説明

過電流保護回路および過電流保護方法

【課題】過電流保護の制御をマイクロコンピュータで実行することにより、自由度が高く、安定した保護動作を実現する。
【解決手段】スイッチ素子の温度を検出し、その検出した温度が所定の温度範囲にある場合に、検出した温度に対応して、過電流検出のための閾値電圧を決定する。次に、スイッチ素子の温度が所定の温度範囲よりも高い場合に、過温度検出カウンターをカウントアップし、過温度検出カウンターのカウント値が所定のカウント値よりも大きい場合に、スイッチ素子の駆動を停止する。一方、過温度検出カウンターのカウント値が所定のカウント値よりも小さい場合に、スイッチ素子の駆動電流と過電流検出の閾値とを比較し、スイッチ素子の駆動電流が過電流検出の閾値よりも大きい場合に、過電流検出カウンターをカウントアップして、過電流検出カウンターのカウント値が所定のカウント値よりも大きい場合に、スイッチ素子の駆動を停止する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電源装置において、過負荷状態や負荷の短絡状態等の異常状態となった場合に、過電流による電源装置、特に、スイッチ素子の損傷を防止する過電流保護回路および過電流保護方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、出力電流を監視してその過電流保護を行う直流安定化電源装置が種々開示・提案されている。
【0003】
これら従来の直流安定化電源装置の多くは、出力電流と出力電圧との相関特性が、いわゆる「定電流型垂下特性」ないしは、「変形フの字型垂下特性」を示すように、その過電流保護を行う回路が構成されていた。
【0004】
ところが、上記従来の直流安定化電源装置では、出力電流が上限値に達した後、出力電圧が垂下的に低減される期間に過大な出力電流が流れ続けるため、大きな電力損失が生じる上、最悪の場合には、当該期間中に素子が破壊されるおそれもあった。
【0005】
そのため、こうした問題に対応すべく、入力端子と出力端子との間に直列に接続される第1トランジスタと、第1のトランジスタと並列に接続され、負荷への出力電流の一部を検出電流として引き込む第2のトランジスタと、出力電圧が所定の目標値となるように第1および第2トランジスタの制御電圧を生成する制御電圧生成手段と、第1の定電流を生成する第1の定電流源と、出力電圧に応じた可変電流を生成する可変電流源と、第1の定電流と可変電流との合算電流に応じた参照電圧を生成する第1の抵抗と、第2の定電流を生成する第2の定電流源と、第2の定電流と検出電流との合算電流に応じた検出電圧を生成する第2の抵抗と、参照電圧と検出電圧に応じて制御電圧にオフセットを与えるオフセット回路と、から構成された電源装置が開示されている(例えば、特許文献1参照。)。
【0006】
上記の電源装置のうち、可変電流源は、出力電圧の低下に応じて可変電流を低減し、参照電圧および検出電圧は、第1および第2抵抗に各々流れる電流の低減に応じて電圧値が上昇する。オフセット回路は、検出電圧が参照電圧よりも高いときは、制御電圧にオフセットを与えることなく、逆に、検出電圧が参照電圧よりも低いときは、その差電圧の増大に応じて第1および第2トランジスタを閉じるように、制御電圧にオフセットを与える構成とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2007−257229号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上記の従来技術では、回路構成がハードウェアのみによるものであるため、回路構成が複雑になり、素子のもつ特性のバラツキ等を考慮すると安定的な動作が期待できないという問題がある。また、上記のように可変電流源により、設定値を可変するとしても、ハードウェアのみの構成であるために、自由度が低いという問題があった。
【0009】
そこで、本発明は、上述の課題に鑑みてなされたものであり、過電流保護の制御をデジタル制御あるいはメモリ機能を有した素子によって実行することにより、自由度が高く、安定した保護動作を実現できる過電流保護回路および過電流保護方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、上記の課題を解決するために、以下の事項を提案している。
【0011】
(1)本発明は、電源装置に搭載され、出力電流を抵抗により変換した電圧と任意の基準電圧とを比較器により比較して、過電流に対する保護動作を行う過電流保護回路であって、スイッチ素子の温度情報を取り込み、該取り込んだ温度情報対応するパラメータを出力する制御回路と、該パラメータを入力し、前記パラメータに対応した抵抗値を選定し、前記比較器に前記基準電圧を出力するデジタルポテンション回路と、前記比較器の出力信号に応じて、前記スイッチ素子の出力電流を減少させるような駆動信号を前記スイッチ素子に出力するドライブ回路と、を備えたことを特徴とする過電流保護回路を提案している。
【0012】
この発明によれば、制御回路が、スイッチ素子の温度情報を取り込み、その取り込んだ温度情報対応するパラメータをデジタルポテンション回路に出力し、デジタルポテンション回路が、パラメータに対応した抵抗値を選定し、比較器に前記基準電圧を出力する。そして、ドライブ回路は、比較器の出力信号に応じて、スイッチ素子の出力電流を減少させるような駆動信号をスイッチ素子に出力する。したがって、デジタルデータで、過電流の保護動作をコントロールすることにより、自由度が高く、しかも安定した保護動作を実現できる。
【0013】
(2)本発明は、電源装置に搭載され、出力電流を抵抗により変換した電圧と任意の基準電圧とを比較器により比較して、過電流に対する保護動作を行う過電流保護回路であって、抵抗値が重み付けされた複数の抵抗の一端が個々に接続されるとともに、スイッチ素子の温度情報を取り込み、前記複数の抵抗の中から該取り込んだ温度情報対応する抵抗を選択して、所定の電圧を印加する制御回路と、前記複数の抵抗の一端がともに接続され、前記比較器に前記基準電圧を出力する加算器と、前記加算器の出力信号に応じて、前記スイッチ素子の出力電流を減少させるような駆動信号を前記スイッチ素子に出力するドライブ回路と、を備えたことを特徴とする過電流保護回路を提案している。
【0014】
この発明によれば、制御回路に抵抗値が重み付けされた複数の抵抗の一端が個々に接続され、スイッチ素子の温度情報を取り込んで、複数の抵抗の中から取り込んだ温度情報対応する抵抗を選択して、所定の電圧を印加する。複数の抵抗の一端は、加算器の入力端でともに接続され、比較器に基準電圧を出力する。そして、ドライブ回路が、加算器の出力信号に応じて、スイッチ素子の出力電流を減少させるような駆動信号をスイッチ素子に出力する。したがって、抵抗値が重み付けされた複数の抵抗の中から取り込んだ温度情報対応する抵抗を選択して、所定の電圧を印加することによって、過電流の保護動作をコントロールすることにより、自由度が高く、しかも安定した保護動作を実現できる。
【0015】
(3)本発明は、電源装置に搭載され、出力電流を抵抗により変換した電圧と任意の基準電圧とを比較器により比較して、過電流に対する保護動作を行う過電流保護回路であって、スイッチ素子の温度情報を取り込むとともに、PWM信号を出力し、該PWM信号を微分器にて微分した電圧信号を取り込んで、該取り込んだ電圧信号が、前記温度情報対応する電圧値になるように前記PWM信号のデューティー比を制御し、前記温度情報対応する電圧値を前記比較器に前記基準電圧として出力する制御回路と、前記比較器の出力信号に応じて、前記スイッチ素子の出力電流を減少させるような駆動信号を前記スイッチ素子に出力するドライブ回路と、を備えたことを特徴とする過電流保護回路を提案している。
【0016】
この発明によれば、制御回路が、スイッチ素子の温度情報を取り込むとともに、PWM信号を出力し、そのPWM信号を微分器にて微分した電圧信号を取り込んで、その取り込んだ電圧信号が、温度情報対応する電圧値になるようにPWM信号のデューティー比を制御して、温度情報対応する電圧値を比較器に基準電圧として出力する。そして、ドライブ回路が、比較器の出力信号に応じて、スイッチ素子の出力電流を減少させるような駆動信号をスイッチ素子に出力する。したがって、取り込んだ電圧信号が、温度情報対応する電圧値になるようにPWM信号のデューティー比を制御して、温度情報対応する電圧値を比較器に基準電圧として出力することで、過電流の保護動作をコントロールすることにより、自由度が高く、しかも安定した保護動作を実現できる。
【0017】
(4)本発明は、PWM信号によりスイッチ素子を制御する電源装置に搭載され、出力電流を抵抗により変換した電圧と任意の基準電圧とを比較器により比較して、過電流に対する保護動作を行う過電流保護回路であって、前記スイッチ素子の温度情報を取り込み、該取り込んだ温度情報対応するパラメータを出力する制御回路と、該パラメータを入力し、前記パラメータに対応した抵抗値を選定し、前記比較器に前記基準電圧を出力するデジタルポテンション回路と、前記比較器の出力信号に応じて、前記スイッチ素子のオン時間をマスクして、出力電流を減少させるような駆動信号を前記スイッチ素子に出力するドライブ回路と、を備えたことを特徴とする過電流保護回路を提案している。
【0018】
この発明によれば、制御回路が、スイッチ素子の温度情報を取り込み、その取り込んだ温度情報対応するパラメータをデジタルポテンション回路に出力し、デジタルポテンション回路が、パラメータに対応した抵抗値を選定し、比較器に前記基準電圧を出力する。そして、ドライブ回路は、比較器の出力信号に応じて、スイッチ素子のオン時間をマスクして、出力電流を減少させるような駆動信号をスイッチ素子に出力する。したがって、デジタルデータで、過電流の保護動作をコントロールすることにより、自由度が高く、しかも安定した保護動作を実現できる。
【0019】
(5)本発明は、PWM信号によりスイッチ素子を制御する電源装置に搭載され、出力電流を抵抗により変換した電圧と任意の基準電圧とを比較器により比較して、過電流に対する保護動作を行う過電流保護回路であって、抵抗値が重み付けされた複数の抵抗の一端が個々に接続されるとともに、前記スイッチ素子の温度情報を取り込み、前記複数の抵抗の中から該取り込んだ温度情報対応する抵抗を選択して、所定の電圧を印加する制御回路と、前記複数の抵抗の一端がともに接続され、前記比較器に前記基準電圧を出力する加算器と、前記加算器の出力信号に応じて、前記スイッチ素子のオン時間をマスクして、出力電流を減少させるような駆動信号を前記スイッチ素子に出力するドライブ回路と、を備えたことを特徴とする過電流保護回路を提案している。
【0020】
この発明によれば、制御回路に抵抗値が重み付けされた複数の抵抗の一端が個々に接続され、スイッチ素子の温度情報を取り込んで、複数の抵抗の中から取り込んだ温度情報対応する抵抗を選択して、所定の電圧を印加する。複数の抵抗の一端は、加算器の入力端でともに接続され、比較器に基準電圧を出力する。そして、ドライブ回路が、加算器の出力信号に応じて、スイッチ素子のオン時間をマスクして、出力電流を減少させるような駆動信号をスイッチ素子に出力する。したがって、抵抗値が重み付けされた複数の抵抗の中から取り込んだ温度情報対応する抵抗を選択して、所定の電圧を印加することによって、過電流の保護動作をコントロールすることにより、自由度が高く、しかも安定した保護動作を実現できる。
【0021】
(6)本発明は、PWM信号によりスイッチ素子を制御する電源装置に搭載され、出力電流を抵抗により変換した電圧と任意の基準電圧とを比較器により比較して、過電流に対する保護動作を行う過電流保護回路であって、前記スイッチ素子の温度情報を取り込むとともに、PWM信号を出力し、該PWM信号を微分器にて微分した電圧信号を取り込んで、該取り込んだ電圧信号が、前記温度情報対応する電圧値になるように前記PWM信号のデューティー比を制御し、前記温度情報対応する電圧値を前記比較器に前記基準電圧として出力する制御回路と、前記比較器の出力信号に応じて、前記スイッチ素子のオン時間をマスクして、出力電流を減少させるような駆動信号を前記スイッチ素子に出力するドライブ回路と、を備えたことを特徴とする過電流保護回路を提案している。
【0022】
この発明によれば、制御回路が、スイッチ素子の温度情報を取り込むとともに、PWM信号を出力し、そのPWM信号を微分器にて微分した電圧信号を取り込んで、その取り込んだ電圧信号が、温度情報対応する電圧値になるようにPWM信号のデューティー比を制御して、温度情報対応する電圧値を比較器に前記基準電圧として出力する。そして、ドライブ回路が、比較器の出力信号に応じて、スイッチ素子のオン時間をマスクして、出力電流を減少させるような駆動信号をスイッチ素子に出力する。したがって、取り込んだ電圧信号が、温度情報対応する電圧値になるようにPWM信号のデューティー比を制御して、温度情報対応する電圧値を比較器に基準電圧として出力することで、過電流の保護動作をコントロールすることにより、自由度が高く、しかも安定した保護動作を実現できる。
【0023】
(7)本発明は、(1)から(6)の過電流保護回路について、前記制御回路が、マイクロコンピュータにより構成されていることを特徴とする過電流保護回路を提案している。
【0024】
この発明によれば、制御回路がマイクロコンピュータで構成されているため、簡単な構成で、精度の高い保護動作を実現することができる。また、本発明においては、検出した温度情報に基づいて、マイクロコンピュータから出力されるデジタル信号を外部回路において、アナログ信号に変換する構成となっているため、廉価なマイクロコンピュータで過電流保護回路を実現できるため、回路全体のコストダウンに寄与することができる。
【0025】
(7)本発明は、電源装置において、過電流に対する保護動作を行う過電流保護方法であって、スイッチ素子の温度を検出する第1のステップと、該検出した温度が所定の温度範囲にある場合に、前記検出した温度に対応して、過電流検出のための閾値電圧を決定する第2のステップと、スイッチ素子の温度が所定の温度範囲よりも高い場合に、過温度検出カウンターをカウントアップする第3のステップと、前記過温度検出カウンターのカウント値が所定のカウント値よりも大きい場合に、スイッチ素子の駆動を停止する第4のステップと、前記過温度検出カウンターのカウント値が所定のカウント値よりも小さい場合に、スイッチ素子の駆動電流と過電流検出の閾値とを比較する第5のステップと、前記スイッチ素子の駆動電流が過電流検出の閾値よりも大きい場合に、過電流検出カウンターをカウントアップする第6のステップと、前記過電流検出カウンターのカウント値が所定のカウント値よりも大きい場合に、前記スイッチ素子の駆動を停止する第7のステップと、からなることを特徴とする過電流保護方法を提案している。
【0026】
この発明によれば、スイッチ素子の温度を検出し、その検出した温度が所定の温度範囲にある場合に、検出した温度に対応して、過電流検出のための閾値電圧を決定する。次に、スイッチ素子の温度が所定の温度範囲よりも高い場合に、過温度検出カウンターをカウントアップし、過温度検出カウンターのカウント値が所定のカウント値よりも大きい場合に、スイッチ素子の駆動を停止する。一方、過温度検出カウンターのカウント値が所定のカウント値よりも小さい場合に、スイッチ素子の駆動電流と過電流検出の閾値とを比較し、スイッチ素子の駆動電流が過電流検出の閾値よりも大きい場合に、過電流検出カウンターをカウントアップして、過電流検出カウンターのカウント値が所定のカウント値よりも大きい場合に、スイッチ素子の駆動を停止する。したがって、ソフトウェアによって、過電流の保護動作をコントロールすることにより、自由度が高く、しかも安定した保護動作を実現できる
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、マイクロコンピュータに代表されるデジタル制御あるいはメモリ機能を有した素子によって、過電流の保護動作をコントロールすることにより、過電流検出の閾値を動的に設定することができるという効果がある。また、過電流検出の閾値を動的に設定することができるため、最悪の条件を考慮して、スイッチ素子等を選定する制約が緩くなり、電源装置全体のコストダウンと信頼性の向上を両立できるという効果がある。また、本発明において、マイクロコンピュータを用いて過電流保護動作を行う場合、検出した温度情報に基づいて、マイクロコンピュータから出力されるデジタル信号を外部回路において、アナログ信号に変換する構成となっているため、廉価なマイクロコンピュータで過電流保護回路を実現できるため、回路全体のコストダウンに寄与することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る過電流保護回路を備えた電源装置の構成を示す図である。
【図2】本発明の第1の実施形態に係る過電流保護回路の構成を示す図である。
【図3】本発明の第1の実施形態の変形例に係る過電流保護回路の構成を示す図である。
【図4】本発明の第1の実施形態の変形例に係る過電流保護回路の構成を示す図である。
【図5】本発明の第2の実施形態に係る過電流保護回路を備えた電源装置の構成を示す図である。
【図6】本発明の第2の実施形態に係る過電流保護回路の構成を示す図である。
【図7】本発明の第2の実施形態の変形例に係る過電流保護回路の構成を示す図である。
【図8】本発明の第2の実施形態の変形例に係る過電流保護回路の構成を示す図である。
【図9】本発明の過電流保護回路における処理フローである。
【図10】本発明の過電流保護回路における処理フローである。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。なお、本実施形態における構成要素は適宜、既存の構成要素等との置き換えが可能であり、また、他の既存の構成要素との組合せを含む様々なバリエーションが可能である。したがって、本実施形態の記載をもって、特許請求の範囲に記載された発明の内容を限定するものではない。
【0030】
<第1の実施形態>
以下、図1から図4および図9、図10を用いて、本発明の第1の実施形態について詳細に説明する。なお、以下の説明においては、制御回路としてマイクロコンピュータを例示して、説明するが、これに限るものではない。
【0031】
<電源装置の構成>
本実施形態に係る電源装置は、図1に示すように、CPU101と、積分回路102と、PWM生成回路103と、ゲートドライブ回路104と、温度センサ105と、出力電流検出部106と、加算回路107と、CPU101とともに過電流を制御するブロックを形成する可変電圧出力回路200と比較器300と、ブリッジ回路を形成するスイッチ素子Q1、スイッチ素子Q2、コンデンサC1、コンデンサC2と、整流回路を形成するトランスT2、ダイオードD1、ダイオードD2、コンデンサC3と、出力電流を取り出すトランスT1とから構成されている。
【0032】
積分回路102は、CPU101から出力される矩形波状の信号を積分して三角波状の信号を生成し、PWM生成回路103に出力する。PWM生成回路103は、積分回路102から入力した三角波状の信号と加算回路107からの入力電圧に基づいて、PWM信号を生成し、ゲートドライブ回路104に出力する。ゲートドライブ回路104は、入力したPWM信号に基づいて、ブリッジ回路を形成するスイッチ素子Q1およびスイッチ素子Q2のゲートにドライブ信号を供給する。
【0033】
温度センサ105は、スイッチ素子Q1の近傍に配置され、スイッチ素子Q1の温度を測定し、その情報をデジタル信号に変換してCPU101のA/D変換ポートに入力する。出力電流検出部106は、トランスT1の2次側から出力電流を検出し、検出した電流値に対応した電圧を比較器300に入力する。
【0034】
CPU101は、A/D変換ポートから入力した値に応じたパラメータ等をIO出力から可変電圧出力回路200に供給する。可変電圧出力回路200は、入力したパラメータに基づいて電圧を発生させ、これを比較器300に供給する。比較器300は、入力した電圧値を基準電圧として、出力電流検出部106から入力した電圧値と比較し、その比較結果を加算回路107に出力する。
【0035】
加算回路107は、比較器300の比較結果とCPU101のD/A出力から与えられる制御目標値および出力側からフィードバックされる出力電圧とを加算して、PWM生成回路103に出力する。
【0036】
<過電流保護回路の構成>
図2に示すように、本実施形態に係る過電流保護回路およびその周辺回路は、CPU101と、積分回路102を形成するオペアンプIC1、コンデンサC10、抵抗R10と、PWM生成回路103と加算回路107の機能をなすオペアンプIC2と、ゲートドライブ回路104と、温度センサ105であるサーミスタTH1と抵抗R13と、出力電流検出部106である抵抗R12と、可変電圧出力回路200であるデジタルポテンションメータ201と、比較器300であるオペアンプIC3とから構成されている。
【0037】
サーミスタTH1は、スイッチ素子Q1の温度によって、その抵抗値が変化する。その結果、抵抗R13と構成される分圧回路の分圧値が変化する。これにより、スイッチ素子Q1の温度を電圧値に変換して検出することができる。この分圧値は、CPU101のA/D変換端子に入力される。
【0038】
CPU101は、A/D変換端子に入力された電圧値に対応したパラメータを可変電圧出力回路200であるデジタルポテンションメータ201に出力する。デジタルポテンションメータ201は、分圧器であり、入力されるパラメータに応じた分圧値を出力する。この出力される電圧が比較器300であるオペアンプIC3の基準電圧となり、オペアンプIC3のマイナス端子に入力される。一方、オペアンプIC3のプラス端子には、スイッチ素子Q1の出力電流を抵抗R12で変換した電圧が入力される。オペアンプIC3は、上記の基準電圧と出力電流を変換した電圧とを比較し、その差分値を加算回路107であるオペアンプIC2のマイナス端子入力抵抗R11に出力する。
【0039】
積分回路102を構成するオペアンプIC1とコンデンサC10は、CPU101のキャリア端子から出力される矩形波状の信号を積分して、三角波状の信号を生成し、加算回路107であるオペアンプIC2のマイナス端子入力抵抗R11に出力する。一方、加算回路107であるオペアンプIC2のプラス端子には、CPU101のD/A出力端子から出力される目標値に相当する電圧が入力される。そのため、加算回路107であるオペアンプIC2の出力端子からは、積分回路102が出力する三角波状の信号に対して、オペアンプIC3の出力電圧とCPU101のD/A出力端子から出力される目標値に相当する電圧との差分に相当する電圧でオフセットされた信号がゲートドライブ回路104に入力される。ゲートドライブ回路104は、オペアンプIC2から入力された信号に基づいて、ドライブ信号を生成し、スイッチ素子Q1を駆動する。
【0040】
したがって、本実施形態における過電流保護回路によれば、スイッチ素子Q1の温度に応じて、能動的にオフセット電圧を変化させて適切な保護動作を実行することができる。また、デジタルポテンションメータを用いて、ソフトウェアによって、過電流の保護動作をコントロールすることから、自由度が高く、安定した保護動作を実現することができる。
【0041】
<過電流保護回路の第1の変形例>
本変形例に係る過電流保護回路および周辺回路は、図3に示すように、CPU101と、積分回路102を形成するオペアンプIC1、コンデンサC10、抵抗R10と、加算回路107の機能をなすオペアンプIC2と、ゲートドライブ回路104と、温度センサであるサーミスタTH1、抵抗R13と、出力電流検出部106である抵抗R12と、可変電圧出力回路200を形成する抵抗R14、R15、R16、R17、R18、R19、オペアンプIC4、オペアンプIC5とからなる回路群202と、比較器300であるオペアンプIC3とから構成されている。なお、可変電圧出力回路200を形成する回路群202以外の構成は、上記実施形態における過電流保護回路と同様であるため、その詳細な説明は省略する。
【0042】
可変電圧出力回路200を形成する回路群202は、抵抗値が重みづけされ、各抵抗R14、R15、R16の一端がCPU101の出力ポートに接続され、他端がともにオペアンプIC4のマイナス入力端に接続された反転増幅器と、R18を入力抵抗とし、フィードバック抵抗をR19とした反転増幅器とから構成されている。
【0043】
サーミスタTH1と抵抗R13とにより構成される分圧回路の分圧値は、CPU101のA/D変換端子に入力される。CPU101は、A/D変換端子に入力された電圧値に対応した出力ポートを選択し、所望の電圧を出力する。なお、選択する出力ポートは、複数であってもよい。
【0044】
出力ポートが選択され、電圧が与えられると、選択された出力ポートに接続された抵抗の抵抗値(複数の場合は、それらの並列値)とフィードバック抵抗R17の抵抗値で定まるゲインで増幅され、さらに、オペアンプIC5、抵抗R18、R19とからなる反転増幅器で反転され、比較器300であるオペアンプIC3の基準電圧となる。
【0045】
したがって、本実施形態における過電流保護回路によれば、スイッチ素子Q1の温度に応じて、能動的にオフセット電圧を変化させて適切な保護動作を実行することができる。また、CPUの出力ポートに接続され、抵抗値が重みづけされた抵抗値をソフトウェアによって選択することにより、過電流の保護動作をコントロールすることから、自由度が高く、安定した保護動作を実現することができる。
【0046】
<過電流保護回路の第2の変形例>
本変形例に係る過電流保護回路および周辺回路は、図4に示すように、CPU101と、積分回路102を形成するオペアンプIC1、コンデンサC10、抵抗R10と、加算回路107の機能をなすオペアンプIC2と、ゲートドライブ回路104と、温度センサであるサーミスタTH1、抵抗R13と、出力電流検出部106である抵抗R12と、可変電圧出力回路200を形成する抵抗R20、コンデンサC11と、オペアンプIC6とからなる回路群203と、比較器300であるオペアンプIC3とから構成されている。なお、可変電圧出力回路200を形成する回路群203以外の構成は、上記実施形態における過電流保護回路と同様であるため、その詳細な説明は省略する。
【0047】
可変電圧出力回路200を形成する回路群203は、抵抗R20とコンデンサC11およびオペアンプIC6とにより、微分回路で構成されている。
【0048】
サーミスタTH1と抵抗R13とにより構成される分圧回路の分圧値は、CPU101のA/D変換端子に入力される。CPU101は、A/D変換端子に入力された電圧値に対応したデューティのPWM信号をA/D出力ポートから出力する。
【0049】
A/D出力ポートから出力されたPWM信号は、微分回路で構成される可変電圧出力回路200に入力され、直流電圧に変換される。この電圧が、比較器300であるオペアンプIC3の基準電圧となる。
【0050】
したがって、本実施形態における過電流保護回路によれば、スイッチ素子Q1の温度に応じて、能動的にオフセット電圧を変化させて適切な保護動作を実行することができる。また、CPUから出力されるPWM信号により、比較器の基準電圧を生成することにより、過電流の保護動作をコントロールすることから、自由度が高く、安定した保護動作を実現することができる。
【0051】
<過電流保護回路の動作>
図9および図10を用いて、本実施形態に係る過電流保護回路の動作について、詳細に説明する。なお、CPU101には、過温度カウンターと過電流カウンターとが内蔵されている。
【0052】
まず、CPU101は、スイッチ素子Q1およびQ2が駆動中であるか否かを確認し(ステップS101)、スイッチ素子Q1およびQ2が駆動中でない場合には、過温度カウンターに「0」をセットする(ステップS101の「No」)。一方で、スイッチ素子Q1およびQ2が駆動中である場合には、スイッチ素子の温度がX1以上であるか否かを確認する(ステップS102)。
【0053】
スイッチ素子の温度がX1以下である場合(ステップS102の「Yes」)には、過電流検出の閾値をY1とするように、可変電圧出力回路200にパラメータを出力する、あるいは、第1の変形例の場合には、所望の抵抗値の組み合わせを選択し、対応する出力ポートから電圧を出力する。また、第2の変形例の場合には、所望のPWM信号を出力し、(ステップS103)過温度検出カウンターに「0」をセットする(ステップS116)。
【0054】
スイッチ素子の温度がX1以上である場合(ステップS102の「No」)には、スイッチ素子の温度がX1よりも高く、かつ、X2以下であるか否かを確認する(ステップS104)。スイッチ素子の温度がX1よりも高く、かつ、X2以下である場合(ステップS104の「Yes」)には、ステップS103と同様の処理で、過電流検出の閾値をY2とする処理を行い(ステップS105)、過温度検出カウンターに「0」をセットする(ステップS116)。
【0055】
スイッチ素子の温度がX1よりも高く、かつ、X2以下でない場合(ステップS104の「No」)には、スイッチ素子の温度がX2よりも高く、かつ、X3以下であるか否かを確認する(ステップS106)。スイッチ素子の温度がX2よりも高く、かつ、X3以下である場合(ステップS106の「Yes」)には、ステップS103と同様の処理で、過電流検出の閾値をY3とする処理を行い(ステップS107)、過温度検出カウンターに「0」をセットする(ステップS116)。
【0056】
スイッチ素子の温度がX2よりも高く、かつ、X3以下でない場合(ステップS106の「No」)には、スイッチ素子の温度がX3よりも高く、かつ、X4以下であるか否かを確認する(ステップS108)。スイッチ素子の温度がX3よりも高く、かつ、X4以下である場合(ステップS108の「Yes」)には、ステップS103と同様の処理で、過電流検出の閾値をY4とする処理を行い(ステップS109)、過温度検出カウンターに「0」をセットする(ステップS116)。
【0057】
スイッチ素子の温度がX3よりも高く、かつ、X4以下でない場合(ステップS108の「No」)には、スイッチ素子の温度がX4よりも高く、かつ、X5以下であるか否かを確認する(ステップS110)。スイッチ素子の温度がX4よりも高く、かつ、X5以下である場合(ステップS110の「Yes」)には、ステップS103と同様の処理で、過電流検出の閾値をY5とする処理を行い(ステップS111)、過温度検出カウンターに「0」をセットする(ステップS116)。
【0058】
スイッチ素子の温度がX4よりも高く、かつ、X5以下でない場合(ステップS110の「No」)には、スイッチ素子の温度がX5よりも高く、かつ、X6以下であるか否かを確認する(ステップS112)。スイッチ素子の温度がX5よりも高く、かつ、X6以下である場合(ステップS112の「Yes」)には、ステップS103と同様の処理で、過電流検出の閾値をY6とする処理を行い(ステップS113)、過温度検出カウンターに「0」をセットする(ステップS116)。
【0059】
スイッチ素子の温度がX5よりも高く、かつ、X6以下でない場合(ステップS112の「No」)には、スイッチ素子の温度がX6よりも高く、かつ、X7以下であるか否かを確認する(ステップS114)。スイッチ素子の温度がX6よりも高く、かつ、X7以下である場合(ステップS114の「Yes」)には、ステップS103と同様の処理で、過電流検出の閾値をY7とする処理を行い(ステップS115)、過温度検出カウンターに「0」をセットする(ステップS116)。
【0060】
スイッチ素子の温度がX8よりも高い場合(ステップS117)、過温度検出カウンターをカウントアップする(ステップS118)。そして、過温度検出カウンターのカウント値がZ1よりも大きいか否かを確認し(ステップS119)、過温度検出カウンターのカウント値がZ1よりも大きい場合(ステップS119の「Yes」)には、スイッチ素子の駆動を一定期間停止し(ステップS124)、スタートに戻る。
【0061】
一方で、過温度検出カウンターのカウント値がZ1よりも小さい場合(ステップS119の「No」)には、スイッチ素子の駆動電流が過電流検出の閾値よりも大きいか否かを確認し(ステップS120)、スイッチ素子の駆動電流が過電流検出の閾値よりも小さい場合(ステップS120の「No」)には、過電流カウンターに「0」をセットする(ステップS121)。
【0062】
他方、スイッチ素子の駆動電流が過電流検出の閾値よりも大きい場合(ステップS120の「Yes」)には、過電流カウンターをカウントアップする(ステップS122)。そして、過電流カウンターのカウント値がW1よりも大きいか否かを確認(ステップS123)し、過電流カウンターのカウント値がW1よりも大きい場合(ステップS123の「Yes」)には、スイッチ素子の駆動を一定期間停止し(ステップS124)、スタートに戻る。一方、過電流カウンターのカウント値がW1よりも小さい場合(ステップS123の「No」)には、そのまま、スタートに戻る。
【0063】
したがって、本実施形態によれば、ソフトウェアによって、過電流の保護動作をコントロールすることにより、過電流検出の閾値を動的に設定することができ、また、過電流検出の閾値を動的に設定することができるため、最悪の条件を考慮して、スイッチ素子等を選定する制約が緩くなり、電源装置全体のコストダウンと信頼性の向上を両立できる。
【0064】
<第2の実施形態>
以下、図5から図8を用いて、本発明の第2の実施形態について詳細に説明する。なお、以下の説明においては、制御回路としてマイクロコンピュータを例示して、説明するが、これに限るものではない。
【0065】
<電源装置の構成>
本実施形態に係る電源装置は、図5に示すように、CPU101と、ゲートドライブ回路104と、温度センサ105と、出力電流検出部106と、CPU101とともに過電流を制御するブロックを形成する可変電圧出力回路200と比較器300と、AND回路IC101、IC102と、ブリッジ回路を形成するスイッチ素子Q1、スイッチ素子Q2、コンデンサC1、コンデンサC2と、整流回路を形成するトランスT2、ダイオードD1、ダイオードD2、コンデンサC3と、出力電流を取り出すトランスT1とから構成されている。なお、第1の実施形態と同一の符号を付す構成要素については、同様の機能を奏することからその詳細な説明は、省略する。
【0066】
CPU101は、A/D変換ポートから入力した値に応じたパラメータ等をIO出力から可変電圧出力回路200に供給する。可変電圧出力回路200は、入力したパラメータに基づいて電圧を発生させ、これを比較器300に供給する。比較器300は、入力した電圧値を基準電圧として、出力電流検出部106から入力した電圧値と比較し、その比較結果をAND回路IC101、IC102に出力する。
【0067】
AND回路IC101、IC102のもう一方の端子には、CPU101のPWM出力端子からそれぞれPWM信号が入力され、このPWM信号と比較器300からの出力信号のAND演算が行われ、過電流時には、比較器300からの出力信号によりスイッチ素子のオン時間を間引くことにより、過電流を抑制する。
【0068】
<過電流保護回路の構成>
図6に示すように、本実施形態に係る過電流保護回路およびその周辺回路は、CPU101と、ゲートドライブ回路104と、温度センサ105であるサーミスタTH1と抵抗R13と、出力電流検出部106である抵抗R12と、可変電圧出力回路200であるデジタルポテンションメータ201と、比較器300であるオペアンプIC3と、AND回路IC101とから構成されている。
【0069】
サーミスタTH1は、スイッチ素子Q1の温度によって、その抵抗値が変化する。その結果、抵抗R13と構成される分圧回路の分圧値が変化する。これにより、スイッチ素子Q1の温度を電圧値に変換して検出することができる。この分圧値は、CPU101のA/D変換端子に入力される。
【0070】
CPU101は、A/D変換端子に入力された電圧値に対応したパラメータを可変電圧出力回路200であるデジタルポテンションメータ201に出力する。デジタルポテンションメータ201は、分圧器であり、入力されるパラメータに応じた分圧値を出力する。この出力される電圧が比較器300であるオペアンプIC3の基準電圧となり、オペアンプIC3のマイナス端子に入力される。一方、オペアンプIC3のプラス端子は、AND回路IC101の入力端子に接続されている。また、AND回路IC101のもう一方の入力端子には、CPU101のPWM出力端子からPWM信号が入力されている。
【0071】
このPWM信号と比較器300からの出力信号のAND演算が行われ、過電流時には、比較器300からの出力信号によりスイッチ素子のオン時間を間引くような信号がゲートドライブ回路104に入力される。ゲートドライブ回路104は、AND回路IC101から入力された信号に基づいて、ドライブ信号を生成し、スイッチ素子Q1を駆動する。これにより、結果的に、過電流を抑制する。
【0072】
したがって、本実施形態における過電流保護回路によれば、スイッチ素子Q1の温度に応じて、能動的にオフセット電圧を変化させて適切な保護動作を実行することができる。また、デジタルポテンションメータを用いて、ソフトウェアによって、過電流の保護動作をコントロールすることから、自由度が高く、安定した保護動作を実現することができる。
【0073】
<過電流保護回路の第1の変形例>
本変形例に係る過電流保護回路および周辺回路は、図7に示すように、CPU101と、ゲートドライブ回路104と、温度センサであるサーミスタTH1、抵抗R13と、出力電流検出部106である抵抗R12と、可変電圧出力回路200を形成する抵抗R14、R15、R16、R17、R18、R19、オペアンプIC4、オペアンプIC5とからなる回路群202と、比較器300であるオペアンプIC3と、AND回路IC101とから構成されている。なお、可変電圧出力回路200を形成する回路群202以外の構成は、上記実施形態における過電流保護回路と同様であるため、その詳細な説明は省略する。
【0074】
可変電圧出力回路200を形成する回路群202は、抵抗値が重みづけされ、各抵抗R14、R15、R16の一端がCPU101の出力ポートに接続され、他端がともにオペアンプIC4のマイナス入力端に接続された反転増幅器と、R18を入力抵抗とし、フィードバック抵抗をR19とした反転増幅器とから構成されている。
【0075】
サーミスタTH1と抵抗R13とにより構成される分圧回路の分圧値は、CPU101のA/D変換端子に入力される。CPU101は、A/D変換端子に入力された電圧値に対応した出力ポートを選択し、所望の電圧を出力する。なお、選択する出力ポートは、複数であってもよい。
【0076】
出力ポートが選択され、電圧が与えられると、選択された出力ポートに接続された抵抗の抵抗値(複数の場合は、それらの並列値)とフィードバック抵抗R17の抵抗値で定まるゲインで増幅され、さらに、オペアンプIC5、抵抗R18、R19とからなる反転増幅器で反転され、比較器300であるオペアンプIC3の基準電圧となる。
【0077】
したがって、本実施形態における過電流保護回路によれば、スイッチ素子Q1の温度に応じて、能動的にオフセット電圧を変化させて適切な保護動作を実行することができる。また、CPUの出力ポートに接続され、抵抗値が重みづけされた抵抗値をソフトウェアによって選択することにより、過電流の保護動作をコントロールすることから、自由度が高く、安定した保護動作を実現することができる。
【0078】
<過電流保護回路の第2の変形例>
本変形例に係る過電流保護回路および周辺回路は、図8に示すように、CPU101と、ゲートドライブ回路104と、温度センサであるサーミスタTH1、抵抗R13と、出力電流検出部106である抵抗R12と、可変電圧出力回路200を形成する抵抗R20、コンデンサC11と、オペアンプIC6とからなる回路群203と、比較器300であるオペアンプIC3と、AND回路IC101とから構成されている。なお、可変電圧出力回路200を形成する回路群203以外の構成は、上記実施形態における過電流保護回路と同様であるため、その詳細な説明は省略する。
【0079】
可変電圧出力回路200を形成する回路群203は、抵抗R20とコンデンサC11およびオペアンプIC6とにより、微分回路で構成されている。
【0080】
サーミスタTH1と抵抗R13とにより構成される分圧回路の分圧値は、CPU101のA/D変換端子に入力される。CPU101は、A/D変換端子に入力された電圧値に対応したデューティのPWM信号をA/D出力ポートから出力する。
【0081】
A/D出力ポートから出力されたPWM信号は、微分回路で構成される可変電圧出力回路200に入力され、直流電圧に変換される。この電圧が、比較器300であるオペアンプIC3の基準電圧となる。
【0082】
したがって、本実施形態における過電流保護回路によれば、スイッチ素子Q1の温度に応じて、能動的にオフセット電圧を変化させて適切な保護動作を実行することができる。また、CPUから出力されるPWM信号により、比較器の基準電圧を生成することにより、過電流の保護動作をコントロールすることから、自由度が高く、安定した保護動作を実現することができる。
【0083】
<応用例>
上記実施形態では、単独の電源装置における過電流保護回路について、説明したが、例えば、図1に示すような電源装置を直列に接続したシステムや並列に接続したシステムにおいても本発明を適用することができる。
【0084】
つまり、従来の電源装置では、例えば、直列接続を行った場合、短絡保護字時に片側に負荷が偏り、これにより、正常に定格を出力することができないという問題があった。しかしながら、本発明においては、検出した温度情報に対して、各電源装置における過電流保護のばらつきが生じない精度の高い制御を実行できることから、複数の電源装置が接続された場合においても、相互の電源装置間での負荷の偏りが発生しない。
【0085】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内で様々な変形や応用が可能である。例えば、本実施形態においては、制御回路の一例として、マイクロコンピュータを例示して説明したが、これに限らず、DSP(Digital Signal Processor)、CPLD(Complex Programmable Logic Device)、FPGA(Field Programmable Gate Array)等のデジタル回路にも利用することも可能である。
【符号の説明】
【0086】
101;CPU
102;積分回路
103;PWM生成回路
104;ゲートドライブ回路
105;温度センサ
106;出力電流検出部
107;加算回路
200;可変電圧出力回路
201;可変電圧出力回路
202;可変電圧出力回路
203;可変電圧出力回路
300;比較器
C1;コンデンサ
C2;コンデンサ
C3;コンデンサ
C10;コンデンサ
C11;コンデンサ
D1;ダイオード
D2;ダイオード
IC1;オペアンプ
IC2;オペアンプ
IC3;オペアンプ
IC4;オペアンプ
IC5;オペアンプ
IC6;オペアンプ
Q1;スイッチ素子
Q2;スイッチ素子
R10;抵抗
R11;抵抗
R12;抵抗
R13;抵抗
R14;抵抗
R15;抵抗
R16;抵抗
R17;フィードバック抵抗
R18;入力抵抗
R19;フィードバック抵抗
R20;抵抗
T1;トランス
T2;トランス

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電源装置に搭載され、出力電流を抵抗により変換した電圧と任意の基準電圧とを比較器により比較して、過電流に対する保護動作を行う過電流保護回路であって、
スイッチ素子の温度情報を取り込み、該取り込んだ温度情報対応するパラメータを出力する制御回路と、
該パラメータを入力し、前記パラメータに対応した抵抗値を選定し、前記比較器に前記基準電圧を出力するデジタルポテンション回路と、
前記比較器の出力信号に応じて、前記スイッチ素子の出力電流を減少させるような駆動信号を前記スイッチ素子に出力するドライブ回路と、
を備えたことを特徴とする過電流保護回路。
【請求項2】
電源装置に搭載され、出力電流を抵抗により変換した電圧と任意の基準電圧とを比較器により比較して、過電流に対する保護動作を行う過電流保護回路であって、
抵抗値が重み付けされた複数の抵抗の一端が個々に接続されるとともに、スイッチ素子の温度情報を取り込み、前記複数の抵抗の中から該取り込んだ温度情報対応する抵抗を選択して、所定の電圧を印加する制御回路と、
前記複数の抵抗の一端がともに接続され、前記比較器に前記基準電圧を出力する加算器と、
前記加算器の出力信号に応じて、前記スイッチ素子の出力電流を減少させるような駆動信号を前記スイッチ素子に出力するドライブ回路と、
を備えたことを特徴とする過電流保護回路。
【請求項3】
電源装置に搭載され、出力電流を抵抗により変換した電圧と任意の基準電圧とを比較器により比較して、過電流に対する保護動作を行う過電流保護回路であって、
スイッチ素子の温度情報を取り込むとともに、PWM信号を出力し、該PWM信号を微分器にて微分した電圧信号を取り込んで、該取り込んだ電圧信号が、前記温度情報対応する電圧値になるように前記PWM信号のデューティー比を制御し、前記温度情報対応する電圧値を前記比較器に前記基準電圧として出力する制御回路と、
前記比較器の出力信号に応じて、前記スイッチ素子の出力電流を減少させるような駆動信号を前記スイッチ素子に出力するドライブ回路と、
を備えたことを特徴とする過電流保護回路。
【請求項4】
PWM信号によりスイッチ素子を制御する電源装置に搭載され、出力電流を抵抗により変換した電圧と任意の基準電圧とを比較器により比較して、過電流に対する保護動作を行う過電流保護回路であって、
前記スイッチ素子の温度情報を取り込み、該取り込んだ温度情報対応するパラメータを出力する制御回路と、
該パラメータを入力し、前記パラメータに対応した抵抗値を選定し、前記比較器に前記基準電圧を出力するデジタルポテンション回路と、
前記比較器の出力信号に応じて、前記スイッチ素子のオン時間をマスクして、出力電流を減少させるような駆動信号を前記スイッチ素子に出力するドライブ回路と、
を備えたことを特徴とする過電流保護回路。
【請求項5】
PWM信号によりスイッチ素子を制御する電源装置に搭載され、出力電流を抵抗により変換した電圧と任意の基準電圧とを比較器により比較して、過電流に対する保護動作を行う過電流保護回路であって、
抵抗値が重み付けされた複数の抵抗の一端が個々に接続されるとともに、前記スイッチ素子の温度情報を取り込み、前記複数の抵抗の中から該取り込んだ温度情報対応する抵抗を選択して、所定の電圧を印加する制御回路と、
前記複数の抵抗の一端がともに接続され、前記比較器に前記基準電圧を出力する加算器と、
前記加算器の出力信号に応じて、前記スイッチ素子のオン時間をマスクして、出力電流を減少させるような駆動信号を前記スイッチ素子に出力するドライブ回路と、
を備えたことを特徴とする過電流保護回路。
【請求項6】
PWM信号によりスイッチ素子を制御する電源装置に搭載され、出力電流を抵抗により変換した電圧と任意の基準電圧とを比較器により比較して、過電流に対する保護動作を行う過電流保護回路であって、
前記スイッチ素子の温度情報を取り込むとともに、PWM信号を出力し、該PWM信号を微分器にて微分した電圧信号を取り込んで、該取り込んだ電圧信号が、前記温度情報対応する電圧値になるように前記PWM信号のデューティー比を制御し、前記温度情報対応する電圧値を前記比較器に前記基準電圧として出力する制御回路と、
前記比較器の出力信号に応じて、前記スイッチ素子のオン時間をマスクして、出力電流を減少させるような駆動信号を前記スイッチ素子に出力するドライブ回路と、
を備えたことを特徴とする過電流保護回路。
【請求項7】
前記制御回路が、マイクロコンピュータにより構成されていることを特徴とする請求項1から請求項6のいずれかに記載の過電流保護回路。
【請求項8】
電源装置において、過電流に対する保護動作を行う過電流保護方法であって、
スイッチ素子の温度を検出する第1のステップと、
該検出した温度が所定の温度範囲にある場合に、前記検出した温度に対応して、過電流検出のための閾値電圧を決定する第2のステップと、
スイッチ素子の温度が所定の温度範囲よりも高い場合に、過温度検出カウンターをカウントアップする第3のステップと、
前記過温度検出カウンターのカウント値が所定のカウント値よりも大きい場合に、スイッチ素子の駆動を停止する第4のステップと、
前記過温度検出カウンターのカウント値が所定のカウント値よりも小さい場合に、スイッチ素子の駆動電流と過電流検出の閾値とを比較する第5のステップと、
前記スイッチ素子の駆動電流が過電流検出の閾値よりも大きい場合に、過電流検出カウンターをカウントアップする第6のステップと、
前記過電流検出カウンターのカウント値が所定のカウント値よりも大きい場合に、前記スイッチ素子の駆動を停止する第7のステップと、
からなることを特徴とする過電流保護方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−97662(P2011−97662A)
【公開日】平成23年5月12日(2011.5.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−246185(P2009−246185)
【出願日】平成21年10月27日(2009.10.27)
【出願人】(000002037)新電元工業株式会社 (776)
【Fターム(参考)】