの運転だけではなく、車両の状態によっても変わってくる。例えば、重い荷物を積んでいたり、タイヤの空気圧が低かったりすると、ドライバが燃費を良くするために最適な運転しても、燃費は悪くなる。しかしながら、従来の車両運転状態評価システムでは、車両の状態を無視した運転評価や支援を行っているため、適切な運転評価、運転支援を行うことができないという問題もあった。
【特許文献1】特開2004−60548号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
そこで、本発明は、上記のような問題点に着目し、予め燃費率マップを作成する必要をなくすことにより、コストダウンを図ると共に、車両を選ばずに搭載することができ、しかも、車両状態に適した運転支援を行うことができる運転支援装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1記載の発明は、図1に示す基本構成図によれば、車両の走行状態情報を検出する走行状態検出手段10a−1と、前記車両の状態に関する車両状態情報を検出する車両情報検出手段10a−2と、前記車両の燃費情報を検出する燃費検出手段10a−3と、前記検出された走行状態情報及び前記車両状態情報を入力とし、前記検出された燃費情報を出力とする学習を行う学習手段10a−4と、前記学習手段が行った学習結果を用いて、入力された走行状態情報及び車両状態情報に対する燃費情報を推論する推論手段10a−5と、前記推論手段に走行状態情報及び車両状態情報を入力する入力手段10a−6と、前記燃費検出手段により検出された現燃費情報と、前記推論手段により推論された燃費情報との比較に基づいて、運転の支援を行う支援手段10a−7とを備えたことを特徴とする運転支援装置に存する。
【0010】
請求項1記載の発明によれば、走行状態検出手段10a−1が車両の走行状態情報を検出する。車両情報検出手段10a−2が車両の状態に関する車両状態情報を検出する。燃費検出手段10a−3が車両の燃費情報を検出する。学習手段10a−4が検出された走行状態情報及び車両状態情報を入力とし、検出された燃費情報を出力とする学習を行う。推論手段10a−5は、学習手段10a−4が行った学習結果を用いて、入力された走行状態情報及び車両状態情報に対する燃費情報を推論する。入力手段10a−6が推論手段に走行状態情報及び車両状態情報を入力する。支援手段10a−7が推論手段により推論された燃費情報との比較に基づいて、運転の支援を行う。
【0011】
従って、走行状態検出手段10a−1、車両状態検出手段10a−2及び燃費検出手段10a−3による検出結果を用いて、走行状態情報及び車両状態情報を入力とし、燃費情報を出力とした学習が行われ、その学習結果を用いて運転支援が行われる。つまり、走行中に行われる学習により走行状態情報及び車両状態情報と燃費情報との関係を得ることができ、予め走行状態情報及び車両状態情報と燃費情報との関係を示すマップを作成する必要がない。しかも、車両の状態によって燃費が変動することに着目して、車両状態情報を入力として、学習、推論を行うようにしている。
【0012】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の運転支援装置であって、前記車両状態情報は、前記車両に装着されたタイヤの空気圧情報であることを特徴とする運転支援装置に存する。
【0013】
請求項2記載の発明によれば、車両に装着されたタイヤの空気圧によって燃費が変動することに着目し、タイヤの空気圧情報を入力として、学習、推論を行うようにしている。
【0014】
請求項3記載の発明は、請求項1又は2記載の運転支援装置であって、前記車両状態情報は、前記車両の自重情報であることを特徴とする運転支援装置に存する。
【0015】
請求項3記載の発明によれば、車両の自重によって燃費が変動することに着目し、車両の自重情報を入力として、学習、推論を行うようにしている。
【発明の効果】
【0016】
以上説明したように請求項1記載の発明によれば、走行状態検出手段、車両状態検出手段及び燃費検出手段による検出結果を用いて、走行状態情報及び車両状態情報を入力とし、燃費情報を出力とした学習が行われ、その学習結果を用いて運転支援が行われる。つまり、走行中に行われる学習により走行状態情報及び車両状態情報と燃費情報との関係を得ることができ、予め走行状態情報及び車両状態情報と燃費情報との関係を示すマップを作成する必要がないので、コストダウンを図ると共に、車両を選ばずに搭載することができる。しかも、車両の状態によって燃費が変動することに着目して、車両状態情報を入力として、学習、推論を行うようにしているので、車両の状態に適した運転支援を行うことができる運転支援装置を得ることができる。
【0017】
請求項2記載の発明によれば、車両に装着されたタイヤの空気圧によって燃費が変動することに着目し、タイヤの空気圧情報を入力として、学習、推論を行うようにしているので、タイヤの空気圧に適した運転支援を行うことができる運転支援装置を得ることができる。
【0018】
請求項3記載の発明によれば、車両の自重によって燃費が変動することに着目し、車両の自重情報を入力として、学習、推論を行うようにしているので、車両の自重に適した運転支援を行うことができる運転支援装置を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
第1実施形態
以下、本発明の運転支援装置を、図面に基づいて説明する。図2は、本発明の運転支援装置の一実施形態を示すブロック図である。同図に示すように、本発明の運転支援装置内に備えられたマイクロコンピュータ(以下μCOM)10には、入力インタフェース(I/F)11を介して、車両が単位距離走行する毎に出力される車速パルスP1、クランクシャフトの回転に応じて出力される回転数パルスP2、燃料が例えば1cc消費される毎に出力される燃料パルスP3が供給されている。
【0020】
上述したμCOM10にはまた、入力I/F11を介して、アクセルペダルに取り付けた角度センサ(図示せず)からの電圧値がアクセル開度信号S1として供給されている。さらに、タイヤ空気圧センサ(図示せず)からのタイヤの空気圧A(=空気圧情報)に応じた空気圧信号S2が供給されている。
【0021】
μCOM10は、プログラムに従って各種の処理を行う中央処理ユニット(CPU)10a、CPU10aが行う処理のプログラムなどを格納した読み出し専用のメモリであるROM10b、CPU10aでの各種の処理過程で利用するワークエリア、各種データを格納するデータ格納エリアなどを有する読み出し書き込み自在のメモリであるRAM10cなどを内蔵している。
【0022】
上述したμCOM10は、液晶ディスプレイ13に接続されている。この液晶ディスプレイ13は、例えば、図3に示すように、燃費状態表示部13a、シフト操作表示部13b、理想アクセル開度指示部13c、現アクセル開度指示部13d及びマルチディスプレイ部13eから構成されている。燃費状態表示部13aは、現在の車両の燃費状態を表示するためのものであり、例えば、太い方(下方)から細い方(上方)に向かうに従って、赤色から緑色に変化する帯状表示部から構成されている。この燃費状態表示部13aでは、太い方(赤)から細い方(緑)に向かう程、燃費が良い状態を示す。
【0023】
シフト操作表示部13bは、シフト操作を指示するためのものであり、シフトアップが指示されているときには「UP」が点灯され、シフトダウンが指示されているときには「DOWN」が点灯される。理想アクセル開度指示部13cは、省燃費となる理想のアクセル開度を指示するものであり、例えば、帯状の表示部から構成されている。この理想アクセル開度指示部13cでは、細い方から太い方に向かうほど、理想のアクセル開度が大きい状態を示す。
【0024】
また、現アクセル開度指示部13dは、現アクセル開度を指示するためのものである。従って、アクセルを踏ませる指示を行う場合は、現アクセル開度指示部13dより下側に理想のアクセル開度が表示され、アクセルを緩ませる指示を行う場合は、現アクセル開度指示部13dより上側に理想のアクセル開度が表示される。
【0025】
マルチディスプレイ部13eは、平均燃費、瞬時燃費、速度、燃料消費量、省燃費得点、車両メンテナンス情報などが表示される。また、上述したμCOM10には、設定ボタン14(図3参照)の押圧によってオンするスイッチSW(図2参照)が接続され、設定ボタン14の操作によって、マルチディスプレイ部13eへの表示項目などが設定できるようになっている。さらに、上述したμCOM10は、出力I/F15を介して、コンパクトフラッシュ(登録商標)カード(CFカード)等の記録媒体16に、例えば、車両の速度などの各種走行状態情報の書き込みができるようになっている。
【0026】
上述した構成の運転支援装置の動作について、図4及び図5のCPU10aの処理手順を示すフローチャートを参照して以下説明する。まず、CPU10aは、走行状態検出手段、車両状態検出手段及び燃費情報検出手段として働き、例えば、1秒毎に、図4に示す検出処理を行う。
【0027】
検出処理において、CPU10aはまず、車速パルスP1から現在の車両の速度vp(km/m)を、回転数パルスP2から現在のエンジン回転数Np(rpm)を、燃料パルスP3から現在の1秒当たりの燃料消費量αp(cc)を各々検出する(ステップS1)。この1秒当たりの燃料消費量αp(cc)が請求項中の燃費情報に相当する。さらにCPU10aは、アクセル開度信号S1から現在のアクセル開度βp(%)を、空気圧信号S2からタイヤの現空気圧Apを各々検出する(ステップS1)。
【0028】
次に、CPU10aは、検出した速度vp、エンジン回転数Npから現在のギア比Gp(=vp/Np)を検出する(ステップS2)。さらに、CPU10aは、求めた現アクセル開度βp、エンジン回転数Npから負荷情報としての負荷係数γp(=βp/Np)を検出する(ステップS3)。ここで、無負荷状態では、燃料消費量(≒アクセル開度)に応じてエンジン回転数はほぼ一意に決定できると考えられる。しかし、実際には様々な負荷(路面抵抗、勾配、積載荷重など)によってエネルギー損失が生じており、アクセル開度とエンジン回転数の関係は負荷に応じて変化する。
【0029】
ここから、「エンジンに与えたエネルギー(≒燃料消費量≒アクセル開度)当たりの駆動力(≒エンジン回転数)」を計算することで、負荷の大きさを表すことができると考えられる。この値が大きいほど損失が小さい、つまり負荷が小さいと言えるが、「係数の大きさ=負荷の大きさ」とした方が直感的であるため逆数を取り、本実施形態ではこれを負荷係数と定義した。
負荷係数=アクセル開度/回転数
【0030】
また、CPU10aは、図6に示すようなファジィ化ニューロネットワークに従って、速度v、空気圧A、負荷係数γ、ギア比Gを入力データとし、燃料消費量α、アクセル開度βを出力データとして推論する推論処理を行うことができる。また、入力データと出力データとの関係は、検出処理の検出結果に基づいて学習される。これら推論・学習については後で詳しく説明する。
【0031】
また、CPU10aは、検出処理が行われる毎に、推論手段、入力手段、支援手段として働き、図5に示す省燃費運転の支援を行うための支援処理を行う。CPU10aは、まず、図6に示すようなネットワークへの入力データを作成する(ステップS5)。入力データとしては、検出処理で検出された現ギア比Gp、現ギア比に対して1つ上のギア比Gu、現ギア比に対して1つ下のギア比Gdと、同じく検出処理で検出された現速度vp、現空気圧Ap及び現負荷係数γpとを組み合わせたI1〜I3の3パターンが作成される。
I1=[Gu、vp、Ap、γp]、I2=[Gd、vp、Ap、γp]、I3=[Gp、vp、Ap、γp]
【0032】
次に、CPU10aは、図6に示すようなネットワークに、I1〜I3を入力して、I1〜I3に対する燃料消費量α1〜α3、アクセル開度β1〜β3を推論する推論処理を行う(ステップS6)。次に、CPU10aは、推論した燃料消費量α1〜α3のうち最も少ない燃料消費量αminと、検出処理により検出した現燃料消費量αpとを比較する(ステップS7)。
【0033】
今、燃料消費量αmin=α1であり、かつ、現燃料消費量αp>推論した燃料消費量α1=αminであった場合(ステップS7でY)、燃料消費量αminを推論したときの入力データI1中のギア比Guは、現ギア比Gpより1つ上のギア比であると判断し(ステップS8でN)、シフト指示部13において「UP」を点灯させるシフト指示を行い(ステップS9)、運転者にシフトアップを促す。その後、入力データI1に対して推論したアクセル開度β1を、理想アクセル開度指示部13cに指示すると共に、検出処理により検出した現アクセル開度βpを現アクセル開度指示部13dによって指示させるアクセル指示を行った後(ステップS10)、ステップS11に進む。
【0034】
また、燃料消費量αmin=α2であり、かつ、現燃料消費量αp>推論した燃料消費量α2=αminであった場合(ステップS7でY)、燃料消費量α2を推論したときの入力データI2中のギア比Gdは、現ギア比Gpより1つ下のギア比であると判断し(ステップS8でN)、シフト指示部13において「DOWN」を点灯させるシフト指示を行い(ステップS9)、運転者にシフトダウンを促す。その後、入力データI2に対して推論されたアクセル開度β2を、理想アクセル開度指示部13cに指示すると共に、検出処理により検出した現アクセル開度βpを現アクセル開度指示部13dによって指示させるアクセル指示を行った後(ステップS10)、ステップS11に進む。
【0035】
また、燃料消費量αmin=α3であり、かつ、現燃料消費量αp>推論した燃料消費量α3=αminであった場合(ステップS7でY)、燃料消費量α3を推論したときの入力データI3中のギア比Gpは、現ギア比Gpと同じであると判断し(ステップS8でY)、ステップS9のシフト指示を行うことなく、直ちにステップS10に進む。ステップS10において、CPU10aは、入力データI3に対して推論されたアクセル開度β3を、理想アクセル開度指示部13cに指示すると共に、検出処理によって検出された現アクセル開度βpを現アクセル開度指示部13dによって指示させるアクセル指示を行った後、ステップS11に進む。
【0036】
これに対して、現燃料消費量αp≦αminであった場合(ステップS7でN)、現状の走行状態で省燃費運転ができているとして、シフト指示も、アクセル指示も行うことなく、直ちにステップS11に進む。ステップS11においては、現在の燃費状態を表示する処理を行う。具体的には、例えば、現燃料消費量αpが燃料消費量αminより少ない場合(ステップS7でN)、現状の燃費状態が一番良い旨を表示する。一方、現燃料消費量αpが燃料消費量αminより多い場合(ステップS7でY)、現燃料消費量αpと燃料消費量αminとの差分が大きくなるに従って、燃費状態が悪くなるように表示する。
【0037】
以上のことから明らかなように、速度、負荷係数、ギア比が入力となる走行状態情報に相当し、アクセル開度が出力となる走行状態情報に相当する。また、空気圧Aが車両状態情報に相当する。
【0038】
本実施形態における学習・推論では、ファジィ化ニューロを用いている。ファジィ化ニューロとは、従来のニューラルネットワークとファジィ推論との互いの長所を融合させたものである。このファジィ化ニューロは、ファジィ推論において一般的に用いられている台形状のメンバーシップ関数(以下、MF)というフィルタ関数と、重みwを持った素子を基本構成要素としている。このMFは、図6に示すように、入力データの度数分布を正規分布に近似することにより表現している。
【0039】
図6にファジィ化ニューロのネットワーク構成を示す。基本的なネットワーク構成としては、正規化テーブルNT1〜NT4からなる入力部、パターンセットPS1〜PS3、パターンテーブルPT1及びPT3の3層構造からなる前段部と、パターンセットPS4及びPS5、正規化テーブルNT5及びNT6の2層構造からなり、前段部を反転させたような後段部とからなっている。入力部では、入力データはそれぞれ正規化テーブルNT1〜NT4にて正規化データに変換される。正規化された各入力データはそれぞれMFに入力され、そこで合致度に変換される。
【0040】
次段のパターンセットPS1〜PS3は、MFの集合体で構成され、各MFにより得られた合致度を、重みを用いて合成したものを出力とする。出力部のパターンテーブルPT1及びPT2では、複数のパターンセットPS1〜PT3から出力される合致度の中で最大のものを後段部へ出力する。後段部において、パターンセットPS4及びPS5では、パターンテーブルPT1及びPT2からの出力のうち、閾値を超えたものが出力され、その合致度によってリンク上のMFを変形し、後段の正規化テーブルNT5及びNT6に伝達する。正規化テーブルNT5及びNT6においては、伝達されたMF形状を合成したものの重心を取るなどしてデ・ファジィ化して、教示された出力データと等価な次元を持つ連続値に変換する。
【0041】
また、学習手段として働く、学習処理では、検出処理により検出された速度、傾斜角度、負荷係数、ギア比を入力データ、アクセル開度、燃料消費量を教師信号として、メンバーシップ関数の形状変更やパターンセットの自動生成を行うが、このファジィ化ニューロでは1件の教師信号ごとに学習するのではなく、一定数蓄積後にまとめて学習するため、高速学習が可能となっている。
【0042】
なお、学習を行う際、速度、燃料消費量、アクセル開度は次に示す条件でフィルタリングされる。例えば、速度については、5km/h以下を停止とみなし、0km/hとする。燃料消費量については、1cc以下をそれ以上改善できないとみなし、0ccとする。アクセル開度については、5%以下を電圧変動によるノイズとみなし、0%とする。
【0043】
上述した構成の運転支援装置によれば、検出処理による検出結果を用いて、速度、空気圧、負荷係数、ギア比を入力とし、アクセル開度、燃料消費量を出力とした学習が行われ、その学習結果を用いて運転支援が行われる。つまり、走行中に行われる学習により、その車両に対応した速度、空気圧、負荷係数及びギア比と、アクセル開度や、燃料消費量との関係を得ることができ、予め速度、負荷係数及びギア比と、アクセル開度や、燃料消費量との関係を示すマップを作成する必要がない。このため、コストダウンを図ると共に、車両を選ばずに搭載することができる。
【0044】
しかも、タイヤの空気圧によって燃費が変動することに着目し、タイヤの空気圧を入力として、学習、推論を行うようにしている。これにより、例えば空気圧が低い状態であっり、燃費が悪くなってしまってもその空気圧に応じた燃料消費量が推論されるため、タイヤの空気圧に適した運転支援を行うことができる。
【0045】
なお、上述した第1実施形態では、空気圧信号S2からタイヤの空気圧Aを検出し、検出した空気圧Aを入力して、学習、推論を行っていた。しかしながら、例えば、空気圧信号S2を直接入力し、学習、推論することも考えられる。
【0046】
また、上述した第1実施形態では、燃費情報として単位時間当たりの燃料消費量を用いていたが、例えば、車両速度/アクセル開度で求められる効率係数を、燃費情報として用いることも考えられる。この場合、燃料消費量を計測する燃料計を用いなくても、燃費情報を得ることができるため、燃料計を搭載していない車両でも利用することができる。
【0047】
また、空気圧信号S2から検出したタイヤの空気圧Aが異常な値であった場合、その旨をドライバに報知する手段を設けたり、また、無線を使って管理センタに報知する手段を設けることも考えられる。
【0048】
第2実施形態
また、上述した第1実施形態では、車両状態情報として、タイヤの空気圧Aを入力データとして、学習、推論を行っていた。しかしながら、車両の自重情報を入力し、学習、推論させることも考えられる。車両の自重情報は、車両に搭載した公知の自重計により求めることができる。これにより、例えば重い荷物を積載した状態であり、燃費が悪くなってしまうような状況であっても自重に応じた燃料消費量が推論されるため、自重に適した運転支援を行うことができる。
【0049】
以上実施の形態に基づいて本発明を説明したが、本発明は上述した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨の範囲内で種々の変形や応用が可能である。ここで、本発明の要旨をまとめると以下のようになる。
【0050】
(1) 車両の走行状態情報を検出する走行状態検出手段と、
前記車両の状態に関する車両状態情報を検出する車両情報検出手段と、
前記車両の燃費情報を検出する燃費検出手段と、
前記検出された走行状態情報及び前記車両状態情報を入力とし、前記検出された燃費情報を出力とする学習を行う学習手段と、
前記学習手段が行った学習結果を用いて、入力された走行状態情報及び車両状態情報に対する燃費情報を推論する推論手段と、
前記推論手段に走行状態情報及び車両状態情報を入力する入力手段と、
前記燃費検出手段により検出された現燃費情報と、前記推論手段により推論された燃費情報との比較に基づいて、運転の支援を行う支援手段とを備えたことを特徴とする運転支援装置。
【0051】
(2) (1)に記載の運転支援装置であって、
前記燃費検出手段は、単位時間当たりの燃料消費量を、前記燃費情報として検出することを特徴とする運転支援装置。
【0052】
(3) (1)に記載の運転支援装置であって、
前記燃費検出手段は、車両速度とアクセル開度から求められる効率係数を、前記燃費情報として検出することを特徴とする運転支援装置。
【0053】
(4) (1)〜(3)何れかに記載の運転支援装置であって、
前記入力手段は、前記走行状態検出手段により検出された現走行状態情報を前記推論手段に入力することを特徴とする運転支援装置。
【0054】
(5) (4)に記載の運転支援装置であって、
前記支援手段は、前記燃費検出手段によって検出された現燃費情報と、前記推論手段によって、前記現走行状態情報から推論された燃費情報との比較に基づき、車両の現燃費状態を検出し、運転者に報知することを特徴とする運転支援装置。
【0055】
(6) (1)〜(5)何れか記載の運転支援装置であって、
前記走行情報検出手段は、前記学習手段の入力となる入力走行状態情報と、前記学習手段の出力となる出力走行状態情報とを検出し、
前記学習手段は、前記検出された入力走行状態情報を入力とし、前記検出された燃費情報及び前記出力走行状態情報を出力とした学習を行い、
前記入力手段は、前記走行状態検出手段により検出された現入力走行状態情報を前記推論手段に入力し、
前記推論手段は、前記学習手段が行った学習結果を用いて、前記入力された現入力走行状態情報に対する燃費情報及び出力走行状態情報を推論し、
前記支援手段は、前記燃費検出手段により検出された現燃費情報が、前記推論手段により推論された燃費情報より悪いとき、車両の走行状態を、前記推論手段により推論された出力走行状態情報にするように促すことを特徴とする運転支援装置。
【0056】
(7) (6)記載の運転支援装置であって、
車両のアクセル開度を前記出力走行状態情報とし、
前記支援手段は、前記燃費検出手段により検出された現燃費情報が、前記推論手段により推論された燃費情報より悪いとき、前記推論手段により推論されたアクセル開度に促すことを特徴とする運転支援装置。
【0057】
(8) (1)〜(7)何れか記載の運転支援装置であって、
前記入力手段は、前記推論手段に複数パターンの走行状態情報を入力し、
前記支援手段は、前記複数パターンの走行状態情報の入力に対して前記推論手段が推論した燃費情報のうち、最も良いものより、前記燃費検出手段により検出された現燃費情報が悪いとき、車両の走行状態を、前記最も良い燃費情報の推論時に入力した走行状態情報にするように促すことを特徴とする運転支援装置。
【0058】
(9) (8)記載の運転支援装置であって、
前記走行状態検出手段は、前記車両のギア比を含む走行状態情報を検出し、
前記入力手段は、複数パターンのギア比と、前記走行状態検出手段が検出した現走行状態情報のうち、前記ギア比を除いたものとの組み合わせを推論手段に入力し、
前記支援手段は、前記複数パターンのギア比の入力に対して前記推論手段が推論した燃費情報のうち、最も良いものより、前記燃費検出手段により検出された現燃費情報が悪いとき、前記最も良い燃料情報の推論時に入力したギア比にするように促すことを特徴とする運転支援装置。
【0059】
(10) (6)〜(9)記載の運転支援装置であって、
前記走行状態検出手段が、前記車両の速度を、前記走行状態情報として検出し、
前記学習手段が、前記車両の速度を入力として学習を行い、
前記入力手段は、前記車両の現速度を前記推論手段に入力することを特徴とする運転支援装置。
【0060】
(11) (1)〜(10)何れか記載の運転支援装置であって、
前記走行状態検出手段は、車両の速度、車両エンジンの負荷情報、車両のギア比を走行状態情報として検出することを特徴とする運転支援装置。
【0061】
(12) (11)記載の運転支援装置であって、
前記走行状態検出手段は、アクセル開度/エンジン回転数を負荷情報として検出することを特徴とする運転支援装置。
【0062】
(13) (12)記載の運転支援装置であって、
前記走行状態検出手段は、車両の速度/エンジン回転数をギア比として検出することを特徴とする運転支援装置。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】本発明の運転支援装置の基本構成図である。
【図2】本発明の運転支援装置の一実施形態を示すブロック図である。
【図3】図2に示す運転支援装置を構成する液晶ディスプレイの表示例を示した図である。
【図4】図2に示す運転支援装置を構成するCPU10aの検出処理における処理手順を示すフローチャートである。
【図5】図2に示す運転支援装置を構成するCPU10aの支援処理における処理手順を示すフローチャートである。
【図6】本実施形態の学習・推論で用いられているファジ化ニューロネットワークの一例である。
【符号の説明】
【0064】
10a−1 走行状態検出手段
10a−2 車両状態検出手段
10a−3 燃費情報検出手段
10a−4 学習手段
10a−5 推論手段
10a−6 入力手段
10a−7 支援手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の走行状態情報を検出する走行状態検出手段と、
前記車両の状態に関する車両状態情報を検出する車両情報検出手段と、
前記車両の燃費情報を検出する燃費検出手段と、
前記検出された走行状態情報及び前記車両状態情報を入力とし、前記検出された燃費情報を出力とする学習を行う学習手段と、
前記学習手段が行った学習結果を用いて、入力された走行状態情報及び車両状態情報に対する燃費情報を推論する推論手段と、
前記推論手段に走行状態情報及び車両状態情報を入力する入力手段と、
前記燃費検出手段により検出された現燃費情報と、前記推論手段により推論された燃費情報との比較に基づいて、運転の支援を行う支援手段とを備えたことを特徴とする運転支援装置。
【請求項2】
請求項1記載の運転支援装置であって、
前記車両状態情報は、前記車両に装着されたタイヤの空気圧情報であることを特徴とする運転支援装置。
【請求項3】
請求項1又は2記載の運転支援装置であって、
前記車両状態情報は、前記車両の自重情報であることを特徴とする運転支援装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−70704(P2006−70704A)
【公開日】平成18年3月16日(2006.3.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−251266(P2004−251266)
【出願日】平成16年8月31日(2004.8.31)
【出願人】(000006895)矢崎総業株式会社 (7,019)
【Fターム(参考)】