説明

過給圧可変式ターボチャージャ

【課題】 排気ガス中に含まれる異物がガス通路の壁面とこれに対向するノズルベーンとの間に堆積するのを抑制することにより、ターボチャージャの過給圧変更機能を長期間に亘って良好に維持することのできる過給圧可変式ターボチャージャを提供する。
【解決手段】 過給圧可変式ターボチャージャのタービンハウジング12内には、スクロール通路の内周に沿って環状のガス通路15が形成されている。また、タービンハウジング12内には、ガス通路15の通路断面積を調節する複数のノズルベーン20と、各ノズルベーン20を回動可能に支持し、かつタービンハウジング12とともにガス通路15を構成するノズルリング16とが配設されている。各ノズルベーン20は、タービンハウジング12の壁面12aに対向配置される対向面22と、ノズルリング16の壁面16aに対向配置される対向面26とにそれぞれ突条21を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、エンジンに供給される吸入空気の過給圧を変更する過給圧可変式ターボチャージャに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、機関運転状態に応じて、排気ガスの流量及び流速を変更することにより、コンプレッサによる吸気の過給圧を変更する過給圧可変式ターボチャージャが知られている。この種のターボチャージャでは、ハウジング内に設けられたタービンホイールの周囲に複数のノズルベーンを配設し、各ノズルベーンをその回動軸周りに回動させるようにしている。これにより、それらノズルベーンの間に形成されるガス通路の開度量が適宜調節され、同タービンホイールに吹き付けられる排気ガスの流量及び流速が変更される。尚、こうした過給圧可変式ターボチャージャとして、ノズルベーンの形状を最適化することにより、ノズルベーンとガス通路の壁面との間のクリアランスを位置に応じて変更するようにしたものが特許文献1に記載されている。また、ノズルベーンに空気吐出孔を形成し、同空気吐出孔からガス通路の壁面に向けて空気を吹き付けるようにしたものが特許文献2に記載されている。その他、特許文献3には、ノズルベーンとガス通路の壁面との間のクリアランスを維持するためのピンを同ノズルベーンの中空部内に備えた構成が特許文献3に記載されている。
【特許文献1】特開2001−173449号公報
【特許文献2】特開平11−350967号公報
【特許文献3】特開平11−190219号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、過給圧可変式ターボチャージャにおいては、過給圧効率を向上させるため、ノズルベーンとガス通路の壁面との間のクリアランスが非常に狭く設定されている。即ち、このクリアランスを狭く設定することにより、同クリアランスを通じて排気が漏れ出るのを極力抑制するようにしている。このため、排気ガス中に含まれるカーボン等、粘性の高い異物がガス通路の壁面とこれに対向するノズルベーンとの間に堆積すると、この堆積した異物によりノズルベーンの回動が規制されて排気ガスの調量動作に支障をきたし、エンジン吸気の過給圧を好適に調節することが困難になるおそれがあった。
【0004】
本発明は、こうした実情に鑑みてなされたものであって、その目的は、排気ガス中に含まれる異物がガス通路の壁面とこれに対向するノズルベーンとの間に堆積するのを抑制することにより、ターボチャージャの過給圧変更機能を長期間に亘って良好に維持することのできる過給圧可変式ターボチャージャを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、タービンロータの周囲に形成されたガス通路に複数のノズルベーンを備え、前記各ノズルベーンを回動させることによって、前記ガス通路を通過し前記タービンロータに吹き付けられる排気の流量を可変とする過給圧可変式ターボチャージャにおいて、前記各ノズルベーンとこれらに対向する前記ガス通路の壁面との間に堆積する異物を掻き取るための掻き取り手段を備えることを要旨とする。
【0006】
同構成によれば、掻き取り手段によって、各ノズルベーンとこれらに対向するガス通路の壁面との間に異物が堆積するのを抑制し、その粘性の高い異物により各ノズルベーンの回動が規制されて排気の調量動作に支障をきたすのを極力回避することができる。従って、ターボチャージャの過給圧変更機能を長期間にわたって良好に維持することができるようになる。
【0007】
請求項2に記載の発明は、請求項1記載の過給圧可変式ターボチャージャにおいて、前記掻き取り手段は、前記ガス通路の壁面又はこれに対向する前記ノズルベーンの対向面に形成された突部であることを要旨とする。
【0008】
同構成によれば、各ノズルベーンを開閉駆動させるのに伴って、ガス通路の壁面とこれに対向するノズルベーンの対向面との間に堆積した異物を突部により好適に掻き取ることができるようになる。
【0009】
尚、上記突部としては、請求項3に記載されるように、ガス通路の壁面又はこれに対向するノズルベーンの対向面において所定方向に沿って延びる突条とすることにより、その掻き取り機能を増大させることができる。
【0010】
請求項4に記載の発明は、請求項3記載の過給圧可変式ターボチャージャにおいて、前記突条は、前記ノズルベーンが開閉駆動する際の回動方向に沿って延びることを要旨とする。
【0011】
同構成によれば、突条の延びる方向と、ノズルベーンが開閉駆動する際の回動方向とが一致しているため、各ノズルベーンが開閉駆動する際における摺動抵抗の増大を極力抑制することができる。
【0012】
請求項5に記載の発明は、請求項3又は4記載の過給圧可変式ターボチャージャにおいて、前記突条は、前記ノズルベーンが開閉駆動する際の回動方向に対して傾斜した方向に延びることを要旨とする。
【0013】
同構成によれば、突条の延びる方向がノズルベーンが開閉駆動する際の回動方向に対し傾斜しているため、各ノズルベーンを開閉駆動させることで多くの異物を掻き取ることができる。
【0014】
尚、この上記構成を請求項4に記載の構成に適用し、例えば各突条が網目状を呈するよう構成することにより、その掻き取り機能を一層効果的に増大させることができる。その他、ノズルベーンの回転軸側にはその回動方向に対して傾斜した方向に延びる突条を形成する一方、同回転軸から離間した位置にはノズルベーンの回動方向に延びる突条を形成するといった構成を採用することにより、ノズルベーンが開閉駆動する際における摺動抵抗の増大を極力抑制しつつ、異物掻き取り機能についてもその増大を図ることができるようになる。
【0015】
尚、請求項5に記載の構成として望ましくは、請求項6に記載の発明によるように、前記突条は、前記ノズルベーンが開閉駆動する際の回動方向と直交する方向に延びることを要旨とする。
【0016】
同構成によれば、突条の延びる方向と、ノズルベーンが開閉駆動する際の回動方向とが直交しているため、各ノズルベーンを開閉駆動させることでより多くの異物を掻き取ることができる。
【0017】
請求項7に記載の発明は、請求項3〜6のうちいずれか一項に記載の過給圧可変式ターボチャージャにおいて、前記各突条が並行な位置関係を有して複数形成されてなることを要旨とする。
【0018】
同構成によれば、掻き取り手段は複数の突条からなるため、ガス通路の壁面とこれに対向するノズルベーンの対向面との間に堆積する異物をより効率的に掻き取ることができる。尚、「各突条が平行な位置関係を有する」とは、ノズルベーンの回動方向に延びる各突条についてそれらが平行な位置関係を有すること、また、ノズルベーンの回動方向に対して傾斜した方向に延びる各突条についてそれらが平行な位置関係を有することを意味する。
【0019】
請求項8に記載の発明は、請求項2〜7のうちいずれか一項に記載の過給圧可変式ターボチャージャにおいて、前記突部は断面三角形状をなすことを要旨とする。
同構成によれば、突部の尖端によってより効果的に異物を掻き取ることができる。また、突部と、ガス通路の壁面又はこれに対向するノズルベーンの対向面との接触抵抗を極力小さく抑えることもできる。
【0020】
請求項9に記載の発明は、請求項2〜8のうちいずれか一項に記載の過給圧可変式ターボチャージャにおいて、前記ガス通路の壁面又はこれに対向する前記ノズルベーンの対向面に凹部を形成してなることを要旨とする。
【0021】
この構成によれば、突部によって掻き取られた異物をガス通路の壁面に開口する凹部、又はノズルベーンの対向面に開口する凹部の中に導入させることで、突部による異物の掻き取り機能を増大させることができるとともに、その異物がガス通路の壁面やこれに対向するノズルベーンの対向面に再付着するのを抑制することができるようになる。
【0022】
請求項10に記載の発明は、請求項2〜9のうちいずれか一項に記載の過給圧可変式ターボチャージャにおいて、前記突部は、前記ガス通路の壁面に対向する前記ノズルベーンの対向面に形成されることをその要旨とする。
【0023】
同構成によれば、ガス通路の壁面に突部を形成する構成と比較して、異物の付着し易い部位に対応して突部を容易に形成することができる。また、突部の形状を変更するに際して、その設計上の自由度を高める上でも好適なものとなる。
【0024】
請求項11に記載の発明は、請求項9又は10記載の過給圧可変式ターボチャージャにおいて、前記凹部は、前記ガス通路の壁面に対向する前記ノズルベーンの対向面に形成されることをその要旨とする。
【0025】
同構成によれば、ガス通路の壁面に凹部を形成する構成と比較して、異物の付着し易い部位に対応して凹部を容易に形成することができる。また、凹部の形状を変更するに際して、その設計上の自由度を高める上でも好適なものとなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下、本発明を車載用エンジンに適用される過給圧可変式ターボチャージャに具体化した一実施形態について、図1〜図5に基づいて説明する。
図1に示されるように、過給圧可変式ターボチャージャ10において、タービンロータ11を収容するタービンハウジング12内には渦巻き形状のスクロール通路13が形成されている。このスクロール通路13には、エンジンから排出される排気ガスが送り込まれる。また、同タービンハウジング12内には、スクロール通路13内に送り込まれた排気ガスをタービンロータ11へ向けて吹き付けるためのガス通路15が形成されている、このガス通路15は、スクロール通路13の内周に沿って環状に形成されている。このガス通路15を通じて、エンジンからスクロール通路13内に送り込まれた排気ガスが、その流速を高められつつタービンロータ11に吹き付けられる。
【0027】
また、タービンハウジング12内には、ガス通路15の通路断面積を調節する複数のノズルベーン20と、これらノズルベーン20を回動可能に支持するノズルリング16とが配設されている。ノズルリング16はタービンハウジング12の内側に取着されており、これら両部材12、16間に形成される空間がガス通路15となっている。このガス通路15の所定位置に、複数のノズルベーン20がタービンロータ11の回転軸11a周りに所定間隔をおいて配設されている。
【0028】
ノズルリング16において、各ノズルベーン20と対応する位置には支持孔17が形成されている。支持孔17は、タービンロータ11の回転軸11aの軸線に沿って形成されている。同支持孔17には、ノズルベーン20に固定された回動軸18が摺動可能に支持されている。
【0029】
回動軸18において、ノズルベーン20と反対側の端部には、同ノズルベーン20を回動するための図示しないリンク機構が駆動連結されている。このリンク機構を通じて各ノズルベーン20が互いに同期した状態で回動することで、隣り合ったノズルベーン20同士の間隔が変更され、ガス通路15の開度量が適宜変更される。こうした各ノズルベーン20の開閉駆動を通じて、スクロール通路13を通過してタービンロータ11に吹き付けられる排気ガスの流量及び流速が変更され、過給圧が調整される。
【0030】
次に、ノズルベーン20の形状について、図2〜図4に基づいて説明する。
図2及び図3に示されるように、ノズルベーン20は、タービンハウジング12の壁面12aに対向配置される対向面22と、ノズルリング16の壁面16aに対向配置される対向面26とにそれぞれ掻き取り手段としての突条21を複数本備えている。これら突条21は、排気ガスがガス通路15を流通するのに伴いノズルベーン20とタービンハウジング12及びノズルリング16との間に堆積した異物E(図5(a)参照)を掻き取るためのものである。
【0031】
各突条21はいずれも断面三角形状をなし、ノズルベーン20の両対向面22、26に突出形成されている。この場合、各突条21の形成方法としては、例えば、ノズルベーン20の両対向面22、26に切削加工によって溝を形成することにより、隣り合う溝と溝との間に突条21を形成する方法が挙げられる。各突条21は、それらが互いに平行な位置関係を保ちつつ、ノズルベーン20の両対向面22、26の全面に亘って形成されている。各突条21は、図4に示されるように、ノズルベーン20が開閉駆動する際の回動方向(図4に示す矢印Pの方向)に沿って延びるように形成されている。このため、各突条21は、ノズルベーン20の回転半径と同じ円弧状に延びるように形成されている。
【0032】
図2〜図4に示されるように、ノズルベーン20は、両対向面22,26に凹部、具体的には貫通孔23が形成されている。この貫通孔23は、上記突条21により掻き取られた異物Eをノズルベーン20の内部に掻き入れる機能を有している。
【0033】
各ノズルベーン20は、両対向面22、26に突出形成された突条21の尖端と、両対向面22、26に開口した貫通孔23とを、タービンハウジング12及びノズルリング16の壁面12a、16aに向けて配設されている。因みに、各ノズルベーン20は、タービンハウジング12の壁面12aとのクリアランス及びノズルリング16の壁面16aとのクリアランスが、前記両部材12、16を形成する素材の熱膨張係数等を考慮して所定の値に設定されている。
【0034】
次に、上記のように構成されたノズルベーン20の作用について図5に基づいて説明する。
図5(a)は、ノズルベーン20とタービンハウジング12及びノズルリング16との間に異物Eが堆積した状態を示している。過給圧可変式ターボチャージャ10の使用時又は使用直後にあっては、高温の排気ガスがガス通路15を流通又は滞留している。この場合、タービンハウジング12及びノズルリング16が加熱されて熱膨張しているため、ノズルベーン20の両対向面22、26と、タービンハウジング12及びノズルリング16の壁面12a、16aとのクリアランスが非常に狭くなっている。この状態から回動軸18を回動させることによって、ノズルベーン20は図5(b)、図5(c)に示す状態へとその回転位置が変更され、ガス通路15の通路断面積が調節される。
【0035】
その際、ノズルベーン20は、両対向面22、26をタービンハウジング12及びノズルリング16の壁面12a,16aに摺動させながら回動する。このとき、ノズルベーン20とタービンハウジング12及びノズルリング16との間に堆積した異物Eは、ノズルベーン20の突条21の尖端によって掻き取られる。そして、突条21の尖端により掻き取られた異物Eは、ノズルベーン20の貫通孔23の中に導入される。このように、ノズルベーン20を開閉駆動させることによって、ノズルベーン20とタービンハウジング12及びノズルリング16との間に堆積した異物Eが突条21により掻き取られる。これにより、異物Eによるノズルベーン20の作動不良等が抑制されて、各ノズルベーン20による排気の調量動作が長期間に亘って好適に行われるようになる。
【0036】
上記実施形態によれば以下のような効果を得ることができる。
(1)ノズルベーン20は、タービンハウジング12の壁面12aに対向配置される対向面22と、ノズルリング16の壁面16aに対向配置される対向面26とにそれぞれ突条21を備えている。この場合、ノズルベーン20を開閉駆動させることによって、ノズルベーン20とタービンハウジング12及びノズルリング16との間に堆積した異物Eを、突条21の尖端により掻き取ることができる。このため、各ノズルベーン20とタービンハウジング12及びノズルリング16との間に異物Eが堆積するのを抑制することができる。よって、その粘性の高い異物Eにより各ノズルベーン20の回動が規制されてしまい、排気の調量動作に支障をきたすのを極力回避することができる。従って、過給圧可変式ターボチャージャ10にあっては、その過給圧変更機能を長期間にわたって良好に維持することができるようになる。
【0037】
また、各突条21はその尖端が所定方向に沿って延びるように形成されているため、ノズルベーン20を開閉駆動させることで、ノズルベーン20とタービンハウジング12及びノズルリング16との間に堆積したより多くの異物Eを好適に掻き取ることができる。つまり、掻き取り手段として突条21を採用することで、その掻き取り機能を向上させることができる。
【0038】
(2)各突条21は、ノズルベーン20の両対向面22,26に設けられている。このため、各突条21をタービンハウジング12及びノズルリング16に設けた構成と比較して、異物Eの付着し易い部位に対応して突条21を容易に形成することができる。また、突条21の形状を適宜変更するに際しても、その設計上の自由度を高める上で好適なものとすることができる。
【0039】
(3)各突条21は断面三角形状をなしている。このため、ノズルベーン20を開閉駆動させることによって、ノズルベーン20とタービンハウジング12及びノズルリング16との間に堆積した異物Eをより効果的に掻き取ることができる。よって、各突条21においては、その掻き取り機能をより一層向上させることができる。加えて、ノズルベーン20とタービンハウジング12及びノズルリング16との接触面積が小さく抑えられるため、粘性の高い異物Eにより各ノズルベーン20の回動が規制されるのをより一層回避することもできる。更には、ノズルベーン20とタービンハウジング12及びノズルリング16との間ではそれらの接触抵抗が小さく抑えられるため、ノズルベーン20を開閉駆動する際に摺動抵抗が増大するのを抑制することもできる。
【0040】
(4)ノズルベーン20は、両対向面22,26にそれぞれ突条21を複数本備え、それらが互いに平行な位置関係を保つように形成されている。この場合、ノズルベーン20を開閉駆動させることによって、ノズルベーン20とタービンハウジング12及びノズルリング16との間に堆積した異物Eをより一層好適に掻き取ることができる。よって、ノズルベーン20においては、その掻き取り機能をより向上させることができる。
【0041】
(5)突条21は、ノズルベーン20の両対向面22、26の全面に亘って形成されている。この場合、ノズルベーン20を開閉駆動させることによって、ノズルベーン20とタービンハウジング12及びノズルリング16との間に堆積した異物Eを更に好適に掻き取ることができる。よって、ノズルベーン20においては、その掻き取り機能をより一層向上させることができる。
【0042】
(6)各突条21は、ノズルベーン20が開閉駆動する際の回動方向に沿って延びるように形成されている。この場合、突条21の延びる方向と、ノズルベーン20が開閉駆動する際の回動方向とが一致しているため、各ノズルベーン20が開閉駆動する際における摺動抵抗の増大を極力抑制することができる。よって、各ノズルベーン20について、それらの作動性能を長期間に亘って好適に維持することができる。従って、過給圧可変式ターボチャージャ10にあっては、各ノズルベーン20による排気の調量動作を長期間にわたって良好に維持することができる。
【0043】
(7)ノズルベーン20は、両対向面22,26に開口した貫通孔23を備えている。この場合、ノズルベーン20を開閉駆動させることによって、突条21により掻き取られた異物Eを、ノズルベーン20の両対向面22,26に開口した貫通孔23の中に導入することができる。このようにして、異物Eを貫通孔23の中に掻き入れることで、ノズルベーン20とタービンハウジング12及びノズルリング16との間から異物Eを速やかに取り除くことができる。このため、ノズルベーン20やタービンハウジング12及びノズルリング16等に異物Eが再付着するのを抑制することができる。よって、ノズルベーン20においては、その掻き取り機能を更に向上させることができる。
【0044】
また、貫通孔23は、ノズルベーン20の両対向面22、26に開口された凹部として形成されている。このため、タービンハウジング12及びノズルリング16の両壁面12a,16aに凹部を形成する構成と比較して、異物Eの付着し易い部位に対応して貫通孔23を容易に形成することができる。また、凹部の形状を適宜変更するに際しても、その設計上の自由度を高める上で好適なものとすることができる。
【0045】
なお、上記実施の形態は、以下のように変更して実施することもできる。
・ノズルベーン20の両対向面22,26に設けられた突条21を省略し、ガス通路15を構成するタービンハウジング12の壁面12a及びノズルリング16の壁面16aに突条21を設けるようにしてもよい。この場合であっても、ノズルベーン20とタービンハウジング12及びノズルリング16との間に堆積した異物Eを突条21により掻き取ることができる。
【0046】
・ノズルベーン20の両対向面22,26の全面に亘って形成された突条21を、両対向面22,26についてそれらの一部分にのみ形成してもよい。また、この突条21を、ノズルベーン20の両対向面22,26のうちいずれか一方にのみ形成するようにしてもよい。
【0047】
・ノズルベーン20は両対向面22,26に突条21を複数本備えていたが、突条21の数を1本のみに変更してもよい。
・各突条21はノズルベーン20が開閉駆動する際の回動方向に沿って延びるように形成されていたが、例えば、ノズルベーン20の回動方向と直交する方向に延びるように形成してもよい。同構成を採用すれば、ノズルベーン20を開閉駆動させることによって、ノズルベーン20とタービンハウジング12及びノズルリング16との間に堆積したより多くの異物Eを掻き取ることができる。
【0048】
・各突条21はそれらが互いに平行な位置関係を保つように形成されていたが、異物Eの付着しやすい部分において突条の形成密度を高める等、各突条21の位置関係を必要に応じて任意の態様に変更してもよい。例えば、ノズルベーン20の回動中心付近には回動方向に対し傾斜する向きに延びる突条21を形成し、回動軸18から離れた位置には回動方向と平行な向きに延びる突条21を形成することにより、ノズルベーン20についてその掻き取り機能を高く維持しつつ、摺動抵抗の増大を極力抑制することができる。
【0049】
・ノズルベーン20の回動方向に沿って延びる突条21と、前記回動方向と交差する向きに延びる突条21とを網目状に形成してもよい。
・掻き取り手段として所定の方向に延びる突条21を形成するようにしたが、例えば三角錘や四角推や半球等、任意の形状をなす突部に変更してもよい。また、ノズルベーン20の両対向面22,26についてそれら加工面の面粗さを意図的に粗くすることで凹凸を形成するようにしてもよい。
【0050】
・突条21は断面三角形状をなしていたが、その断面形状を四角形や半円等の任意の形状に変更してもよい。
・ノズルベーン20は、両対向面22,26に開口した貫通孔23を1個備えていたが、例えば小径の貫通孔23を多数形成する等、同貫通孔23の個数を2個以上に変更してもよい。また、同貫通孔23を、ノズルベーン20の両対向面22,26に開口した有底穴又は深さの浅い凹部(窪み)等に変更してもよい。また、この場合、貫通孔23の断面形状としては円形以外であってもよく、例えば、三角形等の多角形や楕円形等の任意の形状を採用してもよい。
【0051】
・ノズルベーン20の両対向面22,26に開口した貫通孔23を省略し、タービンハウジング12及びノズルリング16の両壁面12a,16aに開口する凹部を各別に設けるようにしてもよい。
【0052】
・各突条21はノズルベーン20の両対向面22,26に切削加工により形成されていたが、各突条21をノズルベーン20とは別体に形成したり、プレス加工等、その他の加工法により各突条21を形成したりするようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】本実施形態における過給圧可変式ターボチャージャについてその断面構造を示す部分断面図。
【図2】同じく過給圧可変式ターボチャージャのノズルベーン近傍を示す拡大断面図。
【図3】同じく過給圧可変式ターボチャージャを構成するノズルベーンの斜視図。
【図4】ノズルベーンの回動方向と突条との関係を示す平面図。
【図5】(a)〜(c)はノズルベーン動作態様を説明するための平面図。
【符号の説明】
【0054】
10…過給圧可変式ターボチャージャ、11…タービンロータ、12…タービンハウジング、12a…壁面、15…ガス通路、16…ノズルリング,16a…壁面、20…ノズルベーン、21…突条、22,26…対向面、23…貫通孔。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
タービンロータの周囲に形成されたガス通路に複数のノズルベーンを備え、前記各ノズルベーンを回動させることによって、前記ガス通路を通過し前記タービンロータに吹き付けられる排気の流量を可変とする過給圧可変式ターボチャージャにおいて、
前記各ノズルベーンとこれらに対向する前記ガス通路の壁面との間に堆積する異物を掻き取るための掻き取り手段を備える
ことを特徴とする過給圧可変式ターボチャージャ。
【請求項2】
請求項1記載の過給圧可変式ターボチャージャにおいて、
前記掻き取り手段は、前記ガス通路の壁面又はこれに対向する前記ノズルベーンの対向面に形成された突部である
ことを特徴とする過給圧可変式ターボチャージャ。
【請求項3】
請求項2記載の過給圧可変式ターボチャージャにおいて、
前記突部は、ガス通路の壁面又はこれに対向するノズルベーンの対向面において所定方向に沿って延びる突条である
ことを特徴とする過給圧可変式ターボチャージャ。
【請求項4】
請求項3記載の過給圧可変式ターボチャージャにおいて、
前記突条は、前記ノズルベーンが開閉駆動する際の回動方向に沿って延びる
ことを特徴とする過給圧可変式ターボチャージャ。
【請求項5】
請求項3又は4記載の過給圧可変式ターボチャージャにおいて、
前記突条は、前記ノズルベーンが開閉駆動する際の回動方向に対して傾斜した方向に延びる
ことを特徴とする過給圧可変式ターボチャージャ。
【請求項6】
請求項5記載の過給圧可変式ターボチャージャにおいて、
前記突条は、前記ノズルベーンが開閉駆動する際の回動方向と直交する方向に延びる
ことを特徴とする過給圧可変式ターボチャージャ。
【請求項7】
請求項3〜6のうちいずれか一項に記載の過給圧可変式ターボチャージャにおいて、
前記各突条が並行な位置関係を有して複数形成されてなる
ことを特徴とする過給圧可変式ターボチャージャ。
【請求項8】
請求項2〜7のうちいずれか一項に記載の過給圧可変式ターボチャージャにおいて、
前記突部は断面三角形状をなす
ことを特徴とする過給圧可変式ターボチャージャ。
【請求項9】
請求項2〜8のうちいずれか一項に記載の過給圧可変式ターボチャージャにおいて、
前記ガス通路の壁面又はこれに対向する前記ノズルベーンの対向面に凹部を形成してなる
ことを特徴とする過給圧可変式ターボチャージャ。
【請求項10】
請求項2〜9のうちいずれか一項に記載の過給圧可変式ターボチャージャにおいて、
前記突部は、前記ガス通路の壁面に対向する前記ノズルベーンの対向面に形成される
ことを特徴とする過給圧可変式ターボチャージャ。
【請求項11】
請求項9又は10記載の過給圧可変式ターボチャージャにおいて、
前記凹部は、前記ガス通路の壁面に対向する前記ノズルベーンの対向面に形成される
ことを特徴とする過給圧可変式ターボチャージャ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−132444(P2006−132444A)
【公開日】平成18年5月25日(2006.5.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−322347(P2004−322347)
【出願日】平成16年11月5日(2004.11.5)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【出願人】(000003218)株式会社豊田自動織機 (4,162)
【Fターム(参考)】