説明

過酸化脂質生成抑制剤

【発明の課題】人体に安全な、過酸化脂質生成抑制を提供する。
【解決手段】羅布麻抽出物およびビタミンC類を併用して用いることによって、過酸化脂質生成を有意に抑制する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、過酸化脂質生成抑制剤および過酸化脂質生成抑制方法に関する。さらに詳しくは羅布麻抽出物とビタミンC類を含有することを特徴とする過酸化脂質生成抑制剤および羅布麻抽出物およびビタミンC類を併用して用いることを特徴とする過酸化脂質生成抑制方法に関する。
【背景技術】
【0002】
生体内における脂質の過剰な酸化の進んだ状態は、肝機能障害、痴呆症、動脈硬化症、糖尿病、高血圧や高脂血症などの引き金になっていると考えられている。
【0003】
また、皮膚や毛髪においても、過酸化脂質の皮膚組織内や分泌する量の増加が長期にわたれば、正常な皮膚や毛髪の成長を妨げ、フケ、痒み、肌荒れ、脱毛、白髪などの現象を促進し、更に、皮膚ではメラニンの沈着によるシミの発生等の原因ともなっていると考えられている。
【0004】
よって、飲食物や化粧品、あるいは医薬品等の分野に過酸化脂質生成抑制剤を応用する試みは古くから行われてきている。例えば、フラボノイドとしてモリン、クリシン、オゴニン、ロイホリン、ヘスペレチン、ネオヘスペリジン、ビオカニンA、フェラムリン、ケムフェロールの内、その1種又は1種以上を含有するか、又は、上記フラボノイドの1種、または1種以上を含有する、植物エキスを含むことを特徴とする過酸化脂質生成抑制剤(例えば、特許文献1参照)が知られている。
【0005】
また、羅布麻については、その成分にヒペロシドとイソクエルシトリンが含まれていること(例えば、非特許文献1)、また、その羅布麻の成分であるヒペロシドが強力な脂質過酸化阻害効果を示す(例えば、非特許文献2)ことが、焙煎した羅布麻葉エキスが銅イオンによるLDLの酸化を抑制する(例えば、非特許文献3)などが知られている。
【0006】
【特許文献1】特開平03−5423号公報
【非特許文献1】生薬学雑誌,47(1),27-33(1993)
【非特許文献2】Natural Medicines,48(4),322-323(1994)
【非特許文献3】和漢医薬学雑誌,13,306-307(1996)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、安全な過酸化脂質生成抑制剤を提供することを目的とする。さらに、動脈硬化症等の発症要因である生体内の過酸化脂質の生成抑制法を提供すること目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記課題を解決するために、鋭意検討を重ねた結果、羅布麻抽出物とビタミンC類を併用して用いることによって過酸化脂質の生成が相乗的に抑制されることを見いだした。本発明は、かかる知見に基づいて完成したものである。
【0009】
すなわち、本発明は、下記に掲げるものである:
項1.羅布麻抽出物およびビタミンC類を含有することを特徴とする過酸化脂質生成抑制剤。
項2.羅布麻抽出物およびビタミンC類を併用して用いることを特徴とする過酸化脂質生成抑制法。
項3.請求項1記載の過酸化脂質生成抑制剤を有効量含有する飲食物。
以下、本発明について詳細に説明をする。
【0010】
本発明の過酸化脂質生成抑制剤は、羅布麻抽出物およびビタミンC類を含有することを特徴とする。
【0011】
ここで、羅布麻(学名:Apocynum venetum L)とは、キョウチクトウ科に属する多年生宿草木である。バシクルモン、紅麻、沢漆麻とも呼ばれ、葉を茶としたものは、燕龍茶とか老喜茶と呼ばれ飲用されている。羅布麻は植物体全体であっても、また葉、花、茎、種子及び根等の植物体の一部であってもよいが、葉または葉を含む部分であることが好ましい。
【0012】
抽出に用いる羅布麻(好ましくは葉)は、採取したての新鮮なもの、あるいは発酵または半発酵させたもの、それらを乾燥させたもの、または更に焙煎したもののいずれでもよいが、好ましくは羅布麻の葉を乾燥させたものである。
【0013】
これらの羅布麻の抽出に使用される溶媒は、特に制限されず、水、極性有機溶媒または非極性有機溶媒のいずれであってもよいが、好ましくは水、極性有機溶媒またはこれらの混合物(含水極性有機溶媒)である。ここで極性有機溶媒としては、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール等の炭素数1〜6、好ましくは炭素数1〜3の低級アルコール;グリセリン、プロピレングリコール、ポリエチレングリコールなどの多価アルコール;またはアセトン、酢酸エチル、酢酸メチルなどを例示することができる。抽出溶媒として、好ましくは水、低級アルコール及びこれらの混合物(含水アルコール)であり、より好ましくは水、エタノール及びこれらの混合物(含水エタノール)である。なお、含水アルコール、特に含水エタノールを使用する場合の、当該溶液中のアルコール(エタノール)の含有割合としては、制限されないが、好ましくは10〜90容量%、好ましくは10〜60容量%、より好ましくは20〜40容量%の範囲を例示することができる。
【0014】
抽出方法としては、一般に用いられる方法を広く採用することができる。制限はされないが、例えば上記の羅布麻を抽出溶媒の中に浸漬する方法(浸漬法)又は抽出溶媒に羅布麻を入れて加温しながら還流する方法(加熱還流法)等を挙げることができる。なお、浸漬法による場合は加熱(加温、高温)、室温又は冷却(低温)条件下のいずれであってもよく、また静置した状態の浸漬または攪拌しながらの浸漬のいずれであってもよい。
【0015】
かかる抽出操作により得られた抽出物は、各種の固液分離手段に供され、溶媒に不溶な残渣(不溶性固形分)が除去される。ここで固液分離手段としてはデカンテーション、濾過、遠心分離または圧搾などの各種の固液分離手段を用いることができる。かくして得られる抽出液(濾液、上清、圧搾液)はそのままの状態で、またはさらに水、エタノール等の極性有機溶媒またはこれらの混合液で希釈して使用することができる。また、抽出溶媒を留去して一部濃縮または乾燥(減圧乾燥、凍結乾燥、スプレードライなどを含む)して、ペースト状(またはエキス粘稠物)または粉末状態(またはエキス乾燥物)の状態で用いることもできる。また抽出液を濃縮若しくは乾燥した後、該濃縮物若しくは乾燥物をさらに非溶解性溶媒で洗浄して精製して用いても、またこれを更に適当な溶媒(好ましくは、水やエタノール等の極性有機溶媒またはこれらの混合液)に溶解もしくは懸濁して用いてもよい。
【0016】
また、抽出液は、必要に応じて濃縮若しくは乾燥した後に、脱臭または脱色等を目的として精製処理を行ってもよい。かかる精製方法は、特に制限されず、慣用されている精製法を任意に組み合わせて実施することができ、具体的には各種の樹脂処理法(吸着法、イオン交換法、ゲルろ過法など)、超臨界抽出法、膜処理法(限外濾過膜処理法、逆浸透膜処理法、イオン交換膜処理法など)、溶媒分画法および活性炭処理法等を例示することができる。
【0017】
羅布麻抽出物については、前述した羅布麻の抽出物、好ましくは羅布麻の葉の抽出物(抽出液そのもの、その濃縮物、乾固物または精製物の別を問わない)を含有するものであればよく、これらの抽出物だけからなるものであってよいが、当該抽出物以外の成分として、希釈剤、担体またはその他の添加剤を含有していてもよい。
【0018】
ビタミンC類は、L−アスコルビン酸またはその塩、またはL−アスコルビン酸の誘導体で、例えばL−アスコルビン酸ナトリム、L−アスコルビン酸モノステアレート,L−アスコルビン酸モノパルミテート,L−アスコルビン酸モノオレエート等のアスコルビン酸モノアルキル若しくはモノアルケニルエステル類、L−アスコルビン酸モノリン酸エステル,L−アスコルビン酸−2−硫酸エステル等のアスコルビン酸モノエステル誘導体、L−アスコルビン酸ジステアレート,L−アスコルビン酸ジパルミテート,L−アスコルビン酸ジオレエート等のL−アスコルビン酸 ジアルキル若しくはジアルケニルエステル誘導体、L−アスコルビン酸トリステアレート,L−アスコルビン酸トリパルミテート,L−アスコルビン酸トリオレエート等のL−アスコルビン酸トリアルキル若しくはトリアルケニルエステル誘導体、L−アスコルビン酸トリリン酸エステル等のL−アスコルビン酸トリエステル誘導体等を挙げることが出来る。これらのL−アスコルビン酸またはその塩、またはL−アスコルビン酸の誘導体のうち、特に好ましいものは、L−アスコルビン酸、L−アスコルビン酸リン酸エステル及びこれらの塩である。
【0019】
本発明の過酸化脂質生成抑制に要する羅布麻抽出物、ビタミンC類の使用量は、脂質に対して羅布麻抽出物の添加量は、0.001〜100重量部、好ましくは 0.01〜20重量部、ビタミンC類の添加量は 0.0001〜10 重量部、好ましくは 0.001〜1重量部である。
【0020】
本発明の過酸化脂質生成抑制剤は、上述の羅布麻抽出物とビタミンC類を含有するものであればよく、羅布麻抽出物とビタミンC類だけからなるものでも良いが、これら以外の成分として希釈剤、担体またはその他の添加物を含有していてもよい。
【0021】
希釈剤または担体としては、本発明の効果を妨げないものであれば特に制限されず、例えばシュクロース、グルコース、デキストリン、澱粉類、サイクロデキストリン、トレハロース、乳糖、マルトース、水飴、液糖などの糖類;エタノール、プロピレングリコール、グリセリン等のアルコール類;ソルビトール、マンニトール、キシリトール、エリスリトール、マルチトール等の糖アルコール;アラビアガム、キサンタンガム、カラギーナン、グァーガム、ジェランガム等の多糖類;または水を挙げることができる。また添加剤としては、抗酸化剤、キレート剤等の助剤、香料、香辛料抽出物、防腐剤などを挙げることができる。
【0022】
使用上の利便等から、これらの希釈剤、担体または添加剤を用いて過酸化脂質生成抑制剤を調製する場合は、羅布麻の抽出物(乾固物として換算)が、過酸化脂質生成抑制剤100重量%中に固形換算で0.01〜50重量%、好ましくは0.1〜30重量%、ビタミンC類が0.001〜10重量%、好ましくは0.01〜5重量%の割合で含まれるように調製することが望ましい。
【0023】
なお、ここで添加剤として用いられる抗酸化剤としては、食品添加物として用いられるものを広く例示することができる。例えば、制限はされないが、エリソルビン酸及びその塩(例えばエリソルビン酸ナトリウム)等のエリソルビン酸類;亜硫酸ナトリウム、次亜硫酸ナトリウム、ピロ亜硫酸ナトリウムまたはピロ亜硫酸カリウムなどの亜硫酸塩類;α−トコフェロールやミックストコフェロール等のトコフェロール類;ジブチルヒドロキシトルエン(BHT)やブチルヒドロキシアニソール(BHA)等;エチレンジアミン四酢酸カルシウム二ナトリウムやエチレンジアミン四酢酸二ナトリウム等のエチレンジアミン四酢酸類;没食子酸や没食子酸プロピル等の没食子酸類;アオイ花抽出物、アスペルギルステレウス抽出物、カンゾウ油性抽出物、食用カンナ抽出物、グローブ抽出物、精油除去ウイキョウ抽出物、セイヨウワサビ抽出物、セージ抽出物、セリ抽出物、チャ抽出物、テンペ抽出物、ドクダミ抽出物、生コーヒー豆抽出物、ヒマワリ種子抽出物、ピメンタ抽出物、ブドウ種子抽出物、ブルーベリー葉抽出物、プロポリス抽出物、ヘゴ・イチョウ抽出物、ペパー抽出物、ホウセンカ抽出物、ヤマモモ抽出物、ユーカリ葉抽出物、リンドウ根抽出物、ルチン(抽出物)(小豆全草,エンジュ,ソバ全草抽出物)、ローズマリー抽出物、チョウジ抽出物、リンゴ抽出物等の各種植物の抽出物;その他、酵素処理ルチン、クエルセチン、ルチン酵素分解物(イソクエルシトリン)、酵素処理イソクエルシトリン、酵素分解リンゴ抽出物、ごま油抽出物、菜種油抽出物、コメヌカ油抽出物、コメヌカ酵素分解物、没食子酸及びそのエステル類等を挙げることができる。好ましくは、ヤマモモ抽出物、ルチン(抽出物)、生コーヒー豆抽出物、ローズマリー抽出物等の植物抽出物;酵素処理ルチン、ルチン酵素分解物(イソクエルシトリン)、酵素処理イソクエルシトリン等を挙げることができる。
【0024】
本発明において特に好ましい抗酸化剤として、フラボノール類を挙げることができる。このフラボノール類としては、フラボノール並びにアグリコン部にフラボノールを有するフラボノール配糖体を広く挙げることができる。例えば、エンジュ、ダッタンソバ、ドクダミ及びヤマモモなどの植物体から抽出することにより入手できるもの、さらにそれを精製した精製物、並びにそれらに酵素処理若しくは加水分解等の各種処理を施したものを挙げることができる。具体的には、ルチン、イソクエルシトリン、ゴシピツリン及びミリシトリン等、並びにルチン、イソクエルシトリンと澱粉質の共存下において糖転移酵素を用いて公知の方法で処理することにより得られる糖転移ルチン等を例示することができる。これらのフラボノール類は1種単独で使用されてもよく、また2種以上を任意に組み合わせて使用することもできる。
【0025】
またフラボノール類そのものに代えて、上記に掲げる各種フラボノール類を含む植物抽出物をそのまま用いることもできる。かかるものとしてはエンジュ抽出物、ダッタンソバ抽出物、ドクダミ抽出物及びヤマモモ抽出物等を例示することができる。なお、かかる植物抽出物は、フラボノール類を比較的多量に含む植物の該当部位を水、アルコールまたはその他の有機溶剤を用いて抽出することによって得ることができ、そのままで使用しても、またさらに酵素処理して使用することもできる。例えばヤマモモ抽出物は、ヤマモモ科植物を本出願人による特許出願の方法(特開平5−156249号、特開平9−87619号)を用いて抽出することによって調製取得でき、このような操作により得られるヤマモモ抽出物はフラボノール配糖体であるミリシトリン(ミリセチン−3−O−ラムノシド)の給源となる。またこのヤマモモ抽出物は、そのままで使用することもできるが、さらに特開平9−95672号公報記載の方法に従って糖転移酵素処理を施すこともでき、これは水易溶性ヤマモモ抽出物として使用することができる。なお、これらの植物抽出物も1種単独で使用されても、また2種以上を任意に組み合わせて使用することもできる。
【0026】
また、前述するフラボノール類の中には水難溶性で取り扱いにくい物質があるため、必要に応じて、フラボノール類をエタノールなどの低級アルコールやグリセリンまたはプロピレングリコールなどの多価アルコールに溶かして用いてもよい。
【0027】
抗酸化剤を用いる場合、過酸化脂質生成抑制剤100重量%中に配合される当該抗酸化剤の割合としては、制限されないが、例えば、酵素処理イソクエルシトリンを用いる場合、0.01〜50重量%、好ましくは0.1〜30重量%を挙げることができる。他の抗酸化剤もこれに準じて用いることができる。
【0028】
本発明の過酸化脂質生成抑制剤はその形態を特に制限するものではなく、例えば粉末状、顆粒状、錠剤状などの固体状;液状、乳液状等の溶液状;またはペースト状等の半固体状などの、任意の形態に調製することができる。
【0029】
本発明の過酸化脂質生成抑制剤は様々な製品に広く適応することができ、例えば飲食物、化粧品、医薬品、医薬部外品、飼料等をあげることができる。
【0030】
本発明が対象とする飲食物としては、例えば乳飲料、乳酸菌飲料、果汁入り清涼飲料、清涼飲料、炭酸飲料、果汁飲料、野菜飲料、野菜・果実飲料、アルコール飲料、粉末飲料、コーヒー飲料、紅茶飲料、緑茶飲料、麦茶飲料などの飲料類;カスタードプリン、ミルクプリン、スフレプリン、果汁入りプリン等のプリン類、ゼリー、ババロア及びヨーグルト等のデザート類;アイスクリーム、アイスミルク、ラクトアイス、ミルクアイスクリーム、果汁入りアイスクリーム及びソフトクリーム、アイスキャンディー、シャーベット、氷菓等の冷菓類;チューインガムや風船ガム等のガム類(板ガム、糖衣状粒ガム);マーブルチョコレート等のコーティングチョコレートの他、イチゴチョコレート、ブルーベリーチョコレート及びメロンチョコレート等の風味を付加したチョコレート等のチョコレート類;ハードキャンディー(ボンボン、バターボール、マーブル等を含む)、ソフトキャンディー(キャラメル、ヌガー、グミキャンディー、マシュマロ等を含む)、ドロップ、タフィ等のキャラメル類;ハードビスケット、クッキー、おかき、煎餅等の焼き菓子類(以上、菓子類);コンソメスープ、ポタージュスープ等のスープ類;浅漬け、醤油漬け、塩漬け、味噌漬け、粕漬け、麹漬け、糠漬け、酢漬け、芥子漬、もろみ漬け、梅漬け、福神漬、しば漬、生姜漬、梅酢漬け等の漬物類;セパレートドレッシング、ノンオイルドレッシング、ケチャップ、たれ、ソースなどのソース類;ストロベリージャム、ブルーベリージャム、マーマレード、リンゴジャム、杏ジャム、プレザーブ等のジャム類;赤ワイン等の果実酒;シロップ漬のチェリー、アンズ、リンゴ、イチゴ、桃等の加工用果実;ハム、ソーセージ、焼き豚等の畜肉加工品;魚肉ハム、魚肉ソーセージ、魚肉すり身、蒲鉾、竹輪、はんぺん、薩摩揚げ、伊達巻き、鯨ベーコン等の水産練り製品;バター、マーガリン、チーズ、ホイップクリーム等の酪農・油脂製品類;うどん、冷麦、そうめん、ソバ、中華そば、スパゲッティ、マカロニ、ビーフン、はるさめ及びワンタン等の麺類;その他、各種総菜及び麩、田麩等の種々の加工食品を挙げることができる。好ましくは飲料及び菓子類である。
【0031】
本発明の飲食物は、製造の任意の工程で羅布麻抽出物およびビタミンC類、または本発明の過酸化脂質生成抑制剤を配合することを除けば、各種飲食物の慣用の製造方法に従って製造することができる。羅布麻抽出物およびビタミンC類、または過酸化脂質生成抑制剤の配合方法やその順番に特にも制限はない。
【0032】
本発明が対象とする化粧品としてはスキン化粧料(ローション、乳液、クリームなど)、口紅、日焼け止め化粧品、メークアップ化粧品等を;医薬品としては各種錠剤、カプセル剤、ドリンク剤、トローチ剤、うがい薬等を;医薬部外品としては歯磨き剤、口中清涼剤、口臭予防剤等を;また飼料としてはキャットフードやドッグフード等の各種ペットフード、観賞魚若しくは養殖魚の餌等を一例として挙げることができるが、これらに制限されるものではない。
【0033】
これらの化粧品、医薬品、医薬部外品または飼料などの各種製品は、それら製造の任意の工程で羅布麻抽出物およびビタミンC類、または本発明の過酸化脂質生成抑制剤を配合することを除けば、各種製品の慣用方法に従って製造することができる。化粧品、医薬品、医薬部外品または飼料に対する羅布麻抽出物およびビタミンC類、または過酸化脂質生成抑制剤の配合時期も特に制限されない。
【発明の効果】
【0034】
本発明によれば、過酸化脂質生成を有意に抑制することのできる過酸化脂質生成抑制抑制方法並びに過酸化脂質生成抑制剤を提供することができる。このため、本発明の過酸化脂質生成抑制方法並びに過酸化脂質生成抑制剤を適用することにより、飲食物、化粧品、医薬品等の過酸化脂質生成抑制を著しく抑制することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0035】
以下、実施例を挙げて本発明を説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。また、特に記載のない限り「部」とは、「重量部」を意味するものとする。文中「*」印のものは、三栄源エフ・エフ・アイ株式会社の製品を表し、文中の「※」印は、三栄源エフ・エフ・アイ株式会社の登録商標であることを意味する。
【0036】
実験例1
羅布麻の葉の乾燥物(乾燥重量100g)を粉砕し、8倍量の35%エタノールで加温抽出(75℃4時間)し、濾過後、合成吸着樹脂(セパビーズ SP−207:三菱化学株式会社)で通液処理を行った。これに、エタノールを20%になるように加えたもの(固形分4.5%)を調製し、これを羅布麻抽出物とした。
【0037】
実験例2
ウサギ保存血液(日本バイオテスト社製)100mLに等張液(10mMリン酸緩衝液, 152mM NaCl, pH7.4)を100mL加え、よく攪拌後1,500g×20分間遠心分離を行い、上清を除去する。この操作を3回繰り返し、得られた赤血球に低張液(10mMリン酸緩衝液, pH7.4)100mLを加え、よく攪拌した後、20,000g×40分間遠心分離を行い、沈殿画分としてウサギ赤血球膜ゴースト(以下、赤血球膜と略する)を得た。赤血球膜はLowry法(Lowry,O.H., Rosebrough,N.J., Farr,A.L., and Randall,R.J., Protein measurement with the folin phenol reagent. J.Biol.Chem., 193, 265-275 (1951))を用いて3mg protein/mLにリン酸緩衝液で調整した。
【0038】
共栓試験管に、下記の表1の各終濃度になるように調製した試料(実験例1の羅布麻抽出物、L−アスコルビン酸(和光製薬株式会社製)(以下、AsAとする))100μL、赤血球膜850μLを加えてよく攪拌した。次いで、24mM t-BuOOH水溶液50μLを添加して、37℃で120分間インキュベートして酸化を誘導した。反応後、直ちに氷冷し、脂質過酸化度(TBARS)をTBA法(Ohkawa,H., Ohishi,N., Yagi,k., Anal.Biochem., 95, p351-358 (1979) Assay for lipid peroxides in animal tissues by thiobarbituric acid reaction.)を用いて測定した。
【0039】
すなわち、上記酸化誘導後の反応液を0.5ml採取し、これに35%TCA(trichloro acetic acid)溶液を0.5ml、0.5%TBA溶液を1.0ml、0.2%BHT(butylated hydroxytoluene)溶液0.05ml、0.5%SDS(sodium dodecyl sulfate)溶液を0.05ml加えた後、100℃で30分加熱する。冷却後、酢酸0.5ml、クロロホルム1.0mlを加えて攪拌後、遠心分離(3,000rpm×10分)を行い、上層の吸光度を532nmで測定して、過酸化脂質量を求めた。結果は無添加(リン酸緩衝液)のものを脂質酸化度(TBARS)100%として表した。
【0040】
なお、TBA法は生体組織中の過酸化脂質を高感度に測定するのに適した方法であり、現在もこれを改変したものなど多くの報告がある。TBA法は酸性条件下で試料をTBAと加熱することで、試料から遊離するTBA反応性物質(TBARS)とTBAの反応で生じる赤色色素を定量することにより脂質過酸化度を測定するものである。すなわち、TBARSの数値が高いほど、過酸化脂質が多く生成したこととなる。
【0041】
TBA法によって測定されるTBARSとしては、脂質ヒドロペルオキシド、マロンジアルデヒド、アルデヒドとタンパク質などとの反応物であり、TBA法はこれらを総合的に測定するものである。
【0042】
【表1】

【0043】
羅布麻抽出物単独添加でも濃度依存的に赤血球膜の脂質過酸化を抑制した。一方、AsA単独添加では全く酸化を抑制せず、無添加のものとTBARSの生成量は変わらなかった。
【0044】
しかし、羅布麻抽出物と全く効果の無いAsAを同時に添加したところ、羅布麻抽出物の脂質過酸化抑制能が向上した。
【0045】
羅布麻抽出物0.002%添加 (固形分4.5%の羅布麻抽出物製剤を0.044%%添加に相当)ではTBRSが81.4%であったのが、AsA0.00005%同時添加で62.2%にまで相乗性を示し、赤血球膜の脂質過酸化が有意(p<0.05)に抑制された。
【0046】
これらのことから、羅布麻抽出物とAsAを同時に添加することで赤血球膜の脂質過酸化をより効果的に抑制し、羅布麻抽出物とAsAの組み合わせは脂質過酸化に効果的であることが示唆される。
【0047】
実施例1
羅布麻の葉の乾燥物(乾燥重量100g)を粉砕し、8倍量の35%エタノールで加温抽出(75℃4時間)し、濾過後、合成吸着樹脂(セパビーズSP−207:三菱化学株式会社)で通液処理を行った。これを濃縮し固形分8〜12%、グリセリン20%、エタノール20%に調製した。これを羅布麻抽出物Aとした。
【0048】
実施例2 レモン飲料
果糖ブドウ糖液糖 10 (%)
5倍濃縮レモン透明果汁 1
レモン香料 0.15
クエン酸 0.09
クエン酸三ナトリウム 0.01
羅布麻抽出物A 1
L−アスコルビン酸 0.1
水にて全量を100%とする。
【0049】
上記全成分を混合して調製した溶液を、93℃達温殺菌して500mlPETボトルに熱時充填を行う。これを室温まで冷却して羅布麻抽出物含有飲料(レモン)を調製した。
【0050】
実施例3 オレンジゼリー
<原料A>
砂糖 5 (%)
果糖ブドウ糖液糖 10
ゲル化剤 0.8
<原料B>
5倍濃縮柑橘混合混濁果汁 2
オレンジ香料 0.2
カロテン色素 0.3
羅布麻抽出物A 2
L−アスコルビン酸 0.1
水にて全量を100%とする。
【0051】
<原料A>の成分を全て水に分散し80℃に加熱して10分間撹拌溶解し、それをクエン酸にてpH4に調製した後、<原料B>を加えて半透明ポリエチレン容器に充填した。これを85℃で20分間加熱殺菌した後、冷却して羅布麻抽出物含有ゼリーを調製した。
【0052】
実施例4 酸乳飲料
発酵乳(無脂乳固形分9.5%) 10 (%)
グラニュー糖 7
酸性乳飲料用安定剤 0.2
ヨーグルト香料 0.13
50%クエン酸水溶液 適量
羅布麻抽出物A 1
L−アスコルビン酸 0.1
水にて全量を100%とする。
【0053】
発酵乳、グラニュー糖及び酸性乳飲料用安定剤を水に溶解し、次いで50%クエン酸溶液にてpH3.8に調整した。これを湯煎にて70℃に加温してホモゲナイズ(150kg/cm=14710000Pa)した後、90℃まで加温し、香料、羅布麻抽出物1、アスコルビン酸を加えて93℃まで加温し500mlPETボトルにホットパックし羅布麻抽出物含有酸乳飲料を調製した。
【0054】
実施例5 ミルクコーヒー
グラニュー糖 7 (%)
コーヒー(粗引き) 5
牛乳 25
乳化安定剤 0.13
コーヒー香料 0.15
羅布麻抽出物A 3
L−アスコルビン酸 0.2
水にて全量を100%とする。
【0055】
コーヒーを熱湯加えて40分煮出し、その後ろ過を行いコーヒー液を得た。水に乳化安定剤、グラニュー糖を加えて80℃に加温して10分間撹拌、冷却後、牛乳を加えて10%重曹溶液にてpH6.8に調製した。これをコーヒー液と合わせて、更に羅布麻抽出物1、アスコルビン酸を加えて再度pH6.8に調製し、70℃まで湯煎で加温しホモゲナイズ(150kg/cm=14710000Pa)した。香料を加えて200ml缶に充填後、124℃20分間殺菌を行い、羅布麻抽出物含有ミルクコーヒーを調製した。
【産業上の利用可能性】
【0056】
本発明の過酸化脂質生成抑制方法によると過酸化脂質生成を有意に抑制することのできる過酸化脂質生成抑制方法並びに過酸化脂質生成抑制剤を提供することができる。本発明の過酸化脂質生成抑制方法並びに過酸化脂質生成抑制剤を適用することにより、飲食物、化粧品、医薬品等の過酸化脂質生成を著しく抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】過酸化脂質生成抑制における羅布麻抽出物とアスコルビン酸との相乗性を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
羅布麻抽出物およびビタミンC類を含有することを特徴とする過酸化脂質生成抑制剤。
【請求項2】
羅布麻抽出物およびビタミンC類を併用して用いることを特徴とする過酸化脂質生成抑制法。
【請求項3】
請求項1記載の過酸化脂質生成抑制剤を有効量含有する飲食物。

【図1】
image rotate


【公開番号】特開2006−160668(P2006−160668A)
【公開日】平成18年6月22日(2006.6.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−354917(P2004−354917)
【出願日】平成16年12月8日(2004.12.8)
【出願人】(000175283)三栄源エフ・エフ・アイ株式会社 (429)
【Fターム(参考)】