説明

適応等化器、光受信機、及び適応等化器のタップ係数補正方法、

【課題】 適応等化フィルタのタップ数を増大させることなく、適応等化器のタップ係数の位置の偏りを補正し、安定した等化性能を得る。
【解決手段】 ディジタル伝送受信機の適応等化器のタップ係数補正方法において、通信開始前の初期トレーニングにおいて、適応等化器のタップ係数で決まるフィルタリング形状の重心位置を係数重心位置として計算し、前記計算された係数重心位置と、前記適応等化器のタップ数で決まるタップ中心との差が最小となるように、前記タップ係数をシンボル単位でシフトさせて、前記係数重心位置を前記タップ中心に近づける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、適応等化器、光受信機、及び適応等化器のタップ係数補正方法に関する。
【背景技術】
【0002】
クラウドコンピューティング、インターネットを利用した動画配信などの新たなサービスの普及による通信トラフィックの急激な増加が予想されている。増加を続ける通信トラフィックに対応するため、100Gbps級の信号を伝送可能な光送受信器の研究開発がおこなわれている。
【0003】
しかしながら、1波長あたりのビットレートを大きくすると、光信号対雑音比(OSNR:Optical Signal to Noise Ratio)耐力の低下や、伝送路の波長分散、偏波モード分散もしくは非線形効果などに起因する波形歪みによる信号品質の劣化が大きくなる。そのため、近年、OSNR耐力および伝送路の波形歪み耐力のあるディジタルコヒーレント受信方式が注目されている(たとえば、非特許文献1参照)。
【0004】
ディジタルコヒーレント受信方式では、OSNR耐力の改善と、ディジタル信号処理回路による波形歪み補償や、光伝送路の伝播特性の時間変動に対する適応等化が可能となるため、高ビットレートの伝送でも高い特性を得ることができる。また、光強度のオン/オフを2値信号に割り当て直接検波する従来方式と異なり、光強度と位相情報をコヒーレント受信方式により抽出し、抽出された強度と位相情報をA/D変換器により量子化することによって、ディジタル信号処理回路にて復調を行う。
【0005】
位相変調方式としてDP-QPSK(Dual Polarization-Quadrature Phase Shift Keying:4値位相偏移変調)を用いる場合は、直交する二つの偏波(X軸偏光とY軸偏光)のそれぞれについて、変調された4つの光位相(0°、90°、180°、270°)に2ビットのデータを割り当てることができるので、シンボル速度を1/4に低減でき、システムの小型化/低コスト化が可能となる。
【0006】
光ファイバを伝播してきた受信光は、ディジタル信号処理回路に入力される前にH軸偏光とV軸偏光に分離され、それぞれ90度位相のずれた局発光レーザで検波されてIチャネルとQチャネルに分離され、A/D変換される。このとき、一般に送信偏光軸X、Yと、受信偏波軸H、Vは一致しないことと、光ファイバの偏波モード分散の存在により、送信X、Y成分は受信H、V成分に混在して入力される。そこで、ディジタル信号処理回路の適応等化器で、受信H、V成分から送信X、Y成分を分離するとともに、波形歪み補償器の等化残である残留波長分散や偏波モード分散、波長多重などの帯域制限による波形歪み成分を適応的に等化している。
【0007】
光ファイバは、振動や温度変化により伝達特性が変化するため、上述した適応等化処理は初期トレーニング時のみならず、通信状態においても必要である。そのため、要求追従速度(伝送路の特性変化速度の最大値)を満足するように、必要なだけの入力及び出力信号を引き込んでタップ係数更新演算がなされる。
【0008】
なお、偏波多重コヒーレント光受信器において、X-ランチとY-ブランチが同一の情報源に収束することを防ぐために、一方のブランチのフィルタ係数出力に基づいて、他方のブランチのフィルタリング部のための新たなフィルタ係数を生成する方法が提案されている(たとえば、特許文献1参照)。この方法では、一方のブランチのフィルタ係数の折り返しの対称中心を求め、この対称中心でフィルタ係数を折り返し、折り返したフィルタ係数を複素共役置換することで、他方のブランチのための新たなフィルタ係数が得られる。対称中心を求める方法として、2つのブランチのフィルタHxxとHyxの電力中心をそれぞれ求め、その平均値を対称中心としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2009−253972号公報
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】D. Ly-Gagnon, IEEE JLT, vol.24, pp.12-21, 2006
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
図1A及び図1Bは、光受信機における通信開始前の初期トレーニング段階での適応等化器の課題を説明するための図である。図1Aは、適応等化器のタップ係数が偏りなく収束している状態Aを示す図、図1Bは、タップ係数が片側に偏って収束している状態Bを示す図である。
【0012】
図1Aの場合、グラフ(a)に示すように、たとえばタップ数N=13のフィルタにおいて、ピーク係数位置(この例ではタップ番号7に係数振幅のピークが現れている)に対して、振幅が0でないタップ係数がほぼ左右対称に存在している。このときの適応等化器の出力は、グラフ(b)に示すようにきれいに等化されている。
【0013】
しかし、初期トレーニング時に、受信雑音状態や、光ファイバの偏波モード分散状態及び偏波回転状態によって、図1Bのグラフ(a)のように、タップ係数が片側(たとえばタップ係数番号が大きい側)に偏って収束してしまうことがある。このときの適応等化器の出力は、グラフ(b)に示すように等化残成分によりノイズが発生している。このノイズは、ビットエラーレートを増加させる。状態Bで等化残成分が発生する理由は、ピークタップ係数に対して左右に数タップの余裕がないと、残留分散等の等化ができないからである。
【0014】
通信中においても、同様の問題が起こり得る。すなわち、通信中に光ファイバの偏波モード分散値が大きいと、振動や温度変動によって偏波回転状態が変化し、図1Aに示すタップ係数状態Aから、図1Bのタップ係数状態Bへと変化する場合があり、通信中の安定した等化性能を保証できなくなる。
【0015】
タップ数Nを大きくすれば、上記の問題は解決し得るが、光ディジタルコヒーレント伝送ではA/D変換のサンプリングレートが高いため、ディジタル処理を可能にするために並列処理を行なっている。適応等化器で2:1デシメーションが行なわれる場合は、M並列のフィルタ構成に対して、2×M個のサンプルデータが並列に入力され、M個のパラレル出力が得られる。並列処理は回路規模を増大させるので、タップ数Nは必要最小限とすることが求められる。並列処理回路でタップ数も大きくすると、回路規模のみならずインプリメントの難易度も増大し、開発期間の長期化と価格増大につながるからである。
【0016】
そこで、本願はインプリメント可能なタップ数で、初期トレーニング時と、通信中のそれぞれにおいて、等化性能を維持・補償するタップ係数補正方法と、そのような方法を実行する適応等化器及び受信機の構成を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
第1の観点において、適応等化器は、
所定のタップ数のFIRフィルタ部と、
前記タップ係数を保持するレジスタと、前記タップ係数によって決まるフィルタリング形状の重心位置を係数重心位置として計算する係数重心計算部と、前記タップ係数をシンボル単位でシフトさせるタップ係数シフト部とを含み、通信開始前の初期トレーニング段階において、前記タップ係数シフト部は、前記計算された係数重心位置と、前記FIRフィルタの前記タップ数で決まるタップ中心との差が最小となるように、前記タップ係数をシンボル単位でシフトさせるタップ係数適応制御回路と、
を有する。
【0018】
第2の観点において、適応等化器は、
所定のタップ数のFIRフィルタ部と、
前記タップ係数を保持するレジスタと、前記タップ係数によって決まるフィルタリング形状の重心位置を係数重心位置として計算する係数重心計算部と、前記タップ係数をシンボル単位でシフトさせるタップ係数シフト部とを含み、通信中において、前記タップ係数シフト部は、前記計算された係数重心位置と、前記FIRフィルタの前記タップ数で決まるタップ中心との差が所定の閾値を超えた場合、前記計算された係数重心位置が前記タップ中心の最近傍に移動するように、前記タップ係数をシンボル単位でシフトさせタップ係数適応制御回路と、
を有する。
【0019】
第3の観点において、適応等化器を用いた光受信機を提供する。光受信機は、
受信した光信号を第1及び第2の受信偏波成分に分離する偏波分離部と、
前記第1の受信偏波成分と前記第2の受信偏波成分のそれぞれをディジタル信号に変換するディジタル変換部と、
前記ディジタル信号を等化する第1又は第2の観点に記載した適応等化器と、
を有する。
【0020】
第4の観点において、タップ係数補正方法を提供する。この方法は、
ディジタル伝送方式の受信機の適応等化器のタップ係数補正方法において、通信中に、
制御回路において、前記タップ係数で決まるフィルタリング形状の重心位置を係数重心位置としてモニタリングし、
前記タップ係数の前記係数重心位置と、前記適応等化器のタップ数で決まるタップ中心との差分を所定の閾値と比較し、前記差分が前記閾値を越えた場合に、前記計算された係数重心位置が前記タップ中心の最近傍に移動するように、前記タップ係数をシンボル単位でシフトさせ、
前記適応等化器の出力側又は入力側のいずれか一方において、前記タップ係数のシフトシンボル数に相当するデータを補償して所定数の連続する出力データ又は入力データを選択する、
ことを特徴とする。
【0021】
第5の観点において、タップ係数補正方法を提供する。この方法は、
ディジタル伝送受信機の適応等化器のタップ係数補正方法において、通信開始前の初期トレーニングにおいて、
適応等化器のタップ係数で決まるフィルタリング形状の重心位置を係数重心位置として計算し、
前記計算された係数重心位置と、前記適応等化器のタップ数で決まるタップ中心との差が最小となるように、前記タップ係数をシンボル単位でシフトさせて、前記係数重心位置を前記タップ中心に近づける
ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0022】
上記の方法及び構成により、適応等化器のタップ数を増大させることなく、初期トレーニングの段階及び通信中において、タップ係数の位置の偏りを補正し、安定した等化性能を得ることが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1A】光受信機の適応等化器におけるタップ係数収束の偏りの問題を説明するための図であり、適正なタップ係数収束状態Aを示す図である。
【図1B】光受信機の適応等化器におけるタップ係数収束の偏りの問題を説明するための図であり、タップ係数が片側に偏って収束する状態Bを示す図である。
【図2】本発明が適用される一例としての光ディジタルコヒーレント受信機の構成例を示す図である。
【図3】本発明が適用される適応等化器の概略構成図である。
【図4A】実施例1として、初期トレーニング段階における適応等化器のタップ係数補正方法を説明するための図である。
【図4B】実施例1として、初期トレーニング段階における適応等化器のタップ係数補正方法を説明するための図である。
【図5】実施例1のタップ係数のシフト処理を説明するための図である。
【図6】適応等化器の並列処理を説明するための図である。
【図7A】実施例2として、通信中における適応等化器のタップ係数補正方法を説明するための図である。
【図7B】実施例2として、通信中における適応等化器のタップ係数補正方法を説明するための図であり、適応等化器の出力データの選択例を示す図である。
【図7C】実施例2として、通信中における適応等化器のタップ係数補正方法を説明するための図であり、適応等化器の入力データの選択例を示す図である。
【図8】実施例のタップ係数補正方法を実行するタップ係数適応制御回路の構成例を示す図である。
【図9】通信中のタップ係数補正制御において、復調データの連続性を保つために適応等化器の出力データを移動シンボル分だけシフトさせて選択する構成例を示す図である。
【図10】通信中のタップ係数補正制御において、復調データの連続性を保つために適応等化器の入力データを移動シンボル分に相当するデータ分だけシフトさせてデータ選択する構成例を示す図である。
【図11】図7Aのタップ係数補正方法の変形例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、図面を参照して本発明の最適な実施形態について説明する。
【0025】
図2は、本発明が適用される光ディジタルコヒーレント受信機100の構成例、図3は適応等化部120の概略構成を示す図である。光ファイバを伝播し受信機100で受信された光信号は、偏光ビームスプリッタ101でH軸偏光とV軸偏光に分離され、90°ハイブリッド型光ミキサ102、103にそれぞれ入力される。他方、局発光レーザ104の出力も、偏光ビームスプリッタ105を介して90°ハイブリッド型光ミキサ102、103の各々に入力される。90°ハイブリッド型光ミキサ102において、入力されたH軸偏光は局発振光とミキシングされ、Iチャネル(同相)成分とQチャネル(直交)成分に分離されて出力される。出力された同相成分と直交成分は、対応するツインフォトダイオード107a、107bで光電変換され、A/D変換器108a、108bにてディジタル信号に変換される。他方、90°ハイブリッド型光ミキサ103において、V軸偏光は局発振光とミキシングされ、Iチャネル(同相)成分とQチャネル(直交)成分に分離されて出力される。出力された同相成分と直交成分は、対応するツインフォトダイオード107c、107dで光電変換され、A/D変換器108c、108dでディジタル信号に変換される。ディジタル変換されたH軸偏光の信号成分と、V軸偏光の信号成分は、それぞれディジタル信号処理回路110に入力される。A/D変換部108の前段までを便宜上、「偏波分離部」とする。
【0026】
便宜上、A/D変換されたディジタルサンプルデータは、2倍オーバーサンプリングである事を前提に以降の説明を行うが、オーバーサンプリング率を規定するものではない。
【0027】
ディジタル信号処理回路110において、各信号成分は波形歪み補償器111で歪み成分が軽減され、位相調整器112で位相調整を受けて、適応等化器120に入力される。波形歪補償器111と位相調整器112の出力は、H軸方向の同相成分及び直交成分を含むH軸偏波成分(第1の受信偏波成分)と、V軸方向の同相成分及び直交成分を含むV軸偏波成分(第2の受信偏波成分)である。
【0028】
適応等化器120は、受信したH成分、V成分から、送信X成分(第1の送信偏波成分)、Y成分(第2の送信偏波成分)を分離するとともに、波形歪み補償器111の等化残である残留波長分散や偏波モード分散、波長多重等の帯域制限による波形歪み成分を適応的に等化する。分離された送信X成分、Y成分は復調/データ再生回路121に入力され、復調されて送信データが再生される。
【0029】
図3は、適応等化器120の構成例を示す。適応等化器120は、受信信号の等化を行なうFIR(有限インパルス応答)フィルタ部130と、X軸偏波成分用にFIRタップ係数の適応制御を行う第1の(X側)タップ係数適応制御部122xと、Y軸偏波成分用にFIRタップ係数の適応制御を行う第2の(Y側)タップ係数適応制御部122yを含む。図示の便宜上、ひとつのFIRフィルタ部130のみを描いているが、後述するように、M並列の処理を行なうために、実際はM個のFIRフィルタ部130が用いられている。FIRフィルタ部130は、この例ではH成分、V成分をたすきがけにFIR演算を行う事から、バタフライ型FIRフィルタと呼称する。
【0030】
FIRフィルタ部130は、X側(X軸偏波用)のNタップFIR型等化器(HH)131とNタップFIR型等化器(VH)132、及びY側(Y軸偏波用)のNタップFIR型等化器(HV)133とNタップFIR型等化器(VV)134を有する。位相調整器112(図2参照)からの出力のうち、H軸偏波成分(同相成分と直交成分を含む)は、X側のNタップFIR型等化器(HH)131と、Y側のNタップFIR型等化器(HV)133に入力され、また、X側タップ係数適応制御部122xとY側タップ係数適応制御部122yにもそれぞれ入力される。X側のNタップFIR型等化器(HH)131は、H偏波成分から、偏波多重におけるX軸偏波成分を取り出す。Y側のNタップFIR型等化器(HV)133は、H偏波成分から偏波多重におけるY軸偏波成分を取り出す。
【0031】
同様に、位相調整器112からの出力のうち、V軸偏波成分(同相成分と直交成分を含む)は、X側のNタップFIR型等化器(VH)132と、Y側のNタップFIR型等化器(VV)134に入力され、また、X側タップ係数適応制御部122xとY側タップ係数適応制御部122yにもそれぞれ入力される。X側のNタップFIR型等化器(VH)132は、V偏波成分から、偏波多重におけるX軸偏波成分を取り出す。Y側のNタップFIR型等化器(VV)133は、V偏波成分から偏波多重におけるY軸偏波成分を取り出す。
【0032】
X側NタップFIR型等化器(HH)131とNタップFIR型等化器(VH)132の出力は、X側加算器135に入力され、等化されたX軸偏波成分の信号が出力される。この出力信号は、復調及びデータ再生回路121に入力されるとともに、X側タップ係数適応制御部122xに入力される。Y側NタップFIR型等化器(HV)133とNタップFIR型等化器(VV)134の出力は、Y側加算器136に入力され、等化されたY軸偏波成分の信号が出力される。この出力信号は、復調及びデータ再生回路121に入力されるとともに、Y側タップ係数適応制御部122yに入力される。
【0033】
X側タップ係数適応制御部122xと、Y側タップ係数適応制御部122yは、それぞれX側とY側のFIRタップ係数を適応的に更新するために、任意のアルゴリズムを用いる。たとえば、CMA(Constant Modulus Algorithm)や、DD−LMS(Decision-Directed Least Mean Square Algorithm)が知られている。
【0034】
実施形態において、タップ係数適応制御部122x及び122yは、その動作と構成において新規な特徴を有する。すなわち、タップ係数適応制御部122x、122yは、X側とY側のそれぞれにおいて、タップ係数が偏りなく対称性を保って収束するように(図1A参照)、タップ係数の適応制御を行う。
【0035】
また、別の実施形態では、通信中においてもタップ係数の収束の偏りがないように適応制御するとともに、係数補正時(タップ係数シフト時)の復調データの連続性を保つように、適応等化器の動作と構成に新規な特徴を有する。
【0036】
以下で、初期トレーニングの段階と通信中の場合に分けて、具体的な動作及び構成を説明する。
【実施例1】
【0037】
<初期トレーニング時の制御>
図4A及び図4Bは、初期トレーニング段階でのタップ係数補正方法を説明するための図である。実施例1では、適応等化器の初期トレーニングの段階で、周期的に、あるいは所定のステートにおいて、タップ係数の重心位置を求めることによって、初期タップ係数に収束の偏りがないかどうかを、タップ係数適応制御部122において判断する。
【0038】
図4Aのフローチャートに示すように、まず、ステップS101で、FIRフィルタ部130のタップ係数の重心位置を求める。ここで、「タップ係数の重心位置」あるいは「係数重心」という場合は、タップ係数によって決まるフィルタリング形状の重心位置を意味するものとする。タップ係数の重心は、たとえば、タップ係数の電力重心位置や最大振幅位置を算出することによって求めることができる。通信開始前の初期トレーニング段階では、図1Bと関連して述べたように、FIRフィルタのタップ係数が必ずしもタップの中心(センタ)に収束しているとは限らない。ここで、「タップの中心」あるいは「タップ中心」とは、タップ数によって決まるタップの中心位置であり、たとえばタップ数をNとするとround(N/2)で求めることができる。図1A、図1Bのようにタップ数が13の場合は、round(13/2)=7となり、7番目のタップがタップ中心となる。
【0039】
具体的には、X側タップ係数適応制御部122xにおいて、X側のタップ係数の重心位置を求め、Y側タップ係数適応制御部122yにおいて、Y側のタップ係数の重心位置を求める。一例として、タップ係数重心位置を求める場合、(i)バタフライ型FIRフィルタの等化器131〜134ごとにタップ係数の電力重心gZZ(ZZ=HH,VH,HV,VV)を求める方法と、(ii)偏波軸ごとにタップ係数の電力重心gX、gYを求める方法がある。
【0040】
(i)の方法では、以下のようにして等化器(フィルタ)131〜134ごとにタップ係数重心が求められる。
【0041】
【数1】

ここで、CZZはタップ系数列、iはNタップフィルタのi番目のタップ係数、PZZはすべてのタップ番号におけるパワーの総和であり数式2で表わされる。
【0042】
【数2】

【0043】
X側重心として、求めたgHHとgVHのどちらを採用するかは、PHHとPVHのどちらが大きいかで決定する。同様に、Y側重心としてgHVとgVVのどちらを採用するかは、PHVとPVVのどちらが大きいかで決定する。パワーが小さいと、重心値が不正確になるからである。
【0044】
(ii)の方法では、偏波軸単位でタップ係数重心gX、gYが求められる。
【0045】
【数3】

【0046】
この方法では、gHHとgVHにパワーが分散している場合や、gHVとgVVにパワーが分散している場合でも、適切な重心を求めることができる。
【0047】
重心計算は、(i)と(ii)のいずれの方法を採用してもよいが、実施例2で後述する通信中の重心位置の監視では、タップ中心が常に係数重心位置の近傍にあるようにタップ係数の位置全体を適応制御する点で(ii)の方法が望ましい。
【0048】
次に、ステップS103において、求めた重心位置に対してタップ係数の偏りがあるかどうかを判断する。たとえば、図4Bに示すように(i)の方法で求めたX側のタップ係数重心位置(あるいは振幅ピーク)がタップ係数番号11の近傍に位置し、タップ中心との関係でタップ係数の収束に偏りがある場合は(S103でYES)、ステップS105に進んで、タップ中心(この例ではタップ番号7)とタップ係数重心位置の差が最小となるように、2シンボル分タップ係数を左側へシフトさせる。Nタップ係数の中心は、一例としてround(N/2)により求める。タップ数が13の場合は、round(13/2)=7となり、タップ係数番号7をタップ中心とする。
【0049】
タップ係数のシフトはシンボル単位で行なう。ここで、シンボル単位(あるいはシンボルデータ単位)でタップ係数をシフトさせるとは、タップ係数の最小移動単位を1シンボルとして、+1シンボル(右側へ1シンボル分)シフトさせる、あるいは−2シンボル(左側に2シンボル分)シフトさせる手法をいう。タップ係数のシフトをシンボル単位で行なうことによって、適応等化器に入力されるデータがオーバーサンプリングされているか否か、あるいは何倍のオーバーサンプリングか、にかかわりなく、1シンボルごとにタップ係数がシフトされる。タップ係数が収束して等化できている係数形状のフィルタに対して、1シンボル、あるいは2シンボルずれた受信信号が入力されても、等化器出力が1シンボル、あるいは2シンボルずれるだけで、等化状態そのものは変わらないからである。
【0050】
タップ係数の重心位置とタップ中心とが1シンボル未満の範囲内でしかずれていない場合は、タップ係数をシフトさせる必要はないので(S103でNO)、処理を終了する。または、S103の判定に閾値を設けて、タップ係数の重心位置とタップ中心の差が閾値を越えなければ、タップ係数シフトを行わないとする事も可能である。
【0051】
図5は、Nタップ係数のシフト例を示す図である。タップ係数のシフトは上述のようにシンボル単位(この実施例では適応等化器への入力データが2倍オーバーサンプリングされている場合を想定し、2サンプル単位)で行なう。図5(A)では、タップ係数の重心位置がタップ番号の大きい側に位置していた場合に、1,2,...,N−1、Nのタップ係数の全体を、左側に1シンボルシフトさせる例を示す。タップ係数を1シンボル左にシフトさせると、最も左側の1シンボル(2サンプル)分のタップ番号1、2に設定されていたタップ係数があふれてしまう。あふれたタップ係数は切り捨て、その分、反対側のタップ番号N−1とNに「0」を挿入する。
【0052】
図5(B)では、タップ係数重心位置がタップ番号の小さい側に位置していた場合に、タップ係数の全体を右側に1シンボル分、シフトさせる例を示す。この場合は、あふれたN−1とNのタップ係数を切捨て、その分、反対側のタップ番号1と2にそれぞれ「0」を挿入する。
【0053】
適応等化器120にバタフライ型のFIRフィルタを用いた場合、2倍オーバーサンプリング信号を入力として等化処理を行い、X成分、Y成分を分離した等化結果の出力はシンボルレートで行う構成とすることが可能である。
【0054】
たとえば、図6に示すように、適応等化器120においてM並列のバタフライ型FIRフィルタ部130−1〜130−Mを用いた場合、H偏光成分とV偏光成分の各々につき2M個のサンプルデータが並列で入力され、各バタフライ型FIRフィルタ部130にNタップ分の入力データが供給される。バタフライ型FIRフィルタ部130−1〜130−Mの各々で等化処理がなされ、X軸偏波成分とY軸偏波成分につき、M個のシンボルデータ出力が得られる。なお、2M個の入力データのうち最後の(N−2)個のサンプルデータは、FF125で1クロック遅延されてFIRフィルタ部130−1〜130−(round(N/2)−1)に入力される。
【0055】
このように、初期トレーニング段階で、タップ係数重心位置とタップ中心との差が最小となるように、タップ係数をシンボル単位でシフトさせる補正を行なうことで、図1Aに示すようにタップ係数の収束に偏りのない状態を得ることができる。
【0056】
この方法は、ハードウェア構成を大きく変更することなく、簡単な手法でタップ係数の初期トレーニングを適切に完了することができる。
【実施例2】
【0057】
<通信中の制御>
図7A〜図7Cは、通信中におけるタップ係数の補正方法を説明するための図である。図7Aのフローチャートに示すように、ステップS201において、タップ係数重心位置をモニタする。タップ係数重心位置のモニタリングは、実施例1で説明した(i)、(ii)の方法のいずれを用いることもできるが、HH成分とVH成分の間、あるいはHV成分とVV成分の間でパワーの分散がみられる場合にも適切に重心位置を求めるという観点から、(ii)のように偏波軸単位での重心計算を行なうのが望ましい。
【0058】
次に、ステップS203で、タップ係数重心位置と、タップ中心との差分が、閾値を超えたか否かを判断する。閾値を超えた場合は(S203でYES)、ステップS205で、シンボル単位のタップ係数のシフトを実行するとともに、通信中の復調データの連続性を保つために、適応等化器120の出力データ又は入力データのいずれか一方において、タップ係数のシフトシンボル数に相当する分だけデータをシフトさせて連続するデータを選択する。閾値は、たとえば1シンボルとする事が可能である。
【0059】
図7Bは、タップ係数をシフトさせたシンボル分だけ、出力データ側においてデータをシフトさせて連続してシンボル選択する処理を説明するための図である。適応等化器120からM個のパラレル出力を行なうとする。±kシンボルの係数シフトが許容される場合、M個のシンボルデータラインに加えて、1処理前の最後の2k個のシンボルデータラインを用意しておく。たとえば、左右3シンボルずつの係数シフトを許容する場合は、k=3となる。
【0060】
適応等化器120の初期出力が2kラインの中の0〜k−1のラインと、MラインのうちのM−kライン(k=0)で出力されていたとする。その後の通信中に、偏波モードの分散や振動等により、タップ係数の重心位置がタップ中心から2シンボル分、右側にずれて変動したとする。この場合、閾値を超える変動が生じたため(S203でYES)、タップ係数を左側に2シンボルだけシフトさせる補正が行なわれる(S205)。通信中においては、タップ係数のシフトを行っても、等化後データを連続させて出力する必要があり、係数をシフトさせた2シンボル分について、選択範囲を変更しなければならない。そこで、初期出力位置から2シンボル分だけ左側に寄ったデータラインから連続するようにデータを選択する。これにより、タップ係数重心位置の補正制御によるタップ係数のシフトを補償して、復調データの連続性を確保する。
【0061】
図7Cは、タップ係数をシフトさせたシンボル分だけ、入力データ側においてデータをシフトさせて連続して入力サンプル選択する処理を説明するための図である。±kシンボルの係数シフトが許容される場合、適応等化器120の2M個のサンプルデータラインに加えて、1処理前の最後の4k+N−2個のサンプルデータラインを用意しておく。たとえば、左右3シンボルずつの係数シフトを許容する場合は、k=3となる。
【0062】
FIRフィルタ部130の初期入力が4k+N−2ラインの中の0〜2k+N−3のラインと、2Mラインのうちの2M−2kラインで選択されていたとする。その後の通信中に、偏波モードの分散や振動等により、タップ係数重心位置がタップ中心から2シンボル分、右側にずれて変動したとする。この場合、閾値を超える変動が生じたため(S203でYES)、タップ係数を左側に2シンボルだけシフトさせる補正が行なわれる(S205)。通信中においては、タップ係数のシフトを行っても、等化後データを連続させて出力する必要があり、係数をシフトさせた2シンボル分について、選択範囲を変更しなければならない。そこで、初期入力位置から2シンボル(4サンプル)分だけ左側に寄ったデータラインから連続するようにデータを選択する。これにより、タップ係数重心位置の補正制御によるタップ係数のシフトを補償して、復調データの連続性を確保する。
【0063】
なお、出力データ側でのデータの連続性確保と、入力データ側でのデータの連続性確保の具体的な構成例については、図9及び図10を参照して、後述することとする。
【実施例3】
【0064】
<タップ係数適応制御回路及び適応等化器の構成例>
図8は、実施例1及び実施例2のタップ係数補正方法を実行するタップ係数適応制御回路122(図3参照)の構成例を示す図である。タップ係数適応制御回路122は、X側適応制御回路122xと、Y側適応制御回路122yを含み、X軸偏波成分とY軸偏波成分に対して独立にタップ係数適応制御回路122が動作する。X側適応制御回路122xと、Y側適応制御回路122yの構成は同一であるため、以下ではX側適応制御回路122xを例にとって説明する。
【0065】
X側タップ係数適応制御回路122xは、タップ係数レジスタ201xと、重心計算部202xと、タップ係数シフト部203xと、X側係数更新部204xと、係数セレクタ205xを含む。
【0066】
初期トレーニングの所定の状態(ステート)、および、通信中はタップ係数重心位置の変動が所定値を超えたときにだけタップ係数シフト制御が行われるので、それ以外の場合は、タップ係数適応制御回路122xにおいて通常のタップ係数適応制御が行われている。したがって、通常は、CMAやDD−LMSによる係数更新結果が、X側係数更新部204xからタップ係数レジスタ201xに取り込まれる。X側係数更新部204xは、たとえばCMAアルゴリズムにより係数更新を行なうものとする。
【0067】
バタフライ型FIR等化フィルタ130部(図3参照)による等化式は、数式4により示される。
【0068】
【数4】

ここで、演算「・」はタップ係数列Cと受信信号列H、Vの畳み込み演算を表わす。
【0069】
タップ係数適応制御部122においてCMAアルゴリズムを実行する場合は、時刻nの受信信号列H、V、及び等化出力X、Yにより、タップ係数列Cの更新を行なう。
【0070】
【数5】

ここで、
α:係数更新ステップサイズ
γ:出力パワー目標値(一定値)
τ:タップ係数更新間隔(追従速度で決定される一定値)
である。時刻nから時刻n+τ−1までの間、タップ係数列Cは時刻nの係数列のままである。X側タップ係数適応制御部122xは、数式5の上2つの演算を行い、Y側タップ係数適応制御部122yは、数式5の下2つの演算を行なう。
【0071】
他方、重心計算部202xは、タップ係数レジスタ201xにおけるタップ係数の重心位置を計算し、タップ係数重心位置とタップ中心とのずれが閾値の範囲内にあるかどうかを監視している。タップ係数重心位置とタップ中心とのずれ(差分)が閾値を超えた場合は、タップ係数シフト部203xに差分に応じた係数シフトの指示が出力される。タップ係数シフト部203xは、タップ係数をシフトさせるときだけ、セレクタ205xにシフト後のタップ係数を出力する。
【0072】
セレクタ205xは、通常はX側係数更新部204xからの出力を選択して、タップ係数レジスタ201xに出力するが、タップ係数重心位置の変動が閾値を越えてタップ係数がシフトされる場合(タップ係数シフト部203からの出力がある場合)は、タップ係数シフト部203xからの出力を選択して、シフト後のタップ係数をタップ係数レジスタ201xに供給する。
【0073】
タップ係数レジスタ201xにおける係数更新値(係数シフトされた更新値を含む)は、バタフライ型FIRフィルタ部130のNタップFIR型等化器(HH)131と、NタップFIR型等化器(VH)132(図3参照)に出力される。同様に、Y側タップ係数適応制御部122yのタップ係数レジスタ201yにおける係数更新値は、バタフライ型FIRフィルタ部130のNタップFIR型等化器(HV)133と、NタップFIR型等化器(VV)134(図3参照)に出力される。
【0074】
また、重心計算部202xは、初期トレーニング終了時点からのタップ係数シフト制御量を累算して出力し、通信中係数補正シンボル数Xを表わすセレクト信号311xとして、後述するセレクタ301(図9)、401(図10)に供給される。同様に、Y側タップ係数適応制御回路122yの重心計算部202yから、通信中係数補正シンボル数Yを表わすセレクト信号311yが出力され、後述するセレクタ301(図9)、401(図10)に供給される。
【0075】
図9は、図7AのステップS205と関連して、復調データの連続性を確保するために、適応等化器120の出力側で、タップ係数シフト分のデータ選択を行なう場合の適応等化器120Aの構成例を示す図である。この場合、適応等化器120は、バタフライ型FIRフィルタ部130と、タップ係数適応制御回路122に加えて、セレクタ301とFF302をさらに有する。
【0076】
±k(たとえばk=3)シンボルの係数シフトを許容する場合、セレクタ301には、M個のバタフライ型FIRフィルタ部130−1〜130−Mからの出力に加えて、バタフライ型FIRフィルタ部130の最後の2kシンボル分のデータをFF302で1クロック遅延させたデータが入力される。すなわち、前回のタイミングでの最後の2kシンボルに連続して、今回のタイミングでのMシンボルがセレクタ302に入力されることになる。
【0077】
タップ係数適応制御回路122のX側タップ係数適応制御回路122xとY側タップ係数適応制御回路122yの各々から、セレクト信号311x、311yが出力されて、セレクタ301に入力される。このセレクト信号311x、311yは、タップ係数補正のための補正シンボル数(たとえば、X側で−1シンボル、Y側で+2シンボルなど)を表わすものである。セレクト信号X(311x)、Y(311y)は、たとえば初期トレーニング終了時に0に設定し、−k〜+kの範囲でタップ係数適応制御回路122でのタップ係数補正累算値を出力したものである。あるいは、初期トレーニング終了時にkを設定して、0〜2kの範囲で補正した累積値として出力しても同じことである。
【0078】
セレクタ301は、トータルで(2k+M)シンボルの中から、タップ係数のシフトに応じて、連続するMシンボルを選択して出力する。その結果、タップ係数をシフトする補正が行なわれた場合でも、データが補正前と連続した状態で、M個の並列データが適応等化器120Aから出力されることになる。
【0079】
図10は、図7(A)のステップS205と関連して、適応等化器120の入力側で、タップ係数シフト分のデータ選択を行なう場合の適応等化器120Bの構成例を示す図である。適応等化器120Bは、タップ係数適応制御回路122(X側制御回路122xとY側制御回路122yを含む)と、M個のバタフライ型FIRフィルタ部130−1〜130−Mに加えて、入力側のセレクタ401と、FF402をさらに有する。
【0080】
この例では、2倍のオーバーサンプリングでサンプルデータが適応等化器120に入力される。適応等化器120で±k(たとえばk=3)シンボルの係数シフトを許容する場合、2×Mの入力サンプルデータのうち、最後の4k個のサンプルデータ(2kシンボル分に相当)と、(N−2)個のサンプルデータが、FF402で1クロック遅延される。したがって、セレクタ401には、前回のタイミングで入力された最後の(4k+N−2)サンプルデータと、今回のタイミングで入力された2Mサンプルデータとが入力される。
【0081】
タップ係数適応制御回路122から、セレクト信号311x、311yがセレクタ401に供給される。セレクタ401は、セレクト信号に応じて、(4k+2M+N−2)サンプルの中から、連続する(2M+N−2)サンプルを選択する。係数補正はシンボル単位で行なわれるので、セレクタ401を2サンプル飛びに構成する。なお、セレクト信号311x、311y(通信中係数補正シンボル数X,Y)は、図9の通信中係数補正シンボル数X、Yと論理的に同一であるがタイミングが異なるかもしれない。セレクタ401のセレクト結果信号とシフト後係数の適用タイミングが一致するように調整が必要だからである。
【0082】
セレクタ401は、バタフライ型FIRフィルタの4つのFIRフィルタの入力データを選択する為に、HH,VH,HV,VVの4ブロックのセレクタを持つ。HH,VH用セレクタは、通信中係数補正シンボル数X(311x)によって制御され、HV,VVセレクタは、通信中係数補正シンボル数Y(311y)によって制御される。
【0083】
<変形例>
図8のタップ係数適応制御回路122の変形例として、通信中に、Q値(もしくはビットエラーレート)と、タップ係数重心位置とを監視する構成としてもよい。この場合、図8において図示しないQ値(もしくはBER)監視部から、重心計算部202x、202yの各々にQ値(もしくはBER)が入力される。重心計算部202x、202yの各々は、Q値が閾値以上に劣化し、かつタップ係数重心位置とタップ中心との差分が閾値を超えた場合に、シンボル単位のタップ係数シフトを実行するとともに、図9に示すように、復調データの連続性を保つために、適応等化器120Aの出力データを移動シンボル分シフトする。あるいは、Q値が閾値以上に劣化し、かつタップ係数重心位置とタップ中心との差分が閾値を超えた場合に、シンボル単位のタップ係数シフトを実行するとともに、図10に示すように、復調データの連続性を保つために、適応等化器120Bの入力データを移動シンボル分シフトする。
【0084】
図11は、変形例における通信中タップ係数補正方法のフローチャートである。ステップS301において、タップ係数適応制御回路122x、122yの各々は、対応するX側及びY側のタップ係数重心位置と、入力されるQ値(もしくはBER)を監視する。ステップS303において、タップ係数重心位置とタップ中心との差分が閾値(Th1)を超え、かつQ値(もしくはBER)劣化量が閾値(Th2)を超えたか否かを判断する。双方が閾値を超えた場合(S303でYES)は、ステップ305にて、シンボル単位のタップ係数シフトを実行し、適応等化器の出力データ又は入力データのいずれか一方を、移動シンボル分だけ反対方向にシフトさせて復調データの連続性を確保する。
【0085】
以上述べた方法及び構成によれば、インプリメント可能なタップ数Nを維持したまま、初期トレーニング時と通信中のいずれにおいても、受信雑音や偏波モード分散、偏波回転状態の変動に起因するタップ係数の収束の劣化を補正して、適切な適応等化出力を得ることができる。
【0086】
なお、実施例では、タップ係数収束位置に対するタップ係数の偏りを、タップ係数重心位置により観察する構成としたが、ピークタップ係数(振幅最大)の位置によってタップ係数の偏りを検出する構成としてもよい。また、光信号品質値をモニタする場合にQ値又はビットエラーレートを監視したが、任意の光信号品質値をモニタすることで、一定の閾値を超えて光信号品質が劣化し、かつタップ係数の収束位置とタップ中心とのずれか一定の閾値を超えた場合に、タップ係数をシフトさせる補正制御を行う構成としてもよい。
【0087】
なお、図8のタップ係数適応制御回路122は、初期トレーニング時には、係数更新アルゴリズムを優先させ、重心計算部202の出力に基づいたタップ係数シフト処理は、初期トレーニング中に1回もしくは複数回の固定タイミングのみに実行する構成とする事や、タップ係数が収束した後の状態(ステート)において重心計算結果とタップ中心のずれが閾値を超えた場合のみに実行する構成とする事も可能である。また、オーバーサンプリングは2倍オーバーサンプリングに限定されず、n倍オーバーサンプリングの場合にも本発明が適用されることは言うまでもない。
【0088】
上記以外にも、タップ係数の偏りを防止して安定した等化機能を確保するための任意の変形、代替手段が可能であり、そのような変形も本発明の範囲内とする。
【0089】
以上の説明に対して、以下の付記を提示する。
(付記1)
所定のタップ数のFIRフィルタ部と、
前記タップ係数を保持するレジスタと、前記タップ係数によって決まるフィルタリング形状の重心位置を係数重心位置として計算する係数重心計算部と、前記タップ係数をシンボル単位でシフトさせるタップ係数シフト部とを含み、通信開始前の初期トレーニング段階において、前記タップ係数シフト部は、前記計算された係数重心位置と、前記FIRフィルタの前記タップ数で決まるタップ中心との差が最小となるように、前記タップ係数をシンボル単位でシフトさせるタップ係数適応制御回路とを有することを特徴とする適応等化器。
(付記2)
所定のタップ数のFIRフィルタ部と、
前記タップ係数を保持するレジスタと、前記タップ係数によって決まるフィルタリング形状の重心位置を係数重心位置として計算する係数重心計算部と、前記タップ係数をシンボル単位でシフトさせるタップ係数シフト部とを含み、通信中において、前記タップ係数シフト部は、前記計算された係数重心位置と、前記FIRフィルタの前記タップ数で決まるタップ中心との差が所定の閾値を超えた場合、前記計算された係数重心位置が前記タップ中心の最近傍に移動するように、前記タップ係数をシンボル単位でシフトさせタップ係数適応制御回路を有することを特徴とする適応等化器。
(付記3)
前記タップ係数適応制御回路は、
前記タップ係数の値を更新するタップ係数更新部と、
前記レジスタに設定されている前記タップ係数が前記シンボル単位でシフトされたときは、シフト後前記タップ係数を出力し、それ以外のときは前記タップ係数更新部により計算された更新値を出力する係数セレクタ、
をさらに有することを特徴とする付記1または付記2に記載の適応等化器。
(付記4)
前記FIRフィルタ部はM並列に配置されたFIRフィルタを含み、
前記タップ係数シフト部により±k個のシンボルデータに相当する係数シフトが許容される場合に、前記M並列のFIRフィルタから出力されるM個のシンボルデータのうち、最後の2k個のシンボルデータを1クロック遅延させる論理回路と、
前記FIRフィルタ部の出力側に設けられ、前記遅延された2k個のシンボルデータと、今回のタイミングで前記M並列のFIRフィルタから出力されるM個の並列シンボルデータとの中から、前記タップ係数のシフト状態に応じて連続するM個のシンボルを選択して出力するデータ選択セレクタをさらに有することを特徴とする付記1または付記2に記載の適応等化器。
(付記5)
前記FIRフィルタ部はM並列に配置されたFIRフィルタを含み、
前記タップ係数シフト部により±k個のシンボルデータに相当する係数シフトが許容される場合に、n倍オーバーサンプリング(nは1以上の整数)で前記M並列のFIRフィルタに入力されるn×M個のサンプルデータのうち、最後のn×(2k)個のサンプルデータと(N−n)個のサンプルデータ(Nは前記FIRフィルタのタップ数)とを1クロック遅延させる論理回路と、
前記IFRフィルタ部の入力側に設けられ、前記n×(2k)個のサンプルデータ及び(N−n)個のサンプルデータと、今回のタイミングで前記M段のFIRフィルタ部に入力されるn×M個の入力サンプルデータの中から、前記タップ係数のシフト状態に応じて連続するn×M+N−n個のサンプルデータを選択して前記FIRフィルタ部に入力するデータ選択セレクタ、をさらに有することを特徴とする付記1または2に記載の適応等化器。
(付記6)
前記タップ係数シフト部は、前記タップ係数のシフトによりあふれたタップ係数を切り捨て、反対側にゼロを挿入することを特徴とする付記1または2に記載の適応等化器。
(付記7)
前記FIRフィルタ部は、入力された第1の受信偏波成分と第2の受信偏波成分とから、第1の送信偏波成分と第2の送信偏波成分を取り出し、
前記タップ係数適応制御回路は、前記第1の送信偏波成分の等化処理を制御するための第1タップ係数適応制御部と、前記第2の送信偏波成分の等化処理を制御するための第2タップ係数適応制御部とを含む、
ことを特徴とする付記1または2に記載の適応等化器。
(付記8)
前記FIRフィルタ部は、入力された第1の受信偏波成分と第2の受信偏波成分とから、第1の送信偏波成分と第2の送信偏波成分を取り出す複数のNタップフィルタを含み、
前記係数重心計算部は、前記複数のNタップフィルタの各々について前記タップ係数の重心位置を計算することを特徴とする付記1または2に記載の適応等化器。
(付記9)
前記FIRフィルタ部は、入力された第1の受信偏波成分と第2の受信偏波成分とから、第1の送信偏波成分と第2の送信偏波成分を取り出し、
前記係数重心計算部は、前記第1の送信偏波成分と前記第2の送信偏波成分の各々について前記タップ係数の重心位置を計算することを特徴とする付記1または2に記載の適応等化器。
(付記10)
前記FIRフィルタ部は、
前記第1の受信偏波成分から第1送信成分を取り出す第1のNタップフィルタと、
前記第2の受信偏波成分から第1送信成分を取り出す第2のNタップフィルタと、
前記第1のNタップフィルタで得られた前記第1送信成分と前記第2のNタップフィルタで得られた前記第1送信成分とを加算する第1加算器と、
前記第1の受信偏波成分から第2送信成分を取り出す第3のNタップフィルタと、
前記第2の受信偏波成分から第2送信成分を取り出す第4のNタップフィルタと、
前記第3のNタップフィルタで得られた前記第2送信成分と、前記第4のNタップフィルタで得られた前記第2送信成分を加算する第2加算器と、
を含むことを特徴とする付記1または2に記載の適応等化器。
(付記11)
受信した光信号を第1及び第2の受信偏波成分に分離する偏波分離部と、
前記第1の受信偏波成分と前記第2の受信偏波成分のそれぞれをディジタル信号に変換するディジタル変換部と、
前記ディジタル信号を等化する付記1〜10のいずれかに記載の適応等化器と、
を有する光受信機。
(付記12)
ディジタル伝送方式の受信機の適応等化器のタップ係数補正方法において、通信中に、
制御回路において、前記タップ係数で決まるフィルタリング形状の重心位置を係数重心位置としてモニタリングし、
前記タップ係数の前記係数重心位置と、前記適応等化器のタップ数で決まるタップ中心との差分を所定の閾値と比較し、前記差分が前記閾値を越えた場合に、前記計算された係数重心位置が前記タップ中心の最近傍に移動するように、前記タップ係数をシンボル単位でシフトさせ、
前記適応等化器の出力側又は入力側のいずれか一方において、前記タップ係数のシフトシンボル数に相当するデータを補償して所定数の連続する出力データ又は入力データを選択する、
ことを特徴とするタップ係数補正方法。
(付記13)
前記連続するデータの選択は、前記適応等化器の出力側で行われ、
前記適応等化器において、±k個のシンボルデータに相当する範囲の係数シフトが許容される場合に、前記適応等化器のM並列のFIRフィルタから出力されるM個のシンボルデータのうち、最後の2k個のシンボルデータを1クロック遅延させ、
前記遅延された2k個のシンボルデータと、今回のタイミングで前記M段のFIRフィルタから出力されるM個の並列シンボルデータとの中から、前記係数シフトされたシンボル数に応じて出力データをシフトさせて連続するM個のシンボルを選択して出力する
ことを特徴とする付記12に記載のタップ係数補正方法。
(付記14)
前記連続するデータの選択は、前記適応等化器の入力側で行われ、
前記適応等化器において、±k個のシンボルデータに相当する範囲の係数シフトが許容される場合に、n倍オーバーサンプリング(nは1以上の整数)で前記等化器のM並列のFIRフィルタに入力されるn×M個のサンプルデータのうち、最後のn×2k個のサンプルデータと(N−n)個のサンプルデータ(Nは前記FIRフィルタのタップ数)とを1クロック遅延させ、
前記n×2k個のサンプルデータ及び(N−n)個のサンプルデータと、今回のタイミングで前記M段のFIRフィルタ部に入力されるn×M個の入力サンプルデータの中から、前記係数シフトされたシンボル数に応じて入力データをシフトさせて連続するn×M+N−n個のサンプルデータを選択して前記FIRフィルタに入力する、
ことを特徴とする付記12に記載のタップ係数補正方法。
(付記15)
前記タップ係数をシンボル単位でシフトさせたことによってあふれるタップ係数を切り捨て、反対側のタップ係数に「0」を挿入することを特徴とする付記12〜14のいずれかに記載のタップ係数補正方法。
(付記16)
前記タップ係数の重心位置の算出は、前記タップ係数の電力重心位置又は前記タップ係数の最大振幅位置の計算を含むことを特徴とする付記12に記載のタップ係数補正方法。
(付記17)
前記適応等化器において、複数のNタップフィルタにより、入力された第1の受信偏波成分と第2の受信偏波成分から、第1の送信偏波成分と第2の送信偏波成分を取り出す工程をさらに含み、
前記タップ係数の重心位置の計算は、前記複数のNタップフィルタごとに行われることを特徴とする付記12に記載のタップ係数補正方法。
(付記18)
前記適応等化器において、複数のNタップフィルタにより、入力された第1の受信偏波成分と第2の受信偏波成分から、第1の送信偏波成分と第2の送信偏波成分とを取り出す工程をさらに含み、
前記タップ係数の重心位置の計算は、前記第1及び第2の送信偏波成分ごとに行われることを特徴とする付記12に記載のタップ係数補正方法。
(付記19)
前記第1の送信偏波成分を取り出す工程は、第1のNタップフィルタにおいて、前記第1の受信偏波成分から第1送信成分を取り出し、第2のNタップフィルタにおいて、前記第2の受信偏波成分から第1送信成分を取り出し、前記第1のNタップフィルタで得られた前記第1送信成分と、前記第2のNタップフィルタで得られた前記第1送信成分とを加算する工程を含み、
前記第2の送信偏波成分を取り出す工程は、第3のNタップフィルタにおいて、前記第1の受信偏波成分から第2送信成分を取り出し、第4のNタップフィルタにおいて、前記第2の受信偏波成分から第2送信成分を取り出し、前記第3のNタップフィルタで得られた前記第2送信成分と、前記第4のNタップフィルタで得られた前記第2送信成分とを加算する工程を含む、
ことを特徴とする付記17又は18に記載のタップ係数補正方法。
(付記20)
ディジタル伝送受信機の適応等化器のタップ係数補正方法において、通信開始前の初期トレーニングにおいて、
適応等化器のタップ係数で決まるフィルタリング形状の重心位置を係数重心位置として計算し、
前記計算された係数重心位置と、前記適応等化器のタップ数で決まるタップ中心との差が最小となるように、前記タップ係数をシンボル単位でシフトさせて、前記係数重心位置を前記タップ中心に近づける
ことを特徴とするタップ係数補正方法。
【産業上の利用可能性】
【0090】
受信光信号の適応等化処理に適用することができる。
【符号の説明】
【0091】
100 光ディジタルコヒーレント受信機(光受信機)
110 ディジタル信号処理回路
120 適応等化器
122 タップ係数適応制御回路
122x X側タップ係数適応制御部(第1タップ係数適応制御部)
122y Y側タップ係数適応制御部(第2タップ係数適応制御部)
125、302、402 FF(論理回路)
130−1〜130−M バタフライ型FIRフィルタ部
201x、201y タップ係数レジスタ
202x、202y 重心計算部(タップ係数収束位置計算部)
203x、203y タップ係数シフト部
204x、204y 係数更新部
205x、205y セレクタ
301 適応等化器出力側セレクタ(データ選択セレクタ)
401 適応等化器入力側セレクタ(データ選択セレクタ)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定のタップ数のFIRフィルタ部と、
前記タップ係数を保持するレジスタと、前記タップ係数によって決まるフィルタリング形状の重心位置を係数重心位置として計算する係数重心計算部と、前記タップ係数をシンボル単位でシフトさせるタップ係数シフト部とを含み、通信開始前の初期トレーニング段階において、前記タップ係数シフト部は、前記計算された係数重心位置と、前記FIRフィルタの前記タップ数で決まるタップ中心との差が最小となるように、前記タップ係数をシンボル単位でシフトさせるタップ係数適応制御回路とを有することを特徴とする適応等化器。
【請求項2】
所定のタップ数のFIRフィルタ部と、
前記タップ係数を保持するレジスタと、前記タップ係数によって決まるフィルタリング形状の重心位置を係数重心位置として計算する係数重心計算部と、前記タップ係数をシンボル単位でシフトさせるタップ係数シフト部とを含み、通信中において、前記タップ係数シフト部は、前記計算された係数重心位置と、前記FIRフィルタの前記タップ数で決まるタップ中心との差が所定の閾値を超えた場合、前記計算された係数重心位置が前記タップ中心の最近傍に移動するように、前記タップ係数をシンボル単位でシフトさせるタップ係数適応制御回路を有することを特徴とする適応等化器。
【請求項3】
前記タップ係数適応制御回路は、
前記タップ係数の値を更新するタップ係数更新部と、
前記レジスタに設定されている前記タップ係数が前記シンボル単位でシフトされたときは、シフト後前記タップ係数を出力し、それ以外のときは前記タップ係数更新部により計算された更新値を出力する係数セレクタ、
をさらに有することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の適応等化器。
【請求項4】
前記FIRフィルタ部はM並列に配置されたFIRフィルタを含み、
前記タップ係数シフト部により±k個のシンボルデータに相当する係数シフトが許容される場合に、前記M並列のFIRフィルタから出力されるM個のシンボルデータのうち、最後の2k個のシンボルデータを1クロック遅延させる論理回路と、
前記FIRフィルタ部の出力側に設けられ、前記遅延された2k個のシンボルデータと、今回のタイミングで前記M並列のFIRフィルタから出力されるM個の並列シンボルデータとの中から、前記タップ係数のシフト状態に応じて連続するM個のシンボルを選択して出力するデータ選択セレクタ、をさらに有することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の適応等化器。
【請求項5】
前記FIRフィルタ部はM並列に配置されたFIRフィルタを含み、
前記タップ係数シフト部により±k個のシンボルデータに相当する係数シフトが許容される場合に、n倍オーバーサンプリング(nは1以上の整数)で前記M並列のFIRフィルタに入力されるn×M個のサンプルデータのうち、最後のn×(2k)個のサンプルデータと(N−n)個のサンプルデータ(Nは前記FIRフィルタのタップ数)とを1クロック遅延させる論理回路と、
前記IFRフィルタ部の入力側に設けられ、前記n×(2k)個のサンプルデータ及び(N−n)個のサンプルデータと、今回のタイミングで前記M段のFIRフィルタ部に入力されるn×M個の入力サンプルデータの中から、前記タップ係数のシフト状態に応じて連続するn×M+N−n個のサンプルデータを選択して前記FIRフィルタ部に入力するデータ選択セレクタ、をさらに有することを特徴とする請求項1又は2に記載の適応等化器。
【請求項6】
受信した光信号を第1及び第2の受信偏波成分に分離する偏波分離部と、
前記第1の受信偏波成分と前記第2の受信偏波成分のそれぞれをディジタル信号に変換するディジタル変換部と、
前記ディジタル信号を等化する請求項1〜5のいずれかに記載の適応等化器と、
を有する光受信機。
【請求項7】
ディジタル伝送方式の受信機の適応等化器のタップ係数補正方法において、通信中に、
制御回路において、前記タップ係数で決まるフィルタリング形状の重心位置を係数重心位置としてモニタリングし、
前記タップ係数の前記係数重心位置と、前記適応等化器のタップ数で決まるタップ中心との差分を所定の閾値と比較し、前記差分が前記閾値を越えた場合に、前記計算された係数重心位置が前記タップ中心の最近傍に移動するように、前記タップ係数をシンボル単位でシフトさせ、
前記適応等化器の出力側又は入力側のいずれか一方において、前記タップ係数のシフトシンボル数に相当するデータを補償して所定数の連続する出力データ又は入力データを選択する、
ことを特徴とするタップ係数補正方法。
【請求項8】
前記連続するデータの選択は、前記適応等化器の出力側で行われ、
前記適応等化器において、±k個のシンボルデータに相当する範囲の係数シフトが許容される場合に、前記適応等化器のM並列のFIRフィルタから出力されるM個のシンボルデータのうち、最後の2k個のシンボルデータを1クロック遅延させ、
前記遅延された2k個のシンボルデータと、今回のタイミングで前記M段のFIRフィルタから出力されるM個の並列シンボルデータとの中から、前記係数シフトされたシンボル数に応じて出力データをシフトさせて連続するM個のシンボルを選択して出力する
ことを特徴とする請求項7に記載のタップ係数補正方法。
【請求項9】
前記連続するデータの選択は、前記適応等化器の入力側で行われ、
前記適応等化器において、±k個のシンボルデータに相当する範囲の係数シフトが許容される場合に、n倍オーバーサンプリング(nは1以上の整数)で前記等化器のM並列のFIRフィルタに入力されるn×M個のサンプルデータのうち、最後のn×2k個のサンプルデータと(N−n)個のサンプルデータ(Nは前記FIRフィルタのタップ数)とを1クロック遅延させ、
前記n×2k個のサンプルデータ及び(N−n)個のサンプルデータと、今回のタイミングで前記M段のFIRフィルタ部に入力されるn×M個の入力サンプルデータの中から、前記係数シフトされたシンボル数に応じて入力データをシフトさせて連続するn×M+N−n個のサンプルデータを選択して前記FIRフィルタに入力する、
ことを特徴とする請求項7に記載のタップ係数補正方法。
【請求項10】
ディジタル伝送受信機の適応等化器のタップ係数補正方法において、通信開始前の初期トレーニングにおいて、
適応等化器のタップ係数で決まるフィルタリング形状の重心位置を係数重心位置として計算し、
前記計算された係数重心位置と、前記適応等化器のタップ数で決まるタップ中心との差が最小となるように、前記タップ係数をシンボル単位でシフトさせて、前記係数重心位置を前記タップ中心に近づける
ことを特徴とするタップ係数補正方法。

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4A】
image rotate

【図4B】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7A】
image rotate

【図7B】
image rotate

【図7C】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図1A】
image rotate

【図1B】
image rotate


【公開番号】特開2012−119923(P2012−119923A)
【公開日】平成24年6月21日(2012.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−267557(P2010−267557)
【出願日】平成22年11月30日(2010.11.30)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】