説明

遠心式空気コンプレッサ

【課題】凍結Fによる回転翼の固着を的確に解消して安定した始動を図ることのできる遠心式空気コンプレッサを提供する。
【解決手段】温度センサ45により測定された加圧ボリュート41の環境温度が0℃を超えていれば直ちに通常運転を開始する。温度センサ45により測定された加圧ボリュート41の温度が0℃以下であれば凍結により回転翼42が加圧ボリュート41に固着している可能性があるため、アキシャル磁気軸受を通じて回転軸2のアキシャル方向に振動を付与する。この振動の振幅が所定値以上であれば、アイドリング回転数による運転を経て通常運転を開始する。一方、振幅が所定値以上でなければ、付与した振動によっても凍結による固着が解消されていないと判断し、ヒータ44を駆動して加圧ボリュート41を所定時間だけ加熱する。その後、再度、環境温度を確認し、この温度が0℃を超えていれば運転を開始する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁気軸受にて支承された回転軸に連結された状態で加圧ボリュートにより囲繞された回転翼を有する遠心式空気コンプレッサに関する。
【背景技術】
【0002】
遠心式空気コンプレッサは周知のように、回転翼の回転により吸入空気を圧縮する構造を採るため、回転翼に連結されてこれを回転駆動する回転軸自体が高速回転に耐えうる構造を持って支承される必要がある。そこで、こうした遠心式空気コンプレッサでは、この回転軸を支承する軸受装置として、同回転軸を非接触支承することのできる磁気軸受を採用していることが多い。
【0003】
一方、このようなコンプレッサは、例えば車載用のコンプレッサ等として屋外環境で使用されることも少なくない。そしてこのような場合、その環境温度は「−40℃〜80℃」ときわめて広い温度範囲にわたり、特に「0℃以下」となる環境温度下では、回転翼と加圧ボリュート内壁との狭い隙間で外気の水分などによる凍結が生じ、この凍結によって回転翼が加圧ボリュートに固着されてしまうこともある。なお、こうした実情は、同コンプレッサが冷却器や冷蔵・冷凍器用のコンプレッサとして使用される場合であっても同様である。
【0004】
そこで従来は、例えば特許文献1にみられるように、堆積物によりロータが他部材に固着した場合に、上記磁気軸受を通じてロータを強制的に振動させる事によってこうした固着を解消するようにしたポンプなども提案されている。
【特許文献1】特開平4−287896号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
たとえ反応性の高いガスとはいえ、半導体製造に用いられるエッチング装置の排気系から排出されるガスに含まれる物質の堆積物であれば、上記特許文献1に記載のポンプのように磁気軸受を通じたロータ強制振動によってその固着が解消される可能性も確かに高い。しかし、堆積というよりはむしろ凝固に相当する上記凍結となると、こうした磁気軸受を通じた加振ではその固着が解消される可能性は低い。そして、こうした固着が確実に解消されなかった場合には、上記遠心式空気コンプレッサとしての始動性も大きく阻害されるようになる。
【0006】
本発明は、かかる実情に鑑みてなされたもので、凍結による回転翼の固着を的確に解消して安定した始動を図ることのできる遠心式空気コンプレッサを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明にかかる遠心式空気コンプレッサは、磁気軸受にて支承された回転軸に連結されて加圧ボリュートにより囲繞された回転翼を有し、吸入口から前記加圧ボリュートに吸入される空気を前記回転軸の回転に伴う回転翼の回転を通じて圧縮する遠心式空気コンプレッサとして、前記加圧ボリュートおよび前記回転翼の少なくとも一方を加熱する加熱手段と、当該コンプレッサの運転始動時に前記磁気軸受を構成する電磁石への通電を通じて前記回転軸に振動を付与するとともに、該回転軸の振動が所定の振幅に満たないことを条件に前記加熱手段を駆動し、同回転軸の振動が所定の振幅値以上となることに基づいて当該コンプレッサの運転を開始する制御装置とを備える構成とする。
【0008】
遠心式空気コンプレッサとしてのこのような構成によれば、前述した凍結により回転翼が加圧ボリュートに固着するようなことがあったとしても、上記制御装置を通じて、まずはその始動時に、磁気軸受による回転軸への加振が行われる。磁気軸受としての構造上、こうした回転軸への加振、すなわち振動の付与は、同磁気軸受を構成する一対の電磁石に対する所定周期および所定荷重条件による通電制御を通じて容易に実現することができる。そして、こうした加振によって上記固着が解消される程度の、すなわち回転軸の振動が所定の振幅値以上となる程度の凍結であった場合には、その判断の下に直ちに当該コンプレッサの運転が開始されるようになる。一方、上記磁気軸受による回転軸への加振が行われても上記固着が解消されない、すなわち回転軸の振動が所定の振幅に満たない強固な凍結であった場合には、同制御装置を通じて、上記加熱手段が駆動される。強固とはいえ、それが凍結である限り、こうして加熱手段が駆動されることで確実にその解凍がはじまるようになり、加熱手段の駆動態様にもよるものの、その後の比較的短い時間にて上記固着が解消され、ひいては上記加振による回転軸の振動が所定の振幅値以上となる条件が満たされるようになる。そして、この加振による回転軸の振動が所定の振幅値以上となれば、その判断の下に直ちに当該コンプレッサの運転が開始されるようになる。なお、その始動時、上記固着が生じていなければ、上記加振に伴い、即座に回転軸の振動が所定の振幅値以上となる条件が満たされるようになることから、当該コンプレッサの運転も即座に開始されるようになる。同構成によればこのように、たとえ凍結により回転翼が加圧ボリュートに固着するようなことがあったとしても、こうした固着を的確に解消して、当該コンプレッサとしての安定した始動を図ることができるようになる。
【0009】
また、こうした構成において、前記加熱手段としては、加圧ボリュートおよび回転翼の少なくとも一方を直接加熱するもの、あるいは温風等によって間接加熱するもの等々、その選択は任意であるが、同加熱手段として特に、前記加圧ボリュートと前記回転翼とが近接する部分に対応して当該部分を直接加熱すべく前記加圧ボリュートに装着されたヒータを採用することとすれば、より効率的な加熱が可能となり、凍結時、上記加振による回転軸の振動が所定の振幅値以上となる条件も満たされやすくなる。
【0010】
なお、これらの構成において、前記振動を付与した回転軸の振幅の検出は、磁気軸受において前記回転軸の変位をモニタする変位センサを通じて行うことができ、上記加振に伴う回転軸の振幅値管理も容易である。
【0011】
また、こうした構成においては、磁気軸受による回転軸への加振方向、すなわち振動の付与方向も、回転軸に直交する方向であるラジアル方向であれ、あるいは回転軸の軸方向であるアキシャル方向であれ任意であるが、特に前記磁気軸受が回転軸をアキシャル方向において非接触支承するアキシャル磁気軸受であるとし、このアキシャル磁気軸受を通じて回転軸の軸方向に上記振動を付与することとすれば、上記回転翼の固着解消効果がより高められるとともに、加振時における上記変位センサを通じた回転軸の振幅値管理もより容易となる。そしてこの場合、ラジアル方向において回転軸を支承する軸受構造は任意であり、例えばラジアルフォイル軸受等、設置スペース的により有利な軸受機構を採用することも可能となる。なお、磁気軸受としてアキシャル磁気軸受とラジアル磁気軸受とが併用される場合には、上記回転軸への加振に際し、これら磁気軸受を通じたアキシャル方向への加振とラジアル方向への加振とを併用することも勿論可能である。
【0012】
一方、上記構成において、前記加圧ボリュートもしくはその近傍の温度を検出する温度センサを更に備え、該温度センサを通じて検出される温度が0℃以下であることを条件に、前記制御装置による前記回転軸への振動の付与、および該回転軸の振動が所定の振幅に満たないことを条件とする前記加熱手段の駆動が実行される構成とすれば、上記回転翼の未固着時(未凍結時)、あるいは固着解消時(解凍時)における当該コンプレッサの始動性について、そのさらなる改善が図られるようになる。すなわち、上記凍結は通常、0℃以下の環境温度において生じることから、制御装置による回転軸への振動の付与、および該回転軸の振動が所定の振幅に満たないことを条件とする加熱手段の駆動も、上記温度センサを通じて検出される温度が0℃以下であることを条件に実行されることで必要十分であり、同温度センサを通じて検出される温度が0℃を超えるときには制御装置によるそれら回転軸への振動の付与や加熱手段の駆動といったいわば前処理が割愛されるようにすることで、当該コンプレッサとしてのより円滑な始動が図られるようになる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、たとえ凍結により回転翼が加圧ボリュートに固着するようなことがあったとしても、こうした固着を的確に解消して、遠心式空気コンプレッサとしての安定した始動を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明にかかる遠心式空気コンプレッサの一実施形態について図1にしたがって説明する。
【0015】
図1に示すように、本実施形態の遠心式空気コンプレッサは、大きくは、ハウジング6に収容されたモータ1、モータ1によって回転される回転軸2、回転軸2を支承する軸受装置3、コンプレッサ部4、そしてマイクロコンピュータもしくはDSP(ディジタル信号プロセッサ)や駆動回路からなって同コンプレッサの運転を統括制御する制御装置5、を備える構成となっている。以下、これら各部の構成、並びに機能について詳述する。
【0016】
まず、上記モータ1は、回転軸2に固定されているロータ11とこのロータ11を取り巻くようにハウジング6に設置されたステータ12と有している。そして、通常運転時には、制御装置5を通じてステータ12に通電されることにより電磁力が発生し、この電磁力によりロータ11が回転軸2と共に回転する。
【0017】
また、上記軸受装置3は、上記回転軸2をラジアル方向において支承するラジアルフォイル軸受31と、同回転軸2をアキシャル方向(軸方向)において支承するアキシャル磁気軸受とを有する構造となっている。
【0018】
ここで、ラジアルフォイル軸受31は周知のように、回転軸2が高速回転することにより形成される気体膜を介して同回転軸2を浮上させ、当該コンプレッサの通常運転時には非接触状態でこの回転軸2をラジアル方向に支承する軸受である。また、アキシャル磁気軸受は、これも周知のように、回転軸2に各々離間して設置された磁性体からなる一対のアキシャルディスク32a,32bと、これら一対のアキシャルディスク32a,32bの各内側に対向して設けられた一対の電磁石33a,33bと、アキシャル変位センサ34およびセンサターゲット35とを基本的に備える軸受である。そして、上記一対のアキシャルディスク32a,32bをその各内側に設けられた一対の電磁石33a,33bがそれぞれ反対方向に引き合うことで上記回転軸2をアキシャル方向に非接触支承する。また、このとき、アキシャル変位センサ34がセンサターゲット35の位置を常に監視しており、回転軸2のアキシャル方向の位置に変化がおきれば、これを直ちに設定位置に戻すように電磁石33a,33bの磁力を変化させるフィードバック制御が制御装置5を通じて行なわれる。
【0019】
一方、上記コンプレッサ部4は、内部で空気を加圧する加圧ボリュート41と、上記軸受装置3にて支承された回転軸2に連結された状態でこの加圧ボリュート41により囲繞されている回転翼42とを基本的に備える構成となっている。ここで、加圧ボリュート41には、吸入口43をはじめ、導入路46や排出路47、そして図示しない排気口等が設けられている。このようなコンプレッサ部4では、上記回転軸2の回転に伴って回転翼42が回転すると、同回転翼42の回転により図中の矢印Aの方向に吸入口43から外気が導入され、この導入された外気が導入路46および排出路47を経て加圧されつつ、排気口から加圧空気として排出される。なおこのとき、外気の加圧の反力により、回転翼42と共々上記回転軸2にはアキシャル方向(矢印A方向)への軸力が生じるが、この回転軸2は上述したアキシャル磁気軸を通じて同方向への変位が補償されていることから、こうした軸力による影響も自ずと解消されるようになる。
【0020】
ところで前述のように、この遠心式空気コンプレッサが屋外環境、特に「0℃以下」となる環境温度下で使用される場合、回転翼42と加圧ボリュート41内壁との狭い隙間で外気の水分などによる凍結Fが生じ、この凍結Fによって回転翼42が加圧ボリュート41に固着されることがある。そして、回転翼42がこのように固着されると、当該コンプレッサとしての始動性が阻害されるようになることも前述した。
【0021】
そこで本実施形態においては、コンプレッサ部4を構成する上記加圧ボリュート41の外側にヒータ44および温度センサ45をそれぞれ設けるとともに、上記制御装置5を通じて、図2に示すような制御を併せて実行するようにしている。
【0022】
すなわちここでは、始動時に加圧ボリュート41が凍結Fの可能性のある環境温度にあるかどうか、具体的には0℃以下であるかを上記温度センサ45からの出力を通じてまずは確認する(ステップS1)。その結果、0℃以下でなければ、凍結Fがないと判断し、上記ヒータ44がON(オン)すなわち駆動中であればこれをOFF(オフ)にした後(ステップS5)、通常の運転へと移行する。
【0023】
一方、上記環境温度が0℃以下であれば、上記アキシャル磁気軸受を通じて図1に矢印Bにて示す態様で回転軸2に振動を付与する(ステップS2)。なお、こうした振動の付与は、同磁気軸受を構成する上記一対の電磁石33a,33bに対する所定周期および所定荷重条件による通電制御を通じて容易に実現することができる。そして、上記アキシャル変位センサ34からの出力をもとに回転軸2の振幅を測定し(ステップS3)、回転軸2の振幅が所定値以上であれば凍結Fが初めからなかったか、あるいは回転軸2の振動によって凍結Fによる固着が解消されたと判断し、当該コンプレッサのアイドリング運転を開始する(ステップS4)。そしてこの場合も、上記ヒータ44が駆動中であればそれをオフとした後(ステップS5)、通常の運転を開始する。
【0024】
また一方、上記振幅の測定において、回転軸2の振幅が所定値以上でなければ、凍結Fによる固着が解消されていないと判断し、ヒータ44の駆動、すなわちヒータ44による加熱を開始する(ステップS6)。こうしてヒータ44による加熱を所定時間だけ続けた後は(ステップS7)、再度、上記温度センサ45の出力をもとに環境温度を測定し(ステップS1)、上述した処理を繰り返す。
【0025】
遠心式空気コンプレッサの始動に際し、このような前処理が行なわれることにより、たとえ凍結Fにより回転翼42が加圧ボリュート41に固着するようなことがあったとしても、こうした固着を的確に解消して、当該コンプレッサとしての安定した始動を図ることができるようになる。なお、上記加圧ボリュート41の内壁面と回転翼42とが最も近接する部分の距離は通常、0.1mm程度である。このため、上記回転軸2に対する振動の付与もそれ以下の振幅で行なわれる。また、上記アキシャル磁気軸受は、空気圧縮時の回転軸2のアキシャル方向にかかる反力と同等の力を発生できるように設計されているため、こうした振動のために加える力としても通常、20Kg程度の力を発生することが可能である。また上述のように、このときの振幅はアキシャル変位センサ34によって測定可能であるため、振幅測定用のセンサを特段に設ける必要もない。そして、この測定される振幅が所定値以上であれば、初めから凍結Fがないか、付与した振動によって凍結Fが解消されていると判断される。ただし、固着に至らない程度の軽微な凍結が生じている可能性もあるため、アイドリング回転数による運転を経て通常運転にいたる。
【0026】
以上説明したように、本実施形態にかかる遠心式空気コンプレッサによれば、以下のような効果を得ることができる。
【0027】
(1)凍結Fにより回転翼42が加圧ボリュート41に固着するようなことがあったとしても、上述のような回転軸2への加振、更にはヒータ44による加熱によって、凍結による固着が解消されるため、遠心式コンプレッサとしての安定した始動が図られるようになる。
【0028】
(2)最初に温度センサ45を通じて環境温度を確認した上で図2に例示した前処理を行なうようにしたことで、凍結のおそれのない環境温度では、当該コンプレッサとしての無駄のない、より円滑な始動が図られるようにもなる。
【0029】
(3)これらの実現に際し、通常のアキシャル磁気軸受を有する遠心式空気コンプレッサに温度センサ45とヒータ44とを追加するとともに、アキシャル磁気軸受の制御やモータ制御を行なう制御装置5に上記前処理(図2)を実行する機能を付加するようにした。これにより、その実現も容易である。
【0030】
(4)軸受装置3として、回転軸2のラジアル方向の支承に、ラジアルフォイル軸受31を採用したことにより、設置スペースやコスト面でも有利である。
【0031】
(5)アキシャル磁気軸受を通じて回転軸2の軸方向に上記振動を付与することとしたため、上記回転翼42の固着解消効果が高められるとともに、加振時における上記アキシャル変位センサ34を通じた回転軸2の振幅値管理もより容易となる。
【0032】
なお、上記実施形態は以下のように変更してもよい。
【0033】
・上記ラジアルフォイル軸受31に代えて、ラジアル磁気軸受を採用するようにしてもよい。この場合、上記アキシャル磁気軸受との併用により、更に効率のよい凍結解除効果が期待できるようにもなる。すなわち、回転軸2に対するアキシャル、ラジアル両方向への同時加振、あるいは交互加振など、加振態様のバリエーションが増え、回転軸2への加振による凍結解除が更に促進される可能性が高い。
【0034】
・上記実施形態においては加熱手段としてヒータ44を使用したが、加圧ボリュート41および回転翼42の少なくとも一方を加熱することのできるものであれば、直接加熱するものあれ、あるいは間接加熱であれ、任意の加熱手段を採用することができる。したがって他に例えば、吸入口43側から加圧ボリュート41内部に温風を吹きつける手段なども適宜採用可能である。もっとも、加圧ボリュート41と回転翼42とが近接する部分を直接加熱することができるように加圧ボリュート41に装着された上記ヒータ44によれば、より効率的な加熱が可能となり、同部分の解凍も容易である。
【0035】
・上記温度センサ45は必須ではなく、これを省略することにより、イニシャルコストを低減することができるようにもなる。要は、回転軸2の振動が所定の振幅に満たないことを条件にヒータ44等の加熱手段を駆動し、同回転軸2の振動が所定の振幅値以上となることに基づいて当該コンプレッサの運転を開始する構成であればよい。この場合であれ、同コンプレッサの始動時、上記固着が生じていなければ、上記加振に伴い、即座に回転軸2の振動が所定の振幅値以上となる条件が満たされるようになることから、当該コンプレッサの運転も即座に開始されるようになる。なお、上記回転軸2への加振時における振幅値の測定、管理は、上述のように磁気軸受を構成する変位センサを兼用することが、装置構成上、またコスト的にもより有効であるが、例えば磁気センサ等、専用の振幅センサを用いるようにしても勿論よい。
【産業上の利用可能性】
【0036】
本発明にかかる遠心式空気コンプレッサは、回転翼42が加圧ボリュート41に凍結によって固着する可能性がある環境下で使用されるコンプレッサとして広く用いることができる。特に、車載用のコンプレッサ等、外部環境で使用されるコンプレッサや、冷却器や冷蔵・冷凍器用のコンプレッサとして有効に用いられる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明にかかる遠心式空気コンプレッサの一実施形態についてその断面構造を示す断面図およびブロック図。
【図2】同実施形態にかかるコンプレッサの制御装置を通じて実行される始動時の前処理についてその処理手順を示すフローチャート。
【符号の説明】
【0038】
1・・・モータ、2・・・回転軸、3・・・軸受装置、4・・・コンプレッサ部、5・・・制御装置、6・・・ハウジング、11・・・ロータ、12・・・ステータ、31・・・ラジアルフォイル軸受、32a,32b・・・アキシャルディスク、33a,33b・・・電磁石、34・・・アキシャル変位センサ、35・・・センサターゲット、41・・・加圧ボリュート、42・・・回転翼、43・・・吸入口、44・・・ヒータ、45・・・温度センサ、46・・・導入路、47・・・排出路。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁気軸受にて支承された回転軸に連結されて加圧ボリュートにより囲繞された回転翼を有し、吸入口から前記加圧ボリュートに吸入される空気を前記回転軸の回転に伴う回転翼の回転を通じて圧縮する遠心式空気コンプレッサにおいて、
前記加圧ボリュートおよび前記回転翼の少なくとも一方を加熱する加熱手段と、当該コンプレッサの運転始動時に前記磁気軸受を構成する電磁石への通電を通じて前記回転軸に振動を付与するとともに、該回転軸の振動が所定の振幅に満たないことを条件に前記加熱手段を駆動し、同回転軸の振動が所定の振幅値以上となることに基づいて当該コンプレッサの運転を開始する制御装置とを備える
ことを特徴とする遠心式空気コンプレッサ。
【請求項2】
前記加熱手段が前記加圧ボリュートと前記回転翼とが近接する部分に対応して当該部分を直接加熱すべく前記加圧ボリュートに装着されたヒータである
請求項1に記載の遠心式空気コンプレッサ。
【請求項3】
前記振動を付与した回転軸の振幅の検出が、前記磁気軸受において前記回転軸の変位をモニタする変位センサを通じて行われる
請求項1または2に記載の遠心式空気コンプレッサ。
【請求項4】
前記磁気軸受が前記回転軸をその軸方向であるアキシャル方向において非接触支承するアキシャル磁気軸受からなり、前記回転軸に対する振動は、このアキシャル磁気軸受を通じて回転軸の軸方向に付与される
請求項1〜3のいずれか一項に記載の遠心式空気コンプレッサ。
【請求項5】
前記加圧ボリュートもしくはその近傍の温度を検出する温度センサを更に備え、該温度センサを通じて検出される温度が0℃以下であることを条件に、前記制御装置による前記回転軸への振動の付与、および該回転軸の振動が所定の振幅に満たないことを条件とする前記加熱手段の駆動が実行される
請求項1〜4のいずれか一項に記載の遠心式空気コンプレッサ。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2008−208745(P2008−208745A)
【公開日】平成20年9月11日(2008.9.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−44528(P2007−44528)
【出願日】平成19年2月23日(2007.2.23)
【出願人】(000001247)株式会社ジェイテクト (7,053)
【Fターム(参考)】