説明

遠隔監視システム及び遠隔監視システムの故障検出方法

【課題】監視装置自体に故障が発生した場合、これを中央監視センターが検知可能とする技術を提供する。
【解決手段】現場監視装置2の異常検出部が正常に働いて、運転データ取り込みがないことを検出すると、中央監視センター3に対して異常信号が送信される(ステップS205)。通信系統等に異常があるために強制通信遮断が行われなかったときは運転データが取り込まれ、又は、強制通信遮断は行われても異常検出部、異常信号送出部等に故障があるときは、異常信号が送信されることなく終了する。中央監視センター3において、通信遮断指令信号送信後、所定の時間(Tc)以内に異常信号を受信できたか否かが判定される(ステップS206)。受信確認できたときは、現場監視装置2の通信系統は正常であると判定する(ステップS207)。受信確認できないときは、現場監視装置2の通信系統に故障があると判定する(ステップS208)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は遠隔監視システム及び遠隔監視システムの故障検出方法に関し、特に、遠隔地に設置される現場監視装置自体の故障検出を可能とする遠隔監視システム及び遠隔監視システムの故障検出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、遠隔地に設置される空調機、発電機、ビル管理システム等の監視対象装置・システムの状態又は運転状況等を現場監視装置でモニターし、監視対象装置に異常が発生したときに中央監視センターに自動通報する遠隔監視システムが実用化されている。この場合、システムの信頼性を向上させるために、監視対象装置と現場監視装置間の通信が断絶して正常な監視機能が働かなくなった場合に、その情報を現場監視装置から中央監視センターに自動送信する方式が公知である。しかし、この方式では現場監視装置内部の送受信手段や異常検知手段に故障が発生した場合には、たとえ監視対象装置に異常が発生したとしてもこれを検出することができず、又は検出できても送信できないため、中央監視センターは監視対象装置の異常を認識することができない。
【0003】
また、定期的に中央監視センターから現場監視装置にポーリングを行って監視対象装置の運転データを収集し、収集に失敗したときは現場監視装置自体に故障が発生したものと判定する方法も公知である。しかし、この方式においても、運転データ送信部が正常で異常信号送信部に故障が発生した場合には、例えば異常データがアラームなしに送信されるため中央監視センターは異常発生を認識することができないことになる。
【0004】
これらの問題を解決するために、現場監視装置に特定信号送信装置を付設して中央監視センターに常時、特定信号を送信させ、中央監視センターがこの信号を受信できなくなったときに現場監視装置に故障が発生したと判断する方式が提案されている。しかし、この方式においては、特定信号を常時送信するための専用の通信インフラが必要になるか、又は公衆回線を使用する場合であっても通信料金が高額になるという問題がある。
【0005】
さらに、現場監視装置内部の断線を監視する断線監視装置を設ける方式も提案されている(例えば特許文献1参照)。図6は、この方式による遠隔監視システム100を示したものである。同図において、現場監視装置101は監視対象であるセンサS1乃至Snを常時監視し、異常があった場合に特定信号送信装置103を中継して中央監視センター102に異常信号を送信する。通信回線の断線を監視する特定信号送信装置103は通信回線の断線を監視する機能を有し、現場監視装置101から電源供給を受けて断線監視装置105に常時特定信号を送信する。そして、現場監視装置101に故障が発生して特定信号送信装置103に電源供給できなくなると、特定信号送信装置103は断線監視装置105に特定信号を送信することができず、断線監視装置105はこれを検知して通信回線107を介して中央監視センター102に異常信号を送信する。しかし、この方式においても断線監視装置自体が故障していた場合には、たとえ特定信号が途絶えても警報送信されないということが起こりうる。
【特許文献1】特開平10−232990号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記課題を解決するためのものであって、監視対象装置に発生した異常を中央監視センターに送信すべき現場監視装置自体に故障が発生した場合、これを中央監視センターが検知可能とする技術を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る遠隔監視システム及び遠隔監視システムの故障検出方法は、以下の内容をその要旨とする。すなわち、
請求項1の発明は、監視対象装置と、監視対象装置の運転データを取得する現場監視装置と、一以上の現場監視装置から送信される監視対象装置の運転データに基づいて監視対象装置の遠隔監視を行う中央監視センターと、を含む遠隔監視システムであって、現場監視装置は、監視対象装置の運転データを正常に取得できないときに中央監視センターに異常信号を送信する手段と、監視対象装置との通信を強制的に遮断する手段と、を備え、前記中央監視センターは、監視対象装置の運転データを取得できないことによる異常信号と、強制的遮断による異常信号と、を識別する手段を備え、て成ることを特徴とする。
【0008】
ここに、「監視対象装置」には、空調機、発電機等の運転状態を監視される機器・システムや建物の警備監視対象装置・システム、大気や水質等の監視システム等、種々の被監視装置・システムが含まれる。
「運転データ」とは、機器・システムの稼動に伴う運転データのみならず、大気や水質等の静的状態データ等をも含む概念である。
「正常に取得できない」とは、運転データを取り込めない場合のみならず、取り込んだ運転データが異常な値を示すような場合を含む概念である。。
【0009】
請求項2の発明は、中央監視センターは、現場監視装置に対して前記監視対象装置との強制的通信遮断を指令する手段を備えて成ることを特徴とする。
請求項3の発明は、請求項1又は2に記載の遠隔監視システムにおいて、中央監視センターは、強制的遮断後、所定の時間内に異常信号を受信したときは、前記現場監視装置の通信系統を正常と判定し、異常信号を受信しないときは前記現場監視装置の通信系統を故障と判定する、ことを特徴とする遠隔監視システムにおける故障検出方法である。
【0010】
請求項4の発明は、請求項1に記載の遠隔監視システムにおいて、中央監視センターは、前記現場監視装置に対する強制的通信遮断指令後、所定の時間内に異常信号を受信したときは、前記現場監視装置の通信系統を正常と判定し、異常信号を受信しないときは前記現場監視装置の通信系統を故障と判定する、ことを特徴とする遠隔監視システムにおける故障検出方法である。
【0011】
請求項5の発明は、監視対象装置の運転データをモニターする監視装置であって、監視対象装置との通信を強制的に遮断する手段を備え、かつ、監視対象装置の運転データを正常に取得できないことによる異常と、強制的遮断による異常とを識別する手段を備えて成ることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、監視対象装置と現場監視装置との間の通信を強制的に遮断した後に、監視対象装置から中央監視センターに異常信号が送信されるか否かを判定することにより、現場監視装置の通信系統の故障を検出することができる。
請求項2の発明によれば、中央監視センターからの指令により現場監視装置の通信系統の故障を検出することができる。
請求項5の発明によれば、監視対象装置が設置されている現場において監視装置の故障を検出することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明に係る遠隔監視システムの実施形態について、図1乃至5を参照してさらに詳細に説明する。重複を避けるため、各図において同一構成には同一符号を用いて示している。なお、本発明の範囲は特許請求の範囲記載のものであって、以下の実施形態に限定されないことはいうまでもない。
【0014】
図1は、本発明の一実施形態に係る機器検出システム1の全体構成を示す図である。図2は、現場監視装置2の制御ブロック図である。図3は、強制通信遮断部8の詳細構成を示す図である。図4は、現場監視装置2における運転データの取り込み及び中央監視センター3への送信フローを示す図である。図5は、現場監視装置2の通信系統チェックフローを示す図である。
【0015】
<システム構成>
図1を参照して、本実施形態に係る遠隔監視システム1は、遠隔監視を受ける監視対象装置4と、監視対象装置4と同一場所に設けられ、運転データをモニターする現場監視装置2と、現場監視装置2から送信される運転データを監視し、管理する中央監視センター3と、を主要構成とする。監視対象装置4の例としては、空調機、発電機、機械警備装置等が挙げられるが、ここではGHP(ガスエンジンヒートポンプ空調機)を例に説明する。なお、同図では、中央監視センター3に一系統の遠隔監視装置2のみが接続された形態を示しているが、複数の遠隔監視系統が接続されていてもよい。中央監視センター3はホストコンピュータ、データベース等を備え、現場監視装置2に対する運転制御指令、監視対象装置4に対するポーリング信号送信により、監視対象装置4の運転データの収集を行う。中央監視センター3にはモニター端末15が接続されており、端末15により監視対象装置4の運転データのモニターや現場監視装置2への各種コマンドが可能に構成されている。中央監視センター3と現場監視装置2間は通信回線14を介して接続されている。
【0016】
図2を参照して、現場監視装置2は、中央監視センター3及び監視対象装置4との通信、情報授受を制御する制御部5、中央監視センター3からのポーリング信号を受信する受信部6、監視対象装置4からの運転データ信号を取り込みデジタル化する入力インターフェイス部9、監視対象装置4から取り込んだ運転データを格納するデータ記憶部7、中央監視センター3からのポーリング信号に基づいてデータ記憶部7に格納されている運転データを符号化するデータ処理部10、符号化データをパケット化して中央監視センター3に送信するデータ送出部11、運転データの取り込み失敗又は取り込んだ運転データ異常を検出する異常検出部13、異常検出の場合に異常信号を中央監視センター3に送出する異常信号送出部12、運転データ信号の取り込みを物理的に強制遮断する強制通信遮断部8、を主要構成として備えている。制御部5は、CPU、RAM、ROMを備え、ROMに格納されている所定のプログラムに従い上記各制御を行うように構成されている。
【0017】
監視対象装置4の所定の箇所にはセンサS1乃至Snが取り付けられており、GHP運転に伴う温度、圧力、バルブ開閉度、回転数等の運転データは、これらのセンサにより検知され、制御部5からの指令により現場監視装置2に取り込まれる。
【0018】
図3は、強制通信遮断部8の詳細構成を示す図である。強制通信遮断部8は、NCであるb接点リレー16及び電圧印加部17により構成される。制御部5から出される通信遮断信号をトリガーとして、電圧印加部17からコイル16bに電圧が印加されて接点16aがオープンとなる。これに伴い、現場監視装置2と監視対象装置4間の通信が遮断されるように構成されている。
【0019】
<運転データ異常時のフロー>
遠隔監視システム1は以上のように構成されており、次に図4をも参照して現場監視装置2における運転データの取り込み、及び中央監視センター3への送信及びデータが正常に取得できないときの異常信号送信のフローについて説明する。制御開始に伴い、まず所定のデータ取り込みタイミング(例えば2秒間に1回)に至ったか否かが判定される(ステップS101)。該当するときは入力インターフェイス部9を介して監視対象装置4のセンサS1乃至Snの検出値が取り込まれる(ステップS102)。次いで、異常検出部13において運転データが正常に取り込めたか否かが判定される(ステップS103)。受信できたときはデータ記憶部7の所定の格納場所に格納される(ステップS104)。
【0020】
その後、中央監視センター3からデータ送信のポーリング信号を受信したか否かが判定される(ステップS105)。該当するときはデータ記憶部7に蓄積されたデータはデータ処理部10において符号化され、さらにデータ送出部11においてパケット化されて中央監視センター3に送信される(ステップS106)。運転データの受信ができないときは(ステップS103においてNO)、次にデータ取り込み失敗回数が設定回数(例えば10回)に達したかが判定される(ステップS107)。設定回数未満のときはデータ取り込みが再度行われる。設定回数以上となったときは、異常信号送出部12から中央監視センター3に対して異常信号が送信される(ステップS108)。
【0021】
なお、本実施形態においては運転データが正常に取り込めない場合の形態について説明したが、これに限らず取り込んだ運転データが予め定めた範囲外の場合についても、異常信号送出部12において判定が行われ、同様に中央監視センター3に対して異常信号が送信される。以上のフローにより、中央監視センター3は監視対象装置4の異常を検出することができる。
【0022】
<通信系統チェックフロー>
次に、図5をも参照して、中央監視センター3が行う現場監視装置2の通信系統チェックフローについて説明する。通信系統チェックは、例えば1日に1回、定期的に行われるものである。まず、通信系統チェックタイミングに至ったかか否かが判定される(ステップS201)。該当するときは現場監視装置2に対して強制通信遮断指令信号が送信される(ステップS202)。これを受けて現場監視装置2は、強制通信遮断部8のコイル16bに電圧印加することにより接点16aを開にして、現場監視装置2と監視対象装置4間の通信を遮断する(ステップS203)。次いで、図2のフローに従ってデータ取り込みが行われることになるが、上述のように通信遮断されているためデータを取り込むことができない。この状態で、異常検出部13において運転データが取り込まれたたか否かが判定される(ステップS204)。異常検出部13が正常に働いて、運転データ取り込みがないことを検出すると(ステップS204においてNO)、異常信号送出部12が正常であれば中央監視センター3に対して異常信号が送信される(ステップS205)。これらの通信系統等に異常があるために強制通信遮断が行われなかったときは運転データが取り込まれ、又は、強制通信遮断は行われても異常検出部13、異常信号送出部12等に故障があるときは、異常信号が送信されることなく終了する(ステップS204においてYES)。
【0023】
次いで、中央監視センター3において、通信遮断指令信号送信後、所定の時間(Tc)以内に異常信号を受信できたか否かが判定される(ステップS206)。受信確認できたときは、現場監視装置2の通信系統は正常であると判定する(ステップS207)。受信確認できないときは、現場監視装置2の通信系統に故障があると判定する(ステップS208)。以上のフローにより、現場監視装置2の異常信号送出部12、異常検出部13自体又はこれらを接続する通信系統等の故障を検出することが可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0024】
本発明は、分野を問わず遠隔で機器、システムを監視する用途に広く適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の一実施形態に係る遠隔監視システム1の全体構成を示す図である。
【図2】現場監視装置2の制御ブロックを示す図である。
【図3】強制通信遮断部8の詳細構成を示す図である。
【図4】現場監視装置2における運転データの取り込み及び中央監視センター3への送信フローを示す図である。
【図5】現場監視装置2の通信系統チェックフローを示す図である。
【図6】従来の遠隔監視システム100を示す図である。
【符号の説明】
【0026】
1 遠隔監視システム
2 現場監視装置
3 中央監視センター
4 監視対象装置
5 制御部
6 受信部
7 データ記憶部
8 強制通信遮断部
9 入力インターフェイス部
10 データ処理部
11 データ送出部
12 異常信号送出部
13 異常検出部
14 通信回線
15 モニター端末
16 リレー
17 電圧印加部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
監視対象装置と、監視対象装置の運転データを取得する現場監視装置と、一以上の現場監視装置から送信される監視対象装置の運転データに基づいて監視対象装置の遠隔監視を行う中央監視センターと、を含む遠隔監視システムであって、
現場監視装置は、監視対象装置の運転データを正常に取得できないときに中央監視センターに異常信号を送信する手段と、監視対象装置との通信を強制的に遮断する手段と、を備え、
前記中央監視センターは、監視対象装置の運転データを取得できないことによる異常信号と、強制的遮断による異常信号と、を識別する手段を備え、
て成ることを特徴とする遠隔監視システム。
【請求項2】
前記中央監視センターは、前記現場監視装置に対して前記監視対象装置との強制的通信遮断を指令する手段を備えて成ることを特徴とする請求項1に記載の遠隔監視システム。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の遠隔監視システムにおいて、
前記中央監視センターは、強制的遮断後、所定の時間内に異常信号を受信したときは、前記現場監視装置の通信系統を正常と判定し、異常信号を受信しないときは前記現場監視装置の通信系統を故障と判定する、
ことを特徴とする遠隔監視システムにおける故障検出方法。
【請求項4】
請求項1に記載の遠隔監視システムにおいて、
前記中央監視センターは、前記現場監視装置に対する強制的通信遮断指令後、所定の時間内に異常信号を受信したときは、前記現場監視装置の通信系統を正常と判定し、異常信号を受信しないときは前記現場監視装置の通信系統を故障と判定する、
ことを特徴とする遠隔監視システムにおける故障検出方法。
【請求項5】
監視対象装置の運転データをモニターする監視装置であって、監視対象装置との通信を強制的に遮断する手段を備え、かつ、監視対象装置の運転データを正常に取得できないことによる異常と、強制的遮断による異常とを識別する手段を備えて成ることを特徴とする監視装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−268344(P2006−268344A)
【公開日】平成18年10月5日(2006.10.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−84475(P2005−84475)
【出願日】平成17年3月23日(2005.3.23)
【出願人】(000220262)東京瓦斯株式会社 (1,166)
【Fターム(参考)】