説明

過電流表示器

【課題】過電流表示器において、他相の電線による磁界の影響を抑制する。
【解決手段】過電流表示器1は、電線2に流れる電流を検出し、過電流の発生時に表示体25を正常表示状態から異常表示状態へ反転させる。過電流表示器1は、表示体25の両端に設けられる回転軸24a,24bにそれぞれ固定される磁気回転素子26a,26bと、磁気回転素子26a,26bに対向するとともに電線2の軸方向に対してその中心軸が垂直となるようにそれぞれ設けられる電磁石27a,27bとを備える。磁気回転素子26a,26b及び電磁石27a,27bの動作極性をそれぞれ異ならせる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、過電流表示器に関する。
【背景技術】
【0002】
過電流表示器は、配電線路等の電線に吊り下げ状態で支持され、その電線に地絡や短絡等の事故に起因して過電流が流れたときに、それを速やかに表示するようにしたものである(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
特許文献1に記載の過電流表示器では、コア及びコイル等よりなる検出部が、電線を取り囲むように配設され、この検出部によって電線に流れる電流が検出されるようになっている。また、検出部には表示部が隣接して配設され、その表示部には表示体及びそれを駆動するための電磁石と磁気回転素子からなる駆動手段が設けられている。そして、電線に過電流が流れたとき、検出部から検出信号が出力されて、その検出信号により駆動手段が作動され、表示体が正常状態から異常表示状態に反転されるようになっている。
【特許文献1】特開平11−142443号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記の過電流表示器は、図6に示されるように、左からU相102u、V相102v、W相102wの3相の電線のうち、両端のU相102uとW相102wとの2相に取り付けられ、配電線路の故障箇所を検出するように用いられていた。しかしながら、図7に示されるように、左からU相102u、V相102v、W相102wの3相の電線すべてに過電流表示器101を取り付け、配電線路の故障箇所を検出するとともに、故障相を発見するように用いることが考えられる。
【0005】
このように3相の電線102u,102v,102wすべてに過電流表示器101が取り付けられた場合に、例えば両端のU相102uとW相102wとが短絡すると、U相102uとW相102wとに正常の電流値より大きな短絡電流が流れる。すなわち、U相102uに紙面奥方向への過電流が流れ、W相102wに紙面手前方向への過電流が流れる。すると、U相102uとW相102wとには、図中破線のような磁界が発生する。そして、図7の拡大図に示されるように、前記磁界の方向がV相102vに取り付けられた過電流表示器101の表示体125の駆動手段を構成する電磁石127の磁界方向に対して異なると、V相102vに取り付けられた過電流表示器101の磁気回転素子126が回転したり、不安定になったりするおそれがあった。また、中央のV相102vに限らず、U相102uやW相102wに取り付けられた過電流表示器101においてもV相102vに取り付けられた過電流表示器101ほどではないが、他相の電線による磁界の影響が考えられる。このため、他相の電線による磁界の影響が抑制された過電流表示器が求められていた。
【0006】
この発明は、こうした実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、他相の電線による磁界の影響が抑制された過電流表示器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
以下、上記目的を達成するための手段及びその作用効果について説明する。
請求項1に記載の発明は、配電線路を挟持して吊り下げ状態で取り付けられ、同配電線路に流れる電流を検出し、過電流の発生時に駆動手段により、表示体を正常表示状態から異常表示状態へ回転軸を中心として反転させるようにした過電流表示器において、前記駆動手段は、前記表示体の前記回転軸の両側にそれぞれ固定される磁気回転素子と、同磁気回転素子に対向するとともに前記配電線路の軸方向に対してその中心軸が垂直となるようにそれぞれ設けられる電磁石とを備え、前記磁気回転素子及び前記電磁石の動作極性をそれぞれ異ならせることをその要旨としている。
【0008】
同構成によれば、駆動手段は表示体に設けられる回転軸の両側にそれぞれ固定される磁気回転素子と、磁気回転素子に対向するとともに電線の軸方向に対して垂直となるようにそれぞれ設けられる電磁石とを備え、磁気回転素子及び電磁石の動作極性をそれぞれ異ならせる。そのため、取り付けられた電線とは異なる他相の電線に過電流が流れたときに他相の電線による磁界が発生すると、同磁界の方向と表示体の回転軸の両側における電磁石の磁界の方向の一方とが互いに反対となり、それら磁界同士がそれぞれを打ち消しあうか、又は同磁界を弱めることができる。その結果、他相の電線による磁界の影響を抑制することができる。
【0009】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の過電流表示器において、前記磁気回転素子と前記電磁石とが前記表示体の前記回転軸の両側にそれぞれ同数個且つ複数個設けられ、同回転軸のそれぞれの片側において隣り合う前記磁気回転素子と前記電磁石との動作極性を異ならせることをその要旨としている。
【0010】
同構成によれば、磁気回転素子と電磁石とが表示体の回転軸の両側にそれぞれ同数個且つ複数個設けられるため、回転軸の両側に一つずつ設けられるのと比べ、磁界を強くすることができる。また、回転軸のそれぞれの片側において隣り合う磁気回転素子と電磁石との動作極性を異ならせるため、取り付けられた電線とは異なる他相の電線に過電流が流れたときに他相の電線による磁界が発生すると、回転軸の片側毎において同磁界の方向と電磁石の磁界の方向の一つとが互いに反対となり、それら磁界同士がそれぞれを打ち消しあうか、又は同磁界を弱めることができる。その結果、他相の電線による磁界の影響をより抑制することができる。
【0011】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載の過電流表示器において、前記電磁石は支持部材によって支持され、同支持部材を筐体に取り付ける取付板の材質を強磁性体とすることをその要旨としている。
【0012】
同構成によれば、電磁石を支持する支持部材を筐体に取り付ける取付板の材質を強磁性体としたため、回転軸の両側で異なる動作極性となっている電磁石と協働して、電磁石によって形成される磁界が電磁石のコアと取付板を介して形成される。これにより、磁力が増大し、取り付けられた電線とは異なる他相の電線に過電流が流れたときに他相の電線による磁界が発生しても、他相の電線による磁界の影響を抑制することができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、過電流表示器において、他相の電線による磁界の影響を抑制することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の一実施形態について図1〜図5を参照して説明する。
図1に示されるように、過電流表示器1は、配電線路等の電線2に吊り下げ状態で取り付けられて、電線2に流れる電流を検出する検出部10と、電線2に過電流が流れたときに、それを表示する表示部20とを備えている。
【0015】
検出部10は、コア及びコイル等よりなり、電線2を取り囲むように配設され、電線2を挟持した状態で、ボルト及びナットにより締め付け固定されている。
表示部20は、検出部10の下部に装着されている。この表示部20の筐体としてのケース21は、合成樹脂により筒状に形成され、その下部に透明カバー30が取り付けられている。
【0016】
ケース21内には、材質が強磁性体としての鋼材からなる取付板22が配設され、その下面左右両側には一対の合成樹脂製の支持部材23a,23bが取り付けられている。取付板22の上面には、基板が配設され、この基板上には検出制御部を含む制御回路が実装されている。
【0017】
表示体25は合成樹脂により円板状に形成され、表示体25の両端には回転軸24a,24bが両支持部材23a,23bの軸受孔に挿通した状態で、電線2の延長方向と直交する方向へ延びる水平軸線の周りで回転可能に支持されている。また、表示体25の外面は、正常表示部25a及び異常表示部25bの2つに分けられている。そして、通常の送電時には白色の正常表示部25aが下側に配置されるとともに、赤色の異常表示部25bが上側に配置されるようになっている。
【0018】
両支持部材23a,23bには、右側電磁石27aと左側電磁石27bとが電線2の軸方向に対して垂直となるようにそれぞれ配設されている。右側電磁石27aは、右側コア28aと右側コイル29aとを備えている。左側電磁石27bは、左側コア28bと左側コイル29bとを備えている。両電磁石27a,27bは、磁性保持型になっており、コイル29a,29bに一旦電流が流れて、コア28a,28bに上下方向の磁極が発生すると、コイル29a,29bへの通電が停止された後でも、コア28a,28bの磁極が保持されるようになっている。なお、本実施形態では、通常の送電時において、右側コア28aの上側がS極、下側がN極の磁極となるように設定されているとともに、左側コア28bの上側がN極、下側がS極の磁極となるように設定されている。また、過電流の通過検出時には、右側コイル29aが励磁されて、右側コア28aの上側がN極、下側がS極の磁極に転換されるとともに、左側コイル29bが励磁されて、左側コア28bの上側がS極、下側がN極の磁極に転換されるようになっている。すなわち、両電磁石27a,27bは、左右両側で磁極が異なるように設定されている。
【0019】
図3に示されるように、材質が強磁性体としての鋼材からなる取付板22には両電磁石27a,27bが接触するとともに、両電磁石27a,27bの磁極が異なるように取り付けられている。このため、両電磁石27a,27bによって形成される磁界は取付板22を介して形成され、樹脂製もしくは非磁性体よりなる取付板22であった場合に比べ磁力が増幅される。
【0020】
図1に示されるように、表示体25の両側の回転軸24a,24bには、右側電磁石27aの右側コア28aに近接対向するように、右側磁気回転素子26aが固定されるとともに、左側電磁石27bの左側コア28bに近接対向するように、左側磁気回転素子26bが固定される。図2に示されるように、磁気回転素子26a(26b)の外周には、極性の異なる一対の半円弧状の磁石層が形成されている。そして、本実施形態においては、図1に示されるように、電磁石27a,27b及び磁気回転素子26a,26bにより、表示体25を正常表示状態から異常表示状態に反転させるための駆動手段としての駆動部が構成されている。
【0021】
すなわち、通常の送電時には、右側電磁石27aの右側コア28aの下側N極と吸引しあった右側磁気回転素子26aがS極の磁石層を上側とする位置に設定されているとともに、左側電磁石27bの左側コア28bの下側S極と吸引しあった左側磁気回転素子26bがN極の磁石層を上側とする位置に設定されている。これにより、表示体25上の白色の正常表示部25aが、透明カバー30側へ露出した下側位置に配置されている。
【0022】
一方、短絡等によって所定値を超える過電流の通過検出時には、右側電磁石27aの右側コイル29aが励磁されて、その右側コア28aの上側がN極、下側がS極に磁極転換され、右側磁気回転素子26aのS極の磁石層が右側コア28aの下側の磁極と反発して、右側磁気回転素子26aに回転力が誘起される。また、左側電磁石27bの左側コイル29bが励磁されて、その左側コア28bの上側がS極、下側がN極に磁極転換され、左側磁気回転素子26bのN極の磁石層が左側コア28bの下側の磁極と反発して、左側磁気回転素子26bに回転力が誘起される。これにより、磁気回転素子26a,26b及び表示体25が回転されて、右側磁気回転素子26aのN極の磁石層が上側に配置されるとともに、左側磁気回転素子26bのS極の磁石層が上側に配置される。すなわち、右側電磁石27aの右側コア28aの下側S極と吸引しあった右側磁気回転素子26aがN極の磁石層を上側とする位置に保持されるようになるとともに、左側電磁石27bの左側コア28bの下側N極と吸引しあった左側磁気回転素子26bがS極の磁石層を上側とする位置に保持されるようになる。よって、表示体25上の赤色の異常表示部25bが透明カバー30側へ露出した状態に配置される。
【0023】
次に、前記のように構成された過電流表示器1の動作を具体的に説明する。図4に示されるように、過電流表示器1は、左からU相2u、V相2v、W相2wの3相の電線すべてに吊り下げ状態で取り付けられている。通常の送電時には、図1に示されるように、右側磁気回転素子26aのS極と右側電磁石27aのN極とが吸引しあうとともに、左側磁気回転素子26bのN極と左側電磁石27bのS極とが吸引しあった状態にある。このため、表示体25上の白色の正常表示部25aが、透明カバー30側へ露出した状態に保持されて、正常状態が表示されている。
【0024】
ここで、図4に示されるように、短絡等によってU相2uとW相2wとに所定値を超える過電流が流れると、U相2uとW相2wとには大きな磁界が発生する。図中では、U相2uに紙面奥方向への過電流が流れ、W相2wに紙面手前方向への過電流が流れている。そして、U相2uに流れる過電流により時計方向回りの磁界が発生し、V相2vに取り付けられた過電流表示器1には上方から下方への磁界が通過している。また、W相2wに流れる過電流により反時計回りの磁界が発生し、V相2vに取り付けられた過電流表示器1には上方から下方への磁界が通過している。すなわち、両側の電磁石27a,27bによって形成される磁界の方向と電線U相2u及び電線W相2wによって発生する磁界の方向とは、図5(a)に示されるようになる。右側において、右側電磁石27aによって形成される磁界の方向は下向きとなり、U相2u及びW相2wによって発生する磁界の方向は下向きとなり、同方向である。左側において、左側電磁石27bによって形成される磁界の方向は上向きとなり、U相2u及びW相2wによって発生する磁界の方向は下向きとなり、逆方向である。この結果、右側においては右側磁気回転素子26aが吸引される磁界方向の磁力が強められ、左側においては左側磁気回転素子26bが吸引される磁界方向の磁力が弱められる。そして、右側の磁力の増加分と左側の磁力の減少分とは打ち消しあって、表示体25は回転せず安定する。
【0025】
また、図4に示した過電流の向きとは逆方向の過電流が電線U相2uと電線W相2wとに流れた際には、図5(b)に示されるように、V相2vに取り付けられた過電流表示器1には下方から上方への磁界が通過する。両側の電磁石27a,27bの磁界方向は図5(a)と同様である場合には、以下のようになる。
【0026】
すなわち、右側において、右側電磁石27aによって形成される磁界の方向は下向きとなり、U相2u及びW相2wによって発生する磁界の方向は上向きとなり、逆方向である。左側において、左側電磁石27bによって形成される磁界の方向は上向きとなり、U相2u及びW相2wによって発生する磁界の方向は上向きとなり、同方向である。この結果、右側においては右側磁気回転素子26aが吸引される磁界方向の磁力が弱められ、左側においては左側磁気回転素子26bが吸引される磁界方向の磁力が強められる。そして、右側の磁力の減少分と左側の磁力の増加分とは打ち消しあって、表示体25は回転せず安定する。
【0027】
また、図1に示した電磁石の極性とは逆方向、すなわち通常の送電時において、右側コア28aの上側がN極、下側がS極の磁極となるように設定されるとともに、左側コア28bの上側がS極、下側がN極の磁極となるように設定された場合には、図5(c)及び図5(d)に示されるようになる。
【0028】
図5(c)に示されるように、電線U相2uと電線W相2wとによって形成される磁界がV相2vに取り付けられた過電流表示器1に上方から下方へ通過する場合、右側において、右側電磁石27aの磁界の方向とU相2u及びW相2wによる磁界の方向とは逆方向となり、左側において、左側電磁石27bの磁界の方向とU相2u及びW相2wによる磁界の方向とは同方向となる。この結果、右側においては右側磁気回転素子26aが吸引される磁界方向の磁力が弱められ、左側においては左側磁気回転素子26bが吸引される磁界方向の磁力が強められる。そして、右側の磁力の減少分と左側の磁力の増加分とは打ち消しあって、表示体25は回転せず安定する。
【0029】
図5(d)に示されるように、電線U相2uと電線W相2wとによって形成される磁界がV相2vに取り付けられた過電流表示器1に下方から上方へ通過する場合、右側において、右側電磁石27aの磁界の方向とU相2u及びW相2wによる磁界の方向とは同方向となり、左側において、左側電磁石27bの磁界の方向とU相2u及びW相2wによる磁界の方向とは逆方向となる。この結果、右側においては右側磁気回転素子26aが吸引される磁界方向の磁力が強められ、左側においては左側磁気回転素子26bが吸引される磁界方向の磁力が弱められる。そして、右側の磁力の増加分と左側の磁力の減少分とは打ち消しあって、表示体25は回転せず安定する。
【0030】
一方、例えば従来技術のような左右両側の電磁石27a,27bの極性がどちらもコア28a,28bの上側がS極、下側がN極の磁極となるように設定された場合には、図5(e)及び図5(f)に示されるようになる。図5(e)に示されるように、電線U相2uと電線W相2wとによって形成される磁界がV相2vに取り付けられた過電流表示器1に上方から下方へ通過する場合、両側において、右側電磁石27a及び左側電磁石27bの磁界の方向とU相2u及びW相2wによる磁界の方向とは逆方向となる。この結果、両側において右側磁気回転素子26a及び左側磁気回転素子26bが吸引される磁界方向の磁力が弱められ、表示体25は固定されず不安定となり、不必要な表示をするおそれがある。図5(f)に示されるように、電線U相2uと電線W相2wとによって形成される磁界がV相2vに取り付けられた過電流表示器1に下方から上方へ通過する場合、両側において、右側電磁石27a及び左側電磁石27bの磁界の方向とU相2u及びW相2wによる磁界の方向とは同方向となる。この結果、両側において右側磁気回転素子26a及び左側磁気回転素子26bが吸引される磁界方向の磁力が強められ、表示体25は安定する。このように、両側の電磁石27a,27bの動作極性を同じ向きとすると、両側の電線U相2uと電線W相2wとによって形成される過電流による磁界の方向によって不安定になる場合と安定する場合とができてしまうこととなる。
【0031】
上記本実施形態のように、右側電磁石27aと左側電磁石27bとの動作極性が逆向きとなるようにすることにより、U相2uとW相2wとに過電流が流れたときにU相2uとW相2wとによる磁界が発生してもV相2v取り付けられた過電流表示器1の表示体25は回転せず、また不安定にならず磁界に影響されない。
【0032】
以上、説明した実施形態によれば、以下の作用効果を奏することができる。
(1)表示体25に設けられる両側の回転軸24a,24bにそれぞれ固定される磁気回転素子26a,26bと、磁気回転素子26a,26bに対向するとともに電線2の軸方向に対して垂直となるようにそれぞれ設けられる電磁石27a,27bとを備え、磁気回転素子26a,26b及び電磁石27a,27bの動作極性を表示体25の左右両側において異ならせている。そのため、取り付けられた電線V相2vとは異なる電線U相2uと電線W相2wとに過電流が流れたときに電線U相2uと電線W相2wとによる磁界が発生すると、同磁界の方向と表示体25の左右両側における電磁石27a,27bの磁界の方向の一方とが互いに反対となり、それら磁界同士がそれぞれを打ち消しあうか、又は同磁界を弱めることができる。その結果、他相の電線による磁界の影響を抑制することができる。
【0033】
(2)電磁石27a,27bを支持する支持部材23a,23bをケース21に取り付ける取付板22の材質を強磁性体としたため、左右両側で異なる動作極性となっている電磁石27a,27bと協働して、電磁石27a,27bによって形成される磁界が電磁石27a,27bのコア28a,28bと取付板22を介して形成される。これにより、磁力が増大し、取り付けられた電線とは異なる他相の電線に過電流が流れたときに他相の電線による磁界が発生しても、他相の電線による磁界の影響を抑制することができる。
【0034】
なお、上記実施形態は、これを適宜変更した以下の形態にて実施することができる。
・上記実施形態では、表示体25の両側に一つずつの磁気回転素子26a,26bを設けるようにしたが、それぞれ同数個且つ複数個設け、それぞれの片側において隣り合う磁気回転素子と電磁石の動作極性を異ならせるようにしてもよい。
【0035】
同構成によれば、磁気回転素子と電磁石とが表示体25の両側にそれぞれ同数個且つ複数個設けられるため、両側に一つずつ設けられるのと比べ、磁界を強くすることができる。また、それぞれの片側において隣り合う磁気回転素子と電磁石との動作極性を異ならせるため、取り付けられた電線とは異なる他相の電線に過電流が流れたときに他相の電線による磁界が発生すると、回転軸の片側毎において同磁界の方向と電磁石の磁界の方向の少なくとも一つとが互いに反対となり、それら磁界同士がそれぞれを打ち消しあうか、又は同磁界を弱めることができる。その結果、他相の電線による磁界の影響をより抑制することができる。
【0036】
・上記実施形態では、過電流表示器1を3相の電線すべてに取り付けるようにしたが、3相のいずれかの2相に取り付けて使用することが可能である。このようにしても同様の効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】過電流表示器の部分破断正面図。
【図2】磁気回転素子の斜視図。
【図3】過電流表示器の表示部を示す部分破断正面図。
【図4】過電流表示器の配電線路への取り付け時の磁界を示す図。
【図5】(a)〜(f)電磁石の磁界の方向と他相の電線による磁界の方向とによる表示体の動作を示す図。
【図6】過電流表示器の配電線路への取り付けを示す図。
【図7】過電流表示器の配電線路への取り付け時の磁界を示す図。
【符号の説明】
【0038】
1,101…過電流表示器、2,2u,2v,2w,102u,102v,102w…電線、10…検出部、20…表示部、21…ケース、22…取付板、23a,23b,123…支持部材、24a,24b,124…回転軸、25,125…表示体、26a,26b,126…磁気回転素子、27a,27b,127…電磁石、28a,28b,128…コア、29a,29b,129…コイル、30…透明カバー。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
配電線路を挟持して吊り下げ状態で取り付けられ、同配電線路に流れる電流を検出し、過電流の発生時に駆動手段により、表示体を正常表示状態から異常表示状態へ回転軸を中心として反転させるようにした過電流表示器において、
前記駆動手段は、前記表示体の前記回転軸の両側にそれぞれ固定される磁気回転素子と、同磁気回転素子に対向するとともに前記配電線路の軸方向に対してその中心軸が垂直となるようにそれぞれ設けられる電磁石とを備え、
前記磁気回転素子及び前記電磁石の動作極性をそれぞれ異ならせる
ことを特徴とする過電流表示器。
【請求項2】
請求項1に記載の過電流表示器において、
前記磁気回転素子と前記電磁石とが前記表示体の前記回転軸の両側にそれぞれ同数個且つ複数個設けられ、同回転軸のそれぞれの片側において隣り合う前記磁気回転素子と前記電磁石との動作極性を異ならせる
ことを特徴とする過電流表示器。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の過電流表示器において、
前記電磁石は支持部材によって支持され、同支持部材を筐体に取り付ける取付板の材質を強磁性体とする
ことを特徴とする過電流表示器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−58262(P2009−58262A)
【公開日】平成21年3月19日(2009.3.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−223928(P2007−223928)
【出願日】平成19年8月30日(2007.8.30)
【出願人】(000102636)エナジーサポート株式会社 (51)
【Fターム(参考)】