説明

遠隔検針システム

【課題】 通電エリアと停電エリアの配置が変化した場合でも、検針メータを用いたマルチホップ通信が可能になる遠隔検針システムを提供する。
【解決手段】 複数の検針メータ2のそれぞれは、商用電力を用いて動作し、商用電力が供給される通電エリアまたは商用電力が供給されない停電エリアに時間帯毎に設定される複数のエリアBのそれぞれに存在する各需要家Cにおける商用電力の検針データをマルチホップ通信によって送信し、主端末1を介して管理サーバCSから取得した電力供給情報に基づいて、前記時間帯のそれぞれにおいて自己が主端末aとの間で構築する通信ルートを導出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マルチホップ通信を用いた電力の遠隔検針システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、通信ネットワーク上に存在する通信端末間で通信する際に、情報を伝送しようとする通信端末間で通信を直接行うことができない場合に、他の通信端末を通信の中継に用いることによって通信を可能にするマルチホップ通信が知られている。
【0003】
そして、このようなマルチホップ通信は、商用電力の遠隔検針システムにおいて、各需要家に設けた検針メータによる検針データの送信に用いられている(例えば、特許文献1参照)。通信機能を有する各検針メータは互いに通信可能であり、検針データを収集する電力会社の管理サーバとの間で通信を直接行うことができない場合、他の検針メータを通信の中継に用いた通信ルートを、管理サーバとの間で構築する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−4263号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
商用電力の供給元である電力会社は、電力需要と電力供給とのバランスをとるために、商用電力の配電領域内を複数のエリアに分割し、エリア毎に異なる電力供給情報に基づいて、電力供給を行う場合がある。電力供給情報は、エリア毎の通電時間帯および停電時間帯を規定し、各エリアは、時間帯によって通電エリアまたは停電エリアに設定されており、配電領域内は、同一時間帯であっても通電エリアと停電エリアとが混在する。
【0006】
しかしながら、検針メータは商用電力によって動作するため、停電エリアに存在する検針メータは、その通信機能が停止する。したがって、検針メータによるマルチホップ通信を用いた遠隔検針システムでは、時間帯が切り替わって、通電エリアと停電エリアの配置が変化した場合、既に構築されているマルチホップの通信ルートが寸断される虞がある。
【0007】
本発明は、上記事由に鑑みてなされたものであり、その目的は、通電エリアと停電エリアの配置が変化した場合でも、検針メータを用いたマルチホップ通信が可能になる遠隔検針システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の遠隔検針システムは、商用電力を用いて動作し、商用電力が供給される通電エリアまたは商用電力が供給されない停電エリアに時間帯毎に設定される複数のエリアのそれぞれに存在する各需要家が使用する商用電力の検針データをマルチホップ通信によって送信する複数の検針メータと、前記複数の検針メータのそれぞれがマルチホップ通信によって送信した前記検針データを受信する主端末と、前記主端末と通信可能に構成され、前記エリアの前記時間帯毎の電力供給状態を示す電力供給情報を生成する管理サーバと、前記電力供給情報に基づいて、前記時間帯のそれぞれにおいて前記検針メータが前記主端末との間で構築する通信ルートを導出する通信ルート導出手段とを備え、前記検針メータは、1台の主端末との間で通信ルートを構築し、自己が属する前記エリアが前記通電エリアに設定される時間帯において、前記導出した通信ルートを用いて前記主端末との間でマルチホップ通信を行うことを特徴とする。
【0009】
この発明において、前記通信ルート導出手段は、前記検針メータが、前記主端末を介して前記管理サーバから取得した前記電力供給情報に基づいて、前記時間帯のそれぞれにおいて自己が前記主端末との間で構築する通信ルートを導出することで構成されることが好ましい。
【0010】
この発明において、前記通信ルート導出手段は、前記主端末が、前記管理サーバから取得した前記電力供給情報に基づいて、前記時間帯のそれぞれにおいて前記検針メータが前記主端末との間で構築する通信ルートを導出することで構成されることが好ましい。
【発明の効果】
【0011】
以上説明したように、本発明では、通電エリアと停電エリアの配置が変化した場合でも、検針メータを用いたマルチホップ通信が可能になるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】実施形態のシステムの概略を示す構成図である。
【図2】同上の切替前の通信ルートの概略を示す構成図である。
【図3】同上の切替後の通信ルートの概略を示す構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
【0014】
(実施形態)
図1は、本実施形態の遠隔検針システムの概略構成を示し、電力会社の配電領域A内を複数のエリアB(B1〜B3)に分割し、エリアB1〜B3のそれぞれに存在する各需要家Cに、子端末となる検針メータ2を設けている。配電領域A内には、所定範囲毎(例えば、半径500m毎)に親端末となる主端末1が設置される。
【0015】
エリアB1内の検針メータ2は、検針メータ21の符号を用い、検針メータ21を個別に識別する場合は、検針メータ21a,21b,21c,...の符号を用いる。エリアB2内の検針メータ2は、検針メータ22の符号を用い、検針メータ22を個別に識別する場合は、検針メータ22a,22b,22c,...の符号を用いる。エリアB3内の検針メータ2は、検針メータ23の符号を用い、......、検針メータ23を個別に識別する場合は、検針メータ23a,23b,23c,...の符号を用いる。
【0016】
また、主端末1を個別に識別する場合は、主端末11、12、13、...の符号を用いる。
【0017】
そして、検針メータ2は、各需要家Cにおいて使用した商用電力を検針し、その検針データを、1台の主端末1へ無線送信する機能を有する。主端末1は、検針データを複数の検針メータ2から無線で取得し、取得した検針データを、上位の管理サーバCSへ光ファイバ回線等を用いて送信する機能を有する。
【0018】
図2は、本実施形態の遠隔検針システムが構成する無線ネットワークの概略図である。
【0019】
この無線ネットワークにおいて、主端末1および検針メータ2は、マルチホップ通信により無線信号を互いに送受している。すなわち、本無線ネットワークでは、主端末1と各検針メータ2との間で直接または間接に通信が行われ、主端末1と直接通信できない検針メータ2は、通信可能な距離にある他の検針メータ2が通信パケットを順次中継することで、主端末1との間で通信を行っている。
【0020】
検針メータ2は、自端末が通信を行う主端末1との間で構築された通信ルートに関する情報(通信ルート情報)を記憶しており、この通信ルート情報を付加した検針データをブロードキャスト送信する。通信ルート情報は、自端末から主端末1までの通信ルートにおいて経由する検針メータ2の端末IDが順に並べられることによって表される。この検針データを受信した他の検針メータ2は、受信した検針データに付加された通信ルート情報を参照し、通信ルート内に自端末が含まれているか否かを判定する。通信ルート内に自端末が含まれている場合、自端末は、受信した検針データを中継する中継端末であると判断し、受信した検針データをブロードキャスト送信する。このようにして、検針データは、通信ルートを構成する検針メータ2によって順次中継され、最終の送信先である主端末1へ到達する。また、主端末1との間で直接通信が可能な検針メータ2は、他の検針メータ2が中継することなく、送信した検針データは主端末1に直接到達する。
【0021】
まず、図2に示す3つの通信ルートが既に構築されている。1つ目の通信ルートは、「主端末11−検針メータ21a−検針メータ22a−検針メータ23a−検針メータ21b」である。2つ目の通信ルートは、「主端末12−検針メータ21c−検針メータ23b−検針メータ22b−検針メータ23c」である。3つ目の通信ルートは、「主端末13−検針メータ22c−検針メータ21d−検針メータ23d−検針メータ23e」である。
【0022】
ここで、電力の供給元である電力会社は、電力需要と電力供給とのバランスをとるため、電力供給情報に基づいて電力供給を行う場合がある。電力供給情報は、例えば、1日を「0時〜8時」、「8時〜16時」、「16時〜24時」の各時間帯に分け、各時間帯を、通電時間帯または停電時間帯に設定する。通電時間帯とは、商用電力を需要家Cへ供給する時間帯であり、停電時間帯とは、商用電力を需要家Cへ供給しない時間帯である。この電力供給情報は、エリアB1〜B3毎に異なる内容に設定されるので、配電領域A内は、同一時間帯であっても、商用電力が供給される通電エリアと、商用電力の供給が停止している停電エリアとが混在する。
【0023】
しかしながら、検針メータ2は商用電力によって動作しており、停電エリアに存在する検針メータ2は、その通信機能が停止する。したがって、マルチホップ通信を用いた遠隔検針システムでは、既に構築されているマルチホップの通信ルートが寸断される虞がある。
【0024】
そこで、本システムでは、以下のリルート処理を行う。
【0025】
まず、管理サーバCSは、エリアB1〜B3の各電力供給情報を主端末1のそれぞれへ送信する。主端末1は、自端末と通信ルートを構築している配下の検針メータ2に対して、エリアB1〜B3の各電力供給情報を送信し、検針メータ2は、エリアB1〜B3の各電力供給情報を取得する。
【0026】
検針メータ2では、自端末から主端末1までの通信ルートにおいて経由する検針メータ2(中継端末)の端末IDに、この中継端末である検針メータ2が属するエリアBの情報が対応付けられている。
【0027】
そして、次の時間帯において通電エリアに設定されている検針メータ2は、現在の時間帯において主端末1との間で構築している通信ルートに、次の時間帯において停電エリアに設定されたエリアに属する検針メータ2が中継端末として含まれているか否かを判定する。次の時間帯において停電エリアに設定されたエリアBに属する検針メータ2が中継端末として含まれている場合、検針メータ2は、次の時間帯において通電エリアに設定されているエリアBに属する検針メータ2のみを中継端末に用いて、いずれか1台の主端末1との間に新たな通信ルートを導出する(リルート)。
【0028】
例えば、図2に示す現在の時間帯における無線ネットワークにおいて、次の時間帯には、エリアB1,B3が通電エリア、エリアB2が停電エリアに設定されており、エリアB2に属する検針メータ22は、次の時間帯において通信機能が停止する。したがって、現在の時間帯における無線ネットワークでは、既に構築されているマルチホップの通信ルートが寸断されてしまう。
【0029】
そこで、図3に示すように、エリアB2に属する検針メータ22(22a〜22c)を除き、エリアB1,B3に属する検針メータ21,23のみを用いて、次の時間帯の通信ルートを導出する。図3では、3つの通信ルートが導出されている。1つ目の通信ルートは、「主端末11−検針メータ21a」である。2つ目の通信ルートは、「主端末12−検針メータ21c−検針メータ23b−検針メータ23a−検針メータ21b−検針メータ23c」である、3つ目の通信ルートは、「主端末12−検針メータ21c−検針メータ21d−検針メータ23d−検針メータ23e」である。
【0030】
そして、現在の時間帯から次の時間帯に移行し、通電エリアと停電エリアの配置が変化する際に、検針メータ2は、上述のように予め導出していた次の時間帯の通信ルートに切り替える。すなわち、図2の無線ネットワークから、図3の無線ネットワークに切り替わる。
【0031】
したがって、通電エリアと停電エリアの配置が変化した場合でも、検針メータ2を用いたマルチホップ通信が可能になる。さらに、次の時間帯の通信ルートを、電力供給情報に基づいて予め導出しているので、変化後の通電エリアと停電エリアの配置に基づく通信ルートを迅速に構築でき、通信不可状態の発生を抑制できる。
【0032】
そして、子端末2は、受信した電力供給情報に含まれる各時間帯について、上述のリルート処理を行い、時間帯毎の通信ルートを導出する。このリルート処理は、子端末2が電力供給情報を取得した際に、全ての通電時間帯における各通信ルートを一括して導出してもよく、または、時間帯が切り替わる毎に、次の通電時間帯における通信ルートのみを順次導出してもよい。
【0033】
また、主端末1が、管理サーバCSから取得した電力供給情報に基づいて、配下の検針メータ2の次の時間帯における通信ルートを導出し、配下の検針メータ2に対して、次の時間帯における通信ルートの情報を送信してもよい。この場合、検針メータ2は、自端末が通信ルートを構築している主端末1から、次の時間帯における通信ルートの情報を取得し、この情報に基づいて、通信ルートを切り替える。
【0034】
また、停電エリアに属する検針メータ2は、停電エリアに移行する前に、次の通電エリア時に構築する通信ルートを予め導出しておき、不揮発性メモリに格納しておく。そして、停電エリアに属する検針メータ2は、自端末の属するエリアが停電エリアから通電エリアに移行した後に、予め導出していた通信ルートを不揮発性メモリから読み出し、新たな通信ルートを構築する。
【0035】
なお、主端末1−検針メータ2間の通信ルートを構築する方法については、既知の技術であるので詳細な説明は省略する。
【符号の説明】
【0036】
1(11、12、...) 主端末
2(21、22、...) 検針メータ
CV 管理サーバ
B(B1、B2、...) エリア
C 需要家

【特許請求の範囲】
【請求項1】
商用電力を用いて動作し、商用電力が供給される通電エリアまたは商用電力が供給されない停電エリアに時間帯毎に設定される複数のエリアのそれぞれに存在する各需要家が使用する商用電力の検針データをマルチホップ通信によって送信する複数の検針メータと、
前記複数の検針メータのそれぞれがマルチホップ通信によって送信した前記検針データを受信する主端末と、
前記主端末と通信可能に構成され、前記エリアの前記時間帯毎の電力供給状態を示す電力供給情報を生成する管理サーバと、
前記電力供給情報に基づいて、前記時間帯のそれぞれにおいて前記検針メータが前記主端末との間で構築する通信ルートを導出する通信ルート導出手段とを備え、
前記検針メータは、1台の主端末との間で通信ルートを構築し、自己が属する前記エリアが前記通電エリアに設定される時間帯において、前記導出した通信ルートを用いて前記主端末との間でマルチホップ通信を行う
ことを特徴とする遠隔検針システム。
【請求項2】
前記通信ルート導出手段は、前記検針メータが、前記主端末を介して前記管理サーバから取得した前記電力供給情報に基づいて、前記時間帯のそれぞれにおいて自己が前記主端末との間で構築する通信ルートを導出することで構成されることを特徴とする請求項1記載の遠隔検針システム。
【請求項3】
前記通信ルート導出手段は、前記主端末が、前記管理サーバから取得した前記電力供給情報に基づいて、前記時間帯のそれぞれにおいて前記検針メータが前記主端末との間で構築する通信ルートを導出することで構成されることを特徴とする請求項1記載の遠隔検針システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−16950(P2013−16950A)
【公開日】平成25年1月24日(2013.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−147031(P2011−147031)
【出願日】平成23年7月1日(2011.7.1)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】