説明

道路発光標識

【課題】道路上やトンネル内で発生する風を利用して発電して発光することができる標識であって、風速が小さい場所でも発電することができるとともに設置スペースが小さくて済み、しかも維持管理が容易である道路発光標識を提供すること。
【解決手段】風力を受けて回転する回転羽根と、該回転羽根の回転軸と連結されて中心軸回りに回転する回転体と、一端部が該回転体の中心軸の周囲に枢着されて、該回転体の回転に伴って発生する遠心力により前記一端部を中心に回動する錘部材と、該錘部材の回動によりその他端部で打撃されて起電力を発生する圧電体と、該圧電体にて発生した起電力により点灯する発光体とからなる道路発光標識とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、道路上やトンネル内で発生する風を利用して発電して発光することにより、運転者に注意を喚起することができる道路発光標識に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、道路標識は、位置表示や注意喚起等を目的として道路脇などに設置されており、このような道路標識の中には、夜間やトンネル内等の暗い場所でも運転者に注意を喚起できるタイプのものが存在している。
暗い場所で注意を喚起できるタイプの道路標識は、自動車のライトを反射するタイプのものと、自ら発光するタイプのものとに大別できる。
【0003】
このうち、前者のタイプの標識は、電力が不要であるため維持コストが低いというメリットがあるが、トンネル内で点灯しない車両が比較的多いという状況に鑑みると、トンネル内に設置するには安全性の面で問題があった。
【0004】
一方、後者のタイプの標識は、点灯しない車両の運転者にも注意を喚起することができる点で有効であるが、発光のための電力が必要となるため、維持コストが高くなるという欠点がある。
そこで、道路上やトンネル内などで発生する風を利用して起電力を発生し、この起電力を発光体に供給して発光させるようにした道路標識が創出されている(例えば、下記特許文献1及び2参照)
このような自己発光式の標識は、特許文献1及び2に示されるように、回転羽根(プロペラ)の回転軸と発電機の駆動軸とを連結し、風力により回転羽根を回転させ、この回転に伴って発電機を駆動し、これにより発生した電力をLED等の発光体に供給して点灯させるように構成されている。
【0005】
しかしながら、このような構造をもつ標識の場合、発電機の駆動軸を回転させるためには大きなトルクを必要とするという問題があった。
風力を受けて回転する回転羽根において大きな回転トルクを得るためには、受風面積を大きくする、即ち回転羽根の直径を大きくする必要があるが、トンネル内や道路脇では、設置スペースの制約上、大きな回転羽根を取り付けることはできなかった。
【0006】
また、発電機としてブラシモータを使用した場合、使用に伴ってブラシが摩耗するため、定期的にブラシの交換が必要となり、メンテナンスの手間とコストがかかるという問題があった。
一方、発電機としてブラシレスモータを使用した場合には、メンテナンスを省力化できるが、モータを回転させるためにより大きな風速(約5m/s以上)が必要となるため、設置可能な場所が非常に限定されてしまうという問題があった。
【0007】
【特許文献1】特開平11−296123号公報
【特許文献2】特開2000−160517号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記した従来技術の問題点を解決すべくなされたものであって、道路上やトンネル内で発生する風を利用して発電して発光することができる標識であって、風速が小さい場所でも発電することができるとともに設置スペースが小さくて済み、しかも維持管理が容易である道路発光標識を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1に係る発明は、風力を受けて回転する回転羽根と、該回転羽根の回転軸と連結されて中心軸回りに回転する回転体と、一端部が該回転体の中心軸の周囲に枢着されて、該回転体の回転に伴って発生する遠心力により前記一端部を中心に回動する錘部材と、該錘部材の回動によりその他端部で打撃されて起電力を発生する圧電体と、該圧電体にて発生した起電力により点灯する発光体とからなることを特徴とする道路発光標識に関する。
【0010】
請求項2に係る発明は、前記錘部材が、前記回転体の中心軸の周囲に、等角度間隔で複数個取り付けられていることを特徴とする請求項1記載の道路発光標識に関する。
【0011】
請求項3に係る発明は、前記複数個の錘部材が、前記回転体の中心軸の軸方向に間隔をあけて複数組取り付けられているとともに、前記圧電体が、複数組の錘部材の夫々の組に対応する位置に配置されていることを特徴とする請求項2記載の道路発光標識に関する。
【0012】
請求項4に係る発明は、前記回転体は、前記回転羽根の回転軸の一端部に連結される中心軸と、該中心軸が挿通される貫通穴を中心に有し且つ互いに平行に配置された複数の回転円板を備えており、前記錘部材は、夫々の回転円板の表面に対して1組ずつ回動可能に枢着されていることを特徴とする請求項3記載の道路発光標識に関する。
【0013】
請求項5に係る発明は、前記複数の回転円板に夫々1組ずつ枢着された錘部材の回動中心となる軸は、前記中心軸方向に見たときの位置が、他の組の錘部材の回動中心となる軸と重ならない位置に取り付けられていることを特徴とする請求項4記載の道路発光標識に関する。
【0014】
請求項6に係る発明は、前記圧電体は、一端部のみが固定されており、自由端とされた他端部近傍が前記錘部材により打撃されることを特徴とする請求項1乃至5いずれかに記載の道路発光標識に関する。
【0015】
請求項7に係る発明は、前記圧電体と発光体を電気的に接続する電気回路に、該圧電体にて発生した電力を蓄積するコンデンサが備えられていることを特徴とする請求項1乃至6いずれかに記載の道路発光標識に関する。
【0016】
請求項8に係る発明は、前記発光体が発光ダイオードであることを特徴とする請求項1乃至7いずれかに記載の道路発光標識に関する。
【0017】
請求項9に係る発明は、前記発光体を備えた点灯ユニットが、前記回転羽根、回転体、錘部材、圧電体を備えた他の部分に対して着脱可能に構成されていることを特徴とする請求項1乃至8いずれかに記載の道路発光標識に関する。
【発明の効果】
【0018】
請求項1に係る発明によれば、回転羽根の回転に伴って回動する錘部材により圧電体を打撃して起電力を発生させ、この起電力を利用して発光体を点灯させるように構成されているため、回転羽根の回転のために必要なトルクを小さくすることができる。そのため、回転羽根の直径を小さくして設置スペースを小さくすることができるとともに、風速が小さい場所でも発電して発光させることが可能となる。また、メンテナンスの必要性が殆どないため、維持管理が非常に容易である。
【0019】
請求項2に係る発明によれば、錘部材が、回転体の中心軸の周囲に等角度間隔で複数個取り付けられていることにより、圧電体に対して短い周期で断続的に打撃を与えることが可能となるため、圧電体に持続的に歪みを生じさせることができ、発電効率を向上させることが可能となる。
【0020】
請求項3に係る発明によれば、複数個の錘部材が回転体の中心軸の軸方向に間隔をあけて複数組取り付けられ、圧電体が複数組の錘部材の夫々の組に対応する位置に配置されていることにより、複数の圧電体に対して打撃を与えることができ、大きい起電力を得ることが可能となる。
【0021】
請求項4に係る発明によれば、回転体が、回転羽根の回転軸の一端部に連結される中心軸と、該中心軸が挿通される貫通穴を中心に有し且つ互いに平行に配置された複数の回転円板を備えており、錘部材が夫々の回転円板の表面に対して1組ずつ回動可能に枢着されていることにより、夫々の組の錘部材を回転円板により挟み込んで位置決めを行うことが可能となり、錘部材の軸方向の位置を安定させて、圧電体に対して確実に打撃を与えることができるようになる。
【0022】
請求項5に係る発明によれば、複数の回転円板に夫々1組ずつ枢着された錘部材の回動中心となる軸が、回転体の中心軸方向に見たときに、他の組の錘部材の回動中心となる軸と重ならない位置に取り付けられていることにより、各組の錘部材が異なるタイミングで圧電体を打撃するため、中心軸への衝撃を分散・緩和することができ、長期間に亘って安定した回転を維持することが可能となる。
【0023】
請求項6に係る発明によれば、圧電体の一端部のみが固定されており、自由端とされた他端部近傍が錘部材により打撃されることにより、圧電体が打撃を受けた後に、一端部を支点とした振動が持続的に生じるため、発電効率を向上させることができる。
【0024】
請求項7に係る発明によれば、圧電体と発光体を電気的に接続する電気回路に、該圧電体にて発生した電力を蓄積するコンデンサが備えられていることにより、圧電体にて発生した電力をコンデンサに蓄えてから発光体へと供給することが可能となり、発光体を安定して点灯することができる。
【0025】
請求項8に係る発明によれば、発光体が発光ダイオードであることにより、少ない消費電力で高輝度の発光を得ることが可能となる。
【0026】
請求項9に係る発明によれば、発光体を備えた点灯ユニットが、回転羽根、回転体、錘部材、圧電体を備えた他の部分に対して着脱可能に構成されているため、道路における取り付け場所のスペースに制約がある場合、点灯ユニットのみを下部に取り付けて、その他の部分は上部手摺り等に取り付けることができ、省スペースでの設置が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
以下、本発明に係る道路発光標識の好適な実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
図1及び図2は本発明に係る道路発光標識の全体構成を示す図であって、図1は外観図、図2は断面図である。
本発明に係る道路発光標識は、風力を受けて回転する回転羽根(1)と、該回転羽根(1)の回転に伴って発電する発電ユニット(2)と、該発電ユニット(2)において発生した電力を受けて点灯する点灯ユニット(3)とから構成されている。
【0028】
回転羽根(1)は、中心の回転軸の周りに、複数枚の羽根が放射状に且つ受風面が傾斜して取り付けられているプロペラ型のものである。
但し、本発明において、回転羽根(1)はプロペラ型のものに限定されず、タービン型、バドル型、ダリウス型、ジャイロミル型、サポニウス型、多翼型、セイルウイング型などの他の形状を採用してもよい。
【0029】
図4は、発電ユニット(2)の分解図である。
発電ユニット(2)は、本体ケース(4)と、錘回転ユニット(5)と、圧電体(6)とを備えている。
本体ケース(4)は、錘回転ユニット(5)と圧電体(6)を内部に収容する略直方体形状のケースであって、右半分部材と左半分部材の2つの部材を組み合わせることにより組み立てられる。
組み立てられた本体ケース(4)は、正面上方に貫通穴(41)(図3参照)を有しており、回転羽根(1)の回転軸の一端部は、この貫通穴(41)を介して、本体ケース(4)内に配設された回転体の中心軸(後述する)と連結される。
【0030】
図5は錘回転ユニット(5)の斜視図であり、図6はその分解図である。
錘回転ユニット(5)は、回転羽根(1)の回転軸の一端部に連結されて該回転羽根と共に回転する回転体と、該回転体に取り付けられた錘部材(10)とから構成されている。
【0031】
回転体は、回転羽根(1)の回転軸の一端部に連結される中心軸(7)と、中心軸(7)が挿通される貫通穴を中心に有し且つ互いに平行に配置された複数(図では3枚)の回転円板(8)とを備えており、夫々の回転円板(8)の表面には錘部材(10)が回転軸(9)を介して回動可能に取り付けられている。
【0032】
錘部材(10)は略直方体状の部材であって、その一端部に貫通穴(101)を有している。そして、全体が真鍮等の金属又はナイロン等の合成樹脂から形成されている。
また、回転円板(8)には、中心から離れた位置(外周近傍位置)に差込穴(81)が設けられている。
錘部材(10)は、貫通穴(101)に回転軸(9)を挿通して差込穴(81)に差し込み固定することにより、回転円板(8)に対して回動可能に枢着される。
【0033】
本発明において、1つの回転円板(8)に対して取り付けられる錘部材(10)の数は、1つでもよいし複数でもよいが、中心軸(7)の周囲に等角度間隔で複数個取り付けることが好ましい。
これは、後述する圧電体に対する打撃が短い周期で断続的に行われるため、圧電体の歪みが持続するようになり、発電効率が向上するためである。
但し、錘部材(10)の数が多すぎると、スペースの制約上、錘部材の大きさ(長さ)を小さくしなければならず、打撃力が弱くなるため、図示例の如く、1つの回転円板(8)に対して2つの錘部材(10)を、中心軸(7)を挟んで対向する位置に(即ち180°間隔で)取り付けることが最も好ましい。
【0034】
このようにして取り付けられた錘部材(10)は、中心軸(9)と共に回転円板(8)が回転すると、回転に伴って発生する遠心力によって、一端部を枢着している回転軸(9)を中心として回動し、その他端部が回転円板(8)の外形からはみ出すように開く(図7参照)。
【0035】
複数の回転円板(8)を貫く中心軸(7)の両端部には、夫々円板状のメタル板(11)が取り付けられている。これら2枚のメタル板(11)は、本体ケース(4)に設けられた溝(42)内に配置されることにより、錘回転ユニット(5)を本体ケース(4)に対して回転可能に支承する。
【0036】
錘部材(10)は、回転体の中心軸(7)の軸方向に間隔をあけて複数組(図示例では3組(6個))取り付けられている。
このようにすることで、複数の圧電体に対して打撃を与えることができるようになり、大きい起電力を得ることが可能となる。
【0037】
図示例では、3組(6個)の錘部材(10)のうち、2組の錘部材(10)は夫々回転円板(8)の間に挟まれており、残りの1組の錘部材(10)は回転円板(8)と円板状の止め板(12)との間に挟まれている。
このように、錘部材(10)が円板間に挟まれた構造を採ることにより、錘部材(10)の軸方向の位置が安定し、圧電体(6)に対して確実に打撃を与えることができるようになる。
【0038】
圧電体(6)は、錘部材(10)が上述した如く回動した時(開いた時)に、その他端部によって打撃されることにより歪んで起電力を発生するものであり、打撃を受けることができる位置、具体的には錘部材(10)の下方位置に、錘部材(10)の組の数と同じ数だけ(図示例では3つ)配置されている。
圧電体(6)は、その下端部が押さえ部材(13)とネジ(14)によりシム(15)を介して本体ケース(4)に対して固定され、上端部は固定されていない自由端となっており、この自由端とされた上端部近傍が錘部材(10)により打撃される。
これにより、圧電体(6)が打撃を受けた後に、振動が持続して正方向と逆方向の歪みを繰り返すようになり、発電効率を向上させることができる。
【0039】
複数の回転円板(8)に夫々1組ずつ枢着された錘部材(10)の回動中心となる軸(回転軸(9))は、回転体の中心軸(7)方向に見たときの位置が、他の組の錘部材(10)の回動中心となる軸(回転軸(9))と重ならない位置となるように取り付けられている。
図8は、図5に示すように、3枚の回転円板に対して2つ(1組)ずつ錘部材を取り付けた場合における、各組の錘部材の回転軸の位置関係を模式的に示す図である。
図8は回転円板(8)を中心軸方向に見た図であって、図中に黒丸で示した位置が1枚目の回転円板への錘部材の回転軸の取り付け位置、白丸で示した位置が2枚目の回転円板への錘部材の回転軸の取り付け位置、×印付の白丸で示した位置が3枚目の回転円板への錘部材の回転軸の取り付け位置を夫々示している。
【0040】
図8に示すように、1枚目の回転円板への錘部材の回転軸の取り付け位置、2枚目の回転円板への錘部材の回転軸の取り付け位置、3枚目の回転円板への錘部材の回転軸の取り付け位置は、互いに重ならない位置となっている。
より具体的には、各組の錘部材の回転軸(9)は夫々中心軸(7)を挟んで対向する位置に(即ち180°間隔で)取り付けられており、1枚目の回転円板の錘部材の回転軸、2枚目の回転円板の錘部材の回転軸、3枚目の回転円板の錘部材の回転軸は、夫々60°ずつ位置をずらして取り付けられている。
【0041】
このように、各組の錘部材の回転軸を互いに重ならない位置関係に取り付けることにより、各組の錘部材(10)が異なるタイミングで圧電体(6)を打撃するようになる。そのため、圧電体に対する打撃の反力として中心軸(7)に加わる衝撃を分散・緩和することができ、長期間に亘って安定した回転を維持することが可能となる。
【0042】
圧電体(6)の下端部には発生した起電力を取り出すための電極(61)が設けられており、この電極(61)はリード線(図示せず)により本体ケース(4)の内部に取り付けられた基板(16)と接続されている。
基板(16)の表面には、後述する電気回路が設けられており、圧電体(6)より流れてきた電流は、基板(16)上の電気回路を通って点灯ユニット(3)へと導かれる。
【0043】
図9は、本発明に係る道路発光標識の全体を示しており、点灯ユニット(3)を分解して示した図である。
点灯ユニット(3)は、表面に複数個の発光体(17)が配設された基板(18)と、この基板(18)の前方に配置された反射板(19)と、この反射板(19)の前方に配置された透明カバー(20)と、この透明カバー(20)の前方に配置された前面カバー(21)とから構成されており、これら4つの部材からなる点灯ユニット(3)は発電ユニット(2)と共にユニット本体(22)に固定されている。
【0044】
基板(18)に取り付けられる発光体(17)の種類は特に限定されず、電球等であってもよいが、消費電力が小さく長寿命であり、しかも高輝度が得られる発光ダイオード(LED)が好適に用いられる。
【0045】
反射板(19)は、自動車のライトを反射するために設けられているものであって、表面に蛍光剤を付着させた板や表面に反射シールを貼付した板等からなり、発光体(17)を露出させるための貫通穴(191)が設けられている。表面の蛍光剤や反射シールは、自動車のヘッドライトを反射して、発光体(17)が点灯していない時にもドライバーに注意を喚起させる機能を果たす。
【0046】
透明カバー(20)は、発光体(17)を保護するために設けられており、アクリル板やポリカーボネート板等から形成されている。
【0047】
前面カバー(21)は、基板(18)、反射板(19)、透明カバー(20)を後述する環状部(221)に固定するために設けられており、発光体(17)の光を通過させるための貫通穴(211)と、固定用の雌ねじ部(212)を備えている。
【0048】
ユニット本体(22)は、前方側に小さい環状部(221)、後方側に大きい環状部(222)を有しており、これら2つの環状部(221)(222)は下端部に形成された平面状部(223)により一体的に連結されている。
前方の小さい環状部(221)の内側には、基板(18)、反射板(19)、透明カバー(20)、前面カバー(21)がネジ(23)により固定される。また、後方の大きい環状部(222)の内側には回転羽根(1)が配置され、平面状部(223)の上面には発電ユニット(2)がネジ(26)により固定される。
【0049】
基板(18)に取り付けられた発光体(17)は、リード線(24)を介して発電ユニット(2)の基板(16)に接続されている。
【0050】
図10は、本発明に係る道路発光標識の電気回路図である。
本発明においては、圧電体(6)と発光体(17)を電気的に接続する電気回路に、該圧電体(6)にて発生した電力を蓄積するコンデンサ(25)が備えられている
錘部材(10)の個々の打撃により圧電体(6)から発生する電力は少ないが、圧電体(6)にて発生した電力を一旦コンデンサ(25)に蓄えた後に放電して、発光体(17)へと供給することにより、発光体(17)を高輝度で安定して点灯させることができる。
【0051】
図11乃至図13は、本発明に係る道路発光標識の別の好適な実施形態を示す図である。
この実施形態の道路発光標識が、上述した実施形態のものと異なる点は、点灯ユニット(3)の前面に拭き取り具(27)が取り付けられている点と、点灯ユニット(3)が他の部分から着脱可能とされている点である。
【0052】
先ず、第一の相違点について説明する。
拭き取り具(27)は、点灯ユニット(3)を構成する透明カバー(20)の表面に取り付けられており、回転中心となる中心軸(28)と、この中心軸(28)の側方に延出された複数枚の羽根(27)と、これら羽根(27)の裏面に夫々取り付けられた拭き取り体(28)とから構成されている。
【0053】
羽根(27)の枚数は、図示例では2枚であるが、3枚以上であってもよい。
拭き取り体(28)は、羽根(27)の回転に伴って、透明カバー(20)の表面の汚れを拭き取るためのものであり、多数本の毛からなるブラシであってもよいし、ゴム等の弾性素材であってもよい。
【0054】
このような拭き取り具(27)を設けることにより、風力を受けて羽根(27)が回転すると、羽根(27)の裏面に取り付けられた拭き取り体(28)により透明カバー(20)の表面に付着した汚れが拭き取られる。
そのため、透明カバー(20)に汚れが付着することによって、外部に届く発光体(17)の光や反射板(19)の表面にて反射する光が弱められることがなく、長期間に亘ってドライバーの注意を強く喚起することが可能となる。
【0055】
次に、第二の相違点について説明する。
ユニット本体(22)は、上述の実施形態と同様に、前方側に小さい環状部(221)、後方側に大きい環状部(222)を有しているが、この実施形態では、これら2つの環状部(221)(222)のうち、前方の環状部(221)はネジ(30)によりユニット本体(22)に対して着脱可能に固定されている。
【0056】
小さい環状部(221)の内側には、発光体(17)を備えた基板(18)、反射板(19)、透明カバー(20)、拭き取り具(27)からなる点灯ユニット(3)がネジ(23)により固定される。また、後方の大きい環状部(222)の内側には回転羽根(1)が配置され、平面状部(223)の上面には回転羽根(1)が取り付けられた発電ユニット(2)がネジ(26)により固定される。
【0057】
このように、点灯ユニット(3)が環状部(221)と共に、ユニット本体(22)に対して着脱可能とされていることにより、道路における取り付け場所のスペースに制約がある場合には、点灯ユニット(3)のみを下部に取り付けて、その他の部分(回転羽根、回転体、錘部材、圧電体を備えた他の部分)は上部手摺り等に取り付けることができ、省スペースでの設置が可能となる。
【0058】
以下、本発明に係る道路発光標識の作用について説明する。
本発明に係る道路発光標識は、トンネル内や道路脇などに設置され、自然風や車両の通行により生じる風の風量が一定以上(例えば3m/s以上)になると、羽根部材(1)が回転する。
羽根部材(1)が回転すると、錘回転ユニット(5)の中心軸(7)及び回転円板(8)が回転し、回転円板(8)の回転に伴って発生する遠心力によって錘部材(10)が一端部を中心に回動し、その下方にある圧電体(6)を断続的に打撃する。
これによって、圧電体(6)に起電力が発生し、発生した起電力により発光体(17)が点灯し、運転者に注意を喚起することができる。
【0059】
このように、本発明に係る道路発光標識では、回転羽根(1)の回転に伴って回動する錘部材(10)により圧電体(16)を打撃して起電力を発生させ、この起電力を利用して発光体(17)を点灯させるため、回転羽根の回転のために必要なトルクを小さくすることができる。そのため、回転羽根の直径を小さくして設置スペースを小さくすることができ、風速が小さい場所でも発電して発光させることが可能となる。また、メンテナンスの必要性が殆どないため、維持管理が非常に容易となる。
【0060】
更には、遠心力を利用して錘部材(10)を回動させる(外方に開かせる)構成であるため、円板部材(8)がある程度以上高速で回転しないと錘部材は回動しない(開かない)。そのため、錘部材(10)が圧電体(6)に無駄に衝突することがなく、錘部材の摩耗を防ぐことができ、メンテナンスの必要性を低減させることができる。
【産業上の利用可能性】
【0061】
本発明は、道路上やトンネル内で発光することにより、運転者に注意を喚起するための道路標識として利用される。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】本発明に係る道路発光標識の全体構成を示す外観図である。
【図2】本発明に係る道路発光標識の全体構成を示す断面図である。
【図3】回転羽根を発電ユニットに対して組み付ける様子を示す図である。
【図4】発電ユニットの分解図である。
【図5】錘回転ユニットの斜視図である。
【図6】錘回転ユニットの分解図である。
【図7】錘部材が遠心力によって回動して外方に開いている状態を示す図である。
【図8】3枚の回転円板に対して2つ(1組)ずつ錘部材を取り付けた場合における、各組の錘部材の回転軸の位置関係を模式的に示す図である。
【図9】本発明に係る道路発光標識において、点灯ユニットを分解して示した図である。
【図10】本発明に係る道路発光標識の電気回路図である。
【図11】本発明に係る道路発光標識の別の好適な実施形態の全体構成の外観図である。
【図12】本発明に係る道路発光標識の別の好適な実施形態の点灯ユニットを取り外した状態を示す図である。
【図13】本発明に係る道路発光標識の別の好適な実施形態の点灯ユニットを分解して示した図である。
【符号の説明】
【0063】
1 回転羽根
2 発電ユニット
3 点灯ユニット
4 本体ケース
5 錘回転ユニット
6 圧電体
7 回転体の中心軸
8 回転円板
9 錘部材の回転軸(回動中心となる軸)
10 錘部材
17 発光体
25 コンデンサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
風力を受けて回転する回転羽根と、
該回転羽根の回転軸と連結されて中心軸回りに回転する回転体と、
一端部が該回転体の中心軸の周囲に枢着されて、該回転体の回転に伴って発生する遠心力により前記一端部を中心に回動する錘部材と、
該錘部材の回動によりその他端部で打撃されて起電力を発生する圧電体と、
該圧電体にて発生した起電力により点灯する発光体とからなる
ことを特徴とする道路発光標識。
【請求項2】
前記錘部材が、前記回転体の中心軸の周囲に、等角度間隔で複数個取り付けられていることを特徴とする請求項1記載の道路発光標識。
【請求項3】
前記複数個の錘部材が、前記回転体の中心軸の軸方向に間隔をあけて複数組取り付けられているとともに、前記圧電体が、複数組の錘部材の夫々の組に対応する位置に配置されていることを特徴とする請求項2記載の道路発光標識。
【請求項4】
前記回転体は、前記回転羽根の回転軸の一端部に連結される中心軸と、該中心軸が挿通される貫通穴を中心に有し且つ互いに平行に配置された複数の回転円板を備えており、
前記錘部材は、夫々の回転円板の表面に対して1組ずつ回動可能に枢着されていることを特徴とする請求項3記載の道路発光標識。
【請求項5】
前記複数の回転円板に夫々1組ずつ枢着された錘部材の回動中心となる軸は、前記中心軸方向に見たときの位置が、他の組の錘部材の回動中心となる軸と重ならない位置に取り付けられていることを特徴とする請求項4記載の道路発光標識。
【請求項6】
前記圧電体は、一端部のみが固定されており、自由端とされた他端部近傍が前記錘部材により打撃されることを特徴とする請求項1乃至5いずれかに記載の道路発光標識。
【請求項7】
前記圧電体と発光体を電気的に接続する電気回路に、該圧電体にて発生した電力を蓄積するコンデンサが備えられていることを特徴とする請求項1乃至6いずれかに記載の道路発光標識。
【請求項8】
前記発光体が発光ダイオードであることを特徴とする請求項1乃至7いずれかに記載の道路発光標識。
【請求項9】
前記発光体を備えた点灯ユニットが、前記回転羽根、回転体、錘部材、圧電体を備えた他の部分に対して着脱可能に構成されていることを特徴とする請求項1乃至8いずれかに記載の道路発光標識。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2008−240470(P2008−240470A)
【公開日】平成20年10月9日(2008.10.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−85743(P2007−85743)
【出願日】平成19年3月28日(2007.3.28)
【出願人】(596053585)西日本高速道路エンジニアリング中国株式会社 (5)
【出願人】(397052941)旭産業株式会社 (1)
【Fターム(参考)】