説明

遠隔監視システム

【課題】監視対象で異常が発生した場合には直ちに異常発生箇所の映像を表示しつつ、多数のカメラの映像の表示頻度を均一化する。
【解決手段】複数のカメラの映像を所定時間毎に切り替えながら巡回表示中に、その中のカメラ1-1の監視対象で異常が発生した場合、現在表示中のカメラ1-2の映像を所定時間表示後、異常が発生した箇所のカメラ1-1の異常発生映像に切り替えて表示し、再び元の巡回表示に戻した後の2順目では、異常発生映像を表示したカメラ1-1の表示をスキップすることで表示頻度を均一化し、監視領域全体の監視効率を上げる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、遠隔監視システムに係り、特に複数のカメラを用いた大規模な遠隔監視に好適なシステムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
複数のカメラで撮影する映像を1拠点で監視する大規模な遠隔監視システムの構成例を図7に示す。図において1-1〜1-Mは監視対象を撮影するカメラ、2-1〜2-Nはカメラ1-1〜1-Mが撮影した映像を記録する記録装置、3はカメラ1-1〜1-Mの撮影する映像や記録装置2-1〜2-Nに記録されている映像を取得して表示するカメラを選択する制御装置、4は制御装置3によって選択された映像を表示する表示装置、5はカメラ1-1〜1-M、記録装置2-1〜2-N、制御装置3を接続する転送手段である。
【0003】
複数のカメラ1-1〜1-Mの撮影する映像を1台の表示装置4で監視する場合、制御装置3がカメラ1-1〜1-Mのカメラの撮影映像を予め設定された所定時間毎に自動的に切り替えて表示装置4に巡回表示する方法がよく用いられている。
【0004】
しかし、カメラ1-1〜1-Mの台数が数百にも及ぶ大規模な遠隔監視システムの場合、一度カメラ1-1の映像が表示されてから再びカメラ1-1の映像が表示されるまでの時間が非常に長くなるため、その間にカメラ1-1の監視対象に異常が発生しても見落としてしまう可能性があるという問題があった。
【0005】
そのため、特許文献1には図8に示す方法が提案されている。カメラ1-1〜1-Mの撮影映像を所定時間毎に自動的に切り替え、巡回表示中にカメラ1-1の監視対象で異常が発生した場合、制御装置3はカメラ1-1の異常発生時の記録映像をカメラ1-1又はカメラ1-1の撮影映像を記録している記録装置2-1から取得して表示装置4に所定時間表示し、その後再びカメラ1-1〜1-Mの撮影映像を巡回表示する。これにより、複数のカメラの映像を巡回表示中に異常が発生した場合でも、異常発生時の記録映像を表示することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平11-191190号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従来の遠隔監視システムでは、図8に示すように、カメラ1-1〜1-Mの撮影映像を巡回表示中に、カメラ1-1の監視対象で異常が発生した場合、異常の発生により1巡目で2回表示したカメラ1-1の撮影映像を2巡目でも表示するため、カメラ1-1の映像表示回数がカメラ1-2〜1-Mよりも多くなってしまう。
【0008】
また、図9は4枚の映像を同時に分割表示する例であり、カメラ1-1〜1-Mの撮影映像をこの分割画面で巡回表示中に、カメラ1-1の監視対象とカメラ1-2の監視対象で異常が発生した場合、カメラ1-1の異常発生時の記録映像を単一画面で所定時間表示後にカメラ1-2の異常発生時の記録映像を単一画面で所定時間表示することが考えられている。この場合、カメラ1-2で異常が発生してからカメラ1-2の異常発生時の記録映像が表示されるまでに時間が空いてしまい、再び元の巡回表示に戻るまでにも時間がかかってしまう。
【0009】
このように、複数のカメラの撮影映像を巡回表示中に、その中のカメラの撮影対象で異常が発生する場合、異常発生の有無によってカメラごとに表示頻度が異なるという課題があった。
【0010】
また、複数のカメラの撮影映像を分割画面で巡回表示中に、その中の複数のカメラの撮影対象で次々に異常が発生する場合、異常が発生してから異常発生時の記録映像が表示されるまでに時間がかかり、その上、異常発生時の記録映像が表示されてから元の巡回表示に戻るまでに時間がかかるという課題もあった。
【0011】
本発明は斯かる課題に鑑みてなされたもので、その目的とするところは、複数のカメラの撮影映像を巡回表示する遠隔監視システムにおいて、監視対象で異常が発生した場合には直ちに異常発生箇所の映像を表示しつつ、多数のカメラの映像の表示頻度も均一化することのできる遠隔監視システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前記目的を達成するための本発明の特徴は、監視対象を撮影する複数のカメラと、前記複数のカメラにより撮影された映像を記録する少なくとも1つの記録装置と、前記カメラの撮影する映像を予め設定された所定時間毎に切り替えて巡回表示する制御装置とを備えた遠隔監視システムにおいて、前記カメラ又は前記記録装置は、撮影対象に発生した異常を検出する異常検出部と、前記異常検出部が検出した異常を外部に通知する異常通知部とを備え、前記制御装置は、前記異常通知に応じて巡回表示中の映像を前記カメラ又は前記記録装置における異常発生時の映像に切り替えて表示し、かつ次の巡回表示では、前記異常通知応じて前回の巡回表示中に2回以上表示されたカメラの撮影映像をスキップして表示するようにしたところにある。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、複数のカメラの撮影映像を巡回表示中にカメラの監視対象で異常が発生した場合、異常発生時の記録映像を巡回表示の途中で表示するとともに、1回の巡回中に2回以上映像が表示されたカメラの撮影映像は次の巡回表示でスキップされ表示されないので、全体のカメラの表示頻度は均一化することができ、監視エリア全体を効率よく遠隔監視することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の一実施例に係る遠隔監視システムのタイムチャートである。
【図2】本発明の一実施例に係る遠隔監視システムの他のタイムチャートである。
【図3】本発明の一実施例に係る遠隔監視システムの他のタイムチャートである。
【図4】本発明の一実施例に係る遠隔監視システムの他のタイムチャートである。
【図5】本発明の一実施例に係る遠隔監視システムの構成図である。
【図6】本発明の他の実施例に係る遠隔監視システムの構成図である。
【図7】従来の大規模遠隔監視システムの構成図である。
【図8】従来の遠隔監視システムのタイムチャートである。
【図9】最近考えられている遠隔監視システムのタイムチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態を図示する実施例を参照して説明する。尚、これらの実施例では、本発明の前記特徴に加えて、複数のカメラの監視対象で異常が発生した場合の工夫、複数のカメラうち2台以上のカメラの撮影映像を分割画面で分割表示する場合の工夫、さらには前記分割画面の画面分割数より多くのカメラの監視対象で異常が発生した場合の工夫等についても記載しているが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【実施例1】
【0016】
図5に本発明の一実施例に係る遠隔監視システムの構成図を示す。図において、図7と同一又は相当部分には同一符号を付して説明を省略し、不審者6をカメラ1-1〜1-2で撮影している状態を示している。
【0017】
カメラ1-1〜1-M又は記録装置2-1〜2-Nは、カメラ1-1〜1-Mによって撮影された映像の変化に基づいて撮影対象に発生した異常を検出する異常検出部と、検出した異常の種類及び発生時刻を外部に通知する異常通知部とを備えている。
【0018】
制御装置3は、カメラ1-1〜1-M又は記録装置2-1〜2-Nから1つも異常が通知されていない場合、カメラ1-1〜1-Mによって撮影された映像を予め設定された所定時間で自動的に切り替えながら巡回表示する。
【0019】
本発明の一実施例に係る遠隔監視システムのタイムチャートを図1に示す。図のように、カメラ1-2の映像を表示中にカメラ1-1で撮影対象に不審者6が侵入した場合、まずカメラ1-1又はカメラ1-1の撮影映像を記録している記録装置2-1は、撮影している映像の変化から異常を検出し、その異常の種類と発生時刻を制御装置3に通知する。
【0020】
制御装置3は、カメラ1-1又は記録装置2-1から異常が通知されると、その異常の発生時刻を解析し、カメラ1-1又は記録装置2-1から異常発生時から所定時間分の記録映像を取得する。そして、カメラ1-1の取得した異常発生時の記録映像を表示装置4に所定時間表示し、再び元の巡回表示を行う。1巡目で映像を2回表示したカメラ1-1の撮影映像は、次の2巡目ではスキップし、2巡目はカメラ1-2から巡回を行う。
【0021】
また、図2のように、カメラ1-2の映像を表示中に、複数のカメラ1-1及びカメラ1-2の撮影対象に不審者6が侵入した場合、先に異常が発生したカメラ1-1の異常発生時の記録映像を表示装置4に所定時間表示後、残りのカメラ1-2の異常発生時の記録映像を表示装置4に所定時間表示する。異常が発生した全てのカメラの異常発生時の記録映像を表示すると、再び元の巡回表示を行う。1巡目で映像を2回表示したカメラ1-1及びカメラ1-2の撮影映像は2巡目ではスキップし、2巡目はカメラ1-3から巡回を行う。
【0022】
このように本実施例の遠隔監視システムによれば、カメラ1-1〜1-Mの撮影する映像を巡回表示中にカメラの撮影対象に不審者が侵入した場合でも、全てのカメラの映像の表示頻度を均一にしながら不審者侵入時の記録映像を不審者が侵入してから短時間で表示することができる。
【0023】
以上の実施例では単一画面で巡回表示する例を説明したが、次に、一画面で同時に複数の画面を表示する分割画面で巡回表示する場合について、図3を用いて説明する。
【0024】
制御装置3は、カメラ1-1〜1-M又は記録装置2-1〜2-Nから1つも異常が通知されていない場合、カメラ1-1〜1-Mによって撮影された映像を表示装置4に4分割画面で表示しながら予め設定された所定時間で自動的に切り替えながら巡回表示する。
【0025】
図3のように、カメラ1-5、1-6、1-7、1-8の映像を表示中にカメラ1-1、1-2の順で撮影対象に不審者6が侵入した場合、まずカメラ1-1又はカメラ1-1の撮影映像を記録している記録装置2-1は、撮影している映像の変化から異常を検出し、その異常の種類と発生時刻を制御装置3に通知する。制御装置3は、カメラ1-1又は記録装置2-1から異常が通知されると、その異常の発生時刻を解析し、カメラ1-1又は記録装置2-1から異常発生時から所定時間分の記録映像を取得する。同様に、制御装置3は、カメラ1-2又はカメラ1-2の撮影映像を記録している記録装置2-2から異常が通知されると、カメラ1-2又は記録装置2-2から異常発生時から所定時間分の記録映像を取得する。
【0026】
そして、カメラ1-1および1-2の取得した異常発生時の記録映像と次に巡回表示予定のカメラ1-9、1-10の映像を同時に表示装置4に4分割画面で所定時間表示する。異常が発生した全てのカメラの異常発生時の記録映像を表示すると、再び元の巡回表示を行う。1巡目で映像を2回表示したカメラ1-1およびカメラ1-2の撮影映像は2巡目では表示せず、2巡目はカメラ1-3から巡回を行う。
【0027】
また、図4のように、カメラ1-5、1-6、1-7、1-8の映像を表示中に、画面分割数よりも多いカメラ1-1〜カメラ1-6の撮影対象に不審者6が侵入した場合、先に異常が発生したカメラ1-1、1-3、1-4、1-6の異常発生時の記録映像を表示装置4に4分割画面で所定時間表示後、残りのカメラ1-2、1-5の異常発生時の記録映像と次に表示予定のカメラ1-9、1-10の映像を同時に表示装置4に4分割画面で所定時間表示する。異常が発生した全てのカメラの異常発生時の記録映像を表示すると、再び元の巡回表示を行う。すなわち、所定時間内に分割画面の画面分割数より多くのカメラ又は記録装置からの異常通知に応じて、異常が発生した順にカメラ又は記録装置からの異常発生時の映像を分割画面に順次表示する。1巡目で映像を2回表示したカメラ1-1〜1-6の撮影映像は2巡目では表示せず、2巡目はカメラ1-7から巡回を行う。
【0028】
このように本実施例によれば、カメラ1-1〜1-Mの撮影する映像を4分割画面で巡回表示中にカメラの撮影対象に不審者が侵入した場合でも、不審者が侵入したカメラの不審者侵入時の映像と巡回表示予定のカメラの映像を4分割画面で同時に表示することで、不審者が侵入してから短時間で不審者侵入時の映像を表示することができ、不審者侵入時の映像を表示してから再び元の巡回表示に戻る時間を短縮することができる。
【0029】
また、1回の巡回で2回以上表示したカメラの映像を次の巡回で表示しないことで、全てのカメラの映像表示回数を均一化し、監視エリア全体の監視効率を向上することができる。
【0030】
なお、本実施例では、画面分割数を4としているが、これに限るものではない。
【実施例2】
【0031】
図6は本発明の他の実施例に係る大規模な遠隔監視システムの構成図である。尚、同一又は相当部分は同一符号を付して説明を省略する。7-1〜7-Mはカメラ1-1〜1-Mに接続されたアラームセンサまたはアラームスイッチであり、8-1〜8-Nは記録装置2-1〜2-Nに接続されたアラームセンサまたはアラームスイッチである。
【0032】
前記実施例1では、撮影している映像の変化を処理することにより異常の発生を検出し、カメラ1-1〜1-M又は記録装置2-1〜2-Nから制御装置3に異常を通知していたが、本実施例ではカメラ1-1〜1-M又は記録装置2-1〜2-Nの異常検出部がアラームセンサまたはアラームスイッチ7-1〜7-M,8-1〜8-Nから入力された信号によって撮影対象に発生した異常を検出し、制御装置3に異常を通知している。
【0033】
ここでアラームセンサとしては、人体を検出する周知の赤外線センサ等で不審者の侵入を検出することが考えられる。アラームスイッチの例としては、カメラ1-1〜1-M又は記録装置2-1〜2-Nの監視対象周辺に設けられたドアの開閉スイッチ又は非常ボタンスイッチを利用することが考えられる。
【0034】
例えば、監視対象の領域が既に閉鎖されているにもかかわらずドアの開閉スイッチが作動すれば不審者の侵入を予測することができ、また非常ボタンスイッチが押下されれば何らかの異常が発生していると判断できるので、その異常を通知し、対応する映像を表示するわけである。
【0035】
本実施例によれば、撮影している映像だけからでは判断できない異常に対しても、既存のアラームセンサやアラームスイッチの情報を利用して遠隔監視を精度よく効率的に行うことが出来る。
【符号の説明】
【0036】
1-1 〜 1-M・・・カメラ
2-1 〜 2-N・・・記録装置
3:・・・制御装置
4・・・表示装置
5・・・信号転送手段
6・・・不審者
7-1〜7-M,8-1〜8-N・・・アラームセンサまたはアラームスイッチ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
監視対象を撮影する複数のカメラと、前記複数のカメラにより撮影された映像を記録する少なくとも1つの記録装置と、映像を表示する表示装置と、前記カメラの撮影する映像を予め設定された所定時間毎に切り替えて前記表示装置に巡回表示する制御装置とを備えた遠隔監視システムにおいて、前記カメラ又は前記記録装置は、撮影対象に発生した異常を検出する異常検出部と、前記異常検出部が検出した異常を外部に通知する異常通知部とを備え、前記制御装置は、前記カメラ又は前記記録装置からの前記異常通知に応じて、前記巡回表示中の映像を前記カメラ又は前記記録装置の異常発生時の映像に切り替えて表示し、かつ次の巡回表示では、前記異常通知によって前回の巡回表示中に2回以上表示されたカメラの撮影映像をスキップして巡回表示することを特徴とする遠隔監視システム。
【請求項2】
請求項1の遠隔監視システムにおいて、前記制御装置は、2台以上の前記カメラ又は前記記録装置からの異常通知に応じて、前記カメラ又は前記記録装置から前記異常発生時の複数の映像を取得し、前記異常が発生した順に前記表示装置に切り替えて表示することを特徴とする遠隔監視システム。
【請求項3】
請求項1の遠隔監視システムにおいて、前記制御装置は、予め設定された数の前記カメラからの撮影映像を前記表示装置に分割画面で同時表示しながら巡回表示し、少なくとも1つの前記カメラ又は前記記録装置からの異常通知に応じて、前記カメラ又は前記記録装置から前記異常発生時の映像を取得し、前記巡回表示中の画面に前記異常発生時の映像を同時に表示することを特徴とする遠隔監視システム。
【請求項4】
請求項3の遠隔監視システムにおいて、前記制御装置は、所定時間内に前記分割画面の画面分割数より多くの前記カメラ又は前記記録装置からの異常通知に応じて、前記異常が発生した順に前記カメラ又は前記記録装置からの異常発生時の映像を前記分割画面に順次表示することを特徴とする遠隔監視システム。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかの遠隔監視システムにおいて、前記カメラ又は前記記録装置からの異常通知に応じて、そのとき巡回表示中の映像を前記所定時間表示した後に、前記異常時の映像に切り替えて表示することを特徴とする遠隔監視システム。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかの遠隔監視システムにおいて、前記異常検知部は、撮影された映像を処理することにより撮影対象に発生した異常を検出することを特徴とする遠隔監視システム。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれかの遠隔監視システムにおいて、前記異常検知部は、前記カメラ又は前記記録装置に接続されたアラームセンサ又はアラームスイッチにより撮影対象に発生した異常を検出することを特徴とする遠隔監視システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−14543(P2012−14543A)
【公開日】平成24年1月19日(2012.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−151672(P2010−151672)
【出願日】平成22年7月2日(2010.7.2)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】