説明

道路交通網制御システムおよびその制御方式

【課題】 道路の交差点信号システムを制御することにより車両が途中で止まることなく走行することを可能にする。これにより車のガソリン消費を減らし、走行時間を短縮し、二酸化炭素の排出を大幅に抑制する。
【解決手段】 道路の各交差点において信号が変わる周期を一定にし、各信号機の切り替えを同期して行う。さらに隣り合う交差点の信号の切り替えを逆位相もしくは同位相にする。また、信号周期の決定に際しては周期の整数倍が1時間になるように設定する。そして、走行車両への走行速度の周知を徹底することで発明の効果を高める。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、道路およびそこを走行する車両に関し、道路交通信号機システムを制御することにより車両の滑らかな走行を可能にする技術ならびにその制御方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
地球温暖化や環境問題への取り組みが急務となっている。このまま進めば今世紀終わりごろの地球環境は現在とは様変わりの様相を呈している可能性が高い。その元凶のひとつとしてしばしば取り上げられるのが車から排出される二酸化炭素問題である。これに関してはこれまでも多くの議論がなされ、その改善策もいろいろ検討されてきた。最近の例ではハイブリッド車が注目を集めており、さらに次世代技術として電気自動車も日の目を見ようとしている。
一方、実際に車が走行する道路に目を転じてみると、こうした努力に呼応するような試みがこれまであまりなされてこなかった、といえる。交差点に差し掛かった車がそこで一旦止まることが当たり前で、誰もそのことに疑問に感じないという状況がずっと続いてきた。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ここではこのような状況を踏まえて、道路の交差点信号システムを制御することにより車両が途中で止まることなく走行することを可能にする。これにより車が消費する燃料を減らし、走行時間を短縮し、二酸化炭素の排出を大幅に抑制する。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記課題を解決するための基盤となる道路構成を最初に想定する。その道路とは縦横にまっすぐに伸びる碁盤目状のもので、道路と道路の間の距離、すなわち交差点間の距離が一定であるような道路の構成である。このような道路構成においてはおのおのの交差点の信号のタイミングを調整することで車の滑らかな走行が可能になる。すなわち車両は所定の速度で走行し、交差点を停止することなく通過する。
これを実現するために次のことを行う。まず、道路の各交差点において信号が変わる周期を一定にし、ついで各信号機の切り替えを同期して行う。さらに隣り合う交差点の同一方向の信号の切り替えを逆位相にする。以上3点である。周期を一定にし、それを同期させることについての説明は省略するが、逆位相の意味は次のようなものである。図1は交差点で互いに直交する道路(X方向とY方向)の信号の時間経過を示したものである。赤信号と青信号が時間軸上でちょうど逆になっている様子を示す。これがここでいう逆位相である。この図の細目についても説明すると、X方向の青信号が注意信号に変わり、ついで右折信号が出る。もう一度注意信号が現れたあと、X方向もY方向も赤信号となる時間が入る。そしてY方向の信号が青に変わる。あとはこの繰返しである。もちろん右折信号が省略されたりする場合もあるが、基本的な変化の様子に変わりはない。
ここで想定した碁盤目状道路では、ある交差点を青信号で通り抜けた車は信号周期の半分の時間で次の交差点に達する速度で走行する。到達した交差点の信号はその時点で赤から青に変わっており、車は停止することなくこの交差点を通過する。これを繰り返せば車は一度も止まることなく道路を走行することが可能になる。この道路構成では縦方向も横方向も同じ様に信号機の設定を行う。これにより直進車であれば縦方向、横方向、順方向、逆方向どちらの向きに進む車も途中で止まることなく走行することが可能である。
以上のことをもう少し詳しく見てみよう。図2は横軸に時間をとり、縦軸に道路の進行方向をとったものである。道路の交差点の名称を仮に0丁目から八丁目までとした。時間軸の単位は2単位が信号周期に対応する。信号周期は先に述べたように青と赤の時間に黄色の注意信号、右折信号、全赤信号を合わせた中間的時間を足したものになる。図においては赤と青の間の隙間がこのような中間的な時間帯に当たる。そして、この図で斜めに走る帯が走行車両の動く時間場所帯となる。図の0丁目を信号が青になった瞬間に出発した車は定速で走行して一丁目の交差点の信号が青に変わるときに一丁目に達してここを通り抜ける。以下同様である。一方、逆方向に走行する車も同じようにして停止することなく八丁目から0丁目に向かって走り続ける。右折車や左折車がこれに加わるから直進車だけに注目するわけにはいかないが、状況がとくに大きく変わることはない。また、この図は一方向の道路についての説明なので、これに直行する道路についても考察しておかなくてはならない。しかし、先に述べた理想化した碁盤目道路においてはここで行った説明に齟齬をきたすことはない。以上、理想化した碁盤目道路において車が停止発進を繰り返すことなく一定の速度で走行し続けることが可能であることを示した。これは本願の主旨である信号機の信号周期一定、信号切り替え同期、逆位相切り替えの3点セットにより実現されたものである。
【発明の効果】
【0005】
車が道路を滑らかに走行するためには、交差点で信号が変化する様子を予見できるようにすればいい。本願はこれを実現するために信号周期を一定にし、同期をとり、さらに交差点間の信号の変化を逆位相ないし同位相に設定することで道路に系統性を持たせるものである。
本願の実施により、車が加速、減速、そして交差点ごとに停止発進するたびに車が消費するガソリンの量を減らすことはもちろん、走行時間の短縮にも大きな効果を発揮する。さらに適正速度で走行するから事故防止にもつながる。しかしながら、最も重要な点は二酸化炭素の放出が大幅に減って地球温暖化防止、環境の維持という緊急の課題に寄与するという点である。車がハイブリッド車になり、さらに電気自動車になったとしてもエネルギー損失を最少にするこのシステムの重要性が低下することはない。
さらに本願の実施に当たっては、信号機間の同期を正確にとるために決まった時間に同時に切替えを行う。これにより信号機の切替えを繰り返すうちに生ずる同期のずれをなくすことができ、事故を未然に防ぐ効果がある。
また、交差点と交差点の間を走行する区間速度を周知することでより滑らかな走行を可能にする。ここに I T 技術を適用して本願の効果をさらに高めるものである。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【図1】本発明に係る交差点の信号タイミングを示す図である。X方向とY方向の信号が逆位相になっている様子を示す。
【図2】本発明に係る基盤となる道路構成である交差点間の距離が等しい道路の車の流れを示す車両走行ダイヤグラムである。横軸に時間をとり、縦軸に道路の交差点をとったものである。車は定速で走行し、交差点を停止することなく走り抜ける。
【図3】本発明のひとつの実施例を示す。横軸に時間をとり、縦軸に青梅街道に沿った交差点を示したもので、街道を上下に走行する車の流れを示す。車は走行速度を調整しながら停止することなく走り続ける。
【図4】図3に示したものと同じ経路において信号機の数を減らしたときの車の流れを示す。図3の場合に比べて平均走行速度が改善され、走行時間も短縮されている。
【発明を実施するための形態】
【実施例1】
【0007】
実際の道路は、しかしながら、先の理想化した道路のようにはなっていないからその効果を実例に即して考えてみる必要がある。考え方の基本は図2に関して述べたものと同じである。図3は本発明の実施例の一つとして青梅街道の杉並、練馬区近辺の道路を示したもので、横軸に時間(時間軸の2単位が信号周期)を、縦軸に四面道から東伏見四丁目までの道路をとったものである。実際にこの路線を車で走ってみると信号の周期は2分前後となっており、街道沿いの青信号と赤信号の時間比率はほぼ2対1となっている。つまり青梅街道に沿って走る向きの青信号の時間は長く、街道に直行する道路のそれは短い。ここでもこの様式を踏襲する。すなわち一定に保たれ、かつ同期して変わる信号周期を2分とし、信号時間比率を2対1とする。隣接交差点の信号切り替えの基本は逆位相であるが、交差点間の距離が短い八丁と関前四丁目に隣り合う信号機の位相は同位相としている。
車の走行に対応する傾斜帯からわかるように全域にわたって途中で止まることなく車が走行していく。上りも下りも二つの帯のみを示しているがいずれも多重帯となっていることは言うまでもない。図2とは異なり交差点間の距離は不規則に変わるから、それぞれの区間で走行速度を調節する。この区間の交差点間距離は180m から540m までとばらついている(数値は厳密ではない)。車は時速15km/h から27km/h までの速度で走り抜ける。そして四面道から東伏見四丁目までの平均時速は21km/h となる。実際にこの路線を車で走ってみると平日昼間の時速は20km/h 前後なので同等と見てよい。しかし、大事なことは時速ではなく車が止まることなく走行し、無駄な燃料消費がないことである。
【実施例2】
【0008】
実施例1においては現存道路への本発明の適用について述べてきたが、時速も走行時間ももう少しなんとかしたい。既存の道路そのままでは制約が多すぎるので、ある程度妥当な変更をこの道路に加えてみる。比較的交通量の少ない道路から青梅街道へ出るのは左折のみとする、歩道橋を設けるなどの手段で信号機の数を減らすことを考える。さらに信号機の同位相、逆位相にする組み合わせを試行錯誤する。図4はこうした調整を行って最適に近いと思われる車の流れを示したものである。この場合平均速度は34km/h に改善され、途中の速度も25km/h から45km/h となって妥当な値となる。ここでは同位相の交差点が2箇所続く例を示したが、これを3連以上にするなどの手法によりさらに平均時速をあげることもできないわけではない。しかし、区間毎の速度差が大きくなるなどの弊害が出て、エネルギー損失の最小化という観点から逸れる可能性があるので対象からは除外している。
以上述べた例は1方向に走行する道路交通に関しての説明であったが、直行する道路についても考えておかなくてはならない。考慮すべき直行道路はこの例では同じく幹線道路である環状八号線となる。いま考えている青梅街道とは四面道で交差する。この幹線道路同士の交差点では青梅街道沿いの青信号の時間を長くとることはできない。図3、図4において四面道交差点の赤と青の時間配分を等しく設定しているのはこの点を考慮したものである。
[信号の同期方法]
【0009】
上記実施例においては信号周期を2分に設定し、かつ信号は同期して変わることを前提としてきた。信号周期の設定と信号同期の手段にはいろいろのものがあろうが、望ましいのは信号周期の決定に一定の制限を設けるものである。ここではその制限として信号周期を整数倍したときにその値が1時間になるような方式を検討する。信号周期を1分から6分の間に設定するとした場合、この条件を満たす整数の数Nは15個(N=10、12、15、16、18、20、24、25、30、36、40、45、48、50、60)となる。この中から切りのいい信号周期を選ぶと 6分(N=10)、5分(12)、4分(15)、3分20秒(18)、3分(20)、2分30秒(24)、2分(30)、1分40秒(36)、1分30秒(40)、1分20秒(45)、1分(60) となる。 これらの数値を信号周期に採用すると信号切り替えを時報に合わせて行うことが可能になる。すなわち信号機ごとに時報に合わせて赤信号に切替えるか、青信号にするかを決めておくだけで信号機間の同期を取ることができる。この場合図3や図4に示したように青信号と赤信号の時間が異なるときには、それに合わせて切り替えを調整することはもちろんである。これにより、信号切り替えの繰り返しで1時間経過後に多少のずれを生じたとしても元に戻すことができる。時報を受信するだけで毎時間校正作業をすることになり高い精度の同期が取れる。しかしここまでやらなくても、とくに大きな障害が出るわけではない。予め決めた日時に信号の切替えを実施するくらいでも十分であろう。たとえば一日一回午前零時に合わせて切替えをするなどである。改めて断るまでもないが、決まった時間であれば必ずしも時報に合わせる必要はない。
[区間走行速度]
【0010】
この新しいシステムの実施に際しては信号周期や位相の設定を行ったのちに区間走行速度が算定される。これにともなって車は区間ごとに走行速度を調整する必要がある。改めて告知をしなくても自律的に車が流れるようになることは十分に期待されるが、積極的に周知を図ることによりさらに効果的なものとしたい。走行する車に随時区間走行速度を知らせるために次のような対策を並列的に実施するものであろう。
1.道路上にペンキで区間走行速度を書いておく。
2.信号機に区間走行速度を示す指示板をとりつける。
3.信号機を青信号や赤信号の残り時間を示すものに換える。
4.信号機あるいはその近傍から車に区間走行速度を無線で知らせる。
5.交差点の手前で次の区間の走行速度を知らせるカーナビゲーションを開発する。
6.道路と交差点の信号情報をすべて組み込んだ自動速度制御装置つきの車とする。
等々である。
第3項目の残り時間の表記は歩行者信号にはときどき見かけるものであるが、車両用の信号機にもこのような表記をすれば無理なあるいは無駄な加速や減速をなくすことができる。第4項目の無線の活用は GPS や ETC などで培われた技術に代表される I T 技術を駆使すれば比較的容易に実現可能なものである。第6項目の自動速度制御もその実現にとくに大きな技術的障害は見当たらない。これが実現すれば衝突防止などの技術と組み合わせることで本当の意味での自動運転が可能になる。
【符号の説明】
【0011】
1…青信号期間、2…赤信号期間、3…注意信号期間、4…右折信号期間、5…全赤信号期間、6…車両走行時間場所帯。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
道路の交差点の信号が赤、青と変わる周期が一定であると同時に同期して変化し、さらに互いに隣り合う交差点の信号が逆位相もしくは同位相で切り替わることを特徴とする道路交通網制御システム。
【請求項2】
請求項1において、
信号周期の整数倍が1時間であることを特徴とする道路交通網制御システム。
【請求項3】
請求項2において、
予め設定した日時に合わせて各交差点の信号が切り替わることを特徴とする道路交通網制御システム。
【請求項4】
請求項1あるいは請求項2あるいは請求項3の道路交通網制御システムにおいて、
交差点と交差点の間を車が走行する際の区間速度を無線で受信することを特徴とする無線機器。
【請求項5】
請求項1あるいは請求項2あるいは請求項3の道路交通網制御システムにおける各種情報を組み込んだことを特徴とする車載ナビゲーションシステム。
【請求項6】
請求項1あるいは請求項2あるいは請求項3の道路交通網制御システムの各種情報に基づいて車の走行速度を自動的に制御できるようにすることを特徴とする車載システム。
【請求項7】
請求項4の無線機器あるいは請求項5の車載システムあるいは請求項6の車載システムを搭載した車両。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−113169(P2011−113169A)
【公開日】平成23年6月9日(2011.6.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−267237(P2009−267237)
【出願日】平成21年11月25日(2009.11.25)
【出願人】(502160109)
【Fターム(参考)】