説明

過剰興奮性障害、およびイオンチャネル機能障害と関係する疾患の治療のためのペプチド化合物

本発明は、過剰興奮性と関係する疾患を治療するためのペプチド化合物類の使用を対象とする。本発明はまた、イオンチャネルの機能障害と関係する疾患を治療するためのペプチド化合物類の使用も対象とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、過剰興奮性組織と関係する疾患など、過剰興奮性と関係する疾患を治療するためのペプチド化合物類の使用を対象とする。本発明はまた、イオンチャネルの機能障害と関係する疾患を治療するためのペプチド化合物類の使用も対象とする。
【背景技術】
【0002】
本出願は、その開示が本明細書に組み込まれている2006年10月12日出願の欧州特許出願公開第06021470.7号、2006年10月12日出願の欧州特許出願公開第06021469.9号、2006年6月30日出願の欧州特許出願公開第06013655.3号および2006年11月22日出願の欧州特許出願公開第06024241.9号の優先権を主張するものである。
【0003】
特定のペプチドは中枢神経系(CNS)活性を有することが解っており、てんかんおよび他のCNS障害の治療において有用である。これらのペプチドは参照により本明細書に組み込まれている米国特許第5378729号および米国特許第5773475号に記載されている。
【0004】
国際公開第02/074297号は、末梢神経障害疼痛に関連する異痛症の治療のために有用な医薬組成物の調製のための、ペプチド化合物の使用に関する。国際公開第02/074784号は急性および慢性の疼痛の種々の型および症状、特に非神経障害性の炎症性疼痛、例えば関節のリューマチ性疼痛または/および二次的な炎症性骨関節炎の疼痛を治療するための抗侵害受容特性を示すペプチド化合物の使用に関する。
イオンチャネルは、それらの制御様式によって、電位依存性イオンチャネルとリガンド依存性イオンチャネルとに分けることができる。リガンド依存性イオンチャネルはまた、受容体とも称される。電位依存性イオンチャネルの例は、電位依存性ナトリウムチャネル、電位依存性カルシウムチャネル、電位依存性カリウムチャネル、および電位依存性塩素イオンチャネルである。リガンド依存性イオンチャネルの例は、ニコチン性アセチルコリン受容体、リアノジン受容体(カルシウム放出チャネル)、環状ヌクレオチド依存性受容体、ATP受容体、GABA−A受容体、グルタミン酸−NMDA受容体、グリシン受容体、5−HT3受容体、ならびに酸感受性イオンチャネル(ASIC)およびTRP受容体などのpH感受性チャネルである。
【0005】
過剰興奮性とは、本明細書では中枢または末梢神経系ニューロンのシナプス入力に対する応答性における異常増加として定義される。さらに、過剰興奮性はまた、筋細胞膜などの任意の興奮性膜の生理学的信号または病態生理学的信号によって引き起こされる興奮毒性に対する応答性における異常増加とも呼ばれる。
【0006】
過剰興奮性組織についての例は、神経支配されるあらゆる組織例えば中枢または末梢神経組織、筋肉組織、およびその他の臓器組織などである。
【0007】
過剰興奮性と関連する疾患の例は、チャネル病、不安症およびストレス疾患である。
【0008】
過剰興奮性は、イオンチャネルの機能障害によって誘発され得る。イオンチャネルは、それらの制御様式によって、電位依存性イオンチャネルとリガンド依存性イオンチャネルとに分けることができる。リガンド依存性イオンチャネルはまた、受容体とも称される。電位依存性イオンチャネルの例は、電位依存性ナトリウムチャネル、電位依存性カルシウムチャネル、電位依存性カリウムチャネル、および電位依存性塩素イオンチャネルである。リガンド依存性イオンチャネルの例は、ニコチン性アセチルコリン受容体、リアノジン受容体(カルシウム放出チャネル)、環状ヌクレオチド依存性受容体、ATP受容体、GABA−A受容体、グルタミン酸−NMDA受容体、グリシン受容体、5−HT3受容体、ならびに酸感受性イオンチャネル(ASIC)およびTRP受容体などのpH感受性チャネルである。
【0009】
イオンチャネルの機能障害は、遺伝子的またはその他の原因、例えば組織の損傷などを有し得る。
【0010】
イオンチャネルのサブユニットまたはそれらを調節するタンパク質をコードする遺伝子の1つまたは複数の変異によって引き起こされる疾患は、チャネル病と呼ばれる。イオンチャネル変異に起因することが知られているはっきりとした多数の機能障害が存在する。それらは、殆どの場合、神経または筋肉細胞の意識興奮性の症状の発現を臨床的に特徴とする通常は遺伝性障害の異種グループを含む。イオンチャネルの構成のための遺伝子は、哺乳動物の中で高度に保存されており、1つの状態、高カリウム血性周期性麻痺、が純血種の競走馬Impressiveの子孫で最初に確認された。確認されているチャネル病の周知の例は、骨格筋の疾患(高−、低−および正常カリウム血性(高、低および正常カリウム血中濃度)周期性麻痺、発作性ジストニア、先天性ミオトニーおよび先天性パラミオトニーなど)、興奮性の中枢神経障害(一過性運動失調および遺伝性てんかんのいくつかの形態など)、ならびに心不整脈(QT延長症候群)である。
【0011】
イオンチャネル機能障害はまた、変異として分類されるほど十分に重くはないが、代わりに多型性と呼ばれるイオンチャネル遺伝子における変異によっても引き起こされる。かかる多型性は、これら遺伝子変異体の保因者における独特の薬物反応の一因となり得る(Kass、RS、J Clin Invest(2005年)、115:1986~1989頁)。
【0012】
電位依存性ナトリウムチャネルは、興奮細胞における活動電位の発生および伝播に関与する。組織の興奮性は、主として活性化に使用可能である電位依存性ナトリウムチャネルの数に依存する。活性化に使用可能であるナトリウムチャネルの割合は、ミリ秒のタイムスケールで起こる速い不活性化、および数秒または数分で起こる遅い不活性化によって調節される。
【0013】
ナトリウムチャネルをコードする遺伝子における変異は、多数の特徴ある疾患を引き起こすことが知られている。ヒトの疾患と関連する最も遺伝性のナトリウムチャネル変異は、不活性化過程を改変し、それ故、不活性状態への移行によってもたらされる電気的刺激の持続時間を改変する(Jurkat-Rott、K、J Clin Invest(2005年)、115:2000~2009頁)。最もよく特徴付けられている変異は、骨格筋ナトリウムチャネルのαサブユニットをコードするSCN4Aナトリウムチャネル遺伝子におけるものである。次の疾患が、SCN4A遺伝子についてのNCBIのOMIMデータベースのリストに載っている。
・腹痛、家族性、カリウム悪化性MIM: 603967
・高カリウム血性周期性麻痺MIM: 170500
・低カリウム血性周期性麻痺MIM: 170400
・先天性ミオトニー、異型、アセタゾラミド応答性MIM: 608390
・先天性パラミオトニーMIM: 168300
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】欧州特許出願公開第06021470.7号
【特許文献2】欧州特許出願公開第06021469.9号
【特許文献3】欧州特許出願公開第06013655.3号
【特許文献4】欧州特許出願公開第06024241.9号
【特許文献5】米国特許第5378729号
【特許文献6】米国特許第5773475号
【特許文献7】国際出願PCT/EP第2005/010603号
【特許文献8】国際公開第02/074297号
【特許文献9】国際公開第02/074784号
【非特許文献】
【0015】
【非特許文献1】Kass、RS、J Clin Invest(2005年)、115:1986~1989頁
【非特許文献2】Jurkat-Rott、K、J Clin Invest(2005年)、115:2000~2009頁
【非特許文献3】Rainnieら、J Neuroscience 2004年 24(14):3471~3479頁
【非特許文献4】Erringtonら、Neuropharmacology、2006年、50:1016~1029頁
【非特許文献5】Lehmann-Hornら、Current Neurology and Neuroscience Reports(2002年) 2:61~69頁
【非特許文献6】Farber, NBら、Molecular Psychiatry(2002年)、7:726~733頁
【非特許文献7】Lehmann-Hom、Jurkat-Rott www.channelopathies.org
【非特許文献8】Meisler MH、Kearney JA. J Clin Invest. 2005年8月;115(8):2010~7。PMID: 16075041
【非特許文献9】Siep Eら、Neurobiol Dis. 2002年3月、9(2):258~68頁。
【非特許文献10】Victor M、Ropper AH Adams and Victor’s Principles of Neurology. 第7版、McGraw-Hill New York 2001年。
【非特許文献11】Yang Yら、J Med Genet、2004年3月、41(3):171~4頁
【非特許文献12】J. MarchによるAdvanced Organic Chemistry、John Wiley and Sons、ニューヨーク州ニューヨーク、16~18(1985年)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
ジストニア(文字通りには、「異常な筋肉の緊張」)は、無意識の持続した筋肉収縮を含む神経の運動障害を説明するために用いられる一般名である。ジストニアは、体全体(全身性)の筋肉、体の一部(分節性)の筋肉に影響を及ぼす可能性があり、あるいは特定の筋肉または筋群(限局性)に限定される可能性がある。初期のジストニアは、大脳基底核等の運動機能と関係しているそのような脳の一部において始まるらしい中枢神経系の病変によって引き起こされる。電位依存性ナトリウムチャネルの機能障害と関連するジストニアの例は、発作性ジストニアである。
【0017】
筋力低下(または「力の欠乏」)は、個人の一般的な身体の健康を前提として期待されるはずの程度までヒトの筋肉により力を出すことができないことである。体力テストは、しばしば、筋疾患の診断中に用いられ、その後で病因を確認することができる。
【0018】
その用語は2つの別のさらなる特定の用語、真性脱力および認知脱力を包含する。真性脱力(または「他覚的脱力」)とは、筋肉によって出される瞬発力が期待されるより小さい場合を表す。例えば、患者が筋萎縮性側索硬化症(ALS)に罹っている場合、運動ニューロンが損傷されており、もはや筋肉を刺激して正常な力を出すことができない。認知脱力(または「自覚的脱力」)とは、所定量の力を出すために標準を超える努力が必要であると患者には思われる状態を表す。例えば、慢性疲労症候群の人は、特に疲れきっていると感じるときは一組の階段を必死で登ろうとするかもしれないが、その人の筋肉の強さが客観的に測定される場合(例えば、彼等が自分の足で押すことができる最大重量)それは基本的に正常である。状態によっては、例えば重症筋無力症などでは、筋力は休息しているときは正常であるが、真の脱力感は、筋肉が運動にさらされた後に発生する。
【0019】
ミオトニーは、随意収縮または電気的な刺激の後の筋肉の緩慢な弛緩を特徴とする神経筋障害である。一般に、筋肉を弛緩させるには繰返しの努力を必要とし、その状態は筋肉が温まった後に改善する。しかしながら、長引く厳しい運動は、またその状態を誘発するかもしれない。障害のある個人は、物体を握った手を離す悩みを持ち、または座っている位置から立ち上がるのが困難であり硬くぎこちない足取りの持ち主であり得る。女性にあっては、妊娠中、ミオトニーの症状はより頻繁に経験される。
【0020】
ミオトニーは、全ての筋群に影響を及ぼし得る。それは、後天性または遺伝性であり得、筋肉膜における異常によって引き起こされる。ミオトニーは、筋強直性筋ジストロフィーおよびチャネル病の患者で一般に見られる症状である。チャネル病に起因するミオトニーは、寒さへの暴露、カリウムが豊富な食物(例えばバナナなど)を食べること、および激しい活動によって悪化される可能性がある。
【0021】
無筋力症は、いくつかの顕著な特色を示す障害の一群であり、本質的なものは、筋肉の変動する脱力感と易疲労感である。通常、常時ある程度の脱力感があるが、活動によってそれは一層悪くなる。その脱力感と易疲労感は、臨床的症状および特殊な電気生理学的検査によって明らかにされる神経筋接合部の生理学的異常を反映する。
【0022】
麻痺は、1つまたは複数の筋群についての筋機能の完全喪失である。主要な原因は、脳卒中、外傷、灰白脊髄炎、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、ポツリヌス中毒症、二分脊髄、およびギラン・バレー症候群である。麻痺は、神経系または脳、特に脊髄に対する損傷によって最も頻繁に引き起こされる。麻痺は、しばしば、患部における感覚の喪失を含む。
【0023】
先天性パラミオトニー(PC)は、「奇異性の」ミオトニーを特徴とする希有な先天性常染色体優勢疾患である。このタイプのミオトニーは、それが運動により悪化し、一方古典的なミオトニーは、先天性ミオトニーで見られるように、運動により軽減されるために、奇異性と名づけられている。PCはまた、それが低温によって誘発され得ることで区別される。断続的な麻痺性障害がより一般的であるが、PCの患者は、カリウム誘発性の麻痺も有し得る。PCは、一般的には、生命の最初の10年の間に姿を現し、100%の浸透率を有する。この障害を持つ患者は、一般に顔面または上肢にミオトニーを示す。下肢は、一般に、あまり影響されない。一方、何らかのその他の関係する障害が筋萎縮をもたらしてもこれは通常はPCに関する状況ではない。この疾患はまた、高カリウム血性周期性麻痺としても現れることがあり得、この2つの障害が、実際にはっきりと区別できるか否かについての議論がある。患者は、一般的に、局所的な脱力感まで続き得る筋肉のこわばりに不平を言う。この筋肉のこわばりは、先天性ミオトニーとは対照的に歩いて取り除くことができない。これらの症状は、冷たい環境において増加する(時々誘発される)。例えば何人かの患者は、アイスクリームを食べると咽頭の硬化を引き起こすことを報告している。その他の患者については、運動が、ミオトニーおよび/または脱力感の症状を常に誘発する。この典型的な症状は、スクワットまたは反復的な拳握りの途中である。何人かの患者はまた、特定の食品が先天性パラミオトニーの症状を誘発し得ることを示している。極端な例は、ニンジンとスイカがこれらの症状を誘発し得ることを報告している。この障害の標準的な定義は、この障害の定義において永続的な脱力感を排除する。しかしながら、実際には、これは厳密には文字通りに固守されてはいない。先天性パラミオトニーの診断は、患者の症状および既往歴の評価に基づいてなされる。ミオトニーは運動/動作により増大しなければならず、通常は低温中で悪化するはずである。永続的な脱力感を示す患者は、PCを有することを通常は特徴としない。筋電図検査法を先天性パラミオトニーと先天性ミオトニーの間を区別するために使用することができる。臨床医学者はまた、患者が、PC、高カリウム血性周期性麻痺、またはカリウムで悪化したミオトニーの1つを有するかどうかを決定するために、患者に症状の発現またはミオトニーおよび脱力感/麻痺を誘発することを試みてもよい。SCN4A遺伝子のゲノム配列決定は、最も確実な診断決定因子である。
【0024】
患者によっては先天性パラミオトニーの症状に対応するための治療を必要としない。しかしながら、その他の患者は、彼等の筋肉のこわばりに対する治療を必要とし、しばしば、メキシレチンが役立つことがわかる。他にはアセタゾールアミドが同様に役立つことが見出されている。ミオトニーの引き金となる諸現象を回避することもミオトニー予防の効果的な方法である。
【0025】
先天性パラミオトニー(ならびに、高カリウム血性周期性麻痺およびカリウムで悪化するミオトニー)は、SCN4Aにおける変異によって引き起こされる。これらの変異による患者の表現型を、下の表1に示す。これらの変異は、コード化したナトリウムチャネルの速い不活性化に影響を及ぼす。変異によっては変化した活性化および不活性化をもたらすという指摘も存在する。チャネル動態におけるこれらの変化の結果は、筋興奮に続いて引き伸ばされた内向き(脱分極)電流が存在することである。また、チャネルの動態の電圧感度における変化による「ウインドウ電流」の導入も存在する。
【0026】
【表1】

【0027】
過剰興奮性と関連する疾患または/およびイオンチャネルの機能障害と関連する疾患は、電位依存性またはリガンド依存性イオンチャネル類、例えば、電位依存性カルシウムチャネル、電位依存性カリウムチャネル、電位依存性塩素イオンチャネル、ニコチン性アセチルコリン受容体、リアノジン受容体(カルシウム放出チャネル)、環状ヌクレオチド依存性受容体、ATP受容体、GABA−A受容体、グルタミン酸−NMDA受容体、グリシン受容体、5−HT3受容体、ならびに酸感受性イオンチャネル(ASIC)およびTRP受容体などのpH感受性チャネルなどの遺伝子機能障害によって引き起こされ得る。これらのイオンチャネルの機能障害と関連する疾患としては、とりわけ、運動失調、ミオトニー、無筋力症、QT延長症候群、てんかん症候群、および高熱症が挙げられる。
【0028】
イオンチャネルのサブユニットまたはそれらを調節するタンパク質をコードする遺伝子における変異および多型性以外の理由によって引き起こされ得る過剰興奮性と関連するさらなる疾患の例は、不安症およびストレスである。ストレスおよびその他の不安を惹起する刺激は、扁桃体ニューロンの過剰興奮性を引き起こし得る(Rainnieら、J Neuroscience 2004年 24(14):3471~3479頁)。扁桃体は、情動に対する重要な脳中枢であるので、急性の激しいストレスまたは慢性の軽度のストレスは、例えば外傷後ストレス障害に罹っている患者に見られるような情動の持続的変化をもたらし得る。
【0029】
ラコサミドは、電位依存性Naチャネルの速い不活性化ゲーティングに作用することによって神経細胞の興奮性にその効果を及ぼさない(Erringtonら、Neuropharmacology、2006年、50:1016~1029頁)。
【課題を解決するための手段】
【0030】
本発明は、本明細書において定義される式(I)、(II)、または/および(III)の化合物、特にラコサミドが、電位依存性ナトリウムチャネルの遅い不活性化を、活性化挙動および速い不活性化挙動を正常のままにしておきながら、選択的に促進することができることをはっきりと示す。これは、式(I)、(II)、または/および(III)の化合物の作用の新規な機序を構成し、かくして過剰興奮性と関係する疾患にポジティブに影響を及ぼすことができる。この作用の新規な機序によって、式(I)、(II)、または/および(III)の化合物は、例えば変異したチャネルにおいて見られる削減された遅い不活性化などの過剰なナトリウムチャネル機能を効果的に正常化させることができる。さらに、この新規な作用の機序は、その他のイオンチャネル、例えば、電位依存性カルシウムチャネル、電位依存性カリウムチャネル、電位依存性塩素イオンチャネル、ニコチン性アセチルコリン受容体、リアノジン受容体(カルシウム放出チャネル)、環状ヌクレオチド依存性受容体、ATP受容体、GABA−A受容体、グルタミン酸−NMDA受容体、グリシン受容体、5−HT3受容体、ならびに酸感受性イオンチャネル(ASIC)およびTRP受容体などのpH感受性チャネルなどの過剰な機能を補償することができる。
【0031】
式(I)、(II)、または/および(III)の化合物の作用様式は、電位依存性ナトリウムチャネルが関係する疾患の治療に用いられる普通の薬物のそれとは異なる。電位依存性ナトリウムチャネルが関係する疾患の治療に用いられる普通の薬物は、多くの場合、電位依存性ナトリウムチャネルの速い不活性化に影響を及ぼし、それ故、興奮組織における信号伝播に影響を及ぼす。これに対して、式(I)、(II)、または/および(III)の化合物は、遅い不活性化曲線のより負側の電位へのシフトを引き起こし、それによって興奮性を削減するが、信号伝播には影響を及ぼさない。
【0032】
Lehmann-Hornら、(Current Neurology and Neuroscience Reports(2002年) 2:61~69頁)は、突発性家族性周期性麻痺などの全ての既知の一時的脱力感の表現型における非興奮性に対する共通の機序は、ナトリウムイオンチャネルを不活性化する長続きする脱分極であることを報告している。本発明の化合物により、不活性化を少なくとも部分的にかかる患者において元の状態に戻すことができる。
【0033】
過剰興奮性と関係する疾患の治療または/およびイオンチャネルの機能障害と関係する疾患の治療に対する式(I)、(II)、または/および(III)の化合物の使用は、報告されていない。従って、本発明は、過剰興奮性と関係する疾患の予防、軽減または/および治療のための医薬組成物の調製のための式(I)、(II)、または/および(III)の化合物の使用に関する。本発明はまた、イオンチャネルの機能障害と関係する疾患の予防、軽減または/および治療のための医薬組成物の調製のための式(I)、(II)、または/および(III)の化合物の使用にも関する。
【0034】
本発明との関連で、過剰興奮性としては次のものが挙げられる:
・イオンチャネルと関係する運動亢進:
ラコサミドは、今までにない様式で電位依存性ナトリウムチャネルと相互作用し(実施例1および4)、すべての他の薬物とは対照的にそれはこれらチャネルの速い不活性化よりむしろ遅い不活性化を促進する。これは例えばナトリウムチャネル病によって誘発される病的なナトリウムチャネルの運動亢進を減らす効果的な方法である。ナトリウムチャネルの遅い不活性化を促進することによって、ナトリウムチャネルとは異なるチャネルと関係するチャネル病の運動亢進も減らすことができる。
・神経変性をもたらす運動亢進:
例えば、欠陥のあるナトリウムチャネル活性によって媒介されるような過剰興奮性は、神経変性(興奮毒性と呼ばれる現象)をもたらす。ラコサミドは、興奮毒性を効果的に阻止し(実施例3)、かくして過剰興奮性の有毒作用を防止する。従ってこれらの作用は、この場合結果が影響され、過剰興奮性単独ではないので、過剰興奮性に対する直接の作用とは区別することができる。かかる作用は、進行中の神経変性による多くの中枢神経系疾患、例えばパーキンソン病、アルツハイマー病、双極性障害および統合失調症に対する根本的な原因である。
・行動性運動亢進(すなわち、反応性亢進)
行動性レベルの過剰興奮性に関しては、不安症、外傷後ストレス障害、または強迫性障害のような疾患において見られるストレスに対する過剰な反応として現れる。行動性運動亢進は、例えばてんかんおよび神経因性疼痛のような障害において見られる細胞の過剰興奮性に必ずしも依存しない。ラコサミドは、行動性レベルに対しても過剰興奮性を減少するその能力を実証して、ストレス誘導性の不安症の症状を弱める(実施例2)。
【0035】
一実施形態において、過剰興奮性と関係する疾患は、過剰興奮性組織と関係する疾患である。
【0036】
別の実施形態において、過剰興奮性と関係する疾患は、行動性レベルにおける過剰興奮性と関係する疾患(すなわち、反応性亢進と関係する疾患)である。
【0037】
さらに別の実施形態において、過剰興奮性と関係する疾患は、神経変性と関係する疾患、例えば、パーキンソン病、アルツハイマー病、双極性障害および統合失調症などである。
【0038】
過剰興奮性と関係する疾患は、イオンチャネル、例えば電位依存性イオンチャネルまたはリガンド依存性イオンチャネル等の機能障害と関係する疾患であり得る。
【0039】
本発明の一実施形態において、イオンチャネルの機能障害と関係する疾患は、電位依存性ナトリウムチャネル、電位依存性カルシウムチャネル、電位依存性カリウムチャネル、および電位依存性塩素イオンチャネルから選択される電位依存性イオンチャネルの機能障害と、または、ニコチン性アセチルコリン受容体、リアノジン受容体、環状ヌクレオチド依存性受容体、ATP受容体、GABA−A受容体、グルタミン酸−NMDA受容体、グリシン受容体、5−HT3受容体、およびpH感受性チャネルから選択されるリガンド依存性イオンチャネルの機能障害と関係する。
【0040】
イオンチャネルの機能障害と関係する疾患は、電位依存性イオンチャネルの機能障害と関係する可能性がある。電位依存性ナトリウムチャネルの機能障害と関係する疾患は、健康な被験者と比較して電位依存性ナトリウムチャネルの変更された不活性化、特に変更された遅い不活性化、と関係する疾患であり得る。電位依存性ナトリウムチャネルの機能障害と関係する疾患はまた、健康な被験者と比較してナトリウムチャネルの速い不活性化が変更されている電位依存性ナトリウムチャネルの変更された不活性化と関係する疾患であり得る。
【0041】
過剰興奮性と関係する疾患または/およびイオンチャネルの機能障害と関係する疾患において、ナトリウムチャネルの遅い不活性化の曲線は、影響される可能性があり、特に遅い不活性化の曲線は、健康な被験者の遅い不活性化曲線と比較して脱分極した電位にシフトする。かかる機能的変化は、本発明の化合物によって完全に、または少なくとも部分的に逆転させることができる。
【0042】
該電位依存性ナトリウムチャネルは、任意の既知のタイプの電位依存性ナトリウムチャネル、特に、筋肉および神経等の興奮性組織中に発現する任意のタイプであり得る。電位依存性ナトリウムチャネルまたは/およびそのサブユニットをコード化する遺伝子の例としては、SCN1A、(Na 1.1)、SCN2A(Na 1.2)、SCN4A(Na 1.4)、SCN5A(Na 1.5)、SCN8A(Na 1.6)、SCN9A(Na 1.7)、Na 1.8(SNSまたはPN3)、およびNa 1.9(NaN, SNS−2またはPN−5)が挙げられる。該電位依存性ナトリウムチャネルは、IV型αサブユニットSCN4Aを含むことができる。該電位依存性ナトリウムチャネルは、Na 1.2を含むこともできる。
【0043】
イオンチャネルの機能障害と関係がある疾患は、電位依存性ナトリウムチャネルとは異なるイオンチャネル、例えば、電位依存性カルシウムチャネル、電位依存性カリウムチャネル、電位依存性塩素イオンチャネル、ニコチン性アセチルコリン受容体、リアノジン受容体、環状ヌクレオチド依存性受容体、ATP受容体、GABA−A受容体、グルタミン酸−NMDA受容体、グリシン受容体、5−HT3受容体、またはpH感受性チャネルなどと関係があり得る。
【0044】
電位依存性ナトリウムチャネルとは異なるイオンチャネルの機能障害は、体液中、特に細胞内液中または/および細胞外液中、例えば血漿中などの電解質組成の変化を引き起こす可能性があり、その変化は、例えば、静止膜電位を変えることによってナトリウムチャネルの活性化または/および不活性化に影響を及ぼし得る。電解質組成の変化としては、Na、K、または/およびCl濃度またはpHの変化が挙げられる。電位依存性ナトリウムチャネルとは異なるイオンチャネルの機能障害はまた、シナプス前抑制または/およびシナプス後抑制の変化、ならびにシナプス伝達物質放出または/およびシナプス後の伝達物質の作用の変化を引き起こす可能性がある。電位依存性ナトリウムチャネルとは異なるイオンチャネルの機能障害は、過剰興奮性と関係のある疾患につながる可能性があり、それは電位依存性ナトリウムチャネルの活性のモジュレーターによって予防、軽減または/治療することができる。電位依存性ナトリウムチャネルとは異なるイオンチャネルの機能障害と関係のある疾患は、電位依存性ナトリウムチャネルの活性のモジュレーターによって、予防、軽減または/および治療することができる。
【0045】
電位依存性カルシウムチャネルまたは/およびそのサブユニットをコード化する遺伝子の例としては、CACNA1A、CACNA1S、CACNA1A、CACNB4が挙げられる。電位依存性カリウムチャネルまたは/およびそのサブユニットをコード化する遺伝子の例としては、KCNA1、KCNQ1、KCNQ2、KCNQ3、KCNQ4、KCNE1、KCNE2、hERGが挙げられる。塩素イオンチャネルまたは/およびそのサブユニットをコード化する遺伝子の例としては、CLCN1、CLCN5、CLCNKBが挙げられる。リガンド依存性イオンチャネルまたは/およびそのサブユニットをコード化する遺伝子の例としては、CHRNA4(ニコチンアセチルコリン受容体)、RYR1(リアノジン受容体)が挙げられる。
【0046】
本発明の別の実施形態において、本発明に関係する疾患は、チャネル病である。そのチャネル病は、本明細書に記載されている電位依存性ナトリウムチャネル、電位依存性カルシウムチャネル、電位依存性カリウムチャネル、電位依存性塩素イオンチャネル、ニコチン性アセチルコリン受容体、リアノジン受容体、環状ヌクレオチド依存性受容体、ATP受容体、GABA−A受容体、グルタミン酸−NMDA受容体、グリシン受容体、5−HT3受容体、または/およびpH感受性チャネルの機能障害と関係し得るものであり、その機能障害は、変異によって引き起こされ得る。そのチャネル病は、家族性カリウム悪化性腹痛(例えば、MIM: 603967)、無筋力症候群(例えば、MIM: 603967)、高カリウム血性周期性麻痺(例えば、MIM: 170500)、低カリウム血性周期性麻痺(例えば、MIM: 170400)、異型、アセタゾラミド応答性先天性ミオトニー(例えば、MIM: 608390)、および先天性パラミオトニー(例えば、MIM: 168300)から選択され得る。該チャネル病はまた、SCN4Aポリペプチドの次の変異:1693T、T704M、S804F、A1152D、A1156T、V1293I、G1306V、T1313A、T1313M、M1360V、M1370V、L1433R、R1448C、R1448H、R1448P、R1448S、R1456E、V1458F、F1473S、M1592V、G1702K、およびF17951の少なくとも1つと関係し得る。
【0047】
さらに別の実施形態において、本発明に関係する疾患、特にイオンチャネルの機能障害と関係する疾患は、筋障害である。
【0048】
本発明に関係する疾患は、骨格筋障害または/および運動障害、特に運動障害である。
【0049】
骨格筋または/および運動障害は、ミオトニーおよび麻痺から選択され、特に遺伝性ミオトニーおよび周期性麻痺、例えば、先天性パラミオトニー、カリウム悪化性ミオトニー、浮動性ミオトニー(myotonia fluctuans)、持続性ミオトニー(myotonia permanens)、アセタゾラミド反応性ミオトニー、高カリウム血性周期性麻痺、正常カリウム血性麻痺、発作性ジストニア、モルヴァン(Morvan)症候群およびアイザック(Isaak)症候群から選択され得る。
【0050】
麻痺は、影響された領域における感覚の喪失と関係し得る。さらに、麻痺は、脳卒中、外傷、灰白脊髄炎、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、ポツリヌス中毒症、二分脊髄、ギラン・バレー症候群、または/ならびに神経系もしくは/および脳、特に脊髄の損傷と関係し得る。
【0051】
骨格筋または/および運動障害はまた、運動失調から選択することができ、特に、一過性運動失調2、脊髄小脳運動失調6、および一過性運動失調から選択され得る。
【0052】
骨格筋または/および運動障害はまた、ミオトニーから選択することができ、特に、トムゼン(Thomsen)型ミオトニー、ベッカー(Becker)型ミオトニー、先天性ミオトニー、全身性ミオトニー、ミオトニアレヴィオール(myotonia levior)から選択され得る。
【0053】
ミオトニーは、随意収縮または電気的な刺激の後の筋肉の緩慢な弛緩と関係し得る。ミオトニーは、後天的および遺伝的ミオトニーから選ぶことができる。ミオトニーは、筋肉膜における異常によって引き起こされ得る。ミオトニーは、筋強直性筋ジストロフィーまたは/およびチャネル病(特に筋肉膜中の塩素、ナトリウムまたはカリウムイオンチャネルの変異によって引き起こされるチャネル病)と関係し得る。
【0054】
ミオトニーは、寒さにさらすこと、カリウムの豊富な食事(バナナを食べるなど)、または/および労作、例えば長期の厳しい体力行使によって悪化され得る。
【0055】
骨格筋または/および運動障害は、ミオキミアおよび低カリウム血性周期性麻痺1から選択される筋無力症であり得る。
【0056】
筋障害は、QT延長症候群3、QT延長症候群5、ジルヴェル・ランゲ・ニールセン症候群、誘発性QT延長症候群、QT延長症候群1、およびQT延長症候群2から選択される心不整脈であり得る。
【0057】
本発明に関係する疾患は、熱性けいれんを伴う全身性てんかん(GEFS+)、乳児重症ミオクロニーてんかん(SMEI)、良性家族性新生児乳児けいれん(BNIFS)、全身性強直−間代発作を伴う難治性小児てんかん(ICEGTC)、点頭けいれん(ウエスト症候群)、CACNB4機能障害と関係する全身性てんかん、良性家族性新生児けいれん1、良性家族性新生児けいれん2、および夜間前頭葉てんかんから選択されるてんかん症候群であり得る。
【0058】
本発明に関係する疾患は、肢端紅痛症および家族性直腸痛から選択される疼痛症候群(「発作性激痛障害」とも呼ばれる)であり得る。
【0059】
本発明に関係する疾患は、優性聴覚消失、悪性高熱症5、悪性高熱症1、多発性嚢胞腎1、デント病、バーター症候群、中心コア障害、およびCACNA1Aと関係する皮質過剰興奮性から選択され得る。
【0060】
さらに別の実施形態において、過剰興奮性と関係する疾患は、ナトリウムチャネル病、例えば表2aに掲げられている疾患から選択されるチャネル病であり得る。
【0061】
さらなる実施形態において、過剰興奮性と関係する疾患は、カリウムチャネル病、例えば表2bに掲げられているカリウムチャネルと関係する疾患から選択されるチャネル病である。
【0062】
さらなる実施形態において、過剰興奮性と関係する疾患は、カルシウムチャネル病、例えば表2bに掲げられているカルシウムチャネルと関係する疾患から選択されるチャネル病である。
【0063】
さらに別の実施形態において、過剰興奮性と関係する疾患は、塩素イオンチャネル病、例えば表2bに掲げられている塩素イオンチャネルと関係する疾患から選択されるチャネル病である。
【0064】
さらなる実施形態において、過剰興奮性と関係する疾患は、表2cに掲げられている疾患から選択される。
【0065】
別の実施形態において、イオンチャネルの機能障害と関係する疾患は、ナトリウムチャネル病、例えば、表2aに掲げられている疾患から選択されるチャネル病である。
【0066】
さらに別の実施形態において、イオンチャネルの機能障害と関係する疾患は、カリウムチャネル病、例えば、表2bに掲げられているカリウムチャネルと関係する疾患から選択されるチャネル病である。
【0067】
さらなる実施形態において、イオンチャネルの機能障害と関係する疾患は、カルシウムチャネル病、例えば、表2bに掲げられているカルシウムチャネルと関係する疾患から選択されるチャネル病である。
【0068】
さらに別の実施形態において、イオンチャネルの機能障害と関係する疾患は、塩素イオンチャネル病、例えば、表2bに掲げられている塩素イオンチャネルと関係する疾患から選択されるチャネル病である。
【0069】
表2. 興奮組織における電位依存性Naチャネルの遅い不活性化の選択的エンハンサーに対する標的疾患
【0070】
【表2】

【0071】
【表3】

【0072】
【表4】

【0073】
参考文献:
Farber, NBら、Molecular Psychiatry(2002年)、7:726~733頁
Lehmann-Hom、Jurkat-Rott www.channelopathies.org
Meisler MH、Kearney JA. J Clin Invest. 2005年8月;115(8):2010~7。PMID: 16075041
Siep Eら、Neurobiol Dis. 2002年3月、9(2):258~68頁。
Victor M、Ropper AH Adams and Victor’s Principles of Neurology. 第7版、McGraw-Hill New York 2001年。
Yang Yら、J Med Genet、2004年3月、41(3):171~4頁。
【0074】
本発明の化合物が電位依存性ナトリウムチャネルの遅い不活性化を増すことができ、それによって過剰興奮性に対して作用することの発見に基づいて、本発明の医薬組成物は、過剰興奮性と関係する疾患、例えば不安症または/およびストレスなどの治療に適するものと断定される。
【0075】
従って、本発明の別の実施形態において、過剰興奮性と関係する疾患は、不安症、ストレス、外傷後ストレス障害、強迫性障害および末梢神経過剰興奮性症候群から選択される疾患である。該疾患は、例えば外傷後ストレス障害において見られるストレス誘導性の不安症であり得る。
【0076】
過剰興奮性は、神経変性を引き起こし得る。本発明の実施例3は、本発明の化合物の神経保護的効果を実証している。一実施形態において、過剰興奮性と関係する疾患の予防、軽減または/および治療は、神経保護作用によって、特に短期間の神経保護作用によって達成される。本発明のこの実施形態において、過剰興奮性と関係する疾患は、神経損傷または/および神経変性と関係する状態である。特に、過剰興奮性と関係する疾患は、神経損傷または/ならびに神経変性疾患もしくは/および精神病性疾患によって引き起こされる神経変性と関係する状態である。神経変性疾患または/および精神病性疾患は、アルツハイマー病、パーキンソン病、双極性障害、および統合失調症から選択され得る。
【0077】
本発明の一実施形態において、過剰興奮性と関係する該疾患は、てんかん、てんかん重積状態、疼痛、神経因性疼痛、異痛症または痛覚過敏症ではない。別の実施形態において、過剰興奮性と関係する該疾患は、てんかんと関係ある状態または神経因性疼痛と関係のある状態ではない。さらなる実施形態において、本明細書に記載のてんかんおよび疼痛の特定の形態は、これらの否認の対象ではない。
【0078】
本発明の別の実施形態において、イオンチャネルの機能障害と関係する該疾患は、てんかん、てんかん重積状態、疼痛、神経因性疼痛、異痛症または痛覚過敏症ではない。別の実施形態において、イオンチャネルの機能障害と関係する該疾患は、てんかんと関係ある状態または神経因性疼痛と関係のある状態ではない。さらなる実施形態において、本明細書に記載のてんかんおよび疼痛の特定の形態は、これらの否認の対象ではない。
【0079】
さらに別の実施形態において、過剰興奮性と関係する該疾患は、筋萎縮性側索硬化症またはギラン・バレー症候群ではない。さらなる実施形態において、本明細書に記載の筋萎縮性側索硬化症または/およびギラン・バレー症候群は、この否認の対象ではない。
【0080】
さらに別の実施形態において、イオンチャネルの機能障害と関係する該疾患は、筋萎縮性側索硬化症またはギラン・バレー症候群ではない。さらなる実施形態において、本明細書に記載の筋萎縮性側索硬化症または/およびギラン・バレー症候群は、この否認の対象ではない。
【0081】
さらに別の実施形態において、イオンチャネルの機能障害と関係する該疾患は、アルツハイマー病、パーキンソン病、双極性障害、または統合失調症ではない。さらなる実施形態において、アルツハイマー病、パーキンソン病、双極性障害、または統合失調症から選択される神経損傷または/ならびに神経変性疾患もしくは/および精神病性疾患によって引き起こされる神経変性と関係する状態は、この否認の対象ではない。
【0082】
さらに別の実施形態において、過剰興奮性と関係する該疾患は、耳鳴りまたは強迫性障害ではない。
【0083】
式(I)、(II)または/および(III)の本発明の化合物、特にラコサミドは、良好な耐容性を示し、過剰興奮性と関係する疾患または/およびイオンチャネルの機能障害と関係する疾患の治療に対して一般に使われるその他の治療法よりも有利な立場にある。
【0084】
本発明の化合物特にラコサミドは、本明細書で定義されている疾患の一次治療において使用することができる。それ故、本発明の医薬組成物は、本明細書で定義されている疾患の一次治療に適している。
【0085】
本発明の化合物はまた、本明細書で定義されている疾患の二次治療において使用することができる。それ故、本発明の医薬組成物は、本明細書で定義されている疾患の二次治療にも適している。
【0086】
本発明のさらに別の態様は、本明細書で定義されている過剰興奮性と関係する疾患の予防、軽減または/および治療に対する本明細書で定義されている式(I)、(II)または/および(III)の少なくとも1つの化合物、好ましくはラコサミドを含む医薬組成物である。
【0087】
本発明のさらに別の態様は、本明細書で定義されているイオンチャネルの機能傷害と関係する疾患の予防、軽減または/および治療に対する本明細書で定義されている式(I)、(II)または/および(III)の少なくとも1つの化合物、好ましくはラコサミドを含む医薬組成物である。
【0088】
式(I)、(II)または/および(III)の成分は、本明細書において定義されている過剰興奮性と関係する疾患の治療のためのさらなる活性薬剤と一緒に投与することもできる。
【0089】
式(I)、(II)または/および(III)の成分は、本明細書において定義されているイオンチャネルの機能障害と関係する疾患の治療のためのさらなる活性薬剤と一緒に投与することもできる。
【0090】
本発明のさらなる態様は、医薬組成物に言及する。
【0091】
一実施形態において、該医薬組成物は、
(a)本明細書で定義されている式(I)、(II)または/および(III)の少なくとも1つの化合物、好ましくはラコサミド、および
(b)本明細書で定義されている過剰興奮性と関係する疾患の予防、軽減または/および治療のための少なくとも1つのさらなる活性薬剤
を含む。
【0092】
別の実施形態において、該医薬組成物は、
(a)本明細書で定義されている式(I)、(II)または/および(III)の少なくとも1つの化合物、好ましくはラコサミド、および
(b)本明細書で定義されているイオンチャネルの機能障害と関係する疾患の予防、軽減または/および治療のための少なくとも1つのさらなる活性薬剤
を含む。
【0093】
上で示した実施形態において、式(I)、(II)または/および(III)の化合物ならびにさらなる活性薬剤(b)は、同時に投与するための1つの医薬製剤(単一剤形)に処方することができ、または同時投与または/および引き続く投与のための2つ以上の相異なる製剤(別々の剤形)に処方することができる。その別々の剤形における2つの相異なる製剤は、同じ経路または異なる経路により投与することができる。
【0094】
別々の剤形は、場合によって、例えば、単一の容器または単一の外装中の複数の容器に共包装するか、または別の包装として同時に与える(「共同提供(common presentation)」)ことができる。共包装または共同提供の例として、別々の容器に、式(I)、(II)または/および(III)の化合物ならびにさらなる活性薬剤(b)を含むキットが考えられている。別の例においては、式(I)、(II)または/および(III)の化合物ならびにさらなる活性薬剤(b)は、別々に包装されており、互いに独立して販売に使用可能であるが、本発明に従って使用するために共に販売または共に販売促進される。その別々の剤形はまた、本発明に従って使用するために患者に別々に独自に投与することもできる。
【0095】
一実施形態において、該医薬組成物は、式(I)、(II)または/および(III)の少なくとも1つの化合物ならびにさらなる活性薬剤(b)の少なくとも1つを含む単一の剤形を含む。
【0096】
別の実施形態において、本発明の医薬組成物は、
(i)式(I)、(II)または/および(III)の少なくとも1つの化合物を含む第1の組成物、および
(ii)本明細書で定義されている過剰興奮性と関係する疾患の予防、軽減、または/および治療のためのさらなる活性薬剤の少なくとも1つを含む第2の組成物
を含む別々の剤形を含む。
【0097】
さらに別の実施形態において、本発明の医薬組成物は、
(i)式(I)、(II)または/および(III)の少なくとも1つの化合物を含む第1の組成物、および
(ii)本明細書で定義されているイオンチャネルの機能障害と関係する疾患の予防、軽減、または/および治療のためのさらなる活性薬剤の少なくとも1つを含む第2の組成物
を含む別々の剤形を含む。
【0098】
本発明のさらに別の実施形態において、さらなる活性薬剤の少なくとも1つを含む第2の組成物(ii)は、市販されている組成物であり得る。
【0099】
本発明の医薬組成物は、哺乳動物、例えばヒトなどにおける投与用に調製することができる。
【0100】
(a)式(I)、(II)または/および(III)の少なくとも1つの化合物ならびに(b)少なくとも1つのさらなる活性薬剤を含む本発明の医薬組成物は、本明細書に記載の過剰興奮性と関係する疾患の予防、軽減または/および治療のために調製することができる。
【0101】
(a)式(I)、(II)または/および(III)の少なくとも1つの化合物ならびに(b)少なくとも1つのさらなる活性薬剤を含む本発明の医薬組成物は、本明細書に記載のイオンチャネルの機能障害と関係する疾患の予防、軽減または/および治療のために調製することができる。
【0102】
本発明のさらに別の態様は、疾患の予防、軽減または/および治療のための方法である。
【0103】
一実施形態において、その方法は、過剰興奮性と関係する疾患の予防、軽減または/および治療のための方法であって、その方法は、それを必要とする対象に式(I)、(II)または/および(III)の少なくとも1つの化合物、特にラコサミドを投与するステップを含む。
【0104】
別の実施形態において、その方法は、過剰興奮性と関係する疾患の予防、軽減または/および治療のための方法であって、その方法は、それを必要とする対象に、式(I)、(II)または/および(III)の少なくとも1つの化合物、特にラコサミドと、過剰興奮性と関係する疾患の予防、軽減または/および治療のためのさらなる活性薬剤とを治療有効量で同時投与するステップを含む。
【0105】
別の実施形態において、その方法は、イオンチャネルの機能障害と関係する疾患の予防、軽減または/および治療のための方法であって、その方法は、それを必要とする対象に式(I)、(II)または/および(III)の少なくとも1つの化合物、特にラコサミド、を投与するステップを含む。
【0106】
さらに別の実施形態において、本発明の方法は、イオンチャネルの機能障害と関係する疾患の予防、軽減または/および治療のための方法であって、その方法は、それを必要とする対象に、式(I)、(II)または/および(III)の少なくとも1つの化合物、特にラコサミドと、イオンチャネルの機能障害と関係する疾患の予防、軽減または/および治療のためのさらなる活性薬剤とを治療有効量で同時投与するステップを含む。
【0107】
式(I)、(II)または/および(III)の少なくとも1つの化合物、特にラコサミドは、メキシレチン、炭酸脱水酵素阻害薬(例えばアセタゾールアミドまたはジクロルフェナミドなど)、ベンゾジアゼピン系薬(例えばジアゼパム、ミダゾラム、アルプラゾラムなど)、SSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬、例えばフルオキセチン、フルボキサミン、セルトラリン、ベンラファクシン、ミルタザピンなど)、バクロフェン、キニーネ、フェニトインおよびその他の抗けいれん薬(例えばラモトリジン、レベチラセタム、トピラメート、カルマバゼピン、オキシカルバゼピン、チアガビン、ビガバトリン、ゾニサミドなど)、三環系抗うつ剤(例えばアミトリプチリン、イミプラミン、デシプラミンなど)、非ステロイド系抗炎症薬(アセチルサリチル酸、パラセタモール、イブプロフェン、ナプロキセン等のNSAID)、アセチルコリンエステラーゼ阻害薬(AChE)阻害薬(例えば、タクリン、リバスティグミン、ガランタミン、ドゼネピルなど)、ドーパ脱炭酸酵素阻害薬、ドーパミン作動薬(例えば、ロピニロール、プラミペキソール、リスリド、ペルゴリド、ピリベジルなど)、モノアミン酸化酵素BおよびCOMT阻害薬(例えば、トルカポン、エンタカポン、アポモルヒネ、ラサギリンなど)、非定型抗精神病薬物(例えば、クロザピン、リスペリドン、オランザピン、ケチアピン、ジプラシドン、アリピラゾール、およびアミスルプリドなど)、またはカリウム錠剤と同時投与することができる。
【0108】
用語「同時投与」とは、患者に一緒にまたは別々に投与されたとき、その患者に治療効果をもたらすことにおいて同時活性的であることを意味する。そのような同時投与はまた、「併用」、「併用療法」、「同時療法」、「補助療法」または「追加(add−on)療法」とも呼ばれる。例えば、1つの薬剤が、他の薬剤の治療効果を高めたり、他の薬剤の不利な副作用を減らしたり、あるいは1つまたは複数の薬剤が単独で使用されるときより少量で効果的に投与することができたり、単独で使用されるときより大きな治療の利点を提供することができたり、疾患または状態の種々の態様、症状もしくは病因的因子に補完的に対応したりすることができる。
【0109】
同時投与は、それを必要とする患者において治療効果のある濃度、例えば血漿濃度、を獲得または/および維持するための十分な量の薬剤の組み合わせを投与することを含む。同時投与は、同時または/および後に続く投与を含む。同時投与は、単一としての薬剤または種々の組成物としての薬剤の投与を含む。
【0110】
式(I)、(II)、または/および(III)の化合物ならびにさらなる活性薬剤の投与間隔は、剤形に依存し得る。式(I)、(II)、または/および(III)の化合物を最初に投与してもよく、あるいはさらなる活性薬剤(b)を最初に投与しても良い。
【0111】
本発明による化合物は、一般式(I)
【0112】
【化1】

【0113】
を有しており、式中、
Rは水素、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、アリールアルキル、複素環、複素環アルキル、アルキル複素環、シクロアルキルまたはシクロアルキルアルキルであり、Rは非置換であるか、少なくとも1つの電子求引基または/および少なくとも1つの電子供与基で置換されており;
は水素またはアルキル、アルケニル、アルキニル、アリールアルキル、アリール、複素環アルキル、アルキル複素環、複素環、シクロアルキル、シクロアルキルアルキルであり、各々は非置換であるか、少なくとも1つの電子供与基または/および少なくとも1つの電子求引基で置換されており;
およびRは独立して水素、アルキル、アルケニル、アルキニル、アルコキシ、アルコキシアルキル、アリールアルキル、アリール、ハロ、複素環、複素環アルキル、アルキル複素環、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、またはZ−Yであり、RおよびRは非置換であるか、少なくとも1つの電子求引基または/および少なくとも1つの電子供与基で置換されていてもよく;
ZはO、S、S(O)、NR、NR’またはPRまたは化学結合であり;
Yは水素、アルキル、アリール、アリールアルキル、アルケニル、アルキニル、ハロ、複素環、複素環アルキル、アルキル複素環であり、Yは非置換であるか、少なくとも1つの電子供与基または/および少なくとも1つの電子求引基で置換されており、ただしYがハロである場合、Zは化学結合であるか、または
ZYが一緒になってNRNR、NROR、ONR、OPR、PROR、SNR、NRSR、SPR、PRSR、NRPR、PRNRまたはN
【0114】
【化2】

【0115】
であり;
’は水素、アルキル、アルケニルまたはアルキニルであり、これらは非置換であるか、少なくとも1つの電子求引基または/および少なくとも1つの電子供与基で置換されており;
、RおよびRは独立して水素、アルキル、アリール、アリールアルキル、アルケニルまたはアルキニルであり、ここでR、RおよびRは独立して非置換であるか、または少なくとも1つの電子求引基または/および少なくとも1つの電子供与基で置換されていてもよく;
はRまたはCOORまたはCORであり、Rは非置換であるか、または少なくとも1つの電子求引基または/および少なくとも1つの電子供与基で置換されていてもよく;
は水素またはアルキルまたはアリールアルキルであり、アリールまたはアルキル基は非置換であるか、少なくとも1つの電子求引基または/および少なくとも1つの電子供与基で置換されていてもよく;
nは1〜4であり;
aは1〜3である。
【0116】
好ましい実施形態において、式(I)の化合物は、一般式(II)
【0117】
【化3】

【0118】
を有しており、式中、
Arは、非置換であるか少なくとも1つの電子供与基または/および少なくとも1つの電子吸引基、好ましくはハロ、より好ましくはフルオロで置換されているアリールであり、
は、アルキル、好ましくは1〜3個の炭素原子を含有するアルキル、より好ましくはメチルであり、
は、本明細書で定義した通りである。
【0119】
より好ましい実施形態において、式(I)または/および(II)の化合物は、一般式(III)、
【0120】
【化4】

【0121】
を有しており、式中、
は、独立して、水素、ハロ、アルキル、アルケニル、アルキニル、ニトロ、カルボキシ、ホルミル、カルボキシアミド、アリール、第四級アンモニウム、ハロアルキル、アリールアルカノイル、ヒドロキシ、アルコキシ、カルバルコキシ、アミノ、アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、アリールオキシ、メルカプト、アルキルチオ、アルキルメルカプト、およびジスルフィドからなる群から選択される1つまたは複数の置換基であり、
は、水素、アルキル、アリールアルキル、アルコキシ、アルコキシアルキル、アリール、複素環、複素環アルキル、N−アルコキシ−N−アルキルアミノ、N−アルコキシアミノ、およびN−カルバルコキシからなる群から選択され、
は、アルキル、好ましくは1〜3個の炭素原子を含有するアルキル、より好ましくはメチルである。
【0122】
本発明において活用される化合物は、1つまたは複数の不斉炭素を含むことができ、ラセミ体または場合によって活性体で存在することができる。各不斉炭素の周りの立体配置は、D型またはL型のいずれかであり得る。キラル炭素原子の周りの立体配置が、また、カーン−プレローグ−インゴールド命名法においてR形またはS形として記載することができることは技術的に周知である。さまざまな鏡像異性体およびジアステレオマーならびにラセミ混合物と鏡像異性体、ジアステレオマーまたはその両方との混合物を含む各不斉炭素の周りのさまざまな立体配置のすべてが、本発明によって検討されている。
【0123】
本明細書で用いられる用語の立体配置は、たとえ他のキラル中心が分子中に存在することができるとしても、RおよびRまたはHおよびRが結合している炭素原子の周りの立体配置を特に意味する。それ故、D型またはL型等の特定の立体配置を表すときはRおよびRまたはHおよびRが結合している炭素原子におけるD型またはL型立体異性体を意味するものと理解すべきである。しかしながら、もし存在する場合は、それは、化合物中のその他のキラル中心におけるすべての可能な鏡像異性体およびジアステレオマーも含む。
【0124】
本発明の化合物は、全ての光学異性体を対象とし、すなわち、本発明の化合物は、L型立体異性体またはD型立体異性体(RおよびRまたはHおよびRが結合している炭素原子における)のいずれかである。これらの立体異性体は、L型およびD型立体異性体の混合物、例えば、ラセミ混合物中に見出すことができる。D型立体異性体が好ましい。
【0125】
式(I)の化合物は、R形立体配置をしていることが好ましい。式(II)の化合物が、R形立体配置をしていることも好ましい。式(III)の化合物が、R形立体配置をしていることも好ましい。
【0126】
R形立体配置をしている式(I)、(II)または/および(III)の化合物は、実質的に鏡像異性体であることが好ましい。本明細書で使用される用語「実質的に鏡像異性体」とは、少なくとも99.5%のR形鏡像異性体の含量を意味する。これは、99%の鏡像体過剰率(ee)に相当する。R形およびS形鏡像異性体のそれぞれの量は、キラルカラムクロマトグラフィー、例えば、キラル固定相として「ChiralPak」を用いるHPLCによって測定することができる。
【0127】
用語「アルキル」(単独またはその他の用語(1つ以上)との組み合わせで)は、直鎖または分枝鎖の飽和ヒドロカルビル置換基を意味し、好ましくは、1〜20個の炭素原子(C〜C20−アルキル)、より好ましくは1〜約8個の炭素原子(C〜C−アルキル)、さらにより好ましくは、1〜約6個の炭素原子(C〜C−アルキル)、最も好ましくは1〜3個の炭素原子(C〜C−アルキル)を含有する。該アルキル基としては、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、t−ブチル、アミル、ヘキシルなどが挙げられる。さらに、アルキル基は、別段の指摘がないかぎり、例えばトリフルオロメチルなど過ハロゲン化までのハロゲン化アルキル基も含む。
【0128】
用語「アルコキシ」(単独またはその他の用語(1つ以上)との組み合わせで)は、−O−アルキルを表して、直鎖または分枝鎖のアルコキシ置換基を意味し、好ましくは1〜20個の炭素原子(C〜C20−アルコキシ)、より好ましくは1〜約8個の炭素原子(C〜C−アルコキシ)、さらにより好ましくは、1〜約6個の炭素原子(C〜C−アルコキシ)、最も好ましくは1〜3個の炭素原子(C〜C−アルコキシ)を含有する。該アルコキシ基としては、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、ブトキシ、イソブトキシ,t−ブトキシ、ペントキシ、ヘキソキシなどが挙げられる。さらに、アルコキシ基は、別段の指摘がないかぎり、過ハロゲン化までのハロゲン化アルコキシ基も含む。
【0129】
用語「アルコキシアルキル」は、少なくとも1つのアルコキシ基により置換されているアルキル基を表す。該アルコキシアルキル基としては、メトキシメチル(−CH−OCH)基、メトキシエチル(−CH−CH−OCH)基、エトキシメチル(−CH−O−CHCH)基などが挙げられる。
【0130】
用語「N−アルコキシアミノ」は、1つまたは2つのアルコキシ基により置換されているアミノ基、例えば、−NH−N(OCHを表す。
【0131】
用語「N−アルコキシ−N−アルキルアミノ」は、アルコキシ基およびアルキル基により置換されているアミノ基、例えば、−N(CH)(OCH)、−N(CH)(OCH−CH)などを表す。
【0132】
用語「N−カルバルコキシ」は、カルバルコキシ基により置換されているアミノ基、例えば、−NH(C(O)−O−CH)、−NH(C(O)O−CH−CH)を表す。
【0133】
用語「アリール」は、単独または他の用語(1つ以上)との組み合わせで使用される場合、芳香族基を表し、それは6個から最大18個までの環炭素原子(C〜C18−アリール)、好ましくは6個から最大10個までの環炭素原子(C〜C10−アリール)を含有し、多核の芳香族を含む。そのアリール基は、単環式、二環式、三環式または多環式であり得、縮合環であり得る。明細書で使用される多核芳香族化合物は、10〜18個の環炭素原子を含有する二環式および三環式縮合芳香環系を包含することを意味する。アリール基としては、フェニルおよび多核芳香族類、例えば、ナフチル、アントラセニル、フェナントレニル、アズレニルなどが挙げられる。アリール基はまた、フェロセニル等の基も含む。アリール基は、非置換であるか、電子吸引性または/および電子供与性の基によりモノ置換もしくは多置換されていてもよい。好ましいアリール基は、フェニルであり、それは、非置換であるか、電子吸引性または/および電子供与性の基によりモノ置換もしくは多置換されていてもよい。
【0134】
単独または他の用語(1つ以上)との組み合わせで使用される用語「アリールアルキル」は、本明細書に定義されているアリール置換基を持つ本明細書で定義されているアルキル基を意味する。好ましいアリールアルキル基は、アリール−C〜C−アルキル、アリール−C〜C−アルキル、C〜C10−アリール−アルキル、C〜C10−アリール−C〜C−アルキル、C〜C10−アリール−C〜C−アルキルである。より好ましいアリールアルキル基は、フェニル−C〜C−アルキルおよびフェニル−C〜C−アルキルである。さらにより好ましいアリールアルキル基としては、例えば、ベンジル、フェニルエチル、フェニルプロピル、フェニルイソプロピル、フェニルブチル、ジフェニルメチル、1,1−ジフェニルエチル、1,2−ジフェニルエチルなどが挙げられる。最も好ましいのはベンジルである。
【0135】
用語「アルケニル」(単独または別の用語(1つ以上)との組み合わせで)は、直鎖または分枝鎖のアルケニル置換基を意味し、少なくとも1つの二重結合を含有し、かつ好ましくは2個から約20個の炭素原子(C〜C20−アルケニル)、より好ましくは2個から約8個の炭素原子(C〜C−アルケニル)、さらにより好ましくは2個から約6個の炭素原子(C〜C−アルケニル)、最も好ましくは2個または3個の炭素原子(C〜C−アルケニル)を含有する。該アルケニル基は、Z体またはE体をしていることができる。アルケニル基としては、ビニル、プロペニル、1−ブテニル、イソブテニル、2−ブテニル、1−ペンテニル、(Z)−2−ペンテニル、(E)−2−ペンテニル、(Z)−4−メチル−2−ペンテニル、(E)−4−メチル−2−ペンテニル、ペンタジエニル、例えば、1,3または2,4−ペンタジエニルなどが挙げられる。
【0136】
用語「アルキニル」(単独または別の用語(1つ以上)との組み合わせで)は、直鎖または分枝鎖のアルキニル置換基を意味し、少なくとも1つの三重結合を含有し、かつ好ましくは2個から約20個の炭素原子(C〜C20−アルキニル)、より好ましくは2個から約8個の炭素原子(C〜C−アルキニル)、さらにより好ましくは2個から約6個の炭素原子(C〜C−アルキニル)、最も好ましくは2個または3個の炭素原子(C〜C−アルキニル)を含有する。アルキニル基としては、エチニル、プロピニル、1−ブチニル、2−ブチニル、1−ペンチニル、2−ペンチニル、3−メチル−1−ペンチニル、3−ペンチニル、1−ヘキシニル、2−ヘキシニル、3−ヘキシニルなどが挙げられる。
【0137】
単独または別の用語(1つ以上)との組み合わせで使用されるときの用語「シクロアルキル」は、3個から18個の環炭素原子(C〜C18−シクロアルキル)、好ましくは6個から最大10個までの環炭素原子(C〜C10−シクロアルキル)を含有するシクロアルキル基を意味する。該シクロアルキル基は、単環式、二環式、三環式、または多環式であり得、その環は縮合していてもよい。そのシクロアルキルは完全に飽和しているか部分的に飽和していてもよい。シクロアルキル基の例としては、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロオクチル、シクロデシル、シクロヘキセニル、シクロペンテニル、シクロオクテニル、シクロヘプテニル、デカリニル、ヒドロインダニル、インダニル、フェンキル、ピネニル、アダマンチルなどが挙げられる。シクロアルキル基は、シス型またはトランス型を含む。シクロアルキル基は、非置換であるか電子吸引基または/および電子供与基によりモノ置換または多置換されていてもよい。架橋二環式シクロアルキル基において、その置換基はエンドの位置にあるかまたはエキソの位置にあるかのいずれかである。
【0138】
単独または別の用語(1つ以上)との組み合わせで本明細書で使用される用語「シクロアルキルアルキル」は、本明細書で定義されているシクロアルキル置換基をもつ本明細書で定義されているアルキル基を意味する。好ましいシクロアルキルアルキル基は、シクロアルキル−C〜C−アルキル、シクロアルキル−C〜C−アルキル、C〜C10−シクロアルキル−アルキル、C〜C10−シクロアルキル−C〜C−アルキル、C〜C10−シクロアルキル−C〜C−アルキルである。より好ましいシクロアルキルアルキル基は、シクロアルキル−C〜C−アルキルおよびシクロアルキル−C〜C−アルキルから選択される。
【0139】
用語「ハロ」または「ハロゲン」は、フルオロ、クロロ、ブロモ、およびヨードを含む。
【0140】
プレフィックス「ハロ」は、そのプレフィックスが付いている置換基が1つまたは独立に選択された複数のハロゲン基により置換されていることを示す。例えば、ハロアルキルは、少なくとも1つの水素基がハロゲン基により置換されているアルキル置換基を意味する。ハロアルキルの例としては、クロロメチル、1−ブロモエチル、フルオロメチル、ジフルオロメチル、トリフルオロメチル、1,1,1−トリフルオロエチルなどが挙げられる。さらに説明すれば、「ハロアルコキシ」は、少なくとも1つの水素基がハロゲン基により置換されているアルコキシ置換基を意味する。ハロアルコキシ置換基の例としては、クロロメトキシ、1−ブロモエトキシ、フルオロメトキシ、ジフルオロメトキシ、トリフルオロメトキシ(「ペルフルオロメトキシ」としても知られる)、1,1,1−トリフルオロエトキシなどが挙げられる。置換基が複数のハロゲン基によって置換されている場合、それらのハロゲン基は同一または異なってもよいことを認識すべきである(別段の断りのない限り)。
【0141】
用語「電子吸引性」および「電子供与性」とは、分子の同じ位置を水素原子が占めている場合の水素のそれと比較して、置換基がそれぞれ電子を吸引するかまたは電子を供与する能力があることを表す。これらの用語は当業者にはよく理解されており、J. MarchによるAdvanced Organic Chemistry、John Wiley and Sons、ニューヨーク州ニューヨーク、16〜18(1985年)に論じられており、その中の論点は、参照により本明細書に組み込まれる。電子吸引性基としては、ブロモ、フルオロ、クロロ、ヨードを含むハロ;ニトロ、カルボキシ、アルケニル、アルキニル、ホルミル、カルボキシアミド、アリール、第四級アンモニウム、ハロアルキル例えばトリフルオロメチルなど、アリールアルカノイル、カルバルコキシなどが挙げられる。電子供与性基としては、ヒドロキシ、メトキシ、エトキシ等を含むアルコキシ、メチル、エチル等のアルキル、アミノ、アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、フェノキシ等のアリールオキシ、メルカプト、アルキルチオ、アルキルメルカプト、ジスルフィド(アルキルジチオ)などが挙げられる。当業者であれば前記の置換基のいくつかは、異なる化学的条件下で電子供与性または電子吸引性であると考えることができることを理解しよう。さらに、本発明は、上で識別した基から選択される置換基の任意の組み合わせを検討している。
【0142】
電子供与性または/および電子吸引性基は、式(I)、(II)または/および(III)における置換基の任意の1つの中、例えば、本明細書で定義されているR、R、R、R、R、R、R、R’、R、R、Rまたは/およびR10の中に独自に存在することができる。
【0143】
少なくとも1つの電子吸引性基または/および少なくとも1つの電気供与性基は、ハロ、アルキル、アルケニル、アルキニル、ニトロ、カルボキシ、ホルミル、カルボキシアミド、アリール、第四級アンモニウム、ハロアルキル、アリールアルカノイル、ヒドロキシ、アルコキシ、カルバルコキシ、アミノ、アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、アリールオキシ、メルカプト、アルキルチオ、アルキルメルカプト、ジスルフィド、アルカノイル、アミノアルキル、アリールオイル、シアノ、スルホニル、スルホキシド、複素環、グアニジン、スルホニウム塩、メルカプトアルキル、およびアルキルジチオから好ましくは独自に選択される。
【0144】
用語「スルフィド」は、メルカプト、メルカプトアルキルおよびアルキルチオを含み、一方、用語ジスルフィドは、アルキルジチオを含む。
【0145】
本発明の化合物において、少なくとも1つの電子吸引性基または/および少なくとも1つの電気供与性基は、より好ましくは、ハロ、アルキル、アルケニル、アルキニル、ニトロ、カルボキシ、ホルミル、カルボキシアミド、アリール、第四級アンモニウム、ハロアルキル、アリールアルカノイル、ヒドロキシ、アルコキシ、カルバルコキシ、アミノ、アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、アリールオキシ、メルカプト、アルキルチオ、アルキルメルカプト、およびジスルフィドから独自に選択される。
【0146】
さらにより好ましくは、少なくとも1つの電子吸引性基または/および少なくとも1つの電気供与性基は、ハロ、C〜C−アルキル、C〜C−アルケニル、C〜C−アルキニル、ニトロ、カルボキシ、ホルミル、カルボキシアミド、C〜C10−アリール、第四級アンモニウム、C〜C−ハロアルキル、C〜C10−アリールC〜C−アルカノイル、ヒドロキシ、C〜C−アルコキシ、C〜C−カルバルコキシ、アミノ、C〜C−アルキルアミノ、C〜C−ジアルキルアミノ、C〜C10−アリールオキシ、メルカプト、C〜C−アルキルチオ、C〜C−アルキルメルカプト、およびジスルフィドから独自に選択される。
【0147】
さらにより好ましくは、該電子吸引性基または/および電気供与性基はまた、ハロ、C〜C−アルコキシ、ニトロ、カルボキシ、ホルミル、カルボキシアミド、第四級アンモニウム、ヒドロキシ、アミノ、メルカプト、およびジスルフィドから独自に選択することができる。
【0148】
最も好ましい電子吸引性基または/および電気供与性基は、フルオロ等のハロおよびメトキシおよびエトキシ等のC〜C−アルコキシから独自に選択される。
【0149】
本明細書で単独でまたは他の用語(1つ以上)との組み合わせで使用される用語「カルバルコキシ」は、−CO−O−アルキルを意味し、ここでアルキルは、本明細書で定義されているものであり、−CO−O−基が1個の炭素原子をアルキル基のそれに加えて提供することを考慮に入れる。該カルバルコキシ基は、好ましくは2個から約20個までの炭素原子(C〜C20−カルバルコキシ)、より好ましくは2個から約8個までの炭素原子(C〜C−カルバルコキシ)、さらにより好ましくは2個から約6個までの炭素原子(C〜C−カルバルコキシ)、最も好ましくは2個から3個までの炭素原子(C〜C−カルバルコキシ)を含有する。
【0150】
本明細書で単独でまたは他の用語(1つ以上)との組み合わせで使用される用語「アルカノイル」は、アルカノイル基−CO−アルキルを意味し、ここでアルキルは、本明細書で定義されているものであり、−CO−基が1個の炭素原子をアルキル基のそれに加えて提供することを考慮に入れる。該アルカノイルは、好ましくは2個から約20個までの炭素原子(C〜C20−アルカノイル)、より好ましくは2個から約8個までの炭素原子(C〜C−アルカノイル)、さらにより好ましくは2個から約6個までの炭素原子(C〜C−アルカノイル)、最も好ましくは2個から3個までの炭素原子(C〜C−アルカノイル)を含有する。該アルカノイル基は、直鎖または分枝鎖であり得る。そのアルカノイル基としては、例えば、ホルミル、アセチル、プロピオニル、ブチリル、イソブチリル、t−ブチリル、ペンタノイルおよびヘキサノイルが挙げられる。
【0151】
ここで使用される複素環基は、環構造中に少なくとも1つのヘテロ原子、好ましくは1個、2個、3個または4個のヘテロ原子を含有する。その少なくとも1つのへテロ原子は、硫黄、窒素および酸素から独自に選択することができる。本発明によって検討されている複素環基としては、複素環式芳香族基ならびに飽和および部分飽和複素環基が挙げられる。該複素環は、単環式、二環式、三環式または多環式であり得、縮合環であり得る。該複素環はまた、いわゆるベンゾ複素環も含む。複素環基は、非置換であるか、あるいは電子吸引性または/および電子供与性基によりモノ置換またはポリ置換されていてもよい。該複素環基は、最大18個の環原子および最大で合計17個までの環炭素原子を好ましくは含有し、非置換であるか、あるいは電子吸引性または/および電子供与性基によりモノ置換またはポリ置換されていてもよい。
【0152】
より好ましくは、該複素環基は、5員または6員の単環式複素環基から独自に選択することができ、非置換であるか、あるいは電子吸引性または/および電子供与性基によりモノ置換またはポリ置換されていてもよい。該複素環基はまた、より好ましくは、フリル、チエニル、ピラゾリル、ピロリル、メチルピロリル、イミダゾリル、インドリル、チアゾリル、オキサゾリル、イソチアゾリル、イソキサゾリル、ピペリジル、ピロリニル、ピペラジニル、キノリル、トリアゾリル、テトラゾリル、イソキノリル、ベンゾフリル、ベンゾチエニル、モルホリニル、ベンゾキサゾリル、テトラヒドロフリル、ピラニル、インダゾリル、プリニル、インドリニル、ピラゾリジニル、イミダゾリニル、イミダゾリジニル、ピロリジニル、フラザニル、N−メチルインドリル、メチルフリル、ピリダジニル、ピリミジニル、ピラジニル、ピリジル、エポキシ、アジリジノ、オキセタニル、アゼチジニル、例えばピリジル、ピラジニル、およびピリミジニルのN−オキシドなどの窒素含有複素環のN−オキシド類などから独自に選択することができる。さらにより好ましくは、複素環部分は、前記の複素環で単環式であるものである。
【0153】
該複素環はまた、より好ましくは、チエニル、フリル、ピロリル、ベンゾフリル、ベンゾチエニル、インドリル、オキサゾリル、メチルピロリル、モルホリニル、ピリジル、ピラジニル、イミダゾリル、ピリミジニル、およびピリダジニルから独自に選択することができる。特に好ましい複素環は、フリル、オキサゾリル、ピリジル、ピラジニル、イミダゾリル、ピリミジニル、およびピリダジニルから独自に選択される。最も好ましい複素環は、フリル、ピリジルおよびオキサゾリルから独自に選択される。
【0154】
本発明の化合物における単環式5員または6員の複素環基は、好ましくは式(IV):
【0155】
【化5】

【0156】
のまたはそれの部分的もしくは完全に飽和した形に相当するものであり、式中、nは、0または1であり、
50は、H、電子吸引性基または電子供与性基であり、
A、E、L、JおよびGは、独自に、CH、またはN、O、Sからなる群から選択されるヘテロ原子であるが、nが0である場合にGは、CH、またはNH、O、Sからなる群から選択されるヘテロ原子であり、ただし、A、E、L、JおよびGの最大で2つがヘテロ原子である。
【0157】
nが0である場合、上記複素芳香族部分は5員環であるが、nが1である場合は、複素環部分は6員の単環式複素環部分である。
【0158】
式(IV)環中に描かれている環が窒素環原子を含有する場合、N−オキシド型もまた本発明の範囲内であるものとする。
【0159】
またはRが式(IV)の複素環である場合、それは環炭素原子によって主鎖に結合されていてよい。nが0である場合はRまたはRはさらに窒素環原子により主鎖に結合していてよい。
【0160】
本明細書で単独または他の用語(1つ以上)との組み合わせで使用される用語「複素環アルキル」は、上で定義した複素環置換基をもつ上で定義したアルキル基を意味する。好ましい複素環アルキル基は、複素環−C〜C−アルキル、複素環−C〜C−アルキルであり、ここでその複素環は、本明細書で定義されている、好ましい、より好ましいまたは最も好ましい複素環基であり得る。
【0161】
本明細書で単独または他の用語(1つ以上)との組み合わせで使用される用語「アルキル複素環」は、上で定義した少なくとも1つのアルキル置換基をもつ上で定義した複素環基を意味する。好ましいアルキル複素環基は、C〜C−アルキル−複素環、C〜C−アルキル−複素環であり、ここでその複素環基は、本明細書で定義されている、好ましい、より好ましいまたは最も好ましい複素環基であり得る。
【0162】
好ましい化合物は、nが1であるものであるが、ジ(N=2)、トリ(N=3)およびテトラペプチド(N=4)もまた本発明の本発明の範囲内に包含される。
【0163】
式(I)または/および(II)におけるRまたは/およびRを代表するZY基において、Zは、O、S、S(O)(ここで、aは1〜3である)、NR、NR’、PRまたは化学結合であり得; Yは水素、アルキル、アリール、アリールアルキル、アルケニル、アルキニル、ハロ、複素環、複素環アルキル、アルキル複素環であり得、Yは非置換であるか、少なくとも1つの電子供与基または/および少なくとも1つの電子求引基により置換されていてもよく、ただしYがハロである場合、Zは化学結合であるか、または
ZYが一緒になってNRNR、NROR、ONR、OPR、PROR、SNR、NRSR、SPR、PRSR、NRPR、PRNRまたはN
【0164】
【化6】

【0165】
であり得;
、R、R’、R、Rは本明細書で定義した通りである。
【0166】
式(I)または/および(II)におけるRまたは/およびRを代表するZY基は、ヒドロキシ、アルコキシ、例えばメトキシ、エトキシなど、アリールオキシ、例えばフェノキシなど、チオアルコキシ、例えばチオメトキシ、チオエトキシなど、チオアリールオキシ、例えばチオフェノキシなど、アミノ、アルキルアミノ、例えばメチルアミノ、エチルアミノなど、アリールアミノ、例えばアニリノなど、ジアルキルアミノ、例えばジメチルアミノなど、トリアルキルアンモニウム塩、ヒドラジノ、アルキルヒドラジノおよびアリールヒドラジノ、例えばN−メチルヒドラジノ、N−フェニルヒドラジノなど、カルバルコキシヒドラジノ、アラルコキシカルボニルヒドラジノ、アリールオキシカルボニルヒドラジノ、ヒドロキシアミノ、例えばN−ヒドロキシアミノ(−NH−OH)、アルコキシアミノ[(NHOR18)であってR18はアルキルである]、N−アルキルヒドロキシルアミノ[(NR18)OHであってR18はアルキルである]、N−アルキル−O−アルキルヒドロキシアミノ、すなわち、[N(R18)OR19であってR18およびR19は、独自にアルキルである]、およびO−ヒドロキシルアミノ(−O−NH)など、アルキルアミド、例えばアセトアミドなど、トリフルオロアセトアミド、アルコキシアミノ、(例えば、NH(OCH))、ならびに複素環アミノ、例えばピラゾイルアミノなどであり得る。
【0167】
好ましいZY基において、Zは、O、NRまたはPRであり、Yは、水素またはアルキルである。
【0168】
別の好ましい実施形態において、ZYは、NR、NROR、ONR
【0169】
【化7】

【0170】
である。
【0171】
より好ましくは、そのZYは、NROR、またはONRである。
【0172】
別のより好ましいZYは、N−ヒドロキシアミノ、N−アルキルヒドロキシアミノ、N−アルキル−O−アルキルヒドロキシアミノ、O−アルキルヒドロキシアミノ、N−アルコキシ−N−アルキルアミノ、N−アルコキシアミノ、またはN−カルバルコキシである。
【0173】
式(I)においてRは、好ましくはアリールまたはアリールアルキルであり、より好ましくはRは、アリールアルキルであり、ここでRは、非置換であるか、あるいは少なくとも1つの電子供与基または/および少なくとも1つの電子吸引基により置換されている。Rは、フェニルまたはベンジル、最も好ましくはベンジルであり得、ここでRは、非置換であるか、あるいは少なくとも1つの電子供与基または/および少なくとも1つの電子吸引基により置換されている。Rが置換されている場合、Rは、好ましくはアリール環において置換されている。この実施形態において少なくとも1つの電子供与基または/および少なくとも1つの電子吸引基は、好ましくは、ハロ、より好ましくはフルオロである。
【0174】
式(I)、(II)または/および(III)において、Rは、Hまたはアルキルである。より好ましくは、Rは、好ましくは1個から6個までの炭素原子を含有する、より好ましくは1個から3個までの炭素原子を含有するアルキルである。最も好ましくはR基は、メチルである。Rは、非置換であるか、または少なくとも1つの電子投与基または/および少なくとも1つの電子吸引基により置換されていてもよい。
【0175】
さらに、RおよびRの1つは水素であることが望ましい。Rが水素であることがより望ましい。式(I)におけるRのその他の好ましい成分は、フェニル等のアリール、ベンジル等のアリールアルキル、およびアルキルである。Rの好ましい基は、非置換であるか電子供与基または/および電子吸引基でモノまたはポリ置換されていてもよいことを理解すべきである。好ましくは、R中の少なくとも1つの電子吸引基または/および少なくとも1つの電子供与基は、独立して、アルコキシ、N−ヒドロキシアミノ、N−アルキルヒドロキシアミノ、N−アルキル−O−アルキルヒドロキシアミノまたはO−アルキルヒドロキシアミノであり、特にメトキシまたはエトキシである。
【0176】
式(I)、(II)または/および(III)において、Rは、水素、非置換であるか少なくとも1つの電子供与基または/および少なくとも1つの電子吸引基によって置換されているアルキル基、非置換であるか少なくとも1つの電子供与基または/および少なくとも1つの電子吸引基によって置換されているアリール基、複素環、複素環アルキル、またはZYであり得る。
【0177】
好ましくは、Rは、水素、非置換であるか少なくとも1つの電子供与基または/および少なくとも1つの電子吸引基によって置換されているアルキル、非置換であるか少なくとも1つの電子供与基または/および少なくとも1つの電子吸引基によって置換されているアリール、複素環、複素環アルキル、またはZYであり、ここでZは、O、NRまたはPRであり、Yは、水素またはアルキルであり、ZYは、NRNR、NROR、ONR
【0178】
【化8】

【0179】
である。
【0180】
またRが、非置換であるか少なくとも1つの電子供与基または/および少なくとも1つの電子吸引基によって置換されているアルキル、あるいはZ−Y(Z−Yは本明細書で定義した通りである)であることも好ましい。
【0181】
またRが、非置換であるか少なくとも1つの電子供与基または/および少なくとも1つの電子吸引基によって置換されているアルキル、あるいはNROR、またはONR(R、RおよびRは、本明細書で定義した通りである)であることも好ましい。
【0182】
またRが、CH−Q(ここでQは、特に1〜3個の炭素原子を含有するアルコキシである)であるか、またはRが、NROR、またはONR(R、RおよびRは、本明細書で定義した通りである)であることも好ましい。
【0183】
はまた、好ましくは、非置換であるか、特に1〜3個の炭素原子を含有する少なくとも1つのアルコキシにより置換されているアルキルである。
【0184】
はまた、好ましくは、CH−Qであり、ここでQは、好ましくは1〜3個の炭素原子を含有するアルコキシであり、より好ましくは、Qは、エトキシまたはメトキシである。
【0185】
はまた、好ましくは、NROR、またはONR(R、RおよびRは、本明細書で定義した通りである)であり、R、RおよびRは、本明細書で定義した通りであって、例えば、N−アルコキシ、N−アルコキシ−N−アルキルアミノまたはN−カルバルコキシである。
【0186】
はまた、好ましくは、複素環、複素環アルキル、または非置換であるか少なくとも1つの電子供与基または/および少なくとも1つの電子吸引基で置換されていてもよいアリールである。R中の最も好ましい複素環は、フリルまたはオキサゾリルである。
【0187】
はまた、好ましくは、水素、アルキル、ベンジル等のアリールアルキル、アルコキシ、アルコキシアルキル、フェニル等のアリール、複素環、複素環アルキル、N−アルコキシ−N−アルキルアミノ、N−アルコキシアミノおよびN−カルバルコキシからなる群から選択される。
【0188】
の好ましい基は、非置換であるか電子供与基または/および電子吸引基でモノまたはポリ置換されていてもよいことを理解すべきである。好ましくは、R中の少なくとも1つの電子吸引基または/および電子供与基は、独立して、アルコキシ、N−ヒドロキシアミノ、N−アルキルヒドロキシアミノ、N−アルキル−O−アルキルヒドロキシアミノまたはO−アルキルヒドロキシアミノであり、特にメトキシまたはエトキシである。
【0189】
、R、R、R’、RおよびRは、好ましくは、独立して、水素またはアルキルである。
【0190】
、R、およびRは、好ましくは、独立して、水素または1〜3個の炭素原子を含有するアルキルである。
【0191】
最も好ましいアリールは、フェニルである。最も好ましいハロは、フルオロである。
【0192】
式(I)の化合物において、Rは、好ましくは、アリールアルキルであり、ここでRは、非置換であるか、または少なくとも1つの電子供与基または/および電子吸引基で置換されている。
【0193】
式(I)の化合物において、Rは、好ましくは、非置換であるか、少なくとも1つの電子供与基または/および電子吸引基で置換されているアルキルである。
【0194】
式(I)の化合物において、RおよびRは、好ましくは、独立して、水素、非置換であるか、少なくとも1つの電子供与基または/および電子吸引基により置換されているアルキル、非置換であるか、少なくとも1つの電子供与基または/および電子吸引基により置換されているアリール、複素環、複素環アリール、またはZYであり、ここでZは、O、NRまたはPRであり、Yは、水素またはアルキルであり、あるいはZYは、NRNR、NROR、ONR
【0195】
【化9】

【0196】
であり、ここでR、RおよびRは、本明細書で定義した通りである。
【0197】
式(I)の化合物において、RおよびRの好ましい基は、非置換であるか、電子供与基または/および電子吸引基、例えばアルコキシ(例えば、メトキシ、エトキシなど)、N−ヒドロキシアミノ、N−アルキルヒドロキシアミノ、N−アルキル−O−アルキルヒドロキシアミノおよびO−アルキルヒドロキシアミノなどでモノ置換またはポリ置換されていてもよい。
【0198】
式(I)の化合物において、Rまたは/およびRにおける少なくとも1つの電子供与基または/および少なくとも1つの電子吸引基は、好ましくは、独立して、ヒドロキシまたはアルコキシである。
【0199】
より好ましくは、式(I)の化合物において、Rは水素である。
【0200】
式(II)の化合物において、Rは、好ましくはメチルである。
【0201】
式(II)の好ましい化合物において、Rは、水素または非置換であるか少なくとも1つの電子供与基または/および少なくとも1つの電子吸引基により置換されているアルキルであるか、あるいはRは、複素環、複素環アルキル、またはZ−Yであり、ここでZ−Yおよび複素環は、本明細書で定義した通りである。
【0202】
式(II)のその他の好ましい化合物において、Rは、非置換であるか少なくとも1つの電子供与基または/および少なくとも1つの電子吸引基により置換されているアルキル基、NRORもしくはONRであり、ここで、R、RおよびRは、本明細書で定義した通りであり、ここで少なくとも1つの電子供与基または/および少なくとも1つの電子吸引基は、好ましくはヒドロキシおよびアルコキシから選択される。
【0203】
式(II)のさらなる好ましい化合物において、Rは、CH−Q(Qは、好ましくは1〜3個の炭素原子を含有するアルコキシ、より好ましくはメトキシである)であるか、あるいはRは、NRORもしくはONRであり、ここで、R、RおよびRは、独立して、水素または1〜3個の炭素原子を含有するアルキルである。
【0204】
式(II)のその他の好ましい化合物において、Rは、−CH−Qであり、ここでQは、1〜3個の炭素原子を含有するアルコキシである。
【0205】
式(II)の化合物において、Arは、好ましくは、非置換であるか少なくとも1つのハロ、好ましくは少なくとも1つのフルオロで置換されているフェニルである。より好ましくは、式(II)中のArは、非置換のフェニルである。
【0206】
式(III)の好ましい化合物において、Rは、水素またはフルオロであり、Rは、メトキシメチル、フェニル、N−メトキシ−N−メチルアミノ、およびN−メトキシアミノからなる群から選択され、Rはメチルである。
【0207】
本発明の最も好ましい化合物としては、
(R)−2−アセトアミド−N−ベンジル−3−メトキシ−プロピオンアミド、
(R)−2−アセトアミド−N−ベンジル−3−エトキシ−プロピオンアミド、
O−メチル−N−アセチル−D−セリン−m−フルオロベンジル−アミド、
O−メチル−N−アセチル−D−セリン−p−フルオロベンジル−アミド、
N−アセチル−D−フェニルグリシンベンジルアミド、
D−1,2−(N,O−ジメチルヒドロキシアミノ)−2−アセトアミド酢酸ベンジルアミド、
D−1,2−(O−メチルヒドロキシアミノ)−2−アセトアミド酢酸ベンジルアミド、
D−α−アセトアミド−N−(2−フルオロベンジル)−2−フランアセトアミド、
D−α−アセトアミド−N−(3−フルオロベンジル)−2−フランアセトアミド
が挙げられる。
【0208】
本明細書に記載のR、R、R、Rおよびnのマーカッシュ(Markush)グループは、組み合わせおよび置き換えができることを理解すべきである。本明細書ではっきりと開示されていないさまざまな組み合わせおよび置き換えは、本発明の範囲内であるものとする。さらに、本発明はまた、R、R、R、nおよびRならびにそれらのさまざまな組み合わせにおけるマーカッシュグループ分けのそれぞれの1つまたは複数の元素を含有する化合物および組成物を包含する。したがって、例えば、本発明は、Rが、nの各値に対するR、R、およびRの任意のかつすべての置換基と組み合わされる上文で記載した置換基の1つまたは複数であり得ることを意図する。
【0209】
より好ましいのは、R形立体配置をしている好ましくは実質的にエナンチオピュアな式(I)、(II)または/および(III)の化合物であり、式中、置換基Rは、少なくとも1つのハロ基により置換されていないベンジルであり、Rは、CH−Qであって、Qは、好ましくは1〜3個の炭素原子を含有するアルコキシであり、Rは、メチルである。好ましくはRは、非置換のベンジルまたはフルオロ基である少なくとも1つのハロ基により置換されているベンジルである。
【0210】
置換基によって、当該化合物はなお付加塩を形成することができる。これらの形態はすべて立体異性体の混合物を含めて本発明の範囲内であるものとする。
【0211】
本発明において利用される化合物の製造は、その内容が参照により組み込まれている米国特許第5378729号、および同第5773475号、ならびに国際出願PCT/EP第2005/010603号に記載されている。
【0212】
本発明において利用される化合物は、式(I)、(II)または/および(III)に描かれているそれ自体で有用であり、あるいは遊離のアミノ基の存在によるその塩基性を考慮した塩の形で使用することができる。つまり、式(I)、(II)または/および(III)の化合物は、無機および有機の薬学的に許容できる酸を含めた多種多様の酸と塩を形成する。薬学的に許容できる酸との塩は、高められた水溶性が最も有利である製剤の調製において役立つことは勿論である。
【0213】
これらの薬学的に許容できる塩はまた、治療効力も有する。これらの塩としては、塩酸、ヨウ化水素酸、臭化水素酸、リン酸、メタリン酸、硝酸および硫酸等の無機酸の塩、ならびに、酒石酸、酢酸、クエン酸、りんご酸、安息香酸、過塩素酸、グリコール酸、グルコン酸、コハク酸、アリールスルホン酸(例えば、p−トルエンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸)、ホスホン酸、マロン酸などの有機酸の塩が挙げられる。
【0214】
医師は最も適する本発明の治療薬の用量を決定し、それは投与の様式および選択された特定の化合物に応じて変化し、さらに、それは治療中の患者、患者の年齢、治療されている病気の種類に応じて変動する。医師は一般に、化合物の至適用量より実質的に少ない小用量で治療を開始し、その状況下で最適な効果が達成されるまで少量ずつ用量を漸増することを望む。組成物を経口投与する場合は、より少量の非経口投与される量と同じ作用を生ずるためには、より大量の活性薬剤が必要となる。化合物は類似の治療薬と同じように有効であり、用量水準はこれらの他の治療薬で一般的に使用されている程度と同様である。
【0215】
一実施形態において、本発明の化合物は、1日当たり体重1キログラム当たり約1mg〜約100mgの範囲の量で、または1日当たり体重1キログラム当たり約1mg〜約10mgの範囲の量で投与される。この用量用法は最適な治療応答を得るために医師により調節されてよい。治療を要する患者は、少なくとも50mg/日、少なくとも200mg/日、少なくとも300mg/日、少なくとも400mg/日、または少なくとも600mg/日の本発明の化合物の投与量で治療することができる。一般に、治療を要する患者は最高6g/日、最高1g/日、最高800mg/日、または最高600mg/日の投与量で治療することができる。しかしながら場合によって、より高いまたは低い投与量を要することもあり得る。
【0216】
別の実施形態においては、1日当たり用量は、所定の1日当たり用量に達するまで増量され、それは以後の治療の間維持される。
【0217】
さらに別の実施形態においては、いくつかに分割した用量を毎日投与することができる。例えば、1日当たり3回の用量、1日当たり2回の用量、または1日当たり1回の用量を投与することができる。
【0218】
さらに別の実施形態においては、複数の治療対象の平均を計算して、0.1〜15μg/ml(トラフ)および5〜18.5μg/ml(ピーク)の血漿濃度をもたらす本発明の化合物の量を投与することができ、緊急治療における静脈内投与は、最大30μg/mlまでのピークプラスミドレベルを生じ得る。
【0219】
式(I)、(II)または/および(III)の化合物は、便利な方法、例えば経口、静脈内(水溶性の場合)、筋肉内、くも膜下腔内、直腸(例えば、座薬、ゲル、液剤など)、または皮下の経路などによって投与することができる。特に式(I)、(II)または/および(III)の化合物は、経口、直腸または/および静脈内投与をすることができる。緊急治療においては、式(I)、(II)または/および(III)の化合物は、静脈内投与をすることができる。
【0220】
本発明の医薬組成物は、上記のような治療計画に対して、特に、上記の本発明の実施形態において特定されているような投与期間または/および投与経路に対して上記のような血漿濃度を生じる上記のような投与量による治療に対して調製することができる。
【0221】
式(I)、(II)または/および(III)の化合物は、例えば不活性希釈剤または吸収できる食用担体と共に経口投与することができ、あるいはそれは硬質または軟質シェルのゼラチンカプセル中に入れることができ、あるいはそれは錠剤に圧縮することができ、あるいはそれは治療食の食品中に直接組み込むことができる。治療のための経口投与に対して、式(I)、(II)または/および(III)の化合物は、賦形剤を組み込み、摂取可能な錠剤、バッカル錠、トローチ剤、カプセル剤、エリキシル剤、懸濁剤、シロップ剤、ウェーハなどの形で使用することができる。そのような組成物および製剤は、式(I)、(II)または/および(III)の活性化合物の少なくとも1%を含有しなければならない。該組成物および製剤の百分率は勿論変動することができ、都合よくは構成単位の重量の約5%から約80%の間であり得る。上記の治療的に有用な組成物における式(I)、(II)または/および(III)の活性化合物の量は、適当な投与量が得られるようにしたものである。本発明による組成物または製剤は、約10mgと6gの間の式(I)、(II)または/および(III)の活性化合物を含有することができる。
【0222】
錠剤、トローチ、丸薬、カプセル剤等はまた以下の物質、すなわち、バインダー、例えばトラガカントガム、アカシア、コーンスターチまたはゼラチン;賦形剤、例えばリン酸2カルシウム;錠剤崩壊剤、例えばコーンスターチ、ポテトスターチ、アルギン酸等;潤滑剤、例えばステアリン酸マグネシウム;および甘味料、例えばスクロース、ラクトースまたはサッカリンを含有してよく、あるいはペパーミント、ウインターグリーン油またはチェリーフレーバーなどのフレーバー剤を添加してもよい。単位剤型がカプセルである場合は、それは上記物質以外に液体担体を含有してもよい。
【0223】
種々の他の物質がコーティングとして存在するか、または、さもなければ投与単位の物理的形態を改変してもよい。例えば、錠剤、丸薬またはカプセル剤はシェラック、糖類またはその両方でコーティングすることができる。シロップ剤またはエリキシル剤は活性成分、甘味剤としてのスクロース、保存料としてのメチルおよびプロピルパラベン、色素およびチェリーやオレンジフレーバーのようなフレーバーを含有することができる。勿論、何れかの単位剤形を調製する場合に使用される如何なる物質も薬学的に純粋であり、使用量において実質的に非毒性でなければならない。加えて、該活性化合物は除放性の製剤および調合物に組み込むことができる。例えば場合により活性成分が樹脂の放出特性を改変するための拡散障壁コーティングを被覆することができるイオン交換樹脂に結合している除放性剤形も考えられる。
【0224】
該活性化合物はまた、非経口または腹腔内に投与することができる。分散液もまた、グリセロール、液体、ポリエチレングリコール、およびそれらの混合物中、ならびに油脂中で調製することができる。通常の保存および使用条件下で、これらの製剤は微生物の生育を防止するための保存料を含有する。
【0225】
注射による使用に適する医薬品形態としては、滅菌水溶液(水溶性の場合)または分散液、および、滅菌注射用溶液または分散液の即時調製のための滅菌粉末が挙げられる。全ての場合において、その形態は、滅菌されていなければならず、、シリンジ使用に適する程度に十分な流動性を有さなければならない。それは製造および保存の条件下で安定であり、細菌およびカビのような微生物の染色作用に対して保護しなければならない。担体は例えば水、エタノール、ポリオール(例えばグリセロール、ポリエチレングリコールおよび液体ポリエチレングリコール等)、適当なそれらの混合物および植物油を含有する溶媒または分散媒体であり得る。適切な流動性は、例えば、レシチンのようなコーティングの使用により、分散体の場合は必要な粒径の維持により、、界面活性剤の使用により維持することができる。微生物の作用の予防は、種々の抗細菌剤および抗カビ剤、例えばパラベン、クロロブタノール、フェノール、ソルビン酸、チメロサール等によりもたらすことができる。多くの場合、等張性付与剤、例えば糖類または塩化ナトリウムを含有することが好ましい。注射用組成物の吸収の延長は、吸収を遅延させる物質、例えばモノステアリン酸アルミニウムおよびゼラチンを組成物中に使用することによって達成することができる。
【0226】
滅菌注射用溶液は、必要量の活性化合物を必要に応じて上で挙げた種々の他の成分とともに適切な溶媒中で合体させ、続いて濾過滅菌することにより調製する。一般に、分散液はベースの分散媒体および上で挙げたものからの必要な他の成分を含有する滅菌ベヒクル中に種々の滅菌された活性成分を配合することにより調製する。滅菌注射用溶液の製造のための滅菌粉末の場合は、調製の好ましい方法は、場合によって任意のさらなる所望の成分と一緒の真空乾燥、または凍結乾燥である。
【0227】
本明細書で使用される「薬学的に許容できる担体」とは、当該技術分野でよく知られている薬学的に活性な物質のための溶媒、分散媒体、コーティング、抗細菌および抗カビ剤、等張性付与剤および吸収遅延剤の全てを包含する。従来のいずれの媒体または薬剤も活性成分と適合しないことがない限り、治療用組成物中のその使用が考慮される。補助的な活性成分もまた組成物中に組み込むことができる。
【0228】
単位剤形、すなわち、投与が容易であり投与量が均一な形の非経口用組成物を処方することは特に有利である。本明細書で使用される単位剤形とは、治療すべき哺乳類患者に対して単一の投与量として適する物理的に分離した単位を意味し、各単位は必要な医薬担体と一緒に所望の治療効果をもたらすように計算された活性物質の所定量を含有する。本発明の新しい単位剤形の仕様は、(a)活性物質の独特の特性および達成すべき特定の治療効果、ならびに(b)身体の健康が本明細書に詳細に開示されているように損なわれている疾患状態を有する生存患者における疾患を治療するための活性物質のような配合技術に固有の制限に左右され、直接依存する。
【0229】
主要な活性成分は、前述した単位剤形中に有効量での好都合で有効な投与のために適当な薬学的に許容できる担体と共に配合する。単位剤形は、例えば、主要活性化合物を約10mg〜約6gの範囲で含有することができる。比率で表示すれば、活性化合物は一般に約1〜約750mg/ml担体で存在する。補助的な活性成分を含有する組成物の場合は、投与量は前記成分の通常の投与量および投与方法を参考にして決定する。
【0230】
本明細書で使用される用語「患者」または「対象」は、温血動物、好ましくは哺乳類、例えばネコ、イヌ、ウマ、ウシ、ブタ、マウス、ラットおよび霊長類を表し、ヒトを含む。好ましい患者はヒトである。
【0231】
用語「治療」とは、疾患または状態に伴う疼痛を軽減させるか、患者の疾患または状態の部分的ないし完全な軽減を提供するか、患者の疾患または状態を緩和させることの何れかを表す。
【0232】
本発明の化合物は、上記の種類の障害に罹っている患者に有効量で投与される。このような量は上文に記載した治療有効量と等価である。
【0233】
本発明を以下の実施例および図面によりさらに説明する。
【図面の簡単な説明】
【0234】
【図1A】−100mVおよび−60mVそれぞれの再分極パルス後の有効なチャネルの割合を示す図である。LTG:ラモトリジン、CBZ:カルバマゼピン、DPH:フェニトイン、LCM:ラコサミド
【図1B】ラコサミドの存在下(LCM)または不在下(PRETREATMENT)における遅い不活性化の電位依存性を示す図である。細胞は、−80mVで保持し、10秒間で−10mVまで脱分極し、続いて1.5秒の回復間隔をおいた後、試験パルスを加えた。速い不活性化の回復が、遅い不活性化状態の占有を第二の試験パルスの振幅の唯一の決定要因とすることを完全に可能にするために、1.5秒の回復間隔を用いた。ピークの有効電流を測定するには試験パルスを用いた。
【図2】クロルジアゼポキシド(CDP)、プレガバリンおよびラコサミド(LCM、3〜30mg/kg)のストレス誘導性高熱(SIH)に対する効果を示す図である。データは、11〜12匹のマウス/処置群の平均±標準誤差を表す。:生理食塩水と著しく異なる(P<0.05)。
【図3】グルタミン酸興奮毒性(Glut)を受けた後のCA1〜CA3における神経損傷に対するラコサミドの効果を示す図である。Glut(15mMで24時間)の2時間前に、培養液を、培地(Glut)、10μMのMK−801、1μMのテトロドトキシン(TTX)、ラコサミドの1μM(S1)、10μM(S2)および100μM(S3)により処理した。化合物はGlut開始の2時間前から24時間後まで存在させた。神経損傷は、Glut開始24時間後にヨウ化プロピジウム(PI)摂取の濃度測定定量化によって評価した。Glutの損傷を100%に設定し、データはGlut損傷の%として与えた。データは、2〜4個の独立した実験から合成した。データは平均値プラスSTDとして示す(***p<0.001対Glut;**p<0.01対Glut。一元配置型分散分析後のチューキー検定ポストホック)。
【図4】グルタミン酸興奮毒性(Glut)を受けた後のCA1〜CA3における神経損傷に対するラコサミドの効果を示す図である。Glut(15mMで24時間)の2時間前に、培養液を、培地(Glut)、10μMのMK−801、1μMのテトロドトキシン(TTX)、ラコサミドの1μM(S1)、10μM(S2)および100μM(S3)により処理した。化合物はGlut開始の2時間前から24時間後まで存在させた。神経損傷は、Glut開始24時間後にLDH放出の比色分析定量化によって評価した。Glutの損傷を100%に設定し、データはGlut損傷の%として示す。データは、2〜4個の独立した実験から合成した。データは平均値プラスSTDとして示す(***p<0.001対Glut;**p<0.01対Glut。一元配置型分散分析後のチューキー検定ポストホック)。
【図5A】ラコサミドが、アフリカツメガエル母卵細胞中で遅い不活性化電位曲線を、ラットII型ナトリウムチャネルのαサブユニットを発現するより過分極化された膜電位にシフトすることを示す図である。
【図5B】ラットの後根神経節において、100μMのラコサミドが、遅く不活性化されたTTX耐性のナトリウム電流の最大割合を増すことを示す図である。
【図5C】ラコサミドが、遅い不活性化からの回復を遅らせなかったことを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【実施例1】
【0235】
初期検査は、ラコサミドが既存の抗てんかん薬の効果と一致する仕方でナトリウムチャネルの速い不活性化ゲーティングの過程への変化を生じさせないことを示した。これは、ラコサミドの短い脱分極のステップまたは斜面(ramp)によって引き起こされる活動電位発火に対する非常に限定された効果によって証明された。速い不活性化に対するラコサミドの効果の欠如は、ナトリウムチャネルαサブユニットのみを発現するアフリカツメガエル母卵細胞について実施した実験によってさらに支持されている。神経芽腫細胞において観察されたように、ここでもまた、ラコサミドは、速い不活性化電圧曲線におけるシフトを生じたりまたは定常状態の速い不活性化からの回復を遅らしたりすることはなかった。ラコサミドの効果の欠如とは逆に、これらのゲーティング過程は両方とも、カルバマゼピン、ラモトリジンおよびフェニトインによってかなり変化した。
【0236】
母卵細胞発現系においてラコサミドは、しかしながら依然として、ナトリウム電流の急速で大いに電圧依存性の阻害を引き起こすことができた。マウス神経芽細胞腫NIE−115細胞におけるナトリウムチャネルは、持続性脱分極に長時間さらされたとき、速い不活性化に加えて遅い不活性化の生理学的過程を受ける。速く不活性化された立体構造のナトリウムチャネルは、500msの過分極パルスによって復活させることができる。以下の試験パルスから、遅く不活性化されるナトリウムチャネルの量が選択的に明らかになる。
【0237】
それ故、神経芽腫細胞を、−60mVの保持電位で維持し、速い不活性化および遅い不活性化を誘発させ、10msの試験パルスによって0mVまで脱分極し、利用できるチャネルの量を測定した。各細胞で速い不活性化を選択的に除去するために、脱分極する試験パルスの前に、−100mVまで、500msの過分極パルスによりこの手順を繰り返した。試験したすべての細胞において、カルバマゼピン(CBZ)、ラモトリジン(LTG)、フェニトイン(DPH)およびラコサミド(LCM、すべて薬剤は100μMで試験した)は、保持電位が−60mVのとき、電流の減少を引き起こした。CBZ、LTGおよびDPHに対して、−100mVまでの500msの過分極パルスの適用は、対照値と比較してそれぞれ0.94±0.19、0.88±0.06および0.99±0.05である有効な割合でチャネルに対する阻止作用を逆転させた(図1A)。
【0238】
臨床的に使用されるナトリウムチャネル調節抗けいれん薬の結果と比較して、LCMによってもたらされる阻止作用は、過分極化するプレパルスによっては、すなわち速い不活性化の除去によっては変えられなかった。これは、古典的なナトリウムチャネル調節抗けいれん薬類のラモトリジン、カルバマゼピンおよびフェニトインは速い不活性化に選択的に作用するが、ラコサミドは、その効果を遅い不活性化を高めることによってもっぱらナトリウム電流に対して発揮することを示している。
【0239】
ナトリウムチャネルの遅い不活性化状態への移行に対するラコサミドの濃度依存性の効果を評価するために、細胞を−80mVで保持し、10秒間で−10mVに脱分極し、続いて1.5秒の回復間隔を置き、その後試験パルスによってピークの有効電流を測定した。速い不活性化の回復が、遅い不活性化状態の占有を第二の試験パルスの振幅の唯一の決定要因とすることを完全に可能にするために、1.5秒の回復間隔を用いた。神経芽腫細胞が10秒間にわたって脱分極されたとき、ピークの有効電流は、条件付け試験パルスのそれの0.73±0.01まで減少した。ラコサミドは、濃度依存性の態様で、ナトリウムチャネルの遅い不活性化状態への移行を促進した(遅い不活性化状態におけるチャネルの%: VEH: 27%、LCM 32μM: 37%、LCM 100μM: 50%、LCM 320μM: 62%)。ラコサミド(100μM)は、遅い不活性化状態に入ることによりもたらされるナトリウムチャネルの有効性の減少を2倍より多くした。
【0240】
遅い不活性化への生理的移行の時定数は、12.0秒であった。薬物の存在下でチャネルは遅い不活性化状態により速く移行した(すなわち、移行の時定数4.8秒)。
【0241】
そのより速い対照物と同様に、ナトリウムチャネルが定常状態で遅い不活性化の過程を被る範囲は膜電位に依存する。NIE−115細胞における遅い不活性化の電圧依存性を評価し、−80mVよりもさらに脱分極した電位において生理的な遅い不活性化を明らかにした。しかしながら、遅い不活性化は、最高コンディショニングパルスの−10mVでは30%完了したのみであった。ラコサミドは、遅い不活性化の電圧曲線を、濃度依存性の態様で、より過分極化した膜電位にシフトさせた。100μMのLCMの存在下でのチャネル有効性における最初の重要な変化は、多くの神経細胞の一般的な静止電位より過分極化された−80mVのコンディショニング電位で記録された。LCMの適用は、−80mVと−10mVの間の電位の範囲にわたる脱分極によって無効にされた電流の最大割合を著しく増大した(−10mV、CONTROL 0.70±0.02、LCM 0.41±0.04)。ラコサミド(32μMおよび100μM)は、遅い不活性化に対するV50のよりマイナスの電位へのシフトを引き起こした(図1B)。すなわち、ラコサミドは、ナトリウムチャネルの遅い不活性化電圧曲線をより過分極化された電位にシフトする。かくして、所定の定常状態電位において、活性化に有効なナトリウムチャネルの量は、ラコサミドによって低下される。
【0242】
ラコサミドのナトリウムチャネルに対する以下の効果は、ラットの皮質ニューロン、NIE−115細胞およびアフリカツメガエル卵母細胞において確認された。
・ラコサミドは、正常な生理的条件下では、シナプス伝達を調節しなかった。
・ラコサミドは、培養ニューロン中のシナプスの輸送速度を立体選択的および濃度依存性の仕方で無差別に減衰させる。
・興奮性シナプス後の微小電位の頻度は、ラコサミドによって減少されない。
・ラコサミドは、安静時コンダクタンスに対して何の効果も生じない。
・ラコサミドは、持続性の反復的発火を阻止しなかった。
・ラコサミドは、皮質ニューロン中の遅い遷延性のバースト(bursting)を阻止する。
・ラコサミドは、活動電位に対する遷延性の持続的反復発火を阻止する。
・ラコサミドは、定常状態の速い不活性化電圧曲線をシフトしない。
・ラコサミドは、ナトリウムチャネルの速い不活性化の速度を変化させない。
・ナトリウムチャネルの遅く不活性化された無効な状態からの回復の速度は変化しない。
【0243】
要約すれば、これらの実験は、ラコサミドが、速い不活性化は正常のままにして、電位依存性のナトリウムチャネルの遅い不活性化を選択的に高めることを示している。これは、例えば変異したチャネルで見られるような過剰なナトリウムチャネルの機能を効果的に正常化することができる作用の新規なメカニズムを構成する。
【0244】
特に、ナトリウムチャネルの遅い不活性化に対するその効果によって、ラコサミドは、過剰興奮性と関係する疾患の予防、軽減または/および治療に適する。さらに、ナトリウムチャネルの遅い不活性化に対するその効果によって、ラコサミドは、イオンチャネルの機能障害と関係する疾患の予防、軽減または/および治療に適する。
[実施例2]
【0245】
ストレス誘発性不安症に対する動物モデルにおけるラコサミド
この調査ではストレスと関係する不安症に対する動物モデルにおけるラコサミドの効果について試験した。この動物モデルにおいて、ストレスは、直腸温度の測定によって誘導される。ストレス誘発性高体温(SIH)試験は、ストレス誘発性不安症のレベルを反映するマウスがストレスに対して自然な体温上昇反応を有するという原則に基づいている。このモデルにおけるラコサミドの効果は、第一線の抗不安治療として臨床的に用いられている対照化合物クロルアゼポキシド(CDP)のそれと比較した。さらに、全般性不安障害のために同様に開発されている新規な抗けいれん薬プレガバリンを、追加の対照化合物として使用した。
【0246】
材料および方法
Taconic Laboratories社(ジャーマンタウン、ニューヨーク州)からの成体オスの129SVEVマウス(8週齢)をこの検査では使用した。そのマウスは、フィルタートップつきの標準的なポリカーボネートの籠の中に収容した。1籠当り4匹の動物を収容し、他に記載がある場合を除いて、餌と水を検査の期間中無制限に与えた。検査を開始する前に、動物は、適切な健康状態および適合性を確認するために調査され、動物はまた、その試験に関連する非特異性のストレスを最小限にするために試験前の2日間の取り扱いを受けた。マウスは、午前6時に明かりをつける12時間/12時間の明/暗のサイクルで保持した。室温は、20℃と23℃の間に維持し、相対湿度は、30%と70%の間に維持した。
【0247】
クロルジアゼポキシド(CDP10mg/kg、バッチ番号94H1023、Sigma社)を滅菌水中に溶解した。ラコサミド(バッチ番号WE11837(537.1008、SIFA))およびプレガバリン(バッチ番号HS3730)を生理食塩水中に溶解した。すべての薬物は、試験の60分前に腹腔内投与した。
【0248】
その試験は、10分の間隔で同じ動物で繰り返される直腸温度の2回の測定を含む。試験の前日、マウスは、予定の消灯1時間前に実験室に持ち込み、無制限の餌と水と共に単独で一晩収容した。実験の朝、動物に、最初に、生理食塩水、CDP(10mg/kg)またはラコサミド(3、10または30mg/kg)を注射した。注射の1時間後、各動物を保持籠から取り出して仰臥位で抑え、その直腸温を、直腸プローブを動物の直腸に約0.5cmの長さでゆっくり挿入することにより測定した。その直腸プローブは、温度の読みを0.1℃の精度で提供するPhysiTempデジタル体温計(Fisher Scientific社製)に接続されている。そのプローブは、動物の体内に約5秒間または体温が安定するまで留まらせた。この温度を基準の直腸温(T1)として記録した。その動物を直ちに保持籠に戻し、10分の間隔の後、第2の直腸温(T2)をT1を測定したのと同じ手順を用いて計った。2回の直腸温測定が完了した後、動物をもとの籠に戻し、その後コロニー室に戻した。各挿入の前に直腸プローブはアルコールパッドで洗浄し、無菌のK−Yゼリーで潤滑化した。すべてのSIH検査は、午前8時〜11時の間に実施した。
【0249】
すべてのデータは、一元配置分散分析(ANOVA)を用いて分析し、続いてFisher PLSDの事後解析(post hoc analysis)を行った。平均値からの2つの標準偏差の上と下の異常値は、最終分析から除外した。
【0250】
結果
一元配置ANOVAにより有意な処理効果が見出された。Fisher PLSDの事後解析は、対照化合物CDP(10mg/kg)が生理食塩水処理のマウスと比較してマウスの体温を著しく下げたことを明らかにした(図2)。同様に、ラコサミドは、3および10mg/kgの投与量で生理食塩水と比較してSIHを著しく弱めた(下図)。プレガバリンまたはラコサミド(30mg/kg)のいずれもSIHに対して顕著な効果は見出されなかった。
【0251】
結論
ラコサミドは、この動物モデルにおいてストレス誘発性不安症に対して効果的である。したがって、本発明の化合物、特にラコサミドは、不安症または/およびストレス等の過剰興奮性と関係する疾患の予防、軽減または/および治療に適する。
[実施例3]
【0252】
本調査の焦点は、興奮毒性損傷のモデルとしてのグルタミン酸(Glut)暴露後のラットの海馬スライス培養液中のラコサミドの潜在的な神経保護的効果の分析であった。ラコサミドは、損傷の2時間前に投与し、損傷後24時間のその実験の終わりまで存在した。壊死性細胞死の定量分析を、ヨウ化プロピジウム(PI)摂取(領域CA1〜CA3における神経細胞死)および乳酸脱水素酵素(LDH)放出(全体のスライス中の細胞死)によって実施した。ラコサミドは、Glut後の壊死性細胞死に対して保護効果を示した。この検査で見出された神経保護的効果によって、ラコサミドは興奮毒性損傷と関係する障害の治療に対して効果的であることが予測される。
【0253】
実験方法
モデル系:器官型海馬スライス培養(OHC)
器官型スライス培養、中でも、海馬スライス培養は、種々の細胞型を守り、神経組織の複雑な三次元の組織化を保持するin vitroのモデルを代表する。OHCは、in vitro系の利便性/スピードと、in vivoで見出されるそれぞれの組織の保持された三次元構造とを結び付けるので、それらは中枢神経系における細胞増殖/分化に対する化合物の効果を素早く評価するための優れたモデル系を代表する。OHCは、必要な実験動物の数および時間を大幅に削減する。その上、それらは代謝と関連する効果、薬毒のメカニズムを見つけるためおよびさらに総括的機能に対する効果を評価するために完全に適する。
【0254】
傷害モデル
7〜8週間のOHC静止期培養液をStoppiniら、(1991年、J Neurosci Methods, 37(2):173〜82)に従って準備した。OHC(400μMのスライスの厚さ)を、若い動物(生後7〜9日後のラット)から得て、最初の2日間、その培養液を、回復を促進するための25%のウマ血清を補足した培地中に保持した。その後は血清を含まない(Neurobasal)培地を、実験を通して使用した。血清を含まない培養液は、血清成分の望ましくない効果が排除されるために、外部から適用された因子の分析により適している。第11日では、培養液は、2.5μMのPIにより12時間培養した後、高品質のスライス(PI摂取なし、解剖学的損傷なし)のみが実験で使用されることを確認するための事前選択がされた。12日後、OHCを、ラコサミド(1、10、および100μM)、媒体対照(DMSO)および基準物質により傷害2時間前に処理した。傷害開始の24時間後にその培養液を分析した。複数のOHCを神経傷害の2時間前から24時間後まで連続してラコサミドにさらした。したがって、ラコサミドは試験の全場面で存在したことになる。
【0255】
グルタミン酸は、すべてのグルタミン酸受容体サブタイプ:カイニン酸、NMDAおよびAMPA受容体に作用して興奮毒性(壊死性およびアポトーシス性)細胞死を誘発する。OHCを、ラコサミドまたは2つの神経保護基準物質、NMDAアンタゴニストMK−801(10μM)またはNaチャネル遮断薬TTX(1μM)のいずれか1つにより処理した。その2時間後、OHCを、15mMのグルタミン酸を投与することによって24時間にわたる興奮毒性傷害にさらした。
【0256】
損傷の定量的評価
PI摂取(壊死)−神経損傷の評価。それぞれの傷害の22時間後に、培養液をヨウ化プロピジウム(PI)により2時間にわたって染色した(PI摂取/取り込みは、細胞変性に対するマーカーとして役立つ)。蛍光像が半自動的に得られ(Nikonモーター駆動ステージ; LUCIAソフトウェア)、濃度測定(densitometry)によって分析して壊死性細胞死を定量化した(LUCIA画像分析ソフトウェア)。損傷はCA領域(CA1−CA2−CA3)内のみで分析され、したがって、神経損傷を表している。PI染色は、アルツハイマー病(AD)における信頼できる細胞死分析には不適であることが証明された。個々の実験からのデータを組み合わせるために、個々の実験のそれぞれの傷害の濃度測定による平均値を100%の損傷に設定した。すべてのその他のデータは、傷害損傷の%で示す。
【0257】
LDH放出(壊死)−全般的な細胞死の評価
この分析のための培地試料を、PI摂取の調査のために使用したものと同じ培養液から調達した。傷害の24時間後、細胞培養液からの一定分量(1ウェルを2〜3個のスライスにより共用する)を集め、凍結して4℃で保った。その後のLDH活性の試料分析は、CytoTox96(登録商標)(Promega Corp社製)熱量測定細胞毒性分析を用いて実施した。測定は、Magellanプレートリーダー(492nm対620nm)により実施した。このアッセイは、すべての損傷を受けた細胞からのLDH放出を検出し、したがって、スライス培養液中の全般的な細胞死の評価を表す。個々の実験からのデータを組み合わせるために、個々の実験のそれぞれの傷害の平均値を100%の損傷に設定した。すべてのその他のデータは、傷害損傷の%で示す。
【0258】
実験装置および分析の領域
in vitroの第12日に対して、高品質のスライスのみを選択し、傷害開始の2時間前にラコサミド(1、10および100μM)により処理した。ラコサミドは、傷害開始2時間前から24時間後まで存在させた。傷害の24時間後にアッセイを終了し、培養液を分析のために使用し、1)LDH放出測定用に培養液試料を得、2)培養液中のPI摂取を分析した。神経損傷を、CA1およびCA3領域におけるPI摂取の濃度測定による定量化により評価した。すべての図において、誤差棒は標準偏差を示す。データは、一元配置ANOVAにより分析し、続いてチューキーのすべて二つ一組の多重比較事後テスト(post−hoc test)を行った。統計的有意性は、* p<0.05、** p<0.01、または*** p<0.001により定義される。
【0259】
結果
グルタミン酸(Glut)傷害後のラコサミドの効果
神経損傷
濃度測定PI摂取分析によって評価されたように、ラコサミドは、Glutの24時間後にすべてのCA亜領域(CA1、CA2、CA3の組合せ)において、神経損傷に関する統計的に有意な効果を有した(図3)。これは、試験したラコサミドの3つの濃度(p<0.01 S1対Glut;p<0.001 S2およびS3対Glut)すべてに対して当てはまる。基準物質MK−801(10μM)は、Glut誘発性神経損傷に対して顕著な保護を与えた(MK−801対Glutに対してp<0.001)。第2の基準物質テトロドトキシン(1μM TTX)もまた、Glut後、神経保護的効果を示した(p<0.01; TTX対Glut)。ラコサミドが介在した神経防護作用の程度は、TTXのそれと似ているがMK−801のそれよりは小さかった。
【0260】
総体的損傷
LDH放出の比色分析測定によって評価されたように、ラコサミドは、Glutの24時間後に総体的損傷に対して統計的に有意な効果を有した(図4)。これは、試験したラコサミドの3つの濃度(p<0.01 S1およびS3対Glut; p<0.001 S2対Glut)すべてに対して当てはまる。基準物質MK−801(10μM)は、Glut誘発性細胞損傷に対して顕著な保護を与えた(MK−801対Glutに対してp<0.001)。第2の基準物質テトロドトキシン(1μM TTX)もまた、Glut後、保護効果を示した(p<0.01; TTX対Glut)。ラコサミドが介在した細胞防護作用の程度は、TTXおよびMK−801のそれと似ていた。
【0261】
考察および結論
この調査は、in vitroでの神経傷害後のラコサミドの潜在的な保護的効果を詳しく調べるために設計した。評価項目として、2つの異なる計測器が示した値を用いた。CA領域における特定の神経壊死損傷は、濃度測定によるPI摂取分析により定量化し、全般的な細胞壊死傷害は、全体のスライスからのLDH放出の測定によって評価した。
【0262】
高いグルタミン酸のレベル(Glut)は、大量の壊死性神経細胞死を引き起こした(CA1は、CA3より影響を受けた)。NMDAアンタゴニストMK−801の投与は、神経損傷を約80%と全体的な損傷を約50%削減した。これは、MK−801が、ニューロンに対しては保護を提供するがグリア細胞に対しては提供しないことを示している。Naチャネル遮断薬のTTXは、約50%の神経損傷の削減および約20〜40%の全般的損傷の削減を提供した。ラコサミドは、Glut後に、神経(CA1およびCA3)および全般的な壊死性損傷に対して顕著な保護作用を示した。ラコサミドは、Glut誘発性壊死を約40〜50%および全般的損傷を約30〜40%と著しく削減した。これらのデータによれば、ラコサミドは、興奮性傷害のモデル(Glut)において抗壊死効果を有するものと思われる。
【0263】
かくして、本発明の化合物、特にラコサミドは、特に神経変性疾患または/および精神病性疾患における神経保護的予防、軽減または/および治療に適応し得る。
[実施例4]
【0264】
遅い不活性化電圧曲線のより過分極化された膜電位へのラコサミド誘導シフト(図1B参照)および/または遅い不活性化状態のナトリウムチャネルの割合の増加が異なる細胞系において観察されている。図5Aは、100μMのラコサミドの存在下でラットII型ナトリウムチャネルのαサブユニット(Na1.2)を発現するアフリカツメガエル卵母細胞におけるこの顕著な電圧曲線のシフトを示している。ラットの後根神経節において、100μMのラコサミドは、TTX耐性のナトリウム電流の遅い不活性化を著しく増加した(図5B)。ラコサミド(100μM)により、10秒の脱分極パルスによる、遅く不活性化されるナトリウムチャネルの割合が著しく増加したが、チャネル回復に対する半減期(T)は、あまり変化しなかった(図5C)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
過剰興奮性と関係する疾患の予防、軽減または/および治療のための医薬組成物の調製のための、下記式(I)
【化1】

[式中、
Rは水素、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、アリールアルキル、複素環、複素環アルキル、アルキル複素環、シクロアルキルまたはシクロアルキルアルキルであり、Rは非置換であるか、少なくとも1つの電子求引基または/および少なくとも1つの電子供与基で置換されており;
は水素またはアルキル、アルケニル、アルキニル、アリールアルキル、アリール、複素環アルキル、アルキル複素環、複素環、シクロアルキル、シクロアルキルアルキルであり、各々は非置換であるか、少なくとも1つの電子供与基または/および少なくとも1つの電子求引基で置換されており;
およびRは独立して水素、アルキル、アルケニル、アルキニル、アルコキシ、アルコキシアルキル、アリールアルキル、アリール、ハロ、複素環、複素環アルキル、アルキル複素環、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、またはZ−Yであり、RおよびRは非置換であるか、少なくとも1つの電子求引基または/および少なくとも1つの電子供与基で置換されていてもよく;RおよびRにおける複素環はフリル、チエニル、ピラゾリル、ピロリル、メチルピロリル、イミダゾリル、インドリル、チアゾリル、オキサゾリル、イソチアゾリル、イソキサゾリル、ピペリジル、ピロリニル、ピペラジニル、キノリル、トリアゾリル、テトラゾリル、イソキノリル、ベンゾフリル、ベンゾチエニル、モルホリニル、ベンゾキサゾリル、テトラヒドロフリル、ピラニル、インダゾリル、プリニル、インドリニル、ピラゾリジニル、イミダゾリニル、イミダゾリジニル、ピロリジニル、フラザニル、N−メチルインドリル、メチルフリル、ピリダジニル、ピリミジニル、ピラジニル、ピリジル、エポキシ、アジリジノ、オキセタニル、アゼチジニルであるか、またはNが複素環内に存在する場合は、それらのN−オキシドであり;
ZはO、S、S(O)、NR、NR’またはPRまたは化学結合であり;
Yは水素、アルキル、アリール、アリールアルキル、アルケニル、アルキニル、ハロ、複素環、複素環アルキル、アルキル複素環であり、Yは非置換であるか、少なくとも1つの電子供与基または/および少なくとも1つの電子求引基で置換されていてもよく、複素環はRまたはRにおけるものと同じ意味を有するが、ただしYがハロである場合、Zは化学結合であるか、または
ZYが一緒になってNRNR、NROR、ONR、OPR、PROR、SNR、NRSR、SPR、PRSR、NRPR、PRNRまたはN
【化2】

であり;
’は水素、アルキル、アルケニルまたはアルキニルであり、これらは非置換であるか、少なくとも1つの電子求引基または/および少なくとも1つの電子供与基で置換されていてもよく;
、RおよびRは独立して水素、アルキル、アリール、アリールアルキル、アルケニルまたはアルキニルであり、ここでR、RおよびRは独立して非置換であるか、または少なくとも1つの電子求引基または/および少なくとも1つの電子供与基で置換されていてもよく;
はRまたはCOORまたはCORであり、Rは非置換であるか、または少なくとも1つの電子求引基または/および少なくとも1つの電子供与基で置換されていてもよく;
は水素またはアルキルまたはアリールアルキルであり、アリールまたはアルキル基は非置換であるか、少なくとも1つの電子求引基または/および少なくとも1つの電子供与基で置換されていてもよく;
nは1〜4であり;
aは1〜3である]
を有する化合物または薬学的に許容できるそれらの塩の使用。
【請求項2】
過剰興奮性と関係する疾患が、過剰興奮性組織と関係する疾患である、請求項1に記載の使用。
【請求項3】
疾患が、イオンチャネルの機能障害と関係する疾患である、請求項1または2に記載の使用。
【請求項4】
イオンチャネルが、電位依存性イオンチャネルまたはリガンド依存性イオンチャネルである、請求項3に記載の使用。
【請求項5】
電位依存性イオンチャネルが、電位依存性ナトリウムチャネル、電位依存性カルシウムチャネル、電位依存性カリウムチャネル、および電位依存性塩素イオンチャネルから選択され、または/かつ、リガンド依存性イオンチャネルが、ニコチン性アセチルコリン受容体、リアノジン受容体、環状ヌクレオチド依存性受容体、ATP受容体、GABA−A受容体、グルタミン酸−NMDA受容体、グリシン受容体、5−HT3受容体、およびpH感受性チャネルから選択される、請求項4に記載の使用。
【請求項6】
疾患がチャネル病である、請求項1から5のいずれか一項に記載の使用。
【請求項7】
疾患が筋障害である、請求項1から6のいずれか一項に記載の使用。
【請求項8】
疾患が、骨格筋障害または/および運動障害である、請求項7に記載の使用。
【請求項9】
疾患が運動障害である、請求項8に記載の使用。
【請求項10】
骨格筋または/および運動障害が、ミオトニーおよび麻痺から選択される、請求項8に記載の使用。
【請求項11】
障害が、遺伝性ミオトニーおよび周期性麻痺から選択される、請求項10に記載の使用。
【請求項12】
障害が、先天性パラミオトニー、カリウム悪化性ミオトニー、浮動性ミオトニー、持続性ミオトニー、アセタゾラミド反応性ミオトニー、高カリウム血性周期性麻痺、正常カリウム血性麻痺、発作性ジストニア、モルヴァン症候群およびアイザック症候群から選択される、請求項10または11に記載の使用。
【請求項13】
骨格筋または/および運動障害が、運動失調から選択される、請求項8に記載の使用。
【請求項14】
運動失調が、一過性運動失調2、脊髄小脳運動失調6、および一過性運動失調から選択される、請求項13に記載の使用。
【請求項15】
骨格筋または/および運動障害が、ミオトニーから選択される、請求項8に記載の使用。
【請求項16】
ミオトニーが、トムゼン型ミオトニー、ベッカー型ミオトニー、先天性ミオトニー、全身性ミオトニー、ミオトニアレヴィオールから選択される、請求項15に記載の使用。
【請求項17】
骨格筋または/および運動障害が、ミオキミアおよび低カリウム血性周期性麻痺1から選択される筋無力症である、請求項8に記載の使用。
【請求項18】
筋障害が、QT延長症候群3、QT延長症候群5、ジルヴェル・ランゲ・ニールセン症候群、誘発性QT延長症候群、QT延長症候群1、およびQT延長症候群2から選択される心不整脈である、請求項7に記載の使用。
【請求項19】
疾患が、熱性けいれんを伴う全身性てんかん(GEFS+)、乳児重症ミオクロニーてんかん(SMEI)、良性家族性新生児乳児けいれん(BNIFS)、全身性強直−間代発作を伴う難治性小児てんかん(ICEGTC)、点頭けいれん(ウエスト症候群)、CACNB4機能障害と関係する全身性てんかん、良性家族性新生児けいれん1、良性家族性新生児けいれん2、および夜間前頭葉てんかんから選択されるてんかん症候群である、請求項1から6のいずれかに記載の使用。
【請求項20】
疾患が、肢端紅痛症および家族性直腸痛から選択される疼痛症候群である、請求項1から6のいずれかに記載の使用。
【請求項21】
疾患が、優性聴覚消失、悪性高熱症5、悪性高熱症1、多発性嚢胞腎1、デント病、バーター症候群、中心コア障害、およびCACNA1Aと関係する皮質過剰興奮性から選択される、請求項1から6のいずれかに記載の使用。
【請求項22】
疾患が、不安症、ストレス、外傷後ストレス障害、強迫性障害および末梢神経過剰興奮性症候群から選択される、請求項1から6のいずれかに記載の使用。
【請求項23】
過剰興奮性と関係する疾患が、神経損傷または/および神経変性と関係する状態である、請求項1から6のいずれかに記載の使用。
【請求項24】
過剰興奮性と関係する疾患が、神経変性疾患または/および精神病性疾患によって引き起こされる状態である、請求項23に記載の使用。
【請求項25】
神経変性疾患または/および精神病性疾患が、アルツハイマー病、パーキンソン病、双極性障害、および統合失調症から選択される、請求項24に記載の使用。
【請求項26】
およびRの1つが水素である、請求項1から25のいずれか一項に記載の使用。
【請求項27】
nが1である、請求項1から26のいずれか一項に記載の使用。
【請求項28】
Rが、アリールアルキル、特にベンジルであり、Rは、非置換であるか、少なくとも1つの電子供与基または/および少なくとも1つの電子吸引基で置換されている、請求項1から27のいずれか一項に記載の使用。
【請求項29】
が、非置換であるか、少なくとも1つの電子供与基または/および少なくとも1つの電子吸引基で置換されているアルキルである、請求項1から28のいずれか一項に記載の使用。
【請求項30】
およびRが、独立して、非置換であるか少なくとも1つの電子供与基または/および少なくとも1つの電子吸引基、特にアルコキシアルキル、複素環、複素環アルキル、またはZY;
(ただし、Zは、O、NRまたはPRであり、Yは、水素またはアルキルであるか、あるいはZYは、NRNR、NROR、ONR
【化3】

であり、R、RおよびRは、請求項1で定義した通りである)
によって置換されている、水素、アルキル、アルコキシまたはアリールアルキルである、請求項1から29のいずれか一項に記載の使用。
【請求項31】
少なくとも1つの電子吸引基または/および少なくとも1つの電子供与基が、独立して、ハロ、アルキル、アルケニル、アルキニル、ニトロ、カルボキシ、ホルミル、カルボキシアミド、アリール、第四級アンモニウム、ハロアルキル、アリールアルカノイル、ヒドロキシ、アルコキシ、カルバルコキシ、アミノ、アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、アリールオキシ、メルカプト、アルキルチオ、アルキルメルカプト、およびジスルフィドから選択される、請求項1から30のいずれか一項に記載の使用。
【請求項32】
または/およびRにおける少なくとも1つの電子供与基または/および少なくとも1つの電子吸引基が、独立して、ヒドロキシまたはアルコキシである、請求項1から31のいずれか一項に記載の使用。
【請求項33】
化合物が、一般式(II)、
【化4】

(式中、
Arは、非置換であるか少なくとも1つの電子供与基または/および少なくとも1つの電子吸引基で置換されているアリールであり、
は、アルキルであり、
は、請求項1、26、30、または32で定義した通りである)
を有する、請求項1から32のいずれか一項に記載の使用。
【請求項34】
が−CH−Qであり、Qがアルコキシである、請求項33に記載の使用。
【請求項35】
がメチルである、請求項33または34に記載の使用。
【請求項36】
Arが、非置換であるか、好ましくは少なくとも1つのハロ、より好ましくは少なくとも1つのフルオロで置換されているフェニルである、請求項33から35のいずれか一項に記載の使用。
【請求項37】
Arが、非置換のフェニルである、請求項36に記載の使用。
【請求項38】
化合物が、
(R)−2−アセトアミド−N−ベンジル−3−メトキシ−プロピオンアミド、
(R)−2−アセトアミド−N−ベンジル−3−エトキシ−プロピオンアミド、
O−メチル−N−アセチル−D−セリン−m−フルオロベンジルアミド、または
O−メチル−N−アセチル−D−セリン−p−フルオロベンジルアミド
である、請求項36に記載の使用。
【請求項39】
化合物が、一般式(III)、
【化5】

(式中、
は、独立して、水素、ハロ、アルキル、アルケニル、アルキニル、ニトロ、カルボキシ、ホルミル、カルボキシアミド、アリール、第四級アンモニウム、ハロアルキル、アリールアルカノイル、ヒドロキシ、アルコキシ、カルバルコキシ、アミノ、アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、アリールオキシ、メルカプト、アルキルチオ、アルキルメルカプト、およびジスルフィドからなる群から選択される1つまたは複数の置換基であり、
は、水素、アルキル、アルコキシ、アルコキシアルキル、アリール、複素環、複素環アルキル、N−アルコキシ−N−アルキルアミノ、N−アルコキシアミノ、およびN−カルバルコキシからなる群から選択され、
は、アルキルである)
を有する、請求項1から38のいずれか一項に記載の使用。
【請求項40】
が、水素もしくはフルオロ、エトキシメチルであり、かつ/またはRがメチルである、請求項39に記載の使用。
【請求項41】
が、アルコキシアルキル、特にメトキシメチルおよびメトキシエチル、アルキル、特にメチルおよびエチル、−NH−O−CH、−N(CH)−O−CH、−NH(C(O)−O−CH)、アリール、特にフェニル、ならびに複素環、特にフリル、ピリジニル、プリミジニル、ピロリル、オキサゾリルおよびチエニルから選択される、請求項39または40に記載の使用。
【請求項42】
化合物が、
N−アセチル−D−フェニルグリシンベンジルアミド、
D−1,2−(N,O−ジメチルヒドロキシルアミノ)−2−アセタミド酢酸ベンジルアミド、または
D−1,2−(O−メチルヒドロキシルアミノ)−2−アセタミド酢酸ベンジルアミド
である、請求項39から41のいずれか一項に記載の使用。
【請求項43】
化合物が、R形立体配置をしている、請求項1から42のいずれか一項に記載の使用。
【請求項44】
該化合物が、実質的にエナンチオピュアである、請求項43に記載の使用。
【請求項45】
医薬組成物を、少なくとも100mg/日、好ましくは少なくとも200mg/日、より好ましくは少なくとも300mg/日、さらにより好ましくは少なくとも400mg/日、最も好ましくは少なくとも600mg/日の化合物の投与量での治療用に調製する、請求項1から44のいずれか一項に記載の使用。
【請求項46】
医薬組成物を、最大6g/日、より好ましくは最大1g/日、さらにより好ましくは最大800mg/日、最も好ましくは最大600mg/日の化合物の投与量での治療用に調製する、請求項1から45のいずれか一項に記載の使用。
【請求項47】
医薬組成物を、少なくとも400mg/日、好ましくは600mg/日または800mg/日の投与量での治療用に調製する、請求項1から46のいずれか一項に記載の使用。
【請求項48】
医薬組成物を、複数の治療対象の平均を計算して、0.1〜15μg/ml(トラフ)および5〜30μg/ml(ピーク)の血漿濃度をもたらす投与用に調製する、請求項1から47のいずれか一項に記載の使用。
【請求項49】
医薬組成物を、経口投与、直腸投与または静脈内投与用、好ましくは静脈内投与用に調製する、請求項1から48のいずれか一項に記載の使用。
【請求項50】
医薬組成物が、
(a)請求項1および26から44のいずれか一項に記載の式(I)、(II)、または/および(III)の少なくとも1つの化合物、好ましくはラコサミド、および
(b)過剰興奮性と関係する疾患の予防、軽減または/および治療のための少なくとも1つのさらなる活性薬剤
を含む、請求項1から49のいずれか一項に記載の使用。
【請求項51】
化合物(a)および(b)が、単一の剤形中に存在する、請求項50に記載の使用。
【請求項52】
化合物(a)および(b)が、別々の剤形中に存在する、請求項50に記載の使用。
【請求項53】
医薬組成物を、哺乳動物における投与用に調製する、請求項1から52のいずれか一項に記載の使用。
【請求項54】
医薬組成物を、ヒトにおける投与用に調製する、請求項1から53のいずれか一項に記載の使用。
【請求項55】
(a)請求項1および26から44のいずれか一項に記載の式(I)、(II)、または/および(III)の少なくとも1つの化合物、好ましくはラコサミド、および
(b)過剰興奮性と関係する疾患の予防、軽減または/および治療のための少なくとも1つのさらなる活性薬剤
を含む医薬組成物。
【請求項56】
過剰興奮性と関係する疾患の予防、軽減または/および治療のための方法であって、それを必要とする対象に請求項1および26から44のいずれかに記載の少なくとも1つの化合物、特にラコサミドを投与するステップを含む方法。
【請求項57】
過剰興奮性と関係する疾患の予防、軽減または/および治療のための方法であって、それを必要とする対象に請求項1および26から44のいずれかに記載の少なくとも1つの化合物、特にラコサミドと、過剰興奮性と関係する疾患の予防、軽減または/および治療のためのさらなる活性薬剤とを同時投与するステップを含む方法。
【請求項58】
投与が、経口、注射(例えば、静脈内または筋肉内)または直腸(例えば、座薬、ゲル、液剤など)、好ましくは静脈内注射による投与である、請求項56または57に記載の方法。
【請求項59】
イオンチャネルの機能障害と関係する疾患の予防、軽減または/および治療のための医薬組成物の調製のための、請求項1および26から44のいずれか一項に記載の化合物の使用。
【請求項60】
疾患が請求項3から25のいずれか一項に記載の疾患から選択される、請求項59に記載の使用。
【請求項61】
医薬組成物が、
(a)請求項1および26から44のいずれか一項に記載の式(I)、(II)、または/および(III)の少なくとも1つの化合物、好ましくはラコサミド、および
(b)イオンチャネルの機能障害と関係する疾患の予防、軽減または/および治療のための少なくとも1つのさらなる活性薬剤
を含む、請求項59または60に記載の使用。
【請求項62】
化合物(a)および(b)が、単一の剤形中に存在する、請求項59から61のいずれか一項に記載の使用。
【請求項63】
化合物(a)および(b)が、別々の剤形中に存在する、請求項59から62のいずれか一項に記載の使用。
【請求項64】
医薬組成物を、哺乳動物における投与用に調製する、請求項59から63のいずれか一項に記載の使用。
【請求項65】
医薬組成物を、ヒトにおける投与用に調製する、請求項64に記載の使用。
【請求項66】
(a)請求項1および26から44のいずれか一項に記載の式(I)、(II)、または/および(III)の少なくとも1つの化合物、好ましくはラコサミド、および
(b)イオンチャネルの機能障害と関係する疾患の予防、軽減または/および治療のための少なくとも1つのさらなる活性薬剤
を含む医薬組成物。
【請求項67】
イオンチャネルの機能障害と関係する疾患の予防、軽減または/および治療のための方法であって、それを必要とする対象に請求項1および26から44のいずれかに記載の少なくとも1つの化合物、特にラコサミドを投与するステップを含む方法。
【請求項68】
イオンチャネルの機能障害と関係する疾患の予防、軽減または/および治療のための方法であって、それを必要とする対象に請求項1および26から44のいずれかに記載の少なくとも1つの化合物、特にラコサミドと、イオンチャネルの機能障害と関係する疾患の予防、軽減または/および治療のためのさらなる活性薬剤とを同時投与するステップを含む方法。

【図5A】
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【図5B】
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【図5C】
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【図1A】
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【図1B】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2009−541397(P2009−541397A)
【公表日】平成21年11月26日(2009.11.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−517011(P2009−517011)
【出願日】平成19年6月29日(2007.6.29)
【国際出願番号】PCT/EP2007/005806
【国際公開番号】WO2008/000513
【国際公開日】平成20年1月3日(2008.1.3)
【出願人】(507038467)シュヴァルツ・ファーマ・アーゲー (8)
【Fターム(参考)】